銀河帝国攻略戦⑫~再集結した防衛ラインを壊滅せよ
「戦争が新たな局面を迎えています!」
興奮気味に叫ぶのは金髪のアホ毛をぴょこぴょこさせたアリア・ヴェルフォード(謎の剣士X・f10811)だ。
「今スペースシップワールドで戦争を行っているのは勿論ご存知ですね!?」
前置きをおいてからアリアは猟兵たちと現状の戦況についての情報共有を行う。
今までの戦争の前線は敵の拠点である『エンペラーズマインド』の外で行われており、『エンペラーズマインド』に攻め込むための解放軍の艦隊の確保や防衛ラインの撃破であった。
「これらの作戦は皆さんの活躍で成功しました!一部では『エンペラーズマインド』内部に踏み込んでいるとの情報も入っています!」
戦争開始からこれまで少数精鋭である猟兵たちはその身軽さを生かして優位に戦局を整えてきた。
そのおかげで解放軍の艦隊が銀河帝国から受ける妨害は最小限に押し止められ、物量数で押し負けていたことも緩和されつつあり内部への進撃が可能となっていた。
「私が予知したのは帝国軍が『エンペラーズマインド』の最終防衛ラインとなっている防衛艦隊です!皆さんにはその艦隊を撃退して貰います!」
銀河帝国は当初『エンペラーズマインド』周辺に解放軍の艦隊を迎撃するために防衛艦隊を展開していたが解放軍によって撃退されていた。
しかしその前線に出ていなかった銀河帝国の艦隊が再集結して防衛ラインを再び構築しようとしているというのだ。
「今回皆さんが相手をする敵は『クローン重騎兵』です!銀河帝国軍の主力歩兵のクローン騎兵に重装型アームドフォートを装備して機動力を上げた部隊のようですね!」
一度は何処かで撃退しているであろう部隊の予備兵力とはいえ油断ならない敵なのは確かだ。
「捨て身で来る敵のようなので気をつけてください!まぁ皆さんなら大丈夫でしょう!パパッとやっちゃってください!」
そしてまぁ残りの寄せ集めみたいなものですし・・・と本音をぼそっと吐露していた。色々台無しである。
「と、とにかく戦争は中盤戦です!まだまだ先は長いですが一歩ずつ進んでいきましょう!頑張ってください!」
猟兵の生温かい視線に気付いたのかそれを誤魔化すように声を張り上げながらアリアは猟兵たちに応援の言葉を送る。
気を引き締められたかは謎だが猟兵たちは次々に戦場へと転移していくのだった。
小牧葵
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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はじめましての方ははじめまして!そうでない方はこんにちは!小牧葵です。
今回は⑫『エンペラーズマインド』再集結艦隊を取り扱わせていただきます。
戦争もいよいよ中盤!ここからが戦争の本番です!全力で頑張ります!
舞台は宇宙なので大技を撃っても被害はあまりない・・・ので好き放題でも大丈夫ですね!
第1章 集団戦
『クローン重騎兵』
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POW : インペリアル・フルバースト
【全武装の一斉発射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : コズミックスナイプ
【味方との相互情報支援】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【狙撃用ビームライフル】で攻撃する。
WIZ : サイキッカー拘束用ワイヤー
【アームドフォートから射出した特殊ワイヤー】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
楠瀬・亜夜
さぁ、一気に防衛線を突破してしまいましょう。
捨て身の敵の動きは予想困難、戦いが長引くほど危険が増す筈
ならば迅速に制圧するまで……電撃戦、開始します。
……一度こういう事言ってみたかった!
ともあれこの勢いのまま攻勢を続けることが大事なのは確かですね
【knife vision】で敵へナイフの雨を浴びせ、更に【クイックドロウ】で
銃弾の雨もプレゼントして差し上げます。
あとは一気に距離を詰めて接近戦を仕掛けましょう……!
戦場を駆け抜け敵の銃弾を掻い潜るように突破を狙い
ナイフで首元など弱点になりえる場所を狙って攻撃します。
エミリー・ローレライ
宇宙服着用。味方の攻撃の前に「合図したら即退避するように」と告げる。【起動、殲滅せよ機械の僕たち】を発動、浮遊砲台を85機召喚し【Duplication】で複製、1530機に。さらに【Army of Machine】を発動。合計3581578530機の浮遊砲台を連結させ直径6キロメートルの巨大な砲台を35機作成。【最終攻撃命令「ChordΩ」】を発動させ全35機の巨大砲台を90秒チャージ。チャージが完了し合図をして味方が退避したら敵のレンジ外から、【2回攻撃】、【一斉発射】、【先制攻撃】、【力溜め】、【属性攻撃;光】、【範囲攻撃】、【薙ぎ払い】を乗せて敵に発射、消滅させる。アドリブ、連携、歓迎
アリア・ティアラリード
「艦隊の再結集、そんな容易くはさせませんっ!!」
敵艦艇の再編が進むエンペラーズマインド鎮守府、そこを駆ける一台のスペースバイク
解放軍で汎用的に使われているモデルは今《光煌刃衝角》のフォース光に包まれ【残像】を残し疾走!
一斉に放たれる強烈な対空レーザーの光芒を【第六感・野生の勘】で某野サーカスして回避
完全に【見切って】いるお姉ちゃんにそんな物は掠りもしません!
そして敵艦が密集している中へ飛び込みフォースを最大展開
《騎姫光剣:極大》軽く数百メートルに達する光の剣で【早業・二回攻撃】
何隻もの帝国軍戦闘艦が大根を切るかのようにスッパスパスパスッパスパ!
…でもこれ、まだ解放軍の序の口です!
連携歓迎!
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(他猟兵と連携可)
「アリアは簡単に言っていたけど、捨て身で来る敵は侮れないわ」
油断は禁物と言い聞かせて弟のフォルセティと戦場へ
■作戦
フォルセティと攻防一体で連携しながら戦い
クローン重騎兵を1体ずつ確実に葬る
■行動
Flying Broom GTRに騎乗し重騎兵群へ向かう(技能:騎乗)
弟の先制攻撃に対する反撃に備え
即座にアイギスの盾を展開して無効化する
(技能:高速詠唱×2回攻撃)
カウンターで重騎兵をロックオンしながら
フォルセティのUCと連動してバベルの光で止めを刺す
(技能:全力魔法)
「次いくわよ、フォルセティ」
囲まれないようにバイクでダッシュ移動しながら戦う
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【SPD】(共闘可)
フィオ姉ちゃんと一緒にクローン重騎兵と戦うよ
【行動】()内は技能
Flying Broom GTSに騎乗し出撃
(騎乗)しての(空中戦)は得意だよ
フォルマ・ベンダバールで戦闘力を上げて重騎兵と対峙
「まずはボクからだね!」
(先制攻撃)でクラロ・デ・ルーナを叩きつける
さらにフィオ姉ちゃんのアイギスの盾の発動をみて
(高速詠唱×全力魔法)でカラミダド・メテオーロを叩きつけるよ
「派手にやっちゃうよー!」
(第六感)で危険を感じたら(見切り)や(戦闘知識)を活かして
急旋回で回避するよ
「この調子でドンドンいくよ」
フィオ姉ちゃんと連携して確実に仕留め、深追いはしないよ。
ルミナール・セピアネス
【POW】
こういう連中を残しておくと後々厄介になるし後顧の憂いのないようにここで蹴散らしておかないとね!
重装型アームドフォートを装備して機動戦とかなんとなく私と被ってる感じがするなぁ。だからこそ負けてられないかな。
まずは●コードアクセラレイターを発動。高機動ユニットを装着して重騎兵共とドックファイトと洒落込みますか!
狙うは相手が大技を仕掛けてきた時。それまでは装備してるアームズフォートで牽制射撃しながら様子見。
全武装の一斉発射のタイミングで一気に接近、飛んでくる弾幕は多少の被弾覚悟で突っ込んで転送されてきた腕部装着型パイルバンカーを装備して●バンカースマッシャーを叩き込む!
(アドリブ等大歓迎)
ニレッド・アロウン
ほうほう、相手は寄せ集めと……と、言う事は、連携・連絡等は、脆そうですね。
眼帯越しに【視力】【暗視】を駆使し、なんかリーダーぽい人を【第六感】で探り当てましょう。それっぽければいいんですよ、こういうのは。
狙いをリーダーっぽい人周辺に定めたら翼の色を多数の色に変換し、【属性攻撃】【全力魔法】による【彩翼矢砲】を適当に放ちましょう。この羽根は一枚一枚に様々な属性が乗っています、一枚でも当たれば何が起こるかたまったものではないですよ!と、多少の嘘を交えつつ相手に【恐怖を与えて】行きましょう。
もし近づく敵がいたら、【オーラ防御】を展開しつつ【殺気】を飛ばして牽制しましょう。
※アドリブ・他者との協力歓迎
リューイン・ランサード
初任務が戦争だなんて怖くてたまらない・・・。
だけどやる以上は精一杯頑張る<泣>。
敵は捨て身で来る敵だとの事。
ならば、他の猟兵の皆さんと一緒に再集結艦隊内部に潜入した
後は、機材等の物陰に潜伏して奇襲の機会を伺う。
クローン重騎兵が迎撃に出てくるのを待って、一旦やり過ごした
後で背後から奇襲します。
戦闘ではユーベル・コード:トリニティ・エンハンスで
【炎の魔力】増強。
【勇気】を振り絞って闘志を高め、【属性攻撃】でルーンソードに
炎の魔力を纏う。
敵の武装は射撃中心なので、敵に接敵してビームライフルや砲塔を
破壊した上で一体ずつ剣で倒す。
出来る限り敵と密接し、自分が撃たれる時は敵も巻き添えにします。
尾崎・ナオ
【拳銃早打ち】で仕留めるよ!(レベル分の1秒で【黒い拳銃】を発射できる)
「これ、見える~ぅ?」
相手を茶化しながら早打ち!技能【クイックドロウ48】も乗せて、高速の早打ちを仕掛けるよ!
弾薬が足りない?いやいや、大丈夫。拳銃自体が沢山あるから!同じ銃ちゃんと複数装備してるから!
あとは【ナイフいっぱい☆】も使って牽制していこうかなー。
こいつら、意思はあるんだよね?ちゃんと退いてくれると嬉しいんだけど!
ちゃーんと投げる前に【毒使い12】でしっかり毒を塗ってまぁす!
それを念力で【投擲11】!投擲フォームを使うって事で!
●開戦前
敵の防衛ラインの構築を阻止するために集まったのは9人の猟兵たち。
送り出したグリモア猟兵のアリア・ヴェルフォードはパパッと~などと楽観的なことを言っていたが銀河帝国軍は侮れるような敵ではない。
そこできちんと前もって作戦会議をしようという提案の下、宇宙服を着用した9人の内2人が敵情の偵察に赴き、残りの7人は敵艦隊から離れた位置で解放軍の宇宙船の一室にて作戦会議を行っていた。
「やはり、一気に防衛線を突破してしまいましょう。構築が完了する前に奇襲を仕掛けて勢いのまま迅速に制圧すべき、つまりは電撃戦です」
最初に口を開いたのは楠瀬・亜夜(追憶の断片・f03907)であり、楠瀬は戦いが長引くほど危険が増す筈だと主張する。
この主張は敵艦隊との圧倒的な頭数の差が想定できることから的を射た意見であり猟兵たちはそれに賛同していた。
実際楠瀬の内心は電撃戦という言葉を言ってみたかっただけであり、あまりよく考えていなかったがそれは内緒である。
「今は敵事情を調べて頂いているからはっきりとは言えませんが、皆の危険を考えると短期決戦に持ち込む方がいいかもしれません」
楠瀬に賛同して短期決戦を望むのは戦闘モードにスイッチが入っているアリア・ティアラリード(エトワールシュバリエ・f04271)だ。
アリアは代々フォースナイトを輩出する名家の令嬢かつお姉ちゃんでもあるため、皆の危険を一番に考えていた。
「敵は寄せ集めですから、連携や連絡等は脆そうですね。やはり敵のリーダー格を先に倒せれば混乱を維持したまま戦えると思います」
アリアに続けて、意見を口にしたのは眼帯により目を隠しているオラトリオのニレッド・アロウン(水晶鋏の似非天使・f09465)。
ニレッドは短期決戦として奇襲を行う際には敵の指示系統を撃破することで優位性を保てると考えていた。
「短期決戦はいいけど、こういう連中を残しておくと後々厄介になるし後顧の憂いがないようにきちんと殲滅する必要があるんじゃない?」
短期決戦の意見で固まりつつある中で、そう指摘するのは火薬式の火器を愛するサイボーグのルミナール・セピアネス(クレイジートリガー・f13615)だ。
ルミナールは一度撃破したにも関わらずまた集まって防衛ラインを形成しようとしている現状を見て一人も残さずに倒しておきたいと考えていた。
「確かにそうですね。防衛ラインを突破してもまた集まられては元も子もありません」
「やるなら徹底的にやろうということですね♪」
その意見に楠瀬やアリアは頷きながらそう口にしてどうやって倒すか思考を巡らせる。
「初任務が戦争だなんて怖くてたまらない……どうして来てしまったのでしょう」
その横でちょっと泣きかけながら震えているのはリューイン・ランサード(ドラゴニアンのマジックナイト・f13950)である。
リューインは武人の名門に生まれた幼き頃は理想に燃えて頑張っていたが最初の実践で躓いたためにヘタレてしまっていた。
そして初めての戦争リューインの心はだいぶピンチだった。
「え~?アンタ何泣いてんのぉ~?ナオちゃんは初任務だってふっつ~にこなしましたけどぉ~」
その様子を見てちゃかすように声をかけるのは猫のような横髪をした女性である尾崎・ナオ(人間のシーフ・f14041)だ。
「まぁ別にアンタ一人ってわけじゃないでしょお?頼っちゃえばいいでしょ~周りを」
尾崎は生来の気分屋であるため別に悪意があるわけではない。
それは素直な意見でありリュ―インへの助言だった。
「そう…ですね。ありがとうございます、尾崎さん。僕は一人じゃない…はい、やる以上は精一杯頑張ります」
リューインは涙を拭って前を見据える。
楠瀬やアリアも一度思考を止めて初任務のリューインに戦場での心構えなどを教えていた。
「エミリーさんは何か案はないですか?」
その中でニレッドは同じオラトリオであるエミリー・ローレライ(膨大砲台・f05348)に意見を求めていた。
基本的にエミリーは口数が多くない。
作戦会議開始から止まることなく意見が飛び交っていたことに加え、その意見の中に否定する要素もなかったことからエミリーは周りの意見に対して短く相槌を打つにとどまっていた。
「ある」
ニレッドに尋ねられたエミリーは短く返してそのまま案を話そうとした時、部屋の扉が開く。
「ただいま戻りました」
「敵の陣容を探ってきたよ!」
姉弟で敵の偵察に行っていたフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)とフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)が戻ってきたのだ。
「おかえり。とりあえず後で」
とエミリーは自分の話を後にして姉弟を出迎える。
他の5人も姉弟を出迎え、そしてソルレスティア姉弟の偵察結果を聞くことにした。
宇宙船の中にある電子マップを使ってフィオリナとフォルセティは自らが得てきた情報を話しだした。
「まず敵の大まかな位置ですが大体ここらへんですね」
フィオリナはデバイスを用いてマップ上に敵の位置を記載する。
「戦艦は10隻あって、戦艦を囲むようにクローン重騎兵が沢山いたよ!」
続けてフォルセティが戦艦の数と配置そしてクローン重騎兵について述べる。
その後いくつかの質問が挙がり、それを姉弟が答えていく。
「まだ集まっただけでちゃんと防衛ラインとして成り立ってはいなかったです。ただ時間が経ってしまうと堅い防衛ラインができてしまうと思います」
「うん!フィオ姉ちゃんの言うとおりだから早くしないとだめだよ!」
そして最後にフィオリナが所見を述べ、フォルセティもそれに賛成する。
やはり敵の状態は想定通りといった具合だった。
「ありがとうございます。ちょうど私たちも電撃戦、つまり短期決戦による奇襲がいいという案が挙がっていたところです」
楠瀬を初めとしてアリアやルミナール、ニレッドもそれぞれの所見を2人に伝える。
その間敵の数の多さにリューインはまた涙目になっていたのは言うまでもなく、尾崎はそれにちゃちゃを入れていた。
「確かに敵を逃してしまうと厄介ですね」
「別にまた倒しに来てもいいけど倒せるなら残らず倒したいよね」
それぞれの所見を聞いたソルレスティア姉弟もルミナールの懸念に頭を悩ませかけた時
「エミリーさんに案があるそうですよ」
とニレッドが皆にエミリーが意見を話す時間を作る。
「ん、ある」
そしてエミリーは再度肯定した後に自身の装備を含めてできることを話していき――――――
「ということができるから・・・皆には時間を稼いでほしい」
今回取る作戦が決まった。
●開戦
猟兵たちは奇襲を仕掛けるべく灯りになるものを消して進んでいく。
そしてもうすぐ敵が見え始める位置でエミリーは1人その場に止まり、
「準備できたら合図する」
と告げる。
「合図が来たらこっちまで退避してくればいいんですよね?」
アリアが最後の確認を取り、それにエミリーは頷く。
「了解です♪じゃあ皆さん行きましょう!」
アリアのその言葉に各々が反応を示した後、エミリーを残して8人は奇襲を仕掛けるべく敵艦隊に向かっていくのだった。
そして8人の猟兵は戦艦とクローン重騎兵の大群を目に捉える。敵はまだこちらに気付いていないようだ。
「ここまで近づきましたし大きな混乱を起こしてから突撃したいですね」
「ならボクに任せてよ!」
敵を眺めながら楠瀬が呟いた言葉に反応したのはフォルセティだった。
フォルセティは太陽系の惑星を源とする魔術に長けたウィザードである。
そのためこの宇宙という舞台はフォルセティにとっては最高に近い環境だった。
フォルセティはところどころに浮遊している大きな岩石を魔術によって沢山引っ張ってくる。
「よーし、じゃあ行くよ!」
そして敵軍に向けてそれらを放った。
放たれた岩石は無防備だった敵軍に襲い掛かる。
「ただ放っただけじゃないよ!」
そして敵軍に衝突する直前に手榴弾のように爆発して周囲のクローン重騎兵を巻き込んだ。
それを皮切りに残りの岩石も続けさまに爆発していった。
――――敵襲!!!!敵襲!!!!!――――
襲撃を受けたことを理解したのだろう敵襲という声があたりで飛び交いサイレンがなる。
だが先制攻撃を受けた敵軍の統率はダメージを踏まえ完全に麻痺していた。
「電撃戦、開始します」
「お姉ちゃんに戦艦は任せてください!」
「油断は禁物よ、フォルセティ」
「うん!分かったよ、フィオ姉ちゃん!」
「私の相手はクローン重騎兵だね!」
「リーダー…はたぶんあれですか、行ってきます」
「大丈夫…大丈夫…よし行きます」
「ん~さぁ~てどう遊んじゃおっかなぁ」
その混乱に乗じて8人の猟兵は突っ込んでいくのだった。
~浴びせたるはナイフと銃弾の雨~
「くそっどうなってるんだ!こんなの聞いてねぇぞ!」
「知るか!敵は何処からやってきてんだ!」
「衛生兵を呼んでくれぇ!」
混乱したクローン重騎兵の様々な怒号が飛び交う中に一番に突っ込んで行ったのは楠瀬だ。
「奇襲は成功ですが、ともあれこの勢いのまま攻勢を続けることが大事なのは確かですね」
そう言いながら楠瀬はユーベルコード『knife vision』により装備していた特製のナイフを23本複製し念力で操作して周囲に展開させる。
そしてそのナイフをクローン重騎兵の密集地へと放った。
「「「ぐああああああ!!!!」」」
クローン重騎兵にナイフが突き刺さることで悲鳴が上がる。
「猟兵だぁ!猟兵がいるぞぉ!!」
ナイフの飛んでくる方向を見ていたクローン重騎兵の1人が楠瀬を見つけて叫んだ。
「煩わしいですよ」
―――――パァン―――――
「ウッ!」
その叫びに対する返答は楠瀬の銃の速射による頭部への銃弾。
「ナイフもいいですが銃弾の雨もプレゼントして差し上げます」
念力で様々な方向からナイフの雨を降らせながら両手に構えなおした銃により弾丸の雨も戦場に降り注いだ。
「おや、ここはもう終わりですね。弾丸にも限りがありますし温存しておきましょう」
ナイフと弾丸の雨によって周囲一体を殲滅した楠瀬は銃をリロードした後にそれを一度しまう。
そして特製ナイフを取り出すと自身の周りにナイフを漂わせて近場のクローン重騎兵の集団に向かって突撃を行った。
「こっちに来たぞ!!」
「撃て!あいつを撃てぇ!!!」
楠瀬の接近に気付いたクローン重騎兵たちが銃を構えてその接近を阻止するためビームを撃つ。
そのビームの弾幕を掻い潜るように楠瀬は接近してまず最も近くにいたクローン重騎兵の首元をナイフで斬り裂いた。
首筋から血が噴出しそのクローン重騎兵は倒れる。
「くそ!くそくそぉ!!!」
「あいつのかたぐああああ!!!」
そして銃口を向けようとしたクローン重騎兵に浮遊していたナイフが襲い掛かるのだ。
「ここが貴方たちの死に場所です」
楠瀬はそう告げながらナイフの雨で怯んだクローン重騎兵の首筋にナイフをあてがった。
時が経ち、段々と混乱が収まりつつある中でクローン重騎兵は統率的な行動を取りつつあった。
既に楠瀬は戦場を駆け巡りいくつかのクローン重騎兵の集団を潰して回っていたが未だ数は多い。
楠瀬が見渡すと自身に向かって突撃してくるクローン重騎兵が視界に入る。
「ふむ、ここからが正念場というわけですね」
そう呟くと楠瀬は再び銃を取り出す。
「喜んでください。貴方たちのためにここまで残しておいてあげたのですよ」
楠瀬の周囲では再びナイフと銃弾の雨が敵軍に対して降り注ぐのであった。
~煌くは正義の光剣~
戦場を1台のスペースバイクが駆けていた。
そのスペースバイクは解放軍で汎用的に使われているバイクである。
だがそれは光に包まれており普段では有り得ない速度によって走行していた。
その光はアリアのユーベルコード『光煌刃衝角』によるものだ。
本来であれば自身に煌くフォースの衝角をまとって高速移動と超高速突進による衝撃波の放射を可能するものだが、アリアはバイクと一体と化すことで更なる加速を得ていた。
「おい!あれは猟兵だぞ!早く撃て!」
「構えろ!戦艦へ近づけさせるなァ!!!」
それはまっすぐに残像を残しつつ戦艦へと向かっていく。
戦艦の近くにいたクローン重騎兵たちは慌てて壁を作ってビームを放つがアリアは巧みにバイクを操作してそれを全て掻い潜って避ける。
「それは既に見切っています!それではお姉ちゃんに掠りもしませんよ!」
そしてそのまま衝撃波の放射によりクローン重騎兵の壁をなぎ倒した。
壁を突破されたクローン重騎兵はアームドフォートによる機動力で追いつこうとするが既に差が開いているため追いつくことができない。
そしてバイクを走らせたアリアは戦艦に到達する。
「艦隊の再結集、そんな容易くはさせませんっ!!ここで全て斬り伏せます!」
アリアは自身の持つフォースを最大展開して武器であるフォースセイバーを掲げる。
「対艦対城光剣、クエーサー・ブロウですっ!!!」
ユーベルコード『姫騎光剣:極大』自身の全フォースを代償に装備武器の封印を解いて極大のフォースセイバー:クエーサー・ブロウに変化させ殺傷力を増す効果を持っていた。
これにより掲げたフォースセイバーが数百メートルに達しうる巨大な光の剣となった。
そしてアリアはその光の剣を振りおろす。
それは断罪の一撃、まるで鋭利な包丁で大根をスパッと切り離すかのように戦艦が分割される。
「まだまだ行きます!」
アリアはその勢いのまま分断された戦艦を更に細切れあるいはみじん切りの要領で切り伏せた。
一瞬の間に細やかにされた戦艦は爆発し沈没していく。
「まずは1隻!」
アリアは次の戦艦に狙いを定めると再びバイクを加速させる。
自身のフォースが切れる前にできるだけ多くの敵軍をなぎ払う、それがアリアの今すべきことだ。
「1隻やられたぞ!」
「あいつが先だ!あいつを始末しろ!」
「こっちに来るぞ!撃て撃て撃て!」
当然クローン重騎兵もただで許すはずがない。
アリアに狙いを定めて四方八方からビームを放ち、その動きを止めるために拘束用ワイヤーを飛ばして邪魔をしようとする。
それを放ったクローン重騎兵ごと光の剣で斬り捨てていき次の戦艦に到達する。
「解放軍の恐ろしさをとくと味わってください!まだ序の口です!」
アリアそのまま2隻、3隻と順当に潰していくのだった。
~魔術の極意は姉弟の絆~
クローン重騎兵の集団に対してフィオリナとフォルセティのソルレスティア姉弟は2人で連携して戦うことにした。
「グリモア猟兵のアリアは簡単に言っていたけど、捨て身で来る敵は侮れないわ」
「大丈夫だよ!ボクとフィオ姉ちゃんなら!」
そう気を引き締めるフィオリナはFlying Broom GTR、それに言葉を返すフォルセティはFlying Broom GTSに騎乗していた。
それは両方とも空飛ぶ箒と名付けられたバイクであり、名前負けしないターボエンジンにより加速性能が高くそれによる移動手段を持った姉弟はクローン重騎兵の密集地帯へと足を踏み入れていく。
「おい猟兵が来たぞ!」
「構えろ!2時の方向だ!!」
「畜生!さっきの爆撃で装備がおしゃかになってやがる!!」
その接近に気付いたクローン重騎兵たちは姉弟に狙いを定めようとする。
「まずはボクからだね!」
それより早く行動を起こしたのはフォルセティだ。
「放て!」
そう短い言葉を紡ぎフォルセティはユーベルコード『クラロ・デ・ルーナ』により閃光と衝撃を伴う高エネルギー波を速射する。
「「「ぐあっ!!」」」
放たれた高エネルギー波は敵の前衛はもちろん2列目以降にいたクローン重騎兵もまとめて吹き飛ばす。
「くそっ!飛ばされた奴らには構うな!撃て!撃て!」
負傷者の看護は後回しにしたのかクローン重騎兵の部隊長らしき人物は先に姉弟を倒すことを優先しその指令を下す。
そして放たれるビームの弾幕。
学生服と皮鎧という軽装では1発でも当たればひとたまりも無いだろう。
だがその反撃をフィオリナは高速詠唱により事前に準備していたユーベルコード『アイギスの盾』を発動する。
「そんな攻撃当たらないわよ。防げ、アイギスの盾よ!」
フィオリナによって生成された光り輝く魔法の盾はその弾幕を全てシャットアウトした。
「くそっ!次だ次!早く構えろ!」
そう怒声を飛ばすクローン重騎士の部隊長をフィオリナはロックオンしてVF-1 オートフォーカスを向ける。
そしてフィオリナがアイギスの盾を展開している間にフォルセティも強大な魔力が込められた聖箒ソル・アトゥースをクローン重騎兵たちに向けて次の魔術を放つ準備を進めていた。
「派手にやっちゃうよー!」
そして先に放たれたのはフィオリナによるユーベルコード『バベルの光』だ。
「まずはあれを倒せば良いわね、貫け、バベルの光!」
部隊長に向けて放たれたのはフィオリナからではなく人工衛星からの一撃。
「なんっ・・・ぐっ!」
一瞬の高出力レーザーの閃光がこの戦場を駆け抜けて部隊長を射抜いたのだ。
「ただの魔法使いだと思った?こういうこともできるのよ」
部隊長を失い一瞬固まったものの状況を理解したクローン重騎士たちは慟哭する。
「隊長ぉぉぉっぉお!!!!」
「どうすんだよ!どっちを狙えばいいんだ!」
「知るか!とにかく撃て!」
そしてあたふたしながらも再度ビームライフルを握り締めたクローン重騎兵たちが見たのは自身に迫ってくる灼熱の物体だった。
「悠久に揺蕩う無限の星屑よ。星柩満ちて此へ集うは漆黒の紅炎、カラミダド・メテオーロ!!」
それはフォルセティのユーベルコード『カラミダド・メテオーロ』、灼熱の巨大隕石を相手にぶつける惑星攻撃だ。
燃え盛る隕石がその熱量と質量を持ってして周辺一帯を飲み込んだ。
「「「「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!」」」」
その一撃により統率を失っていたクローン重騎士たちは断末魔を残して壊滅する。
それを見ていた周囲の敵は逃げ出していた。
「次いくわよ、フォルセティ」
クローン重騎士たちの殲滅を確認したフィオリナは逃げるクローン重騎士たちは無視して弟に声をかける。
「この調子でドンドンいくよ!」
大魔術を放ったにも拘らずその疲れを見せないフォルセティはそれに元気に答えて次の戦場へと向かっていった。
~最高速の機動戦~
「あれがクローン重騎兵の重装型ユニットかぁ。なんとなく私と被ってる感じがするんだよね」
クローン重騎兵の装備を見てルミナールは自身の戦闘スタイルとキャラが似ていることを意識する。
「貴様ら猟兵だな!覚悟しろ!」
「囲め!絶対に逃がすな!」
クローン重騎兵たちがルミナールを見つけてビームライフルを構えながら迫ってくる。
「だからこそ負けてられないかな」
その様子を見つつルミナールはユーベルコード『コードアクセラレイター』を使用し転送されてきた高機動ユニットをまとう。
「さぁあなたたちはこの速さに追いつける?」
高機動ユニットによる高速移動を手に入れたルミナールは襲い掛かってくるクローン重騎兵に突っ込んでいった。
そして複数のクローン重騎兵たちを相手にルミナールは携行型の火薬式固定砲台であるアームドフォートを使っての空中戦が開始された。
ルミナールは迫ってくるクローン重騎兵たちのビームの弾幕を避けつつアームドフォートの砲弾により1体ずつ撃破していっていた。
しかしクローン重騎兵はその数を増員させてルミナールを追いかけてくる。
「くそっ!追いつけない!」
「お前は右だ!俺は左から挟む!」
背後でルミナールを捕らえようとクローン重騎兵たちが怒声をあげていた。
速度的にはルミナールが勝っているがこうも数が多いと面倒くさいことこのうえない。
回り込んできたクローン重騎兵がルミナールの横を併走し至近距離でビームを放とうと構えるが
「それは甘いよ」
とルミナールは『コードアクセラレイター』によるバーナムの炎熱を放射することで動きを止めてアームドフォートにより撃墜させる。
このように数多くのビームを避けながらの飛行になるためどうしても追いつかれてしまうことがあるもののルミナールは上手く立ち回っていた。
「数多く減らす技は私にはあまりないからね、どうしようかな」
ルミナールが考えていると前方で待ち構えていたクローン重騎兵が
「食らえ!!」
と全武装の一斉発射をルミナールに放つ。
「大技は隙が多いんだよ」
その弾幕を多少掠りながらも綺麗に避けきりルミナールはユーベルコード『バンカースマッシャー』を展開。
「使うのは重火器だけじゃないんだよね!」
そう言い放つと共に転送されてきた装着式パイルバンカーの超高速かつ大威力の一撃が正面に立っていたクローン重騎兵を貫き吹っ飛ばした。
「ああ、なるほど」
その光景をみたルミナールは一つの案を思いつき実行に移す。
ルミナールはアームドフォートによる攻撃を中止し飛ぶことに専念した。
そして囲まれないように気をつけつつ直線状を意識して飛び続けた結果、それを追いかけるクローン重騎兵も無意識的に一つの直線を作り出していた。
そしてそれこそルミナールが狙っていた状況である。
ルミナールはそれを確認して即座に反転し、高機動ユニットを更に加速させ先頭のクローン重騎兵に突っ込み
「バンカースマッシャー!」
超高速に更に高速移動の速度がプラスされた大威力の一撃を放った。
そしてそれを受けたクローン重騎兵は後続の者たちを巻き込んで吹き飛ばされていく。
「これで終わりだよ」
そこにルミナールはありったけのアームドフォートを打ち込んだ。
~戦場を彩るは七色の羽~
ニレッドは混乱に乗じて敵の指揮系統を破壊することに専念していた。
眼帯越しでも遠くを見渡すことのできるニレッドは戦場を見渡す。
そして直感を信じて敵に目星をつける。
「それっぽければいいんですよ。こういうのは」
ニレッドは直感が当たっても当たらなくてもいいやと思いつつ翼の色を七色に変えていく。
それはニレッドのユーベルコード『彩翼矢砲』、90本の炎,氷,雷,風,土,聖,闇の7属性を纏わせた羽根を放つ技だった。
「これやると翼の色が酷いことになるので嫌なんですが……仕方ないですね。くたばれ」
ニレッドは狙いを定めてその羽を飛ばす。
それに当たったクローン重騎兵たちは様々な症状に苦しめられることになる。
「あちぃあちぃぃい!!!」
ある者は全身を炎が包み
「さむ・・・っ!!」
ある者は氷付けにされた。
そして体を焦がして感電死する者や浄化されて消滅する者
「っあ・・・たすけ・・・」
ブラックホールに飲まれるように収束して消えていく者もいた。
「隊長!くそってめぇ!!!」
「どうすんだ!」
「しらねぇよ!とにかくあいつだ!」
どうやら見事にリーダーと倒していたらしい。
その事実に自分の直感って凄いなーと思いつつ。
「ああ、言い忘れていましたが。この羽根は一枚一枚に様々な属性が乗っています。一枚でも当たれば何が起こるかたまったものではないですよ!」
とリーダーの敵討ちと突っ込んでこようとするクローン重騎兵たちに対し脅しをかける。
まぁ沢山魔力を込めないとああはならないので嘘ではないが、ずっと込めているわけにも行かないので本当でもないだが初撃で見せ付けてしまえば勝手に勘違いしてくれるだろうとニレッドは考えたのだ。
そしてニレッドの狙い通り今まで見た光景と脅しを結び付けて恐怖を覚えて足をすくませるクローン重騎兵たち。
だがその中にも気骨の入ったものはいるようだ。
「やられたままで黙ってられるか!」
「そうだ元から命なんて惜しくねぇ!!!」
そうして向かってこようとするクローン重騎兵を見たニレッドは
「そういえば、捨て身で来るって行っていましたね」
と思いだしたかのように呟きオーラで自身を防御させつつ、同時に殺気を飛ばす。
それを感じて一瞬戸惑ったクローン重騎兵に対して適当に魔力を込めた羽根を放つことでその息の根を止めた。
「まだいます?」
と何事もなかったかのように聞くニレッドはクローン重騎兵たちにとって何に見えただろうか。
クローン重騎兵は背中を見せて逃げ出す者や戦意を喪失してしまう者で溢れる状況となっており、もうニレッドに敵意を向けている敵は周辺にはいなかった。
もう自分に迫ってくる者がいないと悟ったニレッドは次の獲物を適当に探り当て、そこに飛んでいく。
そして再び恐怖の羽根によってリーダーを撃破し指揮系統を順当に破壊していくのだった。
~乗り越えるべきは自分の心~
「うわぁ・・・なんでこんなことになっているのでしょう」
リューインは自分の現在の状況に困惑していた。
他の猟兵の後に続いていると思っていたらいつの間にか戦艦の近くに一人でいたのだ。
慌てて戦艦の内部に潜入して今はじっと機材の物陰に潜伏している。
「必死になって武器を振り回して走っていたことは覚えていますが・・・」
リューインは一先ずそこでじっと息を潜めることにした。
そうしてどれくらい時間が経っただろうか。
廊下を伝ってクローン重騎兵たちが迎撃に戦艦から出撃していくのを何回か確認しつつリューインはこのままでいいのかと考える。
時間稼ぎはきっと他の猟兵がやってくれるだろう。
合図が来たら逃げればいいただそれでいいのだろうか。
リューインは作戦が始まる前のことを思い出す。
初任務で泣きべそをかいていた自分をたぶん励ましてくれたのであろう尾崎。
戦場での心得を教えてくれた楠瀬やアリア。
思い返していると様々な爆発音や怒声、あるいは悲鳴が聞こえてくるようになる。
そこからリューインは仲間たちが善戦しているのだと分かった。
「そう・・・ですよね」
皆頑張って戦っているのだ。
「一人じゃない、皆さんがいるんです」
そしてリューインは立ち上がる。
自分ではたいした役に立たないかもしれないがそれでもいいのだ。
かつて憧れたリューインの理想と違くていい。
大事なのは精一杯戦うことだ。仲間たちの隣に自分が誇りを持って立てるように。
リューインは勇気を持って闘士を高めて機会をうかがう。
そして次に迎撃に出向こうと横切っていったクローン重騎兵に背後から飛び掛った。
リューインはユーベルコード『トリニティ・エンハンス』を使用して炎の魔力で自身の持つルーンソードに炎を纏わせる。
「はあああああ!!!」
咆哮と共に剣を振るう。
その一撃はクローン重騎兵の背中を深く斬り裂いた。
クローン重騎兵は倒れ込み起き上がってくる様子はない。
「僕が…やったんですね…」
気絶しているのか倒したのかは分からないが、自分の手で成し遂げたという事実はリューインに自信を与えた。
そして連絡が途絶えたクローン重騎兵を確認しに来た敵がリューインを発見して騒ぎ立てる。
「猟兵だ!戦艦内部に猟兵がいるぞ!」
そして集まってきたクローン重騎兵たちが銃口をこちらに向ける。
だがリューインは自身に向けられる銃口に構わず突撃した。
「敵の武器は射撃だから怯まずに近づけばいい・・・!」
それは楠瀬とアリアから聞いていた心得という名の対処法だ。
「なにっ!?」
そしてそのまま相手のビームライフルを狙って斬り落とす。
武装を失ったクローン重騎兵はもう恐れるものではない。
リューインは無防備になったクローン重騎兵を倒しその勢いで他の敵も撃破していくのだった。
~戦場で唯一の遊び場~
尾崎はその手に黒い拳銃を遊ばせながらこの戦場の中を散歩するかのようには歩いていた。
「おい!居たっ!」
―――パァン―――
「猟へっ!」
―――パァン―――
「っ!」
―――パァン―――
最後の兵士は口を開けた瞬間にはもう眉間を打ち抜かれていた。
クローン重騎兵が尾崎を見つけビームライフルを向けるよりも早くその拳銃は火を吹く。
「ほんとアンタたちっておーんなじことしか言わないしぃ~つまんないですぅ」
つまらない、そう言いながらケラケラ笑う尾崎の真意は誰にも分からない。
笑い続けながら歩く尾崎だったが唐突に足を止める。
すると前をビームが通過していった。
ビームが飛んできた方を見るとこちらに銃口を向けているクローン重騎兵が一人。
「その手の武器を降ろせ!さもなくば撃つぞ」
これは初めての展開だった。
「あはっ、いいですよぅ~そういうの~」
クローン重騎兵も捕虜という概念があったのかと感心しつつ、尾崎はそれでも黒い拳銃を人差し指の上でくるくる回していた。
そして先に痺れを切らしたのはクローン重騎兵。
その指先に力を込めてビームを撃とうするより早く
「これ、見える~ぅ?」
茶化すような声が聞こえそのクローン重騎兵は引き金を引くことなく倒れ伏した。
成したのは尾崎のユーベルコード『拳銃早打ち』によるクイックドロウでありおおよそ0.05秒程度の速射である。
しかもそれは尾崎の洗礼された技術によりさらに加速されていた。
尾崎はその後も自身に気付いたクローン重騎兵のみを射殺していった。
「おい、どうした!誰にやられた!」
「どこから撃たれてるんだ!」
各所でそういう声が上がるのを見ながらケラケラ笑い歩いていく。
銃弾は消耗品であるが尾崎にその心配はない。
なぜなら尾崎は同じ拳銃を沢山所持していたためだ。
今どの拳銃を使っているのかは分からないが圧倒的速さの前に弾切れという概念はそこにはなかった。
そして尾崎の次の玩具はまだ自身の接近に気付いていない前方のクローン重騎兵の一団。
銃はもういいかと尾崎は次にユーベルコード『ナイフいっぱい☆』により19本のナイフを浮遊させ、その状態で彼らに話しかける。
「当たると痛いですよ~ぅ?」
その言葉を聞いて振り向いたクローン重騎兵に尾崎が放ったナイフが刺さる。
そのナイフは明らかに致命傷ではないが、刺さったクローン重騎兵は数秒も経たないうちに苦しみだし泡を吹いて倒れる。
「残念でしたぁ~ちゃーんと投げる前に毒を塗ってまぁす!!」
その言葉に身を強張らせて1歩2歩後ずさるクローン重騎兵を見て
「意思は有りそうですかね~ぇ?」
とクローンの重騎兵が少なくとも恐怖という意思を持っていることを確認し、尾崎はナイフを放出するのだった。
~生みだされるは大量破壊兵器~
時は少し遡り、エミリーが8人の突撃を見送ってから始まる。
エミリーはこの広々とした宇宙の中で無表情ではあるが1人興奮していた。
「……ここなら全力を出しても大丈夫」
そう何時もは被害を出さないため程ほどに抑制して戦っていたためだ。
今回は気にせずにぶっ放すことができる。
「急いでやらなきゃ」
そしてエミリーは周囲に何もないことを確認した後、
「……起動」
と小さく呟いてユーベルコード『起動、殲滅せよ機械の僕たち』を発動する。
『起動、殲滅せよ機械の僕たち』は小型の自律式浮遊砲台が85機召喚され敵と戦うという効果を持つが現在敵はいないためエミリーの周囲に待機している状態となっていた。
「……数の暴力は偉大」
続けてエミリーは自身が装備する砲台を17個複製するユーベルコード『Duplication』を使用する。
これにより85機の自律式浮遊砲台がそれぞれ複製されていき最終的に1530機の自律式浮遊砲台がその場に出現する。
これだけ出せば十分優位に戦うことができるだろう。
だが数の暴力はここで終わりではなかった。
「…兵士たち来なさい」
発動されたのはユーベルコード『Army of Machine』、今まで召喚してきた武器の三乗分の量産品を作り出すものだった。
1530機の自律式浮遊砲台がその場にどんどん量産されて増えていく。
この量産品はエミリーの300m弱しか移動できないため、連結して外へ外へと押し出していく。
「……時間がかかるのが課題」
この工程に一番時間がかかるのだ。
そして生み出されるものが敵の視界に入らないとは限らずこの段階で逃げられてしまったら元も子もない。
だから6人には時間を稼ぐように伝えたのだ。
量産を始めてから5分と経っていないがせっせと量産しているだけなので凄く長く感じる。
「……もう終わってたらどうしよう」
エミリーはこんなに時間がかかっていて敵が残っているかの心配をしていた。
時間を稼いで欲しいとは言ったが残しておいて欲しいとは言っていなかったのだ。
「まぁ…撃てればいっか」
しばらく逡巡していたが結局その結論に落ち着くのだった。
そして数十分が経ち量産が終わる。
最終的に自律式浮遊砲台は合計3581578530機へと増えていた。ちょっと意味がわからない。
「よし…」
と意気込んだ後にエミリーはその砲台を連結させていく。
出来上がったのは、直径6キロメートルの巨大な砲台が35機。そして、それと比べたら小さいが直径100メートルはあるであろう砲台。本当に意味がわからない。
そしてエミリーはユーベルコード『最終攻撃命令「ChordΩ」』の起動準備に入る。
35+1機の巨大な砲台が90秒間のエネルギーチャージを始める。
「よし」
チャージが完了したのを確認してからエミリーは合図のために追加で作った100メートルの砲台を斜め上に向けて発射した。
●あっけなき終幕
戦場の上空を一筋の閃光が走る。
「合図ですね、となれば早々に離脱を開始しましょう」
それを見た楠瀬は近づいてきていたクローン重騎兵を打ち抜くと周囲を確認する。
各猟兵たちも同様に確認したらしく離脱を開始していた。
這うように戦艦から出てきたリューインをアリアが迎えに行っているのも確認できた。
ならば逃げるだけだ。
「多少の目くらましになればいいけど」
フィオリナは火と水の魔術によって水蒸気を発生させ風によって煙幕のように放つ。
8人の猟兵たちはそれに乗じて追っ手から放たれるビームを掻い潜りながらエミリーの下へと離脱していく。
そしてエミリーに近づいていくと次第にその有り得ない大きさの砲台が目に入った。
「うそぉ・・・」
誰かがそう漏らすのも無理はない、それは半端ない威圧感を放っているのだ。
いつの間にか追っ手のビームはやんでおり、後ろを振り返るとクローン重騎兵たちは必死に逆走していた。
「ん、おかえり」
エミリーが全員を出迎え、そして終幕の一撃が放たれる。
「わたしのすべてを使った一撃……ChordΩ発射」
その言葉と共に35機の巨大砲台から放たれた閃光があたり一帯すべてを飲み込んだ―――――
やがて閃光が収束していく。
「疲れた」
全てが終わりエミリーはそう呟いた。
呆気に取られていた猟兵たちもその言葉でトリップから戻ってくる。
「凄いですエミリーちゃん♪」
アリアは速攻でエミリーに抱きついて頭をなで繰り回していた。
「とりあえず確認に行きましょうか」
「私も行くよ」
「では私も行きます」
「ナオちゃんも行きますぅ」
楠瀬とルミナール、ニレッド、尾崎は残党が残っていないかを確認しにいく。
「ボクも時間をかければあれくらいできるよ!」
「そう?じゃあ帰ったら特訓ね」
負けず嫌いのフォルセティは張り合い、フィオリナはそれに答える。
「僕もあれくらいできたら・・・」
リューインは憧れと実家への思いをはせていた。
その後、出向いた4人が戻ってきて敵の殲滅を確認したと告げる。
これにより、9人の猟兵たちによる再集結した防衛ラインの壊滅は達成されたのだった。
大成功
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