アポカリプス・ランページ⑪〜異なる神の容
●偽神に捧ぐ
アイオワ州、デモイン。
文明が崩壊したこの地に再建されたデモイン砦にオブリビオンのレイダーが集っていた。
粗野で暴力的なレイダー達、だが集ったオブリビオン達は一言も喋らず彼らの武器の調整を行っていた。
移動用の車両、銃器、剣や槍の様々な武器――いずれも人間の拠点を打ち砕く為に欠かせぬ道具だ。
その砦の防壁の上に黒髪の異様な男が立っていた。
聞きたくもないのに聞こえてくる雑音、祈り。それらに心底憎悪する彼はフィールド・オブ・ナイン『デミウルゴス』。
捧げられる無関係な祈りを厭い、それらが生じぬよう人間を鏖殺せんとする狂気の教団に造られた偽神は、その力を振るわんと戦力を集めていく。
人間か、或いは己か。いずれかの死により祈りから解放される日を夢見ながら。
グリモアベース。
「ちょっと皆力を貸して! フィールド・オブ・ナインの一体である『デミウルゴス』について予知を掴んだの!」
祓戸・多喜(白象の射手・f21878)が大きな声で猟兵達にそう呼びかける。
「場所は再建されたデモイン砦、そこに世界中の拠点(ベース)を襲撃する為の『拠点破壊部隊』をデミウルゴスはたくさん集めてるみたいなの。その部隊は全員デミウルゴスに偽神細胞を植え付けられた『偽神細胞オブリビオン』になっていて、デミウルゴスの命令に忠実な兵隊になっているわ。部隊は主にレイダー……武器は銃器とか火炎放射器、バイクとかよくあるものだけじゃなくて刀とか槍とか弓とかも使ってるのがいて、いろんな状況に対応できるようにしているみたいね」
それだけでも厄介だが多喜は最も恐ろしいのは指揮官であるデミウルゴスだと言う。
「デミウルゴスは偽神細胞を体内に持たない者の攻撃には完全に無敵なの。偽神細胞自体は入手出来てるからもし体に注入してやれれば直接対決もいけると思うけど、酷い拒絶反応があるみたい。だから今回はどうにか偽神細胞を注入せずデミウルゴスを倒す作戦を考えて欲しいの」
鍵となるのは拠点破壊部隊だと白象は続ける。
「どうにも偽神細胞オブリビオンの攻撃とか武装はデミウルゴスに効果があるみたい。だから装備を奪ってそれでデミウルゴスを攻撃するか、配下達の攻撃を上手く誘導してぶつけるとか……つまり敵の力を上手く利用できれば倒す目は十分あるってこと。砦の地形も上手く活用する事もできるかもしれないわね。きっと、皆なら上手くあのニセモノのカミサマを倒す事もできるはずよ!」
そして多喜は、偽神おわすデモインの地へと猟兵達を転送する為グリモアを取り出した。
文明が破壊された時代に懸命に生きる人類の営みを破壊する為の力を蓄える砦――それを阻止する為の猟兵の戦いが始まる。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
祈りと狂気のうちに。
このシナリオはアポカリプスヘルのアイオワ州デモインの砦で『デミウルゴス』と戦うシナリオとなります。
デミウルゴスは体内に偽神細胞を持たない存在からの攻撃を「完全無効化」し、更に偽神細胞を有するオブリビオンを自在に操る事ができます。
デミウルゴスは再建したデモイン砦に既に偽神細胞を打ち込んだオブリビオンを大量に集め『拠点破壊部隊』を編成していますが、この『偽神細胞オブリビオン』達の攻撃は所持している武装や戦闘車輌も含めデミウルゴスに届くようです。
今回の拠点破壊部隊主に多種多様な武器を操るレイダーで構成されているようです。
また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス……「拠点破壊部隊」を利用し、デミウルゴスを攻撃する。
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それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『デミウルゴス』
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POW : デミウルゴス・セル
自身の【偽神細胞でできた、変化する肉体】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[偽神細胞でできた、変化する肉体]から何度でも発動できる。
SPD : 偽神断罪剣
装備中のアイテム「【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ : デミウルゴス・ヴァイオレーション
自身が装備する【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】から【強毒化した偽神細胞】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【死に至る拒絶反応】の状態異常を与える。
イラスト:佐渡芽せつこ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
箒星・仄々
デミウルゴスさんも部隊さんもお可哀そうです
海へ還して差し上げたいです
UCで摩擦抵抗を操作し
更に疾風を纏い
高速滑走で突撃です
予め自身をペロしているので
もし被弾してもつるっと受け流します
すれ違いざまペロっとして
武器を取り落としてもらいます
そちらを拾って回収
射撃しながらデミウルゴスさんの元へ
回収した武器を
いずれもペロっとしておきますので
銃弾や矢は摩擦抵抗ゼロで貫通していきますよ
断罪剣の攻撃も摩擦抵抗を減じた剣で
つるっと受け流して懐へ飛び込みます
その勢いのまま刺突を放ち
偽神細胞を貫きます
無理矢理
神へ祭り上げられてお可哀そうに
海へとお還し致します
終幕
デミウルゴスさんや部隊の皆さんへ
鎮魂の調べを捧げます
かつてラクーン川とデモイン川と呼ばれた二つの川の合流地点に再建されたデモイン砦。
この荒廃した世界で日々未来を諦めず生き延びようとする人類、それらをこそ憎悪し破壊せんとするデミウルゴスの砦は異様な雰囲気に包まれていた。
砦の城壁の上には大剣を手にした異形の男がいて、そして砦前には無数のレイダーが声も出さず一様に生気のない虚ろな表情で佇んでいる。
そんな光景は箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)にとって、グリモア猟兵から聞いた話も合わせて酷く哀れなものに映る。
この川の果て、海に彼らを返してあげたいと黒猫の楽師は想い、自身の毛並みの必要な個所をペロリと舐めて整えてレイダーの群れへと切り込んでいく。
遠方からマシンガンの弾丸の群れが仄々へと襲い掛かる。しかし仄々は既にユーベルコードで自身の摩擦を極限まで低下させている。
疾風纏い高速で地面を滑走する彼の速度を捉えきれず、続いて斧や鋸、突剣を持ったレイダーが切りかかってくる。
しかし仄々はその刃をすらつるりと受け流し、更にすれ違いざまにその持ち手を舐めて摩擦を消してすっぽ抜けさせる。
風の助けを受けて加速する黒猫は小柄な体も活かしてレイダーの持つ武器を次々に取り落とさせていって、そして突剣と小型のクロスボウを回収する。
そして砦の上のデミウルゴスに向けクロスボウの矢を放ったが、それはデミウルゴスの巨大化した偽神断罪剣に弾かれてしまい、更に射程を増したその剣は仄々を両断せんと振るわれる。
その斬撃を摩擦を消した自身の毛並みと摩擦を消した細身の魔法剣で受け流し、鈴の音と共に体勢を上手く入れ替えてデミウルゴスの懐へと飛び込んだ。
(「無理矢理神へ祭り上げられてお可哀そうに」)
そう憐れみながら、仄々は細身の刃を偽神の身体に突き込む。
偽神細胞を得ていない仄々の攻撃は本来ならデミウルゴスを傷つける事は叶わない。
しかし振るわれた刃はレイダーの持っていた細身の突剣、自身の魔法剣と比較的近く扱いやすいそれは見事デミウルゴスの胴を貫いた。
偽神の身体より血が流れる。驚いたような表情の彼はそのまま後方に倒れ込むようにして砦の壁から落下。憤怒のような歓喜のような、複雑に入り混じった貌で吼える。
『俺を殺せるのか! だが俺はお前達を皆殺しにしてやる!』
狂気すら宿る偽神を、砦の壁の上にいる黒猫の翠の目はどこか哀しそうに見つめる。
「……海へとお還し致します」
鎮魂の調べを奏でるのは、まだ先になりそうだ。
刃を構え、仄々はデミウルゴスを護衛する為に砦の中へと戻ってきたレイダーの群れを突破する為、滑走を開始した。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「偽神細胞。無敵とは神が如き力。
こちらも神の力を奪い抗すべきか。」
アンノウンブレスを発動し幽霊には距離を取らせて
念動力と呪詛での援護に当らせ
自身は拠点破壊部隊の武装を奪う為、敵中に侵攻。
武装を無傷で手に入れる為に接近戦を挑み
【残像】を纏い敵を攪乱。
至近距離からデモニックロッドの闇の魔弾や
フレイムテイルの炎で確実に仕留める。
敵を倒せたら武器を念動力で幽霊まで送り
武装が十分揃ったら。先ずは遠隔攻撃武器を
デミウルゴスに打ち込んでから
自身と近接武器を持った幽霊が接近。
【毒耐性】【オーラ防御】で偽神細胞に耐え。
奪った剣でデミウルゴスに一撃を与える。
「神かそうでないかは関係ない。
必ず倒す。俺の敵として。」
砦の壁の上からデミウルゴスが落とされた直後、目深にフードを被ったローブのダンピールがレイダーの群に飛び込んでいく。
(「偽神細胞。無敵とは神が如き力……」)
思案し駆ける彼、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)の視線の先にはレイダー達の有する武器。
無敵なる偽神を偽神細胞を持たずに討つ為には必要となる物だ。
当然レイダー達、そしてそれらを統率するデミウルゴスは奪われないように警戒を強めている。
偽神に抗うのに必要な武器を奪う為、フォルクがユーベルコードを起動する。
「地の底に眠る不明なる霊。呪われたる棺の蓋を開きて、その異能を存分に振るい」
詠唱と共に彼の周囲の地面から棺群が出現、
「――我に仇なすものを退け、我と共に歩む者を助ける力となれ」
そして詠唱完了と共にその柩の蓋が開かれ、呪詛と正体不明の幽霊の群が解き放たれ、レイダーを念動力で空に持ち上げ叩き落す。
混乱の中飛び込むフォルクの狙いは武装を無傷で奪う事、黒手袋を構えれば炎のラミアがレイダーに絡みつきその体を炎で包み込む。
そしてフォルクを狙う銃弾の群が彼を撃ちぬくが、それは残像。視線すら向けず黒杖だけを向けてお返しの闇の魔弾を喰らわせる。
更なるレイダーの銃弾や雄叫びを上げ振るわれるチェーンソーの刃もフォルクに届く前に軌道が捻じ曲げられ、或いはフォルクの背に目でもついているかのようにするりと回避されてしまう。
砦より離れた所には棺より出現した実体も掴めない幽霊の群が念動力で援護しているからなのだが、それはレイダーには大した救いにはならない。
そしてレイダーが倒れ落とした武装は念動力――フォルクと後方に控える幽霊両方の力によって次々に幽霊へと送られていく。
そうして武器を奪っている中、デミウルゴスが大剣構え飛び込んできて、一旦フォルクは大きくバックステップし距離を取る。
しかしデミウルゴスはそのまま大剣から強毒化した偽神細胞を散弾の如く発射、喰らえば致死の拒絶反応を引き起こすそれを死霊術士のダンピールは軽く舌打ちしながらクロークに擬態させた死霊の集合体を防御に用い直撃を回避する。
これ以上武器を簒奪するのは難しい、そう判断し幽霊にテレパシーで攻撃命令を出せば、弓や銃を構えた幽霊達が一斉にデミウルゴスに射撃を行う。
矢と銃弾の雨――それらをデミウルゴスは裂帛の気合と共に大剣で斬り払うが、同時飛び込んできた鋸等の近接武器を携えた幽霊達の追撃までは弾き切れず拮抗状態に持ち込まれる。
その瞬間、デミウルゴスの背後に回り込んでいたフォルクが一閃する。
剣は当然レイダーから奪ったもの、少々手入れが甘いようにも思えるが、デミウルゴスに痛打を与えるには十分。
偽神が苦痛の叫びを漏らし、周囲に偽神細胞を撒き散らす。深追いせず一旦後退したフォルクの目に宿るは敵を倒す――その強い意志のみ。
「神かそうでないかは関係ない。必ず倒す。俺の敵として」
そして幽霊達の支援を受けつつ、集まってきたレイダー達を迎撃・簒奪する為にフォルクは剣を握る力を強めた。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎
海に戻るとよいよ、デミウルゴス。そのためにわしらは来た
指定UC(防御力強化)発動しつつ、拠点破壊部隊の武器を奪うべく接近戦
どれだけこちらが傷つこうが、それはわしらの力になるでの
黒燭炎の柄部分で二回攻撃し、武器を落とすように仕向ける
そして、落とした武器を拾いてデミウルゴスへの攻撃に用いる
…補食されぬように見切り避けて気を付けるが、まあされてもこのUCの発動条件をデミウルゴスは満たせんからな
黒燭炎の炎を一部、拾いし武器に移し、怪力を利用した地形破壊できそうな二回炎属性攻撃に
そう、いつまでも苦しむことはないのだ
派手に死霊術士が暴れる中、死霊ではない一人の悪霊が砦の前に姿を現していた。
普段のほほんとした雰囲気の馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、けれど今は炎纏う黒槍を手に荒武者の如き雰囲気を纏っている。
四人で一人、四つの人格からなる複合型悪霊の彼はその場に応じた人格を表出させ、このデミウルゴスとの戦いでは武人である彼の出番と言う訳だ。
「海に戻るとよいよ、デミウルゴス。そのためにわしらは来た」
武人として終わらせるために、その宣言を受けたデミウルゴスは配下のレイダー達を操り一斉に襲い掛からせた。
出鱈目にフレンドリーファイアを厭わぬ射撃、義透はユーベルコードを起動し防御力を高めながら直撃を躱しつつ距離を詰めていく。
この荒れた戦場で不規則かつ急な動きを成立させるしっかりとした足運びは武の天才ゆえ、ボウガンの矢を黒槍で払い大剣を受け流して反撃を加えていく。
だが余りに敵は多数、義透もいよいよ躱せず攻撃を受け始めるが、けれどすぐさまその傷は体の再構築により塞がり、にじみ出てきた呪詛がより頑強な体へと強化していく。
(「四悪霊は滅びず」)
――義透の姿を定義、認識するのは『馬県・義透』という名の認識補助術式であり、つまりはその術式が稼働している間は再構成が可能。
呪詛により防御力が高まっていく義透に対し、レイダーの攻撃はそう簡単に致命傷を与える事は出来ない。
反撃を恐れず旋風のように黒槍を振り回す義透は丁度いい距離にいた槍のレイダーの腕に二度黒槍の柄を叩き付け、取り落とさせて即座に奪取。
周囲からの攻撃を意に介せずデミウルゴスへと一気呵成に飛び込んでいってレイダーの槍を真っすぐに突き込む。
だが槍は大剣に阻まれ、そしてデミウルゴスの腕が奇妙に蠢き義透を捕食せんと液体生物の如く襲い掛かる。
それを見切っていた義透は地面に黒槍を叩き付け反動で跳躍して回避。
そして義透はレイダーの槍に黒槍に纏わせた炎の一部を移し、その剛力で地面ごと穿つような強烈な刺突を喰らわせる。
肩口から足まで貫かれたデミウルゴス、その傷跡に燻る炎は変化する偽神細胞による再生と拮抗するように燃え続ける。
「そう、いつまでも苦しむことはないのだ」
武士の情け、ではないが苦しみ続けるデミウルゴスに義透は静かに告げる。
『だが……まだだ!』
しかしデミウルゴスは大剣を構え直す。偽神細胞による無敵は大分崩されてはいるが、その覇気は戦いの開始から衰えるどころか増してすらいる。
あと一押し、その致命打を与える為に侵す者たる武士は簒奪した槍と成長する炎の黒槍を構え直した。
大成功
🔵🔵🔵
リカルド・マスケラス
「……同情はするっすよ?その祈りに手を差し伸べるって選択肢に至れなかった境遇も含めて。だからこそ、引導を渡すっすよ」
味方が倒したオブリビオンに取り憑く
「その為にも、ちょーっと力を借りるっすよ」
オブリビオン達に【再臨の仮面舞踏会】を施して操る。下がった戦闘力は1体までなら自分が憑依してカバー。UC併用可なら【仮面憑きの舞闘会】で同時憑依
あとはオブリビオン達の武装(銃器系?)やUCを【一斉発射】する【集団戦術】
敵の放つ状態異常は【破魔】【浄化】等で癒し、操っているオブリビオン達はすでに死んでいるので問題ない。あったとしてもUCをかけ直して動けるように
「もう何も聞かなくていい。ゆっくり休むっすよ」
黒槍携えた悪霊が偽神の大剣と斬り交わしているその時、リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)という白狐面を被った青髪の男は砦外に到着していた。
「……同情はするっすよ? その祈りに手を差し伸べるって選択肢に至れなかった境遇も含めて」
嘆息するリカルド。
元は邪教に造られただけの存在であるというデミウルゴス、何故祈りが彼に届くようになってしまったのかは分からず、そしてそれに対して殺し尽くすという選択しか取れなかった境遇には同情の余地はある。
しかしそれで猟兵としての仕事を放棄するつもりは、リカルドにはない。
「だからこそ、引導を渡すっすよ」
既に砦内へと突入した猟兵達を迎撃する為にまだ生き残っていたレイダーはこの場を去っている。残っているのは悪霊や死霊の攻撃で既に倒されたオブリビオンのみである。
この状況であるならばリカルドの用意していた作戦――多少不確定要素はあるものだが、十分遂行できるだろう。
偽神デミウルゴスに終焉を与えるその為に、
「ちょーっと力を借りるっすよ」
リカルドはユーベルコードを起動すると、荒れ地に倒れ伏したレイダー達の身体がゆらりと何かに操られるようにして起き上がった。
そして砦内。
猟兵達の追撃を砦内に戻した配下達の数と暴力により中の広場で食い止めつつ、デミウルゴスは自身の偽神細胞を操り一旦体勢を立て直していた。
ところが意のままに操っていたレイダー達の様子がおかしくなる。砦の外から戻らなかったレイダーが何故か砦に戻り他のレイダーと同士討ちを始めているようだ。
そしてその反逆したレイダー達を操ろうにも何か別の力に操られているようで思うようにならない。
「見つけたっす!」
石造りの砦に男の声が響き、レイダーの群れがデミウルゴスの前に飛び出してくる。
そしてレイダー達は一斉に銃器を偽神に向け発砲、これまでの通り偽神細胞を持つレイダーの攻撃はデミウルゴスに傷を与えうるものだ。
銃弾や火焔をデミウルゴスは大剣を振るい弾き飛ばし、同時偽神細胞製の大剣から強毒化した偽神細胞を放ちレイダー達を貫く。
既に偽神細胞を植え付けられているレイダー故に、致死性の強烈な拒絶反応が引き起こされる――はずだった。
『何故だ……?』
偽神の表情に驚愕が浮かぶ。レイダー達はその攻撃を受けても倒れず、次の射撃の構えを取ったのだ。
(「直に受けると危ないっすね」)
他のレイダー達の陰に隠れるように一人だけ白狐の仮面を被る者がいた。
彼こそレイダーの身体を操るリカルド、彼のユーベルコードは気絶者もしくは死者を自身の依り代に変え操るというものだ。
個々の戦闘能力自体は落ちているがこれだけの数がいるなら十分通用して、元々死んでいるようなものを操っているのだから偽神細胞の拒絶反応に蝕まれようと倒れる事はない。
『……煩い、黙れ!』
更に合流してくるレイダー達の射撃をデミウルゴスは銃弾の雨に飛び込みその大剣を振るい切り飛ばしていく。
頭に響く祈りも向けられる敵意も、全てを拒絶するように偽神は荒れ狂う。
しかし狂気に任せる偽神には、隙も当然生じる。
白面のレイダーがその手のショットガンを構えデミウルゴスの足元に転がり込んで、
「もう何も聞かなくていい。ゆっくり休むっすよ」
その引き金を引き、真下から偽神の頭部を銃弾でぶち抜いた。
直に操る事でリカルドの力も上乗せした偽神細胞を植え付けられたレイダーの一射、それは偽神の無敵の守りを突破し、デミウルゴスは石畳に崩れ落ちた。
その表情は無責任な祈りからもそれから逃れる為の殺戮からも解放された、どこか安らいだものであった。
そしてデミウルゴスが倒れ、程なく残っていたレイダーも全て撃破された。
静寂を取り戻した砦に黒猫の鎮魂の調べが奏でられる。
偽神になってしまった男とその軍勢もいなくなった砦に響くそれは、ようやく終わりを迎えることができた彼らを大海に迎えるような穏やかな調べ。
こうして偽神は討たれ、フィールド・オブ・ナインの一角が崩されたのであった。
大成功
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