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アポカリプス・ランページ⑱〜譱ト惡

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ #フィールド・オブ・ナイン #ポーシュボス・フェノメノン #アポカリプス・ランページ⑱ #あなたは悪に、なれますか?

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#アポカリプス・ランページ⑱
#あなたは悪に、なれますか?


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●善と悪
 虚に反響する聲は多く、広く、深い。
 底なしの瘤(あく)がうねる度、閉ざされぬ瞳(ぜん)が彷徨う度、聲は届く。
「嗚呼、私はあノ人を」
「嗚呼、僕はアの子を」
 気付いたときにはもう遅く、かれらは変わっていた。
 人だったカタチは一片も遺らない。しいて云うなら瞳がそれか。
 けれど自分の瞳ではない。誰のものでもない瞳が見開き、輝いている。
「呑んジャっタ、大好きナ彼ヲ」
「食べテしまッた、愛シイ娘を」
 ――本当ニ? 本当に食ベタのか?
 呑んだときの記憶が、食べたときの記憶が有ったのか、それとも無かったのかさえ判らず、かれらは変貌を嘆くばかり。
 己の姿、心、想い出、日常。すべてが変わり果てた。
 人が怪物に成り果てることで。
「違ウ、彼は私を裏切ったカラ」
「違ウ、あの子ハ僕ヲ捨テたから」
 だからころした。ころした。ころしたのだ。ころしはわるいことだ。
 殺したのに、どうして自分はここにいる?
 殺したのに、どうして誰かと溶け合った?
 何が溶けたのか。私の心だ。何が溶けたのか。僕の身体だ。
 罪に染まった手を悔やんだのなら、それは善か?
 相手の死を悲しんだのなら、それは善か?
 わからないけれど、わかっている。
 善の心があったから、こうなってしまったのだと。

●グリモアベースにて
「選択肢は大きく分けて二つあるわ」
 一つ、純粋なる悪になって戦うこと。
 一つ、ポーシュボスに寄生されながらも、正気を手放さず戦うこと。
 指を折りたたみながら、ホーラ・フギト(ミレナリィドールの精霊術士・f02096)はそのように話した。
 もはやこの大地でさえ抱きしめることの叶わぬ巨大なオブリビオン・ストーム。その内部で生きている――いや、生死などもはや意味を為さない――のは、無数のポーシュボス・フェノメノン。
「大事なことだから、よく考えてから向かってほしいの」
 ホーラいわく。ポーシュボスは、生命の『善の心』に寄生する。寄生という響き自体が穏やかでないが、もっと穏やかでないのは、寄生した対象を新たなポーシュボスに変えてしまうこと。
 どれだけ悪を自称していたとしても、少しでも、微かにでも『善』なる部分があれば、たとえ砂塵よりも細かく、微生物ほどの『善』だったとしても寄生できてしまう。それだけ恐ろしい能力を持っている。つまり。
「ポーシュボスの群れに寄生されないで倒せるのは、純粋な悪の存在のみね」
 純粋なる悪とは何か。定義の難しい問題だ。
「そもそも猟兵だもの。何かしら守ろうとする心は『善』に分類されると思うわ」
 世界、友、仲間、家族、想い出、場所――そして、現在。
 襲来する過去の骸を滅し、今を守る猟兵が『純粋なる悪』になるのは難しい。
「それでも悪になれるなら、それが寄生されずに倒せる唯一の方法よ」
 もうひとつ、寄生は免れないものの、正気を手放さずに戦う手段。
 ただしこちらは、心身の異変から逃れられない。身体の一部または大部分がポーシュボスになるかもしれない。いや、ほぼポーシュボスになるだろう。思考回路も狂わされ、何かの感情ばかりが爆発したり、見えざる狂気に侵されたりと、『正気』を保つことそのものが困難だ。
 けれど己の意志さえ、自分さえ手放さずに戦えば――。
「倒せるわ。倒せない相手じゃないもの!」
 いかに困難であっても、危うくても。倒せない敵では、ない。
 ホーラはそう強く強く言い放って、にこりと微笑みを傾けた。
「ちゃんと、あなたの『ただいま』を聞かせてちょうだいね」
 言い終えるや転送の準備に取り掛かり、そして彼女は見送るときにこう告げるのだ。
 いってらっしゃい、と。


棟方ろか
 お世話にナっておリマす。棟方ろかでス。
 一章(集団戦)のみとなッテおります。

●プレイングボーナスについて
 『邪悪ナる者』になるorポーシュボス化してでも戦ウと、有利にナりやすいです。

 そレデは、プレイングをお待ちシテおりマす!
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第1章 集団戦 『ポーシュボス・フェノメノン』

POW   :    ポーシュボス・インクリーズ・フェノメノン
【ポーシュボスによる突撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【新たなポーシュボス】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ポーシュボス・ナインアイズ・フェノメノン
自身の【全身の瞳】が輝く間、【戦場全てのポーシュボス・フェノメノン】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    ポーシュボス・デスストーム・フェノメノン
【オブリビオン・ストームの回転】によって【新たなポーシュボス】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レイ・アイオライト
そう、殺したの。なるほど。それは辛いでしょうね。
……なんて言うとでも思ったの?
耳元で自分の不幸を囁くなんて厚顔無恥にも程があるのよ。その口を閉じなさい、アンタたちの事情なんて知らないっての。

ああ、忘れてたのよ。まったく、忘れてたわ。

気に食わない者は殺す。それが日常だったのにね。

UC発動。それなら邪悪なる者そのものになるわよ。クラミツハ、出てきなさい。
アンタが大好きな殺戮の蹂躙の場はここにある。

『感慨!!後悔!!とても善い!!我が蹂躙と殺戮の場、殺すに値する者たちだ!!』

クラミツハに体を預けて、『暗殺・範囲攻撃・蹂躙』で影を自在に操りながら巨体を削いでいくわよ。

触手、気持ち悪いのよ、消えなさい。



 銀糸をなびかせてレイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)が踏んだ影は、歪みながらも彼女に光景のおかしさを伝える。濃淡ばかりが目立つ荒野に根付いた、昏い嵐。その中で蠢くのは、常世に在らざるナニカ。
 けれど『そう』と認めてしまえば一気に呑まれてしまう、そんな危うさを漂わせてポーシュボスたちの空間は存在し続けた。だからレイはいびつな群集を仰ぎ見る。かれらはレイが訪れた後もずっと、悪しき行いを嘆いては、いいや相手が悪者だったとかぶりを振る。
「そう、殺したの」
 繰り返される応酬は誰に届くでもなく、ポーシュボスの内側でのみ為された。
 だからレイも応える。慰撫する手の平の代わりに、声色を少しばかりまろやかにして。
「なるほど。それは……辛いでしょうね」
 かれらの音を聞く。大切な誰かを食べた飲んだと悲しむようで、かれらの綴る声は造り物めいていた。しかもレイの言の葉にも応じない。一方的に投げつけては、ひとりで辛さを抱えるばかり。
「……なんて、言うとでも思ったの?」
 聞けば聞くほど聞き分けのない子どもみたいだと、かれらを前にしてレイはやや大袈裟に溜め息をつく。
 寄せていた眉根の谷が深まる。レイがゆるりと首を振ってポーシュボスを睨みつければ、這い寄る触手の波間から男とも女ともわからぬ目玉に見つめられた。
「耳元で自分の不幸を囁くなんて、厚顔無恥にも程があるのよ」
 得物を突き出し、宣告する。
「その口を閉じなさい、アンタたちの事情なんて知らないっての」
 心なしかレイの声色は、苛立ちを含んでいた。真闇へ置いてきた筈のものが蘇ってしまったから、首筋を掻いて「ああ、もう」と唸る。
 ――忘れてたのよ。まったく、忘れてたわ。
 気に食わない者は殺す。ありふれた日常の一幕を浮かべながら、レイは細い息を吐く。
 するとナインアイズの光が不意に、暗黒に染まった嵐の底でも燦然と輝きだした。無数の触手が辺りを、己を、レイを容赦なく叩きつけるも当人は。
「っ、クラミツハ、出てきなさい」
 闇黒の操者を喚び寄せ、舞台を整えた。殺すに値する、と喜ぶクラミツハへ身を委ねた途端、レイの意識は遠ざかっていく。蔓延る悪意を前にして、呑まれながらも彼女が、クラミツハが悪を切り刻む。
「気持ち悪いのよ、消えなさい」
 それが目前に居座ったポーシュボスが最期に聞いた、レイの言葉だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニクロム・チタノ
なるほど邪悪ナる者ですか?ならボクがぴったりですね~?アハハハ
なんせボクは醜い悪堕ちヘドロ怪人、反抗の竜にさえもう見捨てられた猟兵のクズですからねぇアハハハ
さあボクの姿を見てくださいこの薄汚いヘドロの身体を
ヨダレを撒き散らして辺り一面をヘドロの海に変えてあげましょう
猛毒と悪臭が立ち込めるこの戦場でさあヘドロの宴を始めましょう
もはや反抗の加護は失われましたがこの妖刀切れ味は抜群ですよ
さあ欠片も残さず切り裂いてあげますよ、もうこの世界に神なんていらないんですよアハハハハ



 なるほどなるほど、とニクロム・チタノ(反抗を忘れた悪堕ちヘドロ・f32208)は異様な光景の真っ只中で幾度か頷いてみた。
「邪悪ナる者、ですか?」
 実に良い響きだと思えるからか、ニクロムの頬もふくふくと持ち上がり、面差しさえもどこか誇らしげだ。
「ならボクがぴったりですね~?」
 乾いた野に響く笑い声は、眼前に蔓延る蠢きに負けじと湿っていた。瞬いだのち、荒野を焼く夕陽めいた色の眸へと映し込んだものこそ――ポーシュボスの群れ。
 嗚呼、なんと醜いのだろうとニクロムは口端をこれでもかと上げた。しかしどんなにポーシュボスの見目が禍々しくとも、ニクロムを怯ませる要因にならない。
「アハハハハ。なんせボクは醜い悪堕ちヘドロ怪人、ですからねぇ」
 見捨てられ、見限られ、そうして今もなお生きる青き身体。邪なるにおいを撒き散らし、垂らしたヘドロは悪しき猛毒を含有する。ニクロムが笑うたびそれらは彼女の力を高め、ニクロムが指先で撫で付けるたび力は戦場を毒々しい色で染め上げていく。
「さあ、さあ見てくださいボクの姿を。どうです?」
 言無きポーシュボスへ尋ねながら近付くと、かれらのまなこがニクロムを捉え、捉えたかと思いきやまたすぐ外れる。
 そこで漸く、ポーシュボスから声が零れ出した。
「ヘドロの宴を始めましょう。楽しいですよ」
 いかがですか、と覗き込んでみれば右へ左へ動き続けた無数の目が、応じるとも拒むとも言えぬ動きを示す。
 直後、ニクロムへと降りかかったのは砂塵だ。
 荒れた野を狂わすのは嵐だが、そこに渦巻くポーシュボスの悪意が砂礫ごと大地を巻き込み、ニクロムへ突撃していった。
「善い者ハ食わレる運命」
「悪イ者なら生きル運命」
 ポーシュボスの声が四方発砲からニクロムを囲う。
 アハハハと彼女は楽しげに笑って、反抗の妖刀を振り抜いた。
 刀身で揺らめく妖しさがニクロムの意思を描きだし、闇とも影とも判別しがたい触手を片端から切り落としていく。
「欠片も残さず切り裂いてあげますよ。だって……」
 ――もう、この世界に神なんていらないんですから。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱酉・逢真
心情)善悪ってェのはヒトの概念。ゆえに俺は悪にはなれンが、善性とやらをゼロにするこた出来るさ。さァさ、俺の本性をご覧な――すべてに対して"どうでも好い"と、底の底から思っているよ。破壊・滅亡・崩壊・腐敗・災厄・不幸…みィんなステキじゃないかい。え? 何がどうなろうと別に構わンよ。(完全な博愛による無関心により善悪どちらもゼロと変え)
行動)最悪の病毒を撒き散らそう。おいで蒼白の馬よ、みなみな腐らせ黙らせよう。攻撃する手も思い出も・向けられる声も心もすべて。どろり溶かして忘れよう。興味のないことさ。どうでも好いことさ。



 通り道には『花』が咲く。
 その道通るは誰か。朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)が通る。誰が渡るか、逢真が渡る。
 蠕動する黒が幾ら嘆こうと、逢真を名乗る一柱が通れば、嵐の中に病毒が生じる。振り撒くのは笑みと限らないけれど、かれは嗤う。善悪の概念がヒトのものであるがゆえ、神さまとやらは一歩ずつ気まぐれに進むだけ。何故ならヒトに嵌まらぬ身では、どう望んでも悪などなれやしないのだから。望んでもいないが。
「さァさ、俺の本性をご覧な」
 引き延ばした唇は明らかに笑っているのに、逢真の眼差しは何ひとつ捉えていない。
 誰へ咲うのか。ただただ逢真が咲うだけ。誰を見据えるか。逢真の見るべきものなど、此処には無い。
 凶星が湛える静寂は、なみなみと注ぎすぎて滴り落ちていく。かの黒、ポーシュボスにも雫は触れた。水の気配もなければ温度もないソレは、確かに静寂だった――ポーシュボスに残る誰かの意識にとっては。
 おぞましい、とヒトであれば言い表したはずのポーシュボスを眼前に、間もなく逢真の指先はしなやかに蒼白を招く。喚べばかれらの四辺で蒼炎が揺れ、嘶く馬が黒の渦中を疾駆した。駆けた通りが蒼に光る。否、本当に光っているのかも怪しい輝きだ。
 しかしソレを綺麗だと称する誰かがポーシュボスならば、触れようと触手も伸びるだろう。
 その色を善性と思い込んだ誰かがポーシュボスならば、喰らおうと瞳を向けるだろう。
 蒼白の馬が腐らせた『通り道』とも知らず。
 光輝を宿した瞳がぐるりぐるりと荒れ、蒼の尻尾を掴んで引き回そうとした黒たちはいつしか、不幸の味を舐め回す。それが善か悪かも判断できずに。
 ――みィんなステキなもンだね。どうステキかはヒトが決めるだろうけどさ。
 間に合わせの言の葉を連ねて、逢真はやはりくつくつと笑う。
 けれど可笑しいからじゃあない。おもしろかったからじゃあない。
 では何故わらったかって? 誰かがそんな反応を望んだのだろう。望まれたからやったのでもないけれど。
 ポーシュボスから漏れる声が善きものでも悪しきものでも、逢真は触れた先からどろりと溶かす。想い出にも残らない声だ。記憶に刻まれもしない色だ。あらゆるカタチも、どうでも好いことだから。
 ほうら、花が咲いている。
 そこが彼の通り道さ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マオ・ブロークン
……もともと、軽くない、身体が、重い。
いつも、沈んでる、ばかりの、心が、掻き回されて。
ストームの、力で。ポーシュボスを、取り込んだ、いま。
狂いそうに、なるのを。ぎりぎり、抑え込む。

あたしは……この大地を、守りたいの。
いずれ悪に、悪霊に、なりうる、からこそ。今だけは。
あたしの、意志で……戦いたい、のに。
感情が、酷く、揺すられて。

荒れ狂った、心が。無数の、骨魚を、呼び起こす。
悲しみの根源を、容赦のない、魚の群れが、食んでいく。
この、苦しみを、もたらした、邪神たちを。
――そして、涙に沈む、あたし自身も。

……侵食された、身を、喰らわせて。少し、正気が、戻った。
あたしは……まだ、あたしで。いられるかな。



 嗚呼、なんて重いのだろう。
 ため息めいたそれが、本当にため息だったかも定かでないが、マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)は確かに何かを吐き出した。ただの女の子の精神を持つ彼女にとって「キツい」としか言えぬ感覚で、全身を内側から掻きむしられる。
 這いずり廻られる。なぞられる。ガクンと時おり膝が抜けて崩れそうになる。
 ――もともと、軽くない、身体が。いつも、沈んでる、ばかりの、心が。
 重たくて、意識ごと堕ちそうになる。
 掻き回されて、逃げだしたくなる。
 悪意の嵐からポーシュボスが語りかけてくるたび、マオの足から熱が奪われていく。ただでさえ凍てつきそうな温度で生き続けているというのに。これ以上熱を、命の火を吸い取ってどうしようというのか。
 ふらりと顔をもたげポーシュボスを見据えるも、マオのまなこは虚ろだ。
 ――ああほら、アレが手招いている。
 ポーシュボスの蠢きですら誘いに思えた。溶け合うことを望む悪意が、彼女の善なるココロをノックする。彼女が有するあらゆる感情を、激しく揺すった。
「ひっ、ひぃ……ぐるぐる、するわ……」
 喉に詰まりそうだった苦しみを、声で模り吐き出してみる。
 彼女が動くたび、乾かぬ頬をはらはらと伝った雫が、狂気の佳景を映し込みながら彼女へ問い掛けた。
 狂いそう、と考えただけでマオは、その涙にひっぱたかれている気分になる。
「何を、しに来たって……あたし、あたしは」
 鈍重な足を運び、ぐったりと曲がる背はそのままで彼女は進む。
「……この大地を、守りたいの。今、今だけは……あたしの、意志で」
 いずれ悪に堕ちたとしても、いつかは悪に沈んだとしても。
 そう巡らせるにつて、ポーシュボスがマオを侵食していく。
 いたくないはずなのに、ちぎられるかんかくがした。
 かゆくないはずなのに、つめをたてて引き裂かれるようだった。
「……っ! あたし、あたし……食べられ……」
 マオを哀しませたポーシュボスの色は、刹那に歪んだ骨魚たちから追われる。無数の骨が悪意を分けるように泳ぎ、涙の海へマオを呼び寄せた悲しみの根源――ポーシュボスへと噛み付く。否、噛み付く、なんて可愛らしいものではない。
 侵食された身を喰らわせれば、歪んだ視界が少しばかり晴れた気がした。
「あたし……あたしは……まだ」
 あたしで。いられるかな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
自身にとっては善行でも、世間的にみれば悪行とみなされる事もあるわけで……なんて事をポーシュボス相手に言っても仕方ないだろうな
俺は流石に完璧な悪人じゃないと信じたいし、ポーシュボスに寄生されよう

神刀を抜いて、破魔と浄化の神気で身体の侵蝕を無理矢理押し止めつつ精神統一
明鏡止水の境地には達していない我が身だが、意識を刀にのみ向ける形で狂気を抑え込む
影響を完全には抑えきれないにせよ、刀を持っていれば俺は戦える

とはいえ、精神状態的にも複雑な技を使う事もできないだろうから最も使い慣れた技を振るう
壱の型【飛燕】。集団相手に一体ずつというのは非効率的にせよ、少しずつでも倒していけば、いずれ倒しきれるだろう



 鯉口を切った彼の足運びに、迷いはない。
 踏み込んだ先から染み入る黒は、夜闇とも暗所とも呼べぬ色だ。なんと分かり易いのだろうと、彼は温和で塗られたまなこを細める。
 するとポーシュボスが云う。
 あのひとをたべたのは、わるいこと。でもたべなければ、わたしがくるっていたのだと。
 耳朶を打つ言葉に青年は短く息を吐き、
「自身にとっては善行でも、世間的にみれば悪行とみなされる事もあるわけで……」
「……なんて。言っても仕方ないだろうな」
 ポーシュボスになった者へ、きっとこの声は届かない。届いたところで、もう遅かった。
 だから彼は刀を抜く。すらりと伸びた銀の煌めきは彼の靴裏へ熱を生み、意とも志とも呼べるその熱で、這い寄る混沌を踏み潰す。焼けて、溶けゆくように潰れた悪意はしかしどれだけ踏んでも絶えず、蹴飛ばしたところで諦めてもくれやしない。それに。
 ――俺は流石に、完璧な悪人じゃない。そう信じたい。
 混じり気のない悪だったなら、迷わなかっただろうか。青年はゆるくかぶりを振る。
 どちらにせよ彼の一振りを抑えるすべを、ポーシュボスは持たなかった。
 狂気が咲くなら、神気も咲かそう。元より自然とあふれる浄めの力ゆえ、咲かすとなったなら満開にするだけだ。
「……飛燕」
 蝕まれ、ポーシュボスへと変ずるのを誘う意識が囁くから。
 彼は自らの声で、音で、呼気でそれを押し止めつつ、標的を見据えて構える。
 握る刀は不思議と冷たく、彼へ平静の片端を握らせてくれた。
 明鏡止水の境地には達していなくとも、我が身、我が意がこの刀と共に在るのなら――抑えこめる。
 何も塵ひとつ逃さず抑制する必要はなかった。割り切れたからこそ彼は、舞うように斬り上げ、善悪から目を塞いで惑わすポーシュボスを、断つ。たとえ彼の背へ覆いかぶさろうとしても、ポーシュボスの食欲は彼を完食できずに消滅する。
 ――そうだ。少しずつ、少しずつ倒していけるんだ。
 群集の中で一体ずつ葬るのは非効率だと小さく笑いながらも、彼の清かな刃は使い慣れた技で黒へ死をもたらす。
 ――刀を持ってさえいれば、俺は戦えるのだから。
 いずれにせよ「斬る」と決めたから斬るだけ。
 それが、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)の在り方だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
善など所詮ヒトの、ヒューマンの決めた狭い倫理規範にすぎぬもの

ならばヒトの血を吸って生きるダンピールの私は?
ヒトの怨念を纏って生きる悪霊の私は?
ヒトを殺すことを生業とする咎人殺しの私は?
そして「顕現した悪夢そのもの」という、この私の真の姿は?

私にとってはそれが当然
私は運命さえも屈服させて思うがままに生きるもの
ヒトにとっては邪悪でしょうけれど知ったことではありません
なぜ他者の勝手に決めたくだらぬ規範の中で
私が悩まなければならないのです?

それに比べ人外の身でありながらヒトの規範に縛られているつまらぬ現象よ
その時点ですでに、あなた自身が「善」にこだわっていると自覚なさい
矮小なる自己矛盾の塊よ、あなたはこれまで相手にしたすべての敵の中で
最も下らぬ相手ですね

さっさと終わらせましょう
「結界」を張って攻撃を防ぎつつ「オーラ」に「残像」を投影し
その無駄に多い瞳をくらませながら間合いを詰めましょう
鎖を舞わせ、後方に「衝撃波」を放って加速し一気に前進
UCを発動しとどめです
全てを無に帰す暗渠の中へ沈みなさい



 嗚呼、とぬるい吐息で場を濡らしたのは黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)だ。
 振ったかぶりさえ、暗澹たる嵐の渦中で彼女らしさを損なわない。
 たとえばそこでポーシュボスなる悪意が蠢動し、彼女の善き心を前に腹を空かせていたとしても。
「善など所詮ヒトの、ヒューマンの決めた狭い倫理規範にすぎぬもの」
 艶を帯びた唇で魅夜が模るものは、ヒトならざるモノの思考。
「問いましょう。ならばヒトの血を吸って生きるダンピールの私は?」
 善か悪か。尋ねられたはずの黒は応じず、ただただ彼女の成り行きを目前にするのみ。
「まだありますよ。ヒトの怨念を纏って生きる、悪霊の私は?」
 たった二つきりの箱で分けるのなら、悪に値するのだろうかと魅夜は聞く。
 けれどやはり、ポーシュボスからの回答はない。
 代わりにかれは魅夜へと這い寄るばかり。
「では、ヒトを殺すことを生業とする咎人殺しの私は?」
 いずれも魅夜を織り成す要素で、魅夜を魅夜たらしめるものだ。善か悪かで塗るとしても、どちらか一色で染め上げるようなものではないと、魅夜自身がよく知っている。
 だから濡れた眼差しで、ポーシュボスを捉えた。
 そして微かなため息を最後に、魅夜は片腕を翳す。ポーシュボスが群がる闇の嵐に、陽は射さないけれど。
 この程度の暗がり、滴る悪夢にとっては兆しが差しているに等しい。
「ヒトにとっては邪悪でしょうけれど、知ったことではありません」
 何故ならそれを決めるのは、他でもない魅夜自身だから。
 魅夜は掲げていた片腕で影を呼ぶ。無数の瞳が彼女をねめつけ、輝きで射ても魅夜が招く奈落は変わらない。規範に縛られるヒトの有り様を、ポーシュボスと化したナニカから彼女は顔を逸らさない。
「その時点ですでに、あなた自身が『善』にこだわっていると自覚なさい」
 縋るものの正体を伝えて、魅夜は末期に視る影へ、ぽつりと囁く。
 直後、魅夜は数多の目線に焼かれるより早く、疾く、ポーシュボスへと突き進む。静寂に浸した闇を撒き散らした、このポーシュボスの世界において、微塵も衰えず。
 間合いを詰めれば無駄に多い眼光がより眩しく、鋭利に魅夜を射抜くも、彼女の鎖はぬめるポーシュボスを縛り上げた。
 終わらせましょうと、云いながら。
 矢継ぎ早、魅夜の解き放った影が、ゼロと無を知る影が、歪んだ黒色を引きずり込む。閉ざすことを知らぬ瞳ごと。
 ――全てを無に帰す暗渠の中へ、沈みなさい。
「矮小なる自己矛盾の塊よ、あなたはこれまで相手にしたすべての敵の中で――」
 最も下らぬ相手です。
 魅夜の手向けた一言をポーシュボスが聞いたのか、誰にもわからなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

二條・心春
どれだけの善意を糧にここまで大きくなったんでしょうか……恐ろしいです。ここで必ず食い止めないと……!

家族、友達、仲間、そして私と共にいてくれるUDCの子達……守りたいものはたくさんあります。悪にはなれません。
私も狂気への耐性はありますが、それだけではきつそうです。【憑依召喚:蛇竜】を使って、ワームさんと一緒に戦いましょう。これは私の精神力をさらに削りますが、この子との確かな繋がりを感じられます。ワームさんが傍にいれば平気です。
さて、向こうから近づいてくれるなら好都合です。全てカウンターで殴り飛ばしましょう。混ざり合った個がその正体なら、この呪毒は全身に回るはず。私達が必ず、貴方達を倒します!



 大きな眼をぱちりとして、二條・心春(UDC召喚士・f11004)は悪意の塊を前に立ち竦む。
「いったい、どれだけの善意を糧に、ここまで大きくなったんでしょうか……」
 膨れ上がったポーシュボスの有様は正に『異異常』で、心春の視界いっぱいに広がるかれらの彩は、奇怪そのものだった。悪ならばありのまま、そうでないなら寄生を許として挑む。此度の任は心春にとって熾烈なものとなる。
 ――これまでも、いろんな怪異や狂気に遭遇してきたけど……。
 だから悪がなんたるかを、彼女は識っている。
 悪がいかに邪悪かを、彼女は痛感できている。
 けれど痛む胸が、心が叫ぶのだ。守りたいものがたくさん出来てしまった彼女の、これまで歩んできた人生そのものが訴えかけてやまない。想い出として刻まれた家族や友人、仲間、共に居てくれるすべての存在が、彼女と繋がっていてくれるから。
 ――私は、私は……悪には、なれません……っ。
 意を決してもたげた面差しに、蔓延る闇をも照らす光が燈る。
「ワームさん、一緒にがんばりましょう!」
 言うや彼女の身を満たすのは、蛇竜。強靭な毒や生命力を心春と同化させ、力を高める戦友だ。蛇竜と重なったことで心春も変姿し、ポーシュボスめがけ突撃した。相手も相手で、心春の善を喰らい、悪に侵して取り込もうと迫る。
「好都合です! いきますよワームさん……!」
 掛け声を響かせるたび、正気がごりごりと削られていくのがわかる。その分、感じるものも確かにあった。
 ――私はこの子と繋がっている……傍にいてくれるのが、よく伝わってきます。
 温もりを宿した拳へ、力を篭める。
「だから平気なんです、私!」
 思い切り殴りつければ、ポーシュボスがぐにゃりとへこみ、橈む。波打つようにして衝撃を受けたポーシュボスは、元のかたちに戻ることもなく、心春の覚悟と蛇竜の呪毒でもって四散した。
 そして心春は、息を切らしながら次なるポーシュボスへ意識を向ける。
「私達が必ず、貴方達を倒します! ここで、食い止めてみせますから……!」
 有言実行を果たすため、彼女は再び地を蹴るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レザリア・アドニス
悪か善か、黒か白か
そんなの、純粋なものはない、と思います
悪か善かと聞かれると、混沌
黒か白かと聞かれると、灰色
…ああ、私の翼(これ)みたいに、ね

別に寄生されても気にしないで戦う
【全力魔法】と【範囲攻撃】をかけた、白い毒花の嵐を起こし、
親玉も、増殖したポーシュボスも、纏めて巻き込んで、削る

一旦死霊と融合して、体の一部を明け渡し、寄生してくる『部外者』を死霊に食わせる
私はあなたの『器』である
過去も、今も、未来も
あんな者にこの体を渡すつもりはないわよ
ポーシュボスの侵蝕深度により、
狂気を払い、正気を保つためにオブリビオンとの融合深度を増す
別の意味の狂気の淵へ
さ、戻れなくなる前に、あいつらを倒そう



 何ひとつ混じり気のない黒も、なにものにも染まらぬ白も――そんなの、ない。どちらもポーシュボスの世界にあって、この世にないものだとレザリア・アドニス(死者の花・f00096)は思う。
 悪か善かならば、混沌。黒か白かならば、灰色。
 区別して飲み込むポーシュボスのやり方を、レザリアは奇妙だと感じた。
 ――私の翼(これ)みたいに、ね。
 灰で濡らした双翼を広げ、少女は嵐の中に吹く風を手招く。彼女の羽根が風に揺れ、伸ばした指先も風を紡いで遊んだ。
 そんな彼女をポーシュボスの概念が包む。善なる心を喰らい続ける闇が、レザリアに絡み付いて離れない。
 けれど彼女の面差しに、焦りや動揺はなかった。
「……おいしい、とも限らないけど」
 味の好き嫌いがないのなら、どこまでも深く覗き込んでくればいい。
 風に触れていた指から腕、腕から胴へと染み渡るポーシュボスの狂気が、彼女に寄生していく。隅から隅まで狂わせる。例外はない。どこぞのモノとも言い切れぬポーシュボスゆえ、あらゆる枠組みに嵌まらず生物をおかしくさせていくのだ。
 しかし、レザリアとて黙って許すわけではない。この身体は彼女の身体だ。そして。
「私ハ食べテしまったカラ」
「そうとも。僕が望ンでいルから」
 レザリアにもはっきりと届くようになった、ポーシュボスと化した者たちの嘆き。
 かれらの情念が内を巡るのを感じて、レザリアは嵐の中で花嵐を招く。
 すると鈴蘭の花が浮かび上がるより早く、レザリアへ寄生したポーシュボスに異変が生じた。
 空っぽだと信じて入り込んだ少女の中には、先客がいたのだ。ポーシュボスよりもずうっと前から、レザリアと共生している死霊が。レザリアと融け合ったことで、死霊の濃さはより深く、強くなって。
 長いこと住んでいる部屋に見知らぬものが訪れれば、死霊も当然それを『部外者』と見做して、襲う。
 ――あんな者に、この体を渡すつもりはないわよ。
 死霊との同化が深まるにつれ、彼女はポーシュボスからの狂気を拒めるけれど、別の狂気が蝕むようになってくる。だからレザリアは白き花で蠢動する悪意を消し飛ばしていく。
 あいつらを倒さないと。自分が戻れなくなってしまう前に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菱川・彌三八
俺ァ手前を善とも思っちゃいめえし、それなりに大人しくした試しもねえんだが
そう云われっちまうと善やもしぬ

然し一つ分かってる事もある
どんだけ姿が変わろうが、何かが頭ン中で叫ぼうが、俺の喧嘩好きァ変わらねえってこった
殴る
手がねえなら頭で、足で、体で
蠢く体千切って
目を突いて
潰して捻って砕いて投げて落として削って圧して叩きつけて裂いて開いて握って絞って絞めて折って刺してぶつけて
得物がなくて出来る事全部、お前ェにならやれると思ってンなァ、生憎俺だ

いやあ、全部お前ェの姿になっちまうってンなら、それこそ罪悪感がなくて善いや
突撃は速さで避ける

其れでも駄目なら其の目に蜜柑の汁注ぐしかねえな
正に極悪



 口許を手で覆いながら道中考えてきたものの、自分の属する色を計り切れずに菱川・彌三八(彌栄・f12195)はひとつ唸った。極端な分別の仕方だとも思う。
 ――俺ァ手前を善とも思っちゃいめえし、大人しくした試しもねえんだが。
 過去の善行と悪行を思い返してみるも、彼の中で天秤は傾かない。
「あノ人ヲ、手にかケた。裏切ッたアノ人を」
「そいつァ好い」
 ポーシュボスに成り果てた者の声を聞き、彌三八が相槌を打つ。
「僕ハあれヲ、食べタべたべたベタべた」
「夫れ、腹ァ空かしてるだけじゃねェか」
 届く狂気の形に言葉を返してみるも、首を捻ってしまう。己の在り方について答えは出そうにない。
 ――そう云われっちまうと善やもしぬ。
 適当に見切りをつけて彌三八は拳を鳴らした。
「マ、分かってることもあらあな」
 変姿の術が施されようと、嘆きに満ちた声たちが彼を四囲しようと。
「俺の喧嘩好きァ変わらねえってこった」
 多くを語るまでもなく、殴った。ポーシュボスなるモノのカタチにこの身が囚われたとしても、いつものように拳を突き出すまで。主力とした腕の片方が闇の色に呑まれても――ポーシュボスの触手に近くなっても、彌三八の動きは緩まない。弛まない。
 風を切ってぶん殴れば、蠢く巨躯はぐんねりと歪んだ。だから次は、そうして細まった触手をむんずと掴み、引きちぎる。閉じない瞳が残った己の腕へ現れようと関係ない。ちぎって眼を突き、破って捩切る。寄生された身が変色していくも、彼の足裏はポーシュボスを踏み潰す。
 跳び上がったと同時に、くねるポーシュボスを一本拝借して強く握り、矢継ぎ早、別の個体へと投げつける。
「いやあ、全部お前ェの姿になっちまうってンなら、罪悪感がなくて善いや」
 同じ姿同士が衝突したところへ翔け、彌三八が次に贈るのは江戸の華の続き。
 よろめいた直後の隙を狙って体当たりをかまし、口端をにぃともたげて。
「其れでも駄目なら、其の目に蜜柑の汁注ぐしかねえな」
 そう笑うかれの身には、捻り潰したポーシュボスの残滓ともうひとつ、得も言われぬ見事な鳳凰の刺青が描きあげられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…「地獄への道は善意で舗装されている」なんて言葉があるぐらいだもの

…「世界を救う邪悪」に成る事も、何とでもなるはずよ

…例えばそう。全てを自動的に殺戮する行為は善か悪か

「影精霊装」の闇に紛れる力で陽光を遮り吸血鬼化してUCを発動
自身に限界突破した"闇の雷"の魔力を溜めて肉体改造を施し黒雷化を行い、
理性無き雷速の空中機動で敵陣に切り込み黒雷の斬撃波を乱れ撃ちする闇属性攻撃を行い、
戦闘終了後、事前に仕込んでいた「吸血鬼狩りのペルソナ」を起動してUCを強制切断する

…来たれ、闇の理。我が身に宿りて、我に背く諸悪を裁く雷になれ

…目標捕捉。排除開始…!

…戦闘人格リーヴァルディ02、強制起動。閉じよ、血の魔装



 そこに咲いた花の名を、かれは知らないままゆくのだろう。
「……『地獄への道は善意で舗装されている』なんて言葉があるぐらいだもの」
 吐息めいた音を零して、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は前を、敵を見据える。
「……『世界を救う邪悪』に成る事も、何とでもなるはずよ」
 首に巻いていた布を取り、ばさりとひらめかせて纏い直す。闇で編まれた精霊衣が、陽の力から彼女を守るから。だからリーヴァルディは前後も左右も構わず、夜の世界を闊歩する――吸血鬼として。ひとつの、理性なきリーヴァルディとして。
「……来たれ、闇の理。我が身に宿りて、我に背く諸悪を裁く雷になれ」
 唱えればリミッターが外れ、限定的な能力が鼓動する。
「……目標捕捉。排除開始……!」
 限界を越える力が錬成され、彼女は黒雷と化した。
 溜め込んだ魔力が膨れに膨れて、常より彼女が持つ知性も落ち着きも、すべてを喰らっていく。溢れたいかずちは敵陣をキッとねめつけて、かと思えば彼女の身体はポーシュボスの渦中に在った。
 飛び込んだリーヴァルディの黒が、蠢く黒を圧倒する。触手がうねればうねるほど、瞳が忙しい動きを見せるほど、リーヴァルディの標的と化すのみ。
 言葉なくとも、リーヴァルディにはかれらに――善悪によって食べ方を変えるポーシュボスへ、問いたいことがあった。
 例えばそう。全てを自動的に殺戮する行為は、善になるのか。悪になるのか。
 けれど尋ねる言の葉をも黒雷へ転換したリーヴァルディは、今はただ、群れからひとつ砕いては、群れから一本引きちぎるだけ。乱れ咲く斬撃が絶叫を重ねていく。
 どれもポーシュボスから落ちたものだ。ポーシュボスに成った誰かが、零したものだ。
 だがリーヴァルディが足を、手を止める理由にはならない。
 ふっ、と短く息を吐いた瞬間には、彼女の黒刃が悪意を切り裂いた。そして次の呼気が喉を上がるまでの間に、彼女は別のポーシュボスを闇へ沈める。悲鳴も嘆きも、もはや響かせる余裕もないほど、リーヴァルディに断たれていく。
 吸血鬼狩りのペルソナが起動するまで、猛攻は続いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朧・紅
朧人格で
アドリブ歓迎

んーっと
てめェを磨り潰せってェ話?
蛆みてェに後悔の汚濁這いずるコレを?
(プチプチ)
ドブ掃除みてェな仕事だな
(プチプチ)
あーハイハイ。イイコチャンも大変だねェ
(プチプチ)

ッと、紅に反応したか
だがドウだろなァ?
ソレもまた
大好きなパパとママを食べちャッて
壊れた感情で
後悔も哀惜もなく涙一つ流せなかった欠損品
なにより殺人鬼(俺)の片割れにして正気を失わぬ狂人ダ

果たしてソレは善かねェ?

ッハハ
まァどッちでもイイさ
紅が憑かれるならそれまで
俺にャ関係ねェ
元より狂気なこの俺を喰らい尽くすか
俺がてめェを喰らい尽くすか
その程度の話だロ?
其れを愉しみに来たんだからヨォ
あァ嗤い乍ら潰しあおうぜ



 大切なものを、食べて、ころしたはなし。
 それを繰り返すポーシュボスたちの様相は、朧・紅(朧と紅・f01176)にとって笑わずにいられないものだった。殺し合いならば得手とする朧の人格は、蠢く悪意を前にしても怯まない。かれらの嘆きを耳にしても揺るがない。
「てめェを磨り潰せってェ話? 蛆みてェに後悔の汚濁這いずる、コレを?」
 カタチを保ててすらいないポーシュボスの現況を、朧は引きちぎる。
「ドブ掃除みてェな仕事だな。臭ェのもコレが原因か」
 朧はやはり慣れていた。それが血であれ粘液であれ水であれ、砕いて潰す流れは朧にとって通常業務と呼べるもの。
「呑んジャっタ、あの人ヲ。止めラれなカッた」
「どうシヨうモなくテ、食べテしまッた」
「あーハイハイ懺悔懺悔。イイコチャンも大変だねェ」
 人の情は、後悔の念を覚ったときに鈍りやすい。ましてや『せざるを得ない言い分』を示されたら、惑うもの。それを餌に動きを緩めさせて、触れて、狂気に侵しているのだとしたら。
 ――救いようはねェな。
 そう思うも、かといって朧に湧く感情はない。情けも遠慮も抱かない。
 ただ紅は、どうだろうか。朧が片眉をくいとあげる。内側から紅の声を聞いたのだろう。しかし壊れた感情を知る朧は、鼻で笑うだけだ。ポーシュボスの無数の瞳に見られても、そこは変わらない。
 ――涙一つ流せなかった欠損品。なにより俺の片割れにして正気を失わぬ狂人ダ。
 同じ器に生きる朧と紅。だからこそ容赦はなく。
「クッはハハ、果たしてソレは善かねェ? まァどッちでもイイさ」
 心底そう思っている声で告げた。口と手を動かしていく間にも、ポーシュボスの色で身体が染まる。紅を探して這いずり回っているのだろうか。悪意はこの身体を同じ姿へと変えてしまう。だが。
「俺にャ関係ねェ」
 変じてゆく姿に眼もくれず、朧は無数の紅を咲かせる。死と善悪ばかりで充たされたこの場所で。
「ッハハ、いいねェ、これを愉しみに来たんだからヨォ」
 にやりと片頬をもたげて、朧は双眸を見開いた。
「あァ嗤い乍ら潰しあおうぜ。どっちかが終わるまでな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
はっはっは、ならば妾も本音でいこう
世界平和とか人を救うとか、お主の言い分とかそういうのは実にどーでもよい!
バトルが盛り上がれば良いのだ、視聴者が興奮し感動するように!
さあ、妾を称える声のための糧となるがよい!

とゆーか寄生だとか増殖だとか尖っておるようだが、物理的な強さはどうなのだ?
存分に攻めてくるがよい、避ける気もない!
なんせ一方的にブッ飛ばすだけでは撮れ高が寂しいのでな
全力を引き出した上でそれを凌駕する! 魅せ方とは技術だ!

はーっはっはっは! 妾の左腕の一撃で、尾の薙ぎ払いで、頭突きで!
ひたすら、ありったけ! ボコってやろう!
心身ともに易々とは砕けてくれるなよ!? お主には耐える義務がある!



「はっはっは、ならば妾も本音でいこう!」
 今日も今日とて御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)の笑い声が響く。
 それは乾いた荒野であっても、悪意に荒んで黒ずんだ嵐の中だろうと、変わらない。ポーシュボスが善を喰らい、悪で染め上げようとしていたとしても、同様に。
「世界平和? 人を救う? そういうのは実にどーでもよい!」
 胸を張った菘の笑みは誇らしげかつ楽しげだ。
 菘にとって最も重要なのは、配信が盛り上がること。つまり暗ければ照明を調整し、画面映えを狙う。そしてバトルが盛り上がれば視聴者のテンションも最高潮に至るというもので。
「妾はそのために動くのみ! さあ、妾を称える声のための糧となるがよい!」
 ばっちりポーシュボスへ指先を突きつけて、前口上は述べ終えた。
「たとえ彩度が低い空間でも、鮮やかに素晴らしく演出してくれよう!」
 闇も嵐も狂気も恐れずに、菘は撮れ高を狙って動き出す。
「とゆーか、寄生だとか増殖だとか尖っておるようだが、物理的な強さはどうなのだ? ん?」
 ポーシュボスの顔と思しき部分を覗き込むようにして、菘が煽る。
 返る言葉はなくともうごうご揺れてくれるため、画面が寂しくならない。
「さあ存分に攻めてくるがよい!」
 言いながら迫りくる嵐を捉える。菘も全力で――ぶつかってもらうのみ。避ける気など微塵もなく、堂々たる姿で立ちはだかり、堂々とカメラに収める。
 嵐に呑まれた妾が、ポーシュボスに触れられた先から闇色に呑まれていけば、視聴者の心配する気が高まる。緊張が積み重なるにつれ、視聴率というのも上昇するもの。だから菘は触手に呑まれても、腕がポーシュボスとそっくりになっても、すべて逃さず映像に残す。
 ――なんせ、一方的にブッ飛ばすだけでは撮れ高が寂しいのでな。
 魅せ方の技術を熟知している彼女だからこその手腕。
 そしてたとえ狂気が彼女を濁らせようとも、オーラと視聴者の声とが支えてくれる。
「はーっはっはっは! ここからが本番! 心身ともに易々とは砕けてくれるなよ!?」
 だから菘は膨れ上がったポーシュボスと化した腕で、自らの尾で、極めつけに頭突きで深い闇を打ち砕く。
「残りもかかってくるが良いぞ! 容赦はせぬからな!」
 後は、ひたすらボッコボコにする活躍っぷりを撮るだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダグラス・ブライトウェル
自分を増やしてくるならUCで押さえ、
その間に殺しに行きましょう
解体包丁をしっかり研いでいて良かった
存分に切って、解体して、殺しましょう

寄生?僕に善の部分はありませんよ
誰かを殺したい、誰かを殺した
僕の“これ”は日常であり平常
美味しい物を食べて喜ぶ・感動する事と同じで
自分の性質を嘆いたり悔やんだ事は一度も無い

“いい人が明日を迎えられるよう”
その為に殺すのが悪人限定なのは“便利だから”
悪人より善人が多い方が生活しやすいでしょう?
それに、消えてくれと願われる人がいるから僕は殺しを味わえる
彼らに感謝はしても、後悔する要素はやっぱり無いですねぇ
…まあ、全部アリスになってからの記憶ですけどね

でも、溶けた貴方達には善の部分が在ったんですね
普通の人は色々隠す必要がなくて生きやすそうだと思ってました

“こういう事もあるんですねぇ”

邪神になった誰かを見て思うのは“それくらい”
同情や哀れみはなく
殺していいものが在るという喜びを胸に、楽しみましょう



 世界は、綺麗な方がいい。
 たとえば、朝の陽射しが抜ける窓は磨かれている方が良い。
 たとえば、澄んだ夜気に浮かぶ蝋燭の灯はまろい方が良い。
 どちらもダグラス・ブライトウェル(Cannibalize・f19680)は柔らかく眺め、どちらもダグラスは薄い笑みで見守るもの。何故ならそれらは綺麗な世界の、綺麗なものだから。
 快い朝を迎えるのは、いい人であるべきだと彼は目線を闇へ流す。流した先に蠢くのはポーシュボス。触手が死を手招き、ぎょろっとした瞳が狂気へ誘おうとしていると、ダグラスは確信した。ああ、これが気持ちの良い明日を迎えるのに不要な存在ですか、と口端を引き伸ばして。
 渦巻く嵐は衰えを知らず、ダグラスを飲み込んでポーシュボスの意思に晒そうとする。そこに善があるのなら、寄生するために。そこに悪があるのなら、外れた路へ引き込むために。
 なるほど、と頷きながらダグラスは影色の蛇を解き放つ。
 やおら握った解体包丁へ、かの闇を映す。研いだ刃が見つめる標的の姿は、底を知らぬ悪意に染まっていた。そんな身で人の善と悪を判断し、喰らうというなら。
 ――存分に切って、解体して、殺しましょう。
 踏み込んだ靴音は、静かだ。しかもダグラスの振るう包丁は風を切る音すら持たず、描いた軌跡さえも光らせずに敵を裂く。
「善? 僕にあるとお思いですか?」
 ダグラスに絡み付いてくるポーシュボスへ、そうっと囁いた。
「溶けた貴方たちには、在ったものなのでしょうけど」
 かれらの言葉から、憶測しただけに過ぎないが。けれどダグラスには少なくとも、かれらの言葉から嘘は感じ取れなかった。たとえ勘違いだったとしても、ポーシュボスと化したかれらにとっては真実なのだろう。誰かを喰らったのも。誰かに呑まれたのも。
 ゆるくかぶりを振って、ダグラスはそこに凝り固まった悪意を視なかった。
 ある種、殺人は彼の常。
 おいしい物をおいしいと感じて、喜ばしく思えるのと同じで。本能であり、気質でもあるのだと言える。そして彼は生命の礎ともなるこの性質を、悔やんだことなど一度もなく。
 躊躇なく切っ先で黒を破り、次の瞬間には突き立てる。
「悪人は、消しておきます」
 ポーシュボスに成り果てた、かれらの魂と一緒に。
「善人が多い方が、生活しやすいでしょう?」
 ダグラスの根幹にある要素だ。悪い人の割合が減れば、いい人にとって都合よく。消えてくれと願う者があれば、ダグラスが消去を担う。今ある記憶を遡ってみても、そこに深い情けはないのだが。
 それにしても、と小さく息を吐いて刃を構える。
 ――普通の人は、色々隠す必要がなくて生きやすそうですね。
 ふとポーシュボスを仰ぎ見て思うのは、ひとつ。
「こういう事もあるんですねぇ」
 殺していいものが在る喜びを胸に、これからも切り付けていくダグラスの姿は蓋し殺人鬼。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
★真の姿
UCを使い敵を早業で解体

皆人を殺すのにそんなに苦労して可哀想に
この「可哀想」もぼくにとっては
日常形式的に口にする単語に過ぎないのだが

わざわざ表情筋を動かす必要性
苦労して他人の心情を推し測る事
凡ゆる人間的行為が非推奨化される空間であれば
必然的に「無」が優位性を獲得する
然るに推論はシンプルに帰結する
「ぼくは強い」

五文字をここまで引き伸ばさないと
尺が持ってくれそうにないんだ
きみは
きみたちは
鵜飼章という現象を観測した

言いくるめと催眠で恐怖を刷り込むだけで
ぼくは「悪」とラベリングされる
きみたちの敗因は悪を自己という
認知の歪み易い主観内に仮想設計した事
ぼくらが何者であるかの決定権は
それを観測した他人の中に無数に存在する
ならばその他人の意識さえねじ曲げれば
悪と定義される事は
これほど容易だ

今ぼくが考えているのは
そろそろ飽きたなということだけ

きみたちを雑に殺したところで
面白くも何ともない
ただ出来るからやっている
だからぼくは世界に選ばれてしまった
面倒だよ

ぼくが誰かなんて
きみたちが決める事だ
さようなら



 黒に黒を溶かしても尚、面差しの変化を読み取ろうとするのがひとならば。
 情に突き動かされ、殺めることを躊躇い、あるいは惑うのがひとならば。
「可哀想に」
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)から零れた吐息は、あえかなものだった。ポーシュボスと化した今のかれらを築いているのは、感情によるもの。
 殺して、飲み込むのに感情が必要で。殺して、飲み込むのに感情が邪魔をして、変姿した今でもそれに囚われている。
「可哀想に」
 繰り返してみるが、章には形式的な言葉に過ぎなかった。
 悲しげに眉尻が下がりもしなければ、愉悦から頬が思い切り上がることもない。
 どうしてか、ひとはこの表情筋を頼りに他者の心情を推し量ろうとする。わざわざ苦労してまで。ご丁寧に己を痛め付けてまでも。ならば、こうした人間的行為が極限まで非推奨化される空間で、章はどうなるのか。章でないものはどうなるのか。
 ポーシュボスはかれを見つめた。動かぬ様を疑問視するのでもなく、ただ善を探って喰らおうとしているようだ。だから章は伏せていた睫毛をそっと押し上げ、改めてそれを捉える。
 善を呑み、悪を燈すこの空間で。ポーシュボスの、意識と呼べるものだけが判別する権利を持つこの空間で。
 この空間ならば必然的に、『無』が優位性を獲得すると章は結論付けた。
 ――然るに推論はシンプルに帰結する。
「ぼくは強い」
 五つの音が章の脳内に響く。口に出した音が空間へ転がる。
 とん、とつま先で地を蹴って彼はポーシュボスへと跳んだ。章のラベリングはいかように為されるのか分からずとも、章には断言できることがある。
「きみたちの敗因を、ぼくには挙げられる」
 それこそ、ひとだったものたちの主観に基づいて、善悪を揺さぶったことだ。
 章はこう考えている。個人が何者であるかを決定するのは、それを観測した他人の中にこそ存在する、と。
 あのひとは良いひとだ。あのひとは悪いひとだ。
 変質を常とする印象のすべてに決定権がある。
「……他人の意識さえ捩曲げれば、善も悪と定義される。どんなものより容易に」
 こうした状態にある中で、きみは。きみたちは――鵜飼章という現象を観測した。
「だから言おう。ぼくは強い」
 勝ち誇るでもなく章は佇む。善悪について語り、考察するのも時には暇つぶしになるだろうけど、ただ、今の章が感じているのは。
 ――そろそろ飽きたな。
 溜息混じりの所感。もう終わりは視えているのだから、ぐずぐずしている時間を惜しむように章はポーシュボスへ死を贈る。面倒だと紡いだ唇さえ熱を帯びず、無を湛えたまなこすら煌めかない。
 決定権を、こっちに托すんじゃない。そう訴えるかのように。
「ぼくが誰かなんて、きみたちが決める事だ」
 解体して。崩して。よおく見て。
 最後にこの男は学帽をちょっとだけ摘んで、一切の感情も含めず告げるのだ。
 さようなら、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
入ってこないで
こんなの知らない
だめだめダめ

くルしイ
きモちイい
ヒとノゆメが食べラれチゃウのニ
何モ出来なイ
【システムを再起動しています】

【プログラムを再構築中。完了。偽神細胞チェック。修復状況⎯⎯】
あレ?
誰カ居るノ?
お前モ一緒に
【ネットワークに接続できません。偽神兵器を起動】
あハは
オ前っテば
ソーやっテ何時もポんコつナんな
【本日は12月25日土曜日。クリスマスです】
マザーはホんトしょーが無いな
らぶが居なイと何も出来ないんだ
から
でも
お陰で思い出した
らぶがここに居る理由
【おはようございますラブリー。間もなく日の出時刻です】
おはよマザー
待たせてごめん
それじゃあ行こっか
アイツをぶっ飛ばしに
【そうしましょう】



 だめだめダめ。知らない。こんなの、知ラない。くルしイ。
 入ってこナいで。きモちイい。何もしなイデ。ヒとノゆメが食べラれチゃウのニ、何モ出来なイ。
 らぶに、何ヲ――。

 ――エラーが発生しました。シャットダウンを行います。
 ――システムを再起動しています。
 ――プログラムを再構築中。完了。偽神細胞チェック。修復状況。

「あレ?」
 ぱちり、と瞬いだ。
「誰カ居るノ?」
 きょろ、と見回す。
「お前モ一緒に……」
 手を伸ばしたのか、差し出したのか、縋ったのか。それすら、わからない。
 ただお話をして、聞いて、繋がって。そうしていくうちに、目前の蠢きに対する見え方が変わってきた。変わったのが見え方なのか、彼女の在り方なのかも判別はつかないが、それでも善と悪の二色で切り分けようとするポーシュボスを、彼女は――ネットワークに接続できません。偽神兵器を起動。
「あハは、オ前っテば、ソーやっテ何時もポんコつナんな」
 ゆらり、頭を大きく揺らしてワラう。
 大きなヒトミから光は無くさぬまま、うっそりと前を見つめる。
 ――本日は12月25日土曜日。クリスマスです。
「マザーはホんトしょーが無いな」
 ぶんぶん振り回す。何を? 己の腕を? ポーシュボスの触手を? ココロを?
 ぜんぶ。全部振り回すのだ。心なし浮き立った足取りで、「もー」なんて嬉しそうに頬をあげて。
「らぶが居なイと何も出来ないんだ、から……」
 絡み付き、善を絞り出して喰らおうとしたポーシュボスの色を、まるで児戯のように引きちぎる。
「お陰で思い出した。らぶがここに居る理由」
 ――おはようございますラブリー。間もなく日の出時刻です。
「おはよマザー。待たせてごめん」
 くるくる無邪気に言葉を弾ませて、彼女はふたりきりのミーティングを済ませた。
「それじゃあ行こっか。アイツをぶっ飛ばしに」
 ――そうしましょう。
 鮮やかで愛らしい色彩が、混沌とした黒を切り裂いていく。
 切り裂いて、破砕して、踏ん付けて進み、そして。

 以上が、メモリに残された――否、残してあったラブリー・ラビットクロー(と人類叡智の結晶【ビッグマザー】・f26591)の記録だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
――ああ、うん、駄目ですねこれ。

元より善きモノであれ、と願われて編まれたヤドリガミがわたくしです。
ポーシュポスが好むどころか最適の苗床ですらありますね。

ただ。
わたくしは、ずっとわたくしを壊したかった。
その一念さえあればポーシュポスを斃すことが出来る。

【昏灰散華】――
わたくしがポーシュポスに成るならば。
“わたくし”でもあるポーシュポスは破滅の焔に変成出来る。
もちろん全てとはいかないでしょう。
けれど己の一部が焔になった時、それから逃れられますか?

これは善に非ず、悪でも非ず。
世界を焼き尽くす破滅の焔。
世界を犯す災厄など何も成せずに焼けていけ。
この大地に散るものは、ただ灰だけにいたしましょう。



 察してしまった。
 ――ああ、うん、駄目ですねこれ。
 思わず眉間を指先で押さえ、考える。しかしどう巡らせても、穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)が完全なる悪性を持つことは、ない。策を講じる以前の問題だ。何せ彼女は宿神。善きモノであれと願われ、編まれた存在。都市を守ることを担う者。
 守るものがあり、多くから願われ、善きモノとして今を生きる彼女の在り方は、ポーシュボスにとって好みどころか。
 ――最適の苗床ですらありますね。
 眩暈さえ覚えそうな状況だ。かといって神楽耶の歩みが停まらないのは、言を俟たない。艶やかな色彩を纏う彼女に、黒が縋る。善を一滴も残さず呑みこみ狂わせるために、かの色は朱へと覆いかぶさる。
 浸みる。滲みていく。
 寄生するポーシュボスの感覚が神楽耶にも嫌というほど分かった。衣を自分色に染め、肌を這い、溶け込んだ先から蠢くアレに変姿させる。歪みはいつしか膨れ上がり、ポーシュボスと同じモノと化した。
 それを見つめる神楽耶の眼差しはしかし、ひたすらに潤んでいた。
 嗚呼、そう。わたくしは、ずっと――。
 堪えるように、抑えるように一度だけ瞬きをして、神楽耶は『同士』を見据えた。
 ――わたくしは、わたくしを壊したかった。
 燃え上がりそうな一念を宿し、もはや握れなくなった拳を握るため、神楽耶は変わり果てた腕へ力を込める。侵食はやまず続いていた。時間をかければかけるほど神楽耶の姿はアレに近しくなるだろう。
 ゆえに昏灰散華を紡ぐ。結い合わせるのは縁と朱。己の身に起きた事象へ見せ付けるかのごとく、変じた腕から焔を生む。異形の腕も、同化した今となっては神楽耶の腕。ならば――ゆうらり、神楽耶のまなこで朱が主張する。
「逃れられますか? この焔から」
 破壊を司る、ポーシュボスの知らぬ色から。
 あちこちの瞳に睨まれながら、彼女はすべてを灼く。
 これは善に非ず、悪でも非ず。
 世界を焼き尽くす破滅の焔。
 世界を犯す災厄など、何も成せずに焼けていけ。
 そうして火の花で野を平にした末、降り立った世界で神楽耶は笑みの花を咲かし、こう囁くのだ。
「この大地に散るものは、ただ灰だけにいたしましょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
――畢生。
己の本質は変わらない。

いくら殺せば英雄になる?
 一人殺せばただの殺人者なのに。
いくら救えば聖人となる?
 その行いがどんな結果を呼ぶかも知らずに。

誰かの為に何かをしたいと思うのは、
善か悪か?

食い扶持の為に罪を犯し、
愛し子の為に人を殺し、
民の為に、世界の為に、未来の為に――
害為す者を“敵”として、排除して、
『守る』『救う』なんてのは…
全てすべて、“自分の為”。
自己満足じゃ無いと誰が言える?

人が勝手に主観でそう決めて、
醜さを綺麗事で覆って、
自分の都合でラベリングして。
…なぁ。
何が『本物の』善で悪なのさ?

数える気も無い程度に蹂躙し、鏖殺し、
恨み、嘆き、呪詛、怨嗟…さぞ背負ってるんだろうね、己は。
一度たりと、
罪悪感なんて感じた事無いけど。

これだけの図体だ。
目につくポーシュボス尽く、鋼糸を薙ぎ、巻き引き、斬り断つ。
どんな声も只の微風。
悲哀も後悔も正当化も骸の海で存分に。
加減も手心も回数制限も無しの
――拾式

己は唯、俺。
善悪なんぞ知った事か。
その俺に、手前は寄生出来るか…
試してみようじゃないか



 畢生、己の本質は変わらないのだとクロト・ラトキエ(TTX・f00472)は想い馳せる。揺らめく闇を目前に、彼は深い蒼を湛えたまなこで敵を見据えていた。問い掛けても真の答えなど返らぬと知りながら、知っているから改めて言葉で模る。
「いくら殺せば英雄になる?」
 敵を多く倒せば英雄だ。一人殺せばただの殺人者なのに。
「いくら救えば聖人となる?」
 ただ清き行いと信じて、そう信じる者へ施せば聖人と呼ばれる。その行いが、どんな結果を呼ぶかも知らずに。
 ならば、こうして誰かの為に成し遂げたこと、何かをしてやりたいと考えることは――善か、悪か。
 事情も環境も鑑みず、十把一絡げに善と悪で区切り、処理するポーシュボスの有り様はひどく独善的だ。
 たとえば、そう。食い扶持の為に罪を犯した者。愛し子の為に人を手に掛けた者。あるいは民の為に剣をとった領主や王族、世界の為に武器を掲げ立ち上がった民心、未来の為に過去を骸へ還す、誰か。
 いずれも害為す者を『敵』として排除するからこそ、求めるものを得た。
 短い呼気だけを置き去りに、クロトはかぶりを振るう。
 誰もが『守る』『救う』という理由を振りかざしながらも結局、自分の為だ。
「自己満足じゃ無いと、誰が言える?」
 誰が決めるのだ。ポーシュボスをねめつけて突きつけるも、かの瞳は挙動不審なまま。かの触手もクロトの善悪を判断しようと巻き付く一方で。正に自由奔放らしいと、クロトは睫毛を震わせて、死から近い嵐の中に不相応な、そんな柔らかな面差しで見据える。
 人が勝手に主観で決めて。醜さを綺麗事で覆って。挙げ句の果てに、自分の都合でラベリングする。
 クロトの踏み出した一歩が重く、熱く感じるのは果たしていかなる理由か。
「……なぁ」
 声音は凍てつくように冷たいのに。
「何が『本物の』善で、悪なのさ?」
 瞬いたのち、ポーシュボスを映した彼の双眸は焦がすように、あつい。色に違いなどなくても。
 彼自身が結わえた言の葉のひとつひとつ、音のひとつひとつに眠るのは、何か。
 数える気も無い程度に蹂躙し、鏖殺してきた過去。得てしまった恨み、嘆き、呪詛、怨嗟の数々。
 ――さぞ背負ってるんだろうね、己は。
 一度たりと、罪悪感なんて覚えたことは無いけれど。
「拾式」
 ひとつだけ息をつき、クロトは鋼糸を踊らせる。寄生しようと縋ってきた触手を蹴飛ばして、ポーシュボスのすべてへ鋼を巻き付け、締め上げていく。たとえ嘆きや後悔が届こうと、瞼は閉ざさないが耳も傾けない。
 悲哀も後悔も正当化も。骸の海で、存分に。別れの挨拶は程ほどに、手心は与えずに。鋼糸で細かに切り刻む。ぺとりと落ちた物体すらも鋼糸に喰らわせる。残滓なぞ、常世に遺しはしない。残滓に引きずられる情も、彼にはない。
 何故なら己は唯、俺。
「善悪なんぞ知った事か」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月20日


挿絵イラスト