アポカリプス・ランページ⑭〜戦車巨獣マウス!
「超重戦車といいますか、超獣戦車といいますか……」
なにやら悩ましげに言いながら、化野・那由他(書物のヤドリガミ・f01201)は額を押さえて首を振った。
マザー・コンピュータに掌握されたバトルクリーク市の廃墟にて、暴れまわる者がいるというのだ。
街は崩れかけたビルや瓦礫に溢れ、まさに廃墟都市といった様相を呈している。
「マザー・コンピュータに量産された戦車獣は、都市を闊歩し……そのうちの一部が共食いを繰り返しました。そして最も強力な核となるオブリビオンを吸収していた個体が、生存競争に勝って、巨大化してしまったのです」
それは戦車獣を超えた、戦車巨獣である。
「核となっているオブリビオンは、自律型実験生命体・救鼠……」
汚染耐性の研究のために改造されたと云う聡明な巨大鼠も、今は戦車獣の核にされて、戦車巨獣『マウス』を構成する要と化している。
「マウスの大きさは現在、全高7メートル。2階建てのビルより少し高いくらいですが……」
戦車巨獣マウスは救鼠の姿をそのままメカニカルにしたような外見を持つ。
汚染物質を撒き散らし、自己改造による巨大化さえやってのける強敵である。
「装甲内部にまで届く強力な攻撃を行えば、核となった救鼠を倒せるに違いありません」
核にされた救鼠を撃破できるならば攻撃の方法は問わない。
火力を集中させても、装甲の下にまで響く痛打を与えても良いだろう。
「内部の救鼠を撃破できれば、戦車巨獣マウスは崩壊することでしょう……」
狂気と毒に侵された巨大獣戦車。
これを止められるのは、猟兵しかいない!
相馬燈
ネズミ……戦車……ハッ!?
……みたいな電撃が走った相馬燈です。
今回のプレイングボーナスは下記の通りとなります。
『プレイングボーナス……戦車巨獣の核となっているオブリビオンを攻撃する』
廃墟都市で巨大なメカアニマルとのバトルが繰り広げられることとなるでしょう。
それでは、良い戦いを!
第1章 ボス戦
『自律型実験生命体・救鼠』
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POW : 自律型自己改造実験
【時間経過で進行する自己改造で新たな形態】に変身する。変身の度に自身の【頭部と脚】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
SPD : 研究試料活用
【研究用の人為的変異】【収集した環境汚染物質】【その身で培養した疫病】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : 始まりの願い
自身の【創造主の目的たる変異治療、汚染耐性の研究】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「名張・辿」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ニクロム・チタノ
おやおやとても大きなネズミですねぇ?これ以上パワーアップされても困りますしなんとかここで倒しておきたいですね?
まずはヨダレを撒き散らしてこの辺り一帯をヘドロ化させましょう
汚染耐性があるので猛毒なんて気にせず突っ込んで来ましたねしかし・・・
アハハハ見事にヘドロの深みに嵌まってくれましたね、最初からこれが狙いだったのです
どうですか身動きできないでしょう?そしていくら汚染耐性があっても至近距離から猛毒ヘドロを核に集中砲火されれば持たないでしょう!
さあ覚悟してくださいねこれ以上強化されたら困るので害獣は駆除しておかなければ
「ヂィィィィィィィィィィッ――――!!」
廃墟都市に戦車巨獣の絶叫が木霊する。
機械化された異形の巨大ネズミとも言うべき哀しき怪異の成れの果ては、紅く輝く目を光らせながら、荒れ果てた街を暴れ狂う。
「おやおや、とても大きなネズミですねぇ?」
暗雲立ち込める天から舞い降りるように転移してきた異体の少女が、崩れたビルの鉄骨の上に着地して言った。
青い体に、陶然とした赤い瞳を持つヘドロ怪人――ニクロム・チタノ(反抗を忘れた悪堕ちヘドロ・f32208)は、機械の巨獣を前にして、唇に人差し指を触れさせる。
つ……と涎が指に糸を引き、少女はその指を眼前の戦車巨獣に向けた。
「これ以上パワーアップされても困りますし、なんとかここで倒しておきたいですね?」
たえず悪臭を放つニクロム――その臭気を機械化された嗅覚で感知したのか、ネズミ型の戦車巨獣が両目をニクロムに向けた。
空気を震わせて轟く、機械鼠の叫声。
「汚染耐性があるのでしたか。さてどれほどの毒に耐えられるのでしょうね」
ニヤと口の端を吊り上げたニクロムの赤々とした舌を、とめどなく涎が伝い落ちる。
およそ信じがたい量の流涎は、彼女が人間を辞めた悪堕ちヘドロ怪人であることを如実に表していた。
その口から無限に溢れるニクロムの体液は、猛毒を含有し、瞬く間に円状に広がって周囲をヘドロの沼へと変えていく。
汚泥に沈みゆく崩れたビル。
その鉄骨を足場にして、凄絶に笑うニクロム。
それを前にしても戦車巨獣マウスの進撃は止まらなかった。
汚染耐性の研究のため作り出されたという実験生命体――それを核とする機械の怪物は、脚部を猛毒のヘドロに塗れさせながらも突進してくる。
「猛毒なんて気にせず突っ込んで来ましたね……しかし」
「ギィエエエエエエエエ!!」
猛然と突撃してきた戦車巨獣は、しかし、沈み込むようにしてヘドロの沼の中で暴れ始めた。
「アハハハ見事にヘドロの深みに嵌まってくれましたね、最初からこれが狙いだったのです」
ニクロムは両手の先から猛毒のヘドロを噴射し、踊るように、至近距離から巨獣を責め立てる。
泥濘に脚を取られれば、如何に巨大な機械の獣と言えど機動力の低下は免れない。
そして機械の体躯の隙間からヘドロが入り込み、許容範囲を超えた毒物に、核たる救鼠も苦鳴をあげはじめた。
毒に満ちた汚泥の中でもがく戦車巨獣が、おぞましい音をたてて新たな頭部を生み出し、その体をいびつに膨張させていく……。
「……これ以上強化されたら困るので、害獣は駆除しておかなければ」
長期戦になればなるほど、眼前の戦車巨獣は手のつけられない大怪物と化すだろう。
猛毒のヘドロを噴射しながら、ニクロムが巨大な機械の獣を責め苛む。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
共食いする戦車って、一体何を考えて作ったんだと聞いてみたい
まあ、実際共食いした結果強い個体が生まれて防衛の役に立っている訳だから、そういう目的だったのかもしれないが
にしても、装甲内部を貫いてなんとか倒すには……どうしたものかね
神刀の封印を解除して、神気を身に纏うことで限界を超えて身体能力を大きく強化
敵の強化にもある程度対抗できるだろう
陸の型【爪嵐】の構え――。幾らなんでも、一撃で装甲をぶち抜いて中のネズミを倒す程の火力はない
故に、同じ箇所を何度も攻撃して装甲を削り、そこから一気に中を貫きにかかる
少しばかり時間がかかっても構わないので、落ち着いて敵の攻撃を回避してから要所で攻撃を加えていく
毒沼から這いずり出た鼠型の戦車巨獣は、過酷な状況下でその巨体を変貌させていた。
恐るべき超常の力――巨大な機械鼠の肩口から新たな機械の頭が出現し、全高は実に14mにまで達している。
「共食いする戦車って、一体何を考えて作ったんだ」
廃墟ビルの屋上に立った夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、機械の大怪獣とも呼びうる怪異を前にしながら、こんなモノを生み出したマザー・コンピュータの思惑について考えを巡らせていた。
戦車獣が戦車獣を喰らい、強い個体が生き残る。
それは酷く歪められた生存競争の産物だ。
「まあ防衛の役には立っているのだから、そういう目的であったのかもしれないが」
――ギィィィィィィィィッ!!
機械の巨大鼠が鉄の軋むような金切り声を上げる。
怪異と化すに至った自らの過去を、そしてその行き着く未来を嘆くかのように。
「にしても、装甲内部を貫いてなんとか倒すには……どうしたものかね」
眼前に林立するのは都市の墓標。打ち捨てられた廃ビル群である。
重装甲の巨獣を前に、数多の戦いを駆け抜けてきた鏡介も、一瞬思案を巡らせる。
そして素早く判断を下して頷くと、白鞘に収めた刀の柄に手をかけ、構えを取った。
解き放つは神気溢れる無双の一刀。
無窮の神威は遣い手を包み、爆発的な力の行使を可能とする――!
「陸の型――爪嵐!」
鋭く響き渡った言霊に神気が力を増し、鏡介はひび割れた屋上を蹴って跳んだ。
林立するビルを足場にして、疾風のように距離を詰めながら刃を閃かせる。
複製される前から存在していた真ん中の鼠の頭部――その額が深く一閃され、戦車巨獣が絶叫した。
「幾らなんでも一撃で斬り捨てるほどの威力はない、が」
斬撃に額の装甲が断たれ、内部構造の下に、核として呑み込まれた救鼠の生身がのぞく。
「核にされた方も巨大化していたか」
肥大化する救鼠の生身を、機械と装甲が包むような状態になっているのだ。
――ヂィィィィィィィィィッ!!
戦車巨獣は胴体左右に並んだ鼠の手を蠢かすと、触手のように伸ばして空中の鏡介に殺到させた。
その悉くを空中で切り払い、ビルの屋上に着地する鏡介。
鼠の頭がこちらを向いたと見るや、再び跳んで先に斬撃を加えた頭部を十字に斬る。
触手めいた攻撃の軌道を読んで慎重に対処し切り払い、間断のない攻撃を集中させる鏡介。
機械鼠の額に、斬痕は複雑な文様となって刻まれ、遂に装甲を剥離させる!
「ここだ――!」
真正面から突進してくる機械鼠の額めがけ、高らかに跳躍した鏡介が神刀を振り下ろす。
――ギィィェェェェェェェェ!!!!
額に神刀を突き立てられて絶叫する戦車巨獣。
鏡介は引き抜きざま、宙返りするように背後のビルの屋上に着地した。
刀より伝わる確かな手応えに頷き、彼は再び構えを取る。
大成功
🔵🔵🔵
白雪・まゆ
ネズミさんを叩いて倒すのですね。そういう感じなら得意なのです!
まずは【Vernichtung durch Granaten】に乗って、
牽制の砲撃を加えながらネズミさんの上空までいきますですね。
真上までたどり着いたら、めいっぱい上昇して、
限界点で飛び降りて、ネズミさんへ急降下。
わたしの【覚悟】と【怪力】を乗せて【限界突破】した、
【Centrifugal Hammer】の【重量攻撃】を【捨て身の一撃】で叩き込みますですよ!
どんなに身体が大きくても、どんなに厚い装甲があっても、
【鎧を砕いて】中を突き抜ける【衝撃波】までは逃がせないのです!
これがわたしの『鈍器最強説』なのですよ。理論の礎になるのです!
廃墟都市の上空を征く飛翔体を、巨大な機械鼠が赤く光る目で捉えた。
暗雲立ち込める空の下、ロングジャケットをはためかせて。
移動型榴弾砲台(Vernichtung durch Granaten)に乗った白雪・まゆ(おねーちゃんの地下室ペット・f25357)が戦車巨獣に接近していく。
「ネズミさんを叩いて倒す……そういう感じなら得意なのです!」
まゆを乗せて空を駆ける移動型榴弾砲台が、立て続けに火を噴いた。
連射される榴弾は戦車砲めいて、機械の大怪獣とも言うべき鼠型の巨獣に直撃。
炸裂し、派手に爆発の花を咲かせる。
――ヂィィィィィィィィィッ!!
濛々たる爆煙に包まれながら暴れまわり、悲鳴に似た叫びを上げる戦車巨獣。
その破損箇所から血管にも似た導線が伸びると、見る間に重なって自己修復を始めた。
そして接近してくるまゆを愛機ともども呑み込もうというのか、生き物の触手めいた無数のケーブルが身の毛もよだつような音をたてて一斉に放たれた。
「当たらないのですよ!」
自在に愛機を駆るまゆが、あらゆる方向から殺到してくるケーブルの間を高速ですり抜ける。
「ここまで近づけば行けますですね」
その手に握られているのは、まゆの身長よりも大きな超鋼金属製のバトルハンマーだ。
鼠型戦車巨獣――その複数ある頭部が、急上昇するまゆを一斉に見上げる。
触手めいたケーブルの追跡を振り切って限界点にまで到達した少女は、移動型榴弾砲台の上から高らかに跳躍した。
――どんなに身体が大きくても、どんなに厚い装甲があっても。
桃色の髪やジャケットに風を受けながら、重力さえも味方につけて。
敵の直上で少女はハンマーを振りかぶる!
――装甲を砕いて中に突き抜ける衝撃までは逃がせないのです!
急降下攻撃を仕掛けるまゆの捨て身の戦法に、鼠型の戦車巨獣は対処法を失っていた。
「これがわたしの『鈍器最強説』なのですよ。理論の礎になるのです!」
まるで空に煌めく星が落ちてきたかのように。
バトルハンマーが、避けようとした巨獣の背骨に直撃。
電撃のような衝撃が構造内部に波及し、核である救鼠にまで響く大打撃を与える!
分厚い装甲に覆われた機械の巨獣を相手取るには、まさに効果的な攻撃法――それは鈍器の威力が存分に発揮された瞬間だった。
――ギィエエエエエエエエエエエ!!!!
これまでにない絶叫をあげて戦車巨獣が暴れまわる。
落下していくまゆが、飛んできた移動型榴弾砲台にキャッチされ、再び天高く飛翔していく。
大成功
🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
こいつといい、ロンメルといい、ここのメンツはドイツが好きなんか? まあいいや、どっちでも私の仕事は変わらんし。
【五馬分屍】で全ての頭と脚に車輪で縛り付けて、一気に装甲ごと引っぺがして中に埋まってる核を無理矢理露出させるよー。
回復する能力があるけど、即時回復ではないなら間違いなく隙はあるはず。一度の襲撃でダメなら何度も何度でも同じことを繰り返すよ、根気のいる作業には慣れているんでね?
さあ、どっちが先に音を上げるか我慢比べをしましょう、蠱毒の勝者さん?
戦車巨獣マウスは戦闘の中で自己改造を繰り返し、機械の大怪獣と化していた。
もはや天を衝く機械ネズミとも言うべき怪物が、廃墟都市を暴れまわる。
「マウスねえ」
やれやれ、と。
傾きかけた鉄塔の上で腰に手を当てながら、カーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)は呟いた。
そこに立っていてさえ、戦車巨獣の図体は、もはや見上げなければならないほどだ。
「こいつといい、ロンメルといい、ここのメンツはドイツが好きなんか?」
マウスと言えば、かの世界における規格外の超重戦車である。
戦車軍団を用いた軍人宰相も、言わずと知れた名将の名を冠していた以上、カーバンクルとしてもそれを考えずにはいられなかった。
今回の戦争は、とにかく戦車との戦いが多い。
それも『戦車』という名で呼ぶには余りに度外れた異形の敵が。
「まあいいや、どっちでも私の仕事は変わらんし」
――ギィィィィィィィィィッ!!
叫び声をあげる戦車巨獣に、カーバンクルは片方の掌を突きつけた。
刹那――おぞましい針を生えさせた幾つもの大車輪が、猛回転しながら空中を疾走する。
戦車巨獣は自らの周囲を取り巻いた車輪に気付いて首を振り暴れたが、車輪による包囲は既に完成していた。
「随分硬そうだけど、どこまで耐えられるかな?」
車輪が回転しながら鎖を放ち、さながら暴走する巨獣を縛り上げるかの如く、雁字搦めにする。それだけには留まらず、機械ネズミの複製された頭や腕にも巻き付いて、
「一気に引っ剥がしてあげよう!」
残酷な笑みを浮かべると、指揮棒でも操るように片手を振るカーバンクル。
すると全方位の車輪が外側に向けて走り出し、恐るべき力で引っ張り始めた。
――ギィィェェェェェェェ!!
五馬分屍――それは肉体を八つ裂きにする凄惨極まる刑罰の名である。
同名を冠するユーベルコードに、装甲を文字通り引き剥がされながら、戦車巨獣が凄まじい金切り声をあげた。
無理矢理にこじ開けられる外殻、飛び散り露出する内部機構。
しかし超常の戦車巨獣の内部で千切れ飛んだケーブルが血管のようにうごめいては自己修復をはじめ、あるものは部品に代わり、あるものは装甲へと置き換えられていく。
「修復機能、ね。でもその程度じゃ間に合わないよ」
回復されるのであれば、それを上回る破壊と痛苦を与えてやるまで。
「根気のいる作業には慣れているんでね?」
カーバンクルが追加の大車輪をけしかける。
戦車獣を喰らって生存競争に勝ち抜いたおぞましき戦車巨獣は、その本能に基づいて、傷を修復し肥大化していく。
それは核である救鼠の生命力の成せる業であり。
凄惨かつ酷烈な、どこまでも続く苦痛の再演であった。
「さあ、どっちが先に音を上げるか我慢比べをしましょう、蠱毒の勝者さん?」
朗らかに笑うカーバンクルの目の前で、戦車巨獣が地獄の責め苦に絶叫する――。
大成功
🔵🔵🔵
アルファ・オメガ
がう、ネズミが出たと聞いて
ここは猫の出番だね、任せてよ!
それじゃいってきまーす!
…大きくない?(すっごく見上げー)(話をしっかり聞いていませんでした)
がう、ネズミを前に逃げたとあっては猫が廃る!
ボクにはまだもふもふが残ってる!
【すーぱー・もふもふぱわー!】だよ!
空を飛翔して攻撃するよ
ふふ、7mに対して空飛ぶ素早い40㎝とか
色合い的にもボク、スズメみたいなものでは?
その体格差を利用して一寸法師戦法で戦うよ!
ネズミの周りをぐるぐる高速で飛翔しながら
隙を見て体当たり突撃!
何か所か攻撃ポイントを決めて
何度も体当たり攻撃を繰り返していくね!
ネズミが回復して体が大きくなるとまた体格差が広がるね
もはやボクなんてハエでは?
ふふふ、五月の蝿と書いて五月蠅いだよ!
あ、いま9月だった
ここからスピードを上げていけば
もうボクを捉えることなんてできないはず!
一番ダメージを受けている箇所に突撃!
「くらえー!もふもふきーーっく!!!」
高速飛翔のスピードを乗せた全力のケットシー・キック!
悲しいネズミとはこれでさよならだ!
荒廃した世界の乾いた風に、茶トラの毛並みがそよぐ。
廃墟と化したバトルクリーク市――そのひび割れたビルの屋上に立っていたのは、アルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)だった。
「がう、ネズミが出たと聞いて」
事の次第を耳にした彼はそう言って、一も二もなく依頼を引き受けたのだ。
そう、ネズミ退治とくれば猫の出番!
「ボクに任せてよ! それじゃいってきまーす!」
ぽむっと肉球で胸をたたいて請け負ったアルファ――だったのだけれど、到着した途端、彼は自分が巨大な影の中にいることに気付いた。
――ヂィィィィィィィィィィィッ!!
「……大きくない?」
戦車巨獣マウスの威容を見上げながら、思わずぽつりと呟くアルファくん。
ネズミと聞いてダッシュで飛び込んだので、サイズについての説明はあまりよく聞いていなかったのだ。いや、でも、それにしたって大きすぎる。
――さもありなん。
何しろ戦車巨獣マウス、これまでの戦いですっかり巨大化してしまったのだ!
どれくらいかって言うと……20階建てのビルくらい。もう完全にメカ怪獣である。
「がう、ネズミを前に逃げたとあっては猫が廃る!」
どんなに大きな相手でも、ネズミはネズミ。
決意を力に変えて頷くと、その柔らかな毛並みが不思議な力に包まれ始めた。
もふもふこそ正義!
機械に覆い尽くされた巨大ネズミになんて負けられない!
「すーぱー・もふもふぱわー!」
温かくも力強い光が溢れ、アルファが金色のオーラに包まれる。
オーバーロードのせいか、ちょっと毛が逆立っていつもより強くなってる気がするぞ!
「いっくよー!」
勢いをつけて跳び上がったアルファは、もふもふぱわーの力で天高く飛翔していった。
対する戦車巨獣マウスは、物凄い速度で飛んでくる猫を捉えきれない。
……というか、見えてない……?
「ふふ、空飛ぶ素早い40㎝だからね」
そうなのである。
ケットシーを相手に、余りにも大きくなりすぎた戦車巨獣はまるで対応できなくなっていた。
――もふもふだって、小さくたって、戦えるんだ!
巨大な機械ネズミを翻弄するアルファは、まさに鬼と戦う一寸法師さながらだ。
「くらえー!」
光り輝きながらの高速の体当たりは、巨大機械ネズミを四方八方から襲って、これまでの戦いで露出していた内部構造を更に飛び散らせていく。
――ギィィィィィィィィィッ!!!!
苦鳴をあげてのけぞった戦車巨獣の各所の傷口からケーブルのようなものが無数に伸びて、傷を塞ぐように、巨体を膨張させはじめる。
恐るべきユーベルコードは、哀れなネズミを手のつけられない大怪獣にしてしまうのだ。
「まだ大きくなるんだ……もはやボクなんてハエでは?」
さすがに『恐竜と虫』みたいなたとえはどうかと思って控えていたのだけど、なんと自分から言ってしまうアルファくん。
「ふふふ、五月の蝿と書いて五月蠅いだよ! あ、いま九月だった」
光陰矢の如し。でもどんな季節でも、五月蝿いものは五月蝿いのだ。
ネズミ型の戦車巨獣は、もはや体を揺するだけで大災厄になりかねない怪物と化していたが、一方でケットシーである小柄なアルファを捉えることは出来なくなっていた。
飛翔するアルファ。
彼は戦車巨獣の頭部――増える前からそこにあった頭の額部分が砕けているのを見つけた。
そしてその瞳が、まるで救けを求めるように発光するのを。
「あれが核だね……!」
行使されるのが救鼠のユーベルコードである以上、核である救鼠自身もまた巨大化していたのだ。
――悲しいネズミとはこれでさよならだ!
実験生命体として使われ、戦車巨獣と化してしまった救鼠は、悲鳴のような叫びをあげながら暴れまわる。
絶叫するオブリビオンを前に、アルファは、もふもふぱわーを更に輝かせた。
「くらえー! もふもふきーーっく!!!」
光り輝きながら流れ星のように突っ込んでいったアルファのケットシー・キックが、戦車巨獣の額に炸裂した。
装甲が割れ、衝撃が内部にまで届き、これまで蓄積したダメージが耐久限界を突破して。
救鼠そのものが塵となって消えていく。
その直前、赤く発光する機械の目が、何かを訴えるように点滅した。
――或いはそれは、核にされた救鼠の精一杯の感謝の表明だったのかも知れない。
核を失った戦車巨獣は、のけぞると、その装甲をバラバラと崩壊させ始めた。
ビルの上にぽすんと着地したアルファは、山積みになった残骸が粒子となって骸の海に還っていくのを見つめていた。
「ふう、なんとかなったね」
砂混じりの風が吹く。
哀しきネズミはもういない。
アルファの首の鈴が、風にちりんと澄んだ音をたてた。
大成功
🔵🔵🔵