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アポカリプス・ランページ⑯〜鏖殺、鏖殺、鏖殺

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●無限の戦場
「状況を説明いたします」
 グリモアベースにて猟兵たちと向き合った奉仕人形ティー・アラベリアは、いつもとは比較にならぬほど弾んだ声でブリーフィングの口火を切る。
 その相貌に浮かぶ微笑もまた生気に満ち、思い人を前にした生娘の如く純粋で瑞々しい歓びに満ちている。もし彼に赤い血が通っていれば、その頬は桜色に染まっていたことだろう。
「今回の依頼は、フィールド・オブ・ナインが一体、マザー・コンピューターの能力によって作り出された<増殖無限戦闘機械都市>の撃滅となります」
 華やかなソプラノと共に、旧アメリカ合衆国はミシガン州に存在した都市、デトロイト市の全景が魔力で編まれた三次元地図に投影される。
「投影している地図を見ればお察しいただける通り、マザー・コンピューターは旧デトロイト市そのものを戦闘機械都市として作り替え、そこから無尽蔵ともいえる物量の戦闘機械獣を生成し続けると同時に、アメリカの大地を同様の戦闘機械都市へと作り替えています」
 すでに猟兵たちの間では既知の事実となっている通り、マザー・コンピューターはあらゆる物質・概念を"機械化"する能力を持つ。彼女は旧デトロイト市を足掛かりとして、旧世界の覇権国家を擁した南北アメリカ大陸そのものを戦闘機械として作り替える策謀を巡らせているのだ。
 <増殖無限戦闘機械都市>と化した旧デトロイト市を起点として、指数関数的にマザー・コンピューターの影響が広がっていくことを考えれば、時間的な猶予は必ずしも多くはない。
「そこで、今回皆様には、普段行うような環境や生存者に対する配慮は一切行わず、<増殖無限戦闘機械都市>と化した一つの都市、すなわち旧デトロイト市を、この世界から消し去っていただきます」
 旧世界の覇権国家たる合衆国が擁した、最盛期には九〇万以上の人口を抱えた巨大都市。戦闘エリアすべてが破壊対象であり、侮れぬ能力を持つ敵であることを考えれば、繰り広げられるであろう戦闘の熾烈さは筆舌にしがたいものとなるだろう。
「三六〇度、都市に存在する我々猟兵以外の存在はすべてが敵です。全方位からの熾烈な攻撃を退け、そのことごとく鏖殺してください」
 生存者や周辺環境への配慮など、当然かつ煩わしい要素は一切存在しない、猟兵としての全能力を発揮した純粋な戦闘と破壊。とっても素敵な舞台だと思いませんか? そう語る奉仕人形の瞳は、ただただ純粋な歓喜の色があった。
「まったく喜ばしいことに、マザー・コンピューターの能力によって、本来であればグリモアベースにて支援にあたるグリモア猟兵もまた<増殖無限戦闘機械都市>へと転移することとなります。敵ながら素晴らしい趣向を用意してくれたものです」
 そう説明を締めくくった人形は、踊るように軽やかな身振りで短杖を操り三次元地図を消失させると、再度猟兵たちへと向き直り、赤黒く輝くグリモアを起動させる。
「それでは皆様、ともに灼熱の戦場を楽しみましょう」
 どこまでも純粋な微笑を浮かべる人形と共に、猟兵たちは恐るべき物量と火力を有する敵中へと降り立つのだった。


あーるぐれい
●ごあいさつ
 ごきげんよう皆さま。あーるぐれいでございます。
 三六〇度すべてが敵という環境で、ただひたすらに暴力と破壊を振りまく依頼です。
 楽しく油断なく大都市を更地にしましょう。

●補足情報
 オープニングにもある通り、都市全域三六〇度すべてから敵の攻撃が飛んでくるような環境です。
 今回の戦場に、後方の概念は能動的に作り出さない限り存在しません。前にも後ろにも目をつけましょう。
 また、敵の種類も多岐にわたりますので、猟兵の皆様の特性に合った敵は大体存在します。
 ただ、難易度は相応のものですので、敵の火力および防御能力は一定水準以上です。何らかの手段で攻撃と防御双方を確保することを推奨いたします。

●プレイングボーナス
 1.グリモア猟兵を守りつつ、増殖無限戦闘機械都市の攻撃を凌ぎつつ、マザーと戦う。
 2.全方位からの攻撃を意識する。
 3.広範囲を更地にすることを意識した攻撃を実施する。

●プレイングボーナス補足
 グリモア猟兵たるティーは撃破されない程度に楽しく戦っていますので、特に護衛を意識する必要はありません。
 基本的に2及び3のボーナスを意識して立ち回ることを推奨いたします。
 戦場にいるグリモア猟兵は火力支援、防御支援、情報支援等、戦場で必要となる支援行動は一通り実施できますので、必要であればご活用ください。

●プレイング受付と採用人数について
 オープニングが公開され次第直ちにプレイングの受付を開始いたします。
 戦争シナリオですが、今回は三日のキャパシティの範囲で可能な限り採用させていただきたく思います。
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第1章 ボス戦 『マザー・コンピュータ増殖無限戦闘機械都市』

POW   :    マシン・マザー
全長=年齢mの【巨大戦闘機械】に変身し、レベル×100km/hの飛翔、年齢×1人の運搬、【出現し続ける機械兵器群】による攻撃を可能にする。
SPD   :    トランスフォーム・デトロイト
自身が装備する【デトロイト市(増殖無限戦闘機械都市)】を変形させ騎乗する事で、自身の移動速度と戦闘力を増強する。
WIZ   :    マザーズ・コール
【増殖無限戦闘機械都市の地面】から、対象の【猟兵を撃破する】という願いを叶える【対猟兵戦闘機械】を創造する。[対猟兵戦闘機械]をうまく使わないと願いは叶わない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

栗花落・澪
正直周りのサポート特化過ぎて、自分の攻防共に全くなんだよねぇ…
だから自分に【オーラ防御】しつつ
出来れば防御支援もらえると助かるかもしれない
後は致命傷だけは避けつつ【空中戦】で【激痛耐性】と回避重視

相手が機械なら、なんとかなる
【聞き耳】で起動音や方向を聞き分け常に飛び回りつつ
体を回転させながら【高速詠唱】で炎魔法の【属性攻撃、範囲攻撃】
向かってくる攻撃を出来る限り相殺しつつ
機械武器に引火させる事で爆発、複数を誘爆狙い
一応ティーさんが危うそうな時は援護にも入ります

【指定UC】発動
召喚した炎の鳥を敢えて合体させず全方位に散らせる事で
魔法よりも更に広範囲の戦闘機械を大爆破
まとめて更地にしていく戦法




 マザー・コンピューターの体内と表現しても過言ではない<増殖無限戦闘機械都市>へと転移した猟兵たち。
 地平線まで続く見渡す限りの大地と空を、多種多様な大きさと形状を持つ機械類があまねく覆う様は、大都市一つを巨大な戦闘機械へと変貌させたマザーの能力を如実に表しているといえる。
「正直周りのサポート特化過ぎて、自分の攻防共に全くなんだよねぇ……」
 全方位を敵意に埋め尽くされた戦場へと放り込まれた栗花落・澪は、琥珀色の瞳で周囲の状況がまったくブリーフィング通りであることを確認すると、ため息交じりに呟く。
 生来心臓が弱い澪は、直接的な戦闘よりもその蠱惑的なまでの美しさと歌声を用いた支援を得意とする猟兵である。鉄火場に正面切って突撃するタイプの猟兵では決してない。
「相手が機械なら、なんとかなる……かな」
 転移完了と同時に御使いの翼をはためかせ、鋼鉄に支配された世界を飛翔する澪。ほぼ瞬間的に彼の存在を感知した戦闘機械都市は、有機的とすら言えるほどの滑らかさであらゆる場所に展開された砲門を開くと、儚く細い影に向かって一斉に火力を投射する。
「……さすがに早いね」
 灰色に支配された世界を、金蓮花が舞う。
 自らの翼を操り複雑な乱数機動を行うことで、迫りくる無数の機関砲弾を回避しつつ、歌唱技術に裏打ちされた聴力を用い、後続する誘導弾の方位と数を割り出した澪。
 彼は極限まで高速化させた詠唱によって瞬く間に炎属性を纏った魔力を周囲に展開すると、自らに殺到する誘導弾の進路上へと撃ち放つ。
 澪が全方位に向けて放った炎魔法は、亜音速で飛翔する誘導弾に接触。瞬間的に千度近い高温に晒された誘導弾内部の炸薬が発火し、事前に入力されていた信管作動距離――即ち澪に危害を与えられる距離――の遥か手前で次々と炸裂していく。
 結果として発生する光景は、澪を中心とした歪な球状範囲に次々と発生するおびただしい火球の群れであった。
 炸薬と破片、そして衝撃波によって形成される無数の花が、灰色の空間に鮮やかな色彩を加え、琥珀色に輝く澪の髪と金蓮花の花飾りを揺らす。
 美しさと野蛮さという、相反する二つの要素を内包した空間。その只中を自在に舞う澪の姿は、見るものにある種の美的感動を強要させるに足るものであった。
「何とか捌けたけど、次々来る――!」
 転移と同時に行われた澪の回避と迎撃は、時間にして僅か数分のうちに行われたものである。第一波の攻撃を凌ぎ切ると同時に、彼の聴覚は第二波攻撃が始まった事を捉えていた。
 音を頼りとした迎撃と乱数機動、そして魔力で編んだ障壁によって賄われる防御は、どちらかといえば曲芸に類する行為である。敵のリソースがほぼ無限に等しい以上、攻勢に転じなければいつか限界に達する。
 ただし、それは澪にとって織り込み済みのことでもあった。それを証明するかのように、迎撃のために再び魔力を練る澪の傍らを複数の誘導魔法弾が通過し、戦闘機械都市から放たれた誘導弾を撃墜していく。
「先ほどの迎撃、お見事でございました。 これより先の防御はお任せくださいませ」
 果たして、魔力弾の正体は澪が事前に要請していた迎撃支援であった。複数の誘導魔法弾と共に彼の周囲に展開した障壁展開用の妖精たちが、澪の魔力によって構成された防御障壁を補強していく。
 ひとまずの身の安全を確保した澪は、周囲の魔力を介して脳に直接響く奉仕人形の声を聴きながら、防御に回す予定であった魔力を攻撃のために変換する。
「鳥たちよ――!」
 彼の魔力によって形成されるは、ありとあらゆる種の鳥の姿を模した破魔の炎。
 水を掬うような形で天にかざされた手から、数多の鳥たちが紅蓮の翼を羽ばたかせ、マザーが作り出した戦闘機械都市へと飛び立っていく。
 あえて魔力を収束させず、その数をもって周囲を制圧させるべく放たれた鳥たちは、流線的な機動を描きながら地表を支配する有象無象の機械へと突入する。
 澪の手によって次々と放たれ、戦闘機械都市へと降り立った浄化の鳥は、周囲に存在する複合金属を数千度の熱によって融解させ、その内部にため込まれていた弾薬類の誘爆によって粉砕していく。
 断末魔の悲鳴の如く響き渡る金属の破断音と、天を揺るがすほどの爆轟は徐々にその範囲を広げ、やがては都市の一角すべてを包み込んでいった。
 天の御使いとも呼称されるオラトリオとして生を受けた澪は、鉄と火薬によって支配された大地を、熱と破壊によって浄化することに成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
護衛が入用なら…随分と楽しんでおられますね、ティー様

マルチセンサーの●情報収集と瞬間思考力で敵位置常時把握
●武器改造で強装弾を装填した格納銃器…特に旋回砲塔の如き肩部銃器●乱れ撃ちスナイパー射撃で一掃

近い敵は近接攻撃で排除しUC制御の為の間隙作り

機械の生体コアでも私の創造主とは随分と為人が違いましたね、マザーは

要らぬ感傷でした

今を生きるヒトの為に、かの鋼鉄の母の野望砕く為
住まう星の悉くを破壊し尽くした時代に生きたその英知
使わせて頂きます

用途申請、フォーミュラの撃破!

制御の為【戦術兵器】属性付与した【ガンマ線バースト】を剣先より生成
超高出力ガンマ線レーザー砲を剣を振るうが如く一閃
都市をなぎ払い




 既知世界に対して猟兵達の転移を可能たらしめる迅速な戦力投射能力。その根幹を成すグリモア猟兵を標的としたマザー・コンピューターの策謀は、<増殖無限戦闘機械都市>と化した旧デトロイト市での戦闘をより苛烈な物としていた。
 ブリーフィング時の表現にあった"灼熱の戦場"そのものと化した戦闘機械都市に降り立つは、"「誰かの為」の機械騎士"トリテレイア・ゼロナイン。他者を守護するという目的を持った戦闘においては、屈指の能力を持つ猟兵の一人である。
 転移が完了すると同時に周囲の状況を積載されたマルチセンサーで把握した彼は、楽しげにとしか表現しようのない機動で空中を舞い、破壊を振りまく護衛対象の姿を見出していた。
「護衛が入用なら……と考えましたが、随分と楽しんでおられますね、ティー様」
「ごきげんよう、トリテレイア様。 ええ、ええ。 このように楽しい趣向は中々ございませんので」
 さながら、祭りの道端でばったり出会った知人同士の会話のような長閑さであるが、互いに転移と同時に始まった戦闘機械都市の熾烈な迎撃をさばきながらの会話である。
 思念越しに会話を行いながらも、トリテレイアは巧みな推力制御で迫りくる弾幕を回避し、無数に存在する火点を特定し次第、躯体内部に格納された無数の火器によって制圧していく。
「普段は間接的にしか確認できないその戦技、間近で拝見させていただきますね」
「承りました」
 何処までもこの状況を楽しむつもりらしい人形に若干の苦笑めいた感情を覚えながらも、トリテレイアは創造主に託された禁忌剣を抜刀し、厳かに構える。
「――機械騎士の戦技、とくとご覧あれ」
 トリテレイアの推力移動とワイヤーアンカーを組み合わせた戦闘機動は、惑星上に存在するはずの重力を嘲笑うかのように三次元的な戦闘能力を彼へと付与していた。
 全高十メートル近い巨大機械獣をその足元から頭部にかけて分解するかのように両断したトリテレイアは、後方に存在する機械獣生産プラントへとワイヤーアンカーを射出。アンカーを牽引しながら跳躍することで、スクラップと化した機械獣諸共彼を爆砕すべく放たれた誘導弾を回避すると、その射点に向けてすぐさま格納銃器を打ち込み沈黙させる。
 その躯体重量からは想像もつかぬような運動性をもって周囲に展開していた戦闘機械獣を翻弄したトリテレイアは、時に豪快に、時にあざとさすら感じるほどの柔らかな剣捌きによって、次々と鋼鉄の獣を切り倒していく。
「機械の生体コアでも、私の創造主とは随分と為人が違いましたね、マザーは」
 激戦のさなか、敵手たる機械獣を生み出したであろう存在に、かつて見た自らの創造主の姿を重ねるトリテレイア。
 どこまでも優しい御伽噺を継承したトリテレイアを憎み、そして愛した彼女と、自身の産物を顧みることなく、ただ自らの目的"無限の思索"のみを求めるマザー・コンピューター。その在り様は、生体コアという共通点はあれど、どこまでも異なるものであった。
「……要らぬ感傷でした」
 自らの演算領域に生起した思考に区切りをつけ、周辺に存在した最後の機械獣を切り伏せた彼は、自らの創造主から託された禁忌剣を正眼に構える。
 神と決別し、今を生きるヒトのためにあらんとした鋼鉄の騎士は、遍く星を破壊し尽くすために生み出された英知の結晶の一側面を顕現させる。
「――用途申請、フォーミュラの撃破!」
 正式名称「A式天災再現兵装」。幾重もの倫理制約によって縛られたその兵装は、その名が示す通りあらゆる自然現象を天災規模の出力で発生させる、恐るべき兵器である。
「不肖の騎士たる我が責において、貴女が厭うた地獄を此処に」
 発生させうる自然現象とは、なにも地球型惑星表面で発生しうるものに縛られない。
 あらゆる生命、あらゆる星を照らす恒星が、その断末魔として発するガンマ線バーストすら再現する、まごう事なき禁忌の剣である。
 危害半径内に味方が存在しないことを確認したトリテレイアは、裂帛と共に剣を一閃する。
 剣先より生成されたガンマ線バーストは、恒星がその永い時間をかけて発するそれを遥かに超える量のエネルギーを瞬間的に放出し、前面にそびえる戦闘機械の群れを薙ぎ払う。
 もはや、それは戦闘ですらなかった。
 あまりにも圧倒的なエネルギーの本流は、危害半径内に存在するあらゆる物質を素粒子に分解し、鋼鉄に覆われた都市の一角をガラス化した焦土へと変貌させるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィリアム・バークリー
一度、ティーさんとはご一緒してみたかったんですよ。単純な破壊に関してはぼくより上でしょう?
背中合わせ、いいですか?

魔導原理砲『イデア・キャノン』に多数の立体積層魔方陣を仮想砲塔として組み合わせ、「全力魔法」混沌の「属性攻撃」「範囲攻撃」「貫通攻撃」で、Elemental Cannon, Fire!
噴き出す魔力の奔流が消えないうちに、身体を回して180度殲滅します。
そちらはどうです、ティーさん。

そうだ、マザーを忘れるところでした。ティーさん、合わせてもらって良いですか?
じゃあ改めて、原理砲の一撃を受けてください!

気付いてます? グリモアベースで事件の説明してるより、よっぽど生き生きしてますよ。




 例え自らの存在が危ういものとなる灼熱の戦場にあっても、その状況そのものを楽しむ者は多かれ少なかれ存在する。
 性質の悪いことに、今回の戦場にあっては護衛対象となるはずのグリモア猟兵がその筆頭であった。
 戦場に転移が完了したウィリアム・バークリーは、ほぼ全周から放たれる暴風雨のような迎撃を、自らを護る外套とスプラッシュを触媒とした魔術によって受け流しながら、護衛対象であるはずの奉仕人形の姿を探す。
 いまや<増殖無限戦闘機械都市>と化した広大な旧デトロイト市で人形一つ探し出すのは中々に骨の折れる作業のように思われたが、魔術に明るいウィリアムにとってはそう難しいことでもない。
 相手が鋼鉄製の機械獣や精密誘導兵器が支配する戦場で、景気よく魔力や念導波を垂れ流している存在であればなおさらである。所々で機械獣を処理しながらも、四半刻もかからず目的の存在を見つけ出すことに成功していた。
 魔力を偃月状に展開した杖で機械獣を叩き切る奉仕人形。その背後に迫っていた機械獣を氷結の刃で打ち抜き、ふわりとその至近へと移動したウィリアムは、振り返った奉仕人形へと声をかける。
「一度、ティーさんとはご一緒してみたかったんですよ。 単純な破壊に関してはぼくより上でしょう?」
「ごきげんよう、ウィリアム様。 ボクとしても、是非貴方とは共に戦ってみたいと考えておりました」
 いつもは間接的に拝見せざるを得ませんからねと続けながら、場違いなほどゆったりとしたカーテシーを行うティーに対して、ウィリアムは頷く。
 魔術を用いる猟兵は数あれど、多様な魔術を用いて近代戦における多種多様な状況に見事対応して見せるウィリアムの力量は、奉仕人形としても興味を惹かれるものであるらしい。
「では、背中合わせといきましょうか」
 ウィリアムの誘いを快諾したティーにそう声をかけ、互いの死角をカバーするように背を預ける。
 純粋な破壊を目的とする以上、小細工を弄しても仕方がない。ここは純粋な火力をもって制圧すべきと判断したウィリアムは、愛剣スプラッシュを正面に構え、直接火力としては自らの魔術の中で最も強力な破壊力を持つ Elemental Cannon の詠唱へと移る。
 詠唱と共に構築されていく多層魔法陣が、ウィリアム自身が練り上げる魔力と共鳴し、眩い光を放ちながら開放の時を待つ。
「―― Elemental Cannon Fire !」
 詠唱完了と共に放たれた互いに相反する属性を持つ精霊魔力は、多層構築された魔法陣によって幾重にも圧縮され、あらゆる存在を貫通し薙ぎ払う魔力の奔流と化して、射線上に存在する機械獣を基盤となる都市諸共粉砕していく。
 常ならば着弾点を起点とする大規模な爆砕魔法として発現する精霊砲ではあるが、面制圧を重視ししたウィリアムは術式に改編を加え、線上を薙ぎ払う魔力流として行使していた。
 彼は砲門となるスプラッシュごと体をひねり、彼の正面を半円状に薙ぎ払う。
 莫大な魔力流が収まる頃には、彼の正面に存在する鋼鉄都市はすでになく、ただ圧倒的な魔力の本流に薙ぎ払われた荒れ地のみがその姿をさらしていた。
「見事なものでございますね」
 魔法を扱う猟兵であれば、だれであっても瞠目すべき要素もった大魔術である。グリモアベースからの観察ではなく、実物を目の当たりにした奉仕人形もまた、純粋な事実に基づいた称賛をウィリアムへと送る。
「ありがとう。そちらはどうです、ティーさん」
 そう言って振り返れば、既にティーの正面にも荒涼とした焼け野原が広がっている。
 人形の手には、杖先に紫色の宝玉が輝く魔杖が握られており、どうやらそれを使って広範囲を殲滅する魔法を行使したらしい。
「こちらも処理完了いたしました。 純粋な魔術とはいささか異なりますが」
 そう語る人形の口調は、どこまでも無感動な通常の依頼時とは異なり、弾むように軽いものであった。
「気付いてます? グリモアベースで事件の説明してるより、よっぽど生き生きしてますよ」
「ええ、自覚はしているのですが……。 戦闘時の疑似人格は、闘争や破壊といった行為に悦びを見出すよう調整されているようなのです」
 苦笑交じりで指摘するウィリアムの言に、我がことながら困ったものですねと、奉仕人形ははにかむように微笑むが、発言内容は物騒この上ないものである。
「そうだ、マザーを忘れるところでした。 ティーさん、合わせてもらって良いですか?」
「無論でございます」
 奇しくも共闘を行うこととなった一人の精霊術士と一体の奉仕人形は、今や焼け野原となった都市の一角から、マザー・コンピューターが存在すると思われる<増殖無限戦闘機械都市>中枢へ向けて、剣と杖先を向けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桐嶋・水之江
ワダツミの武装をフルに使えるようで大変結構
じゃあ始めましょうか

戦いは先手必勝…予めチャージを済ませた拡散ハイパーメガビーム砲でご挨拶
更に二連装メガビーム砲とMLRSを乱射して文明を石器時代に戻してあげるわ
マザコンを直接狙わなくてもその内巻き添えになるわよ
私はエレノアに乗ってワダツミの甲板に仁王立ち
グラン・エグザストロッドの干渉波で誘導妨害のジャミングを掛けるわ
航空機が来てもCIWSとプロテクトフィールドの全包囲バリアもあるからそう簡単にやられないわよ
そうそう、ティーちゃん?ティーくん?まあ細かい事はいいのよ
暇なら対空砲火してくれない?
砲仕人形なんでしょう?砲仕じゃなくて奉仕?細かい事はいいのよ




「ワダツミの武装をフルに使えるようで大変結構。 ……じゃあ始めましょうか」
 あらゆる配慮は不要という、誘い文句のようなブリーフィングを聞いて、嬉々として戦場に乗り込む一人の猟兵がいた。
 思えば惑星大気圏内での戦場は、兵器の性能にかかわらない部分で諸々考慮しなければならないことが多すぎる。例えば、そう、周辺環境への被害とか。
 普段の彼女の言動を知る者がいれば"本当に配慮などしていたのか"と訝しむ者もいるかもしれない。しかし、それは大いなる誤解である。配慮はしていたのだ、彼女の主観的常識の範囲内で。
 そのような思考が彼女の胸の内で繰り広げられていたかは定かではない。
 ただ一つ確かな事実は、転移と同時に――本来は宇宙空間での戦闘で使用される――拡散ハイパーメガビーム砲を最大出力で発射し、挨拶代わりに都市の一区画を蒸発させた強襲揚陸艦<ワダツミ>の姿と、その甲板上で堂々と仁王立ちをキメる<アークレイズ・エレノア>の姿であった。
 操る猟兵は紹介するまでもないだろう。お馴染み、桐嶋・水之江である。
「さぁ、文明を一気に石器時代まで戻してあげるわ!」
 桐嶋は色々とアメリカで発するのはまずい文句と共に<ワダツミ>に拍車をかけ、各部に積載された二連装メガビーム砲と多連装ミサイル発射システムの砲門を開くと、照準もそこそこに一斉発射する。
 諸々に存在する惑星上の環境や居住する人間への配慮をすべて取っ払ったハイパーメガビーム砲の威力たるやすさまじく、周囲に存在するだけで電子系統はおろか人間の体すら焼き切れるような電磁波をまき散らしながら、鋼鉄の都市をプラズマへと変換していく。
 無論、相手はマザー・コンピューターが作りし<増殖無限戦闘機械都市>である。ただただやられ役に徹してくれるほど甘いものではない。
 地上からの攻撃は発射装置ごと薙ぎ払われることを理解した戦闘機械都市は、旧世界の航空機と誘導兵器を急ピッチで生成すると、わが物顔で空を支配する<ワダツミ>へとけしかける。
「まぁ、そう来ることは織り込み済みよ」
 戦闘機械にとっては不運であったことは、誘導兵器をけしかける相手が桐嶋であったことだろう。ジャミングなどは彼女の十八番と言っていい。
 桐嶋は彼方から飛来する航空機から放たれたミサイルに対して、<アークレイズ・エレノア>の手に持つグラン・エグザストロッドを向けると、その杖先から強力な電子干渉波を放出する。
 干渉波を浴び、制御系統への侵食を受けた誘導兵器は、本来の目標を見失って迷走する物が続出する。それだけにとどまらず、干渉波を浴びた角度と距離によってはより致命的な侵食を受け、発射した航空機に向かって逆進する物すら現れる始末であった。
 電子妨害を抜け、<ワダツミ>へと迫る誘導兵器はCIWSやプロテクトフィールドという近接防御兵装で容赦なく無力化していく桐嶋。
 しかし、戦闘機械都市もまた一筋縄ではいかぬ敵手であった。
 第一波、第二波と続く失敗から干渉波の存在と<ワダツミ>自身の防空能力を把握した機械都市は、生成する機械獣を短時間のうちに改良し、誘導兵器の対ECM能力を向上させるとともに、その飛翔速度も超音速から極超音速へと改良して見せたのだった。
 あるいは、<ワダツミ>と桐嶋とが持つリソースをより防御に割り振れば、改良された迎撃にも対応できるやもしれない。ただ、その場合、必然的に攻撃に割り振られたリソースが減ることになる。
 それは面白くないと考えた末、彼女は今回の戦場には便利な存在がいることを思い出す。
「そうそう、ティーちゃん? ティーくん? まあ細かい事はいいのよ。 暇なら対空砲火してくれない? 砲仕人形なんでしょう?」
「承知いたしました。対空防御ですね、お任せくださいませ」
 ちょっとコンビニでコーヒー買ってきてくれない? ぐらいのノリで迎撃を依頼すれば、遠方から無数の高速魔法弾が飛来し、迫りくる誘導弾を迎撃していく。
 依頼者が依頼者なら、受ける方も受ける方で大概であった。
 お互いに細かいことは気にしない。もっとも、それはこの場にストッパーとなるべき存在が不在である証左でもあった。
 緊張感に欠ける会話が繰り広げられている今この瞬間においても、実際に生じている戦闘の様相は熾烈を極めている。絶え間なく飛来する極超音速誘導弾が無数の弾殻と共に空中で炸裂し、<ワダツミ>が放つメガビーム砲と多連装ミサイルが、轟音と共に鋼鉄に支配された大地をガラスと土の混合物に変換していく。
「そういえば、砲仕じゃなくて奉仕だったかしら。まぁ、細かいことはいいわね」
「ええ、ええ。どちらも発音は同じでございますから、些細なことでございます」
 あるいは、最も恐れるべきは、このような状況を十分に把握してうえで、奇妙なほどに長閑な会話を続ける二人の精神構造であるかもしれない。
 桐嶋が思い返したように計器に目を向ければ、拡散ハイパーメガビーム砲の第二射が発射可能な状態となっている。彼女はいまだに焼け野原と化していないエリアにざっくり照準を合わせると、躊躇なく発射を命ずる。
 このまま順調に都市を都市の残骸に変えていけば、そのうちマザー・コンピューターも巻き添えになるだろう。
 とことん身も蓋もない思考ではあったが、確かにこのような戦場においては一種の真理であることもまた事実であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
おいおい……
マジかよ、このグリモア猟兵。
カクリヨの戦争で一緒になった時も感じたけど、
ヤベェこの状況を楽しんでやがる!
その余裕が羨ましい限りだけど、アタシもやる事やりますかねっと!

ぶち込まれるのが戦場真っ只中の鉄火場なら、
いつもながらカブに『騎乗』し、サイキックの『衝撃波』と
電撃の『属性攻撃』で周りからの攻撃を迎撃してデトロイトの街中を駆け抜ける。
ティーさんからも『情報収集』して『範囲攻撃』し、
とにかく都市の外周を埋めるように聖句を唱えながら電撃を撒き散らしていくよ。
一周近く回れば仕込みも十分だろ。

ああ、アタシがやろうとしてるのは久々の大技。
「デトロイト全体を目標に」【黄泉送る檻】を練り上げる!




「おいおい……マジかよ、このグリモア猟兵」 
 いまや<増殖無限戦闘機械都市>と化した旧デトロイト市街。
 かつて存在した巨大な幹線道路はすでになく、その複雑さから人間の臓器すら連想させるほど複雑に絡まりあった機械の群れが支配する戦闘機械都市の只中を、相棒の宇宙カブと共に駆ける一人の猟兵の姿があった。
 その猟兵の名は、数宮・多喜。彼女は上空で爆炎と共に舞う奉仕人形の姿を半ば呆れながら見やりつつも、鋼鉄に支配された大地をただひたすらに駆け巡っていた。
 ある時は他の猟兵に攻撃を加えるべく起動したミサイル発射装置を電撃を付与した念導波によって吹き飛ばし、その残骸を足場として。またある時は、自らに迫りくる戦闘機械獣の真正面から電撃を撃ち放ち、動きが鈍った機械獣をジャンプ台替わりとして。
 聖句を口ずさみながら巧みに宇宙カブを操り、ただひたすらに戦闘機械都市の外周部を埋めるように駆け抜ける多喜は、要所要所で敵の迎撃を迎え撃つと同時に電撃をまき散らしていく。
 一見するとただの遊撃にしか見えない彼女の行為は、とある大技を実行する上での布石でもあった。
「数宮様、一〇〇メートル前方、砲台の陰で機械獣の待ち伏せがあります。ご注意くださいませ」
「あいよッ!」
 索敵も兼ねたカーナビ役を務めるのは、相変わらず上空で楽しく戦闘と破壊を行っている奉仕人形である。
 多喜は待ち伏せ地点直前に存在する機械獣生成施設の上部に連続して雷撃を放ち、その一部を崩落させる。地面に落ちた残骸を足場に宇宙カブを跳躍させると、機械獣の直上から頭部に向けて再び雷撃を放ち、一撃をもってその機能を停止させる。
「アタシの記憶が正しければ、これでこの辺一帯の区画は囲ったハズだ。どうだい?」
「はい、こちらでも確認いたしました。斥候妖精の視界情報を共有いたしますので、ご活用くださいませ」
 周辺区画の外周を一周する形で回り終えた多喜の視界の一部に、あたり一帯を見渡せる高所に遷移させたらしい斥候妖精の視界情報が投影させる。これだけの視界があれば、彼女の目的は十分に果たせるはずであった。
「さぁて、アタシもやる事やりますかねっと!」
 多喜は手近な退避場所に身を潜めると、精神を集中し、今まで巡ってきた順路を逆巻きに辿る。
 各所に放射した電撃と聖句とが複数の線となって周辺区画全体を覆い、<黄泉送る檻>を形成する陣となっていく。
「ashes to ashes,dust to dust,past to past...収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
 複数の線が交錯し、陣が完成すると同時に多喜が唱える聖句もまた完結する。
 複数の仕込みが有機的に結合することによって完成した<黄泉送る檻>は、斥候妖精の視界を通じて彼女が把握できる範囲全体に強力なサイキックブラストの檻を形成し、その内部に存在する機械獣の群れを、その基盤となる都市ごと破壊し尽くすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミスト・ペルメオス
・WIZ

――やるぞ、ブラックバード。
標的確認。排除開始……!

愛機たる人型機動兵器を駆って参戦。
装備を介して念動力を活用、機体をフルコントロール。
スラスター全力稼働。重力を振り切り大気を切り裂いて飛翔する。

敵は、いわば戦場そのもの。ならば……少しばかり、単機では手が足りない。
【サモン・シュラウドレイダー】。
召喚するは異次元の亡霊宇宙戦艦、および異形の全領域戦闘機群。彼らと共に戦域を駆け抜ける。
亡霊宇宙戦艦が全方位を薙ぎ払い、異形の戦闘機群が戦線を喰い破る。
自身は時に迎撃してくる兵器群にエネルギー散弾の雨を、時には地上の施設群に大威力の砲撃を叩きつける。
止められるものか。全てを焼き尽くすまで……!




 眼下に広がる地表は、一つの意思のもとに武装し、増殖する機械によって占拠されていた。
「――やるぞ、ブラックバード」
 グリモアを持つ奉仕人形ごと猟兵達を圧殺せんと拍動する<増殖無限戦闘機械都市>の上空。曇天に覆われ、全周すべてを灰色が支配する狭い空を、漆黒の人形機動兵器<ブラックバード>を操るミスト・ペルメオスは駆ける。
 いまや、戦闘機械都市は誘い込んだはずの猟兵達による反撃によって、その少なくない面積が灰燼へと帰している。しかし、マザー・コンピューターの能力によって自己増殖を繰り返す戦闘機械たちを殲滅するためには未だ足りない。
 ミストは正面にそびえる巨大なプラント群と、それを護るかのように配置された大小の機械獣、そして無数の砲門へと相対する形で<ブラックバード>を機動させる。
 マザー・コンピューターの体内とすら言える戦闘機械都市の只中において、猟兵達の存在はほぼ瞬間的に探知され、周囲に存在する防衛機構による迎撃に晒されることとなる。
 接敵から迎撃開始までのタイムラグがほぼ皆無であることをブリーフィング内容から察していたミストは、攻撃対象の機械都市を補足すると同時に機体各部に搭載されていたブースターとスラスターを全力稼働させ、不規則的な機動を開始した。
「標的確認。排除開始……!」
 彼の読み通り、補足されると同時に<ブラックバード>に向けて迎撃を開始した大小の機械獣や無数火砲から放たれた砲弾が、数秒前まで<ブラックバード>が存在した位置に向けて殺到する。
 自らが操る機体に向かって執拗に伸びる火線を機体推力とスラスター制御によって回避しながら、ミストは周辺の敵情を分析していく。
 無数に存在する火点を<ブラックバード>がいくら射抜いたところで、濁流の中に小石を投げ込むようなものだ。
 敵が戦場そのものであるのならば、いくら猟兵が操る機体とはいえ単騎の機動兵器では手が足りない。
 ならば、と、彼は自らの能力を発現させる。
 ミストがこの世界とは異なる次元に存在する異世界、"シュラウド"への接続を確立すると同時に出現するは、戦闘機械都市の空を裂くように次元の裂け目である。
 徐々に大きさを増していく裂け目を通して、一隻の宇宙戦艦と通常の感性を持つ人間が見れば異形としか言いようのない形状を持つ無数の戦闘機群がアポカリプスヘルの空へと侵入する。
 その正体は、実体を持たず異次元領域を流離う精神生命体の戦士たちであった。ミストの能力によってアポカリプスヘルの大地に侵入を果たした彼らは、自らが擁する戦艦の大火力と戦闘機群の物量をいかんなく発揮し、眼前に立ちふさがる機械都市との殴り合いを開始するのだった。
 思わぬ増援にもひるまず、刻一刻とその勢いを増していく戦闘機械都市からの迎撃を、戦艦から放たれる大口径のビーム砲と戦闘機群による波状攻撃によって制圧していく亡霊の軍勢。
 召喚者であるミストは、異形達に勝るとも劣らぬほど禍々しい外観を持つ<ブラックバード>を駆り、異次元からの援軍の先頭に立って道を切り拓いていく。
「止められるものか。 全てを焼き尽くすまで……!」
 目の前に広がる戦闘機械都市を、エネルギー散弾の雨と大口径砲の砲撃によって耕しながら、ミストはただひたすらに前へ、前へと進出を続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
わぁお、また随分と楽しそーに…
ま、周りも後の事も一切考えなくていいってのは確かに楽だけどねぇ。

そーいう事なら、あたしもたまには思いっきりブチまけましょうか。
まずはソーン(阻害)とエオロー(結界)で○オーラ防御の傾斜装甲を展開、狙撃なんかの意識外からの攻撃に備えて、と。
取り出しますはいろんな世界で集めた兵器。SSWの対艦砲にA&Wの魔晶石、キャバリアの広域兵器ブルアカの天使核兵器エトセトラエトセトラ。
あたし大規模破壊は別に得意なワケじゃないもの、「こんなこともあろうかと」準備はしてたのよねぇ。誰に迷惑かかるでもなし、集めに集めたバ火力兵器のお披露目といきましょうか。
――さあ、●虐殺のお時間よぉ?




 猟兵達が駆り出される類の戦場であっても、周囲の状況を一切気にせずに戦闘可能な状況というのはそう多くない。
 オブリビオンの撃破が文明生残の手段である以上、こと惑星表面において環境に深刻な汚染を生じさせる兵器や能力を用いる愚かさは自明であろう。周辺に知的生命の生活圏があればなおさらである。
 そのような意味において、ティオレンシア・シーディアが降り立った<増殖無限戦闘機械都市>は数少ない例外であると言えた。
 マザー・コンピューターの能力によって生成され、今なお増殖を続ける戦闘機械都市。その一片でも残せば、正常な世界への浸食は止まらない。一切の躊躇なく、あらゆる手段を持って旧デトロイト市をこの地上から消し去る事こそが、猟兵達の目的を遂げる上での最善の手段であった。
「わぁお、また随分と楽しそーに……」
 灰色に支配された機械都市の上空は、今や転移した猟兵達が投射した圧倒的なまでの火力によって赤黒く染まっている。
 至る所にガラス化した土と融解した金属の混合物が散らばる黙示録の戦場。しかし、響き渡る声はそのような光景におおよそ不似合いな程甘い。
 転移が完了し、空を見上げながら呟くティオレンシア・シーディアの視界には、暴力という色彩がぶちまけられたキャンバス上を楽し気に舞う人形の姿があった。
「ま、周りも後の事も一切考えなくていいってのは確かに楽だけどねぇ」
 深い夜空を思わせる様な美しい髪を熱風で揺らしながら、ティオレンシアがまず手を付けたのは自身の安全確保であった。敵も味方も際限なく破壊を振りまくこの灼熱の戦場にあって、防御をおろそかにするような習慣を彼女は持たない。
 そして、その行動は全く正しいものでもあった。阻害と守護のルーンを使用し、傾斜装甲の要領で結界を構築した次の瞬間、彼女の存在を探知したらしい機械都市からの砲撃が殺到する。
 水平方向から飛来する大小の砲弾と、上空で炸裂した榴弾の弾殻が雨のように結界を叩き、甲高い音と燐光をあとに残しながらティオレンシアの周囲に存在する地面を耕していく。
「人間相手にも容赦ないのねぇ。 そーいう事なら、あたしもたまには思いっきりブチまけましょうか」
 なにより、このように炎にまみれた戦場は、ティオレンシアの好みではない。どうせ不快な戦場であれば、常ならば避ける様な大規模破壊によって消し去るのも吝かではなかった。
 彼女は大型の戦艦や機動兵器を操る類の猟兵ではない。しかし、ただ自らの身体のみで戦場に立つティオレンシアが指向した戦術もまた、この場に転移した大多数の猟兵達と変わらないものであった。それは、撃退でも、撃破でもない、ただただ純粋な撃滅である。
「さて、こんなこともあろうかと……ってね」
 彼女が取り出したるは、ありとあらゆる既知世界に存在する兵器の数々。ブルーアルカディアは天使核を使用した要塞攻略用の兵器から、アックス&ウィザーズで産出される高価な魔晶石に始まり、ダークセイヴァーの産と思われるおどろおどろしい魔剣やキャバリア搭載用の大出力砲、あげくの果てにはスペースシップワールドの技術が用いられた対艦砲まで。おおよそ大規模な破壊を発生させ得る物騒な品々が所狭しと展開されていく。
 如何に多くの世界を渡る猟兵と言えど、これほど多種多様な兵器を揃えるには相応の困難が存在することは論ずるまでもない。
 多額の金品が必要であることは勿論、各世界に然るべき伝手を持ち、なおかつ信頼を得ていなければ、よそ者が大火力兵器を揃えることはできない。そして、この場に現出した光景は、ティオレンシアがその全てを獲得していることを示す何よりの証左であった。
「――さぁ、"虐殺"のお時間よぉ?」
 猟兵としての実力と、物事を動かすフィクサーとしての実力。ティオレンシアがこれまで築き上げてきた重厚なキャリアは、<増殖無限戦闘機械都市>に向けて放たれる多種多様な兵器による飽和攻撃という形となって結実する。
 後に残る光景は、彼女の激情に触れた物が辿る運命を表すかのように、無残極まりないものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
相手は『街』だし、こっちも【ネルトリンゲン】でいかせてもらおう。
空母は『テスカトリポカの鏡』って言われるからこれで互角だよね。

できればアラベリアさんをこちらに収容したいけど、
無理そうならアラベリアさんの上空に位置取りをして盾になるね。

『希』ちゃん、全方位索敵。
【ジャミング】かけてEMPで相手の回路を乱したら【M.P.M.S】と【D.U.S.S】で弾幕、任せるね。
『希』ちゃんのCIWSと衝撃波の対空防壁は、そう簡単には破られないよ!

さて、防御は任せて、わたしは【テスカトリポカの鏡】を使うよ。
制御はわたしが直接するね。
全デバイスオーバークロックして、エネルギー制御と命中補正をめいっぱいしたら、マザーに向けて照射。

一射目は出力60%で照射。マザーへの障害物を排除して、
二射目は120%でマザーに直撃させる感じでいこう。

さぁいくよ、主砲斉射、二連!

アラベリアさんを狙うのは、作戦としてはいいと思うけど、
こっちの士気をめいっぱい上げるってこと、マザーは解ってるかな?

戦闘において、士気は大事なんだよ?




「複数の高速飛翔体、本艦下方より近づく。方位〇-三-〇より十発、方位二-二-五より五発、方位二-四-五より五発。距離、いずれも三〇〇〇〇」
 戦闘開始から数限りなく聞いたレーダー照射警報と共に、菫宮・理緒が操るミネルヴァ級戦闘空母<ネルトリンゲン>の戦闘指揮所に機械というにはあまりにも人間的な抑揚を持った声が響く。
 それは、<ネルトリンゲン>が転移後に制圧した戦域から、亜光速で護衛対象となるグリモア猟兵が戦う戦域へと移動した瞬間であった。数十キロ程度の距離であれば瞬間的な転移と言っても差し支えないほど不意急襲的に出現した<ネルトリンゲン>に対してすら、マザーが作り上げた<増殖無限戦闘機械都市>は即応して見せたのだ。
 飛翔体の正体は十中八九ミサイルだろう。コンソール上を猛進する様を見るに、速度は少なくとも超音速。彼我の距離から考えて、迎撃可能時間は多く見積もっても二五秒程度。
 めまぐるしく回転する思考と状況。彼女らが<増殖無限戦闘機械都市>に降り立つと同時に開始された戦闘は、ピアノ線を渡るような防御と攻撃の連続であった。
「希ちゃん、全方位索敵。――対象は火点と……アラベリアさんは確認できる?」
「了解、全方位に向けて探査波を発振します。グリモア猟兵は本艦直下、高度五〇〇。北東への迎撃コースを取っています」
 <ネルトリンゲン>が人形の姿を捕捉すると同時に、ブリーフィングで聞きなれたソプラノが理緒の脳内に響く。
「ごきげんよう、菫宮様。早速ですが、南西のミサイルはお任せしても?」
「了解、じゃあ北東はお任せするね」
 できれば収容してしまいたかったが、まずはこのミサイル攻撃を退けられなければ元も子もない。ほぼ瞬間的にそう決断すると、理緒はコンソールを操りながら<ネルトリンゲン>へと命じる。
「<D.U.S.S>即時待機。同時に探知方位に向けて指向性ジャミング開始。希ちゃん、火点の特定はできた?」
「射撃管制レーダーの照射点を特定しました。火器管制システムに目標座標入力済みです」
「オーケー、希ちゃん。<M.P.M.S>発射管解放。指示があり次第、火点周辺に向けて対地ミサイル発射。発射弾数は周囲を更地にできる数だけ」
 常人であれば精神が摩耗しきる程の戦闘を続けているにもかかわらず、艦長としての理緒の指示に淀みはない。コンソール上に表示される各種センサー情報を確認し、現在は<ネルトリンゲン>のメインシステムに常駐しているサポートAI<希>からの補助を受けながら、今この時必要な決断を下していく。
 彼女が矢継ぎ早に指示を飛ばす数秒の間にも、状況は急速に推移していた。<ネルトリンゲン>を護る第一の障壁、強力な指向性ジャミング波が彼女に向けて飛翔するミサイルを捉える。
 ジャミングによって<ネルトリンゲン>の姿を見失った数発のアクティブホーミング式ミサイルは、内部の推進剤を使い果たすまで意味のない蛇行を続けるだろう。
 しかし、ジャミング後に開始されたEMP攻撃を受ける間際にレーダーの周波数を変更する事に成功していたミサイルが、猶も<ネルトリンゲン>へと迫る。
「敵ミサイル四発迷走。残数六発、急速に近づく。着弾まで十秒。――対地ミサイル、発射管解放します」
「希ちゃんのCIWSと衝撃波の対空防壁は、そう簡単には破られないよ! <D.U.S.S>、最大出力で放射開始。爾後速やかに対地ミサイル発射!」
 指向性を持った強力な超音波を衝撃波として発振する<D.U.S.S>が起動し、<ネルトリンゲン>の左側方数キロの地点に音の壁を作り出す。猛烈な速度で<ネルトリンゲン>の装甲を食い破るべく突進していた六発のミサイルは、不可視の壁に衝突すると同時に拉げ、誘爆した炸薬が虚空に火球と鉄片の花を咲かせる。
 爆散した敵ミサイルに紛れる様な形で<M.P.M.S>から発射された無数の対地ミサイルは、事前に希が火器管制システムへと入力していた座標へと殺到する。
 事前の戦闘から割り出していた敵のミサイル対処能力を飽和させる物量で投射されたミサイルの雨は、鋼鉄に支配された大地へと突き刺さり、その運動エネルギーによって鋼を引き裂いた後相次いで爆発。炸薬によって生じる熱と、灼熱の礫と化したミサイルの破片は複合装甲の大地を抉り取る同時に、内部に存在した予備弾薬を次々と誘爆させ、周囲を無意味な鉄片と土の混合物へと変換していく。
「敵ミサイル反応、すべて消滅。――レーダーに再び感あり。方位〇-三-〇より複数の飛翔体、航空機らしい」
「……やっぱり元を絶たないときりがないね。アラベリアさん、これより本艦は都市中枢に向けて主砲を発射するよ。一時的に収容することも可能だけど、どうする?」
「承知いたしました。それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
 北東のミサイル迎撃を終えたティーがカタパルトデッキに降り立ち、艦内に収容されたことを確認した理緒は、対空迎撃指揮を希へと委譲し、自らは艦体外部に取り付けられた大口径砲の発射準備に取り掛かる。
「――<テスカトリポカの鏡>、起動。集光板、展開開始」
 <ネルトリンゲン>の船体外部に取り付けられていた大型砲が展開し、周囲には太陽光を集めるための巨大な集光板が次々と展開されていく。
「なるほど、大型の集光砲でございますね」
 感心したようにその様を眺めていた人形が、それならばと楽し気に呟き、赤い宝玉を先端に戴く杖を天に向けて掲げる。次の瞬間には都市上空を覆っていた分厚い雲の一角に無数の火球が発生し、雲を構成していた水蒸気と塵をまとめて蒸発させる。
 その結果としてぽっかりと開いた雲の合間から、午後の陽光が<ネルトリンゲン>へと降り注いでいった。
「アラベリアさんを狙うのは、作戦としてはいいと思うけど、こっちの士気をめいっぱい上げるってこと、マザーは解ってるかな?」
 主砲の安全装置を解除し照射角を調整しながら、理緒はメインモニターを通して見える都市中枢へと視線を向ける。
 猟兵達が既知世界へ転移するために必要なグリモアを狙うという事は、確かに戦術として理にかなっている。ある意味では猟兵の急所を突いた攻撃と言っても良いだろう。
 しかし、それ故に受けて立つ猟兵の士気を否が応でも引き上げることになる。急所を狙うという事はそういう事なのだ。
「主砲、最終安全装置解除。第一射目標、敵中枢周辺構造物、照射出力六〇%。第二射目標、敵中枢、照射出力一二〇%。――照射角固定」
 集光板によって集められる熱エネルギーを増幅させ、大型の砲門から発射する<テスカトリポカの鏡>。太陽に縁を持つ神の名を冠した巨砲が、マザーが鎮座する<増殖無限戦闘機械都市>の中枢を捉える。
「さぁいくよ、主砲斉射、二連!」
 理緒の号令と共に、<テスカトリポカの鏡>の鏡から破滅的な光が溢れ、あらゆるものを融解させる熱量と共に戦闘機械都市中枢へと照射される。
 射線上に展開していた航空兵器は瞬く間に蒸発し、航空機の数倍の装甲を持つ中枢施設もまた数千度の熱線をまともに浴び融解していく。光で埋め尽くされた空間の中でありとあらゆる可燃物が発火し、熱によって急激に膨張した大気が凶器となって周囲の空間を押しつぶしていく。
 時間にして十秒にも満たない第一照射によって、射線上に存在していた都市中枢防御施設の大半が蒸発するか融解した鉄の塊となり果てた。
「――戦闘において、士気は大事なんだよ?」
 理緒の言葉と共に放たれた第二照射。第一照射の二倍の熱エネルギーを持って放たれた熱線は、緊急的に展開された何重もの防御壁を飴のように融解させながら、都市中枢を再び白く染め上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チトセ・シロガネ
街を破壊なんてやることが派手だネ!

上空から幾条のレーザーの雨が振り、防衛兵器をいくつか破壊。
光の先には一機の青いキャバリアが銃剣を構え佇んでいる。

さぁ、ド派手な街の解体ショーを始めるネ!
街はそれを敵と認識し、一斉に弾幕を放つ、もちろん、何の準備もしていないはずはないッ! 地面をえぐって舞い上がった土煙から青い光が輝けば、
ビル群に偽装した砲塔が!
地面に這いつくばる戦車が!
空に浮かぶドローンが!
一斉に乱れ撃たれたレーザー弾幕の餌食となる。

こんなデカい街を一つ相手にするんだからネ。これくらいはしないと!
彼女はただ敵前に姿を晒したわけではない。
リミッターを解除し、UC【アストラル・ブルー】の対消滅バリア(オーラ防御)で膨大なエネルギーを食らい、その追生成で生まれたエネルギーをレーザーにして解き放ったのだ!

だけど、これだけじゃ済まないヨ。
銃剣をソードモードに変え、エネルギーのすべてを注ぎ、極大なレーザー(斬撃波)を解き放つ、さらに推力移動でそれを振り回し、周囲の兵器を切断していく。




 破壊するか、破壊されるか。<増殖無限戦闘機械都市>における交戦規程は実に単純なものであった。戦域の広さを考えれば、自身以外の動くものはすべて敵であるのだから。
 転移と同時に機体のあらゆる兵装を一斉発射し、眼下に存在するあらゆる構造物に熱と光の豪雨を叩きつけたチトセ・シロガネは、単純であるがゆえに極めて過酷な摂理に支配されたこの戦場に適合した猟兵の一人であった。
 チトセとその愛機である<オービタル・テイルズ>の転移を認識し、迎撃を加えんとしていた数多の兵装複合体。ほぼタイムラグなしに照準を行い、瞬時に彼女を打ち砕く筈であった兵器の群れは、敵味方識別の処理を省略して放たれた幾重もの高出力レーザーの奔流によって穿たれ、次々と爆散していく。
 鈍色のキャンバスを思わせる空を、火災によって生じた赤が染め上げる。連鎖的に生じた爆轟の後に訪れた一瞬の静寂にあって、炎をスポットライト代わりにし、蒼く輝く<オービタル・テイルズ>の機影が都市全体の注目を一身に集めていた。
「街を破壊なんてやることが派手だネ!」
 初撃で周囲を薙ぎ払ったにもかかわらず、機体積載レーダーが新たな光点を捉える。それは、注目が冷徹な殺意に転じ、状況が新たな局面に遷移した証左であった。
 高速飛翔体、<オービタル・テイルズ>の中枢コンピューターは輻射波と速度から対空ミサイルと識別。ほんの一時訪れたコクピット内の静寂がレーダー照射警報によって破られる。
 前方及び後方から高速誘導ミサイル、各五発。さらに軌道上に存在すると思われる兵装プラットフォームから極超音速ミサイルが三発。合計一三発のミサイルからなる包囲網が<オービタル・テイルズ>を圧殺すべく急速に狭まる。現在の飛行方位と速度を維持した場合、前方から迫るミサイルの着弾までおおよそ一〇秒。
「このくらいの歓迎は織り込み済みだヨ!」
 姿勢制御補助システムオフライン、各種ブースターのセーフティ解除、対消滅バリア起動。チトセは搭乗者を破滅的な重力負荷から守るための機構をすべて遮断し、機体駆動制御をマニュアルへ変更、躊躇なくスロットルを限界まで押し込む。
 メインブースター内に大量の燃焼剤が投入され、大気燃焼によって生じる推力を最大化すべくブースターノズルが縮小。正面から接近するミサイルに向けて<オービタル・テイルズ>は急加速し、ほぼ瞬間的に音速を突破。チトセの鋭角的な肢体がシートにめり込むように押し付けられる。着弾まで六秒。
 後方及び天頂方向のミサイルとの距離を稼いだチトセは、加速する<オービタル・テイルズ>のメインブースターノズルを下方に偏向させ、機体正面に向けていた運動ベクトルを上方に修正。一瞬の推力偏向の後、メインブースター出力をアイドル状態までカット。脚部補助ブースター最大出力、前肩部スラスター噴射。着弾まで三秒。
 上方に修正された運動ベクトルに加え、機体の中心より下に位置する脚部補助ブースターの推力によって、<オービタル・テイルズ>の脚部が急激に跳ね上がる。超音速機動下でのサマーソルト。脚部フォトンブレード発振開始。
 前方からの重力負荷が頂点に達し、次の瞬間には身体全体を上から押しつぶすような衝撃。生身の人間であれば頸椎が砕け、すべての内臓が破裂するような負荷をものともせず、チトセは第二の身体を躍らせる。着弾まで一秒。
 前方から迫っていたミサイル群は、<オービタル・テイルズ>の急激な加速と姿勢変更によって命中直前に目標を見失う。それと同時に、脚部フォトンブレードが先頭を進むミサイル弾頭部に直撃。先端からブースター部にかけて一直線に両断されたミサイルは、近接信管を作動させる直前に爆散。弾殻まじりの爆轟は続く四発のミサイルを誘爆させると同時に、その衝撃波群は<オービタル・テイルズ>を覆う対消滅バリアによって吸収される。
 炸薬の華を咲かせると共に、垂直方向に半円を描くような形で機動する<オービタル・テイルズ>。上下さかさまとなった正面には、後方から迫っていたミサイルが五発、同様に天頂方向からは――すなわち、いまや<オービタル・テイルズ>の脚部目掛けて――三発のミサイルが迫る。
 チトセの光子頭脳と直結した機体の火器管制システムが瞬間的に火器管制用レーダーを前方へと照射。正面から迫りくる五発のミサイルを捉え、火器を命中させるために必要なあらゆる情報を収集し、光子頭脳内の中枢領域へと送り込む。
 RDY BXS。即座に実行命令。物理的なインターフェースを介さずに機体へと送られた発射命令はタイムロスなしで実行され、万華鏡の名を冠する複合兵装から五本の高出力レーザーがミサイルに向けて照射される。弾頭部に数千度の熱線を照射されたミサイル群は、一瞬の間をおいて爆発。虚空に熱と衝撃波の形でまき散らされたエネルギーが、再び対消滅バリアによって捕食される。
 脚部補助ブースター及び前肩部スラスター停止。メインブースター、アイドルから出力最大へ。前後から飛来していた高速ミサイルを片付けたチトセは、機体が天頂方向に向けて垂直になると同時に、<オービタル・テイルズ>を地表に向けて突進させる。
 位置エネルギーを急速に運動エネルギーへと変換し、猛然と地上へと降下していく<オービタル・テイルズ>を、軌道上から投射された極超音速ミサイルが追う。チトセは再度火器管制レーダーを機体下部方向に照射するが、乱数機動を交えた極超音速ミサイルの位置を完全に捕捉するには至らない。
「だったら、薙ぎ払うッ!」
 チトセはテイルユニットのレーザー照射モードを収束射から掃射へと変更。対消滅バリアによって吸収したエネルギーを一部転用し、目標の概略位置が存在する三次元空間全体を制圧するような形で熱線が照射される。
 一斉照射された幾重もの光芒が炎と灰燼に塗れた大気を引き裂く。その美しさと同等の破壊力を持った熱線が、至近へと迫っていたミサイルへと命中。ひときわ大きな衝撃波が対消滅バリアへと取り込まれ、<オービタル・テイルズ>の新たな動力源となった。
 目まぐるしく繰り広げられた速度と機動、そして火力の乱舞。必殺の意志を込めて放たれたミサイルをすべて迎撃されたとしても、一度開かれた戦闘機械都市の顎が閉じる事はない。高高度から地表付近まで降り立った<オービタル・テイルズ>向けて、実体弾を放つ無数の砲門がその鎌首を向ける。
 転移時の意趣返しとばかりに、地表から<オービタル・テイルズ>に迫る大口径実体弾の豪雨。受けて立つチトセと<オービタル・テイルズ>は対消滅バリアを反転。今まで吸収してきたすべてのエネルギーを、銃剣状に形成したエネルギーの刃へと収束させていく。
 光刃一閃。銃剣から解き放たれたエネルギー流は、音速を超えて迫る実体弾の群れを瞬時に蒸発させるだけに留まらず、その進路上に存在するありとあらゆる構造物を熱と光によって分解する。
「前座はここまで。 さぁ、ド派手な街の解体ショーを始めるネ!」
 相手は巨大な都市そのもの。切り裂き、破壊すべき対象は、未だ数多く残っているのだ。チトセは再度光刃を閃かせ、未だ冷たい殺意を抱き続ける兵器の群れに躍りかかる。
 狐面の侍による熱と光の舞踏は、戦闘機械都市が消滅するその時まで、一切の淀みなく続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
機神搭乗
「ご主人サマ!周辺全てが敵だよ!こんな恐ろしい物量…あれの出番だね!」
お前っ…!またあれをやるのか!?くそっ!なんでティーまでやる気マックスなんだ!
【情報収集・視力・戦闘知識】
まず周囲の此方を狙う武装を把握
回避ルートと共に効率的に破壊し広い空間を確保するための立ち位置
更にティーを護衛するのに効率的な立ち位置を把握
【属性攻撃・念動力・弾幕】
砲撃兵装より火炎弾を乱射
迎撃と破壊を兼ねつつ念動障壁展開し防衛

広い空間を確保すれば

UC発動
地獄の幼女戦場が発生する…!
「「ヒャッハー☆」」
20師団
主とティーの護衛
【集団戦術・砲撃】
「竜眼号かもん☆」
戦艦招来
幼女軍と共に砲撃援護と主達の護衛

絶対に傷つけさせない

残り全軍
【空中戦・二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
一部は空を飛び回り念動光弾の乱射
鎌剣持った幼女達が兵器に襲い掛かり破壊切断
使えそうな兵器は強奪し乗っ取りマザー周囲を破壊
「「お宝だー☆」」
物量と火力に対して正面から物量と火力で襲い掛かる幼女軍団という地獄が発生…!

だからやりたくなかったんです…




 <増殖無限戦闘機械都市>に降り立ったカシム・ディーンと<界導神機『メルクリウス』>。
 全方位からの有形無形の圧力を洗礼として浴びながらも、そこは熟練の猟兵とその相棒。素早く攻撃の射点を把握したカシムは神機を縦横に機動させ、あいさつ代わりとしては相当に剣呑な戦闘機械都市からの攻撃をやり過ごし、護衛対象のグリモア猟兵と合流する事に成功する。
 都市そのもの相手に点を叩いても意味はない。早々にそれを悟ったカシムは兵装を砲撃型に切り替え、火炎弾をもって地上に存在する兵装複合体を区間単位で融解させていく。
 周囲の火器や機怪獣を無力化する事に成功し、一時的に戦闘機械都市からの攻撃を和らげることに成功したカシムと神機ではあるが、敵の増援もまた雲霞の如く湧いてくる。
「ご主人サマ! 周辺全てが敵だよ! こんな恐ろしい物量……あれの出番だね!」
「お前っ……! またあれをやるつもりなのか!?」
 ひたすらに敵の攻撃をいなすだけでは手詰まりとなる。その前提を理解しつつも、神機の化身にして自身の相棒でもあるメルシーの提案に、カシムは頬を引きつらせる。
 全周を敵に囲まれている状況での最適解は、確かにカシムと<メルクリウス>の手中にある。しかし、まかり間違っても実行したいとは思えない。メルシーが提案してきた"あれ"とは、そういう類の代物であった。
「いいですね! ボクも一度生で見てみたかったんです☆ やっちゃいましょう、やっちゃいましょう」
「くそっ! なんでティーまでやる気マックスなんだ!」
 流石に止めてくれるだろうと神機の傍らで飛翔する人形に目を向ければ、上機嫌にメルシーを囃し立てる始末である。
 日頃のブリーフィングで見せる無機的な雰囲気はどこへやら。いや、今回妙に上機嫌だった時点で察するべきだったのだ。
 誰か、誰か自分以外のストッパーはいないのか。必死にあたりを見回せど、目に入るのはやる気満々の相棒と、上機嫌に破壊を振りまく人形の姿のみ。
 ――現実は無情であった。
「さぁ、いっくよー! ヒャッハー☆」
「ヒャッハー☆」
 底抜けに明るいメルシーとティーの無駄に澄んだソプラノと共に、炎と鋼鉄の地獄であった<増殖無限戦闘機械都市>が、別ベクトルの――主にカシムの正気を蝕む――地獄へと変貌する。
「――始まった。始まって、しまった……」
 カシムが絶望と共に天を見遣れば、そこには幼女があった。
 カシムが諦念と共に地を見遣れば、そこにも幼女があった。
 整然と編隊を組んだ近接航空支援幼女が地上の兵装複合体に対して念導光弾による爆撃を敢行し、戦闘機械都市が誇る数多の兵装複合体を制圧。
 上空援護を受けた幼女第一梯団が戦闘機怪獣が守る前線の脆弱部を突破し、続く幼女第二梯団が突破口を補強しつつ更に都市深部へと突入していく。
 突破された前線の穴を埋めるべく、自動的に投入されるはずであった予備機怪獣達は、損害を顧みず後方に進出した戦術爆撃幼女よる絨毯爆撃によって足止めされ、前線に到達する前に大損害を受ける始末である。
「これで終わりじゃないよ! 竜眼号かもん☆」
 爆撃を潜り抜けて前線に到達した機怪獣達に立ちはだかるは、ダメ押しとばかりに召喚された航空戦艦。如何に鋼鉄の獣と言えど、戦艦の正面火力に晒されてはひとたまりもない。
 前線各所を突破され、分断された哀れな機械獣は、さらに後方から躍進する――と、いうより、召喚スペースの都合で後から戦場に召喚された――鎌剣背負った幼女第三梯団によって包囲殲滅されていく運命にあった。
「あ、この多連装ランチャーまだ使えそうだね! もらっちゃお☆」
「弾薬庫みーつけた! ありったけ前に送っちゃうね☆」
「「お宝は根こそぎだー☆」」
 幼女が暴虐の限りを尽くし蹂躙した地域に群がり、機械獣や兵装複合体の残骸から再利用可能な火器を片っ端から引きはがす輜重幼女達。彼女らによって強奪されたあらゆる火器は前線へと運ばれ、幼女たちの無停止進撃を実現させる糧となるのだ。
 これこそが、界導神機が誇る権能の一つ、<対軍撃滅機構『戦争と死の神』>。またの名を、<メルシー春の幼女祭り>。
 主にカシムと、その場に居合わせる良識あるヒトの正気が犠牲になる事に目を瞑れば、万軍を撃滅せしむる強力無比な権能である。強力無比なのであるが、もうちょっとこう、ビジュアルはどうにかならんかったのか。
 あらゆる意味で狂った事態に気が付いたマザーが増援の戦闘機怪獣を派遣した時にはすべてが手遅れであった。
 まさに質と物量の暴力。時間と破壊が進むにつれて、幼女軍集団の戦闘力は加速度的に向上していく。
 鉄壁の守りと、絶大な火力。グリモア猟兵を守りながら、都市そのものを破壊するなどという無理難題を解決するためには、これ以上ないほどに適切な手段だろう。カシム自身もそれは認める。遺憾ながらも認めざるを得ない。
 しかし、しかしである。無数の兵器に群がり、砕き、砕かれ、薙ぎ払っていく幼女の軍団という地獄の様な光景を目の当たりにするカシムの正気は、いったい誰が守ってくれるというのか。
 相棒であるメルシーか? もちろん否である。嬉々としてこの地獄を作り上げている幼女軍団の首魁に何を求めるというのか。
 護衛対象であるグリモア猟兵か? それも否である。竜眼号とその直掩の幼女軍団と共に、嬌声を上げながら都市を吹き飛ばし続けている様は、この地獄に拍車をかけている。
 では、この戦場で戦う他の猟兵か? 残念ながらそれも否である。他の猟兵達が担当する戦域とは距離が離れすぎている上に、この性質の依頼に喜んで参戦する猟兵もいたと聞く。
 カシムは諦念と共に天を仰ぐ。無論、青い空などありはしない。視界いっぱいに広がるのは、硝煙と炎によって焦がされた、見渡す限りの曇天である。
 この狂気に身を任せてしまうのは容易い。しかし、身を任せた結果自分は何を失うのか。想像するだに恐ろしい。
 つまるところ、自分は耐え忍ぶしかないのだ。幼女と戦艦と人形という、迂闊に口にすれば正気を疑われかねない諸兵科連合が都市を焼き払うのが先か、自らの正気が焼き切れるのが先か。
「嗚呼、だからやりたくなかったんです……」
 カシムの心と腹の底から出た呟きが、爆轟と嬌声が支配する戦闘機械都市の虚空に弱々しく響く。
 彼の正気と自制心は、真に称えられるべきものだろう。彼の心がこの試練を乗り越えた暁には、さらなる強靭さを得ることは疑うべくもない。主に狂気耐性的な意味で。
 悲しいかな、カシムにこのような艱難辛苦を与えているのは<増殖無限戦闘機械都市>の主たるマザーではなく、相棒のメルシーと護衛対象であるグリモア猟兵なのだが、彼はそれについて深く考える事を放棄していた。
 思考停止はたいていの場合破滅を招くが、世の中には考えを巡らせるべきではない事柄もあるのだと、賢明なるカシム・ディーンは理解していたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

やぁ、はじめましてティーさん。合体しよ?これから放つ大技に巻き込まない為には化術肉体改造で融合して実質1人になるのが楽なのよねぇ。ああ、ちゃんと分離できるから安心して?私の結界術なら量子的な可能性から合体したまま別行動とかもできるから平気平気。
男の娘と合体できても拒否されても妄想パワーで限界突破リミッター解除オーバロード、真の姿『夜』となり戦場全体つまり増殖無限戦闘機械都市全域を覆うわ。『夜』が“定義”した“理”の支配する領域で出来た迷路、真なる『夜』の不可思議迷宮。でもこれは前提、不可思議なる真なる『夜』の領域へと至り増殖無限戦闘機械都市を侵食していく。
わははは、寄生種たる私を体内に入れるなんて内側から食尽くしてくれと言ってるようなものよねぇ♪あ、ティーさんにトラップの希望ある?核爆とかそういう方向でのエゲツない罠も生成できるわよ☆
全方位から攻撃が来るならこっちも全方位を覆えばいいのよ♡
おっとマザーの生体コアを捕食する様子は倫理結界術で隠しとこ




 猟兵との死闘の舞台と化したマザーコンピーターの胎内、<増殖無限戦闘機械都市>。グリモア猟兵諸共に、猟兵達を自らの世界に取り込むことによって撃滅せんとする確殺圏。
 雲霞の如く湧き出る火力は侵入した猟兵を包み込み、いつ終わることも無く続く戦いの舞台となる。そのはずであった。
 しかし、都市の主たるマザーにすら気付かれることなく、じわり、じわりと闇が浸食していく。
 はじめは人間大の面積しか持たなかった闇は、マザーと猟兵達との戦いに紛れて浸食範囲を広げ、今や一つの区画を完全に包み込むに至るまで拡大していた。
「でも残念でした。 よりにもよって、寄生種たる私を体内に入れるなんて、ねぇ」
 闇に沈んだ区画に、本来であれば都市を支配する爆轟によって搔き消されるであろう鈴声が響く。声の主は、アリス・セカンドカラー。己が支配する領域の理を捻じ曲げ、意のままに操る異能を持つ猟兵であった。
 身も蓋もない評価を下してしまえば、自身の世界を猟兵に押し付ける存在であるマザーにとって、彼女は天敵に類する存在である。それ故に、アリスは機が熟すまで潜伏し、自らの領域を着実に広げていたのであった。
 自身の領域に取り込んだレーダーや火器照準用レーザーを用いて密かに護衛対象であるグリモア猟兵を誘導していたのも、その下準備の一環である。自らの結界で<増殖無限戦闘機械都市>を覆うのならば、異物はできるだけ少ないに越したことはない。それが護衛対象であるならばなおさらである。
 もっとも、"澄まし顔でブリーフィングを行っていた男の娘人形と合体できれば魔力もやる気も欲求も満たせるじゃない"という極めて素直な欲求もあるが、それはそれ。大義名分は大切である。アリスがそんなものを気にするかはまた別の問題であるけれども。
 その様な経緯で誘導され、浸透させていた『夜』の領域に踏み込んだティーの視界が、一瞬にして闇に染まる。それは、アリスが外界からの干渉を一切排除した空間にティーを捕獲……もとい保護する事に成功した証左であった。
「やぁ、はじめましてティーさん。早速だけど合体しよ?」
 空間内の事象を改変し、アリスは初めからその場に立っていた風体で、人形の前に姿を現す。
「ごきげんよう、アリス様。――合体、でございますか?」
「そう、合体。言葉の通りね」
 合体という突飛な単語に小首をかしげるティー。その様に微笑みを浮かべたアリスの姿が闇に溶けたかと思えば、次の瞬間にはティーの後ろへと出現する。
 アリスはされるがままとなっているティーの手を取り、指を絡ませる。球体関節の無機的な外見に反して柔らかい感触を楽しんだのち、自らの肉体と人形の躯体の量子論的境界を崩し、指と指、手のひらと手のひらを融合させる。
 自分とは異なる存在と名実ともに一体化する経験を持つ猟兵など、滅多にいるものではない。確立した自我を持つ存在であれば、根源的な嫌悪感すら惹起する感覚であろう。
 しかし、それが疑似的な自我しか持たない人形であれば話が違う。状況に最適化する形で疑似人格を調整したティーは、初めて経験する融合の感触を、微かに睫毛を震わせながら楽しむ。
「……随分と官能的な魔術ですね。名状し難いとも評せますが」
「お気に召した? ああ、ちゃんと分離できるから安心して? 『夜』の中なら、一体化したまま別行動だって出来るわ」
「ええ、とっても。……でもいけませんね、あまり長く一体化していると癖になってしまいそうです」
 人形の返答に、アリスの相貌に浮かんだ蠱惑的な笑みが深まる。
「そう言うあざとい誘い文句、嫌いじゃないわ。 じゃあ、遠慮なく♪」
 半ば融合していた指と指から始まり、人形と少女の肢体が比喩ではなく物理的な意味で重なり合う。
 互いの白い肌、銀と金の髪、赤と蒼の瞳、男性性と女性性、同一要素も相反要素も一切の別なく溶け合い、混ざり合い、最終的にアリス・セカンドカラーであり、ティー・アラベリアでもあるという二つの概念を内包した事象へと結実する。
 美しく艶やかではあるが、常人が見れば正気を失うような光景は過ぎ去り、後にはアリスの姿を取った複合事象が闇の中を揺蕩う。
 それがどのような理由によって生じた物であれ、その身体の奥底からあふれ出す魔力は尋常なものではない。魔術的な不確定事由を取り除いただけでなく、自己の欲求を完璧に満たしたアリスは、一時的に猟兵の限界を超えた存在となり果てた。
 戦闘機械都市に残り、アリスが取り込むべき異物はあと一つ。即ち、都市の主である生体コアそのものである。
「さぁ、その身体の内側から、喰い尽くしてあげる」
 外部からのあらゆる干渉を拒絶していた闇が破裂し、都市そのものを飲み込む濁流となって氾濫する。
 全方位から攻撃が来るというなら、全方位を覆ってしまえばいい。それが如何に常軌を逸した発想であっても、大好物の概念と一体になったアリスの底知れぬ魔力と能力はそれを実現するに足りるものであった。
 異常に気が付いたマザーが対処法を演算しだしたのは、全てが手遅れとなった後であった。『夜』に覆われた天と地を統べる主は、既にアリスに取って代わられている。
「ティーさんにトラップの希望ある? 領域の中ならどんなことでもできるわよ」
「それは素敵ですね♪ ならば、このように」
 濁流を押しとどめようと膨大な火力を投射する戦闘機械都市に向かって、『夜』から沸き出でた無数の人形が杖先を向ける。一斉に放たれた超高密度の魔力は瞬時に照射点周囲にあった物質を気化圧縮させ核融合反応を発せさせる。
 現出する光景は、都市内で同時多発的に発生する大爆発と特徴的なきのこ雲である。『夜』の濁流はその破壊すらも飲み込み、マザーが鎮座する都市中枢へと流れ込んでいく。まさに黙示録的な光景がそこにはあった。
 あらゆる破壊を飲み込み、最終的にアリスの領域は都市そのものを包み込む。戦闘機械都市の空を覆っていた分厚い雲もまた『夜』の一部と化し、この空間における"アリスではない存在"は、真にマザーを残すのみとなった。
「……おっと、ここから先の光景は倫理結界を破れるお友達限定ね」
 ――かくして、そのようになった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月17日


挿絵イラスト