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銀河帝国攻略戦⑬~いつかみた悪夢を越えて

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●過去を乗り越えるために
「……一度乗り越えたとしても、再度見せられるのは気分がええものではない、が……」
 ウルフシャ・オーゲツ(しょしんしゃ・f00046)は端末を眺める。
 押し進められている戦線は順調だ。
 だからこそ、相手も手を変え品を変えこちらへの攻勢を妨害しようとしてくる。
「帝国の技術屋っていうのはなかなか悪趣味なようでな?」
 ウルフシャの語る内容によると、帝国の執政官兼科学技術総監という長ったらしい肩書を持つ相手が自らの船を守るために特殊な装置で攪乱してきているらしい。
 その装置は直接の攻撃や視覚を阻害してくるのではなく、精神的な干渉をもっての妨害を行ってくるという。
「過去と向かい合ったり、大切なものを目の前で亡くしたり、絶望的な状況に放り込まれたり、可能性としてはいろいろあるが、大切なのは折れぬことじゃ」
 逃げてもいい、耐えてもいい、打ち克ってもいい。
 そうすることで、元凶となる装置へとたどり着くことができる。そうなってしまえば、後は破壊するだけだ。
「ジャミングという性質上装置へと近付けば近付くほど強力になるじゃろう、悪夢を見ずに済ませる、ということはできぬと考えた方が良い。心構えをしたからと言って何とかなるものでもないかもしれぬが、皆ならば無事に達成し、戻ってこれると信じておる」
「正直なところウチも目の前で大切にしておいた食糧がゲロマズにされてしまったら絶望のあまり正気を失うかもしれぬ。惑わされるなとは言えぬが、自らと向き合い、冷静にな」
 言っていることは真剣なのだろうが、いまいち緊張感が高まりきらないのはウルフシャなりの気遣いなのだろうか。
 もしかすると本当に心の底からそう思っているかもしれないと苦笑を浮かべながらも猟兵たちは出撃の準備を始めるのだった。


しべりあ
●はじめにおよみください
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 このシナリオでは、ドクター・オロチの精神攻撃を乗り越えて、ジャミング装置を破壊します。
 ⑪を制圧する前に、充分な数のジャミング装置を破壊できなかった場合、この戦争で『⑬⑱⑲㉒㉖』を制圧する事が不可能になります。
 プレイングでは『克服すべき過去』を説明した上で、それをどのように乗り越えるかを明記してください。
『克服すべき過去』の内容が、ドクター・オロチの精神攻撃に相応しい詳細で悪辣な内容である程、採用されやすくなります。
 勿論、乗り越える事が出来なければ失敗判定になるので、バランス良く配分してください。

 このシナリオには連携要素は無く、個別のリプレイとして返却されます(1人につき、ジャミング装置を1つ破壊できます)。
 『克服すべき過去』が共通する(兄弟姉妹恋人その他)場合に関しては、プレイング次第で、同時解決も可能かもしれません。

 どうも、しょしんしゃのしべりあです。
 わりと真面目に悪夢と戦ってもらいます。こういったことが苦手、トラウマ、実は思い出したくない過去がある、などとという内容を頂けるとより正確に描写できるかと思います。
 それをどう克服していくかというのをより明確に訴えていただけると成功しやすいかもしれません。
 いただけないと大変ゆるふわなうえに失敗の可能性が高まってしまいますのでご注意を。
 それでは皆様、ご縁ございましたらよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『ジャミング装置を破壊せよ』

POW   :    強い意志で、精神攻撃に耐えきって、ジャミング装置を破壊する

SPD   :    精神攻撃から逃げきって脱出、ジャミング装置を破壊する

WIZ   :    精神攻撃に対する解決策を思いつき、ジャミング装置を破壊する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ナハト・ダァト
『克服すべき過去』
実はよく分からないままに、
持ち合わせた才能のみで使用していた叡智
使う度にナニカが身体を侵蝕し
いずれ自分が自分で無くなる恐怖を無意識に覚えていた

しかし、彼は使うことを決意する
六ノ叡智
希望を自らに振るい、叡智があったからこそ病に立ち向かい自身が周囲に頼られる存在であることを再認識する

治療にリスクがある事ハ承知の上サ
使いこなしタつもりデ
いつか飲まれるだろうト
考えていない筈ハ無いだろウ
覚悟はしていル
だガ、私は私である事ヲ捨てはしないヨ
救えるものがいれば助けル
病に苦しむものがいれバ治ス

だかラ、私ハ倒れなイ
諦め給エ
この程度の覚悟、とうに済ませているのだヨ



●ただただ見据え続けているのは
 自分で自分を見ていた。
 自分が何もしなくても、自分は動く。
 自分が何かをしたいなら、自分はそう動いている。
 しかしそれは自分ではない。でも自分はいる。
 自分とはいったい何で、何があれば自分なのか。
 やっていることが、やろうとしていることが最終的に同じだとするならば、自分が自分である必要などどこにでもないのではないだろうか。
 ナハト・ダァト(聖泥・f01760)が感じているのは過去に思ったことか、それとも未来を夢見たことか。
 いつの間にか使えるようになっていた能力、それを使っていった果てに待つのがこのただただ自分が見続けるだけの世界だとでもいうのだろうか。
 自分が自分でなくなっていく、何かが自分を食べていく。いつもいつも何かが蝕んでいく。
 だれだダレダだれだ誰だだれだ……
 ――いや、そんなことはわかってる。
「治療にリスクがある事ハ承知の上サ」
 そこに救えるものがいるならばと、その叡智へと手を伸ばしたのは自分自身。
「使いこなしタつもりデ」
 こうなっていくと分かっていても、使い続けるとを決めたのも自分自身。
「いつか飲まれるだろうト」
 たとえ今の自分がすでにあの時の自分ではなくなっていたとしても。
「考えていない筈ハ無いだろウ」
 それは未来に向かい成長しているだけに過ぎない。
「覚悟はしていル」
 たとえどれだけこの身が蝕まれようとも。
「だガ、私は私である事ヲ捨てはしないヨ」
 自分が自分である証明。
「救えるものがいれば助けル」
 それはとても単純な行動原理。
「病に苦しむものがいれバ治ス」
 それゆえにぶれることのない信念。
「諦め給エ」
 その言葉と同時に元居た宇宙空間へと戻ってくる。普段から狂気にさらされているナハトには悪夢は意味をなさなかったのだ。
 目の前に浮かぶ不気味な脳のような装置は、数多のアンテナが刺さりながらも脈動している。
 それはただそういう造形なだけなのか、それとも本当にそれを素材として作成されたのか……。
「この程度の覚悟、とうに済ませているのだヨ」
 それが何だとしても、今なすべきことはただ一つ。
 目の前の装置の『希望』を、叶えるだけ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリィエル・ロックウェル
【WIZなのです】
・トラウマ内容
クレヨンソードのクレヨンの中には封印された黒いクレヨンがあるのです。
黒いクレヨンは「ビッククランチ」と言う力で世界を収縮させて滅ぼす力があるので封印されてたのです、それを私は、封印を解いてしまったことがあるのです、黒い何かが広がって閉じると何も無くなってすごく怖かったのです。
・対処方法
けど今の私は勇者なのです、黒い部分をクレヨンで上書きして元の世界を描いて元に戻すのです、黒いクレヨンより早いペースで書きまくる早業と世界中をダッシュで駆けまわって黒い部分を全部塗りつぶせば封印できるのです。

「呪われたクレヨンさん、私がもっと強くなった時に決着を付けるのです」



●クレヨンの勇者リリィエル~呪われた黒いクレヨン~
 目の前の世界が黒に染まっていく。
 色鮮やかな草原が、笑顔で駆けまわっていた子どもたちが、微笑んで見守っていた大人たちが。
 すべて黒に塗りつぶされて、消えていく。初めからそんなものは無かったかのように。
 黒く黒く広がり続ける。黒は空を海を、世界を覆って。
 やがて自分も飲み込んで。
 されどリリィエル・ロックウェル(クレヨンの勇者・f01438)は立ち上がる。その手に色とりどりのクレヨンを握り、黒いキャンパスへと立ち向かう。
 小さな勇者の横顔に浮かぶのは、過去への決意か、対峙か、訣別か。
 足を踏み出し、腕を振るう。
 このままではいけない、黒が広がり切ってしまう。
 『また』全てがのまれて、消えてしまう。
 走る、走る、黒い世界に彩を乗せて、クレヨンの勇者は世界を駆ける。
 たとえ自分の軌跡を黒い呪いが追ってきても、それより一歩、一秒早く駆け続ける。
 自分が立ち止まらず、世界をすべて描きなおせば最後にはきっと……。
 どれだけ走り疲れても、彼女はあきらめない。
「今の私は『勇者』なのです!」
 やがて最後の黒の一点を、世界の色に塗りつぶす。
 今の自分が打ち勝てたのはきっとただの夢だから。だけどそれは、今なら心は負けてないということ。
 ならばあとは実力のみ。
「呪われたクレヨンさん、私がもっと強くなった時に決着を付けるのです」
 決意を込めて宣言すると、世界が星海の色を取り戻す。
 その景色にポツンと浮かぶ蠢く脳は、脈動しながら自分をのぞき込んでいた。
 コレにのまれては、いけない。
「あなたの色はこの宙に似合わないのです!」
 クレヨンの勇者はあしきゆめを塗りつぶす。
 たとえ過去が消えることが無くとも、より良い思い出で満たされるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

錬金天使・サバティエル
昔色々な実験や研究をしていたんだが、スポンサーから貰ったお金を殆ど遊びに使ってしまったんだ。それが知られてしまって研究は途中で打ち切り、追っ手から逃げるときに当時の資料も置いてきてしまったからもう続けられないんだよ……突然変異で産まれた金の卵を産む鶏の繁殖とかはもう少し研究を続けられていればうまくいったかもしれないのにね……もう絶滅してしまった。
嫌なことを思い出してしまった。だが今ならグリモアで色々な世界に飛べるから錬金術で稼ぎ放題だ。UDCアースとかは二束三文で作れる金やプラチナに結構な値段を付けてくれるから資金に困らないよ。よかったよかった。



●砂上の楼閣
「ま、待ってくれ」
「ほう、これ以上待って、何があると言うんだね?」
 理想的な研究施設だった。欲しいと思ったら手に入るサンプル。すぐに閲覧できる膨大な資料。
 比喩でもなんでもなく金の卵を産む鶏までいた。
 何故だ、少しばかりスポンサーからの資金を全額使って遊んだだけではないか、そんなもの、この研究が終わればすぐにでも……。
「その研究を続ける資金がもうないというのだ。この施設はスポンサーへの補填のために売却。あと……」
 男が笑う。とてもすがすがしく、拒否を許すことなど毛頭考えていない笑顔。
「キミの使いこんだものは、キミ自身で支払ってもらうことになる」
 周りを囲もうとする者たちに先んじて駆け出す。
「こんなところで終わらないさ!」
 捕まったら最後、所持しているジュエリーを根こそぎ奪われた挙句、自分も何をされるかもわからない。
 きっとよくわからない器具に繋がれて体の隅々まで調べ上げられ、恐ろしいことに使われるに違いない。そんなことになってしまえば綺麗な細工を求めて街を歩くなんて夢のまた夢だ。
 出入口は塞がれている、あと残っているのは鶏の飼育ケース脇にある窓のみ。飛び込む寸前にケース内の金の鶏と目が合う。
 ――行くのだな?
 ――すまない。連れていきたかったのだが。
 ――よい、確かに貴女が居なければ私は死ぬだろう。だが、それもまた運命(さだめ)だ。
 ――金の鶏さん……。
 ――早く行け、私とは違い貴女は走り出せる。……楽しかった日々をありがとう。
 ガラスを突き破り、地面を転がる。あちこち痛いがこんなところで立ち止まっているわけにはいかない。
 わかる。この逃走の果てにあるものが。
 自らの力を生かし、潤沢な資金をもって生活できる日常。
 たとえ他の者に何と言われようとも、それが自らの望んだもの。
 自らの欲を求めるその思いに何の貴賤があるというのか。
 幻想が砂となって消えていき、目の前に浮かぶ脈動する脳と見つめ合う。
 静かな星の海にたゆたう賢者の石は、それに終わりをもたらした。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

久遠・翔
『過去の記憶』
酒の空き瓶が転がり、色んなごみが散乱した小さな部屋
自分に許されたわずかな食事と場所
一人一人と、『両親』と呼ばれる人達によって売られていく兄妹

女のほうがよかった。その方が高く売れる
何かできるほうが金になる。家事を覚えろ
顔は許してやる。だからそれ以外を殴らせろ

ボロボロになりながらも必死に生きて、気づけば俺一人になった
『両親』はまた兄妹を仕入れてくると言っていた
俺のような人を増やしてはいけない…ボロボロの状態で包丁を握り二人の命を奪った

そして現在も過去の亡霊が囁く
その血塗られた手で誰かを救えるわけがないと
今なら高値で売れたのにと

うるさいっす

俺はもう奴隷じゃない

だから進むっす

消えろ亡霊め



●その手が赤く染まり、血の池に足を踏み入れようとも
「へっ、綺麗な顔してるなら、女の方が高く売れたのに……なっ!」
 みぞおちに鈍い痛みが広がり、床に崩れ落ちる。
 視界に入るのは空の酒瓶、ごみが散乱した汚い床。
 壁が迫ってきそうなほどに狭い部屋の中で『両親』から許されていたのはわずかな食事。
 何かを教えられるときも、その理由は『その方が金になるから』だった。
 ボロボロになりながらも兄妹と一緒に何とか生きていた。だが、今はもういない。売られていったのだろう。
 気が付けば一人きり。そんな時に向けられた、安心しろという、『両親』のにたりとした笑顔。
 ああそうか、また。兄妹を『仕入れて』くるのか。家族が、増えるのか。
 料理のためにと渡されていた包丁を強く握った。
 ――刺す
 刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す。
 ただひたすらに、そうだ、寝首を搔くのならば、自分にだってできたじゃないか。
 血まみれの両手を眺めながら声にならない声を上げた。
 これでよかった、これで不幸な目に合うきょうだいが救われた、俺が救った。
 ――そんな血まみれの手で?
 そうだ、『両親』が生きていたら、いつまでも繰り返された、だから。
 ――今お前なら、高く売れたのに。
 関係ない、俺が高く売れたとしても、きょうだいが救われるわけじゃない。
「俺はもう奴隷じゃない!」
 自分に言い聞かせるように、世界に訴えるように叫ぶ。
「消えろ亡霊め!」
 包丁の血を振り払い、決意を込めて前を見据えた。
 前に浮かぶは蠢く脳。突き刺されたアンテナが先ほどの悪夢を見せたというのだろうか。
 何かを語りかけようとしてくるそれに、手に持っていた包丁……ではなく、ナイフを突き立てる。
「うるさいっす」
 過去に何があろうとも、たとえこんな体になろうとも、たとえこの手が血に染まっていようとも。
 あの時の自分がしたことは、間違っているとは思わない。
「だから……進むっす」

成功 🔵​🔵​🔴​

アリス・フォーサイス
■克服すべき過去
空腹の状態でまわりに何もないため食べることができず、孤独にさまよう。

え?ここはどこ?おなかすいたよ。だれかいないの?
このままじゃ倒れちゃう。何かないかな。

そうだ、戦闘機械に知能と言葉をもたせてコミュニティを作らせよう。
戦闘機械自体を食べることはできないけど、それが作る話は食べられるはず。

知能を持った機械たちが活躍するおいしい話もあるもんね。コミュニティが築かれれば、そこでは大切なものどうしが寄り添い、大切なもののために行動する、ストーリーが生まれるはずだよ。
そうなれば拍手をしてそれを美味しくいただくよ。



●アリス電脳劇団
 ここは暗闇の中だろうか。いや、色という名前の情報すらない。透明、白、黒? すぐそこにあるはずの地面さえ何かわからない。
 自分の腕、体? あれ、見えない? ないの?
 ここは、どこ? おなかすいたよ。だれかいないの?
 視界がぼやけてきた、このままじゃ倒れちゃう。何か、何か食べる情報(もの)は……。
 ……視界が、ぼやける? じゃあボクは、見えている。
 ボクは誰? ボクは、アリス。 アリス・フォーサイス……。
 広がり拡散した情報が一つとなるように、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)の意識が浮かび上がってくる。
 そうだ、何もないならば、何か作ってしまえばいい。
 召喚するのは戦闘機械。
 力こそは小さいけれど、重要なのはその存在。
 喋って考える知性を重点に置いて作られた彼らは、お互いに語り合いながらコミュニティを形成していく。
 そして幕が開けるのは、機械仕掛けの物語。
 初めはただの有象無象、次第に番となっていき、それらが集って村となる。
 やがて長が擁立され、訪れた平穏を享受する。
 されど長くは続かない、敷かれた法が気に食わぬ。
 暴れだすのは反逆者、そして始まる争いの日々。
 大切なものを守るため、大事なものを勝ち取るために。
 出会いと別れを繰り返し、織りなされていく群青劇。
 趣が多少変われども、それはとても味わい深い、美味しい美味しい立派な情報(りょうり)。
 拍手喝采その後に、両手を合わせて、いただきます。
「さぁ待たせたね。腹ごしらえは済ませたよ」
 食事が終われば星の海。舞台に残る蠢く脳の、最後の場面をご覧あれ。
 くるりくるりと舞い踊る、役者がぐるりと取り囲む。
 悪夢を振り撒く悪魔の機械、幕はこれにて降ろされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白皇・尊
☆克服すべき悪夢
大切にしている鉋(f01859)を自分の力不足が原因で、敵の手により目の前で失う事。
自分の力に絶対の自信があり、かつ何より彼女を大切にしているからこそこの悪夢は効く。
過去に何らトラウマもない老狐が、涙を流すほどに。

☆克服
「嘘だ…僕が鉋を守りきれないなんて…」
膨大な霊力を込めた守護結界(オーラ防御)と百鬼夜行による十重二十重の防陣を敷いてなお崩される?鉋が死ぬ?あり得ない、あってはならない。
「あり得ない、僕は白狐の長だ、こんなのは現実なはずが…!」
自信があるゆえに考える、この光景は理屈が合うか、本当に僕の守護を抜くほど敵は強いか?
何度も何度も考え、偽りを見抜きます!

※アドリブ歓迎



●真に守りたいものだからこそ
 どんな過去が来たとしても問題ないと思っていた。
 自分に恐れる過去など何もない、今隣にいる鉋が居ればどんな悪夢だって乗り越えられると。
「すごいねー。じゃあきっとこんなものぉ、かーんたん、だよねぇ?」
 聞き覚えがある、からかう子どもようなの声に白皇・尊(魔性の仙狐・f12369)は振り返る。
 目の前にそびえるのは移民船一つ軽く吹き飛ばせるという劣化カイザーレイ。
 前触れもなくそれは現れた。
「さぁ頑張ってねぇ?」
 何の準備をする暇もなく、光線は放たれようとしている。
 それの矛先は自分へと……違う、一緒に来ていた、鉋……!?
「させないっ……!?」
 自らの力を結集させて全力で結界を張る。だめだ、それだけじゃ足りないかもしれない。全部だ、全部出せ……!
 尊自身も向かいながら、数多の式神を鉋の元へと飛ばしていく。
 形成される多重結界、それを飲み込んでいく光の奔流。
 最後に見えた鉋の横顔は自分に別れを告げていた気もして……。
——させるものか、させるものかふざけるな!
 たとえ全てを消滅させるものだとしても、僕の思いを、砕けるものか。
「あり得ない、僕は白狐の長だ、こんなのは現実なはずが……!」
 そうだ、思い出せ……前の時はどうだった、あんなにすぐに撃てたのか。
——否
 信じろ……鉋はあんなにすぐに諦めるような弱い者か。
——否
 考えろ……ならば、ならば敵はどこにいる。
——自分が一番安全だと自信を持って言える場所……!
「……悪……趣味なあああああ!」
 確信を持って尊は飛び込む。
 向かう先は光の中の、鉋のいた場所。
 偽りなどに飲み込まれまいとする硬い意志のもと、視界に光が広がった後、割れる。
 目の前には自分が繰り出した結界の中にある脈動する装置。
 自らを守る者と錯覚させて、その上失敗したと思わせる事で絶望を与える一石二鳥ということか。
 結界を解除し、式神に破壊の指示を出す。
「……鉋の偽物を守ろうとした、なんて知られたら怒られてしまうじゃないですか。どうしてくれるんでしょう。全く……」
 そう呟いた声は、どこか気恥ずかしそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

喰龍・鉋
「どんな悪夢、過去にだってきちんと決別してみせる…きっとね!」
ドクターオロチの精神攻撃を甘んじて受けるよ
ボクはかつて犯罪都市で幼少期から奴隷として過ごしていたから、
そのときの地獄のような悪夢を見るよ、
集団に毎日毎日殴られ蹴られ穢されていた頃のことを思い出させられて、
夢だとわかっていても息が上がるよ、
当時の惨めな姿をすべて思い出していくうちふと首元には「今」の大切な人からもらった首輪が付いていることに気がついて、
これが夢であることを強く理解すると
「ありがとう…ありがとう…」
とその首輪に触れて耐え忍ぶよ
「ボクには大切な過去は無いかもしれない、でも大切な今があるんだ!オアアアッ!」と鬼の形相で壊すよ



●なんどあくむにさいなまれても
 冷たい床の感触が、殴打され痛む身体に染みてくる。
 周りを大きな誰かに囲まれ、どやされているようだ。
 みぞおちを貫ぬくような痛みで体が浮き、何かにぶつかった。
 痛みが全身に響くが、目が霞んで何が起きてるかはみえない。
 いつものことだ。
「——」
 誰かが何かを言っている。
 ひどい罵声だろう、と思う。よく聞こえてない。
 いつものことだ。 
 髪の毛を掴まれて持ち上げられる。
 いたい、けど、全部いたくてよくわからない。
 でも、この後されることだけはもうわかってる。
 いつものことだから。
 道具のように持ち上げられ、貫かれる。
 いや、きっとボクは道具なんだ。
 この人たちに毎日毎日使われる、壊れにくくくて丈夫な、都合のいい道具。
 ほら、今も壊れないからって、首に手を……。
 なにかが手に触れる。あるはずのない大切な人からの、大切なたからもの……?
 これは、なに? 自分に大切なものなんてあるわけ——。
 全身の感覚がおかしくなり、息が上がる。
 すがるように首元の宝物を強く握りしめる。
 自らが、誰かのものであると主張するような首輪。
 だけどそれは大切な人からのおくりもの。
 次第に意識が鮮明になり、辺りから全てが消えていく。体から痛みが消えていく。
「ありがとう……ありがとう……」
 自然に口から漏れる言葉。
 過去は消えないけれど、それはこれから上書きしよう。
 涙を拭って前を見る。そこにあるのは蠢く悪夢。
 だったらあとは、力一杯。
「ボクには大切な過去は無いかもしれない、でも大切な今があるんだ!」
 空無き宙に鬼の咆哮は響かねど、その想いはきっと彼に……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花巻・里香
ホントに最悪ね…コレ、私がいかなきゃダメ?あとで一発蹴らせて。
あの時は未完成ながらも【魅惑の外装人形】と同じフェロモンの超能力で水面に映る自分自身を支配し中のモノをなんとかしたのだけれど…
あの時の私とは違うの。過去は過去かも知れないけれどあの後アレの生態を調べからくり人形にも対策をしてきたもの
制御できずとも捕食炉の封印を解き呪詛を身に纏い、暴れるモノを魅惑の外装人形のフェロモンと狂気で私の中から追い出すわ。

悪夢:自主規制可
花蟷螂のからくり人形経由で寄生虫に、寄生され頻繁に水場へと思考誘導される。
その寄生虫はハリガネムシに似た生態で、水の中での行為と寄生の繰り返し
度々の寄生に衰弱していく悪夢。



●自分は過去に留まらない
 そこは水の中だった。
 いつからここにいたのかしら。
 ずっとここだった気もするし、ほんのついさっききたばかりのような気もする。
 揺らめく水に漂いながら、体の中で蠢く何かが出て入ってを繰り返していた。
 自分の意思など完全に無視した、容赦なく、配慮もない、勝手気ままなその動き。
 いつになったら終わってくれるのだろうか、いつまでたっても終わらないのだろうか。
いうことを聞かなくなってくる体がもどかしい。
 それは、まるで何かが中から喰らっているような。
 何か……?
 なんだった、何が起こってこうなった。
 それは、からくり人形についた蟲が……いや……それは、『今』じゃない。
 思い出せ、疑問を鍵に自分へ戻れ。
 花巻・里香(クリスタリアンの人形遣い・f05048)は自らを問い詰めた後、言い聞かせる。
 これはあの時の焼き直しだと。
 ならば、忘れていたわけでもなければ、今までなにもしてこなかったわけではないのだと。
「悪夢はあの時のままだとしても、私はあの時のままではないわ」
 制御することなど考えない。
 躊躇せず体内の捕食炉の封印を解き、暴れ出そうとするモノを体内の異物へと流し込む。
 中の呪縛に押し出され、外へ逃げ出し暴れるそれは、強化された糸に絡まる醜く蠢く寄生虫。
 険しい顔になりながらも無言で踏み潰す。
 これが悪夢と、その行動が無意味とわかっていても、そうせざるを得なかった。
「ホントに最悪ね……」
 以前の時よりは手早く対処できたのは成長の証だろうか。
 それはそれとして、あとで一発蹴らせてもらおう、色々と割に合わない。
 苛立たしげに眼前に浮かぶアンテナ付きの蠢く脳を睨みながら、糸を踊らせる。
 絡まれた悪夢の装置は眠るように動きを止めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

セレヴィス・デュラクシード
ボクには妹が居るんだよ、育ててくれた義爺ちゃんや友達も居るよ
だけどある日目が覚めたら「君は電子の海の情報を元に再現されたんだ」って言われてキマイラフューチャーで一人ぼっち‥‥
ねぇ、バーチャルキャラクターって何?
電子の海って何?
みんなは何処に居るの?
もう帰れないの?
再現されたって‥‥ボクは、誰?

う”ぁぁ‥‥無理!ボクには吹っ切れない、納得出来ないんだよッ!
こんな、勝手な、誰も居ない、酷い事ないよ!

お前がコレを‥‥こんなモノ見せて、絶対に許さないんだからぁぁァァッ!

力を全部注ぎ込んだ全力の【千里狐跳ね】(緑の瞳、全身にノイズ、透けて見える狐耳姿な擬似真の姿)で衝動的に破壊活動

※悲壮系アドリブ歓迎



●決して届かぬ夢幻の故郷
 セレヴィス・デュラクシード(複製されし幻想の狐姫・f04842)が立っていたのは見覚えのある、とても懐かしい光景だった。
 自分の育った故郷。
 遠目でもわかる。育ててくれた養爺ちゃんと、よく遊んでいた友だちの動物たちがいる。
 あっ、家から出てきたのは妹だ。
 思わず駆け出す。ただいま、ボクはここに……
「……えっ……」
 妹の後ろから出てきた人影をみて、足が止まる。
 そこにいたのは、自分。
 ふらふらと、再度足を進める。
 なんでそんなに楽しそうにしているの、ボクはここにいるんだよ?
 養爺ちゃんが、友だちが、妹が、そして自分がこちらに気付き、顔を向ける。
 そうだよ、ボクが本物の……
 「……貴様、誰だ、なぜここにいる?」
 妹の敵を睨むような瞳と、冷たい声に体が固まる。
 「なんでって……それは……」
 絞り出すように声を出す。ここはボクの家だ、そのはずだ……。
 迷うセレヴィスの前に、もう一人の自分がたつ。
 自分とは違う、耳と尻尾が生えたままの、妹とおそろいの本来あるべき、その姿を前に、言葉を詰まらせる。
「ボクはセレス……それで、キミは誰?」
「ボク……ボクは……」
——はじめまして、キミは電子の海の情報から再現されたんだよ。
 なんで、みんなそこにいるじゃない、ボクの家族はそこに……。
——帰る? 家族? ……どこに? 今キミは、ここで産まれたのに?
 違う、違う違う違う! わけのわからないことを言うな!
 ボクは、ボクは、ボクは……
「う”ぁぁああああああああああああああ」
 目の前の自分に向かって全力で跳ぶ。うっすらと見える狐耳に、尻尾に、目の前の自分の姿が重なって。
「ボクが、ボクが本物のっ……!」
 何が起こったか理解する間も無く、地面に叩きつけられた。
「——にせものが、ボクに敵うわけないでしょ?」

 くらいせかいでかえるばしょもない
 みんなはどこにもいやしない
 つくられもののきつねのひめさま
 きょうもひとりでないている

失敗 🔴​🔴​🔴​

瓜生・コウ
また、「不吉な予言」が意思とは関係なく口をついて…。

小学校に上がった弟をオレと使用人に預け、セカンド・ハネムーンだかに行った両親の死の予言、聞いたのは弟だけだった筈だ。
「誰にも言わないで」と釘を刺したが、その飛行機が墜ちた時、既に親戚一同の知る所だった。
雨、空の棺での葬儀、針の筵、そして一番にオレを人殺しと言ったのは…その後は一同が口々にオレを責め立て、罵った。

遠い所に追いやられ、オレを憎む弟と離れたことはむしろ僥倖だったのかも…

…いや、違う! 憎いんじゃない、怖くて、寂しかったんだ、あの時両親の代わりに抱きしめてやれるのはオレだけだった

…だから今度は、手を取り抱きしめる! 何を言われても。



●たとえどれだけ恨まれようとも、
 静けさに包まれた場には、黒い服に身を包んだ大人たちならんでいた。
 空の棺を前にしながら、その視線は自分に向いているのを感じる。
 目の前には小さな人、それは唯一となった家族。
「——ひとごろし……!」
 絞り出すように声をあげた弟の、その目を直視することができなかった。
 弟の言葉を皮切りに、周りから浴びせられる言葉に、俯く。
 違うと言いたかった。両親の最後を見たくて見たわけじゃないと。自分のせいで両親が死んだわけじゃないと。
 だが、言ったところで何が変わるのだろう。弟がどんな目で自分を見ているのか、知るのを怖がるような弱い姉なのは何も変わらないではないか。
 これでいいんだ。このままでいたら、オレと弟は遠くに離れ離れになって、憎しみの篭った視線で睨まれることもない。
 だって、そうしたじゃないか、それをオレは選んだじゃないか。
 弟が振り返り、歩いていく、そうだ、そのまま行けば、もう二度と会うことも……。
「……いや、違う!」
 弟が自分に向けていたのは憎しみではない。そう信じたいのは自分自身だろうか?
 たとえ、たとえそうだとしても……。
 足を動かし、手を伸ばし、力一杯抱きしめる。
 あの時は届かなかった。いや、そうしようとも思えなかった。
 震えて掴めなかったその体に、気付いてやることもできなかった。
「ごめんな、ダメなお姉ちゃんだよな……。お前、こんなに小さかったんだもんな……」
 自分のことだけではなく、弟のことを、姉として、家族として支えてやらなければいけなかった。もっとそばにいてやらなければいけなかった……。
 何かを言いたそうな表情のまま声にならない嗚咽を漏らす弟は、同じようにコウを強く強く抱きしめながら胸を涙で濡らした。
 いつのまにか、辺りには誰もいなくなっていた。
 腕の中の感触も消えて、目の前には悪趣味なアンテナの刺さった脳が脈動している。
 たとえこれがただの願望だとしても、本当に憎まれ、恨まれていたとしても。自分は唯一の家族だから。
「もう、間違えない」
 コウの意思は、悪夢を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

影山・弘美
過去の事……あんまりいい思い出はないし、色々でてくるんじゃないかな

そんなことを考えながら装置へ近づいてると、焚火の前で一人の男が炙った干肉を差し出してきてるのが見える
自分の事を拾って色々教えてくれた人だ
私の容姿のせいで泊めてもらえず、暗い森での野宿が多かったな……
「明日に備えて食え。」

思い出した、明日この人はヴァンパイアに……殺される

彼を寝かせなければ、あきらめたかもしれない
我儘を言う、過去の話をせがむ……誘惑してもいいかもしれない

けど……
それはもう、過去の事
何をしたって今が変わるわけじゃない

私は、手元の拷問具を掴み、彼を締め上げてやる
ごめんなさい……ありがとう、私はあなたの力で生きていくよ



●とても穏やかな悪夢
 暗い森の中を焚き火の灯りがてらす。
「……どうした、食わんのか?」
 うつむきがちな影山・弘美(吸血鬼恐怖症・f13961)に炙った干肉を差し出してくる男がいた。
 恩人だった。自分を拾ってくれて、色々と教えてくれて。
 今生きているのはきっとこの人のおかげだろう。
「だ、だって、また、私のせいで……」
 今日も宿に入れなかった。
 当然だ。私の容姿を気味悪がって誰も家に入れようなどと思わないのだから。
 この人だけだったなら、この日も村の宿で、屋根のある雨風しのげる場所で、一夜を過ごせただろうに。
「子どもが余計なことを気にするな。明日に備えて食え、んで、ゆっくり休め」
 そう言って頭を撫でられる。心地よかった。ずっと隣に居たかった。子どもだっていうんだったら、もっと子どもらしくしたっていいよね。
 だって、だって、このままだったら明日にはこの人は死んじゃうんだから。
 少しでもこの懐かしい夢を見ていたい、思い出話を聞いていたい、遊んで欲しいし、今なら、肌を重ねたって、いいと思う。
 そうしたら明日が変わるかもしれない。そうすればずっと一緒に居られるかもしれない。
 けど……。
「だめ、だよね、これは、もう、過去だもの」
 過去、それは、倒すべき彼らの領域。
 拷問具に手をかける。あの悪趣味なオブリビオンのことだ、きっとそういうことなのだろう。
「ごめんなさい……ありがとう、私はあなたの力で生きていくよ」
 彼を締め上げ力を込めると、優しい悪夢にヒビが入り、世界が砕けた。
 彼の姿が脈打つ脳へと変貌したことに、安堵のため息を漏らす。
 ああよかった、最後まであなたのまま、殺すことにならなくて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大神・零児
SPD
『克服すべき過去』
猟兵になる前、妖刀「魂喰」とその鞘黒剣「黒鞘」すら、まだ所持していなかった時の最初の「神隠し」でのできごと

転移先「ダークセイヴァー」のとある村に保護してもらっていた時、村がオブリビオンの侵略を受け、村長の指示で助けを呼ぶために脱出したが、振り返ると幼体のオブリビオンが女性達の腹を内部から食い破り誕生、村の子供や大人達にすぐに襲い掛かり残酷な遊びを経て食い物にしているのを目にしてしまう

前に向き直った時には魔獣が迫っており、襲われる寸前で二回目の「神隠し」により別世界へ転移



助けられない思いから悲痛な叫び声をあげ妖剣解放
高速移動で「第六感」「野生の勘」を使い装置へ衝撃波を放つ



●大丈夫、だって、みんなあなたが戻ってきてくれるって信じてるから、と彼女は笑った
 希望など最初からなかった。悲鳴の上がった後ろへと振り向きながら、思い知らされた。
 村がオブリビオンに襲われ、助けを呼びに行く途中だった。
 突然この世界に飛ばされてわけがわからないまま戸惑う自分を、迎えてくれた村の皆。
 彼らのためにも、大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)は戦えぬ者たちを連れ、走らなければならなかった。
 しかしどうだ、共に走っていたはずの、笑顔で料理をわけてくれていた優しい女性の腹を食い破りながら幼体の化け物が生まれてくるではないか。
 その後ろでは、一緒に遊んだ子供たちが手足をもがれて泣き喚きながら転がされている。
 数少ない男達は、足を砕かれ、腕を括られ、立てず動けずの状態にされながら、護るべきものが嬲られていく様をまざまざと見せつけられていた。
 さっきまで、さっきまで一緒に話して、一緒に走っていたはずなのに、そんな一瞬で……っ。
 まだだ、まだ自分が残っている。吐き気を抑えながらも再度前に向き直す。
 そこに壁があった。
 いや違う。
 獣だ、巨大な、魔獣だ。
 獣臭い息が身を包む。
 零児を噛み砕こうと、その鋭利な牙を剥き出しにして——。
 気がついた時には別の場所。自分を信じてくれた人々を、泣き叫んでいた子どもたちを置き去りに、こうして生き残った。
 なぜだ、なぜ、あの時この力がなかったのだ。
 呪われた刀を手に、無力感に苛まれながら雄叫びをあげる。
 その声はどこにも届くことはなかった。

失敗 🔴​🔴​🔴​

アリス・セカンドカラー
やっぱり『あの子』は出てこないわねぇ、タルパを試しそう独りごちる。

雨の降りしきる日だった。
私が猟兵として目覚め、親友を殺した日。
いや、親友のフリをしていたヴァンパイアを討伐した日。
ああ、だけど、騙されていたけれど、それでも私は確かに『あの子』を愛していた。そして、今、確かに『私の中』で『生きている』。

だから、決めたの。『あの子』が寂しくないように、たくさんの『お友達』を私の中に取り込もうって。


さて、自らにマインドジャックをかけて精神攻撃を上書きすることで防ぐわ。
この分野では私も専門家なのよ?
私の『大事なモノ』に土足で踏みこんだ罪はいずれ贖わせるとして、今はこの悪趣味な装置を破壊しましょうか。



●遠くて懐かしく、それでも忘れぬその声が
 悲しそうな目を覚えている。
 冷たい雨が体を伝っていた。
 親友だと、『あの子』は言った。きっとそれは嘘だったのだろう。
 だって『あの子』はヴァンパイア、人とは相容れない不倶戴天の宿敵なのだから。
 だからそんな目で見ないで。だって私は『あの子』を愛していたのだ。
 騙されていたのだとしても、たとえこの手で『あの子』を殺したとしても。
 わたしの中で、ずっといて欲しいぐらいに。
 ああ、そうだ、そうしよう。
 自分の中にいて貰えばいい、だって親友なんだから。ずっと一緒にいればいい。
 一人だけなら寂しいかしら。
 そうだいいことを考えたわ、お友達を誘いましょう。
 『あの子』が寂しくないように、たくさんたくさん誘いましょう。
 あら、誰かが外から呼んでいる……これは『あの子』の……?
「……この分野では、私も専門家なのよ?」
 自らで自らを洗脳していく。思いのほか強力だったのか、手間取ってしまった。アリス・セカンドカラー(不可思議な腐海の笛吹きの魔少女・f05202)は額に浮かんだ脂汗を拭う。
「私の『大事なモノ』に土足で踏みこんだ罪はいずれ贖わせるわよ」
 忌々しげに呟きながら悪趣味な装置の精神を上書きし、破壊した。
 装置の向こうで笑う何かの幻影をにらみながら息を整える。
 少しの間の後、帰還しようと身を翻しながら、ふと自らの内に呼びかけた。
「……やっぱり『あの子』は出てこないわねぇ」
——とても懐かしい、私を呼ぶ声が聞こえた気がしたのだけど。

成功 🔵​🔵​🔴​

尾守・夜野
【克服すべき過去】
名前以外の記憶を無くして
行き場もなくさ迷っていた俺を受け入れてくれた村の連中が襲われた時の事を思い出しちまうな
俺を含めて全員生きたまま炎にくべられた時の事を

神に捧げる為の剣を作る燃料として人を欲していたらしい

姿も見えない邪神が、邪教徒が皆の悲鳴を聞いて嗤って…

炎が熱が熱いあつい
焼ける崩れる燃え尽きる…助け

助けを求めた結果、皆で作られた剣が残り、俺だけが生き残ってしまった事がトラウマだ

【お前は生きろ】という呪詛は未だにこの身にある

ならばこんなところで!
消えろ!

奥歯を噛みしめ、足に剣を突き刺し、痛みで過去をトラウマを押さえて進んで破壊する



●呪い、それは変貌した想いと願い
 そいつら曰く、行き場のない俺を受け入れてくれたこの村は、捧げ物らしい。
 野菜を分けてくれたおじさんも、家を貸してくれたおばさんも、仕事を探してくれた村長も、おむつを替えた赤ん坊も。
 姿を表そうともしない神へと捧げる、剣を作るための贄だと。
 邪教徒たちは皆を炎へ投げ入れる。神のためだ、感謝をしろと嗤いながら。
 生きながらにして炎に巻かれ、泣き叫ぶ怨嗟の、絶望の悲鳴が渦巻いて。
 熱い。
 炎が熱が熱い熱い熱いあついあついあつい。
 焼ける崩れる爛れる、全部全部燃え尽きる。
 ……助け……。
 ……ああ、何故、俺の声だけが届いたのだろう。
 その場に残った剣を手に、灰の中から一人立つ。
 村のみんなの助けの声に、なぜ耳を傾けてくれなかったのだろう。
 一歩踏み出す、邪教徒たちがやってくる。
 身体中から呪咀が騒めく。お前は生きろと。
「ああ、わかってる、こんなところで立ち止まりはしない!」
 今戦う相手は、こんな相手ではない。
 剣を振り上げ、奥歯を噛み締め足へ突き刺す。
 痛みに意識が飛びそうになりながらも、尾守・夜野(群れる死鬼・f05352)は剣を抜く。
 そうだ、それでいい。自分の血を吸う剣を構え、姿をあらわす悪夢を見据える。
「消えろ!」
 俺はまだ、この呪いを背負って生きて行かなければならないのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゾーク・ディナイアル
【克服すべき過去】
改造され、玩具にされ、女にはあってはならないモノを生やされ、子もいないのに乳を出せるようにされた。
そして名ばかりの大隊長、死と隣り合わせの任務の日々、数え切れないほどの兵達に殴られ、汚され、穢され、使われる毎日。
今も悪夢に見るあの日々がまたボクを苛むなら…もうボクの心は壊れてしまうよ。
「許してぇ…もう飲めないよぉ、もう痛くて入らないよぉ

【克服】
でもあの日々は一度終わったはず、いや…ボクが終わらせたんだ。
なら今回だって同じようにやればいい、狂気に身を任せて全てをグチャグチャにすればボクは自由になるんだ!
《ハルシオン起動》
ボクの力、誰にも負けない暴力!
何もかも、全部壊してやる!!



●終らぬ悪夢の終わらせ方
 次は何をされるんだろう。
 もう嫌だ、いっそのこと……いや、でも死にたくなんてない。
 だからこそいきている。
 だけど……。
 元の自分の体は一体どんなだったのか、もはやそれすら思い出せない。
 全て彼らの都合のいいように、いじられ、つけられ、弄ばれて。
 戦いになれば大隊長、自らも、必要とあらば仲間たちを死地へと向かわせなければならない任務の続く日常。
 殴られた。汚された。毎日毎日使われた。
 求められてなどいなかった。ボクが望まれていたのは、ただただ道具であることだけ。
——許して、もうこれ以上入れないで、飲めない、溺れ、痛い、裂けっ……。
 体から出てはいけない鈍い音。
 あちこちからの痛みとナニかに、痙攣して壊れた体と薄れ行く意識の中で、大丈夫だと彼らは嗤う。
 次はもっと強くしてやると。
「次、いや、次、そんなの、次は……もう、嫌あああああああ!」
 ゾーク・ディナイアル(強化エルフ兵の出来損ない・f11288)は目を開き、明確に拒否をする。
 その声に応えるように現れた人型魔導騎士が彼女を中へと取り込んだ。
 そうだ、暴れよう、全部全部壊せばいいんだ。
 助けを求めてちゃダメなんだ。
 自分で、暴れて、ぐちゃぐちゃにしてしまうしか、ここから抜け出すすべはないって『今のボク』は知っているだろう……?
「ボクの力、誰にも負けない暴力……!」
——悪夢も過去も何もかも、全部まとめて壊してやる。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

月宮・ユイ
<過去>初めての担い手が死んだ戦場
▼敵:悪魔竜
赤い瞳に漆黒の外殻、対象を削り壊す黒い霧を纏い操る。霧での嬲り殺しを好んだ
▼担い手:40歳前後の男性。黒髪緑眼。叩き上げの兵士
『悪いな…結局お前に全部背負わしちまう。後は頼んだぜ…相棒』
▼戦況
担い手の隊長を竜の元まで届ける為、脱落した戦友達を削り殺されながらも隊員が命懸けで道を切り拓く
最後は相打つ形で決着
ただ兵器だった当時とは違い今はその光景が心を締め付ける

<克服>
それでも聞こえた、誰一人最期まで諦めなかった
皆が護る為戦い、後を託し散った
なら、その一員であった私がここで歩みを止めるわけにはいかない
人の心を得、誓った…折れない心を

アドリブ可



●機として、人として
 赤い瞳がこちらを見ていた。
 漆黒の壁がそびえ立つような錯覚すら覚える巨大な体躯。
 纏う黒い霧は覆ったものの命を、いともたやすく奪い去っていく。
 それを悪魔竜と呼んだのは一体誰だったのだろう。
 誰もがその通りだと思った。多分、今お前が名付けろと言われたとしても、同じ名前になったはずだ。
 仲間たちが黒い霧を押さえる中、ただひたすらに竜へと向かう。
 戦うのが怖いと言っていた子がいた。私を庇って最初に逝った。あなたがいなくなる方が怖いと、笑っていた。
 もっとあなたは遊びなさいと笑っていた子がいた。私には到底できない軌道で敵を惹きつけながら、気楽にゆっくりしたいから、しばらくこっちに来ないでね、と笑って逝った。
 たくさんたくさん仲間がいた、共に戦う隊員とともに誰かのために戦い抜いた。
 あなたには絶対負けないからと、生意気そうに言う子がいた。最後の最後まで耐え抜いて、早く行きなさいと笑って消えた。
 崩れる体を前へと押し出す。赤く大きな瞳が目の前だ。
 ここまで来た、ならば、刺し違えてでも終わらせる。
「悪いな……結局お前に全部背負わしちまう。後は頼んだぜ……相棒」
 なんで……どうしてあなたまで、笑顔で私を置いていくの……?
 そうして彼は消えていく。伸ばした手は届かなくて、待ってと声も出せなくて。
 ……こんなものを見てしまうようになるなんて、兵器としては失格だろう。
 しかし、人の心を持った今ならあの時の皆の思いがわかる。
 誰一人として諦めなかった。私を信じて託してくれた仲間の想いがここにある。
 ——ああ、あの人の瞳って、あんなに優しい色をしていたんだな。
 久しぶりに見たあの笑顔に、そんなことすら思いながら、月宮・ユイ(死ヲ喰ラウモノ・f02933)は目を覚ます。
 確かにあれは悪夢だろう。
 絶望と対峙し、数多の仲間と、担い手と別れた日だ。
 だからこそ、絶望を感じることなどない。それは忘れるわけにはいかない、とても大切な日なのだから。
 目の前の悪夢を炎に包み、今の仕事を終わらせる。
 これであらかた装置が破壊できただろうか。
 共に向かった、今の仲間たちの顔を思い浮かべながら、ユイはベースへの帰路についた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月12日


挿絵イラスト