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銀河帝国攻略戦⑬~過去と未来の天秤は

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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 グリモアベースにワープしたアカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)は、集まった猟兵たちへ慌てて語りかけた。
「皆様、大変なことが分かりました。アカネに力をお貸しくださいませ!」
 帝国の執政官兼科学技術総監ドクター・オロチが乗る『実験戦艦ガルベリオン』は、解放軍の必死の調査にも関わらず現在までその存在位置が判明していなかった。
 この戦艦を秘匿する『ジャミング装置』がある事が存在する事が判明したのだ。
 宙域内に多数設置された『ジャミング装置』を破壊する事で、『実験戦艦ガルベリオン』を発見する事が可能となるのだ。
「皆様は、このジャミング装置の防衛機構を突破して、破壊していただきたいのです」
 ジャミング装置には、近づいた対象のトラウマとなる事件などを再現し、対象の心を怯ませるという機能がある。
 心が怯むと、その度合に応じて無意識にジャミング装置のある場所から離れてしまうのだ。
 つまり、強い心で「過去のトラウマ」を克服しなければジャミング装置を破壊できる距離まで近づくことができないのだ。
 ジャミング装置が見せる過去のトラウマは、一人ひとり違うため今回は連携して戦うことはできない。
 己の過去には、己自身の心で立ち向かわなければならないのだ。
「過去に受けた心の傷は、克服しがたいものがあります。ですが、アカネは皆様が必ずや過去に打ち勝ち前に進む力を手に入れられると信じております。……どうぞ、ご武運を」
 アカネは手を握りしめると、グリモアを発動させた。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
 マスターの三ノ木咲紀です。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 ドクター・オロチの精神攻撃を乗り越えて、ジャミング装置を破壊するというシナリオになります。
 ⑪を制圧する前に十分な数のジャミング装置を破壊できなかった場合、この戦争で続くシナリオを制圧することが不可能となります。

 プレイングでは、『克服すべき過去』を説明した上で、それをどのように乗り越えるかを明記してください。
 『克服すべき過去』の内容が、ドクター・オロチの精神攻撃にふさわしい詳細で悪辣な内容であるほど採用されやすく、またリプレイが盛り上がります。
 もちろん乗り越えることができなければ失敗判定となります。バランス良くプレイングをおかけください。

 このシナリオに連携要素はなく、個別のリプレイとして返却されます。
 一人に付き一つジャミング装置を破壊できます。
 『克服すべき過去』が共通する場合(兄弟姉妹恋人家族その他)に関しては、プレイング次第で同時解決が可能かも知れません。

 それでは、皆様のプレイングをお待ち致しております。
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第1章 冒険 『ジャミング装置を破壊せよ』

POW   :    強い意志で、精神攻撃に耐えきって、ジャミング装置を破壊する

SPD   :    精神攻撃から逃げきって脱出、ジャミング装置を破壊する

WIZ   :    精神攻撃に対する解決策を思いつき、ジャミング装置を破壊する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リグレース・ロディット
チャンスがあるうちに倒さなきゃね。もったいない事はしない……できないよ!だから、頑張るんだ。僕。リグレース。
【WIZ】『克服すべき過去』
弱いから誰も守れない。いつの間にか、村の人がヴァンパイアの領土になってたり。神様を呼び出すとか言って関係ない人を殺したり。……皆苦しんでいるのに何もできない……それをね、目の前にしてもね、僕何もできない……弱いから……子どもだから……

『解決』
……あーあー!弱くても良いじゃん!子どもだからってなんだ!言い訳駄目!これから強くなれば良いじゃんか!!一人じゃダメなら皆の力でも借りれば良いじゃんか!!もう一人じゃないもんね!

これ作ったやつ殺す。
(絡み・アドリブ大歓迎)



 痛いほどの圧を放ち続けるジャミング装置を前に、リグレース・ロディット(夢みる虚・f03337)は手を握りしめた。
 ジャミング装置へ近づくたびに、心が悲鳴を上げる。あちらへ行ってはいけないと警鐘を鳴らす。だが。
「チャンスがあるうちに倒さなきゃね。もったいない事はしない……できないよ! だから、頑張るんだ。僕はリグレース。必ず過去に打ち勝ってみせる!」
 恐れず歩みを進めるリグレースは、ふいに陰る視界に立ち止まった。
 生まれ故郷の村は平和だった。希望の見えない世界でも、皆より良く生きようとしていた。だが。
 いつからだろう。いつの間にか村はヴァンパイアの領土になっていた。
 いつからだろう。村の大人たちは希望を語ることをやめ、ヴァンパイアの言いなりに供物を捧げ、生贄を捧げた。
 神様を呼び出すとか言って関係ない人を殺したりする大人たちは皆、苦しそうだった。
 幼かったリグレースには、何もできはしなかった。助けようと伸ばした手を、大人は払いのける。
 弱いから。子どもだから。大事な人が目の前で苦しんでいるのに、何もできない。
『ガキは引っ込んでいろ』
 幻影の大人に言われ、子どものリグレースは一人膝を抱えて泣いている。
 思わず一歩下がりかけた時、脳裏に鮮やかな記憶が蘇った。
 猟兵となり、共に戦ったたくさんの戦友が、旅団で知り合ったたくさんの友が。
 故郷を去った後の全ての経験が、リグレースに「今」を取り戻させた。
 今ここにいるリグレース・ロディットはもう、無力な子供なんかじゃない。
「……あーあー!」
 大きくため息をついたリグレースは、膝を抱える子どもの前にしゃがむと幼いリグレースの肩を叩いた。
 驚いて顔を上げる幼いリグレースに、現在のリグレースは力強く語りかけた。
「弱くても良いじゃん! 子どもだからってなんだ! 言い訳駄目! これから強くなれば良いじゃんか!!」
 立ち上がった現在のリグレースは、子どものリグレースを立たせた。振り返った視線の先には、旅団の仲間たち。知り合った全ての人々が、力強く微笑みかけてくれている。
「一人じゃダメなら皆の力でも借りれば良いじゃんか!! もう一人じゃないもんね!」
 微笑む現在のリグレースに、子どものリグレースは小さく頷く。
 視界が再び陰る。幻影から醒めたリグレースは、目の前にあるグロテスクなジャミング装置にクライウタを突きつけた。
「これ作ったやつ殺す」
 決意と共に、血と影でできた夕顔の花びらが放たれる。
 赤く煌く影が散る(ブラッドフェントム)に巻かれたジャミング装置は、断末魔のような怪音を上げながら鉄くずと化していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天都狐・華夜
「精神攻撃、ですか。……生憎と攻撃されるような隙間がないもので」

過去の記憶を持たぬ故、宿った時にはすでに漂白されていた故、日々を受け入れ楽しみ排除してきた故に、精神攻撃など通ずるはずもなし。
なにより、死神の記憶など掘り起こしては文字通り地獄を見るであろう。

『死神の記憶(トラウマ):同族狩りの人狼』

「うちも、この子と一緒に来たからね。呼び覚ましたのなら、後悔の猶予なんて得られるとは思わんことやね」

裏人格:金目に棲む遠い昔に在った人狼兼死神

アドリブ歓迎
ドクター・オロチに、惨殺レベルのトラウマをぶち込むことが出来れば尚良し



 グロテスクで悪趣味なジャミング装置から溢れ出す怪電波が、天都狐・華夜(ロジックエラー・f01491)の体に叩きつけるような衝撃を与えてきた。
 過去のトラウマを呼び覚ます精神攻撃はしかし、華夜の精神を汚染することはなかった。
「精神攻撃、ですか。……生憎と攻撃されるような隙間がないもので」
 シニカルな笑みを浮かべた華夜は、ジャミング装置へ向けて一歩踏み出した。
 華夜は過去の記憶を持たない。この体に宿ったときには、過去と呼べるものは全て漂白されていたのだ。
 華夜の意思と呼べるものが宿った時からは、日々を受け入れ楽しんできた。
 漂白された白い過去など、排除して顧みることなどない。だから精神攻撃など通じるはずもない。
 華夜がまた一歩歩みを進めた時、ふいに視界が陰った。
 ドクター・オロチの執念が産んだかのような強烈な怪電波が、「華夜」が宿る前に在った「死神」の記憶を掘り起こす。
 金目に棲む遠い昔に在った人狼兼死神が表に現れる。蘇るかつての人格の脳裏に、ありありと過去の記憶が蘇った。
 裏人格が持つ『同族狩りの人狼』として生きたトラウマが、脳髄をかき回すように駆け抜ける。歩みを止めた「死神」は、口元に歪んだ笑みを浮かべた。
「うちも、この子と一緒に来たからね。呼び覚ましたのなら、後悔の猶予なんて得られるとは思わんことやね」
 ドクター・オロチに、惨殺レベルのトラウマをぶち込むことを誓った「死神」は、トラウマを克服できないまま無意識にジャミング装置から距離を取った。

失敗 🔴​🔴​🔴​

南雲・海莉
『4歳の時の、親子同伴の遠足
現地の動物園で邪神が降臨し、
自分を庇った育ての両親が、友達達が眷属に生きたまま喰われる
自分は唯一人、駆けつけた猟兵に庇われて生き残った』

救出後、組織に消されていた記憶
その凄惨な光景は猟兵に覚醒してから思い出した

込み上げる絶望も哀しみも怒りも酷い吐き気も堪え
「……でも」
敢えて声に出し、誓いを再確認
「来世を、信じる
皆に、もう一度逢えると。
育ててくれた両親も、友達も、
同じように殺された生みの両親も親戚の皆にも!」

刀を持つ手に力を籠めて、踏み出してUC使用
「その時に辿り着くまで、今を精一杯生きる
自分を遺してくれた皆の願いと信じて、幸せになる
『今』を、絶対に壊させはしない!」



 目の前で繰り広げられる地獄絵図を、南雲・海莉(コーリングユウ・f00345)はじっと見つめていた。
 4歳の子供だった自分を抱き上げて走るのは、育ての父親。抱きしめてくれる腕にすがりながらも、海莉の目は父の肩越しに見える光景に釘付けになったまま離せないでいる。
 楽しみだった。とても楽しみだった、親子同伴で行った動物園への遠足。お休みを取ってくれた父と、お弁当を作ってくれた母と、仲良しのお友達と、保母さん達と。
 平和で何気ない、温かな思い出は、一体の邪神降臨で温かな血の思い出と化す。
 動物みたいなグロテスクなモノが、逃げ惑う友達を生きたまま喰っている。恐怖と激痛を訴える、耳を塞ぎたくなるような絶叫。
 目を閉じることもできない海莉は、すぐ後ろで逃げる母に手を伸ばす。母の髪に触れた瞬間、グロテスクなモノに追いつかれて倒れる母。
 海莉の絶叫に、後ろを振り返る父。次の瞬間、投げ出される体。
 茂みへ投げられた海莉は、体を起こして振り返る。グロテスクなモノに追いつかれた父は、海莉へ叫ぶ。
「海莉! 逃げなさ……ぎゃああああああああ!」
 父の断末魔が響く。記憶はそこで途切れた。

 目の前で再現される凄惨な光景に、海莉は湧き上がる酷い吐き気を何とか堪えた。
 この事件を思い出したのは、猟兵として覚醒した後。
 駆けつけた猟兵に辛うじて救出され、記憶を消された自分は「皆は事故で死んだ」という大人達の言葉を信じていた。
 込み上げる絶望。胸を締め付ける哀しみ。理不尽に対する強烈な怒り。湧き上がる様々な感情を何とか堪えながら、海莉は口を開いた。
「……でも」
 敢えて声に出し、誓いを再確認する。
「来世を、信じる。皆に、もう一度逢えると。育ててくれた両親も、友達も、同じように殺された生みの両親も親戚の皆にも!」
 絶望や哀しみ、怒りは未だに消えない。心の中にくすぶっている。だが、その感情に飲まれたりしない。
 刀を持つ手に力を籠めて、踏み出し【剣刃一閃】。父を殺した眷属が真っ二つに両断され、幻影が終わる。
 真っ二つに両断されたジャミング装置の前に立った海莉は、胸の前で拳を握り締めた。
「その時に辿り着くまで、今を精一杯生きる。自分を遺してくれた皆の願いと信じて、幸せになる。『今』を、絶対に壊させはしない!」
 改めて誓った海莉は、幻影に黙祷を捧げるとその場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仁上・獅郎
心の傷を掘り起こすとは、酷く悪辣ですね。
しかし、そんなものは僕には……おや?

『克服すべき過去』
忘れていた。
幼い「俺」は「黄衣の王」なる神を崇める邪教に好奇心で近寄る。
薄暗い舞台で奴らに右眼がえぐり取られ、「俺」は生贄となる。
激痛と絶望。狂笑と詠唱。邪神の降臨。
ああ。間違いなく、正気を壊す光景――

『解決』
――だが、命と引き換えに救ってくれた恩人がいた。
結末は朧気な記憶でしかないけれど。
その人は、彼女は、僕に瑠璃色の右眼と希望を遺した。
だったら――絶望だけの記憶じゃない。
乗り越えるだけの意思は、今、此処にある。

ぶち壊せ、クトゥグアの断片。
それと一緒に、「僕」の悍ましい過去をスクラップにしてしまえ。



 人の脳に無数の針を刺したような、グロテスクなジャミング装置に向かった仁上・獅郎(片青眼の小夜啼鳥・f03866)は、全身に叩きつけるような怪電波に眉を顰めた。
「心の傷を掘り起こすとは、酷く悪辣ですね。しかし、そんなものは僕には……おや?」
 呟いた瞬間、視界が暗転。目の前に薄暗い舞台が現れた。
 廃劇場だった。
 町外れの廃劇場には、お化けが出る。子供たちの間で囁かれていた怪談を、幼い獅郎は笑って一蹴した。
「お化けなんてないさ。俺が行って、しょうめいしてやるよ!」
 純粋な好奇心で潜入した廃劇場は、「黄衣の王」なる神を崇める邪教徒達の儀式場と化していた。
 黄色い衣服を身にまとった邪教徒に捕らえられ、薄暗い舞台上に設えられた祭壇に生贄として捧げられた。
 意味の分からない呪文。舞台中に施された魔方陣。黄色い衣を纏った大人たち。
 神を讃えながら振り上げられたナイフが、幼い獅郎の右目をえぐり出す。
 赤く染まる右半分の視界。激痛と絶望。
 絶叫を嘲笑う狂笑と詠唱。邪神の降臨。
 歪む世界に降り立った黄衣の王が、幼い獅郎に向けて手を差し伸べる。
 赤く染まった右半分の視界が写す、狂える世界の異端者達。
 正常な左半分の視界が写す、黄衣の王と狂気の儀式。
 ああ。間違いなく、正気を壊す光景――。
 忘れていた。あの光景を覚えていたら、間違いなく精神は壊れていたから。
「ーーでも、僕は今生きている。狂気に侵されていもいない。そう、だってあの時……」
 命と引き換えに救ってくれた恩人がいた。
 結末は朧気な記憶でしかないけれど、その人は、彼女は、僕に瑠璃色の右眼と希望を遺した。
 だったら――これは絶望だけの記憶じゃない。乗り越えるだけの意思は、今、此処にある。
 舞台上に躍り出た獅郎は、幼い獅郎を取り囲むおぞましい幻影に向けてユーベルコードを放った。
「ぶち壊せ、クトゥグアの断片」
 詠唱と同時に、【神格招来・Cthugha】が発動する。
 遠き星から喚び出した生ける炎が、獅郎の悍ましい過去を破壊し消し去っていく。
 幻影が消え、現実へと戻る。
 獅郎の目の前には、スクラップとなったジャミング装置が小さな火花を上げながら、静かに沈黙した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイ・アイオライト
【POW判定】
・克服すべき過去
剣の師匠だった人物を手にかけたこと。当時自分には十分な力がなく、オブリビオンを打倒することができずに師匠が致命傷を受け介錯をしたこと。
・方法
師匠はあたしに言ったのよ。「お前はもっと強くなる。俺を超える日を見られなくて残念だ」ってね。―――だから見せてやるのよ。こんなバカげた精神攻撃、くだらないッ!聞きなさい、ドクター・オロチ!あたしはね、師匠を超えなきゃいけないの!いつまでも弱者でなんていられないッ!
アンタを倒して、あたしを見出した師匠に報いる!強くなったことを証明するためにアンタを倒すわ!そのでかい脳みそ、ばらばらにされるのを楽しみにしてるのね!!



 レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)の目の前で、一つの命が消えようとしていた。
 幼いレイを見出し、剣を教えてくれた師匠。時に優しく、時に厳しく、人生においても師匠と呼べる大切な恩人だった。
 ある日オブリビオンと対峙したレイと師匠は、これを打倒することができなかった。
 あの時。レイの剣はまだ未熟で、師匠はレイを守ってくれて、致命傷を受けてしまった。
 オブリビオンの追跡から何とか逃れたが、回復する手段は無く、町は遠く医師もいない。
 歩くことさえおぼつかない師匠を、それでも何とか抱えて逃げていたが、追手はすぐそこまで迫っていた。
「レイ。お前一人で逃げろ。お前だけなら逃げ切れる」
「師匠、何を言って……」
「血を流しすぎた。もう目も見えない。このままじゃ、二人共死ぬだけだ」
 そう言ってしゃがみこんだ師匠の背中は、黒いくらい真っ赤で。死期を悟ったレイは、愛用の短刀を手に立ち上がった。
「じゃあ、あたしが師匠を介錯する。オブリビオンに殺させるくらいなら、あたしが殺して師匠を超える!」
 涙で震える声を、それでも上げるレイの頬を、師匠はそっと撫でてくれた。
「……手間を掛けさせてすまないな。お前はもっと……」

「……お前はもっと強くなる。俺を超える日を見られなくて残念だ」
 師匠がレイに残した最後の言葉が、レイを現実へと立ち返らせた。
 目の前には、脳髄に何本も針を刺したグロテスクなジャミング装置がある。
 今もなおレイを幻影に引き入れようと、怪電波を発し続けている。
 再び浮かび上がる師匠の幻影を、レイは腕を振って振り払った。
「―――だから見せてやるのよ。こんなバカげた精神攻撃、くだらないッ!」
 振り払った腕を取る、師匠の力強い手。正しい型を教える厳しい手を、強引に引き剥がす。
 浮かぶ師匠の死に顔に、レイはここにいないドクター・オロチへ向けて叫んだ。
「聞きなさい、ドクター・オロチ! あたしはね、師匠を超えなきゃいけないの! いつまでも弱者でなんていられないッ!」
 ジャミング装置の目前に立ったレイは、そこにある脳髄にドクター・オロチの姿を重ねた。
「アンタを倒して、あたしを見出した師匠に報いる! 強くなったことを証明するためにアンタを倒すわ! そのでかい脳みそ、ばらばらにされるのを楽しみにしてるのね!!」
 黒檀のダガーを振り上げたレイは、ジャミング装置を真っ二つに切り裂き破壊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハルツ・ノウゼン
【POW】
『過去』
ハルツの故郷は小さな村だった。ドワーフが多く暮らし、冒険者に武器や防具、宿を提供することで外と繋がっていた。その頃はハルツも、珍しい“機械”に夢中な変わった子どもだったが、それだけだった。
しかし、あるオブリビリオンの訪れが、全てを変えた。ハルツが猟兵の力に目覚めたのもそのときだった。災厄から村を守ろうとガジェッティアの力を発現したが、守れるものは少なかった。村人は感謝し冒険者は奇跡の子と讃えたが、ハルツの心にあるのは絶望と無力感だった。

『足掻き』
「そうだよ、ぼくは奇跡の子なんかじゃない!だからぼくは、もっと強くならなきゃ……ううん、強くなりたいんだ!ハルツの邪魔、しないで!」



 ハルツ・ノウゼン(ぅゎ、ドワーフっょぃ・f13678)の生まれ故郷は、小さな村だった。
 ドワーフが多く暮らし、冒険者に武器や防具、宿を提供することで外と繋がっていた。
 その頃はハルツも、珍しい“機械”に夢中な変わった子どもだったが、それだけだった。
 平和で、のどかで、のんびりとしたどこにでもある村。
 だが。その平和はたった一体のオブリビオンによって破られた。
 気まぐれのように襲来したオブリビオンは、平和な村の全てを破壊した。
 工房で剣を研いでいたドワーフは自らの剣で斬り殺され、酒場で提供されるジョッキにはドワーフ達の血がなみなみと注がれた。
 混乱と殺戮の最中、ハルツは猟兵として覚醒した。
 当時六歳だったハルツは、災厄から村を守ろうとガジェッティアの力を発現させ、オブリビオンを撃退した。
「……でも、ぼくは守れなかった。研ぎ師のおっちゃんも、酒場のおばちゃんも。ぼくが守れたのは、ほんのわずかな村人たちだけ」
 オブリビオンが去り、生き残った村人たちはハルツに感謝した。一緒に戦った冒険者たちはハルツを奇跡の子と讃え、村人たちもそれに倣った。
 讃えられ、褒められるたびに、心は絶望と無力感に苛まれていく。
 守れなかった村人たち。もう二度と会えない人の方が多くなってしまった村。
 皆褒めてくれる。皆讃えてくれる。でも、ハルツの心は誰も理解してくれない。
 心を閉ざしつつある過去の自分に、今のハルツは真正面から向き合った。
「そうだよ、ぼくは奇跡の子なんかじゃない! 皆を守れなかった、ただの子どもだ!」
 顔を上げ、目を見開く過去のハルツの腕を掴んだ今のハルツは、何も言えない過去の自分に必死に語りかけた。
「だからぼくは、もっと強くならなきゃ……ううん、強くなりたいんだ! あんな思いをもう二度としなくてもいいように。あんな思いを、もう誰にもさせないために!」
 今のハルツの声に、過去のハルツが大きく頷く。
 晴れる視界。目の前には、悪趣味なジャミング装置が怪電波を発し続けている。
 目尻を手の甲で拭ったハルツは、ガジェットを振りかぶった。
「ハルツの邪魔、しないで!」
 あの時、皆を守ったガジェットに、改良を加えて強化した今のハルツの自信作が、ジャミング装置を破壊する。
 大きな音を立てて崩れるジャミング装置見送ったハルツは、振り返らずに歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジュリエット・タイラー
SPD

トラウマ「散っていった小隊」
ここではないどこか、過酷な環境の中絶望的な戦いを続けてきた機械化小隊
部隊を守るためにドッグタグを私に託して敵の大群に飛び込んだ勇敢な同期の友人
弱音を吐く私を激励した先輩は次の日蜂の巣になってしまった
そして未熟な私を守って散ってしまった隊長……なぜ私だけが生き残ってしまったのか

克服
なぜ生き残ったのか? 生き残るためだ!
仲間たちが戦ったのは死ぬためじゃない、仲間を生かすためなのだから
ここで立ち止まり任務を放棄することは死んだ仲間たちが、なにより私が許さない
前へ進み、進み続け、任務を達成するのよタイラー


装置が視認でき次第、グレネードランチャーで吹き飛ばしてやるわ



 過酷な環境の中、絶望的な戦いを続けてきた機械化小隊があった。
 押し寄せる敵が部隊に迫る。友軍から孤立し増援の宛はなく、物資の補給も当然無い。
 絶望的な状況の中、ジュリエット・タイラー(マシンナーズ・プラトゥーン・f12086)は目の前に差し出されたドッグタグに目を見開いた。
「これは……?」
「俺が連中を足止めする。隊長達はその隙に撤退してくれ」
 手を振った友人は、ジュリエットが止める間もなく駆け出した。
 響く銃声。敵を引きつける同期の怒声。やがて小さくなる声から逃げるように、ジュリエット達はその場を撤退する。
 敵から何とか逃げ延び、張ったキャンプの小さな火の前で、ジュリエットは顔を上げることができなかった。
 己の無力感を噛みしめるジュリエットに、無骨なカップが差し出された。
「飲めよ。最後のコーヒーだ」
 先輩が差し出したコーヒーを、ジュリエットは受け取る。手の中に感じる熱で生きていることを実感したジュリエットは、視界がぼやけるのを感じた。
「私達は本当に帰還できるの?」
「それが俺たちの任務だろう。やり遂げようぜ」
 豪快に笑った大きな手が、ジュリエットの背中を叩く。
 その手が今、ジュリエットの目の前で蜂の巣になった。
 早朝、敵の奇襲を受けたジュリエット達が、態勢を整える時間をくれるために敵前に躍り出たのだ。
 敵の銃弾が、スコールのように降り注ぐ。先輩の背中に唇を噛むジュリエットの背中を、隊長が強く押す。
「ここは俺たちが食い止める! お前はヒヨッコどもを連れて撤退しろ!」
「隊長! そんな……」
「いいから行け! 隊長命令だ! 死ぬなよジュリエット!」
 隊長の命令に、ジュリエットは頷くことしかできない。
 そこから先も地獄だった。追ってくる敵を前に、仲間は次々に倒れていく。ジュリエットは何度も死を覚悟したし、死んだと何度も思った。
 だが、生きている。生き残ってしまった。
 部隊の皆を犠牲にして。
「何故、お前だけ生きているんだ?」
 部隊の皆の幻影が、ジュリエットを苛む。口々に掛けられる声に、ジュリエットは唇を噛み締めた。
「……なぜ生き残ったのか? 生き残るためだ!」
 ジュリエットは死んでいった戦友たちの幻影に、毅然と顔を上げた。
 仲間たちが戦ったのは死ぬためじゃない、仲間を生かすためなのだから。
 ここで立ち止まり任務を放棄することは死んだ仲間たちが、なによりジュリエット自身が許さない。
 叫び、己の心を示すジュリエットに、幻影の隊長は力強く笑った。
「前へ進み、進み続け、任務を達成しろタイラー。お前の任務は、生きて味方陣地へ帰還することだ」
 目を見開いたジュリエットが、幻影の仲間へ手を伸ばす。隊長達に触れる寸前幻影は消え去り、目の前には悪趣味なジャミング装置が怪電波を発し続けていた。
「了解、隊長」
 AOG-6グレネードランチャーを構えたジュリエットは、ジャミング装置に突きつけると一気に放つ。
 巻き上がる爆発と轟音に目標破壊を確認したジュリエットは、踵を返すとその場を立ち去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

推葉・リア
★SPD
なんでここに来たんだろう…ってきっと乗り越えたいって気持ちがあるからよね、うん

【過去】
普通に平凡に暮らしていた、だけど気がついたらある屋敷に囚われた否収蔵された
種族が妖狐だった髪が瞳が琥珀色だったそれが『アイツ』とって何よりの『宝石』だと言っていた
『アイツ』からは大切に大切に扱われた、愛情を感じた事もあった
けどそれは…それは……

っ!!!(目の前に向かってフォックスファイア)
あーー!!久々に思い出したわ!!
私は『アイツ』から『反逆』して自由になって猟兵になったの!
大好きな推しキャラの皆にも出会えてこうして一緒に戦えるの!!
なんにも怖くなんてないわ!

★アドリブ歓迎



 グロテスクなジャミング装置を前に立った推葉・リア(推しに囲まれた色鮮やかな日々・f09767)は、痛いほど叩きつけてくる怪電波を前に手を握りしめた。
「なんでここに来たんだろう……って、きっと乗り越えたいって気持ちがあるからよね、うん」
 意を決して前に進む。更に強くなる怪電波に、リアの視界は暗転した。

 リアが生まれたのは、平和な町だった。
 どこといって特徴もない、平均的な町の平均的な家で、平凡な幸せを謳歌していた。
 このままずっと、退屈な日常が続くんだろう。昨日も今日も明日だって。
 だが、その平和は脆く崩れ去った。
 気がついたら、屋敷の中だった。
 見たこともない豪華な屋敷の一室に寝かされていて、絹のドレスみたいなネグリジェに着替えさせられていて。
 そこで、『アイツ』と出会った。
 『アイツ』は言っていた。屋敷に連れてきたのは、リアの種族が妖狐だったから。
 髪が、瞳が琥珀色だった。それが『アイツ』とって何よりの『宝石』だったから。
 それからの日々。『アイツ』からは大切に大切に扱われたし、愛情を感じた事もあった。
 けどそれ……それは……。
 リアの脳裏に、屋敷時代の記憶がフラッシュバックする。
 あの屋敷での出来事。囚われの日々に肉体的な苦痛はなく、むしろ貴重品のように大事に丁寧に手入れされ、陳列され愛でられた。
 そう。まるで収蔵品のように。
「っ!!!」
 胸に走る電撃のような苛立ちに、目の前に向けて拳を振り下ろした。
 【バイフォックスファイア(カミツクホノオノキツネ)】を宿した拳が、目の前にいる『アイツ』に叩き込まれる。
 炎に巻かれて消える幻影に、リアは大声で叫んだ。
「あーー!! 久々に思い出したわ!!」
 目を開けると、そこには脳髄に針を刺したグロテスクなジャミング装置が怪電波を発し続けている。
 怪電波はリアを幻影に引き戻そうと、再び『アイツ』の幻影を見せる。穏やかに笑う『アイツ』の姿に、リアはユーベルコードを詠唱した。
「私は『アイツ』から『反逆』して自由になって猟兵になったの! 大好きな推しキャラの皆にも出会えてこうして一緒に戦えるの!!」
 【バトルキャラクターズ(オシキャラクターショウカン)】によって召喚された推しキャラ達が、リアの背後に現れる。リアの肩を叩き、勇気づけるように微笑む姿に、過去に残ったわずかな未練が霧消する。
 リアの推しキャラ達は、『アイツ』なんかよりも何倍も、何十倍も何百倍も素敵で、大切で、最高で至高でつまりは大好きで。
「私の声に応えてくれて、ありがとう!………はぁ、何度見ても、好き! 大好き! 一緒に戦おう!」
 リアの声に応えた推しキャラ達が、一斉に『アイツ』に攻撃を仕掛ける。
 『アイツ』が消え去り、破壊されるジャミング装置を見守ったリアは、推しキャラ達の手を取った。
「なんにも怖くなんてないわ!」
 ジャミング装置の爆発を背景に、リアは推しキャラ達と一緒にその場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シホ・エーデルワイス
過去のトラウマを再現する!?

それは好都合
私の記憶は曖昧で過去に何があったのか
まだ分かりません

私はどんな過ちを犯したのか知りたい!

●過去
一人の自分を善良だと思っている少女がいました
少女には他人の気持ちを察する能力が欠けていました

少女は度々問題発言を繰り返して周囲の反感をかい
やがて独りぼっちになってしまいました

こうして少女は孤独に苛まれながら短い生涯を終えたのでした

●対抗
違う!

確かに私は他人と異なる感覚や発想で
他人を困らせたけれど
何が悪かったのか教えて助けてくれた人もいて
時間をかけて反省して謝って許してもらえました!

でなければ今の私に友達はいないし
何より今ここにいるはずがない!

私は…ここにいます!



 ジャミング装置が発する怪電波を全身に受けながら、シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は一歩踏み出した。
 この怪電波は、過去のトラウマを再現するという。それはシホにとって、好都合なことだった。
「私の記憶は曖昧で、過去に何があったのかまだ分かりません。私はどんな過ちを犯したのか知りたい!」
 常に胸を締め付ける、謝って償わないといけない……という強い【罪悪感】の正体を知ることができれば、シホはまた一歩先へと進めるだろう。
 そう思った時、視界が暗転した。

 気がつくと、シホはセピア色の舞台を見ていた。
 舞台の上では、人形劇が演じられていた。歪んだ木のフレームに、子供の落書きのような背景。糸で繰られた人形は、シホの姿に似ていた。
 客席にはシホ以外誰もいない。身動きの取れないシホは、人形劇をただじっと見つめていた。
『あるとことに、一人の自分を善良だと思っている少女がいました』
 どこからともなく流れるナレーションに、調子はずれのオルゴールの音色が響く。
 不安を掻き立てるような、いびつな姿の『シホ』は、同じくいびつな姿の『登場人物』達へと近寄っていく。
『少女には他人の気持ちを察する能力が欠けていました。少女は度々問題発言を繰り返して周囲の反感をかい、やがて独りぼっちになってしまいました』
 両手を振り上げた『シホ』は、『登場人物』に向けて目を吊り上げながら迫っている。
 やがて『シホ』の周囲から人がいなくなり、スポットライトが『シホ』を映し出す。
 とぼとぼと歩き出す『シホ』は、やがて崖っぷちに立つと身を躍らせた。
『こうして少女は孤独に苛まれながら、短い生涯を終えたのでした』
 悲しげな音楽が鳴り響き、高所から身を投げた『シホ』が地面に叩きつけられて動かなくなる。
 倒れる『シホ』を嘲笑いながら去っていく『登場人物』達の姿に、シホは立ち上がった。
「違う!」
 叫ぶシホの脳裏に、記憶が断片的に甦った。
 ひと連なりの意味は読み取れないが、そこに浮かぶ『友達』の姿は、決して『登場人物』ではないことを教えてくれた。
「確かに私は他人と異なる感覚や発想で他人を困らせたけれど。何が悪かったのか教えて助けてくれた人もいて、時間をかけて反省して謝って許してもらえました!」
 断片的な過去の記憶に続いて、鮮やかな記憶が甦る。猟兵として戦い、旅団で語り合った友達の姿が、シホに確かな勇気を授けてくれる。
 いつも励ましてくれる友達に、どれだけ救われただろう。あの人形劇は真実の一端かも知れないが、真実の全てではないのだ。
「でなければ今の私に友達はいないし、何より今ここにいるはずがない!」
 シホの声に、視界が晴れる。セピア色の舞台は消え、代わりに見えるのは間近に迫ったジャミング装置。
 【聖剣】パッシモンを突きつけたシホは、剣を無数の鈴蘭の花びらに変えるとジャミング装置に振り抜いた。
「私は……ここにいます!」
 シホの宣言と同時に、ジャミング装置が貫かれる。
 花に巻かれて爆発したジャミング装置を前に、シホは手を握り締めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天都狐・華夜
「あれ?いつの間にか退いてる?そっか、あっちの人が退いたんですね……ふぅ、まったく困ったさんです」

過去を失えど、知覚できなくなったわけではない。

「起動シークエンス省略。全兵装自動照準。区画ごと破壊しつくしなさい」

けたたましい音を立てて飛び立つのは、アサルトウェポンを基にした自律兵装群。
自律稼働する兵器はユーベルコードの支援を受け周囲を、無差別に、徹底的に破壊し始める。

「お膳立てはしましたよ。途中で主導権を奪ったんですから、後始末はしっかりしてくださいね」
「わかっとるよ。イキった分はきっちりやるかんね」

死神は意識の底より再び起き上がる。
手にはなぎなたを持ち三日月のような笑みを浮かべ突撃を再開する



 再び浮き上がる意識に、天都狐・華夜(ロジックエラー・f01491)は周囲を見渡した。
 ジャミング装置に肉迫していたと思ったのだが、最初の地点まで後退してしまっている。
 華夜の体を打ち付けるように、怪電波が放たれている。健在なジャミング装置に、華夜は頭を掻いた。
「あれ? いつの間にか退いてる? そっか、あっちの人が退いたんですね……ふぅ、まったく困ったさんです」
 過去を失えど、知覚できなくなったわけではない。過去に抵抗する意思をうまく示せなかった「死神」に、華夜はやれやれ、という風に頭を振った。
 気を取り直した華夜は、全兵装を起動。ユーベルコードの詠唱と共に鳴動するアサルトウェポンを基にした自律兵装群に、冷静に指示を送った。
「起動シークエンス省略。全兵装自動照準。区画ごと破壊しつくしなさい」
 けたたましい音を立てて、兵器群が飛び立つ。自律稼働する兵器はユーベルコードの支援を受け周囲を無差別に、徹底的に破壊し始める。
 ジャミング装置へエネルギーを供給していたユニットも破壊され、怪電波の圧が弱まっていく。
 再び浮き上がる「死神」に、華夜は手を伸ばした。
「お膳立てはしましたよ。途中で主導権を奪ったんですから、後始末はしっかりしてくださいね」
「わかっとるよ。イキった分はきっちりやるかんね」
 意識の底より再び起き上がる死神は、なぎなたを持った手を振り上げる。
 三日月のような笑みを浮かべ突撃を再開する「死神」を、周囲の兵器群が支援する。
 ジャミング装置の怪電波を力技で破った死神は、なぎなたでジャミング装置を真っ二つに叩き割った。


 猟兵達を乗せたシャトルが、空域を離れる。
 過去のトラウマを再現され、それぞれに乗り越えた猟兵達の目に迷いはない。
 戦艦に搭載されていたジャミング装置を全て破壊した猟兵達は、爆発・四散する戦艦を静かに見送ると、それぞれの日常へと戻っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月11日


挿絵イラスト