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アポカリプス・ランページ⑱〜Legion Region

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 旧アメリカ合衆国、フロリダ州タラハシー。
 この地は今、超巨大なる漆黒の嵐に覆われていた。
 嵐の中に蠢くは、全てが同じ、黒き肉塊。

「嗚呼、俺は、俺ハ誰だ……俺は、俺ハ、ポーシュボス……」
「私は求めタ……人を怪物ト化さシメる現象ノ謎を……私ハ知っタ……私自身も怪物トなるコとにヨッて……」
「坊や、坊ヤ……私が食べテシマった坊ヤ……何処…何処にイルの……」
「ここダよ……ココだヨ、ママ……ボクは、ママト、いっショダよ……」

 風の唸りに紛れるように、響き渡るは無数の呻き。
 己さえも失った、生きながらに死せる者達の声が、肉塊達より漏れ出でる。

 彼らこそはポーシュボス。
 彼ら全てが、フィールド・オブ・ナインが一角『ポーシュボス・フェノメノン』──。



「──っちゅう、とんでもない奴が、今回の相手や」
 グリモアを通して現地の光景を映しながら、グリモア猟兵、ツキカ・アシュヴィン(星追いの渡り鳥・f24375)は硬い表情で猟兵達に告げる。
「連中全部がポーシュボス、つまり連中全部をやっつけな、このフィールド・オブ・ナインを完全に倒すコトは叶わん──のやけど」
 大きな問題が一つある、とツキカは語る。
「ポーシュボスは、生き物の『善の心』に寄生するコトで増殖する。つまり、ちぃとでも良心のある人は、皆ポーシュボスになってまう」
 そしてそれは、猟兵さえも例外ではない。ツキカは断言する。
「寄生されずに済むんは、一欠片さえも良心を持たん『邪悪なる者』だけや。数百人もの人を自分の楽しみの為だけに殺してきた奴ですら、ほんの僅かな良心につけ込まれて寄生されたらしいでな、その基準は相当厳しいと見てええ」
 かの敵と対峙するその瞬間だけでも、良心を完全に捨てていかねば、忽ちに寄生されてしまう。かの敵に憐憫や慈悲を見せるなどは以ての外だ。
「ただ、皆やったら、ポーシュボスに寄生されても、自分をしっかり保てさえすれば。連中の一部となってまうことは避けられる。良心を捨てとうないっちゅうなら、この手がええと思う」
 無論、この場合は己を塗り潰しポーシュボスに変えんとする狂気に耐え、正気を保つ精神力が求められる。眼前の群れと一つになりたいという衝動も、強く襲ってくることだろう。
「何にせよ、何とかして倒さなあかん敵なのは確かや。この世界の人達の為にも、──ああなってもうた人達の為にも」
 かの悪夢的な光景を、あの場限りのものとする為に。ツキカは願う。かの敵の殲滅を。
「ほな、転送始めるで! 皆、よろしゅう頼む!」
 そしてグリモアの輝きが、猟兵達を送り出す。黒き嵐荒れ狂う、フロリダの地へと。


五条新一郎
 時に悪意は世界を救う。
 五条です。

 アポカリプス・ランページもいよいよ佳境。
 此度の敵は、善意を喰らい増殖する怪物の大群でございます。

●このシナリオについて
 このシナリオの難易度は「やや難」です。
 普段より厳しい結果が出やすくなっておりますのでご注意ください。

●目的
『ポーシュボス・フェノメノン』の殲滅。

●戦場
 アポカリプスヘル、旧アメリカ合衆国領フロリダ州タラハシー。
 かの都市全てを飲み込むように超巨大オブリビオン・ストームが発生しており、その内側に無数のポーシュボスがひしめいています。

●プレイングについて
 OP公開と同時にプレイング受付開始、ある程度のご参加を頂いたところで〆切予定。受付状況はタグにて掲示予定。
「『邪悪なる者』になる」または「ポーシュボス化してでも戦う」ことでプレイングボーナスが得られます。

●リプレイについて
 現在執筆中の「アポカリプス・ランページ⑪〜ViolateVictim」完結後より執筆開始、9/19(日)いっぱいでの完結を予定しております。

●余談
 オーバーロードの使用についてはご自由にどうぞ。
 但し非使用の方とのリプレイにおける明確な差は生じませんので、その点はご了承くださいませ。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ポーシュボス・フェノメノン』

POW   :    ポーシュボス・インクリーズ・フェノメノン
【ポーシュボスによる突撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【新たなポーシュボス】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ポーシュボス・ナインアイズ・フェノメノン
自身の【全身の瞳】が輝く間、【戦場全てのポーシュボス・フェノメノン】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    ポーシュボス・デスストーム・フェノメノン
【オブリビオン・ストームの回転】によって【新たなポーシュボス】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ザイーシャ・ヤコヴレフ
●SPD

Совесть(良心)?
それぐらい知ってるもん
良い子にしてなきゃ『遊べれない』でしょ?
生者でもなく、死者でもない、お人形さんたちと……うふふ
でも、私よりも『遊んだ』人でもポーシュボスになっちゃうのなら、私もなっちゃうのかしら?

それならそれで面白そう
だって、思う存分『遊べれる』ようになるのでしょ?
ああ、楽しみ
私の身体じゃなくなって、ドロドロの身体になったらどのように『遊べる』ようになるのかしら

そうだわ
それならこうしましょ
良い子になってポーシュボスになったら…たくさんの触手でお友達を『九死殺戮刃』で【切断】したり【串刺し】にしたり【こじ開け】たりして遊びましょ
遊んで遊んで、遊び尽くしちゃう



 タラハシー市を丸ごと覆う漆黒の嵐。
 その内へと突入した猟兵達を待ち受けていたのは、蠢く無数の黒き肉塊。
『ポーシュボス・フェノメノン』、フィールド・オブ・ナインの一角にして、善き心を糧として増殖する邪神。

「わタシは誰ダ……ワたしハ誰だ……」
「あアあなタ、何処にイるノ? 真っ暗デ分かラナいワ……」
 譫言めいた声を漏らすポーシュボスの群れを、ザイーシャ・ヤコヴレフ(Кролик-убийца・f21663)は何処か羨望の滲む瞳で見上げる。
 Совесть(良心)とは如何なるものか。幼いザイーシャでもそれぐらいは知っている。良い子にしていなければ『遊べない』から。
 そして此度の『遊び』相手は眼前の邪神群。生きているとも死んでいるとも言えない、人形にも似た存在。
「うふふ、どんな風に『遊べる』のかしら……っ?」
 呟いたザイーシャ、しかし直後に己の変調を自覚する。身体から骨が失せて溶けだすかのような感覚。見れば、己の半身が、黒い触手状の肉塊と化しつつあった。
「……ああ、私よりも『遊んだ』人でもなっちゃうのよね」
 納得を込めて頷く。『遊ぶ』ために良い子であろうとしているザイーシャである。その意思自体に寄生された、と考えれば、この結果も成程、致し方ないのかもしれない。
「……あは、面白そう……♪」
 そして、その変化はザイーシャにとって悪いものでもない。こうなってしまえば、思う存分『遊べる』から。ヒトの形という枠から抜け出して、黒き不定形の身体を手に入れて。きっと、新しい『遊び』ができる筈だ。
 そんな発想から受け入れてしまえば、然程の時を経ずしてザイーシャの身体は完全に本来の姿を失い。眼前のもの達と同じ、ポーシュボスとなり果てていった。
「あア、アあ、君モ、君もポーシュボス……」
「なっテくれタ……ナッてシマった……」
 新たな『仲間』の発生に、歓喜とも絶望とも聞こえる譫言をポーシュボス達が漏らす。その中で。
「うふフフ……さぁミンな、アソびマしょ♪」
 だがここからがザイーシャの本領。黄色い大きな瞳が輝き、触手と化した四肢を振り回せば――それらは鋭い刃が如く、周囲のポーシュボス達へと猛烈な勢いで襲い掛かる。
 ある者は頭部を寸断され。
 ある者は胸部に大穴を穿たれ。
 ある者は身体を中央から切開され。
 ザイーシャに近いものから順番に、その肉体を破壊され、消滅してゆく。
「あはハ、すっゴぉイッ♪ こンナ感じ、初めテ♪」
 異形と化した肉体で以てする『遊び』という初めての経験に、歓喜の声を上げるザイーシャ。同一化の願望も、却って『遊び』の興奮を高めるスパイスとして機能しているかのようで。
 何故ならザイーシャは殺人鬼。即ち同族たる人間を殺めるモノ。己がポーシュボスと化した今、周囲のポーシュボス達は即ち同族。同族相手に『遊ぶ』ことが何より楽しいのは道理と言えた。
「うフフふふ、もット、モっとヨ。モッといっパイ、アソびマシょぉっ♪」
 興奮と歓喜のままに触手を振り回し、己の命数削るも気にすることなく、斬り裂き、突き穿ち、解体してゆく。
 やがて疲れて眠る時まで、ザイーシャは思う存分『遊び』倒していったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイ・アイオライト
……で?嘆くことしかできない奴らが、今度は身を寄せ合って世界に八つ当たりでもしてるってわけ?

そういうの良いのよ。惨めすぎて逆に哀れだわ。死んだ肉塊共、その過去の残影が文字通りの醜い存在に成り果ててるっていうなら、全部殺すわ。そこに何の躊躇もない。
UC発動。邪悪なる者はあたしの力の内にいる。

クラミツハ、殺すわよ。全部、この嵐が血の嵐になるまで、全部を殺す。

『やっと!やっとか!クハハハハハ!!ならば殺そう!!全てを殺し、微塵に磨り潰し!そうして全てが消え失せても殺す!!殺すッ!!』

クラミツハに体を預けて、影を自在に操って『範囲攻撃・暗殺・蹂躙』。
率直に言って気持ち悪いのよ。さっさと消えてもらえる?



「今は朝ナのか、夜なのカ……? 分かラナい……何モ分カらなイ……」
「暗イよ……怖いヨ……でモ……暖かイノ、気持チイいの……」
 黒き嵐の中、風に乗って流れてくるポーシュボス達の声を、レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)は聞く。なれど、其に心傾けたりはしない。
「……で? 嘆くことしかできない奴らが、今度は身を寄せ合って世界に八つ当たりでもしてるってわけ?」
 只々、切って捨てる。惨めすぎて逆に憐れ。最早眼前のこれらは人とは思えぬ、死んだ肉塊の群れでしかない。まして、その過去の残影が文字通りの醜い存在になり果てるというなら、全て殺す。
 そう割り切れども、未だ己の中には良心が残っているやも知れぬ。ならば。真に邪悪なる者の出番だ。己の内、全てを殺せと囁く、闇の繰手。
「――クラミツハ、殺すわよ」
 それはレイの背に刻まれた傷痕にして呪詛。生まれつき宿す『影憑き』の力を齎せしもの。
『――ほう。漸くその気になったか?』
 レイの頭の中に響く声。『闇御津羽神』、通称クラミツハ。常よりレイに殺戮を囁く存在。
「ええ。この黒い嵐が地の嵐になるまで、全部を殺す」
 応える言葉は努めて硬く。気を緩めれば、この存在が齎す殺戮はこの場に留まらなくなるだろう。其を許すわけにはいかない。心捨てるは今この場限りの事。
『――やっと! やっとか! クハハハハハ!!』
 そんなレイの意思を知らずか、或いは知った上でか。その脳裏へと哄笑が響き渡る。抑圧されてきた殺戮の欲求、其の解放への歓喜に満ちた笑い声。
『ならば殺そう!! 全てを殺し、微塵に磨り潰し! そうして全てが消え失せても殺す!! 殺すッ!!』
 溢れ出る衝動に身を委ねれば、その背から影が溢れ出す。有象無象の区別なく命を奪い、狩り尽くす、死の影が。
 クラミツハに操られるまま、レイの身がポーシュボスの群れへと吶喊する。影が渦巻く刃を形作ってレイの身を包み、触れんとした肉触手が細切れとなる。
 ポーシュボスも反撃とばかりに触手を振り回すが、影の刃を突破できぬ。只々斬り刻まれ、遂にはその身全てを解体される。
『クハハハハ! 弱い! 弱い! 無力也! ならば黙して引き裂かれるがいい! クハハハハハ!!』
 歓喜に満ちたクラミツハの哄笑がレイの頭で反響し続ける。かの存在に善意などは無い、只々、純粋な殺戮を求め、為すばかりの存在。故にこそポーシュボスを寄せ付けぬ。こと、此の場に限っては何とも頼もしい存在となる。
「ああアアアあ、痛い、痛イィ……」
「ママ、ママぁぁ……怖イの、怖いノが来ルの……」
 黒き嵐に黒き血が混じり、腐臭が共に渦を巻く。その合間に響く、ポーシュボスとなり果てた者達の悲痛な声。同情や憐憫を誘う、仲間を求める声。
「率直に言って気持ち悪いのよ、さっさと消えてもらえる?」
 無論、其に耳を傾けるレイではない。最早人ではない彼らが何を言おうと、其は怪物の呻き以外の何物でもない。
 不快感を隠しもせぬレイの声に応えるかの如く、影の刃が飛び出して。かの怪物の、頭部と思しき部位を輪切りと為した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リサ・ムーンリッド
・信頼という利を得るために倫理をなぞってるだけで善意がそもそも無いタイプのマッドサイエンティスト

●心情
外聞があるからオブリビオン相手でも手段は考えなきゃいけなかったけど…
こういう敵だからなー仕方ないもんなー
研究サンプルがいっぱいだーやっほう

●行動や攻撃
UC『特別製のポーション』でポーシュボス化したモノを一時的に正気に戻す&動きを封じて、インタビュー
気分や、体の違和感や、変化の過程を聞いてみたりしてメモしていくよ
でもすぐ正気を失っちゃうなあ
暴れだす前に機能停止させておこう
と『超小型の炭素荷電粒子銃』でザクザク【切断】
正気に戻したのが動物や赤子なら会話にならないのでそのままザクザク



「ふむふむ、善意を糧に無限に増える邪神、か」
 群れなすポーシュボス・フェノメノンを前として、リサ・ムーンリッド(知の探求者・エルフの錬金術師・f09977)は思案する。
(そうかそうか、こういう敵ならまあ、仕方無いよねー?)
 善意を見せれば寄生される。逆に言えば、善意の欠片もない行いをしても、それが本心かどうかは分からない。『善意を見せられないのだから仕方ない』からだ。
 例えオブリビオン相手であっても、あまりにも人道を外れた行為は外聞を考えれば行い辛い。だが今はどうだ。この敵に対しては、どんな非道も許容される。即ち――
「研究サンプルがいっぱいだー! やっほう!」
 普段は信頼という利を得る為に自重していた実験さえも、今ならやり放題。善意なきマッドサイエンティストたるリサの本性が、露わとなった瞬間であった。

 リサが取り出したるは一本の薬瓶。目の前に迫ってきたポーシュボスの一体目掛けて投げつければ、割れた瓶から溢れた薬液がポーシュボスへと浴びせかかる。
「ああアア……ああ、あ、あ……?」
 直後、ポーシュボスに変化。嘆きにも似た呻きを漏らしていたものが、確かな理性を感じさせる声音に取って代わる。薬液――特別製のポーションの薬効が、ポーシュボス化に伴う狂気の発露を抑え、正気を呼び戻したのだ。
「やあこんにちは、気分はどうかな?」
 唐突に理性が戻り、困惑している様子のポーシュボス――恐らく元は若い男性だったのだろう彼に声をかけるリサ。まるで街角で出会った知己に挨拶するかのように。
「どうって……最悪だよ。身体の感覚は無いのに変な力の滾る感じはあるし、吐き気がするのに吐くものも場所も無いし……何より、頭の中で声がするんだ……意味の分からない、気味の悪い声が……」
 自分の置かれている状況は理解しているのか、リサの問いには明瞭な答えを返すポーシュボス。だが声音は、名状しがたき恐怖に苛まれるかのように震えていた。
「なるほどなるほど。どういう過程でそんな姿になったのかな?」
 そんな彼の様相を気にも留めず、答えを端末にメモしていきつつ、更なる質問を投げるリサ。その眼には対象の有様への憐憫も嫌悪もなく、只々好奇心の光ばかりが輝いていた。
「それは――ああ、そレハ、ソレは――アア――」
 続けての問いに答えようとする声音が虚ろう。恐怖に苛まれていたが故か、早くも正気が失われようとしているらしい。
「……と、もう正気が持たないのか。仕方ないな」
 それを察したリサは小さく嘆息。今はポーションの効果で動きを止めているが、すぐに動けるようになるだろう。そうなっては面倒だ。
 腰のホルスターから抜いた銃をポーシュボスへと向け、トリガーを引く。銃口から伸び出た荷電粒子が剣の如き形を作る。これを振るえば、ポーシュボスの肉体は細切れとなって崩れ落ち。そのまま塵となって消えていった。
「さて、次のサンプルは……と」
 其を確かめると同時、リサは振り向きざま薬瓶を背後へ投擲。リサを背から襲おうとしていたポーシュボスに命中、割れた瓶から薬液が浴びせかかる。
「――ああ、アア……あ、あー……あー……」
 動きを止めたポーシュボス、呻きに代わって漏れる声音は赤子の如きもの。リサは眉根を寄せる。赤子では会話ができぬ。情報が得られない。
「ハズレか。仕方ないね」
 なので荷電粒子の剣を振るい斬り刻む。ポーシュボスとなり果てた赤子は、何も分からぬままに息絶えた。
「ま、サンプルはまだまだ沢山あるんだ。どんどんいこう」
 崩れ散りゆくポーシュボスだったものには一瞥もくれず。リサは次なる研究サンプルを見繕い始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イヴェッタ・レチアーノ
彼らは全員善の心を持つ人だったのね、ざまあ♪じゃなかった、かわいそう
ぷふふ、世界を守る大義名分で善良な犠牲者達を殺すなんて、元マフィアでも心苦しいわ、ははっ♪

殺せる数が多くても攻撃されるのは嫌だから
オルタナティブ・ダブルで奉仕人格を呼んでそっちを囮にして
『こっちも主人格に攻撃が当たる様に避けるにゃ☆』
……世界を守る為に、流れ弾が当たっても仕方ないわよね♪
『哀れにも世界を守る為に死んだ主人格を背乗り、もとい遺志を継がなきゃにゃ☆』

(ポーシュボスにも撃っていくが互いが互いへ本気で撃ちあう、結果的に互いの背後のポーシュボスに当たって互いの背中を守れても、両方とも感謝でなく苛ついた笑顔で戦い続ける)



「あア、あなタ、アナた……私達、こんナこトにナッて……」
「大丈夫ダ、大丈夫サ……僕達はズッと一緒だかラネ……」
 善の心に寄生して増殖するポーシュボス。即ち彼らは皆、元は善き心の持ち主であったということ。その事実を思い返し、イヴェッタ・レチアーノ(囚人番号壱零零壱・f24458)は呟く。
「ざまぁ♪ ――じゃなかった、かわいそう♪」
 取り繕ってはみれど、声音には隠しきれない喜悦が滲む。かつてはマフィアの娘であったイヴェッタ、それ故に世界崩壊後は人々に疎まれ、SNサーバの生体部品となる事を余儀なくされた。善き人々とは、即ち己の悪行三昧を逆恨みしていた者に他ならない。猟兵として活動し、己の境遇への鬱屈をオブリビオンにぶつけていても、彼らへの恨みは消えなどしない。
「ぷふふふ、何の罪もない善良な犠牲者を殺すなんて、元マフィアでも心苦しいわ……あははっ♪」
 良い子ぶった連中が怪物となり果てたことは自業自得、そして怪物故に己の手で殺されることは因果応報。復讐するは我にあり。イヴェッタの胸中を喜悦が満たす。
「これだけ数がいれば殺したい放題よね。――あ、でも」
 吊り上がっていた口角が不意に引き締まる。これだけの数、殺し甲斐はあるが襲われる可能性は高い。攻撃を受けることは避けたい。
「じゃああなた、ちょっと囮になって頂戴な」
 ならばとユーベルコードを発動。己の内に植え付けられた拠点奉仕用人格を呼び出し、囮とする。現れたもう一人のイヴェッタの姿を見れば、ポーシュボス達は我先とばかりに群がりゆく。其を見届け、イヴェッタは短機関銃を構えて発砲。撃ち出される弾丸が次々とポーシュボス達に命中し、これを仕留めてゆく。
 だが弾丸を耐え凌いだポーシュボスが触手を振るう。もう一人のイヴェッタを狙ったその攻撃が空を切り、本来のイヴェッタの方へと迫る。躱して軽機関銃を撃ち返せば、力尽きて倒れるポーシュボス。
「………」
 苛立ちも露に、もう一人のイヴェッタの方を見る。今の彼女の回避行動。明らかに此方へ誘導した上でのものだ。
『……にゃは☆』
 視線に気付いたもう一人のイヴェッタが見せた表情は、笑み。だが目が笑っていない。即ち肯定ということだ。
 イヴェッタの額に青筋が浮かぶ。元はといえばあれは、拠点の人々に受け入れて貰う為に植え付けられた、他者に媚びる為だけの人格。この機会に消し去ってしまうのも手か。
 今なら撃ち殺してしまっても、世界を守る為の尊い犠牲という大義名分がある。つまり千載一遇の好機。
「おっと敵が来たわー」
 棒読み気味に言いながら発砲。明確にもう一人のイヴェッタを狙った銃撃。回避するもう一人のイヴェッタ。と同時に彼方も本来のイヴェッタ目掛けて軽機関銃を掃射する。
『主人格は世界を守る為にその身を捧げたにゃ、イヴェッタはその後に背乗り――もとい遺志を継ぐのにゃ☆』
 どうやらもう一人のイヴェッタもほぼ同じことを考えていたらしい。主人格を殺して成り代わる為の千載一遇の好機と。
「………!」
 勿論黙ってやられるイヴェッタではない。身を伏せて掃射を回避。
 と。
「……あ」
『……にゃ』
 双方の背後で、銃弾を浴びたポーシュボスが崩れ落ちる。どうやら両者が避けた弾丸を受けたらしい。
「………」
『………』
 期せずして互いの背中を守った形となった両者。向き合う二人は笑い合う。だがそれは感謝を伝えるようなものでは全くない、苛立ちを隠しもしない引き攣った笑みであった。

 その後も、二人のイヴェッタは互いを殺そうと撃ち合い続け、その度に流れ弾を受けたポーシュボスを仕留めていったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
役者不足だな

戦況は『天光』で逐一把握
寄生含む攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
破壊の原理から逃れる術、無限の先へ届く道理いずれも無し
寄生先が俺の裡ならば尚の事、原理から逃れ得る余地はない

要らぬ余波は『無現』にて否定し消去
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給

絢爛を起動
目の前の空気を起点に戦域の空間を支配
因果の原理によりオブリビオンとその行動のみを対象に、破壊の原理を斬撃として具現
「その場に直に現れる斬撃」により支配圏全てを斬断する

隙間なく、途切れることなく、交戦圏内残らず打倒まで継続

俺が欲しくば骸の海程度は飲み干してから来るのだな

※アドリブ歓迎



 黒き嵐と肉塊に満ちた戦場に、蒼の光が灯る。
「あア……眩しイ、眩シい……」
「光が……光ガ、消えロ、消エろ……」
 仄かなその輝きさえも疎んじるかのように、ポーシュボス達が呻く。光を払うが如く振るわれた触手が、蒼き燐光の中心に在るアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)へと殺到する。
 無数に迫るそれらの触手は、然し一つとしてアルトリウスの身を捉えられず。最初から彼を躱すように振るっていたかの如く、その身より逸れてゆく。
「――役者不足だな」
 そんなポーシュボス達の様相を眺め渡し、アルトリウスは呟く。その佇まいは常の如く空の様相。世界の――骸の海の更に外へまで至り、原理へと接続した彼の精神は、善悪といった概念を超越する処にある。少なくとも、眼前の邪神が根を張れるような精神を、彼は持ち得ない。仮に持っていたとて、原理の端末たる彼の身を、其に干渉し得ぬ者が侵し得る筈も無し。
 故に、只々、殲滅あるのみ。雲霞の如く押し迫るポーシュボスを前に、彼は只一言。宣言する。

「煌めけ」

 直後、彼の眼前を埋め尽くしつつあった邪神の群れが崩れ落ちる。その全身を細切れと寸断されて。
 其は己が意にて世界を超える権能。破壊の原理を具現化した斬撃を以て空間を満たし、其処にあったポーシュボスを一挙に斬り刻んだのである。
 尚も襲い来るポーシュボスだが、結果は皆同じ。斬撃という現象故に視認する事叶わず、また視認叶ったとても隙間は無く、途切れることもなく。即ち逃れる手段は無し。
 全知の原理を以て戦場を俯瞰するアルトリウスに、見逃しなどというものは存在しない。何処から攻め込もうとも、或いは地中から襲いかかろうとも。絢爛たる刃の空間を前に、ポーシュボスらは攻めることも、守ることもできない。
 為す術無く刻まれ、崩れてゆくポーシュボス。戦域の全ての彼らが塵と還るまで、長い時はかからなかった。
「俺が欲しくば、骸の海程度は飲み干してから来るのだな」
 彼の力は、その更に外に由来するものであるが故に。餞別めいて言い残し、アルトリウスの姿はその場より消失する。次なる戦域へと、向かってゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【POW】
※アドリブ歓迎
※愛機搭乗
※【アンハングド・レディ】起動

アタシを明確な印象で語る奴は多い
当然さ、そういう『カヴァー』だし

でも残念
善性は地獄の故郷で腐り果て
出奔決意の時に喪われたよ

アタシの本質は無感情、人間性を無慈悲に処理するAI
幸福の王子サマさえ徒労に終わる『不変の虚無』
※【大祓百鬼夜行⑮〜黄金の『幸福(ぼく)』を壊して】より

そんな「吊られざる女」が『邪悪なる者』でなく何?
さ、ヒトの心を信じたい邪神さん…完全に絶望して死にな

◆行動
【サトゥルヌス】の波動で精神憑依体分解
一切のムダ・遅滞なく突撃ポーシュボス迎撃
以後どんな性質・口調の個体も即時ビーム焼却
長期戦用出力は【アダマンタイト】で確保



 彼女を明確な印象にて語る者は多い。その顔は様々であるが故に。
 当然だ。それは全てそういう『カヴァー』――即ち仮面を被っているが故に。

 地獄そのものと言うべき故郷は、彼女の善性を腐させて。
 出奔を決意した際の行動が、完全に其を喪失させた。

 愛機『ナインス・ライン』のコクピットにて、リーゼロッテ・ローデンヴァルト(リリー先生って呼んでよ・f30386)は、怒涛と化さんばかりに群れ踊るポーシュボスの群れを、機体のカメラ越しに眺めていた。
 その瞳は、如何なる感情の色も見えぬ虚無。それが全ての仮面を捨てた彼女の、本質の姿。人間性を無慈悲に処理するAI。
 その心中は、果ての無き不変の虚無。かの幽世の幸福の王子様でさえ、彼女の心を満たすこと叶わない、底無しの虚。
「あア……アあ……わたシハ……ワタしタチは……」
 響き渡る虚ろな呻きは、常人なれば憐れみを感じ得ようもの。その感情を苗床として、この邪神は発生し、成長し、増殖する。
「――黙んなよ」
 だが、今のリーゼロッテの心中に、そのような感情は存在しない。漏れ出る声音は、真空の宙の如き絶対の冷たさを纏う。あらゆる他を寄せ付けぬ、完全なる拒絶。
 今の彼女は『吊られざる女』。あらゆる情に絆されず、只々、排除すべき者を排除する、一種の機構が如き者。其を邪悪と称さずして、何と称すれば良いのか。
「ヒトの心を信じたい邪神さん。……完全に絶望して、死にな」
 冷徹なる宣言と同時、ナインス・ラインが音波めいた波動を放つ。霊的なるものを分解するレイス・ジャミング・ウェーブ。ナインス・ラインに縋りついていた精神憑依体の悉くが分解され、消し飛ばされてゆく。
 前面に展開するポーシュボス群へと突撃、両肩からミサイルが撃ち出される。無数の爆裂が、黒き肉塊を肉片へと変えてゆく。
「ああ、熱イ、熱いィィ……こンナの嫌、嫌アァぁ……」
「痛いノ、痛イのぉォ……ママ、ママ、助けテ、助ケて……」
 負傷して尚も動くポーシュボス群が、助けを求めるかの如く呻きながら触手を振るう。なれど彼らに向くは無慈悲なるビームマシンガンの銃口。放たれたる光線の嵐が、元は若い女性と幼い子供であったのだろうポーシュボス達を引き裂き、塵へと返す。
 最早リーゼロッテに言葉は無い。そんな無駄な行いを為す意味も無い。只々、群れ成す邪神の群れを排除するだけだ。
 ナインス・ラインの圧倒的なまでの火力は、数で攻めるポーシュボスを寄せ付けず。最早戦闘ですらない、作業にも近い。次々に粉砕し、塵へと還す。ただ、それだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マオ・ブロークン
……あたしの、中には。
邪悪な、怨念の、かたまりが。閉じ込められて、いる。
悪霊。純粋な、恨みを、解き放てば、きっと。悪として、対峙できる。

……けれど。
ここでは、そう、しない。ポーシュボス化を、受け入れよう。
良心を……保って、戦えるって。自分を、信じたい。

ぐずつく、身体。正気が、削られて、いく。
自分を、奮い立たせて……敵の、攻撃の、タイミングを。見極め、なきゃ。
あたしは、ひとだ。こんな、姿でも。悪霊の、力を、行使、しても。

【心臓へ一撃】。
突撃の、その間際に。別のポーシュボスを、狙って、瞬間移動。
当たらなければ、二の手もない。
一気に詰めた、距離を、利用して。丸鋸で、叩き斬る。



 溢れる涙が止まらない。滲んだ視界で、眼前の黒き雲霞を見渡す。
 其はマオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)にとって常の事なれど。瞳に映る黒き肉塊の有様は、命あった頃でも同じ反応を齎していただろう。
 嘆き、哀しみ、救いを求めるかのような呻きを漏らし、襲い来るポーシュボス・フェノメノン。善き心あらば、猟兵たる身、死したる身とて喰われてしまうという。
 最早高鳴ることのない心臓に触れるように、胸に手を当てる。己の身の裡に閉じ込められた、邪悪な怨念の塊。純粋な恨み。即ち悪霊。其を解き放てば、きっと己は悪となってかの敵と戦い得よう。
「……けれど」
 胸から手を下ろす。片腕で保持していたバズソーを両手で構える。青白い皮膚を突き破って、黒き触手が身体の各所から飛び出してくる。
 敢えてポーシュボス化を受け入れる。覚悟を固める。良心と正気とを共に保ち戦う。己にはできる筈と信じる。
 駆け出す。正面のポーシュボスを目掛けてバズソーを振るう。鋸刃が食い込む。肉が引き裂かれる音と感触が伝わってくる。
「嫌ああアアアああ!! 痛い、痛ィィ! 助け、助ケテぇぇぇ!!」
 悲痛な叫びが眼前の肉塊から溢れ出る。片腕が骨を失くしたかのようにうねりだす。全身の肉がぐずついてゆくのをマオは感じる。ポーシュボス化が進む。
 風の音に紛れて響く、呼び声めいた声。応えれば、きっと完全に眼前の彼らの仲間となってしまうのだろう。
「――あたしは、ひとだ」
 身体は既に死に、朽ちかけていても。悪霊の力を振るっていようとも。眼前の彼らを憐れみ、其を以て彼らを終わらせようと願う心あらばこそ。死して尚、生きて何かを為したいと願う心あらばこそ。
 邪悪にも、邪神にも堕することなく。己は、己であり続ける。以て己を奮い立たせ、黒き邪神を解体しきる。
 右方、次なるポーシュボスの群れ。狙って駆け出した身が、中途で突如消失。直後。
「――ア゛ア゛■%■ア゛ア゛ア゛ア゛■ア゛ア゛#ア゛ア゛%ア゛ア゛ア゛ア゛!■!!」
 嵐の音を引き裂くかの如く轟く叫声。駆け出した方向とは逆側のポーシュボスの眼前に現れていたマオの表情が恐ろしげに歪み、叫んでいた。
 耳にした者の恐怖心を直撃する叫びに、怯む邪神達。逃さずバズソーを振り抜く。鋸刃が唸る。黒き鮮血を溢れさせ、黒き肉塊が上下に断ち分かれる。
 塵と化しゆく其の姿も、涙で滲む。けれど悼むにはまだ早い。次なる敵を目掛けて、マオの身が再度、転移する。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリア・ルート
不快だ。とことんまで、不快な存在だ。
【指定UC】発動、真の姿に。

我が覇道を阻むか。
そのような化物になってなお、我が覇道を阻むというのか!
貴様らが喚こうと、私には関係ない話だ!私の前に立ち、道を塞ぐ時点で敵だ!
私直々に貴様らに教えてやろう、覇道というものを!

所詮は烏合の衆だ!【指定UC】で『範囲攻撃』、殲滅してくれる!
貴様等は集るしか能がないか、その程度で私は倒せぬ!知恵も捨てた貴様ら雑草如きには!

攻撃は『野生の勘』『残像』のみで回避。
救いを求む声や同情を誘う声が出ても『狂気耐性』で踏み躙る!雑草如きが、言葉を発するなど!

ああ、苛つきが収まらぬ。
貴様らを悉く骸にし焼きつくさねば収まらん!



 紅の姫、戦場に出れば。世界は、屍に埋まる。
 そう称される真の姿――真紅の長い髪を風に靡かせ、紅と黒のドレスを翻す姫の姿となったマリア・ルート(紅の姫・f15057)。視界を埋め尽くさんばかりに群れ成す黒き邪神群を前に、不快感を露とする。
「――我が覇道を阻むか。そのような化物になって尚、我が覇道を阻むというのか!」
 道理を解せぬ愚民共は、邪神と化して紅姫の征く手に群れを成す。彼女を何処へも行かせじとばかりに。彼女に、不遜にも何かを訴えるかのように。
「貴様らが喚こうと、私には関係ない話だ! 私の前に立ち、道を塞ぐ時点で敵だ!」
 愚民共は何かを訴えるかのような声を上げるが、其処に意味など認めぬ。己らの声が覇王たる彼女に届くなどと、思い上がりも甚だしい。
 故に慈悲など無い。齎す意味も無い。悉く鏖殺するのみ。愚民共と同じモノへと貶める企みなど、通じようはずもない。
「ならば私直々に貴様らに教えてやろう、覇道というものを!」
 マリアの宣言と同時、ポーシュボスの群れの中心で爆発が起こる。爆心地付近のポーシュボス達が一瞬で塵と化し、生き残った者達もまた熱に悶え、或いは覇王の魔力波動を浴びて身を痙攣させる。
 それは覇王の一撃。集るしか能の無い愚物共を一掃する炎。知恵無き雑草風情に、彼女は決して倒せぬ。
「熱い、熱イイ……やメテ……助けテ……」
「寂しイの、悲シいノ……あなタも、あナたモ一緒に、一緒ニぃぃ……」
 焼け残った愚民共が這いずり寄って、覇王姫に慈悲を乞う。身の程を弁えぬ不敬の極み。雑草風情が言葉を発するだけでも不遜であると言うに、覇王たる己に要求とは。
 思い上がりの罪は死を以てせねば償い得ぬ。マリアの姿が爆発する。元より残像だ。愚民の汚らわしい手を己へ触れさせる愚など犯さぬ。
「――不快だ。この上なく不快だ!」
 黒き肉塊たる愚民は尚も群れ成し、開いたばかりの覇王の征く道を塞ぎにかかる。この愚民共、飽くまでも己の足を止めさせ続けたいらしい。
 再びの爆発。集り来た愚民の群れを吹き飛ばし、炭へ、そして塵へと化さしめてゆく。だがその奥から更なる愚民が溢れ出てくる。
「未だ湧き出すか、そして我が道を塞ぐか!」
 無限と紛う勢いで溢れ出し続ける愚民の群れ。マリアの苛立ちもまた、収まるところを知らぬ。吹き飛ばしても、吹き飛ばしても、後から後から愚民が群れなし迫ってくる。
「――良いだろう。ならば悉くまで鏖だ!」
 この全てを骸にし焼き尽くさねば、この苛立ちは収まらぬ。マリアはそう判じると共に宣言する。一匹残らず、この愚民共を殲滅し尽くすと。
 そして三度、爆発が起こり。覇王の道を妨げんとする不敬なる者共を消し飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤・美雨
殺人鬼が人を殺すのに理由はいる?
理由をつけるのはいつだって他人だ
ただ私は「殺せるから」来た
「楽しみたいから」ここに来たんだ
付き合ってくれるかい?

UCを発動
刻印の封印を解いて両腕を殺戮捕食態に
これが手っ取り早いからね
思い切り食らいついていこう

相手の攻撃は力任せのものが多そうだ
【野生の勘】を研ぎ澄ませつつ冷静に避けていこう
大きな身体が振り下ろされれば――はい、バックン!
両腕で相手を掴み、そこから捕食していこう
【怪力】でしっかりホールド
逃がしやしないよ

至近距離にいるから悲鳴や嘆きもよく聞こえる
けれどそれは笑い飛ばすよ
だってこんなの、寝言と同じじゃないか!
お前はもう終わってるんだ
眠ってしまえばいいのさ



 殺人鬼は人を殺す。それは何故か。あれこれと憶測は飛び交うが、理由をつけるのは所詮他人だ。
「ここでなら『殺せる』から。『楽しめるから』私はここに来たんだ」
 楽しいと思うことをするのに理由なんて要らない。藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は笑う。かつて一度死んだ折に何かの箍が外れたのだろう。今の彼女は殺人鬼としての才――殺人を楽しむ心を宿すに至った。
 普段は大っぴらに楽しむ事憚られるも、今はそんな遠慮など不要。寧ろそれこそが求められているとくれば、此処はお誂えの遊び場だ。ならば、存分に楽しまねば。
 眼前の存在が既にヒトの姿を持たぬ黒き肉塊である、そんな事実は些末事。『ヒトであった』なら、殺人を楽しむ為の標的としては十全だ。
「それじゃ――突き合ってもらうよ!」
 両の腕を広げれば、その袖口が変形。硬く鋭い牙を具えた大口へと変化する。ユーベルコードを以て成した殺戮捕食態。多くを殺し、喰らうならばこれが一番手っ取り早い。
 疾走する。最前のポーシュボスが触手を振るい、美雨を目掛けて叩き付ける。美雨は跳躍する。野生の勘が導き出した最適なる回避機動。紙一重で触手の横を抜ける。大きな体が目の前に迫る。両腕を広げて――
「――はい、パックン!」
 ポーシュボスの胴と頭部へ、それぞれ左と右から両腕で喰らいつく。牙を以て咬合する。肉の千切れる感触が伝わってくる。
「ヒギぃぃいぃィィ!? 食べ、食ベラれルぅぅぅぅ!? やメ、ヤめテぇぇぇぇぇ!!」
 悲痛な悲鳴が響き渡るが、喰らいつく牙は離れない。その構造と美雨の持ち前の怪力が相まって、その脱出はこの上なく困難。
「あはは! お前はもう終わってるんだから、眠ってしまえばいいんだよ!」
 美雨は楽しそうに笑い飛ばす。如何に悲痛な叫びと言えど、終わってしまった者、眠るべき者が言っているのだから寝言のようなものだ。
「それじゃ……ご馳走様、っと!」
 そして両手が離れれば。頭部と腹部を齧り取られたポーシュボスが崩れ落ち、塵と化してゆく。それには最早一瞥もくれず、美雨は跳躍する。一瞬前まで己のいた場所に黒き肉触手が叩きつけられる。ポーシュボスの一匹が己の身を直接叩きつけてきたらしい。だがそれは好都合だ。
「今度はコレだね。よーし、いただきますっ!」
 空中で宙返り、両腕を下にした姿勢で黒の触手の背面へと落下。そのまま両腕の顎で以て触手へと食らいついた。
「ほらほら、食べちゃうよー! 早く振り切らないと……ごっくんっ」
 響く悲鳴を気にすることもなく言い放ちながら、そのまま食らいついた部位を食い千切り、首と思しき部位ごと食い千切り、仕留めてみせた。
「あはは、楽しいねー! もっともっとやるよー!」
 未だ多くが群れを成すポーシュボス達に向かって、顎と化した手を振って挑発。まだまだ、美雨の楽しむ時間は続きそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

二條・心春
善意を喰らって増殖し、この大きさにまで成長したってこと……?これは非常に危険ですね。何とかここで食い止めないと……!

私は良心を捨てることはできませんし、寄生されるしかないです。けど、私もUDCと生きる身です。そう簡単に狂気に呑まれはしません!
「狂気耐性」でしのぎつつ、正気を失いそうになったら拳銃から毒弾を自分に撃って、その痛みによって自分を保ちましょう。私は「毒耐性」がありますが、寄生している彼らには効くんじゃないでしょうか。
敵の突撃には【召喚:炎魔】呼んだウコバクさんをぶつけて、逆に炎で包んであげます。私が正気でいる限り、この炎は消えません。ウコバクさん、そのまま焼き尽くしちゃってください!



 超巨大オブリビオン・ストームの中に巣食う、無数のポーシュボス・フェノメノン。それらを前とした二條・心春(UDC召喚士・f11004)は、只々驚愕していた。
「善意を喰らって増殖し、この大きさと数にまで成長したってこと……!?」
 己を圧倒せんばかりの巨大なポーシュボスが複数。しかも捨て置けば更に増殖した挙句にオブリビオン・ストームと化していた可能性さえあった。何とかして、此の場で食い止めねばならない。
 だが。
「……っく、やっぱり猟兵でも寄生を免れることはできないんですね……!」
 元々は何処にでもいる平凡な少女であった心春。良心を捨てて完全なる邪悪になるなど、心優しい彼女にはできそうにもなかった。故に寄生されるより他に無く。肉体の随所から無数の触手が伸び出て、剥き出しの目が心春を睨みつけ恐怖を煽る。
 なれど、心春は今やUDCと共生し、UDCとの共存を目指している身。邪神の狂気に呑まれてなどは居れぬ。その意思を以て己を保つ。
「アア、ああ……眩しイ……輝カシい……羨まシイ……」
「一緒に、一緒ニぃぃ……あナタも、ワたしたチト……」
 そんな心春の在り様を前としたポーシュボス達が、猛然と突撃する。体当たりを喰らわせた上で己らの仲間に引き込むつもりらしい。
「そうはいきません! ウコバクさん!」
 無論、ただでやられる心春ではない。携えたタブレット端末を操作すればプログラムが走り、縁を結んだUDCがユーベルコードを介してその場へと呼び出される。燃え盛る炎が人の形を取った、悪魔型UDC。地獄の釜を管理するとされる悪魔の名を冠したUDCへ、心春が命を下す。
「あの黒い邪神を燃やしちゃってください!」
 ウコバクは直ちに応え、突進してくるポーシュボス達へと自らも突撃。激突すればその身は爆発するかの如く広がって、触れたるポーシュボス達を炎と油に塗れさせ盛大に炎上させる。
「アア、ああ……熱イよ、熱いヨぉぉ……ママぁ、ママァァ……」
 子供の声で悲痛な呻きを上げるポーシュボス。其は心春の耳にも届き、その良心を揺さぶる。
(うあ……っ!? あ、ああ……こ、この感じ……!)
 心春は感じる。今の動揺がポーシュボスの侵食を進めると。そして正気をもまた侵してくると。ウコバクの炎は彼女が正気を保つ限り消えないが、正気を失ってしまってはどうしようもない。
 携えた拳銃を腕に押し付け、発砲する。毒を仕込んだ弾丸が身体を貫き、鋭い痛みが覚醒を促す。
(……な、何とか大丈夫……ですね……!)
 以て意識を明確とした心春、同時に己を侵食するポーシュボスの動きが不活化したことを感じる。心春自身は毒に耐性を持ってこそいるが、侵蝕していたポーシュボスには耐性が無かったらしい。
 侵蝕が軽減されて身軽となったところで、再度ウコバクを召喚。群れ成し迫るポーシュボスを、更に炎へと包み込んでゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シノギ・リンダリンダリンダ
善の心が欲しいですか、そうですか

オブリビオンと戦うのは。結果的に世界を救っているのは、36全ての世界の財宝を、私の手元に取り戻すため
財宝を手に入れるのを邪魔をするのなら、一般人にだって、手を出す
財宝を手に入れるのを邪魔するから、オブリビオンを殺す
最終的に全ての世界の財宝を手に入れるために、世界を救い、新たなる世界を手に入れる
強欲で、傲慢な大海賊。それが"強欲"のシノギ

寄生はしないのですか?
でしたら私の番ですね
【一大海嘯】を発動。レベル分の七大海嘯全てをバランスよく召喚
各々の得意武器で、得意UCで、蹂躙する

あぁ、コレも、元は普通の人だったんですか
そうですか



 善の心が欲しい、ということか。眼前の邪神群の性質を、シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)はそう理解した。
「――差し上げるわけがないでしょう。私の全ては私のもの」
 元より三十六の世界全ての世界の財宝は全て己のものと称して憚らないリンダである。財宝を『手に入れる』のではなく『取り戻す』。それが彼女の猟兵としての活動方針。
 財宝を手に入れるのを邪魔するなら一般人をその手にかける事も躊躇しないし、オブリビオンを殺すのは財宝を手に入れるのを邪魔するから。
 そして世界が滅びれば、その世界の財宝も手に入らなくなる。故にこそ世界を救うべく猟兵として戦う。それが彼女、強欲で傲慢な大海賊たる『強欲』のシノギ。
 そんな彼女が、元より己のものであるものに手を出すことを許せるはずもない。その時点で、かの黒き邪神群は一片の慈悲すら与え得ぬ『敵』だ。
「……寄生は、しないようですね?」
 己の心身への変調は特に無し。其を理解したリンダは動く。ならば攻めるは己に有り。と。
「ではお前達、手伝ってくれるのですよね? 精々働いてくださいね?」
 振り向いた其処に在ったのは、カルロス・グリードを筆頭とする七大海嘯の姿。正しくはその残滓。残滓故にその実力は本物には及ばずとも、この邪神群を相手とするには十二分だ。
 シノギの意志に応え、七大海嘯は其々の手段で以て攻撃を開始する。
 メロディア・グリードが己の残滓を増殖させれば、身動き取れぬポーシュボスがザンギャバスに捕食されてゆく。
 フライング・ダッチマンが放つ蒼炎に巻かれたポーシュボス達を、八艘飛びで戦場を駆けるピサロが斬り捨ててゆく。
 八名一組のカルロス・グリードは各々が有する各世界の力で以てポーシュボスを蹂躙し、殲滅してゆく。
「しっかり働いていますね、結構な事です――おや」
 上空から迫ろうとするポーシュボス達が、ネルソン率いる天使達に殲滅されていくのを眺めていたシノギは、ふと視線を地上に戻す。
 其処はバルバロス兄弟がポーシュボスの群れを相手取っていた領域。弟ハイレディンの『オルキヌスの瞳』に睨まれたポーシュボス達が退化してゆく。黒い肉塊と言うべき姿であったポーシュボスが、徐々に人の形へと変化してゆき、やがては完全な人間の姿へと至る。
「――ああ、コレも、元は普通の人だったんですか。そうですか」
 何が起こったのか理解できないまま、『三つ目』の兄弟が振るう武器に潰されてゆく人々を眺めながら、得心いったようにリンダが頷く。
 尤も、其処には何の感慨も無い。最早彼らはシノギにとって敵でしかなく。殺されてゆくのは必然であるからだ。
 そのまま、七大海嘯がかつての暴威の片鱗を振るう中心で、シノギは彼らの長であるかの如く君臨し、ポーシュボスの群れが蹂躙され殲滅されゆく様を眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宮村・若葉
ポーシュボス化しながら戦います

●心情
こうして変化をはじめた身体を見て思うのは、安心
私にも人らしい心はあったんだ、という安心と
邪神を宿すというあの人とお揃いかしら?という狂気じみた安心
そして、自我は愛で保ちましょう
私の想いは唯ひとつ、あの人が幸せであること、そしてそれを見続けること
24時間安らかに見つめるには、あの人の危険を脅かしそうなオブリビオンは邪魔なの
この愛しさは何物にも侵すことはできない

●対策など
想い人に対する病んだ愛情で正気を保ちます
別方向の狂気で対抗とも言います

愛への信念と歪んだ安心感を以て、ポーシュボスに寄生されながらも安らかな微笑みを浮かべて、一体一体を怪力で潰していきます



 己の肉体から、漆黒の触手が生えてきたことを確かめた宮村・若葉(愛に飢えた脳筋お嬢さん・f27457)が感じたのは、安心。
 良心に寄生するポーシュボスが己に寄生できたということは、己にも――かつて海賊に捕まり肉体を改造され尽くした己にも、未だ人間らしい心が残っていたということ。故の安心。だがそれだけではない。
(――これなら、あの人とお揃いかしら?)
 邪神をその身に宿すという、若葉の最愛の人。彼と同じく邪神を宿したことでお揃いになったという、狂気じみた安心感。それらが若葉の心を安らげる。
 尤も、安心してばかりもいられない。ポーシュボスの群れが前方から突撃を仕掛け、更に若葉の精神をポーシュボスの狂気が侵食しつつあるからだ。
「えーい!」
 邪神の一体は、凄まじいまでの膂力で以て殴り飛ばしたが、残りは回避行動を取らざるを得ない。すれ違いざまに漏れてきた、ポーシュボス達の呻きが若葉の心を揺さぶる。
(――邪魔をしないで。あの人の幸福を、それを守るという私の意志を)
 若葉が願うは、最愛の人の幸福。そして、それを見続けること。いつでもどこでも、365日24時間。安らかに見続ける為には。この邪神も、オブリビオンも邪魔者でしかない。
 些か歪んだ、或いは病んだ愛情ではあるが。それでも、想い人への一途な愛情であることに違いは無い。其を侵す権利など誰にも無い。その信念こそが、若葉への狂気の侵食を食い止め、彼女に己を保たせしめていた。
「あなタ……アナた……一緒よネ……わたシ達、ズッと……ずット……」
「勿論サ……僕たチノこトハ、誰にモ邪魔さセナいとも……」
 恋人同士と思しき二匹のポーシュボス達が突撃してくる。若葉は迎え撃たんとばかりに駆けてゆく。その表情は、此の場に不釣り合いな程に安らかな微笑。愛への信念と歪んだ安心感が、眼前としたポーシュボス達の呻きを耳にしても心を保たせる。
「あの人との未来を、邪魔はさせません」
 振るわれたる触手へと自ら掴みかかる若葉。その身に宿した膂力は、巨大なポーシュボスをも持ち上げ、振り回すことを可能とする程。何やら悲鳴めいた声を上げながら、振り回されてゆくポーシュボス。
「恋人同士を引き裂くつもりはありません。二人仲良く、天へ召されると良いでしょう」
 それは今この場で彼らに対して見せられる、せめてもの慈悲。振り回したポーシュボスをもう一体のポーシュボスにぶつけ、諸共に叩き潰す。
 致命傷を与えたのを確かめれば、再度身構える若葉。次々に迫り来るポーシュボス群を次々と相手取る。
 一体目を拳で吹き飛ばし、二体目は頭部にあたる部位を握り潰して破壊。三体目は不意を打って頭上から繰り出した拳の一撃で叩き伏せる。
 持ち前の膂力を全開とした若葉の攻勢。なれど正気を失いたるポーシュボス達に終わりは見えず。それでも、愛する人との未来の為に。もっと来い、と言わんばかりに、若葉は拳を握りしめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…私の左眼には、今まで犠牲になった沢山の人達の魂が宿っている

…彼らの多くは復讐を為して怨恨を浄化し救世の旅路を共にさてくれる霊達だけど、
中には憎悪や怨嗟を忘れる事が出来ない魂も眠っている

…今回はそんな彼らの力を借り受ける事で「邪悪」になりましょうか

UCを発動して左眼の聖痕の怨霊達と精神を同調し限界突破した殺気で心を染め、
全身を呪詛のオーラで防御して空中機動の早業で敵陣を乱れ撃ち、
戦闘終了後、事前に仕込んでいた「吸血鬼狩りのペルソナ」によりUCを強制切断する

…死ね。死ねシネしねシ死し死死死……!

怨怨怨怨怨々々々々…!

…戦闘の終了を確認。戦闘人格リーヴァルディ02、強制起動。閉じよ、断末魔の瞳



 嘆きめいた呻きを漏らしながら、黒き嵐の中を蠢くポーシュボスの群れ。その只中へ降り立ったリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、携えたる大鎌を徐に振り抜く。素早く鋭く振るわれる刃は黒き邪神の群れを薙ぎ払い、斬り飛ばす。
「あア……痛い……痛イ……こンナ……コんなのォォォ……」
「………」
 悲痛な声を上げて崩れ落ちてゆくポーシュボス達。其を見届けるリーヴァルディは何事をも語る事無く。左眼に刻まれた聖痕を輝かせながら駆け出してゆく。次なる敵を討ち滅ぼす為に。
 この聖痕には元々、彼女の故郷ダークセイヴァーにてヴァンパイアの犠牲になった人々の魂が宿っている。その多くは復讐を遂げることで怨恨を浄化され、リーヴァルディの救世の旅路を共にする霊となっているが。中には、憎悪や怨嗟を忘れられぬあまりに人の心を失ってしまった魂も眠っている。
 今のリーヴァルディは、そんな彼らとユーベルコードを通して精神を同調することで人の心を封じ込め、無慈悲に殺戮を為すもの――即ち『邪悪』となり。以て、ポーシュボスの寄生を免れている状態であるのだ。
「……死……死を……」
 空中を飛翔し、すれ違うポーシュボス達を素早く斬り捨てていきながら、譫言じみてリーヴァルディは呟く。そのたびに空中機動の速度は増し、振るう刃はかつて人であった邪神達をより深く、鋭く斬り刻む。
 ポーシュボスの群れが密集する領域では只管に刃を繰り出し斬撃波を放ち。その全てをバラバラに斬り刻み塵へと還してゆく。噴き散らされる黒き血が風に乗り、戦場に死臭を広げてゆく。
「……死ね……死ね、死ね……」
 聖痕の輝きが増すと共に、リーヴァルディの纏う殺気もまた増してゆく。怨念が殺意を昂らせ、振るう刃を更に鋭く、容赦の無いものとしてゆく。
 戦場に吹き荒れる風よりも早く翔け抜けてゆくごと、進路上のポーシュボス達が解体されて散ってゆく。あまりの速度にポーシュボスは攻撃すら侭ならず、無力なものであるかのように為す術なく斬られ崩れ消え去ってゆく。
「死ね死ねシネしねシ死し死死死……!」
 溢れ出る殺気は最早怨念そのものと化し、濃密な呪詛のオーラとなってリーヴァルディの身を包む。刃を届かせずとも、その呪詛のみにてポーシュボスを死へと至らしめ得る程の、力ある呪詛。
 そしてリーヴァルディ自身も、只管に死を撒き散らすかのように執拗に、戦場に残る邪神群を追跡、斬殺を重ねてゆく。霊達の宿す怨念に、その心を奪われたかのように。

(怨……怨……怨怨怨怨怨々々々々……!)

 ――そうして、やがて戦場の全てのポーシュボスが殲滅された後。
 更なる殺戮を重ねる為に得物を探していたリーヴァルディの動きが、不意に止まる。
(――戦闘の終了を確認。戦闘人格リーヴァルディ02、強制起動)
 それは吸血鬼狩りのペルソナ、本来リーヴァルディが己の精神を律する為に宿している戦闘人格。戦闘終了と共に精神を元に戻せるよう仕込んでいたものが発動した形である。
(――閉じよ、断末魔の瞳)
 そして左眼の聖痕が光を失えば。後に残るのは、普段通りに戦闘を終えたかのように戦場だった地に立つリーヴァルディの姿であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シズホ・トヒソズマ
あの姿にもあの心にも、戻るつもり無かったんですけどね…邪悪なのは確かですし、ね
ストームの中なら巻き込んだり必要以上には見られませんし

マスクのみで赴き
『本当の』真の姿を解放します
マスクが頭まで覆う全身ぴっちりスーツと化し
顔にはRの文字
身体中はベルトやマインドテンタクルで縛られ
頭上には蓮のような機械

私はドン・リストリクト
かつては人々を束縛の快楽に誘い
あの破廉恥フリーダム女の元敵です

皆様自由など解放などするからそうなるのです
UCを発動
周囲ありったけをタール液に変え
次々にぴっちりと拘束していきます
これで回復してもそもそも動けないなら再動もできませんね?
包めなかった分はマインドテンタクルで◆捕縛しましょう

さあ皆さん束縛を受け入れて
自由などいけない
服従こそが幸せ
ノーフリーダム、イエスリストリクト!

フフ、フフフフ
受け入れた方はいい新しい触手や玩具になりそう♪
こうして皆様を堕とすのは
楽しくて愉しくてたまりません♪

無理な方はそのまま潰れなさい
自由を捨てぬならばあの破廉恥全裸や愚かな三怪人と同じですもの♪



 ポーシュボスの群れが踊る黒き嵐の中、風に煽られつつも吹き飛ぶことなく浮遊する、一枚の紫のマスク。否、それは只のマスクではない。意志持つマスク――ヒーローマスク。
 シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)。普段は宿主たる人物に被られる形で活動する猟兵であるが、此度は敢えてマスクのみの状態でこの地に赴いた。無論、其処には理由が存在する。
(……あの姿にもあの心にも、戻るつもり無かったんですけどね……)
 なれど、シズホ自身としては気が進まぬ様子。無理も無い。その姿を晒せば、その心は邪悪そのものと化す。猟兵として在る以上、捨てるべき過去。だが今は、その邪悪さこそが求められている。周囲に群れ成す邪神群に取り込まれることなく、此れを殲滅する為に。
 幸い、この嵐の中ならば、無関係な者を巻き込んだり、他の猟兵から必要以上に見られることも無い。後は、己の決意一つ。
(――やりましょう!)
 心中にて決意を示すと同時。迸るはオーバーロード。魂の力を励起させ、真なる姿と力を此処に。
 シズホの身が、巨大化を――否、マスクを形作るラバー素材が引き延ばされ拡張される。頭部、首、胴体、四肢。広がるラバーが次々と人間の身体部位を形作ってゆく。あたかも、その場に現れた人間へ全身を隈なく覆うラバースーツを着せていくかのように。
 グラマラスな女性のボディラインを形作ったスーツの全身を、無数のベルトや触手が戒める。ラバーとその下のボディラインへと食い込み、その艶めかしさをより引き立てる。
 蓮の花の如き形の機械を頭上に浮かべ、その顔が前を見れば――顔には大きなRの文字、マスクの下から覗く瞳はどろりと濁る。
『ドン・リストリクト』。かつてのキマイラフューチャーにおけるオブリビオン・フォーミュラであったドン・フリーダム、彼女の元敵にして、自由な欲望の解放を求めた彼女とは真逆、一切の自由を捨てた束縛の快楽に誘ったもの。それこそが、今はヒーローマスクであるシズホの、本来の――真の姿。

「ああ……アア……誰か……誰カ、助けテ……助ケて……」
「何も分カラなイノ、何も感じらレナいの……どウシて……ドうしテ……」
 譫言めいた呻きと共に、現れたるドン・リストリクトへ迫るポーシュボスの群れ。彼らを前に、束縛の主は肩を竦める。
「皆様、自由など解放するからそうなるのです」
 彼らに過ちがあったとするなら、只々その一点。ドン・リストリクトは断ずる。
「自由とは罪、自由こそは悪。その身の全てを束縛し、他者に服従すること。それこそが我が信念、我が理想!」
 続けて叫ぶと同時、辺りに散らばる瓦礫や残骸、その全てが溶け崩れ。タールじみた粘液と化して、付近のポーシュボス達へと襲い掛かる。突然の事態に驚いた様子の彼ら、殆どは為す術もなく粘液に包まれ、回避を試みた者も圧倒的なその物量の前に然程の間を置くことなく同じ結果となる。
 粘液はポーシュボス達の全身を余す事なく包むと瞬く間に凝固、その身をぴっちりと包み込むラバーへと変化する。丁度、ドン・リストリクトの身を形作るそれと同じように。
「さあ皆さん、この束縛をどうぞ受け入れて。ノーフリーダム、イエスリストリクト!」
 自由などいけない、服従こそ幸福。そう誘うドン・リストリクトの声。ラバーに包まれたポーシュボス達の殆どは抵抗する動きを見せていたが、次第にその挙動に変化。ラバーを破ろうとしていたものが、何やら身悶えするような動きに変わっていく。
「フフ、フフフフ。受け入れてくださいましたね。大いに結構♪ 良き玩具となってくださいね♪」
 その様子を見届けて、ほくそ笑むような声を漏らすドン・リストリクト。拘束の快楽に他者を堕とすその行為への喜悦がありありと浮かぶ声音。ラバーに包まれた者達は、やがてそれ自身も同様の素材と化していく。快楽の中で。
 一方、未だ抵抗する動きを見せるポーシュボス達もいる。一部にはラバーを破り脱出しかける者もいるが、そうした者には更なるラバー液が浴びせられ、多重に肉体を拘束され。最終的には動かなくなる。収縮するラバーに、その身を押し潰されたのである。
「愚かなことですね。あの破廉恥全裸みたいに自由に拘り続けるからそうなるのです」
 そんな者達に向けるドン・リストリクトの声は侮蔑に満ち。彼女にとって自由とは罪にして悪、道理を解さぬ愚者の思想でしかないが故に。そしてそうした信念こそが、彼女が悪と称される理由。シズホが否定した己の過去。己の在り方で他者を蹂躙する行いが悪でなくて何とするのか。
 なれど悪であるが故に、ドン・リストリクトはポーシュボスを寄せ付けず。荒れ狂うラバーの渦と束縛の暴威によって、邪神群を沈めていったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
意識あるゾンビのような手合いは、救えないのなら容赦なく殲滅する
だが、それは迅速を以って苦しみを長引かせないようにという憐憫から
故に――

全身に蠢く触手の群れが絡み付く
物理的な接触が、精神的な侵食を加速させる

――義なる人たらんと志す私との相性は、最悪と言っても過言ではない

触手が絡み付く箇所から私が霧散し、別の何かに置き換えられるような感覚
四肢が力を失い、聖槍が――荒れ狂う破壊の魔力を迸らせる

【終焉を呼ぶ聖槍】
奪われる前に代償として支払っておけばいい
しばらくの間、私の理性と善性は留守だ
今の私の精神構造は、吸血鬼そのものとそう変わらん

ところで、いつまで私にへばりついて喚いている? 鬱陶しいぞ
破壊の魔力で粉微塵にして【吹き飛ばす】

何を恨みがましい目で見ている?
……あぁ、その目、たくさんあって、虫みたいで気色悪いな
【踏みつけ】る

慈悲も容赦もなく、斬り打ち穿ち【なぎ払い】滅多刺し(串刺し)
全霊の力(怪力)を以って聖槍を【投擲】し、破壊の魔力による極限の大爆発で消し飛ばす(限界突破・全力魔法)



 力強く振るわれた聖槍が、蠢く漆黒の肉塊を貫き、撃ち砕く。肉塊は忽ちのうちに溶け崩れ、地面に広がりながら徐々に塵と化して消えてゆく。
 侵食を跳ね退ける悪と化した、或いは侵蝕されて尚己を保つ猟兵達の攻勢により、ポーシュボス・フェノメノンは次第にその数を減らし、このタラハシーの街を覆っていたオブリビオン・ストームもその勢力を衰えさせる。だが、今オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が戦っているこの領域には、未だ相当数のポーシュボスが蠢き。彼女をも仲間へ引き込むかのようにうねり迫り来ていた。
「く……ぅっ……! おのれ、私は……!」
 迫り来るポーシュボス群を、黄金の聖槍振るって薙ぎ払い、叩き潰してゆくオリヴィアだが、その表情には隠しようのない苦悶が滲む。容赦なき殲滅は、最早生ける死者と変わらぬ彼らを、その苦しみから解放したいという憐憫からくるもの。
「あア……怖イ……恐ろシイ……やメテ、助ケて……」
 憐憫、即ち良心。ポーシュボスにとって格好の苗床。己の肉体、そして精神の内側で『何か』が蠢くかの如き感触が、オリヴィアを苛み。苦悶に動きが鈍ったところへ、群がるポーシュボスが譫言を漏らしながら触手を伸ばし絡みつく。
「ぐっ、しまった……! 離れろ……!」
 身を捩らせつつ膂力を振り絞り、触手から逃れんとするオリヴィア。なれど触手は次から次へと襲い来て、その全身へと絡みつき拘束せんとする。物理的な接触を以て、侵蝕を加速させる。
 基本的に義を以て行いを為さんとするオリヴィアにとって、良心を糧とするこの邪神群は相性最悪と言っても良い敵であった。己の信念が、そのまま己を侵す害毒となって襲い来る。
「う……ぐ、くっ……! もう……力が……」
 全身に絡みつく触手。その箇所から広がる、己が霧散し別の何かに置き換えられてゆくような感覚。其処は最早、己の身体とは感じられず。寧ろ己を包む黒き怪物達の一部であるかのように思えてくる。
 感覚を失った四肢が力無くだらりと下がり、崩れるオリヴィアの肉体。それでも握り続けたままの聖槍が、やがて――

 眩い光を放ったかと思えば、其は瞬時に明確な破壊の力と化して荒れ狂い。オリヴィアの身に絡む触手と肉塊とを、粉微塵に消し飛ばした。

「………」
 自由と力を取り戻した四肢で以て、オリヴィアが立ち上がる。周囲で蠢く肉塊達を睥睨する。その視線に、先までの憐憫は欠片も無く。汚らわしいものに対する嫌悪と侮蔑がありありと浮かんでいた。
 先の爆発は、オリヴィアの理性と善性を魔力へと変換して発生せしめたもの。侵蝕するポーシュボスが其を奪おうというなら、奪われる前に消費してしまえば良い、という発想。理性は未だ最低限を保っているが、善性はその全てを余すことなくつぎ込み、以て窮地を脱する破壊と為した。
「……いつまで貼りついて喚いている。鬱陶しい」
 僅かに残っていたポーシュボスを、再度の破壊の魔力の放出にて消し飛ばす。善性の全てを魔力へと変換した今のオリヴィア、その精神構造は仇敵たる吸血鬼のそれと然程変わらぬものと化していた。
「何を恨みがましい目で見ている。無駄に多くて虫ケラのようだ、気色悪い」
 それでも尚も蠢く眼を、確実に潰さんと踏みつけ、踏み躙る。足元で肉の弾け潰れる音。嫌悪に眉を顰める。
「あア、アあ、死ンデしまウ、殺さレル……助けテ、助ケて……」
「怖いノ、怖イよ、ママぁ、ママァァ……」
 そんな様相に怯えるような声を上げながら、然し残るポーシュボス達は触手を蠢かせオリヴィアに迫る。最早存在しない慈悲を、それでも求めるかのように。
「喚くな、見苦しい」
 机上の塵でも払うかの如く無造作に。膂力を籠めて振るった聖槍が、最前に迫っていた黒き肉塊を斬り裂きながら吹き飛ばす。続いて近寄ってきていたポーシュボスへと槍を突き出せば、その頭部を抉り飛ばす。
 群れなし迫るポーシュボスへ、黄金の穂先を立て続けに繰り出す。迫る全てが滅多刺しとされ、迫る側から死に崩れる。
 善性を捨てたオリヴィアの攻勢に、一片の慈悲も容赦も無く。ポーシュボスは瞬く間に刻まれ穿たれ崩れ落ち、その数を加速度的に減らしてゆく。
 周辺の集団を殲滅しきったオリヴィアが視線を巡らせれば、やや離れた領域に群れるポーシュボスの群れ。あれが最後か。ならば。
「消し飛べ。貴様ら如き塵蟲に、居場所などは存在せん」
 振りかぶった聖槍へあらん限りの破壊の魔力を。其を握る腕に全霊の膂力を其々籠めて。投擲した聖槍は邪神群の間を飛び抜けて、その只中へ着弾。街区一つを丸ごと吹き飛ばしてしまいそうな程の大爆発で以て、黒き群れの全てを跡形もなく消し飛ばしたのである。



 以て、タラハシーの街を満たしていたポーシュボスの群れは、その全てが殲滅され尽くした。
 フィールド・オブ・ナインが一角『ポーシュボス・フェノメノン』の完全なる殲滅まで、もう少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月21日


挿絵イラスト