アポカリプス・ランページ⑯〜デトロイト・マザー・シティ
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「まさかオブリビオン・フォーミュラを悉く駆逐してこようとは。私の、あるいは全ての理論と計算を超える存在。それが猟兵ということなのでしょう」
そう呟くのは透明な球体の中に入った裸体の女性。
「私は真理を思索したい。それ故に、その妨げとなるものを掃討せねばならない」
女性は髪や体に繋がったコードに何かを流し、自身を取り巻く機会を操作する。
「排除すべきものは多くあります。ですが、今最優先で対処しなければならないもの。それは猟兵……その中でも猟兵が各地に飛ぶ起点となるグリモア猟兵」
目標を設定すると、彼女の体に繋がるコンピュータ。そしてその支配下にある全てが鋼鉄の町を形成し始める。
「さあ、かかってきなさい猟兵。最大の力こそ最大の弱点である、それを教えてあげましょう」
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「皆、お疲れ様。アポカリプス・ランページの依頼をするわ」
グリモアベースにて、子豚・オーロラ(豚房流剣士・f02440)が猟兵を前に声を上げた。
「いよいよ最後のフィールド・オブ・ナイン、『マザー・コンピュータ』への道が開けたわ。彼女を倒せばもうアポカリプス・ランページにその先の道はない。心置きなくアメリカ大陸制覇を目指せるわ」
今回の戦いの核となるフルスロットル・ヴォーテックスよりも奥に位置していた彼女。あるいは彼女を持って真のゴールと見ていた者もいるかもしれない。
「場所はミシガン州デトロイト。工業都市、犯罪都市、映画や音楽、テレビゲームなんかでも色々な形で有名な町ね」
行ったことはなくとも一度は名前を聞いたことがある、そんな者も多いだろう。
「マザー・コンピュータはこのデトロイト全てを自分と一体化したコンピュータと接続、街そのものを増殖無限戦闘機械都市として掌握しているわ。だから皆には彼女の体内と化したこのデトロイトに乗り込み、その中にいるマザー本体を破壊してちょうだい」
デトロイト全てがマザーの意思に酔って戦闘機械と化している。大地、建物、空さえも戦闘用の機械で埋め尽くされ、様々な形での攻撃を絶え間なくかけてくるという。
「幸いマザー自身は通常の手段で破壊できるわ。普通に殴って壊してしまえばいい。ただ一つ、皆には迷惑なお願いをしなきゃならないの」
そう言ってオーロラは珍しく言い辛そうに目を伏せる。
「私を、守って戦って欲しいの」
その言葉に、猟兵たちは耳を疑った。グリモア猟兵はオブリビオンの危険がある限り現地には赴かず、グリモアベースでの支援に徹する。これは猟兵が活動を始めた時からの鉄則のはずだ。
「私だって行きたくて行くんじゃないわ。どういう原理か知らないけれど、この予知を行ったグリモア猟兵は転移に巻き込まれて一緒にデトロイトへ送られてしまうの」
グリモア猟兵が死ねば追加の猟兵は来れないし、首尾よくマザーを倒したとしても帰還することができない。それこそが狙いなのだろうと、オーロラは言う。
「恐らく敵は可能な限り私を優先的に狙ってくる。最もそう考えられていると見越して私を餌にして皆の方を巻き込もうとする可能性もあるわ。もちろん私だってそれ相応には戦えるつもりよ。けど、万一の時は悪いけど自分の身を守ることを優先させてもらう。文句はグリモアベースに戻れてからいくらでも聞くわ」
心底悔しそうに言うオーロラ。グリモア猟兵としての役目を考えれば妥当な判断でこそあるが、武術家を名乗る彼女の事、決して本意ではないのだろう。
「マザー本体も何もしてこないわけじゃない。戦闘機械に乗って移動したり、こちらの行動に合わせて新たな機械を創造したり、自分の体を戦闘機械に変えたりもする。街とマザーの両方が敵になると、そう考えて」
オーロラはそう言ってから強い信頼を込めた目で猟兵を見回し、グリモアを起動する。
「私の命を皆に預けるわ。皆ならきっとマザーを倒せると信じてる。一緒にグリモアベースに帰りましょう」
そう言って転移の光の中へ、オーロラは猟兵と共に飲み込まれていった。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。アメリカ大陸横断完了ですね。
今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス……グリモア猟兵を守りつつ、増殖無限戦闘機械都市の攻撃を凌ぎつつ、マザーと戦う』
戦場であるデトロイトシティはその全てが『増殖無限戦闘機械』となっています。空には無人の軍用ヘリが飛び回り、建物の窓からは機銃が狙い、道路には棘付きタイヤの車が走り、小道に入ればレーザートラップが向かってきます。これらをかわしつつ、自分でも動いてくるマザーと戦ってください。
また大きな注意点として、今回の戦場にはグリモア猟兵のオーロラが同行します。ただし共闘というよりは護衛対象という扱いに近く、彼女が殺されてしまえば依頼は失敗です。様々な指示を出し彼女を守りながら戦ってください。
基本的に支持には従いますが、マザーの目的の一つは彼女を殺し猟兵の増援と帰還を止めてしまうことなので、積極的な交戦はさせない方が無難です。もちろん攻撃指示に従わないわけではないので、がっちり守るかここぞという時に共に攻めさせるか、色々考えて指示を出してみてください。
装備、技能は全て使える他、UCは一つのプレイングにつき『自分が使っているものと同じ能力値のものを一回だけ』使用を支持することができます。成功度は参加者様の成功度と同じものとして判定します。具体的に何が使えるかはオーロラのステシを参照してください。なお、このシナリオのオープニング公開から依頼完結までは、レベルアップを除いてオーロラの装備や技能を弄りません。
注意事項が多い上に難易度『やや難』ですが、的確に動けばきっと勝利への道が開けてくるでしょう。
それでは、どんな思索をも超えるプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『マザー・コンピュータ増殖無限戦闘機械都市』
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POW : マシン・マザー
全長=年齢mの【巨大戦闘機械】に変身し、レベル×100km/hの飛翔、年齢×1人の運搬、【出現し続ける機械兵器群】による攻撃を可能にする。
SPD : トランスフォーム・デトロイト
自身が装備する【デトロイト市(増殖無限戦闘機械都市)】を変形させ騎乗する事で、自身の移動速度と戦闘力を増強する。
WIZ : マザーズ・コール
【増殖無限戦闘機械都市の地面】から、対象の【猟兵を撃破する】という願いを叶える【対猟兵戦闘機械】を創造する。[対猟兵戦闘機械]をうまく使わないと願いは叶わない。
イラスト:有坂U
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
死絡・送
共闘OKアドリブOK
仲間達と協力してオーロラさんを守りつつ戦う。
「街そのものが敵って、シューティングゲームかよ!」
ジガンソーレに乗って参加。
移動は空中浮遊とダッシュ。
機体のレーダーで情報取集と索敵でルートの割り出しをして
仲間へ情報を伝える。
敵の攻撃に対しては、オーラ防御と念動力でバリヤーを展開。
ルーチェ・デル・ソーレで範囲攻撃と貫通攻撃を組み合わせ光線を射て弾幕を張る。
オーロラさんの様子はこちらも確認し、場合によってはラッゾプーニョの
ロケットパンチを飛ばして、かばうとジャストガードの援護防御を飛ばす。
ユーベルコードは、仲間達の攻撃に合わせて使う。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
大変な状況ですねぇ。
【炳輦】を発動、オーロラさんを『結界内』に入れて保護し飛行しますぅ。
[結界術]で強化した『防御結界』に『FMS』のバリア、『FGS』の重力結界を重ねた三重の防御で守りを固め、尚突破されそうな場合は『瞬間移動』で躱すか[カウンター]で破壊し対処しますねぇ。
後は戦場全体を巻込む『時空切断の嵐』に『FRS』『FSS』による[砲撃]と『FDS』の対巨大兵器用の[爆撃]による[範囲攻撃]を重ね、機械兵器群共々マザーを狙いますぅ。
巨大化したマザー相手であれば、一部の『FGS』を攻撃に回し、重力弾で狙うのも良いですねぇ。
あれ程の巨体、重力弾の影響は強い筈ですので。
木霊・ウタ
心情
オーロラを守り
マザーを倒すぜ
戦闘
獄炎纏う焔摩天を振るって
機械群をぶっ壊しながら進む
炎の剣風を放って機械やミサイルを
過熱させたり爆発させたり
高熱で空気を歪めてレーザーを捻じ曲げたり
大剣や炎の壁で受けてオーロラを庇う
もちろん万が一の時は俺自身が庇い
噴出する炎で敵を倒す
マザーを見つけたら
迦楼羅を炎翼として顕現し飛行して突撃
マザーを倒す
適当に身を守っててくれ>オーロラ
巨大戦闘機械に取りつき
ぶっ壊し燃やしながら
その内部に突入
無理なら獄炎だけ内部へ延焼
徐々に機能ダウンさせていく
本体の居場所がわかったら
炎を刀身に集めて大焔摩天として
紅蓮の光刃で一閃し海へ還す
俺達は未来へ進む
紅蓮に抱かれて眠れ
事後に鎮魂曲
ミシガン州デトロイト、かつては一大工業都市として名を馳せたその場所も、今や他と変わらぬただの荒野と化した……そのはずであった。だが、今その血は勝つ手を彷彿とさせる機械だらけの街へと姿を変えていた。
否、例えその最盛期であってもこのような姿であったことなどないだろう。走る車は全て武装し、空までが機械に覆われ、そして立ち並ぶ建築物の内外には一人の人間もいない。
人の営みの一つである工業とはまるで違う、一切の生あるものの介在のないただ殺すための機械がひしめく街と化したデトロイト。その機械の街に、命ある者たちが乗り込んできた。
「大変な状況ですねぇ」
機械の街を見上げ、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が普段と変わらぬ調子で呟く。その生命の存在を感知したか、街を埋め尽くしていた機械が一斉に起動、搭載された武装をそちら側へ向けた。
まず一斉に突っ込んできたのは、ホイールに刃を取り付けバンパーには鋭い棘を無数に生やした無人の車の群れ。移動手段としての利便性を捨て、何かをひき潰し殺戮するための攻撃性の身に特化したその車が小柄なるこるを蹂躙せんと唸りを上げて迫る。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて典礼を捧げましょう」
その迫る車を、るこるは【豊乳女神の加護・炳輦】による時空切断の嵐でなぎ払った。攻撃性に特化したその車は耐久など考慮していないのか、まるで玩具のように簡単に切り刻まれていく。
さらにその上空を一機の巨大機械が飛行していった。だがそれの目指す先は侵入者側ではなく、街の内部、この機械都市の中枢があると目される側。
「街そのものが敵って、シューティングゲームかよ!」
スーパーロボット『ジガンソーレ』の中で死絡・送(ノーブルバット・f00528)が言う通り、彼が飛ぶ空中にも無数の軍用ヘリが犇めき、地上のマンホールが開いて対空砲が機体を狙っていた。
それらが一斉射撃を仕掛けてくるが、送は機体全てを守る巨大なオーラを展開してそれを防ぐ。さらにお返しとばかりに『ルーチェ・デル・ソーレ』で弾幕を張って攻撃者たちをなぎ払った。
だが、それをまるで意に介しないかのように奥のビルから次のヘリが飛び立ち、地面が開いて並んで兵器が狙いをつけてくる。まさにそれは先に進めば次々敵が出てくるシューティングゲームの如しだ。
そして侵入者を纏めて撃滅するかのように小型ミサイルが飛来する。熱感知機能でもあるのかそれは一直線にジガンソーレへ向かっていくが、突如としてその軌道は下方へと変えられた。
その先にあった炎に巻かれ、ミサイルは纏めて爆発する。その炎を放ったのは木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)だ。
ウタはチャフ・フレアのように放った炎を今度は自分の前方一帯に放ち、その辺りにあった低層の建物を纏めて焼き払う。外装が焼け崩れた建物の中には大型戦車が格納されており、炎に巻かれながらも前進してこようとするそれを大剣『焔摩天』を振るって真ん中から両断した。
さらにそれによって立ち上る爆炎と熱気が光を歪め、進み来るレーザートラップの照準を散らせて直撃を防ぐ。自身への攻撃が散ったことを確認したウタは、そちらの無事を確認するかのようにちらりと後ろを振り向いた。
その瞬間視線の先にあるのは、下方からその場所を貫かんとする別の物理トラップであった。
ウタはとっさにそこに滑り込んで突き出てきたドリルを自分の剣と体で受け止め、そのまま炎を爆発させて破壊する。
その罠が本来狙っていた先には、一人の半裸の女性の姿があった。
「ありがとう……」
彼女は子豚・オーロラ。三人をこの地へと転移させたグリモア猟兵である。本来グリモアベースで猟兵の移動をサポートするべき存在である彼女だが、敵の力によって今回は本人の意思とは関係なく戦場へ引きずり出されてしまっていた。
その目的は彼女を抹殺し猟兵の転移と帰還を妨げることと目されており、猟兵たちは彼女を守りながらの戦いを余儀なくされていたのだ。
今、オーロラの周囲にはるこるの張った結界と、さらにはバリアと重力波による三重の防御が敷かれている。並の攻撃ならばこれで防げるが、大都市一つ分に相当する敵の物量はそれをもってしてもなお多い。
実際に対処の合間を縫って飛んできた巨大ミサイルがオーロラの直前で外装を展開、無数のマイクロミサイルとなってその守りを崩しにかかった。
「こちらへどうぞぉ」
この物量は防ぎきれぬと見たるこるはオーロラを連れ瞬間移動。直前まで彼女のいたところで目標を失ったミサイル同士がぶつかり、大爆発を起こしていた。
だが移動した先、そこにむけて無数の戦闘機が突っ込んできた。移動先を読んでいたということではなく、街全てが敵である故に安地などないということだろう。
超高速の突撃が重力さえ振り切りオーロラに迫る。その航空機を、巨大な鋼の拳が叩き落とした。
ジガンソーレが放ったロケットパンチ『ラッゾプーニョ』。外れた片手を呼び戻しつつ、送はセンサーに移る敵の位置を確認する。
「敵の所在地が分かった。あれだ!」
ジガンソーレが残った方の手で指さしたもの。それはデトロイトの象徴の一つである73階建ての超高層タワービルだ。
「あの中にマザーがいるのか」
ウタが確認するように言う。ならまずはあそこに乗り込むところから……そう考える彼の思考を、驚愕の一声が断ち切った。
「違う! あれそのものがマザー・コンピュータだ!」
このデトロイト自体がフィールド・オブ・ナインが一人マザー・コンピュータが作り上げたもの。そしてその彼女のユーベルコードは、己を巨大戦闘機械へ変えてしまうというものであった。
永遠の思索を望むマザー・コンピュータ、その思索に費やした年月は如何程か。その時を大きさに変えた機械は、巨大ビルという姿となって猟兵の前に聳え立っていた。
そのビルの入口が開き、無数の自動車が突撃をかけてくる。その数は先に道路を走っていた者とは比較にもならず、マザー自身が兵器であると同時に兵器を生み出す工場にもなっていることを示していた。
「そこにいるのならば」
だが、見えている敵が自分に向かって攻撃を仕掛けてきている。ならばそこはもう戦場だ。るこるが起こす戦場を包む切断の嵐が車を容易く切り裂き、さらには『背景』から『敵』へと変わったマザーを一気に切り刻む。
「エレベーターはいらないぜ、こいつがある!」
そしてあれが敵そのものならば律義にエントランスから受付を通る必要などない。ウタは『迦楼羅』を炎翼として顕現し、その翼をはためかせビル中腹部に突撃をかけた。
「適当に身を守っててくれ!」
オーロラに言い残しビルへ飛び込むウタ。そしてその後を太陽の如き機体が追った。
「どちらかというと怪獣の領分だがな!」
ビル上部にそのまま体当たりをかけるジガンソーレ。まるでビルが樹木の様に大きくたわみ、その窓ガラスが割れ下方にシャワーの如く降り注ぐ。
「刻まれなさい」
まるで街全体へのアナウンスであるかのように、初めて聞こえたマザーの声。その声に応じるかの如くガラスの刃が街に突き刺さるが、しかしこのような狙いを定めぬ攻撃ではるこるのバリアはまだ破れない。
「居場所は既に見えています」
あくまで目的はグリモア猟兵と、割れた窓からのぞく無数の機銃を全てそちらへ向けたマザー。流石にこの数を一斉掃射されればいかに堅い守りとて貫かれよう。
「……お願い!」
それは誰もが分かっている。だからオーロラは、仲間たちに全てを託した。
無数の機銃が子豚をミンチに変える、その瞬間、るこるは再度瞬間移動し中空へとオーロラを連れ去った。それとほぼ同時に、二人が立っていた場所が無数の銃弾にクレーターの如く抉られる。
だが、マザーも追撃を諦めない。その方法は銃の向きを変えることではない。
マザーの巨体が、根元から飛んだ。
「知ってたけど……!」
ビルが飛ぶ、そのありえない光景に予知していたオーロラさえ驚愕する。だが、直後にそのビルはデトロイトの街を潰しながら横倒しになった。
「それだけの巨体ならば」
上から攻撃されるならもう重力波は壁とならない。それ故るこるは重力操作装置『FGS』を差し向け、マザーの飛翔を阻止したのだ。そしてその重力は空にいた戦闘機械さえ巻き込み、最早空戦をかけてくる者は敵方にはいなくなる。
横倒しになったマザーの巨体。力を込め再度飛翔しようとするが、その体はなぜか動かない。
「なぜ……!」
「でかくても所詮は機械だな!」
その声はマザーの体、ビルの中から聞こえた。ビルへと突撃したウタはその内部を【ブレイズフレイム】を振りまきながら進み、その機能をダウンさせたのだ。それはまるで『バグ』の語源ともなった機械の中に入り込んだ虫の如く。だが、虫というにはその炎は余りにも熱く、気高い。
その熱が遮られる場所、そこにとっておきの一撃『大焔摩天』の紅蓮の光刃が叩き込まれた。まるで輪切りにされたようにビルが両断され、そこから中枢部の如きガラス玉……周囲との接続を切られたマザー本体が転がり出た。その姿は奇しくも己が滅さんとした相手と同じく、防護膜に守られた裸体の美女同士。なれど、その一枚外を取り巻く者はまるで違う。
「俺達は未来へ進む。紅蓮に抱かれて眠れ」
ウタの言葉が合図となったかのように、剥き出しになったマザーにジガンソーレの光がむけられた。
「全てを光に変えて消す!! 光子魚雷、射て~~~~~~~っ!!」
味方の攻撃に呼応し、【光子魚雷一万発発射!!】が放たれた。光の嵐が死に体となったビル、そして引きずり出されたマザーに容赦なく降り注ぐ。
「あぁっ……!」
それはマザーが用いたのと同じ『兵器』と呼べるもの。だが未来を照らし、先へ進める明るい力。
暗き永遠の思索に沈まんとする女が、周囲の超高層ビル群諸共光の中へと飲み込まれた。
マザーのダウンによって操作が途絶えたか、機械のうなりに満ちていたデトロイトに一瞬静寂が満ちる。
背と手でオーロラをかばいつつ、その地に降り立つるこるとジガンソーレ。そしてウタは崩れたビルの中で、マザーとデトロイトの街そのものへの鎮魂歌を歌うのであった。
大成功
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御園・桜花
「オーロラさん、車に同乗しません?」
「避ける方は問題ないかと。攻撃も通り易くなりますし、マザーの首を狙ってみませんか」
UC「出前一丁・壱」
セントメアリー・ベースで拾ってきたマザーの歌声を外部スピーカーで流しながら進撃
ルートは第六感で選択
攻撃も第六感や見切りで躱す
軽機関銃で銃弾ばらまきながらマザーの元へ
運転しながら高速・多重詠唱
炎と雷の精霊召喚
属性攻撃でポッドごとマザー破壊試みる
「今の貴女はオリジナルの貴女とは別物の狂った機械。全を一にし思索に耽溺すれば、辿り着くのは相対的な視野を欠く狂気だけ」
「コアになった、狂う前のマザーには救われて欲しいから。貴女を滅し一瞬でも彼女の願いを確認したいのです」
マザーの変じた巨大ビルが破壊され、それと共に沈黙したデトロイトの街。だがその街に再び明かりが灯り、街全体が駆動音を立て始める。
これは即ち、街がまだ死んでいない……つまりマザーが未だに存命であるという証であった。
なれど、彼女の狙うグリモア猟兵、オーロラもまだ生きている。そしてグリモア猟兵が生きている限り、再びこのデトロイトに増援が駆けつけることができるのだ。
デトロイトの街を、颯爽と一台のピンク色の車が駆け抜けてきた。それはキャンピングカーを改造したケータリングサービス用の車。サイド部分は大きく開いてひさしが着き、そこに椅子の一つも並べてしまえばあっという間に町に溶け込む移動販売車となるだろう。
「オーロラさん、車に同乗しません?」
その運転席からハイカーをピックアップするかのように明るく言うのは御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)。もちろん遊びに誘っているのではない。彼女もまたこの事態の解決のため依頼に応じ、ここに転移してきた猟兵なのだ。
「ありがとう。乗せてもらうわ」
その誘いに応じ車に乗り込むオーロラ。彼女の乗車を確認し、桜花は思い切りアクセルを踏んだ。
デトロイトの街をキャンピングカーが走りだす。その前方から、無数の車が走って来た。走っているのは対向車線などではない。キャンピングカーが走る正にその道を、彼女との正面衝突コースを取って高速で突っ込んでくるのだ。
その車もタイヤには横に突き出した棘がありそれがミキサーの如く回転し、バンパーは前方に刃の様に突き出している。おまけに車体の上にはパトライトの代わりとでもいうのか当たりに無節操に弾丸を撒き散らす回転式の機関銃付きだ。
真正面からくるそんな暴走者の群れを、桜花は避けるどころかアクセルを踏み込んで迎え撃った。
「場デリバリーはお任せ下さい……行きます!」
一気に加速するキャンピングカー。まるでギロチンの刃のようなバンパーがその車体とぶつかる……その瞬間、一気にハンドルを右に切りギリギリでその車を躱した。
目標を見失った車は猛スピードですれ違った後後方へ去っていくが、桜花の運転するキャンピングカーもまた急な方向転換によって路側帯を踏み越え、そのままよこの建物の壁にぶつかってしまう。
大きく揺れるキャンピングカー。だが、そのぶつかった反動で車の向きを前に直し、そのまま歩道を爆走しはじめた。そしてその車体には、傷一つない。
「避ける方は問題ないかと。攻撃も通り易くなりますし、マザーの首を狙ってみませんか」
【出前一丁・壱】の力で地形激突によるダメージはこの車は一切受けることがない。どんな猛スピードで接触しようと、それが地形である限りそれはただのクッション、もしくは方向修正の補助具にも等しい。
そのまますべてが安全地帯となった道路を、軽機関銃をばらまきノリノリで走り抜けていくキャンピングカー。直感に従うまま細い裏路地、急な坂道、はてはビルの中まで強引に駆け抜け、マザーの居場所を探す。
後ろでは追いかけてきた車が道なき道にぶつかり音を立て次々とクラッシュしていくが、桜花はそれよりももっといい音楽があるとばかりに車のスピーカーのスイッチを入れた。
そこから流れるのはセントメアリー・ベースのデータから引っ張り出してきたマザーの歌声。ソーシャルディーヴァの源流とも言われるその歌声が朗々とデトロイトに響き渡る。
そしてその歌声に惹かれるように、コンボイと呼ばれる巨大なトラックの群れがビルさえもぶち抜いて爆走してきた。
横に連結されたその荷台の上には、透明なガラス球に入った裸体の美女。
「悪趣味ですね。人の過去を曝して辱める気ですか」
自身の歌声を、まるで捨て去った黒歴史でもあるかのごとく否定しながらコンボイを操るマザー。デトロイトは自動車工業でも有名な都市であり、彼女の騎乗するトラックの群れも彼女がユーベルコードによって作り出したものなのだろう。
過去を否定するマザーの言葉を、桜花は真っ直ぐに受け止める。
「今の貴女はオリジナルの貴女とは別物の狂った機械。全を一にし思索に耽溺すれば、辿り着くのは相対的な視野を欠く狂気だけ」
オブリビオンと化した者は世界の破壊を基調にその思考をゆがめられる。オブリビオンの長たるオブリビオン・フォーミュラもまたその定めから逃れられていないのかもしれない。そう考えた桜花は、高速で呪文を繰り返し唱え雷と炎の精霊を多重に車体に宿し、一気にマザーに向けてアクセルを踏む。
「ひき潰しなさい、デトロイトの力!」
いかにキャンピングカーとはいえコンボイ相手ではあまりに車体の大きさが違う。そのまま質量差で押し潰そうと加速したマザーの前で、ピンクのキャンピングカーが宙を舞った。
「コアになった、狂う前のマザーには救われて欲しいから。貴女を滅し一瞬でも彼女の願いを確認したいのです」
自らコンピュータのコアとなったマザー。その意思は気高く、美しかったと信じ、その為に歪んだコピーである今のマザーを滅したい。
ありったけの詠唱を重ねた炎雷に包まれたキャンピングカーが、迫るトラックの車体を飛び越えマザーを包むガラス球に激突した。
激しい衝突音。そして後方に着地し、キャンピングカーは走り去っていく。
「……砕けてはいない。でも相当な罅は入ったわ」
店舗部分に隠れながら様子を見守っていたオーロラが運転席の桜花に告げた。もう後ろから暴走車は追ってこない。それが自身の願いを込めた一撃の成果なのだと信じ、桜花は車を走らせるのであった。
大成功
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アダム・レイン
【POW】
「上手く行けば敵を一気に潰せるかもしれない作戦がある。キザな台詞は柄じゃないけど…僕を信じろ…!」と強がりつつゲドン・ザウラーに乗る
オーロラにはなるべくザウラーから離れないように指示。基本的にはブーメランアックスの【投擲】や【レーザー射撃】、【対空攻撃】で応戦するがオーロラが危機に陥ったら【オーラ防御】を展開し盾になる
マザー本体が来たらオーロラに最後の指示
「キャバリアの背中に捕まれ!呪詛耐性があるなら貴女は僕のキャバリアに触れるはず。」
マザーと敵の集団がオーロラ狙いでザウラー目掛けて殺到してきたら、そのタイミングでEx.roar。一網打尽を狙う
「結構無茶な作戦でしたね。すみません。」
マザーの管理するデトロイトシティ。戦いの中でその街並みは何度も破壊されたが、マザーがいる限りその街は元に戻る。
だが、その街の中に人の姿は一切ない。このデトロイトは増殖無限戦闘機械都市、侵入者を囲み、殺すためだけに作られた生命の息吹なき冷たい死の平気なのだ。
その人なき摩天楼の中に、一機のロボットが立った。身長およそ5メートル、人間と比べればはるかに大きいが、周囲を囲むビル群に比べればはるかに小さい。そしてその傍らには、その機体に守られるかのように立つ半裸の美女が一人。
「上手く行けば敵を一気に潰せるかもしれない作戦がある。キザな台詞は柄じゃないけど……僕を信じろ……!」
アダム・レイン(ダイナソーライダー・f30865)の駆るオブリビオンマシン『ゲドン・ザウラー』。アダムは自身の故郷を滅ぼし、何の因果か今は自分の愛機となったそのザウラーの中で緊張と決意の面持ちでそう告げた。
まずは守護対象であるグリモア猟兵オーロラに、なるべくザウラーから離れないよう指示する。その指示通りオーロラにがザウラーの陰に移動すると、時を同じくして街の中から大量の戦闘機械たちがうなりを上げて現れた。
武装した車の地上部隊と、戦闘機や軍用ヘリで構成された航空部隊。それを立った一機で迎え撃つザウラーはまさにロボットアニメの主役機の如く。
だが、これは胸躍る熱血アニメではない。全てを奪われた少年とそれを成したオブリビオンマシンの奇異なる共闘であり、猟兵としての使命を負った過酷な任務。
それ故、敵の迎撃にも容赦はない。ザウラーはその手に持った血がしみ込んだかのような黒いブーメランアックス『Tyrannus』を大きく振りかぶり、思い切り投擲した。巨大な斧が回転し車の群れを次々と切り裂き、なぎ払っていく。クロムキャバリアの技術で作られた兵器であるその斧は、例え目標に当たっても減速などしない。車両に生えた棘をへし折り、迎撃の銃弾を跳ね返し、相手の装甲を紙の様に切り裂いては弧を描いて飛んでいく。
無論敵は前からだけ来るのではない。上空からは小型戦闘機が雲霞の如く押し寄せ、ザウラーをその物量で押し潰そうとする。
それに対してもアダムは引くことなく、ザウラーに対空レーザーの使用を支持、次々と期待を撃ち抜かせ墜落させていく。
それでも余りの数に射撃が間に合わず抜けてくる者もいる。それらのヘリや戦闘機が、一気に小型ミサイルを大量に放ちザウラーを包囲殲滅せんとした。それに対しては落ちてきた戦闘機の一体をザウラーの尻尾『スピア・テイル』で串刺しにし捕獲、そのままテイルを鞭のようにしならせ振り回すことで敵機をハンマーのように使い、そこにぶち当てることで強引に叩き落としていった。
爆炎上がる豪快な戦闘機械同士の戦い。だがその脇で、ごく小さな機銃つきドローンが戦火に紛れザウラーの脇に潜り込んでいた。
その狙いはグリモア猟兵であるオーロラ。彼女に向け、ドローンたちは一気に走者をかける。
「そのくらい!」
だが、そうした敵がいるのもアダムの予想のうちだ。機体からオーラを広げて壁とし、その銃弾を弾いていく。元は将軍機であるザウラーにとってはこの程度は豆鉄砲、そしてドローンなどは羽虫に等しい。苦も無くそれらを払い、群れ来る戦闘機械を全て押し返していった。
「あなた方に数の戦法は通じ難いようです。大きさこそが力、そのシンプルな理論をお教えしましょう」
街に響く女声のアナウンス。それと同時に後方のビル群が倒れ、道となった底を巨大な自動車が進んできた。
巨大、と言っても並の巨大さではない。5メートルのザウラーが乗ってなおアンパランスとなりそうなほどの、超巨大なオープンカーだ。
20世紀初頭にデトロイトで開発された、自動車産業の原点を作ったというその車。その車へと変じたマザーがその圧倒的な質量でザウラーを踏み潰さんとデトロイトの街を猛進してきたのだ。
だがこの超巨大マザー、これが来る時が勝負の賭けどころだと、アダムもまた考えていた。
その時が来たと覚悟を決め、通信機能越しにオーロラに声をかける。
「キャバリアの背中に捕まれ! 呪詛耐性があるなら貴女は僕のキャバリアに触れるはず」
搭乗者さえ狂わせるオブリビオンマシン。だが猟兵ならそれに抗い乗りこなせるという。現にアダムはザウラーに乗りながら正気を保ったまま戦い続けている。そしてオーロラも猟兵であり、自身の持つ技の反動に抑え込むため呪詛に耐える鍛錬を積んでいる。その期待に応えるべく、オーロラはザウラーの背中にしがみつき、その心身を震わせることでオブリビオンマシンからの浸食を跳ね返した。
彼女が無事背に取り付いたことを確認したアダムは、彼女をその背にかばうように体を広げながら頭部の発射口を開けた。
「怖いか?僕も怖い。だけど、使うしかないんだ! Ex.roar!」
その口からまるで怪獣が光線を吐くかの如く、【Ex.roar】の破壊光線を発射した。
全てをなぎ払うその光線は周囲の有象無象の戦闘期待を瞬く間に蒸発させ、マザーの巨体ともまた押し合う。
「この程度の破壊……踏み越えましょう!」
質量によるごり押し、それを破壊光線をより強く発してアダムは押し返そうとする。
「お前ひとりを倒せば増援は止む。もう怖い奴らは出てこなくなる……!」
本当は臆病な性格であるアダム。だが戦いに全力を出すことは厭わないし、そのためなら恐怖心だって力に変える。恐怖は身を守るための防衛機構、命あるものの特権。その意思が乗り移ったかのように、マザーの変じた巨大車はその正面部分から崩れ、砕けていった。
「いけぇぇぇぇぇっ!!」
巨体を破壊光線が全て包む。そしてその走者が終わった時、ザウラーの前方には文字通りに何も残っていなかった。
アダムは操縦席の中で力を抜き、大きく息をつく。
「結構無茶な作戦でしたね。すみません」
敵を集めて大元のマザーごと一掃するという博打じみた作戦を取ったことを謝罪するアダム。
「いいえ、見事な作戦だったわ、ありがとう」
ザウラーの背から降り、オーロラはカメラ越しにアダムに微笑みかけるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ドゥルール・ブラッドティアーズ
グロ× WIZ
【ダッシュ】でオーロラに駆け寄り
【オーラ防御】で敵の攻撃から庇う
間に合ったようね。
オーロラを助けるのも、マザーを救うのも
『私達の楽園』で豚房流の霊112人を召喚。
オーロラにも『百肉繚乱』を指示
対猟兵戦闘機械なら
オブリビオン相手は想定外の筈よ
爆乳での【怪力・2回攻撃・早業】や
【属性攻撃・乱れ撃ち】で攻めつつ
【第六感・見切り・激痛耐性】と無限の再生能力で
私やオーロラを守ってくれている間に
機械都市に【念動力・ハッキング】
無防備になったマザーを抱きしめ【捕縛】
媚毒の【呪詛】母乳を飲ませつつ
指先で局部を【慰め】骨抜きに
私が貴女を永遠にするわ。
愛という真理と共に
全身を擦り合わせ【生命力吸収】
再び沈黙したデトロイトの街。マザーは倒れたのか、それとも一時撤退しただけか。確認のためオーロラは周囲を慎重に探索しようとする。
だが一歩踏み出した時、すぐ隣の建物の扉が開き巨大なニードルガンが飛び出て来た。
「しまっ……!」
突然のことに反応が遅れるオーロラ。その豊満な体が穴だらけになる、その瞬間に駆け込んできた一人の女が、銃とオーロラの間に割り込んだ。そのままオーラを広げ、針を全て弾き返し銃自体も押し潰して沈黙させる。
「間に合ったようね。オーロラを助けるのも、マザーを救うのも」
「来てくれたのね、ありがとう」
駆け込んできたのはドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)。人助け、という言葉を嫌いそうな彼女が自信を助けてくれたことに感謝しつつも、あくまで多くを語らずに依頼者として礼だけを述べるオーロラ。
だがその救うという言葉に反応……あるいは拒絶するかのように、沈黙していたデトロイトがまたも動き始めた。
「猟兵を確認……対猟兵戦闘機械、全機投入します」
道路が開きマンホールが裏返り、その下から出てくるのは対猟兵に特化した機械兵士の軍団。人型こそしているが、その体は銀の機械スーツに包まれたいかにもなロボットだ。広域殲滅を役目としていたこれまでの車両や航空機と違い、対象を明確に定め補足する機械の警邏隊といったところだろう。
もちろん彼らは全てマザーの被造物であり配下である。目的は治安維持などではなくグリモア猟兵、そして呼び寄せられたすべての猟兵の抹殺。それ故彼らは対猟兵対抗策を心得ていた。
『グリモア猟兵殺害を優先。ただし即死はさせず救出可能な状態を維持することで他の猟兵の弱点とせよ』
その非情な命令を遂行すべく迫る機械警邏たち。いかに手練れの猟兵とはいえ護対象を追いながら猟兵特化の戦法を持つ集団を相手取るのは難しかろう。
だから、猟兵意外に相手をさせればいい。ドゥルールはオーロラにある技の使用を指示し、自身も身に宿す力を解放した。
「死霊術とは不変不朽の美。その真髄は永遠の愛!!」
「豚房流は剣術のみにあらず、これより魅せるは武と肉の宴!」
ドゥルールの死霊術【私達の楽園】と、オーロラの豚房流剣術【百肉繚乱】。それによって呼び出されたのはあらゆる世界に遍在する武術家豚房流……即ち『オブリビオン』の霊だ。
数多に戦いその身に吸収してきた霊と、自身の知識で再現した霊。それらが乳を揺らし猟兵との戦いしか考えぬ機械の集団を迎え撃つ。
「小せぇ雑魚が何匹来ようが関係ねぇんだよ!」
「頭が高いわ下郎が。平伏せ!」
警官如きに捕らわれぬと無法なる海賊の剛斧と法の上に君臨する女王の槍が強く、早く警邏たちを打ち倒し。
「その逮捕は不当である。そなたらに法の番人たる資格はない」
「ねぇ、ほら、殺していいからさぁ……死んでよ、あんたも! あたしと一緒にさぁ!」
法に則り相手を糾弾する公正なる天秤の裁きと、理屈も理性もなく自分の欲だけを絡めとる荒縄が戒め。
「あら来ますね……乳気敏敏全方絶頂!」
「はいみんなー! 倒れちゃだめだよ、マーチングメドレーはじめー!」
武の都生まれのものが己の最大の特徴たる爆乳で相手の動きを察し、乳を称える応援歌がそれを誇る者たちにさらなる力を与える。
それに後押しされるように、銀盆に守られた後ろから鎌が喉を掻き、近代機械を否定するように忍術が惑わしては魔法がなぎ払い、摩天楼を猫のしなやかな足が蹴り触手が絡みその使い手が縦横に飛び回る。猟兵ではない者たちの動きに警邏隊の動きは完全に翻弄されていた。
「ヒャッハー! てめぇのメモリ貸しやがれ!」
そしてキャタピラの足を持った少女が接続された砲を背負う少女の演算能力を借り、機械都市をハッキングし、その構造と操作をドゥルールに伝える。
そうして機能を逆用され引きずり出されたマザーの本体、そこに一直線に向かっていくのはアメリカの象徴たるボクサースタイルの金髪碧眼娘。
「アメリカは……不滅デース!!」
大地を揺るがす勢いで叩きつけられた剛腕……もとい剛乳が、マザーを守るガラス急を粉々に砕いた。
「馬鹿な……オブリビオンは死の先の強者のはず……!」
滅びの先の栄光の道、そこにあるはずのオブリビオンが自身に牙をむいたことに驚愕するマザーの体をドゥルールが優しく抱き寄せる。
「私が貴女を永遠にするわ。愛という真理と共に」
永遠の思索など必要ないと、彼女に生命の証を含ませ、また生命の根幹部分を慰めてそこから生命力を吸収するドゥルール。
そこ行為を、彼女を知るオーロラは決して止めない。その先に何があれ、それが本来の依頼解決の妨げにはならないことを知っているからだ。
「生命亡き後……そこにあるのは永遠の静寂では……!」
機械と一体化し動けぬマザー、その本体を攻められては最早抗う術もない。機械と接続されていたマザーの髪が切れ、その体は一人の女性として消滅した。
それと同時に唸っていたデトロイトの街がついに完全に沈黙、周囲に満ちる戦闘機械たちも全てその場に倒れ、そのまま鉄屑となって動かなくなった。
「ありがとう、皆……本当に、ありがとう」
静寂に満ちたデトロイトの中、オーロラがここに来てくれた猟兵たちを見て、改めて一人一人に礼を言う。グリモア猟兵は特別な存在などではない。むしろ仲間に支えられねば何もできないか弱き存在なのだ。それを助けてくれた仲間に、オーロラは何度でも感謝をささげる。
「さあ、帰りましょう、グリモアベースへ」
そしてこれが自分の本当の役目。転移の光を開き、自分を救ってくれた頼もしき仲間と共に、オーロラはグリモアベースへと帰るのであった。
大成功
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