アポカリプス・ランページ⑯〜機械都市デトロイト攻略戦
「アポカリプス・ランページへの参戦に感謝します。リムは戦況を報告します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々と、かつてアメリカと呼ばれた地の地図を広げながら語りだした。
「戦局はこちらの優位に決まったと言えるでしょう。全てのフィールド・オブ・ナインの所在は明らかとなり、そのうちの数体は既に撃破が完了しています」
あとは終戦までにどれだけ多くの敵を倒せるかの勝負。ここで取り逃したフィールド・オブ・ナインは、準備していた計画を発動させて再びこの世界に災厄をもたらすだろう。そうなる前にできる限り戦力を削ぎ落としておきたいところだ。
「今回皆様に依頼するのは、デトロイトの急造機械軍製造工場に君臨する『マザー・コンピュータ』の撃破です」
予兆により存在は判明していたもの、道が繋がるのは最後となったフィールド・オブ・ナイン。セントメアリー・ベースでの作戦成果と合わせて明らかになった彼女の能力は、恐るべきものだった。
「マザー・コンピュータはフィールド・オブ・ナインの1体にして、自身が創造した超巨大コンピュータの生体コアでもあります。あらゆる物質・概念を『機械化』する能力を持ち、放置するとアメリカ大陸でさえ、彼女の戦闘機械獣と化すと予測されています」
大陸を丸ごと機会化するほどの力は、まさにオブリビオン・フォーミュラに相応しい。
既にデトロイト市はマザーの体の一部も同然であり、彼女に挑む猟兵はその体内に自ら飛び込むことを余儀なくされる。
「マザーは猟兵の転移を確認すると、デトロイトの都市全てを『増殖無限戦闘機械都市』に変形させ、やって来た猟兵全員を都市内部に閉じ込めます。……それは転移を担当したグリモア猟兵も含まれます」
敵はどうやらグリモアの力に関しても知識があるらしい。もし事件を予知したグリモア猟兵が死んでしまえば新たな猟兵を呼ぶことはできなくなり、また転移してきた猟兵達も閉鎖された都市内部で帰還の手段を失う。考えうる限り最悪の事態になるだろう。
「この状況から脱出するには、マザー・コンピュータを撃破するしかありません」
敵となるのはマザーだけでなく、増殖無限戦闘機械都市と化したデトロイトの全てだ。
大地も空も全てが戦闘機械で埋め尽くされた戦場で、無尽蔵の物量を耐え凌ぎながら、都市のコアであるマザーと戦わなければならない。
「……申し訳ありませんが、リムは今回の依頼中は自衛を優先させていただきます」
リミティアとて猟兵の一員であり、オブリビオンと戦う力は備わっている。だが彼女の死はグリモアによる転移能力の喪失であり、多くの猟兵の生命を窮地に晒すこととなる。
「グリモアの力を守り、退路を確保するための対応であると、どうかご理解ください」
彼女の口調はいつもと変わらぬ淡々としたものだが、内心は穏やかでないのが分かる。
戦いに巻き込まれながらも率先して戦うわけにもいかず、そして他の猟兵達にも負担を強いてしまう事が負い目となっているようだ。
「皆様を戦場に送り届け、退路を確保するのがグリモア猟兵の使命。それを満足に果たせず申し訳ありません。危険の大きな依頼となってしまいますが、どうかお願いします」
リミティアは呼び集めた猟兵達に深く頭を下げ、改めてマザー・コンピュータの撃破を依頼する。リスクのある戦いとなるが、それでもここでフィールド・オブ・ナインを放置するのは、アポカリプスヘルの未来を考えればありえない選択だ。
「転送準備完了です。リムも覚悟はできています」
少女の手のひらの上でグリモアが輝き、デトロイトへの道を開く。都市そのもので武装した、恐るべきフィールド・オブ・ナインの1体が、その先で猟兵達を待ち構えている。
戌
こんにちは、戌です。
戦争も終盤に入ってきました。今回の依頼はデトロイト市に君臨するフィールド・オブ・ナイン「マザー・コンピュータ」の撃破です。
このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。
プレイングボーナス……グリモア猟兵を守りつつ、増殖無限戦闘機械都市の攻撃を凌ぎつつ、マザーと戦う。
敵は都市そのものを機械化して猟兵を閉じ込め、グリモア猟兵のリミティアも戦闘機械がはびこる戦場に巻き込まれてしまいます。
都市の全てが兵器と化して全方位から襲い掛かってくるような状況で、物量の猛攻を凌ぎながらマザーを撃破してください。
リミティアも猟兵なので足手まといにならないよう頑張りますが、予知と転移担当ですので率先して戦いに加わる事はできません。特に必要がなければ描写もされませんが、守ってくれる人がいたら感謝を伝えます。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『マザー・コンピュータ増殖無限戦闘機械都市』
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POW : マシン・マザー
全長=年齢mの【巨大戦闘機械】に変身し、レベル×100km/hの飛翔、年齢×1人の運搬、【出現し続ける機械兵器群】による攻撃を可能にする。
SPD : トランスフォーム・デトロイト
自身が装備する【デトロイト市(増殖無限戦闘機械都市)】を変形させ騎乗する事で、自身の移動速度と戦闘力を増強する。
WIZ : マザーズ・コール
【増殖無限戦闘機械都市の地面】から、対象の【猟兵を撃破する】という願いを叶える【対猟兵戦闘機械】を創造する。[対猟兵戦闘機械]をうまく使わないと願いは叶わない。
イラスト:有坂U
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大町・詩乃
あらゆる物質・概念を機械に置き換えてしまう。
人も植物も…これは許せませんね。
リムさんには「全力でお守りしますね♪」と笑顔で。
結界術でリムさんと詩乃を囲むように防御結界形成。
更にオーラ防御を纏わせ且つ大型化させた天耀鏡を、一つはリムさんの近く、もう一つは詩乃の近くに配して、それぞれ盾受けでかばえるように。
天候操作で雨を降らしてUC発動。
『この都市にある全ての機械は機能停止しなさい。マザーは自分の居場所を明かし、神の裁きを受け入れなさい。』と命じる。
マザーの居場所が判明すれば、多重詠唱による雷と光の属性攻撃・神罰・全力魔法・高速詠唱で生み出した巨大な輝く神雷をスナイパー・貫通攻撃で撃ち降ろします!
「来ましたね、猟兵。究極の力に至った貴方達に敬意を表し、私も全力を見せましょう」
猟兵達が転移してきた瞬間、増殖無限戦闘機械都市を起動するマザー・コンピュータ。
かつてデトロイトと呼ばれた都市は彼女の宣言に応じて変形し、異形の兵器を生み出す巨大な機械の檻となって、猟兵達を閉じ込めた。
「あらゆる物質・概念を機械に置き換えてしまう。人も植物も……これは許せませんね」
フィールド・オブ・ナインが持つ恐るべき力を目の当たりにして、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は静かな怒りに震える。自然本来のあり方を歪め、万物を機械化させるマザーの力は、植物と活力を司る女神である彼女には決して見過ごせないものだった。
「全力でお守りしますね♪」
「はい。ありがとうございます」
前線の猟兵達と共に戦闘機械都市の閉鎖に巻き込まれたグリモア猟兵のリミティアは、詩乃の笑顔にこくりと頷いた。わざわざこの様な戦法を取ってきた以上、敵は予知と転移を担当する彼女を積極的に狙ってくる可能性も考えられる。
『ギギギギ……』
そんな彼女らの元に迫るのは、増殖無限戦闘機械都市の地面から出現する異形の兵器。
【マザーズ・コール】により創造された対猟兵戦闘機械の群れは、都市内部に存在する全ての猟兵を抹殺すべく鋼の牙を剥く。
「させません!」
詩乃は自らとリミティアを囲むように防御結界を形成し、戦闘機械群の侵攻を阻んだ。
さらにオーラを纏わせて巨大化させた「天耀鏡」を、一枚はリミティアの近くに、もう一枚は自分の近くに配して、それぞれを攻撃から庇う盾にする。
「あの鏡、私のデータにない未知の金属で作られていますね。ですが問題はありません」
超硬度を誇るヒヒイロカネ製の神鏡と神の結界による二重の守りは、簡単に突破できるものではない。だがマザーは慌てることなく冷静に対猟兵戦闘機械に攻撃続行を命じる。
都市を封鎖した後の彼女の戦法は無限の物量で押し潰すという至極単純なものだった。彼女は強者としてシンプルな物事を好み、そしてそれが最適解であることを知っていた。
「干天の慈雨を以って私はこの地を治めましょう。従う者には恵みを、抗う者には滅びを、それがこの地の定めとなる」
だが詩乃もこのまま無尽蔵の兵器に呑み込まれるのを待つつもりはない。朗々と祝詞を唱えると、戦闘機械都市にしとしとと雨が降り始める――それは植物を潤す慈雨であり、女神アシカビヒメの【神域創造】の先触れだった。
「この都市にある全ての機械は機能停止しなさい」
例えここが敵の本拠地だろうと、神域化された環境では詩乃が絶対的な支配権を持つ。
一声命じるだけで襲いかかる兵器の群れは動かなくなり、都市による新たな戦闘兵器の生産も停止した。
「私の増殖無限戦闘機械都市に外部から干渉が……? なるほど、この雨が原因ですか」
都市の異常とその原因をすぐに特定したマザーは、降り注ぐ雨さえも機械化することで戦場の支配権を取り戻さんとする。神と言えどもオブリビオン・フォーミュラを相手に、永続的に神域を維持することは困難だろう。
「マザーは自分の居場所を明かし、神の裁きを受け入れなさい」
「なにを……っ?」
故に詩乃はすぐに次の手を打ち、この機械都市のコアである彼女に姿を現せと命じる。
マザーと繋がっている巨大コンピュータが、彼女の意に反して閃光と機械音を発する。それは自らの所在をこの空間の主たるアシカビヒメに伝えるものだった。
「そこにいましたか」
敵の居場所が判明すれば、詩乃は即座に多重詠唱を行い、神罰の具現たる光と雷の力を束ね、巨大な神雷を作り出す。直視すれば目を灼くほどの輝きが増殖無限戦闘機械都市を照らし――その中心部にいるマザー・コンピュータ目掛けて撃ち降ろされる。
「ッ……!!!!」
精密機械の塊であるコンピュータに落雷は天敵であろう。裁きの雷霆をその身で受けたマザーの表情が歪む。それは自然の守護神の怒りが、機械の支配者に報いた瞬間だった。
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「前を見ると機械。後ろを見たらグリモア猟兵と機械。上を見てみても機械。」
機械機械機械で嫌んなるね、まったく。…だんだんイライラしてきたよ。
手首を掻っ捌いてUCを発動。
歯応えしか楽しめないような敵さんはいらない。
さてと、時間制限もあるしとっとと敵さんの血を奪いに行こう。
周囲に展開したArgentaや無力化した機械類を足場に怪力を駆使したジャンプで飛び跳ねる様に移動しながら一気に敵さんの所へ行き、二振りの大鎌で攻撃。
多少の傷が付けられればそっから血を引き摺りだして血を奪って行く。
僕って全身が牙みたいなもんだしね。
悪魔の見えざる手には奇剣とLadyを持たせてグリモア猟兵の護衛に憑いといてもらいます。
「前を見ると機械。後ろを見たらグリモア猟兵と機械。上を見てみても機械」
どこを見回しても機械だらけの戦場に、須藤・莉亜(ブラッドバラッド・f00277)はうんざりした顔をする。ダンピールである彼は常日頃から強大な吸血衝動を抱えているのだが、血の通わない兵器相手ではその餓えも満たしようがない。
「機械機械機械で嫌んなるね、まったく。……だんだんイライラしてきたよ」
苛立ち混じりに手首を大鎌で掻っ捌くと、開いた傷口から勢いよく血液が放出される。
それは増殖無限戦闘機械都市と化したデトロイトを染め上げるように、赤い霧や洪水となって広がっていく――。
「君はここで彼女に憑いといて」
自身と契約した「悪魔の見えざる手」に奇剣「極無」と対物ライフル「Lady」を装備させてグリモア猟兵の護衛を命じると、莉亜は単身で敵の元に向かう。その間も彼の手首からは、どくどくと鮮血が流れるままだ。
「その自傷行為に何の意味が? いえ、確かめてみれば分かる事です」
マザーはすぐさま【マザーズ・コール】を発令し、地面から創造した対猟兵戦闘機械群を向かわせた。猟兵を撃破するために開発された凶悪なる兵器が四方八方から襲いかかる――だが、それらは莉亜から流れた血に触れた瞬間、紅蓮の炎に包まれた。
「歯応えしか楽しめないような敵さんはいらない」
莉亜の【赫怒呪血】は戦場内の"血が流れていない敵"を無力化するユーベルコードだ。ほとばしる鮮血は炎となりて彼が望まぬ敵を焼き焦がし、溶かし、そして燃やし尽くす。
機械都市デトロイトは血と炎の赫に包まれ、燃え上がる戦闘兵器の断末魔が木霊する。この状況で無事なのは皮肉にも、生体コアであるマザー・コンピュータ本体だけだった。
「機械を無力化する呪いの血……なるほど、私には天敵ですね」
マザーの言葉は淡々としていたが、その内心に焦りがあるのは明らかだった。戦闘兵器を無力化された今の彼女は丸裸であり、血に飢えたダンピールを阻むものはなにも無い。
「さてと、時間制限もあるしとっとと敵さんの血を奪いに行こう」
赫怒呪血の使用限界である109秒内に目的を果たすべく、莉亜は血と炎の海を駆ける。
周囲には銀の槍「Argenta」を飛び回らせ、両手には白と黒の二振りの大鎌を携えて。
「せめて足止めを……っ」
マザーは彼の進路上に機械の壁を築こうとするが、そんな物は何の妨害にもならない。
停止させた機械類を足場にして、人並み外れた怪力で大ジャンプ。障害を飛び越えるとさらに展開していた銀の槍も手がかり足がかりにして、一気に敵との距離を詰めていく。
「到着っと。それじゃあ、いただきます」
ひょいひょいと跳ねる様な動きで機械都市を駆け抜けた莉亜は、マザー・コンピュータの本体が収められた巨大な装置に狙いをつけて、二振りの大鎌で思いきり斬り掛かった。
透明なケースに二筋の亀裂が走り、マザーの身体に傷がつく。さして深手ではないが、血を味わうにはそれで十分だった。
「くっ……すぐに止血を……止まらない?」
莉亜の振るう大鎌の片割れである「黒啜」は斬った対象の流血を止まらなくする能力を持ち、もう一振りの「血飲み子」は血の味を使用者に伝えることが出来る。小さな傷口から引き摺り出されるように流れ出た血は、全て彼の糧となるが定めだ。
「僕って全身が牙みたいなもんだしね」
古式ゆかしく首筋に噛み付く必要もない。割れたケースの隙間からさらに髪を伸ばし、強欲にマザーの血を奪っていく莉亜。相手が敵ならば飽くなき衝動を抑える必要もない。乾きを潤す赤い雫には、ほんのり機械油の匂いが混じっている気がした。
「っ、離れなさい……!」
強引な吸血行為に顔をしかめるマザーだが、機械を無力化されている限り抵抗の余地はない。赫怒呪血が解除されるまでの間、彼女はただの血袋として貪られる運命にあった。
大成功
🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
効果的と云えば効果的な遣り口なのだろうが
生憎と其れで怯むほど繊細な心なぞ有していない
元より護る為に在る刃、何が変わる事も無いと教えてやろう
周囲全てが敵地と化すなら、此方も全方位を的とするまで
――禁精招来、命に応じよ
『転送手の元にて、無尽の刃を周囲へ巡らせ、其の身を護る事に注力せよ』
傷1つ、付けさせてはならんぞ
都市すら覆うなぞ馬鹿げた話だが、的が増えた様なもの
可動域や駆動音の変化等から攻撃方向を計って見切り躱し
全力の踏み込み、フェイント絡めたなぎ払いで道を抉じ開け
怪力乗せた斬撃を叩き込んでくれる
変わる事無き永劫なぞ地獄と変わらん
現在より変わり行くからこそ、未来とは――希望とは存在すると知れ
「効果的と云えば効果的な遣り口なのだろうが、生憎と其れで怯むほど繊細な心なぞ有していない」
猟兵達をグリモア猟兵ごと閉じ込めるという戦法を取ってきたマザー・コンピュータに対し、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は堂々と受けて立つ構えを見せる。四方を敵に囲まれた増殖無限戦闘機械都市の只中にあっても、彼の心構えはいささかも揺らぎはしない。
「元より護る為に在る刃、何が変わる事も無いと教えてやろう」
「大した自信ですね。では、かかっていらっしゃい」
烈志の宣言に対して、マザーは機械都市から生産される無尽蔵の兵器を以って応じる。
猟兵を撃破するために【マザーズ・コール】で創造された対猟兵戦闘機械。その猛威が猟兵達を蹂躙せんと襲いかかる。
「周囲全てが敵地と化すなら、此方も全方位を的とするまで――禁精招来、命に応じよ」
嵯泉が短刀「春暁」を片手に唱えると、その小柄から包囲を司る八将神が一柱、大将軍が姿を現す。この神が居を構える方角は「三年塞がり」という万事において大凶とされ、畏怖を込めて魔王天王とも称される大鬼神である。
「転送手の元にて、無尽の刃を周囲へ巡らせ、其の身を護る事に注力せよ」
忌まれし神なれど味方につければそれ故に強大。嵯泉の命に重々しく頷いた大将軍は、グリモア猟兵の元に向かうと無数の刀をその周囲に出現させる。彼女に牙を剥こうとした機械どもは悉くその刀に切り刻まれ、物言わぬスクラップと化していく。
「傷1つ、付けさせてはならんぞ」
大将軍が操る万物必滅の刀は、守りに転ずれば汎ゆる害を斬り祓う無尽の結界と化す。
鬼神の守護を得たグリモア猟兵は「感謝します」と、嵯泉の配慮に手短に礼を述べた。
「ふむ。どうやら貴方達を撃破するには順序が必要なようですね」
大将軍の攻略が厄介だと判断したマザーは、召喚主から先に仕留める方策に切り替え、周囲の戦闘機械を嵯泉に差し向ける。何千何万もの機械の大軍が一斉に押し寄せる様は、まるで都市そのものが一頭の巨大な怪物になったようだ。
「都市すら覆うなぞ馬鹿げた話だが、的が増えた様なもの」
無機質な殺意に迫られても嵯泉は動じず、戦闘機械の可動域や駆動音に意識を向ける。
感情を持たない兵器には嘘もフェイントもない。幾度もの死線を超えて技を磨き続けた武辺者にとっては、むしろ与し易い相手とさえ言えた。
「通して貰うぞ」
音の変化から敵の攻撃方向を見切って躱し、生じた僅かなスペースに全力で踏み込む。
短刀によるフェイントを絡め、放つは愛刀「秋水」による裂帛の一閃。蟲を払うように戦闘機械の群れが薙ぎ払われ、刃に軌跡のあとに道ができる。
「……どうあっても邪魔をするつもりですか」
刀だけで道を抉じ開けながら近付いてくる嵯泉に、マザーは苛立ちの表情を浮かべる。
これだけの物量差がありながら仕留められない。想定を凌駕する猟兵の意志が、彼女の理論を乱しつつあった。
「私はただ思索を続けるために、永遠が欲しいだけなのに」
「変わる事無き永劫なぞ地獄と変わらん」
真理を求めて世界の時を停めようとする身勝手な女に、嵯泉は鋭い言葉を突きつける。
気迫の籠った踏み込みがマザー・コンピュータ本体を間合いに収めた時、渾身の斬撃が霹靂の如く閃いて、その中枢に叩き込まれた。
「現在より変わり行くからこそ、未来とは――希望とは存在すると知れ」
嵯泉の放った剛の一撃は巨大なコンピュータに深い傷跡を残し、生体コアであるマザー本体にもダメージを与えた。ぽたりぽたりと滴り落ちる鮮血が、裸身を赤く染めていく。
「ッ……これが、未来と希望を求める、人の意志……」
永遠をも破壊する大いなる力の片鱗を味わい、マザーは静かに戦慄する。6体のオブリビオン・フォーミュラ全てに立ち向かってきた嵯泉の刀は、今だ曇りなく煌めいていた。
大成功
🔵🔵🔵
藤・美雨
とうとうグリモア猟兵を狙う奴が出てきたか
でも事前に分かっているだけでも幸運だ
リミティアとも皆とも無事に帰ろう!
都市全部が敵だけど、その分利用出来るものも多そうだ
生じる物陰、はぎ取れる武装
それら全てを駆使して敵と対峙するよ
リミティアが危険な時は積極的に盾になる
【激痛耐性】には自信があるし
私は簡単に再生出来るからね
大丈夫、へーきへーき
銃やレーザーみたいな武装は『火尖鎗』で破壊
刃物みたいな自分でも持って使えそうなやつは【怪力】でブチっと奪い取ってやろう!
うねうね街が動くならその物陰に身を顰め、道が開けそうなら飛び出してぶっ壊す!
そのままマザーの元へ突っ込んで、剥ぎ取った武器で叩き斬ってやるよ!
「とうとうグリモア猟兵を狙う奴が出てきたか。でも事前に分かっているだけでも幸運だ」
巨大な機械仕掛けの都市に閉じ込められても、藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は動じずにいた。敵の戦法が明らかになっているのといないのとでは心構えが大きく違う。それは彼女を含む多くの猟兵が、セントメアリー・ベースで調査に励んだ成果でもある。
「リミティアとも皆とも無事に帰ろう!」
「強気ですね。この状況で全員生還できると?」
いつだって元気に溢れた彼女の意気込みに、マザー・コンピュータは冷ややかに問う。
1人だろうと生かして帰さないと、機械都市より産み落とされる無数の戦闘兵器群が、天と地から猟兵達を包囲する。
「都市全部が敵だけど、その分利用出来るものも多そうだ」
これだけ機械の数が多ければ、敵同士が陰になって死角が生じるだろう。美雨は味方に破壊された戦闘兵器の物陰に隠れて移動し、索敵網の隙間から「火尖鎗」で突き掛かる。
少女の身の丈より大きな槍が鋼の獣を貫き、穂先から放たれる炎が内部を焼き尽くす。
「これは使えそうだね。貰っていくよ!」
破壊した敵はチェーンソーのような大型刃物の武装を搭載していた。それを見た彼女は怪力任せにブチッと本体から装備だけを引っ剥がし、自分の武器として奪い取る。猟兵を撃破するために敵が開発した武装なら、当の敵自身にとっても脅威になるだろう。
「うん、いい切れ味!」
火尖鎗と巨大チェーンソーの二刀流で、並み居る敵をばさばさとなぎ倒していく美雨。
しかし敵が標的にしているのは彼女だけではない。気づけば後方にいたリミティアが、戦闘兵器の一群に囲まれているのが見えた。
「危ないっ」
美雨は咄嗟に駆け出し、敵とリミティアの間に飛び込んで自らを盾とする。直後に放たれた銃弾とレーザーの嵐が、無慈悲に彼女を撃ち抜くが――死より蘇ったデッドマンは、この程度でくたばったりはしない。
「ご無事ですか? 申し訳ありません、リムのせいで」
「私は簡単に再生出来るからね。大丈夫、へーきへーき」
窮地を救われたリミティアからの感謝と謝罪に、美雨は気にしないでと笑って応える。
全身を弾幕で蜂の巣にされようと、彼女の魂の衝動はまだ消えていない。再生できると言っても痛いものは痛いはずだが、苦痛に耐えることに関しても彼女は自信があった。
「さあ、反撃だよ!」
敵に次弾を発射される前に、炎の槍が敵陣をなぎ払う。この手の飛び道具は鹵獲してもうまく扱えなさそうなので、本体ごと破壊するのにも躊躇もない。機械都市に吹き荒れる炎と刃の嵐は、さながら少女の魂の叫びのようでもあった。
「うねうね動く街のことも、ようやく分かってきたよ」
【トランスフォーム・デトロイト】によりマザーに接続され、猟兵を追い詰めるように変形を続けるデトロイト市。美雨は戦いの中でその構造にパターンがあることを理解し、変形によって生じた物陰にリミティアと共に身を潜める。
「リミティアはここに隠れてて」
「はい。どうかご武運を」
潜伏中に肉体も再生させ、道が開けそうなタイミングを見計らうと勢いよく飛び出す。
周囲の地形や物品を利用した少女の攻撃は、一撃のもとに戦闘兵器の群れをぶっ壊し、その先にいるマザーまでの道を切り開いた。
「さあさあ踊れ、しっちゃかめっちゃかにね!」
敵から剥ぎ取った武装を振り回し、高らかに笑いながらマザーの元へと突っ込む美雨。
マザーは急いで対抗策を講じるが、勢いに乗った【殺戮乱舞】は誰にも止められない。自らの手で作り出した機械の武装が今、最大の脅威となって彼女を叩き斬る。
「ッ……被害増大……このままでは演算に影響が……」
機械の中でダメージを計測するマザーの表情には焦りがあった。最初に美雨が口にした「皆とも無事に帰ろう」という言葉。あれは決して根拠のない過信では無かったのだと、彼女はその身で痛感する事となった。
大成功
🔵🔵🔵
ジュリア・ホワイト
フッ、ミッション了解!
リミティアさんを守りつつ、敵都市を撃破する!
「ヒーロー・オーヴァードライブの得意分野さ!そうだろう?」
守るべき相手がいるから一人で突っ走るわけには行かない…
等と言うと思ったかい?
逆さ、世界一安全な席にご招待して、一緒に来てもらおう
「そうとも、ボクの中にいれば安全に決まってるじゃないかHAHAHA!」
(こいつマジか by精霊さん)
【怒れる黒竜よ、戦場を駆けろ】で装甲列車モード…つまり機関車に変身
搭載火器を派手にぶっ放しながらリミティアさんを乗せて戦場を疾走するよ
どうせこの大地を含めた都市一つ全てが敵なんだ
何もかも派手に壊してしまって問題ないさ!
…問題ないよねリミティアさん!
「フッ、ミッション了解! リミティアさんを守りつつ、敵都市を撃破する!」
増殖無限戦闘機械都市へと変形したデトロイト市に、ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)の声が響く。都市そのものが敵に回るとはなかなかスケールの大きい相手だが、些かも狼狽えないどころかやる気に満ちあふれている。
「ヒーロー・オーヴァードライブの得意分野さ! そうだろう?」
「はい。頼りにしています、ジュリアさん」
グリモア猟兵のリミティアも、自信満々な態度のジュリアにこくりと頷く。巨悪を前にして誰かを守るために戦う時にこそ、ヒーローは最も強くなる。これまでの依頼の中で、彼女はそのことをよく知っていた。
「ヒーローを気取るのは結構ですが、この状況でその矜持をどこまで貫けますか?」
迎え撃つマザー・コンピュータは変形させた都市自体を武器として、無数の戦闘機械による攻撃を仕掛けてくる。都市のどこからでも出現する圧倒的物量から味方を守るのは容易でなく、護衛に徹すればマザーへの攻撃の手が緩む。シンプルで合理的な戦法だった。
「守るべき相手がいるから一人で突っ走るわけには行かない……等と言うと思ったかい? 逆さ、世界一安全な席にご招待して、一緒に来てもらおう」
しかしジュリアの自信は揺らがない。この閉鎖された都市の中で、一体どこにその様な安全地帯があると言うのか――答えは【怒れる黒竜よ、戦場を駆けろ】で装甲列車モードに変身する、彼女自身の車内であった。
「そうとも、ボクの中にいれば安全に決まってるじゃないかHAHAHA!」
ヤドリガミであるジュリアの本体である蒸気機関車「D110ブラックタイガー号」がデトロイトに現れ、蒸気と警笛を吹き上げる。戦闘用に多数の武装を取り付けたその形態は、陸の戦艦とでも言うべき威容を誇っていた。
「なるほど名案です」
一緒に付いてきた運転士精霊さんは(こいつマジか)という顔でジュリアを見てるが、リミティアはこの作戦に納得したようだ。彼女が車両に乗り込むと機関車はガタンゴトンと音を立てて走りだし、搭載された火器を進路上にいる戦闘機械群に向ける。
「これがボクの突撃装甲列車形態。これを見せた以上、押し通らせてもらうよ!」
戦場を疾走する黒鉄の塊から、派手にぶっ放される砲火の嵐。道を塞ごうとした愚かな機械は吹き飛ばされてスクラップになるか、轢き潰されて鉄クズになるかの末路を辿る。
機械からの反撃も装甲化されたジュリアの車体にはあまり効いていない。故郷では既に旧式だが頑丈さについては折り紙付きで、これまで幾度の戦場を走り抜けてきた名車だ。
「どうせこの大地を含めた都市一つ全てが敵なんだ。何もかも派手に壊してしまって問題ないさ! ……問題ないよねリミティアさん!」
「はい。完膚なきまでに破壊していただいて構いません」
イケイケな様子で都市を駆けるジュリアを、リミティアも止めるどころか後押しする。
かつての工業都市デトロイトも、今はマザーに支配された無人の地。ここに住まうのは敵の機械のみ――ならば綺麗さっぱり更地にしてしまった方が、寧ろ好ましいくらいだ。
「ヒーロー・オーヴァードライブの力、存分に発揮してください」
「了解! 少し揺れるからしっかり掴まっているんだよ!」
彼女に付けられたもうひとつの呼び名――「オーバーキル」の由来を体現するように、ジュリアは惜しみなく搭載火器を撃ちまくる。彼女が通り過ぎていった後には一匹の敵も残らず、無惨に轢き潰されたスクラップの山が鉄の轍を作っていく。
「何なのですか、あの機関車の異常なスペックは……!」
長い時を経て魂を得た器物、ヤドリガミの性能は科学の常識では測れない領域にある。
時代遅れも良いところの筈の蒸気機関車が、自身の作り上げた最新鋭兵器を粉砕していく様を、マザー・コンピュータは信じられないといった顔で見ていた。
「キミの降車駅はもう決まっているよ。この都市もろとも骸の海に還るがいいさ!」
容赦も躊躇も一切ないジュリアの砲口は、機械都市のコアたるマザーにも向けられる。
機関車の正面の煙室扉が開き、車載主砲『アクセルホワイト』が姿を現す。機関室より送り込まれる膨大なエネルギーがそこに集束され、特大のビーム砲撃となって放たれた。
「―――ッ!!!!」
慌てて回避行動を取り、直撃を避けたマザーであったが、その被害は小さくなかった。
翔け抜けていった閃光は彼女の背後にあった機械化ビルを貫通し、上空からもはっきりと分かるほどの破壊の痕跡を、デトロイト市に刻みつけていた。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
元よりフィールド・オブ・ナインの全滅を目指していたのです
ここで騎士として戦わずして、いつ戦うというのか
護衛はお任せください、リミティア様
…用途申請、オブリビオンフォーミュラの撃破!
マルチセンサーでの●情報収集で全周から迫る敵機械兵器と攻撃を●瞬間思考力で把握
グリモア猟兵を背に●かばい、電脳禁忌剣を魔法の杖の如く一振り
弾、ミサイル、レーザー、兵器その物
素粒子干渉能力で全て無害な花びらに変換
居住可能惑星を悉く破壊し尽くした時代の才女が死を以て封じた技術です
思索の片手間に用意した貴女の都市に、破壊力で劣る道理などありはしません!
素粒子干渉能力由来の巨大レーザーで刀身形成
マザーの巨大戦闘機械を一刀両断
「元よりフィールド・オブ・ナインの全滅を目指していたのです。ここで騎士として戦わずして、いつ戦うというのか」
戦いの後に残される懸念は可能な限り少なくあるべきだと、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は遂にやって来たマザー・コンピュータとの戦いに挑む。彼女をここで打倒できれば、6体のフォーミュラの撃破も現実味を帯びてくる。無論、敵地にグリモア猟兵と共に閉じ込められるリスクは承知の上だ。
「護衛はお任せください、リミティア様」
「はい。あなたの騎士としての誓いを、リムは信じています」
リミティアの顔に不安の色はない。これまでにも数々の苦難を乗り越えてきた猟兵の力を彼女は知っている。いつも誰かの為に戦い続けてきた、機械騎士トリテレイアの力も。
「騎士の物真似とは不合理なルーチンですね。機械にそのような思考は不要でしょうに」
騎士の理想を掲げるトリテレイアの有り様は、研究者たるマザー・コンピュータの視点からは不可解なものと映ったようだ。兵器の存在意義は破壊のみ――【マシン・マザー】を発動した彼女のコアユニットは巨大戦闘機械に変形し、無数の機械兵器群が出現する。
「物事はシンプルに、そして合理的に。強者とはそうあるべきなのです」
増殖無限戦闘機械都市による殲滅作戦は、まさに彼女の理念を体現した戦法であった。
無限に産み落とされる機械兵器の群れは、いつまでも凌げるものではない。この都市に標的を捕らえた時点で彼女の勝利は疑いようのない筈だった――常識の範疇においては。
「……用途申請、オブリビオンフォーミュラの撃破!」
マザーの想定を覆すもの、それは未来と希望を求める猟兵の意志。彼女が求める永遠をここで打ち砕く為に、トリテレイアは【銀河帝国未配備A式形相操作兵装】の使用許可を「電脳禁忌剣アレクシア」に要請する。
『用途倫理判定……例外承認。申請者処刑機構……解除確認』
電脳内で行われる数度のチェックを経て、剣に課せられた安全措置が解除されていく。
銀河帝国に悪用される事を恐れて、トリテレイアの創造主が封じ込めた超科学の機構。その力が世界に終焉をもたらす脅威を前にして、ひとときの解禁を許された。
「リミティア様は私の後ろに」
グリモア猟兵を背にかばい、搭載されたマルチセンサーで全方向から迫る敵機械兵器を瞬時に把握するトリテレイア。地上も空も埋め尽くした機械の群れと、彼らから放たれる攻撃の嵐は、たとえ知覚できていても対処は不可能かに思われたが――。
「不肖の騎士たる我が責において、貴女が怖れた事象を此処に」
彼が電脳禁忌剣を魔法の杖の如く一振りすると、降りしきる弾、ミサイル、レーザー、さらには機械兵器そのものが無数の花びらに変わり、芳しい香風と共にふわりと散った。
「なっ……今の現象はまさか、素粒子への干渉ですか!」
一体何が起こったのか、マザーは目の前の現象から該当する可能性を即座に導き出す。
物質を構成する最小単位である素粒子に干渉・操作する能力。それは万物を意のままに作り変える無敵の力に等しい。この力を以ってトリテレイアはマザーが支配する機械群を無害な花びらに変換したのだ。
「居住可能惑星を悉く破壊し尽くした時代の才女が死を以て封じた技術です。思索の片手間に用意した貴女の都市に、破壊力で劣る道理などありはしません!」
彼が電脳剣を振るうたびに、鋼鉄の機械都市が花畑に変えられていく。それは美しくも恐ろしい光景だった。用途を誤れば冒涜的なまでに世界を書き換える事すら可能な力だ、開発者さえも世に広まるのを恐れたのは当然のことだろう。
「このような事態でもなければ決して濫用は許されぬ力です。ですが、今は」
禁忌の力を以ってしても倒さねばならぬ敵がいる。それはこの世界の人々が生きるための選択と奇しくも同じだった。電脳禁忌剣を掲げるトリテレイアの元に、きらきらと光の粒子が集まっていき、巨大なレーザーの刀身を形成する。
「お覚悟を!」
「―――!!!!」
これも素粒子干渉能力に由来する力なのか。物質を変換した膨大なエネルギーの刃が、マザーを乗せた巨大戦闘機械に振り下ろされる。巨城のごとき機械の塊は一刀両断され、崩れゆくスクラップの中で、コアユニットと共に墜落するマザーの悲鳴が聞こえた――。
大成功
🔵🔵🔵
天御鏡・百々
●連携歓迎
リミティア殿の防御重視
仲間の猟兵が万全に攻撃出来るようにサポートする
まさかグリモアを直接狙って来るとは恐れ入った
だが、みすみす仲間を傷付けさせることなど
我ら猟兵が許すはずが無かろう!
神通力(武器)の障壁(オーラ防御)をリミティア殿の周囲に展開し
彼女の守りを固めるぞ
そうして防御しながら、迫る戦闘機械は『天之浄魔弓』から放つ光の矢にて撃破していく
タイミングを見て(仲間がマザーに接近とか)、『至上の光』を発動だ
余裕を見て発動は90秒程度に抑えるが、一時的にマザーのユーベルコードを封じ込めるぞ
そこで仲間に攻撃して貰うか、光の矢で攻撃だな
●神鏡のヤドリガミ
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
佐伯・晶
適切な知識を持つって恐ろしいね
こっちの兵站を抑えに来たって感じかな
でも負けてはいられないから
皆と協力して戦うよ
まずはあの厄介な機械兵器群を何とかしないとね
UCを使用しこちらも数で対抗しよう
巨竜になった鉑帝竜が触れた機械を
希少金属に変えて取り込み
更に巨大化しながら進軍
僕が複製創造と生命創造で
竜型使い魔を大量生産して機械兵器群に対抗
リミティアさんの所に行けないように邪魔したり
攻撃に割って入って盾になって貰ったりするよ
巨大戦闘機械に近付いたら
低空飛行からの体当たり
後は噛みつきや尻尾による打撃で戦おう
相手の攻撃は神気で停めたり希少金属に変えたりするよ
まだ先は長いからね
相手のリソースを奪って
後続に繋ぐよ
「まさかグリモアを直接狙って来るとは恐れ入った」
「適切な知識を持つって恐ろしいね。こっちの兵站を抑えに来たって感じかな」
グリモア猟兵を戦闘に巻き込む前代未聞の戦法に、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)と佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は眉をひそめる。厄介な真似をと思うと同時に、それが猟兵に対して有効な戦法であるとは認めざるを得なかった。
「でも負けてはいられないから、皆と協力して戦うよ」
「みすみす仲間を傷付けさせることなど、我ら猟兵が許すはずが無かろう!」
危機的状況時にこそ彼女達の連帯感は高まり、協力してこの窮地を乗り越えんとする。
押し寄せるのは増殖無限戦闘機械都市から生産された、無数の対猟兵戦闘機械の大軍。だが迎え撃つふたりの瞳には闘志の光が輝いていた。
「リミティア殿は我が障壁の中に」
「はい。感謝します」
百々は神鏡のヤドリガミとしての力で、リミティアの周囲に神通力の障壁を展開する。
グリモア猟兵の防御を重視し、仲間の猟兵が万全に攻撃出来るようにサポートするのが彼女の務めだ。
「まずはあの厄介な機械兵器群を何とかしないとね」
一方の晶は試製竜騎「鉑帝竜」を巨竜形態に変形させ、そこから竜型の使い魔を次々に放つ。個の戦闘力は弱いが、数では敵の機械兵器にも劣らない。圧倒的な数にはこちらも数で対抗というわけだ。
「ものどもかかれー、なのですよー」
神気の防護膜を纏った鉑帝竜の号令に合わせて、機械都市を進撃する【帝竜の軍勢】。
マザー率いる戦闘機械群は真っ向からこれを迎え撃ち、白金と鋼鉄による激しい戦いの火花が散る。敵はマザーの機械化能力によって次々に出現し続けるが、晶を乗せた鉑帝竜も新たな使い魔を絶え間なく放ち続ける。物量の戦いはほぼ互角といったところか。
「晶殿、援護するぞ!」
百々も後方でグリモア猟兵の守りを固めたまま、迫る戦闘機械を神弓「天之浄魔弓」で撃破していく。弦引けば番えられる光の矢は神力の具現であり、放てば目標を追尾する。逃れえぬ神威に貫かれた戦闘機械に与えられる末路は、浄化され骸の海に還るのみだ。
「なかなかやりますね……まずは、あちらの生産拠点を潰しましょうか」
2人の猟兵に激しい抵抗を受けたマザーは、自軍の兵力をグリモア猟兵に集中させる。グリモアの力を失う訳にいかない猟兵達は、そちらの守りを優先せざるを得ないだろう。
「リミティアさんの所には行かせないよ」
晶は自らと融合した邪神の複製創造と生命創造の権能にて使い魔をさらに大量生産し、盾として割って入らせることで敵の侵攻を食い止める。しかし戦力をそちらに割いた分、晶と鉑帝竜の周りは手薄となる――それこそがマザーの真の狙いだった。
「今です。総攻撃を」
都市の上空を飛翔する鉑帝竜に、飛行型戦闘機械の大軍が殺到する。彼女を撃破すれば帝竜の軍勢は瓦解し、再びマザーが物量戦で優位に立つ。そうなれば現在の拮抗状態など一瞬で崩れ去ってしまうだろう。
「なるほど賢いね。知識があるだけじゃないんだ」
無論、晶もそう簡単に落ちるつもりはない。巨竜化した鉑帝竜が纏う神気の防護膜には触れた物を希少金属に変える魔法がかかっており、この力で機械を金属化し取り込む事で白金の竜はさらに巨大化していく。その威容はオリジナルの帝竜にも劣らない程だ。
「これはちょっとまずいかな」
進撃を続ける晶だが、マザーに近付くにつれて機械兵器からの攻撃はより激しくなる。このままでは神気の防護膜も突破され、鉑帝竜本体にダメージがいくのも時間の問題だ。
一度退くべきか、このまま突っ切るべきか――晶が迷い始めたその時、後方にいた百々が大きな声で叫んだ。
「心配はいらぬ、晶殿。我が全霊を持って、悪しき者どもを封じ込めようぞ!」
言うや否や彼女の器物たる「天神鏡」から【至上の光】が解き放たれ、戦場を照らす。
破魔の神鏡として奉られてきた百々が、全身全霊を込めて放つ聖なる神光。それは短い時間ではあるが、邪悪なるオブリビオンのユーベルコードを封じ込める力があった。
「何を……!?」
神鏡の光に照らされた機械兵器群が、一斉に機能を停止する。新たな兵器を生産する事もできなくなり、マザーは驚愕ではっと息を呑んだ。この絶好のチャンスを逃すまいと、それまで防戦を強いられてきた猟兵達は一転攻勢に移る。
「あまり長くは封じておけん。余裕を見て90秒程度だ」
「それだけ時間があれば十分だよ」
墜落していく飛行機械の群れをすり抜けて、鉑帝竜が一気にマザーの元に翔けていく。
マザー本体を搭載した【マシン・マザー】の巨大戦闘機械も、現在は至上の光の効果で機能を停止している。敵は自らが作り出した機械の中に閉じ込められた状態だ。
「やあ、ようやく会えたね」
「ぐぅっ!!」
低空飛行する鉑帝竜からの体当たりを食らい、マシン・マザーの巨体がぐらりと傾ぐ。
そのまま晶は近接戦闘へと移行し、巨竜の牙や尻尾を武器とした噛みつきや打撃で敵の装甲を削り、攻撃を加えた箇所からじわじわと希少金属に変えていく。
「まだ先は長いからね。相手のリソースを奪って、後続に繋ぐよ」
デトロイト市の全てを支配する敵の物量は莫大だが、それでも必ず限りはあるはずだ。
晶と鉑帝竜がマザーの本体にダメージを与える一方で、周辺では竜の使い魔達が無力化された機械兵器群を再起動不可能なように完全破壊していた。
「やって、くれますね……くっ?!」
かくなる上はと機械から抜け出して戦おうとしたマザーを、晶の神気が押さえつける。
静謐を司る邪神のオーラは、あらゆる存在に停滞をもたらす。ほんの数秒の事ながら、それは時間を研究するオブリビオン・フォーミュラでさえ例外ではなかった。
「この、力……もしや時を……!」
「隙だらけだぞ、マザーよ」
標的の動きが完全に停まったその瞬間に、百々が放った光の矢がマザーの胸を射抜く。
この世界に災禍を招くオブリビオン・フォーミュラを、破魔の神鏡は決して許さない。浄化の力を身に受けたマザーは「ぐぅッ?!」と悲鳴を上げ、ケースの中で崩れ落ちる。
希望を繋ぐ為に連携する猟兵達の力――それは彼女の予測を遥かに超えるものだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
支援しているグリモア猟兵まで狙う…それが出来れば苦労はしない、という話でしょうけど。よく実現させたものね
猶の事、此処で確実に仕留めるとしましょう
オーバーロード、真の姿を解放し【叛逆の黒紅】発動
まず【失楽の呪姫】起動し魔神権能の《封印を解く・ドーピング》で《継戦能力》を向上
《属性攻撃+ハッキング+蹂躙》、森羅万象を終焉に塗り潰す劫火の嵐で物量を薙ぎ払う
突破してくる攻撃には【閃風の庇護者】で対処、リミティアからも離れず守るわ
まぁ言ってしまえば《時間稼ぎ》よ
フォーミュラの一角が支配する増殖無限戦闘機械都市、そんなものを丸ごと相手取るなら相応の無茶も必要でしょう
【解演:括目せよ、是こそは神なる御業】→【黒鉄の暴嵐】、《リミッター解除》状態で召喚する機龍は三体
デスファイアの鋼鉄城塞より上等な進化が出来そうね?
無限に喰らい合う過去と未来。元より不倶戴天の敵同士、構図としてはいっそ分かり易いけれど
その上で断じる――過去の亡霊に未来を阻む道理のあるものか
滅び去るのは貴女たちの方。私たちは、勝つ!
「支援しているグリモア猟兵まで狙う……それが出来れば苦労はしない、という話でしょうけど。よく実現させたものね」
都市を丸ごと機械化させるという大胆な戦法でそれを成し遂げたマザー・コンピュータの実力に、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は感嘆する。流石はこの世界を滅亡寸前まで追い込んだフォーミュラの1体と言うべきか。
「猶の事、此処で確実に仕留めるとしましょう」
いかに強大だろうと必ず撃破する――新たに目覚めた超克(オーバーロード)の力で。
真の姿を解放した彼女は【叛逆の黒紅】を発動し、魔神の権能を復元・昇華させた黒紅の大剣をその手に構えた。
「究極の力(オーバーロード)……既に到達していましたか」
それは人の意志が生み出した、永遠をも破壊する力。女神の如き神々しい姿に変身したカタリナを見て、マザーは警戒を強めながら【トランスフォーム・デトロイト】を発動。増殖無限戦闘機械都市と化したデトロイト市を変形させ、さらなる戦闘力増強を図った。
「――私の本気、ちょっとだけ見せてあげるわ」
対するカタリナは神剣の機能により【失楽の呪姫】を追加発動。その身と一つとなった魔神権能の封印を解き、3対の翼の羽ばたきから劫火の嵐を戦闘機械都市に巻き起こす。
それはかつて魔神が他神の手より盗み出した、森羅万象を終焉に塗り潰す劫火の欠片。都市を埋め尽くす戦闘機械の大軍が、炎に灼かれてまるで飴細工のように溶けていく。
「なるほど、大した火力です」
都市の一区画を呑み込んだ劫火の嵐に、マザーは怯まず戦闘機械群を突撃させていく。
戦力は無尽蔵に用意できる。物量にものを言わせたシンプルな戦法は、圧倒的強者のみに許された必勝の戦術でもある。幾千もの戦闘機械が一瞬のうちに劫火の塵と消え、だがそれを乗り越えた数百の敵がカタリナと、グリモア猟兵たるリミティアの元に殺到する。
「あら、余所見なんて寂しいわね! あなたの相手は私よ!」
カタリナはすぐさま【閃風の庇護者】を発動し、リミティアと敵の間に素早く割り込むと、大剣で攻撃を受け止めてカウンターで斬り伏せる。その翼が届く範囲において、誰も傷つけさせはしない――かつて騎士に憧れた者としての矜持がその瞳には宿っていた。
「そう簡単に討たせてはくれませんか。ですが何時まで耐えられるでしょう」
マザーの増殖無限戦闘機械都市によるグリモア必殺計画は止まらない。デトロイト市のあちこちから現れる無数の機械は、何度薙ぎ払われても攻撃を仕掛けてくる。概念にすら及ぶ彼女の機械化は簡単に攻略できるものではない――それはカタリナとて百も承知だ。
「まぁ言ってしまえば時間稼ぎよ。フォーミュラの一角が支配する増殖無限戦闘機械都市、そんなものを丸ごと相手取るなら相応の無茶も必要でしょう」
劫火の嵐で敵軍を牽制しながら、カタリナは黒紅の大剣に施された封印の解除を進め、さらなるユーベルコードの多重発動を行う。封印を解くたびに彼女が受ける負担も劇的に増大するが、そんな事を気にしていられる相手ではないと覚悟は既に定まっていた。
「獄禍解放――此処からは文字通りの鉄火場よ。心して臨むといい!」
【解演:括目せよ、是こそは神なる御業】から【黒鉄の暴嵐】に繋ぐ、ユーベルコードの多重連続行使。"正規の手順"を踏むことでリミッターを解除された権能は、叛逆の黒紅とオーバーロードの効果も併せて平常時とは比較にならない威力を発揮する。
「これは―――!?」
喚ばれたのはデトロイト市の天蓋を突き破らんばかりに巨大な、禍々しき黒鉄の機龍。
たった一体でも戦場を蹂躙しうる闘争の具現が同時に三体、マザーの前に姿を表した。
『オオオォォォォォォォ―――!!!!』
機龍達は咆哮と共に全武装を開帳し、敵軍と機械都市に対する無差別攻撃を開始する。
彼らは火力もさる事ながら、敵の性能や攻撃に応じて自己進化する機能も備えている。敵を喰らうたびに機能を殲滅に特化させていく超巨大兵器を、誰も止める事はできない。
「デスファイアの鋼鉄城塞より上等な進化が出来そうね?」
デトロイト市を巨大な"餌場"として進化を遂げていく機龍を、カタリナは微笑みながら眺めている。無限の物量には無限の進化で対抗するというのが彼女の立てた作戦だった。
「無限に喰らい合う過去と未来。元より不倶戴天の敵同士、構図としてはいっそ分かり易いけれど、その上で断じる――過去の亡霊に未来を阻む道理のあるものか」
カタリナが黒紅の大剣を指揮杖のように掲げると、黒鉄の機龍達が猛然と敵を喰らう。
その殲滅速度は次第に機械都市の生産スピードを凌駕し始めており、敵の戦闘機械群は嵐に巻き込まれた木っ端のように吹き散らされていく。
「滅び去るのは貴女たちの方。私たちは、勝つ!」
「くっ……まさか、これほどとは……!」
未来を導かんとする揺るぎない信念によってオーバーロードに至ったカタリナの力は、マザーの想定を次から次に超えていく。増殖無限戦闘機械都市を蹂躙する黒鉄の暴嵐は、止む気配を見せるどころか更に激しさを増すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ウィユ・ウィク
いっぱいのお友達を呼べば全てを同時にこなせない事もないのです!
沢山の【そらなかさん】にはリミティアお姉さんの周りを守ってもらうのです!
踏まれても大丈夫な柔軟さとタフさを生かして、リミティアお姉さんに迫りくる特に危険な攻撃を優先して受け止めてもらうのです!
無数の【あおつばめさん】には全方位から迫ってくる都市からの攻撃を迎撃してもらうのです!
空からの攻撃だって迎え撃てます!
集団の【くろねこさん】はボクと一緒にマザーさんを倒しに行くのです!
素早いくろねこさん達に牽制をしてもらってボクは『運命の糸』でマザーさんの運を奪うのです!
運命を味方に付ければきっと他の猟兵さん達がマザーさんを倒してくれるのです!
「いっぱいのお友達を呼べば全てを同時にこなせない事もないのです!」
味方を守り、機械の大軍に対処し、敵のボスを倒す。やるべき事の多い戦いに対応するために、ウィユ・ウィク(幸せの黒いキマイラ・f13034)は「そらなかさん」を呼ぶ。
「お友達……なんですか、それは?」
雲か空気が生き物になったような、白くてふわわした謎の存在がたくさん出てきたのを見て、マザー・コンピュータは首を傾げる。彼女が知らないのも無理はない――それは、ウィユが運命の力で自身から生み出した「お友達」である。
「そらなかさんはリミティアお姉さんの周りを守ってください!」
ウィユが指示を出すとふわふわのお友達は小さな羽をぱたぱたと羽ばたかせ、グリモア猟兵の周りをぐるりと囲む。叢雲のようなその様子に対して、マザーは配下の戦闘機械に容赦なく攻撃を命じる。
「そんなもので何が守れると……え?」
機械群が放った砲弾やミサイルなどの危険な攻撃を、そらなかさん達は体で受け止め、衝撃を他の方向にそらす。彼らは見た目よりもずっと柔軟さとタフさを兼ね備えており、踏まれても叩かれても全然へっちゃらなのだ。
「空からの攻撃だって迎え撃てます!」
さらにウィユは幸せの力から生み出した「あおつばめさん」を無数に呼び出し、全方位から迫ってくる都市からの攻撃を迎え撃ってもらう。その名の通り青燕のような姿をした彼らは機械都市上空を縦横無尽に飛び回り、敵を撹乱する。
「助かりました、ウィユさん、みなさん」
「このくらい当然のことなのです!」
危ないところを戦闘機械から守ってくれたウィユとそらなかさんとあおつばめさん達にリミティアは感謝を伝え、ウィユはにこりと微笑む。夢の中から出てきたような不思議な生き物たちが、無機質な機械の攻撃を退けているのは、なかなかに愉快な光景であった。
「あんな生物は私のデータにはありません……なぜ駆逐できないのでしょう」
戦力では凌駕している筈なのに攻めきれない戦況に、マザーは困惑の表情を隠せない。
彼女は理詰めで物事を考える研究者だが、ウィユには論理だけでは測れない力がある。彼が生み出すお友達はみな、その力がカタチを取って具現化されたものだ。
「くろねこさん! ボクと一緒にマザーさんを倒しに行くのです!」
そらなかさんとあおつばめさんが敵の攻撃を防いでいる間に、彼は「くろねこさん」の集団を引き連れて敵本体の元に向かう。ぴょこぴょことすばしっこく機械都市を走り回る黒猫の群れは、ウィユの不吉の力から生み出されたものたちだ。
「あまり調子に……!」
【トランスフォーム・デトロイト】により都市と接続されたマザーは、周囲の建造物や地面を変形させてウィユ達を迎撃する。しかしくろねこさんは素早い動きで攻撃を躱し、ちっちゃな爪と肉球を振りかざして相手を牽制する。
「この糸で運命を変えてみせます!」
その隙にウィユはマザー本体まで近付いて【運命の糸】を発動。キマイラたる自らの体に宿った「不吉を呼ぶ黒い猫」と「幸せを運ぶ青い鳥」の力を解放する。その力は糸というカタチを取って可視化され、彼とマザーの間に一本のラインを繋いだ。
「この糸はなんですか? 私は痛くも痒くもありませんが……っ?!」
攻撃の意図を掴めずにマザーが首を傾げた直後、コンピュータが突然エラーを起こす。都市のあちこちでも突然の不具合や故障が発生し、兵器の動きに乱れが生じ始めていた。
ウィユの攻撃は相手に物理的なダメージを与えるものではなく、幸せとなる運命を奪うユーベルコードだった。運を奪われた分だけ相手は不幸になり、自分には幸運が訪れる。これこそが機械の論理や予測すらも上回る、運命の力の真骨頂だ。
「運命を味方に付ければきっと他の猟兵さん達がマザーさんを倒してくれるのです!」
舞い込む不幸の連発で敵が混乱している内に、ウィユはくろねこさん達と一緒に前線を離脱する。彼の能力では敵に致命傷は与えられないが、しかし戦況を動かす事はできる。
彼が紡いだ運命の糸は、猟兵達に幸運の風を呼び込み、戦いの流れを変えていく――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…リム、貴女が負い目を感じる必要は無い
私達が普段、退路を気にせず戦えるのはグリモア猟兵の支援があるからこそ
…それに、友達を護る事を否む程、私は狭量では無いつもりよ?
UCを発動して「破壊魔、操縦、盗人、道化師、軍略、迷彩、変装」の呪詛を付与
電子精霊の魔力を溜めて武器改造した「写し身の呪詛」を乱れ撃ち、
リムの姿に●変装して●演技を行う無数の残像による●集団行動で本物を●迷彩し、
分身を破壊した機械の●操縦権を●盗む●破壊工作で敵の同士討ちを誘発させ、
敵群の体勢が崩れた隙に切り込みマザーに向け怪力任せに大鎌を投擲するわ
…だけどまあ、敵がグリモア猟兵を狙ってくるなら、それはそれで利用すべきよね
「やはり、皆様には負担を強いてしまっていますね……」
「……リム、貴女が負い目を感じる必要は無い」
機械都市デトロイトでの戦闘の最中、リミティアがぽつりと呟いた一言に、答えたのはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)だった。周囲を機械の敵に囲まれた状況であっても、彼女はいつもと変わらない落ち着いた言葉遣いで語る。
「私達が普段、退路を気にせず戦えるのはグリモア猟兵の支援があるからこそ」
それ故に敵の標的にされたとしても、リーヴァルディは彼女らを守る事が迷惑などとは思わない。自分はいつものように戦い、守るべきものを守り抜き、敵を撃破するだけだ。
「……それに、友達を護る事を否む程、私は狭量では無いつもりよ?」
「……ありがとうございます、リーヴァさん」
頼もしい仲間であり友人でもある少女の言葉に、リミティアは心からの感謝を伝える。
リーヴァルディはそれに頷きを返すと、改めて敵軍に向き合う。マザー・コンピュータの力で創造された戦闘機械の群れは、今も増殖を続けては猟兵達の生命を狙っている。
「……だけどまあ、敵がグリモア猟兵を狙ってくるなら、それはそれで利用すべきよね」
その優先目標がリミティアである事を把握した彼女は【吸血鬼狩りの業・千変の型】を発動。身に着けた戦闘装束「黎明礼装」に付与した呪詛を切り替え、状況と作戦に適した術式を瞬時に組み上げていく。
「……術式換装」
今回リーヴァルディが付与した術式は7つ。その効果を魔力に乗せて大鎌を振るうと、リミティアそっくりに姿を模した「写し身の呪詛」の残像が無数に現れた。彼女らは集団で機械都市のあちこちに駆けていき、グリモア猟兵を狙っている敵を撹乱する。
「分身? いえ、これは立体映像のようなものですね。ですが本物はどこに……」
マザーの索敵能力を以ってしても、"道化師"や"変装"の呪詛で巧妙に姿を変え、魔術的に正体を隠蔽した上で細かな仕草まで本物を再現した残像達を見分けるのは困難だった。
木を隠すなら森の中――"軍略の呪詛"の効力で指揮された無数の残像は"迷彩の呪詛"の役目を果たし、本物のリミティアの所在は敵の目から巧みに隠されていた。
「……すぐには本物を見つける事はできそうにないですね。ならば全て破壊するまで」
識別を断念したマザーは、戦法をよりシンプルな手段に切り替える。都市より生まれた戦闘機械の群れが残像の集団に銃口を向け――1人残らず駆逐せんと殺意を剥き出しに、嵐のような弾幕を浴びせた。
「……掛かったわね」
残像の操り手であるリーヴァルディは、それを見て静かに呟く。敵が物量に物を言わせて偽物を一掃しようとするのは最初から予想できていた。ゆえに残像には正体を偽装するための術式だけでなく、攻撃を受けた際に発動するカウンターの術式も付与してあった。
「……命令よ。貴方達の同族を破壊しなさい」
戦闘力のない残像は一撃のもとに破壊されるが、その瞬間"破壊魔"、"操縦"、"盗人"の呪詛が発動し、リーヴァルディは残像を壊した機械の操縦権を盗み取る。電子の妖精の力によってマザーの支配から外れた機械達は、近くに居た味方に攻撃を仕掛けた。
「なッ?!」
突如として始まった同士討ちに驚いたのはマザーである。万物を機械化する自らの能力が裏をかかれるのは予想外だったのだろう。デトロイト市のコアである彼女の動揺は都市全体に伝わり、混乱はより大きくなっていく。
「……貴女の企みはここで終わりよ」
機械達の造反が鎮圧される前に、リーヴァルディは体制の崩れた敵軍の隙をすり抜けてマザー本体に切り込んだ。透明な卵型のケースに入った生体コアの女性の姿を捉えると、黒い大鎌"過去を刻むもの"を振りかぶり――渾身の力で投げつける。
「きゃぁッ?!!」
三日月のような軌跡を描いて飛んでいった大鎌は、マザー本体に見事に突き刺さった。
過去を切り裂く漆黒の刃が、オブリビオン・フォーミュラの命脈を抉る。生身の証たる鮮血と共に、女性の口から悲鳴が溢れた。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
来ましたね。
普段はお世話になっていますし、今回は私がリムさんを守りましょう。
【スノウマンフォート】を使用し、氷の砦を作成、その上にリムさんと登ります。これですぐさま足元から奇襲を受けることはないでしょう。
召喚した雪だるまの幽霊たちが放つ氷の礫の『乱れ撃ち』による『弾幕』で地上および空中からこちらに近寄る戦闘機械兵器を撃ち落としていきます。
そうそう本体が前に出ては来ないでしょうが、こちらの様子を窺うための目を潰していけば指揮を執るために前に出て来ざるを得ないはず。「フィンブルヴェト」で偵察機を撃ち落としていき、『視力』でマザー・コンピュータの姿を認め次第、『スナイパー』の技術で撃ち抜きます。
「来ましたね」
閉鎖された都市のあちこちから襲来する戦闘機械の大軍を、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)の目は捉えていた。数えるのが馬鹿らしくなるほどの兵力――物量でグリモア猟兵ごとこちらをすり潰そうというシンプルな意図が透けて見える。
「普段はお世話になっていますし、今回は私がリムさんを守りましょう」
彼女は【スノウマンフォート】を使用し、水晶のように透き通った氷の砦を作成する。
数で勝る相手に市街戦を挑まれるのは不利を否めない。だが籠城戦ならば勝算はある。敵地のド真ん中に出現した氷の砦が、彼女とその仲間を守る防衛拠点となる。
「リムさんもこちらに」
「はい、セルマさん」
セルマはリミティアと共に砦の上に登り、そこから接近してくる敵の様子を俯瞰する。
敵は【マザーズ・コール】によって増殖無限戦闘機械都市のどこからでも出現するが、流石に砦の下の地面から這い出てくることは出来ないようだ。
「これですぐさま足元から奇襲を受けることはないでしょう」
敵地に自らの陣地を築いたセルマは、改造マスケット銃「フィンブルヴェト」を構えて狙撃体勢を取る。ここからなら360度どこから敵が来てもお見通しだ。スコープを覗き込む彼女の横顔は真剣そのもので、深い集中状態にあるのが見て取れた。
「そんな砦、すぐに押し潰してあげます」
マザーに率いられた対猟兵戦闘機械の群れは、すぐさま氷の砦への総攻撃を開始する。
これだけの兵力差があればたかが砦ひとつ、すぐに陥落させられると思ったのだろう。しかしその砦が見た目以上に難攻不落であることを、彼女はすぐに知る事となる。
「ここを通りたければ、この砦と弾幕を越えてもらいましょうか」
氷の砦のあちこちからひょっこりと姿を現したのは、銃で武装した雪だるまの幽霊達。彼らは地上や空中からこちらに近寄る敵に銃口を向けると、氷の礫を一斉に撃ち出した。
「あれは? ……雪だるまがなぜ攻撃を?」
スノウマンフォートは砦を築くだけではなく、それを守備する兵士達も同時に召喚するユーベルコードである。半透明な雪だるまが銃を撃ちまくる光景にマザーは戸惑ったが、それが立派に守備兵として機能する戦闘力を持っているのは確かだった。
「見えていますか、マザー・コンピュータ」
雪だるまが敵の侵攻を押し留めている間に、セルマは空を見上げてじっと目を凝らす。
デトロイト市を掌握するマザー・コンピュータの本体は、そうそう前に出ては来ない。
だが、こちらの様子を窺う為の"目"を飛ばしているはずだ。彼女がトリガーを引くと、放たれた弾丸は狙い通りに敵の偵察機を撃ち落とした。
「くっ……こちらの観測機ばかり的確に潰してくるなんて」
氷の銃声が響くたびに、カメラを破壊され墜落していく偵察機。狙撃により目を失ったマザーは、指揮を執る為に前に出て来ざるを得なくなる。機械の大軍の中から敵の本体を引きずり出すことが、セルマの真の狙いであった。
「出て来ましたね」
鷹のように鋭いセルマの視力は、兵器の後ろから現れるマザー・コンピュータの本体を見逃さなかった。その姿を認め次第、彼女は弾丸に魔力を込めて素早く照準を合わせる。
「撃ち抜きます」
「―――ッ!!?」
放たれた氷の弾丸は無数の機械の隙間を縫って、マザー・コンピュータ本体を捉えた。
生体コアを保護するケースに穴が空き、マザーの体に弾丸が突き刺さる。その驚異的な狙撃技術に、彼女は血飛沫とともに言葉にならない悲鳴を上げた。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
ちっ…グリモア持ちを引きずり出すとはな
敵ながら悪辣なやり口だ…見事なもんだと賞賛してやりてえぜ
だが…こっちも火が点いたぜ、そう来るってことならな
これ以上はやらせねえ…必ず止めるぞ
来やがれ──Void Link Start
クリエイト──『Azi Dahaka』
テメェが都市を変形させて戦うなら、俺も相応のモンを出す
こいつはデカイ…いやでもヘイトを向けざるを得ない
リミティアの盾として機能させるぞ
将を射んとするする者は何とやらだ
武装の破壊を優先して、変形都市の力を削ぎ落し続ける
その後は支える足回りを重点的に破壊して、マザーを引きずり出す
俺が死ぬ前にさっさと終わらせてくれよ──まだやることが多いんだ
「ちっ……グリモア持ちを引きずり出すとはな。敵ながら悪辣なやり口だ……見事なもんだと賞賛してやりてえぜ」
こちらの泣き所を的確に突いてくる敵の戦法に、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は舌打ちする。卑怯卑劣と謗られようが、相手が嫌がる事をやるのは戦いの基本である――今回の敵はそれを良く分かっているようだ。
「だが……こっちも火が点いたぜ、そう来るってことならな」
相手が手段を選ばないのなら、こちらもお行儀よく戦ってやる理由はない。駆け引きと技巧で格上を出し抜くのは彼の得意分野だ。敵がオブリビオン・フォーミュラだろうが、無限の戦闘機械だろうが、勝利に向かう彼の意志は揺らがない。
「これ以上はやらせねえ……必ず止めるぞ」
「止められるものですか。私の思索の邪魔はさせません」
【トランスフォーム・デトロイト】によって変形した増殖無限戦闘機械都市を武器に、無数の戦闘機械による攻撃を仕掛けるマザー。その標的にはヴィクティムだけではなく、グリモア猟兵のリミティアも含まれている。
「来やがれ──Void Link Start クリエイト──『Azi Dahaka』」
対するヴィクティムが起動したユーベルコードは、漆黒の虚無で形作られた邪龍を召喚する。虚無が持つ『過去捏造』の業によって生み出された架空の悪龍は、その巨体を顕現させるだけで周囲の機械を押し潰し、デトロイト市全域に轟くような咆哮を上げた。
「テメェが都市を変形させて戦うなら、俺も相応のモンを出す」
これまでにも何かを召喚・騎乗して戦う猟兵はいたが、ヴィクティムが召喚した邪龍はその中でも群を抜いてデカい。まるで怪獣映画に出てくる大怪獣のようなスケール感で、嫌でも敵はヘイトを向けざるを得ない。
「……あれを放置しておくわけにはいきませんね。全軍、総攻撃」
都市から産み落とされた戦闘機械の群れと、都市そのものに搭載された武装の数々が、超大型目標に一斉攻撃を開始する。虚無の邪龍はその身を盾にしてリミティアを砲火から守り、猛攻を受け止めながらも怯むことなく機械都市に牙を剥いた。
「将を射んとするする者は何とやらだ」
邪龍が振るう爪牙は鋼鉄の都市をハリボテのように引き裂き、戦闘機械の大軍を虫ケラのようになぎ払い、スクラップの山に変える。まずは武装の破壊を優先して、変形都市の力を削ぎ落とすのが狙いだ。
「くっ……被害甚大。あの龍、なぜ倒れないのですか……?」
機械都市から相当の攻撃を食らっているはずなのに、虚無の邪龍が倒れる気配はない。
その背中に乗るヴィクティムも同様だ。騎乗中の彼らは互いの生命力を共有しており、どちらかが倒れない限りはもう一方も戦闘を継続できるのだ。
「次だ『Azi Dahaka』。マザーを引きずり出すぞ」
都市の攻撃機能を大幅に削ったところで、ヴィクティムはマザー・コンピュータ本体を支える足回りを重点的に破壊する。その巨体を活かした虚無の邪龍の猛攻は、都市の地盤さえも砕き、災害の如き力で破壊をもたらしていった。
「いけない……っ!」
マザーは慌ててその場から離脱を図るが、もう手遅れだった。都市という鎧にして盾を引き剥がされた彼女の元に邪龍が降り立ち、虚無の眼でぎょろりと小さき者を睥睨した。
「俺が死ぬ前にさっさと終わらせてくれよ──まだやることが多いんだ」
これまでの激しい戦闘で邪龍も相当のダメージを負っているが、ヴィクティムはそれを表情には出すことなく告げる。邪龍は彼の意志に応えて顎を開き、マザー・コンピュータのコアに齧りついた。
「や、やめなさ―――ッ!!!!」
透明なケースが砕ける音と共に、マザーの体に邪龍の牙が突き立てられる。串刺しにされた女性の口から悲鳴と鮮血が溢れ、破損したコンピュータを真っ赤に染めていく――。
大成功
🔵🔵🔵
パルピ・ペルポル
やることが全くもって容赦ないわねぇ。
とはいえやられるわけにもやらせるわけにもいかないのよね。
領主仲間だし世話になってるし。
周囲に雨紡ぎの風糸を展開、徳用折り紙を通常サイズに切って作った万羽鶴も周囲に飛ばして目くらまし兼盾として使うわ。
地面から対猟兵戦闘機械を呼び出すなら古竜の骨のマン・ゴーシュをぶっ刺して妨害しましょ。予備はいっぱいあるからね。
その上で迷いの森へご招待するわ。この中だと機械を呼び出すのも簡単には出来ないでしょ。
マザーなら脱出方法わかればすぐ抜け出しそうだけど。出口はひとつしかないのだからそこで待ち伏せかけて風糸で絡めて折り紙の動物たちで一斉攻撃かけましょ。
「やることが全くもって容赦ないわねぇ」
転移担当のグリモア猟兵ごと全員を閉じ込めるという大胆な戦法に、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は驚きと呆れの混じった調子で呟いた。それを実行できる事自体がまずとんでもないし、実行されれば非常に厄介なのも間違いない。
「とはいえやられるわけにもやらせるわけにもいかないのよね。領主仲間だし世話になってるし」
今回敵の標的にされたグリモア猟兵のリミティアは、パルピとは知己の間柄でもある。
危険な戦いだと分かっていても、仲間を守るためなら一肌脱ぐのもやぶさかではない。
「わたし達を襲うつもりなら覚悟してもらおうかしら」
パルピは細くて透明な「雨紡ぎの風糸」を周囲に展開し、敵の侵攻を押し止めるための捕獲網を編む。更に「徳用折り紙セット」を通常サイズに切って折った万羽鶴も飛ばし、目くらまし兼盾として利用する。
「トラップですか。ですがこの程度では止められませんよ」
ひらひらと空を舞う折り鶴の群れに惑わされ、蜘蛛の巣のように張られた風糸に捕まる対猟兵戦闘機械。しかしマザーは何機止められても【マザーズ・コール】で新たな機械を創造し、無尽蔵の物量でトラップ地帯を突破する構えだ。
「流石にやるわね。ならこんなのはどうかしら?」
地面から新たな敵が呼び出されるタイミングを見計らい、パルピは「古竜の骨のマン・ゴーシュ」をぶっ刺す。この短剣の素材にはユーベルコードの威力を弱める効果があり、機械兵器の創造を一時的に妨害する。
「予備はいっぱいあるからね」
帝竜戦役の際にかき集めた甲斐があったと、大量の短剣を惜しみなく機械の大地に突き立てまくる。もちろん、これで敵のマザーズ・コールを封殺できるとは思っていないが、こちらもユーベルコードを発動する時間が稼げれば十分だ。
「迷いの森へご招待するわ」
フェアリーの領主がそう宣言すると、彼女の治める領土の一部が機械都市に顕現する。
そこは群竜大陸にある「迷いの森」。一度迷い込めば通常の方法では決して出られず、「正直の実と嘘つきの実」が出す問題に正解しなければ出口が分からないという、不思議なルールに支配されている。
「迷いの森へようこそ。この中だと機械を呼び出すのも簡単には出来ないでしょ」
「環境変化型のユーベルコード……確かにこれは厄介です」
都市の封鎖が解けたわけではないが、地面を森に塗り替えられればマザーズ・コールの効果は停止する。普通の迷路なら人海戦術で強引に出口を見つけられただろうが、問題に答えられない兵器では、この迷いの森からは永遠に出られない。
(まあ、マザーなら脱出方法わかればすぐ抜け出しそうだけど)
敵はフィールド・オブ・ナインの中でも屈指の頭脳派。謎解きの類で頭を悩ませる事は無いだろう。だが、この迷いの森に出口はひとつしかない――パルピはそこに先回りして罠を仕掛ける。
「ふむ。その問題の答えは……」
案の定マザーは木の実からの出題にあっさりと答え、森の出口を教えてもらっていた。
この程度のリドルで自分を閉じ込められるとは舐められたものだ。そんな侮りと慢心も彼女にはあったかもしれない。その油断が目を曇らせ、本命の罠から意識を逸らさせる。
「待っていたわよ」
「なっ?!」
出口に到達したマザーを迎えたのは、待ち伏せていたパルピと折り紙の動物達だった。
雨紡ぎの風糸がふわりとマザー本体の装置を絡め、動きを封じたところに折り紙の群れが一斉攻撃を仕掛ける。
「しまっ……きゃぁぁっ!!!」
己の油断を恥じたところでもう遅い。切り裂かれたマザーの全身から鮮血が噴き出し、折り紙を赤く染める。機械都市が彼女の力であるなら、迷いの森の顕現を許した時点で、その領主たるパルピに勝てる道理は無かったのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ルナ・ステラ
リムさんの自衛を助けるため、エオロー<守護・仲間を守る>のルーンカードを渡すか【投擲】して発動です。
地上からの攻撃は、UCで箒を強化して箒に乗り【空中戦】をすることで防ぎます。空中の攻撃は【残像】を交えながら避けていきます!
また、強化された箒から繰り出す魔法であらゆる防護を貫きます!
機械なら水や雷で不具合を起こせるでしょうか?【属性攻撃】で水と雷の魔法を【多重詠唱】で組み合わせて攻撃です!
もし、多方面から機械がきたら魔法を【乱れ撃ち】します。機械がマザーを守るようなら【貫通攻撃】で貫いて攻撃です!
余力があれば鼓舞や癒しの獣奏器でも援護します。
厳しい戦いになるかもしれませんが諦めずに戦います!
「リムさんはこれを持っていてください」
閉鎖された機械都市に転移した直後、ルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)は1枚の「マジックルーンカード」をリミティアに渡す。グリモア猟兵であり魔女でもある彼女は、そのカードに刻まれたルーンを見てすぐにピンときたようだ。
「エオロー……意味は確か『守護』や『防御』、『仲間を守る』などでしたか」
「はい。このカードがあなたを守ります」
ルナはカードの効果を発動させることで、リミティアに守護の魔法をかける。押し寄せる機械の群れから自衛する上で、この力は大きな助けになるだろう。グリモア猟兵の安全を確保できれば、こちらも安心して戦えるというものだ。
「箒の力を最大限引き出し、あらゆるものを寄せ付けない力を!」
敵の戦闘機械が近付いてきたのを見ると、ルナは【パーフェクトブルーム】を発動し、魔法の箒「ファイアボルト」に乗って空に飛び立つ。地上を埋め尽くす兵器の攻撃を防ぐには、空中に逃れるのが一番シンプルで有効だ。
「逃しませんよ」
【トランスフォーム・デトロイト】で都市と繋がったマザーは、その動きを見逃さずに空中戦用の機械兵器群を差し向ける。しかし箒の力を引き出したルナは残像を交えた巧みな操縦技術で敵を撹乱し、攻撃をひらりと躱してみせる。
「機械なら水や雷で不具合を起こせるでしょうか?」
激しい対空砲火の中を流星のようにくぐり抜けながら、水と雷の多重詠唱を行うルナ。紡がれた魔法は箒の先から弾丸のように放たれ、飛び交う戦闘機械の群れを撃ち抜いた。
『ギ、ガガ……』
強化された箒から繰り出す魔法はあらゆる防護を貫く。鋼の装甲や防水処理などの様々な仕様を無視して、水飛沫と稲妻に打たれた機械達は次々にショートして墜落していく。
「こちらの弱点を突いてきますか。ならばこれならどうですか」
配下を撃墜されたマザーはさらに多くの兵器を集結させ、全方位からの攻撃を命じる。
森羅万象の機械化による無尽蔵の物量を誇る、彼女だからこそ可能なシンプルな戦法。対するルナは箒の柄を握ってくるくると回転し、多方面に水と雷の魔法を乱れ撃つ。
「負けません!」
この数を相手にするのは流石に苦しいが、敵にも隙はあるはず。こちらに兵力を割いたぶん、マザー周辺にいる機械の数は少なくなる――彼女はそこを狙って包囲に僅かな隙間をこじ開け、ファイアボルトを一気に加速させる。
「水と雷の力よ、敵を貫いてください!」
「なっ……しまった!」
一瞬の隙を突かれて接近を許したマザーは、慌てて付近にいる機械に自分を守らせる。
だが、ルナの放った魔法はその機械の盾すら貫いて、マザー本体を見事に撃ち抜いた。
「がはっ!!」
生体コアであるマザーの体に電流が走り、彼女と接続された全機械の動きが一瞬鈍る。
その間にルナは高度を上げ、敵の反撃を受けない高さまであっという間に離れていく。
「厳しい戦いになるかもしれませんが、諦めずに戦いましょう!」
強力な魔法の連発により少なからず消耗しながらも、ルナは都市の上空で声を上げる。
その言葉と一緒に奏でられる「癒しの獣奏器」の音色は、まだ都市の各所で戦っている猟兵達の負傷や疲れを癒やし、闘志を鼓舞する。
「はい。皆様の力があれば、必ず勝利を掴み取れます」
ルーンに守護されながら自衛戦闘を行うリミティアの元にも、その声援は届いていた。
未来と希望を信じる人の意志。それこそが何よりも強い力になるのだと――機械都市を自由に翔ける星と月の魔女っ子の姿が、鮮やかにそれを証明していた。
大成功
🔵🔵🔵
春乃・結希
リムさんが危ないと聞いて!…って敵めっちゃおるやないですか!?
リムさんの方には絶対敵を行かせない、盾になる【覚悟】で
リムさんの近くから離れないようにしつつ、向かってくる敵をwithで叩き伏せつつ【重量攻撃】
なにその選択肢…もし1を選んだ時はどうなるん…?
(脳内にシミュレーションが流れてくる)
…だっ、だめだめ!みんな一緒に帰らないと意味ない…!
と、とにかく私周りの敵燃やして…あっ、魔女リムさんの火の魔法と一緒なら、きっとすごい火力になるはずだから、力をお借り出来ると嬉しいですっ【焼却】
ううん、大丈夫!絶対大丈夫!
カビパンさんにはチート…奇跡?みたいな力があるんやから
今日だって絶対勝てますよっ
カビパン・カピパン
仲の良い尊敬する猟兵達と共に戦場に閉じ込められた時の選択肢――
1.もうダメ!
2.リムさん助けて!
3.今こそ女神の力を!
この中から一つを選べと言ったら誰でも3を選ぶだろう
⇒ 3.今こそ女神の力を!
諦めちゃダメ!不安そうな目で見つめてくる、リムとCEOに微笑む。
バビューン!
女神に見捨てられたカビパン紋章は兵器に吹き飛ばされた。
~ TAKE1 ~
⇒ 1.もうダメ!
「マッハさんもうダメ!助かりっこないわ。もう終わりよ!」
カット!!はいっ、チェック入ります。
そう、これはお芝居。戌製作総指揮の最新作。
「リムさんも良かったよ。もうサイコーって感じみたいな」
増殖無限戦闘機械都市はギャグ化して撮影現場になった。
「リムさんが危ないと聞いて! ……って敵めっちゃおるやないですか!?」
今回標的になったグリモア猟兵と親交のある春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は、気合十分に戦場に飛び込むなり、押し寄せてくる大量の敵群に驚いた。どこを見回しても敵、敵、敵――天地を埋め尽くさんばかりの戦闘機械全てがマザーの配下だ。
「リムさんの方には絶対敵を行かせない」
結希はきっと表情を引き締め、仲間の盾になる覚悟を決める。構えるのは最愛の恋人である漆黒の大剣『with』。リミティアの近くから離れないようにしつつ、向かってくる敵に刃を振るえば、戦闘機械はその圧倒的な重量のもとに叩き伏せられる。
「よい剣士とよい剣です。ですが1人とひと振りではこの数は凌げませんよ」
全長数十メートルの巨大戦闘機械【マシン・マザー】に変形したマザー・コンピュータは、【マザーズ・コール】も併せて大量の機械兵器群を都市のあちこちから出現させる。
今だに底を尽きる気配さえ見せない強敵の圧倒的物量を前にして、結希とリミティアはじりじりと追い込まれる。周囲を機械兵器に取り囲まれ、逃げ場を失ったその時――。
「仲の良い尊敬する猟兵達と共に戦場に閉じ込められた時の選択肢―― 1.もうダメ! 2.リムさん助けて! 3.今こそ女神の力を!」
紋章という形で結希にくっついていた、カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)が突然話し始めた。どうやら三択問題らしいが、この中にこの状況を打開する選択肢があると言うのだろうか。
「なにその選択肢……もし1を選んだ時はどうなるん……?」
『マッハさんもうダメ! 助かりっこないわ。もう終わりよ!』
おそるおそる結希が「1.もうダメ!」を選択してみると、脳内にシミュレーションが流れてくる。それは全てを諦めたカビパンが子供のようにジタバタと泣き喚き、仲間達と共に機械の大軍に呑み込まれる光景だった。当然のようにバッドエンドである。
「では、3を選んだらどうなるのでしょう」
『諦めちゃダメ!』
続いてリミティアがこの中では無難そうな「3.今こそ女神の力を!」を選んでみる。
するとカビパンは不安そうな目で見つめてくるリミティアと結希に優しく微笑んで――直後に女神に見捨てられたのか、バビューン! と兵器に吹き飛ばされる光景が見えた。
「……だっ、だめだめ! みんな一緒に帰らないと意味ない……!」
この調子だと残った2を選んでも碌な結末にならないだろう。結希はシミュレーションの結果をぶんぶんと頭から追い出して、現実に迫りくる敵の対処に専念することにする。
「と、とにかく私周りの敵燃やして…あっ、魔女リムさんの火の魔法と一緒なら、きっとすごい火力になるはずだから、力をお借り出来ると嬉しいですっ」
「分かりました。リムも微力ながらお手伝いします」
結希が背中に緋色の翼を広げると、リミティアは手のひらの上に勿忘草色の炎を灯す。
光を求める心を力にした絶望を【拒絶する焔】と、オブリビオンを焼却する魔女の炎。同時に放たれた二色の火焔が、戦闘機械の大軍を焼き払っていく。
「なかなかやりますね。ですがまだ終わりではありませんよ」
一瞬にして大量の配下を失ったマザーだが、慌てずに新たな兵器をすぐに出現させる。
機械都市デトロイトが健在である限り、機械化能力により配下は幾らでも再生産可能。いかに歴戦の猟兵であっても、兵力の差は歴然であった。
「ううん、大丈夫! 絶対大丈夫!」
それでも結希は絶望することなく、リミティアを守りながら緋色の翼を羽ばたかせる。
決して屈する事のないその意志はどこから来るのだろうか。『withと共に在る』という一体感か、『私は強い』という暗示か。それも勿論あるが、彼女は仲間を信じていた。
「カビパンさんにはチート……奇跡? みたいな力があるんやから。今日だって絶対勝てますよっ」
いつもはマッハCEOとか呼ばれてカビパンに振り回されがちな結希だが、だからこそ彼女が不可思議で理不尽な現象を引き起こすところを何度も見てきた。彼女ならどんな絶望もシリアスごと吹き飛ばしてくれるという謎の信頼感と、安心できない安心感がある。
「そうですね。むしろ相手に同情します」
それについてはリミティアも同意だった。結希に守られながら敵を炎で焼き払う間も、表情に不安の色はない。仲間への期待と信頼を胸に、彼女らは全身全霊で戦い続け――。
「カット!! はいっ、チェック入ります」
戦いの熱量が頂点に達した瞬間、バシーン!! と大きなハリセンの音が鳴り響いた。
紋章からニュッと出てきた【ハリセンで叩かずにはいられない女】、もといカビパンの霊体がハリセンを振るった瞬間、戦場はたちまちギャグの世界と化した。
「マッハさん熱演でしたよ。これなら主演女優賞狙えるかも」
「いやいや、それほどでも」
まだ戦闘中だというのにぺちゃくちゃと話しかけるカビパン。いや、ある意味で戦いは終わっていた。彼女のユーベルコードは全てを自分のペースに合わせたギャグに変える。この戦いはお芝居で、いつもの製作総指揮による最新作――そういうことになった。
「リムさんも良かったよ。もうサイコーって感じみたいな」
「ありがとうございます」
褒めちぎられる当人達は困惑気味だが、場の空気が変わったのは彼女らも感じていた。
それはカビパンと一緒にいる時によく感じる、いつもと同じあの"日常"の空気だった。
「な……お前達、何をしているのですか!」
撮影が終わったのならモブは速やかに退場するのがルール。マザーの命令を無視して、機械達は攻撃を停止してわらわらと散っていく。電子音で「オツカレー」と言いながら。
増殖無限戦闘機械都市は今や巨大な撮影現場。常識も論理も改竄するギャグによって、戦場を支配するマザー・コンピュータの権能は剥ぎ取られた。
「ではマッハさん、主演として締めをどうぞ」
「え、私ですか? わかりましたっ」
仲間の声とハリセンの音に背中を押されて、結希がマザーの本体へと突っ込んでいく。
緋色の翼を羽ばたかせ、漆黒の大剣を大きく振りかぶり。混乱する敵の真っ正面から、全力の一撃を叩きつける。
「絶望なんて、全部全部、消えてしまえばいいのに」
「―――がはッ!!!?!」
絶望を拒絶する焔を纏った超重量の斬撃は、マザーの本体に甚大なダメージを与えた。
神にも計算不可能なギャグの力と、絶対に諦めない人の意志。それは絶望を笑い飛ばす未知のパワーとなって、フィールド・オブ・ナインを追い詰めつつあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
大陸を丸ごと機械化とはな…フン、「無限」と言う言葉に偽りは無いようだな
取り逃せば、厄介な事になる事は確実だな…なんとしても此処で叩かねば
UCを発動
パワードスーツを装着、マッハ8を超える速度で低空飛行を行い敵の攻撃を掻い潜りながら次々と撃破していく
さらにオーヴァル・レイも操作し、死角からの攻撃にも対応をする
レーザーガトリング砲にグレネード付きビームライフル、そしてオーヴァルレイのビーム砲を戦闘機械が沸く速度以上の圧倒的な制圧射撃でなぎ倒し、道を塞ぐ至近距離の敵はレーザーブレードで次々と切り倒してマザーまで進む
途中でリミティアが危機に陥ったら援護射撃も忘れずに行おう
リム!長くは援護できん!すまないが後は自力で頼む!
マザーを倒すまでもう少しだけ待っていてくれ!
リミティアの安全が確認出来たらブーストを最大に吹かせ周囲の戦闘機械を吹き飛ばしながらマザーへと肉薄
一斉射撃を叩き込む
論文を少しだけ読ませてもらったが、興味深い内容だった
銃口ではなく言葉で語り合いたかったが…残念だよ、マザー
「大陸を丸ごと機械化とはな……フン、『無限』と言う言葉に偽りは無いようだな」
目の前に広がる機械都市と兵器の大軍を前にして、情報は事実であると知ったキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)。デトロイト市全てを機械化した、この増殖無限戦闘機械都市ですら、恐るべきフィールド・オブ・ナインの力の一端に過ぎない。
「取り逃せば、厄介な事になる事は確実だな……なんとしても此処で叩かねば」
「よもや、ここまで窮地に陥るのは想定外でした。ですがまだ終わっていません」
彼女は最大限の警戒を以ってマザー・コンピュータを討つと決意し、自らの全力を行使する。そして追い詰められつつあるマザーも、全力を以って猟兵を排除せんとしていた。
「全武装と全生産機能を最大稼働。【トランスフォーム・デトロイト】再起動」
より攻撃的に変形を遂げるデトロイト市に搭乗した状態で、マザーは配下の戦闘機械群を差し向ける。対するキリカは漆黒のパワードスーツを装着し、背部ブースターユニットで戦場を翔ける。
「私の手が届く場所は地上だけとは思わない事だ……Vol Conquérant!」
低空飛行を行う彼女の速度はマッハ8を超え、ソニックブームを発生させながら攻撃を掻い潜り、スーツに搭載された火器で次々と敵を撃破していく。浮遊砲台「オーヴァル・レイ」を随伴させることで死角からの攻撃にも対応するなど、付け入る隙は微塵もない。
「凄まじい性能のパワードスーツです。ですがそれを纏えるのは貴女一人」
マザーの攻撃目標はキリカだけではなく、グリモア猟兵のリミティアも狙われていた。
彼女もそれなりの場数を踏んだ猟兵ではあるが、戦闘機械群からの執拗な攻撃を受けて危機に陥りつつある。ここでもしグリモアの力を失えば、猟兵は戦場からの退路を失う。
「やらせるものか!」
そうはさせじとキリカはビームライフル「Colère(憤怒)」に装着されたグレネードランチャーを発射。リミティアに迫る機械の群れを、憤怒を体現した爆発で吹き飛ばす。
さらに背部に搭載したレーザーガトリング砲「Étonnement(驚愕)」が唸りを上げ、無数の死の光線が敵を撃ち抜いていった。
「リム! 長くは援護できん! すまないが後は自力で頼む!」
機械都市のコアであるマザー・コンピュータを倒さない限り、敵は無限に沸き続ける。
リミティアの安全をひとまず確認できたところで、キリカは敵本体の撃破に集中する。
「マザーを倒すまでもう少しだけ待っていてくれ!」
「十分です。行ってください、キリカさん」
剣を片手に残された敵を切り払いながら、感謝と応援を送るリミティア。その声を背に受けてキリカはブーストを最大に吹かせ、周囲の機械を吹き飛ばしながらマザーに迫る。
「この……止まりなさい!」
マザーは本体を移動させながらキリカの進路上に戦闘機械を出現させ、接近を食い止めようとする。だが「Colère」と「Étonnement」、そしてオーヴァル・レイのビーム砲による圧倒的な制圧射撃は、敵を沸く以上の速度でなぎ倒していく。
「止められるものか……速攻で仕留める」
なおも道を塞ぐ機械をレーザーブレード「黄泉返太刀」で斬り伏せれば、遂にマザーの生体コアを収めた装置を視界に捉える。そこに猛然と肉薄した彼女は、"コンケラント"に搭載された全武装で目標をロックオンした。
「論文を少しだけ読ませてもらったが、興味深い内容だった。銃口ではなく言葉で語り合いたかったが……残念だよ、マザー」
直に相見えた強敵にかける言葉は殺意ではなく惜別。直後に【ヴォル・コンケラント】の一斉射撃がマザー・コンピュータ本体に叩き込まれ、爆音と閃光が戦場を包み込んだ。
「きゃあぁぁぁぁぁっ!!!!!」
バチバチと音を立てて壊れていくコンピュータ。その中でマザーの甲高い悲鳴が響く。
永遠の思索の時間を求めて世界を滅ぼさんとした女性に、終焉の時が迫りつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
エイト・ウィンプ
守る為に戦うのは元々私の存在意義でした
貴女のような善なる人なら余計な事を考えずに守ることが出来るので助かります
この命に代えても守りきってみせましょう
……重たいですか、すみません
しかし厄介な戦場ですね
出来る事はとにかく数を減らしていく事でしょうか
マザーを狙うにしても邪魔が多いのは困りますから
道を切り開くように銃撃戦を行います
リミティアさんに近付く物があれば優先的に撃墜させます
キリが無いですが諦めるわけにも行きませんので
マザー、母と名乗るなら優しく受け止めて下さい
私は母を知らないので教えて頂けないでしょうか
生み出した物を全て手足として使うのは
私が思う母とは違うのですけれど
銃を抱えてマザーの元まで駆けましょう
足場になりそうな戦闘機械に飛び乗って
狙いを定めてマザーを撃ち抜きます
次から次へと移動して攻撃する手は緩めません
無限に増殖する圧倒的な質量には感心しますね
早く私を殺してみせて下さい
「守る為に戦うのは元々私の存在意義でした。貴女のような善なる人なら余計な事を考えずに守ることが出来るので助かります」
機械都市の閉鎖に巻き込まれたグリモア猟兵に、エイト・ウィンプ(やぶれかぶれ・f34150)は語りかける。デッドマンとなり死ねなくなって以来、死にたいという衝動を抱えて生きてきた。この死に損ないの体が誰かを守るために使えるのであれば本望だ。
「この命に代えても守りきってみせましょう……重たいですか、すみません」
「いいえ。その重さは信頼に値するものだとリムは感じます」
エイトの決意を受け取ったリミティアは、淡々とした口調ながら感謝の想いを伝える。
デッドマンの力の源は魂の衝動。死してなお朽ちぬ強い意志は何よりも信頼できると。
「守られる立場で恐縮ですが、叶うならば全員で生存しましょう」
「はい。しかし厄介な戦場ですね」
増殖無限戦闘機械都市に変形したデトロイト市からは、今も大量の戦闘機械が生まれ落ちている。どこからでも無尽蔵の敵が沸く戦場――圧倒的な物量に物を言わせた侵攻は、エイトの言う通り実に厄介であった。
「出来る事はとにかく数を減らしていく事でしょうか。マザーを狙うにしても邪魔が多いのは困りますから」
彼女は左右の手にサブマシンガンとショットガンを構え、道を切り開くように銃撃戦を行う。文字通りの"死線"を超えるうちに身に付いた射撃技術は正確に戦闘機械を破壊し、特にリミティアに近付く物があれば優先的に撃墜する。
「キリが無いですが諦めるわけにも行きませんので」
攻撃の合間を縫って弾倉交換を挟みながら、絶え間ない銃弾の豪雨を降らせるエイト。
次々に現れる戦闘機械をなぎ払い、少しずつマザーとの距離を詰めながら、彼女は地形や建造物の把握を行っていた。戦場にあるもの全てを利用して戦うのが傭兵の流儀だ。
「マザー、母と名乗るなら優しく受け止めて下さい」
「何を――」
【深謀遠慮】が導きだしたルートに沿って、彼女は銃を抱えてマザーの元まで駆ける。
マザーは新たな戦闘機械を呼び出して阻もうとするが、エイトは逆にそれを足場にして飛び乗り、開けた視界の向こうに狙いを定めた。
「私は母を知らないので教えて頂けないでしょうか。生み出した物を全て手足として使うのは、私が思う母とは違うのですけれど」
これまでに無数の兵器を生み出しておきながら、マザーがそれに愛着や慈愛らしきものを見せた事はない。"母"を称する無慈悲な女には、情けを知らない銃弾が似合いだろう。
「ぐっ……! そんなもの、知る必要はありません。永遠の中では新たな生命が生まれることも無いのですから」
放たれた銃撃はマザーの体に血の花を咲かせ、彼女は顔をしかめながらもエイトの問いに答える。時の止まった世界で無限の思索を続けることが彼女の望み――すなわち究極の自己完結を求める女に、正しい母のありようなど教えられるはずも無かった。
「貴女も永遠の中に沈みなさい!」
配下の機械達に反撃を命じるマザーだったが、エイトは攻撃を受ける前にさっとその場から飛びのく。敵群の銃弾やレーザーが撃ち抜いたのは、足場にされていた僚機だけだ。
この辺りの戦場は全て把握済み。巨大な機械都市をまるで自分の庭のように移動して、大軍からの包囲を逃れつつも、攻撃の手は決して緩めない。
「無限に増殖する圧倒的な質量には感心しますね。早く私を殺してみせて下さい」
彼女の声色にはどこか余裕、あるいは落胆があった。これだけの物量を以ってしても、自分を殺すには至らないと。"死にたい"という衝動が強まるほどに彼女の体は死を拒み、身に着けた傭兵の業は死線をすり抜ける。幾千の敵が相手でも、その歩みは止まらない。
「このっ……!!」
苛立ち混じりに機械達に猛攻を仕掛けさせても、傷が重なっていくのはマザーばかり。
死に拒まれて生き続けるエイトに、マザーの永遠への夢が阻まれるのは皮肉であろう。超克(オーバーロード)に至った猟兵達の意志が、彼女の歯車を狂わせていく――。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
安心して。真祖の吸血姫の名にかけて全力で守り抜き、敵を撃破してみせるわ!
オバーロード!
【ブラッド・オブリビオン】で「黒皇竜ディオバルス」を召喚。
更に【吸血姫の覚醒】で真の力を解放。
いきなり悪いわね、ディオバルス!敵はこの都市とそれを支配するマザー!力を借りるわ!
ディオバルスに前衛を任せ、自身はリムを防衛しつつ戦闘。
縦横無尽に超高速飛行で周囲を飛び回り、雷撃や爆裂の魔力弾や魔力砲撃【属性攻撃、高速詠唱、全力魔法、誘導弾、砲撃】で機械兵器を撃ち落とし、魔槍でなぎ払ってディオバルスを支援しつつ兵器を迎撃。
ディオバルスは前で【インフェルノ】で広域を焼き払い、【黒皇竜の一撃】で兵器を破壊。
粗方リムへの脅威を片づけたら、ディオバルスと一点突破でマザーへ吶喊。
ディオバルスの【一撃】に合わせて自身も魔槍の一撃【怪力、早業、切断】を叩き込んで刎ね飛ばし、ディオバルスの【カタストロフィ・ノヴァ】と【限界突破】【神槍グングニル】の同時攻撃を機械兵器群ごとまとめて叩き潰してあげるわ!
「安心して。真祖の吸血姫の名にかけて全力で守り抜き、敵を撃破してみせるわ!」
「はい。信じています、フレミアさん」
自信に満ちあふれた笑顔でそう語るフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)に、リミティアはこくりと頷きを返す。常に誇り高く、気まぐれに振る舞いながらも身内への情の深い彼女を、このグリモア猟兵は信頼していた。
「オーバーロード! 我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
そんな彼女が超克の領域へと至ったのは必然とも言えただろう。敵であるマザー曰く、それは永遠をも破壊する究極の力。猟兵に秘められた真の力を引き出す新たなる次元だ。
「血の隷属を用いて命ずる……。フレミア・レイブラッドの名の下に、嘗ての力を以て骸の海より戻り、わたしに力を貸しなさい」
オーバーロードと【吸血姫の覚醒】によって真の力と姿を解放したフレミアは、同時に【ブラッド・オブリビオン】で「黒皇竜ディオバルス」を召喚する。それはかつて異世界アックス&ウィザーズで彼女と戦い、激闘のすえに敗れた漆黒のドラゴンであった。
「いきなり悪いわね、ディオバルス! 敵はこの都市とそれを支配するマザー! 力を借りるわ!」
『良かろう。我が力、存分に奮え』
死闘によりフレミアの実力を認めた黒皇竜は、血の隷属に基いてその命令を承諾する。
竜一体を従えることは幾千の軍勢を味方に付けるに等しい。闘争心に満ちた雄叫びが、機械都市を震わせた。
「竜、ですか……物語の怪物が、まさか現実に牙を剥くとは」
マザー・コンピュータは伝説の威容に驚きながらも、怯まず機械兵器群を出現させる。
対する猟兵側はディオバルスが前衛を務め、フレミアがリミティアを防衛しつつ遊撃を行う布陣で敵を迎え撃つ。
『鉄の獣風情が……燃え尽きよ!』
ディオバルスの放つ【インフェルノ】のブレスは広域を焼き払い、鋭い爪や強靭な尾を用いた【黒皇竜の一撃】は一振りで兵器をスクラップに変え、破壊の痕跡を都市に刻む。まるで怪獣映画のような凄まじい個の暴力は、数の力を以ってしても抑え難かった。
「量産機では相手にもなりませんか。やはりまずはグリモアの力を……」
「やらせるとでも思ったかしら?」
マザーが黒皇竜を避けてリミティアに戦力を差し向けようとすると、すかさずフレミアが阻む。今の彼女は爆発的な真祖の魔力を身に纏い、17~8歳程の外見に成長した姿で、背中には4対の真紅の翼を生やしていた。
「指一本触れさせないわ!」
彼女はその翼で縦横無尽にリミティアの周囲を飛び回り、手から雷撃や爆裂の魔力弾を放って接近する機械兵器を撃ち落としていく。瞬間移動と見紛うほどのスピードに圧倒的な魔力――最新鋭の戦闘機部隊でも、空中で彼女に太刀打ちはできないだろう。
「援護するわよ、ディオバルス!」
『ふん。いらぬ世話だ』
フレミアはその飛翔能力を活かして前線のディオバルスの元にも駆けつけ、真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」を振るう。覚醒中の吸血姫の膂力は隣にいるドラゴンに比肩し、紅い矛先になぎ払われた機械兵器群はコナゴナに砕け散った。
「粗方リムへの脅威は片づけられたかしら」
仕上げに魔力を巨大な砲弾に変えて空中に放つと、上空からグリモア猟兵を狙っていた兵器群も吹き飛ばされる。味方の危機を拭い取ったフレミアは改めてこの都市の支配者を見据え、真紅の翼を大きく広げた。
「突破するわよ!」
『応ッ!!』
互いの呼吸を合わせて吶喊するフレミアとディオバルス。立ちはだかる敵は魔槍と爪でなぎ倒し、あるいは魔弾と獄炎で消し去り、一直線にマザー・コンピュータの元へ迫る。
無尽蔵に湧き続ける機械兵器群の相手をいつまでもしていられない。狙うは一点突破。一丸となった吸血姫と黒皇竜の突破力は、敵の想定を遥かに超えるものだった。
「オーバーロードの力……これほどとは思いませんでした」
巨大戦闘機械【マシン・マザー】に変身したマザー・コンピュータのコアユニットは、さらなる機械を出現させ続けながら迎撃体制を取る。だが彼女の額からは冷や汗が流れ、表情は驚愕と焦りによって冷たく強張っていた。
「覚悟しなさい。まとめて叩き潰してあげるわ!」
黒皇竜の一撃に合わせて叩き込まれる、覚醒真祖の諸力を乗せた魔槍の一撃。紅と黒の衝撃が全長数十メートルの戦闘機械を刎ね飛ばし、飛行装置を破損させて機動力を奪う。
でくの坊と化したマザーの前で、フレミアはありったけの魔力を槍に集束させていき、同時にディオバルスも全身の結晶状器官を発光させ、膨大なエネルギーをチャージする。
「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……。消し飛びなさい……! 神槍グングニル!!」
『受けるがいい、我が全力の一撃――カタストロフィ・ノヴァ!!』
吸血姫と黒皇竜による、それぞれが持つ最大規模の同時攻撃が、極大の爆発を起こす。
その威力に比肩するものを現代の兵器で例える事は不可能だろう。あまりの熱量と魔力の衝撃波によって、周辺にいた機械兵器群は跡形もなく蒸発する。
「こんな―――ッ!!!!!」
誰よりも近い距離で、二人の全力をぶつけられたマザーの悲鳴は爆音にかき消される。
爆心地に刻まれた巨大なクレーター――その底には破損した装置と女性が倒れていた。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
リムさんも守って敵は全て倒す…この世界の為、必ずやり遂げるよ…!
【九尾化・天照】封印解放…!
呪力の防御結界【呪詛、結界術、オーラ防御】をリムさんの周囲の張り巡らし、自身はリムさんの周囲や都市の中を光速で駆け巡りながら凶太刀と神太刀、バルムンクで只管迫りくる機械兵器群を斬り裂いて撃破し、光を集束させたレーザーで打ち落として殲滅…。
敵の攻撃は回避するかアンサラーで反射【呪詛、カウンター、武器受け、オーラ防御】で跳ね返し、全て撃破するよ…。
力の限り、全ての兵器を破壊してマザーの戦闘機械の創造速度を上回るまで倒し尽くしてみせるよ…!
敵の創造速度を一時でも上回れれば、その隙を突いて一気にマザーの中枢まで光速で接近…。
敵の本体…生体コアの核となる女性を狙い、一気に仕掛けるよ…。
周囲の機械部分をバルムンクで破壊し、凶太刀・神太刀の二刀を女性に突き立て、トドメを刺させて貰うよ…。
荒れ果てたこの世界でも、懸命に生きてる人達がいる…。
この世界を貴女達の思い通りになんて、させない…!
「リムさんも守って敵は全て倒す……この世界の為、必ずやり遂げるよ……!」
いよいよ正念場を迎えた戦いに挑むにあたって、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)の心は決意で満たされる。どんなに困難な依頼であろうと、この荒廃した世界を復興するためには、何としてもフィールド・オブ・ナインを撃破しなければならない。
「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
その決意によって彼女もまた超克(オーバーロード)に至り、【九尾化・天照】の封印を解く。美しい銀髪は燃えるような黄金に染まり、九つに分かれた尻尾から光が放たれる――それは、この閉鎖された機械都市に夜明けを告げる太陽のように。
「……まだ、です。まだ私の研究は……!」
既にマザー・コンピュータは深手を負っていたが、永遠を望む意志は今だに揺らがず。
【トランスフォーム・デトロイト】によって変形を遂げた増殖無限戦闘機械都市から、猟兵を撃破するために創造された大量の戦闘機械が出現する。
「リムさんはやらせないよ……」
その第一目標がグリモア猟兵だと察した璃奈は、リミティアの周囲に呪力の防御結界を張り巡らせ、自らはその付近を目にも留まらぬ速さで駆け巡る。天照の力を解放した彼女の移動速度は光速にまで達し、機械のセンサーでも動きを捉えることはできなかった。
「何が……?!」
マザーに視えたのは軍勢の中を光が閃いた直後、兵器がバラバラになる所だけだった。
相手の驚愕をよそに、璃奈はひたすら迫りくる敵を光速で撃破していく。ある時は妖刀「九尾乃凶太刀」と「九尾乃神太刀」の二刀流で機械兵器群を斬り刻み、装甲の厚い相手も魔剣「バルムンク」で叩き斬る。彼女の姿を捉える暇さえ敵には許されなかった。
「……近くで目にするのは初めてですが、凄いですね」
結界で守られているリミティアの元には、先程から一体の敵も攻撃を仕掛けてこない。それは璃奈が彼女に近づこうとする敵をことごとく光速で斬り伏せている証明であった。
「地上の次は空から……? 通さないよ……」
空からの強襲を狙う航空兵器に対しては、璃奈は光を集束させてレーザーで対応する。
天照には光速化だけでなく光を操る力も含まれる。太陽の熱線を照射された空の敵は、バランスを崩して力なく墜落していった。
「くっ……ならば一斉攻撃です。区画ごと吹き飛ばしてしまいなさい」
生半可な手段では光速の相手に対抗できないと判断したマザーは、再生産した機械群に総攻撃を命じる。蟻一匹逃れる隙間もないほどの制圧射撃――広大な"面"の攻撃で強引に目標を撃破するつもりだ。
「それなら……」
璃奈が抜いたのは魔剣「アンサラー」。受けに適したその幅広の刀身には報復の魔力が籠められている。光速でも避けきれないほどの攻撃なら、全て敵の元に跳ね返すまでだ。
『ギギ―――!!!』
彼女に撃ち込まれた銃弾やレーザーや誘導弾は、全て魔剣の力で発射元に反射される。
その魔力も凄まじいが、剣一本で砲火の嵐を打ち返す芸当は、光速の剣技あってこそ。ひいては幼き頃から研鑽を重ねてきた魔剣の巫女の力量であった。
「しまった?!」
一斉攻撃を跳ね返された機械兵器群の被害は甚大であり、マザーの機械化能力を以ってしても再生産には時間を要する。兵器が破壊される速度が創造速度を上回ったこの瞬間、璃奈はマザーの中枢に向かって走り出した。
「この隙を待ってた……一気に仕掛けるよ……」
魔剣と天照の力の限り、全ての兵器を倒し尽くしてきたのはこのチャンスを作るため。
盾となる配下を失ったマザー・コンピュータの元に、閃光と化した魔剣の巫女が迫る。
「荒れ果てたこの世界でも、懸命に生きてる人達がいる……」
狙うは敵の本体である生体コアの女性。その身を守る最後の砦となるコンピュータに、璃奈は渾身の力で魔剣バルムンクを振り下ろす。魔竜さえも断ち斬るその切れ味の前に、機械の塊はあっけなく破壊された。
「この世界を貴女達の思い通りになんて、させない……!」
完全に無防備となった女性へ、少女は決然たる意志と共に二振りの妖刀を突き立てる。
誰かの未来と希望を守らんとする人の想い――それは何よりも鋭い刃となって、マザーの心臓を貫いた。
「……私の、敗北です。私の理論にはまだまだ訂正すべき点が多かったようですね……」
マザー・コンピュータが最期の瞬間に遺した言葉は、やはり研究者らしいものだった。
無限の思索を求めて世界の時を停めようとした、フィールド・オブ・ナインの第2席。その命運が尽きるのと同時に、増殖無限戦闘機械都市も崩壊していく。
――かくして恐るべき機械の支配者を倒した猟兵は、無事デトロイト市から帰還する。
他のフィールド・オブ・ナイン撃破の報も続々と上がり、戦いは終局へと迫っていた。
大成功
🔵🔵🔵