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アポカリプス・ランページ⑪~虚無の神、虚偽の神

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「デミウルゴス……確かある教団の主張で造物主と呼ばれる神だったかな……?」
 グリモアベースの片隅で。
 双眸を閉ざしていた北条・優希斗が誰にともなく呟いている。
 呟きに気が付いたか集まってきた猟兵達の気配を感じとり、閉ざされていた蒼穹の瞳を開いて皆、と静かに囁きかけた。
「狂ったとある教団に作られた虚無の偽神、デミウルゴスの戦場が1つ視えたよ。皆にはそこに急行して、デミウルゴスを撃破して欲しい」
 優希斗の声は冷静ではあるが、何処か沈痛な空気と共にグリモアベースに響き渡る。
 その様子に不審な表情を浮かべる猟兵達に優希斗がでもね、と重苦しい溜息をついた。
「この虚神にして偽神たる彼は無敵なんだ。彼に攻撃を与えるためには、皆もまた、偽神の力で対抗するしかない。自らに偽神細胞を埋め込んだ、ストームブレイドと呼ばれる人達の様にね」
 とは言え、ストームブレイドと呼ばれる猟兵達にだけ、デミウルゴスの相手を任せるわけには行かない。
 だが……。
「皆が、皆のまま戦いに行っても、ストームブレイド以外では無敵のデミウルゴスには叶わない。だからこの戦場に赴く皆には、擬似的にストームブレイドの様になって欲しい」
 その言葉の意味する事は……。
「簡単に言えば、ソルトレークシティで手に入れた偽神細胞液を皆に注射して貰い、一時的に偽神と化して貰うと言う方法だ」
 苦渋の表情を浮かべ静かに頭を振る優希斗。
 束の間の、感傷。
 それを振り切る様に無表情を作り、淡々と語る。
「はっきり言って、命懸けだ。適合者でなければ偽神細胞を体に注射することは身体に凄まじい拒絶反応を起こすことになる。体に何らかの変化が起きたとしてもおかしくないし、最悪死に至るだろう。まあ死にかけたら、緊急回収させて貰うけれどね」
 それは、ある意味で悪魔の所業だろう。
 だがそうでもしなければ、デミウルゴスと戦うことが不可能である故の最善でもある。
「無論、無理強いをするつもりはないが、それでも俺は皆に頼まなければならない。すまないが、皆の命を貸してくれ、とね」
 何故なら、優希斗はこの戦場をグリモアで視た猟兵だから。
 他に手段がないのであれば、動ける猟兵達に託すしか無い。
「だから、俺は皆に願う。文字通り命懸けでデミウルゴスと相対し、彼をその手で屠って来て欲しいと。彼が生き残れば、世界は大きな災厄に見舞われてしまうからね」
 しかし、デミウルゴスは偽神の力を得ても尚強敵。
 偽神細胞を注入するのは、あくまでも戦うための準備に過ぎない。
「だから偽神になったとしても、厳しい戦いになるのは間違いない。体が拒絶反応を起こすそれを、何処まで使いこなせるのか……それがきっと勝利の鍵だろう」
 ――それがどれ程苦しく、困難な戦いであるのかを知りつつも。
「それでも俺は、皆に託すしかない。だから皆の命を貸し欲しい。どうか、宜しく頼む」
 その優希斗の祈りと共に。
 蒼穹の風が吹き荒れて……猟兵達はグリモアベースから姿を消していた。


長野聖夜
 ――虚無と偽神の戦いの果ては。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 今回は有力敵、『デミウルゴス』のシナリオをお送り致します。
 データ上、死亡するという判定は出しませんので、疑神細胞にどの位拒絶反応などがあるのか等は皆様の御自由にして頂いて構いません。
 プレイングボーナスは下記となります。
 =============================
 プレイングボーナス……「偽神化」し、デミウルゴスを攻撃する。
 =============================
 特に記載が無ければ予め偽神細胞液を接種してきている体でシナリオを描写します。
 偽神になる事による用紙の変化などはある程度自由に設定して頂いて構いません(性転換の様な、キャラクター作成時の基本設定が根底から覆ってしまう変化はNGとします)
 自分でブーストを掛けたい、仲間の援護や防御重視するから偽神細胞を使わない!
 みたいなプレイングも可能です(但し、自分が攻撃してダメージを与えるには自分への偽神細胞の摂取が必須となります。その上で何か他に演出をして頂いても構いません)
 プレイングボーナスは上記の儘です。
 因みに更に偽神細胞をブーストをして更なる強化をと言うプレイングの場合、ブースト用に使われる物は(ストームブレイドの様に最初から偽神細胞を持っている方除く)は、基本的に注射器である点、予めご了承下さいませ。
 プレイング受付期間及びリプレイ執筆期間は下記です。
 プレイング受付期間:9月16日(木)8:31分以降~9月18日(土)13:00頃迄。
 リプレイ執筆期間:9月18日(土)14:00頃~9月20日(月)8:00頃迄。

 ――それでは、最善の血戦を。
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第1章 ボス戦 『デミウルゴス』

POW   :    デミウルゴス・セル
自身の【偽神細胞でできた、変化する肉体】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[偽神細胞でできた、変化する肉体]から何度でも発動できる。
SPD   :    偽神断罪剣
装備中のアイテム「【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ   :    デミウルゴス・ヴァイオレーション
自身が装備する【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】から【強毒化した偽神細胞】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【死に至る拒絶反応】の状態異常を与える。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

荒谷・つかさ
偽神化、ねぇ。
まあ、必要だというならやってやろうじゃない。
(お注射ぷすっ)
ッ、これは……偽神細胞液が、すぅ~っと筋肉に染み渡って……!
ンンンッ……実に、実に馴染むわ……!
(※割とあっさり偽神細胞に適合してサブジョブがストームブレイド化しましたという)
(偽神化した姿=真の姿と同じ)

さて、デミウルゴスだっけ。
無敵じゃなくても強敵って話だけれど、如何程のものなのか……
さあ、命がけの闘争を楽しみましょう!
(偽神化で狂戦士的な側面が殊更に強調されている)

【超★筋肉黙示録】発動
持ち前の「怪力」と無敵の筋肉を活かした肉弾戦を挑む
敵コードの捕食もさして気にせず、徹底的に「殴り合いを楽しむ」
コードをコピーされても問題はない
何故ならば、このコードは「己の力(筋肉)を信じる心」、即ち「力」へのポジティブさが更なる力となる「脳筋自己暗示」
どんな力であろうと「力など無い(=無力)」と言っている時点でこのコードは扱いきれないわ

お前に教えてあげるわ。
鍛え上げた肉体……筋肉さえあれば、大体どうにかなるということを!




 眼前に立ち塞がる虚偽にして、虚無なる神を見つめながら。
「偽神化、ねぇ」
 荒谷・つかさがふぅん、と軽く鼻を鳴らしつつ、出撃の直前に手渡された偽神細胞液の注入された注射器を繁々と眺めている。
『……煩い……煩い……煩い……!』
 そんな風に呻くデミウルゴスの姿を見ながら、まあ、と何の気も無しに巫女服の袖を捲り上げて。
「必要だというなら、やってやろうじゃ無い」
 と、特別に気負った様子も無く、ブスリ、と抵抗なく腕の肘正中皮静脈に注射器を無造作に突き立てた、正にその時。
「……ッ、これは……」
 若い羅刹のやや艶っぽい吐息が漏れた。
 その全身を、巡りめくる快感が襲う。
 体中を駆け巡る雷撃が甘露と化して全身を蕩ける様に痺れさせ、同時にその体を駆け巡る熱い血潮が、体中から熱を発させていく。
 体内から溢れ出す熱に浮かされた様に、何処か恍惚とした表情になったつかさの其れに呼応する様に全身の筋肉が盛り上がり……。
「ああ……染み渡って……! ンンンッ……実に、実に馴染むわ……!」
 ほう、と熱を持って湿っぽい吐息を吐き出すと同時に、ばさり、と巫女服の上半身を脱ぎ捨てた。
 さらしを巻いた胸を除いて、剥き出しになった上半身に触れる風が心地よい。
 デミウルゴスから放たれる殺気により、体内を駆け巡る血に乗って全身を駆け巡る偽神細胞が活性化する感覚と同様に。
 そのつかさの心の裡を投影するかの様に。
 両腕を深紅の禍々しい篭手が覆い尽くし、腰まで届く黒髪が、見る見るうちに銀へと染まりゆく。
 ――その全身から、鬼火の様な呪われた紅の焔を漂わせながら。
「さぁて……行くわよ?」
 口元に肉食獣の笑みを閃かせ。
 ペロリと舌舐めずりをし、闘志と狂気に彩られた赤茶色の戦士の瞳と共に。
『殺せ……! 殺せ……! 俺を殺してみせろ……!』
 全身から怨嗟と虚無に満ちたどす黒い殺気を暴走させるデミウルゴスに、つかさが、周囲を漂う鬼火を陽炎の様に纏って肉薄した。
 自ら偽神細胞を移植して、ストームブレイドと言う名の力を得た、其の戦鬼が。


 ――破。
 不敵な笑みを浮かべた儘に肉薄と同時に深紅に染まった、手甲鬼瓦による強烈な肘鉄を繰り出すつかさ。
「無敵じゃ無くても強敵って話だけれど、どれ程のものなのか……命がけの闘争、楽しませて貰うわよ!」
 それは鍛えに鍛え抜かれた結果、1ミリの隙も無い程に凄まじい怪力を生かした鬼の一撃。
 その戦鬼の一撃を、デミウルゴスは其の手の偽神断罪剣の刃で受け止める。
 ――ガリガリガリガリガリッ!
 鋼と鋼が擦れ合う嫌な音が戦場を包み込み、火花が散る。
 漆黒の瘴気に覆われたデミウルゴスの斬撃に、つかさがその口元に閃かせていた肉食獣の笑みを更に深めた。
「ふふふっ……良いわね、この感じ。此でこそ張り合いがあるってものだわ!」
 熱に浮かされた様な口調で叫び、さも当然の様に後ろ回し蹴りを叩き付ける。
 ――轟!
 偽神細胞を取り込み更に活性化され、質感に満ち満ちた『脳筋』の蹴りがデミウルゴスの側頭部を打ち据えていた。
 鍛え抜かれた筋肉……怪力の籠められた一撃、一撃は最早爆弾の着弾にも等しい。
 その一撃で側頭部を打ち据えられたデミウルゴスが思わず其の目を白黒させる間に、つかさが喰らいつく様に体当たり。
(「筋肉は最強! 筋肉は無敵! 筋肉は裏切らない!」)
 自らの胸に巻かれたさらしから、その強烈な脳筋自己暗示に呼応する様にポロリと零れ落ちるのは一冊の書籍。
 豪華で堅牢な上製本であるそれには黄金の装飾が施され、其処には『超★筋肉黙示録』と金箔で巨大なタイトルが印字されている。
 ――其は、肉体最強理論および其れを記せし、伝説の本。
『何だ、其れは……!』
 あまりにも燦然と輝く黄金色のタイトルに目を奪われる様に激しい瞬きを繰り返すデミウルゴス。
 それでも尚、左手の巨大な鉤爪状の手甲を繰り出して、つかさの命とその本を取り込み、其の情報を奪わんことを欲した。
 それは、偽神細胞で敵を捕食することで、其のユーベルコードを自らの『力』として再現する力。
 けれども、胸元に現れた『超★筋肉黙示録』を捕食されても、つかさの肉食獣の笑みは決して消えない。
 それどころか益々其の笑みを深めさせ、猛禽の如く鋭く目を尖らせながら正拳を連撃で叩き込む。
「ほらほら、どうしたの? 私のユーベルコードをコピーして、無敵の筋肉になったんじゃ無いの!?」
 狂笑と共に放たれた連撃を、デミウルゴスは咄嗟に一歩引いて躱す様にしながら、その手の偽神断罪剣を撥ね上げる。
 撥ね上げられたその一閃が、つかさの鬼瓦毎、その腕を切り飛ばそうとするが。
「非力! 非力! 非力! 非力!」
 取り込んだ偽神細胞を鬼の力で活性化させ、鬼瓦に包み込まれた左腕の筋肉を盛り上げて、筋肉だけでその攻撃を跳ね返した。
『何……っ?! 俺の……刃が……?!』
 ――届かない。
 力をコピーし無敵の『超★筋肉黙示録』を手に入れ、最強の筋肉を得た筈なのに。
 矛であり、同時に盾ともなる馬鹿力でその攻撃を受け止めたつかさの正拳が、デミウルゴスの胸に叩き込まれた。
「……馬鹿な男ね。お前は、所詮は虚無にして、偽の神と言う事よ! お前は自らに力など無い……無力だとお前を理解している。そんなお前が、私の其れを扱いこなすことなど出来ないわ!」
 嘲弄を交えた怒声を叩き付け、ぐん、と大きく其の体を仰け反らせるつかさ。
 次の瞬間、フルスイングで頭部の3本の角を、デミウルゴスに突き立てる様な頭突きを一発叩き込んだ。
『があっ?!』
 其の強烈な頭突きによる一撃が、デミウルゴスの目を容赦なく貫く。
 その目を貫かれ、どす黒い血糊を零しながらも、バックステップをしながらすかさず跳び蹴りを放つデミウルゴス。
 其の蹴りを腹部に諸に受けながらも、尚、つかさは何処までも不敵に、歪んだ笑みを浮かべて突進し。
 傷を負った右腕をグルグルと回転させて、遠心力と共に、本気の拳を叩き付けた。
 叩き付けられたそれが、デミウルゴスの左肩を容赦なく殴打し、その肩鎧と思しき其れを凹ませる。
「私の筋肉は無敵、己の力(筋肉)を信じる心……ポジティヴシンキングの前に、お前はひれ伏し跪くが良いわ!」
 狂った笑い声と共にその肩を左手でガッ、と掴みその動きを束縛する様にしながら右手で手刀を繰り出すつかさ。
 其の手刀の一撃が、デミウルゴスの腹部を容赦なく貫き、その体から血飛沫を舞わせている。
『がっ…ガァァッ……! だが……俺は……お前達にやられはしない……! お前達を、1人残らず、殺し尽くすその時迄……!』
 口から血反吐を吐きながらの憤怒と憎悪を交えた叫びを上げて。
 つかさが掴んでいる自らの肩の筋肉と装甲を怒らせて鋭い鋼鉄製の刃と化して、其の鬼瓦に突き出すデミウルゴス。
「……ちっ!」
 そのまま増殖する偽神細胞に、自らの身体に取り込んだ偽神細胞が反応し激しく活性化するのに気がつき、つかさが咄嗟に後退する。
 自らの身体の内に取り込んだ偽神細胞を、デミウルゴスが乖離させ、つかさの体を内側から焼き尽くそうとしたからだ。
 其の一瞬の隙を突いて。
 さっ、と周囲の建物に隠れる様に姿を消すデミウルゴス。
「……熱いわね」
 火照った全身を蝕む様に駆け巡る偽神細胞の暴走に体から根こそぎ力を奪われていくのに気がつき、つかさがその場で礼を取る。
「……後は任せたわよ」
 次に送り込まれてくるであろう、猟兵達に後を託して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

枸橘・水織
他者との協力OK
細胞液はすぐには摂取しない

序盤は魔力の盾【オーラ防御】や回避【視力・見切り】などを主体、相手の周辺に魔力弾を放ち粉塵を起こして視野を狭める
偽神断罪剣の間合いギリギリで周囲の魔力捕捉を行う【情報収集・学習力】

捕捉が完了したら細胞液摂取
激痛と共に翼が急成長…それを追うように新たな翼が何対も生え急成長、水織の身体を包みこめるぐらいの大きさと数に

気を抜けば意識と身体が誰かに持っていかれ、自分でなくなりそうな感覚を覚える(自我の死)

指定UCを使用【全力魔法】
拘束具を創造し相手の身動きを封じた後(仲間がいるなら攻撃可)、【魔力溜め・早業・二回攻撃】で魔力を高速チャージ、剣や槍を創造して攻撃


ウィリアム・バークリー
偽神細胞液を接種してから、身体が熱い。でも、拒絶反応がこの程度ですむのなら僥倖。冷却魔法で身体を冷やしながら、戦いに臨みます。

己が死を望む偽神、デミウルゴス。ぼくたちがその望み、叶えます。
望まぬ生を与えられた不条理への怒りは、ぼくらが持っていきますよ。

「全力魔法」複数属性の「属性攻撃」「衝撃波」でChaostic World。
一発ごとの威力は低くても、足止めには十分でしょう。

集中攻撃出来るなら、彼の腕をちぎるように攻撃を集中させます。偽神断罪剣を奪い取ることが出来れば。
それとも、腕ごと剣が生えてきますかね?

射程三倍といっても、それはあくまで剣の間合い。彼我の距離には常に注意を払います。


キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

まったく…酷い頭痛だな
粗悪なアブサンを生のまま頭に注いでもこうは酷くならんだろうよ

とは言え、奴を倒すためには必要な措置だ
身体をバラバラにするような痛みには激痛耐性、そして幻覚や幻聴には狂気耐性を用いて何とか動けるほどにまで拒絶反応を抑え込む
この偽神細胞をある程度まで慣らさなければ攻撃は難しい
まずは奴の振るう偽神断罪剣を見切りつつ回避に専念をしよう

グッ…まったく酷いザマだな…
頭の中では壊れたダイナモが火花を散らしているし、心臓ではダンプカーがタップダンスを踊っているようだ
…だが、おかげで偽神細胞の事がわかってきたよ

UCを発動
体内で活動している偽神細胞を私の医術で解析
毒使いの能力で細胞自体を不活性化、又は弱体化させる毒をUCを生成する
毒が完成したら体内の鉄分やカルシウムを集めて作った銛に充填
偽神断罪剣に打ち込んで強化された力を消し去り、デミウルゴスにも打ち込んで偽神細胞の効果を鈍化させる
奴の力の源が偽神細胞ならば、必ず効果はあるはずだ
望み通り、深く静かな海の底へと運んでやるさ


地籠・凌牙
【アドリブ連携歓迎】
今更死にかけるぐらいでビビってられっか!
とはいえ、こいつは流石に、キツいな……
だがこれぐらいでへこたれる程度の覚悟で猟兵、やってねえからな……!やってやろうじゃねえか!

【激痛耐性】と【継戦能力】と【気合い】で限界ギリギリまで踏ん張るが、守りにまで意識飛ばしてる余裕がねえレベルで身体が悲鳴上げてやがる……!
守りは捨てて肉を斬らせ【カウンター】で【怪力】込めて2発、1発は【指定UC】絡めて殴るのを狙うしかねえな!

てめえには怒りを覚えらんねえ。
だが倒すしかねえ以上、せめて最期ぐらいは安らかに眠れるようにその穢れを俺が喰らってやる!
だから大人しく一発喰らいやがれクソッタレ!!


蒼・霓虹
敵である以上何ともなりませんが
せめてわたし達も、苦しみながら
楽にして差し上げるのが情けでしょうか

[WlZ]
●細胞注射
【激痛耐性&毒耐性】備え【高速詠唱】UC発動真の姿(注射で体毛が青に)に

【高速詠唱】し【属性攻撃(重力)&オーラ防御】込め〈レインボークローバー〉の【盾受け&弾幕】を【範囲攻撃】展開

【空中戦&空中浮遊&推力移動】で〈彩虹(戦車龍)〉を【操縦】し【第六感】で【瞬間思考力&見切り】回避

皆と【集団戦術&団体行動】連携

【高速詠唱&多重詠唱&全力魔法】で〈アクアネオンストライク〉の【貫通攻撃&弾幕&砲撃&レーザー射撃】を【属性攻撃(麻酔)】を込め苦しまない様に

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]


レモン・セノサキ
作られたカミサマ、偽神か
ニセモノ同士、介入せずには居られない
一応サポート役として参加しよっか
……優希斗さん。
偽神細胞液のアンプル、貰える?

拒絶反応の酷い子に天璽符を投げて治癒
反動の疲労を抑える為に治癒の出力は絞らせて貰う
ゴメンね、今回ばかりは疲労で昏倒する訳には行かないんだ

戦闘が始まれば後方から支援
「ブルーコア」、最大数展開
▲レーザー射撃を複数束ねてアイツの攻撃を撃ち落とす
妨害ぐらいはさせてよね

可能な限り攻撃は「仕掛鋼糸」の▲ロープワークで回避
勿論、負傷した子への天璽符を飛ばす事も忘れない
もし終盤、あと一押しが必要なら秘策を使おうか

「FORTE.50」に「C.T.弾頭」を装填
「銀塊」で魔砲陣描き、弾丸に▲全力魔法で▲エネルギー充填
以上を▲早業でこなし、偽神細胞液のアンプルを腕に突き立てる
疲労困憊に致死性のオーバードーズ?
それがどうした、顕現体の使い捨ても戦術の内だ
最悪、この仮初の身体の心停止から脳波消失までに
引き金を引ければそれでいい
偽"神"符の捨て身の一撃、喰らいやがれ――!!


司・千尋
連携、アドリブ可

偽神細胞液とか初めて使ったけど
面白くはない、かな

これが具合悪いってヤツか…
何か逆に楽しくなってきた、等
言いつつ辛いところは見せずに
軽い感じに振る舞う


近接や投擲等の武器も使いつつ
攻撃は基本的に『月夜烏賦』を使う
宵と暁との波状攻撃で纏めて攻撃
味方は巻き込まないようにする

敵の攻撃の隙をついたりフェイント等を駆使し確実に当てられるよう工夫
早業、範囲攻撃、2回攻撃、乱れ撃ちなどで手数を増やし
自分の能力や技能等全てを攻防に費やす


敵の攻撃は結界術と細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
オーラ防御を鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
割れてもすぐ次を展開
回避や防御する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用


文月・統哉
助けてくれ、裁いてくれ、許してくれ
彼の中に響くという祈りの声は
彼自身の祈りでもあるのかもしれないね

偽神化で生じる炎の様なオーラ
これが最善なら迷う事は無い
この地の未来を願った時に覚悟は決まってるから

UC発動
彼の命を断つ事で
未来の殺戮を防ぐと共に
偽神の呪縛から彼を解放する
その明確な意志を力にし
拒絶反応も捻じ伏せ己を強化
宵を手に戦う

UCをコピー(※着ぐるみ)されたら少し笑み
それでも意志の力で負けはしない!

高速活かし心臓狙うは【フェイント】
足を払い【体勢を崩す】
反撃を【見切り・武器受け・武器落とし】
【カウンタ―】に【破魔・浄化・祈り】込めて
命を断ち斬る

終わりを望む彼に
安らかな眠りを祈って

※アドリブ歓迎


月夜・玲
例え虚無だろうと、例え虚偽だろうと
其の名を…デミウルゴスを与えられたのならば
厚顔無恥に勝手気ままに、荒唐無稽な神足る振る舞いをするべきだったんだよ
それが何?
救えないから殺す、若しくは殺してくれ?
全く、期待外れも甚だしいね
ま、だからオブリビオン何かになってるんだろうけど
まあ、いいさ
さあ殺し合おうじゃないか


躰の痛み、脳に響く声
偽神化…キツいけれどもこれで対等だ
悪いけど長持ちしそうにないんでね、一気に行かせて貰うよ
【Load[Summon Data]】起動
攻撃力全振りで全召喚!
雷龍達は全員で『ブレス攻撃』
不死鳥は全突撃、その蒼炎で奴を『焼却』!
機械腕を『念動力』で操作
全力の拳を喰らわしてやる!


森宮・陽太
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

…くそっ
身体のあちこちが焼けるようにいてぇ
皮膚も筋肉も内臓も
灼熱の火箸でつつかれたような痛みしか訴えてこねえ

正直、気が狂いそうだ
おそらく「暗殺者」になれば痛みは無視できるが
あえて「陽太」として…偽神を殺してやらあ

「高速詠唱」+指定UCでブネ召喚
ブネと悪霊たちは「闇に紛れる」ようにこっそり背後に回らせる
偽神断罪剣は「視力、第六感、見切り」で射程を見極め
攻撃の直前に間合いから逃れるようダッシュやステップで回避

頃合い見てブネと悪霊に念を送り挟み撃ち
偽神にブネ達が「不意討ち」で絡みつくと同時に
俺は真正面から二槍伸長「ランスチャージ、串刺し」
そのまま心臓をぶちぬいてやらあ!


ユーフィ・バウム
大丈夫です、体は丈夫にできてますので!
偽神細胞液を接種して臨みます

体が焼けそうな熱さ、内側から引き裂かれそうな痛み
けれども【覚悟】の上です。口元に笑みさえ浮かべ
さぁ勝負ですよ、『デミウルゴス』
――《戦士の手》と共に!

偽神細胞の影響か、真の姿の時のように青い髪と白い肌に
氷炎の戦士の手はさらに巨大な竜を宿し
【功夫】を生かし打ちかかるッ!

相手の剣の間合いを【見切り】、避けると共に【ダッシュ】で
接近、【鎧砕き】の打撃をねじりこむッ!
吼えろ、私の拳たち!炎竜、氷竜!
今こそが神をも越える時ですっ

きっと長くは持たないので、長期戦を考えず攻めます
仲間と連携し、ラッシュを続けて
けれど相手もフォーミュラ
肉体の軋む中、強烈な一撃を受ければ倒れそうですが
きゃぁぁっ……!

――至れ、オーバーロード!
ここで真の姿を解放!
崩壊した世界で必死で生きてきた人々に明日を届ける為
何度でも!《限界突破》してみせますわっ!

敵の追撃を【オーラ防御】で弾き飛ばし、
組み付いて地面というマットへ、全ての【力溜め】た
投げで叩き込みますわっ!


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

…偽神細胞が首の噛み傷の呪詛に干渉している?
不味い…吸血衝動が高まって、視界が紅く…

拒絶反応の影響で両目ともに紅に変化
激しい吸血衝動に苛まれながらデミウルゴスに黒剣を向ける
この世界に破滅を齎す神は俺が殺す!

「地形の利用、ダッシュ」で身を隠しながら至近距離まで接近し
「闇に紛れる」よう死角を取ったら「2回攻撃、鎧砕き」+指定UC発動し18連撃で一気に全身を斬り刻む
偽神断罪剣は「視力、見切り」で射程と軌道を見極め「怪力、武器受け」で全力で逸らそう

ブーストが必要なら2本目の接種も躊躇わないが
尚足りなければ「不意討ち」気味にデミウルゴスに噛みつき「吸血」
血ごと偽神細胞をもらう




「皆、大丈夫なの?」
 現地に転送されたその瞬間。
 懐に収めた注射器を確認しながら、水色と白の清潔な印象を与える衣装に身を包んだ、枸橘・水織が気遣う様な表情で問いかける。
「そうですね。……内側から細胞と言う名の熱で体を焼かれ続けている様な、そんな感じが続いています」
 水織の其の気遣いに、己が体内に染み込みやすくする様、冷却水を作成して体に流し込みながらそう答えたのはウィリアム・バークリー。
(「熱のせいですかね? 少し頭の働きが鈍く感じられますが……戦闘に支障が出ないことを祈るばかりですね」)
「まったく……酷い頭痛だよ。粗悪なアブサンを生のまま頭に注いでもこうは酷くならないだろうな」
 ウィリアムの胸中の想いを読み取ったかの様に。
 二日酔いでは済まされない程の頭痛を感じつつ首肯したのはキリカ・リクサール。
 フランスの至高の一品、悪魔の酒とも呼ばれる酒を例えに出して微苦笑を綻ばせるキリカの其れに、あれ、と地龍・凌牙が首を傾げた。
「『アブサン』って何だ?」
「ああ、あの酒か。フランスで作られた極上の酒。しかし毒性があり、飲み過ぎて精神障害を起こした偉人もいると聞いた事がある。……確かに偽神細胞の性質を考えると、言い得て妙かも知れないね」
 凌牙が首を傾げるのに、愉快そうな笑みを浮かべた月夜・玲がそう答えると。
「其の酒の話は初めて聞いたけれどよ。でもそれで今更死にかけるって言われたって、そのぐらいでビビってられないぜ!」
「ええ、そうですね。大丈夫です、わたしの体は丈夫に出来ていますし、覚悟はとうに出来ていますのでっ!」
 凌牙の勢いに同意しつつ、腰に帯びた勇気の実を摘まんで自分の体内の拒絶反応を勇気で抑制をかけたのはユーフィ・バウム。
 その銀のツインテールが見る見る内に、青く染まり、良く焼けた小麦色の肌が、病人の様に白く透き通っていく。
 其の一方で。
(「……ぐっ。偽神細胞が、首の噛み傷の呪詛に干渉している……?!」)
 その全身に怖気の様な何かが競り上がってくるのを感じ、思わず戦慄の表情を浮かべたのは、館野・敬輔。
 喉元から競り上がってくる衝動に敬輔の本能的な其れに対する恐怖と寒気が走る。
 その様子に気がついたのだろう。
(「サポートだけ出来れば良いと思ってきたけれど……大正解だったかな。後輩君達が頑張っているわけだしね」)
 そう胸中で呟いて。
 レモン・セノサキが不可視の天璽符を投擲する様に敬輔の背に貼り付けて、其の衝動を少し緩和させながら微笑んだ。
「まだデミウルゴスにも会っていない状況だよ。くれぐれも無理はしない様にね」
(「まあ、気休めにしかならないとは思うけれどね」)
「ああっ……分かっている」
 体を襲う拒絶反応と噛み傷に籠められた呪詛に其の体を蝕まれ、その赤と青の色彩異なる双眸を、紅に染めた敬輔が小さく頷く。
 激しい吸血衝動は、レモンの天璽符によって微かに抑え込まれ、渇いていはいるが、戦えない程ではなくなった。
 と、そこで。
「さて、どうやら来たようだぜ、お前等」
 口元に皮肉げな笑みを浮かべながら。
 目前に現れたデミウルゴスを其の手の結詞で指し示すのは、司・千尋。
(「偽神細胞液とか初めて使ったけれど……」)
 自分のヤドリガミとしての肉体が何かに侵食され、それを拒絶する様に、本体にのし掛かってくる息苦しい圧迫感。
(「……正直面白くは無い、かな。これが具合悪いってヤツか……」)
 仮初めの肉体に走る、締め付けられる様なそれに思わず込み上げてきそうな何かを笑い飛ばす様にしながら、千尋は思う。
「……くそっ。体の彼方此方が焼ける様に痛くなっていてぇ……。千尋は凄いよな……。そんな、平然と笑っていられるんだからよ」
 全身を絶え間なく苛み、襲うその灼熱感に苦痛の呻きを漏らし精一杯の強がりを口に出すのは森宮・陽太。
 陽太の苦痛に気がついたレモンが気遣わしげに目を細めて、陽太の背にそっと天璽符を貼り付ける。
 不可視のあらゆる症状を癒すとされる治癒符であるそれは、まるで氷枕の様な涼しさを陽太の体に齎した。
「サンキュ、レモン」
「まあ、気休めのお守りみたいなものだよ。今回ばかりは疲労で昏倒するわけにも行かないから、あまり過信しすぎないでね、陽太さん」
 レモンの其れに陽太が分かっていると静かに頷いた丁度その時。
『……お前達……猟兵共か……!』
 肩や腕、胸、目に傷を負い、黒血を流すデミウルゴスが現れ陽太達の姿を見てその肩に偽神断罪剣を担ぎ上げる。
 同時に左の鉤爪状の手で、傷ついた頭を……耳を押さえる様にしてアアアアアアッ……! とこの世のものとは思えぬ絶叫を迸らせた。
『『痛い』、『苦しい』、『熱い』、『助けてくれ』、『裁いてくれ』、『赦してくれ』……?! 煩い、煩い、煩い……! 俺に……只造られたに過ぎない力無き俺に如何してお前達や人間共の苦しむ声が聞こえてくる……?! ヤメロ……ヤメロ、ヤメロ……! 俺にはそんな力なんて無い。誰かを救う力など、この俺には……!』
 そのデミウルゴスの呪詛の様な叫びを聞いて。
「……『助けてくれ』、『裁いてくれ』、『赦してくれ』……か。更に俺達が味わっている此に対する苦痛の声も、君には聞こえていると、そう言うのか」
 偽神細胞への拒絶反応で体に齎される身を切り刻まれる様な苦痛に顔を顰めつつ。
 それでもデミウルゴスの声を聞いた文月・統哉は、静かに彼を見つめていた。
「……そう、ですね。あの方はきっと……ずっと人々の苦しみを、痛みを……懺悔の祈りを、その身に受け止め続けているのでしょう」
 統哉の呟きに微かに掠れた幼い少女の声で小さく答えたのは、『龍神』蒼・霓虹。
 か細い霓虹のその言の葉に、籠められているのは深い其の共感。
 それは、嘗て信仰が失われ、自らが脅かされた過去を持つ虹龍の想いであろうか。
 霓虹の呟きに見え隠れする何かに気がついた統哉がそうだね、と静かに首肯した。
「俺達の苦痛に喘ぐ声や、人々の祈りの声が聞こえてくると言うのは、もしかしたら、彼自身がそう感じているから、なのかも知れないね」
 内側から煮えたぎる溶岩の様に襲い来る偽神細胞と言う名の『毒』に答える様に。
 全身から紅蓮の焔の如きオーラを吹き出しながらの統哉の其れに、デミウルゴスが殺気交じりの濁った瞳を叩き付ける。
 その濁った瞳に籠められた深き絶望と諦念を見て、まあ、と玲が冷笑交じりに、腰まで届く程の黒髪を梳いた。
「例え虚無だろうと、虚偽だろうと。其の名を……造物主たる『デミウルゴス』の名を与えられたのならば。厚顔無恥に、勝手気ままに、荒唐無稽な神足る振る舞いをするべきだったんだよね」
『デミウルゴス』
 傲慢で身勝手な、虚偽なる創造神としての名を与えられし者であるならば。
 有から有を創造する力で、『世界』を勝手気ままに作り上げるべきであった。
 だが、このデミウルゴスは……。
「救えないから殺す、若しくは殺してくれ? 全く、期待外れも甚だしいね」
 そう言って、冷笑交じりに肩を竦める玲の其れに、デミウルゴスがその虚ろな眼差しに純然たる殺意を宿す。
『煩い……煩い……煩い……! 有象無象の1人に過ぎぬお前などに分かるものか……! この人々の祈りの声が届く苦しみが! 其の苦しみの声を絶えず聞かされながらも、人々に何も出来ぬ無力な俺の絶望が……!』
「まっ、そうだな。所詮、私達にお前の苦悩や苦痛など、分かる筈も無い。所詮、私達はお前の言う所の『人間』だからな」
 玲に叩き付けられた憤怒と憎悪の叫びを聞いて。
 何処か愉快そうに、嬉しそうに口の端に冷酷な笑みを浮かべたキリカが、からかう様に言葉を投げつける。
「だが、だからと言ってお前に人を殺させる訳には行かないんだよ。それが私達、猟兵だからな」
「……そうだね、こ……キリカさん」
 後輩君、と思わず呼びかけてしまいそうになった自分に苦笑を零したレモンが、キリカの結論に同意しつつ淡々と話し続けた。
「作られたカミサマ、偽神。それがニセモノである、あなた。ならば私は……ニセモノと言う『同類』として、あなたを止めずにはいられないんだよ」
 ――何故なら、レモンは古い『偽身符』に魂宿りしヤドリガミ。
 嘗て『ヒト』であった頃の自分を模倣して作り出した、紛い物でもあるのだから。
『煩い……煩い……煩い、人間共……! もうこれ以上、お前達の苦痛、絶望、哀しみからの救済を俺に願い、祈るな……! 俺は、無力なる偽神なのだから……!』
 ――だから、殺す。
『お前達を……この俺を苦しめる人間達は、この手で殺す……!』
「……そうですか。それが、あなたの答えなのですね」
 その全身を焼き尽くさんばかりの熱に体を犯されながらも、尚。
 青きツインテールと、まるで病に罹ったかの様に白く透き通った肌を晒しながら、ユーフィは笑う。
 その双腕に、闘気より象られし紅の竜と、自らの裡に宿す蒼穹の如く強き覚悟を具現化した青の竜……双頭の竜を宿しつつ。
「……造られた、と言う記憶があるからこそ、彼は苦しみ続けているのかしら?」
 そんなユーフィの隣に立つ様にして。
 AlchemyBubbleWand:通称【ABW】……種々雑多な精霊達の力を操ることの出来るその短杖を構えながら誰に共無くそう呟く水織。
 その水織の呟きに、さぁね、と玲が肩を竦めて諦めた様に首を横に振った。
「まあ、救えないだ何だとか戯言を言っているから、オブリビオン如きになっているんだろうけれどね。私にはどちらでも良い話さ」
 その玲の呟きに。
 凌牙がぎゅっ、と力強く両拳を握りしめ、その翡翠色の瞳を鋭く細めた。
「どんな理由であったとしても、放置しておけばこいつは人々の命を奪っちまう! オブリビオンであるお前に、俺達はもうこれ以上、誰の命も奪わせる訳には行かないんだよ!」
「……ああ、そうだな」
 その凌牙の叫びに応じる様に。
 黒剣の刀身を赤黒く光り輝かせながら、敬輔が淡々と首肯した。
『渇き』が酷い。
 誰かに頼めばその血を分けて貰える可能性は高いが、かといって、今の陽太達にそんな余裕は無いだろう。
 だから……今は。
「この世界に破滅を齎す偽神よ! 貴様を、俺達のこの手で殺す!」
 其の敬輔の叫びと共に。
『死ね……人間共……! もし、それが出来ぬなら……俺を殺してみろ……!』
 偽神断罪剣を大上段に振り上げたデミウルゴスの怨嗟と悲嘆に塗れた声が迸り、其の絶望が、戦場全体を漆黒に覆い尽くした。


 漆黒の濃霧の如く大きく広がっていく、偽神細胞の奥に眠る虚無。
 其の虚無と絶望こそが、今のデミウルゴスを、デミウルゴスとしている中核。
 その核に直接触れることで、霓虹が自らに予め接種して来ていた偽神細胞が強く、強く反応する。
「……この絶望と虚無と哀しみから、あなたを解放して差し上げる為にも、自分は、出来ることをやるしかありません……」
 其の霓虹の呟きと共に。
 氷晶で出来上がった虹龍……夢や理想を壊され追われる事となった1人の少女に融合し、彼女を救った龍……を模した戦車が現れる。
 青と赤に彩られた其の龍に跨がる霓虹を覆う桃色の体毛が青く彩られ。
 同時に、その青き体毛……それは、竜神の『肌』に等しい……の上を、青と白の氷晶の鎧装が覆い尽くしていく。
 虹色がかった其の虹龍の鱗装甲から造られた鎧装を纏った霓虹がぐい、と自ら跨がる<虹彩(戦車龍)>の手綱を引くと。
 ――バサリ。
 と<虹彩>が空に浮かび上がった。
 霓虹の背に、凍てつく様な縦の虹に彩られた幻日翼を生やしながら。
「幸運を齎すって、俺とは真逆の性質だな! でも、こんな所でへこたれていられるかっ! お前に纏わり付いた其の穢れ、塵一つ残さず洗い流してやるからな……!」
 全身を苛む激しい拒絶反応による痛みに激しく身を捩らせながら。
 ダンッ、と力任せに大地を踏み拉く様に蹴り、そのまま一気に肉薄する凌牙。
「ありがとうございます。……主砲一斉掃射、皆さんを援護します……!」
 凌牙に頷くと同時に、<虹彩>に取り付けられた主砲から、虹色のクローバー型の魔法弾幕を張る霓虹。
 <虹彩>の砲撃を煩わしげに、ややぎこちない動きで左腕の鉤爪を振るって叩き落としたデミウルゴスが。
『俺を殺せるなら……殺して見せろよ……!』
 叫びと共に、大上段に振り上げていた偽神断罪剣を大地に振り下ろす。
 その一撃に大地が叩き割られるとほぼ同時に、凄まじい程の漆黒の颶風が衝撃と化して戦場を覆い尽くさんばかりに広がっていく。
「……っ! ちっ、そんな攻撃、躱す余裕は……!」
 凄まじい漆黒の衝撃波が戦場を叩き割らんばかりの質量と化して襲いかかってくるのに、思わず呻く凌牙。
(「だが、此処で立ち止まってなんていられねぇっ! 俺達には、時間が無いんだ!」)
 体内を駆け巡る偽神細胞への拒絶反応が、容赦なく体力と其の命を自らの身体から奪っていくから。
 だから……。
「安心しろ、後ろは任せておけ」
 千尋が呟きと共に、摺足で凌牙の後を追う様に走りながら無数の鳥威を展開し、焦茶色の結界を其れに纏わせて。
「そうだね。例え、今はダメージにならなくても、牽制ならば出来るから……」
 衝撃の威力をクッションの要領で鳥威に受け止めさせて其の威力を減殺したところで、水織が素早く泡色の結界を張り巡らす。
 水泡の結界が突出した凌牙を守る様に展開され、其の負傷を最小限に抑えた所で。
「……行きますっ、援護をお願いしますよキリカさん……!」
 ――轟、と。
 其の背のディアボロスエンジンを起動させて空中へと飛翔、同時に双腕を地面に向けて突き出すユーフィ。
 ――覚悟を蒼穹の力として具現化した、右腕の『水竜』
 ――闘気を紅蓮の力として具現化した、左腕の『火竜』
 双頭の竜と化した自らの気を荒れ狂う竜巻に乗せて解放すると、螺旋状の巨大な竜と生まれて大気を震わせた。
 その咆哮と共に飛びかかる『水竜』と『火竜』に追随して、ディアボロスエンジンを加速させて滑空し肉薄するユーフィ。
 其れを迎撃する様に、其の巨大な偽神断罪剣を上空に向けて横薙ぎに払い漆黒の衝撃波を飛ばそうとしたデミウルゴスに向けて。
「了解だ、フロイライン・ユーフィ」
 半分位軽口を叩く様に応えたキリカが、素早く腰に帯びた強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"を構える。
 偏頭痛と体中を苛む灼熱感、更に時折聞こえる笑い声に、体内を荒らされながら。
(「ふん……拒絶反応がこれ程とはな。軽口を叩かねば自意識を保てない程とは……酷いザマだ……」)
 それでも“シガールQ1210” の引金を躊躇いなく引くことが出来たのは、数多の戦いを経験し、その中で育まれた連携の賜物であろう。
 銃身を彩る黄金のラインが淡い黄金色の輝きと共に無限にも等しい弾丸を掃射、偽神断罪剣の軌道を牽制。
 その間にユーフィの双竜が大気を振るわす咆哮と共に突進し、デミウルゴスを食らう様に殴打する。
『……この程度か!』
「いいえっ! まだ、戦いは始まったばかりですっ……ゲホッ」
 偽神細胞への拒絶反応故か、命を零す様に軽く口元から喀血しながらも尚、笑みを絶やさぬままにユーフィが肉薄、連撃を放つ。
 右と左の拳から放たれる連続した殴打が、其の体を打ち据えんとするのを、デミウルゴスが左の鉤爪で受け止め。
『終わりだ!』
 そのまま大剣を撥ね上げる様に振るい、偽神細胞の暴走を抑え込もうとするユーフィを真っ二つにしようと……。
「俺達は、貴方に今も、未来も殺戮をさせない! 貴方を縛る偽神の軛から解き放つために此処に来たんだ!」
 全身にちょっと目付きの悪い首元を赤いスカーフで覆ったクロネコの着ぐるみを着服し、漆黒の大鎌『宵』を構えた統哉が急襲。
 大上段から振り下ろされた『宵』の刃先が漆黒を食い破る淡い白い燐光を伴った軌跡を描いて漆黒の大剣とぶつかり合う。
 大鎌と大剣の刃先が鬩ぎ合い激しい火花と金属が擦れ、偽神細胞が焼ける異様な臭いが周囲に漂い始めたその瞬間。
「望まぬ生を与えられた不条理へのあなたの怒り……ぼくらが持っていきますよ! 行けっ! Chaostic World!」
 高らかな叫び声を上げると共に、ウィリアムが描き出していた茶・青・赤・緑・群青・黄・白・黒色の魔法陣を起動させた。
 ウィリアムの号令と共に振り下ろされた手に応じて、8大精霊属性……地・水・火・風・氷・雷・光・闇の弾丸が放射線状に発射。
 相克し、時に協同する8大属性のそれが色取り取りの弾幕と化して、デミウルゴスの大剣に次々に着弾しその勢いを削いでいく。
 と……その隙をついて。
「其処だね。行って……ブルーコア!」
 喀血するユーフィに素早く天璽符を投擲して、其の偽神細胞の浸食を僅かに遅くしながら、レモンが自らの周囲にブルーコアを展開。
 蒼く薄らと発光している球状の極小ビットが戦場に鳥の様に飛び立ちながら、無数の光線を解き放つ。
 其の光線の一撃、一撃が、デミウルゴスの体を少しずつ削るその間に。
「読み込み制限解除。さあお祭りと行こうか!」
 踊る様な、弾んだ声を上げ。
 戦場を覆い尽くさんばかりの雷光で構成された12体の雷龍達が咆哮と共に、飛び込む様に一斉にブレスを口腔内から発射。
 ワンワンと大音響で頭の中に直接響き渡る声と、全身を苛む痛みに流石に顔を顰めながら、玲が乾いた唇を舐める間に。
 雷龍の空中から放たれた無数のブレス攻撃が、デミウルゴスの周囲を穿ち、その身を焦がして動きを阻害する。
「……この位じゃそう簡単に倒れてくれないか。ならば一気に行かせて貰うよ! 幾らレモン君が限界時間を引き伸ばしてくれるとしても、限界はある訳だからね! 羽ばたけ、不死鳥達!」
 そのまま114体の蒼炎で構成された不死鳥の群が一斉に羽ばたき、凌牙達を追い抜く様に肉薄し、蒼炎でデミウルゴスを焼き払わんと……。
『その程度の力で、俺を殺すなどと片腹痛い……!』
 キリカのフルオートの銃弾を肉体で受け止めて体から煙を上げながらも、まるで倒れる様子を見せぬデミウルゴスが雄叫びを上げる。
 罵声と咆哮の綯い交ぜになった其れに呼応して、戦場に飛来したのは……。
「……へぇ。散々死にたいとか言っておきながら、中々に目の付け所が良いじゃ無いか。私のあの雷を捕食したのか」
 現れた其れの姿を見て、驚嘆と僅かばかりの感心を伴った声を玲が漏らした。
 玲の赤き双眸は、現れた12体の雷で構成された最大5mの龍達……即ち、偽神細胞で組み上げられ、複製されたそれに向けられている。
 無音の咆哮と共に、羽ばたいた114体の蒼炎で構成された不死鳥達へと裁きの如く雷のブレスが降り注ぎ、何体かを消失させ。
『逝くが良い!』
 そして偽神断罪剣を一閃し、数百体の漆黒を纏った蒼炎で構成された不死鳥達が羽ばたき、次々に玲の不死鳥達を飲み込んだ。
「格上で、しかも数の暴力も上。此方の龍や不死鳥達がやられるのは必然か!」
 そのまま強襲してくる漆黒の不死鳥達を打ち払う様に、身長の2倍サイズの機械の右腕を召喚し、生き残りの不死鳥たちを薙ぎ払う玲。
 それでも、不死鳥達の群れは止まらない。
 更に、呼び出された12体の漆黒の雷龍が轟きと共に降り注がせる雷撃のブレスが、戦場全体を覆い尽くそうとするのに。
「やれやれ……中々やってくれるじゃないか」
 殊更に軽薄と太々しさを保った口調で呟いた千尋が無数の鳥威を展開し、それらを結詞で繋ぎ合わせて鳥威をばさりと開く。
 開かれた鳥威が巨大な蜘蛛の巣状の網の盾となって、辛うじて其の雷撃を食い止めるが、全ての攻撃を食い止めきれない。
「ちっ……防御している暇はねぇぞ!」
 降り注ぐ雷撃の中を左に右に走って掻い潜りながら必死の叫びを上げる凌牙の其れに、霓虹が<虹彩>で上から覆い被さる様にして。
「自分達がこの攻撃は食い止めます……。今の内に、少しでもあの方に攻撃を……」
 囁く様な霓虹の其れに、凌牙が荒々しく頷きながら再び生み出された不死鳥達の群れに突進していく。
 前傾姿勢になって一気に不死鳥達の合間を掻い潜り抜けようとする凌牙の側面が、不意に影に覆われて……。
(「ちっ……玲の機械腕までも……!」)
 コピーしたのか、と凌牙が衝撃に備えた、其の刹那。
「……だめだよっ!」
 レモンがブルーコアの砲塔を咄嗟に其方に向けてレーザーを一斉掃射、機械の腕の動きを僅かながら鈍らせて。
「やらせない……!」
 水織が【ABW】の先端を突きつけ泡の竜巻を放出し、凌牙と機械腕の間に辛うじて割り込ませる。
 割り込んだ泡の結界が、まるで毬の様に撥ね飛ばされようとした其の状態を見やったその時。
(「……ええいっ! やってやる!」)
 極近未来予測システム搭載型スマートウォッチ「LAKHESIS」からの情報を受け取った凌牙が、儘よ、と其の泡の結界の方へと飛んだ。
 その瞬間、機械の腕が泡に振り下ろされ、泡が弾けて爆発する。
 其の爆発の衝撃を背中に直撃させた凌牙が、其の背に深い傷を作りつつ、一気にデミウルゴスの懐に飛び込んだ。
『なにっ……?!』
 小蠅を払うかの如く偽神断罪剣で戦場を薙ぎ払い、統哉やユーフィ達を吹き飛ばしたデミウルゴスが其の凌牙を見て思わず唸る。
「……ふん、先ずは一発、と言うところの様だな……」
 フルオートモードの"シガールQ1210"を全弾撃ち尽くし、軽やかな足をふらつかつつ大剣から距離を取ったキリカが鼻を鳴らした時。
「俺も、統哉や霓虹と同じで、てめぇには正直怒りを覚えらんねぇ」
 ――だが。
「それでも人々を守る為に、てめぇを倒すしかねぇ以上、せめて最期ぐらいは安らかに眠れる様に、其の穢れを俺が喰らってやる!」
 何かを振り切る様な咆哮と共に。
 其の拳から生やした黒竜の爪牙に、《穢れを喰らう黒き竜性》を纏わせた凌牙の爪牙による殴打が、デミウルゴスの体を容赦なく貫き。
 その黒竜の詰め牙に籠められた《穢れを喰らう黒き竜性(ファウルネシヴォア・ネグロドラゴン)》の一撃が、デミウルゴスを撃ち抜いた時。
『ガァァァァァッ……! お前……お前……お前……っ!』
 自らの偽神細胞から届かぬ祈りの声を憎む心の一部……其の穢れが奪われた事に気がつき、デミウルゴスが憤怒の叫びを上げた。


『お前……お前等……! 俺はお前等を斬り殺す……! 作られた偽神たる俺から、俺の澱みを奪い殺そうとするお前達を……!』
 凌牙が素早くバックステップをして後退しようとした矢先。
 そうはさせじとばかりに左腕の鉤爪を凌牙に向かって突き立てながら憤怒の雄叫びを上げるデミウルゴス。
 体が、熱い。
 あまりにも激しく渦巻く破滅的な熱が、凌牙の心と体を蝕み、其の体を軋ませた。
「ちっ……攻撃にこれだけ徹しても……身体が此処まで悲鳴を上げていやがる……!」
 だから、間に合わない。
 その爪への凌牙の反応は、完璧に遅れていた。
 「LAKHESIS」が必死に警鐘を鳴らすが、それでも身体を蝕む偽神細胞への負担が凌牙の不運を加速させ、その動きを間に合わなくさせ。
 ――ドスリ、と。
「が……はっ……!」
 そのまま容赦なく突き立てられたその鉤爪が易々と凌牙の身体を突き抜けて、其の命を握り潰さんとしている。
 それでも、凌牙は息が出来ていた。
 凌牙にその鉤爪が突き刺さる直前に、割り込んだ無数の鳥威が致命傷だけは逸らしてくれたから。
「……こんな事なら、双睛を使うべきだったか? いや……未だ戦いは半ばも過ぎていないか」
 飄々と呟く千尋だったが、明らかに其の声音には力が無い。
 いつもなら使っていたであろう双睛を出し渋ったのも、偽神細胞を撃ち込み、拒絶反応で判断力が低下しているが故だろうか。
「ハハッ……まだまだ俺達は終わっていないぜ、デミウルゴス。如何した? もっと遊ぼうぜ」
 から笑いを上げた千尋の其れを見て、其れまでじっと、建物の影に隠れる様にして隙を伺っていた陽太の表情が微かに鈍る。
(「ちっ……何を勘違いしていやがったんだ、俺は」)
 千尋は、こんな逆境の中でも笑える程に強いヤドリガミだと思っていた。
 無論、笑えると言う事は、それだけ強いのは間違いない。
 だがそれは、普段の様な、飄々とした強さでは無い。
(「あれは……やせ我慢か? ちげぇな。俺達にあいつは、見せるわけには行かないんだ。偽神細胞を取り込んだ事で、身体に起きている拒絶反応に苦しんでいる自分自身を」)
 それは、千尋があくまでも仮初めの肉体たる、ヤドリガミであるが故だろう。
 そしてその理由は、レモンの在り方にもよく似ている。
 そんな状況で、正直、気が狂いそうだ、なんて弱音を。
『暗殺者』になって、其の痛みと向き合うことをしない――なんて。
「俺にはとてもじゃねぇが、出来ねぇよ。ならば……」
『陽太』として出来ること、それは……。
 レモンの打ち込んでくれた天璽符による冷却が少しずつ弱まっていく。
 いつまでも、息を潜めて隠れ続ける事なんて、今の陽太に出来はしない。
 ――と、その時。
『殺す……殺してやる……! お前達1人残らず、生かしてはやらぬ……!』
 ――グン、と。
 憎悪に塗れた言葉に応じにデミウルゴスの偽神断罪剣に赤黒い線が走った。
 まるで生き物の血流の様に蠢く其れに促される様に、其の刀身が一際鮮烈な漆黒の闇を解き放つ。
 溢れ出した闇の質量が陽太の身体を掠めた其の刹那。
「がっ……?!」
 全身を駆け巡る灼熱の火箸で突かれた様な痛みが急激に加速し、心臓をぎゅっ、と鷲掴みにされ、握り潰されそうな痛みを覚えた。
「ちっ……偽神断罪剣が増幅した上に……偽神細胞が強毒化した……だと……?!」
「……! ダメだよっ、死なせないっ!」
 一気に身体を蝕まれて心臓の動きを偽神細胞によって止められかけた陽太。
 その陽太の様子に気がついたレモンが一瞬顔色を蒼白に変え、全力を籠めた不可視の治癒符を投げつけた。
 投擲された治癒符が陽太の身体に貼り付いて、死に至る偽神細胞の毒を辛うじて中和してくれるが、陽太の口からは、血が零れ落ちている。
「でも此処で倒れたら俺は、俺じゃ無くなるんだよ……! 行くぜ『陽太』!」
 気合いの叫び声を上げて、濃紺のアリスランスを伸長させる陽太。
 放たれた濃紺色の刺突の一撃が、そのままデミウルゴスを貫こうと……。
『……その程度で殺せるものかよっ!』
 怒声と共に偽神細胞断罪剣を振り下ろし、容易く濃紺の光の線を弾き飛ばすと同時に、強毒性の偽神細胞を撒き散らすデミウルゴス。
「……っ! それはだめなの……!」
 戦場全体に吹き荒れようとしていた強毒性の偽神細胞に気がついた水織が思わず目を見開く。
 其の手は、滑る様に懐にしまわれていた注射器に向かい。
 そしてその注射器を、水織は、躊躇いなく自らの静脈に撃ち込んだ。
「……っ!!」
 撃ち込み、注入された偽神細胞液に反応して。
 ――バサァ!
 と其の背の一対の白翼が急成長。
 そしてその急成長は、輪の様に連なって次々に何対もの白翼を広げていき……。
 まるで水織の身体を花の中心に見立てて巨大な白い花の蕾へと生長したかの様に、その全身を包み込んでいく。
 花弁に見立てられた何対もの白翼。
 そしてそれに包み込まれる様に顔だけを晒して空中に浮遊し続ける水織。
 其の表情は何処か穏やかで安らかなものだったが……同時に其れは……。
「……水織さんっ!」
 自我を手放しそうになっている水織の様子に気がついたユーフィがゴロゴロと大地を転がる様にして強毒性の偽神細胞を躱しながら叫ぶ。
「寝ている場合じゃねぇぞっ!」
 鉤爪に貫かれながらも、辛うじて意識を保った凌牙が血反吐を撒き散らしつつ、続けて上空の水織に向かって叫んだ時。
「ええ……そうね」
 一瞬失神していた意識をどうにか取り戻すと同時に、水織が大地に向けて突きつけていた【ABW】に集中させていた魔力を解放した。
「この戦場一帯の魔力はみおが補足したよ……あなたには、この魔法から逃げ切ることはできない……!」
 其の詠唱と、共に。
 魔力で創造された巨大な剣が、陽太に吹き付けられた強毒性の偽神細胞を貫く。
 そのまま水泡が水織を包み込む白翼の様に強毒性の偽神細胞を包み込み、そのまま閉じ込めて水と共に浄化させていく。
 その瞬間を、狙って。
(「……ブネ、頼んだぜ」)
 陽太が咄嗟に前転する様に戦場に飛び込みながら、左手に銃型のダイモン・デバイスを構えて、其の引金を引く。
 其れと同時に、小竜姿のブネとその配下たる精霊及び悪霊達が、闇にひっそりと溶け込む様に潜行を開始。
 その陽太の行動に合わせる様に。
「……行くなら、今か……!」
 周囲の瓦礫の破片に隠れていた敬輔が、その紅の双眸で機を掴み取ると同時に、瓦礫から飛び出す様に姿を現して……。
 その赤い右瞳を、赤く不気味に光らせた。
 其の輝きは、鮮烈にして鋭意なる狩猟者……吸血鬼の如く。
 其れと同時に、赤黒く光り輝く刀身を持った黒剣の刃に、まるで生き物の如く蠢く鮮血色の線が走り始める。
「俺の刃を、受けるが良い!」
 低く、嗄れた吸血鬼の如き低い声と共に。
 敬輔が黒剣をデミウルゴスに向かって、突き出した。
 それと、ほぼ同時に。
「宵、暁」
 千尋が小さく命じると、月烏を構えた『宵』と、鴗鳥を持つ『暁』が千尋の周囲からふっ、と陽炎の様に姿を消す。
 敬輔の刺突の初撃を、デミウルゴスが漆黒の大剣で受け流そうとした、其の刹那。
「行くぜ」
 呟きと共に千尋がその瞳を金色へと変化させて眩い光を放ち、同時に懐から取り出した烏喙を抜き打って投擲する。
 投擲された漆黒の短剣に合わせる様に、月烏を構えた『宵』がデミウルゴスの側面から肉薄し、すかさず袈裟の斬撃を繰り返し。
 更に、鈍器とでも言うべき鴗鳥を構えた『暁』が蹂躙せんばかりの勢いで、デミウルゴスに襲いかかった。
『ぐっ……人にも劣る、人形如きの分際で……!』
 その場で鮮烈な回転斬りを繰り出そうとするデミウルゴス。
 だが、その時には赤い瞳から鮮烈な輝きを放っていた敬輔の返す刃で放たれた袈裟の斬撃が、デミウルゴスの右肩に迫っている。
『ちっ……!』
 やむを得ず、その攻撃を大剣でデミウルゴスが受け止めた……そう思った直後には、既に敬輔は深く体を沈め、黒剣を逆手に握り締め。
「……遅い」
 逆手に持ち替えることで虚を衝いた敬輔が袈裟から横薙ぎに黒剣の刃を移動。
 そのまま横一文字に斬り裂いた時には、既に下段から撥ね上げる様に刃を振り上げ、続けざまにその刃を振り下ろしていた。
 それは……憎悪と闘争の、死の舞踏(ダンス・マカブル)
 真っ直ぐな中で幻惑する様な弧を描き出して放たれた合計18連続の斬撃は、傷ついていたデミウルゴスの体を大きく傾がせる。
『ぐぐっ……死か……! 遂に俺を、死へと至らしめることが出来る者達が現れたと言う事か……?』
 呻きながらも偽神細胞断罪剣を袈裟に振るデミウルゴスの姿を見つめながら。
「グッ……まったく、酷いザマだな……」
 やや自嘲する様な口調でキリカが呟き、動きが鈍くなった偽神細胞断罪剣の軌跡を見切って避ける。
 大地に触れる寸前に迸った強毒化した偽神細胞のデータを、マッキナ・シトロンの解析ツールに掛けて、其のデータを解析しながら。
「頭の中ではダイナモが火花を散らしているし、心臓ではダンプカーがタップダンスを踊っているかの様に荒れ狂っている。そんな感覚を起こす程の猛毒が、この偽神細胞なのだよな」
 ――だが。
 ヴェートマ・ノクテルトによるしなやかな身体の柔軟性の強化に助けられ、その攻撃を今度は躱すことに成功する、キリカ。
 気のせい、ではない。
 明らかにその動きは、先程よりも遙かに機敏になっている。
 それも……。
(「目前に正しく強毒化したサンプル……私が求めているものもある」)
 キリカが求めていたもの。
 それは、毒。
 目前に吹き付けられた其の偽神細胞の毒そのものが、キリカのマッキナ・シトロンの解析速度を加速する。
 漏れた強毒性の偽神細胞の成分を凄まじい勢いで解析し、其の結果をヴェートマ・ノクテルトが拾って直接キリカの脳に刻みつけ。
 刻み込まれた成分データを元に偽神細胞への理解を深め、細胞を不活性化、或いは弱体化させる毒を製作。
 そのプログラムがヴェートマ・ノクテルトを通じて全身に行き渡る度に、キリカの動きのキレが徐々に、徐々に増していく。
『お前……何を?!』
 呻く様に叫ぶと同時に、体中を敬輔と千尋に切り刻まれ、全身を黒血に染め上げたデミウルゴスが、キリカに大剣を振り下ろした。
 威力が3倍に強化されたその一撃が、細胞自体には免疫を付けつつも、疲労で動きを鈍らせたキリカに迫るが。
「まだっ……未だですっ……!」
 荒い息を吐き、呼吸するのもやっとという調子で喘ぎながらも、凛とした表情を崩さぬ儘に、ユーフィが黒刃の前に立ち塞がった。
 そのまま双腕を補う様に纏われている水竜と火竜を衝撃として叩き付ける様に力任せの怒濤のラッシュを繰り出す。
 それは相討ち覚悟の双頭の竜の攻撃。
 双頭の竜がデミウルゴスに喰らいつく様に其の身体に叩き込まれ怒濤の衝撃を受けてよろけたデミウルゴス。
 其のデミウルゴスの様子を見て、漆黒の大剣による薙ぎ払いと強毒化した偽神細胞を受けながらも尚、凌牙が踏み込んだ。
「ああ、そうだ! まだ俺達は、負けてない……負けてねぇんだよっ!」
 叫びと共に、左手に漆黒の爪牙を伸長し、そこに呪いや不運を引き寄せる穢れを喰らう特性を解放する凌牙。
 凌牙の一撃がデミウルゴスの顔に真正面から叩き込まれ、その穢れを喰らうと。
『おのれ、おのれ、おのれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!』
 デミウルゴスが呪詛を喚き散らしながら、大剣を振り抜いた。
 振り抜かれた大剣の一撃が、右腕が偽神細胞の影響でだらりと垂れ下がり、動くのもままならぬ凌牙の身体を斜めから切断しようとした時。
「私の事を忘れて貰っては困るよ、デミウルゴス君!」
 口元に肉食獣の様な笑みを浮かべた玲が偽神細胞への拒絶反応に全身を震わせながら、再び12体の雷龍を召喚し。
「そうです。自分達の力を甘く見ないで下さい」
 そこに<彩虹>に乗り込んだ霓虹が畳みかける様に<彩虹>の砲塔から、今度は虹色の絶対零度の水流を圧縮した魔法弾を掃射した。
 玲の雷龍達の轟く咆哮と共に解き放たれた雷が天からの裁きの剣と化して、漆黒の大剣に叩き付けられ。
 そこに絶対零度の水流が津波の様に押し寄せて、デミウルゴスの全身を後方へと押し出し。
「その腕……切り落として……!」
 ウィリアムが8大精霊達の弾幕を鋭利な刃へと変化させて、大剣握る右腕を貫こうとする。
 8大精霊の弾丸を左手の鉤爪で受け、其の手を穴だらけにするデミウルゴス。
 ――だが、それでも。
 それでも、尚。
 渾身の力を込めたデミウルゴスの一閃は……火竜と水竜を纏うユーフィの双腕事、其の体を切り裂いていた。
 其の鋭い袈裟の斬撃が易々と双頭の竜を斬り捨て、交差した腕に叩き付けられ、更にその右肩から脇腹に掛けてを斬り裂く。
「キャァァァァァァァー!」
 身体を蝕む偽神細胞がそんなユーフィの華奢な身体の中で暴れ狂って、有り得ない方向へと捻じ曲がったその腕を無理矢理繋ぎ止め。
 同時に……ユーフィの頭の中で何かが爆発する様な感覚が襲いかかった。
 ――頭の中が冴え渡り、全身の傷が瞬く間に癒え、ツインテールが短髪に変わる。
 同時に病的に白かった肌に、健康的な赤みが差し、ユーフィの全身に確かな力を迸らせた。
 ――そう。それは……。
「……愈々、終局に近付いてきたね、後輩君」
 誰にも聞こえない様な、溜息の様な小声で。
 敢えて『後輩君』とユーフィ達に呼びかけながら、レモンが、この現場を予知した優希斗から与ったアンプルを取り出して……。
「ならば行こうか、私も。ヒトを越えた私達だからこそ辿り着ける境地……オーバーロードした其の世界に」
 呟き自らの腕にアンプルを突き立て、自らの身体への偽神細胞の摂取をオーバードーズさせる。
 全身に力が……それこそ紛い物の神になる力が迸り、同時に体中が朽ち果ててしまいそうな程の、致命の毒が駆け抜ける。
 体中が燃える様に熱く……否、燃え尽きた流星の様になる程の灼熱感を迸らせながら、レモンはFORTE.50を肩に担いだ。
 FORTE.50……ボルトアクション方式のアサルトライフルに籠められた其れは、C.T.弾頭。
 空間爆発すら起こしてしまう子弾を撒き散らす特製の炸裂弾道を籠めると同時に、パチン、と銀塊を指で弾いて空中に飛ばす。
「レモンさん……?!」
 ウィリアムが明らかにその肉体を朽ち果てさせながらも、淡々と『作業』の準備を整えるレモンの様子に気がつき、咄嗟に懸念の声を上げるが。
「大丈夫。所詮、この器は仮初めの物だからね」
 幼い容貌に、何処か酷く大人びた不敵な笑みを湛えたレモンがさらりと告げて。
 もうその必要は無くなったと言わんばかりに、パチン、と不可視の治癒府を弾いてウィリアムへの偽神細胞の浸食を抑え込んだ。
「何を……?!」
「さぁ、クライマックスだよ、皆! 先陣は私達が切り開く!」
 ウィリアムの静止を無視して、レモンは今にも消え入りそうな意識を辛うじて保ちながら、FORTE.50の引金を引いた。
 空間爆発を起こすC.T.弾頭が銀塊によって編み上げられた魔法陣を潜り抜けて、其の爆弾を一段と巨大化させて、発射される。
 発射されたレモンの必殺の一撃は、デミウルゴスが死に至る拒絶反応を加速させる強毒性の偽神細胞を迸らせ、妨害しようとするが。
「……くそっ……今だ、ブネ!」
 陽太がデミウルゴスの目前で軽々とヒトの限界を超えたユーフィとレモンの捨て身の攻撃に舌打ちをしながら己が悪魔の名前を呼ぶ。
 その陽太の命に応じた、ブネとその配下の精霊、悪霊達が、デミウルゴスの背後から自らの身体を粘着糸の様にして襲いかかった。
『グァァァァァァッ?!』
 後ろから襲いかかってきた粘着糸の様な小竜と其の部下達の行動に、大剣を抑え込まれたデミウルゴス。
 動きを縫い止められたデミウルゴスの様子を見て、既に朽ちつつある仮初めの身体に頷きながら満足げにレモンが微笑んだ。
「偽“神“符の捨て身の一撃、喰らいやがれーー!!」
 叫びと共にレモンの炸裂弾が直撃……デミウルゴスを空間事飲み込んで、大爆発。
 大轟音と共に叩き込まれた果てしない空間爆撃の一撃は、自らを作る偽神細胞を容赦なく蒸発させていく。
『俺は……俺は……!』
 それだけの質量と熱量に嬲られても尚、立ち塞がるデミウルゴスの様子を見て仮初めの肉体が腐り落ちるのを感じながらレモンが笑う。
「……生き残ったか。でも……キミの命は、もうじき途絶えるよ」
 そう告げて。
 自らの肉体が朽ち、グリモアベースに本体の古い偽身符と化してレモンが転送されたのと、ほぼ同時に。
「行きますわよーっ!」
 量子爆弾の如き其れに共に飲み込まれたにも関わらず、無傷で飛び出した蒼き鷹と化したユーフィと。
「ふん……漸く活路が見いだせた。感謝するぞ、レモン」
 先程までの緩慢な動きから一点、まるで羽の様に軽やかなステップを刻みながら、無傷のキリカが姿を現す。
 ――其は、この世界の理を越えし者達。
 即ち……オーバーロードの道を選びし、勇者達。
 そのユーフィの足元から一枚の鏡がすっ、と何事も無かったかの様に引いていく。
 自前で避けられるキリカと異なり、ユーフィが其の爆発で真の姿になったと言えども、無傷であった其の理由は……。
「まあ……後は任せるぜ」
 本体である結詞に取り付けた、八咫鏡……あらゆる攻撃を一度だけ無効化、遮断することの出来る万能鏡、双睛を千尋が用いたから。
 其の金の両目から鮮血の如き何かが零れ落ちるが、千尋は全く気にした様子を見せずに皮肉げに笑う。
 ――笑い続けている。
「当然だ」
 其の千尋の応援に静かに頷いたキリカが、自らの体内の鉄分やカルシウムを自分の体内で収束させていく。
 グリモアベースに強制送還される程の、命懸けのレモンの攻撃によって見出された活路と貴重な時間。
 其の時間を惜しみなく使う事で、漸く対偽神細胞用の毒の生成が完了したのだ。
(「後は、此を撃ち込むだけだ……」)
 体内に中和毒を張り巡らせ、偽神細胞の自らへの拒絶反応を最小限に抑えながら。
 キリカが薄目の黒い瞳で目配せを送るや否や、『蒼の鷹』ユーフィが頷いて……。
「この崩壊した世界の中で、必死で生きてきた人々に明日を届けるためならば! 私は、何度でも、限界を越えさせて貰いますわ!」
 雄叫びを上げ、全身に蒼穹のオーラを張り巡らし其れを双腕に募らせるユーフィ。
 水竜と火竜が、ユーフィの両腕の中で唸りを上げて紫竜と化し、其の周囲を蒼穹のオーラが電撃の様に彩り迸らせている。
「さぁ……行きますわよ、キリカさん!」
 叫びと共に全身の力を猛るオーラと紫竜に注ぎ込み、叩き付ける様にデミウルゴスに解き放つユーフィ。
 放たれた蒼穹のオーラの一撃が、陽太のブネに拘束されたデミウルゴスを吹き飛ばし、その様を鮫の様な笑みでキリカが見つめ。
「さて……では、私も征くとしよう」
 両指先と両足先から芋貝が体内に忍ばせている、毒を持つ鋭い銛を射出した。
 偽神細胞に抗い、其れを中和する特別製の毒がデミウルゴスに向かう。
『……ガハッ?!』
 ユーフィの勢いに押し出されて……息つく暇無くマット……大地に全身を仰向けに投げ出された、デミウルゴスの全身に。
『ガッ……ガァァァァァァァァァァァッ!!!!!』
 食らいつく様に放たれたその毒に貫かれ、全身の細胞が恐怖に泡立つ様に激しく瓦解していくデミウルゴス。
 そんなデミウルゴスを焼き払わんとばかりに、其の力を取り戻した114体の蒼炎の不死鳥達が一斉に啄む様に突進してきた。
「今度は微塵も残さず、焼き尽くしてやれ!」
 全身に走る激しい怖気に限界が近いと判断した玲の其れは、号令という名の命令。
 其の命令に応じた蒼炎の不死鳥達が、デミウルゴスを蒼き焔に包み込んでキリカの毒ごと焼き尽くすその間に。
「トドメは……任せますわ」
 水織が呟きと共に、激流の如き魔力を注ぎ込んで創造した巨大な水の槍で蒼炎に焼却されるデミウルゴスを貫くと。
「そうですね。では……せめて、あの方がこれ以上苦しまないためにも、少しでも安らかに、お眠り下さい」
 来世は安らかに過ごすことが出来る様にと言う、願いと祈りを籠めた麻酔属性を付与したレーザーを解き放ちながら霓虹が控え目に頷いて。
 身体を蒼炎に焼き尽くされ、激流に飲み込まれて身も心も切り裂かれているデミウルゴスに麻酔処置を施し安らかな眠りにつかせる間に。
「これで……!」
 肉薄しようとした敬輔の体を先程まで収まっていた激しい『渇き』が再び襲った。
「がっ……!」
 息をつくことが出来ぬ程の激しい吸血衝動に、敬輔は堪えるのが精一杯で黒剣を大地に突き立て、その場に膝をつく。
 それは、代償。
 全力の18連撃の斬撃の代償を、他者に一度も与えようとしなかったが故に襲いかかる、寿命を削られる代償のぶり返し。
 その代償を激しい吸血衝動で払わされ、喘ぐ様に息を吐き、吸血パックを飲み干す敬輔を陽太が気遣わしげにちらりと見やりつつ。
「行くぜ!」
 ダイモン・デバイスから持ち替えた淡紅のアリスグレイヴと、濃紺のアリスランスを伸長する陽太。
 淡紅色の光の線が、一閃の刃と化して、ウィリアムの弾幕に穿たれた左手の鉤爪を抉る様に貫き、デミウルゴスの胸に到達。
 そのまま胸甲を貫く様に突き出されると同時に其の体を穿ち。
 そこに濃紺の光の線が吸い込まれる様に入り込み、既に灰になった胸部から剥き出しになっている心臓を貫いた。
 それでも、デミウルゴスは目覚めない。
 霓虹の麻酔で眠ったデミウルゴスの安らかな眠りは妨げられない。
 その様子を見て取った陽太が。
「統哉。後は……」
 と空を仰いで統哉を見上げた時。
「……ああ。俺が、彼の命を絶ち切ろう。安らかな終わりを望む貴方の、安らかな永遠の眠りを心に祈り」
 強き意思で力尽くで偽神細胞の拒絶反応を遮断していたクロネコレッドの着ぐるみを身に纏った統哉が滑空し、『宵』を一閃。
 星の如き星彩を煌めかせる漆黒の大鎌、『宵』の刃先に籠められた破魔と浄化のその祈りが、デミウルゴスの体を斬り裂き。
「……光、あれ」
 統哉の祈りの聖句に応じて、聖なる祈りの光が、デミウルゴスの全身から迸った。
 其の光に飲み込まれ、デミウルゴスが永遠の揺り籠……骸の海へと還っていく。
 ――そうか……俺は……。
 遂に『死』を与えられたのだという、幸福な夢に包まれた儘。
 ――こうして。
 デミウルゴスと猟兵達の戦いは静かなカーテンコールの時を迎えた。
 虚無にして虚偽なる神……『デミウルゴス』に捧げられた安らかなる眠りと共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月19日


挿絵イラスト