アポカリプス・ランページ⑱〜ポーシュボス・インフェスト
●グリモアベース
猟兵たちが待機する無機質な空間に、なにかが強くぶつかる鈍い音が響く。
次いで聞こえたのはグリモアが床に落ちる硬い音……その側ではジファー・グリムローズ(人狼の文豪・f13501)がぺたんとその場に座り込んでいる。
「ぎ、ギもチ悪イ……うグっ、グうウう……」
自らの口や耳を両腕で覆うように庇い、琥珀色の目に涙を浮かべるグリモア猟兵……苦しみ呻く彼を介抱する所から、今回の依頼は始まりを迎える。
●フロリダ州タラハシー『ポーシュボス・フェムメノン』
「ご、ごめん……見苦しかったよね……」
今もなお目元に涙を滲ませつつ、時折苦しそうに呻きつつジファーは説明を始める。
アポカリプスヘルのフロリダ州北西には、そこにあったタラハシーという都市を覆うほどに巨大なオブリビオン・ストームが吹き荒れており……ジファーが予知した存在はその内部にいるという。
「『ポーシュボス・フェノメノン』……フィールド・オブ・ナインの1体と言われていた存在。
それがさ、たくさんいるんだ……黒くて、夜空の星みたいに咲いてて、たくさんの光る目でこっちを見てた……蠢いて、絡み合って、纏わり付いて……。
そして、『善』を喰い尽くす……おぞましいって一言じゃ足りない程に、恐ろしい“現象”だったんだよ」
ポーシュボスは、生命の『善の心』に寄生する能力を持っている。
そして少しでも善の心を持つ生物を新たな『ポーシュボス』に変え、増殖を繰り返していくのだとジファーは呻いた。
ポーシュボスを倒す手段は二つある……一つは『邪悪ナる者』の手にかかることだ。
それは即ち『純粋な悪の存在』のことを指す……一欠片の善意を持たぬ、悪だけがポーシュボスを殺せる。
もう一つの手段は、ポーシュボスに寄生されながらも戦い続けることだ。
無論、寄生されればいかに猟兵といえただでは済まない……予知を見ただけのジファーが既にこの有り様だ。
「黒いモノが身体に絡み付いて、どんどん入り込んでくる感覚がまだ残ってる……それに、頭の中には自分じゃない誰かの声が流れ込んでくる。
言ってることは様々だけど……でも、最後には全部、硝子を引っ掻くみたいな声で、耳が壊れる程の大声で叫ぶんだ」
「……『殺シてクれ』って」
ポーシュボスがどのような経緯で発生したのかは分からない。
けれどその正体は判明した……大竜巻の中にいる“人々”は、みんな“犠牲者”だ。
“彼ら”を救うことは出来ない、それでも“彼ら”は救いを求めて猟兵たちに向かってくる。
それを“助けたい”と思ってはいけない、その善意はポーシュボスの格好の餌となる。
それでも“助けたい”と願うなら、寄生を受け入れた上で正気を手放さずに戦うしかない。
お願い、とジファーは両手を組んで猟兵たちに乞う。
「止めてきて。 あれを……あんなおぞましい“現象”を、世界に留めちゃダメだ」
四季臣
このシナリオは「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、『アポカリプス・ランページ』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオになります。
五十九度目まして、四季臣です。
この度はここまでOPをご覧いただき、ありがとうございます。
第一印象は「気持ち悪い」だったポーシュボス。
けれど何故だか目が離せない、表現しづらい何かがある気がします。
第1章は、集団戦『ポーシュボス・フェノメノン』です。
プレイングボーナスは【『邪悪ナる者』になるorポーシュボス化してでも戦う】です。
『邪悪ナる者』について補足をさせて頂くと、完全悪になりきる……といった所でしょうか。
とにもかくにも正常な精神状態ではいられません、OPのジファーよりも酷いことになりますのでご注意願います。
ちなみにタイトルにあります「インフェスト」は「寄生」を意味しています。
それでは、四季臣より戦争シナリオ六本目です。
よろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『ポーシュボス・フェノメノン』
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POW : ポーシュボス・インクリーズ・フェノメノン
【ポーシュボスによる突撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【新たなポーシュボス】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ポーシュボス・ナインアイズ・フェノメノン
自身の【全身の瞳】が輝く間、【戦場全てのポーシュボス・フェノメノン】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : ポーシュボス・デスストーム・フェノメノン
【オブリビオン・ストームの回転】によって【新たなポーシュボス】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。
イラスト:爪尾
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夜刀神・鏡介
もはや死ぬことでしか救われないような人がいるのは分かっている。そういうのを見てきたことだって少なくない
にしても、これはやりきれないにも程があるだろ
こんな状況でであっても善の心を完全に殺すことは出来ようもない
倒すためには仕方ないので、一時的にポーシュボス化を受け入れよう
神刀の封印を解いて、壱の秘剣【銀流閃】を発動。自身の周辺に銀色の神気を身に纏う
浄化と破魔の力、及び癒しの神気によって侵蝕の進行を抑え込みながら、攻撃性の神気の嵐でポーシュボスをなぎ払っていく
尤も、完全には抑え込めない為普段よりは技のキレがない
なんとか堪えつつ、近場のポーシュボス達にに切り込んでいき、一体でも多くを倒していく
●己が『善』を護りながら
――大竜巻の中にいる“人々”は、みんな“犠牲者”だ。
悲鳴にも似たグリモア猟兵の説明に、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)も眉間に皺を寄せ目を伏せる。
もはや死ぬことでしか救われないような人がいるのは分かっている、実際にそのような人々を見てきたことだって少なくはない。
そうだとしても……。
「これは、やりきれないにも程があるだろ……」
手にしたのは鉄刀ではなく、神刀【無仭】。
「神刀解放。 邪を絶ち、善を守護せん――壱の秘剣【銀流閃】」
封印を解いて己がユーベルコヲドを顕現させる、銀色の神気が黒の中を淡く照らす。
黒が蠢き、無数の光る目が鏡介を捉える……『善』に餓えた“現象”が群れを成して殺到する。
ポーシュボスの群れが今までそうやって増殖していったように……鏡介を取り巻くのは一瞬の出来事だった。
『光ダ、あタたカい、ヒかり……』
『助けテ、お願い、私ヲ助ケて!』
「くっ……!」
蠢き纏わり付くポーシュボスが、神気を貪り喰らい始める。
それと同時に鏡介の身体にも絡み付き、『善』を持つ心身を侵蝕していく。
浄化と破魔、そして癒しの神気によって、ポーシュボスの進行を抑えようとした鏡介だったが、“彼ら”は神気すら糧にした。
蟻の群れが砂糖に群がるのと変わらぬ光景のなか、鏡介はその中心で神刀を振るう。
「(堪えるんだ……そして、一体でも多く、“彼ら”を斬る!)」
銀色の神気の嵐が吹き荒れ、ポーシュボスの群れをなぎ払っていく。
それでも尚、『善』を求めて猛進する群れはまるで雪崩のようだった。
神気を喰らい尽くした“現象”が、鏡介すら飲み込もうと迫り――。
――次の瞬間には、鏡介は無機質な空間の中に立たされていた。
馴染みのある部屋、目前で座り込んで俯くグリモア猟兵の姿。
鏡介は今も響く声を振り払いながら、理解する……強制帰還の処置が成されたのだと。
それでも、己が『善』を護りながらポーシュボスを斬ったことには変わりない。
鏡介によって、一部の“彼ら”が救われたことに間違いはなかった。
成功
🔵🔵🔴
マオ・ブロークン
あたしの、ひととしての、心は。
予知を、聞いて。ひどく、かなしくて、沈んでいく。
自ら、死にたいと、願う、なんて。聞くのは、耐えられない。
……だから。
身体の、うちに、封じ込めた……悪霊(あたし)。
ひとらしい、心を、命と一緒に、失った、死者の、本性。
全ての命を、妬んで。呪い殺す、邪悪ナる者を。
……この戦場で、枷を外して、解き放つ。
悪霊は、死に際に覚えた、感情のまま、暴れ狂うだけ。
取り込まれながら、生きている、現象たちを、憎んで。
命を奪って、自分と同じ、死者の側に引きずり込むだけだ。
世界を、苦しむひとを、救おうなんて、気持ちはない。……けれど。
彼らにとって。それが、どう働くのかは……別の、こと。
●死者の心
マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)は、不死者の肉体に年相応の少女の心を宿す者。
生前よりも鈍重な心身ではありながら、彼女の心は予知を聞けば悲しみの色に染まっていった。
どの声も最後には『殺シてクれ』と叫ぶのだと、そのことにマオの心ひどくかなしく沈んでいく。
恋をしていた、愛する人を想って過ごした甘い日々の記憶、『死』を想うにはかけ離れた幸せがあった。
その果てに、手酷く振られた記憶があったとしても……自ら死にたいと願う声を聞くのは耐えられない。
だからこそ、マオは自らの内に封じ込めた悪霊に身を委ねた。
不死者にして、悪霊。
朽ちた肉体という枷から解き放たれ、実体なき悪霊と化して本性を露にする。
全ての生命を妬み、呪い殺す『邪悪ナる者』。
命ある『善』を喰らう戦場において、その『邪悪』はひどく深々と突き刺さる。
「ア、アァ――」
“悪霊”が声なき声で叫ぶ、死に際に覚えた感情のまま暴れ狂う。
虚ろな虚眼と視線がぶつかったポーシュボスの一部が、たちまち生命を手放すように萎んでいく。
完全なる悪、『邪悪ナる者』の存在に気付き逃げようとて、悪霊はその先へ瞬時に現れ退路を塞ぐ。
もっと生きたかった、愛してほしかった。
あたしはもう生きられないのに、なぜあなたは死を願うのか。
身勝手に願う現象を、悪霊は妬み、憎まずにはいられない。
なればこそ、限りある命を奪い尽くして、自らと同じ死者の側へと引きずり込むだけ。
……そこに、人々を救おうだなんて『善』が宿るはずもない。
“悪霊”は、許さない。
全ての生命を――それがたとえ世界を蝕む“現象”であったとしても。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…ふぅん?あの醜い化け物、元々は皆人間だったの?
面白いわね、ペットに1つ持って帰ろうかしら?
…あら?貴方達、まだ人間だった頃の意識が残っているの?
ふふふ、本当に傑作だわ。そんな様になってまだ私達を愉しませてくれるなんて…
じゃあ、折角だから色々試してみましょうか?
命令よ、お前達全員、互いに知り合いのポーシュボスを喰らいあいなさい
異世界に来て本当に良かったわ。 こんな面白い玩具が転がっていたなんて!
事前にUC発動して自身を「純粋な悪の吸血鬼」として洗脳し、
「影精霊装」を纏い敵陣に切り込みUCを乱れ撃ち同士討ちを行う
戦闘終了後「吸血鬼狩りのペルソナ」により善悪の無い疑似人格を起動しUCを強制切断する
●吸血鬼
転移の扉を潜った時、その者は反転するかのように変容した。
瞳を紫から血を思わせる赤に変え、妖艶な笑みを浮かべる彼女は、まるで品定めでもしているように目前の“現象”を眺めている。
「……ふぅん? あの醜い化け物、元々は皆人間だったの? 面白いわね、ペットに1つ持って帰ろうかしら?」
仮に、彼女を知らぬ猟兵がこの場にいたなら、誰かはこう言っただろうか。
――なぜヴァンパイアがこの世界にいる?
『嫌ダ、助ケて、マま、ドこニいルの?』
『泣カなイでボうヤ、わタしハそバにイるワ……ぼウやノ中ニいルわ……』
「……あら? 貴方達、まだ人間だった頃の意識が残っているの?」
互いを求めるように絡み合うポーシュボスの声に、“吸血鬼”は花のように微笑む。
蠢く黒の最中、『善』が瞬く間に喰われる嵐の一角に降り立った彼女は、一流の悲劇を称賛するように手を叩いた。
「ふふふ、本当に傑作だわ。 そんな様になってまで私達を愉しませてくれるなんて……」
『まマ、だレか知らナい人が来たヨ……怖イよ……』
「怖がらなくていいわ……ふふ、じゃあ、折角だから色々試してみましょうか?」
そうして彼女は吸血鬼としての力を解き放つ……限定解放・血の薫香。
対象を誘惑し洗脳する魔性の香気……それは吹き荒れる嵐に乗せられて、一帯のポーシュボスの群れの意志を奪っていく。
『ま……マ……?』
『ボ……うヤ……どコにイっ……タの……?』
先程から聞こえるのは親子“だった”モノの声だろうか……その口取りがたどたどしくなった所で、1つの命令を下す。
「お前達全員、互いに知り合いのポーシュボスを喰らいあいなさい」
その命令を皮切りにして、絡み合うばかりだった“彼ら”の動きが変貌を遂げる。
互いを喰らい、締め上げ、擂り潰し、蹂躙し合う様はまさに地獄と呼ぶべき光景だった。
本来であればポーシュボスがポーシュボスそのものを殺すことは出来ない……しかし『邪悪ナる者』より放たれた香気のダメージが、それを可能にした。
可能に“してしまった”。
大竜巻を突き破らんばかりに轟くは、腐肉同士が潰れ合う湿った音に、悲鳴、慟哭、絶叫。
負を煮詰めた闇の中で、吸血鬼は香気を放ちながら舞い踊り、高らかに嗤った。
「異世界に来て本当に良かったわ。 こんな面白い玩具が転がっていたなんて!」
――絶叫が止むまで、何分経っただろうか。
傷を負いながら同胞を喰らい尽くし、すっかり肥大化した1体のポーシュボスを、“吸血鬼”は優しく撫でていた。
『まマ……潰レちャっタ……まマ……まマ……』
「貴方……気に入ったわ。 ねぇ私のペットに――」
口にしかけた提案は、『邪悪ナる者』の時間と共に途切れる。
予め用意していた疑似人格『吸血鬼狩りのペルソナ』による強制切断が行われた。
『ま……マ……?』
子供だったのだろうか、母を求める声に……リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は大鎌を振るい切断する。
自らに血の薫香による洗脳を施していたリーヴァルディの意識無き戦いは、目前のポーシュボスを滅ぼして幕となった。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・アイオライト
ただ単純に気持ち悪いんだけど。なに?オブリビオン・ストームの中で集まって相談でもしてるの?
……まあ良いでしょう。邪悪なる者になればいいってこと。
忘れてたわ、今までやってきたこと。気に食わない奴は殺す。それだけのことなのにね。
邪悪の塊そのものならあたしの力の中に潜んでいる。
UC発動。来なさい、クラミツハ。アンタの大好きな闘争と蹂躙、それを為せる場所が今ここにある。
『ハハハ!闘争、闘争か!殺そう!全て殺そう!騒乱の嵐が鮮血の嵐になるまで!!』
さっさと鏖殺しましょうか。殺して殺して殺して殺し尽くす。
自分の体を巨悪の塊であるクラミツハに預けて、影を自在に変質させて『範囲攻撃・暗殺・蹂躙』するわよ。
●闇の繰手
「ただ単純に気持ち悪いんだけど。 なに? オブリビオン・ストームの中で集まって相談でもしてるの?」
レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)の率直な感想の通り、相談でもしていたのならまだマシと言えただろう。
不快な水音を滴らせて絡み合うポーシュボス・フェノメノンは、ただひたすらに嘆き、救いを求める声を上げて蠢くばかりだ。
「……まあ良いでしょう。 邪悪なる者になればいいってこと」
ただそれだけのことだと、レイは魔刀を手にして群れの方へと走り出す。
ポーシュボスは数多の目を光らせてレイを見下ろしていた……成る程、その視線は気に食わない。
「忘れてたわ、今までやってきたこと」
――気に食わない奴は、殺す。 ただ、それだけのことなのにね。
邪悪の塊……『邪悪ナる者』は既にレイの力の内側にいる。
生まれながらにして存在する背中の傷痕は、異端の力の源にして闇の繰手が巣食っている。
「来なさい、クラミツハ」
隣人を手招くように呼び掛ければ、『影憑き』に潜む繰者がレイの身体の制御を奪いにかかる。
「アンタの大好きな闘争と蹂躙、それを為せる場所が今ここにある」
そう、告げた矢先に轟くのは影憑・闇御津羽神……クラミツハの囁き。
否、湧き出る無数の獲物を目前に蹂躙の予感を嗅ぎ付けての、歓喜の雄叫びだった。
『ハハハ! 闘争、闘争か! 殺そう、全て殺そう! 騒乱の嵐が鮮血の嵐になるまで!!』
善の心を持つものにとっては苦行でも、『邪悪ナる者』クラミツハにとっては宴に等しい。
常日頃より『全てを殺せ』と囁きかける闇の繰手にしてみれば、生命の数ほど増殖する“現象”は最適な的だった。
『もっとだ、もっと増えろ! その分全てを殺してやろう!!』
「はいはい、さっさと鏖殺しましょうか」
身体の制御こそはクラミツハに預けたレイもまた、影を自在に変化させての蹂躙を以て、殺し、殺し、殺し尽くす。
嘆くモノ、救い求めるモノ、許しを乞うモノ、全てを、殺し尽くすまで、虚悪は止まらない。
『ハハ、ハハハ! さあ、次は! 次はどこにいる!!』
「あぁ、ここはもう打ち止めみたいね」
――止まるとすれば、その周囲に殺すべきポーシュボスがいなくなった時だ。
デタラメに駆使された身体には流石に痛みを感じつつ、レイは役目を終えたクラミツハの召喚を解こうとして。
『まだだ、まだ殺し足りぬ! 嗚呼、いっそのこと嵐が止まなければ永遠に殺し尽くせるのだが!』
「煩いわね」
グリモアを持つ者が聞けば卒倒しかねないことを宣う闇の繰手を、レイは無理やり黙らせた。
大成功
🔵🔵🔵
ヤコ・ナゴ
(ポーシュボスに曝露され、一人呟く。)
善意なんてものは…もう、捨てたんですよ。
気のいい同僚と、政治体制へのささやかな愚痴を吐いた翌日に治安局が来て。
証拠とばかりに、愚痴の内容が入ったテープを突きつけられて。
私は、隣人の善意なんてものを信じたばかりに、『売られた』んです。
だからもう、他人の善意なんて信じないし、私自身の善意も信じない。
(眼鏡を外す。アサルトライフルの安全装置を解除する。)
善意を求める"あなたたち"の事も知ったことじゃない。
私は、私の身勝手で―――私の、悪意で―――あなたたちを、殺します。
(銃口から銃弾を放つ。眼からレーザーを放つ。)
ぜんぶ、踏みにじってあげます。
●善良不信
ポーシュボス・フェノメノン、『善』を喰らい増殖する“現象”。
そして『超宇宙の恐怖』を以て、あらゆる生命を狂わせる邪神でもある。
宇宙……そこに関連があるかは定かではないが、ヤコ・ナゴ(チキンレッグ・f29509)はこの場においても故郷の宇宙を見ていた。
黒い炎に見せられた過去の恐怖と共に膨れ上がったもの、それは善意への不信感だった。
「善意なんてものは……もう、捨てたんですよ」
切っ掛けは、ヤコが帝国影響下にある勤め先でささやかな愚痴を吐いたこと。
これによってヤコは治安局に目をつけられ、拷問めいた尋問を受けることとなる。
――愚痴を吐いた、ただそれだけで治安局がわざわざやってくるものだろうか?
否、愚痴を言うヤコの対面には、ヤコにとって気のいい同僚の姿があった。
ヤコは、その同僚に通報されたのだ。
政治体制に反旗を翻す容疑者として、ご丁寧に愚痴の内容を収めたテープレコーダーを証拠にして。
――あなたのことは数少ない友人だと思っていたのに、どうして?
気を許して心の内を開いた相手に裏切られ、『売られた』時……ヤコは『善意』を信じなくなった。
人から受ける『善』も、自分自身にあった『善』でさえも、信じないと。
徐に眼鏡を外す、コカトリスとしての力を解放すべく。
アサルトライフルの安全装置も解除して、引き金に指を掛けた。
「善意を求める“あなたたち”の事も知ったことじゃない。 私は、私の身勝手で――私の、悪意で、
あなたたちを、殺します」
『善』を信じたが故に裏切られた男は、結果的に目覚めた力を最大に引き出してポーシュボスを迎え撃つ。
銃口からは鉛弾を、解放した目からは炎と毒が入り乱れた光線が飛び、にじり寄る“現象”を撃ち抜き、燃やしては蝕んでいく。
――ぜんぶ、踏みにじってやる。
心の内をドス黒い感情で溺れさせて、作業的に、無慈悲に、徹底的に。
照準、発砲、リロード、照準、発砲、リロード、ただそれだけを繰り返す。
嵐が止むその時までヤコは、宇宙の闇に取り巻かれる中で撃ち続ける。
その闇の中に、自分を裏切った同僚を見ていたのだろうか。
成功
🔵🔵🔴
スティーナ・フキハル
華蘭(f30198)と
ミエリ口調
★より後はスティーナ口調に
来ないと言いながら来て早々こんなことを頼むのは気が引けますが……華蘭。
この戦いが終わるまで嘗ての姿に戻り私達を気にせず戦いなさい。
私達はポーシュボス化してでも堪えてみせます。
私達の声が聞こえないよう華蘭に催眠術をかけてからUC使用、
彼女に憑依し真の姿にさせ、以降は華蘭の体内で戦況を見守ります。
っつ……あちこちから早く殺してって、やめて!
頭が割れ……華蘭、は、早く終わらせ……!
私、変わっ……お姉ちゃ……
★
落ち着けミエリ!
一人で耐えてんじゃないぞ、アタシもいる!
お前が無理ならお姉ちゃんが耐えてやる!
妹の魂の手を優しく握りながら堪え続けるぞ!
隠神・華蘭
スティーナ様(f30415)と
★より後は口調:八百八狸で
承知致しました。
これより邪悪な怨みの塊となり、しばし主達のことを忘れ戦わせて頂きます。
命令を承諾しUC使用、更に主のUCの力で真の姿となります。
★
そんななりでまだ意識があるのか猿の出来損ないどもが。
忌々しい、何故この世から疾く一匹残らず消えてくれぬのだ貴様らは!
UCで身に宿った炎を周囲に範囲攻撃として広げ奴らを焼きつつ
寄ってくる者は念動力で他の奴に叩きつける。
逃げ足を駆使して攻撃を避け奴らの姿に化術変化、
奴らのくだらん力が効いたように見せかけただまし討ちで鉈にて目を切断、目潰しし倒した者は程よく切り取って盾にしながら次の敵へ仕掛けていく。
●善の衣、悪の刃
時は少し遡り、転移の扉の前。
スティーナ・フキハル(羅刹の正義の味方・f30415)は、主従関係にある隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)の手を取り、己が術を施そうとしていた。
見送りかと思えばそうではなく、スティーナ……のもう1つの人格である妹『ミエリ』は華蘭に詫びを入れつつも命じる。
「この世界に来ないと言いながら、こんなことを頼むのは気が引けますが……華蘭。 この戦いが終わるまで嘗ての菅田に戻り、私達を気にせず戦いなさい」
「承知致しました。 これより邪悪な怨みの塊となり、しばし主様のことを忘れ戦わせて頂きます」
華蘭を護るため、ポーシュボス化してでも堪えてみせると……ミエリとスティーナは、華蘭に催眠術と双身重合の術を施していく。
自らの身体を霊体化、憑依させる力は、対象を真の姿に変化させることすら出来る。
2人で1人のオーバーロードを象ると表現すべきだろうか……主は信に置く狸へ我が身を預ける。
そして命令を承諾した華蘭は掛けられた術の通り、真の姿……八百八の化け狸となり、転移の扉に手を掛ける。
身に纏う金色の炎に覚えはないはずなのに、己が内に“何か”が宿っていることを感じながら。
そして現在、“華蘭”であった化け狸はポーシュボス渦巻く嵐の真っ只中で炎を振るう。
邪悪な怨みの塊となった妖怪に、『善』を求めた亡者の如く迫る“現象”の意図が汲めず、狸は苛立ちを露に荒れ狂う。
「そんななりでまだ意識があるのか猿の出来損ないどもが。 忌々しい、何故この世から疾く一匹残らず消えてくれぬのだ貴様らは!」
金色の炎を主軸にして広域を焼き払い、にじり寄るモノには念動力を駆使して他のものに叩き付ける。
時に化け術を使ってポーシュボスの姿を象り、いかにも取り込まれたように見せた上での騙し討ちを仕掛ける。
振るわれた鉈はポーシュボスの光る目を切断、湿った肉が裂け、光る体液が化け狸の赤い着物に振りかかった。
「……! ええい許さぬぞ猿どもめ! よかろう、この“華蘭”が直々に貴様らを根絶やしにしてやろうぞ!」
切り払ったモノの肉塊すら盾にして、化け狸は死に損なった猿を切り刻んでいく。
その一方で……華蘭の内にいるミエリは別の戦いを強いられていた。
華蘭がポーシュボスを攻めるなり受けるなりする度に、『善』を喰らうモノはミエリの心へ侵攻を進めていく。
「……っつ、あちこちから、声が……やめて!」
ポーシュボスの狙いは、始めから華蘭ではなくミエリの『善』の心だ。
そのためポーシュボスの侵蝕は、『邪悪ナる者』と化した華蘭をすり抜けて、霊体化したミエリを直接喰らうべくして向かってくる。
『邪悪ナる者』でありながら、善の力持つ華蘭の殲滅力は、さながら蟻地獄に近いものがあるが……その負担はミエリに重くのし掛かる。
「頭が割れ……華蘭、は、早く、終わらせ……!」
内にいるミエリの悲痛も、催眠術にかかった華蘭には届かない。
しかし、ミエリは決して一人ではなかった。
「落ち着けミエリ! 一人で耐えてんじゃないぞ、アタシもいる!」
ミエリと共に華蘭の中にいるスティーナが、妹の魂の手をしっかりと、優しく繋ぎ止める。
「お姉……ちゃ……!」
「お前が無理ならお姉ちゃんが耐えてやる! お前にはいつだって、お姉ちゃんがついてるんだって事を忘れるな!」
ミエリとスティーナはお互いに支え合い、『善』を蝕む侵攻を凌ぐ。
信に置いた華蘭が、二人が限界を向かえる前に決着を付けてくれることを信じて耐え続ける。
それはさながら蟻が喰い尽くすのが先か、蟻地獄が全て沈めるのが先か。
八百八の化け狸の内にて、誰に気付かれることのない持久戦が行われていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
水無瀬・旭
【邪悪ナる者】
武器(ハガネ)として、正邪を他者に預けたのがこの俺だ。
…今一度、俺は貴方達の命を奪う絶対悪(クロガネ)となる。
…俺には『正義という名の悪』が刻み付けられているのだから。
殺せばいいのだろう、壊せばいいのだろう。『正義』の御旗の下に、遍く悉く灼かれるがいい。
此れは生命に定められた生存闘争ではない、『正義』の為の『誅殺』、『殺戮』だ。
【指定UC】を解放、殺して欲しいのだろう?
その願い、叶えてやろうではないか。
【属性攻撃】【焼却】【継戦能力】【エネルギー充填】【呪詛】を強化し、呪いの黒焔を纏った刃、無敵の装甲で9倍の攻撃を正面から迎え撃ち、灼き斬っていく。
ドス黒い太陽(正義)の名の下に。
●正義という名の悪
正義とは、『善』に非ず。
それを自らの身を以て体現しているとするのは、水無瀬・旭(両儀鍛鋼ロード・ハガネ・f25871)だ。
「武器(ハガネ)として、正邪を他者に預けたのがこの俺だ」
常より『正義』の探求を続けている旭だが、嘗ては苛烈なる正義感故に『正義という名の暴力』を振り撒いたという。
そのような過去を秘める旭は、『善』を喰らうこの地において……一時の間、過去に戻る。
「……今一度、俺は貴方達の命を奪う絶対悪(クロガネ)となる」
――俺には『正義という名の悪』が刻み付けられているのだから。
「『正義』を、遂行する」
ポーシュボス犇めく嵐の中で行われたのは、圧倒的な暴力の数々。
双刃の馬上槍がなぎ払われる度に散り行く命の嘆きなど、絶対悪の『正義』には届かない。
「(殺せばいいのだろう、壊せばいいのだろう)」
――『正義』の御旗の下に、遍く悉く灼かれるがいい。
此れは生命体に定められた生存闘争ではない、『正義』の為の『誅殺』、『殺戮』だ。
『殺しテくレ……』
『オ願イ……殺シテ……』
微かに届いた“人々”の願いが、血塗られた『正義』の味方に歪な力を与えていく。
無敵の装甲を身に纏い、黒く揺らめく焔を刃に与えて、旭はその“命令”に答えた。
「その声を聞いた。 その願いを聞いた。 殺して欲しいのだろう? 叶えてやろうではないか」
狂気に光る瞳に照らされながらも、“命令”によって能力を得た旭を止めるに至らない。
『善』と呼ぶには程遠い、呪いの黒焔が嵐の中に振り抜かれ、蠢くモノを灼き斬っていく。
ドス黒い、太陽(正義)の名の下に――嵐が止むまで、延々と。
成功
🔵🔵🔴
唐桃・リコ
アドリブ・アレンジは大歓迎だ
こいよ、ポーシュボス
オレがお前らをオレの力に変えてやる
気味悪い感覚、ぐちゃぐちゃオレに絡みついて離さねえ
耳元で叫びやがる
オレの中の人狼みたいに煩え
ある程度の数がオレの周りに集まってきたら、
他のポーシュボスにも呼びかけて
オレが食いつくせるか!?お前らにオレが殺せるか!
ちげえ!オレがお前らを殺して、くらって、力にする者だ!
全力の【Howling】!うるぅぅぅうあああああ!!
過ぎた力にオレまで理性が吹っ飛びそうになる
でも、オレには力を求める理由がある
早く強くならなきゃいけねえ理由がある
だから、吹っ飛んでる暇はねえ!
だから、お前ら全てを殺し尽くして
命を背負って生きてやる!
●生命の咆哮
“現象”の嵐は今も尚、この地に犇めいている。
漆黒のポーシュボスの群れに囲われ、唯一の光は“人々”の目……四方八方より照らされているのは、唐桃・リコ(Code:Apricot・f29570)だった。
退路は既に無く、下手を打てば直ぐに強制帰還の運びとなるであろう状況下で、リコは己の胸に手を当てて呼び掛ける。
「こいよ、ポーシュボス。 オレがお前らをオレの力に変えてやる」
その言葉を“彼ら”が理解できたかは定かではないが、いずれにせよ『善』に餓えたモノにとって最早言葉は意味を成さない。
まるで渦巻きのように“人々”の群れはリコに迫り、侵蝕する身で絡み付いてくる。
“現象”はリコを捕らえて離さず、異口同音の叫びを上げた。
『殺シてクれ……』
『殺しテくレ!!』
脳に直接轟く絶叫は、リコの中にいる人狼の咆哮のように煩い。
巻かれた四肢胴体に気味の悪い痛みが走る、ポーシュボスがリコを同じ存在に変えようとして染み込んでくる感覚だ。
ぐらつく視界の先から、更に目を光らせたポーシュボスの群れが迫るのが見える。
……数は十分に引き寄せたと、リコは更に呼び掛けた。
「オレが食いつくせるか!? お前らにオレが殺せるか!
ちげえ! オレがお前らを殺して、喰らって、力にする者だ!」
理性すらかき消されそうな状況だが、それでもリコは反撃に転じる。
「(奪われない力を、オレに)」
『人』でいられる時間を代償にして、我が身の奥底から全力のHowlingを上げた。
――うるぅぅぅうあああああ!!
それは只の人狼咆哮ではなく、敵と識別したモノに一時的な麻痺状態を付与する力だ。
その力の反動は大きく、吼えるリコ自身の理性にもかなりのダメージを与え続けている。
それでもリコは懸命に堪える……血を吐くような咆哮の最中でも、喰らうと宣言した“人々”を見据えたまま。
「(オレには力を求める理由がある。
速く強くならなきゃいけねぇ理由がある……だから、吹っ飛んでる暇はねぇ!
だから、お前ら全てを殺し尽くして、命懸けを背負って生きてやる!!)」
――咆哮の果てに、嵐はついに止んだ。
麻痺の影響か、その場に重なりあって動かぬポーシュボスの群れは……やがてじわじわと溶けるようにして、消えていく。
変化の兆候を感じていたリコの四肢胴体も、嵐が去ったことでどうにか元のかたちを取り戻していた。
視界が晴れ、周囲には別の猟兵たちが戦い続けていたのだとリコは気付いた。
『邪悪ナる者』となった者、そして寄生を受け入れ狂気に蝕まれた者も、時間が立てば元に戻っていくだろう。
“現象”は淘汰された、ただ今は休息が必要だ。
身体の感覚をどうにか取り戻しながら、リコは目前に現れた転移の扉に歩を進めた。
大成功
🔵🔵🔵