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アポカリプス・ランページ⑪~偽りにシンの救いを

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 ソルトレークシティ、秘密裏のフラスコチャイルド製造施設よりも更に地下。
「最強のストームブレイド」を生み出さんと培養されていた、忌まわしき、それ。

『デミウルゴス式偽神細胞』
 移植されたオブリビオンの強力な攻撃を、猟兵は耐え凌いだ末に、辛くも倒した。

 強力な拒絶反応により、ユーベルコードを使用する度に肉体が崩壊してゆく。
 禁忌のオーバーテクノロジーに手を出した者の末路。
 その性質を、理由して。


「その節はお疲れ様。それじゃあ、ハイこれ。君が打つ分の"偽神細胞"だよ」
 末端の密売人だってもっと上手く誘うぞ!!?
 先の凄惨な光景を思い出して回れ右をする猟兵の後ろから、怪し気な注射器の入った箱を差し出すはグリモア猟兵、仲佐・衣吹(多重人格者のマジックナイト・f02831)
 ゆるい笑顔のまま、ごく軽い調子で語る。
「そうだね、死んじゃうかもしれない選択だから、慎重に越したことはないよ。それでも興味があるひとは、これを見て」

 漆黒の竜巻オブリビオン・ストームが破壊の限りを尽くす世界、アポカリプスヘル。
 移り変わるグリモアベースの風景が、荒野で頭を抱え呻く、一人の男を映し出す。

「フィールド・オブ・ナインの一体『デミウルゴス』への道が舗装完了したよ。是非倒しに行ってもらいたい。だけれど厄介なことに彼は、ユーベルコードでも、本物の神でも、その身を傷つけることが出来ない"完全無効化"能力というのを持っているんだ」
 微かに瞳孔を開き、先を促すように見つめる猟兵の顔を見遣り、衣吹は続ける。

「これに唯一対抗出来るのは、同じく"偽神細胞"を移植しているストームブレイド。もしくは施設から奪取して来た、この注射器の中身"偽神細胞液"で一時的に"偽神化"したものだけだよ。本職には言うまでもないけれど、接種には激しい拒絶反応が付き物。絶命したって話も、珍しくないよ」

 それでも、この無敵偽神と対決してくれる猟兵は居るかな?
 再三の確認でも揺るがない視線。
 それに応えるように、手の平に上部が潰れた円柱のグリモアが現れ、青く灯る。


「ストームブレイドは、強敵戦を想定。デミウルゴスのユーベルコードに対抗、反撃する作戦を考えて欲しいな」
 個人差はあるかもしれないが、彼の地で唯一、本調子で動ける猟兵だ。戦況次第で連携や援護する事を見込んでおいても、損は無いだろう。

「気を付けなきゃいけないのは、偽神細胞液を摂取する猟兵だね。例えるなら"瀕死の重傷を受けた状態"からのボス戦だよ。そんな時、どうやって切り抜ける? 予想と準備を万全にね」
 もっと酷い時があったと気合一発立ち上がるか、囮を用意し潜み敵を射程まで引き寄せ罠にかけるか、意思や指一本で動く仕掛けにより最小限の動きで戦えるようにするか。敢えて油断させて隙を作る、トドメと来た瞬間にカウンターを撃ち返す。
 意識朦朧とする中で、どれ程の判断が出来るか分からない。狙い定めた策をひとつ、十全に練ってから挑むべきだろう。

「ユーベルコードは一撃まで。必ず一矢報いた後、生きて帰って来る。その戦術を本気で考えられる猟兵に、来て欲しいな」
 出来るだけ僕も回収に動くから、とテレポートゲートを展開させるグリモア猟兵。

「そういえばデミウルゴスは予兆で、祈りの声に困惑していたね。救う力もその気も無い、彼の祈りは誰にも届かない。対峙したら君は何を願って、何とこたえるのかな?」

 黒い風が吹き荒ぶ、かの地のなき声が聞こえ始める。


小風
 小風(こかぜ)です。
 33作目はアポカリプスヘルにてデミウルゴス~うつろわざるものです。
 よろしくお願いします。
=============================
 プレイングボーナス……「偽神化」し、デミウルゴスを攻撃する。
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 また、プレイング期間と〆切を設けています。送信の際はMSページも御確認下さい。
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第1章 ボス戦 『デミウルゴス』

POW   :    デミウルゴス・セル
自身の【偽神細胞でできた、変化する肉体】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[偽神細胞でできた、変化する肉体]から何度でも発動できる。
SPD   :    偽神断罪剣
装備中のアイテム「【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ   :    デミウルゴス・ヴァイオレーション
自身が装備する【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】から【強毒化した偽神細胞】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【死に至る拒絶反応】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月夜・玲
デミウルゴス、創造主、人造の神
私も神器の模造品なんて作ってる身からしたら興味が無い…とは言えないねえ
とはいえ気の毒に、偽神として産み出されても精神がそれに足るものじゃないのは辛いだろうね
もっと我を強く持てれば違ったろうに…



デミウルゴスを確認後、召喚石を3個その場に投げよう
何せ死にかねない副作用だ、それなら私は起点で良い
偽神細胞液を注射、そして偽神化開始
私の意識がもっている間に【Code:D.L】起動
雷龍召喚、三龍包囲陣で決める!
召喚した雷龍にデミウルゴスを包囲させ、弱体化結界起動
そして上空から『ブレス攻撃』で攻める!

私自身は距離を取り、意識を保つ事に集中
何も私が戦う必要はないのさ
さあ終わりだ



 アイオワ州。かつて監視塔として建造されたデモイン砦。
 再建されたその建物から、どこまでも追いかけ響き渡る祈りの声から逃げるように。
 フィールド・オブ・ナイン、もといオブリビオン・フォーミュラーの一体『デミウルゴス』が、痛む頭を抱えながら放浪していた。

 頭を垂れ、呻きながらも己を確かめるよう独り言を唱え続ける。
 ――その恰好は奇しくも、自らが嫌悪する、祈りを捧げる者の姿に似ていた。

「デミウルゴス、創造主、人造の神。私も神器の模造品なんて作ってる身からしたら興味が無い……とは言えないねえ」
 陰に隠れながら開放されたテレポートゲートより、様子を窺いながらそう呟く月夜・玲(頂の探究者・f01605)
 その手には、粗いカットながら宝石のような輝きを内包した召喚石が三つ。カラカラと軽い音を立てて転がっていた。

「とはいえ気の毒に、偽神として産み出されても精神がそれに足るものじゃないのは辛いだろうね。もっと我を強く持てれば違ったろうに……」
 力こそ本物だろうが、精神はそれを凌駕し切れず、完全に翻弄されている。その姿に"神"という言葉を付けるには、どうにも似つかわしくない。
 いっそ狂気に溺れてしまえば、彼女の研究する"邪神"となってしまえば、もっと悠然とそこにあれただろうか。

「さてと、観察はこれくらいにして、お仕事お仕事」
 素早く飛び出し、デミウルゴスに投げつけた召喚石が日の光の下に瞬く。
 すぐさま利き手に注射器を持たせると、捲り上げておいた腕に狙い定めて突き刺す。

「うっ!!!?」
『……!?』
 走り出してそのまま、つんのめるように地面を転がる玲。
 下を向き呻いていたデミウルゴスも、急に騒がしくなったそちらに目を向ける。

「カハッ――(これは確かに……死にかねない)」
 注射器の中身はあくまで一時の偽神化をもたらす"細胞液"だが、その感触は率直に言って猛毒だ。
 あっという間に血管から全身を巡られ、脳が凍り付く、視界は色褪せ、照明を消されたように暗転してゆく。

『……ヴァイオレーション』
 即座に自身の一部である大剣から強毒化した細胞を黒い霧のように放つ偽神。
 あれに捕まってしまえばもう終わりだ。

 反して空気を求め鳴るノドを殺し、僅かに残った意識をかき集め、UDCメカニックはプログラムを起動する。
「(何も私が戦う必要はないのさ。――さあ終わりだ)」

 地から天へ、雷鳴が轟く。

 デミウルゴスの足元に転がる小さな召喚石が稲妻を放ち、偽神を囲むように立ち上り空より包囲する三体の雷竜。
 ユーベルコード、Code:D.L(コード・ドラゴンロック)による三竜包囲陣だ。
 空中を球電が黒い霧を掻き消しながら漂い、もう逃げられないことを告げる。

 刹那、雷龍が三方向から放つは雷のブレス。

 それが吐き出されたものだと、偽神が気付いたかは分からない。
 目を焼く落雷と、頭の声など消し飛ばすほどの揺れを伴う迅雷。

 打たれたものが瞬時に理解するには、とても困難な状態であるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
これが偽神細胞・・・なるほど厄介な、グウゥ身体がひび割れてヘドロが漏れ出しています
アハハ反抗の竜に見放されたボクにはピッタリの末路ですね・・・
アナタはボクを救って・・・いや、やめておきましょうだってボクはもう救われないでしょうから
がぁ、ハアハアさて始めましょうかもうヨダレを撒き散らさなくても周りはヘドロの海ですから
そのままヘドロの中に潜って攻撃を掻い潜り接近切り裂いて、っしまったつかまつた・・・なんてね!
その大剣大きく振りかぶらなければ切り裂けないでしょう?ヘドロの目潰しです
もう身体も限界でもまだチャンスはここしかない妖刀の一撃をくらえ!
この世界にはもう偽りの神など必要ない、どうか安らかに



 どろり。ベタリ。音が響く。

 肌は青色、溶けたよう。
 粘度をもったそれを引き摺る様はヘドロのよう。

「これが偽神細胞……なるほど厄介な、グウゥ身体がひび割れてヘドロが漏れ出しています。……アハハ反抗の竜に見放されたボクにはピッタリの末路ですね……」
 これは誰が見ても死に掛けだろう。
 そんな姿で戦場へ現れるはニクロム・チタノ(反抗を忘れた悪堕ちヘドロ・f32208)

 顔から滴るはヨダレか、汗か、涙か。
 恍惚としているとも見える焦点の合わない眼で、その拒絶反応の感想を語る。

「アナタはボクを救って……いや、やめておきましょうだってボクはもう救われないでしょうから」
 偽神へ寸の間の祈り。
 脳裏ではなく直接耳でそれを聞き取り『デミウルゴス』が、鬼の形相で振り返る。
 見れば、当のニクロムは明後日の方角を向いて喋っていただけの独り言。
 しかしそれでも、造られた神は許さなかった。

『……祈るな……その嘆き、どうして俺が聞かなければならない……たとえお前が人間であろうとなかろうと……殺してやる!!』

 異形のように肥大した左腕を振りかざし、その首へし折らんと迫るデミウルゴス。
 ニクロムは大きな水溜りのように広がりゆく、その溶けだす体の一部が踏み荒らされることにより、それを感じ取った。

「がぁ、ハアハアさて始めましょうかもうヨダレを撒き散らさなくても周りはヘドロの海ですから――っしまったつかまった!!?」
 ヘドロへ潜るように体を沈め始めたレプリカントを、引き抜くように大腕で掲げるデミウルゴス。
 拒絶反応で動けない相手ならば、先手を取れるのは当然だ。

「……なんてね! ヘドロの目潰しです」
 バシャリ、と猛毒と異臭を放つヘドロを顔面に飛ばすニクロム。
 咄嗟に目を瞑ったが、眉間に深い皺を刻む偽神。
 反撃とばかり、掴んだ異形の手の中へ牙と口腔を発現させ、その身を食い千切りると、ユーベルコードを即座にコピーする。
 握り潰すように力を込めた腕からそれを発射しようとして――。

 その手が、掴んでいた猟兵ごと腐り落ちた。

『!?』

 実は、先手はとっくに、ニクロムが取っていた。
 ユーベルコード・ニクロムの成れ果て(ニクロムヘドロ)
 拒絶反応により死に近付く肉体、ヘドロ化し強化する超能力、そして真の姿。
 そのどれもが、溶けゆく今の姿によく似ていた。

 いずれの場合でも自分がどうなるのかよく分かっているニクロムと、始めて対峙しそんなもの見分けられるはずがないデミウルゴス。
 見事な初見殺しが成立していたのだ。

「その大剣大きく振りかぶらなければ切り裂けないでしょう? くらえ!」
 ヘドロに紛れていた腕から繰り出されるは、反抗の竜チタノが与えし妖刀。
 最初から一瞬の好機だけを窺っていた一撃が、毒をまとって突き刺さる!

『くっ!』
 大剣を地に刺し支えに、ヘドロ怪人を蹴り飛ばすデミウルゴス。

「この世界にはもう偽りの神など必要ない、どうか安らかに」
 さしものヘドロ使いも、ここが限界か。
 その赤い目の光も地に溶けるように、深く沈んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
POWで挑む
協力も歓迎だ

正直馬鹿げた話だ
けど、奴は放っておけねえ
…全力は尽くす
後のフォローは任せたぜ、衣吹さん

注射器を打ち、偽神化
迫る激しい副作用に膝をつく
はっ、マジできついな
けど、絶対に命は落とすつもりはねえ!
こんなことしておいて変な話だが、
生きて帰るまでがヒーローなんでな!
アンタの苦しみを此処で断ち、
かけられる願いは猟兵が引き継ぐ!

[限界を突破]し、UCを発動
金色の焔が不死鳥の形を取り、激痛や傷を癒す
他の猟兵の痛みも軽減できるはずだ
だが、端から侵食は起こる拮抗状態
動ける時間は少ねえ
オレの[覚悟]、この一撃に込める!
神焔必殺!フェニックス・メテオ!!
炎を纏って全力でぶん殴る
…オレは此処までだ



「もう大丈夫だ!! ヒーローはここに居るぜ!」
 先行し倒れた猟兵達から注意を逸らすよう大きく開戦の声を上げるのは、空桐・清導(ブレイザイン・f28542)
 装着ベルトが輝き、血管のように走った光に沿って瞬く間に深紅の鎧が展開される。
 ただひとつ、柔らかな素材で仕立てられたマントは燃え盛る炎のような形状。
 風を受けて大きく翻るそれは、ヒーローここにありという、何よりの証だ。

「声が聞こえなくなるまで殺し尽くすなんて、正直馬鹿げた話だ。けど、奴は放っておけねえ………全力を尽くす」
『……馬鹿げているのは人間達の方だ。この世界に全知全能の救世主など居ない。救えない偽神を犠牲にして何とする。……どうしても催促を止められないというのならば、止めてやるだけだ』
 古代肉食恐竜の上顎を彷彿とさせる偽神断罪剣をゆらりと構え、造られた偽神『デミウルゴス』が跳躍する。

「――ぐはっ!!!」
 唯一装甲の薄い首元へ、腕を上げて防御しながらの"偽神細胞液"注射。
 ……その激しい副作用に思わず膝をつき、急所への直撃は免れた。
 しかし偽神大剣が清導へ当たった瞬間、長く鋭い爪を持つ禍々しい片腕が素早く振るわれ、破壊した装甲ごとその肉を食い千切るように掻っ攫っていった。
 偽神化していないものの攻撃は完全無効とするが、デミウルゴスからの攻撃は相手が何ものであろうとも容赦なく当たる。
 接種部の首とズタズタの爪傷を押さえ、それでも顔を上げてみせる清導。

「……マジできついな。けど、絶対に命は落とすつもりはねえ! こんなことしておいて変な話だが、生きて帰るまでがヒーローなんでな!」
 刹那、アームドヒーローの真っ赤なマントが燃え上がる。

 ――否、その身が金色の焔に包まれる!

 ユーベルコード、神焔必殺フェニックス・メテオ。
 翼広げ空高く飛翔する金の鳳。
 その身から降り注ぐ火の粉が、自身と戦場へ残った猟兵達の傷を癒す。

「だが、端から侵食は起こる拮抗状態。動ける時間は少ねえ。――オレの覚悟、この一撃に込める!」
 鋭い拳を突き出し狙いを定め、全身を太陽からの黄金ビームのように突撃する清導。
 同じく無敵の偽神も、コピーした技を発動し禍々しく燃える翼竜のような炎を纏い迎え撃つ。
「アンタの苦しみを此処で断ち、かけられる願いは猟兵が引き継ぐ!」

 しかし勝負は、清導のユーベルコードを再現してしまったところで決まっていた。
 フェニックス・メテオの激突ダメージは"守りたいものへの想い"が乗算される。

 全てを殺すと言った偽神と、その祈りすら貰い受けると言ったヒーロー。

 地獄の翼竜の炎を、スーパーヒーローは貫き消し飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
代償は嫌だと思っていても、それで救える物があるのならすべてを投げうって良いと心の奥底で感じているのも本当。
デミウルゴスへの哀れとも慈しみともいえる何とも言えない感情がある以上、私は偽神化を受け入れましょう。

偽神化自体、命を削るような物だから最初から遠慮はしません。ただ倒れなきゃいい、ぎりぎりまで鳴神の威力を上げます。
だからこちらが先手をとれたなら回避とか考えません。どちらにしろ最大威力で撃ち込んだあとはまともに動けるとは思えませんしね。
逆にまともに動かせない方が予測不可能な動きになって戻ってこれる可能性がありますもの。
何よりまだ私は生きたい。
過去世のように死を覚悟してまで代償を払いたくはない。



「代償は嫌だと思っていても、それで救える物があるのならすべてを投げうって良いと心の奥底で感じているのも本当」
 先の猟兵との衝突で、予定地より随分遠くまで飛ばされた偽神を追いかける夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)
 偽の神として造られ、それに成り切れぬ『デミウルゴス』
 彼の者に思いを馳せた時、藍晶石製の胸に宿るは、哀れとも慈しみともいえる何とも言えない感情。
 そんな想いを抱く以上、渡り合う為に必要だという一時の偽神化は、拒否するに至らなかった。
 救うに救えぬオブリビオン。
 ならばこちらも少しくらい痛みを受けなければ、天秤のバランスが取れないのだ。

 遥か向こう、砂煙の中に、その姿はあった。
 ゆらりと立ち上がる左右非対称のシルエットは、やはりとても歪に思えた。
 無敵の偽神たるそれを示すように、ただ一対、鈍く輝く金色の眼。

 ――気付かれた。
 こちらは念動力の投擲、あちらは大剣といえど侮れない。
 技によって相手の方が射程が長くなる恐れがあるのだ。
 すぐさま、人肌のようなクリスタリアンの表皮へ、注射器の針を打ち込んだ。

「――――!!!」
 声にならぬ悲鳴を上げる藍。
 まるで、針傷から全身にひび割れが走ると同時に身体の内側が膨張し、粉々に崩れるよう。目に映る肌が何も変わっていないのが、嘘だと思う。もし今指の一本でも動かしたら、そのままコロリと落ちてしまうのではないか。
 妙な確信をもって想像する凄惨な未来。
 もう一歩も、動けない。

「(……いえ、予想通り。この偽神化自体、命を削るような物。だから最初から遠慮はしません。ただ倒れなきゃいい、ぎりぎりまで)」

 視線も動かさず、発動するはユーベルコード、神器解放。
 黒い三鈷剣・鳴神を空中へ浮かべ、二倍、四倍、十六倍……上限なく複製してゆく。
 確かめずとも慣れ親しんだ技、今がどのような状態かは、感触で分かる。

「(……複製が……遅い)」
 これも拒絶反応の影響か。
 無意識に想定していた時間を、とうに過ぎてしまった。

 もう放つか、相手は仕掛けて来たか。
 視界の端に捉えていた偽神の影から、その様子を確認すると。

「(……構えているけれど……撃ってこない?)」
 瞬刻、思い出すは予兆で見たデミウルゴスの、最後の願い。
 まさか――。否、今は思考するな。ぎりぎりまで威力を高めることだけを考えろ。

「(まだ私は生きたい。過去世のように死を覚悟してまで代償を払いたくはない)」
 空一面を覆う黒い烏のように、刃渡三十センチの神器群を打ち放つ藍。
 地に伏した瞬間、体が砕けたような気がした。
 生きるか死ぬかは、この後の気力次第だ。

 デミウルゴスを殺し尽くさんと迫る、無数の黒い祈祷の刃。
 まるで脳裏に響く祈りの声が、具現化したかのよう。

 潰されたか蹂躙したか。
 経過を目視した猟兵は、残念ながら居なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【オーラ防御】で自分を護り
翼の【空中戦】で距離を取りながら戦闘
あまり意味はなくても
少しでも攻撃軌道を見極めやすいように
それに…自力ではきっと走れないから

【激痛耐性】ならある
奴隷時代には散々感じてたし
この程度の痛み、あの頃感じてた心の痛みに比べれば
ぜんっぜん、どうって事ないもんね…!!

狙いが定まらなくとも
【高速詠唱】で氷魔法の【属性攻撃】と
【催眠術】を乗せた【歌唱】で出来る限り判断力を奪い足止め狙い

人を救うってさ…思うほど、重くないと思うんだよね
その気になれば神じゃなくてもできるもの
気持ち一つだよ
多分、ね

貴方が祈れないなら僕が祈ろう
【指定UC】に【破魔】の【祈り】を乗せて
これが僕なりの一撃、だよ



 偽神細胞液を打ち込んだその猟兵は、空の遥か彼方で花弁のように、ふらふらと今にも舞い落ちそうに漂っていた。
 地上を自力では走れぬと、風に流されながらも空中へ留まるは栗花落・澪(泡沫の花・f03165)
 孤独な空で寄り添って来るは、己を破壊せんと暴れ回る偽神細胞の強烈な拒絶反応。
 激痛耐性で紛らわせながら、蘇るは奴隷時代の脳を切り裂くような精神的苦痛。
「この程度の痛み、あの頃感じてた心の痛みに比べれば……ぜんっぜん、どうって事ないもんね……!!」
 悲痛な過去すら、未来への推進力へと変える。
 いま澪を大切に思ってくれる人達がくれた、かけがえのない贈り物。

 見開いた琥珀色の目に飛び込んできた、地上でふらつく黒く大きく歪な影。
 あれが『デミウルゴス』だ。
 話の通りに項垂れ、今は片手で体を支えるように、足を引きずるように歩いている。
 曲がりなりにも偽の"神"には見えず、行倒れ寸前の放浪者のようだ。

「人を救うってさ……思うほど、重くないと思うんだよね。その気になれば神じゃなくてもできるもの。気持ち一つだよ。多分、ね」
 デミウルゴスの中にはいかなる理想の神が描かれ、ただの人造オブリビオンとしてあることを祈りの声に何度否定されて来たのか。
 断言できないほど、軽率に励ませないほど、その闇は察するに余りあるようだった。

 オーラ防御で守りを固め、シンフォニックデバイス Angelus amet を調節する澪。
 狙い定まらなくとも、判断と足に狂いが出ればいい。
 眠りを誘う氷の歌。
 瞬時に溶ける霜のような、儚く短い子守唄だ。

『…………!?』
 突如、眠気に襲われたように、ガクリと膝を突くデミウルゴス。
 まだ季節の早い冷気が頭上から降り注いでいるのを感じ取り、やっと空を見た。

 神か!?
 ――いや、下級の小蠅だ。

 すぐさまその身と変わらぬ大きさの偽神断罪剣を凄まじい膂力で振り回すと、柄を離すと同時に真っ直ぐに空へ向かって、矢のように飛んでゆく。
 巻き付いた鎖が長々しいガラガラヘビのように音を立てる。

「――っ!! ……貴方が祈れないなら僕が祈ろう。全ての者に光……あれ……」
 オーラ防御で勢いを殺し急所を反れたが、それでも意識を手放すには十分な衝撃。
 薄れゆくその中で紡いだ詠唱が発動させるはユーベルコード、Fiat lux(フィーアト・ルクス)
 落ちる澪を仕留めようと構える偽神の眼へ、祈りと破魔を込めた光が強烈に届く。
 脳まで射貫き、全身包み込むように肌を焼く浄化の光。
 それは偽も魔であるのだと、告げるように。

「……光……俺に求めた、馬鹿人間達にも、これくらい見せつけてやれ……」
 大災害の地に、夜と闇の世界から光が届いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
偽神細胞液を摂取
1回摂取しただけでこの苦痛とは……馴染めば多少マシになるのかもしれないが、にしても本職やデミウルゴスの苦痛も推して知るべしってもんだな

神刀を抜いて、神気を身に纏うことで身体能力を強化。とはいえ拒絶反応で殆ど動けないのが多少マシになり、幾らか動けるようになった程度だが
それでも、ちゃんと刀を握って動けるならばどうにか戦える

……とはいえ積極的には踏み込めないので、神刀へと神気を込めてデミウルゴスの接近を待つ
代償に左腕の一部を支払って、俺に使える最大の一撃で勝負――絶技【無我】。切断の神気を斬撃波に乗せて叩き切る

UCをコピーされたら?自身にも被害が及ぶ覚悟があるなら、使ってみれば良い



「一回摂取しただけでもの苦痛とは……馴染めば多少マシになるのかもしれないが」
 決戦へ向けて、偽神細胞液を摂取したのは夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)
 先の猟兵が向かったという『デミウルゴス』の位置まではまだ遠い。
 打ち易いよう座り、生身部分の太腿へ上から針を打ち込んだのだが、これがまた神器化とは異なる痛みの種類。
 自分の細胞ひとつひとつの繋がりをバラバラにしようと、無数の小さなチェーンソーが蹂躙してゆくような感覚。
 静かにそっと心身を蝕むような神をも恐れぬ道具の代償に比べ、偽神の等価交換は弱いものを容赦なく切り捨てる。
 偽でも神というものは、荒ぶる存在であるようだった。

「にしても本職やデミウルゴスの苦痛も推して知るべしってもんだな」
 予兆で見た偽神の頭の中も、これと同じくらいの苦痛なのだろうか。
 身体中を走り暴れる鎖鋸の間を縫うように、噴き出す脂汗を流れるままに、少しずつ己の刀・神刀【無仭】を抜刀してゆく鏡介。
 何度も抜いてきた鯉口が凍り付いたように固く、幾度も振るってきた刀身は気が遠くなるほど長い。
 抜き放つほどに僅かずつ溢れ出てくる、状態変化を及ぼす神気をかき集めては進む。
 途方もない時間をかけて、鏡介はやっと、一振りの抜き身の刀を手にした。

 とはいえ、拒絶反応を消し飛ばすほどの力では無い。
 神気による身体強化で"多少マシ" "幾らか動ける"ようになっただけである。
 それでも、ちゃんと刀を握れている、ということは大きい。
 細い勝機の糸を確かに掴んで、悲鳴を上げる体でゆっくりと呼吸を整える。

 かつての監視塔、デモイン砦を背に、荒野より現れるデミウルゴスを待つ。
 神刀へと神気を込めて巡らせるが、フィールド・オブ・ナインへ踏み込んで行けるほどの回復は見込めない。
 高まり清浄な空気が流れ始めた砦の前。
 遥か遠く、砂煙を纏って現れたかのような項垂れた男が一人、鏡介を仰ぎ見るように、その生気のない金の目で捉えた。

『……その気配……お前は……神か?』
「猟兵、夜刀神・鏡介。どうにか偽神と、渡り合えるものだ」

 そうか、と呻くように呟くデミウルゴス。
 と同時に、大腕を赤黒い肉が渦巻くように巡り、恐竜の顎を思わせる形へと変える。

『どうせお前も動けぬのだろう。ひとカミで殺してやる』
「悪者のような台詞だな。ならばこちらも最大の一撃で勝負するまで。我が身をただ一振りの刃として――絶技【無我】」

 禍々しい左腕の偽神と、神器に近付く左腕の猟兵との一騎打ち。
 防御など捨てた牙と刃による一撃勝負。
 偽神と神器、神様など不在の殺し合いだ!

 左腕から紅が舞う。
 片方は更にその身の一部を、もう片方は更にその命をも奪われて。

 左腕の一部を代償に、その命をつなぎ止めたのは鏡介。
 どうやら神は、デミウルゴスの方をお気に召したようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月21日


挿絵イラスト