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夜廻の群狼よ

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●危機を告げる吠え声
 アックス&ウィザーズにとある農村がある。
 荒野と畑に囲まれたその地には、草を喰む狼と共存する文化があるという。
 穏やかで大人しい狼達は決して人を傷つけず、村を守ってきた。
 また村人達も、そんな狼を愛し、尊敬してきた。

 だが、変化は急に訪れた。このところ夜になると狼達が狂ったように吠えるのだ。
 村の周りをうろつき周り、遠くの平原からは危機迫るような鳴き声が上がる。
 村人達が眠れぬほどの遠吠えと鳴き声。迷惑よりも、いつも穏やかな狼の変化に村人達は不安と心配をつのらせた。
 騒ぎの原因を調べてみようとすれば、狼達は行く手を遮るように立ち塞がる。その殺気立った様子は明らかに危険を報せていた。
 ならば、冒険者を雇おう。村からはそんな声が上がった。

「だが、それでは手遅れになる」
 グリモアを掲げたクック・ルウ(水音・f04137)は眉をひそめて話を続ける。

 恐ろしい化物が村に現れるのは今夜。
 村を守ろうとする狼達も、村人達も、もろごと襲われるだろう。
 そして、朝が来る頃には誰も助からない。

 そこで今夜一晩、狼達と寝ずの番をしてほしい。

「どうか、守ってくれないか。彼等の安穏たる日々と夜の眠りを」

 そうして一度頭を下げたクックだったが、頭を上げて転送の準備に取り掛かりながら急に咳払いをした。

「ん……ん。ところで……その狼達なのだがな。草食ということで、野菜や果物を非常に喜ぶらしい。パンなども好きかもしれぬ。あ、でも、犬科なのだし玉葱などは与えぬ方がよいかもしれないな。遊ぶなら、ボールやフリスビーを持っていくのも良いかもしれぬ」

 その様な事を言い添えるのだった。


鍵森
 鍵森と申します。
 今回はアックス&ウィザーズにて、狼達と共に村を守る依頼となります。

 第1章は、冒険。
 草食狼の群れとの交流。
 一休みできるように、寝床を用意したり寝かしつけたりしてあげてください。
 ケンカをするやんちゃな子は、ご飯を上げたり遊んだりしてあげると大人しくなるようです。
 第2章も、冒険。
 狼達の暮らす荒野でキャンプをすることになります。
 第3章で、ボス戦となります。
 望まれる方は狼達との共闘などもできます。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『眠れない獣たち』

POW   :    苛立ってケンカを始める獣たちの仲裁。

SPD   :    寝床を工夫して整えてやる。

WIZ   :    心の落ち着く歌や音楽で眠りに誘う。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 到着先の世界では、まだ日が明るい時間帯のようだった。
 突然の来訪にもかかわらず、村の危機に冒険者が訪れた。と、猟兵達は村人達から大いに歓迎される。

 そして案内されたのは、村から少し離れた場所にある荒野。
 あちこちに獣の姿が見える、どうやらあれが草食狼のようだ。

 現れた数十頭程度の群れ狼は、猟兵達の方へ静かな眼差しを向けた。
 そしておもむろに近づいてきたかと思えば、確認するように猟兵達の匂いを嗅いでくる。
 訪れた者達がどの様な対応をしたとしても、狼達はその内満足げに尻尾を振るだろう。

 どうやら味方だと解っているらしい。

 体の大きさが一回りほど小さな年若い狼達は、仔狼の無邪気さが残っているのか積極的に近づいてくる。
 人懐っこく撫でろとばかりに首筋を擦り付けてくる狼や、草の上に寝転がって腹まで見せている狼までいた。ごろんごろんするので長い毛に草が付いている。

 連夜の疲れからか、欠伸をしたり茂みに体を横たえている狼もいるが、うつらうつらとするばかりで眠れないようだ。
 けれど、猟兵達がただそこにいるだけでも、狼達は安堵を覚えるのだろう。傍へ近寄ろうとするものを拒む気配はない。

 ここへオブリビオンが現れるのは夜。
 それまではこのうららかな日差しの元、狼達とまどろむのも良いかも知れない。
伊美砂・アクアノート
にゃーん! 拙者はネコ派であるのだが、諸君らは実に可愛らしいのであるな! よろしい、ならばモフモフだ。一心不乱にモフって進ぜよう。 嫌がられない程度に、四つん這いになってオオカミさんと戯れる。猫人格(?)モードで、思考レベルや挙動は子供じみて無邪気に。 ・・・アタシは今、デンジャラスな女豹なのだにゃん。にゃふにゃふ…。 ぽかぽか陽気が眠気を誘うアフターヌーン。特別に毛づくろいをしてやろうでわないか。あーもー、ゴロゴロするなよぅ。草が毛に絡んじゃうだろー? ……卿らは、心優しく誇り高いのであるな。心配するな、このアタシが虎の如くに敵を討ち果たし、お昼寝ゴロゴロタイムを絶対に守るんだワン。



●にゃんにゃんワン

 にゃお。
 猫が鳴いた。それは伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)の内から現れた猫人格(?)から発せられたものだ。
 狼達は、きょとんと首を傾げて伊美砂を見る。
 猫? 今、猫の声がした? どこ? 猫どこ?
 ふすふす。鼻を鳴らしながら、狼は伊美砂の周りを歩き回って探し始める。
「ふふっ。猫をお探しか?」
 いたずらっぽく笑い、一番近くに居た狼の頭を伸ばした手で撫でる。
 にゃーん! 伊美砂の口から再び、猫が鳴いた。
 狼達は驚きに目を丸くして、尻尾を大きく揺らし。
 目の表情や動きで、猫居た! 猫居たよ! と伊美砂に訴えてくる。
「良い反応だ。拙者はネコ派であるのだが、諸君らは実に可愛らしいのであるな!」
 にゃふふ。屈託のない笑みを浮かべて、わしゃわしゃと両手ではさむように狼の毛を掻き撫でた。
 猫とは違うが、サイズの大きさや手が沈むような毛の長さには、人を夢中にさせる魅力がある。猫に踏み踏みされるような心地だろうか、狼の顔も気持ちよさそうに緩んでいる。

 愛でる内いよいよと、子供のような無邪気さが表へと現れたのか。
 猫人格(?)となった伊美砂は、地面に伏せて手足をついた。猫は当然四足歩行であるから、四つん這いになることは至極当然のこと。

 にゃうにゃう。遊ぼう。

 お誘いに、狼達がじゃれついてくる。
 顔を覗き込んできたり、伸し掛かって捕まえようとする狼達。
 伊美砂はそれをするりと避けたり軽い猫パンチで応酬したりする。
 その優美かつデンジャラスな仕草は、もはや女豹の域に達していると言っても過言ではなかった。今の彼女は人の姿をした大きな猫(?)なのだ。きっと。

 豪快で大胆に獣は遊ぶ。そして遊び疲れた後はゆっくり眠るのも獣の習性といえよう。
 ぐるぐるぐる。伊美砂の声には微かに猫が喉を鳴らすような音が交じり。
 狼達も瞳をシパシパ眠たげに瞬いている。
「眠気を誘う陽気だな。此方へおいで、あの木の下で休もう」

 暖かな木漏れ日の降り注ぐ柔らかい草の上に腰を下ろすと、狼達もその周りを囲むようにゴロリと寝そべった。
 余程くつろいでいるのか、転がるものもいる。
「あーもー、ゴロゴロするなよぅ。草が毛に絡んじゃうだろー?」
 仕方がないなあ、なんて微笑みながら、その手で狼の毛を梳いてやると。
 のそり、身体をくっつけるように寄せてくる。
 狼達はまだ伊美砂を身体の大きな猫だと思いこんでいるかもしれない。

「あったかいな」
 太陽と、生き物の温もりが肌を通して伝わってくる。
「気になるか。そうか、そうだろうな」
 狼の瞳が遠くを見つめている、それは村がある方角だ。
 遊んでいる時も、こうしてくつろいでいる時でさえ。
 時折、狼達の目が別の方向を向く時があることに伊美砂は気づいていた。

 ――……卿らは、心優しく誇り高いのであるな。

「心配するな」
 狼へ語りかける声は、穏やかに。しかし力強い響きを持つ。
「このアタシが虎の如くに敵を討ち果たし、お昼寝ゴロゴロタイムを絶対に守るんだワン」
 人であり猫であり豹であり虎でもあり、そして最後に犬がでた。
 犬? 犬も居るの? 探そうと体を起こした狼を撫でつけて、伊美砂は小さく笑った。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒羽・鴉
【黒羽】【POW】
狼と共存出来るなんて良い村ですねぇ。
狼と触れ合える機会なんてなかなかないですからワクワクしちゃいますね。
あ、ちゃんとお仕事は真面目にしますよ?

持っていく野菜や果物はえーと…
林檎にバナナ、カボチャやサツマイモやブロッコリーの野菜は茹でて食べ易い大きさに切って持っていきます。

苛立っている狼の前でわざと押すと音の鳴るボールを取り出して音を聞かせる。
相手が興味を見せたタイミングで投げる。くわえて戻ってきたら投げるをひたすら繰り返す。
返してくれなかったら追いかけっこだー。
皆で遊んだらおやつタイムですね。
一緒に果物や野菜を食べましょう!

やー、もう狼と遊べて撫で放題とか楽しすぎる…っ。



●狼達はおやつが好き

 青年は、鴉マスクの奥下で笑みを綻ばせた。
 この辺りでは、これが日常の風景なのだろうか。
「良い村ですねぇ」
 黒羽・鴉(両面宿儺・f09138)は、感嘆するように周りを見回す。
 触れるほど近くに狼達がやって来て、挨拶とばかりにフサフサの体を擦り寄せる。
 無邪気な狼の群れの中にいる、それはあまりない経験だった。
 挨拶を返すように撫で返して物珍しげに歩き出した黒羽の後ろを、狼達もついてくる。

 ふいに濡れた鼻先が、掌を突つく。
 立ち止まれば、おすわりして期待するような眼差しで見つめてくる狼達。
「……おや、気づかれました?」
 思わず、苦笑してしまう。

 黒羽は狼達にお土産を用意していた。
 果物はリンゴにバナナ。野菜はカボチャ、サツマイモ、ブロッコリー。犬が食べても大丈夫な物を選んで。
 大きな果物は一口サイズに切り分けて、生のままでは食べにくい野菜類は食べやすいように茹でてある。
 鋭い嗅覚を持つ狼がそれに気付かない筈もなかったのだろう。

「おやつは遊んでからと思っていたのですが、いま食べたいですか?」
 欲しい! と言わんばかりに狼は片方の前足を上げて、黒羽の足をタシタシする。
 素直過ぎる催促に、黒羽の心は揺れて、傾いた。
「じゃあちょっとだけ……いま出しますからね、慌てちゃだめですよ」
 荷物を取り出す黒羽の周りで、狼達は跳ねたり飛んだり喜びを体一杯に表現していた。
 ガウガウ。わうわう。にぎやかだ。
「野菜や果物を色々用意しましたからね。どれがいいですか?」
 尋ねても返事はないのだが、それでもこちらの言葉を聞いているような感じがある。
 なんとなく狼の反応を見ながら、与えるおやつを選んで手の上に乗せ、鼻先に手を差し出した。
 一匹ずつ、順番におやつを食べる姿はなんとも微笑ましい。
「おいしい? それは良かった」
 狼達の口を開けて瞳を細めた顔はまるで笑っているようで、尻尾はちぎれんばかりの勢いで振れている。
 しかし、あまりにも美味しかったのか、まだ食べている途中の狼に、別の狼が近寄ってお裾分けをねだりはじめた。
 ねだられた方の狼は、低く唸り声を上げた。駄目!あげない!というように。
 二匹の間に、喧嘩が起こりそうな気配が漂う。

 その時、黒羽の手がすばやく動いた。
 ぷぴい! ぷぴい!
 笛の音にも似た音が短く鳴り響く。
「喧嘩はだめですよ。ほら、音のなるボール。これで遊びましょう」
 黒羽は再び犬用のゴムボールを握って、音を鳴らした。
 狼達の視線はゴムボールに釘付けだ。
 喧嘩のことなんてもう忘れてしまっただろう。
 そんなものよりこの見たことのない不思議な道具が気になって仕方がない。
「そーれっ、と」
 ボールが投げられ、狼達は駆け出していく。
 一応はたくましい野生の狼が、尻尾を振りながらボールを追って駆け回る。
 それはちょっとした光景だった。
 黒羽が待っていると、一番足が早かった狼が、ボールを咥えて戻ってくる。
 それではもう一度ボールを投げて遊ぼうと、考えていたのだが。
「返してくれますか? うーん、いやかー」
 差し出した掌に、一度は顎を乗せる狼。けれど、ボールは咥えたまま。
 遊びたい。でもボール返したくない。どうしよう。遊びたい。
 そんな葛藤をしているのが伝わってくるようだ。
 ぷぴぷぴ。とボールも小さく音を立てる。

「仕方がないですねぇ。ボールを返してくれないなら追いかけっこだ」
 ぽすぽす、と軽く狼の頭に触れて合図する。
 狼は瞳を輝かせると、くるりと向きを変えて走り出した。
 けれどその速さは先程より緩やかで。
 明らかに黒羽が追いつくのを待っていた。

 ボールを咥えた狼を黒羽が追いかける。
 黒羽と狼達は、しばらくボールを使った鬼ごっこを楽しむのだった。

 ――やー、もう狼と遊べて撫で放題とか楽しすぎる……っ。
 ――もちろん、ちゃんとお仕事は真面目にしますよ?

 静かな鴉のマスクの下で、黒羽は声に出さずに呟いた。
 遊びが終わったら、またおやつをあげよう。
 なにしろ用意は沢山してあるから。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゼグブレイド・ウェイバー
【POW判定】
ケンカをしている狼達を見つけて
「こらこら、ケンカをしちゃだめですよ!…そうだ、果物を持ってるのでこれを食べて落ち着いてください」
といって持ってきたりんごや桃、イチゴなどを与えてなでなでします。
「そうだ、こういうものもあるんです!一緒に遊びましょう!」
懐からボールを取り出して狼達と遊ぼうと思います
遊んだ後は狼達をブラッシングしたり狼達と一緒にお昼寝して過ごしたいです
アドリブ歓迎です


レオナルド・ウラニクス
POW

草食の狼か…可愛いな。
顔が怖いせいか普段あまり動物に懐かれないんだが
こんなに寄って来てくれるなんて嬉しいな。

コラコラ喧嘩はだめだそ。
一緒に遊んで仲直りしような!
ほーらボール取ってこーい!!!あはははは!
楽しいな〜!こうやって群で遊ぶのも良いな!
なんだか狼になった気分だ!

ゼエゼエ
流石に甲冑つけたまま走り回るのはしんどいな……(顔は満足げ)
一緒にりんごでも食べようか。

(絡みアドリブ歓迎です)


緋翠・華乃音
狼か……ああ、懐かしいな。
俺がまだ狙撃手として未熟だった頃、何度か狩りに連れて行ったあの狼は元気にしているだろうか。

さて、彼らにブラッシングでもしてあげようか。
動物会話で心を通わせられないか試しながら、一匹ずつ丁寧にブラシを掛けていく。
ブラッシングの後は共に昼寝でも。

【アドリブ等歓迎】



●甘いの好き!
 がるがる、ぐるぐる。
 まるで笑うような唸り声、猟兵の姿をみて駆け寄ってくる狼。
 その姿は待っていた人を出迎えるような喜びに満ちている。
 けれど、少々はしゃぎすぎたようだ。

「あ」ゼグブレイド・ウェイバー(見習い騎士・f03572)は、小さく声を上げた。
 走っていた狼が別の狼にぶつかって、仕返しに噛みつかれてしまっている。
「叱られちゃいましたか……ん、あれ、反撃しちゃいましたね」
 これはまずい。
 慌ててゼグブレイドが駆け寄っていくと、二匹の狼は取っ組み合いをはじめていた。
 お互い地面に寝転んで、首筋に齧りつき、後ろ足で蹴りあっている。
「こらこら、ケンカをしちゃだめですよ!」
 ゼグブレイドの声に二匹は視線を向ける。
 だってこいつが悪いんだよ! と伝えたげに、不満げに二匹は唸り。
 歩調を緩めて、ゆっくり近づきながら、ゼグブレイドはなだめるように声を掛けた。
「ぶつかられてびっくりしましたよね。そっちの子は噛まれて痛かったのかな」
 穏やかな声に心を落ち着つかせて、ひとまず相手を攻撃するのを止めた二匹。
 けれどまだ不穏な気配が残る。
「そうだ、果物を持っているのでこれを食べて落ち着いてください」
 そう言って、ゼグブレイドが取り出してみせたのは、リンゴ、桃、イチゴといった果物だ。
 汁気たっぷりの瑞々しい果実は、とても美味しそうで。
 ふわりと香る甘い匂いに、狼は即座に反応を示した。
 二匹はすばやく身を起こして、ゼグブレイドの前に飛んでいく。
「おいしいですか? ふふふ、喜んでくれて嬉しいです!」
 すっかり喧嘩のことなんて忘れてしまった二匹の狼は、仲良く果物を食べ始めた。
 余程美味しかったのだろう、食後にはぺろぺろと、自分の口の周りを舐めて余韻を味わっている。
「そうだ、こういう物もあるんです! 一緒に遊びましょう!」
 顔を輝かせた狼達は、元気な吠え声で返事をする。
「さあ、遠くまで投げますからね!」
 微笑むゼグブレイドが次に取り出したのは狼と遊ぶために用意したボール。

 大きく放射線を描いて飛んでいくボールを二匹の元気な狼が追いかけていった。


●一緒に遊ぼう!
 レオナルド・ウラニクス(人狼の黒騎士・f13660)は狼に周りを囲まれていた。
 もはや、どちらを向いても狼が居る状態だ。
「これが草食の狼か……可愛いな」
 集まった狼達は、次から次へと撫で撫でを要求してくる。
 ふだんは動物にあまり懐かれることがないというレオナルドだったが、狼達には彼が喜んでいるが解るのか甘え方にも遠慮がないようだ。

 レオナルドが狼の頬を両手ではさんで軽くもみもみしたり、頭の上を撫でたり、耳の後ろを掻いてやれば。
 狼達は嬉しそうに、彼の鎧に包まれた腕を甘噛みしたり、尻尾を振りながら飛び跳ねたり、足元で寝そべったり。
 心を許した様子の狼達は、その内レオナルドの周りで遊びはじめた。
 駆け回り、追いかけっこを始める。
 最初はそれも和やかなものだったが、一匹が寝そべる狼を起こそうとしたのがいけなかった。気持ちよく休んでいたところにちょっかいを出されて、狼は不機嫌な唸り声を上げる。
 それでも遊びたいのか、興奮気味にやんちゃな狼は後ろ足で飛んで立ち上がり。

「コラコラ喧嘩はだめだぞ」
 思わず、レオナルドは立ち上がった狼を後ろから抱きかかえた。
 狼は嫌がるでもなく、されるがままだ。むしろ構ってもらえて嬉しそうでもある。
「ほら、ボールを持ってきたからそれで遊ぼうな」
 元気が有り余っているのなら、遊んでやるのが一番だろう。
 抱えていた狼を放して、レオナルドは取り出したボールを一度地面の上で跳ねさせる。
 周りにいた狼達や、寝転んでいた狼もむっくり起き上がって、好奇心に満ちた眼差しで見つめた。
「一緒に遊んで仲直りしような! ほーらボール取ってこーい!!!」
 目一杯力を込めて、投げる。
 ボールを狼達が一斉に追い、けれど途中で振り返った。
 立ち止まっているレオナルドを見ながら、オン、オン、と鳴く声は。
 まるで、こちらへおいで。と呼びかけているようで。

 レオナルドは走り出していた。
 その足は、すぐに狼達へと追いついて。

 青い空が広がる荒野を、狼達と共に駆け抜ける。
 なんだか自分が狼になった気分だ。
「あはははは! 楽しいな~! こうやって群で遊ぶのも良いな!」
 清々しい風を浴びて、レオナルドは笑った。


●伝える。
 狼の群れを見て、緋翠・華乃音(Lost prelude.・f03169)は懐かしいものを感じていた。
 それはまだ狙撃手として未熟だった頃の思い出。
 ここではない別の場所で出会った狼の姿が、目の前の風景によって脳裏を過る。
 ……――何度か狩りに連れて行ったあの狼は元気にしているだろうか。

 手の中にふさりとした感触が伝わる。
 一匹の狼が、すり寄ってきたのだ。
 慣れたようにその狼を撫でてやり、華乃音は静かに微笑んだ。

「おいで、少し梳いてやろう」
 その一匹を伴って、華乃音は柔らかい草の生えた岩陰へと腰を下ろし。
 持っていたブラシを使って、狼の毛繕いをはじめた。
「気持ちいいか?」
 返事をするように、尻尾をぱったぱったさせて狼は大人しく身を任せていた。
 背中から毛並みに沿ってブラシを掛けていきながら、華乃音は狼に話しかける。
「お前は大人しいな」
「あそこで遊んでいるのは、お前の子かな」
「毛の色が似ている」
 言葉の切れ間に、狼は尻尾を揺らして地面を叩いた。
 まるで相槌のように。
 華乃音も頷いて、雑談を続けるように言葉を紡いだ。
「この村に危機が迫っているんだよな」
「なぜこの村が狙われているのか」
「お前達は知っているか?」

 狼は考え込むように、ため息を吐いて。
 地面に生えた草を噛んでみせた。


●休憩。
 草を噛んだ狼の真意を華乃音が考えているところへ。
 狼達とボール遊びをしていたゼグブレイドとレオナルドが、休息をしようとやって来る。
「ブラッシングですか? 狼、気持ちよさそうですね」
 ゼグブレイドは用意していたブラシを取り出すと、自分も一緒に遊んでいた二匹の毛繕いをしようと岩陰に座った。
 二匹の狼は、ゼグブレイドの足に頭を乗せて気持ちよさそうにブラシを掛けてもらう。
「ゼイ、ハア……。走り回ったんで、しんどい。休憩」
 鎧を着たまま狼達と駆け回ったレオナルドは肩で息をしているような状態だったが、その顔は明るい笑みが浮かんでいた。
 一緒についてきた狼達も、たくさん遊んでもらえて大満足しているようだ。
「ん、お前もブラシしてほしいのか」
 華乃音のところに別の狼がブラッシングを強請りにくると、草を噛んでみせた狼は立ち上がり静かに立ち去っていった。
 伝えるべきことはもう伝えたということなのかも知れない。

「りんご食べるか? ああ、ああ、わかったから落ち着け!」
 休憩のおやつにとりんごを取り出したレオナルドは、狼達に群がられている。
「この子達、果物好きみたいですね。僕もさっき同じ様な感じになりましたよ」
「本当に草食なんだな」

 嬉しそうにりんごを食べている狼の姿を見ながら。
 華乃音の頭の中では、思考が回転する。
 草を噛む。食べる。

「相手は食料が目当てって事か?」
 問うように、ひっそりと、呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『荒野のキャンプ』

POW   :    寝ずの番で警戒する

SPD   :    キャンプ技術や美味な料理で環境を整える

WIZ   :    キャンプ場所を探す、敵を誘う細工をする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

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※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 夕闇が迫る頃。
 猟兵達の野営地に村人達からの、差し入れが届いた。

「こんなものしか用意できませんが、どうぞお受取り下さい」
 心ばかりの礼ということなのだろう。
 作りたてらしく、まだ湯立つ温かいスープやパイが荷車から運ばれてくる。
 荷車には、他にも野営に必要な物が積んであるようだ。

「今年は特に美味しい野菜が採れましたので、沢山召し上がって下さい」

 料理の横には、調理前の野菜を持ったカゴも並んでいた。
 狼達が瞳を輝かせているところを見ると、彼等の分も含まれているのだろう。
 カゴに載せられた葉菜や根菜は、見るからに新鮮で瑞々しい。
 じゃが芋やキャベツといった野菜もあれば、この世界に暮らす者以外には馴染みのない野菜も並んでいる。

「狼さまがすっかり心を許しておられますね」
「優しいお顔になっていて、ホッとしたねえ。きっと久しぶりにお昼寝なさったのだよ」
「たくさん遊んでもらったと教えてもらいましたよ。楽しい玩具もあったって」
 荷物を運ぶついでに様子を見に来たらしい村人達の声も聞こえてくる。
 どれもこの地に住む者達がどの様な絆を育んできたか、伝わるような声音だろう。

「冒険者さまも、狼さまも、どうかご無事で」
 最後に祈りを残して家路につく村人達を見送って。

 荒野の一夜、狼達と共に。
 地の果てから来る影を見張るのも。
 星空の下で夕食を摂るのも良いだろう。
 しばし休息をとるのも、大事なことだ。
黒羽・鴉
【黒羽】【WIZ】
村人達の心尽くし有り難く頂きます。
人前では素顔を晒さないので夕食を摂る時は他の人に気づかれないように少し離れて、口元だけマスクをずらして食事。

但し狼達に見られてしまった時のみ苦笑しつつ、そっと唇に人差し指を当てて

「内緒ですよ?」

手早く食事を済ませたら仕掛けを試みてみましょうか。
村人が持ってきてくれた葉菜の中に香草があれば特に香りの強いものを選んで茹で、香草は千切って布袋に入れてキャンプ地の風下に何ヵ所か配置。
茹でた残り汁も布袋の回りに撒いておく。
後は辺りを警戒しながら待つばかり。

さてさて誘われてくれますかねぇ。
(狼達に向かって)お前達はどう思う?


【アドリブ絡みOKです】


伊美砂・アクアノート
【SPD】…調理は任せてもらいましょうか。これでも、酒場の店長よ? 【オルタナティブ・ダブル】【世界知識5、第六感5】分身し、夕食の準備を。…見慣れない野菜や、聞いたコトしかない食材もあるけれど…。ま、頑張ればそれなりに食べられるでしょう、たぶん。 せっかくだし、屋外炊飯ぽくしたいわね。根菜は半月に切って串に刺し、バーベキュー風に。(狼用のは塩を振らない) キャベツとジャガイモは、切って鍋に放り込んで、焚火のトロ火で素材の水分を活かした蒸し煮に。・・・うーん、葉物は新鮮だし、そのままサラダでいいかなぁ…。判らない食材は齧ってみて、食べられそうな調理法を模索する。・・・狼には、野菜を与えて撫でる



●一人で二人の調理
「これなら、ここにいる人数分の食事には足りそうね」
 伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)は届いた野菜を眺めて、どう料理しようかと考えていた。
「ふむ。……調理は任せてもらいましょうか」
「おや、伊美砂さんは料理が得意なのですか?」
「任せなさい。これでも、酒場の店長よ?」
「それは夕飯が楽しみですね」
 愛想よく話しかけた黒羽・鴉(両面宿儺・f09138)の言葉に、伊美砂は自信に満ちた笑みを浮かべてうなずく。
 見慣れない野菜もあるが、食用であることは確かなのだ。
 どうせなら新しい料理に挑戦し、美味しく味わうのも楽しい。
 伊美砂にはそれだけの知識と経験があった。

「でも一人だと大変ですよね、なにか手伝いましょうか」
「ありがとう。でも大丈夫よ、私は一人じゃないから」

 その時、黒羽はその声が一つではないことに気がついた。
 いつのまにか、伊美砂の隣にもう一人の伊美砂が現れていたのだ。
 それが伊美砂の持つ力の内の一つによるもの。
「なるほど」と黒羽は頷いた。
 それならば料理の手伝いよりも、自分ができる事をしようと野菜の中から必要な物を手に入れる。

 まったくの同一人物たる二人の伊美砂は、息の合った動きで調理を始めた。
 未知なる食材は、皮を剥いて、香りを嗅いで、一欠片齧って味を確かめる。
「せっかくだし、屋外炊飯っぽくしたいわね」
「こっちの根菜は、バーベキュー風に」
「キャベツとジャガイモは蒸し煮がいいわね」
「狼の分は味付け無しで、用意してあげましょう」
 同じ声が二つ。
 直感的に浮かんだアィディアを言い交わしていく。
 その間も手は休み無く動いて、鮮やかな手並みで作業を続ける。

 周りに石を置いた焚き火の上に網を敷いて竈にすると、その上に蓋をした鍋を置いてじっくりと小さなトロ火で蒸し煮に。
 もう一つの火の上には網焼きが出来るように用意をして、半月に切った野菜を並べて炙る。火が通ると次第に柔らかくなり、香ばしい匂いが漂った。
「葉物はサラダかしら、この花も食べられそうね」
「果物も散らして彩りを添えましょう」
 緑が鮮やかなサラダに、黄色い花びらを散らし薄切りのイチゴを和えて。
 春色のサラダは見た目にも華やかで美味しそうだ。

「うん。食べ頃かしらね」
 オン! 狼が答えてそわそわと尻尾を振った。
 二人の伊美砂が狼を撫でて、微笑んだ。
「あなた達の分もあるからね」
「さあ、召し上がれ」
 野菜の味を堪能できるようにと作られたご馳走が並ぶ。
 出来たての野菜料理を頂いて、狼達も英気を養うのだった。


●誘う匂いは甘美なる
「ああ、これは美味しそうだ」
「たくさん食べてちょうだいね」
「ええ、腹ごしらえをして戦いに備えるとしましょう」
 伊美砂は手早く料理を盛り付けていく。
 礼を言ってから、黒羽は蒸し煮で使った鍋を指さした。
「それから後で、鍋にある残り汁をもらっても良いですか」
「いいわよ。好きに使って頂戴」

 黒羽は伊美砂から料理を乗せた皿を受け取り、人気のない場所へと向かった。
 狼達がついてくる。先程ボール遊びをしていた狼のようだ。
 ついてくるのを、止めさせようかとも思ったが、結局そのまま付いてこさせてしまった。
 黒い鴉のマスクを、人前で外す訳にはいかない。
 その下にある素顔を晒さないためにも、黒羽は一人で食事を摂る必要があった。
 人目を遮る岩陰に、腰を下ろす。
 狼達も周りに寝そべった。くつろいでいるようだ。
「いただきます」
 顔を覆うマスクの口元だけをずらし、料理を口にした。
 村人達と料理を作った仲間の心尽くしを有り難く頂く。

 視線を感じ、そっと顔を背けようとした黒羽は、それが狼の目だと気がついた。
 傍らにいた狼の静かな眼差しが黒羽の顔を見ながら、不思議そうに瞬く。
「内緒ですよ?」
 顕となった唇に人差し指を当てて、苦笑交じりに狼へささやく。
 夜気が迫る。荒野の風は冷たく、黒羽の肌を撫ぜた。

 味わいながらも、やはり一瞬でも素顔を晒すことへの抵抗からか、食事は手早いものとなる。それに、黒羽にはやる事もあった。


 村人達が用意してくれた野菜の中から、香草の類を手に入れた黒羽は、それを茹でて匂いを強めた物を用意していた。
 大きな鍋には香草の茹で汁と蒸し煮にした野菜の残り汁を混ぜたもの。

 それを持って風下へ向かう。

 ちぎった香草を詰めた布袋をいくつか、野営地の付近へ仕込む。
 そして、野菜の匂いをたっぷりさせた茹で汁を撒いておいた。
 一嗅ぎしただけでも、食欲をそそる匂いだろう。

 ――さてさて、誘われてくれますかねぇ。
「お前達はどう思う?」

 狼達は低い唸り声を上げる。
 夜闇に包まれた荒野に、黒羽は八咫烏を飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゼグブレイド・ウェイバー
【POW判定】
「僕はあまりキャンプの知識などがないので…見張りをすることぐらいしか役に立つことができなさそうです…なので見張りを頑張らせてもらいます!」
暗いと思うので松明を片手にもって剣を腰に携えキャンプ付近を警戒しています、できるなら昼間に仲良くなった狼達と見張りをしたいです。
「大丈夫だよ、何かあったら僕達が守ってあげるからね」
と狼達にいいながらりんごを取り出して狼達にあげつつ自分もりんごを齧ってます。
もし敵影を見つけたら狼達を先に避難させつつキャンプにいる人たちに敵が来たことを大きな声で知らせつつ剣を構えて戦闘態勢をとろうと思います

アドリブ歓迎です



●心優しき騎士
 ゼグブレイド・ウェイバー(見習い騎士・f03572)は松明を灯して、辺りの見回りをしていた。
 その側には、昼間共に遊んだ狼達が付き添っている。
「何が起こっても仲間にすぐ知らせられるように、一緒に見張ろう」
 松明の火に照らされた荒野を眺め、耳を澄まして周りの音にも警戒を払う。
 狼達の頭を撫でてやりながら、ゼグブレイドは呟いた。
「僕はあまりキャンプの知識がないんだけど。こうしていると、夜の荒野は静かなんですね」
 野営地には仲間たちの気配もあるが、少し離れてしまうとそれが随分遠くにあるように感じる。
 夜空には満天の星星が煌き、荒野の岩や木は黒い輪郭を残して浮かび上がる。
 温かな日差しの下で見た景色とは、別の場所のようだった。

 夜が深まる毎に、狼達の纏う気配にも変化が現れる。
 戦いの予感に警戒心を研ぎ澄ませるその狼達の姿もまた、無邪気だった昼間とはまた違っていた。
 迫る驚異に立ち向かう為の覚悟だろうか。
 死すら覚悟しているのかも知れない。と感じさせるような張り詰めた気迫さえある。
「大丈夫だよ、何かあったら僕達が守ってあげるからね」
 ゼグブレイドは狼達に優しく声を掛けた。
 そのために、彼は此処へ来たのだ。
 この地に暮らす者を守り、やがてくる悲劇を退けるために。
「りんご、食べるかい」
 差し出したりんごを狼は少し匂いを嗅いでから食べ始める。
 ゼグブレイドもりんごを齧った。甘酸っぱい味が口の中に広がる。

 勇敢に戦う意志を見せる狼達だったが、ゼグブレイドはこの獣たちを戦いに巻き込むことは避けたいと、思っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

レオナルド・ウラニクス
POW
狼可愛いな。ずっと一緒にいたくなってしまう。
荒野で狼と一夜。化け物が出なければ最高に楽しい時間なんだがな。

さて、狼たちに癒され気力も体力も回復したことだし
俺が一晩中見張っていよう。

何か怪しい気配を感じたら【影妖狼】のユーベルコードを使って追跡するのも可能だ。

もう少し狼たちと遊びたい気持ちもあるが……
村人と狼のためにも頑張ろう。眠くなったらコーヒーでも飲めば良い。

(絡みアドリブ歓迎です)



●夜更けの一杯
 レオナルド・ウラニクス(人狼の黒騎士・f13660)もまた、夜の見張りをする一人だった。
 共に過ごす内、レオナルドと狼達の絆は深まっていくようだった。
 この可愛い狼と、ずっと一緒にいたいと思ってしまう。
 そんな風に思ってしまう程だ。
 狼達も、きっと、レオナルドとの時間を大事に過ごしているのだろう。
 ほとんど彼の側を離れようとしない。
 引っ付いて来た一匹の、頭を掻いてやりながら、レオナルドは独りごちる。
「荒野で狼と一夜。化け物が出なければ最高に楽しい時間なんだがな」

 戦いが始まれば、この時間も終わる。
 けれど村人達と狼達の憂いを払うためならば、望むところだった。
 何かの気配に怯えるような夜を、もう狼達に過ごさせたくはない。

 気持ちを引き詰めつつも、ゆるやかに忍び寄る眠気にはあくびが漏れそうになる。
 眠気覚ましにとコーヒーを淹れる事にした。
 他にも、眠気覚ましが必要な仲間がいれば、わけてやろうか。
 そんな事を思いながら、少し余分にコーヒーを用意して。

 香ばしい匂いを醸し出すコーヒーをカップに注ぎ、一口飲む。

 そのとたん好奇心旺盛な狼が、コーヒーに反応した。
 レオナルドがコーヒーを口にした事で、それが食べられるものだと認識したらしい。
 それまでなにか作業をしている彼を静かに見守っていたのが、くんくん匂いを嗅いで駆け寄り、カップに鼻を突っ込まんばかりの勢いで迫ってくる。
 レオナルドは手でそれを防いで、後ろへ下がらせる。
「コーヒーは駄目だ。飲むな。だめ」
 残念そうに耳を伏せる狼は可愛い気もしたが、これだけは譲れない。刺激が強すぎる。
 レオナルドはきっぱりと首を横に振った。
 たしかに、コーヒー豆も植物だ。
 草食狼には美味しそうな匂いに感じるのかもしれない。
 狼は一旦考えた素振りをすると、自信に満ちた顔で片方の前足を上げる。
「お手をしても駄目だぞ」
 厳しい表情を浮かべ、強い意志で要求を却下するレオナルドだったが、結局おねだりは彼がコーヒーを飲み終えるまで続いたのだった。

 もう少しだけ、と思わないこともなかった。
 この和やかな時間が続けば良いのに、と。
 そんな訳にはいかないと解っているからこそ。
 レオナルドは、ふっと息を吐くように笑うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋翠・華乃音
……さて、襲撃を受けると分かっているのなら、警戒しないという手は無いよな。
昼は十分に休ませて貰った。夜行性の俺にとっては寝ずの番など容易い事、これからが本番だ。

俺は狙撃手だから遠距離の警戒や襲撃に対する迎撃も問題は無い。
優れた視力・聴力・直感を研ぎ澄ませて、見晴らしの良い高所にでも陣取ってスコープ越しに監視と警戒。
僅かな兆候も見逃さない為に適宜ユーベルコードを使用。
情報は無線機か何かで共有出来るように準備も必要だな。



●夜を見る瞳
 昼間に充分な休息をとった緋翠・華乃音(Lost prelude.・f03169)は寝ずの番をしながら、見渡しの良い高台に腰を下ろしていた。
 せっかくの星の綺麗な夜だったが、眺めている暇もない。
 夜行性である彼にとって、こうして夜の内に行動することは容易いことであり、狙撃手として優れた五感も冴えて研ぎ澄まされていく。

 華乃音は一人でこの任を行うつもりだったのだが、その傍らには一匹の狼がくっついている。
「ここは俺だけで大丈夫だぜ、向こうへ行ってな?」
 そう言って遠ざけようとしても、狼は引こうとしない。
 まるで冷たい夜風から華乃音を守ろうとする様に、ふさふさした身体を寄せてくる。
「仕方ないか……」
 邪魔にならないようにしてくれるなら、と華乃音は狼のさせたいようにさせておくことにした。
 スコープを覗き込み、息を潜め夜の荒野を見つめる。
 僅かな兆候をも見逃さない華乃音の瞳は、暗い夜の中に荒野を駆ける狼の影を捉えた。
 猟兵達とは別に行動しているらしい、恐らくは偵察員といったところだろうか。
 獣の勘だろうか、狼が立ち止まり、華乃音の居る場所を向く。
 スコープのガラス越しに、暗闇に光る獣の瞳と目が合った。
 一瞬、過去に出会った狼の姿が浮かぶ。
「……」
 華乃音は幽かに笑い、狼へ腕を振った。
 その動きを確認してか。タッ、と狼が駆け出していく。
 互いの意志が、言葉も介さず伝わったような気がした。
「ああ、狩りの時間だ」
 戦いの気配が迫っている。
 隣りにいる狼も、わずかに身体に緊張感を漂わせていた。

 狙撃手としての確かな感覚が、告げている。
 暗がりに蠢く巨体。
 まだ姿は目視できないが、確かに近づいてくる。

「……華乃音だ。大きな影が一体、こちらへ向かっている」
 仲間たちへ情報を無線で伝えると、華乃音は銃の引き金に指を掛けた。
 
「成る程、あれがここを荒らしていたのか」
 ずいぶん、図体のでかい相手だ。
 あれが相手では、狼達は敵わないだろう。

 だが、猟兵達ならば。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『ミノタウロス』

POW   :    マキ割りクラッシャー
単純で重い【大斧 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    暴れ牛の咆哮
【強烈な咆哮 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【突進】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    ベジタリアン・テンポラリーヒール
戦闘中に食べた【野菜 】の量と質に応じて【身体に出来た傷が塞がり、気分が高揚し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はクロ・ネコノです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 報せを受けた者、気配を感じた者、物音を察知した者。
 敵襲に備えていた猟兵達は、巨大な影が荒野の岩陰から現れるのを見た。

 牛頭に人めいた身体を持つ、ミノタウルス。
 この世界で言うところのモンスターだ。

 ミノタウルスは黒羽が撒いた野菜の煮汁の元を探しているようだ。
 匂いに荒々しく鼻息を立てながら、舌なめずりをしてみせる。
 その様子から、気づいた者も多いだろう。
 あれは、草食なのだ。

 狙いは、村人達の作る野菜であり、この土地なのだろう。
 実りを奪い食事に邪魔なものは追い払う。
 単純な思考がもたらすだろう悲劇は、残酷だ。
 ただでさえ、盛り上がった分厚い筋肉に包まれた巨体。
 その手に握る戦斧が振るわれれば、多くの血が流れる事は必至。

 オオォォォーーーン!
 狼達が一斉に吠えた。大地を震わせるような遠吠えが響き渡る。
 牙を向き、毛を逆立てて、唸るその形相はまるで鬼の如く。
 命を賭けて戦おうとするその姿こそが、この地に暮らす狼達のもう一つの姿なのだろう。

 彼等と力を合わせて戦うか。
 それとも守り、戦いから遠ざけるのか。
 すべては猟兵達の意思に委ねられている。
伊美砂・アクアノート
【WIZ】ヒャッハー!敵だー! 大声で叫びつつ、鉈を振り回して突撃。・・・あ゛? 馬鹿みたいな戦い方だって? そうとも! 誰よりも先に突っ込めば、目の前で死ぬヤツを見ないで済むからな!【2回攻撃6、早業5、フェイント5、第六感5】 無謀とも思える勢いで突貫。致命傷だけはギリギリで貰わないようにして、一息もつかずに刃を振るい続ける。―――はッ。手ェ出すんじゃねぇぞ、犬っころ! コイツは、俺の、獲物だっ!! 狼が接敵しそうになったら、懐から香水瓶を敵の足元に投げつける。【水毒香・迷光死水】―――毒香水の匂いで、人間よりも嗅覚が鋭い生き物はキツいだろ? まあ、任せとけって…。自分も毒を受けつつ、笑う


緋翠・華乃音
さて……仕事の時間だ。
悪いな、お前に何か恨みがある訳じゃないんだ。
――許せ、とは言わない。恨んでくれて構わないよ。

狼達は……まあ、好きにさせてやろう。
共に戦ってくれるのなら心強いが、彼らもまた守るべきものがあるのだろう。

ユーベルコードの範囲内で戦場を把握出来る場所(可能な限り高所且つ遠距離)に目立たぬよう潜伏。
伏兵として最初は様子見をしつつ、敵の攻撃パターンや回避行動等の情報を収集・分析し、見切りを行う。
優れた視力・聴力・直感を生かして戦況を常に把握。
敵の注意を極力引かぬよう、猟兵達への援護狙撃に徹する。
場合によっては貫徹弾や高速弾などの銃弾を使い分ける。


黒羽・鴉
「鴉『お願い』しますね」
(狼達を守りながら戦ってね、の意)

【鴉】
(舌打ちしつつ)簡単に言ってくれるな。
……だが、大切なものを守りたいという気持ちは分からなくはない。
覚悟があるのなら共に戦うのも良いだろう。

アレの攻撃から真正面からぶつかり合うのは分が悪そうだからな【剣刃一閃】で斬り付けては距離を取るヒット&アウェイ戦法で。
その一方で狼達には【金烏】で助力する。
傷付けられそうになったら【かばう】と同時に【ジャスティス・ペイン】

お前達に死なれでもしたら黒羽が哀しむ。



【アドリブ絡みOKです】


レオナルド・ウラニクス
そうかお前達も大切なものを守るため命を賭けて戦う事を決断したのだな。
ならばともに戦おう。

狼達とうまく連携出来るかわからないが、狩をする時に獲物を追い詰めるように、
彼らと協力してミノタウルスを追い回し、走らせ、出来るだけ体力を消耗させよう。

そして、ミノタウルスに疲れと隙ができたらUC【ブレイズフレイム】で攻撃する。
(絡みアドリブ歓迎です)


ゼグブレイド・ウェイバー
現れたミノタウロスに剣を構えて対峙する。
「…本当は君達に逃げてほしいんだけど…でも君達も命を懸けて戦おうとしてるんだよね…」と狼達を見つめてふぅと一息つけて
「一緒に戦おう、僕達と一緒に戦ってくれるなら必ず勝てる、そんな気がするよ…でも無理はしないで、危険と感じたら僕達猟兵に任せて逃げて」
と狼達にいってアイシクル・ランスをミノタウロスに向けて放ちます。
遠距離でアイシクル・ランスを使い、接近してきたら剣で応戦します。
敵のターゲットが狼達に向いたら積極的にアイシクル・ランスを放ってヘイトを自分に向けたいと思います。

近くにいる猟兵達と連携をとり戦います
アドリブ歓迎です


フィロメーラ・アステール
「よーし、戦うにしろ守るにしろ、あたしが力を貸すぜー!」
狼達は戦いたそうにしてる感じがするな!
勝手に飛び出しても大丈夫なようにはしとこうか!

【生まれいずる光へ】を発動だ!
光の粒子を散らしながら踊る【パフォーマンス】で、仲間や狼たちの能力をアップさせて【鼓舞】するぞ!
ついでに【オーラ防御】を付与して、攻撃されてもダメージを抑えられるようにしよう!
ちょっと対象の数が多いけど、【気合い】を入れてやればいける!

その後は【迷彩】魔法でも使って隠れ……?
お、敵が野菜を食べようとするなら、こっそり【盗み】取ってしまったり、【物を隠す】ことで食べられなくするのは面白そうだな!
チャンスがあれば狙ってみるぜ!



●胸臆
 見上げるほどの巨体が大斧を振り上げ向かってくる。
 先陣を切ったのは伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)だった。

「ヒャッハー! 敵だー!」
 咆吼が如く叫び、敵へ目掛けて駆け出す。
 他の猟兵がその無謀にも見える行動に声を上げようとも、伊美砂の動きは止まらない。
 けれど、我武者羅な振る舞いだと誰よりも解っていたのは、伊美砂だ。
「馬鹿みたいな戦い方だって? そうとも! 誰よりも先に突っ込めば、目の前で死ぬヤツを見ないで済むからな!」
 狼の群れを飛び越えて、ミノタウルスの間合いに飛び込み、その分厚い体に鉈を振るう。
 退け、退け、ここはお前の領分ではない。
 眼前の巨体を裂いて、裂いて、裂きまくる。
『ガッアァァ!!』
 ミノタウルスは真っ向からの特攻に大斧で反撃するも、伊美砂はすんでのところで見を躱す。
 身を翻し更に打ち込むその勢いに圧されたか、敵は苦痛の声を上げて後退った。
「――はッ」
 訪れた好機に、牙をむき出し敵へ飛びかかろうとする狼の動きに気づいた伊美砂は失笑すると、荒々しく鋭い声を飛ばす。
「手ェ出すんじゃねぇぞ、犬っころ! コイツは、俺の、獲物だっ!!」
 言い様に懐から香水瓶を取り出してミノタウルスの足元へ投げつける。ガラス細工が施された美しい瓶が地面で砕け、中に入っていた液体が八方へ飛び散った。
 その匂いを嗅いだ狼が、慌てて後ろへ飛び下がる。そう、それでいいのだと伊美砂は笑う。
 みずみずしい匂いを持つ、毒の香水。
 それは幻覚作用を及ぼす毒の切り札。この至近距離で使ったのでは、甘く立ち上る香気は使用者の身体すら蝕んだ。
 息を止めたとしても、喉に、鼻腔に、眼に、焼き付くような痛みは忍び込み。
 ああそれでも、こうでもしなければ。
「お前達は、止まらないでしょう?」
 一瞬表に現れて消えるのは、穏やかさを含んだ声。
 視界が、不自然にゆれる。毒が廻っている、それがなんだ。鉈を振るう伊美砂の一撃は激しさを増した。狼達の手を借りるまでもないと、その姿が証明する。
「まあ、任せとけって……」
 狼は嗅覚と本能でその危険を察したか、毒の及ぶ範囲へと近付くのやめていた。
 狙い通り、この場には巨大な敵と猟兵が立つ。
 伊美砂は唇の端を吊り上げて、はっきりと笑ってみせた。

『フーッ! フーッ!』
 ミノタウルスは苦痛に顔を歪ませ呼吸を荒げた。
 毒による症状か、血走った瞳はなにを見ているのか、正気を失ったような大斧による一撃が伊美砂へと振り下ろされる。
 避けようとした伊美砂の反応は、揺れる視界にわずかに遅れた。しかし。

 ミノタウルスの肩を撃ち抜く、一発の弾丸。
 巨体が衝撃によろめき、斬撃は空を切る。
 岩場の上に陣取り、戦況を分析していた緋翠・華乃音(Lost prelude.・f03169)による射撃は見事に敵を撃ち抜いた。
 スコープ越しに見る戦場の動きに手応えを感じても、眉一つ動かすこともなく、射撃体勢には少しの乱れもない。
「悪いな、お前に何か恨みがある訳じゃないんだ」
 ただ、これが仕事だっただけの事。
 陰りを帯びた気配に、耳許で揺れる銀の十字架が小さな音を立てる。
 口を衝くのは、低く抑えた声。
 ――許せ、とは言わない。恨んでくれて構わないよ。
 遠く離れた場所からその声が届く訳でもない。夜風に溶けゆくその言葉を、傍らにいる狼だけが聞いている。

 狙撃者が派手な動きでこちらへ注意を引くことは避けねばならない。
 居場所を悟られぬように、タイミングを狙う。
 スコープを覗き込みながら華乃音は暴れるミノタウルスと対峙する猟兵と、そして群れ狼の動きを読む。
 共に戦ってくれるのなら心強いが。
 オブリビオンとの戦いに、彼等を参加させる事に思うところがない訳でもなかった。

 ……まあ、好きにさせてやろう。
 彼らもまた守るべきものがあるのだろう。

「お前も、好きにしろ」
 今度は、はっきりと声を掛ける。
 傍らに居た狼は、その一言を理解したのだろうか。
 立ち上がり、走り去る足音を聞きながら。
「援護はしてやる」
 心を引き締めて、華乃音は意識を研ぎ澄ませた。


●星輝
 おやおや、騒がしい夜だ。
 流星のように現れ。羽を広げて飛び回るのは、フェアリーのフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)。
 燦々とした煌きを纏い、軽やかに戦場を飛び回る。
 その姿を捉えたとしても、捕まえる事はできないだろう。
 猟兵達の中には、その光に見覚えがあったものも居ただろうか。

「狼達は戦いたそうにしてる感じがするな! 勝手に飛び出しても大丈夫なようにはしとこうか!」
 守るもの、戦うもの、そこに集う者達からそれぞれの決意を感じたフィロメーラは、その身から溢れる輝きよりも尚まぶしいような笑顔を浮かべた。
「よーし、戦うにしろ守るにしろ、あたしが力を貸すぜー!」
 金色の粒子を散らして、小さな妖精は思いのままに人と獣の元へと飛んでいく。


●敢戦
 自身が浴びた毒から逃れようと、ミノタウルスは逃げ惑う内に猟兵達の野営地へと向かっていた。
 その体を回復させようと、欲するのは糧となる野菜だ。
『グモオオオォォォ!!』
 邪魔する者は容赦なく殺す、死に物狂いの雄叫びが辺りに響き渡る。

 魂消るような絶叫を聞いてなお、その場を引こうともしない狼達の姿に、レオナルド・ウラニクス(人狼の黒騎士・f13660)の形相は険しさを増しながらも瞳の奥には熱い光があった。
「そうかお前達も大切なものを守るため、命を賭けて戦う事を決断したのだな」
 脳裏をよぎる淡い面影。胸に宿るその思いを知るからこそ、レオナルドは頷く。
「ならばともに戦おう」
 狼を率いてレオナルドは駆け出した。
 荒野を行くその群れは、獲物を追い立てるように動き出す。

 戦況を見極めながら、ゼグブレイド・ウェイバー(見習い騎士・f03572)は深い溜息を零した。
 剣を構え。敵を迎え撃つ覚悟は出来ている。
 憂う事はただ一つだけ。
「……本当は君達に逃げてほしいんだけど……」
 一日を共に過ごした狼を、脅威から遠ざけてやりたかった。
 けれど。
 狼達の覚悟を目にした今となっては、それを無下にも出来なかった。
「君達も命を懸けて戦おうとしてるんだよね……」
 遠吠えがする。
 その声に籠められた気迫が胸を打つ。
「一緒に戦おう、僕達と一緒に戦ってくれるなら必ず勝てる、そんな気がするよ」
 答えるように狼達から吠え声が上がった。
 ゼグブレイドは奮い立つように小さく笑み、そして真摯に告げる。
「……でも無理はしないで、危険と感じたら僕達猟兵に任せて逃げて」
 あれは決して侮っていい相手ではない。
 ひしひしとその身に伝わる暴虐な殺気に、ゼグブレイドは唇を噛み締めた。

 ミノタウルスの行先へ先回りをしていた黒羽・鴉(両面宿儺・f09138)は、巨大な影を見据える。
「鴉『お願い』しますね」
 呟きと共に、気配が変わる。黒羽と入れ替わり、主導権を握るのはマスクに宿りたる者、鴉。
 猛牛のように突進してくる敵を見て、鴉は思わず舌打ちした。
 黒羽の言う『お願い』とは、ここにいる狼達を守ってくれという意味だ。
「簡単に言ってくれるな」
 不満げに零しても、黒羽からの返事はない様子。
 マスクの下で眉をひそめ、昼間に片割れが戯れていた狼達を見やる。
「……だが、大切なものを守りたいという気持ちは分からなくはない。覚悟があるのなら共に戦うのも良いだろう」
 それに。
「お前達に死なれでもしたら黒羽が哀しむ」
 誰にも聞こえぬような声で、小さく零す。
 刀を抜き、ひらりと軽い身のこなしで鴉は大地を蹴った。

 走る走る群狼。
 その上を舞い踊るように小さな星が飛ぶ。
「やあやあ! 応援に来たぞー!」
 フィロメーラの声を聞き、降り散る光を浴びた猟兵と狼の体は護りを得て。身体には力が漲り、その心に勇気が湧いてくる。
「猟兵も狼も怪我をするなよー! 野菜はあいつに食べられないように、あたしがしっかり隠しておくからなー!」
 元気のいい歓声に、狼が尻尾を振った。


 ミノタウルスは敵対者に向けて殺意を漲らせた。
 猟兵からの追撃と、目障りな群狼に追い立てられ、思うように進めない。
 怒りに振り下ろされる大斧は、でたらめに地面を抉り、立ち塞がる者共へ向けて斬撃を見舞った。
 けれど。
 未だ倒れる者はない。
「頃合いだな……ほら、こっちだ!」
 レオナルドと狼の群れが、ミノタウルスを引き寄せる。
 煩わしい猟兵への怒りに目を眩ませて、挑発されるままに襲いかかった。
「今だ!」
「ええ、行きます!」
 レオナルドによって統率のとれた狼の動きが、格好の間合いを作る。
 裂帛の気合とともにゼグブレイドが氷柱を放った。
『……、グッ!』
 ミノタウルスはその斧を盾にして己を庇うが、無数の氷刃を防ぎきれず手足に傷を負った。
 すかさず滑り込むように斬りかかるのは、鴉。
 体勢を崩した敵の首目掛けて、刀身を一閃。鋭く鮮やかな一撃をくれてやる。
「硬いな……だが」
 切り裂かれた喉から血飛沫が撒う。
 致命傷だ。それをミノタウルスも悟ったのだろう。カッと見開いた瞳は憎しみに染まり。
 大斧による最後の一撃に力を込めて、横薙ぎに振るう。
 それが、狼を狙った攻撃だと気づいた鴉とゼグブレイドは、間合いに飛び込んだ。
「執念深いやつめ」
「彼等を傷つけさせはしない!」
 鴉の撃ち込んだ斬撃は大斧の軌道を逸し、凶刃を食い止める。その動きに合わせてゼグブレイドの剣が、武器ごと腕を跳ね飛ばした。
「お前には何も奪わせない、そのまま骸の海へ帰れ」
 レオナルドの身体から、炎が吹き出す。
 夜の暗がりを染める、赤く燃え立つ炎は心に呼応するかの如く揺らめいて。
「これで、とどめだ」
 狂おしい程に燃え盛る地獄の炎を、ミノタウルスへと放った。

 猟兵達の勝利を称える遠吠えが、荒野へと響き渡る。
 ここに夜廻の群狼の戦いは、終焉を告げたのだった。


●夜明け
 荒野の果てに朝焼けが広がる。
 知らせを聞いた村人達は大いに喜び、みなの無事を祝うだろう。
 狼達はまた静かで穏やかな瞳をして。
 去っていく猟兵達の事をいつまでも見送っているだろう。

 一つの村と、この地を守る獣達が守られた。
 草食狼達が眠れぬ夜を過ごすことはない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月26日


挿絵イラスト