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アポカリプス・ランページ⑬〜突撃フルスロットル

作者：波多野志郎

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「ついにフルスロットルとの戦いじゃ」

　ガングラン・ガーフィールド（ドワーフのパラディン・f00859）は、そう真剣な表情で切り出した。

「今回、おぬしらに頼みたいのはフルスロットルへの対処じゃ」

　フルスロットル――フィールド・オブ・ナインの一体にして、今回の戦争を指揮するオブリビオン・フォーミュラにしてヴォーテックス一族を束ねる身長五メートルの改造巨人である。今回対処を頼みたいのはフルスロットル・ザ・ランページ――全身に搭載した複数のV12エンジンをフル稼働し、超赤熱連続突撃（ランページ）モードへと変異するフルスロットルだ。

「問題はヴォーテックス・シティからの支援じゃな」

　シティからはレイダーの軍勢が援軍に駆けつけてくる――雑魚ではあるが、数が数だ。重ねてフルスロットルがいるため、簡単ではない。圧倒的なパワー・スピード・重量でただただ突撃してくるフルスロットルをまずどうにかしない限り、反撃の糸口は掴めないだろう。

「フルスロットルさえ倒せば、レイダーの軍勢はおぬしらの敵ではないじゃろう。ただ、超赤熱連続突撃（ランページ）モードと戦っている内にもちょっかいはかけてくる。それをどうするかの対処も必要じゃろう」

　ようはレイダーの軍勢を適度にいなしつつ、暴れまわるフルスロットル・ザ・ランページの先制攻撃へ対応して倒さなくてはならない――そういう厄介極まりない話だ。

「フルスロットルの打倒はこの戦いで必須じゃ。決して避けられぬ、よろしく頼んだぞ」

第1章 ボス戦 『フルスロットル・ザ・ランページ』

POW   :    フルスロットル・ギガント 【超赤熱連続突撃モード】に変身する。変身の度に自身の【V12エンジン】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。 SPD   :    V12スラッシャー 【全身のV12エンジンによる超加速】で敵の間合いに踏み込み、【V12エンジンの爆音】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。 WIZ   :    フルスロットル・チェーンソー レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【炎を帯びたチェーンソーの刃】で包囲攻撃する。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●死は終わりではない

「――来たか」

　フルスロットルはその全身から∨12エンジン音を轟かせ呟く。その視線の先には、己と対峙せんと訪れた猟兵達を捉えていた。

「こやつが此度の戦の首魁か！　我が身、我が拳は天より賜いしものなれば、善を行わずして他に道なし！　この世界に危険を齎す者、行善天拳が正してくれよう！」

　源波・善老斎（皓老匠・f32800）の口上が届いていたかどうか、ヴォーテックス・シティからの支援――バイクによるレイダー軍団の参戦で、大地が揺れる。まさに人の力が起こした地震、それを前に蒼・霓虹（彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441）は凛と言い放った。

「貴方達の所業にこれ以上、この世界に住まう一般人を巻き込ませはしません。貴方達はわたし達が乗り越えますっ！」
「いかに難敵であろうとも、ハングマンは悪党を必ず吊るす！　地獄のモヒカンメイドだと思えば躾ようと気合いが入るのですっ」

　岩倉・鈴音（JKハングマン・f09514）もまた、強く言い切った。確かにレイダー軍団はモヒカン棘付き肩パットばかりだ――まさに地獄のようなモヒカンメイド軍勢の出来上がりだろう。

　ドドドドドドドドドドドドドドドドドド！　と大地を震撼させながら、フルスロットルは己の全身を赤熱化させながら言い放った。

「我らが約束された栄光の道――ストレイト・ロードは決して消えぬ！　そのことを汝らにもまた刻んでやろう」

　それはレイダー軍団の生み出す地響きよりもなお雄弁な、凄まじい魂のエグゾースト音であった。

●我が先に道は無く、我が後に道は在り――！

　迫るレイダー軍団、それを前にラモート・アンゲルス（生きた概念・f18548）とラモート・レーパー（生きた概念・f03606）が同時に前へ出た。

「冥府の門を閉じさせてもらいます。再役割『護り防ぐ者』」
「冥府の鍵を返してもらう。再解釈『誘い攫う者』」

　アンゲルスが三対の六枚翼の騎士へ、レーパーが二本角と蛇をイメージした衣装に変わった。アンゲルスが翼をはためかせ、前へ――その直後、レーパーが二本の杭を投擲した。

「まずは止めます！」

　虹三葉「レインボークローバー」――霓虹の幸運の運気を圧縮し可視可能なレベルになった、虹色のクローバー型の攻防一体の魔法弾幕が高速詠唱と共に展開。霓虹の言葉とともに、重力属性を込めて放たれた。

　ドドドドドドドドドドドドドドドドゥ！　という重圧を伴う魔法弾幕。レイダー軍団の先頭がその重圧にハンドルを取られて転倒すると、背後の者達が巻き込まれ雪崩のような事故となる。

「お前らも吊るしてやる……待ってろ」

　勝虎巣を振り上げた鈴音の斬撃波が、そこへ重ねられる。ドォ！　と吹き飛ぶレイダー軍団――しかし、その宙を舞うレイダーの群れを轢殺するように飛んだフルスロットル・ザ・ランページが、猟兵達へと襲いかかった。

「そこ！」

　レーパーの杭、より正しくは影から伸びた鎖が、フルスロットルの影と結びつきその突進を急ブレーキ。なおも止まらず、地面をドガガガガガアガガガガガ！　とめくりながら進むフルスロットルを、アンゲルスは盾によって受け止めた。

「――――ッ！」
「ぬるいッ！！」

　阻み徹する盾ごと、フルスロットルはアンゲルスを吹き飛ばそうとした。しかし、その盾の守りの範囲がフルスロットルの予想を越えて広い――燃ゆる六枚翼がゴォ！！　と六条の翼の軌跡を描くと、そのままフルスロットルの軌道を変更。地面へと叩きつけた。

「ぬ――！」
「今です！」

　ゴォ！！　と地面を砕き、クレーターを穿つフルスロットル。地面に落下したフルスロットルへとアンゲルスが叫んだ瞬間、善老斎が軽やかに駆け込んだ。

「奴一人でも手強かろうに、援軍までおるときた。ならば致し方あるまい、危険な代物じゃが宝貝を使う！」

　赤錆色の刀身を備えた全長50cmほどの刃無き剣――斥蝕刀を善老斎が振り下ろす。ギ、ギギギギギギギギギギギギギギギギン！　とフルスロットルはチェーンソー剣のソーチェーンを高速回転させて、その一撃を受け止め吹き飛ばした。

「ははははははははははははははは！　まだ暴力の片鱗も見せておらんぞ！」

　その瞬間、レイダー軍団も地鳴りと共に第二波がやって来る！　フルスロットルの呵々大笑さえ飲み込むエンジン音の大合唱が、戦場を埋め尽くした。

●すべてを不要――そう断じたが故に！

「「「「「「ヒャッハー！！！！」」」」」」」

　釘バッドが、ショットガンが、バイクの突撃が。そのレイダー軍団は、まさに止まぬ暴力の豪雨となって猟兵達へと襲い来る――しかし、それさえも猟兵達には届きはしない。

「冥界に墜ちろ！」

　それはあまりにも巨大な奈落の穴――レーパーの黄泉比良坂（ヘルズゲート）だ。次々に奈落へと落ちていくレイダー軍団の悲鳴や怒号、それを足場にフルスロットルは笑う。

「クハハハハハハハハハハハハハハハ！　案じるな！　死は終わりではない！　懐かしき海へと帰るだけのこと！」

　フルスロットルは止まらない。例え、この星の半分が奈落と化そうと、それは懐かしき躯の海と何が変わろう？　死さえも終わりではなく、螺旋という次への広がりと考える巨人の豪胆さこそ、この場ではもっとも脅威であった。

　これこそが、フルスロットル・ヴォーテックス。この世界を、黙示録の地獄へと変えた者――死の渦のユーベルコードによる暴力で、開拓者の魂すら掌握した圧制者。

（「この「斥蝕刀」の力を使える時間には限りがある――じゃからこそ！」）

　善老斎は渾身を振り絞り、限界の先へ――宝貝「源波通功輝星」を発動させた。

「我が功力よ、悉くに通ずる光となれ！　いざ、源波通功輝星！」

　赤き星の如く輝く「斥蝕刀」の刀身から善老斎の内功を変換した灯光を放出――その瞬間、ほんの刹那。その空間からすべてのエンジン音が消え、静寂に満たされた。

「ぬ――！！」
「シャア！！」

　殺傷力を伴う運動を一時停止させ、善老斎が一気に間合いを詰める。そこで繰り出す、渾身の一撃がフルスロットルの巨体を吹き飛ばした。

「が、は！？」

　再び∨12エンジンに火を入れるフルスロットル、だが――それを許す謂れは、猟兵たちにはなかった。

「幻日はサンドックとも言う……わたしの真の姿（顔）とシンクロしてるのはさておき……フォーチュンスケイルの幻日形態、特と刮目せよっ！」

　霓虹のフォーチュンスケイル・サンドッグフェザーによる飛翔――そこから放たれる砲撃とレーザー射撃が、堕ちていくフルスロットルとレイダー軍団へと降り注いでいく！　ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド！　と奈落の穴で巻き起こる爆発、爆発、爆発！　しかし、フルスロットルだけはその爆風に乗って這い上がろうと試みる！

「ふはははははははははははは！　いいぞ、これが暴力！　貴様らもその本質を知る者だ！」
「地の底で大岩転がしてろ！」

　ジャラララララララララララララララララララララ！　と影から伸びた鎖が、フルスロットルの全身を拘束していく――自身も落ちないよう鎖で身を繋ぎながらレーパーは次から次へと鎖を追加する。そうしなければ、赤熱化した身体で鎖が持たないからだ。

「簡単に死ねると思わないでください。そのまま果てなく堕ちていってください」

　だからこそ、アンゲルスは炎の六枚翼で舞い、フルスロットルの背後を取って侵犯を滅す篝火をその背から突き立てた。呪縛絶ち――慈愛の心を籠めた白剣による一撃、その刺突によって肉体を傷つけずに対象のオブビリオンとしてのしがらみを討つその剣に、∨12エンジンのエンジン音が途絶えた。

「ぐ、お、お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！？」

　全身の赤熱化が止まれば、後は縛る鎖は増えていくのみ。ジャガガガガガガガガガガガガン！　とフルスロットルの全身をレーパーの鎖が縛り上げた瞬間、その上に鈴音が舞い降りた。

　それはまさに、全身が虹色の身体――迫る虹が、言い放った。

「やれやれ、モヒカンを躾るにはさらにつよくならねばならぬ。虎になる。こいつを地獄でメイド妹させねばならぬ」

　その虹色の牙がフルスロットルの∨12エンジンを完全に噛みちぎる！　虎のごとき鈴音の一撃に、フルスロットルは奈落へと堕ちていく。

「虎は死して皮を残すが……お前はてへぺろ地獄メイドとして名を残すとよい！」

　鈴音の言葉はフルスロットルへと届いただろうか？　ただただ深く、奈落の底へと堕ちていく。

「……この海の底で、待っておるぞ！」

　ハハハハハハハハハハハハハハハハ！　という哄笑を残し、フルスロットルは奈落へと消えていった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年09月20日