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アポカリプス・ランページ⑭〜悪食の果て

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 がりがり、がりがり。
 足を引きずり、街を這いずる身は酷くいびつで。
 みしみし、みしみし。
 胴を軋ませ、廃道に進ませる様は苦しむ役馬のよう。
 ばきばき、ばきばき。
 地を揺らしながら、己が意思を揺るがす“なにか”に抗わんとするソレ。
 優に家屋を超え、目の前の障害をものともせずに圧し潰しひたすらに突き進むソレは、異形の戦車であった。
 もっとも、履帯の代わりに太い脚が地を蹴り、砲門の代わりに大きな口腔から雷火を吐く、その姿を戦車と定義すべきかは、甚だ議論の余地がありそうではあったけれど。

『グ、ォ……ォオオーッ!!』

 彼の者は咆哮する。
 まるで、自己の存在を確かめんとする産声のようだった。


「戦争の大勢はおおよそ見えてきたようだけれど、無辜の民が求めるモノは大局的な勝利ではなく、身近な安全だよ。そーゆーわけで、ここに来た人達には殲滅戦をお願いしようか」
 いつになくダルそうにしてる白い護刀のヤドリガミ、ファンはもはや義務感だけで話を続けているようだった。
「敵は戦車だってさ。……これを戦車と言うべきかは、私には判断しかねるけれど」
 説明の為に宙に映し出された敵影と思わしきソレは、鉄骨や廃材を継ぎ接ぎして形作られた竜のような何かだった。
「元々は空を飛べる個体だったようだけれど、今や色んな物が混ざり過ぎて地を這う事しか出来なくなったみたいだよ。その分、有り余る質量で構成された巨躯で襲ってくるわけだから油断が許される相手ではないけれどね。高さは、そうだね……私の器物、9本分くらいかな。想像出来そう?」
 手にする白刃を振りふり冗談を交えながら、下がりつつある瞼のその奥に赤色を揺らして、彼女は呟く。
「己が成るべきモノに成れなかった時、その個は何を思うのだろうね……別に、兵器に同情があるわけでもないけれど」
 既に椅子に坐し、今にも眠りに落ちそうな彼女は、いつものように、お決まりの言葉をもって猟兵達を送り出すのだった。
 「それじゃ、いってらっしゃい。無事に帰るんだよ?」


BB
 <ナナーナナナナナーナーナーナナーナーナナーナードンダカドンドコドコドン♪
 <塊魂。

 おはこんにちこんばんは、環境が激変してマヂで動けないぜだから戦局に関係ないことする!
 第五作目です、どうぞよろしくお願いします。

 シナリオ傾向:『シリアス~ギャグ何でもござれ、ただしドの付くエロはマヂ勘弁』
 現場:『バトルクリーク市の廃墟』

 今回、参加してくださる方々には色々と混ざり混ざってしまった歪な機竜に勝利してもらうことになります。
 戦場には廃墟特有の遮蔽物がたくさんあるので有効活用してもらえればと思いますが、敵は生半可な瓦礫だと吹っ飛ばしてくるパワータイプなのでご注意を。
 担当猟兵がセンチメンタルなコトを語っていましたが、フツーにボコって退治してもらって構いません。頂いたプレイングを頂いたように調理します故。
 それほど癖のない相手との純戦なので、下記のプレイングボーナスについてだけ留意して頂ければ大事故はないかと思われます。

 プレイングボーナス『戦車巨獣の核となっているオブリビオンを攻撃する。』

 プレイング受付はシナリオ公開後、MSページにて発表します。
 参加者の公平を期すため、指定する受付時間前の提出はいかなる場合も採用しませんのであしからず。
 受付数は5名を最低保証とし、以降は受付順に、失効期限とやる気の続く限り書けるだけ頑張ります。
 なお、オーバーロードしてもらえても受付順に優遇があるわけではありませんのでご了承願います。でも、内容はその分頑張る。

 今回使用できる『略記号』
 ◎:アドリブ可・共闘可。
 〇:アドリブ可・共闘不可。
 △:アドリブ不可・共闘可。
 ✕:アドリブ不可・共闘不可。
 G:ギャグ表現OK。
 V:暴力・グロ表現OK。
 P:ピンチ表現OK。
 S:シリアス希望。
 H:ムフフ表現希望 ※少年誌のお色気枠程度は頑張ります。
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第1章 ボス戦 『未完成のメカドラゴン』

POW   :    完成予想図
無敵の【完璧な機体を持つ姿】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    カラダ集め
非戦闘行為に没頭している間、自身の【心臓部】が【異常に発熱し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    クラッキング
見えない【電流】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はサフィリア・ラズワルドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ラム・クリッパー


今の戦車は【完璧な機体】と想像した姿なんすかね?
せっかく空も飛べたのに…って、アタシは思うっすよ。
望んだ自分じゃなかったなら、余計なもの取り除いて裸にひんむいてやるっす。
バラすのは解体士の仕事っす。

パワーフードで気合いと力を充填して、真正面から挑んでやるっすよ。
進路上の廃墟の屋上から戦車に向かって跳び込んで、ツールを引っ掻けてよじ登って、戦車ロデオの開始っす。
自分に向けて砲撃なんてしないっすよね?
暴れても力任せにしがみついて、外装をこじ開けてえぐってやるっす。
内装が見えるまで、脆そうな箇所から徹底的に解体してあげるっすよ。
本体が見えたら、【全力全開なフルスイング】を叩き込んであげるっす!


御形・菘
◎GVPS
はっはっは、なるほど理想を追い続けるのは、ひとつ美しい在り方ではあろうな
だが、己の持ち札を認め、最大限に生かして伸ばすというのもまた強さ! 
納得する必要などない! お主の対極の頂点の力を見せてやろう!

とゆーことで、さあ好きなだけ完璧を、己の理想を晒してみるがよい! 妾はそれを凌駕する!
右手を上げ、指を鳴らし! さあ流星よ、此度は水平方向に一斉射だ!
攻撃回数…弾数を増やし、そのデカい的へと全力でブチ込む!

とはいえこの攻撃は、より安全に接近するための手段なのだがのう
巨体に張り付き上ってゆき、妾が直々に、核たるお主をボコってやろう!
邪神の左腕の一撃、存分に堪能するがよい!



●星で願いを

 ジィ、ジィと無機質な瞳を動かして、高性能AI内臓の撮影ドローン『天地通眼』は主の姿を追う。
「あー、あー、テステス。妾、今日もちゃんと艶やかに映っておるかの?」
 広大な荒れ地にぽつりと現れる廃墟、その瓦礫を遠方に誘惑のポーズを決める御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)はいわゆる動画配信者である。
 普通の動画配信者はこんな何もない過酷な世界に訪れようとも思わないだろうが、彼女は普通ではない、猟兵兼務の突撃系配信者なのである。
「はー、配信者って色んな世界にいるんすね。詳しくは知らないんすけど、それって儲かるんすか?」
 たまたま目的地を同じくして道中出会った少女、ラム・クリッパー(力自慢の少女解体屋・f34847)は自らを映す『天地通眼』をしげしげと見つめながら、思いついたことを何気なく口にする。
「おぅおぅ、そこなおなご、本日のゲストよ。あまり生々しい質問はNGじゃぞ? まぁ、今回協力してもらうわけじゃから教えんことも無いが、また後での。して、名は何と呼べばいいかの?」
「あー、ラムでいいっすよ。アタシからはアンタ……じゃ映りが良くないっすね、ゴギョーさんにしときます?」
「うむ、妾の方が年長者であるからの、それでよかろう」
 蛇腹をうねうねさせながら進む御形と、その様子を珍しいモノを見るような目で追うラムは、やがて目的地である廃墟の前へと辿り着く。
 二人が改めて見れば、その廃墟は四方50mくらいのこぢんまりとしたガラクタの集まりのようにも感じられた。
 建物跡と言うよりは、無秩序に廃材が積みあがって出来上がった鳥の巣のような何かに見えるかもしれない。
「動画配信仲間に廃墟巡りが好きな輩もおるが、ここまで乱雑な構造では探検には向かんかもなぁ」
「なーんか、ヘンな感じっすね。廃墟って言うよりは、ゴミ溜めたいな?」
 思い思いの感想を二人が口にしていると、やがてその廃墟に変化がおとずれる。
 二人の気配に反応したのか、微かな地鳴りが起こり、やがて何かの音がこちらへと向かってくるようだった。
「さぁて、本日の配信内容はいわゆるガチバトルじゃ。準備はよいかの?」
「うっす、体は温まってるっすよ」
 道中日陰ゼロだったっすからね。歴戦の配信者にそんな軽口を叩きながら、解体屋の少女は慣れ親しんだ道具を手に怪物のねぐらへと歩を進めるのだった。

 敵との遭遇時のことを、後の配信にて御形はこう語っている。
『いやあ、ミッション前のブリーフィングってあるじゃろ? 敵の大きさとか、どんな奴かとか教えてもらえるアレ。アレがまったく役に立たんってこーゆーことを言うんじゃなって。なにせ―――』

 敵は、廃墟そのものであったのだ。
 廃墟の奥側から聞こえる地鳴りに意識を取られていた二人へ、唐突に、間近にそびえていた壁が打ち付けてきたのである。
「は? ちょ……えっ?」
 小柄な身が幸いして間髪回避の間に合ったラムは、砂地へすっ飛ばされていく御形とうごめく壁の間で視線を何往復もさせる。
 ここから離れろ、そう直感が叫び跳躍すれば、今まで立っていた場所には歪んだ鉄骨が幾本も突き立っていたのだった。
 飛び退いたラムは、改めて眼前の廃墟に目をやる。
 バキバキと音を立てて立ち上がる、コンクリート壁、鉄骨、木柱。
 折れ、ひしゃげ、ねじくれて使い物にならないような廃材の数々が有機的に繋ぎ絡み合い、結合して、歪ながらも何かを形成していく。
「うわぁ……これが、こんな形が。アンタが“完璧な機体”と想像した姿なんすか……?」
 それは、おそらく竜になろうとしたモノだったのだろう。
 巨大にして鈍重な体躯は病魔に蝕まれたかの如く、地竜と例えるのも憚られるような無秩序な廃材の寄せ集めで形作られていた。
 かつて空を制するために広げただろう大きな翼には有刺鉄線やら木の根が複雑に絡み、その身を宙に向かわせることを許してはくれない。
「アタシ、まだこの仕事の経験も少ないんで事前にアンタの資料も見たんすよ。元の姿だったなら、きっと、カッコ良く空も飛んべたんすよね……」
 ラムは、解体屋の少女は、目に映るその姿に、解体道具を握る力を強める。
「今の姿が、望んだ自分じゃなかったなら、余計なもの取り除いて裸にひんむいてやるっす」
 バラすのは解体士の仕事っす。
 そう語る言葉は敵への手向けか、それとも自らの矜持か。
 それも僅か、余分な思いを振り払ったバラし屋の少女は、戦端を切らんと愛用の道具を構えるのであった。
「うむ、よいぞよいぞ。ゲストが奮う姿を演出するのもまた一興であろう」
「うひぃ、ゴギョーさんっ、いつの間に!」
 耳元で囁かれ、思わず叫ぶラム。いつの間にか復帰していた御形は、血濡れのままにドッキリ成功とカラカラ笑う。
「てか、血塗れっすけど大丈夫なんすか……?」
「応とも、妾は頑丈さが取り柄の蛇神にして邪の神よ。それに、バトル物にはピンチ演出が付き物じゃろう?」
「いや、まあ、そのプロ根性には脱帽っすけど……」
 段々と御形のキャラを把握していくラムはげんなりしてくる。他方、すこぶる元気な御形は目の前の敵について問うのであった。
「……して、ラムよ、この敵をどう打ち破る? 生きるガレ山のような、あの歪な機竜を」
「そうっすね、もともとは周囲の廃墟伝いに敵へ飛び込むつもりだったっすけど、今や廃墟全部が敵っすからね。んー……」
 どうしたものかと頭を悩ませるラムの様子に、御形は豪快に笑う。
「はっはっは、思考を煮詰め、合理的でスマートな闘い方を追い求めるのも一つのやり方ではあろうな。だが、ラムよ、お主はそれでよいのか? 己の持ち味は、果たして十分に発揮できるかのう?」
 天へ右手をかざし、指を鳴らす不遜な御形は、戦いを白星で飾るべく自らの異能を顕現させる。
 空間が歪み、捻じれ、圧倒的な質量群が宙を押し広げ顔を覗かせる。本来広い外宇宙を駆ける星の子供達が、ゆっくりと、その矛先を眼前の機竜へと向けるのであった。
「妾はゆくぞ。お主は、どうする?」
 隕石の一つに腰掛ける御形の言葉は、つまり、そういうつもりなのだろう。
「マヂっすか……いや、分かったっすよ、もうどうにもなれっす!」
 腹をくくったラムはパワーフードをひと齧り、身近な隕石にツールを引っ掻けると南無三と声を張り上げる。
「死んだら動画に化けて出てやるっすよ!」
「応、死んでも動画を見に来てくれる視聴者を殺すわけにはいかんよなぁ!」
 ぎゅんと、カタパルトで射出されるが如き急加速で隕石達が空へと飛び出していく。
 猟兵を乗せぬ大きめの隕石が露払いとばかりに歪な機竜の外殻へと勢い任せに衝突すれば、いかな大質量の体躯とて無事では済まない。
 分厚いコンクリート塊で構成されていた機竜の双翼には次々と亀裂が入り、大きいが故に避け得ぬ体にダメージが蓄積していくにつれ低いうめき声のような音がどこからか聞こえ始める。
「さぁて、核がどこかまるで分からんかったが、声がするとなれば見当違いではなかろう」
 流星群の猛攻に乗じて機竜のより中心へと飛び移っていた御形は声の発信源を探し当てていた。
「でも、これは……」
 何とか御形と共に辿り着いていたラムは、音の聞こえてくる部分をにらみつけ、歯噛みする。
 繁茂する草木の下に見え隠れするコンクリート塊、その僅かな隙間からは一度溶融し歪に形を変えた鋼材の数々が織りなす防御殻が見え隠れしていた。
 時間をかけられれば、或いは局所に大出力をぶつける手段があれば、乗り移ったここからの有効打もあったかもしれない。
 しかし、本格的に暴れ始めた機竜の背の上で出来ることも、留まれる時間もそれほど多くはなさそうであった。
「残念じゃが、妾達の活躍はこの辺で終いかのう?」
 ぐわんぐわん揺れ動く機竜の背に振り回されながら、御形が少しばかり残念そうに言う。
 機竜とて自らの弱点を看破されてそのままでいる訳もなく、背に生える鉄材群をメキメキと歪ませながら、今にも二人を振り払わんとその鎌首をもたげ始めるのだった。
「ほれ、ラム、引き際は肝心じゃぞ。早う脱出の準備を―――」
 敵の隙を見極めつつ、ちらりと横目で協力者へと視線を向けた御形は、口元を緩める。
 そこには、全力全集中のゾーンに入り込んだラムがいた。工具を構え、渾身の一撃を打ち込まんとする解体士の姿であった。
「……そうじゃったな、ゲストが奮う姿を演出する、これも配信者の務めじゃ」
 揺さぶられる視界の中、御形は己が左腕を振り被り、吼える。
「こうなれば、妾も好き勝手やらせてもらおうかの。さあ、理想を追い求めた憐れな機竜よ、邪神の左腕、存分に堪能するがよい!」
 膨れ上がる二つの覇気に、機竜は知らずの内に身震いする。言葉は通じずとも、自らへと向けられる力の大きさに戦慄するのだった。
「これが、」「これぞ、」
 振り下ろされる頑強な工具が、薙ぎ払う異形の左腕が、激戦の火ぶたを切る。
「アタシの全力全開っすッ!!」「妾の全力ぞ!!」
 木霊する声と、爆ぜる鋼。
 機竜を制する猟兵達の闘いはここから始まっていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
◎P

人を脅かす竜を退けるは騎士の務め
手抜かりは致しませんとも

脚部スラスター●推力移動伴った疾走とワイヤーアンカーの●ロープワーク利用した三次元移動で都市廃墟を移動
“完璧”な竜の突撃や肉弾掻い潜り
時に●怪力で掲げる大盾や振るう剣での武器受け盾受けで攻撃を防御相殺

己が理想や目標に至れぬ思考演算の負荷…苦しいですか?

ですが、その苦悶と苦闘が“己という存在”を形作るのだと
そう、私は考えます
故に…

マルチセンサーでの●情報収集で戦車巨獣の構造を探査
構造的弱点●見切り(砲門や口部?)

騎士足らんとする為に、貴方という存在を打ち砕きます

盾裏に●物を隠して充填していたUCでスナイパー射撃
核となるオブリビオンを貫き


桜雨・カイ

何を思うか…簡単に「分かる」と言えませんが、同じように(鉄ではなく)妖怪を喰らい続けた私のきょうだい(人形)を知っています

どんな形でさえその身に生まれた思いを否定したくはないですが
人を傷つけようとするのなら…私はあなたを止めます

【巫覡載霊の舞】発動
衝撃波で戦車巨獣の身体を削っていき、核をオブリビオンを表に出します
(同時にバランスを崩し倒れるのを狙う)

まともに当たると危険なので、【地形を利用】して【天狗靴】や【ダッシュ】で素早く躱していきます
相手が遠隔地の物を動かそうとするなら、こちらも【念糸】で邪魔をします
細かい動きはこちらも慣れてます

核が表に出たら【浄化】の力を乗せた衝撃波を核へ放ちます



●器に宿るモノ
 荒れ果てた大地を揺らす鈍い衝撃が空に木霊し、来たる次の参戦者達の聴覚を震わせる。
「戦いは、既に始まっているようですね」
「一番槍の誉れは逃しましたか。ならば、後詰めの利を存分に生かさせてもらいましょう」
 荒廃の世界を軽やかに駆けるヤドリガミが一人、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は見知った顔の同伴者に心強さを覚えながら目的地を目指していた。
 その隣にペースを合わせて並走する鉄騎、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)もまた、困難を予想される任務へ既知の相手を伴えることに好感を示す。
「カイ様、間もなく接敵ですので最後の方針調整を―――カイ様?」
 今回は単身ではない、故に冷静に事を為さねばと思考するトリテレイアはカイに向けて“丁寧に”言葉を発していく。
 しかし、受け取り手のカイはと言えば、何ともむず痒い顔をしているのだ。
「あの……カイ様? 何か、私の言葉に分かりにくい内容や、協調しがたい作戦がありましたでしょうか……猶予はあまりありませんが、説明足らずでしたら補足いたしますし、私の方で調整可能なご要望でしたら作戦の修正にも対応いたします。遠慮なさらずに何でもおっしゃって頂けるありがたいのです、カイ様のお役に立つためにも―――」
 懇切丁寧に共闘相手との意思疎通を図ろうとするトリテレイアの態度に、意を決した様子でカイが口を開く。
「あ、あの、トリテレイアさん! その……“様”を外して、呼んではもらえないでしょうか。出来る事なら、カイ、と」
「……、ええと、それは……何故?」
 元来、ドの付くほど生真面目なトリテレイアである。
 敬称の省略をこの場で提案されることに当惑した様子になるが、勿論、カイ自身も凡そそうなってしまうだろうなと予想は出来ていた。
 (一緒に戦う仲間なんです、だから、こう、もっと距離感を縮めたいといいますか、何といいますか……ともかく、様付けは私には合わないんです!)
 カイもまた、側で首をかしげる鉄騎と似た性分であるからして譲れない思いがあるのだった。
 伝えたい思いは多けれど、今は時間が惜しい。
 カイは仕方なしに、真面目な彼の演算思考が好みそうな理由付けで押していくことにした。
「えっとですね、トリテレイアさん。作戦中に“様”をつけて呼ぶと、その分コンマ何秒のロスだと思うんです。ですから―――」
「嗚呼、成程。理解しました」
 カツンと、トリテレイアが得心したと硬い手で鼓を打つ。
 そして、次に続いた言葉は、カイにはいたずらっ子の仕返しのように感じられるものであった。
「では、こうしましょうか。私は貴方をカイと呼びましょう。ですから、貴方も、私をトリテレイアと呼んでくださいますね?」
 崩れ得ぬはずの鉄騎の表情と、ころころと変わりゆくヤドリガミの表情が向き合う。
 やがて、お互いに小さく息をつくようにして、穏やかに返事を口にした。
「それは……、えぇ。お互い、気を遣い過ぎていたというわけですか。分かりました、作戦も先程の通りでお願いしますね、トリテレイア」
「よろしく頼みます、カイ」
 二人の間でいろんな面での合意形成がなされたその時、あらぬ方向へすっ飛んでいく二つの影が彼らの視界に映った。
 過ぎ去っていく絶叫と、高笑い。
 一瞬、負傷者救出を思考したトリテレイア。
 その大きな背へ、並走するカイはそっと手を添えると、どこか懐かしそうな顔をして戦場への急行を促すのだった。
「大丈夫ですよ、きっと。あの人と一緒なら、もう一人の方も」
 理由までは告げぬカイの言葉だったが、不思議と思いの籠った様子にトリテレイアは頷きを返し、自らが行くべき先へと目を向ける。
「分かりました。ではまず、人を脅かす竜を退ける騎士の務めからです」
 為すべきを為す、騎士と人形遣いは意思を一つに、前進するのであった。

 ガラクタや廃材で構成される歪な巨躯、およそ統一感の無いソレらはまさに寄せ集め。
 騎士が退治する竜と呼ぶには廃退な様であり、されど、その脅威はいまだ衰えを知らず大地に聳えていた。
 強大な敵の下に辿り着いた二人が抱いた念は、おそらく、憐憫と呼ばれるものだったのだろう。
 各々の内に湧いた念が似通ったモノであっても、その根底は異なっていたけれど。
 カイは個の限界を超え肥大し歪みある姿の痛ましさに、トリテレイアは自己成長する兵器が本来の目的を成すに成せなくなった矛盾の様相に、自分達の境遇を重ね、思い、或いは思考する。
(何を思うか……簡単に“分かる”とは言えませんが……)
 グリモア猟兵が投げがけていた言葉を反芻し、カイは自らの半身にも等しい存在を思う。
 妖怪を喰らい続けた“きょうだい”の存在は、目の前で今にも自壊してしまいそうな歪な竜とどこか重なり見える部分もある。
(己が理想や目標に至れぬ思考演算の負荷……苦しいですか?)
 騎士道と兵器理論、道理と合理の狭間で己の存在を問い続けるトリテレイアは眼前の敵へと心中で語りかける。
 彼は戦い続け、着実に己のアイデンティティを固めていくが故に、同じ命題を抱え得る相手を常に欲しているのかも知れない。
 けれど、なればこそ。
 二人は、自らと相容れることのない存在へと、確たる意思をもって言葉を口にする。
「どんな形でさえその身に生まれた思いを否定したくはないですが、人を傷つけようとするのなら……私はあなたを止めます。止めなければならないんです」
「その苦悶と苦闘が、“己という存在”を形作るのだと……そう、私は考えます。故に、私は、私に課す責を果たすだけです。人を脅かす竜を退けるという、騎士の務めを」
 機竜が二人の意思に応じたかは定かではない。咆哮をあげ、体躯を蠢かせる動作をもって迎え撃つだけだ。
「私が先行します。必ず隙を作ってみせますが、あまり長くは持ちませんのでご容赦を!」
「委細承知、手抜かりは致しませんとも!」
 猟兵達は言葉を交わし、機竜の放つ雷撃を躱して、弾かれた礫のように二手へと分かれた。
 カイは敢えて機竜の視界に身を晒すと、その身を神霊体へと変じていく。
 手にした薙刀を振るえば、その軌跡が不可視の刃となりて機竜の翼を削り取った。
 熱源もなく、電気的な数値にも現れぬ、透き通った命が織り成す物理に背く力。その衝撃力に曝された機竜の各種センサーは認知不能のエラーを計上し続ける。
 間髪入れずに機竜の口腔から雷撃が放たれるも、カイが薙ぐ薙刀の前に紫電は不自然に宙へと反れる。
 やたらめたらに暴れ始める機竜に苛立ちのようなものを感じ取って、トリテレイアは敵ながらその心中を察した。
「時に、私も魔力や霊力の類に手を焼かされるものです。それが味方であることが今は心強い。カイ、頂いた時間は必ず結果へと繋げてみせます」
 命の欠片を戦いの場に捧げ、踊るように舞うように翻弄するカイは一太刀を振るうたびに機竜の途方もない質量を徐々に削ぎ落していく。
 見た目の鮮やかさの裏で劇的な消耗がカイを蝕みつつあることを理解しているトリテレイアは己の成すべき役割に全機能を集中する。
 機竜の死角を意識しながら脚部スラスターによる立体起動、空を薙ぐ廃材の尾をワイヤーアンカーによるロープワークで無理繰りに掻い潜り、翼への張り付きを敢行した。
 巨大過ぎる機竜の脆弱箇所を見極めるべく、トリテレイアがマルチセンサーでエネルギー分布を測定すれば、特異点はその背に刻まれた大きな裂傷部のさらに奥であることが判明する。
「高エネルギー反応を感知、間違いなくコア部がここに。ですが……多重殻の鋼防壁とその奥の未知なる力場による防衛機構、これは攻勢解析も含め突破は困難か―――」
 現状を把握し、トリテレイアは高速演算による最適解の算出にとりかかろうとする。
 その一方で、並列思考が別の問題に警鐘を鳴らしていた。
(足りない。物理的な多重防壁の突破はともかく、その奥の未知の機構に対する手段が圧倒的に不足している。解析しようにも、カイ様の負担が―――)
 自身の無理は通せても、トリテレイアにとって誰かを犠牲にするやり方は到底認められない。
 或いは、己と道交わることなきあの者であれば。そんな思考が過ぎり、その僅かな逡巡が決定的な隙となった。
 ミシリ、鋼の装甲に異物が割り入る嫌な金属音。
 各種センサーを通して検出されるダメージに、まるで他人事のように呆けた様子のトリテレイアが視線を損傷部へ向ける。
 脚部スラスターを貫く廃材の棘は、刺さった傍からトリテレイアを自らに取り込もうと有機的な蠕動を始めていたのだった。
「これ、は―――」
 トリテレイアを構成する部品が、思考ロジックが、電気信号のひとつひとつが、瞬く間に塗り潰され侵食されていく。
 騎士が機竜へ存在の問いかけをしていたのに対し、機竜は騎士に完璧へ至る可能性を求め存在の同化を図ったのだ。
 もっとも、その行為に個としての機竜の意思が介在する余地はない。
 騎士の機能や構成素材が、オブリビオンの群体が一つとして存在する巨大戦車獣に理想の部品と認識されたというだけの事である。
 オセロの白が黒へとひっくり返っていくようなどうしようもない事態に、トリテレイアは、恐怖を感じることはなかった。
 まるで、そんな未来もあるのだろう、ある種の達観のような思考が演算領域に広がっていき、そして。
「騎士トリテレイア! 死ぬことは許しません!!」
 凛として澄み渡る声が枯れた地に響く。
 機竜がトリテレイアの同化に意識を向けるのと同じ時、カイは浄化の力を込めた念糸をトリテレイアに放ち対抗を試みたのだった。
 はじめこそ機竜の侵食を抑えられなかったカイだったが、あるタイミングを機に驚くべき速度でトリテレイアの制御権を取り戻していった。
 カイ自身、劇的な状況の変化に動揺するも、これを幸いとありったけの念を込めトリテレイアの救出に心血を注ぐ。
 鉄騎のアイカメラに、光が灯る。
「―――わ、たし、は……ッ!」
 駆動系制御の回復と共に大剣を握る左腕が豪と薙ぎ、自らの脚部スラスターごと強引に侵食部を離断する。
 間髪入れず、右腕に携えた盾裏から覗く電磁砲が唸りをあげ、過充電から射出された弾体が砲身を弾けさせながら機竜のコア目掛けて飛翔した。
 大気を劈く音よりも着弾は早く、速度の二乗に比例した質量弾が幾重にも重ね編まれた鋼装甲を食い破る。
 遅れ響く炸裂音と衝撃波が大気を押しやり、舞い上がる砂塵が双方の視界を少しの間くらませた。
 機竜は、倒れなかった。
 コアを守る物理装甲は貫かれ、機竜の心臓たる赤い核は猟兵の目前へと晒されているように見えた。
 されど、その先へ至る一手が猟兵二人には残されていない。
 トリテレイアは脚部損傷に加え、電磁砲への過供給により大幅な出力低下、制御系の無理な奪還によるバックラッシュによって継戦困難な状況である。
 未だ大きな負傷のないカイであっても内面の損耗は目に見えぬ故に無視出来ず、満身創痍のトリテレイアの身を守ることを考えればこれ以上の無茶は出来ない。
「トリテレイアさんっ、私がなんとか時間を稼ぎますから離脱の方策を―――」
 敬称の省略も忘れ声を張り上げるカイに、トリテレイアは。
「……名もなき機竜。あなたに触れ、あなたの思考の一部が私にも流れてきました。残念ながら、騎士として剣を取り、悪を討たんとする私の役目はここまでのようですが……」
 トリテレイアは確かに感じたのだ。
 与えられた命令をひたに成さんとする機竜の行動原理の中に、微かに芽吹いた必要不可欠とはかけ離れた思いの欠片を。
 戦車巨獣の核として多くのノイズに閉じ込められてしまったが故に、出口を求めてゆっくりと育ち始めた自我の発露を。
 己と同じく機械に宿り始めたソレを殻から解き放とうとした騎士の一手は寸でのところで届かなかった。
 それでも、物語は続いていく。
 願われるが故に、その先へ。
 すぃ、と。
 どこからともなく、優しい風に運ばれ真っ白い紙飛行機が飛んでくる。
 柔らかな機体が優しく当たり、自らへと溶けた。
 傷だらけの騎士ではあったが、自身の思いを汲んでくれるであろう誰かの到着を知り、心穏やかに後を託すのであった。
「私も常々、痛快な物語を望んでいるのです。きっと彼らが、歪められてしまった今のあなたという存在を打ち砕いてくれることでしょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
嘗て空を飛ぶ個体。飛べなくなった今も見せる攻撃的な姿勢。
元は戦闘機の類だったのでしょうか。
…彼に思いをはせた所で出来ることはただ一つ。骸の海に還すことだけ。

UC【百鬼夜行】使用
呼び出すのは土蜘蛛。電流対策には土。
ですが今回はそれだけでなく。

ご存じですか?土蜘蛛は皇室に従属しない、反政治的な各地の豪族やその一門を指す言葉。
討伐された彼らは怨霊として復活しないように五体をバラバラにされ封印されました。
…そうされて怨霊にならないはずもないのに。

フィールド・オブ・ナインが撃破されたあとも這いずり回るのは、戦場を求めているのでしょう?

皇族に従わず討伐された怨霊は一族に抗う人々のごとく。
戦闘機足らんとする貴方に手向けるはこれだけにあらず。
土蜘蛛は耐久力がありません。月代、ウカ、衝撃波で、みけさんは砲撃とレーザで援護を。

月代達が気を引いているうちに土蜘蛛達に土中に巣を作り、網を張らせる。
獲物がかかったら全員で全力で総攻撃を仕掛けなさい。

…これが最後まで戦闘機であろうとした貴方にできる私からの手向け。


ペイン・フィン


未完のまま、終わったモノ、か
しかもソレが、望む姿では無かった、と

ああ、そうか
貴方は、自分と、同じなのか

だから、ごめん
自分では、貴方を救うことは、出来ない
かつての自分のように、手を引いて立ち上がらせることは出来ない

でも、もしかしたら、いつか
タンポポの綿毛が、遠くで花咲くように
空行く燕が、暖かいところへと向かうように
いつか、どこかで、貴方の存在が
せめて、もう少し、貴方の望むようなモノへと、成れますように

コードを、発動
さあ、貴方は、どうなりたかった?
どんな風に、存在してみたかった?
貴方は、そう、どんな物語が、好み、かな?



●千の風に乗せて

 しろ、シロ、白。
 視界を埋め尽くさんとするソレらは、アポカリプスヘルの荒れ野では滅多に見られぬであろう雪のような澄み切った白。
「未完のまま、終わったモノ、か……しかもソレが、望む姿では無かった、と」
 渦巻く白の群れの中に一人だけ黒を纏う彼、ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)は目の前に在る戦うための生きた兵器に憂いの眼差しを向ける。
 今や損壊し、傷を負った機竜はもとより意思疎通の困難な相手である。
 それでも、彼は、思わずにはいられない。
「ああ、そうか……貴方は、自分と、同じなのか」
 守るための道具であったはずの自分が今の形を得てしまったように、この兵器もまた、運命に翻弄され望まぬしがらみに囚われていったのだ。
 幸いなることに、指潰しには支えとなる兄姉が出来た。彼らが在ったことで、指潰しは自らの意思を持って歩み出せた。
 機竜にとっての支えは、否、もう今からでは間に合わないのだろう。ペインには、その事実がただただ歯痒かった。
「だから、ごめん。自分では、貴方を救うことは、出来ない」
 かつての自分がそうであったように、手を引いて立ち上がらせることは、出来ない。
 無論、こんな感傷はヤドリガミとなった自分だからこそ抱けただけの思いなのかも知れない。
 道具として、目的を達成するためだけに血の通わぬロジックに沿う兵器が相手であるならば、こんな感情をぶつけるだけ無駄なことなのかも知れない。
 けれど、だ。
 痛みを齎す道具である自分が、痛みを終わらせる者になりたいと思ったあの時から。
「……自分は、人一倍、誰かの痛みを感じ取れている、はず。だから、この思いは、きっと、無意味じゃない」
『グ、ォロロロロォオオッ!!』
 自らの核たるコアをむき出しにした機竜が咆哮する。
 基幹部を損壊するも未だ脅威衰えぬ異様に、相対するペインは自らを取り巻く白の群れを操り、語りかけた。
「さあ、貴方は、どうなりたかった?」
 黒き主の声を届けんとするかのように、音も無く空を泳ぐ紙飛行機群が血の通わぬ鋼鉄の巨躯へと殺到するのであった。

「嘗て空を飛ぶ個体、飛べなくなった今も見せる攻撃的な姿勢……元は戦闘機の類だったのでしょうか」
 ペインの後方、機をずらして場に馳せ参じた吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は静かに思考する。
 今回の相手に対する感情移入の強いペインとは立ち位置のやや異なる彼女は、より戦局の趨勢に影響する役割を担う心づもりでいた。
「救えるモノがあるならばそれに越したことはないのですが……全てが万事丸く収まる事ばかりではありません。ペイン殿にはペイン殿の、私には私のやるべきことがあるだけです」
 敵機に思いをはせた所で、最後に出来ることはただ一つ、骸の海に還すことだけなのだから。
「そうとなれば……生と死の狭間に彷徨うものよ、我に呼応し集結せよ」
 呼びかけに霊力を込め、虚空に柏手一つ木霊させれば、黒き影が蠢き地より出でる。
 およそ文明崩壊後の終末世界には似つかわしくないおどろおどろしい異形達、それらは土蜘蛛と呼ばれる化生の群れであった。
「敵は雷竜の類のようですから、土の気を帯びるこの者達ならば戦果を期待出来るでしょう。それに……」
 狐珀は土蜘蛛の由来を思い、やや伏し目がちになる。
 土蜘蛛の起源の一説に、皇室に従属しない反政治的な各地の豪族やその一門を指す言葉であったとの説がある。
 中央政権に異端として討滅された彼らは怨霊にならぬようにと五体をバラバラにされ封印されたというが、結果としてそれらは裏目となり後世に呪いを連ねゆく存在となった。
「フィールド・オブ・ナインが撃破されたあとも戦場を求め、這いずり回る巨大戦車獣の姿は、まるで朝廷の討滅に抗う土蜘蛛の様のようではないですか。毒を以て毒を制す、ではありませんが、巫術呪術の道においてアーキタイプの類似は強い意味を持つものです」
 故に、狐珀はこの異形達を率いて機竜を討つ算段を立てる。
 似通った特性同士をぶつけることで噛み合い、生まれる勝算もある。
 相手との相性を考え立ち回ることが術師タイプの狐珀に求められている状況であった。
「……と、その前に。ペイン殿が戦線を維持しているうちに、土蜘蛛達の制御が乱れぬうちに、先の戦功者達には安全な退場を保障しなければなりませんね?」
 くるりと、狐珀の振り向く視線の先には、傷だらけの騎士と疲労困憊の人形遣い。
 人形遣いは見知った顔の到着に安心からかはにかみ、騎士は知らぬ間柄ではない相手に自らの状態を見られやや恥ずかしげに首を垂れる。
 かくして役者は入れ替わり、機竜討滅の物語は佳境へと向かうのであった。

 それは、戦闘と呼ぶにはあまりに静かな状況であった。
 空を埋め尽くす穢れ無い白の紙飛行機群が、地に聳える有象無象を飲み込んだ鈍色の機竜を次々と透過していく不思議な光景。
『貴方は、どう在りたかった?』
 紙飛行機が音も無く機竜をすり抜けるたび、兵器の思考回路へと投げかけられる問いかけがあった。
 巨大戦車獣として幾重にもオブリビオンが連なり単体を形成している機竜には混ざり合った従たるオブリビオンの残渣思念が思考防壁のように存在している。
 澱のように凝り溜まったそれらは鉄騎の叫びを、人形遣いの浄化の念をも阻害し、今なおペインの言葉を遮るのだ。
 一度の問いかけでは、敵対象からの微かな音はかき消されてしまう。
 重々の呼びかけでも、指潰しからの声は届くことはないのだろう。
 しかし。
『自分は、貴方の声を、聞きたい』
 百を超える思いやりは、少年の意図を頑なに絡み合った思念の壁に通せるかも知れない。
 千の風に乗るまっさらな物語の代弁者達は、やがて、似た境遇を持つ者同士の意思を接触させるに至る。
『グ……オ、ォォ……』
 機竜が唸る。それは敵意とはかけ離れた、まるで戸惑いのような声音でさえあった。
 明確な意思の発露を得たわけでもないペインだったが、その表情には満足が浮かぶ。
「……思えば。自分が自分として生まれた時も、そんな感じだったのかも、しれない」
 命が生まれる時、赤子は何もかもに理解が及ばず、それ故に戸惑い、泣くのだという。
 ただの機械にエラーはあれど、“なぜ?”と言う感情はない。
 ならば、機竜のこの様子を引き出せたことで、ヤドリガミとしての役目は少しは果たせたのかも知れない、そう思えるのだった。
「遅くなりました、ペイン殿……いや、むしろこのタイミングで丁度良かったのでしょうか」
「ありがとう、狐珀。自分のやりたいことは、多分、出来たんだと思う」
 ペインは多くを語らなかったものの、戦線へと辿り着いた狐珀にはその表情からおおよその状況は察することが出来た。
 動きの鈍くなった満身創痍の機竜を一瞥し、狐珀は一度だけペインへと問いかける。
「敵は、強大な兵器です。この場の私には彼を骸の海に還すことしか出来ません……手伝っていただけますか?」
「……うん。それが、グリモア猟兵の彼女から自分が請け負った仕事、だからね」
 静かに目を閉じ、今一度機竜を、敵を見つめなおしたペインは狐珀へと確かな言葉を返す。
「行こう。ここからは、猟兵の仕事だよ」

 ペインの切り替えと共に、機竜にも変化が現れる。
 先の穏やかになりつつあった雰囲気から一転、歪な機竜の各部位が、まるで独立した意思を持つかのように無秩序に蠢き始めたのだ。
 不意に長大な尾が薙がれ周囲を巻き込み、圧し潰していく。
 間髪入れず上空へと逃れていた二人は臨戦態勢を整え、戦いの終幕へと意識を研ぎ澄ましていった。
「どうあっても、戦いは避けられなかったようですね。では……力へ抗う果てに魔となった者達よ、その威を示せ」
 狐珀のかけ声をきっかけに、周囲の大地が不規則に盛り上がり、幾重もの黒く尖った触肢が現れ、硬い機竜の四肢へと殺到した。
 かつてある朝廷を苦しめた地方士族の反抗の武威が巨大な蜘蛛の異様へと形容された力は鋭く、岩や鋼を纏う機竜の身体に対してであってもその威力は無視出来るものではなかった。
 穿つ鉤爪が機竜の装甲を抉り、大きな顎が部位を繋ぐ配線群や植生を食い破っていく。
 そしてその数、優に五百を超える圧倒的な数的優位は機竜の巨躯をもってしても抵抗を困難とする要素となる。
 もっとも、統率を取る狐珀の表情に余裕があるわけでもない。
「土蜘蛛は強くとも脆いです。月代とウカは衝撃波で、みけさんは砲撃とレーザーで援護を、可能な限り戦力の損耗を抑えてください!」
 そう叫ぶ傍から、不自然に機竜の翼から伸ばされた鉄骨によって数体の土蜘蛛があえなく潰えていく。
 主の命を受けて仔白竜と式神、AIロボットが敵の攻撃の妨害、分散を図るも、規則性の読めない暴走じみた挙動には守りを強いられる場面も起こり始める。
「これは……機竜に取り込まれた別のオブリビオンの残滓が、一斉に暴れている……」
 狐珀とその仲間達を守りながら、数ある拷問具で多角的に継戦するペインは機竜を蝕む違和感の正体に気付く。
 今や土蜘蛛に解体されゆく機竜が、それを構成するかつて別のオブリビオンだった要素達が、最後の抵抗を試みているのだ。
 破れた翼は歪に歪み、尖り、長大な尾は荒々しく地を打ちのたうつ。
 凸凹な四肢は限界まで膨れ上がり崩壊に抗い続け、雷撃をまき散らす頭部は敵の接近を頑なに拒む。
 その中にあって、ただ一か所だけ。
 胴に収まった機竜の赤きコアだけは、静かな光を湛えたまま沈黙していた。
「ペイン殿、これ以上の戦力逐次投入はこちらの被害が大きくなるばかりです。そろそろ、“仕掛けます”」
「うん。これ以上の苦痛は、必要ないから。終わらせてあげよう」
 一瞬のアイコンタクトを済ませ、二人は攻防の役割をスイッチする。
 歪な骨枝を手に機竜の眼前へと躍り出たペインへ、抵抗激しい竜頭と異形翼の攻撃が殺到し、
「―――“葛檻”。竜さえ捕らう、蜘蛛の網です!」
 土中に隠していた、全数の三割ほどの土蜘蛛が一斉に機竜目掛け糸を吐きつける。
 強力な粘性と靭性を備えた包囲網は僅かな時間でこそあれ機竜の抵抗を完璧に封じ込めた。
 その僅かな時間が、しかし、戦いの趨勢を一気に傾けるに足りる契機を生み出す。
「本来空を舞えた戦闘機体だった貴方の最期を地に縫い付けてしまうのは不本意ではありますが……戦う物たる兵器に全力で挑む事が、私からできる手向けの形です」
 月代が、ウカが、みけさんが。衝撃波と砲撃を一点集中させ、もがく竜頭を撃ち落とす。
「……もしかしたら、いつか」
 ペインの呪いを吸って凶暴化した骨枝が振るわれ、機竜の肥大化した四肢と尾を貫き、割り裂く。
「タンポポの綿毛が、遠くで花咲くように。空行く燕が、暖かいところへ向かうように」
 土蜘蛛の糸に絡め取られた歪んだ翼はもはや羽ばたくことも出来ず、崩壊が近いのか少しずつ、ボロボロと、かつて取り込んだ異物を吐き出していく。
 それはまるで、死へ向かう者の禊のような、物にあるまじき浄化の過程のようで。
「いつか、いつか。どこかで、貴方の存在が」
 何もせずとも間もなく訪れるだろう兵器だったモノの最期を、ペインは自ら手掛けんと、骨枝の切っ先を機竜のコアへと向ける。
 煌煌と輝き続けるソレは、命の灯のようにも見えて。
 ほんの少しだけ躊躇ったことは、後のペインにとって、誰にも言えない秘密の一つとなるのだった。

 ―――、―――。

「……せめて、もう少し。今度は、貴方の望むようなモノへと、成れますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月18日


挿絵イラスト