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邪神展

#UDCアース

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#UDCアース


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●グリモアベース
「皆さん、お集まりいただき、ありがとうございます。これから、私が予知した事件についてお話しします」
 グリモア猟兵、プルミエール・ラヴィンス(はじまりは・f04513)は、グリモアベースに集った猟兵達に語り始めた。

「世界は現代の地球型世界、UDCアースです。その世界で邪神復活儀式が行なわれているとの情報を確認しました。皆さんは現地で調査を行ない、邪神復活儀式が行われている正確な場所を特定し、儀式場を襲撃して阻止して下さい」

 プルミエールは掌の上にグリモアを浮かべ、自らが予知した事件の現場の映像を映す。映像はスマートフォンの地図アプリのようにコンクリート色のジャングルに降り立ち、平仮名・片仮名・漢字等、日本語を表記した看板が灰色の建造物を彩る中を進み、やがて街路樹に沿って比較的横に広い建造物の前で停止する。
「UDC組織の掴んでいる情報では、日本国の東京近郊の美術館が儀式に関わっていると見られており、組織は数名の職員を学芸員や搬入作業員として派遣しましたが、全員と連絡が取れなくなっているようです。皆さんにも危険を強いることになる可能性が高いですが、もはや皆さんの力でしか儀式は止められません。この美術館について内部から、あるいは外部から調査して儀式場の情報を掴んで下さい。UDC組織も可能な限りのバックアップをしてくれますので、やり方は皆さんに一任します」

 プルミエールのグリモアが徐々に大きくなり、現場の映像は実物大になった。映像は波打つように僅かに揺れている。プルミエールをはじめとしたグリモア猟兵の持つ――オブリビオン事件の予知と並ぶ――能力、オブリビオン事件現場へのテレポート能力によるものだ。このグリモアの中に飛び込むだけで、猟兵達は一瞬でUDCアースに転移し、この事件の解決に向けて動き始められるのである。
「転移の準備は完了しました。皆さん、よろしくお願いします」
 猟兵達は次々に、グリモアの中に駆け出して行った。


鷹橋高希
 どなたかの「『第六猟兵』にようこそ!」からこのシナリオまでご覧の方は初めまして、そうでない方もお疲れ様です。マスターの鷹橋高希(タカハシコウキ)と申します。

 本シナリオは全3章のシナリオフレームを用いており、難易度は「普通」、冒険→集団戦→ボス戦の構成となっております。
 現代地球が舞台、かつ、この章構成は「第六猟兵」においてスタンダードなものとなるため、案内役のグリモア猟兵も私の寧々(このコメント枠の左上のキャラでUDC組織の一員の猟兵)ではなく、「はじまりの世界」に立っているプルミエールに「あなた」の案内をお願いしました。

 私のリプレイ執筆に割ける時間は金~日曜日に多くなります。
 そのため、プレイングの有効期限のシステム上、お客様のご都合が良ければ木曜日(水曜日32時30分までを除く)~土曜日くらいのプレイングがリプレイになり易いと思われます。
 また、必要に応じてプレイングを採用せずリプレイ文章を提出する可能性(断章等)があります。
 リプレイの進捗(特に、完成させられずの不受理)はマスターページで随時更新します。

 あなただけのキャラで、あなただけのプレイングで、あなただけのユーベルコードで、あなただけの冒険に旅立ちましょう。
 あなたのご参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『美の謎を追え』

POW   :    美術品の搬入作業員として入り込み、直接確かめる

SPD   :    閉館後のギャラリーに忍び込み、調査する

WIZ   :    聞き込みなどで、彫刻の出所などの情報を集める

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

架空・春沙(サポート)
『断罪します』
人狼の女性
ピンク掛かった銀髪と同色の狼耳・狼尻尾、緋色の瞳
スタイルが良い
服装:ぴっちりスーツ
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」
罪有る者には「冷徹(私、あなた、です、ます、でしょう、でしょうか?)」です。

・性格
通常は明るく人懐っこい女性ですが
罪有る者に対しては冷徹に、処刑人として断罪しようとします

・戦闘
大鎌「断罪の緋鎌」を振るって戦います

ユーベルコードはどれでもいい感じで使います


あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●美しき黒く緋い狼
 学芸員の全てが退館し、次の日を待つだけの美術館に潜り込んだのは架空・春沙(緋の断罪・f03663)。夜間灯に照らされる黒色の薄型ボディスーツに施された、赤い刺々しい装飾が春沙の動きに合わせて音もなく揺れる。
 ボディスーツの背面は腰部が僅かに開いており、肌とピンク掛かった銀色の尻尾が覗いている。それは頭部の獣の耳と同じくボディスーツの中に秘めた身体が人狼と呼ばれるUDCアースの埒外の種であることを示し、異世界の私設処刑人にして復讐代行者――咎人殺しとなったきっかけの身体の変化であった。咎人を断罪する得物は、赤より紅い緋色の大鎌。
(まずはUDC職員の消息が掴めればいいのですけれど……)
 春沙のスタイルの良い身体にフィットしたボディスーツは一切の衣擦れを鳴らさず夜の美術館を進む。

「――おや、これは素敵な身体の持ち主だ。狼であれば、あの方もこの前の鼠共よりお気に召すでしょう」

 春沙は息を呑む。警備員の足音すら聞こえなかったその耳は後方に向き、振り返ると人影があったのだ。そして語られた言葉が真実であるなら、春沙が異世界の存在という知識を有し、UDC職員を手に掛けた張本人あるいは一味――春沙が断罪すべき相手である。

「咎人よ、断罪します。懺悔は……死んでからどうぞ」
 しなやかなボディスーツが薄明かりに輝き、赤色が爪跡を描く。この世界の人間の運動能力程度では避けられない狼の一閃。しかし、その人影は後方にステップしたかのように十数メートル先に現れる。
「美しい狼だ。ますますあの方に――」

 次の一閃は緋色。人影に届きもしない緋色の刃は、春沙の緋色の瞳が映す人影だけを衝撃波――ユーベルコード「緋色の瞬断」で薙ぎ払った。

「――捧げねば」
 切断された上半身が人影の足元に落ちると、二つの半身からは失った半身が生え、人影は二体となる。
「――なるまい」

(人間をも辞めているのですか……)
 このままでは埒が明かないと、春沙は身を翻し撤退を決め込む。しなやかな黒の曲線と鋭い緋の曲線が躍る様は、夜間灯に照らされる展示品に見劣りしない美しさ。春沙がギャラリーを集める間にも、この美術館を薄く覆う真実は白日の下にさらされつつあるのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

音月・燈夏
経験を積むには都合が良いのですが、この世界は本当に邪な存在が多いですね……。

潜入した職員が残らず行方不明になっているなら、同様の方法で侵入すれば相手から行動を起こしてきてくれそうですね。
儀式場は地下にあるイメージですが、搬入作業員にも被害が出ているなら収蔵庫辺りが怪しいかもしれません。

美術品には詳しくないので搬入作業員として入り込みます。頃合いを見て作業から外れて館内の入れるところから捜索を進めます。
何も変わったことが無ければUCを使用して美術館の職員を追跡し、怪しい部屋や人物を探しましょう。壁や扉も通り抜けられるので、最初の捜索で鍵が掛かっていて入れなかった部屋があれば、そちらも確認します。



●地下収蔵庫と狐巫女
 美術館の搬入出口に、誰もがテレビのCMで見たことのある運輸業者の車が入庫し、来館者の退出を待ってロゴマークの入った作業帽と作業着が数名降りる。彼らは一名を除いてUDC組織の職員であり、除かれた一名は音月・燈夏(麗耳の狐巫女・f16645)。燈夏は妖狐であるため、作業帽は狐の耳用の穴が開き、作業着も尻尾が出せる特製品だが、猟兵である燈夏を出迎えた学芸員がその姿に違和感を感じることはない。
 美術品の搬入は順調に進み、自然な流れで燈夏は作業から離れて単独で調査を始める。燈夏がまず探すのは地下収蔵庫。美術品の収蔵庫は空調と災害対策のため地下に設けられることが多いのだ。しかし先程までの搬入出作業は全て地上階の収蔵庫だった。偶然かどうか確かめなければならない。
 地下収蔵庫はすぐに見つかるが当然施錠されており、開ける許可も得ていない。しかし、燈夏がこの中を調べるのにはいずれも支障を来さない。
(さて、情報収集と参りましょうか)
 燈夏が作業着のポケットから取り出したのは舞扇。広げてひらりと舞わせると、燈夏の隣に現れるのは巫女装束の燈夏。足袋を履いた草履は床に着いておらず、緋袴の裾は風もなくふわふわと揺れている。そしてその姿は薄ぼんやりと輝いていた。ユーベルコード「霊体観測」による、燈夏と五感を共有する霊的な分身である。
 分身の燈夏は物理的隔壁である扉を通り抜け、地下収蔵庫に入る。まず感じ取ったのは空調が生きているとは思えないほどの湿気。美術品には詳しくない燈夏でも先程まで出入りしていた地上階の収蔵庫より不快で、美術品に限らず物を長期間置いていればどうなるかは想像に難くなかった。にも関わらず数体の彫像が壁際に並んでいるのを見て近付けば、それらは等身大の「頭部のない人体」の彫像であると確認できた。そして何より、その壁面には数ミリメートル程度のひび割れがあり、瘴気や妖気と呼ばれる類の気が噴き出ているのを巫女の霊体が敏感に感じ取った。
「――ああ、その収蔵庫、今は使うの止めてるんですよ。空調が調子悪くて、業者に補修をお願いしてまして」
(っ!?)
 不意の背後からの声に、燈夏は五感を自身に切り替えて振り返る。声の主は到着時に出迎えた――燈夏に違和感を持たない学芸員であり、内心で胸を撫で下ろす。
「そうでしたか。では、このリストの作品は……」
 燈夏は作業着のポケットから運搬する美術品のリストを取り出して話し合いつつ、分身の燈夏をUDC職員達に合流させ、見てきたことを伝える。次の現場は、大仕事になりそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
wiz

美術館ね…客から生贄候補を探しているのか、資金集めなんだか

ちとおめかしして美術館に正面から乗り込むぜ
妖しい美術品はありませんかねー?
…シーフとしての職業柄、高価で鞄に入りそうなものに目星つけてちゃうのはご愛敬

係員・警備員の足運び・目線を見切って、または第六感で只者ではない輩を割り出すよ
声をかけて美術品が欲しい場合どうすりゃ良いか尋ねる
溌剌さを演じ、アタシ自身が上質な生贄候補だと誘惑する
責任者に合わせて欲しいなー

今までかなり稼いできたんだ
銭ならあるんやで(※ここだけ大阪弁)と算盤を弾く仕草は天然です
他にも美術品があるなら見たいと交渉するよ
儀式場に誘われるなり後日招待されたりすりゃあ良いなー



●企画展と巫女の宿業
 美術館は美術品を収集し展示するための建造物であり、様々な人々が訪れる。その中に混じるのは四王天・燦(月夜の翼・f04448)。豪奢な、それでいて嫌味でない装いで美術品を鑑賞している。
(妖しい美術品はありませんかねー……おっ、これなんか手頃で値打ちのありそうな、おっといけない)
 ガラスのケースに囚われたオブジェを目にすると、つい頭が「お仕事」のモードになる。しかし目的は怪盗稼業ではないと思い直し、作品の概要や作者の経歴が記されたパネルに目を落とす。
(――芸術って難しいな)
 燦にはそうは見えなかったが、作者はオブジェに「翼持つ少女」という表題を与えていた。燦の目がこのオブジェに惹かれたのは偶然ではないのかもしれない。
「――如何でしょうか。こちらは氏の初期の代表作の一つで、只今本館では氏の企画展を行なっております」
 燦に声を掛けたのは女性の学芸員。差し出されたパンフレットを受け取ると、企画展のテーマが一目で解る作品の写真が印刷されていた。

 女性の頭部を描いた絵画と、そこから下を創った彫像だ。

「……なかなか面白い表現じゃん」
 口ではそう言うが、先日の猟兵の調査で彫像が「使われていない」収蔵庫にあると知る燦は、作品の「完成形」を見せられ胸の奥にざらつきを覚える。
 発案者だというその学芸員から作者について解説されつつ案内された企画展用のホールには、パンフレットと同じような絵画と彫像が並んでいた。個体差はあるものの、頭部のみ――あるいは胸元程まで――が絵画に描かれ、額縁の外側を彫像が補完する構図は一貫していた。燦には先程の「翼持つ少女」と同じくこれらの芸術性は解りがたいが、描かれた人間の表情が概ね恐怖とも絶望とも取れる歪み方なのは判った。
「ところで、センセにはアタシみたいなのがコンタクト取っていいのかな? いや、他の作品も見たいし、何ならアタシを題材に作品創って欲しくてね」
 こんな感じの、と燦は彫像のようにポーズを決めて学芸員の笑いと綻びを誘いながら、妖狐の情欲を――そして盛った大きさの胸を――秘めた肉体は裸婦像に負けず劣らずの魅力で展示作品に加わるべき上質な生贄候補だろう? と未だ見ぬ黒幕に誘惑を掛ける。
「芸術の相場は明るくないけど、こう見えて今までかなり稼いできたんだ。銭ならあるんやで」
 それでしたら、と学芸員は作者の連絡先と共に自身の名刺を燦に渡すと、ごゆっくりどうぞと挨拶し去って行った。
(……あまりゆっくりは出来そうにないな)
 額縁の中で歪んだままの女性の表情に、これ以上の創作活動は続けさせられないと、燦の胸の奥の宿業が炎を上げていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

箒星・仄々
邪神復活なんてさせて堪るものですか
絶対に阻止しましょう
もし可能なら行方不明者を救出したいです

街路樹の鳥さんから情報収集
野生の生き物は危険には敏感なもの
窓から見える所で
邪な気配が強い場所とか
囚われの人々の場所とか質問
お礼にポップコーンや種を置いていきます

水と炎の魔力で光の屈折率を曲げ光学迷彩
摩擦減で足音を消して侵入です

鳥さんたちからの情報があればそちらへ
なければ展示品の魔力を探ったり
怪しげだったり不審な美術館員さんの後をつけます

鍵は摩擦0で無効化

PWが必要な扉は出入りのタイミングを伺います
動きがあるのは暗くなってからでしょうか?

見つかった場合
見つけた方は超常の存在であるはず
倒して情報を得ましょう



●黒猫と白紙の絵画
 美術館に面した街路樹は、灰色のジャングルの中の僅かな緑の一つであり、街を生き抜く鳥達の安息の揺り籠だ。その街路樹を猫が見上げるが、その目は鳥を獲物として見ていない。猫の名は箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)。言葉を話す妖精の一種である彼の望みは情報である。
(あの建物で邪な気配が強い場所や、人々が囚われている場所など感じておりませんか?)
 人間のような言葉を持たぬ鳥達にも、異世界の神秘の歌い手たるシンフォニアの歌は響き、鳥達は鳴き声を上げて応える――地の下から音と何かが込み上げている、木々が根を引くほど脅えている、と。ありがとうございます、と仄々が情報量として種を煉瓦の歩道に広げれば、鳥達は降り立って啄み始め、仄々が去って別の人間が近付くまで続いた。
 開館時間の終わりに、水と炎の魔力で光の屈折率を曲げての光学迷彩とユーベルコード「猫の毛づくろい」により摩擦減で足音を消した仄々が入館する。学芸員が閉館に向けて締めの業務をする中、悠々と観覧料支払いカウンターをパスした仄々は男性の学芸員を尾行し、地下収蔵庫の扉の前に辿り着く。「使われていない」収蔵庫に用がある男性の危険性も承知での強行偵察。男性が扉を開けるのに合わせ、仄々は収蔵庫に入った。
 ここに彫像と邪悪な気の吹き込みがあり、彫像は絵画と一組。ではその絵画もここにないのかと仄々は収蔵庫を巡り、棚に額縁を見つけた。額縁の絵画は――白紙。
「そちらの作品の表題は『私』となっております」
 男性の声に、迷彩を解いた仄々の猫瞳が輝く。
「この作品に込められた作者の意思をお聞かせいただけますか?」
 閉鎖された収蔵庫に魔力の一閃。男性は二つの半身になり、失った半身が描き足され、「男性」は二体になる。
「この作品に作者は」
「邪神の復活を描いております」
(絵画もここにあるのは分かりました。ですが、この狭い場所で増える相手とやり合うのは得策ではなさそうですね)
 仄々は男性を相手せず、収蔵庫の出入口に向かう。不思議と男性は追って来なかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

真城・美衣子(サポート)
☆サポート&おまかせ専門
何を考えているかよくわからない猫っぽい少女

喋るペンダント『マキさん』

・UDCアース人や猟兵としての一般常識はある
・鋭い感覚、高い運動能力、強靭な肉体で頑張る
・ぼんやりしているけど動きは早い
・無表情で説明もないまま行動するので、奇行に見える事も多いが、本人は一生懸命

・マキさんは主に解説・交渉などの会話を担当
・PLが直接操作しない方針なので挙動はご自由に!

☆セリフ例
「にゃ」
『みーこさんは「こんにちは」と言っています』

「……すんすん」
『みーこさんはニオイを確認しているようです』

『お時間よろしいでしょうか、事件についてお話を……』
「にゃ」
『みーこさん、今は喋らないでください』



●白猫怪盗団と黒の美術展
 真城・美衣子(まっしろみーこ・f12199)もまた、美術館内に忍び込んでいた。
「にゃ」
『みーこさん、開館時間中に堂々と入ってもよかったのではないですか』
 猫のように一言発する美衣子に、首に輝くペンダントのマジカル電子頭脳『マキさん』が返す。
「にゃ」
『怪盗がやりたかった、ですか』
 美衣子が頷くと、絵画の裏や彫像の影など、ありとあらゆる――本来いるはずのない――場所から105匹もの猫が美衣子の足元に集まる。ユーベルコード「ねこねこネコまねき」によって結成された怪盗団員達だ。
『にゃにゃ?』
『にゃおにゃお』
『ふな~』
『にゃん!』
『ごろごろ』
『にゃーご』
『にゃうん』
『みぃ』
『みゅう~』
「にゃ」
 美衣子の号令に従い猫達が散開すると、美衣子は投書箱の設置された長机で何かを描き始める。
『みーこさん、何を……って予告状を今から描くのは遅すぎます。今描くなら犯行声明が妥当ですし、どちらにしても猫がウインクするデザインは別の意味で駄目です』
「……にゃ」
 そんなやり取りをしている間に、数匹の猫が美衣子の足元に戻ってきていた。
『外の景色が絵画のようになっている?』
 猫の報告を受けて美衣子は席を立ち、エントランスホールに繋がるガラスの自動ドアに向かうと、それは自動ドアの向こうに見えるエントランスホールの絵画となっていた。センサーも絵画の中の物となっており、開く気配もない。
 悲鳴のような猫の鳴き声が聞こえた美衣子は館内を駆ける。何かから逃げてきた猫達とすれ違った先には、開け放たれた地下収蔵庫の扉。闇のように黒い霧が籠もるその中からは無数の額縁が飛び出て、宙を舞いながら壁に次々と飾られていた。
『いつから動物園と化したか知らぬが、獣の剥製もまた芸術か。いいだろう。その首、「作品」として貰い受けよう』
 館内に響き渡るくぐもった声は、美衣子達猟兵を「作品」、つまり邪神復活儀式の贄とすると言い放った。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『呪いの額縁』

POW   :    待ち伏せ擬態状態
全身を【霊的にも外見的にも一般的な額縁】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    作品モデルの複製
自身が【破壊される危険】を感じると、レベル×1体の【肖像画に描かれている存在】が召喚される。肖像画に描かれている存在は破壊される危険を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    無機物の芸術家
【額縁の中心】から【対象を急速に引き寄せる魔力】を放ち、【キャンバスに取り込み肖像画に変える事】により対象の動きを一時的に封じる。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●UDCアース・日本国東京近郊の美術館――のはずの空間
 絵画調となった外界は、猟兵達がこの美術館であるはずの空間に囚われた事実を描き出していた。地下収蔵庫からは無数の額縁が飛来し、企画展の展示会場を――彫像はないものの――無限に広げていく。
 猟兵達の目の前で宙を舞う絵画から人影が滴り落ち、学芸員の形に変わりながら絨毯に立つ。
「捧げねばなるまい。『復活』を描き切るには、貴様らの命の色を塗らねば彩りを欠く――」
 学芸員へと変わった姿はキャンバスに飛び込み、全く別の男性の肖像画と化して額縁は飛び去る。追おうとする猟兵達を遮るように飛来した額縁のキャンバスには何も描かれていなかった。空白のキャンバスが額装されている理由は一つ――肖像を「取り込んでいないだけ」で、作品としては完成しているからだ。
 絶望を額装したような企画展の会場で、猟兵達は希望を描き切るべくユーベルコードという筆を執る。
クロエ・ボーヴォワール
「ええ、芸術品は好きですわよ。なんとおっしゃいましても、節税対策に使えますからね」
・アルダワの迷宮インフラ事業に携わる実業家としては、オフィスに置いても商談相手を襲いそうな展示品は願い下げである
・ボーヴォワール魔導蒸気技術(株)謹製のスチームエンジンは、装備品に取り付けることで攻撃力を他社製品の3倍増加(当社比)。歌を媒介して魔力を行使するシンフォニックデバイスに装着すれば、しつこい油汚れから低級の呪物まできれいに「掃除」できます。今なら弊社謹製の魔導スチーム食洗機もセットでお買い得!(自社宣伝)
「せっかくですから、わたくしの肖像画も依頼しますわ。報酬? 弊社製品の現物支給で手を打ちましょう」



●額縁蒸気洗浄お嬢様
「まだ若いのに芸術に興味があるというのは殊勝ですな」
 獲物を見つけたと言わんばかりに額縁は飛来し、クロエ・ボーヴォワール(ボーヴォワール財閥総裁令嬢・f35113)に話し掛けた。
「ええ、芸術品は好きですわよ。なんとおっしゃいましても、節税対策に使えますからね」
「節税か。しっかりされているお嬢様だ」
「わたくしめのお父様はアルダワ魔法学園のインフラを担う『ボーヴォワール魔導蒸気技術株式会社』の総裁ですの。節税を抜きにしても、お父様の肖像画等で絵画の良さは心得ておりますわ――ところでそちらの作品は?」
 クロエの緑色の瞳が覗き込む額装されたキャンバスには何も描かれていない。
「こちらの作品は『ボーヴォワール社長令嬢肖像画』となるのです」
 クロエの身体に微弱な電流のような魔力が流れ込み、身体が宙に浮いて縦ロールの金髪が跳ねる。身体がキャンバスに引き寄せられ、咄嗟に額縁を掴むと腰から下がキャンバスに取り込まれ、感覚が無くなった。振り返ったキャンバスには自身の腰から下と髪先の肖像画が描かれつつある。自身が肖像画に変えさせられる異常事態――しかし、次期総裁であるクロエはこの程度で狼狽える器ではない。
 クロエは手にしていた蒸気機関式拡声器・シンフォニックデバイスに、自社製品――ユーベルコード――の「スチームエンジン」を取り付け、魔力を帯びた美しい歌声を披露する。スチームエンジンによって増幅された魔力の蒸気が広がり額縁を包み込むと、クロエの身体はキャンバスから弾き出される。床に降り立ったクロエの足元に一拍遅れて落下した額縁は、キャンバスごと溶解するように床に消えていった。
「ボーヴォワール魔導蒸気技術株式会社謹製のこのスチームエンジンは、当社比となりますが性能を他社製品の三倍増加致します。このように歌を媒介して魔力を行使するシンフォニックデバイスに装着すれば、しつこい油汚れから『低級の呪物』まできれいに『掃除』できます」
 何事もなかったかのように始まるクロエのプレゼンもまたシンフォニックデバイスで行なわれており、飛来する額縁は蒸気に中てられ次々と「掃除」されていく。
「今なら弊社謹製の魔導スチーム食洗機もセットでお買い得!」
 渾身のキメ顔のクロエの傍らで蒸気を上げる魔導スチーム食洗機の存在により、美術館だった空間の一画はUDCアースらしく通販番組スタジオかという空気感と魔力蒸気による、額縁を寄せ付けない一種の結界と化す。
「せっかくですから、わたくしの肖像画も依頼しますわ。報酬? ご覧の弊社製品の現物支給で手を打ちましょう」
 クロエの緑色の瞳は殺気すらも蒸気に乗せるように鋭く額縁を見据えている。実業家としてはオフィスに置いても商談相手を襲いそうな展示品は願い下げだからだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
様子を見にきたら異様な景色に思わず「えー(絵)」って声が出ちゃうぜ
とはいえパンフで見た女性達が首と胴の泣き別れでねーとは分かった
先ずはこの額縁をどうにかしましょ

壊そうとすりゃあ何か出てくるんだよなぁ
被害者女性が出てきたら取り押さえで捕縛すっけどバケモノなら神鳴で斬る

面倒な敵だ、攻撃しなきゃアタシが封印されかねん…
想像すると震えちゃうぜ

発想を転換し破壊せずに封印でお返しするよ
封印儀式で『封印段ボール』を召喚
キャンバス正面を自分に向けないよう注意しながら、グラップルで額縁を掴む、そして段ボールに入れて『取り扱い注意』のシールを貼って封印してやる
アタシの蒐集にはならんが、UDC組織に高値で売れるかな



●盗み出すものの価値
「……えー」
 この事態に対して、四王天・燦(月夜の翼・f04448)の上げられる言葉は他になかった。何しろ作者を訪ねようと美術館を去ろうとしたらエントランスホールが「絵」になっていたのだ。そして出ようにも出られず振り返れば恐怖や絶望に歪んだ肖像画を収めた額縁が宙を飛んでいる。異様としか言い様のない景色に漸く出た言葉だった。
(とはいえパンフで見た女性達は、首と胴が泣き別れって訳ではねーみたいだな。なら――)
 ――僅かに助ける目があるかもしれない。
 そうと決まれば燦のやることは一つ。絵画から女性を盗み出すことだった。

「――壊そうとすりゃあ出てくるし増えるのかぁ……!」
 数分後、本来の企画展ホール付近で、燦は肩で息をしていた。抜き放った妖刀・神鳴が帯びる紅の雷で額縁を斬ることは出来た。しかし、それを阻もうとキャンバスから溢れる肖像が厄介なのだ。ほとんどが女性ではなかったため遠慮なく斬れたが、その度に斬り捨てられた半身が再生する。埒が明かず逃げの手を打ち、漸く撒いて今に至る。
「面倒だ、下手すりゃアタシが封印されかねん……」
 パンフレットで見た女性と同じ末路を辿る自身を想像した燦は身の毛立つ。身体が自身でない物に造り変えられる感覚を――猟兵という生命体の埒外故に――何度か味わっているからだ。それは人類の理解出来る概念では「死」。肉体も魂も時を刻めなくさせられる危機感。だから絵画の女性の顔は歪んでいるのだ――助けてと、死にたくないと叫ぶのだから。そんな女性達を自身も「死なず」にどう救うか。

(発想を転換だ。破壊せずに封印でお返ししよう)
 企画展ホールに入った燦は真っ先に壁に貼り付いた。キャンバスの正面に立たないためだ。壁沿いに額縁の傍まで躙り寄ると、霊力による封印の器を想起する。
(御狐・燦の霊力をもって彼の者を封じよ!)
 ユーベルコード「巫術『封印儀式』」の霊力が段ボール箱として編み上がると、燦は額縁に手を掛ける。
(壊すつもりはないぜ、暴れてくれるなよ……!)
 そっと壁から外し、ゆっくりと段ボール箱の中へ下向きに収めた。段ボール箱の各面には霊符とも呼べる「取り扱い注意」のシールが貼られており、額縁の呪力をも封印するものだ。
(アタシの蒐集にはならんが、UDC組織に高値で売れるかな)
 次々と額縁を――女性を梱包していく燦。UDC組織にこれを持ち帰れば、報酬として言い値で買い取るだろう。しかし、それ以上に燦が望むのはこの女性達が命と笑顔を取り戻すことだ。
(だから――)
 振り向きざまに振るった神鳴から紅の雷が跳ね、追ってきた肖像を斬り捨てた。
「センセの表現には、これ以上付き合えねーかな」
 パンフレットで見た作者の肖像が掻き消える様には目もくれず、義賊は絵画を段ボール箱の中へと盗み出していくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

箒星・仄々
絵画の世界…
ちょっと幻想的な感じもしますけれど
今回のは剣呑ですね
地下で蠢くもの…
邪神復活の儀式がかなり進んでいるのかもしれません
何としても阻止しましょう

竪琴を奏でて紡いだ魔力を矢と為します

炎で額縁を燃やし
風でキャンバス切り裂き
水で絵具を溶かします

更にはこの絵画の空間そのものを
燃やし切り裂き溶かします

矢の魔力で引き寄せの魔力を打ち消します

また学芸員さんが出てきたら
水の矢で溶かしましょう

もし閉じ込められた方がいれば
額縁を燃やして救出

自分が閉じ込められたら
絵になったまま竪琴を奏で
魔力の矢を放って脱出です

終幕
鎮魂の調べ
海で静かな眠りを



●黒猫と絵画の世界
 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)もまた、絵画と化したエントランスホールの前にいた。
(まるで絵画の世界です。ちょっと幻想的な感じもしますが……剣呑ですね)
 仄々がここに至るまでに見てきたのは飾られた無数の額縁と地下収蔵庫の有様。そして絵画の世界に閉じ込められた今の状態で、やるべきことは一つしかない。
(邪神復活の儀式がかなり進んでいるのかもしれません。何としても阻止しましょう。閉じ込められた方もいるかもしれません)
 踵を返し、取り出した懐中時計――カッツェンリートを竪琴型に展開して仄々は歩き出した。

 明らかに展示数が増えている額縁は当然のように宙を舞い、仄々の前に立ちはだかる。額装されたキャンバスはやはり白かったが、カッツェンリートの蒸気がマーブル状に歪んだのが見えたと同時に仄々の身体に異質の魔力が走り総毛立つ。
(この魔力は……!)
 仄々は反射的に弦を撫で、マーブルの蒸気が仄々の魔力――ユーベルコード「トリニティ・ブラスト」に塗り変わると、蒸気は炎の矢と化して額縁を焼き払った。
(身体が引き寄せられそうな魔力ですね……今度は水の魔力……!)
 仄々の炎の魔力を観たからか、新たに現れた絵画は水が渦巻いていた。しかし仄々は魔力を風に替えキャンバスを切り裂く。そして炎燃え盛る絵画には水の魔力で炎を描いた絵具を溶かし、魔力の三すくみを辛うじて制していく。
(絵画が多いですね……ここは、「この空間の額縁」を壊しましょうか)
 仄々が弦にアクセントを乗せて弾くと、炎・風・水の魔力が蒸気の中から鋭く飛び抜け、三色の魔力の矢が各色数十本、壁へ、天井へ、エントランスホールの絵画へ突き刺さり、この絵画の世界自体を塗り替えようとする。炎が燃え上がり、風が切り裂き、水が溶かし、世界が塗り替わる――には至らず、世界は復元されていく。
(そう簡単にはいきませんか。効いているとは思いますが、――!)
 総毛立つような魔力を感じると同時に、仄々の身体が宙に浮く。背面側に引き寄せられ、振り返ると額縁が大口を開けていた。音もなくキャンバスに沈んだ尻尾の感覚が消えた、と感じた次の瞬間には、仄々は肖像画と化していた。額縁は自ら薄暗い壁に掛かり黒猫の絵画然とするが、黒猫の緑色の瞳は宝石のように輝き、肖像画は竪琴を弾く。黒猫の背景が燃え盛るような赤に塗り替わると赤は額縁に燃え移り、火の輪潜りのように仄々が飛び出した。
(この呪いの侵食は危険ですね……。変わり果てる前に救い出せる方がどれだけいるか……)
 身体と世界の境界に残る額縁の魔力を焼き払うように、蒸気は燃え上がりながら広がって額縁を鎮魂していく。
 額縁が上げる陽炎の向こうに、元の世界が見え始めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

氷咲・雪菜(サポート)
 人間のサイキッカー×文豪、15歳の女です。
 普段の口調は「何となく丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 独り言は「何となく元気ない(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

氷や雪が好きな女の子で、好きな季節は冬。
性格は明るく、フレンドリーで良く人に話しかける。
困っている人は放ってはおけない。
戦闘は主にサイコキャノンを使って戦う。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●氷の魔女と騎士の氷像
 美術館は美術品のための空調が設定されており、UDCアース屈指の経済大国・日本であれば春夏秋冬を問わず館内の雰囲気に大差は生じない。しかし今、氷咲・雪菜(晴天の吹雪・f23461)がいるのは美術館のような異空間だ。寒暖・乾湿より先に感じるのは生命を拒絶するような不愉快さ。
「少女よ、氷の魔力を宿す異端の魔女よ。火炙りの刑に処さねばならぬ。その命を溶かさねばならぬ」
 雪菜の目の前に額装された絵画が飛来すると、雪菜の感じている不愉快さが増し、額縁の放つ魔力が原因と悟る。絵画は燃え盛る炎に包まれた磔台が描かれており、言葉通り絵画の中で火炙りにする目論見だろう。
「お断りします。『往きなさい、氷の騎士たち』」
 雪菜が突き出した両腕には魔力増幅器「ブリザード・キャノン」がはめられており、氷の魔力の強化を示すように青白く輝き出す。その魔力を感じ取った額縁は雪菜を取り込んでしまおうと絵画化の魔力を雪菜に浴びせる。
(まずい……!)
 身体が宙に浮いたのを感じた雪菜は絵画に背を向け、増幅した魔力を放つ。その青白い輝きは雪菜の腕を伝って掌から一発ずつ、氷の弾丸と化して放たれ、空間の向こうへ飛んでいき、雪菜は身体も腕も絵画に取り込まれた。
(熱い……!)
 絵画の中の魔女――雪菜は、夏の日の暑さの比ではない、魂そのものを焼くような炎の熱さに氷の魔力で抗っていた。
「悪足掻きを……苦しまず逝けばよいものを――」
 内部の氷の魔力に気を取られていたからか、額縁は雪菜の放った別の氷の魔力に気付くのが遅かった。額縁に次々と氷の矢が突き刺さり、氷の剣の一閃がキャンバスごと額縁を薙ぎ払う。雪菜を焼く炎が凍て付いて、雪菜の身体は解放された。氷の魔女を護るは――雪菜のユーベルコード「絶氷双騎」による――氷の剣と弓の騎士。
 芸術的なまでの氷像が、贋作を次々と屠っていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハンナ・レドウィッチ(サポート)
ふふん、どうやら大天才邪竜神様の手助けが必要なようね。
不要と言われても助けに行くから安心して崇め奉りなさい!

超自信過剰なオラトリオの自爆魔法使い。UC大召喚を使用しない間(使用予定無し)、UCの成功率が下がる(お任せ)為、よく自爆して気絶します。
棒術に長け、マイケルくんでの接近戦が得意ですが見た目は若くてもお婆ちゃんなので腰に来ると戦闘不能に。
UCは選択した物を自爆を何故か恐れず強気で使用し、成功すると小躍りして喜びます。

接近戦ではマイケルくんで攻防一体の戦闘を行い、他猟兵と積極的に連携。
隙を見て、あるいは調子に乗ってUCを使用します。
アレンジその他全てお任せ致します!



●大天災邪竜神現る
「こんな結界、この大天才邪竜神様が焼き切ってやるわ!」
 灰色のポニーテールにハイビスカスが咲き、黒い衣に灰色の翼の少女――ハンナ・レドウィッチ(天災級自爆魔法使い・f31001)が動き出す。
「ほう、若くして相当な風格と魔力だ。ならば大天才邪竜神様には永劫に若く美しいまま――」
「隙ありェィ!」
 ハンナの大天才棒術で振り抜かれたマイケルくん――箒の穂は、飛来して語り始めた額縁を打ち据えるだけで骸の海に還す。ただの自信過剰な少女ではないと額縁達はざわつき、一旦ハンナから逃げようとするも、意思を持つ箒であるマイケルくんがハンナの動線をも最適化しており、額縁を確実に打ち払っていく。
「――肖像画と化して頂こう」
 しかし、五メートル程の距離を置いてハンナの背後を取った額縁が現れ、キャンバスに取り込もうと魔力を放った。ぐっ、と身体が引かれるのを感じ、ハンナは振り返る――ユーベルコードを放たんとして。
「甘いわね。この大天才邪竜神様にかかれば、ただの『ウィザード・ミサイル』も――!?」
 振り返ったハンナの顔が歪む。腰の奥で何かがピチッと音を立てたように弾け飛んだのだ。棒術での立ち回りの最中に不意に身体を後ろに引かれて振り返る動作は、見た目美少女のハンナお婆ちゃんの「腰に来ちゃった」のである。膝からくずおれるハンナがユーベルコードを放つことなど叶わない。しかしそのための魔力は制御を失い――爆発してハンナを吹き飛ばした。
「何だと!?」
 引き寄せる以上に急加速して迫るハンナの身体は、キャンバスに取り込まれるよりも先に額縁に衝突して打ち砕く。空中に投げ出されたハンナの身体は、再度魔力爆発によって次の額縁へと迫る。
「来るな!」
「止まれ!」
「逃げろぉぉぉギャアァァァ!」
 爆発音485回とその爆炎により舞うハンナの身体は額縁達にとって最早災いでしかなく、その様は奇しくも――一文字違いではあるが――ユーベルコード名である「大天才ウィザード・ミサイル」と呼ぶに相応しかった。床に投げ出され目を回すハンナ。そしてハンナから485回もの爆発と爆炎を受けたこの空間もまた、くずおれるように歪み始めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

音月・燈夏
地下収蔵庫だけでなく美術館ごと邪神の領域に取り込まれているのでしょうか。
これで相手の力が増幅されていたら苦戦しそうですね。

相手が絵画ならばUCで燃やしてしまえば良いと思ったのですが、炎を放って操作する前に引き寄せられ、体を取り込まれてしまいます。
想定外の事態に狼狽えながらも体を無理矢理動かそうとしたり、大量の妖気(オーラの一種)を放って抜け出せないか我武者羅に足掻いてみますが、力ずくでは難しそうなので別の方法を考えましょう。

まずは気を強く持って意識を呑み込まれないようにします。ただの肖像画にされてしまっては全てお終いです。
それから相手のUCを分析し、これまでに解除してきた封印の知識や結界術の構築術式を思い出しながら、キャンバスから逃れる方法を模索し、脱出を図ります。もし呪いが関係しているのなら、浄化を行うことでUCの効果が弱まるかもしれませんね。

一度脱出できればもう怖くありません。
再び取り込まれないように体を妖気で保護し、炎に浄化の力を付与して呪いごと焼き祓い、緋色に染めてあげましょう!



●巫女舞は額縁に収まらず
 音月・燈夏(麗耳の狐巫女・f16645)の周囲の世界が描き換わった。壁も床もマーブル模様で色が混ざり合い、はっきりとした色を持つのは燈夏の金色の髪、狐の耳と尻尾、纏う紅白の巫女装束だけだ。
(美術館ごと邪神の領域に取り込まれているのでしょうか……)
 もしそうであれば眷属、それも力を増した者との闘いとなる可能性は高いだろう。修練中の身で闘えるのか――燈夏は息を呑み、慎重に歩を進める。
「――ほう、これはこれは麗しい金色だ」
「っ!?」
 背後から響く声に燈夏が振り返ると、額装された真っ白なキャンバスが浮遊していた。これ程の異質な作品を見逃す筈はない。つまり、現れた眷属だ。
「端麗なる巫女よ、我と共に復活を彩るのだ」
「それは出来ません。あなたを祓わせて頂きます。そして復活の儀も」
 額装もキャンバスも焼き払おうと、燈夏は舞扇を広げて舞い、狐火を空間に灯す。行け、と念じ――ようとした瞬間、燈夏の身体を呪詛のような浮遊感が走り抜け、舞扇を取り落とすと身体がキャンバスに引き寄せられ、逃げようと無意識に捻った身体の下半身の感覚が消えた。視線を落とすと、真っ白な布の上に横たわっていた。しかし重力感は直立時のままで、その布は額縁で縁取られている。
「我が神に仕える巫女の肖像としてくれよう」
 燈夏が結論に行き着くと同時に、額縁がそれを告げた。
「あっ……あ……!」
 自身の身体が徐々にキャンバスに沈んでいく感覚に燈夏は狼狽えながらも抜け出そうとする。額縁に手を掛け肘を張っても身体は持ち上がらず、引き込む力に耐えられずに額縁から手が外れてしまう。最早胸像と化した燈夏は妖気を放ち、キャンバスの肖像と胸像が妖しく輝く――しかし。
「その妖気も捧げてくれよう」
「あぁっ……!」
 胸から上もキャンバスに沈み、燈夏の肖像画が描き上がった。麗しい狐の耳と尻尾を持つ、引き攣った表情の巫女の肖像は暫く妖気を揺らめかせていたが、直にそれも掻き消えた。

(まだです……! 諦めたら本当に終わってしまう……!)
 燈夏は肉体の感覚が消えたことを受け入れつつも、精神に全意識を集中させ、輪郭を保っていた。こうしなければキャンバスとは対照的に真っ黒な額縁の魔力に塗り潰されてしまい、本物の肖像画となってしまう。圧力を持つ暗闇の中、燈夏は自身の受けたユーベルコードを思い返し始める。
(あの呪詛の出所は額縁だった……。あの力をキャンバスに伝えて、取り込ませる……)
 燈夏はこれまでに解除してきた封印の知識や結界術の構築術式を思い出し、今回のユーベルコードと照らし合わせていく。
(……封印であるのなら、どこか一箇所でも綻びを生じさせられたら……。そして額縁なら……)
 精神だけの状態で上下も左右も定かではないが、斜め上に意識を向けた燈夏には確かに見えた。キャンバスと額縁の境目、そして額縁の継ぎ目が合わさった、微かに射し込む光だった。一つ見えれば、残る三つもすぐ見つかった。
「それが見えたとて何も出来まい……!」
 額縁の声が響くと共に魔力の圧が増す。それは燈夏の辿り着いた結論の正しさを保証するものではあるが、精神を維持する輪郭を確実に蝕んでいく。残された時間はないと悟った燈夏は、最初に見つけた光に呪詛の浄化を込めた腕を伸ばすイメージを放つ。暗闇の中、燈夏の細腕は蝕まれ痩せ細り――ながらも継ぎ目の光に指を突き入れた。何かが割れる音が聞こえ、満ちていた暗闇が噴き出していく。辺り一面がキャンバスのように真っ白になった瞬間、燈夏は後ろから弾き出され――美術館の床に倒れ伏した。
 肉体の痛みを感じた燈夏が振り返ると、一角の継ぎ目の割れた額縁がキャンバスごと黒く溶けていた。

 燈夏が呼吸を整えながら立ち上がると、いくつもの額装されたキャンバスが飛来して迫っていた。
「自力で抜け出したか……。だが復活の糧からは逃れられぬ……」
 キャンバスから魔力が放たれる。しかし燈夏は微動だにせず、そして身体も浮き上がらない。
「その封印術こそ、私の糧となったのです。流石に、今ほど破った呪いには掛かりません」
 キャンバスの魔力を打ち消す妖気を漂わせながら、燈夏は舞扇と共に舞い、浄化の力を帯びて緋色に燃え上がる狐火――ユーベルコード「フォックスファイア」を放ち、額縁を焼き祓った。

(この邪神領域も焼き祓い、緋色に染めてあげましょう!)
 燈夏の緋色を帯びた舞いは、額縁も空間も全てを炎で塗り潰していく。緋に照らされた金色の巫女の舞が終わると緋色の狐火は鎮まり、世界は額縁の外側――現実に戻ってきたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『ルテルテ様』

POW   :    首チョンパ
【空間から突如出現する巨大な鋏】が命中した対象を切断する。
SPD   :    貴方モ首吊リ
【首に巻きついた鎖】から【念能力で操作された鎖】を放ち、【拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    赤イ雨ヲ降ラセマショウ
【空間を赤く染め天から降らせた血の雨】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を血の海に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠マスター・カオスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●邪神「ルテルテ様」展
 猟兵達は美術館のエントランスホールで、玄関から進入するUDC組織の職員達と情報を交換し、ある者は封印に成功したUDCオブジェクト「呪いの額縁」のうち、キャンバス内が市井の被害者であろう個体を選別し収容していた。
 その時、エントランスホール内に雨漏りが発生する。しかし外は雲一つなく、滴下する勢いも外での本降りの大雨と化し、何よりも――雨は赤かった。UDC職員達の怒号が飛び交い始めるが、猟兵達にはすぐに雨音に掻き消され聞こえなくなり、赤い大雨の中に姿も掻き消えた。
 雨はすぐ上がったが、猟兵達を待ち受けた雨上がりの景色は、上下左右前後が数十メートルはあろう額縁で出来た直方体状の空間内だった。いずれの面もキャンバスは真っ白で他には何もない――わけではない。地面と呼ぶべきキャンバスの上に、さらに真っ白なキャンバスの額縁が天を向いていた。
 そのキャンバスの四方の継ぎ目が、突如出現した巨大な鋏で断ち切られ、額縁が四散すると、キャンバスの帆布が浮かび上がり、中心が空気を溜めたように膨らみ、それを縛り止めるようにどこからか鎖が飛んできて巻き付くと、帆布に血のような赤色で顔が描かれた。

 ――邪神「ルテルテ様」。

 これが本来呼び出される邪神だったかは定かではないが、これを倒さねば猟兵達がルテルテ様の供物と化すであろうことは明らかだ。そうなれば、外の世界にどれだけの血の雨が降るだろう。

 特別招待された、たった一体の邪神の展示場で、猟兵達は未来の天気を晴らすために闘う。
音月・燈夏
あの禍々しい存在を見るに、邪神の復活を止めることは出来ませんでしたか。それなら、復活直後の万全でない時に叩いてしまうのが定石ですね。
先程は出し惜しみをして不覚を取りましたが、今度は油断せず全力で行きましょう。

まずは先程降り注いでいた赤いの雨の対処しないといけませんね。
赤いだけの雨とは思えませんし、血だとしてら浴びたくありませんから。

霊符で周囲に結界を張り巡らせて、戦場に雨が降り注ぐのを防ぎます。
さらにUCで自身を強化すると共に、その力で結界も破られないように補強しましょう。
その後は距離を取ることを優先しつつ、浄化の力を込めた霊力をぶつけて邪神の力を削いで弱らせ、祓ってしまいたいところですね。



●祓い給え、晴れ給え
 紅白の巫女装束に身を包む金色の妖狐――音月・燈夏(麗耳の狐巫女・f16645)は霊符と霊力で赤い雨を凌いでいた。草履の下のキャンバスが赤く染まっても足袋は白いままに雨は上がり、ルテルテ様の顔は燈夏に向いていた。
(あの禍々しい姿……復活を止めることは出来ませんでしたか。それなら、万全でない今のうちに……!)
 祓うと決めた燈夏は更なる霊力を巡らせつつ、祓いの巫女神楽を舞う。神楽鈴が鳴る度に霊符がキャンバスに向けて飛び、霊力を帆布に塗り付けて結界を描いていく。それを更に塗り潰さんと、霧のような赤い瘴気が漂い始め、天井のキャンバスに赤い雨雲が描かれ、草履の下の血の海は波立って燈夏を呑み込もうとする。
 しかし、既に一度キャンバスに呑み込まれている燈夏が二の舞を演ずることはなく、草履が血の海を踏む度に霊力の波紋が広がって、燈夏の足元から赤い塗料を剥がしていた。
 燈夏の神楽が結界を結ぶと同時に、ルテルテ様の殺意が赤い雨雲から降り始め、燈夏をも貫くであろう激しい暴風雨が結界を打ち付ける。
(強い……! だけど……!)
 霊力が軋みを上げるのを感じた燈夏は迷わず切り札を切る。燈夏の全身が眩い光を放つと、麗しい金色の毛並みは纏わり付いていた赤い霧を弾き飛ばし、代わりに神気を含んで白く染まり、真の姿――白狐の巫女へと変化した。
 増幅された霊力の結界は赤い暴風雨を寄せ付けず、それに応じてルテルテ様も更に激しく雨を降らせようとする。万全でないはずの邪神がまだ力を増そうとしている――寿命を代償に神気を纏う燈夏の次の手は明白だった。
「祓い給え!」
 神楽鈴をルテルテ様に向けて鳴らすと、神気を帯びた霊力が閃光のようにルテルテ様の顔を――その先の赤い雨雲を貫く。ルテルテ様の顔は掻き消え、薄明を射し込まれた雨雲も消え去り、天井のキャンバスに神気が満たされて眩く輝く。程なく暴風雨も止み、天井のキャンバスには抜けるような青色が広がっていた。
 燈夏の足元に広がっていた赤い水溜まりも神気で干上がり、尻尾や足袋と同じく白色の帆布に戻っていく。ルテルテ様の帆布には再び赤い顔が滲み出たが、浄化を破るために憔悴したような表情で、もう天気雨も降らせられないだろう。
 降らせようとしても、白狐の巫女が晴らすのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
これが邪神…!
愛らしいてるてる坊主を汚す如きの禍々しい姿です
一刻も早く海へと還しましょう

指笛を吹いて
水面の様に揺れる影から目旗魚のランさんを召喚
そして自身とランさんをペロして摩擦抵抗を減じます

ランさんに騎乗し
空気抵抗がない故の超速で邪神へ突撃です

つるっとするので鎖に拘束されません
鋏も同様に受け流しますし
血の雨も弾きます

ランさんの吻や魔法剣に破魔を込めて
帆布を切り裂きます
摩擦抵抗がないので速くて鋭いです

すれ違ったらそのまま
このキャンバス空間を同様に断ちます

この繰り返しで邪神と空間を
解体していきます

貴方も歪んで変じた存在なのでしょうか
お辛いでしょうね
海へとお還り下さい

終幕
鎮魂の調べ
海で静かな眠りを



●曇りのち
 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)の目の前で、帆布に顔が描かれる。
(これが邪神……! 愛らしいてるてる坊主を汚す如きの禍々しい姿……!)
 UDCアースの日本で晴れ乞いにてるてる坊主を作るのは主に子供達だ。明日の天気を晴らす願いを込め、明日という未来を笑顔で迎えられるようにと、てるてる坊主に笑顔が描き込まれることも少なくない。しかし青く晴れ渡るキャンバスの下、ルテルテ様の顔は笑顔とはとても呼べない曇り模様だった。
 曇り顔が緑の猫瞳を睨めば、仄々が感じるのは禍々しい姿に見合った殺意。仄々の指笛が軽快に、ルテルテ様の鎖が重々しく同時に鳴ると、足元のキャンバスに描かれた仄々の影から目旗魚のランさんことカッツェンランツェが躍り出る。仄々はランさんに跨がると、猫がするように背を丸め、始めにランさんを、そして自身をペロペロとなめる。その様は「猫の毛づくろい」であり、仄々のユーベルコードでもあることが、ルテルテ様から延びた鎖が仄々の毛並みを不自然に滑って明らかになる。
 ルテルテ様の鎖もまた不自然に――念能力で――宙を舞い、ランさんの泳ぐ先に回り込んで再び仄々の首を回るが、鎖はするりとすり抜け、極限まで摩擦抵抗の減った黒い猫毛の一本も引っ掛からない。そして、空気との摩擦抵抗までも減らした仄々とランさんはルテルテ様目掛けて尾鰭を打ち、鎖の海を泳ぎ抜ける。破魔の魔力が二筋煌めいて、ランさんの吻と仄々の魔法剣カッツェンナーゲルがルテルテ様の身体の帆布を切り裂いて泳ぎ過ぎると、切り口から頭部に向けて魔力が流れ込み、血の色の顔を蒸発させていった。
(貴方も歪んで変じた存在なのでしょうか……お辛いでしょうね)
 駆け抜けた二筋はそのままの勢いで、この空間を縁取るキャンバスを切り付けていくと、破魔の絵具は真っ白なキャンバスよりも眩い白色で輝いた。その輝きを背に再びルテルテ様に切っ先が向かうと、鎖の海は荒れ狂っていた。
(邪であっても、神と呼ぶに相応しい強大さですね……。それでも、海へとお還り頂きます)
 荒れる海を――悪しき神を鎮める二つの調べは、未来を晴らすために爪弾かれようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ローズ・ベルシュタイン(サポート)
『さぁ、楽しませて下さいますわよね。』
 人間のマジックナイト×電脳魔術士、女の子です。
 普段の口調は「高飛車なお嬢様(私、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」、宿敵には「薔薇の棘(私、あなた、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は高飛車なお嬢様風の偉そうな感じです
花が好きで、特に薔薇が大好き
武器は、主にルーンソードや精霊銃で戦う。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●秋の西の空が夕焼けなら
「晴れ乞いのおまじないを反転させた邪神と聞いては、捨て置けませんわ」
 ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)は、ルテルテ様の赤く描かれた顔に剣の切先を向けていた。切先から柄に至るまで刀身が夕焼け色のその剣の名は「夕の憩い」。魔法騎士であるローズの魔力に親和性が高い奇跡の一振りである。
 ルテルテ様の帆布が風もないのに波打ったかと思えば、そこから現れたのは巨大な――人間の首など骨までも切断できるような……否、切断するための「鋏」。一瞬でローズの首元に迫り、二つの刃がウェーブの掛かった、夕焼け空のような橙色の髪をも巻き込んで金属の擦れる音と共に閉じ――鋏”を”ローズが切断した。
「夕焼けの薔薇騎士は、伊達ではありませんわよ」
 剣や髪、そして瞳に留まらず意志の力のオーラ――ユーベルコード――までもが夕焼け色のローズが「夕暮れの陽光を纏いて」飛翔し、ルテルテ様に斬り掛かる。しかし再び首元を狙う鋏が現れれば夕焼け色のルーンソードで切り払い、首に拘らなくなった鋏が足元を狙えばドレスの裾を靡かせて宙に舞いながら切り払う。次第にルテルテ様から離れてキャンバスの青空に届きそうになるローズはさながら自身が夕陽のようであり、キャンバスはオーラで夕焼け空へと描き替わっていった。
「邪神の貴方はご存じですの? 秋の西の空が夕焼けなら――」
 夕陽と化したローズは夕の憩いを構え直し、最大の飛翔速度――時速11500キロメートルでルテルテ様に斬り掛かった。UDCアースの文明では音の十倍にも迫るとされる速度の一閃は、光の速度には遠く及ばなくとも十二分に陽光と呼べるほどの速さで帆布に射し込んで斬り抜け、眩い陽光がルテルテ様の曇り顔を蒸発させた。
「秋の西の空が夕焼けなら、明日は晴れると言われておりますの」
 夕陽に包まれたローズは、自身の意志で未来を晴らすために夕焼け色の剣を振るう。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
鮮血のエアブラシにしようってか
悪趣味な芸術になるのはテメエだぜ

神鳴抜いて鋏と斬り合う
布の中から繰り出される動きは見切りにくいので、慣れるまでは残像を囮に使い、凌げねえときはオーラ防御で受け流すようにするぜ

鎖からは逃げ惑いつつ、デストラップを適当に念動力で動かしながら鎖と糸を絡ませて団子にするぜ

攻撃が見えてきたら反撃だが急所が分からんわ
鋏の手元を部位破壊で切断してから眉間とか狙ってみよう

仕上げに封印儀式で空の『呪いの額縁』を取り出すぜ
式神使いで使役し、邪神封印!
これぞ邪神展だ
脱出されても満身創痍の寸法よ

終わったら芸術家を締めに行きますか
首吊ってんじゃねーだろうな
囚われの女性は協力して封印を解くよ



●命に勝る芸術は無い
「首ばっか狙って、ちょん切って鮮血のエアブラシにしようってか」
 悪趣味な芸術になるのはテメエだぜ――四王天・燦(月夜の翼・f04448)は、一振りの刀を抜く。雲一つない夕焼け空が描かれたキャンバスの下、刀身は夕焼けより紅い雷を帯びていた。
 猟兵達の猛攻によりズタズタの帆布となったルテルテ様は、それを逆手に自身の帆布の切れ目からも鋏を繰り出す。燦が神鳴で受け、金属音を立てては紅い雷が帆布を焦がしていく。鋏と妖刀が切り結ぶ中、ルテルテ様の頭部から二本目の鋏が飛び出て燦の首を断ち切り――。
「――肉を切らせて、か。だけど」
 断ち切られた燦の首は切り離された身体ごと掻き消え、消えゆく先には燦が神鳴を振るっていた。
「アタシは無傷で帰んなきゃなんねえんだ。くれてやれるのは残像くらいだぜ」
 振り上げた神鳴が鋏を断ち切り、さらに返して眉間と呼ぶべき頭部に振り下ろした。しかし頭部はただ膨らんだ帆布だけで、在るべき鋏の柄にさえも当たっていない。
「こっちも手応えねーな……おっと!」
 ルテルテ様の首の鎖を神鳴が打ち据えると同時に、鎖が神鳴を絡め取った。手まで絡め取られると感じた燦は咄嗟に手放すが、鎖は首を狙って飛んでくる。息を呑みながら飛び退いて、燦の狐耳を鎖が掠った。
「首フェチには悪いが、アタシの首はマークも御免だって。それと――」
 一ヶ所でも巻き付けば、という風に暴れる鎖を燦は避け続ける。空手で捕まればどうなるかをたった今見ている燦は持ち前の身のこなしで躱し――。
「――『ヒミツ』は女の子の方が遥かに秘めているんだぜ」
 キャンバスから無数の鋼の糸が飛び出し、鎖を絡め取った。燦はこの瞬間に至るまで、切り結びながら、そして避けながら無数の鋼の糸――デストラップを仕込んでいたのだ。燦自身を囮に、全周から念動力で放たれたそれらはルテルテ様を縫い留めていた。

「それじゃあ、仕上げはこいつを使おうか」
 燦がキャンバスの一部をめくり上げ、取り出したのは――額縁。ユーベルコード「巫術『封印儀式』」による、真っ白なキャンバスの「呪いの額縁」だった。
「色んな芸術で感性を刺激してくれたお礼だ。アタシの作品にしてやるよ」
 既に襤褸切れと何ら変わりないルテルテ様は鎖を暴れさせようとするが、鋼の糸がそれを許さない。
「遠慮なく味わいな……『御狐・燦の霊力をもって彼の者を封じよ!』」
 燦に操られた額縁はルテルテ様を引き寄せる。襤褸切れが暴風に靡くようにバタバタと跳ねながら額装されたキャンバスに当たり、ルテルテ様が取り込まれ、描かれていく。
「作品のモデルになってくれたお礼に表題は教えてやるよ。表題は……」
『ア……アア……!』
「『女の子の命に勝る芸術は無い』、だ」
『アアアアアア……!』
 ルテルテ様は断末魔を残しキャンバスに沈み、完全な姿で描かれたそれはすぐさま薄れていく。燦の振るった神鳴はルテルテ様の肖像画を首のところで両断し、額縁はキャンバスごと黒く変色し崩れ去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●展示替え
 企画展の最終日は夕刻の早くに閉館となる。次の企画展への展示替えがあるからだ。邪神というUDC怪物の展示場もまた、猟兵達の浄化の力を込めた霊力や鎮魂の調べにより撤収が進む。上下左右前後を飾る額縁も取り払われ、猟兵達は地下収蔵庫――現実世界へと引き揚げてきた。
 猟兵達は運輸業者や補修業者――全てUDC組織職員だが――と相談しながら、修行納めの一環として美術館とその一帯の邪気を祓い、封印された犠牲者がいる可能性のある美術品をUDC組織支部行きのトラックに運び出していった。それらの作者の身辺を洗い出すための情報収集に向かう者もいた。

 このフィクションのような出来事は、現代の地球――UDCアースで繰り広げられている数多の世界滅亡の危機の一つに過ぎず、そして大衆の知るところではない。だが、これらの事件が解決されているから、世界には当たり前のように新たな朝が訪れるのだ。

最終結果:成功

完成日:2021年11月22日


挿絵イラスト