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アポカリプス・ランページ⑱〜イビル・レッスン

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 邪悪が蠢く。
 オブリビオン・ストームの内部で無数のナニカが飛び回っている。
 あれは『フィールド・オブ・ナイン』の一席である、宇宙から現れたと思しき邪神。
 その名は『ポーシュボス』――これら無数の存在が全て『ポーシュボス』!
 フロリダのひとつの都市区域をまるごと覆い尽くすような超巨大オブリビオン・ストームの中の全て、全て、全てが『ポーシュボス』なのだ!

 ――ポーシュボス現象フェノメノン。
 ――人ガ怪物にナる現象ヲ、私は研究シてイまシた。
 ――ソれデも、気付ケなカっタ。そレを認識シた時、私ハ既にポーシュボスだッた。

 ――ポーシュボスは『善』ヲ喰らッて成長スる。
 ――邪悪ナる者ナらバ、ポーシュボスを殺セる。
 ――俺ハ凶悪犯罪者だッた。楽シみノ為に、何百人モ慰み者ニしテきタ。
 ――だガ……そレでモ駄目だッた!
 ――コの俺ニすラ、ほンの僅カな良心、善ノ心が何処カにアっタのダ!

 ――『世界を救う』為に戦う『邪悪ナる者』。
 ――不可能ダ、あリえナい。ポーシュボスを倒スこトはデきナい……。

 無数の意識が混線し、絡まり、うねり、正気を削り取ってゆく。

 ――誰カ助けテ! わタし、ワたシの赤チゃンを飲ミ込んデしマっタの!
 ――誰か助ケて! アの人トの大切ナ子供が、ワたシに食ベらレてシまウ!

 ――コこニいルよ、こコにイるヨ……まマ……!

 倒さなければ、この世界は滅びの一途を辿るだろう。

「フルスロットルを撃破する前に、なんとしてでも増殖するポーシュボス・フェノメノンを食い止めねばなるまい。心して挑め、人の子らよ」
 そう告げるのは、グリモア猟兵の蛇塚・レモン(白き蛇神憑きの金色巫女・f05152)に憑依する白亜の蛇神オロチヒメだ。
「彼奴らは罪なき民草に憑依し、善の心を喰らって新たなポーシュボスへと豹変させてゆく。猟兵の多くは善なる心を持って行動するものが多いであろう。故に、相性は最悪と推測される」
 だが、とオロチヒメは言葉を継ぐ。
「雲霞の如く押し寄せるポーシュボスの群れに寄生されず倒せるのは『純粋な悪の存在』のみなのだ。あるいは、ポーシュボスに寄生されながらも正気を手放さず戦う気概があるかどうか、であるが……さて、貴様らはどちらで戦場(いくさば)に臨むのであろうか? 恐らくは、ほんの僅かな善心でポーシュボス化が始まるであろうから、善性の権化たる聖なる者は特に気を付けよ。彼奴らの大好物であろうからな、それは?」
 オロチヒメは早速、フロリダ州タラハシー全域をすっぽりと覆うオブリビオン・ストームの中へ猟兵たちを転送し始める。
「よいか? 転送直後に憑依が始まりかねない。蛇神オロチヒメの加護があるとはいえ、ゆめゆめ油断するでないぞ?」
 今回ばかりは本気で危険だと念を押す蛇神に、猟兵たちは覚悟して決戦に臨む――。


七転 十五起
 厳しい戦いですが、倒さねば世界が間違いなく滅びに向かいます。
 真なる邪悪が邪神を殺すのか、憑依されても正義を貫くのか?
 なぎてんはねおきです。

●プレイングボーナス
『邪悪ナる者』になるorポーシュボス化してでも戦う。

●その他
 コンビやチームなど複数名様でのご参加を検討される場合は、必ずプレイング冒頭部分に【お相手の呼称とID】若しくは【チーム名】を明記していただきますよう、お願い致します。
(大人数での場合は、チームの総勢が何名様かをプレイング内に添えていただければ、全員のプレイングが出揃うまで待つことも可能です)

 それでは、皆様の熱い戦闘プレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『ポーシュボス・フェノメノン』

POW   :    ポーシュボス・インクリーズ・フェノメノン
【ポーシュボスによる突撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【新たなポーシュボス】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ポーシュボス・ナインアイズ・フェノメノン
自身の【全身の瞳】が輝く間、【戦場全てのポーシュボス・フェノメノン】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    ポーシュボス・デスストーム・フェノメノン
【オブリビオン・ストームの回転】によって【新たなポーシュボス】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レイ・アイオライト
ただでさえオブリビオン・ストームで騒がしいのにそれに加えて無数の慟哭の声とか騒音被害凄まじいんだけど。
喧しいのよ、他人の耳元で自分の不幸を叫ぶなっての。厚かましいにも程があるわよ。

とはいえ、このままこちらも呑まれる訳にはいかないわね。

邪悪なる者、ならあたしの内に存在してる。
UC発動。クラミツハ、出てきなさい。
待ちに待った殺戮の時間よ。

『とうとう殺せるのか!!クハハハハ!!好いぞ!我が力を以て蹂躙しよう!!嵐が鮮血に染まるまで、永久に!永遠に!!』

クラミツハに体を預けて、影を自在に操る力でポーシュボスたちを『暗殺・範囲攻撃・蹂躙』していくわ。

さっさと骸の海に還りなさい。



 レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)が転送されると、直後、彼女に襲いかかってきたのは凄まじい瘴気の風と有象無象の声だった。

 ――猟兵ダ! 猟兵ガ来タぞ!
 ――かワイそウに。アなたモ、ポーシュボスにナっテしまウのネ。
 ――助ケて! 助けテ! タすけテ!

 鼓膜ではなく、レイの頭の中に直接こ響いてくる怒り、憐憫、悲愴な声、声、声!
「ただでさえオブリビオン・ストームで騒がしいのに、それに加えて無数の慟哭の声とか騒音被害凄まじいんだけど……」
 魔刀・篠突ク雨の柄に手をかけながら、レイは苛立ちを隠さずに周囲で蠢くポーシュボス群体を睨み付ける。
「喧しいのよ、他人の耳元で自分の不幸を叫ぶなっての。厚かましいにも程があるわよ」

 ――オ前もポーシュボスにナってシまエ!
 ――イっショにアそボうよ、おネえサン?
 ――『善心』ノ気配がスルぞ。ポーシュボスは『善心』ヲ喰ラっテ増殖すル!

 レイは自分の身体の一部が、何かのチカラの働きで作り変えられてゆくのを目の当たりにする。
 既にポーシュボスの憑依が始まっているのだ!
「とはいえ、このままこちらも呑まれる訳にはいかないわね。こんな奴らの仲間入りなんて願い下げだわ」
 そう呟くと、レイはオブリビオン・ストームの中で目を閉じた。
「邪悪なる者、ならあたしの内に存在してる。……影憑・闇御津羽神(クラミツハ)、出てきなさい。待ちに待った殺戮の時間よ」
 次の瞬間、レイの肉体を侵食していたポーシュボスが強制的に体外へ弾き飛ばされたではないか。
 そして再び目を開けたレイは、かつてのレイとは全く異なる殺気を蠢く肉塊の群れへと向けてみせた。
『主殿よ、感謝するぞ! とうとう殺せるのか!! クハハハハ!! 好いぞ、実に好いぞ! 我が力を以て有象無象を蹂躙しよう!! この黒き嵐が鮮血に赤く染まるまで、永久に! 永遠に!! クハハハハハハハハ!!!!』
 レイの声とは全く違った声質で高笑いをするクラミツハ。
 影の神は魔刀を鞘から引き抜くと、突っ込んできたポーシュボスの1体を撫で斬りに伏せた。
『この手から伝わる感触! これぞ骨肉を断つという事ぞ! もっとだ、もっと斬らせろ!!』
 もはやレイは身体をクラミツハに完全に預け、自身は深層意識の奥へと引きこもっていく。
 人斬りのクラミツハの邪悪なる性質がポーシュボス化を防ぎ、目の間で輝きながら高速9連撃を繰り出すポーシュボス群体の身体を上下真っ二つに切り裂いてゆく。
『無駄なことを! いくら素早く攻撃してこようが、我が影縛りの前では無力なり!』
 その言葉通り、ポーシュボスの個体の目が輝いた瞬間、刹那に生まれた影が個体を縛り上げて連続攻撃を妨害してみせたのだ。
『この無尽蔵の骨肉! 響き渡る悲痛な慟哭! それを全て我が好き勝手に蹂躙できるとは、至極愉悦なり!! クハ、クハハ……クハハハハハハハハ!!』
 影が舞う度に嗤い声が刃と共に嵐の中を駆け巡る。
 斬殺されたポーシュボスから舞い上がる血霞が、クラミツハの全身を真紅に染め上げてゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
アハハなるほど純粋な悪の存在ですか?ならボクがぴったりですねぇ~
だってボクはもう悪堕ちヘドロ怪人ですからねぇアハハハ
さあ景気付けにヨダレを撒き散らして辺り一帯をヘドロの海に変えてあげましょうか
オブリビオンストームに猛毒ヘドロの海まさに邪神と邪悪ナる者の決戦の舞台に相応しい戦場です
もう加護は失われましたがこの妖刀の切れ味は鋭いですよ
アハハさあズタズタにしてヘドロの海に沈めてあげますよ
もうこの世界に神など不要なんですよアハハハ



 オブリビオン・ストーに腐臭が蔓延する。
「アハハなるほど純粋な悪の存在ですか? ならボクがぴったりですねぇ~」
 青く染まった肌から溢れ出る猛毒性のヘドロが暴風に乗って拡散してゆく。
 そこへ突っ込んできたポーシュボス群体は、どういうわけか一瞬で溶解して嵐の中で飛沫となって飛んでいってしまう。
「だってボクはもう悪堕ちヘドロ怪人ですからねぇアハハハ!」
 ニクロム・チタノ(反抗を忘れた悪堕ちヘドロ・f32208)はかつての崇高な矜持を失い、ヘドロ人間へと改造されてしまった邪悪ナル者だ。
 これまでも様々な任務に参加して役目を全うしてきた彼女だが、正直、周囲をヘロド化することしか考えていないので果たして貢献できているかどうか。
「さあ景気付けにヨダレを撒き散らして辺り一帯をヘドロの海に変えてあげましょうか。オブリビオンストームに猛毒ヘドロの海。まさに邪神と邪悪ナる者の決戦の舞台に相応しい戦場ですね、アハハ!」
 汚らしく口元から垂れ流すニクロムのヨダレは、触れただけで腐食してヘドロ状に変えていく危険物質だ。
 そこへポーシュボス群体は突っ込んでくるものだから、さながら集団自殺めいた狂気を感じる。
 更に、手入れも怠って久しい妖刀を鞘から引き抜いてみせるニクロム。
「アハァ……もう加護は失われましたがこの妖刀の切れ味は鋭いですよ、試してみますかアハハハ!」
 グズグズに半壊してゆくポーシュボス群体へ刃を叩き付けて潰すように斬り刻み始める。
 骨まで液状化してしまうポーシュボス群体を、ニクロムは近付くだけで嘔吐必至な強烈な悪臭を発散しながら妖刀を何度も突き刺してゆく。
「アハハさあズタズタにしてヘドロの海に沈めてあげますよ、もうこの世界に神など不要なんですよアハハハ」
 その言葉は、自身を見捨てた反抗の竜への恨み言のようにも聞き取れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アハト・アリスズナンバー
狂気による戦闘……私の得意分野でもありますね。
邪悪なる者にはなれませんが、その身をポーシュボス化してでも私を見失わないようにしましょう。

基本的には狂気耐性を使ってポーシュボス化しながら正気を維持して戦います。
ポーシュボスの突撃はドローンによるリアルタイム通信で動きの予兆を見て、見切りとダッシュで避けつつ、カウンターでユーベルコードによるランスチャージで迎撃しましょう。
確かに今の私はポーシュボスかもしれない。けれど替わる姿でも、変わらない心があれば。それはアハト・アリスズナンバーだから。



 アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)は転送直後から肉体に伝わってくる違和感に顔をしかめながら、突撃してくるポーシュボス群体を回避し続けていた。
「狂気による戦闘……私の得意分野でもありますね。邪悪なる者にはなれませんが、その身をポーシュボス化してでも私を見失わないようにしましょう」
 既に自身の周囲は360度全方位にドローンを配置済み、アリスズナンバーネットワークによるリアルタイム演算をフル活用することで、突っ込んでくる敵の方角や角度、速度を瞬時に把握するアハト。
「――そこです」
 アハト専用にカスタマイズされたアリスズナンバー仕様のアリスランスを宙返りしながら敵を刺し貫いてみせた。
 やることは単純、ひたすら回避ししてからのカウンターのみ。
「あの突撃を食らうと、新たなポーシュボスを私に向けて撃ち込んでくる、つまり私の肉体の侵食速度が跳ね上がるということ。当たるわけにはいきませんね……」
 回避、刺突、回避、刺突と機械的に繰り返してゆくアハト。
「チェックメイト。貴方はもう詰んでます。アリスオブゲームエンド」
 ぞぶり、と邪神のコアと思しき部位を刺し貫いて絶命させたアハト。
 だがその身体の足先が、片腕が、漆黒の皮膚と輝く目へと変貌を遂げてゆく様に、アハトは焦りを覚える。
「やはり、邪悪なる者になれない私ではここまでが限界のようですね……」
 自身の身体の変化を認識した瞬間、アハトのポーシュボス化は一気に加速していった。
 もはや首から下は完全にポーシュボスと成り果て、蠢く名状しがたき肉体を自身の意識で動かす感覚に自嘲すら漏れる。
「……確かに今の私はポーシュボスかもしれない。けれど替わる姿でも、変わらない心があれば――」
 完全に変化してしまう瞬間まで、アハトは異形の身体でポーシュボス群体を1体でも多く刺殺させてゆく。
 そしてアハトは確信めいて宣言した。
「魂のアり方ハ、私自身デす。そレが、アハト・アリスズナンバーだカラ……」
 遂に顔も完全にポーシュボス化を終え、アハトの肉体は漂うポーシュボスの群れの仲間入りを果たしてしまった。

「リスポーン完了。マザー、それにグリモア猟兵、ご助力感謝します」
 オブリビオン・ストームの外でスペアの肉体に魂と記憶を移し替えたアハトが転送されてきた。
「ひとまず、群れの数は減らせましたか。元私の肉体を置き土産にする事になってしまいましたが、致し方なしですね」
 あの黒い嵐の中に、自分だった異形の存在がいる……。
 そう思うと途端に薄気味悪くなってきたアハトは、気を紛らわすために煙草を咥えて火を付けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒柳・朔良
善に寄生する狂気が、ポーシュボス・フェノメノンの正体か
寄生されずにいられるのは純粋な悪のみというが、ほんの少しでも善の心が入るとそこから寄生される恐れがあるようだな
狂気の中での戦いは慣れているが、さすがにこれは厳しいものがあるだろう

ならば、その狂気に身を任せてみるのも一つの手ではあるか
私が狂気にのまれ瀕死となったら、選択UCの影人形や触手達が無慈悲に敵を殲滅することとなる
その様を見ることが出来ないのは残念ではあるが、あとは影人形や触手達に任せるとしよう



 黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)はポーシュボス群体が蠢くオブリビオン・ストームの中で思考を巡らせていた。
(善に寄生する狂気が、ポーシュボス・フェノメノンの正体か。寄生されずにいられるのは純粋な悪のみというが、ほんの少しでも善の心が入ると、そこから寄生される恐れがあるようだな)
 事実、黒柳の肉体もポーシュボス化は始まっている。肌は黒く染まってゆき、タコやイカのようにブヨブヨとした皮膚の感触のそれに変わっている。そこから裂けるように出現した無数の黄色く発光する目が、彼女の顔をあざ笑うかのように見詰めてくるのだ。
(なんとおぞましい光景だろうか。狂気の中での戦いは慣れているが、さすがにこれは厳しいものがあるだろう)
 突撃してくるポーシュボス群体を掻い潜りつつ、黒柳は思考を深めてゆく。
(ならば、その狂気に身を任せてみるのも一つの手ではあるか)
 すると、黒柳は突っ込んできたポーシュボス群体の突撃を回避せずに受け止め始めたではないか。
 
 ――お前モ、俺タちにナるんダ!
 ――イッしョにポーシュボスへト変ワろうヨ!
 ――善心を寄越セ! 喰ラってヤルぞ!
 
 体当りされた黒柳の体内に、新たなポーシュボスが侵食してゆく。
 攻撃を受け止めるたびに、彼女の思考にポーシュボス化してしまった人々の慟哭が混線してくる。
 肉体と精神を同時に結ばまれてゆく黒柳は、ある確信を得ていた。
(完全にポーシュボス化ガ進んダ私ハ、人間とシて瀕死ノ状態と言エるだロう)
 それは彼女にとって、都合のいい条件だ。
 瀕死になることで発現する、黒柳の切り札。
 それは……。
「影法死:慈悲なき残酷な復讐者(カゲホウシ・マーシレスアベンジャー)」
 周囲の影から無数の影人形と影の触手が召喚され、突っ込んできたポーシュボス群体を斬り刻み始めたではないか!
「思ッたトおりダ。私ガ狂気にノまレテ瀕死トなッたラ、影人形ヤ触手達ガ無慈悲に敵ヲ殲滅スるこトとナる」
 それは自身がポーシュボス化しても永続的に効果が続くユーベルコードだ。
(アぁ……もウ、自我ガ消失シそうダ……最後まデ見届ケるこトが出来ナいのは残念デはアるガ、あトは影人形や触手達ニ任セるとシよウ。ポーシュボスが滅べバ、私モ元に戻ルはズだカら……)
 こうして、自我を手放した黒柳は完全にポーシュボス化してしまった。
 だが、彼女の呼び出した影人形と影の触手達は主人の命令を忠実に遂行し続け、事態が収束するまで黒柳以外のポーシュボス群体を斬り伏せ続けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
機神搭乗
やれやれ…善なる心の塊であるカシムさんには厳しいですね
「善なる神なメルシーも怖いんだぞ☆」(突っ込み不在の恐怖

ポーシュポス化しつつも耐えつつ叩き潰す

【医術】
体の状態把握
「メルシーを汚染とか許さないぞ☆」
我を強く持てよメルシー
最強無敵のカシムさんはどうあろうとカシムさんだ!

「あれー?思ったほど浸食速度早くないや☆」(やはり悪属性な二人だった

【情報収集・視力・戦闘知識】
敵陣の動きと殲滅しやすい動きの把握
UC発動
【属性攻撃・念動力・弾幕・スナイパー】
念動障壁を纏って飛び回り火炎弾乱射で焼き払う
【二回攻撃・切断・薙ぎ払い・浄化】
ちっ…金目にもならねーってか
鎌剣で薙ぎ払いつつ浄化!
速攻で仕留める



 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)が転送完了と同時にオブリビオン・ストームの中で蠢くポーシュボス群体を見て、思わず顔をしかめた。
「やれやれ……善なる心の塊であるカシムさんには、今回の任務は厳しいですね」
「善なる神なメルシーも怖いんだぞ☆」
「おっ、そうだな(迫真)」
 相棒のメルシーの発言をカシムはスルーする。
 ツッコミ役がいないと、こんなにも空気が凍りつくのですね。
 これにはポーシュボス群体もだんまりを決め込んでしまう。
「さて、そろそろ僕の善良すぎる心身がポーシュボスに憑依される頃合いですね。おいメルシー! 自我を強く持てよ!」
「メルシーを汚染とか許さないぞ☆」
「その意気です! 最強無敵のカシムさんはどうあろうとカシムさんだ! さあこいポーシュボス!」
「バッチコーイ☆ バッチコーイ☆」
 カシムとメルシーが煽り立てるのだが、一向に体の変化が起こらないことに2人は首を傾げた。
「あれー? 思ったほど浸食速度早くないや☆」
「というか最初から侵食されている気配がないんですが?」
 2人の脳裏に、ある事案がふっと浮かび上がる。
「……いやいやまさか! この最強でハンサムな天才魔術義賊のカシムさんが邪悪判定をくだされるなんて、そんな!」
「メルシーだってこんな可愛くてか弱いだけの雌雄同体な美少女なのに、邪悪なわけないよねー☆」
「「ねー?」」
 カシムとメルシーが声を合わせた次の瞬間、ポーシュボス群体の声が2人の頭の中に響いてきた。

 ――自分達ヲ善良だト騙ル下種野郎共がイルぞ!
 ――涼しイ顔をシて、いとモたヤスくエげつナイ行為を繰り返ス極悪非道ナ連中!
 ――ハヤくケツを守レ! 掘らレるゾ!
 ――下半身ガ大脳皮質と直結しテるド変態だワ!

「おいてめーら、もはやそれ悪口ですよね?」
 カシムさん、笑顔でマジギレです。
「おうおう☆ そんなにお望みならケツ出せよ☆ トぶぞ☆」
 腰を前後させるメルシーにスイッチが入ってしまった。
「♪ドッキングドッキーング! ダンストゥナイ☆ ウオーイ(笑) ドッキングダンスッエンッブギーバック! トゥゥゥ(↑)ナァァァァァ(↑)イイイイっ☆」
 謎のダンスと歌を披露しながら、ジュルリと舌なめずりするメルシーは、もはやポーシュボスよりも邪神らしい。
「え? お前、あの名状しがたきヤツでもイケるクチかよ? お前の性癖パネェですね??」
 その相棒の様子にカシムはドン引きしていた。
 シリアスな空気なんて知らねぇ!と言わんばかりに、メルシーが真っ先にポーシュボス群体を襲いかかった!
「ヒャッハー☆ もう我慢できない☆ 『速足で駆ける者(ブーツオブヘルメース)』ぅぅぅぅ!」
「ちょ待てよ!(某有名アイドル口調) 勝手にユーベルコード発動させんなっつーの!」
 カシムとメルシーはマッハ33の最高速度を維持したまま、オブリビオン・ストームの中を縦横無尽に駆け抜ける!
「9連続攻撃? おっそーい☆ こっちはその間に3倍の数の攻撃(意味深)ができちゃうぞ☆」
「「アッー!!!」」
 メルシーにヤられたポーシュボス群体は、次々と体内から発火して燃焼してしまう!
「摩擦と超高熱ビームのおかげで、体内から燃焼系だよ☆」
 一応、万能魔術砲撃兵装『カドゥケウス』での火炎弾を浴びせているのだが、問題はその使用方法がアレ過ぎて【見せられないよ!】なのだが。
(……てか、カドゥケウスの格納場所ってそこなのか。今まで僕はあいつのアレを握りしめていた……? いやいや、ご冗談を……)
 カシムは二度見してしまった。
「うん、僕は何も見てないからな!?」
 カシムはメルシーの悪辣非道な行為に目を逸らしつつ、自身の周囲に念動障壁を纏って敵の連続攻撃を弾き返していた。
「ちっ、ドロップアイテムはなしですか。金目にならない敵に用はねーですよ!」
 カシム、そういうところだぞ?とポーシュボス群体は無言でツッコミを入れる。
「メルシー、ハルペーを借りるぞ!」
「もちろんだよ!(王者の風格)」
(ばきゅんばきゅん!)
 ……ナムアミダブツ!
「やりますねぇ!」
 死屍累々のメルシー側にカシムは更にドン引きしていた。
「てか、この僕をよくも邪悪判定しやがって! カシムさんは良い子なのでポーシュボスを世界平和のために滅ぼします! ほら良心だぞ、かかってこいよ! いやかかってきてください、お願いします憑依してくださいよ何でもしますから!」
 一向にポーシュボス化が起きないカシムの身体。
 彼は最後の方は半泣きになりながらポーシュボス群体をメッタメタに鎌剣で切り刻んでいくしかなかった。
「僕は邪悪な盗賊じゃなああぁぁぁぁいっ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

バーン・マーディ
邪悪ナル者になる

今ひとたび我が善…我が正義を封じるとしよう

目の前が善を喰らうもの…即ち善…正義であるならば
ヴィランとして粉砕するのみだ
(狂戦士化

【戦闘知識】
狂気に染まっても戦いの経験と知識は変わらず敵陣を見据え効率的に殲滅する立ち回りを把握

【オーラ防御・属性攻撃】
炎のオーラを展開
UC発動
【武器受け・カウンター】
敵の攻撃は受け止め反撃の刃で切り捨て
【二回攻撃・怪力・鎧破壊・鎧無視攻撃・切り込み・吸血・生命力吸収】
…ああ
正義…正義正義正義…!
許さん…全ての正義よ…滅べ
消え失せろ…!
絶対に許さぬ…!(意識は憤怒と怨嗟と慟哭に塗れ周りの敵を須らく破壊する狂戦士。何故許せぬかという理由も今は忘れている


ティエル・ティエリエル
わわっ、うにょうにょしてて気持ち悪い敵だ!
悪い子じゃないとボクもあんなうにょうにょになっちゃうのか……
おやつをつまみ食いするくらいじゃきっとダメだよね……うへー。

悪い子作戦はきっとダメだから、ポーシュボスになり切る前に速攻で攻撃しちゃうぞ☆
転送された瞬間から加速して加速して【お姫様ペネトレイト】で一気にポーシュボスまで突撃だ!
邪魔するポーシュボスもお姫様オーラではじいたり、そのまま突き抜けたりして止まってやらないぞ☆

ポーシュボス化はママが持たせてくれた「お守りの宝石」のおかげでちょっとくらいは軽減されないかな?

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



 バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は今、己の正義を捨てる。
「ポーシュボス化……目の前が善を喰らうもの……即ち善……正義であるならば、悪としてヴィランとして、我はただ粉砕するのみだ」
 ヴィランズ・ジャスティス……ユーベルコードを行使したバーンの肉体が真っ赤なオーラに包み込まれると、超音速で骸の嵐の中を飛び回り始めた。
 その姿はまさに荒ぶる神、狂戦士!
 赤いオーラは炎の気質を宿しているため、突撃してくるポーシュボス群体をまとめて焼き払ってみせる!
「すごーい! あれが邪悪なる存在なんだね☆」
 バーンとほぼ同時に転送させてきたティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は、彼の禍々しい戦闘に目を奪われていた。
「って、見れば見るほどうにょうにょしてて気持ち悪い敵だ! 悪い子じゃないとボクもあんなうにょうにょになっちゃうのか……おやつをつまみ食いするくらいじゃきっとダメだよね……うへー」
 そうこう言っている間に、ティエルの足元からウネウネとした触手が生え始める。
「わーっ! やっぱり悪い子作戦じゃだめだった! こうなったら、ポーシュボスになり切る前に速攻で攻撃しちゃうぞ☆」
 ティエルはすかさずユーベルコードで突撃を開始、バーンを追いかける!
「むむむっ! あの悪の神様っぽい人がやっつけたポーシュボスの傷が癒えてるよ? そっか! これがブリーフィングで言ってたポーシュボスのユーベルコードのひとつ、ポーシュボス・デスストーム・フェノメノンなんだね☆」
 それはオブリビオン・ストームの回転を利用して、ポーシュボス群体の傷を癒やして再行動させる恐るべき現象なのだ!
「そうはさせないぞー! この『お姫様ペネトレイト(プリンセス・ペネトレイト)』でこのまま体当たりで貫いちゃうぞ☆」
 ティエルは輝くオーラを身に纏い、彗星のごとく曳光を残しながらポーシュボス群体をレイピアで貫通してみせる!
「うりゃりゃりゃーっ☆ ボクが完全にポーシュボスになる前に、敵を全部倒しちゃうぞー! って、あれ? なんだか侵食が遅いっぽい?」
 善心を持つティエルは、本来なら一気に侵食されてもおかしくないはずだ。
 だが、彼女のは別のチカラで守られている感覚をずっと察知していた。
「もしかして……!」
 ティエルは懐に忍ばせていたお守りの宝石に手を伸ばす。
 すると、ポーシュボス化していた肉体が、瞬時に元へ戻ったではないか!
「す、すごいや! ……ママ、守ってくれてありがとう……!」
 この宝石は、ティエルが故郷である妖精の国を飛び出すときには既に持ち物の中に入っていたものだ。
 彼女の母親……妖精国の王后が、ひっそりとティエルの鞄の中に入れておいた守護の輝石である。
 今、その母の愛が娘の窮地を救うために奇跡を体現してみせた。
「よーし! もうポーシュボスなんて怖くないぞー☆」
 元気いっぱい、勇気1000倍!
 ティエルはバーンに並びながらランデブー飛行!
「みんな、ボクが倒しちゃうぞ!」
 勇猛果敢に突撃するティエルはまさに一騎当千!
 これに負けじとバーンは魔剣『Durandal MardyLord』を振り乱す。
「……退け!」
 突っ込んできたポーシュボスの1体を正面から斬り捨てると、背後から飛んできた個体へ刃を振りかぶってボトルネックカット!
 四方八方から押し寄せるポーシュボス群体を、バーンはオーラで焼き捨て、刃で叩き切り、その拳で粉砕してみせた。
「……ああ、正義……正義正義正義……! くだらぬ、許さぬ………全ての正義よ……今ここに滅べ! 消え失せろ……! 絶対に、絶対に許さんぞ……!」
 怒り狂ったバーンの八つ当たりめいた猛攻撃に、ポーシュボス群体は肉塊に変わるほかない。
 だが、バーン自身、なぜこれほどまでに正義を憎悪しているのか……その理由などとうに忘れてしまっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

岩永・勘十郎
「今回ばかりは相手が悪かったなぁ。同情するよ」

純粋な残虐性を隠し持つ勘十郎には寄生する隙が無い。
勘十郎は敵に対し、肌が裂かれるような感覚に陥る程の【殺気】を出して【恐怖を与える】。

「いざ参る!」

もう楽しくて仕方ない。敵の攻撃も【瞬間思考力】で【見切り】、【受け流し】ながら敵の急所をワザと外すように斬りつけていく。痛みに悶え、反撃してくる、そのサマを見ている。猫が鼠を嬲り殺しにする時のように。

「どうした? その程度か?」

敵を【挑発】しながら【第六感】や【読心術】で動きを察知し、回避していく。【幸運】すらも無理やり味方に付けるような、そんな悪意に満ちた笑みを見せながら。

「お前の悪意は至って単調だな。そろそろ飽きた」

トドメを刺すべく、UCを発動した状態で敵の存在や魂その物を斬り裂くべく、大きく構え【怪力】に任せた大振りで敵を斬り裂いた。

「邪悪だの悪意だの……お前さんのそれは不純物だらけ。悪意とは純粋でないとな」

と言い残し、ゆっくりと刀を鞘に納めて。


インディゴ・クロワッサン
あは★ 僕向きの依頼じゃん!
「邪神殺せるの!? うわぁ…本ッ当に楽しみだなぁ…♪」

激痛含む各種耐性を発動させながら転移してきたけど…キーキー五月蝿ぁい…(殺気
「消えてよ」
愛用の黒剣:Vergessenを力溜め/鎧砕き/鎧無視攻撃/なぎ払い/範囲攻撃/衝撃波で振るって、喧しい奴らを一掃だー!(蹂躙/2回攻撃
勿論、喧しい声は無視!
って言うか雑音だし、気にしない気にしなーい!
敵の攻撃は、可能な限り見切って残像で避けたり、鎖付きの短剣:Piscesを使ったロープワークで回避してたら
「あっはは! 楽しくなって来ちゃった!」
UC:暴走覚醒・藍薔薇纏ウ吸血鬼 を使って、三対六翼で飛び回りながら理性消し飛ばして殺しまくっちゃうぞー!
勿論、怪力で引き裂いたり、耐久力にモノを言わせて武器受けしてからカウンターでVergessen振るって斬り裂いたりとか、噛みついて吸血しながら生命力を吸収したりするのもアリかな!
あ、破魔を纏った藍染三日月(サムライブレイド)を投擲して浄化しちゃうのもありかもね!



 オーバーロード。
 それは、猟兵達が獲得した新たな力。
 己を『超克』し『無限の可能性』を得ることで、即座に真の姿を曝け出すことができる上に普段以上に行動することができる。
 そんなオーバーロードを引っさげ、ポーシュボス・フェノメノンに身を投じる猟兵がいた。
「今回ばかりは相手が悪かったなぁ。同情するよ」
 岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)の本性は、純粋な残虐性を有する『人斬りの才能』を発揮する剣豪だ。
 普段は気さくな岩永だが、それすらも世間を欺く仮の姿なのだろうか、曝け出した真の姿と思しき様相からは、肌が裂かれるような感覚に陥る程の殺気を惜しげもなく解き放っており、それは邪神でさえも身を竦ませる程の恐怖を与えていた。
「どうした? わしが恐ろしいか? ならばその判断は“正常”だ。存外に邪神とは人間臭いものなのだな」
 その独白に、傍らで黒い直剣の刃先を指で弄ぶ青髪ダンピールの青年が同意の言葉を述べた。
「だよねー? てか邪神殺せるの!? あは★ 僕向きの依頼じゃん! うわぁ……本ッ当に楽しみだなぁ……♪」
 インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は無邪気に笑いながら、愛用の黒剣:Vergessenの柄を力強く握り締めた。
 まるで童子が道端で捕まえた昆虫の足を引きちぎって反応を見て遊ぶように、インディゴもまた今から斬り刻む邪神の群れの手応えにワクワクと胸を高鳴らせる。
 2人に共通することは『無邪気な殺意』である。
 これに善性はもちろん、悪性ももしかしたらないかもしれない。
 しかし、だからこそ無垢なる邪悪と呼べる存在として、ポーシュボス現象を拒むだけの悪性を2人は有していた。
「なぁんだ、憑依されてどんだけ痛い思いするか覚悟して転移してきたのに、何も起きないねぇ。それに……さっきからキミたち、キーキー五月蝿ぁい……」
 インディゴも押し潰すような強い殺気を周囲へ発散させてゆく。
「それじゃさ……消えてよ」
 真の姿を曝け出したインディゴは、背中に生えたコウモリの翼を羽ばたかせて嵐の中を自在に飛翔し始めた。
 その後を追うように岩永も群体の中へ突っ込んでゆく。
「いざ参る! 万有を返す!」
 アポカリプスヘルの世界の材料のみで鍛えた業物『兗州虎徹』を鞘走らせれば、襲ってくるポーシュボスの群体へ暴風めいた斬撃を繰り返してゆく。
 しかしポーシュボスの群体の身体に傷一つ付かない。
 奇妙な事だが、決して岩永の振るう達がナマクラというわけではない。
 彼が斬るのは、ポーシュボスという“邪神の定義・概念”そのものだ。
「お前の本質は悪意、しかも善心を喰らって丸々と肥大しているときた。ならばこの太刀で少しずつ削ぎ落としてやろう」
 岩永は“わざと”急所を外し、ポーシュボスという概念を少しずつ斬り裂いてゆく。
 肉体を貫通してポーシュボスの本質を断ち切ってくるため、新たに飛び出してくるポーシュボスも岩永の太刀で斬られた途端に現世できなくなってしまい消失してゆく。
「……あは」
 思わず岩永の顔が喜びで綻ぶ。
「どうした? その程度か? 臆せずに突っ込んでくるがいい」
 ポーシュボスの群体を誘い込み、紙一重で回避し続けては敵の肉体の中に含む邪神の本質だけを斬り捨てる。
 幸運を無理やり味方に付けるような、そんな悪意に満ちた笑みを見せながら、ひらり、ひらりと風に揺れる柳の葉めいて身を翻す。
 そうしてすれ違いざまに斬られたポーシュボス個体は、風船が萎びるように消失してゆく。
 その様子を岩永は一瞬たりと目を離さない。
「――もう楽しくて仕方ない! 子供の声がする奴は母親の名を叫んで消えた。そっちは恋人の名か? 案ずるな、お前さん達はもはや人に非ず。今更、愛しい人の何を叫んだところで、無意味で無価値だ」
 煽るように語りかける岩永。
 その反応を観察している。
 その感情を惨殺している。
 まるで、猫が鼠を嬲り殺しにする時のように。
 岩永は邪神ですら自身の愉悦を満たすための玩具にしているのだ。
 これにインディゴも子供のように笑って頷いている。
「ホント、なんだか楽しくなってきちゃった! 喧しい奴らを一掃だー! って言うか敵の声は所詮雑音だし、気にしない気にしなーい!」
 鎖付きの短剣:Piscesを用いたチェーンキリング!
 一体に短剣を突き刺し、伸ばした鎖を別個体に絡めて締め上げる。
 短剣と鎖から骨肉が潰れる感触がインディゴに伝わるたびに、彼はゲームで高得点を獲得したような高揚感を得てゆく。
「あっはは! トリプルコンボだー! このまま最高連鎖数を稼いじゃおっと!」
 途切れることのない連撃でポーシュボスの群体を切り捨ててゆくインディゴの姿が更に変身してゆく。
「真の姿をパワーアップ! 藍薔薇を纏う三対六翼のヴァンパイアとは僕の事だー!」
 インディゴはその言葉を最後に、理性を手放した。
 その代わり、凄まじい反応速度と超攻撃力を獲得!
 神風特攻めいたポーシュボス群体は、強化されたインディゴの格好の標的だ。
 なにせ高速で動くものを自動攻撃するのだから、突っ込んできた敵など単純な膂力で頭から真っ二つに引き裂いてしまう!
 更に強化された防御力は邪神の群れの体当たりを弾き返し、純粋な悪性を前に憑依を許さない。
「■■■■■■■■■■■――ッ!!」
 インディゴの絶叫とともに振り下ろされた黒い大剣から、オブリビオン・ストームにも匹敵するほどの巨大な衝撃波が放たれた!
 オブリビオン・ストームは内部で発生した衝撃波で気流の流れが遮られてしまう。
 軌道上の邪神の群れは跡形もなく爆散し、形を留めた邪神もインディゴの吸血衝動の前では餌に成り下がるだけ。
 邪神の血を飲み干して更に戦闘力を高めるインディゴに、岩永も己の悪性を証明するために剣を振るう。
「どうした? その程度か? お前の悪意は至って単調だな。そろそろ飽きた」
 弱まった嵐の中心部、ポーシュボス中心部にひときわ大きな個体が居座っている。
 あれが……このポーシュボス現象の中核!
「そろそろ終いにしようか。消え失せろ、六道・龕灯返しの太刀――!」
 岩永の純粋な悪意の刃が、ポーシュボス現象の核を一刀両断!
 更に!
「うがああァァァーッ!」
 インディゴが藍色を基調とした刀を全力で投げつければ、核に生えた目玉を貫通!
 次の瞬間、嵐は止み、全てが幻だったかの如く消失していった。
「邪悪だの悪意だの……お前さんのそれは不純物だらけ。悪意とは純粋でないとな」
 ゆっくりと刀を鞘に納めた岩永の顔は、とても満足げに口端が釣り上がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月21日


挿絵イラスト