3
アポカリプス・ランページ⑭~メカニカル・アニマルズ

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ #アポカリプス・ランページ⑭

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アポカリプスヘル
🔒
#アポカリプス・ランページ
🔒
#アポカリプス・ランページ⑭


0





 アポカリプス・ヘルの地平線から太陽が昇り、今日も街に朝が訪れる。一日の始まりだ。その街も、世界崩壊前は経済と文化の中心地として大いに繁栄したのだろう。だが、もはや街に生きた人間は一人も存在しない。
 何者かから爆撃を受けたと思しき高層ビルは剥き出しの鉄骨を覗かせ、半壊した車やバスが幾つも路上に打ち捨てられている。生命の気配が消え失せた、死都だ。
 朝もやの中を蠢くのは、オブリビオンと、無人兵器と化した戦車の群れ。フィールド・オブ・ナインの一角、『マザー・コンピュータ』によって生産された『戦車獣』である。
 マザーから創造された戦車獣は、プログラム通り『捕食』の対象を探して街をさまよい続ける。そして手近なオブリビオンを襲撃すると、ロボットアームを伸ばして回収し、器用に口と思しき穴へと放り込んでいった。そうやって、あらゆるものを『捕食』して取り込んでいくのが彼らの本能なのだ。
 足を踏み入れる者には、死あるのみ。奪還者の地図からも抹消された巨大なゴーストタウン。その街の名は「バトルクリーク」。

「よう、イェーガー。アンタ達を待っていたぜ」
 グリモアベースに集まってきた猟兵を出迎えたのは、フラスコチャイルドのソーシャルディーヴァ、アモン・スメラギ。今回の作戦を担当するグリモア猟兵である。
「アポカリプス・ランページもいよいよ大詰めだな。ってなワケで、アンタたちにはちょっとばかし面倒な仕事を手伝ってもらうぜ。今回向かってもらうのはこの街だ」
 アモンの持っていたグリモアが不思議な光を放つと、やがて周囲の風景は無惨に荒れ果てたゴーストタウンへと変貌した。
「このゴーストタウン……バトルクリークの街は、現在『マザー・コンピュータ』が放ったオブリビオン兵器、『戦車獣』によって支配されている。こいつらを掃除してもらうのが今回の仕事さね」
 戦車獣の最大の特徴は、有機物無機物問わず襲い掛かって取り込んでしまう、貪欲な捕食本能。オブリビオンと戦車が融合したその姿は、まさに異様としか言いようがない。
「一言で戦車といっても、形状は様々だ。一般的なキャタピラ型から二足歩行、果てはクモのような多脚タイプまで。バラエティ豊富に揃ってるぜ。戦車の見本市って感じだな」
 まあそれは置いておいて、とアモンは説明を続ける。グリモアが虚空に映し出したのは、一体の戦車獣のシルエット。カニのような容姿をした、5メートル程の大きさの個体だ。屋根の部分に、人型のオブリビオンが力なく融合している。
「戦車獣は数がかなり多い。だが、例えばこのオブリビオンだけを引きはがして戦車を奪い取っちまえば、逆にこっちの戦力として利用することだってできる。更に、戦車の砲塔にユーベルコードの『力を食わせる』ことで、俺たちのユーベルコードを応用した『ユーベルコード弾』を使えるようになるんだぜ。凄くね?」
 これはつまり、敵の捕食能力を逆手に取った戦術。どうやら、ユーベルコードまでも捕食し、模倣することが可能らしい。
「どうせ敵の技術だし、利用できるもんは利用させてもらおうぜ。その方が効率よく仕事ができるしな。……戦車獣を片付ければ、バトルクリークも安全な場所になるだろう。人を集めて、新たな拠点を作るのもいいかもな。じゃ、そろそろ仕事の時間だ。現場まで案内するぜ」
 死に絶えた街を、再び活気溢れる場所にするために。グリモアに導かれ、猟兵たちは戦いの地へと赴く。


弥句
 皆さん、アポカリ~(終末の挨拶)弥句です。当シナリオは戦争シナリオで、集団戦1章のみの構成となっております。また、このシナリオの結果がアポカリプス・ランページの戦況に影響を与えることになります。
 また、下記の条件を満たすことで、プレイングの判定に有利な「プレイングボーナス」を得ることができます。

 プレイングボーナス……戦車を奪い、乗りこんで戦う。

 今回の戦場は、マザー・コンピュータに掌握された機械都市「バトルクリーク」の廃墟。彼女によってデタラメに量産された奇怪な戦車「戦車獣」が闊歩し、侵入したあらゆるものを捕食しています。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
62




第1章 集団戦 『ND-DUST』

POW   :    群れの大海
【全個体の一斉攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    バンシィ・スクリーム
【叫び声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    コラテラルダメージ
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【個体数】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜刀神・鏡介
マザー・コンピュータの元まではあと少し
少々難しい状況かもしれないが、なんとか道を切り開いてみるとしよう
しかし、戦車を奪えか……運用経験はないが、なんとかやってみよう

神刀の封印を解放。神気を纏って自身の能力を強化
出来れば他の敵から離れた所にいる戦車獣を探して接近
戦車を傷付けないように注意しながら、オブリビオン部分を一太刀で叩き切って戦車を奪う

例えば銃撃や魔法を砲弾で放つのは分かるけど、一応は剣術を砲弾で放つってのはどういう仕組なんだろうな……などと多少くだらない事を考えながら戦車に神気を食らわせて、肆の秘剣【黒衝閃】を砲弾として放てば、着弾点を中心に衝撃波が発生。一気に戦車を蹴散らしていく





 機械都市、バトルクリークの外れに一台のオートバイがやって来た。『八咫烏』のエンジンを切り、シートから降りた夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、墓標のように佇むビル群を眺めながら呟いた。
「マザー・コンピュータの元まではあと少し。少々難しい状況かもしれないが、なんとか道を切り開いてみるとしよう」
 愛刀をバイクのリアキャリアから引き抜き、歩みを進める鏡介。程なくして、亡霊のように徘徊する戦車獣の一団が出迎えた。形状や年式は様々だが、皆一様にフラスコチャイルドと思しき、病衣を纏った子供を乗せていた。
「アァ――――……」
 否、『乗せている』というよりは『載せている』という表現が正しいかもしれない。戦車獣に取り込まれ、車体と完全に融合したオブリビオン『NO-DUST』には、知性というものがまるでなかった。うわごとのように言葉にならぬ声を発しながら、鏡介に対し敵意に満ちた眼差しを送るのみだ。
「しかし、戦車を奪えか……運用経験はないが、なんとかやってみよう」
 神刀【無仭】を鞘から抜くと、たちまち刀身から赤い神気が立ち昇り、鏡介の身体を覆った。神気によって身体能力を大幅に引き上げた鏡介は、瓦礫や放置された車両を飛び越えながら移動を繰り返し、奪い取る戦車を見繕う。
「よし――あいつにしよう」
 集団から孤立し、緩慢な動きで徘徊する一両の戦車獣に目をつけた鏡介は、音もなく戦車の死角から走り寄って距離を詰める。
「――ア、」
「貴様の戦車、頂くぞ」
 一足飛びに車体を駆け上がり、一刀のもとに斬り捨てる。たちまち絶命したNO-DUSTは、車体と接続されていた装置から容易に引き剥がすことができた。鏡介は天井部のハッチを開けて、戦車のコックピットへと身を潜り込ませる。
「中は意外に広いな」
 シートに腰かけて、手探りの状態で操縦を始める鏡介。機体をゆっくりと前進させつつ、今回の作戦について記憶を掘り返す。まずは彼自身のユーベルコードを、戦車の砲塔に『食わせる』のだ。
「例えば銃撃や魔法を砲弾で放つのは分かるけど、一応は剣術を砲弾で放つってのはどういう仕組なんだろうな……まあいい。考えるより、試してみないと」
 鏡介は剣豪であり、彼がもっとも得意とする武器も刀剣。剣術のユーベルコードを砲弾として発射するというのは少しイメージしづらいが、まずは手から神気を放ちながらコンソールに触れ、ユーベルコードをイメージしつつ砲撃の用意を整える。
 程なくして、鏡介の機体を敵と認識した戦車獣が次々と集まってきた。主砲の砲門をこちらに向けると、戦車獣は一斉に砲撃を開始する。
「……いけるか。神刀解放。剛刃に依って地を穿つ――肆の秘剣【黒衝閃】!」
 鏡介の駆る戦車が神気を帯びたことで赤い光に染まり、その砲塔から『斬撃』の力を得た砲弾が発射される。それは紛れもなく、鏡介が操る【黒衝閃】の剣風そのものであった。
「――ア、アアアアァァaaaaaaaa……!!」
 砲撃が着弾した地点を中心に、爆発的な勢いで衝撃波が発生する。その一撃は地面を掻き毟りながら戦車獣の一団を薙ぎ払うと、鋼鉄の車体を十数メートルも上空へと打ち上げたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

待鳥・鎬
横歩きしかしないわけではあるまいな

何時も通り光学【迷彩】効果のある「山吹」を羽織って行動
カニを見付けたらUC発動
一息に詰めてオブリビオン部分を【切断】
……この戦争で、人型のものを斬るのにも大分慣れちゃったな
なんて、センチメンタルになってる暇はない!
乗り込むよ、杞柳

ユーベルコードを食べさせるってどうやるんだろ
発動して見せたら勝手に情報読み込んでくれないかな
万一うちの可愛い杞柳ごと食べようとしたら、戦車丸ごと即ぶった切るけど

上手く戦車を乗っ取っれたなら、敵地へどんどん敵へ撃ち込んでいこう
ふむ、なるほど
穿牙はいわば弾丸……しかも、速度の減衰がない高威力の弾だ
ユーベルコード弾にはちょうど良かったかもね





「さすがアポカリプス・ヘル、風変わりな戦車もあるんだな。カニみたいだ」
 サクラミラージュからやって来た便利屋、待鳥・鎬(草径の探究者・f25865)は着物に施された光学迷彩で姿を隠し、物陰から戦車獣の様子を窺っていた。
「ウ……うーー……」
 そのダークグレーの戦車獣は、いわゆる多脚型戦車に分類されるタイプだった。鋼鉄の六本足で歩き、最大の特徴であるハサミ状の巨大ロボットアームを二本有する。そしてガトリング砲を備えたドーム状の胴体に、子供の姿のオブリビオン『NO-DUST』が生命維持装置と接続される形で拘束されていた。
 彼らは、廃棄処分される予定だったフラスコチャイルドの実験体である。
「横歩きしかしないわけではあるまいな。……よし、あの車両を奪おう。杞柳の牙からは逃れられないよ!」
 鎬に呼びかけられて姿を現したのは、柔らかな羽毛をもつ有翼の蛇『杞柳』。ユーベルコードを発動させた鎬は、杞柳と同型の翼を生やした姿へと変わる。そのまま地面を蹴って跳躍すると、ピンボールのような勢いで加速して空を翔けた。
「ハッ……!」
 超音速で飛翔して一気に距離を詰め、居合いで敵を斬り伏せる。機械に繋がれたNO-DUSTがその刃を回避できる筈もなく。真っ二つに両断されたオブリビオンは塵となって骸の海へと還る。
「……この戦争で、人型のものを斬るのにも大分慣れちゃったな」
 命を繋ぐ為の道具である薬匙のヤドリガミとしての矜持が、命を断ち切る行為に心を痛ませた。多少の罪悪感を感じながら『鋼切』を鞘に納める鎬。だが、戦場でセンチメンタルになっている暇はない。
「乗り込むよ、杞柳」
 鎬は相棒を引き連れて、カニ型戦車の内部へと乗り込んだ。次の敵が現れるまでに、『ユーベルコード弾』を習得する必要があるのだ。

「ユーベルコードを食べさせるってどうやるんだろ。発動して見せたら勝手に情報読み込んでくれないかな」
 OSを起動させ、モニターに表示されたパイロットマニュアルを閲覧する。砲撃武装の操作系統を重点的に調べた結果、ユーベルコード使用時の操縦者の脳波情報が機体へとフィードバックされ、攻撃プログラムが更新されることが判明した。
 これが、『砲塔にユーベルコードを食わせる』ということだろう。
「万一うちの可愛い杞柳ごと食べようとしたら、戦車丸ごと即ぶった切るけど」
 鎬は毒を吐きながらも精神を集中させ、先程の戦闘を基にユーベルコード使用時の所作を強く思い浮かべる。すると、砲撃用のプログラムがAIによって自動的に書き換えられ始めた。どうやら、捕食成功のようだ。
「やはりオブリビオン・フォーミュラの発明品、普通の戦車とは違うね」
 戦い方を理解した鎬は戦車を前進させ、往く手を遮る戦車獣の軍団へと砲門を向ける。そして、ユーベルコード弾による砲撃を敵軍へと叩き込んだ!
「ふむ、なるほど」
 ガトリング砲から放たれる砲弾が、無数の杞柳の姿形となって敵戦車を貫いていく。遠距離の敵を仕留められる『穿牙』は、いわば自分を砲弾に見立てた飛び道具。さらに、ガトリング砲の連発機構を利用すれば効果覿面だ。
「ユーベルコード弾にはちょうど良かったかもね」
 雪色の蛇に機体を食い破られ、戦車獣が次々と沈黙していく。ユーベルコード弾『穿牙』の砲声が、最前線に立つ鎬を奮い立たせるように猛々しく響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤・美雨
なんだこれ!
ほんとに何でもアリだなこの世界……
ま、ここも平和な拠点に出来る可能性があるんだ
しっかり攻略していこう

【野生の勘】で良さげな戦車を見繕う
うーん、君に決めた!なんかオーソドックスなの!
それに【ダッシュ】を駆使して張り付いて、乗っている子にこんにちは
そしてさようなら
叫び声はスルーして、怪物化した腕で食べちゃおう

そうしたら戦車ゲットだ!
操作方法分かんないけどキャバリアよりは簡単だろう、たぶん!
適当に操作して……
さっきのUCを食わせてみよう
じゃじゃーん!怪物弾の出来上がり!
どんどん撃ち込んで他の敵も喰わせていくよ

捕食者は自分達だと思ったかい?
世の中にはもっと貪欲なやつがいるって訳さ!


ミア・ミュラー
ん、みんなが暮らせるところが増えるのはとってもいいこと、だね。危険から逃げ続けるのは大変なこと、だから。わたしも頑張ってお手伝い、するよ。

んー、なんだか変わった形の戦車、ね。あれだけ大きいと壊すのも大変そうだし、わたしも戦車がほしい、な。【風槍】で作った風の槍につかまって、空から戦車に一気に近づく、ね。そのまま屋根の上に乗って、オブリビオンだけ槍で吹き飛ばして戦車をもらっちゃう、よ。
戦車に乗れたら、残りの風槍をどんどん食べさせてユーベルコード弾を連射、だよ。代償も無限じゃないし、攻撃回数が多ければ回避しきれない、よね。この街は返してもらう、よ。





 激戦の舞台となったバトルクリーク市の中心地は、未だに大量の戦車獣によって占拠されていた。そんな敵の真っただ中に飛び込んだ二人の少女猟兵が、横転したトレーラーの陰に潜みながら攻撃を仕掛けるタイミングを窺っていた。
「なんだこれ! ほんとに何でもアリだなこの世界……」
 デッドマンの娘、藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)が、すぐ傍を通り過ぎていく戦車獣たちを興味深げに観察している。戦車の形状は様々だが、すべての共通点としてフラスコチャイルドと思しき子供のオブリビオンを取り込み、生命維持装置を介して機体と融合させていた。
「ま、ここも平和な拠点に出来る可能性があるんだ。しっかり攻略していこう」
「ん、みんなが暮らせるところが増えるのはとってもいいこと、だね。危険から逃げ続けるのは大変なこと、だから。わたしも頑張ってお手伝い、するよ」
 バトルクリークの解放に成功すれば、また新たな拠点として多くの人が集まるようになるだろう。アリス適合者のミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)が、美雨の言葉に相槌を打つ。武骨な戦車よりは、白馬が引く馬車が似合うような、可憐な少女だ。
「よし、行こうっ!」
「うん」
 美雨とミアはトレーラーの陰から飛び出すと、戦車獣の群れに向かって勇敢に駆けだした。
「うーん、君に決めた! なんかオーソドックスなの!」
 美雨が目を付けたのはカーキ色をした、極めてスタンダードなキャタピラタイプの戦車。ヴォルテックエンジンの回転数を上げながら、美雨は戦車の装甲板を猛ダッシュで駆け上がっていく。
「こんにちは! キミ、一人?」
「ア……アーー……?」
 生命維持装置に繋がれた『NO-DUST』が、虚ろな瞳で美雨を見つめ返してくる。美雨はニコッと笑みを浮かべたまま、【怪物の目覚め】を発動させた。体内の刻印(ドライバー)が活性化すると共に美雨の腕がボコボコと脈動し、目の無い奇怪な獣の頭部へと瞬時に変異する。
「ウ……ウウァァァAAAAaaaaaaaaaa!!」
「そしてさよならっ」
 けたたましい金切り声を上げて、仲間を呼ぼうとするNO-DUST。だが美雨はそんなことにはお構いなく、猛り狂う腕を叩きつける。大きく開かれた怪物の顎門が、一口でオブリビオンの肉体をゴッソリと喰らい取った。
「よーし、戦車ゲットー」
 車体からNO-DUSTの骸を引きはがすと、美雨はハッチを開けてごそごそと戦車の内部へと入っていった。

「……よし、あの白い子にしよう」
 ミアは魔法でできた【風槍】を装備して飛翔し、空の上から一両の戦車獣に狙いをつけた。その戦車獣は二足歩行タイプで、珍しくパールホワイトの塗装が施されていた。なんとなく、アリスラビリンスの時計ウサギのことを思い出したミアであった。
「…………!」
 ミアの姿を捕捉した戦車獣が、肩に搭載したマイクロミサイルを発射して攻撃を仕掛けてきた。ミアは咄嗟に民家の屋根に降り立ってミサイルをやり過ごし、【風槍】を戦車獣に向けて投擲する。
「其は風……穿ち、吹き荒べ」
 投げつけた風の槍は激しく螺旋回転しながら命中し、NO-DUSTの身体はボロボロと塵芥のごとく崩れ去っていく。敵の消滅を確認すると、ミアは再び空から二足戦車へと近づいた。
「へぇ……中はこうなってるんだ」
 好奇心旺盛なミアは、操縦室に潜り込むとすぐに点検を始めた。ユーベルコードを戦車に『食わせる』方法について思案したミアだったが、砲塔をコントロールする機械に直接魔法をかけることで問題は解決した。機体を転進させ、ミアは白い戦車を駆って敵軍へと向かっていく。
「よし……これでOK。あとはようく狙って……!」
 生成した【風槍】がユーベルコードの砲弾となって、腕部に取り付けた機関砲から立て続けに発射された。風の魔力を帯びた激しい砲撃により、戦車獣たちは頑強な装甲を撃ち抜かれていく。
『見て、ミア! じゃじゃーん! 怪物弾の出来上がり!』
 そうやってミアが戦車獣を攻撃していると、美雨からの通信が入ってきた。美雨が操るキャタピラ戦車もまた、『赤黒い獣』のユーベルコードを食わせた砲撃を浴びせて、敵を駆逐している。鋼鉄の塊である戦車をも貪欲に捕食していく様子は、まさしく怪物の弾だ。
「捕食者は自分達だと思ったかい? 世の中にはもっと貪欲なやつがいるって訳さ!」
「この街は返してもらう、よ」
 マザー・コンピュータの野望を砕き、再びこの街を人の住める場所にするために――少女達が操縦する戦車は、反撃の合図たる砲声を轟かせ続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月19日


挿絵イラスト