アポカリプス・ランページ⑱~良い子だね、こっちにおいで
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喰らおう。
善を食らおう。そうして一緒に居よう。
親も子も、男も女も、みんな一緒に居よう。
百年生きた悪人も、余命一か月の病人も、一緒にいれば何も恐れる事はないだろう?
善き心を持ツものヨ、みンなイっしョにイよウ。
こノ嵐の中デ、ずウっと……一緒ニ……
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「ポーシュボス現象(フェノメノン)……まさか現象そのものが神の形をとるとはね」
ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)は頭がいたい、と長い爪を備えた指をこめかみに当てる。
「まあそういう事例は少なくない。例えば日本では、雷や炎といった現象に神性を見る事もあるだろう。今回はそういうものだ。多分。まあオブリビオンである事には変わりないからね、殺してしまってよいのだ。……殺せるなら」
場所はフロリダ州タラハシー。総面積およそ268平方キロの彼の地を覆う程の巨大なオブリビオン・ストームの中に、ポーシュボス“たち”はいる。
「そう、彼らは群体だ。そして主な特徴として、善心のあるものは彼らに寄生されるという事実が確認されている。……少しでも“救いたい”と思ってしまえば最後、彼らに取り込まれてしまうのだ。……という訳で! こちらはこんなものを用意してみました!」
じゃじゃーん! “宇宙の幼生”~!
其れは一見、ただの宝石に見えるけれど……
「おっとストップ! 其れをじっと見つめちゃ駄目。出来れば見ないで持って。じゃなきゃ宇宙そのものを見て、お前たちは狂気に呑まれてしまう。まあ、化け物には化け物をぶつける理論っていうの? そんな感じ。どうもポーシュボスは其れを欲しがっているようでね、其れを認めると巨大な「1体」となって襲い掛かって来る。……デカブツ退治はお手の物だろ?」
「お前たちは次の3つから選択する事ができる。まず一つ、「善性を棄てる事」。そしてもう一つ、「ポーシュボス化を厭わず戦う事」。そして最後が「宇宙の幼生を利用する事」。――最後の選択肢だが……宇宙の幼生を得たポーシュボスがどうなるかは未知数だ。出来れば食わせずに倒して欲しい。……出来れば、で良い。其の石は数秒見ただけで発狂する代物だからね。護るのも容易ではないだろう。まずは自分を大事にしてね」
ぎぎい、と白磁の扉が開く。
其の先には巨大なオブリビオン・ストームが見える。嵐を越えるのは容易だろう。だが、――其の先は。
key
こんにちは、keyです。
今回はプレイングボーナスが複数ありますのでご注意下さい。
リプレイは全てオブリビオン・ストームを超えたところから始まります。
●目的
「ポーシュボス・フェノメノンを倒せ」
●プレイング受付
オープニング公開後、すぐに受付開始です。
受付終了日時はタグ・マスターページにてお知らせ致します。
●このシナリオについて
1章で終わる戦争シナリオです。
🌸プレイングボーナス!
「邪悪ナる者になる」
「ポーシュボス化してでも戦う」
「敵の巨体や“宇宙の幼生”を利用する」
以上の3点いずれかを満たすとボーナスです。
貴方が根っからの悪人であれば問題ありません。ポーシュボスに取り込まれる事なく戦えるでしょう。
或いはポーシュボス化しながらでも群生を倒す事は出来ます。触手が腕からびちびちとかするでしょうが、勝てば元に戻るでしょう。たぶん。
一番安全なのは“宇宙の幼生”を利用する事ですが、其の石さえ人を狂気に呑み込む代物です。どの道リスキーなのには変わりありません。
何も対策せずに戦う事も出来ますが、……貴方は善性を捨てられますか? 其れはもしかしなくても、捨てた「つもり」なのかも知れませんよ。
●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。(合言葉がない場合、別れ別れになってしまう危険性があります)
出来れば失効日が同じになるように投げて下さると助かります。
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此処まで読んで下さりありがとうございました。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『ポーシュボス・フェノメノン』
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POW : ポーシュボス・モンストライズ・フェノメノン
自身の【体積】を代償に、【生物をポーシュボス化する現象】を籠めた一撃を放つ。自分にとって体積を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : ポーシュボス・ウェポナイズ・フェノメノン
いま戦っている対象に有効な【武器形態ポーシュボス】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : ポーシュボス・シンパシー・フェノメノン
【ポーシュボスの威容】を披露した指定の全対象に【ポーシュボス化したいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夜鳥・藍
ポーシュボス化してでも戦います。
だって邪悪って何ですか?そもそも善悪自体立場が変わればひっくり返るようなものですもの。性善説を信じたいですが人はやっぱり弱くも強くある生き物だから。
きっと大丈夫。私はひとでなし。人じゃない。そうでも思わないと生きてこれなかった。耐えられなかった。だからきっと今度も大丈夫。
狂気耐性で耐えながら青月を抜き、UC蝕で攻撃を。
星はそんな私にとってのささやかな希望。結果的なものとはいえ命を生み育てた母なる星。
太陽だってなかったら地球に命は生まれなかったかもしれない。
……次代につなぐこと。そうよ、私はそのためならなんだって受け入れる。
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――邪悪とは、なんだろう。
ぶじゅる、ぶじゅる、腕から背中から生えた悍ましい“己”を感じながら夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は問う。
――善とは、なんだろう。
――善悪そのものが、立場が変われば引っ繰り返るような曖昧なもの。
人間は生まれた時から善性を持っている――性善説を否定する訳ではない。信じたい。けれど、人は……生き物はいつだって、弱くも強くもある生き物だから。
「あッ、……うあ、ああああ……!!」
にょるり、と足の肉が波打つ。筋肉をかき分けて新たな触手が生え、うぞうぞと蠢いた。痛みのような苦しみのような、或いは度を越した快楽のような感覚が藍を襲う。
――おイで
声が聞こえる。其れはきっと、目の前にいる群体が発している。
―― 一緒ニ居よウ
……私は、人じゃない。
藍は青月を大地に突き立てて斃れないようにバランスを取った。足から生えた触手を青月で切り裂くと、まるで足を斬ったような鋭い痛みに襲われる。
「ッ、あぁ!!」
……私は、人じゃない。人でなし。そうでも思わないと生きて来れなかった。耐えられなかった。だからきっと、今度も大丈夫。苦しくても痛くても、取り込まれそうになっても、其れでも――きっと大丈夫。だって、星が見ているもの。
「星は、……私にとっての希望……!」
星の力を纏わせて、青月を振るう。煌めきを纏ったきよい刀が、ポーシュボスの一体を斬り伏せる。
――どウしテ?
誰かが問う。そんなの、決まってる。
この星で私達は育まれてきた。太陽の光が、私達に時間を教えてくれた。――次へ繋ぐ。そうよ、次代へ……次へ、繋ぐの!
「其の為なら、私は――!!!」
大成功
🔵🔵🔵
菊・菊
善性を捨てる、ねえ
仕方ねえから、貸してやるよ寒菊
『心中』
暴れてこい
きゃは
きゃはは!
きゃははっ!
たぁのしい!
だってぇ
滅多に外に出れないのよ、わぁたし
鉢植えちゃんってば意地悪だから
身体、貸してくれないの
だぁから
癪だけど、遊べるなら遊んじゃいましょ
ね、ね、黒くて気色悪いあなた
蹂躙させてちょうだいな
何言ってるかぁ、わかぁんない!
一緒?
嫌よ
わぁたしの鉢植えちゃんに、寄生なんて許さないわよ
だぁって、これ、わたしのおもちゃよ
集合体なぁんでしょお?
先端を千切ってもいいわ
うふ、真ん中に穴をあけましょうか
ずっと一緒なんて
きゃは!
邪魔したくなるじゃない
わたしは、奪うもの
お前たちから『一緒』を奪ってあげる
蹂躙よ
●
「善性を棄てる、ねえ」
菊・菊(Code:pot mum・f29554)は仕方ねえ、と肩を竦めた。群体の内の一つが菊に気付いて、己の肉を千切って放つ。
――おイで
「やだね」
寒菊、貸してやるよ。暴れて来い。
「――あは! きゃはは、 あはははッ!」
きらり、瞳が輝いて。ぶわり、と菊の花が割く。肉塊を両断せしめたのは、何処から出したのか肉切りナイフ。
「きゃはは、あはッ! 久しぶりの心中(デート)だわぁ! たぁのしい! あのね、だってぇ、滅多に外に出られないんだもの!」
――アれはナに?
――わカらナい
菊――に取り憑いた悪霊“寒菊”は跳躍する。いち、に、さん! 跳び上がってウサギみたいに跳んで、可愛い肉塊ちゃんを両断!
「鉢植えちゃんってば意地悪だから、なかなか身体を貸してくれないの。だぁから、癪だけどぉ……遊べるなら遊べるうちにね? ね、黒くて気色悪いあなた! 蹂躙させて頂戴な!」
――みンナ、固まッテ
――ママぁ、こワいよ
「何言ってるかぁ、わかぁんない! というか、おいで? 一緒? 嫌ぁよ! わぁたしの鉢植えちゃんに寄生なんて許さないわよ?」
ぷん、と可愛子ぶって見せる寒菊だけれど、其の所業は残忍なもの。まるで悪意をフィルターに通してろ過したかのような純粋な邪は、寄り添う肉塊をまとめて切り裂く。其の度にひらり、菊の花弁が散り。黄色い花弁を混ぜたかのような菊の髪が揺れる。
「集合体なぁんでしょお? 先端を千切ってあげまぁしょうか? それとも、真ん中に孔をあけましょうか? きゃはは! ずっと一緒なぁんて!」
――邪魔したくなるじゃない!
わたしは奪うもの。鉢植えちゃんに折角貸して貰えたんだから、今日はとことんに奪うわぁ?
お前たちからは、そうね。“一緒”を奪ってあげる。
ふふふ、あは! 蹂躙よ!
大成功
🔵🔵🔵
マオ・ブロークン
あの時の、石……やつらが、求めて、いるなら、使えるかも。
覗き込んだ、狂気の、感覚。UDCアースの、邪神と、そっくりだった。
どこかで、ふたつの、世界が。繋がって、いるのなら。
あたしは、知りたいな。
石を、しっかり、握りしめて。握った手を、布で、ぐるぐる巻き。
手放さないように、直視しないように。
やつらが、存在に、気づいたら、向かってくる、前に。
群れの真ん中へ。お望みのものを、放り投げて、やろう。
……斬り落とした、あたしの、腕ごと。
やつらが、寄り集まって。腕ごと、石を、飲もうと、したなら。
【デッドマンズ・スパーク】。腕を、電荷に変える。
巨体、まるごと、感電させて。石も、破壊して、やる。
●
「あのときの、石」
マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)は手にしっかりと握る。見てはいけない、そうグリモア猟兵に言われたから。狂った脳が再生するのか、マオには判らないから。
――やつらが求めているなら、使えるかも。
一瞬覗き込んだ時の感覚。あの果てしない闇へ放逐されるような感覚は、UDCアースの邪神とそっくりだった。
どこかで二つの世界が繋がっているのかもしれない。其れとも、邪なものというのは総じてああいうものなのだろうか?
知りたいな。いつか判るのかな? 考えながらマオはぐるぐると石を握った手を布で巻く。これで手放さなくていいし、これで直視しなくてもよくなる。うん、あたしにしては名案かも。
――こンにチハ
――イいもの、モってルね
――おぎゃあ!おぎゃあ!
――しょりしょりしょり
――縺昴l繧偵h縺薙○
徐々に生物としての言語能力すら失いながら、マオの石に反応して肉塊がぎゅるぎゅると絡み合っていく。其れは一つの芋虫じみた異形となって、触手の口をぱくりと開いた。
――縺昴l繧偵h縺薙○
「うん、何を言いたい、かは、なんとなく、わかるよ」
欲しいんでしょ? じゃあ、あげるよ。
マオが腕を“放り投げた”。バランスがとりづらい。片腕を斬り落としても、マオは痛くない。其れが少し寂しくて、悲しかった。
でも、悲しんでいる暇なんてなくて。デッドマンの腕はお気に入りだった制服の袖ごと芋虫の異形の前に落ちる。其れを狙って異形が渦を巻き、食そうとしたところで――
「でも、ごめんね」
閃光――
「食べさせる、わけには。いかないの」
ばぢばぢばぢ!
片腕が閃光する。電荷に変わって、弾けて光る。其の膨大な電力は異形の肉を炙り焼く。悲鳴と共に群体に戻るポーシュボス、同時に小さく ぱりん と音がした。
ああ、きっと石は割れてしまった。でも、食べられるよりは良いかな。
のたうつ群体にダメージが確実に通っているのを確認すると、マオはうん、と頷いた。巧くいった。
大成功
🔵🔵🔵
シノギ・リンダリンダリンダ
善性を期待するのなら無駄である
強欲で傲慢な大海賊は、その全てが『全ての世界の全ての財宝を自分の手元に帰らせるため』に戦っている
世界を救えば、人々は喜んで財宝を渡してくる。世界を救えば新たな世界が発見され、新たな財宝が手に入る
その為なら。自分が見た事もない財宝の為なら、オブリビオンは殺し尽くすし、一般人にも優しい言葉をかけよう
造られ落ちたその時から、強欲で傲慢で狂気的な大海賊だ
さて、こいつら倒したらこの宝石貰っていいんですよね?
狂気が封じ込められた宝石だなんて素敵な財宝です
周囲のポーシュボスに【死猟の蹂躙】を撃ち込む
後は死霊騎士や死猟魔獣がやってくれる
さて。じゃあこの宝石をどうするか考えますか
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善性? そんなもの、シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)に期待したって無駄さ。
あいつは傲慢と強欲が形をもったような大海賊。噂では“全ての世界の全ての財宝は自分のもの”だと思っているって事さ。つまり、略奪行為ではなくて“奪い返している”んだな。
今回だってそうさ。あいつは世界を救うなんて崇高な理念で戦っちゃいない。救えば人々は喜んで財宝を渡して来るから、其の為に戦っているだけさ。そうすればまた新たな世界が発見されて、新しい財宝が見つかるって事だ。
――其の為なら。見た事もない財宝の為なら、オブリビオンは殺し尽くすし、一般人にも優しい言葉をかけよう。
「さ、という訳で狂気を含んだお宝ゲットですね」
シノギは片手で宝石を弄びながら笑う。求めてのたうつ巨体には、既に一撃撃ち込んでおいた。呪印がある限り、死霊兵士や悪霊魔獣の猛攻はやまない。せいぜいそいつらと遊んでて下さい。せめて抵抗出来なくなるまでは見守ってあげますから。
「狂気が封じ込められた財宝。素敵です。この宝石はどうしましょう。ネックレスにしてつければ敵に狙われずに済むでしょうか?」
覗き込む度に頭がくわんくわんする、この感覚が癖になる。常識の埒外とはかくも楽しいものなのか。ネックレスにするならどんな形にしましょうか。というか、加工師も狂ってしまうから加工も出来ないのでは?
シノギが頭を悩ませている間にも巨体は宝石を求め、其れを阻止する死霊騎士の斧が肉を両断し、魔獣が噛み付いた。
大成功
🔵🔵🔵
霑国・永一
●宇宙の幼生を利用
こんな狂気があるだなんてアポカリプスヘルも捨てたもんじゃないなぁ
それじゃ早速行くとするかな。宇宙の幼生も忘れずにっと(狂気耐性はそこそこだけど、あまり見るもんじゃないし敵が合体したらポケットにでも仕舞うかぁ)
で、アレは元人間。しかも意識はあるらしい
邪悪な真似は出来ないし、普通にお喋りしよう(狂気の対話発動。逃げ回りつつ笑顔で質問開始)
さぁーて、ポーシュボスになった君、
「身体が異形になってるってどういう気分だい?」
「家族は居るかい?まぁ居たところでもう会えないけどねぇ」
「このダガーが刺さったらどう、痛いかな? それは結構。サービスでもう数本刺してあげよう」
いやぁ面白いなぁ、アレ
●
ぴんっ。ぱしっ。
指ではじいては両手でキャッチ。宇宙の幼生と呼ばれる美しい宝石で手遊びしながら、どうやって盗もうかと霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)は考えていた。
「いやぁしかし、こんな狂気があるだなんてアポカリプスヘルも捨てたもんじゃないなぁ。てっきり銃と暴力ばっかりの世界かと思ってたけど」
時々こういうものが出て来るから、なかなか侮れないなぁ。
――よコせ
――わんわんわん!
――ヨこセ
――ちょうダい?
――欲しいなあ~
――わんわんわん! わんわんわん!
群体が渦を巻きながら、大勢の声が渦を巻きながら一つになっていく。ある程度狂気への耐性を持っている永一だが、余り長く見るものではないと其の耐性が告げている。ポケットに押し込むと、巨体に話しかけ始めた。
だって相手は元人間、意識があるっていうじゃないかぁ。邪悪な真似は出来ないしね、普通にお喋りしよう。
「さてさて、ポーシュボス君と呼んだらいいのかな?」
「ちょうだい」
「それ、ちょうだ」
「痛い!! 痛イ!!!」
「にゃあにゃあ」
「うーん、会話が通じそうなのと通じなさそうなのがいるなぁ。身体が異形になってるってどういう気分だい?」
「いし いし いたい」
「いたいよお、ママ……いたイヨお、何かが私の肩にささっテル…」
永一の質問に答えられないものが、無数のダガーで針山になる。力尽きた個体が、群体にして一体から剥がれ落ち、ぬちゃ、と大地に落ちた。
永一は気にもしない。だってまだこんなにいるのだ。さぁーて、次の質問質問っと。
「家族はいるかい?」
まぁ、いたところでもう会えないけど。
「ママ! ママがイるよ!」
「お前ニハ善の心ハ アァァァ!! 痛イ!」
「善の心? あるさぁ。ほら、君たちとこんなに友好的なお喋りをしてるじゃないか」
永一は笑う。ポーシュボスは恐れた。
善意があるならどうしてお前は私達のようにならないのか。善が欠片でもあるなら、私達のようになるのに。
この男には、善心というものがないのか……?
ならば、猟兵というのは何なのだ?
「ああ、このダガー? 刺さってる君、どう? 痛いかな?」
「痛イ……いタイ……」
「それは結構。サービスでもう数本刺してあげよう」
「アァ゛ァ゛ァァ!」
いやあ、結構面白いなぁコレ。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
アハハなるほど邪悪ナる者ですか今のボクにぴったりですねぇ~?アハハハ
だって今のボクは醜い悪堕ちヘドロ怪人もう反抗の加護も導きもない邪神さまならボクを導いてくれますかぁ~アハハハ
さあボクを見てください醜いヘドロの身体を
ヨダレを撒き散らしてこのオブリビオンストームの中に薄汚いヘドロの海を生み出してあげますよ
アハハハ愉快愉快邪神のひしめくこの大地がヘドロの海になるなんてとても心地いい、悪臭と猛毒の立ち込めるこの場所でさあ始めましょうかヘドロの宴を
もはや反抗の加護などなくなってしまった妖刀ですが敵を切り裂くぐらいならば出来ますよ?
大丈夫生き残りがいたら寂しいでしょうから欠片も残さず切り裂いてあげますよ?
もうチタノはいないでも邪神もいらないですアハハハ
●
ニクロム・チタノ(反抗を忘れた悪堕ちヘドロ・f32208)は堕ちた。
反抗の竜は墜ち、残ったのは憐れなヘドロ人間だけ。
「アハハ、アハッハハ……成る程、邪悪なる者? 今のボクにぴったりですねぇ~? アハハ」
おかしくもないのに笑っている。肉塊を飛ばして来るポーシュボスだが、其れをはねのけるのはレプリカントの膂力。触れ合った部分から触手の芽が生えかけると、ニクロムは一切の躊躇なく己の肉ごと芽をもぎ取って捨てた。
「あぁ~、痛いです……アハハ……痛いですよぉ。というか見て下さいよ、この今のボクを。見にくい悪堕ちヘドロ怪人ですよ、アハハ! もう反抗の加護も導きもない。邪神さまならボクを導いてくれますか? アハハハ……さあ! 見て下さい!! ボクを! この醜いヘドロの姿を!!」
悪臭が満ちる。猛毒のヘドロがポーシュボスへと飛び散って、触れた部分から彼らをヘドロへと変えていく。
――いタい! からダガとケる!
――ママあ! ママあ!
――堕落堕落堕落堕落堕落
「アハハハ! ヨダレ撒き散らして、このオブリビオンストームの中に薄汚いヘドロの海を生み出してあげますよ!」
両手を広げてくるりと回るニクロム。合わせて有毒ヘドロがべちゃり、と飛び散り、襲い掛かろうとしていたポーシュボスを溶かす。
「愉快愉快、邪神のひしめくこの大地がヘドロの海になるなんて! とても心地いい! 悪臭と猛毒立ち込めるこの場所で、……始めましょうか? ヘドロの宴を!」
――坊や、危なイわ、下がっテテ
――おぎャア
――こイつハなンだ
――オまエはナンだ?
問われて、ニクロムが首を傾げる。緑色をした悍ましい色の肌。ヘドロ伝う顔をかくり、と横向けてはて、とニクロムは考えた。
「……さあ、もう忘れてしまいましたよ……アハハハ。良いじゃないですか、ただのヘドロ人間で。あ、ちなみにこちらは反抗の加護がなくなってしまった妖刀です~! アハハ! どれくらい切れ味が残っているか試してみましょうねぇ!」
大丈夫!
生き残りがいたら寂しいでしょうから、欠片も残さず切り裂いてあげますよ?
……もうチタノはいない。
でも、邪神もいらないです。アハハハ!
大成功
🔵🔵🔵
ラブリー・ラビットクロー
【脈拍が安定していますねラブリー】
うん
なんでだろう
今まで戦争が怖くって足が震えちゃってたけど
今はとても穏やかな気持ち
【敵性群体が来ます】
うん
わかってるぞ
マザー
らぶの眼は任せたなん
瞼を閉じれば暗闇が広がって
翼を広げれば自由の空へ
栄光への道筋はきっと耳に届く筈
沢山の声がらぶの持つ石に引き寄せられて来るのがわかるんだ
ううん
沢山だった声
それは次第に一つの大きな声になって
らぶを怒鳴りつけてくる
でも怖くなんかない
だって
お前の中にもらぶに縋るヒトのユメが
瞼を閉じてても見えるから
【コード︰パルージアを発動します。人類に栄光を。3、2、1…ハレルヤ】
混じり合う異物
大地を穢すその毒は
きっと100%の悪で
希望の光
●
【脈拍が安定していますね、ラブリー】
ビッグマザーの言葉に、うん、とラブリー・ラビットクロー(と人類叡智の結晶【ビッグマザー】・f26591)は頷く。
なんでだろう。今までは戦争は怖くって、ホントは足が震えてたんな。でも、今はとても穏やかな気持ち。
ガスマスクを外す。清浄すぎる空気が肺を焼くような気もしたけれど、其れもなんだか穏やかで。
――あレはダレ?
――おねエちゃンかな?
――ちゅうちゅうちゅう
【敵性群体がきます】
うん、判ってるぞ、マザー。らぶの目は任せたなん。
ラブリーは瞼を閉じる。暗闇が広がる。
翼を広げれば、きっと其処には自由が広がっている。栄光への道筋は目に映らなくても、きっと耳に届くはず。
――石!
――石石イシいし!
――いししいししっしししっししいしいしいししいっししs
沢山の声がねじり合って、混ざりあって、一つの声になっていく。
そしてラブリーの持つ石へと引き寄せられてくる。大きな一つの声。ラブリーに“寄越せ”と怒鳴りつけて来る、叩き付けるような声。
でもね、怖くなんかない。だって、お前の中にも――らぶに縋るヒトのユメが、瞼を閉じてても見えるから。
【コード:パルージアを発動します。人類に栄光を】
らぶにとってはお家みたいなものだけど、
【3】
皆にはどうなんな?
【2】
ううん、本当は知ってる。でも、マザーが言ってくれたから。
【1、……ハレルヤ】
人類に栄光を。
――高汚染物質の雨が降る。
其れはあらゆるものを毒する。ラブリーにとっては恵みの雨でも、ポーシュボスにとっては命を削る毒の雨。いや、ポーシュボスだけではない。全てのものが高汚染物質の雨の中では生きられない。
でもラブリーに取ってその雨は、希望の光なのだ。たとえ純度100%の悪であっても、其処でしか生きられない人もいる。其れを彼女は、知っているから。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…毒を以て毒を制すやり方は好みじゃないんだけどね
この場合、四の五の言ってられないか…
…この宝石が欲しいのね?欲しいならくれてやるわ
「宇宙の幼生」による精神攻撃を狂気耐性と敵への殺気で耐え、
「写し身の呪詛」を武器改造して「宇宙の幼生」に姿を変えて乱れ撃ち、
合体して巨大化した敵の攻撃を無数の残像で受け流してUCを発動
…読み通り一体だけになったわね。だけど巨大化したのは失策よ?
…この距離でこの大きさだもの。外す方が難しいわ
自身の体を肉体改造術式で闇化して闇に紛れて切り込み、
"告死の呪詛" を纏う大鎌をなぎ払う死属性攻撃の四連斬撃波を放つ
…この御業はお前のような存在を滅ぼす為に編み出したものよ
●
「毒を以て毒を制す。……というやり方は好みじゃないんだけどね。この場合、四の五の言ってられないか……」
手の中に石がある。其れは無限を内包した、恐ろしくも美しい宝石だ。
“宇宙の幼生”を手の中に閉じ込めて、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は溜息を吐く。これから其れを写すのだ、少しアンニュイな思いにもなる、というものだろう。
――ちょウだイ
――ネえネ、キれいダネ
――わんわんわん、わんわんわん
――あくあrksふあsfないふぉあ
――ほしい
ぐわん、と空間が蠢く。そんな感覚すらした。オブリビオン・ストームの内側にみっちりといるポーシュボス達が、次々と絡み合い交じり合って、一つの巨大へと変貌していく。
「欲しいならくれてやるわ。でも、貴方達の目で本物を見分ける事が出来るかしら」
リーヴァルディは手を開き、“宇宙の幼生”を衆目に晒す。悲鳴が上がる。其れは辛うじてポーシュボスに残っていた正気の末期の声かもしれないし、ポーシュボスそのものの狂喜の声かもしれなかった。
耐える。耐える。敵へ向ける殺気へと変える。耐える。耐える。耐える耐える耐える。耐えるしかない恐ろしさというものを、君は知っているだろうか。いつまで続くか判らない狂気の波の恐ろしさは、筆舌に尽くしがたい。まさにリーヴァルディは其れに晒されている。ひたすら打ち付けて来る狂気と恐怖を心の裡に押し留めている。こんなもの、xxxに比べれば。xxxなんてxxxxxxだからxxxxxxx、xxxxxxxxxxxxxxxxxxx………
――耐えるのよ!!
切り開く。写し身の呪詛をばらまいて、其れを全て彼女は“宇宙の幼生”のカタチをした弾丸に変え、ポーシュボスに撃ち放つ。
彼らは本物なんて区別できない。全てを食らおうとして、全てにぶち当たる。次々と穴が開いて、ぶじゅる、と其処から新たな触手が生えた。
「……かは、……はーっ、……はーっ……!」
己の息が、まるで嵐のようにうわんうわんと耳の中でこだまする。狂気が渦を巻いている。だが、今しかない。今しかないのだ。己の身体を茫洋とした闇に変える。其の優しさに涙が溢れ、そのまま闇でいたくなる。けれども其れは叶わぬ事と、リーヴァルディは闇から闇を渡る。幸いポーシュボスの影は濃く、嵐の中は薄暗い。鎌を両手で握り込み、本当の“宇宙の幼生”を手の中へ。ほんの少しだけ返ってきた理性を総動員して、一体となったポーシュボスへ振るった。
「……これは! お前のような存在を滅ぼす為に編み出したものよ……!」
声を荒げでもしないと、狙いが外れてしまいそうだった。
其れでも一撃外した。寿命をがりがりと削られて、苦しみ霧散するポーシュボス。現象は散り散りとなりて、嵐に巻かれてまた空を舞う。
あと、四分の一。其れがポーシュボスの寿命。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・アイオライト
ただでさえオブリビオン・ストームで騒がしいのにそれに加えて無数の慟哭の声とか騒音被害凄まじいんだけど。
喧しいのよ、他人の耳元で自分の不幸を叫ぶなっての。
とはいえ、このままこちらも呑まれる訳にはいかないわね。
邪悪なる者、ならあたしの内に存在してる。
UC発動。クラミツハ、出てきなさい。
待ちに待った殺戮の時間よ。
『とうとう殺せるのか!!クハハハハ!!好いぞ!我が力を以て蹂躙しよう!!嵐が鮮血に染まるまで、永久に!永遠に!!』
クラミツハに体を預けて、影を自在に操る力でポーシュボスたちを『暗殺・範囲攻撃・蹂躙』していくわ。
さっさと骸の海に還りなさい。
●
レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)の背中には、傷跡がある。呪いと力の証、“影憑き”と呼ばれる者の証明だ。
「ったく、ただでさえオブリビオン・ストームで騒がしいのに、無数の声だなんて」
背中がざわつくのを感じながら、レイは見上げる。無数の一を。ポーシュボスという現象を。
――xxx
――xxxxxxx
――xxxxxx
其れは別の猟兵によって生命を直接削られたからだろうか。最早言葉の形を成していなかった。多分「痛い」だとか「苦しい」だとかそういう言葉をかたどっている気がするのだけれど、生憎レイは其れを真摯に聞き取ってやるほどの聖人ではない。
相手は敵。オブリビオン・フォーミュラだ。ならば倒すのが手っ取り早く助けてやるのが最も良いだろう。
「喧しいのよ」
……ひたり、と声が已んだ。
「他人の耳元で自分の不幸を叫ぶなっての! ……少しでも善良なら、アンタたちに呑まれるらしいけど。ねえクラミツハ、アンタならどうする? 呑まれずに戦う事が出来るのかしら?」
ぼら、獲物は目の前にいっぱいいるわよ。蹂躙しがいがあるわよね?
背中の影が解放される。其れはまるでポーシュボスの触手に似て、質量持つ鋭さでポーシュボスの一体を貫いた。
『……ク、クク。クハハハハハ!! とうとう殺せるのか!! 好いぞ、好い! 我が力を以て蹂躙しよう! 嵐が鮮血で赤く染まるまで、永久に、永遠に!』
「良いから、さっさと骸の海に……返しなさい、よね」
そうしてレイは眠り、クラミツハが現れる。
影を操り、ポーシュボスを一つ一つ、愛玩するように……貫いていく。
時に口らしき場所を少し残して、悲鳴を楽しみ。
時に片足だけ捻り潰して、ずるずると不格好に歩く様を楽しむ。そうして共通して、最後には叩いて潰す。
殺戮こそ、蹂躙こそ、一方的な力による君臨こそがクラミツハの楽しみならば、邪悪なる者という言葉が似合う者もこれ以上にはいないだろう。クラミツハに慈悲はあるのか。ない。彼が叩いて潰すのは慈悲ではなく、殺したという実感を得たいだけ。
じわり、嵐が赤く染まる。蹂躙の宴が始まった。
大成功
🔵🔵🔵
片稲禾・りゅうこ
宇宙の幼生?ほーんこんなのが宇宙の……
よっ、ほっ、はっ
うーん……蹴鞠にするにはちと固いな
……おっと、そっちさんは駄目だぜ。
これは渡せないんだ、ごめんな
おっとっと?これがぽたーじゅすーぷだとかなんとかそういうやつ?
うはは!くすぐったいなあ~~こらこら落ち着けよ。あ、こっちにも!うわあこれじゃありゅうこさんそのうちりゅうこさんじゃなくてたこさんになっちゃうかもなあ~なんてな!うはははは!!
さあてまあ……別にりゅうこさんの体にくっつくのは勝手だけどさ、あんまりくっついてるときっと辛いぜ
りゅうこさんの毒、痛いなんてものじゃないからさ
まあまあ、すぐ楽にしてあげるとも。安心してくれよ
な?
●
「宇宙の幼生? ほーん」
こんなのがねえ。
片稲禾・りゅうこ(りゅうこさん・f28178)は少しだけ其れを覗き見て、少しだけ蹴鞠にしてみた。よっ、ほっ、はっ。うーん、少し固いし小さいな。駄目だ。
いかな者とて悲哀と狂気には抗えぬ。其れを長い生でりゅうこは幾度となく見てきた。
悲しみと狂気はどんな善き者も落としてしまう。どんな強きヒトの子でさえ、悲しみと狂気には耐えられない。
其れはポーシュボスも同じだった。悲しんでいる、狂気に呑まれている。もうすぐ命が終わる事を悲しみ、狂い始めて喜んでいる。
其れは正しい情動なのか、りゅうこには判らない。知るべきでもない。ポーシュボスという現象がどういう生を経てきたのか知らぬから、同情も憐憫も相応しくないと思うのだ。
だから、其れを下さいと懇願し始める彼らにも、駄目だとぴしゃり、言い放った。
「これは渡せないんだ、ごめんな」
なら、一緒になろうよ。
そうしたら其れ、手に入るよね。
ぐるぐると一つに凝り固まるポーシュボス。其れはとてもか弱くていとおしいものに、りゅうこには見えた。慈しむべきものだったのかもしれない。いとおしむべきだったのかもしれない。ずるりと絡み付いてくる彼らを、だからりゅうこは拒否しなかった。
「くすぐったいな。うはは! 落ち着けよ。あーあ、これじゃありゅうこさん、そのうちりゅうこさんじゃなくてたこさんになっちゃうかもなあ~~! なんてな! ……ああ、でも」
りゅうこさんの身体にくっつくのは勝手だけどさ。あんまりくっついてるときっと辛いぜ。
フェノメノンが揺らぎ始める。ぼとり、可哀想なポーシュボスが一体墜ちた。じゅるじゅるとした粘液に変わって、其の長くも短くもない命を終える。
何が起きているのか判らないまま、ポーシュボス達は宇宙の幼生を求める。求めてりゅうこに絡み付くたびに、じゅるじゅると液体に変わっていく。
「りゅうこさんの毒、痛いなんてものじゃないからさ」
何が毒で、何が薬なのか。ポーシュボスには判りやしない。
或いは薬なんてないのだろう。何もかもが毒。“宇宙の幼生”は理性を狂わせ、りゅうこは肉体を腐らせる。そして何もしなくとも、ポーシュボスは悲しく正気を削り続ける。最早何処にもいけぬ袋小路に、ポーシュボスという現象は「あった」。
病毒はポーシュボスを蝕む。人の言葉を忘れ、虫のように末期の声を上げたポーシュボスの一体が、また、腐れて落ちた。りゅうこは笑っている。其の足元にはポーシュボスだったものの残骸が溜まり、……彼女という存在の恐ろしさを、示しているかのようだった。
大成功
🔵🔵🔵
レテイシャ・マグナカルタ
くっ、コイツは…!
抗いがたい狂気が精神をかき乱し肉体を変容させようとそしてきて、思わずその場に片膝を付いてうずくまってしまう
そのまま迎え入れようというかのように未だ合体してないポーシュボスの群れに呑まれて見えなくなる…が
ポーシュボス化してきて頭の中にOP冒頭の言葉が流れてきた時、家族を思い出す
今も拠点に隠れながら自分を想って無事を祈ってくれている義父と義弟妹の事を
「…違ぇだろ」
「一緒にいるってのは、そういう事じゃねぇだろ!!」
体内の魔力が噴き出して周囲のポーシュボスを吹き飛ばし、合体した巨体へカッ飛んでいく
「一つの化物になんてならなくたって、遠く離れていたって、別の世界に居る時だって、オレは家族とずっと繋がってる!」
別の戦いで暴走しかけた真の姿の片鱗、普段は丸い障壁は巨大な蒼い西洋竜の形へと変じ
けれど今度は家族の想いがオレの心を繋ぎとめてくれる
蒼い魔力竜の突撃が牙が爪がブレスが彼らをバラバラにして無理やり一緒(怪物)にされた心も引きはがして救って(滅ぼして)いく
●
うぞ、うぞ、うぞ。
レテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)を包み込むように、群体のポーシュボスが群がる。
狂気に心をかき乱されて膝を突いた彼女を、瀕死のポーシュボスは逃がしはしない。腕から足からずるりと黄色を帯びた黒い触手が生えて、レテイシャを同じ現象(モノ)に変えようと蠢く。
――xxx
――xxxヨ
其れは最早聞き取れぬ、狂気の言葉。けれどレテイシャには段々判り始めていた。判り始めてしまった。うぞうぞと半円型に彼女を取り囲むポーシュボスは、彼女と一緒に居たいのだ。だから同じものになろうと誘って来る。
肉体が変容していく。やめろ、とレテイシャが呟いた。
――いっショにいヨうよ
はっきりと聞き取れた其の言葉に、レテイシャはハッとした。
脳裏をよぎる、孤児院の子どもたち。己をお姉ちゃんと慕ってくれる彼らの顔が一人一人鮮明に、レテイシャの意識をよぎっていった。
「……違ぇだろ」
レテイシャの翼が広がる。
「違ぇだろ……!! 一緒に居るってのは!! そういう事じゃねぇだろ!!」
体内の魔力が一気に噴出して、彼女を取り囲んでいたポーシュボスを吹き飛ばした。散り散りになった彼らはレテイシャに再び近付こうとするが、魔力の障壁にべたりとくっつき、肌を焼かれていくだけ。
レテイシャは己の腕に生えていた触手を引きちぎり、地面に投げ落とす。触手が抜けたり癒えた訳ではないが、其れでも。
「一つの化け物になんてならなくたって、遠く離れていたって……そう、別の世界にいる時だって、オレは家族とずっと繋がってる。一緒にいるんだ! だからお前らの「一緒にいる」は違う! そんなのは「一緒にいる」じゃねぇ、無理矢理に一つになったって何も良い事なんかねぇだろ!!」
本来なら丸型をするはずのレテイシャの障壁が姿を変える。巨大な蒼い竜へと変じた障壁を纏って、レテイシャは飛んだ。蒼い弾丸のようだった。金色の髪を靡かせて其の爪牙を振るい、ポーシュボスの心を引きはがしていく。
無理矢理一緒にされて痛かったよな。辛かったよな。もういいんだ。俺が剥がしてやるから、好きな所に行って良いんだぜ。
自らも家族の想いに繋ぎ留められながら、レテイシャは舞う。ぼろぼろと乾いた肉片になってポーシュボスたちが落ちていく。其れは滅びではなく救い。現象の中で、蒼い竜は見事に羽撃いて見せたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ルーファス・グレンヴィル
悪って何だろうな
煙草を咥えながら一言ぽつり
尻尾を揺らす黒竜の頭を撫でて
ふ、と穏やかに笑った
前までは誰でも殺してた
容赦なくその命を奪ってた
戦場では当たり前だった
けど、それは悪か?
なんて考えても出てこねえ答えか
それに、──
脳裏に過る大切なヤツの顔
オレも焼きが回ったモンだなあ
アイツの悲しむ顔が見たくねえから
ヒトを殺せなくなった、だなんて
そんなこと考えてる時点で
悪には、なりきれねえな
ぐしゃりと煙草を地面で練り潰し
腰の双子鉈を引き抜き前を向く
徐々に感じる身体の異変
手が触手になっても
この武器から手を離さない
コイツを倒して、オレは先に進む
なあ、ナイト、
最期は燃やし尽くしてやれよ
──お前の炎は、葬送の色だから
●
悪とは何か。其れは永遠の命題だ。
ルーファス・グレンヴィル(常夜・f06629)は今更のように、其の命題に頭を痛め、たった一言ぽつりと零した。其れは誰も決まった答えを持たない問いで、誰かに応えて貰って納得するものではない。
其れを全て含んだうえでただ一言、黒竜の頭を撫でながらルーファスは零したのだった。
悪って何だろうな、と。
其れはポーシュボスを前にしても答えの出ない問いだった。
以前までは誰をも殺していた。女子供関係なく殺した。呵責なく、容赦なく殺した。必要ならばペットまで殺した。戦場では当たり前の事だった。報復は恐れるべきものだからだ。報復されたくなかったら皆殺し。其れが戦場の掟。
――けれど、其れは悪なのだろうか? 殺す事が悪ならば悪だろう。だが、そもそも……殺す事は、悪なのか? 奪う事は、殺す事は、悪なのか? 明日を生きようとして断崖を登る誰かを蹴落とす事を、悪だと言えるのか?
……判らなかった。
腕に触手が生えてぐるりと巻き付いて、漸くルーファスは意識を引き戻す。
脳裏によぎったのは大切な彼の顔。いつだって無鉄砲で、いつも何処かに傷を作って帰って来る彼の事。彼の悲しむ顔が見たくないから、人を殺せなくなった、なんて。
――オレもヤキが回ったモンだなあ。
ルーファスは己を嗤う。そんな事考えてる時点で悪にはなりきれねえ。なんだ、答えなんか最初から出てたんじゃねえか。
腰の双子鉈を抜く。短くなった煙草を棄てて、地面に踏み躙る。
真っ赤な鉈を振りかざして、ルーファスは跳んだ。悪になり切れない自分を抱いて、悪から抜けきれない自分を抱いて、そうして笑って、跳んだ。
先に進むんだと。オレが先に進むんだと、お前を蹴落としてやるんだと、そう意思を込めて鉈を振り下ろし、体液を浴びる。
――なあ、ナイト。
傍を飛ぶ黒竜に、心中で語り掛ける。穏やかに。
――最期は燃やし尽くしてやれよ。お前の炎は、葬送の色だから。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
真の姿
悪魔と呼ばれた男が居る
どこかの愚かな奴が、そうなってしまった未来があるんだそうだ
悪魔は別に、人を害することに快感を覚えるような手合いじゃない
ただの、システムだ
機械的に、「勝利」という結果を弾き出すために最適化された存在
過程に何があろうと関係ない 何が失われようと関係ない
誰の為でも無ければ、自分の為ですらない勝利を
積み上げるだけ積み上げて 何も感じやしない
だから──ある意味では、邪悪とも言えるのかもしれない
さて、今日も勝つか
──『Obsession』
懐かしいな 今じゃもう、ここまでの熱意すら無い
だが…勝利を求めるのは同じだ
悪いが、感情を揺さぶろうとしても無駄だ
この通り、まともな情動は既に死んでいる
勝利以外は全て削ぎ落した 無駄なことだ
ナイフで切り刻み ショットガンで吹き飛ばし ボルトで風穴を空ける
単純明快な暴力で、殺して回るだけだ
こうなればもう、一方的だろう
奴らは俺を取り込めず、揺さぶりすら効きはしない
一匹ずつ死んで、最後には絶えるだけ
憐れに思う感情も無い 早く終わらせよう
●
悪魔と呼ばれた男がいる。
俺の事かは知らないね、と、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は肩を竦める。
何処かにいる愚かな奴が、そうなってしまった未来があるんだそうだ。
別に人を害する事に快感を覚えるような手合いじゃない。ただのシステムが、悪魔と呼ばれるようになったんだ。機械的に“勝利”という結果を弾き出すために最適化された存在。過程に何があろうと、何が失われようと関係ない、誰の為でも自分の為でもない勝利を積み上げるだけ積み上げて――でもシステムだから、何も感じやしないのさ。
其れは、ある意味では――邪悪と言えるのかも知れねえな。
悪童はまるで“俺の事だよ”といわんばかりに、歯を見せて笑った。
システムは稼働する。
ヴィクティムは重たい瞼を持ち上げて、長い髪を靡かせた。
瞳の奥でプログラムを弾く。勝利という結果を弾き出すために。敗けて生き残るくらいなら、死んででも勝つと、そんな執念を燃やして。
でも、その執念も何処か懐かしい。今じゃもう、ここまでの熱意すらない。勝利を求めるのは同じだけれど、でも、執念で勝ち取る勝利ではなくなってしまった。
――やメて
――イタイよ
――ユるシてヨ
悪いな。そんな言葉さえ何処か空虚だった。
情動を揺さぶろうとしても無理なのだ。まともな情動というものは全部死んでいる。悪魔とも鬼とでも何とでもいうといい。自責という感情すら今の彼にはない。ただあるのは勝利への思念だけだ。多分それは執念と解釈して良いものだろうけれど、でも、感情とは解釈できない何かだった。
彼は動き出す。勝利という決められたゴールに向かって。
ナイフで触手を切り裂き、触手の集合部をショットガンで吹き飛ばす。
暴力は単純明快で良い。このまま殺して回れば良い。善悪だとかどうでも良いから、さっさと死んでくれよ。
奴らは俺を取り込めない。俺は奴らを理解する気も、同情する気も、こうして出会いさえしなかったら認識すらする気はなかった。
ただ、其処に勝利が落ちていたから。
だから拾うだけなんだ、俺は。其れは善とも悪とも無関係な行為だ、そうだろう?
一匹ずつ確実に仕留めていく。勝利の先に何があるのかなんて考える必要はない。
勝利が欲しい。
其れだけだ。其の為に、一匹残らず絶えてくれ。
あくまでシステマチックに、其れは殺害を繰り返す。
其れはまるで現象のよう。意思を持たず、ただ其れだけを繰り返す。
そうして一匹残らず駆除されて、勝利という条件が達成される頃――ポーシュボスという現象は、敗北という虚無の中へ呑まれて消えていた。
大成功
🔵🔵🔵