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アポカリプス・ランページ⑰〜パクス・オブリビア

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●パクス・オブリビア
「……おや? またしても私を見ているね、猟兵の諸君」

 プレジデントは再びの混線を感じ取り、猟兵たちに声をかける。

「今度は予知というやつかな? グリモア猟兵と呼ばれる一部の猟兵が我々の作戦を読み、未然に防ぐべく行動をしているのは知っているとも」

 究極の先読みだな、とプレジデントは笑う。

「さて、先日の予兆で私は所信表明演説をさせて頂いた訳だが、我ながら素晴らしいマニフェストと自負している。全人類のオブリビオン化、これこそ究極のパクス・アメリカーナ……いや、パクス・オブリビアと言うべきかな。オブリビオンによってもたらされる平和……全ての世界は永劫の停滞と引き換えに恒久平和を獲得する。猟兵諸君もお役御免ということだ。もちろん、その前に全ての幕引きとなる最終戦争が待っているだろうがね……オブリビオンの支配の下で『悪の枢軸』と化した猟兵諸君を徹底的に撃滅する最終戦争だ」

 パブリック・エネミー・ナンバーワン。プレジデント曰く、それこそが第六の猟兵に代わる新たな称号だというのだ。

「とは言え、諸君ら猟兵も私の行動を掣肘したいはず。当然だ。今の私は『まだ』世界にとって敵なのだからな。では、民意を問うとしよう。それが民主主義というものだ……もちろん、選挙という手段は使えんが」

 ならば、民意を示すのは何か。それは各世界の想いを背負った拳だという。

「私が装備するこのグローブ、仮に『民主闘拳』『共和闘拳』と名付けようか。私はこの装備を用いて戦う。これが私の戦装束とでも呼ぶべきかな。この拳には、ピルグリム・ファーザーズに始まり、これまでの歴史の中で生まれては死んでいった全てのアメリカ国民の支持が込められている。何故ならば私はアメリカ合衆国大統領、人民の人民による人民のための政治の代表者だからだ」

 米国民からの支持率、事実上100%。そう彼は嘯く。

「諸君はこの私に対抗せねばならない。これまで背負ってきた世界の全ての人民の意思を、想いを代表するものとして。今を生きる者の代表者として。その思いこそが諸君ら猟兵を導くだろう……オーバーロードの高みへと!」

 彼が展開する戦場では、今を生きる者の想いを背負うことで潜在能力を覚醒できるのだという。

「始めよう、今を生きる者の意思と、生まれては死んでいった全アメリカ国民の信任、どちらが世界の命運を握るかの権利を問う……Election Dayを!」

 プレジデントは両手を広げて宣言する。それは明確な猟兵たちへの宣戦布告であった。

●拳で語れ、己のマニフェストを
「ご覧のように、敵はアメリカという国家の歴史そのものですわ」

 グリモアの予知を動画化して再生した南六条・ヴィクトリア三世(株式会社UAI最高経営責任者(現職)・f30664)は、その内容を受けて静かに呟く。

「彼は今、アポカリプスヘルの世界でかつて覇権を握っていたアメリカという国家の過去全てを代表してわたくし達猟兵に勝負を挑んできていますわね。パクス・オブリビア……オブリビオンの支配の下での恒久的平和と繁栄こそがプレジデントの狙いですの。絶対に食い止めねばなりません」

 彼は拳、即ちボクシングでの決闘を望むという。そして、彼の力は猟兵にも及ぶ。いまを生きる者の想いを背負うことで、猟兵達は自分の潜在能力──即ち、真の姿に覚醒した状態で戦闘を行うことが可能だ。

「場所はすでに特定できておりますわ。旧アメリカ首都、ワシントンD.C.ですわね。ここは町並みは完全に復興されているあたり、プレジデントが如何に辣腕かが伺えますわ。オブリビオンストームの被害も受けていないのでしょうね」

 そのワシントンD.C.の中心部に位置するワシントン・モニュメント──アメリカ合衆国初代大統領、ジョージ・ワシントンを称賛すべく聳え立つ白亜の塔の下で、プレジデントは猟兵達を待ち構えている。

「ところで、アメリカ合衆国の選挙制度についてご存知かしら。一見すると直接大統領を選んでいるように見えますが、実は違いますわ。アメリカ国民は一般投票の日に、『その大統領に投票する』と誓約した選挙人に対して投票を行うのです。その後、選挙人が大統領候補に対して直接投票し、晴れて大統領が決まる……という、間接選挙の形を取っているのですわ」

 これを今の構図に当てはめれば、今の世界を生きるものの代表たる猟兵を各世界の人々が持つ「今を生きるという潜在意識」が選挙人として猟兵を信任し、その信任を受けた猟兵たちがプレジデントとの直接選挙……即ち、ボクシングによる決戦を戦うことになるのだ。だからこそ、猟兵達は数多の世界の声なき声に応えなければならない。

「Mr.プレジデントとの拳による討論を制し、わたくし達猟兵のマニフェストを叩き込み、民意を示すのですわ。パクス・オブリビアなんて、言ってしまえば停滞の中の繁栄。そこに競争原理は働かず、経済も動かず、面白みのない世界が出来上がるだけですわ」

 市場経済が社会を動かす資本主義の恩恵を受ける立場として、ヴィクトリアはプレジデントの思想を嫌悪する。故に、プレジデントは倒さねばならないというのだ。

「良いかしら? 必ずや勝利を。わたくしたちの双肩にかかる、全世界の民意に賭けて!」

 グリモアが光り、ポータルが開く。ワシントンD.C.の町並みが見える。そこはさながらUDCアースの如き雰囲気であったが、人の気配はほとんどない。空虚な都市がそこにはあった。

 その空っぽの都市で始まるのは、拳のぶつかり愛による一大選挙戦。勝つのは、猟兵か、それともプレジデントか……今、その民意が問われる。


バートレット
 どうも、バートレットです。
 このシナリオを書くためだけに何故か大統領が出てくる某ステルスアクションと某ロボットアクションゲームをプレイしてたらシナリオ出すのがすっかり遅くなっちまいました、すみません。

 ということで今回はプレジデントと拳による選挙戦を繰り広げるシナリオでございます。プレイングボーナスはこちらです。

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 プレイングボーナス……真の姿を晒し、ボクシングで戦う(🔴は不要)。
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 真の姿のイラストがある方はイラストをもとに描写します。イラストが無い方はプレイングに真の姿の描写を入れていただければOKです。「なんかオーラをまとっている」「姿は変わらないが戦闘力は上昇した」でもOKです。
 「今を生きる人々への想いを語る」「プレジデントのマニフェスト『パクス・オブリビア』を論破する」「自分の信念をマニフェストとして語る」のどれかの要素がプレイングに盛り込まれていれば、さらにボーナスが上乗せされます。

 今回はどちらかと言うと心情寄りっぽくもあるので、好きなだけ思いの丈を吐いてください。プレジデントも拳を交えつつ、同時に言葉を積極的に投げかけてきます。今回は頑張って皆さんの思いの丈を吐き出す姿を描写させていただきます。

 OP公開後即時受付を開始し、受付状況はタグにてお知らせします。可能な限り全員の採用を目指しますが、キャパシティ次第では皆様のプレイングを採用しきれない可能性があること、予めご了承ください。また、その他諸注意はMSページをご確認ください。

 それでは、皆様のアツいプレイング、そしてマニフェストをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『プレジデント・ザ・ショウダウン』

POW   :    アイ・アム・プレジデント
自身の【大統領魂】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    プレジデント・ナックル
【竜巻をも引き起こす鋼鉄の両拳】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    アポカリプス・ヘブン
【対象を天高く吹き飛ばすアッパーカット】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊だが、今回は三人とも眠る

第四『不動なる者』盾&まとめ役武士
一人称:わし 質実剛健古風
武器:黒曜山(グローブ形態)
真の姿ver.2:黒石鏡(21/3/11納品)

貴殿、でかいな(生前身長160cmになってる)
まあよい、わしとてこうして戦いたくなったのだ。他の武器は応援団たる陰海月と霹靂に預けた

わしは否定する。わしらはそのオブリビオンに殺されたゆえにな
停滞は何も生まぬよ。その地に生まれ得るはずだった子らも、発明も。便利な物も。

故に我らは悪霊となってまで戦っておる。支持は…ほれ、応援団がおるであろ?
だから、わしはこの拳にて殴るのだ
ついでにUCコピーできたらするが、まあ無理はせぬ


塩崎・曲人
真の姿:ちょっと髪の毛が逆立つ

全人類オブリビオン化による恒久平和ァ?
寝言ほざいてんじゃねぇぞ大統領
パクス・オブリビア、停滞はするが平和にゃならねぇ
『オブリビオンが人間と同等の知能を持ってる』時点でな
―人間もオブリビオンも、争いを止められるものかよ。同じぐらい愚かならな
吸血鬼の同族殺しとか、実例もあるしな

ンなこともわからん奴に世界は渡せねぇし
個人的にもテメェはぶっ飛ばしてぇ
同じ奴に2度負けるのは我慢ならねぇからな!
「あん時嫌ってほど刻みつけられたテメェのツラ!今度こそ凹ませてやるぜオラァァ!」

ステゴロ勝負がお望み?
望むところだぜ
男の勝負は、やっぱこれだよなぁ!


バルタン・ノーヴェ
アドリブ連携歓迎
真の姿軍装

民意と宣うでありますか。
では問うであります。今、ここに。貴殿の導く民がどこにいる?
見せかけだけの廃墟のどこに、アメリカの人民がいるというのでありますか?
死んでいった方々が全てオブリビオンになるとでも?
永劫の停滞など望まぬ人が、子々孫々の安寧を望んだ者が、一人としていなかったというのでありますか?

否定します。
千年の戦争を経てもなお、未来を信じた人がいると知っています。
子どもたちに平和な世界を見せようと、命を賭した人を知っています。
これから先の、全ての未来を犠牲にするというマニフェストは、否定させていただきます!
皆の未来のために! 貴殿を討つ!

「六式武装展開、雷の番!」


ガトウ・ガドウィック
拳で勝負だと!?これは、なんという、熱き誘いだ!その殴り合い、受けて立つ!

真の姿……それ即ち灰燼拳。より、先へと進んだ己なり。
そして拳を用いた決闘、その響きが鼓舞してくれる……勇気をもって、クロスレンジで戦おう!ボクシングを加えたアレンジ体術だ!
地形をも破壊する怪力をもって、吹き飛ばすつもりで拳を叩きつけよう。
正面だけでなく、グラップルの技術を応用し、隙を見つけ側面へ暗殺者の如く回り込むぞ。
カウンターが来ても覚悟のうえ!裂帛の大声と共に、応えてみせよう……これは返礼、そして灰燼拳だ!

来たな敵のUC……。能力の限界を突破しろ、クロスカウンターでUC発動だ!
そしてその後、力溜めた拳を撃ち放とう!


リーヴァルディ・カーライル
…オブリビオンの支配の下での恒久平和…?
"それ"が為った世界がどんな物なのかお前は知らないのね

奴らが…あの傲岸不遜な吸血鬼共やヴォーテックス一族が、
生者が居なくなった程度で手を取り合い平和が訪れるとでも?

…お前のマニフェストは最初から破綻しているのよ
歪んで甦ったオブリビオンに夢を見過ぎているもの

「影精霊装」を闇のドレスに防具改造して真の姿の吸血鬼化を行い、
UCを発動し召喚した魂達を大鎌に降霊して手甲に武器改造を行い、
積み重ねた戦闘知識と肉体改造で強化した動体視力により敵の攻撃を見切り、
手甲に限界突破した闇の魔力を溜めて切り込み怪力任せに拳打を放つ

…停滞した暗い世界が、理想郷になどなるものですか



●猟兵VSプレジデント 5本勝負
「……オブリビオンの支配の下での恒久平和……? "それ"が為った世界がどんな物なのかお前は知らないのね」

 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は自身の出身世界たるダークセイヴァーの光景を思いながら、真っ向からプレジデントを睨みつけた。

「奴らが……あの傲岸不遜な吸血鬼共やヴォーテックス一族が、生者が居なくなった程度で手を取り合い平和が訪れるとでも?」
「悲しいことに、彼らはオブリビオン同士で争うことの無意味さに気づけていないのだよ。考えてもみたまえ。ダークセイヴァーという世界は封建制度に立脚している。ヴォーテックス一族も生者だった頃の考えから抜け出せていない。人民の人民による人民のための政治……我が国がここまで発展してこれたのは、ひとえに民主主義に立脚していたからだ。故に、吸血鬼やヴォーテックス一族のような政治思想は淘汰されていくものだよ」

 プレジデントは悲しげな表情を作り、頭を振る。

「つまり、彼らに対して蒙を啓くと?」
「最終的にはそこに行き着くのさ、自然とね。それこそがパクス・オブリビアだ」

 その答えを聞いて、リーヴァルディは鼻で笑った。

「馬鹿馬鹿しい。お前のマニフェストは最初から破綻しているのよ。歪んで甦ったオブリビオンに夢を見過ぎているもの」
「夢を見て何が悪い? かつて公民権運動の旗振り役となったマーティン・ルーサー・キング・ジュニアはこう言った……『わたしには夢がある』と。その夢はほぼ実現した。夢は叶えるものだよ。そのために私が動くのだ」

 プレジデントとリーヴァルディの主張は平行線をたどる一方だ。リーヴァルディは「影精霊装」を闇のドレスに防具改造して真の姿である吸血鬼と化す。次いでユーベルコードによって召喚した魂達を大鎌に降霊して手甲にその形状を変更させ、構える。

「御託は結構。後は拳でどちらが正しいか語るのみ」
「良かろう、では存分に拳で語るとしようか!」

 プレジデントも両の拳を構えて殴りかかる。リーヴァルディは積み重ねてきた戦闘経験からこれを見切り、反撃で力任せの拳打を放つ。技巧など一切凝らさぬ、力と力の打ち合いだ。

「なるほど、吸血鬼のちからとはこうも……!」
「……停滞した暗い世界が、理想郷になどなるものですか!」

 小細工なしの正面衝突。それは、互いの相容れなさがもたらした激突である。

 ◆◆◆

「貴殿、でかいな」

 リーヴァルディとの戦いが一段落したところで、選手交代。次にリングに上ったのは馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)だ。……ただし、今は第4人格の「不動なる者」こと内県・賢好が他の3人格を眠らせた上で主導権を握った状態だが。

 そんな彼の身長は現在160cm。プレジデントの長身と比べるとかなり小柄だ。

「私も白人男性にしては大柄な部類だからな。とは言え、体格差をカバーする手段も用意しているのだろう?」
「まぁ、な。わしとてこうして戦いたくなったのだ。他の武器は応援団たる陰海月と霹靂に預けた」

 周囲に控える陰海月と霹靂を見ながら、ふん、と鼻を鳴らす賢好。

「わしは貴殿の政策を否定する。わしらはそのオブリビオンに殺されたゆえにな」
「それは君が生者だったからだろう? 何故死者になってまで戦おうとする?」

 一切の動揺も見せずに問いかけるプレジデントだが、賢好も一歩も退かない。

「停滞は何も生まぬよ。その地に生まれ得るはずだった子らも、発明も。便利な物もな」

 故に、悪霊となってまでオブリビオンと戦うのだと、賢好は語る。

「わしの考えを、最低でもそこの応援団は支持しておるしな」

 グローブ形態の黒曜山を手に装着しながら、リングの傍に控える応援団──陰海月と霹靂に優しく視線を送る。霹靂も、陰海月も、今は固唾を呑んで主を見守るのみだ。

「なるほど、良かろう。その支持に見事答えてみせるがいい」

 プレジデントの両腕から放たれる竜巻が賢好を打ち据えるが、不動なる者の異名通り、耐えきってみせる。そこから反撃の鋭い拳打がプレジデントの顎を狙う。すぐさま拳を前に構えてこれを防ぐプレジデント。互いの攻撃を避けるでもなく、交互に放っては受け止める。まさに攻守のはっきりした戦いだ。

 それは、互いが背負った思いがあればこそだった。背負った思いから逃げられない2人は、互いの思いの重みを拳という形で放ち、受け止め、感じるのみである。

 ◆◆◆

「拳で勝負だと!? これは、なんという、熱き誘いだ! その殴り合い、受けて立つ!」

 3人目の挑戦者、ガトウ・ガドウィック(灰燼拳・f15641)は灰燼拳伝承者としての真っ向勝負を望む。

「拳法家か。果たしてボクシングスタイルがお気に召すかどうか……さぁ、始めようか!」

 2人の間に余計な言葉は不要、ただ互いの拳でどちらが上かを決めるのみ。

 ガトウの真の姿……それ即ち灰燼拳。より、先へと進んだ己なり。拳を用いた決闘こそ、彼の血を滾らせる。勇気を持って接近し、大地を砕かん勢いの先制攻撃。プレジデントはこれを受ければ、ビリビリとした刺激が全身に駆け巡るのを感じる。

「ほう、成程。猛々しい拳だ!」
「これが灰燼拳だ……!」

 正面からの荒々しい拳を振るったかと思えば、次は暗殺者のごとく回り込みながらの一撃。変幻自在の攻め手に、しかしプレジデントは的確に対応する。パワー、そしてアーツのぶつかり合いは互いに拳を極めたものだからこその読み合いと磨き抜かれた技の競い合い、そして力のぶつかり合い。

「そろそろ大技といこうか!」
「来るか……ならば!」

 眼前の相手を天高く吹き飛ばさんとプレジデントより放たれるアッパーカット。これに合わせるようにガトウも裂帛の大声を放つとともにクロスカウンターの形で拳を放つ。

「これぞ返礼の灰燼拳……ッ!」

 互いの拳をしたたかに受けた両者は、それぞれ後方に吹き飛ぶ。重い拳の衝撃を受けつつ、両者は同時に思う。

「「見事……ッ!」」

 ◆◆◆

「民意と宣うでありますか。では問うであります。今、ここに。貴殿の導く民がどこにいる?」
「ほう?」

 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は真っ向からプレジデントの視線を受け止め、そして問うた。民意を問う、その相手はどこにいるのかと。

「見せかけだけの廃墟のどこに、アメリカの人民がいるというのでありますか? 死んでいった方々が全てオブリビオンになるとでも? 永劫の停滞など望まぬ人が、子々孫々の安寧を望んだ者が、一人としていなかったというのでありますか?」

 バルタンの畳み掛けるような問いに、プレジデントはフッ、と笑う。

「今はここにはいない。確かにここは滅びに向かっている世界だ。そして、民意はすべからく統一できないもの。だが……それでも私は骸の海の住人、その絶大な支持を受けてここに立っている。民主主義とはそういうものだ。支持者がいる、それで十分。それでも君は否定するというのかね」
「否定します」

 バルタンはばっさりと切って捨てた。

「千年の戦争を経てもなお、未来を信じた人がいると知っています。子どもたちに平和な世界を見せようと、命を賭した人を知っています。これから先の、全ての未来を犠牲にするというマニフェストは、否定させていただきます!」
「なるほど、良いだろう」

 ストレートな否定の言葉に、プレジデントは瞑目する。ここまで真正面から否定されたのはいつぶりだったか、と。その上でかっと目を開け、拳を固める。

「ならば、それを拳で示してみせろ!」
「皆の未来のために! 貴殿を討つ!」

 互いの咆哮と共に、バルタンとプレジデントは拳をぶつけ合う。勝負は一撃。

「六式武装展開、雷の番!」
「これが大統領魂だ……!」

 クロスカウンター。その一撃は、プレジデントの頬をしたたかに打つ。一方、バルタンには拳が届かない。

「ふっ、ならばその未来、守ってみせろ……!」

 プレジデントはどう、と仰向けに斃れた。

 ◆◆◆

「全人類オブリビオン化による恒久平和ァ? 寝言ほざいてんじゃねぇぞ大統領。パクス・オブリビア、停滞はするが平和にゃならねぇ。『オブリビオンが人間と同等の知能を持ってる』時点でな」
「人間の知能はそれを越えられる、と言ったら?」

 塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)が断ずる言葉に、プレジデントは不敵に笑う。

「人間もオブリビオンも、争いを止められるものかよ。同じぐらい愚かならな。吸血鬼の同族殺しとか、実例もある……はっきり言うぜ。矛盾してるんだよアンタは。人間の可能性を嘯いていながら、その癖して可能性を閉ざす選択肢を選んでんだ」
「どうかな。吸血鬼が相争うのは『未来の可能性』を捨てきれていないからだ、と考えれば、むしろ可能性を閉ざしてやったほうが幸せと言えるのではないかね」
「わからねぇ奴だな……まぁんな御託はどうだって良いんだよ」

 曲人は拳を前に突き出してみせる。それは明確な挑戦、いや再戦の意思表示。

「別の出撃で俺は一度お前にぶっ飛ばされてんだ。リベンジさせろよ大統領」
「……ふっ、忘れてはいないよMr.ファイティングキッド。私の勝ち越しで有終の美を飾らせてもらおう」
「同じ奴に2度負けるのは我慢ならねぇからな! あん時嫌ってほど刻みつけられたテメェのツラ!今度こそ凹ませてやるぜオラァァ!」

  
 髪の毛を逆立たせ、闘志をみなぎらせる曲人。男の勝負は素手ゴロの戦い、それが美学だ。

「来たまえ、Mr.ファイティングキッド!」

 大統領も両の拳を構えた。瞬間、音速をも超えろとばかりのスピードで鋭い一撃が曲人に飛ぶ。それを見切る曲人。

「同じ攻撃は通用しねぇぜ!」
「だろうな! 今のはテストだ!」
「ほざいてろ! こっちの攻撃はどうだコラァ!」

 曲人がお返しとばかりにジャブを連打。一撃一撃が重いプレジデントに対して、曲人は手数で対抗する。しかし、プレジデントは彼が成長していることを見逃すわけにはいかなかった。

(あの時よりも……着実に成長しているな)

 一撃の鋭さ、切れ味、それらがかつて戦ったときよりも増していることを理解する。プレジデントの額には知らず汗が浮き出始めた。

(これは……負けるな、最悪の場合)

 応戦するプレジデントは余裕がなくなっていた。加えて、ここまでの戦いのダメージもプレジデントにはマイナスに響いていたのだ。

(いや、最悪の場合、ではない。これは……負ける!)

 プレジデントは確信してしまった。目の前の男には、もう勝てない。これが自分の、オブリビオンたる存在としての弱点、そして自分のマニフェストの欠点だとでも言うのか。

「こいつで終わりだァァァァ!」

 隙を捉えた曲人渾身のアッパーカットが、プレジデントの顎を捉えた。プレジデントはその渾身のアッパーを、甘んじて受ける。

「……見事だ、Mr.ファイティングボーイ……いや、名前を心に刻むとしよう」
「塩崎・曲人……それがたった今テメェをぶっ飛ばした男だ!!」

 大地に倒れ込んだプレジデントは、彼の名を心に刻み込んだ。その名の記憶はしっかりと骸の海に持っていこう、という決意とともに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

地籠・凌牙
【アドリブ連携歓迎】
政治なんざわからねえよ。
毎日可愛いちびたちに腹一杯食わせてやる為に学を討てた身だからな。
そのちびたちも今はいねえんだがよ。
ああ、死んださ。殺されたんだ……てめえらオブリビオンにな。

俺だけじゃねえ。俺の仲間、友人、関係ない赤の他人――みんながみんな大事なものを奪われた。
奪われるだけ奪われ、何もできない悔しさと奪われた悲しさに枕を濡らすことしかできねえ夜を数え切れない程過ごした。
お前の理想が叶えばそいつらは報われると思うか?

――いいや報われない。

俺たちには"今"しかない。

大事なモノを奪われたこの怒りを、憎しみを!!
全部ぶつけて何もかもを終わらせることでしか先に進めねえんだよッ!!!

俺は報讐者、過去に何もかも奪われた人たちの怒りを刻んで進む道を拓く者。
もうこれ以上、てめえらオブリビオンに何も奪わせやしねえ!!

【見切り】で回避か【激痛耐性・継戦能力・気合い】で踏ん張りつつ【カウンター】狙っていくスタイルでいくぜ。
【指定UC】は言いたいこと全部言い切って真の姿になってから撃つ。



●黒龍咆哮──Godspeed, and good luck to you.

 地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)に政治はわからない。毎日孤児院の仲間たちを食わせてやる為、若いときからずっと働きに出ていた。そのため学は捨ててしまった身だ。

 その仲間たちも今や、骸の海の住人だ。そう、もう死んだ。

「殺されたんだ……てめえらオブリビオンにな」
「つまり君の戦う動機は復讐か」

 なるほど、とプレジデントは頷く。

「しかし、その動機を真に達成するには君の孤児院の仲間……いや、敢えて君の意を汲み家族と呼ぼうか。彼らを殺したオブリビオン一人討てば済むはず。だからこそ問おう。何故君は猟兵としての使命に殉じている? 何故、君とは直接関係のないオブリビオンを倒すのだろうか?」

 凌牙はここへ来て、プレジデントに対して「強烈な違和感」を覚えた。このオブリビオンは自らの野望として大言壮語を吐いていながら、その実その野望を本気で叶えようとする意思が感じられない。これではまるで、自分を討たせることで猟兵をさらに強力な存在に鍛え上げようとしているかのような印象だった。あの予兆のときから感じていた違和感は、今こうして相対したことで膨れ上がったと言える。

 そして、今ここで交わされている会話ですら、自分が試されていると考えざるを得ない。ならば、と凌牙は開く。乗ってやろう、その試練。

「そもそもオブリビオンに何かを奪われてんのは俺だけじゃねえ。俺の仲間、友人、関係ない赤の他人――みんながみんな大事なものを奪われた。奪われるだけ奪われ、何もできない悔しさと奪われた悲しさに枕を濡らすことしかできねえ夜を数え切れない程過ごしたんだよ」

 だからこそ自分たち「今を生きる者」はオブリビオンとは相容れないのだ、そう凌牙は答える。

「猟兵にはそんな奴らの無念を背負って立ち向かうだけの力がある。だったら俺は猟兵としての使命に殉ずるだけだ。俺以外の奴らの思いも背負ってな」
「力には責務が伴うか。その点については同意しよう。だが、ならば私が提唱する『パクス・オブリビア』──それが成就すればどうだろうか? 全人類がオブリビオンへと変化すれば、そもそも奪うもの、奪われるものの関係性は消失する。全ての根源が永劫に断たれるのだ。変化には諸君ら猟兵という存在の抹消という痛みが伴うが、最終的には責務から解放される──悪くない話だと思うが?」

 プレジデントはなおも言葉を重ねる。見え見えの悪魔のささやきだ。だが、乗ってしまうものも少なくないだろう……猟兵であることの義務感や使命感を強く感じている者程この誘いには乗ってしまいやすい。自分たちの犠牲という選択で平和が訪れる、と考えれば、思いつめてしまう者もいるのかもしれない。

 しかし凌牙は、その誘いを跳ね除ける。毅然として胸を張り、プレジデントを真っ直ぐ見つめ返す。

「お前の理想が叶えば……奪われた奴らは報われると思うか?」
「……む」

 プレジデントはその真っ直ぐな視線を受け止めた。君の考えを聞こう、と言外に示し、先を促す。

「――いいや報われない。俺たちには"今"しかない」

 そう、"今"を生きるものには"今"しかない。無数の"今"の集積こそが過去であり未来。そうやって人は時を刻み続ける。ならば、全てを停滞させる思想を語る男は"今"、まさに悪行を行おうとしている倒さねばならない相手だ。

「大事なモノを奪われたこの怒りを、憎しみを!! 全部ぶつけて何もかもを終わらせることでしか先に進めねえんだよッ!!!」

 凌牙から膨れ上がる殺気。漆黒のオーラが彼の身を包み込み、そのオーラが晴れた瞬間、黒龍の鱗を鎧の如く纏う。黒龍の化身と化した凌牙、その姿はまさしく──。

「オーバーロード……!」

 プレジデントは目を見開いた。まさか、こんなところで、この土壇場でお目にかかれるとは。覚醒を果たした者はこんなところにいたのだ。この青年こそ、超越の体現者の一人──!

「俺は報讐者、過去に何もかも奪われた人たちの怒りを刻んで進む道を拓く者。もうこれ以上、てめえらオブリビオンに何も奪わせやしねえ!!」

 大地を踏みしめた黒龍の化身が咆哮する。プレジデントは間近で受けた龍の一声から感じる圧倒的な覇気に気圧されている自分を否定できなかった。これは、自分はこの青年に敗れるかもしれない。ここまでの戦いでダメージを負っているため──いや、万全の状態でも無理だ。明らかに格が違いすぎる。オブリビオン・フォーミュラたる自分の全力ですら、格差を埋めるには至らない。

「良かろう、君の覚悟は受け取った! ならばその力、存分に見せてみろ! 言葉ではなく行動で示すのだ──私を打ち倒すことで!」

 プレジデントもまた咆哮する。『民主闘拳』『共和闘拳』と名付けられた赤と青の鉄拳を構え、先制攻撃を放つ。正体が掴めない相手に敢えて先制攻撃を仕掛けるのはセオリーから行けば愚の骨頂、まずは相手の出方を伺うべきだ。しかしプレジデントはそれを選ばない。不利を承知で仕掛けてこそ、自分もまた普段の実力を凌駕出来るのだから。

 対する凌牙、初撃は見切って身を翻し回避する。青の拳が空を切る次の瞬間、連続で放たれた赤の拳が迫る。今度はこの攻撃を胴で受ける。黒龍の鎧の如き鱗越しに身体に響く衝撃を味わい、激痛が走った。しかし凌牙は耐える。その苦痛こそが、「痛い攻撃を貰った不運」こそが、凌牙にとってはより力を増すためのファクターとなるのだから。

「良いパンチだ大統領ォ!!」

 反撃の拳が凌牙の黒龍の腕から放たれる。鋭い一撃が大統領の体躯を捉えた。

「がはっ……!」

 プレジデントは肺の空気を全て吐き出す。骨身にしみる攻撃がプレジデントの体躯全てに衝撃として駆け巡り、骨は震え筋肉が悲鳴を上げる。痛覚神経が信号として脳に伝えるのは処理しきれないほどの痛みだ。

「ここまでとは……!」

 痛みの中で歓喜に震えるプレジデント。そうだ、これが見たかった。これを受けられた自分は幸いである。猟兵は確かに自分が期待していた力を覚醒させたのだから。ならばオブリビオンとして再び授かったこの命、全て尽きるまで見届けるのみ。

 青の拳を引き絞り再び放つストレート。音速すらも超えるその一撃に、拳を構成する鋼鉄の装甲が軋むような音を立てた。クロスカウンターの形で放たれる凌牙のストレート。拳に纏った黒鱗がその勢いの余り割れるような音を立てる。

 拳は互いの顔面、頬を捉えた。2人の脳が頭蓋骨の中で激しく揺さぶられ、どちらも一瞬、意識が飛ぶ。凌牙はブラックアウトした視界を気合で呼び戻し、一瞬おぼつかなくなった視界を整える。プレジデントも一旦後ずさり、頭を振って意識をはっきりとさせた。

「やるな……」
「そっちこそ……」

 互いの拳が崩壊寸前まで追い込まれるほどの殴り合いは続く。時に避け、時にしたたかに喰らいながらも、両者は一発攻撃を放つ度に自らにダメージを蓄積させていく。そうやって何度も拳を重ねるうちに、凌牙もプレジデントも、最後の一撃に向けて力を高めつつあった。

「さぁ、トドメと行こうかMr.ブラックドラゴン」
「はっ、良いぜMr.プレジデント。刻めよ、俺達の覚悟を!」

 凌牙の脳裏に瞬間、よぎるのは数限りない敗北の記憶。"書架の王"にも、"第四の王笏"にも、彼は無茶を挑んで負けた。"三つ目"相手に自分から能力を暴走させて勝った時もあったが、兄にその無茶を盛大に怒られた。だが、今は違う。

 自分から能力を暴走させたあの時と決定的に異なる点。それは自分で能力をコントロール出来ているところにある。だから、この勝利は偶然じゃない。必然だ。最早、あの時大事なモノを護れなかった悔しさで涙を流した自分は、いない。

「俺は……もう、負けねェ……ッ!!」

 大統領が放った拳が砕ける。凌牙が対抗して放った拳も砕ける。砕けて露出した生の拳同士がぶつかり合う。相討ちか、と思われたその瞬間、凌牙の拳は紅蓮の炎に包まれた。

「黒炎に、変わった……!」
「焼き尽くせ……!!」

 漆黒の鱗は紅蓮の炎に姿を変え、プレジデントに向けて襲いかかる。それはまさしく龍の吐息。黒龍が吐き出す灼熱の嵐──!

 ◆◆◆

「……見事だった」

 プレジデントは倒れた。肉体はこれ以上無いほどに損傷し、最早この世につなぎとめるだけの枷となっている。間もなく自分は骸の海に旅立つだろう、そんな確信に満ちた予感がする。

「お褒めに預かり恐縮、と言っておこうか」

 凌牙もまた、元の姿に戻っていた。凌牙は未だ2本の足で立っている。それこそがこの戦いの勝敗を如実に物語っていた。凌牙は勝ったのだ。

「君のその強さ……"今"を守るための意思。決して見失ってはならん。そうだな……ひとつ、君に教えておこう」

 倒れ込んだ姿勢のまま、プレジデントは語りだす。

「風の噂で聞いた。どこかの世界の話だ。人体の皮を継ぎ接ぎで縫い合わせたような人形を連れたオブリビオンが一人、現れようとしている」

 その特徴に凌牙はハッと顔色を変える。

「そうだ……君たちの大事なものを、大切な人達を奪ったオブリビオンだ。オブリビオン・フォーミュラたる私から見ても邪悪、嫌悪すべき存在だ。実のところ、『パクス・オブリビア』のマニフェストに穴があることは知っていた……あぁいった手合いがのさばり出すという弊害があるからな。私もあの手合いの存在を許すわけには行かない」

 兄が感情を失い、弟が無力を最初に嘆いたその元凶──オペレッタという名の邪悪なオブリビオンが、どこかの世界に再び現れようとしているというのだ。

「私に勝ったのだ、そいつに負けることだけは私が許可しない。君だけに告げる最後の大統領令を伝えよう。『決着をつけろ』。そして……君の覚悟は将来、必ずや君や周りの者を助けるだろう。君も周りの者に時には頼り給え。絆の力は偉大だよ……ソーシャルディーヴァの端くれである私が保証しよう」
「……あぁ、わかった。あんたは強かったよ、プレジデント」

 大統領はふらつく足で立ち上がる。だが、最早敵意はない。

「……最後に、握手を。若き黒龍の戦士に……Godspeed, and good luck to you(神の御加護と幸運があらんことを)」
「俺には似合わねぇ言葉だが……ありがたく受け取ろう」

 苦笑した凌牙は、プレジデントが差し出した手を握り返した。力強い握手を交わせば、自分にも神の加護と幸運が訪れるのではないか、という気になってくる。これも大統領たるものの説得力というやつだろうか。

 凌牙は踵を返し、仲間たちが待つポータルへと去っていく。その後姿に、大統領は敬礼のポーズを取り……その姿は風と共に骸の海へとかき消えたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月29日


挿絵イラスト