銀河帝国攻略戦⑬~悪夢の中で掴む物
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帝国軍と解放軍の戦いは、解放軍が優勢に進められていた。
エンペラーズマインドの前面に展開された防衛線をも突破し、戦域は要塞内部にも及んでいる。
帝国軍相手に戦えている、その事実に解放軍の士気は高まっているが、猟兵達は纏わりつくような嫌な予感を拭い切れずにいた。
その気配の原因は、グリモア猟兵でも居場所を掴むことのできていない、ある一人のオブリビオン。
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「ドクター・オロチ、その姿を予兆として見た人もいると思う」
エスペラ・アルベール(元気爆発笑顔の少女・f00095)があげた名前に、何人かの猟兵が反応する。
それはこの銀河帝国攻略戦が始まる直前の事。猟兵達が見た不可思議な二種類の光景。
その片方に、エスペラが告げたオブリビオンは存在していた。
「彼が乗っている『実験戦艦ガルベリオン』は、この戦域のどこかにいるはずなんだけど、強力なジャミングによってその位置を掴めないんだ」
オロチが派遣した艦の残骸から、その『ジャミング装置』が発見されている。
宙域内に多数設置された『ジャミング装置』を破壊する事で、『実験戦艦ガルベリオン』を発見する事が可能となるだろう。
ジャミング装置の防衛機構を突破し、ジャミング装置を破壊することが今回の作戦目的となる。
「防衛装置は『近づいた対象のトラウマとなる事件などを再現し、対象の心を怯ませる』物……その悪夢に怯む程に、ジャミング装置からは遠ざけられてしまう」
この防衛装置そのものを回避する術はない。
つまり、自らのトラウマに打ち勝てなくては、ジャミング装置を破壊する距離には近づけないということだ。
「ドクター・オロチの部隊を放っておけば、きっと解放軍にとって、ううん、この世界にとってよくないことが起こると思う。みんなにとっては、とても辛い作戦になるかもしれない……けれど、頼んだよっ!」
芳乃桜花
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
このシナリオでは、ドクター・オロチの精神攻撃を乗り越えて、ジャミング装置を破壊します。
⑪を制圧する前に、充分な数のジャミング装置を破壊できなかった場合、この戦争で『⑬⑱⑲㉒㉖』を制圧する事が不可能になります。
プレイングでは『克服すべき過去』を説明した上で、それをどのように乗り越えるかを明記してください。
『克服すべき過去』の内容が、ドクター・オロチの精神攻撃に相応しい詳細で悪辣な内容である程、採用されやすくなります。
勿論、乗り越える事が出来なければ失敗判定になるので、バランス良く配分してください。
このシナリオには連携要素は無く、個別のリプレイとして返却されます(1人につき、ジャミング装置を1つ破壊できます)。
『克服すべき過去』が共通する(兄弟姉妹恋人その他)場合に関しては、プレイング次第で、同時解決も可能かもしれません。
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皆さん戦争の雰囲気には慣れてきましたか! 芳乃桜花です!
今回のシナリオはかなり特殊な物になっております、マスコメの説明を十分ご確認の上でご参加下さい。
【克服すべき過去(トラウマの内容)】及び【それをいかにして克服するか】この二つが要です、ジャミング装置への攻撃自体は記載せずとも問題ありません。
それでは、皆様のプレイング、お待ちしております!
第1章 冒険
『ジャミング装置を破壊せよ』
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POW : 強い意志で、精神攻撃に耐えきって、ジャミング装置を破壊する
SPD : 精神攻撃から逃げきって脱出、ジャミング装置を破壊する
WIZ : 精神攻撃に対する解決策を思いつき、ジャミング装置を破壊する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
甲斐・ツカサ
【SPD】
物心つかない程に幼い頃
星も見えない常闇の世界には、血を啜る鬼や異形の神々が棲んでいた
幼さ故に認識出来ていなかった光景や悲鳴、酸鼻を極める臭いすら防衛装置は再現してしまうだろう
でも
右手に触れた冒険記が語る
例え闇が幾ら濃くとも、空には星が瞬いている
その先には多くの世界があり、冒険がある
その冒険記を通して見た"冒険家"の背中を追いかけるように、前へ、前へ、更なる冒険を求めて歩き続ける
そうやって自身が歩んだ冒険の中で、吸血鬼や異端の神々を倒し、夜と闇の世界の人々に僅かなりとも希望を与えた
…そう、かつて恐ろしかったものは、歩み続けた冒険の日々を思い出せば、いつの間にか乗り越えてしまっていたのだ
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(ここは……?)
甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)が目を開く。
眼前に広がるのは、一面の闇。星の煌めきすらも覆い隠す常闇の世界。
「ダークセイヴァー世界か? なんで……」
その疑問は、口にする途中で遠くから聞こえた悲鳴に掻き消された。
見れば、そこには血を糧とする鬼に襲われんとしている女性の姿。考えるより先に、ツカサはそちらへと駆け出そうと足を動かそうとする。
(あ、れ?)
その足が、自らの意思に反して動かないことに気づく、気づいてしまう。
足だけではない、震える手は眼前の女性へ伸ばすこともできず、引きつった喉は鬼を制する声を発せられない。
『幼い彼にとって』目の前の異形は到底敵うことのない、あまりにも強大な闇そのもの。抵抗しようという意思すらも、彼には表すことができなかった。
「あ―――」
ツカサの目の前で、女性の首から鮮血が吹き出した。
崩れ落ちた女性の光を失った瞳が彼を見る。吸血鬼が血の飛沫を浴びながら嘲笑を浮かべる。鼻につく血の臭いが辺り一面に広がり、息がつまる。
「ああ―――」
その光景から逃れるように目を逸らす。
逸らした先にも、また別の悲劇があった。
悲鳴が、嘲笑が、闇の中で幾重にも広がっている。
そのどれもがツカサの目の前で行われ、そのどれもにツカサは手を伸ばすことができなかった。
当時、幼さ故に認識しきれなかったこの光景の意味を、今の彼は余すこと無く理解してしまう。
「うぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
どれだけの時間が経っただろうか。
力を失った瞳で、闇の中を漂っていたツカサの右手が、何かに触れた。
自分の身体すら見ることが適わないその中で、なぜかその一冊の本だけが認識できる。
(……なんだっけ、これ)
とても大事な物だったはず。
崩れかかった心で、辛うじて指が本を開く。
その瞬間。
「―――」
光が、溢れた。
『例え闇が幾ら濃くとも、空には星が瞬いている』
『その先には多くの世界があり、冒険がある』
無限に広がる地下迷宮で、黄金のドラゴンと戦った。
幼馴染と共に宇宙を駆けて、人々を救った。
夜と闇の世界で、吸血鬼を討ち滅ぼした。
「そうだ、オレはもう、乗り越えている」
冒険記を通して見た"冒険家"の背中を追いかけるように。
数多の世界を冒険して来た彼は、かつて恐ろしかったものなど、とうの昔に越えている。
「オレは『冒険家』甲斐・ツカサだ! こんな闇なんて、恐れやしない!」
闇が弾け、光が広がる。
次の瞬間、彼の前に現れたのは、人間の脳に無数のアンテナを刺したかのような、悪趣味な外観の装置。
その装置へと、ツカサは迷うこと無く、蒼い光刃を突き立てた。
大成功
🔵🔵🔵
月凪・ハルマ
悪趣味ここに極まれり、って感じだな
まぁ、俺は昔の記憶が無いんだけど。それでもやっぱり
何か見せられるのかなぁ
◆SPD判定
見せられるものは俺がまだ今の様に自我を持つ前、
ただの武器だった頃の『使い手の死』の記憶
具体的な場所や時間は分からない
ただ、俺は誰かの武器として使われていた事は思い出した
どうやら、俺は宝玉のついた杖だったらしい
そして、俺の持ち主は誰かを守ろうと戦っていて
でも、それが出来なくて
俺も、なにも出来なくて
結局「彼ら」は負けて、そして死んでしまった
思い出した
俺の本体は、その武器に付いていた宝珠
誰かを守ろうとした「彼」と共に戦った物
―—そうだ、守らないと
帝国という不条理から、この世界の人達を
●
(どうなってるんだ、俺)
月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)は過去の記憶を失っている。
そのため、自分が今見ている光景を理解するまでに多少の時間が必要だった。
彼の現在の姿は、一本の杖。
より正確には、杖の先に付けられた宝玉となっている。
(そうか、俺、この人の武器として……)
これは、ヤドリガミとして自我を持つ前の、ただの武器だった頃の記憶。
自らの持ち主の顔を見ようとするが、何故かノイズが奔り、ぼやけてしまう。
それでもその主が、何か強大な敵と戦っていることが理解できた。
(そうだ、この人は、誰かを守るために)
霞がかった記憶から、この後起きる事が理解できてしまった。
主を、そして主が守ろうとしている誰かを助けなくてはいけない。
そんな想いが膨れ上がるが、その身は意に反して動くことはなく。
(なんでだよ、俺は戦える! この人と一緒に!)
心の中で叫ぶ間にも、主は敵の攻撃に傷つき、膝を折る。
ハルマの身を支えにして辛うじて立ち上がるも、放たれた追撃によって、再び地に伏せることとなった。
実力差は明らか、それでも、彼の主はその場から退こうとはしない。
(ダメだ、逃げてくれ。このままじゃ、みんな)
三度、その身体が跳ね飛ばされる。主の手から杖がこぼれ落ち、ハルマは地面へと転がってしまう。
背後にいた人物が敵に掴まれた、主が叫ぶ。既に満身創痍なその身を震わせ、立ち上がる。
敵が、目障りそうに主を見た。
(やめろ、やめてくれ)
願いも虚しく、目の前で蹂躙が行われる。
その光景から目を逸らすことさえできず、ハルマは無念の想いをただ叫ぶ。
(やめろぉぉぉぉぉ!!!)
「―――ああ、思い出した」
自分が何者だったのか、どのような人物に使われていたか。
『彼』は最後まで戦っていた、誰かを守るために、その命が尽きるまで。
ならば自分はどうする、『彼』と共に戦ってきたモノとして、何をする。
その答えは、とうに得ていた。
「そうだ、守らないと」
帝国という不条理から、この世界の人達を。
ハルマの振るったガジェットが、ジャミング装置を打ち砕いた。
成功
🔵🔵🔴
ヒメル・ヴィーゼ
・過去
帝国の襲撃時、暗いシェルターに『一人で』籠城、外部と連絡不可。
銃撃の音、悲鳴、助けを求める声、殺される音を聞き、それが全部途絶えても怖くて出られなかった。
最後には猟兵に出してもらったが『自分から出ること』はできなかった。
普通だった少女が己の力を自覚していれば、誰かを『助けられた』はず。
・克服・対応
『キャット・レギオン』で呼び出した子達と、一緒に行くわ。
今の私は、普通じゃない、一人じゃない、人を助けた経験だってある。
ちゃんと自分で、歩いていけるはずよ!
ジャミングが電波なら、同じ周波数で相殺できるはず…少しでも緩和できないか、試せそうなら試すわ(ハッキング、情報収集、時間稼ぎ)
※アドリブOK
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昔話で聞いたことがある、人が住める星。
そこには見渡す限りの草原や、機械に管理されているわけじゃない、その表情を気まぐれに変える空が広がっているらしい。
いつかそんな光景を見てみたいと、そんな夢を見ていた少女は、狭く暗いシェルターの中でたった一人、震えて縮こまっていた。
外から聞こえる銃声、悲鳴、救いを求める声に、その手を振り払う音。
それら全てから目を逸らし、自分だけの世界に閉じこもる。
(そうだ、私はこの時、沢山の人を見捨てた……)
誰かがシェルターの扉を叩く音が聞こえ、ヒメル・ヴィーゼ(草原と空の夢を見る・f04279)は耳を塞ぐ。
やめてくれ、助けを求められたところで、自分にはどうすることもできないのだ。
何の力もない自分に、帝国軍に逆らうことなどできない。
救いを求める手を取ることなど、自分一人でできるはずが―――
「え……」
いつの間にか、周囲に猫型のぬいぐるみが集まっていた。
呆然とするヒメルに対し、ぬいぐるみ達はシェルターの扉を指し示す。
そのぬいぐるみ達を見て、ヒメルは自身の心が解けていくのを感じ取った。
「そうだった……」
彼女の尻尾型の機器が起動する。それと共に、彼女の頭が澄んでいく。
そうだ、今の自分は普通じゃない、帝国軍を、それ以上に強大な敵を倒してきた。
そうだ、今の自分は一人じゃない、こんなにも多くの仲間たちがついている。
あの時、誰かに救われるまで震えていた自分はもういない。
今ならば、ちゃんと自分で歩いていけるはず!
「いくわよ、みんな!」
ぬいぐるみ達と共に外へと飛び出す、シェルターの扉をくぐれば、そこに広がるのは元の艦の中。
目の前に漂うジャミング装置を睨みつけると、ヒメルは周囲のぬいぐるみ達へと指示を出し、一斉に攻撃させる。
「これが、カワイイの暴力よ!」
尻尾から放たれたエネルギーが、ジャミング装置を破壊した。
大成功
🔵🔵🔵
フィン・スターニス
【トラウマ】
得体のしれない私を受け入れてくれた村
お世話になっていた神社
その全てを失った
使いに出掛けていた間に全てが終わっていた
何故その時その場に居なかったのか
災魔と戦う為作られた人形が、
何故その役目を全うしなかったのか
そう村人達の、養父の声が責めている気がする
【克服】
虹色の光
優しい温もり
そして何かに噛られている様な痛み
雨月様?
そうでした
私は一人ではありませんでした
貴方様の事を忘れて痛いです噛まないで下さい
わかっています
あの使いも急ぎの物では無かったですし
何かを感じ、私を逃がす為の方便だったのでしょう
えぇ怨み言をはく方々では無いです
あれは私の罪悪感からの幻
もう大丈夫です
前に進むと決めたのですから
●
別の世界から来た、戦闘用の機械人形。
そんな得体の知れない存在を、彼らは快く受け入れた。
彼女のことを大切に、まるで本当の娘のように愛し、育んでくれた。
彼女は毎日、一生懸命村の仕事を手伝っていた、村の皆から受けた恩を、少しでも返せるようにと。
だから、その瞬間も、目の前に広がるこの光景は何かの間違いなんだと、フィン・スターニス(七彩龍の巫女・f00208)は無残にも破壊され尽くした村を前に、ただ呆然と佇んでいた。
それは、使いを頼まれ、別の村まで出かけた帰りのこと。
いつもと変わらぬ日であった、みんな自分に声をかけてくれて、自分もそれに応えてみせて。
そんな挨拶を交わした人々は、もう言葉を発することはない。
(神社は……!?)
ふと、自分を育ててくれた養父が脳裏をよぎる。
村の中で自分が最も長い間過ごしてきたであろう神社、その道をただひたすらに駆け抜けて。
「―――あ」
崩れた鳥居と、その先で倒れている養父の姿に、フィンは膝を付く。
生存者は一人もおらず、家屋も徹底的に破壊されていた。
この容赦のない破壊は、オブリビオンの仕業以外ありえない。
「私は、何を……!」
災魔と戦うために作られた人形だというのに、肝心な時に、その役目も果たせず何をしていたのか。
『おお、フィン、無事だったのか』
「!?」
聞こえた声に、顔を上げる。
そこに立っていた養父を見て、無事だったのかと顔を綻ばせ。
『なぜ、私達を見捨てたんだ』
「え―――」
『一人だけで逃げ出した』
『俺たちを化物の餌にした』
「ちが、私は」
養父が、村人達が、フィンを取り囲んで怨嗟の声を響かせる。
逃げたわけではない、そう声に出そうとするも、養父の暗い瞳に見つめられると言葉が出ない。
『お前も、死ぬべきだ』
『そうだ、化物と戦うための人形なんだろう』
『その役に立たなかった欠陥品は、壊すべきだ』
「あ、あ……」
怨嗟を重ねられる度に、フィンの心が軋む音を立てていく。
何度目か、その軋みが限界に達する寸前。
「痛っ」
小さな痛みと共に、虹色の光がフィンの身体を包み、周囲の養父達を消し去った。
「……雨月様?」
呆然と呟いたのは、彼女の指に齧りついたままの小さな龍神。
この神社で祀られ、今ではフィンと共に世界を渡っている、大切な存在。
そうだ、自分は一人ではなかった。
「すみません、貴方様の事を忘れて痛いです噛まないで下さい」
御立腹の龍神を引き剥がし。
「わかっては、いるのです」
あの時の使い、あれはきっと、自分を逃がすための方便だったのだと。
村の皆が、あんな恨み言を口にするような人々ではないことを。
自分を責めていたのは、全て自身の罪悪感からの幻にすぎないと。
「もう大丈夫です」
側で見守る龍神に頷き、フィンは手にした弓を引き絞る。
「前に進むと、決めたのですから」
放たれた矢は、ジャミング装置を正確に射抜いていた。
大成功
🔵🔵🔵
架空・春沙
ドクター・オロチには何か嫌な予感がしますし
実際精神攻撃を仕掛けてくるなど嫌らしいですし
奴を殺すため、ガルベリオンを発見しなければなりませんね
・過去
ダークセイヴァー世界生まれ育ち
そんなとある村を襲う、ヴァンパイアが率いてきた軍勢
になぶり殺されていく、村人、お父さんお母さん、友人たち
なんかそんな感じのあれ!
・
でも、過去のことです
スペースシップワールドではなくダークセイヴァー世界でのことですから、今見えているものは幻の類いのはずです
そして何より、私はあの頃のままではありません
咎人殺しとして、猟兵として、抗う力を身に付けました
今更恐れる必要など、ありはしません!
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常闇の世界に、悲鳴が響き渡る。
それは、その世界においてありふれた日常。
人の血を啜る鬼の軍勢を止める力は、小さな村に存在するはずもなかった。
架空・春沙(緋の断罪・f03663)は、異形に蹂躙される村の中を親友と共に駆ける。
父も母も、自分を守ろうとしてその身を裂かれた。
光の無い世界で、支え合い生きてきた村の人々は、駆け抜けた道の端々に打ち捨てられていた。
今この瞬間も、村のあちこちで命が呆気なく散らされている。
せめて親友だけでも、立ち止まりそうになる足を叱責し、その手を引いて、村の出口まで、後少し。
「―――え」
突然、引いていた手が軽くなった。
振り返る。親友の姿は、腕の途中から無くなっていた。
一拍置いて、異形に捕らわれた親友の悲鳴が耳に届く。
逃げて、と、死を間際にしながら、友の無事を願うその姿から目を逸らし、春沙は村の外へと足を向けた。
他に選択肢はなかった。異形に立ち向かう力など、自分は持っていない。
親友の願いを無駄にしないためには、背を向け逃げるしかできなかった。
滅びゆく故郷を背に、ただ走り続けるしか。
「それは、過去のことです」
冷えた声で呟き、春沙は足を止めて振り返る。
彼女の周りに針金細工の猟犬が現れ、親友を捕らえた異形がこちらを向いた。
「噛み殺しなさい」
猟犬達の爪を受け、異形の姿が掻き消える。その手にあった、親友も。
そう、全ては幻、目の前に広がる絶望の光景は、力を持たなかった頃の彼女から見た景色でしかない。
咎人殺しとして、猟兵として、抗う力を身に付けた彼女にとって、迫る異形達は―――
「今更恐れる必要など、ありはしません!」
猟犬の牙が、ジャミング装置へと突き立てられる。
成功
🔵🔵🔴
リリスフィア・スターライト
人の過去に付け込むなんて趣味が悪いよね
・トラウマ
今よりももっと未熟だった頃に制御に失敗した狂暴な別人格に
そのまま自分の人格として乗っ取られそうになった事かな
姿は同じでも目が虚ろで真っ黒なオーラを出していて
自分が自分でなくなる感じは本当に怖いものだったよ
・克服
あの時も本当にどうしようもないって思ったけど
あれがきっかけで強気な人格の「リリス」が生まれたんだよね
過去の経験から不安もあるけど今回もリリスだけには
頼りたくないからオルタナティブ・ダブルでリリスを
呼び出しつつも一緒に狂暴な別人格をジャミング装置ごと破壊するよ
・台詞
「今度は私にもやらせてよ」(本人)
「ええ、しっかりやりなさいよね」(リリス)
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それは、どこまでも深く沈みゆく黒。
(やめて! 『私』を返して!)
少女の内なる叫びは、その黒の底へと飲み込まれる。
リリスフィア・スターライト(多重人格者のマジックナイト・f02074)の身体は、今やその黒い意識に乗っ取られつつあった。
姿こそ普段の彼女と変わらないものの、その瞳は空虚に揺らぎ、全身から溢れるオーラは近づくものを薙ぎ倒す。
なにより恐ろしいのが、自身の身体を通して感じるその意識。
狂ったような暴力的な衝動、このまま身体の制御を完全に奪われれば、すぐにでもこの意識は周囲の物を、人を、その手で破壊しかねない。
そしてその瞬間がそう遠くないと、彼女は感じ取れてしまった。
(嫌だ、怖いよ)
自分が自分で無くなっていく感覚、心の奥底に閉じ込められてしまえば、きっと誰にも助けてもらえない。
一歩、自分の意思に反して足が前に出た。腕が部屋の扉へと伸びていく。
(いやぁ! お願い、私を奪わないで!)
自分の身体なのに、自分の意識は確かにここにあるというのに、自分でない意識が身体を自由に動かしている。
それが怖くて、気持ち悪くて、それなのに誰にも助けを求めることさえできなくて。
(今でも、そう思う?)
意識が、もう一つ。
その意識から問いかけられた瞬間、少女の感じていた不安や絶望といった感情は、急速に霧散していく。
「ううん、そんなことないよ、『リリス』」
「なら、こんな相手を怖がる必要ないよね、『フィア』」
いつの間にか、その場には三人のリリスフィアが存在していた。
あの時は、リリスに助けてもらうことしかできなかった。
けれど、今は違う。
「今度は私にもやらせてよ」
「ええ、しっかりやりなさいよね」
残された黒い意思が、二人を消さんと飛びかかる。
しかしてそれは、リリスの剣とフィアの生み出す激流によって吹き散らされ。
二人の放った一撃は、ジャミング装置を完全に破壊していた。
大成功
🔵🔵🔵
シエル・マリアージュ
天に見初められし乙女、表向きは教団の象徴とされ裏では処刑人として使われ、教団に不都合な罪のない人を殺めてきた過去。
その過去をジャミング装置に再現されたら、苦しげに「27章~節」とつぶやき抵抗します。27章とはシエルが持つ【偽典〈慈悲深き天上の乙女〉】でシエルが行った処刑が綴られた章であり、節は再現された処刑の記述を意味します。
偽典は幾度となく読み返して全て記憶しており、そこに綴られた罪も技もシエルの中にあり、彼女の力になっている。
「この力で、奪った以上の命や幸せを守る」
過去の乙女から継承した殺しの技術で命を救う、それが天に見初められし乙女としての償い、そして猟兵としてシエルの覚悟です。
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天に見初められし乙女、教団に信する者にとっての、希望の象徴。
しかし、それは表向きの話。
その実態は、教団に不都合な者を殺めるための処刑人。
眠ったまま命を亡くした者がいた。怨嗟をぶつけてくる者がいた。慈悲を求め許しを乞う者がいた。
共通するのは唯一つ、その者達は、罪を犯してなどいないこと。
彼らを罰するのは、教団にとって生きていられると不都合である、ただそれだけの理由。
それだけのために、罪無き人々へ、自分は幾度となくその刃を振り下ろす。
「……っ!」
そんな光景を、シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)は見続けていた。
教団の処刑人として育てられて来た彼女は、その自身の行いを見せつけられ、苦々しく表情を歪める。
「……27章、……節」
処刑が進むごとに、シエルは苦しげに呟く。
それは彼女の持つ偽典〈慈悲深き天上の乙女〉に、彼女が行った処刑について綴られた章。
そう、改めてこんな光景を見せられるまでもなく、彼女は自らが行った過ちを全て記憶している。
歴代の乙女が積み重ねてきた、技と罪。
それらは余すこと無くシエルの中にあり、今の彼女を築く力となっている。
彼女が背負うのは乙女たち全ての罪、ならば、自分の行いのみを見せつけられた程度で、心が折れる道理はない。
「この力で、奪った以上の命や幸せを守る」
それこそが天に見初められし乙女としての償い。猟兵としてのシエルの覚悟。
幻影のシエルの影から現れた刃は、幻影ともどもジャミング装置を貫いた。
大成功
🔵🔵🔵
シル・ウィンディア
なんだろ、ここは…
ふわふわ、変な気分…
トラウマ:巨大な虫
小さい頃に見た、大きな虫に襲われる光景がフラッシュバック
い、いや…
こ、来ないで…
すごく、こわくて、足も動かなくて、逃げられなくて…
そう、あの時もそうだった…
あの時?
それって一体…
あの時は、なにもできずに泣いて、迫ってくる虫から逃げるようにしていたけど
その時は…
そう、誰かが、助けてくれたの。
それって誰?
助けてくれたのは、両親…
何をしているんだろうね、わたしは…
虫は、確かに怖いよ。もう、混乱しちゃう位ね
でも、今は、わたしよりも恐怖に脅かされている人がいる
だから、わたしは、戦っているんだ
今度は、わたしが両親みたいにみんなを救うんだっ!!
●
(なんだろ、ここは……)
シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は、どこともつかぬ、不思議な空間を歩いていた。
ふわふわと浮かんでいるような、不思議な気分。
何か大切なことをしていたはずだ、だけどそれが何だったのかが思い出せない。
そんな彼女の前に、何か巨大な物が現れた。
「……? ―――っ!?」
それは巨大な虫。平気な者にとってはただでかいだけのそれは、シルにとってはなによりも恐ろしい、恐怖の象徴。
「い、いや……こ、来ないで……」
今すぐに目を逸らして逃げ出したい。
だというのに、竦み切った足も瞳も、シルの言うことを聞かずに動こうとしない。
そう、あの時もそうだった。
(あの、時……?)
それは少女が今よりも更に幼かった頃、何もできずに泣きながら、迫る虫からただ逃げていた。
追いつかれればどうなるか、その人とは全く似つかない口で噛みつかれてしまったら。
頭に浮かぶのは恐怖を加速させることばかり、走って走って走り続けて、それでも子供の足では距離を空けることはできず。
(そうだ、あの時は、誰かが助けてくれたんだ)
それは、いったい誰だったのか。
霞がかった記憶を辿れば、そこには確かに、自分へと手を差し伸べてくれた人がいたではないか。
そう、それは。
「お父さん、お母さん……」
なぜ、そのことを忘れていたのか。
震える手を、ぐっと握り、涙に滲む瞳に力を込め、目の前の巨大な虫を睨みつける。
自分はいつも、誰かに助けてもらってきた。
なら、今ここで自分がするべきことはなんだ? あの頃のように、泣きながら逃げることか?
「そんなはず、ない!」
虫への恐怖が抜けきったわけではない。
それでも、今は自分以上に恐怖に脅かされている人たちがいるのだ。
ならば、怯えてなどいられない。
自分はそのために、剣を握り戦っているのだから。
「今度は、わたしが両親みたいにみんなを救うんだっ!!」
声を上げ、両の手に構えた光の刃を振るう。
その輝きは巨大な虫を、その先のジャミング装置をも切り裂き、その機能を完全に停止させた。
●
猟兵達はそれぞれ己の心の弱さを乗り越え、装置の破壊を達成する。
この作戦範囲に存在していたジャミング装置は、ただの一つも残っていない。
ここで起きた内なる闇との戦いは、ドクター・オロチの居場所を掴むための一歩となっただろう。
大成功
🔵🔵🔵