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銀河帝国攻略戦⑬~悪夢の海を漂う者たち

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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「皆様の活躍により戦況はこちらの優位に進んでおります。ひとまずはお疲れさまでした」
 労いの言葉と共に猟兵たちの前に現れたのはアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)だった。アマータは労いの言葉の後も話があると続ける。
「この度、帝国の執政官兼科学技術総監ドクター・オロチが派遣した艦の残骸周辺に、『実験戦艦ガルベリオン』を秘匿する『ジャミング装置』がある事が存在する事が判明しました。宙域内に多数設置された『ジャミング装置』を破壊する事で、『実験戦艦ガルベリオン』を発見する事が可能となります。ジャミング装置の防衛機構を突破し、ジャミング装置を破壊してください。この装置を破壊しなければドクター・オロチの元へ辿り着くことはできません」
 しかしこのジャミング装置には問題がある、とアマータは続ける。
「ジャミング装置に近づくと、装置の防衛機能が発動します。防衛機能は『近づいた対象のトラウマとなる事件などを再現し、対象の心を怯ませる』というものです。心が怯んでしまうと、その度合いに応じてジャミング装置のある場所から離れてしまいます。つまり、強い心で『過去のトラウマ』を克服しなければ、ジャミング装置を破壊できる距離まで近づく事はできません。様々な過去を持つ猟兵の皆様には脅威となる障害でしょう。ですが当機は信じております。皆様はそんな過去をも跳ね飛ばす強い心を持った方々だと」
 アマータは強く、強く手を握りしめ猟兵たちの目を見る。
「ドクター・オロチを倒すため、この戦争を早期終結に導くためお辛いでしょうが皆様のお力をお貸しください」
 最後にアマータは深々と頭を下げた。


灰色幽霊
 どうも灰色幽霊です。
 4本目の戦争シナリオになります。
 れっつトラウマリプレイ!

 このシナリオでは、ドクター・オロチの精神攻撃を乗り越えて、ジャミング装置を破壊します。
 ⑪を制圧する前に、充分な数のジャミング装置を破壊できなかった場合、この戦争で『⑬⑱⑲㉒㉖』を制圧する事が不可能になります。
 プレイングでは『克服すべき過去』を説明した上で、それをどのように乗り越えるかを明記してください。
『克服すべき過去』の内容が、ドクター・オロチの精神攻撃に相応しい詳細で悪辣な内容である程、採用されやすくなります。
 勿論、乗り越える事が出来なければ失敗判定になるので、バランス良く配分してください。

 このシナリオには連携要素は無く、個別のリプレイとして返却されます(1人につき、ジャミング装置を1つ破壊できます)。
 『克服すべき過去』が共通する(兄弟姉妹恋人その他)場合に関しては、プレイング次第で、同時解決も可能かもしれません。
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第1章 冒険 『ジャミング装置を破壊せよ』

POW   :    強い意志で、精神攻撃に耐えきって、ジャミング装置を破壊する

SPD   :    精神攻撃から逃げきって脱出、ジャミング装置を破壊する

WIZ   :    精神攻撃に対する解決策を思いつき、ジャミング装置を破壊する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 無事ジャミング装置を発見した猟兵たち。
 彼らは装置を破壊するため、自身の身へと刻まれた悪夢の海へと沈んでいく。
 
ナハト・ダァト
『克服すべき過去』
幾度も神隠しに会い
自らが何処から来て
どういう存在だったのかすら思い出せない事

何も無い、何も覚えていない事の恐怖

しかし、思い出す
六ノ叡智
それは希望を届ける力
自らに振るえば
助けた患者、今の周囲にいる仲間からが医者である自分にかける期待を思い出す

確かニ、何も覚えていないことは辛いヨ
でもネ、それが先へ進むことを諦めルどんな理由になるんだイ?
ならないサ

私ニ期待する者が居る限リ、
私は決して折れること無く医者である自らニ誇りを持とウ

それガ、今の私なのだかラ

※アドリブ歓迎



●彷徨う聖泥の医師

 ここはどこだろう。
 わたしはだれだろう。

 その光を宿す黒い塊は今日も真っ黒な闇の中を流離う。
 ナハト・ダァト(聖泥・f01760)は幾度目か既に分からぬ神隠しと呼ばれる世界間転移に巻き込まれ姿を消す。次の世界はどんな世界か……。揺蕩うその手には何もなく、ナハトの内には積った想いも無い。

 ナハトの感じるそれは何も無い、何も覚えていない事への恐怖。自分という存在が無に帰す、そんな不安を常に抱きながらナハトは揺蕩い続ける。異形の身でありながら光を宿し生まれて来てしまたが故に。ナハトは独り世界を渡る。自分自身の意思に関わらず世界を巡る。


 ―――これは過去、変えようがない自身の過去。

 しかし闇の中でナハトは思い出す、自身に宿る光の一つを。【六ノ叡智・美麗】と呼ばれるその光は希望を見届ける力。その光がナハト自身を包み込みナハト自身に希望を届ける。
 内に湧き上がるのは猟兵となり出会った仲間たちの顔。その仲間たちが医師となり人を助け続けるナハトにかけ続ける期待。もう光を宿す異形は独りではない。仲間がいる。信頼し、共に歩む仲間たちがいる。
「確かニ、何も覚えていないことは辛いヨ」
 だがそれは過去であり今ではない。
「でもネ、それが先へ進むことを諦めルどんな理由になるんだイ?」
 振り返った先に道はなくとも目の前にまだ道は続いている。
「ならないサ」
 ナハトから溢れ出る六ノ叡智の光が周囲の闇を照らしていく。

 闇が晴れたその先には見慣れぬ何かの装置。これがジャミング装置だろう。
「私ニ期待する者が居る限リ、私は決して折れること無く医者である自らニ誇りを持とウ」
 ナハトの周囲に深淵から召喚された触腕たちが現れる。ジャミング装置へと歩を進めるナハトに連れ従う触腕たちがその身をくねらせながら破壊のタイミングを今か今かと待ちわびる。
「それガ、今の私なのだかラ」
 触腕から放たれる無数の攻撃がジャミング装置を木っ端微塵に破壊する。



 ―――聖泥の医者は歩み続ける。周りに期待してくれる仲間がいる限り。その身には沢山の想いが詰まっている。もう彼は独りじゃない。

成功 🔵​🔵​🔴​

エルネスト・ポラリス
まーた、悪趣味な仕掛けが来ましたね……。

克服すべき過去ですか。
1個思い当たるのはありますね。
ホラ、私人狼ですから。
満月の夜には、どうにも我を忘れてしまいますから、家の地下牢に閉じ込めておいてもらうのが昔からの習慣でした。
けど、それをよく知らなかった妹がある夜鍵を開けてしまって……ええ、命を奪わないで済んだだけ、幸運だったのでしょう。

で、トラウマ再現? 当時のあの子に罵倒でもされるんですかね、私。
……そんなこと、絶対にあの子は言わないから。
誰も責めてくれないから、剣を握って、鳥兜の毒を飲んでまで戦うんだよ、僕は。

砕けろ、鉄くず。
病も、狂気も、後悔も。
僕が向き合うべきなのは、お前じゃあない!!



●人狼故の過ち

 ダークセーヴァーのとある村。その内の一軒の地下室にエルネスト・ポラリス(いつか満月の下で・f00066)の姿はあった。過去の姿故今より幼いがそれは確実にエルネスト本人だった。満月の夜、人狼であるエルネストがこの地下室に閉じ込められるのはいつものこと。家族たちも知っている。だからエルネストのどんな声が漏れてきても家族たちは決して重い扉を開かない。満月の夜が終わるまでは。
 いつもだったらそうだった。だが今夜はそうではなかった。だからこそエルネストはこの夜を悔やむのだ。

 重い扉が音を立てて開かれる。そこから顔を出すのはエルネストの妹。習慣など理解をしていない妹は苦しむ兄の声が聞こえる扉を開けてしまった。その優しさが兄をこれから苦しめることになるとは知らず……。
 人狼病の発作に苦しみ我を忘れているエルネストにとってこの部屋に現れた何者かは一時苦しみから逃れられるための獲物に過ぎない。それを妹だと認識する前にエルネストだった錆色の大きな狼は彼女の首元に牙を剥ける。


「これを見せて私をどうしようと言うんでしょうね。当時のあの子に罵倒でもされるんですかね、私」
 過去の己の所業を見せつけられたエルネストは悪夢の海で独り呟く。しかしエルネストは知っている。あの子は絶対にそんなことを言ってはくれない。どうして、とエルネスト自身を責めてはくれないのだ。故に今もエルネストの前にあの子は現れない。だからこそエルネストは戦うのだ。剣を握って、鳥兜の毒を飲んで人狼の暴走を抑えて止まることなく戦うのだ。

 闇の中でエルネストは故郷を出る際に送られたイーデム・ウィンクルムを引きぬく。この悪夢を終わらせるために。
「砕けろ、鉄くず。病も、狂気も、後悔も。僕が向き合うべきなのは、お前じゃあない!!」

 振るわれたエルネストの刃は闇を切り裂きその先に鎮座するジャミング装置を両断する。
「私はまだ止まれないんです」


 ―――後悔を抱えた人狼は探し続ける。『人狼病の治療法』を。それが見つかるまで歩みは止まらぬ。

成功 🔵​🔵​🔴​

遠呂智・景明
【SPD】
これが、乗り越えるべき過去って奴か。

目の前にゃ、昔の俺の使い手の一人。
俺を捨てた糞野郎。

「何故お前が遺っている、大蛇に呪われた忌まわしき妖刀。ヒトの形を得てまで、血が欲しいのか」

違う。俺はただ、お前らが、優れた持ち手だったことを証明したくて。

「穢らわしい。醜い血で汚れた刀め。」

違う!
無駄だと分かっていても、その幻影を斬り裂かずにはいられなかった。
その先を聞けば、きっと折れてしまう。
そしてそのまま【風林火陰山雷 火の如く】を発動し、幻影を振り切り身を軋ませながら駆け抜ける。

割り切った、過去にしたと思ってたんだがな。
自分への情けなさ、怒りをのせてジャミング装置を破壊する。

くそったれ。



●大蛇切 景明と言う銘

「何故お前が遺っている、大蛇に呪われた忌まわしき妖刀。ヒトの形を得てまで、血が欲しいのか」
 悪夢の海に落ちた遠呂智・景明(さむらいおろち・f00220)の前に立つ男はかつての担い手の一人。自身を捨てた男だ。
「某が死んだのはお前のせいだ。お前の様な妖刀が某の手元に来たのがそもそもの間違い。他の主もそうして殺し、お前自身はぬくぬくとヒトの形を得て生きている。それは到底許されることではない。某たちはお前のために死んだのではないのだから」
 男は景明の口を開かせることなく捲くし立てる。男の言葉は一方的な感情。論理的思考もなにもあったものではない。だが彼が景明の主であったことは紛れもない事実でありどんな言葉であろうと主の言葉は無視できない。男の罵声を浴びせられる景明の肩は微かに震えていた。
「ち、違う。俺はお前らが優れた持ち手だって証明したくて―――」
「証明?なぜお前のような妖刀に証明されねばならんのだ。思い上がるな」
 刀同士の斬り合いならば景明もいくらでも受けて立とう。しかし過去と言う幻影から放たれる言葉の刃は容赦なく景明の心を切り刻んでいく。どの主よりも長く生きてしまった罪悪感と言う名の鎖が大蛇切 景明の刀身を縛りつける。
「穢らわしい。醜い血で汚れた刀め」
「―――ッ!」
 男の口が未だ何か言葉を紡ごうとする中、景明は震えの止まらぬその身に燃え盛る火焔を纏い闇を蹴る。主だった男の幻影を居合の一刀で斬り伏せ振り切り進む。男の身体は塵となって消えるがあの先の言葉を聞いてしまったら景明はおそらく耐えることができなかっただろう。【風林火陰山雷 火の如く】の代償か、はたまた景明自身の心の影響か。その刀身と身体を軋ませながら闇の中を駆け抜ける。

 闇を振り切り駆け抜けた先には景明を苦しめたジャミング装置が。八つ当たりにはちょうどいい相手だ。割り切ったと思っていた過去を掘り返されとここまで動揺するものか。景明は自分への情けなさ、怒りをのせてジャミング装置へと大上段から刀を振り降ろしジャミング装置を焼き斬るべく炎を纏った斬撃を放つ。
「―――くそったれ」

 ―――『大蛇切 景明』と誰かが銘づけた妖刀は過去も後悔もその鞘に納めて今日も敵を斬り続ける。主たちの価値を証明するために。

成功 🔵​🔵​🔴​

デナイル・ヒステリカル
どういった効果が発揮されるのか、事前に知れるのならば攻略の計画を建てることも容易です。
しかし心的外傷と向き合うのは辛いことであると理解しています。

だからこの依頼は僕が行きます。
プログラムに心はありませんから。

トラウマ
自分が何者なのか分からなくなる
プログラムである筈の自分を、自分だと認識できない、誕生した当初の状態を再現される
アイデンティティー崩壊
現在も結論の出ない思考に解決方法は無い

解決方法
無重力空間をジャミング装置まで慣性飛行するコースを取り、最初に触れた装置をUCの大電流で焼き切るプログラムを走らせておく

僕は今、猟兵としてここに存在しています
この程度の些細な悩みで足を止める事は有り得ません



●ロジックエラー

 心理的外傷、所謂トラウマ。それは人を苦しませるモノだと言うことをデナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)は十二分に理解してたしだからこそジャミング装置の破壊はバーチャルキャラクターである自分が相応しい、そう言ってデナイルは立候補した。
「プログラムに心はありませんから」
 悪夢の海に呑みこまれる前のデナイルは呟いた。まるで自分に言い聞かせるが如く。

 闇の中でデナイルは自身の誕生を再現されていた。それはすなわちただのプログラムに戻されると言うこと。自己認識などできるはずがなくただのプログラムに自分はない。本当の自分が分からない、そもそも本当の自分とは?自分は案内役サンプルキャラクターのランダム生成された一体。であれば自分と言う存在など初めからいないのではないか?このアルゴリズムに解はない。思考のループから抜け出せず処理は終わらない。デナイルは闇の中で活動が停止する。
「……」
 しかしこうなることを想定してたデナイルの身体は思考のループを強制終了させ動き出す。意識は未だ戻らぬまま。
 悪夢の海に捕らわれる前にジャミング装置までのコース取りは行っている。その座標も既にプログラムに打ち込み済み。デナイルの身体はその座標から無重力の闇の中慣性飛行を行いジャミング装置へと進んでいく。全てはプログラムに従って。
 意識のないデナイルの身体がジャミング装置に到達。闇の中とはいえ見えないだけでジャミング装置は実在する。そこにデナイルが接触したことによりプログラムの処理が進む。
「『PSI回路過剰稼働。ターゲット選定。発動』」
 機械的な口調で唱えられる詠唱と共にデナイル自身のPSI回路をオーバーロードさせ、それにより発生する大電流によりジャミング装置の回路もまた焼き切れる。するとそれに伴い闇も晴れ、デナイルの意識が浮上する。
「……想定通りでしたね」
 ジャミング装置の停止を確認したデナイルは踵を返しジャミング装置を後にする。
「僕は今、猟兵としてここに存在しています。この程度の些細な悩みで足を止める事は有り得ません」


 ―――プログラムとして作られた青年は歩き続ける。論理と思考の狭間を彷徨い自己と言う存在について演算しながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
防衛機構は忌まわしき過去を想起する…
私には記憶がありませんが、猟兵としての任務のなかでそれには困らなくなりました

ダークセイヴァーで、魔女と蔑まれ村人に虐げられ幼児退行を起こした女性、その息子がオブリビオンに力を与えられ村人に復讐を行おうとしました。
その息子を私は殺しました

UDCアースで邪神の因子をもつ少女と出会いました。邪教集団からの護衛任務の中で騎士としてお守りすると誓いました
邪神として覚醒した少女を私は殺しました

サムライエンパイアで大火に飲まれた人々を救助するために多くの命を見捨てました

私は彼らの涙を忘れません。持ち込んだ紫苑の花を捧げて装置の破壊に向かいます
(花言葉・貴方を忘れない)



●紛い物の騎士の葛藤

 過去の記憶のない者でもこれからのことは記憶する。猟兵になる前の記憶のないトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)ではあるが猟兵となってからの記憶はもちろん存在する。そしてそれはもちろん生易しい記憶ではない。そんな直近の過去の映像が3つ、トリテレイアの前に再生される。

 ダークセイヴァーでトリテレイアは魔女と呼ばれた女性の息子がオブリビオンの力を得て復讐を行おうとした時その息子を殺した。村の人々を守るために。

 UDCアースでは騎士として守ると誓った邪神の因子を持つ少女を殺した。邪神として覚醒してしまったがために。

 サムライエンパイアでは大火に飲まれた人々を救うためにトリアージして助けられない者たちは見捨てた。少しでも多くの人を救うために。

 復讐を止める。邪神となった少女を殺す。大のために小を切り捨てる。それらは決して間違ってはいない。むしろ正義と呼ぶ者もいるだろう。しかしだからと言ってそれを行った者が割り切り納得できるかどうかはまた別の話だ。少なくともトリテレイア自身は総てを救いたかったし救おうとした。その結果がこれだ。
 トリテレイアの左右の手に纏わりつく魔女の息子と邪神の因子を持つ少女がその足元には焼け焦げた人だった者が縋りつく。
「私は貴方達を救えなかったことを忘れません。許してくれとも言いません。貴方達がいたと言うことを私は忘れません」
 紛い物の騎士は纏わり縋りつく者たちを振りはらうことなくそのまま進む。闇があろうと関係ない縋りつく者たちが増えトリテレイアの足が重くなろうともその歩みが止まることはない。紛い物の騎士は固く熱い意志を持って闇を進む。

 闇の中を進んだ先にはジャミング装置が鎮座していた。気がつくと魔女の息子も邪神の因子を持つ少女も縋りつく人々もいなかった。しかしトリテレイアは彼らの流した涙を忘れない。装甲のどこからか紫苑の花を取り出し消えてしまった彼らに捧げる。そして振りあげられたトリテレイアの重質量大型シールドによる一撃がジャミング装置をバラバラに吹き飛ばす。
「私はこれからも人を救い続けます。それが私の騎士道ですから」


 ―――紛い物の騎士は諦めない。現実と理想の壁に阻まれても。救えなかった命を嘆きはしても誰かを救うことを諦めることは決してない。

成功 🔵​🔵​🔴​

蜂蜜院・紫髪
トラウマ【野生の死】
野生として生まれ生きる中で当然の事
狼に追われ命果てようとした時の死の恐怖
その時は恩人たるマタギの翁の銃で狼が撃たれ事なきを得たが狼への恐怖は根付いた

克服:翁が狼退治へ赴くと聞いた時に始めは怖気づいてしまい震えて待っていたが、
嫌な【勘】が去らない。【祈り】を込めても去らぬ【勘】に従い【勇気】を出して向かった先で
狼に囲まれる恩人の姿を見た時…確かな【覚悟】と共に狐火が産声を上げた。

心情:狼共の群れ…まだ怖気が走るのぅ。慣れぬものじゃな…しかしこれは…儂の初めての【恩返し】の…猟兵としての力が目覚めた時じゃの。



●野性の狐

 悪夢の海の中、紫髪は懐かしい姿に戻っていた。
 狐と狼のどちらが野性の世界で強者かと聞かれれば狼と答えるだろう。蜂蜜院・紫髪(怠惰な蜂蜜屋・f00356)もまた例に漏れずそうだった。その時の紫髪はまだただの狐。野性の掟に従い狼に追われ、餌となる寸前だった。しかし狼の牙が紫髪に届くことはなくその直前の銃声と共に狼は凶弾に倒れた。
「大丈夫か?」
 マタギの翁は紫髪に心配そうに声をかけるが狼に、死の恐怖に怯える紫髪はそれどころではない。恩人である翁へも威嚇を浴びせる。しかし翁は意に介さず撃ち取った狼の亡き骸を背負い紫髪の元を去ろうとする。紫髪もそれに気づき翁へと礼を伝えなければと思い立つ。だが今の自分に渡せる物など何もなく紫髪にできることは翁の手を舐めることくらいだった。翁もまた自身の手を舐める紫髪の頭をそっと優しく撫でた。ほんの少しだけ紫髪の怯えが消えた。

 しばらくしてマタギの翁がまた狼退治に出ると言う。野鳥程度であれば狩りについていっていた紫髪だったが今回翁自身からそれを聞かされた紫髪は怖じ気づき震えその場から動こうとしなかった。それを見た翁はにこりと笑いそっと紫髪の頭を撫でてから狼退治へと向かった。紫髪の脳裏に嫌な予感を残して。

 マタギの翁の帰りが遅い。いつもであれば既に戻ってきて顔を見せにくる時間。しかし翁は顔を出さない。震える身体を小さな勇気で動かし紫髪はマタギの翁の元へ駆けた。そこにいたのは狼の群れに囲まれる翁。

 これは過去、もちろんこの後のことは紫髪も知っている。故に今回はその時の行動をそのままトレースすればいい。つまりこの狼どもを妖狐の炎で焼き払ればいい。燃え盛る狐火を放ち狼たちを焼き払った所で周囲の闇が晴れた。

「また懐かしいものを見せてくれたのお。このおかげでまだ狼は苦手じゃ」
 晴れた闇の先を進みながら紫髪は愚痴をこぼす。その手に無数の狐火を作りながら。
「わしもあの頃よりずっと火の扱いが上手くなっとるぞ」
 紫髪の手から放たれた狐火がジャミング装置を燃やしつくす。あの日の狼たちと同じように。


 ―――狐の過去はもう過ぎた。しかし狐の足は止まらない。ゆっくりだらだら進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・エヴァンズ
生まれてからずっと幽閉されていた過去があります。
生活するのに不自由はありませんでしたが、それは単に私の力が必要故に道具として生かされていただけ。
親の顔を知らなければ友人もおりません…誰もいない、独りきり。
手も言の葉も届かず、生き物としてすら見てもらえない…ただただ寂しい。

けれど、今の私はスタートラインに立っています。
自分の足で籠から逃げ出して、皆さんに出会いました。
「今は強固な繋がりなどないでしょう…ですが、それはこれから築いていく事ができます。」
そのチャンスを、今の私はしかと掴んでおりますから。
ですから…元に戻るつもりはありません。
「寂しい籠の鳥などには、二度となりません。」
【POW】



●籠の鳥は空へ羽ばたく

 悪夢の海で今日もまたステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)は独りきりで本を読む。外界と接する時間は恩恵を与えるときと食事が運ばれてくるその時だけ。親の顔も知らず友人と呼べる存在もいない。まさしくそれは籠の鳥。餌だけ与えられ大事に大事に囲われる。それもすべてステラの力が必要だから。それ以外に理由はない。周囲にとってステラは籠の鳥でありただの道具。道具に語りかける者はなく、使うとき以外はしまわれる。
それがステラという存在のこれまでのすべて。寂しいと感じる心はあれど、それを暖めてくれるものはいない。たった独りの籠の鳥。

「ですがそれも終わりがくるのです」
 籠の中でステラは独りで立ち上がる。否、今のステラは独りではない。隣国との戦争が起こりそのどさくさに紛れステラは自分の足で籠から逃げ出した。籠の鳥は空へと飛び立ったのだ。空で出会ったのは猟兵という仲間たち。
「今は強固な繋がりなどないでしょう…ですが、それはこれから築いていく事ができます」
 出会いは既に、絆は未来に。出会ったばかりのこれからもずっと一緒にいたいと思える仲間たちの顔を浮かべながらステラは天津星を手に歩を進める。
「寂しい籠の鳥などには、二度となりません」
 ステラは自身を囲う籠を打ち砕くべく天津星を振るう。音を立てて崩れ落ちる籠と共に周囲の闇が晴れていく。
「ですからあなたは邪魔なのです。私の、私たちの未来に」
闇が晴れ目の前に現れたジャミング装置を指差しそう宣言するステラ。その言葉と共に天より降り注ぐ光がジャミング装置を飲み込み破壊する。


 ―――籠の鳥は羽ばたいた。空で新たな仲間と出会いこれから未来へ進んでいく。鳥はもう独りじゃない。

成功 🔵​🔵​🔴​

シズホ・トヒソズマ
【SPD】
トラウマとはまた厄介な……ないではない、ですね。でもきっと大丈夫、なぜなら……

闇に堕ちてしまったかつての戦友、その敗北の記憶は未だに私を苛むし、また遭遇した時、勝てるかどうかという恐怖や不安もあります。ですが

トラウマに捕まりそうなところで、UCで出した装着者の分身に繋いだ糸での【ロープワーク】で引っ張って貰い離れます

今の私には、世界は違えど共に戦ってくれる朋、そして同じ戦場で共にいる猟兵の皆様がいる!
皆様がいるのなら、私は何にだって立ち向かえる!
そして、装着者の住まうこの宇宙の為、私のトラウマごときに屈するわけにはいかないのです!

最後は自分、分身、ユングフラウの同時攻撃で装置を破壊



●ヒーローだから

 悪夢の海に飲み込まれたシズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)の前に現れたのは闇に堕ちたかつての戦友。シズホの身体が敗北の記憶を思い出し硬直する。この相手と戦い自分は勝てるのか?そもそも勝負になるのだろうか?シズホの額に嫌な汗が流れる。戦友は一歩ずつゆっくりとシズホを捕らえるべく近づいてくる。しかしシズホの装着者の身体はピクリとも動かず声も出ない。
 戦友の手がシズホの首を掴み両手で絞めつける。幻影とはいえその力は本物、シズホの意識は薄れていく。薄れゆく意識の中でシズホは思い出す。今の自分には世界は違えど共に戦ってくれる朋がいること、この戦場にも数多いる猟兵たち。彼らがいるならシズホは戦友にだって立ちむかえる。そしてヒーローたる自分は装着者の住まうこの宇宙の為にトラウマごときに屈するわけはいけないことを。
「暫しお目覚め下さい、共に在りし着用者!」
 絞り出されたシズホの叫びに呼応し現れるのはもう一人の着用者。彼女はシズホから伸びる糸を掴み闇の外へと駆け抜けていく。
「またいつか今度こそ決着をつけましょう」
 闇の外に飛び出した分身に引かれ、シズホの身体は宙を舞う。幻影に捕まれた首は多少痛むがこれは戦友への恐怖を抱いてしまった自分への戒め。戦友へと別れを告げシズホは闇を抜ける。
 闇の先、ジャミング装置と相対するシズホと着用者とユングフラウ。三人の同時攻撃がジャミング装置を爆砕する。それにより闇は晴れ戦友の幻影もまた消えていく。


 ―――ヒーローは友と共に立ち上がる。自身の恐怖も乗り越えて。誰かのために今日も盾となる。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

セイス・アルファルサ
トラウマ
存在意義の崩壊。それは戦争の為に造られた人形達の戦後の話

初めは戦後の世界にも僕らの居場所は造られた。功労者として受け入れられた。だけど…戦争の為に造られたプログラムは戦争を求め暴走を始めた。一人、また一人戦争を求め狂う同胞達。故にセイス達は処分される事となった。
平和の世界におけるセイス達の存在意義。それが分からず崩壊していく。平和を求め戦争を求め自己矛盾の果てに狂いゆく

克服

"僕"はセイスに僕としての生き方を教えてくれた。僕は人形だ。だけど意志ある人形だ。矛盾の果てに生まれた魂を否定せず生きていくんだ。

だから…こんなもので"僕"/僕らの道を遮れると思うなよ

アドリブ、連携大歓迎



●エンドロールの後で

 悪夢の海でセイスは過去を視る。それはセイスの人形としての存在意義が失われた過去。

 戦争のために作られた人形たち。戦争の終結に伴い人形たちは役目を終えた。戦争の功労者たる人形たちはその功績を称えられ居場所を貰った。誰とも争わずにすむ場所を。一日、また一日とその場所で過ごす人形たち。しかし人形たちは常に物足りなさを感じていた。それがなんなのか人形たちは分からず平和な場所で日々を過ごす。歯車を一つ狂わせたまま。
 切欠は些細なことだった。初めはただの言い争い。しかしつい手が出てしまった。暴力により相手を制圧するということ。それは人形たちに組み込まれた戦争を戦う為のプログラム。言い争いを始めた一体の人形は相手を殴り壊した。跡形もなく粉々に。さらなる争いを求め手当たり次第に暴れるその人形。止めに入る人形もまた次第に暴力という力に飲み込まれていく。
平和を生むために作られた人形は平和な世界で戦争を求めて争いを始める。そんな矛盾を抱えて狂う人形たちへ無慈悲に下される廃棄処分。人形たちの役目は終わった。

「だけど僕は出会ったんだ」
 闇の中で自身の過去を見せつけられたセイス。しかしセイスの内には消えぬ一筋の光。
廃棄処分を下されたセイスが廃棄場で出会った"僕"。"僕"はセイスに生き方を教えた。人形であっても意思は存在する。悲しき矛盾の果てに生まれた魂だったとしてもそれを否定せずセイスは生きる。それが"僕"に教えられたことだから。
 セイスの内から溢れる光が周囲の闇を払う。目の前に広がる廃棄場もまた消失する。
「だから…こんなもので"僕"/僕らの道を遮れると思うなよ」
 セイスの怒りに呼応し機械竜イダーデが飛翔する。
「解錠コード【Viagem da morte】封印を解くよ、idade」
『error…このコードは許可されれrrr…強制申請了解』
 セイスから放たれる強制開錠コード。これによりイダーデの身にタキオン粒子が循環しイダーデの身体が光り輝く。セイスがセイスたる理由、コード【Viagem da morte】このためコードのためにセイスは生み出された。セイスの指示に従い光放つイダーデの突進がジャミング装置を破壊する。

 ―――人形は矛盾の果てに生まれた魂を抱え生きる。僕が"僕"らしくあるために。

成功 🔵​🔵​🔴​

エルス・クロウディス
●POW
似たような現象を、アルダワの依頼で体験したっけ。
あぁ、思い返してみれば、当然だったのか。

「そうだよな、〝俺たち〟の恐怖と言えば、お前たちだよな」
天高く現れるのは、全長100mを優に越える、12体のドラゴン。
あの時は、出力が足りなかったかな?
いや、〝あいつら〟が出てこない分、それでもましなんだろうな。

体は、震える。
当然のように。
今目に映る世界中のどこを探しても、そんな記録はないだろうけれど。
それでも俺が、この魂が、あの絶望を覚えている。
砕ける街も、傷つく人々も。

あぁ、けれど――――

「それでも、一度は通った道だ」

故に、越えられない道理はない。
希望を胸に抱く限り、この足は前に出るのだから。



●竜と青年

 悪夢の海に落ちたエルス・クロウディス(昔日の残響・f11252)の目の前に立ちふさがるのは全長100mを超える12体のドラゴン。アルダワで類似事象を体験していエルスは少しばかり冷静さを取り戻しドラゴンたちに向かい直す。
「そうだよな、〝俺たち〟の恐怖と言えば、お前たちだよな」
 アルダワで現れたのは1体のドラゴン。しかし今回は12体。それだけジャミング装置の防衛機構が優秀だということだろう。それでもエルスの真に恐れる〝あいつら〟が出てこない分まだマシなのだろう。
 マシとはいえ眼前に立ちふさがるのはエルスの恐怖の対象。その身体は当然のように震える。この世界中のどこを探しても存在しないエルスの内に宿る記録。エルスの魂の奥深くに刻まれた絶望の記憶。竜たちに蹂躙され砕ける街、傷つく人々。そして〝彼女〟。そんな過去の傷がエルスの身体を硬直させる。

「あぁ、だけど―――」
 強張る身体でエルスはウィルをそっとひと撫で。少しだけ身体が楽になった。
「それでも、一度は通った道だ」
 故に、越えられない道理はない。いつの間にか握っていた骸装:闇套をウィルと組み合わせその姿を骸装:劉迅へと変貌させる。ウィルと闇套の複合形態の一つであるそれは人機一体の全身武装。竜の爪のごとき刃をその身に宿す。
「じゃあな、ドラゴン共」
 エルスの胸に希望という灯がある限り、その足は止まらない。一歩、また一歩と踏み出される足は徐々に加速しドラゴンたちの元へと突貫する。巨大なドラゴンと言えども所詮は幻。勇気をもって踏み出したエルスの進軍を止められるはずもなく12体のドラゴンたちは劉迅の刃に引き裂かれる。それと同時に周囲を覆っていた闇も晴れジャミング装置がエルス目の前に現れる。
「嫌なもん見せてくれたな」
 防衛機構を失ったジャミング装置などただの置物にすぎない。ジャミング装置は紙切れの如くエルスと劉迅の刃で細切れになりそれを見届けたエルスはウィルと闇套の複合を解きお疲れ様とウィルを撫でた。


 ―――青年と竜は前を見る。希望という灯をその胸に秘め。今日も止まらず進み続ける。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユース・アルビトラートル
 トラウマ……立場上、「無数に」人の悪意に触れてきたね。酷いと平然と人を殺したり、騙したり。何なら惨殺死体だって見てきたよ。ボク個人としては吐気がするほど気分が悪いさ。これでもまだ15歳だもん。

 でも、裁判官としては克服したかは別として慣れたよ。そういう物事を論理則に照らして見つめる【勇気】なら多少なりともある。実際、今この場で恐怖する理由自体は無いからね。

 しかし、念には念を入れておこう。自分にユーベルコードを使おうか。ジャミング装置のもとへ向かい、壊せと。恐怖を俯瞰して考えつつ、体が動くようにじたばたしていたら、いつの間にか壊れているかもね。

……それにしたって悪趣味すぎないかな、この装置。



●法の番人であるために

 悪夢の海に落ちたユース・アルビトラートル(法の声の代弁者・f03058)の目の前にはかつてユース自身が裁いた者、その事件で命を奪われた者、そして事件の加害者、被害者の家族たちの影が無数に浮かび上がる。彼らは皆ユースを責めたてる。
『罪を裁くとは何様だ』『お前のせいだ』『返して』『人殺し』『悪魔』
耳を覆って無視してしまいたくなるその怨嗟をユースは拳を握りしめ聞き届ける。これは聞かなければいけないことだと自身に言い聞かせ。裁判官という立場に立つ以上非難も罵倒も受ける覚悟はできているし人の悪意には多く触れてきた。しかしユースはまだ15歳。少年と言ってもいい年齢の彼の心は心無い言葉に蝕まれる。
 だが同時に裁判官という立場はユースが立ち止まることを許さない。現状を論理的に把握し影の怨嗟の声に客観性が欠けている事実を理解する。これでは証言足りえない。であれば恐怖を抱く理由はない。ジャミング装置の破壊に移る。
「念には念を入れておこうか」
 ユースは自身の身体に【法廷警察権】を使用する。対象に命令を強制させるこの魔術。対象はユース自身。命令はジャミング装置の破壊。これでユースの意思にかかわらずユースの身体はジャミング装置を壊すために動き続ける。目の前になにが現れようと。

 一歩前へ進む。
現れたのはユースが死刑を言い渡した男。その首が目の前で斬り落とされる。
 
二歩前へ進む。
現れたのは痴情のもつれで殺された女性の死体。さぞ美人だったであろうその顔は潰れてわからない。

 三歩前へ進む。
現れたのはぬいぐるみを抱いた少女。父を返せと泣いてせがむ。その父は少女のためにぬいぐるみを盗んでいた。窃盗常習犯でユースが懲役を言い渡した。

 四歩前へ進む。
 現れたのは息子を殺された母親。なぜ犯人が死刑じゃないのかと叫んでいる。犯人はまだ未成年だった。

 五歩前へ進む。
 体が何かに当たった。命令に従い法典を振り下ろす。何かが壊れたようだ。

 ユースの意識が戻ったときジャミング装置は壊れ周囲の闇も晴れていた。視界にもう影は見えない。ユースは無事にジャミング装置の破壊に成功していた。これでもう問題ないだろう。
「はぁ……それにしたって悪趣味すぎないかな、この装置」


 ―――法の番人たる少年は今日も人を裁く。それが誰かのためになるから。

成功 🔵​🔵​🔴​

北条・喜夏
見覚えのある景色。
――この後、何が起きるかは識っている。

室内に転がり込んでくるグレネード。

あたしは、彼を突き飛ばして、それに覆い被さって。はらわたと引き換えに、彼を救った、筈だった。

血溜まりの中で最後に見たのは。
あたしに近づく彼の――――頭蓋が割れる瞬間だった。


もー何度も何度も何度も夢で見たっちゅうねん。
ああそうや。アイツは結局くたばって。
忘れたくても、なかなか忘れられん。

けど、今なら、この子らが居る。――『千夜一夜の機甲旅団』。
過去を嘆いてもしゃあないやろ。――目標、十一時。
今度は間違えない、そう言うて足掻くぐらいしか。――狙撃手の伏せる家屋。
ウチらに出来る事はないんやから。――砲撃、開始!



●武装少女が零した想い

 悪夢の海で北条・喜夏(武装召喚JKよしかちゃんとはウチのことやで!・f13043)を出迎えたのは見覚えのある景色。幾度となく夢で見たあの日の光景。だから喜夏はこの後に起こることももちろん識っている。この後は窓からこの部屋にグレネードが投げ込まれるのだ。そしてもちろんこの後の喜夏自身の行動も覚えている。飛んできたグレネードの威力を最小限に抑えるために彼を突き飛ばしそれに覆いかぶさり彼を救おうとした。自身のはらわたを犠牲にして。
 腹部の焼きつく痛みをこらえ救ったはずの彼を見る。大丈夫だったと安心しようと見た彼は―――頭蓋を割られ即死していた。

「もー何度も何度も何度も夢で見たっちゅうねん」
 悪夢の中、腹部を焼け焦がした喜夏は立ちあがる。この痛みも覚えている。彼を失った悲しみも覚えている。だがそれを抱えたまま喜夏は今を生きている。
「ああそうや。アイツは結局くたばって」
 守ろうとした彼は守れず喜夏だけ生き残った。
「忘れたくても、なかなか忘れられん」
 夢で見る度に枕を濡らし瞳を腫らした。

「けど、今なら、この子らが居る」
 喜夏の呼び声に答え現れる千夜一夜の装甲旅団。数多の戦車の軍勢が闇の中喜夏の背後で隊列を組む。
「過去を嘆いてもしゃあないやろ」
 目標、十一時。喜夏が指を指す。砲身が指と同じ方向を向く。
「今度は間違えない、そう言うて足掻くぐらいしか」
 標的は狙撃手が伏せる家屋。彼を狙った狙撃手はそこにいる。砲弾たちよお前たちの威力を見せてやれ。
「ウチらに出来る事はないんやから」
 砲撃、開始!振りおろされた喜夏の手に従い火を吹く数多の砲身たち。砲弾の雨が狙撃手の潜む家屋を蹂躙する。

 煙と共に闇が晴れ、現れたのは既に破壊し尽くされたジャミング装置。狙撃手の潜む家屋はジャミング装置と同じ場所に建っていた。故にジャミング装置は砲弾の雨に晒されあとかたも無く破壊された。
「なんや、あっけな」
 ジャミング装置の破壊を確認した喜夏は踵を返し元来た道を戻っていった。


 ―――後悔を抱えた武装少女は振りむきながらも前へと進む。次は絶対に助けると強い意志を持ちながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

シホ・エーデルワイス
過去のトラウマを再現し続ければ
失った記憶が取り戻せるかも?

危険は覚悟の上
私は真実を知りたい!


●過去

少女は自分にできる事を積極的に行って貢献しようとした

しかし良かれと思って勝手に準備をした事が
仲間達からは自分勝手な奴と受け止められてしまった

それにより不信感を招いた事で連携が乱れ
チームは勝てる戦いに敗北

少女は長い間
非難や陰口を浴び続けて心を病んだ


●抵抗

…確かにあの時の私は未熟で色々と知らなかった上に
張り切り過ぎて思い詰めていました

もっと自分が落ち着く必要があったと思います

でも!私が仲間を大事に想っていたのは本当です!
仲間の役に立ちたかったからがんばれました

今は一人で抱え込まない様にしています!



●過去を求める少女

 悪夢の海に沈む猟兵たちの中で一人、目的の違う者がいた。シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は自身の失われた過去を求めて自ら悪夢の海へと飛び込んだ。例えこちらを攻撃するための防衛機構だったとしてもそれで自分の過去が分かるのなら。危険は覚悟の上、それでもシホは真実が知りたかった。闇はシホの願いを知ってか知らずかシホの過去を映し出す。それが求めているものなのかは誰にもわからない。

 少女は自分にできることはなんでもしようとした。頼まれずとも率先し、なんでも一人で行ってきた。しかし少女自身は良かれと思ってやったことが周囲にもそう思われるとは限らない。勝手に行った準備は少女に自分勝手の烙印を押した。一人への不信感は不和を生み、不和が生まれては連携など到底行えるはずも無く少女達は敗北を喫した。もちろん敗北の理由を押し付けられたのはその少女。少女は非難や陰口を浴び心を病んだ。そして部屋に引きこもりずっとずっと独りぼっち。


 この一部始終を目の当たりにしたシホは記憶を一部取り戻す。そして当時を振り返る
「…確かにあの時の私は未熟で色々と知らなかった上に張り切り過ぎて思い詰めていました」
 記憶を取り戻したシホは闇の中で聖銃を構える。
「もっと自分が落ち着く必要があったと思います」
 過去は過去。当時を振り返り反省する。次はまだ未来にあるのだから。
「でも!私が仲間を大事に想っていたのは本当です!仲間の役に立ちたかったからがんばれました」
 空回りだったとしてもその気持ちは本物で。それを原動力にシホは頑張れた。だからこそ、その気持ちは今も忘れない。それがシホの原動力だから。
「今は一人で抱え込まない様にしています!」
 一人ではなくみんなで。抱え込むのではなく分かち合う。それがシホの見つけた答えだった。聖銃の放つ輝きが増していくその光が少女達の幻影と共に周囲の闇を払う。シホの決意の光で悪夢の海は消え去っていく。闇が晴れたその先にジャミング装置は鎮座する。
「だから皆を苦しめるモノはいらないんです」
 シホの構える二つの聖銃ピアとトリップの銃口がジャミング装置を捉える。
「あなたの魂に救いの余地がある事を祈ります。機械に魂があるかは分かりませんが」
 聖銃から放たれた光の精霊弾と銀の弾がジャミング装置を貫き爆発させる。
「私はもう迷いません」


 ―――過去を求める少女は記憶の扉を開いた。過去を改め決意を新たに少女はこれからも進んでいく。仲間たちと共に。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゲンジロウ・ヨハンソン
【POW】を選択。

過去か、そろそろ向き合わんといかんか。
ここで意思が折れるなら、俺はそれまでだな。
※口調は『男臭く』の方。

○克服すべき過去
彼は故郷を自らの手で焼いています。
仲間だと信じていた者たちは全てUDCであり、そのリーダー核である
ブロンゴという名の巨漢のサイボーグに騙され巨大な邪神の召喚を手伝わされた。
故郷に蔓延る「悪」のみを葬るという約束は無碍にされ、全てを贄として捧げることになる。
まだ力なき頃だった彼はその凄惨な光景、自ら生み出した災害から目を背ける。
自らに銃の引き金を引き。

○克服
傭兵として猟兵としての経験が心を強くた。
この過去から逃げないこと、凄惨な全てを見届けることで克服できます



●傷だらけ傭兵の過去

 ゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)もまた他の猟兵たちと同じく悪夢の海に捕らわれ己の過去を見せつけられていた。それはゲンジロウにとって忘れたくとも忘れられない傷を負ったあの出来事。ゲンジロウが引き金を引いたあの日のこと。
 ゲンジロウが在籍していた傭兵団。それは犯罪に片足を突っ込み各自が思い思いに好きなことを為すだけの集団だった。それでもゲンジロウは彼らを仲間だと思っていた。しかしゲンジロウは知ってしまった。彼らが人間ではなくUDCだということを。それを知ったゲンジロウはもちろんどうにかしようとした。だがその行動もまたUDCたちのリーダー格であるブロンゴと言う名の巨漢のサイボーグに見つかり逆に邪神召喚の儀式の手伝いをさせられることになる。
「心配すんな。オレらの今回の贄はここにいる悪ぃやつらだけだ。そいつらがいなくなるならお前ぇもハッピーだろ?」
 そんなブロンゴとの口約束をこの時のゲンジロウは信じてしまった。否、それに縋ろうとしただけだったのかもしれない。

 もちろんその約束が守られることはなかった。贄とされるのは悪人だけではなくこの街の人総て。約束が違う、とゲンジロウはブロンゴに詰め寄った。こんなことのために手伝ったんじゃないと叫びながら。
「ばーか、あんなもん口から出まかせに決まってんだろぉ?お前ぇはそこで見とけ。自分がしでかしたことの重大さをよ」
 ゲンジロウはブロンゴに突き飛ばされ壁に激突する。外で繰り広げられるその凄惨な光景を直視できずゲンジロウは俯く。自身が引き金を引いたこの虐殺言う名の災害から目を背けるために。その腰には愛用の一丁の銃が。その存在に気が付いたゲンジロウは銃を引き抜きその銃口をこめかみにあて震える指で引き金を引いた。


「随分と懐かしいものを見せてくれじゃねぇか」
 見せつけられた己の過去。過去の自分はその光景を直視できず引き金を引くという選択肢を選んだ。しかし今は違う。傭兵として、猟兵として数々の戦場を駆け抜けた経験がゲンジロウの心を強くした。故に今銃口が向く場所はこめかみではなく目の前に広がる虐殺の光景。幻影だとは分かっている。だからこそもう逃げない。引き抜かれたトラキュレンスライノの銃口は幻のブロンゴに向けられる。
「あばよ」
 そこから放たれた弾丸が正確にブロンゴの頭部を撃ち抜き消滅させる。
「俺はもう逃げん。過去からも何者からも」
 縋り寄って来る虐殺された者たちの死体。それに一瞥もくれることなくゲンジロウは闇の中を進む。無視ではなく己の罪を背負って進む。これは誰のものでもなくゲンジロウ自身の罪だ。それを見届けると覚悟を決めた時、周囲の闇は晴れていく。
 闇が晴れたその先に待つジャミング装置。ゲンジロウは無言で巨人の百刃束を引き抜くと力任せにジャミング装置へと叩きつける。両断されるジャミング装置はその機能を停止させる。
 鋼鉄の兜を被った傭兵はそのままその巨大な剣を担ぎあげ踵を返し返っていった。


 ―――傷だらけの傭兵は過去を見る。もう変えることはできないそれを背負い明日へと進む。その強き心に火を灯し。



 悪夢の海を超えた猟兵たちによりジャミング装置は無事に破壊された。これでドクター・オロチの船も発見できるだろう。
 心の傷を抉られた猟兵たちはそれを乗り越えより逞しくより力強くなり戦場へと舞い戻る。己の今立つ理由を再認識して明日という未来へと歩を進める。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月12日


挿絵イラスト