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ススキ祭りのハニワ

#サムライエンパイア #戦後 #【Q】

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#【Q】


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 サムライエンパイアの人々は案外お祭り好きで、国中あちらこちらでいつも何らかのお祭りが行われているという。
 とある村での夜長月のお祭りもその1つ。
 月が綺麗な夜に、村から少し離れた神社の境内に縁日が立ち。団子に焼き芋、焼き栗、銀杏の実やリンゴ飴など、秋らしい食べ物が並ぶ。
 神社の舞台では、巫女さんによる豊穣を祝い感謝する奉納舞も行われ。
 純米酒や芋焼酎など、様々な種類の『神酒』がずらりと並んで捧げられているが。
 一番の楽しみは、そこに辿り着くまでだと言う者も多い。
 なにせ、村から神社までの間の原っぱは、一面ススキで覆われているのだ。
 煌々と照らす月明かりの下で、花咲くススキの穂がきらきらと輝いて見え。まるで光の雲の中を歩いているかのように感じられる。
 だって今は、夜長月。
 長い夜を過ごす日なのだから。
 ススキの道を楽しんでから、屋台や舞いを楽しんでも、夜は終わらないから。
 大きく明るい月の光に照らされた村は、ゆったりと、長い夜を彩っていく。

「それは月見祭りとかススキ祭りとか呼ばれているらしいんだがね。
 折角浴衣もあることだし、そこに遊びに行ってくるといい」
 先日の浴衣コンテストを思い出しながらだろうか、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は猟兵達にそう誘いをかけた。
 確かに、折角仕立てた浴衣を着る機会にはなるし、それがなくとも祭りそのものが楽しいものだから。誘いは大歓迎、という者も多いけれども。
 遊ぶだけに集められたわけではないだろう、と伺う視線も多かったから。
「……まあ、察してる通りだよ。
 この祭りに、オブリビオンの襲撃があるんだ」
 夏梅は、悪戯がバレた子供のように、面白がるような苦笑を見せた。
「現れるのは『ハニワプリンス』。
 それがまた、神社のどこかに紛れ込んでいるようでねぇ」
 乱入して騒ぎを起こそうとしているのだろうが。
 何故かその動きは鈍いようで。
「どうも、祭りが盛り上がることで蓄積された『ハレの霊力』に弱められてるようだよ」
 夏梅の苦笑が深くなる。
 つまり、祭りを楽しめば楽しむほど、ハニワプリンスは弱くなるから。
「おもいっきり遊んでおいで」
 にっと笑った夏梅に、今度こそ猟兵達の笑みがはじけた。


佐和
 こんにちは。サワです。
 今年は8年ぶりに中秋の名月が満月だったとか。

 とある村からススキ野原を通った先にある神社。そこが今回の舞台です。
 天候は、時折穏やかな風が吹く、雲1つない晴天の満月。
 実際の満月は過ぎてしまいましたが、お祭りの日が満月ですということで。

 第1章はススキ野原を神社まで歩きます。
 月灯りに照らされたススキの間を縫うような1本道です。
 ゆったりと穏やかに、美しい景色を楽しんでください。

 第2章は神社に着いてのお祭りです。
 参道の両脇には縁日の出店が並んでいて賑やかです。
 神楽殿では少し静かに、奉納舞が行われています。
 社務所近くでは御神酒と称した様々な奉納酒が振舞われています。ただし、未成年は当然もらえませんし、いただける量も猪口に1杯ずつ程度の少量です。
 納札所近くには木製の長椅子が点在していたり、参道から反れた脇にある池の周囲が日本庭園風に整えられていたり、ゆっくり過ごせる場所もあります。

 そんな神社のどこかに『ハニワプリンス』がいます。
 ですが『ハレの霊力』で動けなくなっているので、誰にも気付かれていませんし、一切の被害を出していない状況です。
 そのため、神社でも引き続きお祭りを楽しんでください。
 楽しめば楽しむほどハニワプリンスは弱体化し、一撃で倒せるようになります。
 参加いただいた方の中からダイスで1名もしくは1組を決め、その方に適当に発見して倒していただく予定です。
 ユーベルコードだけ指定しておいていただければ、対応プレイングは不要です。
 逆に、ハニワプリンスに対するプレイングをいただいても、採用できない可能性があることをご了承ください。

 それでは、ススキと月の祭りを、どうぞ。
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第1章 日常 『美しい景色』

POW   :    美しい景色を目に焼き付ける

SPD   :    美しい景色を写真に残す

WIZ   :    美しい景色を大切な人と廻る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セプテンバー・トリル
うーん、生憎と浴衣はありませんけど…
久しぶりの花を楽しむ機会ですし、ご一緒させてもらいましょうか。
義兄様は『ススキって花か?』なんて言ってましたけど…
花言葉があるのですから、ススキだって立派な花ですわ。
『いや、それだと枯葉やコケまで花になるぞ?』
脳内義兄様、シャラップ。

【WIZ】連携・アドリブ歓迎
さて、いつものように撮影の為に【サーベイヤー】を飛ばしてますけど…
この景色は空撮よりも私自身の目で楽むものでしょうね。
という訳で、サーベイヤーは私の義眼とリンクして画像データを保存するように。

え?依頼のハニワプリンス?
…忘れてませんわよ?ええ、本当に。



 セプテンバー・トリル(ゼネコンのお姫様・f16535)が見上げた夜空には、大きな丸い月が輝いていた。
 雲1つない真っ暗な空に煌々と輝く満月。あまり星が見えないのは、その月光が明るすぎるせいかもしれない。強い光が、でもどこか儚げで淡い印象もある光が、何にも遮られることなく、澄んだ秋の空気が満ちる中に広がっている。
 だがしかし、セプテンバーにだけは、自身と月の間を漂う存在が感じられていた。
 測量支援隠密ヘリ『サーベイヤー』。
 月夜の景色を邪魔することなくいつもの隠密行動をする空撮ヘリは、セプテンバーと五感を共有して秋の夜空を飛び漂う。
「また義兄様に『測量支援ヘリじゃなくて記念撮影支援ヘリに名前を変えたらどうだ?』なんて言われてしまいますわね」
 ちょっとだけ意地悪な、でも優しい義兄の微笑みを思い出しながら、くすくすと楽し気に笑うセプテンバー。
 でも、そう言われても反論し辛いくらい、サーベイヤーの測量記録画像には美しい景色が多く収められているから。それを思い出したセプテンバーの笑みは深くなる。
「久しぶりの花を楽しむ機会ですし」
 かつての依頼の合間に愛でてきた、赤に白、緑に紫といった色とりどりの花々も思いながら、弾む足取りで進むのは、一面がススキに覆われた野原。月光に輝く花穂が柔らかく揺れ、周囲に不思議な波を作り上げていた。
 勧められた通り、浴衣が似合いそうな景色だけれども。残念ながらセプテンバーは着替えておらず。陽気なオレンジ色に白い花を散らした浴衣でも、少し格子柄の入った落ち着いた緑色の浴衣でも、何か見繕ってくればよかったかな、と少しだけ思う。
 でも、そんな服装の悩みなど些事だと言うように、広い野原に広がるススキは美しく。
 穏やかにセプテンバーを包み込んでくれたから。
 これは空撮よりも自分の目で楽しんだ方がいい、と判断したセプテンバーは、五感を共有したサーベイヤーに、ヘリのカメラではなくリンクした光景を、今自分の義眼に映っている景色の画像データを、保存するよう指示を出した。
「義兄様は『ススキって花か?』なんて言ってましたけど……
 花言葉があるのですから、ススキだって立派な花ですわ」
 確かに本来の意味でのススキの花は目立つものではないから。種子の周囲に白い毛が生えてふわふわになった状態をむしろ花として、花穂を愛でることが多い。さらに、種子が熟して花穂が淡い金色へ変化していく、そんな色合いの変化を楽しむこともある。
 本当は花ではないと言われても、月光に輝く花穂が美しいことに変わりはなく。しかもこれだけの数がひとところに集まれば圧巻だったから。満足して、セプテンバーは改めて野原を見渡した。
 ちなみにススキの花言葉は、心が通じる、活力、などだそうですね。
『いや、それだと枯葉やコケまで花になるぞ?』
「脳内義兄様、シャラップ!」
『それと、ハニワプリンス、忘れてないよな?』
「……忘れてませんわよ? ええ、本当に」
『へぇ?』
「本当です! シャラップ!」
 1人呟きながらも歩き行くセプテンバーの姿を、夜空から月とサーベイヤーが静かに見下ろしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
POW
浴衣を着て参りましょう。

神社での縁日も楽しみですが、この道中もすごいですね。
ススキが月に照らされて、金の野原のよう。思わず足を止めてしまいますね。
野原の照りかえしもあってかなり明るい。……明るすぎて少し怖くなってきた。
何もかも見透かされそうで怖い。
心の奥そこに仕舞い込んだ物まで引きずられ、さらけ出されそうで。
少し背の高いススキの影に入って休もうかしら。
でも嫌いじゃないの。月は好きよ。縁だってあると思う。
だけどここまでの強さは今は怖い。



 お祭りと言われ、縁日の屋台を思い浮かべていた夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は、そんな賑やかな境内を楽しみに歩いていたのだけれども。
「……この道中もすごいですね」
 神社へ続く道が通る原っぱ。そこに広がる無数のススキに思わず足を止めていた。
 すくすくとまっすぐよく育つ草、が名前の由来と言われる程に高い背丈で直立するススキは、道の両側に壁のように立ち並び、中には藍を越えるものもあって。その先端は十数本に分かれた穂となり、まるで動物の尾のようにふさふさしている。
 本来の意味での花の時期は終わり、見ているのは実際は種子の状態なのだけれども。穂に並ぶ種子の周囲にふわふわと生えた白い毛は、これこそがススキの花であると思わせる程に美しく、花穂、と呼ばれる所以がよく分かる。
 そんな花穂が、暗い夜闇の中で、月明かりに照らし出されれば。
 広がるのは、白銀色の野原。
 これで種子が熟すと毛が褐色を帯びてきて、今度は金色の野原になるとか。
 いずれにしろ、満月の光の中で輝き、さらに照り返すようなそこは。
 夜とは思えぬほどの明るさになっていて。
(「……少し怖くなってきますね」)
 藍は、背丈の高いススキが多い場所を探し、その陰に隠れるように身を寄せた。
 月の光と、ススキの輝き。
 その明るさに、何もかもを見透かされそうで、怖い。
 何だか、暗い心の奥底にまでその光が伸ばされて。そこに仕舞い込んだものまで引きずられ、さらけ出されてしまいそうな感覚に襲われて。
 藍は身を縮め、ぎゅっと自身を抱いた。
(「でも……嫌いじゃないの」)
 怖いのは本当。
 けれど、月は好きだし。ススキも綺麗だと感じる。
 縁だって、あると思う。占い師としての名に月の字を使っているし、煌めく銀河のような髪はススキ野原に溶けるかのようだし。
 それに、と藍はふと、抱いた自身の姿を改めて見下ろした。
 普段着ているブラウスでも仕事着のアオザイでもなく、祭りに合わせた浴衣。白と水色の縦ストライプを背景に、青い菊の花が咲き乱れる布地に、房のついたレースのストールが爽やかに白を重ねる。濃い黄色を重ねた、青と青緑の帯がきゅっと印象を締めて、黒い板に青い鼻緒の下駄からは白い素足が覗いていた。
 月明かりの下で、銀の野原に佇む青い浴衣。
 その取り合わせも風流で、美しく、好ましいものだったけれども。
(「だけど」)
 藍は握っていた扇子を開いて、浴衣よりも瞳の色に近い藍色の扇面を開いて、その陰にそっと顔を隠す。
(「ここまでの強さは、今は……怖い」)
 嫌いじゃないのは本当。
 けれど……と複雑な思いをまた巡らせ、心を揺らして。
 さあっと吹いた風に揺れる花穂を照らし出す望月に、藍は目を細めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
【POW】

闇色の狼の姿をしたUDC「ツキ」と梟の姿をした精霊「ノクス」を伴って。
ゆっくり歩きながら月光浴でもしましょうか。

月と星が彩る広い夜空にノクスを放し、旋回しながら飛ぶ彼を見上げて。

「UDCアースの空は狭っ苦しいからな。ノクスも喜んでるみたいだぜ」
というツキの一言に苦笑して。

あちら(アース)ではこんな風流な景色はなかなか見られなくなって来ましたね。
美しいススキ野原を見渡して、目に焼き付けながら。

匂いを嗅ぎ取ったか、ツキはまだずっと先に見える縁日が気になる様子。
夜長月。夜はまだまだこれから。焦ってはいけません。

気持ち良さそうに飛ぶノクスに戻るよう合図を出すのはもう少し先で良いでしょう。



 夜闇を押し返す程に輝く、満ちた月。
 星が少なく感じるのは、その光が明るすぎるからかもしれない。
 それでも幾つかの大きな星は、月に負けまいと瞬いて。
 広い夜空を彩り煌めく。
 そんな、雲も木々も遮るものの何もない広い夜空を見上げて。
 シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)はふっと微笑む。
 その青い瞳に映っていた満月を、小さな影が横切った。
「ノクス」
 名を呼べば応えるように影は羽ばたきを見せ。くるりと旋回してシンの頭上を舞う。
 星空を写したかのように煌めく闇色の翼を持つそれは、梟の姿をした精霊で。
 文字通り羽を伸ばして、夜空を飛び回っていた。
「UDCアースの空は狭っ苦しいからな。ノクスも喜んでるみたいだぜ」
 下から聞こえた声に苦笑しながら、確かに、とシンは空を見上げたまま頷く。
 高い建物の多い都市では、物理的な意味だけでなく、精霊という本質でも梟という外見でも気兼ねなく空を飛ぶのは難しい。
 でもそれは。
 と、シンは並んで歩く闇色の狼を見下ろして。
「ツキも喜んでいますか?」
 都市を気兼ねなく歩けないという点ではノクスと同じ大型の狼は、まさかそう聞かれるとは思わなかったとばかりに微妙な表情を見せると。答えをはぐらかすかのように、シンを見上げていた顔をふいっと反らした。
 その仕草にも苦笑して、シンも視線をツキから離せば。
 目に飛び込んでくるのは、白銀色のススキの群れ。
 果て無く続いているかのように見えるその広い原っぱは、爽やかな風に揺らされて、時折波を作り上げながら、月の光を照り返して、その白い花穂を白銀色に煌めかせる。
 満月と星とススキと梟。
「あちらではこんな風流な景色はなかなか見られなくなって来ましたね」
 シン自身も気兼ねなく、目に焼き付けるように、美しいススキ野原を見渡した。
 その視界の上端に、気持ちよさそうに飛ぶノクスの姿が横切り。下端には、何かに反応したかのようにぴくりと顔を起こしたツキが、どこかそわそわしている様子が映り。
 どうしたのかと疑問に思うものの、すぐに、長い闇色の鼻先が、ススキの間を通る道の先を気にしていると、その先には神社が、そして祭りの屋台があると気付いて。
「夜長月……夜はまだまだこれから。焦ってはいけません」
 釘を刺すように言うと、ギクッとしたようにツキの身体が震えた。
 今度は苦笑ではなく微笑んで、シンは進む先を見やる。
 まだ神社は遠く、シンには何も感じられないけれども、もっと近づいたら屋台からの美味しそうな香りがするのだろう。
 ツキが感じたそれをシンも早く感じてみたいと思いながらも。輝く満月と照らされたススキの花穂の美しさを感じられる今も、素晴らしい一時に違いないから。
 自身で言ったように焦らずに。
(「ノクスに戻るよう合図を出すのはもう少し先で良いでしょう」)
 広い空を飛び、美しい景色を眺め、月光浴を楽しんで。
 変わらぬ足取りでゆっくりと、シンはススキの間を歩いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
宵と揃いの秋用着物を身に纏い手を繋ぎながらすすき野を歩こう
肉を得た後所有者とした旅でみた、そしてその後己一人で見た景色を思い出し懐かしげに瞳を細めながらも、宵の言葉を聞けば愛おしい相手を振り返ろう
宵はエンパイアに居た頃は宵はあまり外には出んかったのだったか?
そう声を投げながらも、宵の初めてみる景色の隣に在れる幸せについぞ目元を緩め神社へとむかおうか
僅かに香る土の匂いや黄金色に染まる景色も宵が隣にあるだけで同じ景色も鮮やかな物になるのが本当に不思議で、幸せな事だとそう思う
そう釣られるように笑みを返し顔を見合わせながら繋いだ手を握り直そうか
本当に、月が綺麗だな


逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

秋の着物に袖を通して歩きましょう
ススキ野原を歩くなど、僕がエンパイアにいた頃は経験できませんでした
ええ、邸と俥と塀の中で過ごしていたので
それがこうして、きみと並んで歩けるなんて!

月明かりに照らされたススキ野原の道
さやさやと揺れるススキの擦れる音と風の通り抜けるかすかな音を聞きながら
かれとともに手を繋いで神社へと向かいます

きれいですね
月のことか、ススキのことか、あるいはきみと見る世界のすべてか
でも、ただただきれいだと思いました
きみのかんばせを見上げつつ
繋いだ手を握り返されたなら笑いましょう

はい、きっと―――きみと一緒に見ているから、美しく思うのでしょう



 満月の淡くも強い光の下で、ススキの花穂が白銀に輝き、揺れる。
 見渡す限りに広がる眩い程に美しい景色に、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は銀色の瞳を細めた。
 これまでも様々な景色を見てきた。
 本体であるサファイアの指輪の所有者と共にした旅で。
 その後1人となってからも。
 ヤドリガミとして得たこの身体で、この瞳で。
 記憶に刻んできた数多の光景。
 それらをも思い出し、懐かしさを抱きつつ、ゆるりと歩を進めると。
 ザッフィーロの隣からも、懐古の声が零れた。
「ススキ野原を歩くなど、僕がエンパイアにいた頃は経験できませんでした」
 ふふ、と柔らかく微笑むのは、逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)。旧き天図盤のヤドリガミ。
 その言葉に眉を寄せ、ザッフィーロは振り返り。
「宵はあまり外には出んかったのだったか?」
「ええ、邸と俥と塀の中で過ごしていたので」
 自由のなかった過去を楽し気に語る宵を見やる。
 曇りの一片もなく、嬉しそうに笑うその理由は。
「それがこうして、きみと並んで歩けるなんて!」
 ただ今この時のため。
 初めての景色をザッフィーロの隣で見れた、それだけで。宵は心弾ませ微笑みを零す。
 それはザッフィーロも同じこと。
 宵が初めてススキ野原を歩く、その隣に在れる幸せを感じて。
 サファイアを思わせる藍色の髪の下で、目元を緩ませた。
 繋いだ手を、そっと握り直し。
 その動きにまた笑いかけてくれる宵を見つめて。
 2人はススキの間を歩き行く。
 その服装は、サムライエンパイアに合わせた揃いの着物。褐色肌のザッフィーロの方が少し濃い目の色合いだが、同じ藍色に染められた糸で紡がれて。遠目には無地に見えるほどにさり気なく細かな亀甲紋が施されている。秋口ゆえかはおった羽織は、前を止める組紐に大き目のとんぼ玉が3つずつ通されていたが、揃いの中で1つだけが、ザッフィーロは紫色の、宵は藍色のジュエリーストーンに変えられていた。
 共に歩き、共に眺め、そして共に装う。
 そんな寄り添う2人を、満月が明るく、そして優しく照らし出す。
 ゆっくりと同じ間隔で響く草履の足音。
 風の通り抜ける音と、それに揺れるススキの擦れる音。
 そんな小さな音達が良く聞こえる程に静かな夜。
 その静けさすら景色の一部と楽しむように。
 2つの影は手を繋ぎ、神社への道を行く。
「きれいですね」
 宵がぽつりと呟いたのは、空に煌々と輝く満月のことか。
 それとも、月明かりに照らされた、白銀色のススキのことか。
 あるいは。
(「きみと見る世界のすべてか」)
 どれのことだったのか、宵自身にも分からない。
 でも、ただただ、きれいだと。美しいと思ったから。
 心のままに、零れた声。
 その響きに、ザッフィーロも思う。
(「宵が隣にあるだけで」)
 同じ景色も鮮やかなものになるのだと。
 夜空を照らす満月も。
 淡く輝くススキの花穂も。
 微かに香る土の匂いすら。
 隣に愛おしい相手がいる、それだけで、特別なものになるのが本当に不思議で。
 とても幸せな事だと思うから。
 気付けばこちらの顔を見つめていた宵に、ザッフィーロも釣られるように微笑み。
(「きっと……きみと一緒に見ているから、美しく思うのでしょう」)
 今度は宵から握り直された手を、慈しむように包み込んで。
「本当に、月が綺麗だな」
 宵を見つめたままザッフィーロが告げれば。
「はい」
 黒髪を揺らし、笑みが返った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイシャ・ソルラフィス
【千本鳥居】

(浴衣姿を見比べて)なんでそんなにやよいさんはおっぱい大きいんだろう……ボクにもちょうだい?
という謎の出だしで始まる、いつものマイペース・アイシャです

今回は2019年の浴衣コンで作った浴衣を着用していきます
イラストのたこたん風船を、これと全く同じデザインのたこたん提灯に持ち替えてお出かけ!
結構気に入ってるの、このたこたんっ♪

ボクもゆかりさんもやよいさんも髪をアップにして、普段とは違った魅力なんだぞ~っと。やよいさんもゆかりさんも色っぽい~って言いながら歩きます

話題が尽きたら謡ったり…(歌唱技能10Lv.)
グルメ知識、世界知識、魔獣知識、流行知識の技能で話題提供したりして歩きます!


都筑・やよい
【千本鳥居】
ゆかりさんはお誘いをありがとう。アイシャさんもご一緒で嬉しい
浴衣姿(2021年のもの)で白地に花の柄がある提灯を手にして行くわ
月明かりがあれば提灯もいらないかもしれないけれど

ふふ、三人とも珍しく髪を結いあげてるのね
大人っぽくてとても綺麗 浴衣によく似合ってると思うの
……アイシャさんはそんなに胸見ないで、恥ずかしい

ススキの白い花がまるでふわふわ雲のよう
みあげればお月さま
雲海を渡るかのような幻想的な小道

三人で歩けて、とても幸せ

アイシャさんと歌を歌おうか(【歌唱】)
月を愛でる歌を歌えば、ゆかりさんの祭文に気分も盛り上がってくる
月とススキの、ステキなお祭り
ああ、本当 月明かりの鳥居も、綺麗


村崎・ゆかり
【千本鳥居】

アイシャとやよいは、お誘い受けてくれてありがと。
二人とも素敵な浴衣ね。あたしは浅紫の地に二藍で描かれた紫蘭の浴衣。やっぱりこの色は外せない。
三つ編みはほどいてアップに。二人もそうか。ちょっと別人気分。
アイシャの斬新な提灯を眺めつつ、あたしは伝統的な提灯を持って小路を歩むわ。提灯には、せっかく三人いることだし三つ巴紋を。

ススキ野原を渡る風が目に見えるね。涼やかで気持ちいい。
見上げれば月后。そして輝く秋の星々。この地にも豊穣が約束されますように。

やよいとアイシャの歌声に合わせ、祭文を上げましょう。きっと境内に入れば本職さんがいる。その邪魔をしないように。

ああ、神社の鳥居が見えてきたよ。



 ススキ、という植物を知らないわけではなかった。
 だいたい人の背丈前後の高さにまっすぐ茎が伸びて、その先端に十数本に分かれた花穂をつける。花穂は次第に白っぽくふわふわになって、垂れ下がっていく。葉は細長く、縁が細かくギザギザしていて手を切ることもある。
 十五夜の月見に飾ったり、花穂を縛ってミミズクを形作ったり、見ることも触れることも珍しいわけではないものだったけれども。
 さすがにこれだけの広さを埋め尽くすススキを見るのは、都筑・やよい(祈りの彼方・f31984)は初めてだったから。
 月明かりに輝く花穂の野原に緑色の瞳を穏やかに細めて。
 ここへと連れ出してくれた友人へ笑いかけた。
「ゆかりさんはお誘いをありがとう」
「こちらこそ。お誘い受けてくれてありがと」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)も、どこか嬉しそうに微笑んで、振り返った動きに浅紫色の浴衣が揺れた。
 そこには紅が強めの二藍で、紫蘭の可憐な花が幾つも描かれている。
 いつも三つ編みにしている黒髪は、編み込みながらも高い位置で纏め上げて。そこにも紫蘭の花飾りが、小さくも美しく咲いていた。
 ゆかりの瞳の色に合わせた紫色の姿に、やよいは、ほう、と見惚れて。
 そのまま自身の姿へと視線を落とす。
 大きな白い牡丹の花が咲く、群青に露草色の縦縞模様が描かれた浴衣は、だがよく見ると牡丹の影に、桜に梅に菊にと幾つもの花が混ざっていて。しっかりとした紺色の線で描かれた和の花々は、落ち着いた色合いながらも華やかに踊る。
 長くしなやかな焦茶色の髪は、くるんと頭の後ろで纏めて。大きなお団子には、黄色い布地を牡丹のように幾重にも重ねた髪飾りが添えられていた。
 今年仕立てたばかりの新しい浴衣を着て、こうして出歩けることも楽しく。
 そして、友人達と浴衣姿で合わせられたことも嬉しくて。
「アイシャさんもご一緒で嬉しい」
 やよいは、もう1人の同行者、アイシャ・ソルラフィス(隣ん家の尚くんを毎朝起こす当番終身名誉顧問(願望)・f06524)にも笑いかける。
 こちらをじっと見ていたアイシャの浴衣は、白地に間隔の広いよろけ縞を萌葱色で描いた上に、鮮やかな赤い椿の花を幾つも咲かせたもの。下駄の鼻緒と色柄を合わせた、黒地に白で細かい菱形の格子柄を刻んだ帯が、無地の灰色にも見えて、少し印象を落ち着かせていた……のだけれども。
「なんでそんなにやよいさんはおっぱい大きいんだろう……?」
 じっとやよいを見つめるアイシャの視線は、浴衣ではない部分に向いていて。
 落ち着かせるはずの帯の色合いが泣いています。
「ボクにもちょうだい?」
「えっ? その、ええと……そんなに見ないで、恥ずかしい」
「相変わらずマイペースね、アイシャ」
 ある意味いつも通りの謎な行動に、ゆかりは慣れた様子でにっこり笑い。
「それに、その提灯も。斬新ね」
 困り果てたやよいを助けるかのように、別のものへ意識を誘導する。
「えへへ。結構気に入ってるの、このたこたんっ♪」
 そして見事に話題を反らされ、アイシャが笑顔で掲げたのは、タコを象った提灯。そういえば以前、全く同じデザインのタコの風船を持っていたかとゆかりは思い出し。
 目をバッテンにした顔が描かれた、大きなまんまるの頭と、吸盤などない丸っこくデフォルメされた短い8本足。白地に青い水玉模様のねじり鉢巻きをした、確かに『タコ』というよりは『たこたん』なその提灯に、やよいは目を瞬かせた。
 そんなやよいの手にも、白地に淡く牡丹の花柄を添えた提灯が携えられていて。
「思った以上に明るいから、いらなかったかもしれないけれど」
「でも、風情だから。それにお揃い」
 伝統的な、これぞ提灯、と言えるような形状の提灯を掲げて、ゆかりは頷く。
 確かに、満月の照らす小路は、夜だけれども歩くのに支障がないほど明るくて。足元を照らす役目としては提灯は役に立っていないけれど。
 せっかくの浴衣、せっかくの夜の散策と、3人で揃えた持ち物。
 三つ巴紋の提灯をゆかりが選んだのも、3人でいるのだから、という理由。
 だからこそ、3つの灯りを仲良く揃え、月の光とは違う輝きで、ゆかり達は笑顔を煌めかせていた。
「お揃いといえば」
 そんな中で、ふと、やよいがゆかりとアイシャの顔を改めて見て。
「ふふ、3人とも珍しく髪を結いあげてるのね」
 指摘するのは、これも普段とは違う、お揃いの部分。
 焦茶に黒に金にと髪色は違えども、それぞれ長い髪を持つ3人は。
 真っ直ぐに下ろしていることの多いやよいは大きなお団子に。
 ゆるりとした三つ編みを、ゆかりもアップにして。
 後ろで1つ結びに纏めていることの多いアイシャは、後ろ髪だけを編み込んで首元をすっきりさせ、椿の花のように、小さな赤いリボンを幾つも咲かせていたから。
 浴衣に合わせた髪型に、よく似合ってると思うの、とやよいが笑いかければ。
「普段とは違った魅力なんだぞ~♪」
「ちょっと別人気分ね」
 アイシャは元気にくるりと回って、いつもは尻尾のように揺れている長い後ろ髪がないことを強調し。ゆかりはそっとうなじに手を添え、いつもと違う感覚を楽しむように首を傾げて見せた。
「大人っぽくてとても綺麗」
「やよいさんもゆかりさんも色っぽい~」
「アイシャは、色っぽいっていうよりより元気な印象ね」
「えー。ゆかりさん、ボクも色っぽいがいい~」
 そしてわいわい会話を弾ませながら、3人はススキ野原を進んでいく。
 といっても一番喋るのは、やっぱり元気なアイシャで。
「ススキって『秋の七草』なんだよね。
 確か、萩の花、尾花、葛花、撫子の花……あれっ? ススキない?」
「尾花がススキのことよ、アイシャ」
「そうなんだ!?」
 ゆかりに指摘され大仰に驚くその様子に、好まし気にやよいは微笑む。
 弾む声を聞きながら、視線を周囲へと動かせば。
 ススキの白い花穂が視界を一面に覆っていて。
 まるでふわふわ雲のよう。
 見上げれば、まんまるの満月が煌々と夜空を照らしていて。
 もちろん、ススキの白も照らし、白銀色に輝かせていたから。
 やよいが進む野原の中の道は。
 まるで雲海を渡っているかのような、幻想的な小道に思えて。
 その美しさにまた目を細める。
「そういえば、ススキの茎って中が空っぽなんだって。ゆかりさん知ってた?」
「ええ。そこが神様の宿り場になると信じられていたそうよ。
 鋭い切り口は魔除けになるとも考えられたとか」
「ふーん。面白いね。
 あ、あと、お月見と言えば、ススキの他はお団子だよね。
 月みたいに丸い団子をお供えして、それを食べることで幸せがもらえるんだって。
 他に、里芋とか、さつまいもとかをお供え物にするところもあるんだ。
 枝豆とか栗とか、秋にとれるものなら何でも供えちゃっていいみたい?
 いろいろ食べれて美味しそうだよね~」
「……ススキより説明に力が入ってるわね、アイシャ」
 そしてそこに響く楽し気な声。
 ススキが揺れるさわさわという音に重なる3つの足音にも、やよいは耳を傾け。
(「3人で歩けて、とても幸せ」)
 月とススキと友との、ステキなお祭り。
 だからやよいは、会話の合間にそっと手を挙げて。
「アイシャさん、歌わない?」
「一緒に? 歌いたい!」
 誘えばアイシャはぱあっと顔を輝かせて、足取りをさらに弾ませると。
 折角の景色だしと選んだのは、月を愛でる歌。
 穏やかで優しいやよいの歌声と。
 元気で明るいアイシャの歌声が。
 同じ旋律を紡ぎ上げ、重なり1つになっていく。
 その響きに耳を傾けながら、ゆかりはススキ野原を見渡して。
 揺れる花穂に吹く風を見る。
 涼やかで気持ちいい。
 直接感じる以上に、目から耳から伝わってくる夜風。
 満ちた月と。秋の星々と。輝く花穂と。響く歌声。 
 それらを存分に感じてから。
 ゆかりは、歌声に祭文を合わせ始めた。
(「この地にも豊穣が約束されますように」)
 美しいこの景色のために。
 友との楽しい一時をくれるこの世界のために。
(「境内で本職さんがきちんと上げてくれているでしょうけど」)
 邪魔にならない今のうちにと、ゆかりは思いを紡ぐ。
 祭儀らしい音色に、やよいとアイシャも気分を上げて。
 ススキの雲海に3つの音が染み渡って……
「ああ、神社の鳥居が見えてきたよ」
 楽しい時間はあっという間。
 ゆかりが指し示した先から、賑やかな喧噪が小さく小さく届いてきて。
「お祭りだ~♪」
 跳ねるように喜ぶアイシャの笑顔が弾けると。
 白く輝く道の先、赤く浮かび上がるそれに目を細めて。
「……月明かりの鳥居も、綺麗」
 やよいはまた嬉しそうに呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

竜胆・樹月
イヴンさんと参加(f29503)

【浴衣2021】を着用
お気に入りなんだ
女性ものだけど気にしない

ススキ野原を歩いてみたくて、でも1人で歩くのもなぁ…と思って誘った
女の子は誘えないよ!(心の声)
美味しいものもあるそうだし、付き合って!

ススキ…綺麗だなぁ
風にそよぐ音、満月の灯り…この景色にうっとり
空気も丁度良くて気持ちいい~

ボクはこの世界で育ったんだ
全宇宙に誇れる景色だよね

イヴンさんとススキの話をする
この時期にはこれを飾って団子を食べるんだ
これが花で、白いのは実なんだよ
ボクはこんな大自然の風景が好きなんだ
植物の生命力を感じるよね
感じない?

喋りすぎた後…
無言な空気も心地いい…けど
どうかした?


イヴン・バーガンディ
樹月(f33290)と参加
彼との仲はそこまで深くなく、誘われて驚いた
まぁ、時には楽しむのもいいかと思い…
服装は普段着。ステータス参照

「やっと涼しくなってきたか」
この世界は初めて来た
…平和な景色だと思う

ところでその浴衣は…
ああ…似合うからいいんじゃないか?

主に樹月の話に相槌を打ったり言葉を返したり
「ほぅ、この草には花があるのか、ただの草だと思った」
「花か…、暗くてよくわからないな」
いろいろ詳しくて感心する
華やかな庭園とはまた違った趣が面白いな、と

いや…こんな時間が止まったような感覚に襲われると、昔をいろいろと思い出してしまうんだが…
ここではやめよう

「ああ、祭りが楽しみだ。」



「まさか樹月に誘われるとはな」
 ススキ野原の一本道をゆるりと歩きながら、イヴン・バーガンディ(炎をもたらす者・f29503)は傍らを歩く竜胆・樹月(竜神の剣豪・f33290)にちらりと赤い瞳を向けた。
 朗らかで人当たりのいい樹月に親しみを覚えてはいたけれども、そこまで深い仲になれていたとは思っていなかったから。
『この先に美味しいものもあるそうだし、付き合って!』
 思い出すのは、そう声をかけられ、野原の入り口へと連れられて来たあの時。
『まぁ、時には楽しむのもいいか』
 なんていつもの平静を装って許諾し、こうして同行したものの、何故自分が選ばれたのか、と内心には戸惑いがあり。
「驚いたよ」
 それでも、そんな胸中が嘘のように、イヴンの表情は落ち着いたもので。零れた声も、その言葉が嘘ではないかと思える程に平坦なものだった。
 だからこそか、樹月は、多少申し訳なさそうにしつつも楽し気に笑い。
「ここを歩いてみたくて。でも1人で歩くのもなぁ……と思ったんだ」
 大きく両手を広げて、左右に生え広がり揺れるススキを指し示す。
 白い花穂が月明かりに輝く幻想的な景色は、確かに誰かと分け合いたい程に美しく、素晴らしいもので。誰かと分かち合いたいと思う気持ちも分からないでもない。
 それこそデートにも良さそうな雰囲気でもあるのだけれども。
(「女の子は誘えないよ!」)
 心の中で、真っ赤になって叫ぶ樹月。
 案外奥手な少年には、憧れていた同性を誘うくらいが精一杯だった模様です。
 それぞれの感情を、ススキの白い花穂のようにゆらゆら揺らしていた2人だけれど。
「ところでその浴衣は?」
 空気を換えるかのように、イヴンが樹月の姿を視線で示した。
 ああ、と樹月も自身を見下ろしてから。くるんとその場で一回りして。
「お気に入りなんだ」
 くいっと袖を持ち上げ広げると、爽やかな水色の浴衣を魅せる。
 そこに咲くのは色とりどりの朝顔。青に紫、白に黄色と鮮やかな色合いを見せ、添えられた緑の葉と蔓が陽気に踊る。
 そんな艶やかな朝顔の下、胸元や裾には、地の水色より少しだけ濃い色でうっすらと麻の葉模様が刻まれていて。左襟だけに浮かび上がる市松模様と、緑色の帯にそっと描かれた梅の花の模様と共に、陽気なだけではないしっとりとした和の雰囲気を添えていた。
 満月の淡くも煌々とした明かりの下に照らし出された華やかな浴衣姿は、確かに美しく好ましいものではあったけれども。
 どこか可愛らしい印象もあったから。
「女性のものではないのか?」
 気付いて首を傾げるイヴン。
 だが、樹月は素直に頷いて、肩までの青髪をさらりと揺らし。
「そうだよ。気にしないけど」
 当然のことのように、慣れた様子で返事を返す。
 その堂々とした様子に、そして何より、気に入っていると言っていた樹月の言葉に。
「ああ……似合うからいいんじゃないか?」
「でしょ?」
 イヴンも納得を見せて頷くと、樹月がにっこり笑って、またくるりと回った。
 そのまま踊るような弾んだ足取りで、先へと進んで行く樹月。
 ゆっくりと追いかけるイヴンの目の前で、樹月の朝顔が揺れ、そしてまたススキの花穂がざわざわと揺れる。
「ススキ……綺麗だなぁ」
 樹月は金瞳を細めて、その感覚を全身で受け止めた。
 辺りに満ちる満月の明かり。
 照らし出される花穂の輝き。
 頬に当たる涼やかで優しい風と。
 ススキの葉がそよぐ音。
「空気も丁度良くて気持ちいい~」
 景色にうっとりしながら、心のままに声を紡げば。
「やっと涼しくなってきたか」
 イヴンも頷き、穏やかな声を添える。
 ダークセイヴァー出身のイヴンにとっては初めてのサムライエンパイア。
 まだこうして猟兵に声がかかりはするし、猟書家の侵略もあるけれども、オブリビオン・フォーミュラ『織田信長』が倒された世界。そうでなくとも、江戸幕府による治世で安定した生活を送れる国だから。
(「……平和な景色だ」)
 食料にならないただの草を、美しいからと眺めていられる。
 怯えることなく賑やかな祭りを催すことができる。
 白銀色の景色に、赤い髪を揺らす優しい風に、そんな世界の雰囲気も感じ取って。
 そして何より、そこで楽し気に笑う樹月の姿を見て。
 イヴンもふっと赤瞳を細めた。
「ボクはこの世界で育ったんだ。全宇宙に誇れる景色だよね」
「そうだな」
 歌うように明るく弾む声に頷くと、樹月は笑みを深めて喋り出す。
「この時期のススキは花穂が綺麗だよね。
 だから、丸い月の下にこれを飾って丸い団子を食べるんだ」
「ほぅ、この草には花があるのか。ただの草だと思った」
「そうだよ。これが花で、白いのは実なんだよ。ふわふわの中に種があるんだ」
「花……?」
 首を傾げたイヴンの前に、見て見て、と樹月の手が引き寄せたのは、背丈のあるススキの先。何本にも分かれた緑色の穂の部分だけれども。
 細かい粒のようなものが1つずつ、短い糸でぶら下がっているのが幾つも並んでいるだけで、花らしき花は見えなかったから。
「暗くてよくわからないな」
「月で結構明るい方だけど、夜だからね。
 それに、実になった花穂の方が目立って綺麗だし」
 続いて樹月が引き寄せたのは、同じススキの先だけれども、先ほどよりボリュームのある、白い毛でふわふわしているもの。
 それをゆらゆら揺らしながら、樹月は話を続けて。
「動物の尻尾みたいだから、ススキのことを、尾花、とも呼ぶんだ」
「そうなのか」
「あ、葉っぱは真っ直ぐに見えて縁がぎざぎざしてるから、手を切ることもあるよ。
 素手でススキを触る時は気を付けてね」
「樹月は詳しいんだな」
 次々と出てくる知識に、感心するイヴン。
 その褒め言葉に、樹月はまた嬉しそうに笑いかけて。
「ボクはこんな大自然の風景が好きなんだ。
 植物の生命力を感じるよね。感じない?」
「ああ……華やかな庭園とはまた違った趣が面白いな」
 そしてまた、頷いてくれたイヴンに、樹月の笑みが深くなった。
 改めて見渡した一面のススキは、優しい月の光に照らされて。どこまでも続いていそうなほどに広く広く、白銀色の輝きを大地に満たしている。
 このままこの美しさが続いていくかのような錯覚。
 いや、時間が止まってしまったかのような、不思議な感覚。
 それは、イヴンの中にある、語れないほどの境遇と過去とを揺り起こすけれども。
(「……ここではやめよう」)
 思い出しかけた昔のいろいろを、物思いに沈みそうだった思考を、そっと振り払おうとイヴンは小さく首を左右に振った。
 急に途切れた声に、樹月はひょいと振り返り。
「イヴンさん? どうかした?」
 覗き込むように少し身をかがめ、イヴンを見上げてくる。
(「ボク、喋りすぎたかな?」)
 その心配は、イヴンの逡巡に気付いたからというよりも、はしゃぎすぎてしまっていたかと自身の行いを見返したものだったから。
 少し不安そうな樹月の表情からそれを察したイヴンは、そうではないと示すように、優しく首を振り。
「ああ」
 感嘆の息を吐き、穏やかに、ススキ野原を見渡す。
 時間は、動いている。
 隣にいてくれる樹月に、自分に声をかけてくれた存在に、改めてそう思いながら。
「祭りが楽しみだ」
 呟いた声に、樹月が明るい表情を取り戻しつつ頷いて。
 そして2人は、白銀色の輝きの中を静かに歩いていく。
 無言の空気は今度はとても心地いいものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
(浴衣でのんびりすすきの中を歩く。クセで無意識に【忍び足/聞き耳】
良いねぇー
何処までも続くよーなすすき野原に見事な満月
向こうから聞こえる祭り囃子
神楽の音も懐かしーね
郷のとは違うけど
(相棒の鸚鵡ユキエが肩に止まって)【動物と話す】
『広い所歩いてるだけなのにご機嫌ねトーゴ』
うん、こやってると忍びとか猟兵って事忘れそ
『そんな歩き方と聞き耳立ててよく言うね。神社に敵いるってユキエ聞いた』
うーん
だだっ広いとこでの応戦やら遁走やら叩き込まれたからなァ
ん、オレも聞いた
ハレの気の影響受けるよな律儀なやつみたい
『ミサキも居たら良かったね』
(一人分の影を見て
…そだねえ
そしたらもっと賑やかに月を見たかなー

アドリブ可



「良いねぇー」
 神社へと続く道を1人のんびりと歩きながら、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は楽し気に言葉を紡ぐ。
「何処までも続くよーなすすき野原に見事な満月。向こうから聞こえる祭り囃子。
 神楽の音も懐かしーね。郷のとは違うけど」
 感じる全てに笑う姿に纏うのは、縹色に秘色の子持ち縞を描いた浴衣。いつも着ているフード付き外套を思わせる色の羽織には、衿にも同じ紋様で縁取りが入り。少し広めに開けた胸元には、赭の羅刹紋が見えていた。
 額の黒い3本の角も、三つ編みにした肩までの赤髪も、いつも通りで。
 その左肩に、またいつものように、冠羽と翼や尾の先が黄色い、真っ白な鸚鵡が降り、止まった。
『広い所歩いてるだけなのにご機嫌ね、トーゴ』
 黒く太い嘴から紡がれた鳴き声は、動物と話せるトーゴにはちゃんと言葉で聞こえ。
「うん、こやってると忍びとか猟兵って事忘れそ」
『そんな歩き方と聞き耳立ててよく言うね』
 どこか呆れたような鸚鵡の指摘通り、楽し気な足取りながらもトーゴの足音は全く聞こえていなくて。周囲を見聞きするゆったりした様子も、素晴らしい景色を堪能する、というだけではなかったらしい。
 反論できないことに気付いたトーゴは、うーん、と考え苦笑して。
「だだっ広いとこでの応戦やら遁走やら叩き込まれたからなァ」
 身に着いた習性のようなそれを、もはや意識しなくとも行ってしまうクセのような行動を、仕方ないと笑い飛ばした。
 故郷は鄙びた忍びの隠れ里。幼い頃から教え込まれたものを、今更忘れることなどできないし、忘れるつもりもないから。
 忍び足で聞き耳立てて。鸚鵡に言われても変わることなく、トーゴは小道を行く。
 とはいえ、それが全くの場違いでないのは、グリモア猟兵からの情報があるからで。
『神社に敵いるってユキエ聞いた』
 鸚鵡の……ユキエの声も、呆れたばかりではない。
「ん、オレも聞いた。
 ハレの気の影響受けるよな律儀なやつみたい」
 祭りで盛り上がり、集まる『ハレの霊力』。祭りを楽しめば楽しむほど、盛り上げれば盛り上げるほどに高まるそれが、オブリビオンを脅かすというのだから。
「祭りを楽しまないとね」
 声を弾ませ、でも忍び足で、トーゴは改めて辺りを見渡した。
 広がる一面のススキ野原。満ちた月の明るい光に白銀色に照らされて、涼やかな風にさわさわと波打つ。光の中のような、雲の上のような、幻想的な景色にオレンジ色の瞳を細め、もうこの道中から祭りが始まっているのだと感じながら。
 その小道に落ちる影は、1人分。
 ユキエの姿で肩が盛り上がっているけれども、1つだけ、だから。
『ミサキも居たら良かったね』
 影を見たことで視線が下を向き、俯く形となったそこに、ユキエの鳴き声が響く。
 隣に並んでいたならばと想ってしまう、もう1つの影。
 その死の後に恋心に気付いた、幼友達の少女。
 もう二度と並ぶことのない姿を思い描いて。
「……そだねえ」
 ぽつりと呟いたトーゴは空を見上げ。
 でも、満月に照らされたその表情は、懐かしむような穏やかな微笑だった。
「そしたらもっと賑やかに月を見たかなー」

大成功 🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【守】
こんなにも浪漫ちっくな舞台で、嗚呼――何でまたオレは野郎と歩いてるんだろ
(チラりと横を見た後、月と芒へ遠い目向け)

くっ、喧しいぞ…!
つーかまたぴよこと亀までー!?
分かったよ…今夜は皆でのんびり、な!
(毎度の展開に落とした肩を持ち直し――お供達を両肩に乗せ、改めて月夜の風情を楽しみつつ歩み)

確かに月っぽい丸さだったり芒っぽいふわふわ感だケド――ウン、お前、団子と間違えてぴよこを食べよーとすんなよ?(一抹の不安)

ほ~ら、おたまは団子の前に軽く運動して小腹空かせときな(猫ならぬ狐じゃらしとばかりに、目の前で穂を揺らし)

しかしホント、祭にゃもってこいの佳い夜だな(佳景と受かれるお供達に目を細め)


千家・菊里
【守】(うちのおたま&伊織のぴよこさん+亀さんも共に)

そろそろ聞き飽きましたよ、その台詞
まぁ答えは、伊織が相変わらず玉砕ばかりしているからですねぇ
(暢気に月と芒を愛でつつさらりと)

残念でしたね
ハニーならぬハニワならいる様ですが
――あ、そうだ、花ならぴよこさんと亀さんがいますよ?(徐に懐から二匹がひょこり)
こんなに可愛い子達を置いて、ナンパや浮気は駄目ですよ
(釘さしつつ、再びのんびり佳景の中を漫ろ歩き)

ところでぴよこさんや亀さんの丸さや色味、何だか月の様で一層楽しいですね
ふふふ
いやだなぁ、そこまで食いしん坊じゃないですよ

(佳き光景と楽しげな姿を微笑ましく眺め)
思わず浮かれずにはいられませんよねぇ



 夜空に灯るまん丸な月。
 微かに煌めく数少ない星。
 照らし出されたススキの白い花穂と。
 それが一面を覆い尽くした雲海のような景色。
「こんなにも浪漫ちっくな舞台で、嗚呼……」
 呉羽・伊織(翳・f03578)は、周囲に向けていた遠い目を、ちらりと横へと移し。
 隣に並ぶ千家・菊里(隠逸花・f02716)を見て、大仰にため息をついた。
「何でまたオレは野郎と歩いてるんだろ」
「そろそろ聞き飽きましたよ、その台詞」
 振り向くことすらせず、慣れた様子で言い返す菊里。
「まぁ、答えは、伊織が相変わらず玉砕ばかりしているからですねぇ」
「くっ、喧しいぞ!」
 満月をススキを愛でながら、さらりと指摘すれば、伊織が苦々しく応えるから。
 そのやり取りも楽し気に、菊里は風に揺れる花穂に赤い瞳を細めた。
「残念でしたね。ハニーならぬハニワならいる様ですが」
 この祭りに紛れ込んで来るオブリビオンの話を絡めながら、ちっとも残念そうに聞こえない口調で微笑む菊里に、伊織は頭を抱えて。
「あー、ハニワじゃなくて花のような女の子と歩きたいー」
 心のままに願望を叫べば。
「花ならぴよこさんと亀さんがいますよ?」
 しれっと菊里が指し示した先、伊織の和装の懐からおもむろに、つぶらなひとみのひよこと穏やかな表情の亀がひょっこり顔を出す。
 それを見下ろした伊織は、あからさまに顔を引きつらせて。
「いらねぇ! つーか、またいるのかよ!?」
 ぶんぶんと振り払われるふわもこひよこところころ亀。
 それをそっと受け止めた菊里は。自身の管狐……にしてはもこんとしたなぞけだまが、ひよこと亀の周囲をころんと飛び回るのを見て微笑むと。
「こんなに可愛い子達を置いて、ナンパや浮気は駄目ですよ」
 釘を刺しつつ、2匹を伊織へと戻してあげた。
 慣れた重さと、疑いなくこちらを見上げてくるひよこの無邪気な瞳、伊織の傍にいることこそを喜んでいるような亀ののんびりした仕草。そして、稲荷狐な『おたま』を撫でながらくすくすと楽し気にこちらを見ている菊里の微笑。
 毎度毎度の展開に、伊織はがくっと肩を落とし。
「分かったよ……」
 大きく大きく息を吐いてから。
「今夜は皆でのんびり、な!」
 持ち直した両肩にひよこと亀をそれぞれ乗せると、満月の下を歩き出した。
 菊里もふわりと笑みを浮かべ、隣に並んで歩を合わせる。
 夜空に灯るまん丸な月。
 微かに煌めく数少ない星。
 照らし出されたススキの白い花穂と。
 それが一面を覆い尽くした雲海のような景色。
 そんな佳景の中を、いつものようにそぞろ歩き。
 月夜の風情を共に楽しむ。
 穏やかで優しい、心赦せる一時は、切っても切れない腐れ縁の成せる業だけれど。
 互いにそれを大仰に思うことはなく。
 ゆるりゆるりと涼やかに、秋の風が吹いていった。
「ところで、ぴよこさんや亀さんの丸さや色味、何だか月の様で一層楽しいですね」
 ふとそんなことを口にした菊里の視線は、もちろん伊織の肩に向いていて。
「確かに、月っぽい丸さだったり芒っぽいふわふわ感だケド……」
 言われた伊織もちらちらと、左右に赤瞳を動かし、景色との共通点に頷くけれど。
 過るのは、月見から連想したまた別の物との共通点。
 それも月の丸さに見立てて丸く作られるのだと言うから。
「……ウン、お前、団子と間違えてぴよこを食べよーとすんなよ?」
 浮かんだ一抹の不安に、まんまるひよこを気持ち菊里から隠せば。
「ふふふ。いやだなぁ、そこまで食いしん坊じゃないですよ」
 心外だというように笑う、何でもよく食べる食道楽。
 その大食いっぷりを知るからこそ、本当か? と疑う伊織だが。
 団子、という言葉につられたかのように、おたまが目の前に転がり込んできた。
 早く食べたいと強請るような、ころころもこんとした仕草に、伊織は苦笑して。
「ほ~ら、おたまは団子の前に軽く運動して小腹空かせときな」
 猫ならぬ狐じゃらしとばかりに、ススキの穂をその鼻先で揺らす。
 白くふわふわなそれを、物珍し気におたまが追いかけ。右へ左へと振られ。勢いあまって花穂の群れに突っ込めば、驚いたような顔がふわふわの群れの中から生えてきたり。
 その様子に伊織が楽し気に笑い。
 ひよこが嬉しそうに短い翼をぱたぱたさせると、亀がのんびり頷いて。
 賑やかな雰囲気が月明かりに照らし出された。
 そんな佳き光景を微笑ましく眺める菊里に、伊織が振り向き、にっと笑いかけ。
「しかしホント、祭にゃもってこいの佳い夜だな」
「思わず浮かれずにはいられませんよねぇ」
 頷く菊里の笑みも深くなる。
 夜空に灯るまん丸な月。
 微かに煌めく数少ない星。
 照らし出されたススキの白い花穂にまみれたおたまと。
 雲海のような景色を背に、お供と楽し気に笑う伊織。
 ああ、これこそが佳景だと。
 もう一度、ゆるりと菊里が頷けば。
「浮かれて食べるもの間違えるなよ?」
「ですからそこまで食いしん坊じゃないですって」
 伊織がまたひよこの乗った方の肩を隠すようにして、疑いの眼差しを向けてきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ハニワプリンス』

POW   :    ハニワビーム
【口からハニワビーム 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    ハニ馬召喚
自身の身長の2倍の【馬形のハニワ 】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    であえい、であえい!
レベル×1体の、【腹部 】に1と刻印された戦闘用【ミニハニワ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠蓮賀・蓮也です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ススキの道が導く先に、浮かび上がるように立つ鳥居。
 それをくぐれば、賑やかなお祭りが待っていた。
 参道の両端に並ぶ出店では、焼き芋、焼き栗、焼き銀杏といった食材をシンプルに楽しむものや、つきたての餅を丸めた月見団子、小ぶりなリンゴに飴をからめたリンゴ飴に、豆腐田楽やきのこ蕎麦などの食べ物が振舞われ。
 社務所近くでは、純米酒から芋焼酎から、様々な奉納酒が用意されている。
 神楽殿の舞台からは奉納舞の穏やかな曲が響いていて。出店の喧騒から少し離れた池や庭にも、祭りの雰囲気を広げていた。
 それゆえに。
「これは……『ハレの霊力』か……」
 オブリビオン『ハニワプリンス』は、神社中に満ちていく『ハレの霊力』に囚われ。
「……動けぬ」
 祭りを楽しむ人々に危害を加えるどころか、その存在に気付いてすらもらえないまま。
 ただのハニワと化して、神社のどこかに転がっていたから。
 満月に照らされ、ススキを愛で、実りを食し祝う秋の祭りは。
 賑やかに、さらに盛り上がっていく。
 
セプテンバー・トリル
縁日の屋台って、どうしてどれも美味しそうなのかしら?
あれもこれもと買い込んでも、私一人では食べきれないし持ちきれないですわね

【WIZ】連携・アドリブ歓迎
まぁ、人手が足りないなら調達すればいいわけですし…
UC【下請け要請】で作業員を召喚して買った荷物を遠くに駐車している【ユンボルギーニ】へと運ばせましょう
後でまとめて送還すれば、義兄様や友人たちへの良いお土産になりますわ

でも、お酒は私が飲むしかないかしら?
『俺は竜の祝福(呪い)で酒の味も匂いも知覚できないから、水と変わらんしな』
…今回は出番多いですわね、脳内義兄様
友人たちも未成年が多いですし、これは仕方ない処置ですわね(ぐびぐび)



 鳥居をくぐって参道の入り口に差し掛かったセプテンバー・トリル(f16535)は、目の前に広がる光景に、ほうっと息を吐いた。
 一本道を囲むのは、先ほどまでのススキと同じだが。月明かりに眩い程の白く美しい花穂の群れは、美味しそうな香り漂う出店の群れに変わったから。
「縁日の屋台って、どうしてどれも美味しそうなのかしら?」
 焼き芋に焼き栗に団子にリンゴ飴にと、秋の味覚を中心とした美味しそうな食べ物屋台の間を、右へ左へ視線を向けて眺めながら、セプテンバーはゆっくりと歩く。
「あれもこれもと買い込んでも、私1人では食べきれないし持ちきれないですわね」
 長い参道を埋め尽くす屋台に、そしてそれだけに多い食べ物に、いくら心惹かれても、大食いなわけでも大柄なわけでもない女性なセプテンバーには、全種類制覇すら難しい。
 しかし、諦めきれないセプテンバーは。
「ですが、人手が足りないなら調達すればいいわけです」
 にっこりと微笑むと、ユーベルコードを発動させる。
「作業員の皆さん、お仕事ですわよ」
 召喚されたのは、がっしりした体格の男達。土木作業の合間の息抜きに来たかのような風体の彼らは、セプテンバーの号令に野太い声で応えると。
 出店に向かって散開した。
 ある者は焼き芋を持ち、またある者は焼き栗や銀杏の入った袋を抱え。団子の串やリンゴ飴の棒を、武骨な手で頑張って多く持つ者もいる。豆腐田楽が乗る紙皿を、如何に多く持てるか四苦八苦している者がいれば。きのこ蕎麦を両手で恐る恐る持つ者もいる。
 そんな彼らは、だがその手にした食べ物を味わうことはなく。
 揃って向かうのは神社の外。祭りの邪魔にならない位置にセプテンバーが召喚して駐車した両腕型マルチビークル『ユンボルギーニ』の元で。
 土木作業員達はその車両に、芋やら栗やらを積み込んでいた。
 様々な土木作業に対応できる有能な重機を、ただの運搬車両とする贅沢な使い方だが。
 乗せようとしているのは、工事資材ならばいざしらず、細かな食べ物だから。
 操縦席が芋や栗や銀杏で埋まったり。大きくて重い鉄材も持ち上げられる巨大な両腕型機械で、そっと団子の串とリンゴ飴の棒をそれぞれ1本ずつ持ったり。豆腐田楽の皿を、細かな起伏のある外装に如何に落とさず乗せるか作業員を悩ませたり。機械に水気は厳禁なのに、ときのこ蕎麦を持った作業員を途方にくれさせたり。まあいろいろあるけれど。
「義兄様や友人たちへの良いお土産になりますわ」
 皆で食べれば分け合えて、全てを少しずつ味わえるだろうから。
 持ち帰れるだけ持ち帰ろうと、セプテンバーは作業員達の働きに微笑んだ。
「でも……」
 そうして参道をゆるりと通り、辿り着いたのは社務所。
 そこで振舞われていたのは、奉納されたお酒で。小さな猪口で少しずつだが、様々な種類の酒を楽しんでいる人達がいた。
 祭りの土産というならば、この御神酒も入るのだろうけれども。
「お酒は私が飲むしかありませんわね」
 セプテンバーが思い浮かべた友人達は、その多くが未成年だったから。
 仕方ありませんわ、と言い訳しながら、笑顔でセプテンバーは猪口へと手を伸ばす。
 その中に注がれていた、濁りのない透明な液体を満足気に眺めると。
 友人達の中に、苦笑する義兄の姿も混じってきて。
『俺は酒の味も匂いも知覚できないから、水と変わらんしな』
「……今回は出番多いですわね、脳内義兄様」
 再び、シャラップ! と呟いて、セプテンバーは猪口を傾ける。
 芳醇な香りと、身体に染み渡るように広がる美味しさにセプテンバーは緑瞳を細め。
 竜の祝福だか呪いだかでこの至福を感じられないというのなら、義兄に持ち帰っても勿体無いだけだから。
「これは仕方ない処置ですからね」
 自身を正当化するように言うと、次の猪口へと手を差し伸べ。
 また、ぐびぐび、と空にし、幸せそうに顔を綻ばせた。
『……で、ハニワプリンスは?』
「シャラップ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
(ユキエが人手に驚いて耳に当たるぐらい身を寄せるのをヨシヨシと首を掻いてやり)
『人だらけ』
そりゃー祭りだもん
『郷はここまで賑やかで無かった!』
だなー
オレらの郷はド田舎なんだなーってこゆとこ来たら実感するぜ
ん?神楽舞の笛かな…
巫女さんかー
ねーちゃん元気かねぇ
『巫女さん見るといつもそれね』
…里心が付くんだよ(ちょい恥ずかしい)
よし、なんか食べるの探そ
満月だしやっぱ団子かなー
ユキエにはなんかコオロギとか探してやろっか?
『お団子の餡ないとこ食べる』
あは
わかった、今日は特別ね

団子を買って縁日から外れた樹の下に落ち着いて
お汁粉に苦戦する猫舌
あちち
お、そーだ
食べる前に…お団子ひと串ミサキにもな

アドリブ可



 ススキ野原を通って集まった人々がひしめき合う、祭りの神社。
 広さも違えば滞在時間も違うゆえに、その密度は一気に上がっていたから。
 肩に乗っていた真っ白な鸚鵡がどこか驚いたように身を寄せて、ふわりとしたくすぐったさが微かに左耳に触れたのを感じた鹿村・トーゴ(f14519)は、宥める様にヨシヨシとその首を優しく掻いてやった。
『人だらけ』
「そりゃー祭りだもん」
 トーゴにはちゃんと言葉で聞こえる鸚鵡の鳴き声にさらりと答えれば。
『郷はここまで賑やかで無かった!』
「だなー」
 ばさり、と先だけが黄色い翼を広げて反論する鸚鵡に、苦笑するしかない。
 鄙びた忍びの隠れ里と、普通に賑やかで豊かな農村。元々の人口差もあるが、こうしてトーゴ達のように外からも人が訪れることができるという、そんな土地の違いもある。
「オレらの郷はド田舎なんだなー、ってこゆとこ来たら実感するぜ」
 不便だとか寂しいとか、そんなふうに郷里を感じたことはなかったけれども。
 さすがにこの賑やかさや人の数を目の当たりにすると、思わずにはいられない。
 でも、だからといって、故郷が嫌になったということはなく。
「ん?」
 聞こえてきた笛の音に、トーゴは、出店が並ぶ参道の先へと目を凝らした。
「巫女さんかー。神楽舞かな」
 遠目に見えた神楽殿の舞台で、厳かに舞う女性の姿。秋の祭りといえば、豊穣を祝い感謝するものだろうから、そんな人々の気持ちを神に届けるためのものだろう。
 白衣に緋袴、その上に千早を着て。長く真っ直ぐな黒い艶髪は、首の後ろで束ね、ひとまとめにしたそれを和紙で纏めて水引で縛り。ススキを思わせる頭飾りを乗せている。
 きっと普段よりも装飾の多い、祭り用の服装だけれども。
「ねーちゃん元気かねぇ」
 その姿に、巫女をしている双子の姉を思い出し、ぽつりと呟くトーゴ。
『巫女さん見るといつもそれね』
「……里心が付くんだよ」
 少しからかうような鸚鵡の声に、ちょっとだけ頬を赤らめ視線を反らした。
 姉もまた、秋の実りを祝っているだろうか。こんな大舞台ではないだろうけれども。
 小さく届く笛の音に、初めて聞くけれどもどこか知っているような旋律に、また懐かしさを覚えていると。鸚鵡がニヤニヤしてる気がして。
 こほん、とわざとらしい咳払いをしたトーゴは、改めて出店へと向き直る。
「よし、なんか食べるの探そ」
 覗き込んだ屋台では、芋を焼いて、栗を焼いて、銀杏を焼いて。香しい秋の実りがあちらこちらに並んでいたから。トーゴは目移りするようにそれらを眺め。
「満月だしやっぱ団子かなー」
 頭上からの優しい月明かりに、足を止めたのは団子の屋台。
 15個の白く丸い団子を、三方の上にピラミッド型に積み上げたものは、お供え用を模したディスプレイのようで。実際に売っていたのは、渡したり食べ歩いたりしやすいようにだろう、串に並べて刺した串団子。
「ユキエにはなんかコオロギとか探してやろっか?」
『お団子の餡ないとこ食べる』
「あは。わかった、今日は特別ね」
 肩の鸚鵡と笑い合いながらも、トーゴは団子を受け取って。
 さらに別の出店からお汁粉も貰うと。
 そっと、参道から少し離れた樹の下に足を運んだ。
 人混みから外れたここなら、少しゆっくりできるだろう。
 賑やかな喧噪を眺めながら、鸚鵡が何かを探すようにきょろきょろしているのを感じながら、トーゴはお汁粉にそっと口をつけ。
「あちち」
『猫舌』
「もう少し冷ますかー」
 甘い香りにふうふうと息を吹きかけ苦笑した。
 そこにもまた、神楽の笛の音が届いてきて。
 郷愁とまではいかないけれども、また懐かしさを感じている中で。
「お、そーだ」
 思い出したように、トーゴは団子をひと串、月に掲げる。
 満月に丸い形を重ねるように、月明かりに白色が眩く輝くように、供えると。
「ミサキにもな」
 串団子を差し出した手に、重なる手はないけれど。
 トーゴは穏やかに優しく微笑んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
ツキとノクスを伴って、神社へ。

先の戦争で侵蝕を高めた為、力を抑える助けになれば、というささやかな意図があったのですが―
(根源が違うからか、やはり効果は薄いですね)
頂いた奉納酒の猪口に口を付ける。
「小賢しい奴だ」
この身に宿る力の本体であるUDCのツキは意図に気付いていたようで傍らでにたりと笑う。
超克の余波は焦らず調整するとして。
折角の祭りですから、のんびりと。

池の周りを散策。
「ツキ、庭園を荒らしてはいけませんよ」
庭園に踏み入り興味津々で辺りを嗅ぎ回るツキを窘めて。
近くの長椅子に腰掛け月見団子を差し出します。
「見た目は地味だが意外と美味いな···そっちも寄越せよ」
と、僕用のみたらし餡の団子も凝視。



 見つけた長椅子に腰掛け、持っていた真っ白な猪口の中を覗き込めば。
 美しく澄んだ奉納酒の中に揺らめく丸い月の輝き。
「これが月見酒、ですかね」
 呟いた視界の端で、傍らの闇色狼がふいっと顔を上げたのが見え。
 シン・クレスケンス(f09866)は淡い笑みを浮かべた。
「呼んでませんよ」
 狼の姿をしたツキは、少しムッとしたように眉根を寄せて。でもすぐに、何事もなかったかのように、どこか誤魔化すように、視線を前に戻す。
 常にシンと共に在るツキは、実は狼ではなく、未だ夜空を楽しんでいる梟のような精霊でもない。正体は、シンに憑いているUDC――アンディファインド・クリーチャー。
 魔術で従え、自身の力としている存在だから。
 先の戦争のように大きな戦いでは、その侵蝕を高めることでシンは大きな力を得る。
 しかしそれは、UDCを送還し元に戻る、というシンの目的からは真逆のもの。
 ゆえに、戦いの終わりと共に、その力を抑える必要があるわけで。
 今回、この神社の祭りに来たことにも、抑えの助けになるかもしれない、というささやかな意図があったりもしたのだが。
(「根源が違うからか、やはり効果は薄いですね」)
 オブリビオンがいる世界であるとはいえ、UDCアースとは違う世界。
 美しい景色と、祭りに満ちる『ハレの霊力』、そして神社という場所ゆえのどこか神秘的な雰囲気を感じながらも、思惑通りにはならない状況を正しく認識して。
 でもシンは、落胆することなく、変わらぬ笑みを浮かべたまま、手にした猪口にそっと口をつけた。
「小賢しい奴だ」
 下から響いてきたのは淡々としたツキの声。
 その言葉に、まだ中に満月を映す猪口からツキへ視線を向けると、闇色の狼は目だけをシンに向けてにたりと笑う。
 どうやらシンの意図に気付いていたらしい。
 シンも淡く笑い返すと。
 ゆっくりとまた、猪口を口に近付けた。
 超克の余波は、焦らず、調整すればいい。
 それよりも、折角訪れた祭りなのだから、のんびりと楽しもうと満月を見上げ。
 じんわりと身体に染み入ってくる酒を。
 神楽の笛の音を混じらせながら遠く聞こえてくる喧噪を。
 風に乗って届いてくる気がする香しい秋の実りを。
 そして、辺りを優しく照らし出す、夜に負けない程の月明かりを感じていき。
「ツキ、庭園を荒らしてはいけませんよ」
 ふと、シンの傍から少し離れ、興味津々に辺りを嗅ぎ回っていた狼に気付くと、窘めるように声をかけた。
 ゆっくりと神社の中を巡ったシンが、参道から反れて辿り着いていたのは、池を中心とした日本庭園。一面のススキに覆われた野原とも、賑やかで華やかな出店の並ぶ参道ともまた違った景色と雰囲気を楽しめる場所で。
 空になった猪口を、座っている長椅子の端にそっと置くと、シンはツキを呼び寄せるかのように、奉納酒と共に持って来ていた月見団子を差し出して見せた。
 途端、駆け戻ってきたツキに、一応狼だし、と真っ白な団子を与えると。
「見た目は地味だが意外と美味いな」
 早速噛みついたツキから零れたのは、どこか素直ではない称賛。
 苦笑したシン自身は、みたらし餡の団子をそっと口にする。
 もっちりとした団子の仄かな甘みを餡のしょっぱさが引き立てて。
 美味しい、とこちらは素直に味わっていると。
「そっちも寄越せよ」
 あっという間に自分の分を平らげたツキが、シンを、というよりも、手にしたみたらし団子をじっと見上げてくる。
 さてどうしようかと考えながら、ふっと視線を反らすように池を見つめると。
 そこには、猪口の中で見たよりも大きな月が、美しく映り揺らめいていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都筑・やよい
【千本鳥居】
二人に冬の間は家の都合で会えないことをお話し
寂しいけれど…春まで、待ってて
お別れ会という言葉にはびっくり
気持ちがとても嬉しい

焼き芋に焼き栗、どちらも美味しい秋の味覚
栗のほっこりしていて甘いこと
…確かに三人じゃあお芋を半分こはできないわね
ゆかりさんの提案に頷いて
私の右隣はアイシャさん さあ、どうぞ?
お芋も甘くて美味しい

最後にゆかりさんが見つけたという屋台へ
わあ、きのこ蕎麦 きのこも秋の味覚よね
お店の人にちょっと少なめによそってもらって
(お芋と栗でお腹いっぱい!)
願掛けしながらお蕎麦を啜るわ
ゆかりさんやアイシャさんと、細く長く、縁が続いていきますように
春になるまで、縁が解けませんように


村崎・ゆかり
そっか。冬の間はやよいに会えないんだ。残念。でも、話してくれてありがとう。お陰で、お別れ会が出来るわ。

それじゃ、色々買って食べて回りましょう。焼き芋に焼き栗。どちらも毎年食べるけど、ほっこり温かくて美味しい。
お芋を半分こするには、三人じゃねぇ。右隣の人に半分渡して、一周する?
焼き栗の殻は、この袋に入れてね。自然のものではあるけど、食べかすを残して帰るのは聞こえが悪い。

さて、お祭の賑わいも少し静かになってきたかしら?
お終いにあたしが見つけた夜店行こ。
きのこ蕎麦が売り物の夜鳴き蕎麦屋。ご主人、三杯お願い。
やよいやアイシャと、これからも縁が細く長く続きますように。
――ごちそうさまでした。


アイシャ・ソルラフィス
【千本鳥居】

やよいさんとは春まで会えないみたいなの
クリスマスとかお正月とか、一緒に楽しみたかったのに、寂しいね……
けれどそれなら今日はいっぱい楽しんで思い出作り(お別れ会)しようね!

お芋と栗? 天津甘栗なら食べたことあるけど、焼いた栗は食べたことないかも?
やよいさんありがと! いただきま~す!……熱っ けど甘っ(ゆかりさんに渡しつつ、お口の中はふはふっ)

きのこ蕎麦……ってゆかりさん食べ過ぎ?!
ボクはちょっともうお腹が……あ、でも。きのこ多めで……

(二人の願掛けを聞いて、慌てて…)
……え? えっと…… 来年も三人で、この器の中みたいに、楽しいのも嬉しいのも、いっぱいいっぱい味わえますようにっ!!



 参道の両脇に並ぶ、秋の味覚を中心とした出店の数々。
 売り手の陽気な掛け声と、そこに集まる人々の賑やかな喧噪、そして何より、あちこちから漂って来る美味しそうな香りに。
 都筑・やよい(f31984)は緑色の瞳を輝かせ、アイシャ・ソルラフィス(f06524)は右へ左へと忙しなく赤瞳の視線を動かしていた。
 そんな友人達のわくわくに、村崎・ゆかり(f01658)も嬉しそうに微笑んで。
「それじゃ、色々買って食べて回りましょう」
「やったー!」
 かけた言葉に、待ってましたというようにアイシャが飛び出した。
 エルフにはないはずの尻尾がぶんぶん振られている幻視が見える気すらする勢いで、まずはと焼き栗屋台に突撃すると。
「天津甘栗なら食べたことあるけど、焼いた栗は食べたことないかも?」
 興味津々、焼き網の上で転がるまだ殻のついたままの栗を覗き込む。
「これは和栗のようだから、種類も違うし」
「ああ、そうよね。栗にも種類があるのよね」
 ゆかりとやよいも並び、大丈夫かなと心配になるくらい焦げていく栗の皮を眺めて。
 お待たせ、と渡された1つの紙袋を、アイシャが熱い熱いと大袈裟に受け取ると、やよいがくすりと微笑んだ。
「冷めると皮がむきにくくなるからね」
 そっと袋に手を入れたゆかりは、粗熱がとれたものをやよいの手に乗せ。
 自分も1つ手にすると、元々入っていた切り込みから割るように殻を取って、ぱくり。
「ほっこり温かくて美味しい」
「本当に。ほっこりしていて甘いこと」
「いいないいな。ボクも食べた……熱っ!」
 舌鼓を打つ2人に、アイシャも袋の中へ手を突っ込むけれども。できたての熱気にまだまだ負けてしまったから。
 やよいは、ふふっと微笑んで、むいた栗の半分をそっとアイシャに差し出した。
 嬉しそうにあーんして、食べたアイシャは美味しいと大喜び。
「今度はボクがやよいさんにむくからね! ……熱っ!」
「それじゃ、あたしがアイシャにむけばいいのかしら?」
 その奮闘っぷりを見ていたゆかりも、すぐ次の栗に手を伸ばして。
 ああ、と思い出したように別の紙袋を差し出した。
「栗の殻は、この袋に入れてね。
 自然のものではあるけど、食べかすを残して帰るのは聞こえが悪い」
「ゆかりさんの言う通りね。楽しいからこそきちんとしないと」
 先ほどの殻を早速袋に入れたやよいは、感心したように頷いて。
 アイシャも、バラバラになっていく殻を、でも1欠片も落とさずに袋へ入れる。
 そうして出てきた美味しい中身を、お互いに交換し合い。自分でもしっかり食べて。
 あっという間になくなる栗。
 となれば、アイシャの視線はすぐ次の出店へ向かっていった。
「次は焼き芋っ。これも3人で分けよ!」
「……3人じゃあ半分こはできないわね」
「それじゃ、アイシャの分はなしで」
「えー。そんなぁ」
 首を傾げるやよいの隣で、ゆかりがちょっと悪戯っぽく笑って言うと。今度はアイシャの頭にしゅんと垂れ下がった耳が見えた気がして。
「冗談よ、アイシャ」
 半ば吹き出すように微笑んだゆかりは、焼き芋を1本受け取ると半分に割り。
「右隣の人に渡して、一周する?」
「そうね。それなら分けられそう」
 提案と共に渡された焼き芋を、やよいがほっこりと受け取った。
 じっくりと焼かれたサツマイモは、見ただけでもほくほくで甘そうで。紫色の皮を少しむいて露わになった蜜色の黄色い部分にそっとかじりつく。
「お芋も甘くて美味しい」
 ふんわり広がる美味しさを、やよいは、ほうっと味わってから。
「アイシャさん。さあ、どうぞ?」
「やよいさんありがと! いただきま~す!」
 右隣のアイシャへとパスすれば、早速、皮ごと食べそうな勢いで噛みつかれた。
「……熱っ! けど甘っ!」
 はふはふっと忙しなく口を動かしながらも顔を輝かせたアイシャは。
 ちゃんと残った焼き芋をゆかりへ回し戻し。
 幾分軽くなった芋を、もう一度ほっくりと味わう。
「焼き芋も焼き栗も、どちらも毎年食べるけど。やっぱり格別ね」
 それは皆で分けているからだと、言葉はなくとも笑顔が伝えてくれるから。
 やよいも嬉しそうに微笑み、順番に回っていく焼き芋を眺めて。
 そして、その笑みをふっと陰らせた。
「実は、ね。冬の間は2人に会えなくなるの」
 ぽつり、と紡がれる、唐突な別れに、ゆかりが振り向き、アイシャが噛みついていた焼き芋からがばっと顔を上げる。
 家の都合で仕方のないことだし、春には戻ってこれるから、と説明を重ねるやよいを。
 ゆかりは真っ直ぐに、アイシャはあからさまにしょんぼりと見つめて。
「そう。残念」
「クリスマスとかお正月とか、一緒に楽しみたかったのに、寂しいね……」
「私も寂しいけれど……」
 友人達の視線から顔を背ける様に、俯くやよい。
 楽しかった祭りの音すら酷く哀しく聞こえていたけれども。
「でも、話してくれてありがとう。お陰で、お別れ会が出来るわ」
「そうそう。今日はいっぱい楽しんで思い出作りしようね!」
 続いた2人の言葉は、いつも通りに明るく、元気で。やよいには思ってもいなかったものだったから。
 驚いて顔を上げると、待っていたのはいつもの笑顔。
「それに、冬の間だけ、だよね? 春には会えるんだよね?」
 確かめるアイシャの言葉は、もう再会を待ちわびているかのようで。
 ゆかりの優しい微笑みも、ちゃんと待っていると、やよいを安心させてくれて。
 寂しさしかなかった心が、嬉しさでぽかぽかしてくるのを感じながら。
 やよいは、少し泣きそうになりながらもちゃんと笑顔で。
 うん、と頷いた。
「春まで、待ってて」
「もちろん!」
 ぱあっと輝いたアイシャの笑みと、しっかり頷き返してくれたゆかりに。
 言えてよかった、とやよいは空を見上げた。
 穏やかに輝く満月は、そんな3人を静かに見守っていてくれているようで。
 約束をちゃんと覚えておくよと言ってくれているようで。
 そっと目を伏せたやよいは、小さく口を動かして。
 声にならない思いを紡ぐと。
 笑顔の2人へ視線を戻す。
「さて、お祭の賑わいも少し静かになってきたかしら?」
 少ししんみりした空気を入れ替える様に、周囲を見回して話題を変えたのは、ゆかり。
「でも、お別れ会だから、もう少し何か……ああ、蕎麦屋があるわ。
 きのこ蕎麦みたいね。ご主人、3杯お願い」
「……ってゆかりさん食べ過ぎ!?」
 出店を見つけるや否や注文しているゆかりに、アイシャがびっくりすると。
 返ってきたのは、そうかしら? と首を傾げて驚く顔。
「アイシャは食べないの?」
「うう、ボクはちょっともうお腹が……あ、でも。きのこ多めで……」
 それでも、美味しそうな出汁の香りに、並んでいるきのこに、あっさりとアイシャは誘惑されて。
「私はちょっと少なめによそってください。
 栗とお芋でお腹いっぱい」
 やよいも、食べてみたいと微笑んだ。
 そうしてすぐに、ちょっとずつ違ったきのこ蕎麦が3人の前に並んで。
 いただきます、と声が唱和すると。
 ゆかりは箸で蕎麦を掬い上げ、器の上で長く持ち上げると微笑みを見せた。
「やよいやアイシャと、これからも縁が細く長く続きますように」
 紡がれたのは、蕎麦にかける願い。
 その声に驚いて、でもすぐに嬉しそうに微笑んだやよいも。同じように、ゆかりより本数は少なくなってしまったけれども、長く長く蕎麦を持ち上げ。
「ゆかりさんやアイシャさんと、細く長く、縁が続いていきますように」
(「春になるまで縁が解けませんように」)
 言葉で、そして心の中で。
 蕎麦という名前にあやかって傍にまた居れるようにと。
 風雨に叩かれても再び日光を浴びると元気に育つ蕎麦のように、寂しい冬を越えた春に再び今と同じ笑顔に会えるようにと。
 願ってから、そっと蕎麦をすする。
 そんなやよいの姿を見守ったゆかりは、その向こうにも目を向け。
「アイシャは?」
「……え? ボク? ボクは、えっと……」
 慌てて箸で器の中をぐるぐるしたアイシャは、2人と同じことをお願いするのもアレかなぁ、なんてしばし考え。
 すぐに顔を輝かせると、大き目のきのこを箸でつまみあげた。
「来年も3人で、この器の中みたいに、楽しいのも嬉しいのも、いっぱいいっぱい味わえますようにっ!」

 ――ごちそうさまでした。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【守】
さて、晴れの夜空にハレの気配――この分なら野暮な暗雲が掛かる事も無さそーだな
(早速食気全開な狐組に肩竦め)

ハイハイ、んじゃオレは目の保養…コホン、心洗われる舞でも眺めてるから、お前らもごゆっくり~!
(とか言ってみるもまぁ逃れられるワケもなく!)
くっ、自棄酒も自棄食いもしないっての!

(そんなこんなで御神酒と団子を少しずつ貰って――る間に、凄いコトになってた狐達を二度見し)
コレが色気より食気な食欲の秋…毎度ながらお前らはホンッッット幸せそーなこって!

(わいわいしつつも、池の傍で一息つけば)
んじゃ、ま――名月に乾杯、っと
ああ、見渡す限り極楽で!
(名月に味覚にお供達の様子まで、のんびり楽しみ)


千家・菊里
【守】
ええ、このまま天上の月も人々の心も晴れ晴れと在る様に――祭を謳歌し、魔の手を完封致しましょう
そして屋台も完全制覇致しましょう
(うきうきと秋の味覚溢れる光景を眺め)

やれやれ、下心駄々漏れの男を野放しにするとでも?
悪足掻きしてもフラれにフラれ自棄酒自棄食いが毎度のオチなのですから、今日は大人しく“皆でのんびり”しましょうねぇ
(ねー、とお供達と頷き合い)

(という訳でいざ屋台巡りへ――おたまと共に、瞬く間に大収穫な戦利品を両手に抱えてほくほくと)
ふふふ
いやぁ、両手一杯、幸せ一杯ですねぇ

(池や酒に映る月、見事な味覚、はしゃぐお供達――良き一時に目を細め)
ではでは、名月と美味――最高の一夜に乾杯です



「さて、晴れの夜空にハレの気配……
 この分なら野暮な暗雲が掛かる事も無さそーだな」
 月夜を見上げ、賑わう神社の境内を見渡し。呉羽・伊織(f03578)はへらりと笑った。
「ええ、このまま天上の月も人々の心も晴れ晴れと在る様に。
 祭を謳歌し、魔の手を完封致しましょう」
 隣に並ぶ千家・菊里(f02716)もおおらかな笑みを見せ、伊織に応えるように頷く。
「そして、屋台も完全制覇致しましょう」
 そして菊里は、ちょこんとしてもこんとしたなぞけだまな管狐らしきおたまを連れ、あったかかわいいふわもこひよこと、めでたしめでたしな顔をした亀を両手に抱えると、うきうき弾む足取りで、秋の味覚が溢れる出店へと向かった。
 ススキ野原から待ち望んでいた美味しい祭り。
 まずはやっぱり月見団子から、なんて思いながら食欲全開で進みかければ。
「ハイハイ、んじゃオレは目の保養……コホン、心洗われる舞でも眺めてるから、お前らもごゆっくり~!」
 聞こえた声に振り向けば、肩越しにひらりと手を振って、出店を素通りしようとする伊織の姿があったから。
 きゅっと踵を返すと、菊里は、その浴衣の襟首をぐいっと掴んで。
「やれやれ、下心駄々漏れの男を野放しにするとでも?」
 ふるふると芝居がかった仕草で首を横に振って、ため息1つ。
「悪足掻きしてもフラれにフラれ自棄酒自棄食いが毎度のオチなのですから、今日は大人しく『皆でのんびり』しましょうねぇ」
「くっ、自棄酒も自棄食いもしないっての!」
 指摘が図星だったか、ちょっと頬を赤くして叫び返す伊織だけれども。
 菊里は気にもせず、おたまやぴよこ、亀と共に、ねー? と頷き合っていて。
 そのまま伊織の足も出店へ向くまで、襟首を掴んだまま引きずっていた。
 そんなやり取りがあったけれども。月見団子だけでなく、焼き芋焼き栗焼き銀杏、豆腐田楽にきのこ蕎麦など、数多く並ぶ秋の味覚にいつしか伊織も惹き付けられて。
 順に眺めるそのうちに、気付けばその懐にぴよこと亀を押し付けられると。
 両手いっぱいどころか、おたまにも持たせて、大収穫な戦利品を抱えた菊里がほくほく笑顔で戻ってきた。
「ふふふ。いやぁ、両手一杯、幸せ一杯ですねぇ」
「コレが色気より食気な食欲の秋……」
 放って置いたら満面の笑みすら見えないほどに食べ物を抱えそうな菊里に、戦慄すら覚えるけれども。伊織は色気の方がいいし、しかもそれは満たされていないから。
「毎度ながらお前らはホンット幸せそーなこって!」
「ええ、幸せですね」
 ちょっと嫉んだような、スネた言い方にも、幸せな菊里の笑みは崩れなかった。
 そうしてわいわいしながら、神社の参道を進み。
 社務所で奉納酒を、両手いっぱいな菊里に代わって伊織が受け取って。
 一息つけるところを、と探して2人は静かな庭園へとやってくる。
 ちょっと大きな池の傍に長椅子を見つけ、荷物と共に腰を下ろすと。
「んじゃ、ま……名月に乾杯、っと」
「ええ。名月と美味……最高の一夜に乾杯です」
 伊織と菊里は、猪口をこつんと当ててから。
 くいっと奉納酒をあおった。
 上を向いた拍子に見えた夜空には、まんまるの満月が輝いていて。
 視線を戻せば、池の水面にゆらゆらと、同じ月が淡く煌めく。
 そういえば、猪口の中にも映っていたかと思い出すけれども。
 空っぽになったそこには、もう月は見えなかったから。
 菊里は猪口を脇に置くと、紙袋に入った焼き栗に手を伸ばす。
 熱々に焦げた殻を、割れ目から上手く外して。漂う香りに赤い瞳を細めながら、ころんと出てきた中身を口に放り込めば、少しぱさつきながらも広がる素朴な甘さ。
 見事な秋の味覚に頷くと、期待するようにこちらを見ていたおたまと目が合い。
 ふっと微笑んだ菊里はまた栗を剥き、今度は中身を譲り渡した。
 隣を見れば、伊織も猪口を置いて、こちらは焼き芋を持っていて。
 はふはふと噛みつくその様子に、どんどん減っていく芋に、美味しさが伝わってくる。
 ではこちらもと焼き芋も手にして。小さな手で持った栗をちまちま齧るおたまをじっと見つめていたぴよこと亀に、ひとかけらずつお裾分け。
 皆で分け合い、味わう佳き一時。
 その光景に、また菊里は赤瞳を細め。
「やっぱり、ぴよこさんや亀さんは月の様で楽しいですね」
 くすりと零したのは、ススキ野原の続きのような一言だったから。
「……食べてないよな?」
「ですから」
 訝しむ伊織にまた苦笑して。ちゃんと正しい方を食べていますと見せるかのように、月見団子を持ち上げてみせた。
 月と同じ丸い形を頬張って。まるで月を食べているかのようと微笑んで。
 それは何かと視線で問いかけてくるおたまやぴよこ達にもまた分けて。
 何か言おうとしていた伊織の口にも突っ込んで。
 菊里は、月の下で月見団子をもちもちと味わう。
 ススキ野原から始まり。
 賑やかな神社の境内と。
 夜空と池とに浮かぶ満月。
 舌鼓を打つ友人とお供達と。
 自分の中にも広がっていく秋の味覚。
 それらをゆっくりと噛みしめて。
「ああ、見渡す限り極楽で!」
 のんびりとした時間の中で、伸びをしながら言った伊織は。
 月に負けない程に優しく楽し気な笑顔を輝かせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

かれと手を繋ぎ立ち並ぶ屋台を見渡し
こうした屋台を見ると、どれにしようか迷ってしまいますね
ザッフィーロ、きみはどれが良いですか……と
近くの屋台にふらりと吸い込まれるように歩くかれに笑ってついていき
その傍らから屋台を覗きましょう

焼き栗と月見団子、とても美味しそうでいいですね
それでは僕はこの金鍔を買い求めましょう
それから屋台の列から少し離れて落ち着ける場所を探し

ええ、ひと口いただきます
差し出された艶やかでほくほくとした栗色に表情を緩ませつつ口を開け食べてみます
うん、美味しいです
ほら、きみもひと口食べますでしょうと金鍔を差し出し
好きな人の笑顔が、見ていていちばん幸せですね


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

宵と手を繋いだまま並ぶ明るい屋台を見回し歩こう
豊穣を祝う祭り、だろうからか
美味そうな香りが鼻を擽ればついぞ近くの屋台に近づいてしまうやもしれん
焼き栗に月見団子か
全て美味そうだとそう笑みを漏らしながら、ほくほくとした焼き栗を買い求めてみよう
宵、一口食べるだろう?
そう落ち着く場所に移動しつつ皮から覗くほくほくとした実を手に取れば、宵の口元へと差し出さんと試みよう
宵の表情に釣られる様に笑みを溢しながらも、差し出された金鍔を見ればああ。勿論だと身を屈め一口貰おうか
美味を食す時の幸福感は勿論だが…なんだ、矢張り宵と共に美味いと言い合える時間が一番幸せだとそう思う
…宵、もう一口食うだろう?



 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(f06826)と手を繋いだ逢坂・宵(f02925)は、参道の両脇に並ぶ出店をゆるりと見渡して。
「こうした屋台を見ると、どれにしようか迷ってしまいますね」
 美味しそうな香りに、素材を生かしたシンプルな見た目に、そしてそれを作り売る人々の充実した笑顔と、買い求める客達の期待に溢れた表情に。ふふっ、と好まし気な微笑を浮かべた。
 周囲に視線を向けたまま、傍らに感じる存在に話しかけるけれども。
「ザッフィーロ、きみはどれが良いです……」
 言い終わる前に、繋いでいた手がぐいっと引かれる。
 それは、宵を誘うというよりも。気になった出店にふらりと吸い込まれるように、つい歩く向きを変えてしまったからのようで。
 銀色の瞳が真っ直ぐに、焼き網の上で転がる栗を見つめるのを見て。
 宵はまた、好まし気な笑みを、先ほどよりも柔らかく浮かべていた。
「全て美味そうだ」
 豊穣を祝う祭りだからか、ザッフィーロの目に映る食べ物は、秋の実りを体感できるものばかりだったから。余計にその香しさに惹かれ、早速ザッフィーロは、ほくほくした焼き栗の袋を1つ、受け取ることになる。
 もちろんそれで終わるわけもなく。その先にあった団子屋にもふらりと足が向き。串に5個ずつ刺された丸い団子を2本もらう。
「焼き栗に月見団子に……とても美味しそうでいいですね」
 ザッフィーロの楽し気な様子に、そして、紙袋と串団子とを器用に片手で持って、繋いだ手を離さないでいてくれることに、宵は穏やかに微笑み。
 では僕は、と今度はザッフィーロの手を引いて向かったのは、きんつば焼きの出店。
 上新粉の薄い生地で餡を包み、円く平らに形を整えながら両面と側面を焼いていく、店主のその手際も見て楽しんでから。半分に折った紙の間に焼きたてを挟んで渡されたそれを、熱くない持ち方に試行錯誤しながらも、宵も片手で受け取った。
 繋いだ手は、離さぬまま。
「金鍔も美味そうだ」
「では、ゆっくり食べられる場所を探しましょうか?」
 嬉しそうなザッフィーロに提案して、これ以上食べ物を持てない2人は参道を外れ。
 出店から離れたところにあった、賑やかさを眺めつつ座れる長椅子に腰を下ろす。
 秋の香りと祭りの喧噪、そして神楽らしき笛の音が届くそこで。
 互いの紙を長椅子に置き、まずはと串団子をザッフィーロが手渡した。
 ありがとうございます、と受け取って。食べようかと団子を見たところで。
 ふと、宵は、上を見上げた。
 夜空にはまだ、満月が淡く煌々と光っている。
 手にした団子のように円く、そして光を照り返して輝くその姿は。
 とてもとても、きれいで。
 そしてその優しい明かりに照らし出されたザッフィーロも。
 とてもとても、きれいで。
(「好きな人の笑顔が、見ていていちばん幸せですね」)
「どうした?」
 いつの間にか、月ではなく、傍らで団子を味わう姿を見つめてしまっていた宵に、ザッフィーロが問うような視線を向ける。
 気付いてくれたことがまた嬉しくて。でもそれを口にすることなく。
 宵は、いえ、とだけ微笑むと、団子をそっと口にした。
 もっちりとした食感と、仄かに広がる甘味。餡がなくとも、素材の味で充分に楽しめるそれを、ゆっくりと味わっていると。 
「宵、一口食べるだろう?」
 横から宵に差し出されたのは、ほくほくの焼き栗。
 それは、焦げて黒くなっていた固い皮が綺麗に取り除かれ、中の実だけとなっていて。
 差し出してくれる褐色の大きな手が、丁寧に剥いてくれたのだと感じる。
 その優しさを、艶やかな栗色に感じていると。
 栗の実は、手元から口元へと方向を変えて近づいてきていたから。
「ええ、いただきます」
 表情を緩ませた宵は、そっと口を開けて。
 大きく優しい褐色の手から、そのまま食べた。
「うん、美味しいです」
 広がる素朴な甘みに。噛むほどに香ばしい香りに。
 そして、ザッフィーロが自分のために剥いて、分けてくれたことに。
 宵の笑みは柔らかく広がっていく。
「ほら、きみもひと口食べますでしょう?」
 お返しにと、こちらもときんつばを手元に差し出せば。
「ああ。勿論だ」
 ザッフィーロは身を屈め、色白な手を自身の手で包むようにして少し持ち上げて。
 宵の手から、食べる。
 少し驚いたような宵の顔が、でもすぐにまた笑みに変わるのを見て。
「美味いな」
 ザッフィーロは囁くように告げた。
 美味しいものを食べる幸福感。
 もちろん、それもあるけれども。
(「……矢張り、宵と共に美味いと言い合える時間が、一番幸せだな」)
 1人で食べるより、2人で。
 それが宵であるならば、それだけで最高の時になるから。
 星が瞬くような深宵の瞳を幸せそうに細める宵が、月明かりに照らし出されるのを、ザッフィーロも同じ表情で見つめて。
「……宵、もう一口食うだろう?」
 そしてまた差し出すのは。
 美味しさを分け合って。
 美味しいと言い合って。
 共に在る時間を、味わうため。
 満月は静かに、幾度も近づく2つの影を、地面に映し出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

竜胆・樹月
引き続きイヴンさんと参加(f29503)

●出店
まずは食べ物!
「いいにおい~」
焼き栗にしよう「これ美味しいんだよ」
皮のむき方を教える
次はふ~ふ~しながら焼き芋
この時期の食べ物はどれも最高だ~
イヴンさんって大人なのに子供っぽくておもしろい…!
豆腐田楽は初めてだ!美味しそう~
ボクも今度作ってみよう

●神社
イヴンさんを待つ間にお参り
この土地の神様にご挨拶

●庭園を散歩
お腹も満たされて、優しいメロディーにまったり
まだ紅葉には早いかな?
ボクも神社は好き!神様に会えるから
好みが合ってよかった
記念の品…う~ん…
地面に落ちた葉を拾う
これ、イヴンさんの世界にはないんじゃないかな
今日は楽しかった~、ありがとう!


イヴン・バーガンディ
樹月(f33290)が行くところについていく感じで行動する

「賑やかだな」
普段は甘いものはあまり食べないんだが…匂いに食欲をそそられる
栗の皮がうまく剥けない…
焼き芋か、熱っ…熱いな
…たまには旨い、だが口の中が甘くて水分が欲しい
豆腐…、これはいけるな

見事な建築だ
こういった宗教的というか…、歴史を感じる建物は好きだ

酒があるなら飲んでおきたい(酒好き)
まさか…さっきの芋から酒が造れるとは
樹月を待たせたら悪いからな…浸るのはこのくらいにしよう

庭園を散歩
「ここはいいところだな」
ところで、札か何かを入手できると聞いたんだが
ここに来た記念にしたいんだ

こちらこそ、いい時間を過ごせた
ああ、またどこかに行こうな



「まずは食べ物だね! いいにおい~」
 ススキ野原を満喫して、鳥居をくぐった竜胆・樹月(f33290)は、目の前に伸びる参道に、というよりその両脇の出店に、満面の笑みで突撃する。
 その後ろ姿をゆっくりと追う形になったイヴン・バーガンディ(f29503)も、いつも通りの静かな顔に、あるかなきかの微笑を浮かべ。
「賑やかだな」
 好まし気に、盛況な祭りを、そして楽し気に揺れる青髪の後ろ頭を眺めた。
「まずはこれ!」
 くるりと振り返った青髪が、琥珀色の瞳を輝かせて指差したのは、焼き網の上でころころと焦茶色の栗を転がす、焼き栗の店。
「甘くて美味しいんだよ」
 紹介しながらも早速注文すれば、紙袋がひょいと渡されて。
 受け取るや否や、樹月はころんと栗を取り出し、1つイヴンに手渡した。
 思っていた以上に熱い栗を、少し驚きながら受け取ったイヴンは。普段だったら、甘いものはあまり食べないし、楽しみにしている者へ譲って遠慮するところだけれども。
 その香しい匂いに食欲をそそられて、手の上で弾ませる様にしながら冷ますと、硬い皮を剥こうとして……思った通りに剥けず、四苦八苦。
 いつも通りの冷静な表情で奮闘する様子に、樹月が気付いて笑いかけると。
「見てて。この切り込みの部分から、こう……ね?」
 自分の分で実践して見せた。
「なるほど」
 頷いたイヴンも見様見真似で指を動かし、やっとその実を取り出せば。
 待っていた樹月と一緒に、口の中へ。
 ほくほくとした甘みに、樹月は満面の笑みを浮かべ、イヴンの表情も僅かに綻んだ。
「次は焼き芋!」
 休む間もなく、樹月はまた別の出店へ向かい。受け取ったサツマイモを半分こ。
「熱っ……熱いな」
 今度は食べやすい形になっていたからか、すぐに噛みついたイヴンは、一度口を離してからそっと端から食べ進む。
 焼き芋をふ~ふ~しながらそれを見た樹月は楽し気に笑い。
「イヴンさんって大人なのに子供っぽくておもしろい……!」
 普段とは違った一面が見れたことに、喜びを見せた。
 誘ってよかった、と言われてイヴンも気付く。
 いつもの落ち着いて慎重な自分が、少し緩んでいることに。
 それはきっと、祭りの雰囲気のせいであり。気になる秋の香りのせいであり。
 樹月が誘ってくれたから。
「……たまには、旨い」
 広がる芋の甘味を楽しみながら、ぽつりとイヴンが呟けば。
 樹月の笑みが深まっていく。
「豆腐田楽? 初めてだ! 美味しそう~」
「豆腐……」
 そして、串に刺された拍子木型の豆腐が、焼き場にずらっと並んでいるのを珍し気に覗き込み。初めての味にも挑戦してみれば。
「これはいけるな」
「ボクも今度作ってみよう」
 頷くイヴンに、樹月も少し辛めの味噌の味を覚えていく。
「この時期の食べ物はどれも最高だ~」
 そうして出店の味覚を次々と、思う存分楽しんだ樹月は。いつの間にか参道を通り抜けていて。神楽の聞こえる舞台と、やけに賑わっている社務所の間に足を向ける。
「奉納酒、か……」
 その賑わいの原因に気付いたイヴンが、じっと社務所を見ているのに気付いて。
「イヴンさん、飲みたいんでしょ?」
 聞けば、遠慮なく頷く酒好き。
 その様子に、祭りを楽しんでくれているのを感じて。
 樹月はくるっと回ってみせると。
「それじゃ、子供はお参りしてくるよ」
 本当は一緒に楽しみたいけれども、樹月はまだ未成年。
 ならばイヴンが気兼ねなく楽しめるようにと笑いかけて。
 この土地の神様にご挨拶してきます! と少し芝居がかった感じで告げると、答えを待たずに踵を返した。
 青髪の後ろ頭を、今度は付いていかずに見送って。
 イヴンは温かな気遣いに少し表情を緩めると。
 折角だからと、奉納酒を振舞っている社務所へと近づいていった。
 そんな別行動もしながらも、2人は祭りを楽しんでいって。
 少し休憩、とばかりに足を向けたのは、参道から反れ、神社の脇に広がる日本庭園。
 楽しい雰囲気を味わい、お腹も満たされ、神楽の優しい音を遠くに聞いて。
「まだ紅葉には早いかな?」
 そして並ぶ木々をも眺めながら、樹月は先ほどより静かに笑う。
「ここはいいところだな」
「ボクも神社は好き! 神様に会えるから。
 イヴンさんと好みが合ってよかった」
 言って空を見上げれば、変わらず輝くまんまるの満月。
 その美しさも嬉しくて。イヴンが並んでいてくれることが楽しくて。
「お酒も美味しかった?」
「ああ。まさか、さっきの芋から酒が造れるとは」
「焼き芋のお酒!? 飲んでみたいな」
 話と共に足取りも弾ませ、池の周りをぐるりと回る。
 そのうちに、ふと、イヴンが周囲を見回し。
「ところで、札か何かを入手できると聞いたんだが」
 庭園ではなくて、やはり出店や社務所の方だろうか、と元の場所を気にして。
「ここに来た記念にしたいんだ」
「記念の品……」
 聞いた樹月は、う~ん、と考える。
 イヴンが言うのは神札とかお守りとか絵馬とか、そういったもののことだろう。それであれば確かに、今いる庭園にはないもので。また戻って案内することもできるだろうけれども。何となく、樹月は、それだけでは物足りない気がしてしまい。
 思いを巡らす琥珀色の瞳が、足元も彷徨って。
 そうだ、と思い至ると、樹月は唐突にしゃがみ込み。
 地面に落ちていた葉の中で、綺麗な色と形のものを拾いあげた。
「これ、イヴンさんの世界にはないんじゃないかな」
 夜と闇の地下世界『ダークセイヴァー』。
 そこにも落ち葉ぐらいはあるけれども、こうして眺めて綺麗だと楽しめるものではないはずだし。他の誰とも違うお土産を、自分が選んで渡したものを、記念にと持ってくれたら嬉しいから。
 イヴンの様子を伺いながら、樹月は葉を差し出して。
 そっと、優しい手に受け取られる。
 確かに、買った土産よりも、今この一時を切り取ったかのような、共に過ごした時間を思い出せるものの方が、記念になると感じて。
(「いい時間を過ごせた」)
 他人から見れば唯の1枚の葉に、イヴンは赤い瞳を細め。
「ありがとう」
「こちらこそっ。今日は楽しかった~。ありがとう!」
 お礼を告げればまた樹月の笑顔が弾ける。
「また誘ってもいい?」
「ああ、またどこかに行こうな」
 そして2人は、柔らかな月明かりの照らす下を、次へ向けて歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
屋台で焼き銀杏を購入して参拝へ。
お参りが終わったら奉納酒をいただいて……種類があるのね。お酒自体あまり飲んだことがないのだけど何を飲んだらいいのかしら?おすすめがあるならそれを。
そのあとは長椅子に座って月を見ながら銀杏をいただきましょうか。
さっきまでは月明かりがすごくて、ちょっと怖かったけど今は平気。
でも忌避とは違うあの感覚は一体何だったのかしら?懐かしくも……そう戻ってはいけないような気がしたの。

ところで……プリンセスもいらっしゃるのでしょうか?
お祭りを楽しみながらちょっとだけオブリビオンを探してみましょうか。
これは純粋な興味です。転がっているのを見たらお邪魔しないようにそっと立ち去ります。



 神社に来たのだから、ときちんと参拝を済ませた夜鳥・藍(f32891)は、焼き銀杏の小さな袋を手にしながら社務所の前へとさしかかる。
 そこには幾つもの酒樽が並び飾られていて。その前で、ほんのり顔を赤くした人達が陽気に笑いながら手に手に猪口を持っていた。
 その様子を見ていた藍は、彼らの話をそっと聞いて。
「なるほど。奉納酒がいただけるのね」
 理解すると、さらに興味を深めて近づいていく。
 一応お酒は飲めるけれども、あまり飲んだことがないものだから。
 そして、それを口にした人達が、あまりにも楽しそうだから。
 どんなものなのだろうと気になって。
「……種類があるのね」
 純米酒だけでも樽は複数あり、甘口だの辛口だのいろんな評価が聞かれ。他に、芋から作られたというお酒や、果実を漬けたお酒もあるとのことで。
「何を飲んだらいいのかしら?」
 こくんと首を傾げていると。その様子に気付いた人達が、これはあれはと口々に、おススメを教えてくれた。
 お酒を飲み慣れていなくても、と選んでもらった口当たりのいいものを、猪口にそっと注いでもらって。少しだけ恐る恐る、静かに傾けると。
「不思議な美味しさね」
 初めての味と感覚に、ほう、と藍は熱い息を吐いた。
 その様子を見て嬉しそうに笑う人々は、最初から飲み過ぎるのはいけないと、また来年もっと飲みに来なと、陽気に声をかけてくれたから。
 藍は丁寧に猪口を返すと、微笑みと共に一礼した。
「素敵なお祭り」
 出店の賑やかさも。美味しそうな秋の実りも。
 厳かな神社も。そしてそこに集まる人々の温かさも。
 じんわりと、感じながら。
 藍は、見つけた長椅子にそっと腰を下ろした。
 折角の銀杏も冷める前に、と袋を開けて。普段とは違う浴衣の装いを見下ろして。
 黄色い実をそっと口に運び。
 その動きで視線が手元から少し上がると、そのまま空を見上げた。
 ススキの輝きからは離れたけれども、夜空の満月はそのままで。
 煌々と輝く月明かりに、藍は宙色の瞳をそっと細める。
(「……今は、平気」)
 ススキ野原では、月明かりがすごくて。ちょっと怖かったけれども。
 今はただ綺麗だと、見つめることができる。
(「あの感覚は一体何だったのかしら?」)
 暗い心の奥底にまで届きそうな月の光が、何もかもを見透かしてしまいそうで。全てをさらけ出されてしまいそうで。怖くて。
 でも、嫌いにはなれなかった。
 忌諱とも違う。
 美しく、好ましく、懐かしくも……そう、戻ってはいけない気が、して。
 藍はじっと、円い月を見つめ。
 ふと、その手に1枚のカードを取り出した。
 占いで使うカードの中にある、月が描かれたもの。
 そこに輝く白銀の月を、見下ろして。
「……銀狼招来」
 呟くと、傍らに翼持つ銀狼が姿を現した。
 その毛並みを表すように『白銀』の名を持つ大狼は、腰かけたままの藍に顔を寄せるように、そっとその頭を下げて。
 白い繊手が頭を撫でるのを、青と金のオッドアイを細めて受け入れると。
 ふい、と視線を横へ向けた。
 出店の喧噪から少し離れたその場所に、ハニワが1つ、置いてある。
 参道からは外れているし、意外に人が向かっている庭園からも遠い位置。
 藍も、白銀の視線を追うように、そちらを振り向いて。
「ちょっとだけ探してみようと、思いはしましたけど」
 まさかこんなにあっさり見つかるとはと、少しだけ目を見開いた。
「ハニワプリンス、でしたね」
 聞いていたそのオブリビオンの名を口にすれば。
「……その通りで……ある……」
 気の抜けたような円い口から、途切れ途切れに返る声。
「プリンセスもいらっしゃるのでしょうか?」
「……プリンスで……ある……」
 純粋な興味で聞いてみるものの、そんな答えしかなく。それどころか、藍の方を向くことも、動くことすらできない様子。
 じっとそれを見ていた白銀が、ゆるりと動くと。
 その太く大きな前足で、ハニワプリンスをそっとつついた。
 ころん。
 何の抵抗もできずに転がるハニワ。
 どうやら『ハレの霊力』はかなり高まっているようで。人々に危害を加えるどころか、倒れたところから起き上がることすらできないみたいだから。
 藍はその姿をじっと見て。聞こえてくる喧噪と、神楽の笛の音に、耳を澄ませて。
「お邪魔をしてはいけませんね」
 祭りも。ハニワプリンスも。
 共にそのまま在れるようにと。
 長椅子から立ち上がり、そっとその場を立ち去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 銀河のように美しい、藍晶石の髪の少女が背を向けたそこで。
 白銀の大狼は、そっとまた前足を動かす。
 蹴り出すような動きを受けて、ハニワプリンスはころころと転がり。
 辿り着いたのは、鳥居の外。祭りの外。
 そこには、木陰で目立たない位置に、両腕型マルチビーグルが停車していて。
 土木作業を行いそうな男達が、せっせと荷物を運び込んでいた。
 転がり止まったハニワプリンスが、その作業を見上げていると。
 作業員達が、不自然に転がるハニワに気付き。
 そしてそれがオブリビオンだと気付き。
 運んでいた荷物を、美味しそうな秋の味覚を置くと。
 代わりに、つるはしやらハンマーやらレンチやら、いつも使っているのであろう、手に馴染むそれらを慣れた様子で持ち上げて。
「……動けぬ……」
 呟くしかできない、転がったままのハニワプリンスへ。
 主や皆が祭りを杞憂なく楽しめる様にと、一斉に振り下ろした。
 

最終結果:成功

完成日:2021年10月31日


挿絵イラスト