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アルダワ・秋の大運動会

#アルダワ魔法学園 #戦後

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●グリモアベース
「みなさま、アルダワ魔法学園で『秋の大運動会』が開催される運びとなりました」
 フロワ・アンプローザ(元悪役令嬢・f34014)がにこやかに告げた言葉に、猟兵たちの頭に疑問符が浮かぶ。
 アルダワ魔法学園の運動会が猟兵と何の関係があるのだろうかと。
「学園から猟兵のみなさまに特別ゲストとしての運動会への参加の打診が来ております。大魔王を倒した真の英雄であるみなさまの勇姿を学園の生徒たちに見せて頂きたいと」
 一般的な運動会のプログラムの他に猟兵たちの勇姿を生徒たちに見せるための『特別プログラム』が開催される事になったという。
「プログラムの内容は『パン食い競争』『障害物競争』『借り物競走』など運動会では一般的なもの他に、『特別プログラム』として『迷宮タイムアタック』が開催されます」
 一般的なプログラムは学園の生徒に混じって参加する事になるが、猟兵にはハンデが課せられる。
 パン食い競争なら魔法生物のパンが襲いかかる。
 障害物競争なら明らかに難易度がおかしい罠が仕掛けられる。
 借り物競走なら普通にありえない物を借りてこなくてはいけなくなる。
 ……等である。一般人ではあり得ないが、猟兵たちなら何とでもなるだろう。単純に観客として参加する事も可能だそうだ。
「迷宮タイムアタックは迷宮に出現するオブリビオンを撃破しながら出口までのタイムをみなさまで競って頂きます」
 オブリビオンをどう倒すか以外にも、迷宮を迷わずに進む方法や、仕掛けられた罠への対処法など考える要素は多いだろう。
 迷宮の様子は大型魔導ビジョンで大運動会の会場に中継される事になる。学園の生徒たちに与える影響も大きいはずだ。
「学園の生徒もみなさまの活躍を楽しみにしております。どうか奮ってご参加くださいませ」


さわま
 オープニングをご覧いただきありがとうございます。

 今回はアルダワ魔法学園の運動会に参加しようというお遊びシナリオです。
 今回は第一章のリプレイのアップ開始を9月28日の夜に設定させて頂きます。(🔵が5以上でクリアしてしまうと、それ以降のプレイングが送れなくなる為の処置です)。
 執筆自体は早めに行っていきますので、何度かプレイングを送って頂けると確実に採用できると思います。(当日あまりにプレイングが来た場合は『できる限り』で対応いたします)

●第1章 日常『秋の大運動会』
 アルダワ魔法学園の秋の大運動会に参加します。オープニングであげたプログラム以外にも参加できますのでそこはご自由に。行動もプログラムに参加するも良し、仲間を応援するも良し、みんなでお弁当を食べるも良しです。
 グループ参加の場合はプレイングで分かるようにして頂ければ助かります。

●第2章 集団戦『モリフクさま』
 迷宮タイムアタックを行います。みなさまのプレイングを見て踏破タイムを競う形になります。

 ご縁がごさいましたらよろしくお願いします。
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第1章 日常 『秋の大運動会』

POW   :    力こそパワー! で押し切る

SPD   :    要領が一番♪ 器用にこなす

WIZ   :    対戦は相手を知ってこそ。作戦で勝つ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マリウス・ストランツィーニ
たまには訓練も兼ねてこういうイベントに参加するのも良いだろう。

障害物競争に参加するか。走ったりジャンプしたりは戦闘で慣れているからな。
ほう、この紅茶がギリギリまで注がれたティーカップを持って、一滴もこぼさずにゴールしろと……良いだろう。
全速力で、細心の注意をしながら駆け抜ける!

くっ!危ない!思ったより障害が多い!
し、しかし中継されている中で恥はかきたくない!

ゴールまで後少し!【気合い】で乗り切るぞ!
うおおお!
はあはあ、私は紅茶より珈琲派だ!

(ゴールと同時にティーカップを割る)




 晴れわたる青空にパンパンと花火が上がった。
 秋の清涼な空気と暖かい日差しが、今日が絶好の運動会日和である事を示していた。

 マリウス・ストランツィーニ(没落華族・f26734)のポニーテールが穏やかな風にふわりと揺れる。
 彼女が居るのはアルダワ魔法学園の大運動会の会場である。これから障害物競争にゲスト猟兵枠で参戦するために係員の説明を受けていた。
「ほう、このカップの中身を零さずにゴールまで駆け抜けろと……良いだろう、その挑戦受けてたつ」
 不敵に笑うマリウスの手には、なみなみと紅茶の注がれたティーカップがあった。
「名門ストランツィーニの名にかけて一滴たりとも紅茶を零すことなく、優雅にゴールする事をここに宣言しよう」
 係員から向けられたマイクにマリウスは堂々と答える。彼女の宣言は大型魔導ビジョンで会場全体に響きわたった。
 パンという雷管の音に参加者は一斉にスタートする。マリウスも大きなストライドでスタートダッシュを切り先頭に立つ。
 激しい脚の動きにもかかわらず彼女の上半身の体幹は全くブレず、手のティーカップは微動だにしなかった。
 始めの障害物は平均台の上を走るというものだ。速度を落とすことなくマリウスは駆け抜ける。
 その次の跳び箱を何なく飛び越え、紅茶をこぼさないよう細心の注意で網をくぐり抜ける。たとえハンデがあったとしても普通の障害物では彼女の進撃を止める事はできなかった。
「な、これは……」
 そんなマリウスが足を止める。
 そこにあったのは魔法で高速回転する巨大なコーヒーカップ。このコーヒーカップに乗って一定時間耐えるという障害だった。
 普通ならば多少目が回るだけの障害であるが、マリウスにはハンデがある。
 こんな回転を受ければ紅茶は確実に溢れてしまうではないか。
 マリウスの脳裏に『撤退』の二文字が浮かび上がる。しかしそれは一瞬だけであった。
(「こんな中継されている中で、ちょっと調子に乗って家名まで出しちゃったのに恥をかくわけにはいかないじゃない!」)
 はいた言葉は飲み込めない、覆水盆に返らず。
 顔に出さずに心の内で悪態をつくと、マリウスは覚悟を決めた。
 ——こういうピンチには気合だ! 
 ——気合があれば何でもできる!
「うおおおおおおおおおおお!!!」
 雄叫びとともにコーヒーカップに乗り込んだマリウスは、そのままコーヒーカップの回転とは反対向きにコマのように回転を始める。
 自らの回転の速度をコーヒーカップと同調する事で、高速回転するコーヒーカップの上で静止してみせた。
 ティーカップに注がれた紅茶の表面は少しのゆらぎもない湖の水面のように優雅であった。
 その神業に会場中から大きな歓声が上がった。
 大歓声に迎え入れられてマリウスは一番最初にゴールテープを切る。
 勇姿を讃えマイクを持ったインタビュアーが近寄ってくる。
 マイクを受け取ったマリウスはまだ湯気の立つ紅茶に優雅に口をつけた。
 おもむろにマイクを手に口を開く。
「はあはあ、私は紅茶より珈琲派だ!」
 そして紅茶の入ったティーカップを地面に叩きつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マデライン・アッシュリア
仲良しの嬉乃・抹茶子(f07810)さんとご一緒に参加しましょう

ふふ、楽しそうですね
スキル「集団戦術」を応用すれば
息もぴったり、二人三脚もうまくできるはずです
さあ、いちに、いちに
ふふ、「ダンス」をする要領ですよ、嬉乃さん
以前、あなたと一緒に踊った時のようにね

呼吸が合ってきたら「ダッシュ」でスピードを上げていきましょう
あら、謎の妨害が?
ふふ、「呪詛」の「誘導弾」を放って迎撃しましょう
嬉乃さんのUCも回避に役立つはずです
私もUCを使って相手をマヒさせてしまいましょう
さあ嬉乃さん、一緒に…ゴールです!

ふふっ、でも、一番楽しみなのは嬉乃さんのお弁当かも


嬉乃・抹茶子
 来ましたね、食欲の秋!
 でも、今日のところは運動しとこっと(お腹をフニフニ摘まみつつ)。
 マデライン・アッシュリア(死の花嫁・f32233)さんと『二人三脚』に参加しま~す。
 アルダワの生徒でもなんでもない外様の私たちですが、やるからには一位を狙っていきますッ! せ~の、いっちに、いっちに!
 時には勇み足でズコーっと転んじゃうかもしれませんが、そこはご愛嬌ということで……。
 それにしても、ハンデがあるって話でしたケド、いったいなんでしょうね――。
 臆病者なので何が起こるかチョット心配ですが……。
 ユーベルコードの【スカイステッパー】が逃げや、ショートカットに使えたりしないかな?

 どんな困難も二人で力を合わせれば、きっと何とかなりますよね!
 ヤバそうだったらマデラインさんに泣きつきます。

 参加種目が終わったらお弁当タイム。
 料理は勉強中なので、卵焼きとかタコウィンナーとか簡単なもので。




「来ましたね、食欲の秋! ……でも、今日のところは運動もしとこっと」
 視線を下げてお腹をフニっとつまむ嬉乃・抹茶子(至高の食を求めて・f07810)に、マデライン・アッシュリア(死の花嫁・f32233)はクスリと笑みを浮かべる。
「ふふっ、今日は楽しみましょうね」
「はいっ! でも、やるからには一位を狙っていきましょうッ!」
 マデラインの方を見て、顔いっぱいにやる気をみなぎらせる抹茶子はとても可愛らしい。
 キラキラとした目を向けられて、マデラインも今日は楽しい一日になりそうだと心を弾ませた。


「どの競技に出場しましょうか?」
「ふふっ、障害物競争なら得意ですよ。屋敷を召喚して障害物を一掃したり、透過して障害物をすり抜けたり……」
「思いっきり力技じゃないですか!?」
 観客席のシートに並んで座りこんで、2人は参加する競技の相談をしていた。
 2人で1枚のプログラムに目を落として書かれている競技を検討していく。
 その競技のひとつに抹茶子は目を止めた
「二人三脚……これなら一緒に参加できますね」
「ああ、二人三脚ですか、それは楽しそうです!」
 お互いに顔を見合わせてニッコリと笑う。
 参加する競技は二人三脚に決まった。


 参加登録を終えた2人は本番までのわずかな時間に練習をする事にした。
「さあいきますよ!」
 お互いの足を紐で繋ぐと抹茶子は大きく足を踏み出す。勇み足とでもいうものか、途端に2人は足をもつれさせて転倒してしまった。
「す、すいませーん」
 ちょっと泣きそうな顔で謝る抹茶子にマデラインは気にしていないとばかりに目を細めた。
「ふふっ『ダンス』をする要領ですよ、嬉乃さん」
 以前一緒にダンスを踊った時の事を思い出しながら、座りこんだ抹茶子の手を掴み立ち上がらせる。
 そして抹茶子の右手はマデラインの右肩に、マデライン左手は抹茶子の左肩にと、お互いの肩を抱き合うように身体同士を近づけさせて横に並んだ。
「今度はいちに、いちに、と声をかけ合ってやってみましょう」
 マデラインの声に抹茶子がふり向くと息づかいが聞こえてきそうなほどに近い位置に整ったマデラインの顔があった。
 真っ白な肌に長いまつ毛、それにいい匂いもする。抹茶子は同性ながらも思わず見惚れてしまいそうになる。
 反応がなくて心配そうな表情を浮かべたマデラインに抹茶子は慌てて返事をした。
「わ、わかりました。いっちに、いっちに、ですね!」
 マデラインが嬉しそうにうなずく。
「さあ、いちに、いちに」
「いっちに、いっちに」
「いちに、いちに」
「いっちに、いっちに」
 最初はおそるおそるでぎこちなかった2人の動きも、たちまち息の合ったスムーズなものになっていった。


「せ~の、いっちに、いっちに!」
「いちに、いちに」
 競技本番。スタートから元気にとばす抹茶子にマデラインもしっかりと息を合わせる。
「さあ、スピードを上げていきましょう」
 そのままかけ足の速度まで加速していく。
 互いの呼吸がバッチリ合った走りに、グングンと後続との差が開く。
「それにしても、ハンデがあるって話でしたケド、いったいなんでしょうね」
 どこか不安げな抹茶子の顔に、マデラインはふふっ、と微笑む。
 と、前を向き直るとコースの前方になぜか巨大な召喚陣が描かれている事に2人は気づいた。
「マデラインさん……あれ」
 嫌な予感に半泣き状態の抹茶子に「大丈夫」とマデラインは優しく声をかける。
 召喚陣の手前まで来たところで、光を放った召喚陣から巨大なドラゴンが姿を現した。
「ひぇッ!?」
 小さな悲鳴をあげる抹茶子。ドラゴンは口を大きく開くと炎のブレスを2人に向かって吐き出した。
 とっさに抹茶子がエーベルコード『スカイステッパー』を発動させる。
「マデラインさん!」
「ええ、嬉乃さん」
 二人三脚の状態で2人は大きく跳躍。炎のブレスのすぐ上の空気を蹴って、息をそろえて駆け上がっていく。
「ふふっ、今度はこちらの番です」
 空中の2人を威嚇するように吠えるドラゴンに、今度はマデラインがユーベルコード『寿げ死の婚礼、祝え亡びの典礼(ハッピーブーケ・オブ・ネクストデス)』を発動させる。
 空中に出現した白薔薇のブーケをマデラインは右手、抹茶子は左手を使って2人で一緒に持った。
「『さあブーケトスですよ』」
「えーと……『おめでとう、あなたが次の死者ですね』」
 マデラインのセリフを抹茶子が引き継ぎ、2人で息を合わせて純白のブーケを空中に投げ入れる。
 弧を描いたブーケはやがて地上に向かって落下していき、ドラゴンへとコツンとぶつかった。
「グ、グギャアアアアア!!」
「さあ、いちに、いちに」
「いっちに、いっちに」
 麻痺を起こし亡霊の群れに襲われるドラゴンを背に2人はゴールに向かって二人三脚を再開する。
「さあ嬉乃さん、一緒にゴールです!」
「やりました! 一着ですよ、マデラインさん!」
 ゴールテープを2人一緒に切る。
 勝利の喜びを分かち合うマデラインと抹茶子であった。


 競技のあとはお腹が空くものだ。
 昼休みになり抹茶子がお弁当の入ったバスケットを取り出す。
「ふふっ、今日は嬉乃さんのお弁当が一番の楽しみだったんです」
 本当に嬉しそうなマデラインに抹茶子も釣られて笑顔が浮かぶ。
「料理は勉強中なので手の込んだおかずはありませんが……どうぞ!」
 マデラインに差し出したお弁当箱には卵焼きにたこウィンナー、唐揚げ、サラダと簡単で定番のものが入っている。
「こっちはおにぎりです。お口に合えばいいんですけど……」
 自信なさげな抹茶子にマデラインは卵焼きをつまむとパクリと口の中に入れる。
 少し甘めに味付けされた卵焼きは少し疲れた身体沁み渡っていくような優しい味だ。
「とっても美味しいですよ。今日はお誘いいただきありがとうございました」
 ニッコリ笑ってお礼をいうマデラインに、抹茶子の表情もパッと明るくなる。
「こちらこそ、今日はマデラインさんと一緒で楽しかったです。ありがとうございました!」
「ふふっ、どういたしまして」
 楽しそうな笑い声が青空へと消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『モリフクさま』

POW   :    翼びんた
単純で重い【翼】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    人をダメにするもふもふ
【胸部のモフモフ】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    うぉーみんぐあっぷ
予め【羽ばたく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。

イラスト:橡こりす

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 競技は滞りなく進み、午後の早い時間で一般競技は全て終了となった。
 しかしアルダワ学園の大半の生徒と観客たちは会場から去る事はなかった。
 これから猟兵による特別プログラム『迷宮タイムアタック』が開かれるからだ。
 この迷宮タイムアタックはアルダワ学園の地下迷宮の一区画で行われ、その様子は大型魔導モニターによって観客たちへと中継される事になっている。
 ちなみに今回使用する迷宮に猟兵でない一般冒険者が挑む場合、迷宮突破に早くて数日、場合によっては数週間かかるとの事だ。
 普通に考えれば1日開催の運動会のプログラムとして組み込む事がおかしい難易度なのだが、そこは猟兵である。
 ——英雄である彼らなら問題ないだろう。
 と、観客たちは期待に胸をふくらませていた。
マリウス・ストランツィーニ
障害物競争はなんとかクリアできたな。
この勢いで迷宮タイムアタックにも挑むぞ。

刀と銃を両手に構えて「ダッシュ」で進んでいく。
出現する敵から放たれるもふもふはUCで吸収し跳ね返し、逆にもふもふにしてやろう。

罠で壁から飛んでくる矢やら鉄球やらは銃による「制圧射撃」で対処したり、「スライディング」で避けていく。

ふう、もう結構進んだか……?
あ、しまった……迷った!……かもしれない

こうなったら古典的だが右手の法則で右側の壁沿いにひたすら進んで意地でもゴールしてやる!
(落とし穴等がないことを願いながら)




「せいっ!」
 マリウス・ストランツィーニ(没落華族・f26734)が裂帛の気合と共に右手の名刀『八重霞ノ太刀』を横薙ぎに振るった。
 その剣閃が彼女に飛びかかってきた魔獣を真っ二つに引き裂く。
 さらに背後に向かい左手の金色の回転式拳銃『リヴォルベル・ペル・ストランツィーニ』の引き金を引けばパンッと乾いた音の後に彼女の背後でドサリと何者かが倒れ込む音がした。
 マリウスがゆっくりと背後に振り返る。見ればダンジョンの石床に脳天を撃ち抜かれて事切れた妖魔が転がっていた。
 ダンジョンに潜ってから何度目かの戦闘を終えたマリウスは息ひとつ乱した様子もなかった。
 そしてダンジョンの出口を目指し再び走り出す。
 その一部始終を中継していた会場では大きな歓声が上がっていた。観客たちはマリウスの圧倒的な強さに感嘆の声を上げる。
「魔獣を一撃でしとめる剣の冴えは見事ですな」
「正確無比な拳銃の腕には惚れ惚れします」
「多数の魔物に囲まれても踊るような立ち回りで敵を翻弄する姿は美しさすら感じますね」
 マリウスが戦っていた魔物は熟練の冒険者パーティが準備を重ね、時間をかけて討伐するような強さのものたちだった。
 それを彼女はものの数十秒で片付けてしまったのだから観客たちの興奮も仕方のない事だ。
 その後一旦落ち着いたかに思えた会場であったがすぐに大きな歓声が沸きたった。
 会場中央の大型魔導ビジョンには、大量の罠が仕掛けられた回廊を止まる事なく全力疾走するマリウスが映っていた。
 飛んでくる矢や鉄球を銃撃で撃ち落とし、落とし穴を飛び越え、前方から転がってきた大岩を一刀両断する。
「普通はまず罠がないか探知するよな?」
「一歩一歩解除や無効化しながら進む所よね?」
「罠に構わず強行突破するとか信じられない」
 観客の中には現役の冒険者も多い。マリウスの型破りな対処法に会場中で声にならないため息がもれていた。
 それにしてもこのままのペースで突き進めばとんでもない記録が生まれるのではないだろうか。
 そんな期待が観客たちの間に広がっていった。
 と、その時だった。大型魔導ビジョンに映るマリウスが突然足を止めたのだ。
 何事かとざわめきが起こる会場にスピーカーからマリウスの呟く声が響き渡った。
「あ、しまった……迷った! ……かもしない」
 シーンと会場が静まりかえる。そして観客たちが次々と驚きの声を上げていった。
「えっ、迷った?」
「何で? マッピングは?」
「ここまで全然迷いなさそうに進んでたよね!?」
 そんな困惑した会場の空気を知らないマリウスは少しの間うーんと唸って考え込んでいたかと思うと、大きくうなずいて再び動き出す。
「えっ? あれってひょっとすると」
「マジか……」
「右手の法則……ウソだよね」
 絶句する観客たちをよそに、マリウスは右手の壁に近づいてその壁沿いに勢いよく駆けてゆく。
 彼女は襲いくる魔物の群を蹴散らし、罠を踏み越え、迷宮中をめぐる勢いで突き進んでいった。
 もはやその様は迷宮マラソンとでも言えば良いだろうか……。
 観客たちは呆然とマリウスを観戦する事しか出来なかった。
「ぜぇ、ぜぇ……何とかゴールについた……」
 迷宮に入って2時間13分後。
 汗だくになりながらマリウスは迷宮の出口に辿りついた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

嬉乃・抹茶子
【幽霊屋敷】
 午後からの種目は迷宮探索ですね。
 任せて下さい! ダンジョン系のゲームならプレイしたことがありますよ!
 取り出したりますは方位磁石と方眼紙! これでマス目を少しづつ埋めていけば迷わずにマッピング完了って寸法です!
 でも現実のダンジョンだと、歩いているといつの間にか距離感とか滅茶苦茶になってきますね……。
 なんかこの地図、あってるのか心配になってきました……あはは~。
 さて、最深部にはどんな強敵が待ち受けているのか、ゴクリと唾を飲みこんで――。

 って、フクロウさんじゃないですか!?
 えっ? この子を倒すの? え~……。
 乗り気ではないけど、炎とプロレス技を駆使して戦います!


ココ・エネコ
アドリブ・連携○
「技能:運搬、ダッシュ」

「幽霊屋敷」

「迷宮かぁ〜…でもここはボクのジャスティスブリンガーで!」

ココは自分の相棒のスーパーロボット、「ジャスティスブリンガー」に乗って

「みんな!乗って!」

仲間にそう声をかけてジャスティスブリンガーを操縦して仲間を「運搬」して「ダッシュ」で迷宮を疾走する


ナスターシャ・ハイドフェルド
アドリブ・連携○
「幽霊屋敷」

「まぁ、迷宮ですわ!…ココ様のキャバリアに乗って突破するとして」
ココのキャバリアに乗って、アイテム「バレンタインラブ」を構えて
「迎え撃つ敵は排除ですわ!」
【指定UC】発動
敵に対して「乱れ撃ち」をしていき他の味方を「援護射撃」で味方が攻撃しやすいようにする


マデライン・アッシュリア
【幽霊屋敷】
複雑そうな迷宮ですが
皆さんが集まってくださればきっと大丈夫です

私の機動幽霊屋敷を召喚……というのは難しそうですね
この迷宮に屋敷のサイズでは少し大きすぎます
ここはエネコさんのキャバリアに「運搬」してもらいながら
進んでいきましょう

嬉乃さんのマッピングも頼りになるでしょうし
私もアイテム「プレイヤーフォーデス」のオーラを「範囲攻撃」で
周囲に展開し、センサーのように状況を探っていきましょう

あら、敵も出てくるのですね
皆さんをアイテム「白薔薇の香気」でガードしつつ
「殺気」を放って「恐怖を与え」
隙を作ってユーベルコードを発動します

ふふ、楽しい運動会でしたね
皆さんとご一緒できたのが何よりの思い出です




「ドラゴンが出てきた時は死ぬかと思いましたけど、上手くいって良かったです!」
「ドラゴン……過酷な二人三脚でしたわね。お二人ともお疲れ様でした」
 お弁当のおにぎりを上品に食べながらナスターシャ・ハイドフェルド(世間知らずのおっちょこちょいな王姫・f32967)は、マデライン・アッシュリア(死の花嫁・f32233)と嬉乃・抹茶子(至高の食を求めて・f07810)の2人の健闘を讃えるようにニッコリと笑った。
「ボクも出たかったんだけど、ちょっと間に合わなかったのが残念……」
 唐揚げをムシャムシャと食べるココ・エネコ(夢と希望の執行猫・f32999)。
 愛らしい尻尾がシュンとなって少し残念そうだ。
「ふふっ、もしエネコさんもご一緒できていましたら、三人四脚になりましたね」
 しょんぼりしつつもお弁当を美味しそうに食べるココの様子にマデラインは目を細める。
「若干、体のサイズ的に二人三脚は大変だったかもしれませんが……多分何とかなったでしょう」
 ゲットシーであるココはマデラインたちの膝の高さほどの身長もない。まあそれでも何とかなってしまうのが猟兵だろうと、マデラインはアバウトな結論を出した。
「でしたら、午後からの迷宮探索は全員で参加しませんか?」
 抹茶子がそう提案すれば、残りの3人も即座に参加を表明する。
「はい! わたくしも参加してみたいですわ♪」
「ボクも参加するね!」
「ふふっ、起動幽霊屋敷を召喚して迷宮ごと……」
「また力技!? ともあれカルテット、再び結成ですね!」
 抹茶子が顔いっぱいに嬉しさをあふれさせる。
 和やかな青空の下。4人の少女はしゃべるスシとの戦いの思い出と、これから参加する迷宮タイムアタックの作戦を語り合いつつ、仲良くお弁当を食べたのであった。


 かくしてマデライン、抹茶子、ココ、ナスターシャの仲良し4人娘、チーム『幽霊屋敷』は迷宮タイムアタックに挑むことになった。
 会場の大型魔導ビジョンには迷宮内の4人の姿が映し出されていた。
 まず初っ端から観客の度肝を抜く展開となった。
「迷宮かぁ〜……でもここは——さぁ! いくよ!」
 ココの熱き叫びが迷宮に響き渡る。その声に応えるように閃光が走り迷宮を白い光がおおう。
「パワーチャージMAX!」
 光が収まるとそこには正義のスーパーロボット『ジャスティスブリンガー』の勇姿があった。
 ド派手な展開に会場では歓声が上がる。
「みんな! 乗って!」
 スピーカーからココの声が聞こえる。
 その声に頷いた3人はジャスティスブリンガーの肩へと華麗に飛び乗った。

「さあ、飛ばすよ!」
 ココがコクピットで操縦桿を握りしめると、ジャスティスブリンガーがダンジョンの奥へ向けて疾走を始める。
「まぁ、迷宮探索ですわ! 罠はココ様のジャスティスブリンガー様で蹴散らせますわね」
「任せて! このジャスティスブリンガーに対人用の罠は通用しないよ!」
 ナスターシャやココの言う通り。疾走するジャスティスブリンガーは床に設置された落とし穴や麻痺や毒の床をもろともせずに突破していった。
「ふふっ、守りは任せてくださいね」
 マデラインが周囲に『呪われし白薔薇の香気』を展開して、飛んでくる矢や火の玉の罠を吹き飛ばし仲間たちを守り通す。

 次いで4人に降りかかるのはモンスターの群れであった。
「向かってくる敵は排除ですわ!」
 ナスターシャがドレスのスカートの中からPDW(パーソナルディフェンスウェポン)を取り出す。
 これは貫通力のあるアサルトライフルの銃弾を片手でも射撃可能にした携帯火器である。
 ナスターシャはPDWを優雅な所作で両手で構えると、遠くから接近してくるモンスターに狙いをつけて引き金を引く。
「バレンタインラブは今日も絶好調ですわね♪」
 タタタ、タタタと乾いた銃声が響き、薄暗い迷宮がマズルフラッシュで明滅する。
 銃撃はモンスターへと命中し、貫通力のある銃弾が硬い装甲を貫く。
 その瞬間、ナスターシャのユーベルコード『ペインザ・ブラッド』が発動した。
 貫通力のある硬い弾頭の銃弾は装甲を貫いた後は柔らかい体内を抜けて外部へと放出される。
 一方で柔らかい弾頭の銃弾であれば装甲で止まってしまう事もあるが、体内に入った際に衝撃で弾頭が変形し銃弾が体内に残り体組織をぐちゃぐちゃにしてダメージと痛みが増す。
 そしてペインザ・ブラッドの効果とは装甲を貫通した弾丸を体内から抜けにくい形状に変化させるというものだった。
 硬い弾頭と柔らかい弾頭の良いとこ取り……というかひたすらエグい効果のユーベルコードである。
「これは痛いですわよぉ〜!」
 素敵な笑顔のナスターシャ。セリフはエグい。
 痛みでモンスターが悶え苦しんでいる間に4人を乗せたジャスティスブリンガーは難を逃れて先へと進んでいった。

 マッピングとナビゲーションは抹茶子の担当だ。
「任せて下さい! ダンジョン系のゲームならプレイしたことがありますよ……って思っていたより大変です~!?」
 抹茶子が目をグルグルと回しながら周囲と方位磁石を交互に見る。
 そして手元の方眼紙をグリグリと埋めていく。
「嬉野さん、大丈夫?」
「抹茶子様、お気を確かになさってくださいまし」
「ねぇ、ボクが速度を少し落とした方が良い?」
 なにせダンジョンを高速で疾走するジャスティスブリンガーに合わせてマッピングをしているのだ。
 あたふたする抹茶子に3人の心配そうな目が向いた。
「だ、大丈夫です! このままで、突っ走りましょう。次は右へいってください!」
「うん、わかった! 了解だよ~!」
 せっかくみんなで参加したのだから少しでも良い結果を残したい……何か距離感も滅茶苦茶になってきている気がするが。
(「なんかこの地図、あってるのか少し心配になってきました……あはは~」)
 不安を押し殺しつつ、抹茶子は必死にナビゲートをするのであった。


「この先が出口のはずです」
 抹茶子が指をさす方向にあるのはダンジョンの最奥の部屋だ。
 4人の間にも緊張が漂いゴクリと唾を飲む。
「中から敵の気配がしますね」
「うぅ~、強敵の予感がします」
 マデラインの言葉に抹茶子は弱気になる。
「抹茶子様、わたくしたちがついておりますわ」
「ボクたち4人なら負けるわけないよ!」
 ナスターシャに抹茶子は手を包み込むように握られ、ココの励ます声に合わせてジャスティスブリンガーがグッと親指を立てる。
 目をぱちぱちと瞬かせた抹茶子にマデラインが笑いかける。
「ふふっ、2人に言いたいことは言われてしまいましたが、皆さんで力を合わせればきっと大丈夫ですよ、嬉乃さん」
「……はいっ! その通りですね!」
 抹茶子の元気な返事に、3人がうなずく。
 そして、ジャスティスブリンガーから降りて戦いの準備を整えた彼女たちは、最奥の部屋へと突入した。

 部屋に突入した4人の前にはモフモフした巨大なフクロウの集団がいた。
「え~っ、フクロウさんじゃないですか!?」
「あら、ふふっ」
 先ほど決意のようなものを固めた抹茶子が目の前のほのぼのとした光景に困惑の声をあげ、意外な敵にマデラインは目を細める。
 しかし見た目がほのぼのとはいえ敵は世界を破滅に導くオブリビオンなのだ。
 猟兵たちを敵と定めて一斉に襲いかかってくる。
 とっさにPDWを腰だめに構えたナスターシャが左右へと銃弾を乱射する。
「先手必勝ですわ」
 そして弾が命中するなり、ペインザ・ブラッドを発動させてフクロウを悶絶させていく。
「さあさあ、どんどんいきますわよ~」
 良い笑顔のナスターシャである。エグい。
「せいっ!」
 動きの鈍ったフクロウに焔を纏った抹茶子が頭上から飛び膝蹴りを叩き込む。
 硬い床に叩きつけられ動かなくなったフクロウを一瞥して、今度は焔を背中から襲ってきたフクロウへと浴びせかける。
 フクロウの群れの間を飛び交い焔と空中殺法で華麗に戦う抹茶子に、背後霊のように近くを浮遊するルチャマスクも満足そうであった。
(「うぅ……ちょっと罪悪感が」)
 見開いた金色の瞳と黒い髪が赤い焔に照らさせてクールな格好良さを感じさせる外面の抹茶子だが内面はこんなものである。

 疾走するジャスティスブリンガーがフクロウへ接近すると拳を腹部へと叩き込む。
「ジャスティスパイルバンカー!!」
 ココの叫びに腕部に装着された巨大パイルバンカーが作動する。
 ドンッと鈍い音が鳴り響き、フクロウがふっ飛び壁へと叩きつけられる。
 ふとジャスティスブリンガーの頭上に影がさす。
 頭上を見ればフクロウが急降下攻撃を仕掛けようとしていた。
 即座に高機動スラスターが作動しジャスティスブリンガーが大きく跳躍する。
「対空パルスナックル!」
 大きく突き上げた拳がフクロウを迎撃する。拳から放出された電磁パルスがフクロウを弾き飛ばす。
 彼女たちの猛攻に次々と数を減らしていくフクロウたちであった。
「私も皆さんに負けてはいられません、ふふっ」
 マデラインが白薔薇のブーケを持って生き残りのフクロウへと近づいていく。
 彼女の周囲には冷たい気配がたちこめていて、それを感じとったフクロウたちはゾクリと全身を震わせた。
 マデラインは一歩一歩ゆっくりと近づく。
 カツ、カツ、と石畳の床に靴音が鳴る。
 ——まるで死を告げるカウントダウンのように。
「さあ美しい死に祝福の花束をささげましょう——『降り注げ婚礼の白薔薇よ弔花と化して(ローズオブノットウェディング・バットエンディング)』」
 マデラインが優しく微笑む。
 何かを愛おしむように。
 この世のものでない『何か』を。
 その手の白薔薇のブーケが空中に浮かぶと、その一本一本が矢のようにフクロウの胸部へと突き刺ささっていく。
「あなたたちにも静寂と安寧を」
 弔花となったその白薔薇はフクロウたちの死を吸ってゆっくりと花弁を散らしていった。


「ゴールです! やりました~!」
「やったね! ボクたちの勝利だよ!」
 ゴールへと辿りつき、喜び勇んで抱き合う抹茶子とココ。
「とっても楽しかったですわ♪」
 そんな2人をニコニコとナスターシャが眺める。
 会場から聞こえてくる大歓声にまじって4人のタイムが発表された。
 結果は43分。
 周囲の予想を超える記録であった。
「ふふ、楽しい運動会でしたね。皆さんとご一緒できたのが何よりの思い出です」
 観客たちから称賛される記録よりも、この4人で楽しい時間を過ごせた事が、マデラインには何よりも素晴らしい事だと感じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月07日


挿絵イラスト