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アポカリプス・ランページ⑪~殺してくれと君は言うのか?

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ #フィールド・オブ・ナイン #デミウルゴス #アポカリプス・ランページ⑪ #プレイング受付:18日(土)23:59まで

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 苦しい。
 彼は狂った教団に造られた、偽物の神だった。
 けれど、祈りはそんな事知らないとばかりに届き続ける。
 偽物でも、本物でも、神は神だろうと。

 五月蠅い。やめろ。黙れ。

 彼の懇願に似た命令は何処にも届かない。
 偽りでも、いつだって神の祈りは何処にも届かないのだ。
 誰に祈ればいい?
 誰に請えばいい?

 ――助けて
 ――裁いて

 ――許して

 誰を助ければいい。俺には判らない。
 誰を裁いて、誰を許せば良い! 俺には判らない!
 殺せ! 殺せ! さもなくば俺がお前を殺してやる!
 この声が止まるまで、俺は――!



「フィールド・オブ・ナインの一人“デミウルゴス”を捕捉したよ」
 ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)は目の前のテーブルに注射器を並べている。
「あれは造られた偽りの神だが、神は神だからね。フィールド・オブ・ナインに数えられてもおかしくはないだろう。問題は其の性質だ。奴には殆どの攻撃が通用しない」
 “偽神細胞を備えた者の攻撃以外を無効化する”――其れがデミウルゴスの権能なのだとヴィズは語る。しかし偽神細胞といえば、ストームブレイドしかいない筈。彼らに頼るしかないのかというと、其れは違うと魔女は答えた。
 ヴィズは注射器をもって振る。
「ソルトレークシティで手に入れた奴さ。この注射器の中身は偽神細胞だ。首にドスっとやりな。一時的にだがお前たちは“偽神化”して、デミウルゴスに一撃をくれてやる事が出来る。……けれども……」
 其れは多大なる苦痛を伴うもの。
 猟兵の肉体は烈しい拒絶反応を示すだろう。命すら危うくなるほどの激痛と苦しみに襲われる事は想像に難くない。
「……デミウルゴスも、偽神細胞を持っている。奴は苦しんでいる。……祈りが聞こえると。人々の祈りが聞こえると、狂いそうになっている。……其の気持ちは、少しわかるんだ。だから」
 終わらせてやってくれ。
 其れはデミウルゴス自身の望みでもある。
 注射器を机に置き、グリモアを発動させながら――ヴィズはいつになく悲し気な顔でそう言うのだった。


key
 こんにちは、keyです。
 あくまで“死にたくなるほどの痛み”ですのでご安心を。

●目的
「デミウルゴスを撃破せよ」

●プレイング受付
 断章公開後、すぐに受付開始です。
 受付終了日時はタグ・マスターページにてお知らせ致します。

●このシナリオについて
 1章で終わる戦争シナリオです。

●プレイングボーナス!
「“偽神化”し、デミウルゴスを攻撃する」
 デミウルゴスは基本的に偽神細胞によらない攻撃を無効化してしまいます。
 しかし配られた注射器を使い偽神細胞を接種する事で、通常の猟兵の攻撃も通るようになるでしょう。ですが、これは非常に危険な行為です。身体は激しい拒絶反応を示し、苦痛の中で猟兵たちは戦う事になります。
 (時間と共に徐々に痛みは引いていきますが、眼前にデミウルゴスがいる事を忘れないで下さい)

●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
 迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。(合言葉がない場合、別れ別れになってしまう危険性があります)
 出来れば失効日が同じになるように投げて下さると助かります。


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『デミウルゴス』

POW   :    デミウルゴス・セル
自身の【偽神細胞でできた、変化する肉体】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[偽神細胞でできた、変化する肉体]から何度でも発動できる。
SPD   :    偽神断罪剣
装備中のアイテム「【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ   :    デミウルゴス・ヴァイオレーション
自身が装備する【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】から【強毒化した偽神細胞】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【死に至る拒絶反応】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 五月蠅い。
 デミウルゴスは彷徨い続ける。
 いつしか傾いた廃ビルが立ち並ぶ場所にいた。まるで人々から離れるように、デミウルゴスは彷徨い続ける。
 其れでも祈りは遠くならない。
 近付いている気さえする。
 頭の中にうわんうわんと響く祈りの声は、紛れもなく呪詛だ。祈りの形をした命令だ。
 やめてくれと請うても已みはしない。
 言わないでくれと願っても已みはしない。
 なら、已ませるしかないじゃないか。
 声を殺すか、俺が死ぬか。
 そのどちらかしか――ないじゃないか。
リーヴァルディ・カーライル
…っ。何度受けても、この痛みには慣れないわね
…だけど、だからと言って屈する訳にはいかない

…お前の境遇には同情するけど、お前の行いは許容出来ない

…お前を討ち果たし、その不本意な在り方を終わらせてあげるわ

偽神化の反動を過去の戦闘知識から編んだ肉体改造術式で抑えて受け流し、
「写し身の呪詛」を乱れ撃ち無数の残像による集団戦術で攻撃を避け闇に紛れてUCを発動

…我が手に宿れ、原初の理。万象の悉くを呑み込むΧάοςよ!

限界突破した六種の「精霊結晶」と吸血鬼化した自身の全魔力を溜め、
混沌属性攻撃のオーラで防御を無視して敵を消滅させる黒光の奔流を放つ

…もう苦しむ事はない。この世界から消え去りなさい、永遠に…




「……ッ、……!!」
 苦しい。
 其れは痛みというより熱さ。何度打ち込んでも慣れない。そうリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は思う。慣れるものでもないのだろうけれど……でも、痛いから、苦しいからといって屈する訳にはいかない。
「……ッ」
 痛みが引くのを待ってはいられない。デミウルゴスが怒りの形相で目の前に立っているからだ。彼も――痛いのだろうか。苦しいのだろうか。其れとも其れらをを上回る“祈り”に晒されているのだろうか。
「お前の境遇には同情するけど」
 鎌を握り直す。何度これを握り直しただろう。汗が滲み、血が流れる度、確かめるように握ってきた。この感触が教えてくれる。私はリーヴァルディだと。偽の神でも何でもない、ただの猟兵であると。
「お前の行いは許容できない……!」
「お前が許すというのか。俺を……俺を赦してどうなるという! 何も変わらない……俺を赦したところで、俺を苛む声は何も変わりは!!」
「変わらないでしょうね。でも……お前だってその在り方は不本意でしょう。終わらせてあげるわ、せめて。お前が私達の討ち果たすべき敵である間にね」
 リーヴァルディは息を吸って、吐く。過去の知識から肉体改造の知識を縁りだし、集め、一つの術式として織成せば、鎮痛に特化させる。
 痛みさえどうにかなれば、あとは耐えれば済む。
 斬り込んできたデミウルゴスに、己も鎌を振るうリーヴァルディ。高い音が鳴り鍔迫り合いする二人の横合いから、“数人のリーヴァルディ”が姿を現した。
 ――写し身の呪詛。其れ等は戦闘能力を持たないが、囮には十分すぎる。
「小賢しいッ!! 剣も持たない残像がッ…… ! やめろ、やめろ、俺には誰も……!」
 苦しみながら剣を振るうデミウルゴス。彼はこの戦いの間すら、祈りの声を聴いているのか。だがリーヴァルディは容赦しない。闇に紛れ、幻惑に紛れて、6つの精霊結晶を取り出した。弾丸の形をしたそれを、悼むように見つめ、魔力を吹き込む。一息。二息。己の魔力が枯渇するまで吹き込めば結晶は輝く。
「――我が手に宿れ、原初の理。万象の悉くを呑み込むΧάοςよ!」
 リーヴァルディが吸血鬼となってまで注ぎ込んだ全魔力。そして6つの結晶によって齎される混沌。全てを籠めた一撃が、デミウルゴスを呑み込み、背後のビルを倒壊させた。
「……もう苦しむ事はないわ」
 己の一撃でなくとも。
 誰かの一撃が、きっと。彼を世界から消し去ってくれる。
 其の時こそデミウルゴスの魂が安らげる時なのだろう。リーヴァルディは何故だか虚しくて、其の長い睫毛を伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リグ・アシュリーズ
【朧狼】
こんにちは。いい嵐ね!
偽神細胞の接種?
――もう、済ませたわ。

どくんと伝う不快な脈を汗滲む笑顔で堪え。
私も神様は信じてないわ。
暗黒世界で育った都合、勝てば正義って骨身に染みてるの!

訪れた変化は、予期せぬもの。
巣食う『先客』が偽神細胞と喰い合う形で発現。
主導権の移ろう体で自覚なく咆哮を轟かせ、
断罪剣の射程に入るより早く、無数に気流の刃を打ち出す。

斬られる前に放ってしまえば、
腕や腹を裂かれようと確実に斬り刻めるもの。
くーちゃんがピンチなら尚の事、
意識途絶えるまで刃を放って惹きつける。

救う為の力、なんて私にもないわ。
あるのは限られた席を命がけで奪い合う生き汚さ。
あなたの椅子、空けてもらうわよ!


朧・紅
【朧狼】

僕もっ
偽神細胞の接種おっけぃ
リグさんも無茶するですねぇ

僕、神って信じてないの
だから貴方は只のデミウルゴスさんで
僕は咎人殺し
死にたいって願うです?
なら―

【双響魂】
いたぁいおのれ偽神細胞さん
おかげでパワー百倍いたた

ぅやリグさん間合い外から
すごぅい

でしたら足止めっ
溢れ出る流血で【血糸】は蛇のように絡み縛り動きを封じ
【紅朧月】は全てを弾き守る盾になるですよ!
痛みには慣れてるの
この身を賭して守るですよ


もし
僕の意識が途切れる程のダメージを負えば
それを糧に膨れ上がった狂気を纏い
片割れ殺人鬼に切り替わり金目が嗤う

朧っリグさんは傷つけちゃダメですよ

"殺す″一撃は迷いなく強者へ穿たれる

死にたがりは好かンな




「くーちゃん、接種は済ませた?」
 リグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)が額に汗をにじませながら問う。彼女の体の中では激しい拒絶反応が起こり、肉体を引き裂いて取り出したくなるような痛みが渦巻いている筈だ。
「僕もっ、接種おっけぃです」
 朧・紅(朧と紅・f01176)は答える。口から手を突っ込まれて内臓をかき混ぜられるような苦しみを抱えている。でも、もう敵の前なのだ。痛みや苦しみにのたうち回ってはいられない。
 紅は真っ直ぐにデミウルゴスを見据えた。デミウルゴスは剣をゆっくりと構える。
「……僕、神って信じてないの」
「……」
「だから貴方は、只のデミウルゴスで」
「じゃあ、俺の頭に響くこれは何なんだ? 祈りは? 何なんだ?」
「知らないわ」
 リグが肩を竦めた。
「でもね、勝てば正義なのよ。暗黒世界で育った都合、これだけは骨身に沁みてるの」
「そして僕は咎人殺し。――死にたいって願うです? なら」
「五月蠅い。……五月蠅い、黙れ、お前たちも誰も彼も黙れ!!! 五月蠅い、黙れ……ううおおおああああ!!」
 デミウルゴスが一息に巨剣を振り下ろす。射程を増した其れは咄嗟に交わした紅の胸元を掠めるにとどめたが、其れ以上に拒絶反応の痛みにうぐ、と紅は呻いた。
「おのれ偽神細胞さん……おかげでパワー百倍ですがっ。いたた」
「……」
「……リグさん?」

「……ゥォオオオアアアアアアアッ――!」

 リグの体内では予想外の反応が起きていた。
 偽神細胞を摂取するまでは良かった。しかし、生憎彼女の身体には――“先客”がいたのだ。先客は新たな侵略者を許さない。食い合いながらリグに発現した人狼と偽神は、主導権を奪い合う。其れは最早、リグに調整出来るものではなく。
 自覚なき咆哮と共にリグが打ち出した無数の気流刃が、デミウルゴスを捉える。
 ――斬られる前に斬る。
 其れは人狼と偽神が肉体を守る為に出した同一の答え。
「ぅや、リグさん間合い外から? すごぅい……でしたらっ」
 紅は足止めに徹する。溢れ出て流れ落ちる紅の血。其れ等が糸となってデミウルゴスに絡み付き、紅朧月がリグの前、全てを弾き護る盾となる。
「痛みには、慣れてますッ……!」

 だから、この身を賭してでもリグさんを守るですよ!

 リグは苦しみと痛み、移ろう自我の中、其れでも紅に守られているのを感じていた。
 くーちゃんが足止めしてくれている。戦友だと背中を預けてはいるけれど、傷付けさせる訳にはいかない。
 ならば、と更に刃を放つ。意識がブレて、フラついて、意識を失うまでリグは気流の刃を振るう。
「……まだだ……! もっとだ!」
 デミウルゴスが不意に吼えた。
「もっと俺に剣を振るえ! 俺に聞こえる声を……打ち払え! 出来ないならお前を殺す!」
「ぅや。何かに目覚めさせてしまいましたか」
「丁度良いわ、私達も救うために来た訳じゃないもの」
 救うための力じゃない。そんなお綺麗なものは持っていない。
 あるのは限られた席を命懸けで奪い合う生き汚さだけ。
 ――貴方の椅子、空けて貰うわよ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
さっさと細胞液を寄越せ
副作用?ンなものはどうだっていい
勝つ為に必要なことは全て容認する それだけだ
痛いだの苦しいだのは、とっくの昔に皿から溢れてんだ
今更増えたところで、何も変わりゃしねえ

Void Link Start
エクストテンド──『Void Hex』
細胞液を接種…始めよう
仕掛けるのはゴリゴリのインファイトだ
一気に肉薄して、二刀化したナイフと蹴りで攻める

その剣…何かあるんだったな
こいつは漆黒の虚無──即ち、骸の海だ
過去を司るが故に、生まれた過去を消去して無かったことにする
お前は何も発動しなかった
それが真実…そして、ここからお前が死ぬのも、変わらない真実だ

痛みと苦しみで、俺は今日も生きられる




「さっさと寄越せよ」
「……良いのか? これはお前達でも」
「うるせェな、良いって言ってんだ」
 グリモア猟兵の言葉を切り、奪うように細胞液の注射を取った。そうして躊躇いなく首に刺して、グリモアの門を潜った。ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)はいつもそうだった。勝つ事が第一で、己の身体や生死などは二の次。出来るもんなら己の死体すら操って勝ってしまうような、そんな男だった。勝つために必要なら、どんなデメリットとて容認する。構わない。例え其れが己を蝕み、天地すらわからなくなる苦しみを与えても。細胞の一つ一つを破壊されるのが判るような痛みを与えても。其れでもヴィクティムは構わなかった。
 だって、痛いだの苦しいだのは、とっくに皿から溢れてんだ。今更溢れる量が増えたところで、何も変わりゃしねえ。

 ――ァァァアアアアアア!!!

 其れは、誰の咆哮だったのか。
 デミウルゴスの巨剣が、ヴィクティムの二振りのナイフがぶつかり合う。偽神細胞がある今なら、寧ろインファイトが好ましい。其れがヴィクティムの頭の中で弾きだした答え。
「……其の剣」
「何だ……!」
「何かあるんだったな」
「お前こそ……何を仕掛けた?」
 デミウルゴスは気付いていた。ヴィクティムを覆う其れの正体に。デミウルゴスはただ、其れをどうとも思わなかっただけだ。一撃、二撃、撃ち合えば判る。アレは何か判らないが、己の一撃を“消失させる”何かだ。斬撃も、衝撃も、何もかもを打ち消してしまう何か。ヴィクティムは流石だと笑った。
「カミサマは一味違うってか。そうだよ、こいつは骸の海だ。お前らにとっての母なる海さ。過去を司るがゆえに、生まれた過去を消去してなかったことにする。……判るか?」
「……俺の全てが」
「そう、無かった事になる。お前は、何も、起こさなかったんだ」
「……そうだったら、どれだけいいか……いいや。いいや! いいや違う!!! 俺の全ては既に無意味だというのに!!! 何故お前らは俺に縋りつくッ!!」
「…――ッ!!」
 巨剣が振動を放つ。其れはヴィクティムに――いや。彼の中に注入された偽神細胞に反応する。強毒となれと命令する。当然ヴィクティムの中にいる偽神細胞は其れを拒否するし、デミウルゴスの剣が放った細胞そのものは過去として捻り潰される。しかしだ。
「う、ッ……ぐおあ、あああああ゛、あ゛あ゛ッ!!!」
 痛みがヴィクティムを襲う。痛みで生きられる? いいや、痛みで死に近づくのだ。其れが生きるという事だ。強毒化を拒む偽神細胞は活発化し、ヴィクティムの肉体を蝕む。拒絶反応そのものを殺せない。殺してしまったら、ヴィクティムの一撃は通らない。故に彼は、この痛みに耐えねばならない。
 ――耐えるんだ。
 ――耐えられるか?
 ――耐えられるさ。いつだってそうしてきただろ?
 そう、彼はいつだってそうしてきた。死にそうになっても、死にたくなっても、無謀でも、……顔を上げてニと笑ってみせれば、全てうまくいったような気になる。そうして全部、巧くいってきたんだ。

 足の痛みを打ち消す為に駆ける。手の痛みを打ち消す為に、ナイフを振るう。一気に懐に入り込まれたデミウルゴスは、胸元に深々と十字の傷を打ち込まれた。

「……俺に、何も求めるな……!」
「残念ながら、死ぬこと以外求めちゃいねェよ」

 安心しろ。俺はそいつらとは違う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーファス・グレンヴィル
躊躇いなく打つ一撃
首から流れ込む偽神細胞

どくどくと鼓動が脈打ち
激痛も苦しみも襲い掛かってくる
けれど、

…──ッは、

それすらも鼻で笑い飛ばす
挫けない、折れない、
膝を曲げるなんて以ての外だ
紅蓮の輝きが色褪せることもない

それでも呼吸はしづらくて
胸元で輝く緋色の星のネックレス
ぎゅっと握り締めれば
いつだって思い出せる気がした

オレが、此処に居る理由
オレが、此処で生きる意味

"アイツ"もいつだって
切なそうに笑うから──

なあ、オレが、
その苦しさから解放させてやるよ

痛みも、苦しみも、ある
それでも視線は敵から逸らさず
黒炎の槍を握り締めて笑う

気持ちで負ける訳がねえ
オレには帰るべき場所があるんだ

──さあ、終わらせようか!




 ルーファス・グレンヴィル(常夜・f06629)は躊躇わなかった。首に刺し、偽神細胞を注入する。流れ込んできた、と感覚した瞬間、どくんと身体が脈打った。首から身体を痛みが流れていく。体温が上がり、どうしようもなく熱さを感じる。あっという間に痛みなのか熱さなのか判らないものが身体を一周して、色々な箇所で主張を始めた。痛み。痛み。熱さ。けれどルーファスは、
「――ッ、は」
 鼻で笑い飛ばすのだ。挫けない。折れない。膝を曲げるなんて以ての外。紅蓮の輝きはいっそ血のように色濃くなって、生を掴もうとしていた。

「なあ。……オレが、その苦しさから解放させてやるよ」
「お前に出来るものか。……お前に出来るものか……! 俺には誰も救えない、だのに、」

 呼吸をする。そう意識していないと、仕方を忘れてしまいそうだ。
 首元で揺れる緋色の星を握りしめる。いつだって思い出せる気がした。オレが此処にいる理由。オレが此処で生きる意味。アイツもいつだって、切なそうに笑うから――
 黒炎の槍を握りしめ、デミウルゴスに向ける。
「出来るかどうかは、試してみないと判らねェだろ?」
 気持ちで負ける訳がない。
 お前に帰る場所はあるか? ないんだろう? オレにはある。帰るべき場所があるんだ。
 ――さあ、終わらせようか!

 槍と剣が撃ち合う。一撃、二撃。其の度に身体の痛みが増して、けれどルーファスは笑ってみせる。
 デミウルゴスは笑っていなかった。苦しそうな顔をしていた。笑い方すら知らない、可哀想な偽物の神様だ。
 召喚された竜爪の一撃を、デミウルゴスは巨剣で受け止める。だが其の重さに耐えかねて、数歩後ろにたたらを踏んだ。
 離れた距離を詰めたのはルーファスだ。槍のロングレンジでデミウルゴスを捉える。其の切っ先がデミウルゴスの肩を貫き……

 黒竜が、吼えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

上野・ユウヤ
一時的な偽神化つまり偽神の偽物、すっげー偽物ってことっすね!
面白そうっす!偽神細胞早速注射するっすよ!
偽神化 翼が生え皮膚が一部変化 自身も悪魔のようになる
ギャハハハハハ(突然の力と痛みに興奮状態)

UC【悪魔召喚「イエミーズ」】使用
敵UC【デミウルゴス・ヴァイオレーション】に対抗
生命エネルギーを操ってもらいある程度までは毒性偽神細胞を拒絶せず受け入れられる体に改造してもらう
かわりに[イエミーズ分の偽神細胞を何とか用意し強化の約束]で契約を持ちかけるっす

悪魔信仰って言葉があるぐらいっす 偽神と悪魔は相性いいはずっす!多分!

後は僕が死ぬ前に虚妄の塊剣で殴る
模倣偽神兵器が本物になる時が来たっすよ!




「一時的な偽神化……つまり偽神の偽物。すっげー偽物って事っすね!」
 明るく上野・ユウヤ(悪魔憑き/夢遊病者・f26142)は言ってのけた。実際彼は面白そうだと早速己の首に針を刺す。注入したと思った瞬間、痛みと衝撃が駆け抜けて、身体全体が細胞を拒絶し始めた。みしり、と背中が軋んで、まるで細胞を外に出すかのように翼が生える。更に皮膚が黒ずみ鱗のようになり、まるで其の様は――神ではなく、悪魔か何かのようだった。
「ギャハハハハハ!!!」
 突然得た力。襲ってきた痛み。全てを逃がそうとするかのように、ユウヤの脳内に興奮物質が迸り、笑いが抑えきれない。
 だが、ユウヤは冷静に己の状況を見ていた。このままでは自滅を免れないだろう。ダイモンデバイスを操作、生命エネルギーを操る悪魔“イエミーズ”に呼び掛ける。
「オオオオオアアアアアアアッ!!」
 其の間にもデミウルゴスの猛攻は続く。衝撃波を放ち、其処に強毒化した偽神細胞を仕込む。ユウヤはイエミーズとの対話を続けながら其れを避けなければいけなかった。僅かに掠めて、身体が痛み、重くなる。このままでは痛みで狂い死んでしまうかもしれない。

 ――そんなのはごめんっすからね!

 イエミーズに契約を持ちかける。生命エネルギーを操る彼ならば、毒性細胞を受けても拒絶せず受け入れられる体に変えられるはずだ。
 其れを提案すると、出来る、とイエミーズは言った。

 ――ならば、対価をよこせ。
 ――……。あなたの分も偽神細胞を用意するっす。悪魔信仰って言葉があるくらいっすから、きっと悪魔と相性がいいはず! 其れであなたを強化する! これでどうっすか!?

 悪くない、と悪魔が……笑ったかどうかは定かではないが。
 兎に角此処を生き延びなければ、イエミーズの分の細胞は用意できない。痛みが段々引いていく、悪魔の力を感じながら――ユウヤは斬り込んできたデミウルゴス目掛けて虚妄の塊剣を振り下ろした。其れは模倣偽神兵器だったもの。でも今は違う。本物になる時が来たっすよ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
人に救って欲しいと望まれた者の方が救いを求めていた、って感じか
それは皮肉というかなんというか……
ともあれ、今は戦うしかないと覚悟を決めて、偽神細胞の注射を打つ

拒絶反応に苛まれる中で、なんとか神刀を引き抜いて神気を身に纏って身体能力を強化
尤も、この痛みを耐えて神気によって能力を盛ったとしても、積極的に動いて攻撃を仕掛けるのは厳しそうなので、弐の型【朧月】で防御の構え
まずは敵の攻撃を見切り、受け流す事だけに集中して立ち回る

拒絶反応に慣れて十分に動けるようになったなら、此方からも攻勢に出る
万全とはいえないが、先程に比べれば雲泥の差だ
少しだけ余裕をもって攻撃を受け流し、渾身の反撃を叩き込む




「人に救って欲しいと望まれた者の方が、救いを求めていた、か」
 其れは皮肉というかなんというか、だな。夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は巧い言葉を捜せずに、其れ以上は口を噤んだ。
 敵ならば戦うしかない。話し合うフェイズなんてとっくに過ぎ去っている。だから彼は覚悟と共に、頸に注射針を突き刺した。

 ――痛い。
 神刀を抜く。
 ――痛い。
 神気が身体を巡る。
 ――痛い。
 身体が強さを増す。其れに合わせて痛みまで増して、鏡介は流石に片目を細めた。
「……やめろ……やめろ、俺に、俺に何も求めるな――!!」
 怒りのままに振舞うデミウルゴスに、能動的に仕掛けるのは難しいだろう。痛みに耐えて能力を盛っても痛みと苦しみで脚運びに支障が出る。鏡介は構えを変える。弐の型、朧月。防御を主とする構えだ。
「アアァァァアアアアッ!!!」
 咆哮と共に、デミウルゴスがやたらめったらに斬撃を繰り出す。鏡介はぎりぎりで其れを見切り、最小限の動きでかわす。だが相手の射程は見た目の3倍、見て測るのは難しい。なんとかかわして受け流す事を繰り返す。
「絶えろ! 絶えろ、絶えろ、絶えろォオオオオッ!!」
 其れは、誰に言っているのか。
 デミウルゴスの猛攻を受け流すうちに、彼の癖が判って来る。癖が判れば避けやすい。拒絶反応の苦痛がある程度までやんだ頃、鏡介はようやく一歩自分から前に出た。
 ――動きやすい。
 其れは苦痛の中でも思った事。足のもつれはない。異物感は拭えないが、痛みは視界を邪魔する程ではない。
 万全で戦えるなどとは思っていない。痛みが僅かに癒えてさえいればいい。
 そしてもう幾度目かになる受け流し――其処から一気に神刀を滑らせて、カウンターを仕掛けた。
「――ッ!?」
 刀は水の上を滑るようにデミウルゴスの利き手を引き裂き、其の頬に深い斬り傷を刻み込む。
 踏み込んですれ違い、数歩。追撃させぬとデミウルゴスが真後ろへ剣を振る。鏡介は其れを跳躍して真後ろに避け、着地した。
「……やっと動けるようになった」
 反撃の時間だと、鏡介は神刀を正眼に構え直した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
苦しい
怖い
助けて
やめて
そんな声がいつからからぶの耳にも届くよーになってた
ユメを拾えば拾う程もっとおーきな絶望が聴こえるんだ
なんでアイツだけ
ワタシもタスケテよ
置いてかないでって
なんでヒトはカミサマを作るんだろーな
ううん
それはきっと一人じゃどーにもできなくて
だけど誰にも頼れない時に
ヒトは空を仰ぐんだ
でもホントはカミサマだって
きっと誰かを頼りたいなん

らぶはな
誰もが手を取り合って互いに頼れるセカイを目指してる
それがヒトのユメ
らぶの希望だから
お前もずっと頼られて疲れちゃうよな
たまには甘えて良かったんだと思うのん
ホントはね

細胞は打たないって決めたんだ
だってらぶには
セカイの皆がついてん
だいじょーぶだ
アポカリプス・ナインはゼッタイに負けない

らぶのバットは笑顔を灯す為に振るうの
ラビットファングは明日を切り拓く為にガリガリ回して
ラビットブレスの炎は闇を照らす為の朝日なんだ
しょーがねーのん
らぶが慰めてあげる
だってもー疲れたでしょ?




 苦しい。
 怖い。
 助けて。
 やめて。

 そんな声が、いつから聞こえるようになっていたんだろう。
 歩み来るデミウルゴスを前にして、ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)は考えていた。

 なんであいつだけ。
 わたしも助けてよ。
 置いていかないで。

 ユメを拾えば拾う程、耳を澄ませば澄ますほど、悲しみの声は大きくなって。だからこそ、ラブリーはユメを売る大ショーニンになりたいと願った。
「なんでヒトはカミサマを作るんだろーな」
 人はきっと、一人じゃどうにもできなくて、誰にも頼れなくなってしまった時に空を仰ぐのだろう。カミサマ、見ているのですかって。どうにかならないものかなって。
 でも、カミサマは何処を見ればいいのだろう。カミサマだって、ほんとはきっと誰かを頼りたい時があるはずなのに。
 ぎゅいん、とチェーンソーのエンジンを噴かす。気付いたデミウルゴスが巨剣を構え、宙を振り抜く。衝撃波が迸り、ラブリーはチェーンソーを構えて其れに耐える。
「細胞は打たないって決めたんだ」
「……」
「だってらぶには、セカイの皆がついてん。だいじょーぶだ、アポカリプス・ナインはゼッタイに負けない。……らぶはな、誰もが手を取り合って互いに頼れるセカイを目指してる。其れがヒトのユメ、らぶの希望だから」
 駆け出す。デミウルゴスに思いっきり、ラビットファングを突き立てる。チェーンソーがデミウルゴスの皮膚を削り肉を抉って、痛みにデミウルゴスが吼えた。暴れる腕に押しのけられて、後ろに数歩よろける。
「お前もずっと頼られて、疲れちゃうよな。たまには甘えて良かったんだと思うのん。ホントはね」
「……頼る? 甘えるだと?」
 デミウルゴスの金目がラブリーを捉える。ラブリーはラビットブレス――火炎放射器を手にして、今度は炎をデミウルゴスに浴びせかけた。
「誰を頼れというんだ。誰に……甘えろというんだ。俺には誰もいない。俺には何も出来ない……そうだ! 俺には何も出来ないのに、声ばかりが求めて来る! 何処の誰とも知れないやつらの声が!」
「っ……らぶがいるよ。らぶが慰めてあげる。……だってもー、疲れたでしょ?」
「うるさい! うるさい! うるさい! 俺は……俺は……」
 其れはまるで迷子のようだと、ラブリーは思った。
 だからこそかもしれない。強すぎて、迷子になっちゃったん。強すぎて、誰にも頼れなくなったんな。
 もう良いのん。海にお帰りよ。
 明日はこのラビットファングで切り開くから。明日の朝日が弱ってたら、ラビットブレスで真っ赤に染めるから。
 だから、お眠りよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
迷いなく首に刺すぜ。ヤツを止められるなら安いモンだ。
頭に響く声。俺にも覚えがある。俺の場合『全てを殺して破壊しろ』なんざ、センスの欠片もない世迷い事だが。
ヤツの望みは聞いてる。良いぜ。その依頼、俺が請け負った。

苦痛は顔に出さず。額にはじわりと汗。
よぉ、カミサマ。ご機嫌いかが?
ペースは崩さず。魔剣を顕現し正面から打ち合うぜ。
不利は勿論、簡単に勝てるなんて思っちゃいない。
それでも――引けない理由がある。
止めるぜ、アンタを。
ギリギリの状況でUCを発動。首を飛ばされる直前?胴を払われる直前?このイケメン顔に傷が入る直前?どれでも構わねぇさ。
寿命も苦痛もくれてやる。それと引き換えに――アンタに安息を。




 いつだってカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、物事をスマートにこなしてきた。余裕をもって、笑顔と共に。そうしてきたから今回だって、するりと注射を取って首に打った。躊躇など一つもなかった。
 痛みが身体に回り、鼓動と共に身体が揺れる程の衝撃が走る。其れでもカイムは笑ってみせる。他の誰でもなく、己の矜持の為に。
 ――けれど、声がするのだ。
 救いを求める声ではない。

 『全てを殺せ。破壊しろ』

 センスの欠片もない世迷言だ。肩を竦めたくなる。
 だからカイムは聞こえないと決め込んで、言うのだ。

 ――ヤツの望みはきいてる。
 ――良いぜ。其の依頼、オレが請け負った。

「よぉ、カミサマ。ご機嫌いかが?」
「俺は神じゃない……! 俺には何も救えないのに、勝手にこいつらが……!」
 カイムの額には汗が滲んでいた。白銀の髪が濡れて、僅かに貼り付いている。其れでも彼はいつものスタンスを崩さない。崩すことを、己に許しはしない。
 魔剣を手に、やりとりは手短に、要件をこなす。すなわち戦闘だ。
 デミウルゴスの巨剣が唸る。其れを受け流すように弾くカイムの魔剣。固い音がして、数度噛み合う。――不利だ、とカイムの戦闘本能が告げていた。不利で結構。カイムは笑った。其れくらいの方が、ベットしがいがあるってもんだ。簡単に勝てるなんて、最初から思っちゃいないさ。
「其れでも――」
 打ち合いながら、徐々に後ろへ下がるカイム。巨剣の重さを受け流す度、痛みが重さとなって身体にのしかかってくる。過ぎた痛みってのは質量をもつんだな、なんて。頭の隅で考えていた。

 ――俺には引けない理由がある。
 止めるぜ、アンタを。

「五月蠅い、黙れ!! お前も、お前も、お前も!! 黙れッ……!!」
 剣を撃ち合い、戦闘にのめりこんで尚、囁くように祈りが聞こえる。
 苦しかった。何も出来ないのにどうして囁くのかと嘆く時間ももう過ぎた。目の前の敵の頸目掛けて、デミウルゴスは巨剣を振るう。一息に刎ね飛ばせば、一人分くらいの祈りは消えるんだろうか。
「ああ。其れがオーダーだろ」
 カイムの魔剣が、今度こそデミウルゴスの剣を真正面から弾き飛ばした。其れは今までが小手調べだったのではない。増大した身体能力による力任せの弾き飛ばし。
 魔剣が空を切り裂いて、風が啼いたような気がした。遅れて、どざり、と何かが落ちる音。

 ――デミウルゴスの異形の腕が、後方かなたに斬り飛ばされて墜ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルドラ・ヴォルテクス
◎アドリブ連携OKです

慟哭が聴こえる、本当に救われるべきは、おまえだったのかもしれないな。

これは嵐の剣の宿命。
ただ己の生命を全うしたかった、おまえへの手向けだ。

『オーバーロード発動、左腕インドラ、右腕スカンダ、闘神形態解放』

【破壊のマハーカーラー】
オブリビオンを破壊する者への覚醒、限界突破し、力を解き放とう。

デミウルゴスが、マハーカーラーを吸収したら、それこそが俺の策。マハーカーラーはオブリビオンの破壊者へと変貌する力、取り込めば、これは己の血を溶かす猛毒となる。

決着は、お互いの力量と魂の強さが決めるだろう。
オーバーロード化した俺は、覚悟と両腕の力を双剣のチャンドラーエクリプスに込めて、全身全霊の一刀をもってデミウルゴスを断つ!

デミウルゴス、おまえは孤独だった。共に歩む者がいて、喜びも苦しみも分かち合える友がいたなら、おまえの魂は救われていただろう。
おまえを苦しませる祈りはもう届かない、おまえの魂が求めた安らぎを。神に非ずとも、ヒトに非ずとも、それは等しく齎らされるものだから。




 慟哭が聞こえる。
 ルドラ・ヴォルテクス(終末を破壊する剣“嵐闘雷武“・f25181)は風の中に其れを聞く。
 彼はストームブレイドであるが故に、寿命を数え数え生きている。そう、今デミウルゴスと対峙しているこの時にも、秒針は進んでいる。
 ――本当に救われるべきは、お前だったのかも知れないな。
 ルドラは静かに目を閉じ、開く。
 これから見せるのは、嵐の剣の宿命。
 ただ己の生命を全うしたかった、お前への手向けだ。

 左腕のインドラ、右腕のスカンダを解放する。
 闘神の姿を取り、ルドラはオブリビオンの破壊者となる。ばちばち、と左腕でインドラが哭いている。其れは破壊そのものだ。
 ――何処か穏やかに、デミウルゴスは其れを見て構えた。さっきまで声に狂乱していた男とは思えない、静かな構えだった。もしかすると、祈りは遠ざかっているのかもしれない。片腕がなくとも構える様は、間違いなく一人の戦士だった。
「……」
 いくぞ、の一言も、要らなかった。
 二人はぶつかり合う。デミウルゴスの巨剣がルドラを迎え、ルドラの拳が巨剣を弾く。幾度となく打ち合い、デミウルゴスの剣が破壊を食らう。しかし其れも計算の内。
「……ぐ、ッ」
 口から零れる血を抑えるように噛み締めると、デミウルゴスは其れでもルドラに破壊を吐き戻す。其れをルドラは全身で受ける。覚悟なら既に終わっている。双剣に覚悟と両腕の加護を宿し、全てを書けた一刀を――!

「ぅおおお、おおおおおああああああッ!!」

 ……。
 デミウルゴス、お前は孤独だった。
 共に歩むものがいて、喜びも苦しみも分かち合える友がいたなら、おまえの魂は救われていただろう。
 お前を苦しませる祈りは、遠くなっているか? 俺の一太刀で、また遠くなっただろうか。
 おまえの魂が求めた安らぎを、せめておまえに叩き付けよう。
 神に非ずとも、ヒトに非ずとも、其れは等しく齎されるものだから。
 そして、いつか。遠くないいつか、俺も――

大成功 🔵​🔵​🔵​

丸越・梓
アドリブ、マスタリング歓迎

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躊躇いもなく偽神細胞を己に打つ
感覚は生まれつき鋭敏故に
痛覚も漏れず鋭く
然し歯を食いしばって意地でも呻き声一つあげず
顔を上げて相対する

苦しいのは、俺ではない
苦しんでいるのはデミウルゴスだ
ならば助けたいと純粋に思う
然しその手段が彼自身を骸の海に帰すことでしかないことに
己の無力さを痛感しながら

「何が苦しいか」と敢えて問おう
全て吐き出していくといい
貴方の心を俺が覚えている
どうしてほしいかとは敢えて問わない
今から俺が行うことは俺のエゴだ
責任は俺にある
だから、

「──もう、休め」

我が刃にて断ち斬るは
貴方を縛り付ける鎖
願うは
唯、安息を




 丸越・梓(零の魔王・f31127)は躊躇わない。猟兵だから、という訳ではない。彼の気性ゆえのもの。
 ただ、彼は鋭い五感を持つために――五感の外である痛覚さえも鋭かった。無数の針が体内で蠢くような気味悪さと痛みに、知らず奥歯を噛み締める。其れは呻き声を止めるためでもある。
 声などあげるものか。
 この程度で呻いていては、――眼前の敵を取り逃す。
 相手は片腕を失い、其の痛みに集中するかのように目を閉じていた。心なしか、何処か安らかにも見えた。
「……痛みを感じている間は、声が已む」
「……そうか。……なあ、何が苦しい」
 梓は問う。せめて彼が吐き出してくれればと願う。
 苦しんでいるならば、助けたい。其れが骸の海に返すという手段でしかなくとも、そうならば、そうしたいのだ。
「……俺に何も出来ない事が、苦しい」
 穏やかにデミウルゴスは言った。だくだくと肩からは血が流れ出て、大地を濡らしている。傾いた鉄骨、ビル群は静かに、二人を見下ろしていた。
「……他には」
「ないな。……お前達と打ち合っている間は、全てを忘れられた。声が小さくなって、聞こえなくなる。其の間だけ、俺は俺でいられた」
「そうか」
 戦場でなければ。そう、梓は思う。
 けれど、そうではなかった。此処は戦場で、二人は向き合っていた。違う過去はなく、導かれる未来は一つしかない。
 これから刃を抜くのは、梓のエゴの結果だ。デミウルゴスがそうしてくれと言った訳ではない。この寂しい亡霊に、眠りを与えてやりたい。そう思ったのは梓で、其の為に刀を抜く。だから、どうしてほしいかなんて訊かない。
 痛みの中、梓は刀を抜く。其れでも覚えておきたい。デミウルゴスの心を。戦ったという事実を、覚えて、刻みつけておきたい。祈りの声に苦しんだ、偽りの神がいた事を、覚えておかねばと――

「――もう、休め」

 振り切るは一太刀。
 其の刃にて断ち切るは、デミウルゴスを縛り付ける鎖。
 ただ、彼に安息を。永遠の安らぎを、どうか、と。





●After
 剣が遠い。
 腕があるような気もするが、きっともうないのだろう。
 祈りの声が、微かに聞こえる。
 もう俺は死ぬのだろう。戦いに戦いを続けて、気付けば祈りの声はすっかりと遠くなっていた。

 ――吹き抜ける風。
 こんな音をしていたのだな。

 痛みはなかった。
 ただ、眠い。だから眠りに落ちる。
 永遠に醒めないものであろうと、俺にはどうでも良かった。
 やっと。
 やっと、安らげる。

 しじまの中に、俺は、逝ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月21日


挿絵イラスト