アポカリプス・ランページ⑧〜雑草は根ごと刈り〜
セントメアリー・ベース。
カナダとの国境にほど近い巨大拠点で、人々は比較的平和に共同生活を送っていた。
しかし猟兵達の本格突入で話が変わった。
「はい、次の方どうぞー!」
ヴォーテックス一族の殲滅によって自由の身となった奴隷達が一斉に新天地を求め、平和であることで有名なかの地に一斉に避難しにきてしまったのである。
普段と比べて何十何百と膨れ上がった業務量に担当は火の車となり、本来なら見逃さないはずの不備も見落としてしまう。
「はい、こちらがあれば一応の身分は証明されますので」
「おう、ありがとよ」
その結果、本当の難民でない、セントメアリー・ベースの破壊を目論む者を内部に入れてしまった。
「こういうのをバタフライ・エフェクト、って言うらしいんですが……まあ、我々のせいでセントメアリー・ベースの方々が苦しむ結果になってしまうのは気分が悪いので、しっかりフォローしようというのが今回の概要でございます」
若干目の下にクマが浮いているルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)は笑いかけながら資料を開き始める。
「先程説明した通り、現在セントメアリー・ベースには他所からの避難者を装ったり、成り代わった敵の間者が混ざっており、裏でこっそり待機しているであろう本隊を手引きしてこの拠点に攻め滅ぼし、猟兵に対する反抗の足掛かりにしようとしています」
現状、セントメアリー・ベースの周囲にオブリビオンの集団は確認されていない。おそらく猟兵達の注意が離れた頃に集まり、一気に攻め落とす算段なのだろう。
これを防ぐためには拠点内に紛れ込んだ敵を素早く特定して始末し、軍団の誘引を阻止する必要がある。
しかし問題が一つある。ここに忍び込んだオブリビオンは皆「人型」なのである。
「避難を求める者達の中には本当にヴォーテックス一族の元から逃げてきた方々がいらっしゃいます……というかこっちの方が遥かに多いんですけど。ですが、そんなことは元の住民の方々は分かりません。もしオブリビオンが避難民に紛れて侵入していることに気づかれれば『こいつ良い人ぶってるけど実は……』という疑念が生まれ、避難民に対する差別や虐殺に発展する可能性が大いにあります」
その混乱に乗じ、オブリビオンが攻めてくる可能性も十分に考えられる。
そのため住民達に無用な不安と疑念を与えないよう、秘密裏に事を進めなければならない。
大通りで人がたくさんいるところでオブリビオンであることを指摘しながら殺したり、窓口で書類の不備を指摘したり、などといった手は使えない……使ってはならない。
なぜなら今回の避難民は皆、「一般人でなければならない」からだ。
「いつも見たく『真っ直ぐ行ってグーでぶっ飛ばす!』という内容ではございませんが……まだ避難民の顔が覚えられてない今しか出来ないことです。皆様のご協力、よろしくお願いします」
平岡祐樹
味方が揉めるのって、辛いよね。お疲れ様です、平岡祐樹です。
このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。
今案件にはシナリオボーナス「住民に敵の存在を気付かせないよう調査を行う」がございます。
これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
第1章 冒険
『ヒドゥン・エネミー』
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POW : 拠点周辺を歩き回り、怪しい人物を探す
SPD : 人目につかないように行動し、情報収集する
WIZ : 避難者のふりをして住民達に話を聞く
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ルァハイム・ラアル
【POW】
限りなく人に近い姿のオブリビオンっているもんねぇ。オブリビオンのことを知らない一般人じゃ見分けはつかないかー。
警備の人に人手として雇われた人の好さそうなレイダーを装いながら拠点内をブラブラ歩いて、「瑠璃の天眼」で紛れ込んだオブリビオンを見つけ出す。
見つかったら、拠点の外の様子はどう?とでも話しかけて、指輪に変えた「銀器」をはめた手でそれとなく触り【生命力吸収】で虚脱状態に。
そしたら急病人として看護場所まで連れて行って、水を飲ませるフリをして「華雫の小瓶」の液体を飲ませる。香りはスノードロップ。送った時の意味は――「あなたの死を望む」。(【毒使い】)
心臓発作でも起こしてくれると楽かな。
木常野・都月
つまり。
オブリビオンを探し当てるけど、一般人にもオブリビオンにもバレないように、って事だよな?
なら、野生で培った俺の嗅覚で[情報収集]だ。
人の形をした人の匂いがしない者、オブリビオンの匂いを探せばいい。
風の精霊様にもお願いすれば、広範囲で捜索できるはずだ。
見つけたら、そっと風の精霊と地の精霊様に、張り付いて貰おう。
張り付いて貰えればどこにいるか、俺は分かるし、監視も出来ると思う。
UC【俺分身】とチィにも手伝って貰って手分けしよう。
俺達は、匂いを探しやすいように狐の姿で行こう。
鼻の構造上狐の方が有利だ。
狐が1〜2匹、あちこちウロウロしている事はきっと珍しくない。はずだ。
チィは空飛んだらダメだぞ?
「つまり。オブリビオンを探し当てるけど、一般人にもオブリビオンにもバレないように、って事だよな?」
小首を傾げた木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)はくるりと一回転すると狐の姿になった。
「なら、野生で培った俺の嗅覚で探そう。人の形をした人の匂いがしない者、オブリビオンの匂いを探せばいいんだろう? 風の精霊様にもお願いすれば、広範囲で捜索できるはずだ」
嗅覚は同じでも、鼻の構造上狐の方が匂いを感知できるだろう。さらにダメ押しとして都月は自分の分身を大量に呼び出した。
大量の黒い狐達がお行儀よく並ぶ中、一匹だけ真っ白な毛の狐がすまし顔をしながら紛れ込んでいた。おそらく、自分も並んでみたかったのだろう。
微笑ましい姿に分身達の視線が集中する中、都月は咳ばらいをして話を共有した。
「見つけたら無理に追わないで、そっと風の精霊様と地の精霊様に張り付いて貰おう。張り付いて貰えればどこにいるか、他の俺達も分かるし、監視も出来ると思う。チィは空飛んだらダメだぞ?」
「はーい」
「キュウ」
方々から元気な返事が返ってきたのを確認し、都月達はセントメアリー・ベースに降り立った。
「わぁ、真っ黒な狐さんだぁ」
「あ、ダメよ近寄っちゃ」
アカキツネが普通に生息しているこの地で都月達の姿は何の疑問もなく受け入れられた。ただ狐由来の伝染病が怖いのか、遠巻きに見るどころか露骨に避け、手で乱雑に遠ざけようとする者もいた。
犬や猫のように子供達に付きまとわれて調査の邪魔に合うことは無かったが、明らかに警戒され、邪険にされるのは心境的にはあまりよろしくない。
「なんだよ……俺は虫なんか飼ってたりしないぞ……」
一般の人々に聞かれないように小声で愚痴を漏らしながらふくれっ面になった都月は風の精霊が運んできた匂いから的確に人ならざる者の物を嗅ぎ分ける。そしてその匂いは精霊にきちんと伝えられ、マーキングがされた。
「限りなく人に近い姿のオブリビオンっているもんねぇ。オブリビオンのことを知らない一般人じゃ見分けはつかないかー」
そしてその情報は「警備の人に人手として雇われた人の好さそうなレイダー」を装うルァハイム・ラアル(殯の末子・f34505)の元にも伝えられた。
「あいつかー」
拠点内をブラブラ歩き、都月から伝えられた特徴と一致する男を瑠璃の天眼で見極める。その結果は有無を言わさぬ真っ黒だった。
「やあ、拠点の外の様子はどう?」
ルァは指輪に変えた「銀器」をはめた手でオブリビオンの肩を親しげに叩く。それだけで生命力を吸い取られたオブリビオンは虚脱状態に陥って、その場に崩れ落ちた。
「おやおや大丈夫かい?」
本能からルァの正体に気づいたオブリビオンは目を見開くが、声は発せず体も動かせない。ルァは柔和な笑みを浮かべながら半ば強制的に肩を貸して看護場所まで連れて行った。
「すいませーん、急患でーす!」
応対した看護婦の指示に従い、オブリビオンを空いていた寝台に寝かす。
「今、先生を呼んできますからね」
オブリビオンの必死の視線に気づかず、看護婦は医者を呼ぶために離席する。
外から中の見えない狭い室内でオブリビオンと二人きりになったルァは備え付けられていた水を無理矢理飲ませつつ、余った指を使って華雫の小瓶の中身を口の中へ一滴落とした。
その香りはスノードロップ。送った時の意味は――。
「あっ、がっ」
あなたの死を望む。
「あ、お兄さん大丈夫ですか!? えっと、お医者さん、看護師さん!?」
素知らぬふりをして、ルァは患者の急変を知らせるために部屋の外へ飛び出す。医者達が慌てて飛んできた頃にはオブリビオンは事切れていた。
「お水を飲ませたら、突然苦しみだして……」
「……そうですか。この方、最近入られた方ですね。元奴隷の方でしたら何らかの呪いがかけられていたかもしれませんね……」
万が一司法解剖に回されても、華雫の小瓶を見出すことは出来ない。ただ身分証を確認した医者からの反応を見ると、このまま焼却炉に回されることになるだろう。
偶然にも見ず知らずの者の死に水を取る羽目になったレイダーとなったルァは悲痛な面持ちを浮かべながら、心の中では握り拳を作っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:ロキ
万一誤認なら普通に殺人なのですが……まぁ私は悪人なので、1人くらい増えても今さらですが。死ぬ方はたまったものではありませんね。
UCを発動。光属性の触手で光学迷彩をかけ、空中浮遊で上空へ。侵入経路を考えているのであれば、隅の方の防壁や武装を探っているでしょう。
あやしい人物を見かけたら地上に降りて接近しつつ、見えなくした触手で取り囲みます。
その後に敢えて姿を見せましょう。猟兵とオブリビオンは相手を見ればお互い敵と認識できるハズ、でしたね。確証が持てたら、そのまま触手で包み込んで潰しましょう。血の一滴も零しません。
もしこれが人なら……私の心は揺れるのでしょうかね。
「万一誤認なら普通に殺人なのですが……まぁ私は悪人なので、1人くらい増えても今さらですが。死ぬ方はたまったものではありませんね」
さらりととんでもないことを口走った水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は呼び出した光属性の触手の力で光学迷彩を自身にかけ、上空へ飛び立った。
「侵入経路を考えているのであれば、隅の方の防壁や武装を探っているでしょう……ほら」
視線の先には警備員に平身低頭で謝る男の姿があった。確か奥にある倉庫には有事の時の近接武器が仕舞われていたはずだ。
説教し終わった警備員が呆れながら離れていく中、男は周囲の視線から逃げるように人気のない路地へ足を運ぶ。その後ろを取るように、怜悧も動き出した。
「あそこに銃や弾薬の類は無かった、と。なら急いで制圧させる必要はねーな」
懐から取り出したメモを記すために視線を下に向けていたため男は前にあった生暖かい物にぶつかってしまう。
「うおっ……あ、すいま……あれ?」
慌てて謝りながら視線を上げた男は自分の目を疑う。なぜなら自分の前に何も無かったからだ。
しかし手を伸ばすと壁になるように「何か」がいる。汗がこめかみから頬へ伝う中、不意に後ろから声がかけられた。
「どうも、こんにちは」
猟兵とオブリビオンは相手を見ればお互い敵だと認識できるという。胸をざわつかせる違和感を覚えた怜悧はあえて男の前に姿を見せて微笑んでみせた。
そして他の一般人が集められないよう真っ先に男の口を素早く、透明な触手で塞ぐ。予想は正しかったようで、男はくぐもった声を発しながら拘束から逃れようと暴れ始めた。
手から落ちたメモを怜悧がめくる度に、男の姿がイラストツールの細い消しゴムのように一部分一部分消えていく。
メモには倉庫には収められている武器の概要、それを守る警備員の動きや交代時間が事細やかに記されていた。
怜悧からの冷めた視線を受けた透明な触手は最後に残った部分も覆い隠すと、血の一滴も溢さぬように男を絞め潰した。
「もしこれが人なら……私の心は揺れるのでしょうかね」
触手が外れた後には何も残っていない。怜悧は男がいた唯一の物的証拠である紙束に火をつけ、その場に捨てた。
大成功
🔵🔵🔵
七那原・望
この数、相当ですね。
こんなにいると確かに見落としが発生してもおかしくないのです。
果実変性・ウィッシーズアリスを発動したらアマービレで更にねこさんをいっぱい呼んで検問はもちろん、街中の至る所を監視してもらうようにお願いします。
見つかりましたね。意外とわかりやすいものです。
検問の人達が万全だったら、そもそも街に入れてすらいなかったかもしれないですね。
早速ねこさん達にお願いして間者に幻覚を。
人気のない路地裏まで来てもらったら相手が悲鳴を上げるより早く早業で首を刎ねましょう。
まずは一人。でもまだ潜んでいるならこの作戦を繰り返してどんどん処理していかないとですね。
ねこさん、引き続きお願いなのです。
「この数、相当ですね。こんなにいると確かに見落としが発生してもおかしくないのです……」
受付所の人の動きや体温、声による空気の変化を感じ取り、七那原・望(封印されし果実・f04836)は顔を曇らせる。
『わたしは望む……ウィッシーズアリス!』
望が青と白のワンピース姿に装いを変えると、4匹の猫が足元に現れた。さらに彼らへ向けて望が杖を振ると、その数は何十倍にも膨れ上がる。
「それではねこさん達、よろしくお願いするのですー」
望の号令を受け、猫達は一斉に散開した。だが紫と桃色という極彩色の縞模様を持つチェシャ猫のうちの1匹が早々に戻ってきた。
「え、もう見つかったのです?」
チェシャ猫の先導を受けて向かった先には飲食店で大声で怒鳴る男の姿があった。口からはアルコールの臭いを漂わせ、望の目には映らないがその顔の赤さの原因が怒りだけでないことを察知させた。
「見つかりましたね。意外とわかりやすいものです。検問の人達が万全だったら、そもそも街に入れてすらいなかったかもしれないですね」
いくら避難民と言えど、拠点の平穏を乱すような者は門前払いになるはずだ。
それがこうして堂々と入所許可証を振り回しているところを見ると、受付所の職員達の疲労による集中力の欠如が窺えてしまう。望の目には見えてないが。
「今度来る時までに直しておけよ!」
「ではねこさん。お願いしますです」
代金の支払いも踏み倒し、千鳥足で店から出てきた男のそばにチェシャ猫が駆け寄る。
「あ? なんだオメェ……」
その姿をマジマジと見て、幻覚に簡単にかかってしまった男はフラフラと人気のない路地裏へ足を向ける。先程の騒ぎを見聞きした者達は関わりたくない、と露骨に距離を広げ、男の周りは完全に無人となった。
「うあ? なんで俺はこんなところに……」
自分が思ってもない所についたことに気づいた男の背後に飛び降りた望は、紅いアネモネが咲き誇る純白の細い大鎌を振り払う。
その刃は相手が望の存在に気づいて悲鳴を上げるよりも早く、男の首を切り落とした。
「まずは一人。でもまだ潜んでいるならこの作戦を繰り返してどんどん処理していかないとですね。ねこさん、引き続きお願いなのです」
太腿に顔を擦り寄せていたチェシャ猫は任せろと言わんばかりに声を発すると、望から離れて再び雑踏の中に消えていった。
大成功
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