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アポカリプス・ランページ⑯〜綺羅雪まばらに

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●綺羅雪まばらに
 ごうんごうんと稼働音ががなりたてる。いくつも光が点滅している。
 いのちの営みの失せた都市で、絡繰共が歯車を動かしては、規則正しく母の言うことをきいていた。
 ポッドの中で、裸体の女が瞳を伏せる。

「私は、真理を求める時間が欲しいだけ」

 永遠の中でなら、女は無限の思索を続けられる。過程で生まれた力に興味はなく、ましてや未来など。
 彼女にとって、求めているのは真理――導き出した結論だけなのだから。

「物事はシンプルにいきましょう」

 女の金の眼が開かれる。無限に増殖し続けるこども達と共に、ターゲットとしている者は、

「――さあ、かかっていらっしゃい」

●機母胎てまねき
「皆さん、お疲れ様です。もう少しで、この戦争も決着がつくでしょう」
 鎹・たから(雪氣硝・f01148)は、きゅっと丸まった眉をひそめている。ちいさな身体が少しだけ揺れてから、少女はいつもの無表情で説明を始めた。
「フィールド・オブ・ナインの一人、『マザー・コンピュータ』を見つけました。彼女は自分でつくった超巨大コンピュータの生体コアです。……たからも難しくてよくわかりませんが、すごいパソコンの中で生きている核、と言えばいいのでしょうか。マザーは、あらゆる物質・概念を機械化する能力を持っていて、放置すると、アメリカ大陸も彼女の戦闘機械獣になってしまうそうです」
 機械に疎いらしく、羅刹の娘は説明しながらも眉をひそめ小首を傾げている。スケールの大きさは、かの国を舞台とした戦争らしいと言えるかもしれない。
「皆さんにはマザーをほろぼしてほしいのです。ですが、その。彼女はデトロイトの都市全てを『増殖無限戦闘機械都市』に変形させ、皆さんと一緒に、転移を担当したグリモア猟兵も、都市になった自分の体内に閉じ込めてしまいます」
 つまり、と。言いにくそうに娘は説明を続けて。
「たからも、皆さんと一緒にマザーの都市の中に閉じ込められます。たからは皆さんが帰れるように、新しい助けが来るように、転移のゲートを守らなくてはいけません。ですから、前に出て戦うことは出来ません」
 まっすぐな瞳が、珍しくわずかに猟兵達の視線から逸れる。
「たからは予知したのですから、このままマザーを無視できません。皆さんの力を貸してください」
 ほんの少しの緊張と不安を抱いて、雪と色硝子の眼差しは再び猟兵達を見つめた。
「たからは強いので、怖くありません。でも、たからのせいで皆さんが傷つくのは嫌です。皆さんの傷を癒したり、遠距離から援護はできますから、必要であればなんでも言ってください」
 雪の気配がちらついて、儚い彩のグリモアが展開されていく。
 その先で、絡繰共の母を名乗る女が都市(トリカゴ)と成って待っている。


遅咲
 こんにちは、遅咲です。
 オープニングをご覧頂きありがとうございます。

●注意事項
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「アポカリプス・ランページ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●成功条件
 大地も空も戦闘機械で埋め尽くされた戦場で、マザーを撃破する。

●プレイングボーナス
 グリモア猟兵を守りつつ、増殖無限戦闘機械都市の攻撃を凌ぎつつ、マザーと戦う。

●グリモア猟兵
 鎹・たから(雪氣硝・f01148)が同行します。
 プレイング内にて触れて頂いた際のみ、彼女の描写が最低限入ります。
 ご要望あれば「体力回復」、「遠距離攻撃」のどちらかで援護致します。

 たからとの既知の有無は関係なくご参加頂けます。存分にマザーと戦って頂ければ。
 戦闘機械の見た目や兵器描写にご希望があれば明記してください。

 合わせでご参加は【2名様】まで。

 リプレイの雰囲気はプレイングに合わせて都度変わる予定、シリアスもゆるふわも歓迎。
 同時進行のシナリオ優先、人数次第で再送のお手間をおかけします。
 皆さんのプレイング楽しみにしています、よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『マザー・コンピュータ増殖無限戦闘機械都市』

POW   :    マシン・マザー
全長=年齢mの【巨大戦闘機械】に変身し、レベル×100km/hの飛翔、年齢×1人の運搬、【出現し続ける機械兵器群】による攻撃を可能にする。
SPD   :    トランスフォーム・デトロイト
自身が装備する【デトロイト市(増殖無限戦闘機械都市)】を変形させ騎乗する事で、自身の移動速度と戦闘力を増強する。
WIZ   :    マザーズ・コール
【増殖無限戦闘機械都市の地面】から、対象の【猟兵を撃破する】という願いを叶える【対猟兵戦闘機械】を創造する。[対猟兵戦闘機械]をうまく使わないと願いは叶わない。

イラスト:有坂U

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エレノア・レインヘイル
連携歓迎
「えっと……よろしくおねがいしますね」
まずはグリモア猟兵にご挨拶
グリモア猟兵を護る様に立ち、敵の攻撃は第六感を頼りに先制の範囲攻撃で牽制しつつ見切りオーラで身を守りつつ受け流そうと試みます
「タイミングを見計らって」
狙うのはマザーが騎乗しているデトロイト市に角を生やし操作すること。
「ただでさえ強化されてるなら」
「意図せずさらに強化されれば、持て余す筈」
意図せぬ能力増強に加え頭部を誤作動させたりより強化された戦闘能力でマザー本体を攻撃させることで制御不能に陥ったり転倒させることを狙います
「加勢、お願いします」
隙が出来たらグリモア猟兵にも遠距離攻撃をお願い
「今日もわるいことができました」



 有象無象の機械が群れを成す戦場で、機械音と電子音が溢れんばかりに鳴り響く。光溢れる中から降り立った三つ編みの娘が最初にしたことは、やわらかな所作のお辞儀。
「えっと……よろしくおねがいしますね」
「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします」
 どんな世界であろうとも、まずは第一印象が肝心。エレノア・レインヘイルの丁寧な挨拶に、羅刹の娘もしっかりとお辞儀を返す。群れる敵影からたからを守るように位置取れば、エレノアは黒手袋の指先で宙に紋様を縁取る。濃紫のオーラがヴェールのように二人の身を包んで、護りの術が宿ったと同時、悪魔は此方へと駆ける機械群の前に出る。
 するりと抜き取った右の手袋をひと振りすれば、一瞬で金の装飾の施された黒杖に変化する。ぶわりと薙ぐように魔力を広範囲に放出して、機械達の回路をあっという間に狂わせていく。
「私、わるい子ですから。機械だって壊しちゃうんですよ」
 がたがたと音を立てて崩れ落ちる味方を踏みつけ、再び押し寄せてくる兵器達の攻撃を濃紫のヴェールがさらりと受け流す。ふいに丈の短いスカートの裾が捲れるのを、ひゃ、とちいさな声をあげつつ空いた手で抑えつける。
「――居た」
 それでも、その眼は決して敵から逸らされることはない。耳に届いた轟音が、兵器の母の騎乗する都市そのものの変形を確かに知らせているから。此方へ狙いを定めて、ぐんっと駆けてくる巨大都市のてっぺんに、マザーの座する生体ポットが確認できた。
「えっと……タイミングを見計らって」
 ふわり、しろい膚が晒された右手の甲。色濃くひかりを放つ理の紋章の力を借りて、くん、と手首のスナップを利かせる。ずずず……と音を立てながら兵器都市の上層部に現れたのは、巨大な角が二本。上手くいった、と胸をなでおろすのもつかの間、エレノアは両の手を操り人形を手繰るようにせわしなく動かしていく。
 その動きに合わせるように、何故か巨大兵器は足元をぐらつかせる。頭部の指示した筈の速度は失われ、剛腕は味方の兵器群を薙ぎ倒す。
「ただでさえ強化されてるなら、意図せずさらに強化されれば、持て余す筈」
『――此方の制御を奪いましたね』
 初めて聴こえたマザーの声に、悪魔はこくりと頷いて。勢いよく地面へ腕を振り下ろせば、変形都市は味方を下敷きに転倒する。
「隙が出来ました。加勢、お願いします」
 エレノアの言葉に、たからは迷わず掌を都市へと向ける。天から降り注ぐ雪と霰の奔流に打たれると同時、悪魔の操り人形と化した巨大兵器は、己の母へと無数の武器の銃口を向ける。
 すさまじい銃撃と砲撃の音が鳴り響いて、エレノアは満足そうに頷く。
「今日もわるいことができました」

大成功 🔵​🔵​🔵​

菊・菊
あんたには世話になってるし、盾くらいにはなってやるよ
ひひ、あの戦闘機のどれかで帰んのも、おもろそうだけど、な

なかなかアツい展開じゃねーの?
にひ、全部壊せばいーってんなら、分かり易くていーじゃん

腕を滑る痛みと、血を啜って上機嫌なクソ女の笑い声が合図だ
食ってけ、寒菊
てめえの大好きな蹂躙の時間だぜ

『最悪』

ひひ、てめえの軍隊にゃ、花がねえなァ

空を行く殺戮に立ち向かうは
貧相な餓鬼と、菊の花びら

それは、美しく、捕らえ難く、そうして執拗だ

これは時に燃えて滅し
これは時に盾となり、壁と成り
それは時に舞う刃となって、鋼すら断つ

あーあー、うじゃうじゃ
どれからぶっ壊すが悩んじまうだろ

鋼鉄の鳥を撃ち落とす
花びらが幾千



 ふわり、花の香りがする。羅刹の娘の前で、黒金の少年は金緑の瞳を歪めて笑う。
「あんたには世話になってるし、盾くらいにはなってやるよ」
 菊・菊の言葉に頷いて、よろしくお願いします、とたからがちいさく頭を下げる。そんなの要らねえよ、とくそ真面目な少女に返してから、上空でうるさく蔓延る機械の群れを見上げた。
「ひひ、あの戦闘機のどれかで帰んのも、おもろそうだけど、な」
「菊は飛行機を操縦できるのですか?」
 ぱちり瞬きして問うた娘に、できねえよ、ともう一度笑って。少年は大嫌いな妖刀をそろりと抜く。有象無象に蠢く兵器の群れは、なかなかアツイ展開を繰り広げようとしている。そんな熱を帯びたイベントが、悪戯っ子と呼ぶには可愛げのない彼の心に火を点けた。にひ、と口の端をまた歪ませて、騒がしい戦場をぐるりと見渡す。
「全部壊せばいーってんなら、分かり易くていーじゃん」
 敵影を数える必要がないのは楽だ。腕を滑る痛みと共に、一滴たりとも残らず血を啜った刃が真っ赤に彩られる。彼を動かすBGMは、機械の鳴らす稼働音と上機嫌なくそ女の嗤い声。
「食ってけ、寒菊」
 てめえの大好きな蹂躙の時間だぜ。
 粘つくような機械油の匂いに包まれていた機械都市に、菊花の香りが濃厚に漂いだす。細く儚い黄色の花弁の群れははらはらと、やわらかな嵐として戦場に彩を散りばめていく。
『たかだか花弁程度で、私達に対抗しようと言うのですか』
「ひひ、てめえの軍隊にゃ、花がねえなァ」
 届いた機母の声を嗤えば、生体ポットを上部に配置した巨影が戦闘機達と共に空を覆う。そんな殺戮の権化に立ち向かうのは、貧相な餓鬼と菊の花びら。
 戦闘機群の視界を塞ぐように、黄色が舞う。絡繰で汚れた空に美しい彩が吹雪いて、いくら機銃が薙ごうとしても、軽やかに風に踊って捕らえきれない。それだけならば、ただの目眩しで済んでいた。実際マザーもそう判断して、我が子達に焼却を命じたのだ。
「おせぇよばぁか」
 戦闘機に張りついた黄色の海が、先んじてめらめらと燃えはじめた。熔けるほどの花熱に焼かれて、熱に浮かされた機械は次々と地に墜ちる。
『興味深い技術ですね、どのような方法で習得したのか』
 そう語る兵器都市が羅刹の娘めがけて駆けるのを、舌打ちついでに睨みつける。ぶわりと集った花弁は、少年と少女の前に壁をつくりあげる。襲いくる銃口と鉄腕を花がやわくいなせば、二人の身体に傷ひとつつかない。
「てめえに教える義理なんてねえんだよ、露出狂」
 甘く舞っていた花弁が、勢いよく機械都市に突き刺さった。ざん、と花刃は鋼を断って、空征く群れがまた一機減っていく。
「あーあー、うじゃうじゃ」
 ――どれからぶっ壊すか悩んじまうだろ。
 仏花のかけらによって、鋼鉄の鳥が撃ち墜とされていく。機母の騎乗する都市を、幾千もの花弁が壊す。

大成功 🔵​🔵​🔵​

三岐・未夜
【みゃちよ】

たからが危ないんなら来ない訳ないよね
僕はたからの傍に居るよ、遠距離固定砲台って奴?

うわ、本当に空も地も機械だらけ
でもまあ、これだけ居たらノーコンでもなきゃ何処撃っても当たると思うよ?
なぁんて、精密射撃得意なんだけど
八千代、地面に集中してて良いからね!
空は僕が全部撃ち落とす!

空の敵へ【おびき寄せ】
火矢に【操縦、誘導弾、範囲攻撃、属性攻撃、弾幕、全力魔法】
手数が足りなきゃ【多重詠唱】で重ねて行く
八千代に攻撃もさせないし、たからを傷付けるのも許さない
機械なんて僕の得意分野でしかないんだからさ、大人しくバラされてなよ

……や、八千代その野次はちょっと……(居た堪れないのでぺたりと耳を伏せた)


花邨・八千代
【みゃちよ】
やっほーたからー!遊びに来たぞー!
遊びじゃない?固いこと言うなって
四方八方敵だらけ!こんな楽しい状況早々無いだろ?

「みゃーも楽しんで行こうぜ、ありったけの弾ァぶち込んでやれ!」
「ただし、地面に足ついてんのは俺の獲物だぜ」

武器は黒塚、【壊神】で小手調べだ
体勢崩したやつから叩き壊してくぞ!
(怪力・なぎ払い・2回攻撃)

あ、たからとみゃーのとこに敵が行かねぇように精々うるさくがなるかね
「やーい露出狂!乳丸出し星人!」
油断してるように見せかけて、そこを返り討ちだ
(大声・恫喝・だまし討ち)

空はみゃーに任せてっから存分に暴れられるなァ
俺にとっちゃ真理なんざ腹の足しにもならんね
だからぶっ潰すだけだ



 足の踏み場もないほどに機械ばかりが溢れ蠢く戦場は、襲撃の手を緩めない。ならば、と新たに雪の彩と共に現れた猟兵達は、羅刹の娘がよく見知った二人だった。
「やっほーたからー! 遊びに来たぞー!」
 友達の家にやってきたこどものように、花邨・八千代がにははと笑う。八千代、と女の名を呟いた少女は、ふるりと首を横に振って。
「来てくれて嬉しいですが、ここは遊び場ではありませんよ」
「固いこと言うなって」
 四方八方どこを見たって敵だらけ。喧嘩を好む女にとって、こんなに楽しい状況は早々ない。うわ、とちいさな声をあげて、本来の背丈よりもおおきな妖狐が戦場を見渡す。
「本当に全部機械ばっかり……でもまあ、これだけ居たら、ノーコンでもなきゃ何処撃っても当たると思うよ?」
 三岐・未夜は、そろりとふわふわの尾をたからの手に巻きつける。やわらかな毛並みは、いつもの勉強会と同じぬくもりをしていた。気持ちが和らいだらしい娘が、不思議そうに小首を傾げる。
「未夜、ノーコンとはどういう意味ですか?」
「あーえっと、コントロールがめちゃくちゃ下手くそって意味」
 なぁんて、自分には縁のない言葉の意味を説明してやる。精密射撃は得意な少年は、すぐさま指先を宙に躍らせながら女に呼びかけた。
「八千代、地面に集中してて良いからね! 空は僕が全部撃ち落とす!」
「ああ、楽しんで行こうぜ。ありったけの弾ァぶち込んでやれ!」
 ――ただし、地面に足ついてんのは俺の獲物だぜ。
 舌なめずりした八千代のあかい眼が、爛々と地上を這う機械獣達を捉えた。黒塗りの薙刀を構えた女の所作は気楽なもので、ほんの一歩、軽やかに足を前に出す。たった一度、踏み鳴らしただけ。途端、ずん、と戦場を揺らすような音と共に地割れが起きれば、機獣が次々によろけ始める。
「まずは小手調べ」
 わらった小柄な女が振り回すのは、巨大な黒塗りの薙刀。尋常ならざる鬼の膂力が薙ぎ払えば、ぐしゃりと派手な音を立てて無数の絡繰があっという間にがらくた以下に壊される。破片と何かの回路だったらしきモノを踏み潰して、此方へと駆ける機械群へと八千代が刃を落とす。ぞくりと膚が粟立つのを感じながら、女はいきいきと咆哮していた。
「はは、楽しいなぁ!? てめえはどうだ、カーチャン気取り!!」
 八千代が地上の機兵群を破壊し尽くそうとすると同時、未夜は友達の傍を離れずしっかと空を見ていた。爆撃を狙うのなら、それよりも速く此方があれらを墜とすだけ。ふかふかとした鳩のぬいぐるみを数匹飛ばして、手招くようにとろりと飴色の瞳を覗かせる。鳩の群れと妖狐の魅了に呼ばれるように、数を増した戦闘機に、自然としろい指が動く。
 宙に浮き出た陣から、ぽつぽつと灯る焔を抱いた破魔矢の群れは五百に迫る。それらが新たな陣をつくるように空を泳げば未夜は、いけ、と一言呟くのみ。
 弾幕めいた火炎の矢群が、空を真っ赤に染める。あかあかと燃ゆる火の海が、どろりと鋼を熔かして墜落させていく。それでも波状攻撃のように襲いくる空の陣営が、ふと変形してひとつの爆撃機と化す。二人諸共、少女を確実に殺しに来ているのだと気付いて、たそがれよあけが睨む。
「まだ足りないなら、重ねて行くだけだ」
 唇にのせたまじないの言葉の意味を、知っているのは彼だけ。重なる音につられるように、破魔の火焔はごうごうと渦を巻きはじめた。爆弾の群れが此方へ墜ちるよりも先に、火焔が空征く兵器を燃やし尽くす。
「八千代に攻撃もさせないし、たからを傷付けるのも許さない」
 未夜が尻尾をさきほどよりも強く巻きつければ、少女がきゅっと尾を握る感覚が伝わった。ひゅう、と口笛ひとつ吹きながら、八千代は焼け墜ちてくる残骸を避けては薙刀を振るう。
「空はみゃーに任せてっから、存分に暴れられるなァ」
 さあて、と駆けだす女の眼前に、巨大兵器へと変形した機母が在る。少年少女のもとへ行かせるつもりはさらさらなく、黒赫の髪を靡かせ戦闘機械の残骸の上によじ登った。
「やーい露出狂! 乳丸出し星人!!」
「……や、八千代その野次はちょっと……」
『――あまりにも低俗ですね、理解に苦しみます』
 居た堪れずに耳を伏せた少年と眉をひそめる少女は置いておき、この程度の挑発に乗るような相手ではないことくらい承知の上。精々うるさくがなっていれば、グリモア必殺の作戦には邪魔だと判断するだろう。
 狙い通り、ぐちゃぐちゃに組み合わせた武装が八千代を標的にする。がしゃりと一斉に攻撃が来るより先に、吹き荒れる炎の破魔矢が武装を熔かす。
「言ったじゃん。攻撃させないって」
 未夜の指先が軽やかにおどる。淡々と、青年の見目をした少年は冷ややかな眼差しを機母に投げた。灼け壊れた武装の上を、羅刹が一気に奔る。生体ポット付近まで接近して、とんと足を踏み鳴らす。轟音と共に砕ける巨大兵器を、黒刃が貫いた。
「俺にとっちゃ真理なんざ、腹の足しにもならんね」
 だからぶっ潰すだけだ。と、女はぎらつく眼でわらい、
「機械なんて僕の得意分野でしかないんだからさ、」
 大人しくバラされてなよ。と、少年は吐き棄てた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神咲・七十
アドリブ・連携お任せ

んみぃ、見事に囲まれていますね。
まぁ、私もやりたいから来たので頑張りますよ。(お菓子もぐもぐ)

(UC『万花変生』を使用。木を大量に生やして視界と射角を切ってグリモア猟兵たちを防御)

さて、では頑張りましょうか。
機械と植物どちらが強いですかね?

(機械に干渉する菌糸を大量にばらまき、敵を操り攻撃してを繰り返してマザーまで目指し)

時間をどうにかして上げれるか分かりませんし、たどり着けるかの保証もありませんが私のものになりません?(お菓子もぐもぐ)

(隷属化の力を操つる機械と菌糸に付与して、マザーを攻撃して隷属化しようとして)



 いまだ数の減らない殺戮機械達を、赤い双眸が笑みを含んでぐるりと見渡す。
「んみぃ、見事に囲まれていますね」
 がちゃがちゃと武装がぶつかる音、規則正しくがしゃがしゃ歩く彩の無い群れ。これだけの数が一度にグリモア猟兵のみを狙っていれば、羅刹の娘はひとたまりもないだろう。
「まぁ、私もやりたいから来たので頑張りますよ」
 もぐもぐ、小袋に詰まったキャラメルがけのスナックを頬張って、神咲・七十はふくりと笑む。食べますか? とひとつ差し出されて、たからもいただきます、とひと口。
「さて、では頑張りましょうか」
 腹ごしらえを済ませたなら、少女は魔法を叶えるためのおまじないを唇に乗せる。
 ――今日はそういう日で、今はそういう気分。
 地面すら鋼鉄の板で固められているはずなのに、ぱきりとささやかな音がした。愛らしい若葉が芽を出してすぐのこと、ばきばきと激しい音と共に無数の樹々が一気に成長を遂げる。大量に生えた樹木はたからを覆い隠し、機械群とマザーの視界と射角から遮ってしまう。
『小癪な真似を』
「機械と植物、どちらが強いですかね?」
 さきほどから穏やかな表情を変えぬまま、此方へとまっすぐ地を駆ける機械群と相対する。少女が再び呼びだしたのは、ふわふわと宙に浮遊するしろい糸。蜘蛛の巣のように広がるそれらが絡繰の山をそうっと覆えば、じわりと菌糸が染み込んでいく。内蔵回路の狂った機械に、七十はお菓子のようにあまく囁いた。
「さぁさぁ、倒す敵はあっちに居ますよ」
 狂う一機に飛び乗れば、追随するように菌糸に干渉された機械達が味方を壊し始める。がらくたの山が機母への道をつくると、マザーの座する方角から新たな凶器が現れた。回転鋸と火炎放射器を装備したそれは、グリモア猟兵を守る樹々を伐採焼却する為の兵器。
「なるほど」
 さして焦ることなく、吸血鬼は裏切り者の機械群を嗾ける。甘い物が足りなくなってきて、ポケットからキャラメルスナックを取り出した。七十が口の中に広がる甘さに満足している間に、絡繰の子供は母のとっておきを粉々に打ち砕く。
『想定外でした、菌が機械に干渉するなんて……』
「驚きました?」
 真理を探究する時間が欲しいのだと女は言っていた。これもまた、生体コンピュータの自我なのだろうか。それが面白いと思って、少女はスナックを口に放る。
「時間をどうにかしてあげられるか分かりませんし、たどり着けるかの保証もありませんが、私のものになりません?」
『拒絶します』
 ふぅん、と赤い瞳がゆるむ。生体ポットから屈辱のかおりがして、良い頃合い。突然ポットの周囲に緑が芽吹いて、急成長した植物の群れがぞうぞうとマザーを縛りつけた。
『貴方、なにを、』
「本当は、そういう気分でしょう?」
 ――今すぐ、私に従え。

成功 🔵​🔵​🔴​

水衛・巽
アドリブ・負傷歓迎

増殖増殖って何度もうるさいんですよ一度聞きゃわかりますよ
殺る気しかないのは理解したのでそっくりそのままお返ししますね

ですがそのままお返しも芸がないですし
復路のチケット代も支払い済みなので
鎹さんには近付かないでいただけますか

マザーズ・コールの全範囲をカバーするよう
展開可能域を限界突破した迷宮の最奥に鎹さんを隔離
出現する対猟兵戦闘機械には
一つしかない出口から外へお引き取りいただきます
遭遇さえしなければ戦うことすら不要なので

まあ、万が一最奥に到達されたらその時はその時です
猟兵を撃破する願いは
呪詛で戦闘機械の創造主へ丁重に返却しつつお相手しますよ



 猟兵達の熾烈な迎撃のせいか、さきほどから一度も羅刹の娘に手が届かない。焦る自我を冷静に保ちながら、マザーは次の戦闘機械を創造する。鋼張りの地面から生み出されたのは、無数の刃が取りつけられた高速の人型兵器。グリモア猟兵めがけて一気に迫る無数の鉄腕は長く、それを伸ばせばすぐにでもいのちが奪える。
 デトロイトに増殖無限戦闘機械都市、などと大層な名前をつけた女の殺意に、水衛・巽は若干呆れた表情を浮かべた。
「増殖増殖って何度もうるさいんですよ一度聞きゃわかりますよ」
 殺る気しかないのは十分理解したのだから、そっくりそのままお返ししよう。とはいえ、そのまま返すのも芸がない。
「復路のチケット代も支払い済みなので、鎹さんには近付かないでいただけますか」
「巽……たから、巽にチケット代など要求していましたか?」
「ああ、気にしないでください。私がこれから戦うというだけの話です」
 真面目に問うてきたちいさなグリモア猟兵を背に、青年は指先で素早く印を結ぶ。宙で繋ぎ合わされる五行の結界術は、戦場を魔境へと変える。
「――埋め尽くせ、天空」
 主の言葉に応じるように、凶将はもうもうと漆黒の闇を広げていく。これは、と闇が覆いつくのを見渡す少女に、巽は涼やかな笑みで頷いて。ぱちり、たからが瞬きした時はもう彼の姿はなく、少女はただ一人、迷宮の最奥に隔離されていた。
『小賢しい真似をしますね』
「さぁ、出口は一つしかありません。外へお引き取り頂くなら今のうちですが」
 遭遇さえしなければ、此方は戦うことすら不要。迷宮の何処からか聞こえる青年の提案を振りきるように、人型兵器は機械群と共に迷宮内を暴れまわる。硬い壁面をぎゃりぎゃりと削る音が響いて、その強引さに巽は再び呆れた。
「その熱意、冷静になれば他のことに有効活用出来るでしょうに」
 真理を探究する賢い人工知能も、今は使い物にならないのか。機母によって迷宮の破壊を指示された機械群が、ついに最奥への近道を強引につくりあげる。けれど、そこには既に青年が先回りしていて。
「ゴール……といっても、反則ですよ」
 機械群が青年と少女へと駆けだし、刃と銃口を向ける。強固な結界術の中にたからを置いて、巽は前に出た。古太刀で機械の武装を派手にたたっ斬る度、応戦する機械によって彼の身体にも浅くはない傷が増えていく。足りぬと感じて斬撃の念を籠めた霊符をばら撒けば、一瞬にして無数のがらくたの山が積まれた。
 最後に残った殺戮兵器は、猟兵を撃破したいと願われた一機のみ。
「なんでもご存知であろうあなたに訊くのも野暮でしょうが、呪詛返しって知ってます?」
 青年は印を結び、素早く縁を切り捨てた。呪いは兵器を通じて、創造主のナカへと入り込む。
『ぐ、がは……ッ』
 生体ポット内で突然苦しみだしたマザーの姿は視えずとも、術は正しく届いているのはわかっている。
「此方、もう結構ですから。丁重にお返ししますね」
 冴えた声は、淡々とした笑みを乗せている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
ごめんね、僕攻撃と防御両立できるほど器用じゃないから
鎹さんに【オーラ防御】かけて僕は防御を捨てる
代わりに回復してもらえると嬉しい、かな

敵の技は機械都市の地面から戦闘機械を創造するもの
だから【指定UC】を発動し大地を森で上書き
木々を盾に、花粉を目晦ましに
操る機械がもしマザーさんの手動なら
鎹さんさえ隠せば狙いを付けづらくなるだろうから

敢えて自ら囮になるように移動しながら
【高速詠唱】で炎魔法の【属性攻撃】
密集する機械類を狙い誘爆させながら
翼の羽ばたきで少しずつ花粉をマザーの周辺に集め

ただの視力妨害だと思ったら大間違いだよ
自分の魔法か、武器の爆発か
花粉への引火で粉塵爆発を起こし、マザーを巻き込みます



 苦痛の悲鳴をあげるマザーの声を遠くに聴いて、猟兵達によって重ねられた攻撃に続くよう、雪の彩と共にオラトリオが戦場に舞い降りた。
「ごめんね。僕、攻撃と防御両立できるほど器用じゃないから」
 そうっと短いバトンスタイルの杖をひと振りすれば、グリモア猟兵の全身を淡い薄紅のオーラが守護の力を纏って包む。澪の分は、と問うた羅刹の娘に、栗花落・澪は少しばかり苦笑した。
「防御は捨てちゃう。だから、代わりに回復してもらえると嬉しい、かな」
「……わかりました、澪がそう言うなら。気をつけてください」
 うん、とあまく頷いて、少女めいた姿の少年は敵の軍勢を睨む。鋼張りの地面からめきめきと生まれようとする絡繰の成長を止めるため、聖なる杖を再び振るって呪文を描く。
 ――さぁ、鉄の壁なんて壊してしまおう。萌ゆる緑で埋めつくそう。
 鉄板だらけの地面に芽吹いた若葉は、あっという間に急成長していく。ざわめく森が大地を覆えば、きらきらと虹彩にかがやく花粉が辺り一面に漂う。伸びゆく樹々は、やがてたからを守るように壁をつくった。
『また植物ですか』
 機母が殺戮機械を操作するものの、機械がいくら刃を稼働させても樹々の盾が邪魔をする。ふいに生体ポットの眼前を虹のかがやきが降りかかり、広すぎる視界が狭くなった。澪の防壁によって羅刹の娘に狙いを定めることができず、女は苛立ちを隠しきれない。ならば、と、此方へと地を駆け空を舞う少年へと標的を切り替える。
「こっちだよ」
 目立つように意識を惹くため、あえて天使は翼と亜麻色の髪を靡かせる。唇に乗せた呪いは、火焔の嵐を呼びこんだ。機械群が密集する場所へと焔を昇らせれば、盛大な爆発音と共に次々にがらくたの山のできあがり。
 上空を飛翔する少年を追いかけるように、長い機械腕が無数に天を目指す。いくつもの手を軽やかにすり抜けて、翼のはばたきが虹の粉を纏ってマザーの周辺を徐々に煌かせていく。
 ふと、空駆ける天使の動きが女の視界のど真ん中でバランスを崩したのかよろけた。狙うなら、今ここだと言わんばかりに。冷静さを失った機母の計算では、それが罠だという確率はひどく低かった。
 火炎武装が一斉に澪へ襲いかかった。銃口も砲口も、すべてが彼を向いている。一度に引き金をひくだけで、天使を撃ち落とせる――筈だった。
 再び少年が焔を放ってその場から脱出したのは同時で、ワンテンポ遅れて苛烈な炎が花粉に引火する。粉塵爆発に巻き込まれた生体ポットはあかあかと燃え滾り、女の甲高い悲鳴があがる。
「ただの視力妨害だと思ったら大間違いだよ」
 賢いコンピュータなら、少し考えればわかることなのに。
 わずかに焦げてしまった澪のあわい彩の翼を、雪の彩がやわらかく染めて癒す。熱をもった身体には、心地よい冷たさだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
臥待f15753と

という訳で壁として来た
臥待って年下の前だと妙に張り切るよな
…とか話しかけて鎹の緊張を解しつつ
依頼は確かに請け負った
鎹も改めて宜しくな
少し不安そうだ…俺も負傷しない立ち回りを意識

とかやってる間に臥待が消えた
ん?騒がしいな
あれはまさか…招かれざる客
エラーを起こした小型戦闘ドローンの大群が
レーザーでマザコンを包囲攻撃してる
奴を敵と認識してるようだ…反抗期か?

俺は正常な戦闘機械を第六感で見分け
剣で切断し鎹を危険から庇う
…?
ドローンが交差点に敵を追い込んで…
作戦か?何かでかい事が起きそうだ
地形が…崩れる…!

派手にやってくれたな
鎹、まだ動くなよ
心配せずとも臥待はきっと無事だ
振り返ってみな


臥待・夏報
柊くん(f25213)と

話は聞かせてもらった!
鎹くんは夏報さんが守る!
……って言いたいとこだけど、耐久力は鎹くん以下なんだよなあ
柊くん
頼んだよ
戦える人が近くにいてあげてね

増殖無限戦闘機械はともかく、都市は都市でしょ
だったら夏報さんの得意分野
目立たないよう闇に紛れて逃げ回りつつ、マザーの計画を阻む糸口がないか情報収集

……これは?
ドローンが不自然に密集していて
むしろマザーを攻撃しているような
高度な人工知能は第二次性徴期まで再現するのかな……
ちょっとかわいい

逃げ回ってる間に見つけた地下空洞、その真上にある交差点を示してみる
意味をわかってくれるかな?
誘い込んで集中放火すれば、マザーを崩落に巻き込める筈



「話は聞かせてもらった! 鎹くんは夏報さんが守る!」
 有象無象の機械だらけの戦場に降り立った瞬間、臥待・夏報は仁王立ちでそう言い放ったものだから、グリモア猟兵は色硝子の瞳を瞬きさせた。
 と、宣言したものの。自分の耐久力が羅刹の娘以下であることは承知の上。女は共に現れた屍人の少年に視線を向ける。
「柊くん、頼んだよ」
「臥待って年下の前だと妙に張り切るよな」
 柊・はとりが、この場で最もちいさな背丈の娘に言葉を流してやると、たからも緊張がほどけたらしい。
「張り切っているかはわかりませんが、夏報はいつもやさしいですよ」
 そうか、と応じたはとりの隣、ふふんと何処か満足げな女は二人に何も言わず姿を消す。同時に、機械群が一斉に少年少女めがけて押しかける。氷の魔剣を素早く起動し、はとりはその場で機械を切断していく。
「はとり、気をつけてください」
「ああ、依頼人を置いて倒れやしないさ」
 依頼は確かに請け負った。探偵はたからを背にしていても、彼女の自分を気遣う声に不安の彩が在るのを確かに耳で捉えていた。あまり前に出過ぎて負傷するのも、少女の負担になるだろうと考えて、あくまで立ち回りは迎撃にとどめる。ふと、夏報の存在が消え失せたことに気付いた時、機母がやってくるであろう方角がうるさく感じられた。
「ん?」
 騒がしいな、と呟いた薄氷の眼差しが、レンズ越しに敵影を捉える。小型の戦闘ドローンの大群は、此方ではない巨大なナニカを包囲していた。それが変形させた都市に騎乗したマザーだとわかったのは、機械の山のてっぺんにある生体ポットの存在があったから。
『ドローンは 識別エラーを 起こしているようです』
 魔剣は精査した情報を淡々と主へと伝える。その間も、無数のレーザー光線が母親の足場を襲撃し続けている。
「……反抗期か?」
『反抗期 検索…… 精神発達の過程で 他人の指示に対して 拒否、抵抗、反抗的な行動をとることの多い期間のこと』
「はとりの剣は賢いですね」
「コキュートス、黙れ」
 ぴしゃりと魔剣に告げて、はとりは再び刃を振るう。ドローンのエラーが伝搬していくのか、徐々に機械群は此方とマザーへの攻撃の二分に分かれ始めている。むっつめの知覚によって、はとり達へと攻撃を仕掛ける正常な機械のみを断つ。
 ドローンの大群が、名探偵の体質による闖入者だったのは、彼本人のあずかり知らぬところでもあるけれど。
「増殖無限戦闘機械はともかく、都市は都市でしょ」
 ――だったらこれは、夏報さんの得意分野。
 戦場の騒々しさに紛れこんだ小柄な人間の姿は、機械の子らには視えていない。消えた訳ではなく、ただ色褪せて、馴染んで、誰の目にも留まらぬだけ。潜入して絡繰まみれの街中を駆け抜けた先、機械都市の中心にそびえる集合体が、マザー本人の騎乗している変形物だろう。
「まったく、かよわ……くもないけど、ひとりの女の子相手にこんなの用意して……ん?」
 鎹くんはなんだかんだまだこどもだぞ。ぽつりと溢した女の目に留まったのは、隊列を乱し不自然に密集するドローンの群れ。これは、と理由を考えている間も、ドローン達はレーザーを発射し母親の騎乗した変形物を攻撃していた。
「高度な人工知能は第二次性徴期まで再現するのかな……」
 なんだかちょっとかわいいと感じつつも、夏報は攻略の糸口を掴む。正常な戦闘機械に見つからぬよう、かくれ鬼は続く。攻撃と防御はからっきしでも、普段から逃げ回るだけの体力は作ってある。
 そうだ、あそこがいい。走り続けて脳内に叩き込んだ都市の地形を思い浮かべたのは、おあつらえ向きの地下空洞と、その真上に在った交差点。
「おーい」
 機械群を振り払い、わざと手を振り自身の存在を知らせれば、ドローン達の目が夏報へと向く。再び走りだした女が示した場所は、マザーの前方にある交差点。
 ――意味、わかってくれるよね。
 誘うような藍の眼が瞬きしたと同時、ドローンの一斉攻撃によって生体ポットから声がする。
『何故……制御を奪われた訳でもないのに。私の指示に、従いなさい……!』
 我が子の反乱を躱すため、マザーは交差点を駆けていく。途端、集中砲火の勢いは増して、鋼張りの地面が割れる。
 がらがらと大きな音を立てて崩れ落ちていく地形と変形物を、はとりとたからも遠くから見ていた。探偵は魔剣を盾に、少女を庇うようにしてちいさな身体を隠す。此方にも響いた衝撃の後、機母の絶叫が聴こえた。
「大丈夫ですか」
「かすり傷だ。それにしても、派手にやってくれたな……!」
 あわい雪で名探偵を癒しながらも、羅刹の娘はすぐに立ち上がろうとする。まだ動くなよ、と彼女を制止して、はとりは少しばかり不良めいた笑顔を向ける。
「心配せずとも臥待はきっと無事だ」
 振り返ってみな。その言葉に少女が素直に従えば。
「――ただいま、鎹くん、柊くん」
 互いに灰の髪を揺らして二人、笑みを交わすから、少女は胸をなでおろす。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

兎乃・零時
アドリブ絡み歓迎

たーかーらー!!
来たぞー!!

グリモア猟兵狙って来るたぁ思わなかったが、此奴にゃ指一本触れさせねぇよ
其れに折角だ
たからに成長した俺様の力も見せてやるぜ!

―――かかってきな、マザーッ!!

オーバーロード使用
UC展開
先の戦争にて得た
宝神たる短期決戦形態

手と脚の武装
念動力で動かす杖より産み出すは数多の陣
魔法陣
地も天もすべてすべて!
降り注がせるは光雨
敵だけを狙う、その機械もマザーも含めた範囲攻撃!
弾幕は切らさず延々と光線をふらせりゃそう簡単に手出しは出来ねぇだろ!
全身に纏う魔力のオーラは多種の属性に溢れ攻撃だって結構耐えられんだぜ!気合入れりゃぁ完璧さ!


俺様の夢は
何れ全世界最強最高の魔術師に成る事
故にこそ!たとえ何が有ろうとも、どんな危機であろうとも!俺様は諦めないんだ!
クリスタリアンとしての『宝石』を産み出しそれ自身を一つの弾丸に見立て
其れに螺旋の力を加え
己の光魔術の全部を込め
あらん限りの他属性のブースト

ぶち飛ばすぜ、マザー!

全力魔法×貫通攻撃×砲撃


宝煌砲《クリスタル・カノン》ッ!



 崩落した地の底から這いあがった絡繰の、集合体のてっぺん。生体ポットの中で、機母は罅の入ったポットや自身の肉体の有様を確かめる。どうして、全くといっていいほどグリモア殺しに手が届かない。
 猟兵の力を侮っていたつもりはない。けれど、愚かで矮小な人間達が此方の力量を上回っていたことは、彼女の想定外だった。
『いいえ、いいえ……諦めるものですか。戦闘機械達は、まだ生まれ続けている』
 配線に繋がれた頭を振って、次なる我が子を生みだすことに集中し始める。一方、雪結晶と共に転移された少年は、アクアマリンの彩をきらきらと輝かせて意気揚々と羅刹の娘に声をかけていた。
「たーかーらー! 来たぞー!!」
「零時はいつも元気ですね」
 おう、と胸を張って返した兎乃・零時は、しかしまぁと少しだけ眉をひそめる。まさかオブリビオンが、戦争中にグリモア猟兵を狙ってくるとは思わなかった。蠢く機械群に対して、びし、と人差し指を突きつける。
「けど、此奴にゃ指一本触れさせねぇよ」
 宣言したと同時、海彩に輝く髪と眼が煌々と光を宿す。俺様はいつだって、困難の元で超克してみせる。眩しさに少女が一瞬目を瞑って、再び瞼を開けた時、そこには彼女の知らない少年の姿――宝神が在った。
「零時、その姿は」
「細かい説明は……まぁ帰ってからだけど。色々繰り返したらさ、制御できるようになったんだ。ようするに――今の俺様はめちゃくちゃ強くなってるってこと!」
 眩い自信に満ちた笑顔に、それは素晴らしいですね、とわずかに雪氷の無表情が緩む。少女を背に、零時は澄んだ青を煌かせながら、機械の群れに立ち向かう。
 手甲と脚部の外装武具に想いを籠めて、魔力核を飲む杖を宙に浮かべる。みっつの武装から描かれる数多の魔法陣は、彼と同じ彩光を放っている。
「おっしゃ、行くぜ――かかってきな、マザーッ!!」
『魔術と科学の複合ですか、いいでしょう』
 熱い少年の雄叫びを、冷めた女の声色がさらりと受け応える。それをきっかけに襲いかかる機械達に降り注いだのは、魔法陣から放たれる凄まじい魔力量の光の雨。地も天もすべてすべて、天上天下どこまでも、途切れることのない弾幕じみた無色の光線の嵐。
「こんだけ降らせりゃ、そう簡単にたからに手出し出来ねぇだろ!」
 休みなく降り注ぐ光雨をなんとか生き残った一部の機械が、銃撃と斬撃を送り込む。けれど少年が全身に纏ったオーラは、彼の膨大な魔力で編まれた守護の力。多少の攻撃ではびくともしない上に、気合いをたっぷり入れてしまえば強固な壁となる。
『削りきれませんか、ならば』
 めきめきと、鋼張りの地面が割れる。新たに育った殺戮機械は砲撃に特化しているようで、即座に大きな砲口に光が集まっていく。音もなく放たれたそれが、光の雨を我が子らの残骸諸共打ち砕く。
 すぐさま移動させた魔法陣によって、零時の光線達が砲撃の威力を殺す。相殺しきれなかったマザーの光線から、少年は身を挺して少女を庇う。
「零時」
「痛ってぇ……あっでもちょっとだけ! ちょっとだけだからな! これくらいなんともねえ!!」
 両の掌をぐぅぱぁ開いて、にぱ、と笑ってみせる。傷はヒトの膚を破って、罅割れた奥底の青を晒していたけれど、決して重傷ではないから。
『諦めの悪いこと』
「それはそっちだろ! 俺様の夢は、何れ全世界最強最高の魔術師に成る事だからな!」
 すぐに立ち上がった魔法使いは、浮遊する藍玉の杖でマザーの居る生体ポットを示す。強く敵を睨みつけるその瞳に、不安の翳りはひとつもない。
「故にこそ! たとえ何が有ろうとも、どんな危機であろうとも! 俺様は諦めないんだ!!」
 翳した右手から、まるい宝石が産まれる。生まれたてのそれに螺旋の力が組み込まれると、ぐにゃぐにゃと轟き弾丸としての力を得る。光の魔法のすべてを込めて、あらん限りのすべての属性による加速を重ねて。
「ぶち飛ばすぜ、マザー! 覚悟しろよ!」
 宝 煌 砲 《クリスタル・カノン》ッッ!!!
 きらめく砲撃が、生体ポットを貫通する。

大成功 🔵​🔵​🔵​

壽春・杜環子
たから様(f01148)と共闘を

機械の貴女、随分と勝手をなさいますのね……
たから様はわたくしのお友達。必ず守ってみせまする……!

たから様、少しおまじないをいたしましょう。大丈夫、怖くありませんからね……
【結界術、オーラ防御、索敵を多重詠唱で重ね掛け

たから様を狙う機械は酣春で追った龍に対応を【式神使い、遊撃、時間稼ぎ
わたくしは濫觴の水の魔法織り上げ攻撃を【高速詠唱、属性攻撃、全力魔法

たから様は、わたくしを信じて下さいました……
たかが万華鏡のわたくしを。だから応えましょう、ゆえに見せましょう

機械の貴女は知りますまい――万華鏡は鏡を組んで作るもの
ゆえに合わせ鏡の終わりなき世界が、わたくしの内にはあるのです
差し上げましょう、本当の恐怖を……
終わりなく出口の無い地獄へお招きいたしましょう

己が映ることを恐れなさい
貴女を映した魔鏡全て……わたくしが、濫觴の雨に沈めましょう
わたくし、ヤドリガミではございますが――……愛も過ぎれば怨交じり、情け過ぎれば恨も含む。
こう見えまして、呪い上手な悪霊ですから、ね?



 罅の入っていた生体ポットが割れて、卵型の器に閉じこもっていた女は外気に晒される。既に多大なダメージを受けた身体を抱きしめて、きつく唇を噛む。
『まだ、私は終わっていない……私が生存している限り、グリモア猟兵の封じ込めも稼働し続けます……ならば必殺計画も、真理の探究も終わりではないわ……!』
「させません」
 人間のように息を荒げる機母に対して、澄んだ声が対抗するように響く。
「機械の貴女、随分と勝手をなさいますのね……」
 雪の彩と共に舞い降りたのは、あわく揺れる髪彩をした少女。凛とした眼差しをマザーへ向けて、壽春・杜環子は改めて口にする。
「たから様はわたくしのお友達。必ず守ってみせまする……!」
 杜環子、と少女を呼んだ羅刹の娘に、ヤドリガミはやわく笑む。繋いだおなじちいさな掌は、杜環子のほうがほんのりとあたたかい。
「たから様、少しおまじないをいたしましょう」
 大丈夫、怖くありませんからね。そう続けて、彼女しか意味を知らない不思議な詞を口ずさむ。揺らぐ水面のような光のヴェールがたからを包んだのを確かめて、そうっと手を離す。次に春色の折り紙で折られたちいさな龍を、ふわり宙へ。途端、龍は少女達よりもひと回り大きな姿で顕現した。
『どのような魔術かは知りませんが、興味はあります――ですが、今は燃やし尽くしましょう』
 母の一声を合図に、機械達が溢れる。それらは主に火砲と放射器で武装しており、たからを狙って火噴の乱射を始めた。無音で吼える龍が宙を駆けて、爪と尾を振り回し、近付く機械を遠くへと投げ飛ばす。
 杜環子は古巻貝の変じた杖を振るい、再びおまじないを唇に乗せる。それは先程より、もっと深い闇を潜んだものだけれど。ぽちゃんと一滴の雫が生まれると、それは空気中の水蒸気を全て巻き込んで大きな水流となる。織りあげた水と海の魔法はごうごうと、嵐と津波のように機械群を押し流していく。
 火と水では相性が悪い、そう察したマザーが金の瞳を開ける。割れた鉄の大地から生み出されたのは、無数の刃を纏った殺戮兵器。兵器は水に呑まれた兄弟達の残骸を喰らうと、それらを糧にめきめきと新たな長い腕と刃を生やす。勢いよく伸びた鉄腕から二人の少女を守ろうと、龍が全身で食い止めるものの、刃が龍の尾をずたずたに裂く。紙片が空中に散る間から、刃が尋常ではない速度で此方に迫る。
「たから様!」
 咄嗟に振るった杖の動きに激流が従って、羅刹と刃の間に大きな壁をつくりあげる。威力を弱めて一気に方向をずらすと、少女達のすぐ近くに刃が墜ちた。すかさず尾を失くした龍が鉄腕を締めあげ、刃諸共捻じ曲げ破壊する。膨大な魔力を一度に撃ち込んだからか、白磁の膚に汗が滲む。
「杜環子、大丈夫ですか。あの龍は、」
「ええ、この程度。平気でございまする。かの龍の子も、大役を終えたまでのこと」
 彼女の加護があるからか、たからには傷ひとつついていない。よかった、と少しばかり安心すると、機母の苛立つ声がする。
『誰も彼もが、そうまでして彼女を守りたいと。グリモア猟兵は、私の想像以上に貴重でしたか』
「それだけではありません。たから様は、わたくしを信じて下さいました……たかが万華鏡のわたくしを」
 万華鏡の娘は、ごく当たり前のように友達と言ってくれたことがうれしかった。羅刹の娘は、それが不思議なことだとはひとつも思っていなくても。
 ――だから応えましょう、ゆえに見せましょう。
「機械の貴女は知りますまい――万華鏡は鏡を組んで作るもの。ゆえに合わせ鏡の終わりなき世界が、わたくしの内にはあるのです」
 差し上げましょう、本当の恐怖を。終わりなく、出口の無い地獄へお招きいたしましょう。
 藍色の眼が、深い海の底へ連れていく。帯留めの鏡をさらりとしろい指先が撫でた時、無数のちいさな鏡がマザーを取り囲んだ。四方八方、逃げ場なく鏡面に映る自分の姿に、これは、と呟いて。
「わたくし、ヤドリガミではございますが――……愛も過ぎれば怨交じり、情け過ぎれば恨も含む」
 こう見えまして、呪い上手な悪霊ですから、ね?
 うっそりと微笑う姿に、女の人工知能が警鐘を鳴らす。たから様、と呼びかけた杜環子に続くように、雪と霰の奔流が天から降り注ぎ、マザーを動きを止める。
「己が映ることを恐れなさい」
 渦巻く激流の嵐が、ごうごうと魔鏡全てを穿つ。無数の鏡が甲高い音と共に割れた時、鏡に映っていた女の四肢も次々に罅割れていく。
『馬鹿な……!?』
「言ったでしょう、呪い上手な悪霊だと」
 女の頸を映した鏡が、割れる。最期の言葉を発する間もなく、鏡面に映る全てが砕け散った。


 機械都市の成れの果てをあとにして、綺羅雪はグリモアベースへ帰還する。

「ご迷惑をおかけしました、本当にありがとうございます」

 猟兵ひとりひとりに頭を下げて、羅刹の娘は雪と色硝子の双眸でまっすぐ彼らの顔を見る。
 それはいつもの彼女で、けれど揺らぐことのない無表情が決意に満ちている。

「皆さんが困った時は、今度はたからが必ず皆さんをすくいます」

 なんでも言ってくださいね。少女はそう言って、ほのかに顔を緩めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月04日


挿絵イラスト