アポカリプス・ランページ⑭〜戦車を奪ってどっかんバトル
●グリモアベース
「戦況はすこぶる良い感じなのだぞ!」
この時既にフィールド・オブ・ナインは二人倒され、世界が核の炎に包まれることも洗脳演説が行われることもなくなった。
残りは四人なのだ、とロアー・アレグリアス(雷刃名轟・f02956)はふんすと鼻息を荒げて腰に手を当て、猟兵たちが集うのを戦局図の前で待つ。
「詳細が明らかになっていないのはマザー・コンピュータだけか……だが、この先を越えればきっとハッキリくっきり見えてくるだろう! 今一度力を貸してほしいのだ!」
●バトルクリーク市廃墟
「我の依頼はこちらなのだ、バトルクリーク市! ここを突破すればいよいよマザー・コンピュータに手が届くのだぞ!」
きゅっきゅっにゃーといった感じで両手をぱたぱたさせるロアーの言うように、この⑭地点はマザー・コンピュータが待ち構える⑯地点へ続く唯一の道だ。
いかにも逃げ切りを狙ってそうなのだぞ、と私見を呟くロアーだったが……その議論は棚に上げてからバトルクリーク市の現状説明に移る。
「この地にはマザー・コンピュータがデタラメに量産した異形の戦車群、その名も『戦車獣』があちこちでうろついてる。 侵入したモノ全てを捕食しててな、どんどん強力な戦車獣が増殖していっててめっちゃ大変なのだ」
全身の毛を逆立ててぶるりと身を震わせるロアー……生きたまま他者に喰われるといった事象に本能的恐怖を覗かせている。
無論、戦車獣の捕食対象は猟兵も含まれているようだが……どうやらこの一帯にいるオブリビオンも奴らの餌食になっているとのことで。
「我のグリモアが示した地点では、喰われてたのは『いぬせんしゃ』だな。 戦車が戦車を喰うって時点で共食い感がハンパないのだな……」
戦車と戦車が合わさり最強になる……のかは定かではないが、とにもかくにも今回の討伐対象は戦車獣に捕食されて一体化したオブリビオン『いぬせんしゃ』の群れである。
ぶっちゃけ猟兵であればそのまんま相手取れそうではあるが、とロアーは今回の主要敵でもある戦車獣の詳細を紐解いていく。
「戦車獣の車体なんだがな、どうやらさくっと奪えちゃうらしいのだ。 我々でも操縦は可能だし、なんなら砲撃だってできちゃうぞ?」
戦車獣に喰われる以外にその車体に侵入する手段があるようで、猟兵はその操縦権を奪うことすら可能であると、ロアーは目をぱちくりとさせる。
砲撃もできちゃうと言ったが、その手法は一癖変わったものとなっており……砲塔に猟兵のユーベルコードを喰わせることで弾を発射できる仕組みのようだ。
「この仕組みは『ユーベル・イーター』と言うようでな。 弾は元になったユーベルコードと同等の性能を持つ、いわば『ユーベルコード弾』といった感じなのだ。 コイツを使えば誰もが戦車乗りって感じでちゅどーんどかーんってな感じで戦えるぞ! せっかくあるもんだし、ここはコイツを有効活用してはどうだろうか?」
と、言うことでロアーは【戦車を奪い、乗り込んで戦う】提案を猟兵に持ちかけてくる。
一風変わった戦闘方式を取ることになるが、強力な戦車砲を利用できるならそれに越したことはない。
ユーベルコードを喰わせるってなんぞや、と言う疑問には「砲塔にユベコぶつけりゃいいんじゃないか」と……なかなか荒々しい使い方になりそうだ。
「戦車獣の群れを突破出来れば、いよいよマザー・コンピュータとの戦いが始まるだろう……どかんばこーんとやってスッキリしても、油断は禁物なのだぞ!」
ロアーはどうやらこの戦場をボーナスステージか何かと思っているらしい。
我も戦車乗りたいのだ、と目をキラキラさせたケットシーに見送られて、猟兵は転移の扉を潜っていく。
四季臣
このシナリオは「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、『アポカリプス・ランページ』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオになります。
五十八度目まして、四季臣です。
この度はここまでOPをご覧いただき、ありがとうございます。
擬音たっぷりの依頼説明でした。
第1章は集団戦です。
戦車獣に捕食されて一体化したオブリビオン『いぬせんしゃ』との戦闘になります。
戦車と戦車が合わさり……はさておき、集団敵ながら個々の戦闘力は高めです。
しかし周辺の至るところに闊歩している戦車獣の車体は奪って乗っ取れます。
と、言うことでこちらのプレイングボーナスは【戦車を奪い、乗り込んで戦う】ことで発生します。
ユーベル・イーターなる敵の技術をフルに活かし、ユーベルコード弾での戦闘をお楽しみ頂けたらと思います。
ここでは誰もが戦車乗り? といった感じでしょうか……ただしうっかり捕食されないように注意してください。
それでは、四季臣より戦争シナリオ五本目です。
よろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『いぬせんしゃ』
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POW : きゅらきゅら
【キャタピラを全速力で稼働させた】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他のいぬせんしゃ】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : むれのきずな
自身が【自身や仲間の危機】を感じると、レベル×1体の【いぬせんしゃ】が召喚される。いぬせんしゃは自身や仲間の危機を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ : いぬせんしゃキャノン
単純で重い【いぬせんしゃキャノン】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
バロン・ゴウト
いぬせんしゃ……UDCアースのゆるキャラみたいな見た目だけど、油断は禁物なのにゃ。
【目立たない】ように【地形の利用】をしながら【忍び足】でいぬせんしゃに近づいて搭乗口を確認し、気付かれないうちに【ダッシュ】で近づいて乗り込むのにゃ。
乗り込んだら【騎乗】の技術を活かして操縦するのにゃ。
敵の攻撃は【地形の利用】や【フェイント】を駆使して躱し、大技を仕掛けた後の隙に【カウンター】で【アイリスの嵐】のユーベルコード弾を打ち込むのにゃ!
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
●ゆるキャラせんしゃとアイリスガトリング
すっかり廃墟となっているバトルクリーク市のどこか、戦車獣に捕食されたいぬせんしゃがきゅらきゅらと進んでいる。
通常のそれより一回り大きくて、別々の戦車が歪に混ざりあったような奇妙な見た目の戦車群を……バロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)は物陰から見ていた。
「UDCアースのゆるキャラみたいな見た目も、なんだかヘンテコになっちゃってるにゃ」
いぬせんしゃの見た目はもう“ゆるい”というより“キモカワ系”になってる気がする……が、油断は禁物。
通常個体よりいくらか強化されているであろう戦車群に狙われたら、バロンも大変なことになるだろう。
とはいえバロンは小柄なケットシー、目立たずに、物陰に隠れつつ忍び足で動くのは得意だ。
集団行動のなかで一機だけ遅れた小さな戦車獣にそっと近寄り……搭乗口はどこにあるかを確認する。
どうやら車体の左右にそれぞれ一つずつあるようだ……と確認すると、戦車が停止した隙を見計らってバロンは猛ダッシュした。
搭乗口へ突き刺さるように乗り込み、すぐさま操縦桿を握って主導権を奪う。
相棒のシトラスに乗るのとは当然のように勝手が違う……が、ガジェットか何かと思えばなんとかなりそうだ。
そんなバロンの乗り込んだ戦車の挙動に不信感を抱いたのか、他のいぬせんしゃたちはキャノンの照準を向けてくる。
いぬせんしゃキャノンの一斉掃射か……となる前に、バロンのユーベルコードの発動の方が早かった。
「アイリスの花びらよ! 敵を撃つにゃ!」
塔砲に喰わせたアイリスの嵐……花びらの一つ一つがユーベル・イーターによって変換されていく。
その有り様はまるでガトリングガンだ、紫色のユーベルコード弾が高速連射が発動する!
「にゃにゃっ!?」
射撃の反動に驚いたバロンは、その拍子に操縦桿をぐいーっと横に倒してしまうと……ガトリングの向きもぐいーっと傾いて。
その射線上にいたいぬせんしゃの群れを容赦なく撃ち抜いて……たちまち爆散させていた。
あまりの光景に、つい言葉を失うバロンだったが……他のいぬせんしゃの稼働音を耳にすればすぐさま気を取り戻す。
「……す、すごいのにゃ。 よ、よし!」
驚きはしたものの、使い勝手が解ればこちらのもの。
操縦桿を握り直したバロンは、反動に負けぬよう気合いいっぱいにトリガーを引いた。
周囲のいぬせんしゃが蜂の巣になるまで、あと数秒――。
大成功
🔵🔵🔵
日紫樹・蒼
性格:弱気
性質:ヘタレ
※どんな酷い目に遭っても構いません
戦車を奪って戦えばいいんだね
戦車にさえ乗れば、僕だって……
と、思っていましたが、敵の突進攻撃を前に何もできず
轢かれないよう、逃げ回るのが精一杯!
蒼の武器や魔法では、いぬせんしゃには火力不足
仕方ないので、今回も悪魔に頼ります
まあ、悪魔ウェパルはドSなので、呼び出しても碌なことにならないのですが
『戦車を奪って攻撃すればいいのね。わかったわ
いつになく従順(?)なウェパルですが、肝心の戦車の弾は蒼自身
砲身に蒼を突っ込み、人間大砲を発射!
「ちょっ……! こんなの聞いてないって! し、死んじゃうよぉ!!
敵と一緒にお星さまになっても構いません
●「だってそういうユベコなんだから仕方ないじゃない」
さて、物陰から戦車獣の様子を伺う猟兵はここにもいた。
フリルの付いたカフェーのメイド服姿の少年こと、日紫樹・蒼(呪われた受難体質・f22709)である。
この時点で既に涙目になってへっぴり腰になっている蒼なのだが……戦車が戦車を喰らうだなんて光景を目の前にしては仕方がない。
下手すりゃ蒼自身が喰われるなんてことも十分にあり得るこの地は、戦車獣行き交うブッ飛んだ戦場なのだから。
「せ、戦車さえ乗れば、僕だって……」
――うむ、奪えたらいいのだな。
「ひぃぃぃぃいいいいぃぃぃぃっ!!!!」
きゅらきゅら、きゅらきゅら、と。
蒼の悲鳴と、それを全速力で追いかけるキャタピラの稼働音がこれでもかとばかりに木霊する。
巨大ないぬせんしゃが、他の仲間と団結して蒼を踏み潰そうとするのに対して、蒼はひたすらに避けて逃げての防戦一方を強いられていたのだ。
ひらひらとしたメイド服でよくそんな避けれたものだ、悪魔から授けられた『水影の俊足靴』がなければ速攻で強制帰還も視野に入るレベルだろうか。
時折、隙を見ては三味線小銃で反撃するものの、戦車の装甲には歯が立たず、まさに絶体絶命である。
と、言うわけで今回も“彼女”の力を借りるしかないらしい。
『あら、今日も戦車と追いかけっこしてるの?』
というか、自動召喚されている彼女は水の悪魔ウェパルだ。
「ウェパルー! 助けてぇぇー!!」
蒼はすぐさまウェパルに助けを求めるが、対しウェパルはくすくすと笑うばかり。
『せっかくだから捕まってあげたら? タコの次はどうなるか、楽しみね』
「ええっ!? そんな、ふぎゃっ」
そうこうしているうちにいぬせんしゃのキャタピラが蒼をどーんと吹き飛ばし、ぺしゃりと地面に倒れてしまう。
「ううううぅぅ」
『……戦車を奪って攻撃すればいいのね。 わかったわ』
「えっ」
確かに助けを求めたが、ウェパルのあまりにも意外な返答に蒼はきょとんとした。
呼び出したら大抵碌なことにならないウェパルが、この時いつになく従順だ……最初は放置されたのにどういう風の吹き回しだろうか。
そうしてウェパルは蒼を優しく抱き上げて、戦車の搭乗口へと向かっていき――。
戦車の砲身に、蒼を投げ入れた。
「えっ、ちょっと?」
『だってもう戦闘不能よね?』
「あっ」
蒼が、というよりウェパルが喰わせたユーベルコードは、水影の悪魔の人間魚雷。
――人間魚雷、と、つまり、そういうことだ。
「ちょ……! 待って待ってこんなの聞いてないって! 死んじゃうよぉ!!」
『そうなる前に強制帰還されるから大丈夫よ、きっと』
ね、とウインクしながらウェパルはトリガーを引いた、一切の遠慮もなしに。
轟く発砲音と同時に、蒼は人間大砲として、いぬせんしゃへと放たれる!
――うわああああぁぁぁぁ!!
ちゅどーん、と言う爆音と共に、一機のいぬせんしゃが蒼の渾身の一撃(?)によって粉砕された。
そして、蒼はいぬせんしゃと共に、お星さまとなったのでした――。
と、なっては割と本気でシャレにならない。
爽やかな微笑みでハンカチを振るウェパルの姿が瞬く間に消える。
お察しの通り、強制帰還なのだ。
成功
🔵🔵🔴
ミア・ミュラー
おー、戦車がたくさん、すごいね。ん、わたしも一度戦車に乗ってみたかった、の。あの中はどうなってるの、かな?
ということで、戦車をもらっちゃう、よ。戦車の目の前でグリッターハートを光らせて気を引いて、一体だけ物陰まで誘導したら……雷を纏わせたスートロッドで叩いて気絶してもらう、ね。わたしは機械のことは詳しくないけど、気絶させれば食べられることもないし、よく見て調べれば乗り方もわかる、かな。
戦車に食べさせるユーベルコードは【氷弾】が、いいかな。連射して相手の戦車をみんなやっつけちゃう、よ。数が増えても弾はたくさんあるから、平気。目標、前方の戦車……ユーベルコード弾、うてー。
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
戦車って操作した事ないけれど、まぁ、なんとかなるだろうか?
いぬせんしゃキャノンを飛翔衣を纏う事で得られる飛行能力で回避
上空から戦車獣の上に降り立ち、そこから乗り込み試みてみよう
念のため捕食対策に【結界術】で自身の周囲に【浄化】の力を付与した結界を張っておこう、保険になるかもしれない
さて、乗り込んだら戦車を操作か…為せば成る!
ユーベルコード弾はこれだ!聖者の裁き!
弾丸が相手に命中したと同時にUCが発動する!
一撃でも命中すればその戦車はずっとダメージを受け続けるからね
上手く命中させられなさそうなら車体周囲へ【オーラ防御】を張って、敵戦車へ体当たり、ゼロ距離射撃を叩き込む!
リーヴァルディ・カーライル
…兵器なら兵器らしくきちんと管理すれば良いのに、
何でもかんでも食べるなんて悪食にも程があるわ
…こんなよく分からない物を量産するなんて、
たマザー・コンピュータは一体、何を考えているのかしらね?
「写し身の呪詛」を乱れ撃ち無数の残像で敵の攻撃を受け流して戦車獣に切り込み、
一体化している敵を大鎌で切断して戦車獣に乗り込み、
第六感を便りに戦車獣を体勢を崩さないようにゆっくり操りUCを発動
石化の呪詛を宿す砲弾を乱れ撃ち敵軍を石にする石化属性攻撃を放つ
操作は…ここにユーベルコードを使えば良いのね?
動かし方は、ええっと……多分、こう?
…ふう。確かに強力だけど、これなら普通に戦った方が楽だった気が…
●監督不行
一部、ちょっとした事故のようなモノが起きたが、作戦そのものは滞りなく進行している。
例え自らの力で戦車獣(いぬせんしゃエディション)を討伐出来ずとも、車体さえ奪えばこちらのものだ。
と、言うわけでこちらの物陰にも3人の猟兵が控え、戦車獣たちの様子を伺っている。
「おー、戦車がたくさん、すごいね。 ん、わたしも一度戦車に乗ってみたかった、の」
「……兵器なら兵器らしくきちんと管理すれば良いのに、何でもかんでも食べるなんて悪食にも程があるわ」
ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)が青い瞳をキラキラと輝かせているのを横目に、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はあまりにも杜撰な管理体制にため息を吐いていた。
「戦車って操作した事ないけれど、まぁ、なんとかなるだろうか?」
「……移動に関してはある程度の自動操縦があるそうね」
奪ったとて、その後の操作に不安を感じている鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)に、先立って強制帰還となった悪魔より情報を受け取ったリーヴァルディが軽く説明をした。
「それって、つまり、もらっちゃえば、あとは撃つ、だけ?」
「そうか……それなら俺でも操作出来そうだな!」
では早速、戦車獣の隙を見つけて奪おうとして、猟兵たちは一時解散する。
意気揚々と戦車獣の群れを追っていくミアとひりょを見送ったリーヴァルディは……まだ頭を抱えていた。
「……こんなよく分からない物を量産するなんて。 マザー・コンピュータは一体、何を考えているのかしらね?」
――うむ、何も考えてないんじゃないかな。
●監督不行届はユーベルコード弾で
「おーい、戦車さーん、こっち、こっちー」
進行がちょっと遅れていた戦車獣の目の前で、ミアは『グリッターハート』を光らせて気を引いてみせる。
慈愛の心に応じて優しく輝くハート型、それに牽かれてか、ただ単純に敵と認識してか……戦車獣はミアへと突っ込んできた。
そうして物陰に誘い込んだ戦車獣に、雷を纏わせたウィザードロッド『スートロッド』でカウンター気味にぶっ叩いて気絶させる。
見かけによらずパワフルな対応をしてみせたミアは、よいしょと開きっぱなしの搭乗口から車体に乗り込んだ。
それと同じ頃、ひりょとリーヴァルディも車体の乗っ取りを試みていた。
当たれば地形をも破壊するいぬせんしゃキャノン……それを空飛べる衣『飛翔衣』で飛び上がって回避する。
上空から戦車獣の上に降り立ったひりょも乗り込みに成功、万一に備えて浄化の力宿る結界術を張り巡らせることも忘れない。
リーヴァルディもまた『写し身の呪詛』を乱れ撃ち、無数の残像で敵の攻撃を受け流してから戦車獣に切り込んでいく。
そうしていぬせんしゃと一体化している部位を無理やり切断して戦車獣へと乗り込み……第六感で操縦席の近辺にスピーカーがあることに気が付いた。
「……皆は乗り込めたかしら?」
「うん、準備、おっけー」
「俺も無事乗り込めた……よし、戦車の操作か……為せば成る!」
それでは、ボーナスステージの開幕なのだ。
「えーと……ユーベルコードは氷弾が、いいかな。 其は氷……撃ち抜き、凍りつけー」
ミアが砲塔に喰わせたのは氷弾だ、名前の通り魔法で作った氷の弾の連続射撃……超高速だが途中で中止出来ないのがネックである。
「目標、前方の戦車……ユーベルコード弾、うてー」
左手で氷弾を砲塔にぶつけながら、右手で操縦桿を握るという器用なことをすれば……戦車の砲台から氷のマシンガンがばら撒かれた。
「あわわわわわわわわわっ」
連射銃特有のバイブレーションに揺さぶられながらも、氷弾の特性上ミアの砲撃は途中で止まれない。
きゅらきゅらと走りながら乱雑に放たれる氷マシンガンは、目につく戦車に遠慮も容赦もなく突き刺さっていく。
「……なぁ、あの子大丈夫か?」
「……少なくとも、撃墜はされないでしょうね」
爆走と乱射を同時に行うミア戦車をひりょは心配そうに見送るも、隣に控えたリーヴァルディは至って冷静に返す。
そんな暴走戦車に危険を感じて逃れてきた他のいぬせんしゃの群れが、ひりょとリーヴァルディがいる方へと雪崩れ込んできた。
「操作は……ここにユーベルコードを使えば良いのね? 動かし方は、ええっと……多分、こう?」
常ならば、巧みな戦闘技能を持つリーヴァルディだが、戦車の操作となると動きが若干ぎこちない。
それでも砲塔にゴルゴーンの描かれたメダルを投げ込めば……その砲台からは石化の砲弾が放たれた。
着弾と同時に広がる呪縛が、その周辺にいるいぬせんしゃの群れをみるみる内に石へと変化させていく。
適切に解呪されるまで解けることない石化……この時点で廃棄濃厚な戦車郡だが、ひりょはこの時ぐっと拳を握っていた。
「これなら俺でも当てられる! ユーベルコード弾は……これだ! かの者に鉄槌を下す!」
万一の時はゼロ距離射撃も考えていたひりょだったが、ここぞとばかりにユーベルコード……聖者の裁きを砲塔に叩き込む。
それにより放たれた光の弾丸は、石化したいぬせんしゃにきちんと命中……消えることのない聖痕を刻み込み、聖なる光での追加攻撃を与え続ける。
石化プラス継続ダメージとくれば……後は放置しておけば勝手に崩れていってくれるだろう。
この調子ならば、と戦車を走らせるひりょの後ろで……リーヴァルディはやっぱり浮かない表情をしていた。
「……確かに強力だけど、これなら普通に戦った方が楽だった気が……」
それは言わないお約束なのだ。
きゅらきゅら、きゅらきゅらと戦車が進む。
ちゅどーんどかーんと砲撃を高鳴らせて、監督不行の戦車をどかんばこーんと破壊するべくして。
大成功
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