2
アポカリプス・ランページ⑧〜マザーのルーツ探訪

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ #アポカリプス・ランページ⑧

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アポカリプスヘル
🔒
#アポカリプス・ランページ
🔒
#アポカリプス・ランページ⑧


0




●時は質量なり?
「いよいよ戦争も大詰め、といったところでしょうか」
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)は日々、戦争の動向を確認し、猟兵達に作戦の案内を出している。直近ではついにカタストロフを狙うフルスロットル・ヴォーテックスへの道も開かれた。
 終戦がどのような形で訪れるかはまだはっきりとしていないが、少しでもより良い形を目指すべく、猟兵達にはまだやることがある。
「ですが皆さん! 戦いはまだ終わっていませんので、最後まで全力を尽くしましょう! ……とは言え、今回ご案内する作戦はそんなに難しくありません。皆さんに向かって頂きたいのは『セントメアリー・ベース』という場所になります」
 そこはカナダとの国境にほど近い巨大拠点。此度の戦争で言えばオブリビオンの脅威がそこまで及んでいるわけではなく、比較的落ち着いた場所なのだが。
「実はこのセントメアリー・ベースとは、マザー・コンピュータに組み込まれた世界最高の歌姫『マザー』の出身地なんです! そこには彼女の初期の研究論文『時間質量論』のデータが大量に残されています。この戦争でも何度か聞くキーワードですね……そのデータ、中身がどういうものなのか気になってきませんか?」
 一説には、猟兵という存在は時間質量論では説明できぬ異端とも。マザーの研究データの中でその理論がどこまで深く掘り下げられているのか、知ることで猟兵という存在の本質に少しでも迫ることができるのであれば――戦いとはかけ離れているが、訪れてみるのも悪くない。
「というわけで、皆さんにはセントメアリー・ベースにて、時間質量論に関するコンピュータや記録媒体の山を運び出すのをお願いしたいんです! しかし、その量は膨大で、重量も相当なものになります。運び方には十分注意して運び出すようにしてください! 戦いはちょっと……という方、大歓迎です! 皆さんでも力になれることがきっとあります! それではよろしくお願いします!」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 ようやくプレイングループから抜け出せました。またしっかり頑張っていきます。

●フラグメント詳細
 第1章:日常『時間質量論を運び出せ』
 研究室みたいなところから色んな媒体のデータをひたすら運び出す、それだけです。
 中身はその場で読んでも分かるかどうか怪しいので、とりあえず運び出すことに専念しましょう。
112




第1章 日常 『時間質量論を運び出せ』

POW   :    腕力に任せて一気に運ぶ

SPD   :    乗り物や道具を利用する

WIZ   :    より重要そうなデータを優先して運ぶ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

七那原・望
よくもまあこれだけの量を一人で作ったものです。天才というのは末恐ろしいのです。

まずは望み集いし花園に一度入って、結界術で花園の上を覆いましょう。
花が潰れちゃいますからね。

準備が出来たら望み集いし花園の中にどんどん記録媒体を運びます。
無機物ですし、普段身に付けてる服とか一緒に入れたり出来てるので多分大丈夫ですよね?
記録媒体を傷付けないように結界術でコーティング。それをプレストで掴むことで自身の所有物扱いにして自分ごと花園に移動させます。

どんなに膨大で重い機材でもこうしてしまえばただの果実なのです。
片手で運べて楽々なのですー。

荷下ろしする際は衝撃に気を付けつつ入れた時と同じ要領で出しましょう。



●およそ無限の研究者の城
 研究室と言えば聞こえはいいが、その実体は電脳技術の粋を結集して作られた無限城。チカチカと明滅しながら今もプログラムをループさせている匣がずらりと並び、莫大な情報を蓄えた記録媒体は積み重なりながら壁や柱を構築する。間を彩るランプが無限の色彩を生み出しながら脈動する様は、電脳という創造された命の輝きを表していた。
 どこぞの世界のクリスマスだってこんなに派手には飾らない。激しいライトの点滅にはご注意を、などというテロップに真っ向から喧嘩を売りにいっているようなもので、害は無いかと問われても即座に返すのはなかなか難しい。
 だが幸いにも、七那原・望(封印されし果実・f04836)は視覚に頼らない。この無限城内部も、お友達の部屋と大差ないのである。
「よくもまあこれだけの量を一人で作ったものです。天才というのは末恐ろしいのです」
 肌に感じる空虚感は果ての感覚を狂わせていた。どこまで進もうともその全貌は暴けない。こうなれば手近なところから手当たり次第に運び出すしかなかった。
「まずは花園の保護をして――」
 自分の担当はこの場と決めて、望は望み集いし花園(ガーデン・オブ・カルポス)に入る。これから大量の記録媒体を詰め込まなければならないのだ。踏み荒らされないように、潰れないようにと結界で花園を覆い、記録媒体を収納する土台を作る。
 戻ってからがいよいよ本番。望は繊細な精密機械である記録媒体に同じように結界の保護をかけると、機械掌を操って上から鷲掴みにした。他を刺激しないようにゆっくり垂直に持ち上げてから水平移動、さらに下降させ、自らの手元に運んでくる。
「無機物ですし、普段も服とか一緒に入れてますから……これはこのまま……」
 機械掌は自律型だが、望の体の一部との扱いを受ける。その手に収まる物ならばどんなに重かろうが望の所有物だ。疑いなく抵抗しない記録媒体は黄金の林檎を通り抜けて花園の中へと到着した。
「どんなに膨大で重い機材でもこうしてしまえばただの果実なのです。片手で運べて楽々なのですー」
 掴んでいた記録媒体を同じ要領でゆっくり下ろし、一つ格納した望はまた花園を抜ける。そして掴む、運ぶ、入れる、抜ける――。一連の動作はサイクルとなって滑らかに実行されていった。
 それは傍から見ればつまらない作業にも思えたが、望は望なりに楽しんでいた。機械掌が記録媒体を掴み、運んでくる流れは景品をつかみ取りするコインゲームのようなワクワク感がある。どこを掴めば最も安定して記録媒体を持ち上げられるのか。あたかも一枚のコインに願いを掛けるように、望は常に真剣勝負で挑んでいた。
 時の経過は花園へと運ばれた記録媒体の量に変換される。結界を隔てて花園の上へと積み上がった記録媒体群はピラミッドを成していた。望は今日一番の大物記録媒体を掴み取って花園へ入ってくると、機械掌を上昇させてピラミッドの最上へと、そっと鎮座させた。
 記録媒体の四つ角が綺麗に四つの匣の上に収まった。わざわざ無限城を歯抜けにしながら選び出して組み上げた傑作だ。望の胸には達成感がじんと湧いてくる。
「できたのですー。ですがこの様子だと、多分もう一回りくらいは大きいのが作れそうですね。早速チャレンジなのですー」
 スペースを空けるため、望は一旦花園の外に出て無限城を引き返す。運び出すまでが役目で、解析その他諸々は他にお任せ。花園の中を空にして舞い戻った望は、黙々と記録媒体のピラミッド作りに励むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
重要度は勿論だけど
歌姫の残したもの、僕自身も気にはなるんだよね
歌に纏わるデータも残されてたりするのかな…

とはいえ今回は時間も限られてるので
まずは運び出し、だね
【指定UC】を発動
ちょっと手伝っていただけますか?

僕自身は正直非力過ぎて効率最悪だと思うから
どこからどういう経緯で集まってるのか全くわかんないんだけど…
親衛隊とやらの手を借ります
繊細な作業も人間の手の方が得意だろうし
人数はいるから、壊さないように協力して運んでもらえたら
重いものはバケツリレースタイルにするのもいいかもね

僕も持てる範囲で手伝いつつ
風魔法を混ぜた【オーラ防御】を各媒体に纏わせる事で
風力により浮かせることで重量緩和させたいな



●たとえ無限城の中だってやってくる
 歌姫マザーのもう一つの顔が、この無限城には残されている。時間質量論の研究者――そのデータ量はマザーが人生の全てを捧げて来たのではないかと思うほどに膨大だ。
「重要度は勿論だけど、歌姫の残したもの、僕自身も気にはなるんだよね。歌に纏わるデータも残されてたりするのかな」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はデータの出力装置と思われるディスプレイの前にしゃがみ込んで眺める。接続されている記録媒体がカリカリと音を立てながら動作し、多元高次方程式をひたすら解き続けているようだった。
 それは歌と何か関係があるものなのか――澪には皆目見当もつかない。時間も限られている関係上、澪は一旦研究の内容を思考から追い出して、マザーの集めたデータの運び出しにかかる。
「親衛隊の皆さん、どうか……」
 澪は祈る。すると、どこからともなくどかどかと屈強な男達が現れ、澪の前に規則正しく整列した。
「親衛隊、総勢570名! 澪ちゃんの元に馳せ参じたであります!」
「……また人数増えた?」
「今も絶賛入隊受付中であります!」
 この先もまだまだ増えそうだ。ともあれ彼らは澪にとって大事な支援者であり戦力。特に重量があるとされるコンピュータや記録媒体は、非力と自覚する澪にとって最大の難敵だ。
「とりあえず、ここにあるものを、壊さないように注意しながら運び出していただけますか?」
「了解であります! 全体、配置につけーっ!」
 リーダー格の親衛隊員が号令をかけると、他の親衛隊員達は何時決めたのかもわからないが、各々が自らの立ち位置に就き、ずらりと外まで列を成した。澪を前にして、まるでサイン会の列を作っているかのようだ。
「ほっ! ふっ! はっ!」
 先頭の親衛隊員がまず手近なコンピュータに手を掛けて持ち上げ、隣の親衛隊員に渡す。それをさらに隣へ――とバケツリレーの要領で次々にマザーの研究物が外へ運び出されていく。
 親衛隊とは時に支持する相手を守らねばならぬもの。普段より鍛え上げられている肉体は、ここぞという場面で遺憾なく力を発揮していた。
「……ぬぅ」
 しかし親衛隊員達にも対処困難な敵がいた。それは高さだ。如何に屈強でも伸ばす手には限界がある。高々と積み上げられた記録媒体は親衛隊達を嘲笑うかのように鎮座する。
「うぉぉぉぉ! 澪ちゃんの役に立つことが至上の喜びであるというのに、我が肉体は何と無力……っ!」
「あぁ、うん、まぁ……そういうこともあるから……。高いところのは僕が取るよ」
 メンタルの振れ幅が極端な親衛隊達を宥めつつ、澪は翼を使って浮き上がり、てっぺんの記録媒体を持ち上げた。なかなかの重量で、重さに負けて落ちそうになるところを風魔法のオーラで包み込み、重量を緩和させて先頭の親衛隊員に渡す。
「運ぶだけでなく、我らに少しでも苦労をさせまいと、魔法で軽く……! 感激であります!!」
「まあ、主に僕のためだけど……ともかく、僕も参加するから、急いで運んでいこう」
「なんと! 澪ちゃんに手伝って頂けるのであれば百人力! この至福、私だけが享受していいものではない……! 全体、ローテーションフォーメーションであります!」
 ローテーションフォーメーション、それは先頭の親衛隊員が後方へ渡すと、列から抜け出し最後尾に並ぶというもので――やっぱりサイン会の列である。澪から直接手渡されることに感動し、余韻に浸りながら後方に回る。親衛隊員冥利に尽きる、というやつだ。
 それで効率が上がったかどうかは定かではないが、親衛隊員達は俄然やる気を出してデータの搬出に臨んでいた。
 そして気付けば、数十メートルに及ぶ無限城の壁の一角が忽然と姿を消していた。
「結構頑張ったんじゃないかな……皆、ありがとう。僕一人じゃここまでのことはできなかったよ。僕はちょっと休憩するから、皆も休んでよ」
「有難き幸せ! その言葉こそが我々の活力! またいつでも、我々をお呼び下さい!」
 言い残してまた親衛隊員達はどかどかと走り去っていく。本当に、風のようにやってきて、風のように去っていくような連中だ。
「……さて、少しは解析できてるのかな……?」
 運び出したデータは外の猟兵達が調査しているはずだ。歌に纏わるものがないかどうか、澪は淡い期待を胸に彼らを訪ねに行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真月・真白
時間質量論、一体どんな研究なんでしょうね
読んでみたい興味に後ろ髪を引かれつつ梱包を続けます
重い物や割れやすい物は柔らかい布で包み、紙類は防水袋でしっかりと封をしましょう
運ぶにはUC発動機械の発達した世界の歴史にあるドラック等を再演し積み込みます

歌姫マザー、彼女は何を求めていたんでしょうか…
世界の外に棄てなければいけない『過去』を『歴史』として残す事が僕の存在意義
彼女の『過去(じんせい)』は果たしてどのようなものだったのか、と、トラックに乗りながらマザーコンピュータがいるであろう方角を見つめます



●過去とは人が歩んだ道
 真月・真白(真っ白な頁・f10636)は電脳の無限城ことマザーの研究室で、せっせと荷造りを始めていた。機械の発達した世界の歴史書の中に記されたトラックを室内に再現し、その荷台に研究成果を載せていく。
「ん……これ、は、結構、重いですね……」
 荷台を足場に視線の上の記録媒体を取り出そうとしていた。箱型の記録媒体の両側を持ち少しずつ手前にずらしていったが、すでに感じる重量感。持ち上げて支えられるか怪しかったので真白は足元に柔らかい布を敷き、記録媒体を鎮座させる場所を準備した。
 あとは一瞬の気合の勝負。下から支えるように記録媒体を持ち上げ、頭上に掲げるように一気に引き抜く。ぷるぷると腕が震えるのをどうにか堪え、布の上までゆっくりと運んでいった。
「ふぅ……あとはこのまま包めば……と。1つ運ぶのも大変ですけど、これもマザーが残した『過去』……」
 猟兵達が目を付けなければ、いずれスクラップと化して物言わぬ骸になっていたかもしれないそれを、真白は大切に扱っていく。
 真白はその本体たる器物が白紙の歴史書であるが故に、他人の過去――人生には並々ならぬ興味を示す。マザーが残した研究とは、彼女が思考し、結論に至るまでの長い道のりを克明に記した歴史書に等しい。真白がその回収活動を精力的に行うのは、至極自然な道理と言えた。
 一画の記録媒体を全て荷台に積み終えたが、まだいくらか余裕があった。真白はトラックを少し移動させて、また新たな記録媒体の前までやってくる。
 先と同じく最上段から。真白は記録媒体に手を伸ばそうとしたが、ふと、積み上がった匣の上に紙束が載っていることに気付いた。経年劣化で色のくすんだ紙束を、真白は背伸びしてどうにか持ち上げ、手元まで下ろしてくる。
 保管されていたというよりは、放置されていたのだろう、と真白は推察する。放置されていた場所が場所だけに不可解ではあったが、こればかりは本人に真相を聞かねばわからない。
 書き記された文字は読めるレベルで残っていたが、論文めいた特有の言い回しに専門用語の羅列が続いて真白はくらりと眩暈を覚えた。他とは異なり、マザーの過去を直接的に読み取れる媒体だったが、そのためにはそれなりの下準備がいりそうだ。
 それでもどこかしらに、今の真白にも読み取れるものがないかと紙束をぱらぱらとめくり――。
「……ああ、いけませんね」
 手を止めて我に返る。今は自身の興味より過去の回収を優先せねばならぬ時。真白は興味に後ろ髪を引かれつつも、それ以上の劣化と運搬時の損傷を防ぐために紙束を防水袋に収め、しっかりと封をした。
 それから少しばかり作業を続け、荷台の積載重量上限に達すると、搬出のために真白はトラックの運転席に乗り込む。
「歌姫マザー……彼女はこの研究に、何を求めていたんでしょうか……」
 研究者としての一興味としてなのか、それとも解き明かしたい世界の謎でもあったのか。その研究はどこに始まり、どこに終わるのか、はたまた道半ばで研究を捨ててしまったのか。無限に広がる可能性は、真白や他の猟兵達が運び出す記録媒体やコンピュータを一つ一つ紐解いていかなければわからない。
 そのマザーは今、フィールド・オブ・ナイン「マザー・コンピュータ」として蘇っている。
 いずれ戦火を交えなければならない相手。その過去を尋ねて教えてくれるとは思わないが――遠く待ち受ける敵がいるであろう方向を見遣ると、真白はそこへ続く道を見据えるように真っ直ぐ視線を前に戻し、トラックを発進させるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤・美雨
論文はきっと中身を見ても何も理解出来ない
でも運ぶだけなら簡単だ!
そういうの得意だからね!
どんどんお仕事するよー

機械の心臓のおかげで私は見た目よりも力持ちなのさ
【怪力】を発揮して重い荷物をどんどん運ぼう
でも視界が塞がったりしない程度にね
転んだら大変だ
私はいいけどデータは壊れちゃうだろうし

重いものを持っていても足取りは軽やかに
鼻歌なんか歌いつつどんどん荷物を運んでいこう
楽しそうにしていれば陽の気配の気配も漂うはず
ここもある意味戦場だ
みんなの気力も回復すればいいなって

論文の中身はどんなものなのかなぁ
難しいことがたくさん書いてあるんだろうな
でもきっと、面白いことも書いてあるはず
色々分かる時が楽しみだね



●謎めいた中身のおもちゃ箱
「うーん……無理だ!」
 初めからわかっていたことだが、一応数秒だけ時間を割いた。藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)はディスプレイの点滅する文字を眺め、笑顔で言い放つ。
 もとより、今日の美雨に与えられた仕事は情報の解析ではなく、記録媒体やコンピュータの搬出作業。結構な力仕事になるが、力なら人一倍自信があった。
 研究室には未だ多量の機器が放置されている。猟兵達は各々のできる範囲で運搬作業を行っており、結果、大きな筐体類は残されがちになっていた。
「なんかたくさん詰まってそう! 運んでいかないなんてもったいない!」
 スイッチやランプ、メモリースロットなんかがたくさんついている筐体は如何にも多大な労力をかけて作られた雰囲気で、見た目通りに重そうだ。美雨は後部と思われる面の前にしゃがみ込むと、両手を広げてがっしりと両側面を掴んだ。
「よっ……あっ、いけるいける!」
 機械の心臓がフル稼働して外見から乖離するほどの怪力を発揮した美雨は最初慎重に立ち上がろうとするも、思いの外「軽い」と見て一気に持ち上げた。ただ、筐体の体積が美雨の視界を塞いでしまい、美雨は一旦そこで止まる。
 前が見えない状態での移動は可能な限り避けたかった。足元にネジの一本でも転がっていて踏もうものなら――美雨が無事でも筐体の大破は免れない。大事な大事なデータは何としてもそのままの状態で解析組の元まで届けたかった。
「……そうだ! こうして……上に持とう!」
 怪力にはまだ十分余裕があった。本来であれば自身の重心近くで物を持つのが最も軽く感じるのだが、美雨は敢えて筐体を頭上まで掲げて視界を確保する。先よりはやはり少し重く感じるようになったが、まだまだこれは美雨の許容範囲。
 どこかの民族は頭の上に物を載せて運ぶ習慣があるのだとか、いつか聞いたような気がした。それに倣って――というわけでもないが、普段と違ったやり方は新鮮味があった。
「ふ~ふふ~、ふふん~ふ~ん♪」
 順調、順調。気分も乗ってきて美雨は鼻歌交じりに笑顔で運ぶ。研究室の出入り口だけは美雨の身長と筐体の高さを合わせると超えてしまうため、足元を念入りに確かめてから抱える体勢に戻し、無事に搬出を終えた。
 大物の登場に現場も色めき立つ。解析の腕が鳴る、とはその場に居合わせた電脳魔術士の弁だ。
「この調子でどんどん持ってくるよー!」
 美雨が運んできたのはマザーの研究物ばかりではない。研究データの搬出という仕事を楽しむ美雨の陽の気配が、場に居合わせた者達の気力回復にも繋がっている。休憩していた者達は陽の気配に当てられて顔色が戻り、美雨と入れ違いに研究室に駆け出していった。
 美雨だって負けてはいられない。研究室に引き返すと、率先して筐体類を運び出していく。
「この中にはどんな論文が詰まってるんだろうなぁ。難しいことがたくさん書いてあると思うけど……でもきっと、面白いことも書いてあるはず!」
 重い物には重いだけの何かが詰まっているに違いない。それを読み解いていけば、色々なことがわかってくるだろうと。そんな日が来るのを楽しみに、美雨はこの日、日が暮れるまで研究室の中と外を往復していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

これは、作ったはいいけど出番のなかったインベントリの出番ね。多重詠唱の召喚術と式神使いでワンダーラビットをたくさん召喚して人海戦術でたくさん収容するわよ。
問題は下手に動かすとデータ飛ばしちゃうセキュリティのやつね。ま、私の多重詠唱結界術でハッキングすれば吸い出すのも容易だけど。とりま結界術に記録しとけば後できちんとした媒体に移せるわ。
さて、インベントリの中身もすぐ取り出せるように整理しとかないとね。この辺マルチタスク(多重詠唱、瞬間思考力)で魔術を並行使用すればリアルタイムでできるけど、あれね、傍目にはさぼって寝てるように見えるのが難点ね



●アリスとウサギとインベントリ
 適材適所という言葉がある。力とはそれが相応しい時に使うべきであり、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト魔少女・f05202)が宝の持ち腐れにしていたユーベルコードはまさに今が使い時だった。
「出てきなさい、ワンダーラビット」
 アリスが床に向けて声を放つと、小さな魔法陣が無数に形成されてその中にタキシードとモノクル、シルクハット姿のウサギが現れた。彼らは一体一体がウォークインクローゼットに繋がる「インベントリ」。今はじっとアリスの顔を見上げて指示を待っている。
「この辺のあらゆる物を収納しなさい。ただし、セキュリティがかけられているものを見つけたらわたしに報告すること。さぁ、行きなさい」
 アリスの号令でウサギ達は一斉に散っていく。積み上がった記録媒体の元まで辿り着くとウサギ達はタワーを作ってその頂上に登り、上から順に触れていってウォークインクローゼットの中に収納していった。
「やっぱり、この手の作業は人海戦術に限るわね」
 力で運ぶのもありはありだが、物理を超えた収納方法があるならそれに越したことはない。ウサギ達の作業は順調、とアリスは眺めていたが、高さにして半分ほど回収した辺りでウサギの一体の動きが止まり、記録媒体の上から飛び降り戻ってくる。
「あら、早速なの?」
 ウサギはこくりと頷き、アリスを導くように走っていく。レッドランプが点滅する匣の一つは見るからに危険な香りがした。
「仕方ないわね……物は壊れるかもしれないけど、データは吸い出して後で別の媒体に移せばいいし……」
 アリスは匣の周囲に結界を張り巡らせ、セキュリティを探る。南京錠の形が魔力イメージとして浮かび上がってきたところで、アリスは鍵穴に強引に魔力を詰め込み、ぐりっと捩じって南京錠を破壊した。
 セキュリティをハッキングされたことで自己破壊プログラムが走り出す。それが完全に動作してしまう数秒の間に、アリスは結界を重ねてセキュリティの内部に撃ち出し、中身を完璧に転写した。匣はランプが消えて物言わぬ金属塊となってしまったが、部品が何か役に立つかもしれないと考えてウサギに回収の指示を出す。
「引き続きお願いね。わたしは……インベントリの中身でも整理しておこうかしら」
 ウサギ達は手当たり次第に記録媒体を放り込んでいる。中を覗けば記録媒体の山は隙間だらけで随分と空間を無駄に使っていた。アリスはウサギ達を使役する傍ら、回収した記録媒体を大きさごとに選別して積み重ね、無駄なスペースを削っていった。
 せっせと働くウサギ達を前に、目を閉じ何やら手をぶらぶらと動かしているだけのアリスを、同じく運搬作業に従事していた猟兵達が不思議そうに眺めながら通り過ぎていく。彼らも忙しいのでアリスに構っている暇はなかったが、きっとアリスが何をしているかもわからずに通り過ぎてしまった者も多かろう。
 為すべきことは為している――それは分かるべき者が分かればよい。アリスの仕事ぶりは、運び出された記録媒体の量として、それを解析する者達に認められることだろう。


 今日もまた、猟兵達の働きにより、時間質量論のデータ回収は滞りなく目標を達成した。
 そして決戦の日は、もうすぐそこに――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月18日


挿絵イラスト