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アポカリプス・ランページ⑪〜偽神の盃

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●デミウルゴス
 廃墟に長い影が落ちていた。手をついた壁が崩れ、僅かばかり残っていた街の名残が消える。
「……さい」
 人の営みが、日々の名残が全て、すべて消え失せる。骸さえ残らず、流れた血も、焼き尽くした炎も無い地に——だが、声だけがあった。
「……煩い……煩い……煩い……!」
 頭の中、絶え間なく響く声に男は頭を震う。
「『助けてくれ』『裁いてくれ』『赦してくれ』……。 俺は、狂った教団に造られた偽物の神だ。なのになぜ、俺に人間の祈りが届き続ける……!?」
 骨も無く、屍肉さえ遠い地でフィールド・オブ・ナイン「デミウルゴス」は顔を覆う。異形の腕が頬をなで、は、と身を揺らした男の声が揺れる。
「……黙れ……黙れ……黙れ……! 俺に……お前達を救う力など無い……!」
 助けてくれと、裁いてくれと、赦してくれと。人は願う、祈る。全てを託すように縋るように、どうにかしてくれると信じて。
「祈りの声が聞こえなくなるまで、俺がお前達を殺し尽くしてやる」
 その全てを振り払うようにデミウルゴスは吼えた。
「あるいは、俺を殺してくれ……!」

●偽神の盃
「お集まり頂きありがとうございます」
 我らが友人よ、と告げたハイネ・アーラス(海華の契約・f26238)が、集まった猟兵達に視線を向けた。
「フィールド・オブ・ナインに関する話は、お聞きのことでしょう」
 彼らは、全員がオブリビオン・フォーミュラであり、そのうちの一体、フルスロットル・ヴォーテックスがカタストロフを発生させようとしているのだ。
「新たに一人、情報を得る事が出来ました。フィールド・オブ・ナイン、デミウルゴス。彼は無敵の偽神とされています」
 無敵と呼ばれる所以は、体内に偽神細胞を持たない存在からの攻撃を無効化する為だ。
「既にその身に移植された「偽神細胞」を持つストームブレイドの皆様であれば問題は無いでしょうが……、そうでない皆様にはひとつ手を打って頂きます」
 偽神細胞が無いままでは戦いにならない以上、戦いに、倒す為の力を得る必要がある。
「それが仮初めであるとしても」
 一度伏せた瞳をゆっくりと開いて、ハイネは告げた。
「ソルトレークシティで手に入れた偽神細胞液、これを調達してあります。皆様にはこれを注射して頂きます」
 注射器を並べると、ハイネは続けた。
「これにより、一時的な「偽神化」が可能です。……ですが、一時的な変化は、体に激しい拒絶反応をもたらします」
 偽神細胞を摂取するのだ。激しい拒絶反応は、絶命の危機さえある。
「皆様はどうか、この盃を飲み干し、耐えきってください。ストームブレイドの皆様は、どうかその力をお貸し頂ければ」
 セイレーンは誘いの光を灯す。淡く揺らぐ水面に似た光の中、ハイネは告げた。
「では、参りましょう。我らが航路へと。偽神を止めるために」
 終われぬ者へ終わりを告げに。


秋月諒
秋月諒です。どうぞよろしくお願い致します。

このシナリオは戦争シナリオです。一章で完結致します。

●プレイング受付について
 導入追加後の受付開始です。
 0時を過ぎる場合は翌日の8:31〜だと締め切り的にハッピーです。

 状況にもよりますが全員の描写はお約束できません。
 完結を優先し、書けそうなものを書いていく、という感じになります。
 予めご了承ください。

●プレイングボーナス
 「偽神化」し、デミウルゴスを攻撃する。

●リプレイについて
 戦闘開始からスタート
 難易度相応の判定をします。戦闘プレもしっかりないと危ないですよーな、そんな感じ。

 技能を並べるだけなどではなく、どのように行動し、どう対応するかなどが大切になるかと。

●偽神細胞の接種
 ストームブレイド以外の猟兵に必要。
 偽神細胞液を体内に注射し、接種する。激しい拒絶反応をもたらし、絶命の危機さえある。


●同行について
 キャパシティ上、複数の参加はお二人までとさせて頂きます。
 プレイングに【名前+ID】若しくは【グループ名】を明記してください。

 プレイングの送信日は統一をお願い致します。
 失効日がバラバラだと、採用が難しい場合がございます。

 それでは皆様、ご武運を。
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第1章 ボス戦 『デミウルゴス』

POW   :    デミウルゴス・セル
自身の【偽神細胞でできた、変化する肉体】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[偽神細胞でできた、変化する肉体]から何度でも発動できる。
SPD   :    偽神断罪剣
装備中のアイテム「【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ   :    デミウルゴス・ヴァイオレーション
自身が装備する【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】から【強毒化した偽神細胞】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【死に至る拒絶反応】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●うつろわざるもの
 濃く深い緑と、廃墟がそこにはあった。壁は崩れ、家としての形を遠い昔に失い——だからこそ、砦としては役に立つ。灰色の影が並ぶ地に、フィールド・オブ・ナイン「デミウルゴス」が立っていた。
「……煩い……煩い……煩い……!」
 繰り返される言葉と共に、手が壁を打つ。砕け散った破片が、ばらばらと周りに散らばる。その手に傷ひとつなく、その身から流れる血も無いままに、無敵の偽神は唸る。
「黙れ……黙れ黙れ黙れ」
 その体は、体内に偽神細胞を持つ者で無ければ傷つけることができず、故に無敵と言われたか。偽神と言われたか。
「殺してやるお前達を。殺して殺して……殺し尽くしてやる……祈りの声が届かなくなるまで」
 低く低く響く声の主がゆらり、と視線を上げる。射るように鋭い瞳がこちらを捉える。
「お前達もか」
 その身に、偽神細胞を持つ者であれば戦いへと向う時だろう。
 その身に、偽神細胞を持たないものであれば偽神細胞液を注射するしかない。
 ——さぁ、戦いの時だ。
待鳥・鎬
伊達に闇医者とかいう不本意な評価を受けているわけじゃない
【医術】をもって、拒絶反応を抑えるための免疫抑制剤を偽神細胞と共に投与
あとは鎮痛剤や制吐剤その他諸々で症状緩和
戦い終わるまで全力で動ければ、それでいい

【迷彩】効果のある「山吹」を纏って、間合いを読み難く
距離があるうちは「花香」で【クイックドロウ】からの連射
接敵されたら「鋼切」で【武器を受け】て斬り返す
UCは常時発動
強毒化した偽神細胞への拒絶反応も、事前投与で多少緩和できるはず

「救う気はない」じゃない、「救う力など無い」……か
だからこそ苦しいのかもね
それがせめてもの救いというのなら、遠慮なく殺させてもらうよ
……我ながら情けないことだけど



●光雨と共に彼女は告げる
 それは、嘆きであったか、呻きであったか。荒く振るわれた腕が、壁を砕く。飛び散った欠片が地に付く前に消え失せれば、獣じみた唸り声だけが戦場に残る。
「……煩い……煩い……煩い……!」
 呻く男の——偽神の視線がこちらを向く。距離は、まだある。それでも、向こうが戦うと決めればすぐだろう。待鳥・鎬(草径の探究者・f25865)は手にした渡された注射器を見た。
 ソルトレークシティで手に入れたという偽神細胞液。適合者であるストームブレイド以外が体に入れれば強烈な拒絶反応を起こす。
「伊達に闇医者とかいう不本意な評価を受けているわけじゃない」
 鎬はひとつ息を吸って、注射器を握る。悩んでいる暇は無く、悩む気も無い。
「……いこう」
 呟いて、偽神細胞と拒絶反応を抑えるための免疫抑制剤を同時に腕に、打つ。体の中に、何かが入り込んでくる感覚と同時に、どくん、と脈が跳ねた。
「——」
 軋むような体に、割れるような感覚を抑え込むように手に握っていた鎮痛剤を放り込む。ばらばらと指の隙間から落ちていくが——今日は、とりあえず良い。別に、治そうと思っている訳じゃ無いのだ。歪む視界を正すように拳を握る。意識は、手放さない。
「戦い終わるまで全力で動ければ、それでいい」
 無茶も無謀も、知っているだけだ。
 トン、と踏み込むと同時に、鎬は山吹を羽織る。紗の羽織ものは鎬の姿を空間に混ぜていく。ゆらりと身を揺らした相手が——フィールド・オブ・ナイン「デミウルゴス」が一瞬、こちらを見失う。
(「いや、意識の外になった、かな」)
 声が聞こえ続けると言っていた。なら、そっちの方が今は大きいのだろう。荒く振った腕、大剣、間合いは広く動きは重いが、動きは遅くは無い。
(「多分……」)
 リボルバーに手をかける。銃口を向けた瞬間、ぐん、とデミウルゴスがこちらを向いた。
「お前もか!」
「やっぱり、速いか!」
 荒い踏み込みと同時に偽神が——来た。
 ガウン、と向かい来る相手に銃弾を叩き込む。二発目よりは——防御だ。身を横に振りながら、鎬は唄うように紡ぐ。
「星降る夜の思い出話を」
「デミウルゴス・ヴァイオレーション。この毒に飲まれて消えろ!」
 降り注ぐ光と、放たれる黒き波は同時であった。受け止めるように立てた刃が、高く音を上げる。焼くような痛みが体に届き、どくん、どくん、と体が軋む。歪む。
「拒絶反応……」
 荒く吐いた息と同時に、風が鎬の頬を打った。ざぁああ、と靡く髪に、己に落ちる影に、低い声が応じた。
「それは、死に至るものだ」
 落ちる影は、振り上げられた大剣だ。偽神断罪剣、偽神細胞によって作られた大剣が迫る。だが、娘は顔を上げる。使い魔を身に宿し得た翼に光をたたえて。
「「救う気はない」じゃない、「救う力など無い」……か」
 一撃を、一振りの刀で受け止めた。
 ——ギィイ、と鈍い音と、衝撃が腕に届く。軋むのは体か、傷口か。は、と一度息を吐くだけで終えた娘は、鋼切を握る手に力をいれる。
「だからこそ苦しいのかもね」
「何を……」
 睨めつけるデミウルゴスの大剣を、払い上げる。ギン、と鈍い音と共にそのまま、踏み込んだ鎬の刃がデミウルゴスの体に——沈む。
「な……まさか、お前」
「それがせめてもの救いというのなら、遠慮なく殺させてもらうよ」
 驚愕に目を見開くデミウルゴスを視界に、刃をそのまま一気に上に滑らせる。零れ落ちる血が、赤く、黒く変じていく。ぐらり、と一度身を揺らしたデミウルゴスが後ろに飛ぶ。取り直された間合い、続けて踏み込むには——流石に、こっちのダメージが大きいか。
「……我ながら情けないことだけど」
 は、と落とした息と共に視線を上げる。偽神を見据える瞳はほんの僅か滲ませた思いを覚悟に染めるようにして、刀を握った。

成功 🔵​🔵​🔴​

マオ・ブロークン
……迷うことは、ない。
とっくに、本来の、形じゃ、ない、身体。だもの。

かれは、倒すべき、敵の……中途の、ひとり。
こんな所で、倒れる、わけに、いかない。
力を、咀嚼して……打ち克って、みせる。

細胞を、得て。接近戦で、挑みかかるよ。
電気丸鋸と、向こうの剣の、ぶつけあい。
打ち合いのなか。捕食を、狙ってくる、はず。

腕一本は、あげる。けれど、喰わせる為、じゃない。
噛みつく、瞬間。肉体を、エネルギーへ、分解して。
開いた"口"へ。電撃を、叩き込む!

……それに。力は、取られても。構わない。
そのUCを、使えば。あなたの、身体も、削れていく。
もし、それを、望むなら。……放って、みろ。
エンジンで。受け止めて、あげる。



●だから彼女は手を伸ばす
 斬撃と共に黒い波が戦場を襲った。残る廃墟の残骸さえ削り取るように強毒化した偽神細胞が衝撃に乗る。一撃を受け止め、その身に受けながらも尚、踏み込んだ猟兵にフィールド・オブ・ナイン「デミウルゴス」は低く唸る。
「俺がお前達を殺し尽くしてやる!」
「……」
 あれは、強い相手だ、とマオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)は思う。今のままではきっと、傷をつけることもできない。。
「……迷うことは、ない」
 注射器に一度、マオは視線を落とす。これを接種して、死の危険さえあるとしても——死であれば、マオは知っている。
「とっくに、本来の、形じゃ、ない、身体。だもの」
 青い肌、冷たい頬。たどたどしく落ちる声が、風に飲み込まれていく。獣のように呻く神はすぐにこちらに気がつくだろう。
「かれは、倒すべき、敵の……中途の、ひとり」
 注射器の針を腕に向ける、死んでしまった自分を、もう一度人では無いものにする力。
「こんな所で、倒れる、わけに、いかない」
 ひとつ息を吸って、マオは注射器を腕に突き立てる。どくん、と嘗て知っていた心臓の音が耳に届く。熱い、寒い、痛い。視界が歪み、痺れるような感覚に落ちる声が掠れた。
(「力を、咀嚼して……」)
 乾いた大地に自分の影が見えていた。ゆらり、と揺れるそれに、はたはたと揺れる制服に息を吸う。こうして、今も存在している自分をその形を辿るようにしてマオは顔を——上げる。
「打ち克って、みせる」
 告げる言葉と同時に、マオは前に出た。たん、と踏み込む娘の足音は軽く——だが、この世全てを振り払う事を望む偽神は、その足音に振り返った。
「お前もか」
 低く響く言葉と同時に、無敵の偽神・デミウルゴスが動いた。身を傾けたと思った次の瞬間、ひゅん、と鋭い音がマオの耳に届く。
「——こ、の……」
 腕を、振り上げたのは半ば反射だ。振り回すように手にした電気丸鋸を持ち上げる。ギィイイイ、と鈍い音と火花が散った。偽神断罪剣と回転する刃がぶつかり合い、ぐ、と押し込むようにデミウルゴスが踏み込んでくる。
「お前も、殺し尽くすまでだ」
 唸るように響いた声と共に、丸鋸にかかっていた重さが消える。僅かにデミウルゴスが身を引き、次の瞬間、空いた手が——異形のそれが勢いよくマオに向かって突き出された。
「その全て、砕ききる」
「——あ」
 異形の爪が、手がマオの腕を掴んだ。ぐ、と引っ張られるような感覚と同時に、デミウルゴスの爪がマオの腕に沈む。痛みと熱、千切れる、とそう思ったのは掴んできた異形の腕が食らい付く獣の顔に変わったからだ。
「デミウルゴス・セル」
「——ッ」
 ひゅ、とマオは息を飲む。痛みに、軋む体に視界が歪む。——でも、これは『分かっていた』ことだ。
「腕一本は、あげる。けれど、喰わせる為、じゃない」
「何を言っ……」
 言って、と続く筈だったデミウルゴスの声が電撃に喰われた。ゴォオオ、と空間の全てを震わせるような衝撃。それは、持って行かれた片腕を代償にマオが放った膨大な電流だった。轟音と共に光が、デミウルゴスの変化した腕を喰らう。獣の口は砕け散り、零れ落ちた血が大地を染める。
「俺に傷が……、まさか、お前、あれを持っているのか」
 間合いひとつ、取り直すようにデミウルゴスが後ろに飛ぶ。赤く、黒く染まっていく己の腕を一瞥し、は、と息を吐いた偽神が視線を上げる。
「だが、お前の力は喰らった」
「……それに。力は、取られても。構わない。その力を、使えば。あなたの、身体も、削れていく」
 無くした片腕をそのままに、マオはゆらりと体を起こす。
「もし、それを、望むなら。……放って、みろ」
 言い放った言葉に、その事実にデミウルゴスは、ぎり、と歯を噛むようにして大剣だけを向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜刀神・鏡介
条件付きとはいえ無敵とは……偽でも神って事か
これを超えるのはかなり厳しそうだが、人の身で神に届かせるにはそれも必要か

神刀の封印を解除し、神気を身に纏う事で、自身の身体能力を限界を超えて強化
そして、偽神細胞液を自身に注射――この代償、神気を用いても普段より動けないか……なら、取る手は一つ

まずは集中して敵の攻撃を防御しつつ、動きを見極めていく

ある程度機を窺ったなら、敢えて敵に捕食されてUCをコピーさせる
奴が俺の技を使うのなら、その弱点は俺が一番良く知っている
技に対する知識、敵の行動を見極めてきた知識を用いて、敵がUCを使用するタイミングを見切り、敵が攻撃を仕掛けてくる寸前でカウンターを叩き込む



●覚悟と矜持
 轟音と共に電撃が戦場を白く染めた。一瞬の眩しさの先、傷を負った片腕を押さえること無く迎え撃つことを選んだ猟兵が電器丸鋸を手に立っていた。
「黙れ……黙れ……黙れ黙れ黙れ!」
 暴れるように荒く腕を振るったフィールド・オブ・ナイン「デミウルゴス」の腕から赤い血が飛ぶ。だん、と重い踏み込みと同時にデミウルゴスの視線がこちらを向いた。
「お前もか」
「——来るか」
 ひとつ、落とした息と共に夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は受け取っていた注射器を見た。
 ソルトレークシティで手に入れた偽神細胞液。
 適合者であるストームブレイド以外が体内に入れれば、激しい拒絶反応を起こし、死の危険さえあるブツ。それは同時に、耐えきれば一時的な偽神化が可能というものだった。
「これを超えるのはかなり厳しそうだが、人の身で神に届かせるにはそれも必要か」
 ゆっくりと抜いた刃に指先を滑らせる。神刀の封印を解けば、零れ落ちる神気が鏡介に触れる。沈んでいく。
「……」
 一度だけ伏せた瞳、呼吸は、己が間合いを、絶対の領域を意識するために深く息を吸い——瞳を、開く。
「無仭」
 鈍く刃は光ったか、差し込む陽の光が理由であったか。二度目の呼吸と共に、鏡介は握りしめていた注射器を腕に刺した。
「——」
 瞬間、どくん、と心臓が跳ねた。は、と落とす声が僅かに揺れる。速くなった脈と共に感じる痛みは、斬られた時のそれに近いか。
「この代償、神気を用いても普段より動けないか……なら」
 だん、と荒い踏み込み。向かってくる相手を真っ正面に鏡介は捉える。
「取る手は一つ」
「黙れ!」
 叫ぶ声と同時に、デミウルゴスの刃が来た。斬る、というよりは半ば、ぶつけるように来た一撃に刀を持つ腕を上げる。ギィイイ、と受け止めた一撃。それでも浅く、腕に、傷が走る。
「お前も、その声が聞こえなくなるまで殺してやる……!」
「——生憎」
 ぐ、と押し込まれる感覚に息を吐く。躱すには向かない相手だ。だから——そう、最初からこの手をとると鏡介は決めていた。
「負けるつもりは無い」
「は! 喰らい尽くされて尚言えたら、誇るが良い……! デミウルゴス・セル!」
 吼えると同時に、異形の腕が、ぐ、と伸びてきた。鏡介の腕を掴むと同時に腕が獣に変わる。食らいつき、突き立てられた牙が鏡介の腕を血に染める。
「——」
 息を飲む事は無かった。代わりに、鏡介は腕をひく。血濡れの腕がだらりと垂れる。ばたばたと落ちる血に、は、とデミウルゴスが笑った。
「お前の技も貰い受けたぞ」
 口の端を上げ、告げた言葉と同時にデミウルゴスが大剣を高く構えた。
「あぁ、そうだろうな」
 それを使うだろう、と鏡介は思う。
 参の型【天火】体に馴染ませたその技だからこそ、その弱点は鏡介が一番良く知っている。
「剛刃一閃」
 低く偽神から聞こえたその声に、鏡介は視線を上げる。体勢は崩れている。この身で真面に受ければそれこそ命が危ないが——この瞬間、行うべきものを、鏡介は理解している。
「……」
 身を前に寄せる。利き手は生きている。己の間合いより、相手の間合い深く踏み込んで同じように刀を上段に構え——言った。
「参の型【天火】」
「——!」
 偽神の告げる言の葉の先を奪うように振り下ろされる大剣を、無仭で受け止める。ギィイ、と散る火花さえ斬り伏せるように鏡介はカウンターの一撃を振り下ろした。
「な……お前、俺に傷を……!」
「あぁ」
 深く沈む刃と共に鏡介は告げる。倒しに来たとも、止めに来たとも告げずに——ただ、相対する者として真っ直ぐな視線を向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

伊川・アヤト
あの烏合の衆は厄介な物を作り上げましたね……神と言えど所詮は偽物、なら幾らでもやれる。(コートを脱ぎ捨てる)
偽神細胞使わせてもらいますよ!首元に注射器を刺しMONOLITHを目の前に放り〈UC発動〉(呪詛耐性発動)
これが偽神化……呪詛を軽減できるとはもって数分でしょうね、さあデミウルゴス!御託は無用だ、かかってこい、斬り伏せてやるよ。(眼鏡を本来の藍色の仮面の姿に戻す)

走り出し斬り付け切断と同時に呪詛に侵していき、敵の攻撃は見切りつつ受け流し結界でカバー、多重詠唱と高速詠唱により呪詛を重ね斬撃波として放つ。

この剣は神を断つ為のもの貴方が幾ら頑丈でも呪詛に侵されれば終わりです、お休みなさい



●偽を知るは、真を知る者
 風を、切り裂く音が戦場に響いた。獣が唸るように低く、重く。舞い上がった砂塵は剣戟の果てに生まれたのだろう。
「れ……黙れ、黙れ黙れ黙れ!」
 怒号と共に荒く、フィールド・オブ・ナイン「デミウルゴス」が踏み込んだ。片腕を血に染めながら猟兵が後ろに飛ぶ。近接での斬り合いになれているのか、緩く足を引いた先、すぐに剣戟が響いた。
「……」
 音が随分と重い、と伊川・アヤト(天蓋の探究者/蒐集家・f31095)は思う。同時にひどく気配が歪に視えた。眼鏡をつい、とあげて息を吐く。
「あの烏合の衆は厄介な物を作り上げましたね」
 無敵の偽神・デミウルゴス。
 その名に偽りは無く——だが、偽神と分かっている以上、相対する手はある。
「……神と言えど所詮は偽物、なら幾らでもやれる」
 コートを脱ぎ捨てて、アヤトは視線を上げた。黒い腕輪が僅かに揺れる。
「偽神細胞使わせてもらいますよ!」
 握りしめた注射器を首元に突き刺す。瞬間、どくん、と心臓が跳ねた。どくん、どくん、と鼓動が速くなっていく。息苦しさに引きずられるその前に、アヤトはMONOLITHを放った。
「MONOLITH封印解除開始」
 告げる言葉は僅かに擦れていたか。は、と吐いた息と共に心の臓を抑える。揺れる呼吸は一度だけだ、二度はこの身を揺らしはしない。覚悟と共に踏みしめた大地に、アヤトは自らを立たせる。
「AWD,Operation System active 座標固定 殃禍顕現」
 それは己を対象とした呪詛。伊川・アヤトという存在に化す呪い。その全てを刻みつけるようにアヤトは手を伸ばす。指先から落ちた注射器、代わりに真っ直ぐに伸ばした手が大口をお開けたトランクから掴むのは一振りの刃。暗青の長剣。
「これが偽神化……呪詛を軽減できるとはもって数分でしょうね」
 呟いて、アヤトは顔を上げる。呪詛への耐性を体に刻み込む。詠唱は不要だ、ただ刃に指先を添えて——声を、上げた。
「さあデミウルゴス! 御託は無用だ、かかってこい」
 ひゅん、と刃を振るう。鋒を向ける代わりに空を切り裂き、アヤトは眼鏡に手をかけた。淡い光と共に、本来の藍色の仮面の姿へと戻し低く身を沈めた青年は大地を——蹴った。
「は! 人の身で俺にかかって来いと吼えるか!」
 その踏み込みに、デミウルゴスの視線が真っ直ぐにアヤトを捉えた。唸るような声と共に、偽神が荒い踏み込みを入れる。
「——」
 来る、と思う。ひゅ、と風が抜ける。デミウルゴスの瞬発の加速だ。半ば、跳ぶように一気に間合いを詰めてきた偽神の大剣が下段からアヤトの首へと迫る。
「その首、落とそう」
「生憎ですが」
 呟いてアヤトは殃禍を斬りかかった。刃と大剣がぶつかり合い——光が、火花が散る。相手の重く、分厚い刃を刀身に滑らせるようにしてアヤトはデミウルゴスの刃の下を抜ける。
「お前……」
 ギン、と偽神の刃が地を叩く。すぐに、あの刃は来るだろう。だからこそ、その一瞬を全て使うようにアヤトはデミウルゴスの影を踏み、間合い深く、その目を見るように殃禍で斬り上げた。
 ——ザン、と刃が沈む。鋒から呪詛が偽神に走る。
「お前……は! あれを体に入れたのか! だが、だが、だがだがだが!」
 吼えるデミウルゴスの腕が伸びる。ぐん、と勢いよく突き出されたのは異形の腕か。食らい付かれる感覚と同時に、肩口が血に染める。腕は異形の獣へと変じ——声が、した。
「デミウルゴス・セル。お前の力は、俺が喰らうぞ」
「例え、そうだとしても……」
 ひゅん、と肩口食らい付いている腕を、アヤトは斬り払う。走る衝撃波に、たん、とデミウルゴスが後ろに跳ぶ。ばたばたと零れる血は偽神の方が多いか。血濡れの腕に構わず、アヤトは真っ直ぐにデミウルゴスを見た。
 コピーされたところで、デミウルゴスは『あれ』を使えはしない。人造神器殃禍の所有者はアヤトであり、何よりこの身を蝕む呪詛は、デミウルゴスも蝕むはずだ。
「これは……」
 気がついたのか、僅かに偽神が息を飲む。その姿を真っ直ぐに見据えてアヤトは告げた。
「この剣は神を断つ為のもの。貴方が幾ら頑丈でも呪詛に侵されれば終わりです、お休みなさい」

成功 🔵​🔵​🔴​

藤・美雨
この世界には生きたいと願う人がたくさんいて
目の前には死にたいと願ってるやつがいる
そいつがたくさんの人を殺すというのなら、殺してやるのが殺人鬼の役割だ
偽神化しつつ戦うよ

ああ、身体がバラバラになりそうなくらい痛い
首の継ぎ目とかちぎれない?大丈夫?
なんて冗談めかして笑いつつ敵に接近
いつもより身体の動きが鈍いんだ
回避は早めに、大袈裟にすることを心がけて

多少の傷は承知の上さ
拒絶反応ごと【激痛耐性】で耐えて肉薄する
お前は負けられないって思うかい?
生き抜いてやるって思えるかい?
お前の心持ちじゃ……私の真似は出来ないだろう!

精一杯の気力を機械の心臓に
【怪力】には自信があるのさ
想うすべてを乗せて匕首を振りかぶる



●蓮の花を越えて
 滑るように振るわれた刃が、偽神の体に沈んでいた。間合い深く、大剣を己の刃に滑らせるようにして言った猟兵の刃がフィールド・オブ・ナイン「デミウルゴス」を呪詛に染めていた。刃が紡いだか、或いはコピーさせた彼の術式が、元より使用者に呪いを紡ぐものであったのか。
「るさい、黙れ、黙れ黙れ黙れ……!」
 頭を振るい、荒く振るわれた大剣が僅かに残った外壁を崩した。猟兵のいた場所とはまるで違う、関係の無い場所を崩したのは苛立ちか、怒りか、聞こえ続けるという『声』が理由か。
「この世界には生きたいと願う人がたくさんいて、目の前には死にたいと願ってるやつがいる。そいつがたくさんの人を殺すというのなら」
 藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は拳を握る。小さく、息を落とす。手の中、転がした注射器へと一度視線を落として美雨は告げた。
「殺してやるのが殺人鬼の役割だ」
 ストームブレイド以外が接種すれば、劇薬となるモノ。偽神細胞液は、命の危険さえあるという。
「……」
 でも、と美雨は言わなかった。ただ注射器を構える。荒ぶる偽神の意識は少しずつ目の前の戦場に戻ってきている。時間は、きっともうそんなに残されていない。
「——いこうかな」
 腕に、突きたてた先、どくん、と嘗てあった心臓が跳ねた気がした。あれ、と落とした筈の声が掠れている。揺れている。そう、意識した瞬間、全身に痛みが走った。
「ああ、身体がバラバラになりそうなくらい痛い」
 は、と美雨は息を零す。ゆらり、と揺れた体を支えるように両の足でしっかりと地面を掴む。痛みはある、それでも意識を引き戻すようにして顔を上げた。
「首の継ぎ目とかちぎれない? 大丈夫?」
 冗談めかして笑って、娘は首筋を撫でる。荒野の風を受けて、黒髪が揺れていた。砂利を踏む音がふいに、風音に混じる。
「えもか……お前もか、偽神細胞を」
「ああ」
 頷いて美雨は大地を蹴った。一歩、二歩、踏み込んだ身体の動きがいつもより鈍い。遅いな、と思ったのは、荒い踏み込みの先、偽神の動きがひどく——速く、感じたからだ。
「殺すまでだ」
 低く響いた声と同時に、デミウルゴスが来た。ぐん、と大きく一歩、跳ぶように来た偽神の大剣が振るわれる。薙ぐ一振り、ひゅん、と風を切る音に美雨は右に大きく身体を振った。
「よ、と」
 回避は早めに、大袈裟に。身を跳ばした先、大地に手を突くようにして、身体を支えた美雨は一気にデミウルゴスの間合いへと踏み込んだ。
「は、俺の影を踏むか。ならば、その身全て喰らうまで!」
 偽神の吼声と共に、ぐん、と異形の腕が伸ばされた。美雨の肩口を切り裂く爪が異形の獣へと変わる。噛みつかれたと気がついた瞬間、全身に痛みが走った。
「——」
「デミウルゴス・セル。お前の力も喰らったぞ」
 発動を告げる言葉と同時に、血がばたばたと零れた。——だが、娘は動く。
「多少の傷は承知の上さ」
 小さく笑うように告げて、異形の獣へと手を伸ばす。引き剥がすように爪をたて、娘のほっそりとした指先が染まる。
「お前は負けられないって思うかい? 生き抜いてやるって思えるかい?」
「何を……」
 言って、と続くはずであったデミウルゴスの言葉が空を切る。美雨の腕に食らい付いていたはずの異形の獣が、変化した己の腕が外されていく。
「お前、何を……」
 それは、正しく驚きであった。目の前にいた娘の気配が変じていく。そう思ったのだろう。それは強い闘争心で作り上げられた気のオーラ。
「お前の心持ちじゃ……私の真似は出来ないだろう!」
 藤・美雨の心が、その意思が作り上げた力。それは——決して、デミウルゴスには発動させることができないもの。
「——!」
 ひゅ、と偽神が息を飲んだ。迎撃か、振り下ろされた大剣に美雨は手をつく。足場とするように一気に蹴り上げて、飛び越すようにデミウルゴスの間合いへと降り立ち——想うすべてを乗せて、匕首を振り下ろした。
「な……ッあぁああ!」
 深く、ふかく刃は偽神に沈む。殺してくれと望んでいた神が、殺人鬼の刃にぐらり、と大きく身を揺らした。

成功 🔵​🔵​🔴​

唐桃・リコ
神様みたいな力
オレが食らってやるよ
「偽神」を自分に打ち込むぜ

オレには杏がくれた激痛耐性があるから
多少は耐えられんだろ
昔から痛え実験は山程されてきた
それに戦うための痛みだ
そんなもん怖くねえ

よう、おっさん
オレともやり合おうぜ
巨大化されたらたまんねえから、近くでの戦いに持ち込む
ナイフで切り刻みながら【Howling】!
人狼が笑いながらこっちみてやがる

なあ、おっさん
うるせえの全部ほっといて、オレと殴り合いしようぜ
あいつらの命なんてオレらには関係ねえだろ
だから、オレの一撃を受け止めてくれ!!お前を倒して、オレは力を得る!誰にも負けねえ力を!!
全力の【Howling】!!



●少年と偽りの神
 深く、沈んだ刃が偽神の身体を赤く染めていた。零れ落ちた血は、大地に触れる頃にはどす黒い何かに変わる。血の臭いは遠く、鉄と、乾いた土——それと、妙な声があったような気がする。
「……あれが」
 荒野に立つ少年は薄く、唇を開く。ぱさぱさと白い髪が揺れていた。熱を帯びた戦場には、地と鉄の匂いと——叫びがあった。
「邪魔を、邪魔をするか……お前も、お前もお前もお前も! 聞こえ続けるこの声も!」
 ぐらり、と身を揺らすようにしてフィールド・オブ・ナイン「デミウルゴス」は、大剣を構え直す。
「祈りの声が聞こえなくなるまで、俺がお前達を殺し尽くしてやる!」
 それは悲痛なまでの叫びのようでいて、同時に怒りに満ちていた。デミウルゴス。偽りの神と呼ばれるもの。
「神様みたいな力、オレが食らってやるよ」
 告げて唐桃・リコ(Code:Apricot・f29570)は注射器を手に持つ。適合者であるストームブレイド以外が接種すれば、激しい拒絶反応を得るという代物。注射器の中、とぷん、と揺れたそれをリコは色づくピンクの瞳で見据えた。痛いのだという、苦しいのだという。——けれど。
「オレには杏がくれた激痛耐性があるから、多少は耐えられんだろ」
 紡ぎ落とした大切な名に、ふ、と少年は笑う。優しげな声を、小指の約束を辿るように視線を一度向けて——息を吸い、注射器を腕に突きたてた。
「——」
 どくん、と心臓が跳ねる。鼓動が速くなる。どくん、どくん、どくん、と息苦しさが加速し、視界が歪む。熱いのか、寒いのか、分からなくなっていく。けほ、と軽くリコは噎せた。零れた赤に、崩れ落ちそうになる身体に——だが、リコは視線を上げる。
(「——杏」)
 拳を強く握る。意識を引き上げる、己のものにする。昔から痛い実験は山程されてきた。それに、これは戦うための痛みだ。
「そんなもん怖くねえ」
 ゆらりと立った偽神の視線がこちらを向く。来る、とリコは、ぴん、と狼の白い耳を立てた。
「よう、おっさん。オレともやり合おうぜ」
「黙れ」
 低く唸るような声と共に、だん、とデミウルゴスが地を蹴った。瞬発の加速、ぐん、と一気に来る相手にリコも、前に跳ぶ。デミウルゴスの構えた大剣が鈍い光を帯びたからだ。
「お前も、殺すまで」
 巨大化する偽神断罪剣、その間合いの外では無く——中へ。詰められる前に一気に、リコはデミウルゴスの間合い深くへと踏み込んだ。
「——おまえ、その速度」
 笑うように告げて、ひゅん、とナイフで斬り上げる。刃が偽神の身を切り裂けば、その意味にデミウルゴスが気がつく。
「まさか偽神細胞を……!」
「なあ、おっさん。うるせえの全部ほっといて、オレと殴り合いしようぜ」
 『人』でいられる時間を代償にして、リコは吼える。咆吼が、巨大化した剣を構える偽神の動きを鈍らせる。
(「人狼が笑いながらこっち見てやがる」)
 理性を保ち人の姿をしていられる時間が、砂が落ちるように消えていく。使い尽くせば——己という存在が揺らぐかもしれない。代償として、かけているのは皆には隠している。今は、一人の戦場だ。意識を、感覚を引き戻すようにして、振るわれた偽神断罪剣がリコに届く。庇うように構えた腕が、赤く染まる。それでも、逆手に構えたナイフは落とさずに——少年は前に行く。デミウルゴスの間合いへと、大剣の影が落ちるそこへと。
「あいつらの命なんてオレらには関係ねえだろ。だから、オレの一撃を受け止めてくれ!!」
「——お前、本気で俺とやりあう気でいるのか」
 間合い深く、刃の届くその距離で見た偽神の瞳は瞬いて、僅かに、笑う。
「斬り落とされるのはお前だ」
 ぐん、と大剣が持ち上げられる。刃が迫る。だがそれよりも速くリコは全力の一撃をデミウルゴスへと叩き込んだ。
「お前を倒して、オレは力を得る! 誰にも負けねえ力を!」
 己の全てをぶつけるようにリコは吼える。咆吼と共にナイフが深く偽りの神へと沈んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

早乙女・翼
信仰とは精神、俺の信じる主は見えぬ存在
偶像とされた君の存在は罪深い
たとえ君自身に罪は無いとしても

主よ…敢えて偽神を称す力を一時的に用いる俺に赦しを
注射針を上腕にぶっ刺し注入
刺した所から強い痛みが一気に全身に広がる感覚
両腕と首の傷痕から黒き血と炎が噴き出始める
倒れそうな頭痛と吐き気を押し殺しつつ
黒く変色し出した翼羽ばたかせて敵に向かっていく

身体はしんどいけど強化は飛行速度と動体視力で感じ
捕食なんざされねぇ、と向こうの射程外から鎖を伸ばし鞭の様に叩き込む
鎖が絡んだり掴まえられたら炎を伝わせて思い切り燃やしてやる
この炎は俺の血同然、偽神細胞とやらそのものさよ

さよなら
俺は、君の為には祈る訳にはいかない



●聖杯の底に沈む
「れ……黙れ黙れ黙れ黙れ……!」
 荒く振るわれた腕が、地を叩く。ゆらり、と獣のように身を起こしたフィールド・オブ・ナイン「デミウルゴス」は低く唸るように呟く。
「俺に……お前達を救う力など無い……!」
「……」
 血の匂いが、遠かった。砂と鉄の匂いに早乙女・翼(彼岸の柘榴・f15830)は息を吸う。
「信仰とは精神、俺の信じる主は見えぬ存在。偶像とされた君の存在は罪深い」
 風が気まぐれのように強く吹いていた。揺れる髪をそのままに、靡く柘榴紅の狭間から真っ直ぐに彼を——デミウルゴスを見る。
「たとえ君自身に罪は無いとしても」
 救う力など無い、とデミウルゴスは言った。救えないでも、関係無いでも無く、その為の力は無いと。届き続ける声を、人々の祈りと解した故に偽神は叫ぶ。
「主よ……敢えて偽神を称す力を一時的に用いる俺に赦しを」
 短く十字を切って、翼は注射器へと視線を落とした。適合者であるストームブレイド以外が接種すれば、死の危険さえあるという代物。
(「激しい拒絶反応に、命の危険……十分さね」)
 は、と青年は笑う。広げた翼が、淡く頬に影を落とす。己の為に祈る言葉は無いままに、翼は注射器を上腕へと突きたてた。
「——」
 瞬間、強い痛みが一気に全身に広がった。落とす息が揺れる。首を這うように炎が零れる。傷痕からか、とそう気がつく頃には両腕と首の傷痕から黒い血と炎が吹き出していた。
「そう、さよ」
 そこから血が溢れるだろう。そこから炎が零れるだろう。御使いの羽根を得た青年は——正しく一度、死にかけている。
「意識を保て……動け」
 倒れそうな頭痛に、吐き気に口元を抑える代わりに強く拳を握り、翼は顔を上げる。足を止める訳には、いかないのだ。
「——行こう」
 指先から空になった注射器が零れ落ちる。ガシャン、と割れるのと黒く変色した翼を広げるのは——同時だった。
「——お前もか!」
 ふいに、轟音と共にデミウルゴスが地を蹴った。低く構えられた大剣が振るわれる。風を切る一撃、翼で空を叩いて、身を横に振る。身体はしんどいが、飛行速度と動体視力は上がっている。
「捕食なんざされねぇ」
 大剣の間合いの外、デミウルゴスが二度目の踏み込みを入れる瞬間、翼は手を伸ばす。
「——鎖を」
 黒き血と共に零れていた炎が、ふいに揺れる。色彩を変えるようにして、ゆるりと翼の腕に巻き付いていき——しゃん、と軽やかな音を響かせて落ちる。それは炎を纏った鎖であった。
 ひゅん、と翼は鞭のように鎖を振るう。ゴォオオ、と唸る炎が伸びれば、大剣の間合いの外から一撃がデミウルゴスへと届いた。ガウン、と鈍い音と共に炎が偽神の身体を叩く。異形の腕が炎に染まり、引き裂かれれば偽神はその意味を知る。
「は、偽神細胞を入れたのか。だがその程度のことで、俺が焼き尽くせると思うな」
 だん、と荒い踏み込みと共にデミウルゴスが鎖を掴む。ぐん、と引き寄せられる感覚と同時にデミウルゴスの腕が突き出された。
「喰らい尽くす、デミウルゴス・セル」
 来る、と翼は思った。だからこそ、身を逸らすよりも鎖を強く握った。
「主よ」
 異形の爪が、肩口に届く。獣の顔に姿を変えていく——鈍い痛みに、熱に、だが、構わずに翼は告げた。
「罪深き者に裁きと戒めの業火を」
 瞬間、鎖を伝って炎がデミウルゴスへと届いた。異形の腕が、翼を貫く前に崩れていく。
「——な、この炎は」
「この炎は俺の血同然、偽神細胞とやらそのものさよ」
 炎が偽神に届く。は、とデミウルゴスの声が揺れる。ぐらり、と身を揺らした男が、大剣を地に突きたてた。
「まさか、俺が……、は、偽神細胞に……、あれを入れたものに、殺されるのか」
 あぁ、だが、とデミウルゴスは呟く。僅かに笑うように、それでいて安堵にも似た声で。
「これで——……」
 ようやく、と震える声が告げた先、言の葉は掠れ、だが視線は確かに翼へと向いていた。
 ——ぐらり、と身を崩すようにして無敵の偽神・デミウルゴスは倒れる。土煙の中、崩れ落ちた身体は世界に姿を残すこと無く薄靄の中に消えていく。
「さよなら。俺は、君の為には祈る訳にはいかない」
 それでも、と翼は消えた偽神のいた場所を見た。その熱が完全に消えるまで——その、終わりまで。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年09月21日


挿絵イラスト