アポカリプス・ランページ⑪〜我らが神は誰も救えず
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「みなさん、新しい戦場が開きました……が、今回は命を賭す可能性がある戦いになるかもしれません」
いつもの笑顔は成りを潜め、巣飼・ハル(お天気アイドル・f33445)は神妙な面落ちで猟兵達を迎えた。
「今回の戦場はアイオワ州デモイン。そのデモイン砦にいます「フィールド・オブ・ナイン」が一人、デミウルゴスの討伐が今回の依頼の成功条件となります」
邪教に造られたというデミウルゴス。彼は偽神細胞をもち、それによって身体能力の強化、変形を可能としている。
「ですが一番気を付けていただきたいのはそれらではありません。……彼は『偽神細胞を持たない者からの攻撃を完全に無効化』します」
そう、彼が持つ偽神細胞のせいなのかは不明だが、通常の猟兵では彼に傷ひとつ付けられないのだ。
「彼に傷をつけられるのは同じく偽神細胞を持つストームブレイドの猟兵さん、もしくは――」
彼女は持っていたケースを開くと、中には注射器が何本か収まっていた。
「――この、偽神細胞液を接種して一時的に偽神化した者だけです」
先のソルトレークシティでの戦いで手に入れた偽神細胞液。これを使えばデミウルゴスにも傷をつけられる。
「しかしこの細胞液は拒絶反応も激しく、下手すれば命を落とします。それほどまでの強敵なのです。死ぬ覚悟が無ければこの敵は倒せないのです」
ハルは一回口を噤み、俯いた。
「……こんな負担を強いておいて言える口ではありませんが――皆さん、生きて帰ってきてください」
ハルは顔を上げるとアタッシュケースのふたを閉め、猟兵達へと手渡した。
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――声が、聞こえる。
それは男の声。女の声。子供の声。老輩の声。
それらは怒りを、悲しみを、嘆きを交えて叫ぶ。
――助けてくれ
――裁いてくれ
――赦してくれ
「――うるさい。煩い……煩い……!」
それらは全てある男に向けて投げかけられる言葉。
「俺に……お前達を救う力など無い……!」
男が脳内に響く言葉へ向けて血を吐くがごとく声を絞り出す。
男は人の手で造られた神、偽りの偶像である。
全知全能の力を持たぬ彼に救いを求める声に応える術はない。
だがそんな声にも祈りの言葉は止むことは無い。
祈りは彼に向けられるも彼の事などお構いなしに一方的に押し付けられる。
「殺してやる……もしくは」
殺してくれ。
神として崇められた偽りの神は、今日も祈りという呪いの洗礼に苛まれる。
遭去
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遭去です。今回はデミウルゴス戦となります。
●デミウルゴス
OPの通り偽神細胞を持たない猟兵の攻撃はユーべルコードも含め全て無効化されます。
攻撃が通るのはストームブレイドのジョブを持つ者か偽神細胞液を接種したもののみです。
●偽神細胞液
接種すれば一時的に偽神化し、デミウルゴスへ攻撃が通る様になります。
その代わりに絶命の危機に陥るほどの激しい拒絶反応が出るようです。
●プレイングボーナス
下記の条件が満たされているプレイングにはプレイングボーナスが受けられます。
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プレイングボーナス……「偽神化」し、デミウルゴスを攻撃する。
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第1章 ボス戦
『デミウルゴス』
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POW : デミウルゴス・セル
自身の【偽神細胞でできた、変化する肉体】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[偽神細胞でできた、変化する肉体]から何度でも発動できる。
SPD : 偽神断罪剣
装備中のアイテム「【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ : デミウルゴス・ヴァイオレーション
自身が装備する【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】から【強毒化した偽神細胞】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【死に至る拒絶反応】の状態異常を与える。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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『――その有様でお前たちは俺を倒せるとでも思っているのか』
デミウルゴスは暗い瞳を猟兵達へと向けた。
偽神細胞を持たぬ猟兵達は偽神細胞液を注射している。そのため注射した彼らはそれぞれ体に異変を感じていた。
が、彼らが変わらないのは偽神――デミウルゴスを倒す。その強い意志を持ち、ここへと来のだ。
『くだらん……何も求めず、ただ死ぬがいい』
デミウルゴスは手に持つ黒き大剣を軽々と地面から引き抜いた。
――偽りの神たちの戦いが幕を開けた。
ルドラ・ヴォルテクス
●アドリブ連携OKです
おまえの苦悩、嘆き……ヒトとして生きられぬ偽りの神を押し付けられた、おまえの昏い魂を戦いの中で救い出す。
【世界蛇アーディシェーシャ】
偽神細胞、あらゆる生命を憎むか。ならば、それを阻むのは俺のUC、世界蛇の呪縛は全てを留める、おまえのUCとて例外ではない。
UCを封じ、挑むのは己の力と武器、そして魂。
覚悟の限界突破、断罪の剣と偽神細胞を封じる間に、チャンドラーエクリプスを双剣に変え、戦技をぶつけ合う。
最後は残されたリミッターを解除、全力を込めて討つ。
おまえが世界全てを壊すのなら、俺はおまえを止める、明日の朝の訪れを信じて生きるヒトの為……そして、おまえ自身の魂の平穏の為。
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「おまえの苦悩、嘆き……ヒトとして生きられぬ偽りの神を押し付けられた、おまえの昏い魂を戦いの中で救い出す」
ルドラ・ヴォルテクス(終末を破壊する剣“嵐闘雷武“・f25181)
はそう宣言すると羅睺の刃の刃先をデミウルゴスへと向けた。
『……笑わせる』
偽神デミウルゴスは跳躍、そのまま武器を構えるアルトへと武器を叩きつけた。
「……っ!」
ルドラは軽々と避ければ彼が今いた地面は大きな窪みを作り――粉塵と共に黒い霧が立ち込めた。
「……これは、偽神細胞?」
『偽神細胞を持とうと無意味だ、とっとと死ね』
黒い霧は強毒化された偽神細胞。同じ細胞を持とうともまともに受ければその身は瞬く間に腐れ堕ちていくだろう。
触れるもの全てを拒絶するがごとく。
「偽神細胞、あらゆる生命を憎むか」
ルドラは真っ直ぐに目の前の男を見やる。
「ならば、それを阻むのは俺のUC、世界蛇の呪縛は全てを留める……来い、アーディシェーシャ!」
掛け声とともに現れるは世界蛇アーディシェーシャ。かの蛇が有する蛇の戒めにより万物は全てを留める。それは偽神の災厄に対しても同じであった。立ち込めていた霧は晴れ、クレーターの真ん中には男が一人立っていた。
「あとやることはただ一つ!」
障害は消えた。ルドラは可変式武器チャンドラーエクリプスを双剣に持ち替えると、猛スピードで男の元へ駆けていく。
『……抑えたか』
デミウルゴスはため息をつくと黒き大剣を構え、双剣の剣劇を受け止めた。
白き光が、黒き軌跡が交わり、弾かれ、時に相対する相手へと降り注ぐ。
刃が交わるごとに命が削れていく。
それでもルドラは決して距離を取ることは無い。
『なぜそこまでして俺に歯向かう。お前に俺を止める理由など無いだろう』
「おまえが世界全てを壊すのなら、俺はおまえを止める、明日の朝の訪れを信じて生きるヒトの為……そして、おまえ自身の魂の平穏の為」
『下らん』
吐き捨てるように男は拒絶の言葉を呟く。
「ならばこの思いが誠であるか、この一撃をもって証明してみよう!」
残された力、否、限界を超えた力全てを込める。大いなる怒りを纏い、風が男へと衝突した。
――男の名はルドラ・ヴォルテクス。
嵐神を冠するストームブリンダーである。
大成功
🔵🔵🔵
水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:ロキ
いかに猟兵とはいえ私の身体はさして丈夫ではありません。このまま摂取しては戦闘どころではありませんね。致し方ありません
UC発動。見た目だけはそのままに、身体は全てUDC化。その後に偽神細胞液を摂取します
こ、れは……想像以上に、キツイ、ですね
ゴポリと吐いた黒い液体金属を足首から再吸収しながら先へ進みます
私を喰らうというなら、どうぞ。喰らい返して差し上げますよ……喰らうのはアノンの専売特許なのですがね。あぁ、何を考えているかもわからなくなってきました
喰らいついてきた相手に液体金属を流し込み、内側から破壊しましょう
意識がトブ前に退避して、偽神細胞部分を液体金属から分離します
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戦闘を行うさなか、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の体には異変が起きていた。
体が丈夫ではなくそのまま偽神細胞液を接種するのは危険と判断した怜悧――ロキはユーべルコードを使い、その身を一時的に未知なるモノUDCへと姿を変えた上で偽神細胞液を接種した。
副作用の事も聞いていた。しかし、この内側から自分が別の何かに塗り替えられていく感じは本当に副作用なのだろうか。
「こ、れは……想像以上に、キツイ、ですね」
ゴポリと何かを吐きだした。それは血でも胃の中身でもない、黒い粘り気の液体だった。
「拒絶反、応とは、ずいぶん、酷な、もので」
『……それは拒絶反応ではない。お前に巣食うものと偽神細胞が合わさり、別のナニかへと姿を変えようとしている』
デミウルゴスの左手が――否、輪郭が変形し、不定のモノとなり蠢く。
『制御できないならば邪魔だ、死ね』
偽神細胞でできたそれはありとあらゆるものを喰らい尽くさんと怜悧へと襲いかかってきた。
吐き出した黒い液体金属が足首から吸収されるのを感じながらロキは笑う。
避けないと。否、喰らわねばならない。そして反撃しないと。いや喰らわねばならない。
(「喰らうのはアノンの専売特許なのですがね」)
普段なら怜悧の中では比較的冷静かつ論理的思考をこなすなロキの人格はどんどんと単調なる思考へと堕ちていく。
「私を喰らうというなら、どうぞ。喰らい返して差し上げますよ……」
はんげき、こうげ――違う。ただあいつを喰らわねばならぬ。喰らわねば喰らわねば喰らわねば喰らわねば喰らわねば喰らわねば喰らわねば喰らわねば喰らわねば――
デミウルゴスの不定なる顎が怜悧の体に食らいつき、ロキは倒れこむ。
『この程度か』
デミウルゴスはあっけない最期だと倒れた怜悧の体をぼんやり見ていた。
否、安堵かもしれない。自分以上の危険なるもの可能性を潰した事への……。
刹那、デミウルゴスの不定なる腕が震え始めた。
伸び縮みを繰り返したかと思うと、それはやがて動きを止め――。
『――っ!』
デミウルゴスは咄嗟に謎の挙動を繰り返す部位を切り離し。次の瞬間、彼の部位が爆発した。
「――ふふっ、危なかった」
ロキが立ち上がる。先ほどとは違い、いつもの調子で笑うと意識が完全に消える前に偽神細胞部位を抜き取り、爆発の煙に紛れて戦場から姿を消したのだった。
成功
🔵🔵🔴
月夜・玲
この世界の技術で造られた神
創造主の名を冠するんだからさぞ傲慢チキかと思ったんだけど…
神足りえるのは肉体程度だったか
精神面まで神域へと至る事は無かった…か
気の毒に
人体実験なんて、趣味じゃないんだけど
偽神細胞液で偽神化しよう
身体が砕ける程の痛み…拒絶反応
だけどこの痛みこそ私が人である事を教えてくれる
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
デミウルゴスに接近し、『なぎ払い』そして至近距離から『斬撃波』を放ち『吹き飛ばし』て体勢を崩す!
こっちはキツくて仕方ないんだ
デカイの一撃、喰らわせてあげる
【断章・機神召喚〈極限熱量〉】起動
デミウルゴスの真上に機械の腕を召喚
質量と蒼炎、これで決める!
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「この世界の技術で造られた神。創造主の名を冠するんだからさぞ傲慢チキかと思ったんだけど……」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は目の前のデミウルゴスを見やるとため息交じりに呟く。
「神足りえるのは肉体程度。精神面まで神域へと至る事は無かった…か。気の毒に」
『……』
その言葉にデミウルゴスは言葉を返さなかった。
事実、彼は同じ細胞を持つ者以外の攻撃を受け付けない無敵の体を手に入れたが、代償に救いを求める声にいつまでも悩まされ死にたいと思うまでに追い詰めれていた。
「はぁ、何にしても痛いな……」
玲は先ほど偽神細胞液を挿した箇所をさする。
「ねぇ君、痛みって感じる?」
『……痛み?』
「痛みさ。体が砕ける程の痛み。拒絶される痛みでもいい。痛い事は嫌な事だ」
『……』
「でもこの痛みこそ私が人であることを教えてくれる」
『俺に生命謳歌を説くか。ならその痛みを抱えたまま死ぬがいい』
多少の苛立ちを隠さずにデミウルゴスは大剣を振るう。
「だからこそ君にも体験してもらいたいんだよね」
玲はデミウルゴスの一撃を避けると青い光を放つ黒剣『《RE》Incarnation』と『Blue Bird』を抜刀、衝撃波を加えた一撃をもって薙ぎ払う!
『……っ』
デミウルゴスはその大きな大剣で直撃を受け止めるも、衝撃波は受け止めることができずそのまま数メートル後ろへと吹き飛んでいく。
『チッ』
デミウルゴスは一瞬にして体勢を整えたが、立ち上がる前に玲が既に動いていた。
頭上には虚空から機械の腕が伸び、その手には蒼き炎に包まれた剣を今まさにデミウルゴスに振り下ろさんとしているではないか。
「こっちはキツくて仕方ないんだ。デカイの一撃、喰らわせてあげる!」
玲の言葉と同時に、浄化の蒼炎を纏った神の腕が偽神へと振り下ろされた。
成功
🔵🔵🔴
夜刀神・鏡介
こんな世界だし、神に救いを求めようって気持ちは分からんでもない
だが、救いを求めた結果がこれか……正直、救いがないにも程があるだろ
偽神細胞液を注射。拒絶反応によるダメージを堪えるかのように、神刀に手を伸ばす
精神を集中する事で拒絶反応を意識の片隅に追いやって、デミウルゴスを見据える
ダッシュでデミウルゴスへと接近しながら、神刀の封印を解除
敵の攻撃は落ち着いて見切ってから回避。射程圏内に入ったならば、肆の型【砕牙】による高速の抜刀術を叩き込む
捕食によるUCのコピーは驚異だが、俺の技は抜刀術。どういう風に発動するかは分からないが、本来の使い手として予兆はを見抜いて、上手く捌いて斬撃で対抗していく
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夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)が繰り出した音速の一撃をその身に受けながら、デミウルゴスの暴風じみた大剣の一撃が振り下ろされた。
「本当に攻撃を無効化するんだな」
鏡介は攻撃を躱し距離を取ると、先程攻撃が入った男の体を見やる。袈裟斬りによって受けた傷は瞬く間に修復されていくではないか。
『猟兵の一撃などこの程度か……』
失望したようにデミウルゴスは呟く。
(「こんな世界だし、神に救いを求めようって気持ちは分からんでもない。だが」)
神として造られた男が煩いとうわ言の様に呟く男を目の前にすると思うのだ。
(「救いを求めた結果がこれか……正直、救いがないにも程があるだろ」)
全知全能たれ、我らを救い叶えたまえと身勝手な欲望より造られた哀れな偶像、それが目の前にいるデミウルゴスだ。
鏡介は懐から注射器を取り出しじっと見やる。
これを打てば一時的に偽神となりデミウルゴスへと攻撃を与えることができると聞いた。
――同時に命を落とす可能性もあることも。
だが、迷いはなかった。
鏡介は意を決して注射器を突き立てた。
「――っ!」
途端、注射した腕がまるで炎に包まれたがごとく熱くなる。
『……偽神細胞液か』
鏡介の反応を見たデミウルゴスが呟く。注射液の中身を知っていたのだろう。
『そこまでして戦う必要があるか?大人しくここを去れば今は追撃などしない。俺に構うな』
「――ははっ」
痛みをごまかす様に笑みをこぼし、刀へと手をかける。
「あんたを救いたいとか、そんなんじゃないけどさ。だからってこのままでいいわけないじゃないか」
鏡介はただ真っ直ぐに目の前の男を見据えると、韋駄天が如き速度で駆ける。
(「痛みなど過去へ捨ておけ、ただ目の前を敵を斬ることに集中しろ!)」
『理由などないか。しかしそれも理由か』
デミウルゴスが左腕を変形させ、迫りくる鏡介へと向かわせる。
デミウルゴスが放った一撃は鏡介へと襲い掛かるが、鏡介は限界を超えたスピードをもって掻い潜る!
「噛み砕く――肆の型【砕牙】」
射程に入った瞬間、神速の居合が偽なる神の体を斬った。
大成功
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カイム・クローバー
祈りは奴にとって呪いだ。
頭に誰かの声が響く。『全てを殺せ』と俺の中の化物が叫んでる。自分以外の誰かの声が聞こえるのは地獄なのさ。
だから――俺は此処に来た。祈りの声を途切れさせる為に。
拒絶は内部を焦がされる燃えるような苦痛。
アレを倒そうとするんだ。必要な代償さ。
実際は余裕なんざないが。それでも表情には余裕を。俺は俺らしく、これは絶対に曲げる気は無いぜ。
魔剣のUCを発動。全てを焼き尽くす為の炎を捕食させる為に放つ。神殺しの魔剣の能力の一端。それを偽の神が放つというのは皮肉かね?
コピー品の炎にすかさず同じUC。今度は【焼却】を交えて、コピー品のUC毎焼き尽くす。
奴も被害者なのさ。狂った連中のな…。
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――祈りは奴にとって呪いだ。
カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は相対する偽神デミウルゴスを見て思う。
頭に誰かの声が響く。
『全てを殺せ』と化物が叫ぶ。
自分以外の誰かの声が聞こえるのは地獄。
「だから――俺は此処に来た。祈りの声を途切れさせる為に」
『――殺せるなら殺してくれ。そんな状態で倒せるとは思えんがな』
デミウルゴスは嘲笑う。
そう、偽神細胞液を注射したカイムの身には拒絶反応が出ていた。
その身を焦がす、燃えるような苦痛。
神を騙るものを裁く炎の様に、カイムの体を蝕んでいく。
(「アレを倒そうとするんだ。必要な代償さ」)
デミウルゴスが左腕の偽神細胞を解き放つ。細胞一つ一つが意思を持ち、ただ一つの目的を達成しようと。
目の前の男を一遍もなく喰らうべく。
頭に響く救いを求める声に応えるべく。
カイムは炎をまき散らし、デコイとしても活用しながら襲い掛かる偽神細胞を避けていく。
『なぜ笑う。頭がおかしくなったか?』
デミウルゴスが疑問を呈す。
今までも自身を造った教団の敵対組織を滅ぼすためだったり様々な理由で戦ってきた。
この状況になるとデミウルゴスの頭には誰かの助けてという悲痛な言葉だけが脳内に響き渡っていた。だからこそ戦闘とは喧しく、痛ましい物だとデミウルゴスは思っている。
それなのに、なぜ目の前の男はカイムは笑うのだ。
「いいや? 余裕なんざないが? それでも表情には余裕を。俺は俺らしく、これは絶対に曲げる気は無いぜ」
この身が炎に苛まれようと、気を抜けばあっという間に死ぬ状況でも。
否、だからこそ。いかなる状況でも笑うのがカイム・クローバーという男なのだと。証明するべく彼はここに立つのだ。
カイムは魔剣の力を解放する。瞬間、デミウルゴスの左腕が黒銀の炎が立ち上がる!
『ちっ……!』
デミウルゴスは燃え盛る左腕を斬り落とそうとしたが、先ほどまでデコイとしてまかれた大量の炎を飲み、発火した腕は瞬く間に男の体を包み込んだ。
『……これで終わりか』
デミウルゴスが抵抗を辞めた。
もう後は黒銀の炎に身を焼かれるのを待つばかり。
「悪いな、こんな最期でよ」
『……いや、いい。感謝する猟兵達。おかげでようやく眠れるよ』
偽神の顔には憑き物が落ちたような表情で炎に飲まれていった。
「奴も被害者なのさ。狂った連中のな…」
昇っていく煙を見ながら、カイムは寂しげに呟いた。
大成功
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