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アポカリプス・ランページ⑱〜本能の在処

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●蠢く狂気
「助ケて、タすケて……ワたシが、ワたシでナくナっテしマう……!」
「ポーシュボス現象(フェノメノン)……コれガ、末路なノか……」
「あハ、あハは……マた一人、コっチに来タよ」

 おぞましきものが、蠢いている。
 まるで、苦悶に身をよじるかのごとく。聞くに堪えない声を上げながら。
 それは、かつて人であったもの。
 あるいは、それに類する知性をもったもの。
 おぞましきものよ、汝は生命の「善の心」を見逃さぬ。
 そこに善の心がわずかでもあれば、気付けばおぞましきものの仲間入り。

「あリえナい、ポーシュボスを倒スこトなど」

 善の心を、良心を、欠片も持たぬ者など存在するのか?
 さもなくば、この狂気に耐え抜けるものなど存在するのか?

「嗚呼、いッそ……殺シて、ク……れ……」

 おぞましきものが、蠢いている。
 死を望みながらも、牙を剥くものが。

●深淵の攻防
 グリモアベースの一角で猟兵たちを迎えたニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)の顔色は、ひどく悪かった。本体である懐中時計を持つ手が、心なしか震えている。
「……お集まり頂き感謝する、此度の戦もいよいよ佳境と言った所だな」
 一礼して後、常ならばホロビジョンを用いて概要を語るニコが、それをせずに努めて淡々と己の言葉のみで状況を説明する。
「フロリダ州タラハシーを覆う程の超巨大オブリビオン・ストームの内部に、今回皆に討伐を願いたい『フィールド・オブ・ナイン』が居る。その名は――『ポーシュボス』」
 邪神の研究員たちを正気に戻す依頼で、その名を耳にした者もいるだろう。
 そして、いよいよ邪神本体と対峙することとなると理解した者から、ニコの様子や映像を投影しようとしない理由を把握した。
「……皆に正確な情報を伝えねばならぬ立場の俺が情けない有様で申し訳無い、予知でほんの僅か垣間見ただけで此のざまだ、皆には過酷な頼みをする事と恐れ入るばかりにて」

 ――倒してきてくれ。

 その一言を告げることさえ躊躇われる、相手はそんな存在であった。
「ポーシュボスの恐るべき特性は『少しでも善の心を持つ生物を新たなポーシュボスに変えて取り込む』という所にある。既に数え切れぬ程の犠牲が出ており、ポーシュボスの群れは雲霞の如く押し寄せてくるだろう」
 そう言って、ニコは指を二本立てる。
「対処法は二つだ。一つ、ポーシュボスが付け入る隙も無い程の『邪悪』……純粋な悪の存在となって対峙するか。もう一つは、ポーシュボスに寄生されながらも正気を手放さずに抗い戦うか、何方かを選んで挑んで欲しい」
 目の当たりにしただけで、常人ならば正気を失うであろう『邪神』。
 あらかじめ映像を見せておいた方が良かったか否かを最後まで迷いながら、ニコは虹色の星型のグリモアをかざす。
「ポーシュボスとなった者を救うことは出来ない――と言う事は予め断言しておく。斃す事こそが救いと考え……いや、兎にも角にもご自身が無事に帰還する事を第一に、此の依頼に臨んで頂ければと思う」
 邪神さえ付け込めぬ邪悪か、狂気に抗う意志か。
 どちらかを携えて、君たちは邪神へと挑む――!


かやぬま
 言葉にできない不安をかき立てられながらお送りします、かやぬまです。
 狂気に立ち向かう武器は二つ、皆様のお力添えを賜れれば幸いです。

●プレイングボーナス
 二つあります、どちらかお好きな方を選んで頂ければと思います。
「邪悪なる者になる」か「ポーシュボス化してでも戦う」です。
 前者は文字通り徹底的に悪者として戦う、後者はポーシュボスの侵食を受けながらも抗うさまを存分に見せつけて下さいませ。

●プレイング受付について
 断章はありません、公開され次第プレイングを承ります。
 オーバーロードの行使につきましてはお任せ致しますが、どちらにせよ可能な限り早期決着を目指して参りますので、その点のみご了承下さればと思います。
 また、お手数でもMSページをご一読下さいますと大変有難いです。

 それでは、よろしくお願い致します!
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第1章 集団戦 『ポーシュボス・フェノメノン』

POW   :    ポーシュボス・インクリーズ・フェノメノン
【ポーシュボスによる突撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【新たなポーシュボス】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ポーシュボス・ナインアイズ・フェノメノン
自身の【全身の瞳】が輝く間、【戦場全てのポーシュボス・フェノメノン】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    ポーシュボス・デスストーム・フェノメノン
【オブリビオン・ストームの回転】によって【新たなポーシュボス】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

柊・はとり


探偵は被害者にとっての善
加害者にとっての悪である
自分を善人とは思わないが
この世界を守る為に戦ってんだ
付けいられる隙しかないな

UC使用
心を鬼にしお前ら全員を凶悪殺人集団
『ポーシュボス』として告発する

名探偵への狂信に呪われたこの身は
あらゆる悪意と殺意を浴び続けた
犯人達の狂気を
被害者達の嘆きを
呪詛として受けなお悲劇に立ち向かう
なけなしの勇気と覚悟を憶いだせ

偽神兵器にストームを喰らわせながら
狂気さえ凍てつかせるなぎ払いと斬撃波で
敵を範囲攻撃し一掃
俺のあずかり知らぬ所で
勝手にくたばった連中なんか知るか
俺の手の届く範囲で死ねよ
…くそ

救えぬ悔しさが
例え昏睡しても俺の形を保たせると信じ

目覚めたら再度UC使用



●名探偵の矜持
 柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)、かく語りき。

 ――探偵は被害者にとっての『善』。
 ――加害者にとっての『悪』である。

(「自分を善人とは思わないが」)
 氷を纏いし偽神兵器を握りしめ、眼前の狂気にはとりは挑む。
(「この世界を守る為に戦ってんだ」)
 付けいられる隙しかないな、なんて思いながら。

『あ、ア、あァ――』
『ドうシて……ドうシて、コんナこトに』
『狂ッてシまッた、ワたシたチは狂イ果てテしマっタ』

 おぞましき異形が発する『言葉』は、まるで事件の被害者たちの嘆きに似て。
 踏みしめた筈の大地が、まるっとぐらりと歪むような錯覚を覚える。
(「この程度、今に始まったことじゃない」)
 そう、はとりは『名探偵』として祝福され、呪われた身で死してなお生きてきた。
 事ここに至るまで、浴びてきたあらゆる悪意と殺意を思えば、どうだ。
(「犯人達の狂気を、被害者達の嘆きを」)
 一度横に振られた首に走る、痛ましい傷に秘められた想いを誰が知ろうか。
 そうして、はとりは偽神兵器――コキュートスを再び構える。

 ――憶いだせ。
 ――それらを呪詛として受けなお悲劇に立ち向かう、なけなしの勇気と覚悟を!

「お前ら全員を、凶悪殺人集団『ポーシュボス』として――告発する」

 ごう!!
 ストームが荒れ狂い、ポーシュボスがまた一体、いや、さらに増える。増えていく。
 それをはとりは全力をもってコキュートスを横薙ぎに振るうことで、斬撃波を発生させ両断し、一掃する。
 蠢く触手が宙を舞い、すぐに第二波が襲い掛かってきても、はとりの『告発』は止まらない。歯の根を食いしばって、何度でもなぎ払う!
「俺の、あずかり知らぬ所、でッ」
 ざん!!
 偽神兵器が振るわれるたびに氷の欠片がきらめいて、はとりのどこまでも澄んだ意志を邪神どもに見せつける。
「勝手にくたばった連中なんか、知るかッ!」
 負荷が。
 ただでさえ狂気に抗うために超常の力を全力で出し尽くしているところに、頼りの偽神兵器がはとりを侵食する。
 それでも。
 それでも、はとりは叫ぶ。
 負けぬと。
 意思持つ氷の大剣を、ただひたすらに振るい続けた。

「俺の手の届く範囲で死ねよ」

 ……くそ。
 そう呟いたところで、今度こそ本当に地面が――否、はとりの身体が傾いだ。
 時が、来たのだ。代償として、昏倒する時が。
 それでも、はとりはコキュートスだけは手放さないでいた。
 たとえ昏倒したとしても、救えぬものへの悔しさが、己のカタチを保ってくれると、そう信じて。

 何度でも、繰り返し、死ぬということは。
 何度でも、繰り返し、生き返るということだから。
 何度でも、繰り返し――抗ってみせると。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九重・白亜

邪悪な心ですか。残念ながらオレは悪の心を持ち合わせていません。ただ、だからといって無視するわけにもいきませんね。
殺してくれ、か。ならば殺してやる。これがオレが与えれる、精一杯の悪だ。

ポーシュボス化は避けられないでしょう。たとえ体が異形になろうとも、持てる武器までは変わらないはず。
ストリーマとトランジスタを使い、銃弾の雨を降らせます。銃創が付いた箇所から指定UCを発動!砂と化せ!

……頭が、痛イ!全身が溶けて、消えそウだ。こンナ奴といっしょクタになるなんテ、嫌過ぎる……だガな、一緒になル気なんてねェんだよ!!
砂に消えるのは死ぬのはお前だけだ!オブリビオン!



●善心の抵抗
 ごうごう、と。荒れ狂うストームの音に混ざって、おぞましきものの声がする。
『おイで、コっチに……オいデ……』
 蠢く触手が、まるで手招きをするかのように伸びてくる。
『あハは……アは、可愛イ子だネ……』
 無数の瞳が、いっせいに九重・白亜(今を歩む魔術師・f27782)をぎょろりと射抜く。
 同時に白亜は全身が総毛立つのを自覚した。
「――邪悪な心、ですか」
 かの邪神に、いかに立ち向かうべきか。予知でもたらされた手段は二つ。
「残念ながら、オレは悪の心を持ち合わせていません」
 そのうちの一つ、純粋なる悪となる術を白亜は自ら否定する。
「ただ、だからといって無視するわけにもいきませんね」
 邪神どもから目を背け、視線を向けたその先には、両手に握られた二挺の機関銃。
「『殺してくれ』、か。ならば、殺してやる」
 穢れなき心を示すかのごとく、身に纏ったクラシック丈のメイド服が嵐で揺れる。
 魔術と銃器を駆使するメイドの『少年』は、決然とその顔を上げた。

「これがオレが与えられる、精一杯の『悪』だ」

 ――ごう!!
 ポーシュボスが、また増える。
「……っ!!」
 愛用の機関銃「ストリーマ」と「トランジスタ」をそれぞれ握る両腕から、白亜の善心を喰らっておぞましきものの侵食が始まり、少年は思わず顔をしかめる。
(「でも、持てる武器までは変わらないはず」)
 わずかに残った指先の感覚が、引鉄を引けると白亜に告げる。
「あ、あぁ、あ――!!」
 それを見れば、見るだけで侵食が進むと承知の上で、白亜は確実にポーシュボスへ銃弾の雨を降らせるべく真っ直ぐ前を見据えて対峙して、機関銃を乱射した。
『がッ、あ、痛、イたイ』
『痛い、イぃ……キもチ、い……』
 狂った声が木霊する。身悶える邪神どもの身体には、無数の銃創が広がっている。
 肩口あたりまでポーシュボスの侵食を受けながら、顔すれすれまで迫る触手を疎ましげに首を振って払いのけながら、白亜はそれでも、凜と叫んだ。

「砂と化せ――【破壊魔術:風化(イロウ)】!!」

 ――ば、きっ。
 蠢く触手の動きが、一瞬だけ、静止したように見えた。
 白亜の宣言の直後、大きな音が響き、ポーシュボスにつけられた銃創を起点として、まるで硬質なものに生じるようなひび割れが一気に広がったのだ。
『あ、嗚呼、アあアあァーーーーー!!!』
「ぐ、く……頭が、痛イ!」
 半ば捨て身とも言える白亜の超常による攻撃は、確実にポーシュボスの身に損害を与えていた。
 ――白亜自身の、重度の侵食と引き換えに。
 身体の末端である手足はとうに異形と化し、後頭部から脳髄を啜らんと無数の小さな触手が迫る気配を感じ、精神が自壊しそうになる。
(「全身が溶けて、消えそうだ」)
 その感覚は、きっと間違いではなかった。触手は臓腑をも喰らわんと蠢くのだから。
「こンな奴ト、いっしょクタになるなんテ、嫌過ぎる……」
 思考を敢えて声に出すことで、必死の抵抗を試みる白亜。
 己の声音が、眼前の邪神に近しくなっていることに愕然としながらも、それでも屈せぬと少年は大きく息を吸い、咆えた。
「だガな、一緒になル気なんて、ねェんだよ!!」
 触手に呑まれそうになる身体を、顔を、顔面を、強く前に突き出して宣言する。

「砂に消えるのは、死ぬのは――お前だけだ! オブリビオン!!」

 ばき。
 ばき、ばきばきばきっ――!

 白亜の決死の破壊魔術は確実にポーシュボスの一角へと損害を与え、おぞましき触手を砂と化し消し去ることに成功した。
「はっ、……あ」
 ひとまずの危機を脱した白亜は、自らの肉体が正常に戻っていくのを確かめると、後続の猟兵に後を託すことにした。
 もう、腕もすっかり元通り。
 おぞましき時は、過ぎ去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイ・アイオライト

嵐と化して、耳元で騒ぐしか能のない奴らが、今度は身を寄せ合って世界に八つ当たりでもしてるってわけ?

そういうの良いのよ。惨めすぎて逆に哀れだわ。死んだ肉塊共、過去の残影が文字通りの醜い存在に成り果ててるっていうなら、全部殺すわ。そこに何の躊躇もない。
UC発動。邪悪なる者はあたしの内にいる。

クラミツハ、殺すわよ。全部、この嵐が血の嵐になるまで、全部を殺す。

『やっと!やっとか!クハハハハハ!ならば殺そう!!全てを殺し、微塵に磨り潰し!そうして全てが消え失せても殺す!!殺すッ!!』

クラミツハに体を預けて、影を自在に操って『範囲攻撃・暗殺・蹂躙』。
率直に言って気持ち悪いのよ。さっさと消えてもらえる?



●悪性の鏖殺
 ポーシュボスはいまだ健在にて、立ち向かう猟兵たちに狂気を撒き散らす。
 おぞましき触手の蠢きで視覚から、未練がましい言葉で聴覚から。
 そこに僅かでも『善なる心』あらば、狂気で染め上げんと触手を伸ばす。
 ――では、レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)はどうか?

「嵐と化して、耳元で騒ぐしか能のない奴らが」
 一瞥し、息を吐く。
 心底、呆れたと言わんばかりに。
「今度は身を寄せ合って、世界に八つ当たりでもしてるってわけ?」

 嗚呼、嗚呼。
『狂っテいル』
『こンなハずじャ、なカっタ』
『ウふフ……ねェ、あナたモ』
 視ても、聞いても、レイは動じず、ただ冷ややかにおぞましきものへと吐き捨てた。

「そういうの、良いのよ」

 ――茶番でしかない。同情の余地ひとつなければ、くれてやる善の心さえもない。
「惨めすぎて逆に哀れだわ」
 死んだ肉塊共、過去の残影が、文字通りの『醜い存在』に成り果てているというのなら。
「全部殺すわ。そこに何の躊躇もない」
 そう冷然と告げて、レイがそっと背に手を回して触れたのは『影憑き』の傷痕。
 ごうごうと、風が、嵐が、吹き荒れる。
『おォ……お、オ前、は……』
 蠢く邪神は、何かを察したのか、感極まったかのような声を漏らす。
 それさえも疎ましいと、レイは赤く紅い瞳を見開いた。

「クラミツハ、殺すわよ」
 ――発動せよ、【影憑・闇御津羽神(カゲツキ・クラミツハ)】。
「邪悪なる者は、あたしの内にいる」

 ――ご、ごぅ!!
 嵐の鳴き声にも負けぬ、禍々しい『影』が。
 それは密やかに、音など立てぬはずなのに、音を立てたかのごとくに錯覚をさせるほどの勢いで、レイの背後からぶわっと膨れ上がり、四方八方から邪神めがけて伸びた。
『やっと! やっとか! クハハハハハ!!』
 ――そう、全部。この嵐が血の嵐になるまで、全部を殺す。
 影憑きの根源たる『クラミツハ』に身を委ね、鏖殺の影を自在に操る――暗殺者。
『ならば殺そう!! 全てを殺し、微塵に磨り潰し! そうして全てが消え失せても殺す!! 殺すッ!!』
 影は触手に負けぬ無数の腕と化して、尽きることなくレイの身体から――傷痕から伸び続け、純然たる殺意を、悪意を、ポーシュボスへと向け続ける。
 斬られ、潰され、細切れになっていきながらも身をよじり何事かを呻くさまは、見ようによっては歓喜に打ち震えるもののようにも思えたろう。
 額を押さえるように片手を当てていたレイが、一瞬だけクラミツハの操りから離れて、唇の動きだけで、こう告げた。

 ――率直に言って気持ち悪いのよ。さっさと消えてもらえる?

 影は嵐を蹂躙し続ける。
 邪神は殺されることに歓喜しながら、それでもなお生き汚く増殖し続ける。
 文字通りの血の嵐の中で、レイは間違いなく『邪悪なる者』であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木常野・都月


狐だった俺にとって、善とか悪とか、無縁だったんだよな。
そもそも、善悪って人間が勝手に決めてるものだから。

善悪に無縁。
つまり、俺は完璧な悪には成れないって事だ。

なら答えは1つしかない。
ポーシュボスにならないように、踏ん張りながら戦おう。

相手を思いやる余裕もないだろうし、早く相手を倒す事を優先に立ち回ろう。
[野生の勘、第六感]で敵の動きを[情報収集]すれば立ち回り安いかな。

チィ、頼む。
俺がポーシュボスにならないように、正気を保つ手伝いをして欲しい。
人の精神を司る、月の精霊様のチィにしか頼めない。
割と頼みの綱だ。

あとは[激痛体制、呪詛体制]あたりで耐えられるかな。
でも、耐えられなくても耐えないと。
最悪は自分の腕をガブーッてやるしかないな。痛いけど。
ポーシュボスになるよりマシだ。

UC【精霊の矢】を撃ち込んで少しでも数を減らさなきゃ。
光の精霊様、お願いします!

敵の回復を上回る勢いで倒していかないと。
[属性攻撃、2回攻撃、範囲攻撃]で少しでも倒していこう。
攻撃は[高速詠唱、カウンター]で凌ごう。



●善悪の物差し
(「狐だった俺にとって、善とか悪とか、無縁だったんだよな」)
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)にとっての、善悪とは何かを考える。
(「そもそも、善悪って『人間が勝手に決めてるもの』だから」)
 ポーシュボス、おぞましき邪神に、都月はどう挑むべきか。

 ――善悪に無縁。

「……つまり、俺は完璧な『悪』には成れないって事だ」
 己を省みて、都月は一つの結論を導き出す。
 それは、同時に――。
『お前モ、こチら側ニ来るンだ』
『善なル者の、気配ガすル……』
『うレしイわ……コれデまタ一人……』
 都月が顔をしかめて、左の腕を右腕で押さえた。
 ――異形化が、既に始まっていた。触手が生えているさまは、それを見ただけで気が遠くなりそうだった、が。
(「ああ、なら、答えは一つしかない」)
 ぎり、と歯を剥いて都月は左腕に思い切り爪を立てた。
(「ポーシュボスに『ならない』ように、踏ん張りながら戦おう」)

 相手を思いやる余裕なんてない。
 一刻も早く邪神を斃すことを優先に立ち回ろう、そう方針を決めた都月は。
「チィ、頼む」
「チィ……!」
 相棒たる月の精霊様の愛し子こと『チィ』に、己の正気を保つ手伝いをお願いした。
 月の精霊は、人の精神を司るという。ならば、割と本気で頼みの綱となる。
 チィは異形化が始まった都月に寄り添って、チィなりに善処しているようだった。
 その温もりを頼もしく思いながら、都月はポーシュボスを睨み付ける。
 触手の動きや攻撃などについては、よくよく見れば躱すのは容易い――かも知れない。
 しかし、それをすればするほど正気は加速度的に失われていくのは必定。
「ぐ、く……っ」
 善なる心を捨てきれぬ妖狐を、邪神どもは逃がさない。左腕を押さえつけていた右腕までもが、蠢く触手に変じていくではないか。
「くっ……そ!」
 チィの懸命の助力がなければ、きっともっと侵食の速度は速かったろう。
 そう思うと、自分自身がしっかりせねばと思うあまりに――都月は己の腕に思いきり噛みついて、痛みで正気を保とうとするに至った。
(「痛い、痛いけど、ポーシュボスになるよりマシだ」)
 耳障りな言葉の数々、自傷の痛み、それらがないまぜになって都月は思わず泣きそうになるも、必死にそれをこらえて攻勢に転じるべく一度首を振った。

 指先は既に触手と変じていたけれど、都月が行使する精霊の術は願いさえ通じればどうとでもなる。
 願いを託す精霊様の属性は、光。
 底なしの闇であり混沌であるポーシュボスに立ち向かうには、この上なく相応しい。
「光の精霊様……っ、お願いします!!」

 ――ど、どどどどどっ!!
 光輝く無数の矢が、ポーシュボスを囲んだと思うやいなや、いっせいに突き刺さる。
 浄化されるかのごとくに消えていく触手と、その先から回復を始める邪神ども。
「回復を上回る勢いで倒していかないと……!」
 一度で倒しきれないなら、さらに攻撃の回数と手数を増やすだけだ。
 磨き上げた精霊行使の力を最大限に発揮して、異形の邪神を屠っていく都月。
 邪神の侵食を確実に遅らせたチィの援護の甲斐もあり、完全に狂気に呑まれずに戦い抜くことができた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マオ・ブロークン
少しでも、善の心をもつ、生物。
今の、あたしは、どうかな。どれくらい、当てはまる、だろう。
ひととしての、生命活動は、止まって。
考える、心は、死んだ脳に、刻まれた……記憶の、再現。
あたしの、善性は。人間らしさは。
脳のフィルターを通して、できあがったもの。

だから。オーバーロード、真の姿を、晒す。
あたしの、真央の身体を捨てて。内に篭もる怨念を、表出させる。
生けるものすべてを憎み。世界を恨み呪う、悪霊。
人を救わない。世界を救わない。邪悪なるもの、だ。

抉りとられた、虚ろな眼から。悲しみの涙が溢れつづける。
あたしはひとり死んだのに。お前らは、そうやって寄り集まって。
仲良く生き続けている。現象の中で、呑気に喋っている!
憎い。憎い。殺してやる。
悲しみの喚んだ化物と一緒に、千々に引き裂いてやる!

悪霊は。歪んだ眼でものを観て、ただひとつの悲しみに囚われて
あたりへ理不尽な死と呪いをばらまき続ける。
封じられるべき災いだけれど、今このときだけは。
存分に、荒れ狂ったさまを見せつけてやろう。



●ネメシス
 ――わずかでも『善の心』あらば。
 マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)は、考える。
(「少しでも、善の心をもつ、生物」)
 眼前で蠢く邪神どもは、マオを、どう判断するだろう?
(「今の、あたしは、どうかな。どれくらい、当てはまる、だろう」)
 そう考える『心』は、死んだ脳に刻まれた記憶の再現でしかなく。
(「あたしの、『善性』は。人間らしさは」)
 ――脳のフィルターを通して、ようやくできあがったにすぎないもの。

 涙が、こぼれ落ちる。
 もう、理由さえ忘れ果てた涙が。
 誰も拭ってくれないものだから、とめどなくあふれ、頬を伝う。

「だから」
 蒼い瞳が、昏い光を湛えた。
「『オーバーロード』、真の姿を、晒す」
 死してなお、その身は恋に恋したお年頃の女の子であったものを――捨てる。
 己を――『真央』を超えて、引き出されるのはマオの内に篭もる怨念である。
「……ぅ、う……う、ひぐっ、あああ……」
 嗚咽は慟哭となり、触手の集合体というおぞましきものを射抜く眼光は鋭く。

『『『善なル心が……存在シなイ……!?』』』

 隙あらば『こちら側』へと引き入れんとその身を震わせていたポーシュボスたちが、口々に今のマオの在りように驚愕の声を漏らす。
 そう。ここに立つのは生けるものすべてを憎み、世界を恨み、呪う――『悪霊』。
「人を救わない」
 涙をぼろぼろとこぼしながら。
「世界を救わない」
 ぎりと歯を食いしばりながら。
「あたしは――『邪悪なるもの』、だ」
 抉りとられた、虚ろな眼窩。
 とめどなく溢れる悲しみの涙。
 こうなっては、もう止まらない。マオは、いつの間にか周囲に漂い宙を泳ぐ歪んだ骨魚たちを引き連れて、一歩ずつ邪神どもへと近づいていく。

「あたしは、ひとり死んだのに」
 天国から地獄へ、突然どん底へ。
「お前らは、そうやって寄り集まって」
 何が狂気か、仲良しごっこにしか見えない。
「仲良く生き続けている。『現象』の中で、呑気に喋っている!」
『嗚呼、私たチが……幸セだト……?』
『こンな姿ニなッて、死ヌこトも出来ナい……』
『俺タちヲ……哀れンでハくレなイのカ……?』
「うるさいッ!!」
 両耳を塞いで大きく一度首を振って涙を散らし、マオは叫んだ。
「そういうところよ……! 憎い、憎い、そんなに死にたいなら殺してやる」
 骨魚たちは、マオの悲しみが喚んだ化物だ。
 マオが悲しみを覚えた対象――ポーシュボスを狙いと定め、いっせいに構えた。

「こいつらとあたしとで――千々に引き裂いてやる!!」

 克己と共に善性を完全に捨て去ったマオは、邪神どもの影響を受けない。
 マオは――『悪霊』は、歪んだ眼でものを観て、ただひとつの悲しみに囚われて、あたりへ理不尽な死と呪いをばらまき続ける。
(「本当は、こんなの、封じられるべき災いだったけど」)
 マオの根底にある精神は、どこにでもいる普通の女の子。
 けれども、敵を倒す手段として有効だというのならば。
(「存分に、荒れ狂ったさまを見せつけてやろう」)
 悪霊が、ストームの中で百鬼夜行を展開する。
 邪悪なるものとして、一切の躊躇なく、邪神の触手を磨り潰していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
世界を救うのが猟兵、そして今アポカリプスヘルを守るためにこの地に立っている。
―傍から見れば善行なのでしょうね
現に体を蝕み侵食される感覚はありますから。

ご存知ですか?
神に善いも悪いもないことを。
アポカリプスヘルで生活する人々にとって、猟兵が戦うことは正義であり善行でしょう。
では、貴方達にとっては?
目的を阻害され、あまつさえ骸の海へと還される。果たして善行と言えるのでしょうか?

UC『狂炎舞踊』使用
屁理屈を並べるつもりも押し問答するつもりもありません。
気まぐれに問うてみたかっただけです。

今の私の行いを善行だとポーシュボス化の侵食に抗い、兄の炎纏って剣を振るえる理由はただ一つ。
アポカリプスヘル守る為ではない。
ただお前が気に入らない。
だから邪魔をする。
だから倒す。
ただそれだけ。
それが私をつき動かす理由。

神はただ己のしたいようにする。
そこに善悪はない。
神に仕える私もそう。

我思うがまま、
ただ我儘に―。



●おこがましきもの
 群れる邪神のおぞましき姿は、徐々にではあるが着実にその数を減らしつつあった。
 転移を受けて舞い降りた吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は、邪神どもと『眼』が合った瞬間、筆舌に尽くしがたい怖気を覚えた。
 ああ、そういうこと――なんて、思いながら。
「世界を救うのが猟兵、そして今アポカリプスヘルを守るためにこの地に立っている」
 傍から見れば、それはきっと、善行なのだろう。
 身体の末端から、臓腑の内側から、おぞましきものに侵食される感覚がするから。

 けれど狐珀はポーシュボスから目を離さず、逆に問いかけてみせた。
「ご存じですか? 神に『善い』も『悪い』もないことを」
『……異なルこトを』
『わタしタちは、成リ果てテしマっタのヨ』
『コんナ俺たチは……俺タ、ちハ……』
 己の定義すらままならぬ、狂気に満ちたものども。
 狐珀は手首あたりから噴き出した触手を押さえるように反対側の掌を添える。
「アポカリプスヘルで生活する人々にとって、猟兵が戦うことは正義であり善行でしょう」
 藍の瞳を凜と向け、狐珀が邪神どもに言葉を投げかける。
「では、貴方達にとっては?」
 狐珀が戦い、ポーシュボスを倒すということ。
 ポーシュボスの側からすれば、目的を阻害され、あまつさえ骸の海へと還されること。
「私の行いは、果たして善行と言えるのでしょうか?」

 ――善悪の定義。

 狂気の沙汰にあるものに、問うても答えは返ってこないかも知れない。
 だが、それで良かった。
「屁理屈を並べるつもりも、押し問答するつもりもありません」
 きゅいっ、と繰り糸を引いて、兄の姿を模したからくり人形を引き寄せる狐珀。
「気まぐれに、問うてみたかっただけです」
 兄のごとく慕う魂は狐珀に寄り添うと、その力を借り受けて、浄化の炎を纏った神剣を手に、戦乙女へとその姿を変じさせる――!

『ッ、来るナ、来るナ来るナ来るナ!』
「……ない」
 何事かを呟きながら狐珀が神剣を振るえば、たちどころにポーシュボスの触手が焼き切られて宙を舞う。
(「今の私の行いを『善行』だと」)
 回復する先から、返す刀で次々と斬り伏せる。
(「ポーシュボス化の侵食に抗い、兄の炎を纏って剣を振るえる理由はただ一つ」)
 ――ざんっ!!
「アポカリプスヘルを守る為ではない」
 飛び散った触手に、残された本体に、ついた目玉がいっせいに狐珀を射抜こうと。
 身体のあちこちから触手を生やさせられながらも、狐珀は凄絶に言い放った。

「ただ、お前が気に入らない」

 だから、邪魔をする。
 だから、倒す。
 ただ――それだけ。

「それが、私をつき動かす理由」

 斬られては再生を繰り返す邪神どもが、何事かを呻いている。
 ああ、でも、それさえも関係ない。
(「神は、ただ己のしたいようにする」)
 そこに、善悪はない。
 神に仕える『私』も、そう。

 ――我思うがまま、ただ、我儘に――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

リア・ファル
・ポーシュボス化してでも戦う

戦艦は機能を止め、地に落ちた
AIであるボクも、今、飲み込まれようとしている

だけど
理不尽に抗えと、胸の裡の声は叫び続けている
祈りより創造されたこの身が邪神に脅かされてる今もなお

故に、ボクのできる事を為す
ボクの手札で、かの邪神に対抗しうる、唯一の力
邪神すら殺せるだろう魔神

死ぬことを許さず
諦めることを許さず

祈りの反転、ボクを存続させ、責務を果たす為に「だけ」動く
呪いの魔神

「力を貸して、魔神バロールよ! 『今を生きる誰かの明日の為に』!」
【魔神の寵愛】!

――是認
我が愛し子よ、此処で滅すること許さず

その身を侵す不埒な邪神は、既に『捉えた』
我が魔眼、知覚せし万物を滅する

善悪はこの身に非ず
呪いを強制する魔神なり
(魔神の見た目は時々によるのでお任せ)

では、知覚しうる者共よ、悉く滅せよ



●神々の黄昏
 猟兵、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)。
 機動戦艦ティル・ナ・ノーグは虚数の海へと沈み、そのAIたるリアもまた、おぞましきものの餌食になろうとしていた。
(「……っ」)
 臓腑が蠢くような感覚は、気のせいではないのだろう。
 指先が自分のものではないように蠢くのも、正しい認識なのだろう。
 リアはただ一人、嵐が吹きすさぶ邪神の洞(うろ)の中に立つ。
 膝から頽れそうになるのを、己の身をかき抱いて必死に耐える。
 歯の根を食いしばり、懸命に抗う意思を示す。

(「だけど、理不尽に抗えと、胸の裡の声は叫び続けている」)

 それは、他ならぬリア自身が痛いほどに理解していた。
 数多の祈りより創造されたその身が、邪神に脅かされている今も、なお。
『いイ子だネ……こッちヘ、おイで……』
 手招きというにはあまりにも禍々しい、伸ばされてくる触手の束。
『コこハ……楽しイよ……』
 残響音を伴ったおぞましき誘いの声の、何と耳障りなことか。
 リアは首を振り、しかし、決して退かなかった。

(「故に、ボクのできる事を為す」)
 リアが持つ手札の中で、かの邪神に対抗しうる、唯一の力。
(「邪神すら殺せるだろう『魔神』)
 死ぬことを許さず、諦めることを許さず。

 ――ぎんっ!
 ずっと俯いていたリアが、桃色の貴石を思わせる瞳を初めて邪神へと向ける。
 ぎょろりと向かれた無数の目玉に、気が狂いそうになるも、それでも叫んだ。
「力を貸して、魔神バロールよ!」
 祈りの反転。『ボク』を存続させ、責務を果たす為に『だけ』動く、呪いの魔神。
「『今を生きる誰かの明日の為に』! 【魔神の寵愛(ガーディアン・バロール)】!!」

 其れは、誓い。
 其れは、祈り。
 其れは、呪い。

『――是認』
 手足が異形と化し、内臓をかき回されるかのような不快感に襲われながらも、リアが見たものは。
『我が愛し子よ、此処で滅すること許さず』
 半人半獣の、筋骨隆々たる魔神であった。
「……ああ、お願い」
 リア自身は精神も肉体も摩耗しきって、そう呟くのが限界であったが、その状態こそがかの魔神を召喚する決定的なものであったのだ。

『その身を侵す不埒な邪神は、既に『捉えた』」
 神話に語られしバロールに違わず、魔神の最大の武器は『魔眼』だ。
『我が『魔眼』、知覚せし万物を滅する」
 ――見たものを、殺す。
 邪神とて例外ではない、魔神に射抜かれた箇所から蒸発するように消えていく。
『な……何者、ダ……』
 ポーシュボスの呻き声に、バロールは動ずることなく返す。
『善悪はこの身に非ず、呪いを強制する魔神なり』
 じゅっ、じゅっ。視線が触手を穿つように、次々と大穴を開けていく。

『では、知覚しうる者共よ、悉く滅せよ』
 ――ああ、もう、大丈夫。
 リアは安堵の中、意識を手放した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
私はダンピール、ヒトの血を吸って生きるもの
私は悪霊、ヒトの怨念を纏って在るもの
私は咎人殺し、ヒトの命を奪って糧とするもの
そう、私はダンピール……生まれながらに神を殺す力を持つものです

……で、だからどうだというのです?
いずれも人の価値観から見れば邪悪極まりないでしょうが
知ったことではありません
私はもとよりヒトではなく
ゆえにヒトの勝手に決めたくだらぬ「善」とやらの規範からは
私は最初から埒外にいるのです

お笑い草ですね、フェノメノン
あなたもヒトではないくせに、ヒトの決めた善にこだわっている
その時点であなたが一番善を欲しているのだと知りなさい
つまらぬ自己撞着の矛盾の塊よ

「早業」「範囲攻撃」で鎖を次々と大地に撃ち込み
アンカーとしてストームの猛威を凌ぎつつ
「呪詛」を満たした「結界」を張り
攻勢防壁としながら間合いを詰めていきます
攻撃を防ぎつつ、触れたものを呪うためにね

接近したならUCを発動
私がここに来たのは正義のためでも善のためでもありません
あなたを逆に食らい尽くすためですよ、ふふ、ふふふ……



●咲き誇れ、悪の華
 ポーシュボスの群れが、目に見えてその数を減らしていた。
 しかしなお健在であるならば、攻撃の手を緩めてはならない。
 黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は邪神を前にしても臆することなく、堂々と立ちはだかってみせた。
「私はダンピール、ヒトの血を吸って生きるもの」
 麗しきハイヒールで荒野を踏みしめ、蠢くものへと近づいていく。
「私は悪霊、ヒトの怨念を纏って在るもの」
 度重なる攻撃を受け、回復が間に合わないのか、それでも何事か呻きながらポーシュボスは触手をうごめかせてその存在を保とうとする。
『あ……ア……』
「私は咎人殺し、ヒトの命を奪って糧とするもの」
 何ということか――魅夜は、蠢く触手を自ら手に取ったのだ。
「そう、私はダンピール……生まれながらに『神を殺す力』を持つものです」
『コろ、ス……こロさ、レる……』
 ポーシュボスの無数の目玉は虚ろにさまざまな方向を見るばかり。
 眼前の存在を『どう認識して良いか分からない』というていであった。

 魅夜はため息をひとつ、触手を身勝手に放り捨てた。
「……で、だからどうだというのです?」
 邪神どもは惑うように蠢く。
 善心あらばすかさず引き入れようものを、邪悪なるものならば徹底的に抗おうものを。
『わカら、ナい……』
「そうでしょうね、いずれも人の価値観から見れば邪悪極まりないでしょうが、知ったことではありません」
 それは、謎かけをした当事者による目明し。
「私はもとよりヒトではなく、ゆえにヒトの勝手に決めたくだらぬ『善』とやらの規範からは、私は最初から埒外にいるのです」
 美しく流れるように伸びた漆黒の髪も、黒曜石の瞳も、ヒトのカタチを取りながら『ヒトではない』と娘は淡々と告げるのだ。
「お笑い草ですね、フェノメノン」
 冷ややかに言い放つ魅夜に、邪神どもは凍りついたかのごとく手出しが出来ずにいる。
「あなたもヒトではないくせに、ヒトの決めた善にこだわっている」
『ヤめ……ヤめテ……』
「その時点で、あなたが一番善を欲しているのだと知りなさい」

 ――つまらぬ自己撞着の、矛盾の塊よ。

『うア、ぁ、アあアぁーーーーー!!!』
 まるで魅夜を黙らせようとばかりに、触手がいっせいに伸ばされてきたのを受けて、魅夜は大きく後方へと飛び退る。
 ごうごうと唸りを上げて巻き上がるストームと触手に抗うべく、魅夜は先端に鈎の付いた鎖を次々と荒野に撃ち込んで、アンカーとしてその猛威を凌ぐ。
 長い髪をなびかせて顔を上げれば、呪詛に満たされた結界がたちどころに張られる。
 その結界を纏ったまま、攻勢に転じるべく魅夜は再び歩を進め始めた。
 ――攻撃を防ぎつつ、触れたものを呪うために!

「私がここに来たのは、正義のためでも善のためでもありません」
 発動せよ超常、Destinyでありdeath is tied need。
 ――【篠突く雨のごとく罪と罰は降りつのる(デス・ティ・ニー)】!
「あなたを逆に食らい尽くすためですよ、ふふ、ふふふ……」

 埒外の存在は、邪神をも呑むのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミハエラ・ジェシンスカ

悪いが、それ(無事に帰還)は約束できないな
「邪悪なる者になれ」だと?
言われるまでもない
元より私はその為に造られたマシンだ
ああ、なんとも悪くない話じゃないか
私の邪悪を貴様らが証明してくれるというんだからな

【悪心回路】起動【リミッター解除】
再凍結の設定なぞする余裕はあるまい
そのまま邪悪に成り果てたのならそれこそ我が本懐というものだ

周囲にフォースマインドトリックを照射
【催眠術】【殺気】を放ち【恐怖を与える】
悪いがこの戦いに救いなどありはしない
貴様らはみな恐怖の中で死んでゆけ

隠し腕、ドローン共に初手より解禁
6刀と【2回攻撃】の手数で敵を殲滅する
フォースレーダーによる【索敵】【情報収集】で全周警戒
【騙し討ち】【フェイント】で隙を見せて敵の攻撃を誘い
突撃の勢いを逆手に取った【カウンター】で切り捨て
あるいは【念動力】で【受け流し】敵へと叩き返してやる

かつて銀河帝国の造り上げた悪心が真の邪悪足り得るのか
はたまた不完全で無様な模造品にすぎないのか
さぁ、貴様が神だというのなら確と審判してみせるが良い



●悪逆を以て悪と成れ
 送り出す猟兵たちの無事を願うグリモア猟兵の言葉は、時に無粋なものとなりうる。
「悪いが、それは約束できないな」
 ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)に於いては、特にそうであった。
「『邪悪なる者になれ』だと? 言われるまでもない」
 ――元より私は、その為に造られたマシンだ。
「ああ、なんとも悪くない話じゃないか」
 最後の悪あがきとばかりに禍々しく蠢き、ひっきりなしに何やら言葉を発するポーシュボスを見遣り、ミハエラは口角を上げた。
「私の『邪悪』を、貴様らが証明してくれるというんだからな」

『殺さレる、コろサれル……!』
『こワい』
『うレしイ』
『アは、ハはハはァ……』

 邪神どもの言葉を理解しようとしてはいけないし、そもそもするつもりもない。
 ミハエラは両の腕でフォールンセイバーを交差させ、超常の発動を宣言した。
「【悪心回路(アクシン・サーキット)】、凍結の一時解除を承認」
 ――轟っ!!
 ストームにも負けぬ爆発的な戦闘能力増大に伴う『圧』の音が響く。
「――起動(イグニッション)」
 リミッター、解除。
 再凍結の設定? そんなもの、する余裕はあるまいて。
(「そのまま邪悪に成り果てたのなら、それこそ我が本懐というものだ」)

 刮目せよ、これこそが邪悪の化身、邪悪そのもの。
 精神干渉能力を帯びたサイキックエナジーは、催眠術により強烈な殺気を、恐怖を与える――そう、邪神を相手に!
『た、助ケ……』
「悪いが、この戦いに救いなどありはしない」
 ただ事実のみを淡々と告げるミハエラ。
 その両腕が、装甲を弾き飛ばして、もう一対増えた。
「貴様らは、みな恐怖の中で死んでゆけ」
 さらに二機の半自律飛行型フォースセイバーが左右に現れ、ミハエラは実質六刀流となった。
『うゥ、う、ア、うグぁア……!!』
 蠢く触手が、いっせいにミハエラめがけて伸ばされる。
 しかしその動きすべてをフォースレーダーで捉えていたミハエラに隙はない。
 立体的に四方八方から攻め立ててくる触手は、そうとも知らずミハエラが『わざと』見せた隙を突いたと思い込み、猛然と迫ってくる。
「――その程度か」
『おオおオおッ!』
 視線も向けずに言い放ち、突撃の勢いを逆手に取ったカウンターで触手を斬り捨てた。
 波状攻撃にも負けない太刀筋は、念動力で触手を受け流し敵へと叩き返す。

「かつて、銀河帝国の造り上げた悪心が真の『邪悪』足り得るのか」
 振るわれる六刀が、次々と容赦なく触手を斬り捨てていく。
「はたまた、不完全で無様な『模造品』にすぎないのか」
『……、……ッ』
「さぁ、貴様が神だというのなら、確と審判してみせるが良い」
『……』
 邪神であったものは、もはや答えない。答えられない。
 ミハエラの刃のもとに、遂に粉微塵となるまで切り刻まれたのだから。

 それは、ミハエラが求める『答え』となっただろうか?
 邪悪なる者こそがポーシュボスを打倒せしめるとするならば、あるいは――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月22日


挿絵イラスト