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酔いに臥したる枕の夢の

#サムライエンパイア #戦後 #【Q】

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#サムライエンパイア
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#戦後
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#【Q】


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●元より薬の酒なれば
 その日、町は早朝から活気に満ちていた。
 往来で賑わう大通りにはいくつもの屋台が立てられ、人々は寸暇も惜しんで準備を進めている。
 町の入り口に次々と運ばれてくるのは、同じ紋が描かれた揃いの酒器。
「おう、一年振りだな! 今年のそっちの具合はどうだい!」
「上々ってところかね。そっちも気合い入れてるじゃねぇか」
「ああ、今年は巷で噂になっている果実に漬け込む酒ってのもやってみてなぁ……」
 出店に並べられるは、大小様々な器に満たされた酒の数々。
「今年も腕がなるねぇ。この日の為にたっぷり仕込みをしてきたんだ」
「お前さんとこの魚料理は絶品だからなァ。今年も楽しみにしているよ」
 それらを盛り立てるように用意された料理の品々。
 始まりの気配を聞きつけて、諸国から様々な人も集まってくる。

 そう、今日は町総出での祭りの日。
 さらにいうなら、“酒”の為の祭りの日だった。

「さァ、今年もつつがなく、新酒を祝える日と成った! 儂等の力作、存分に呑み、楽しんでくれ!」

 呑めや歌えや盃の祭。

 酌めども尽きずの、秋の酒宴の始まりである。

●酒フェス、行こうぜ!
「酒、呑みに行くぞ(オブリビオンの退治の依頼だ)」
 猟兵達が集まるが早いか、先ほどから妙にソワソワとしいていた四辻・鏡(ウツセミ・f15406)はビシッ、と空の枡を掲げて無駄にキメ顔で言った。
 一瞬の沈黙。
 なんだ、ただの酒呑みのたわ言か。
 ため息をついた猟兵達が踵を返しかけたところで、我に返った鏡が慌ててそれを引き止める。
「悪ぃ悪ぃ、本音と建前を間違えた。ちゃんと敵は来るし説明もするから待ってくれ。いや頼むからホント待って下さい」
 それはそれでどうなんだと一部でツッコミが入ったが、仕方がないので帰るのは辞めることにして改めて鏡へと向き直った。
 それを確認して、咳払いを一つ。鏡は漸く本題の説明を始める。
「あー……サムライエンパイアのとある町でさ、町総出での酒の祭があるんだと。なんでもその近辺は湧水があちこちから出ていて、昔から蔵元が多くあったそうだ。で、毎年この時期になるとその年の新酒やら力作の酒やらを持ち寄ってお披露目会をしていたんだと」
 始めは集会程の規模だったらしいが、ある時商人がそれに出くわし、気に入った酒を買い付け諸国へ売り始めた。酒は瞬く間に人気となり、その翌年には新しい酒を求めて何人もの商人がその催しへと足を運んだという。そしてその噂を聞き、それならうちの蔵元も是非参加させて欲しいと酒自体も集まってくるようになり……気づけばその規模は村総出で行う程にまで大きくなったらしい。
「名付けてサムライエンパイア酒の戦ってな? 今じゃ酒の肴にって腕に自信のある料理人が一品振舞ったり、祭りに合わせて芸人なんかも集まったりと賑わうらしいぜ?」
 が、祭りの賑わいが呼ぶものは何も良いものだけとは限らない。
 酒精に惹かれてか、人々の活気に吸い寄せられてか、オブリビオンがその祭りを襲撃してしまう予兆があったのだ。
「折角旨い酒が飲める場所を台無しにされるのを見過ごす訳にはいかねぇ。ここは私たちも参加して、サクッと撃退してきて欲しいんだ」
 幸い、転送からオブリビオンの襲来までは時間に余裕があるという。後の戦いに影響がない程度であれば、飛び入り参加として祭りに加わり楽しんでも構わないとのことだった。それで冒頭の話なのである。
「それに……祭りってのはただ騒ぐだけのモンじゃねぇ。活気に満ちた人々の気は『ハレの霊力』としてその土地に染み渡って蓄積される。今回の催しでも、より多くの人が集まり楽しめば、上手くいきゃあ敵の弱体化も狙えるだろうよ」
 だから、この祭りで楽しむことはれっきとした作戦なんだからな。と鏡は念押しする。もう序盤から色々バレてるので今更な感が否めないが、鏡は大真面目に説明を続ける。
「祭りの概要は、イメージとしては町全体を使った市場みたいな感じだな。蔵元ごとの出店を町のあちこちに散らしてる。参加するヤツは町の入り口で通行証代わりに酒器を貰って、出店まで言って注いでもらうって体だ」
 酒が呑めない人向けには、糀や酒粕から造られた甘酒や果実水も用意されているという。つまみとしての小皿料理も数多く出ているため、呑めなくてもそれなりに楽しむことはできるだろうとのことだ。
「と、まぁそんな感じで。酒も十分に愉しんで敵も倒して村を守る。私達ならそれができる筈だ」
 くれぐれも呑みすぎることはねぇようにな、なんて笑って言って。
 鏡は転送の準備を始めるのであった。


天雨酒
 つきせぬ宿こそめでたけれ。
 秋は月を見ながら酒が呑めます、天雨酒です。
 収穫の秋、折角なので酒宴を楽しみましょう!

●第一章
 フラグメントに囚われず、酒の祭りを存分に楽しんでください。
 イメージはUDCアース等でよく行われている飲み歩きのイベントですが、これが町総出で行われています。各蔵元は秋の新酒やら秋あがりやら自慢の酒を持ち寄ってきているので、呑んで楽しみましょう。日本酒以外にも果実酒なども用意されており、女性や強い酒が苦手という方でも呑めるものがあるかと思います。蔵元の人も町の人も聞けば喜んで答えてくれます。
 子供向け、呑めない方には甘酒があります。これも各所工夫が凝らされているので、甘さや風味が異なったりと違いを出しています。
 また、酒に合わせて料理も用意されています。食べやすいように小皿に盛られています。旬のものから郷土料理まで色んな種類がありますので好きなものを探しましょう。

 基本的には自由に楽しんで頂ければと思いますので、やりたいことをプレイングにご記載ください。
 やりたい事項を複数書かれるよりも二つくらいまでに絞った方がしっかり描写できると思います。

 また、公共良俗に反すること、未成年の飲酒は禁止といたします。こちらの祭りは酔って騒ぐことよりもお酒自体を楽しむことを主題としているため、泥酔して周りに迷惑をかける等の行動もマスタリングの対象といたします。(酔って相方さんに介抱される……くらいはOKです)
 酒は呑んでも飲まれるな、ということです。

●第二章
 ボス戦になります。詳細は断章でご案内します。
 お祭りが盛り上がっていれば蓄積した『ハレの霊力』にあてられ、敵は弱体化します。酒の席を台無しにする不届き者なので容赦なく倒して下さい。

●プレイング受付について
 第一章は公開と同時に受付開始、第二章は断章を挟んでからの受付開始となります。詳しい期間についてはTwitter、マスターページにてご案内しますのでお手数ですがそちらをご覧ください。
 また、人数によっては再送をお願いすることもございますので、ご了承頂ければと思います。オーバーロードの有無はお任せしますが、リプレイのご案内は最後の方になってしまうかと思います。

 二人以上の合わせでの参加の場合は、迷子防止の為、お相手様のID、もしくは【合言葉】をご記載ください。

 それでは皆様、よろしくお願い致します。
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第1章 日常 『祭りを楽しもう』

POW   :    屋台を巡って色々食べよう

SPD   :    屋台を巡って色々遊ぼう

WIZ   :    花火を楽しもう

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

丑三・勘太郎

POWで判定

エンパイアで酒の祭りなんてやってたんだな。
このあとオブリビオンが来るなら気は抜けねぇが、
それまでは目一杯楽しまないとな!

祭りでは色々な種類の酒が出るって話だから、
せっかくだし飲み比べでもしてみるか。

基本的には日本酒の出店を中心に飲み比べをするが、
ほかの種類の酒もあるのならそれも呑んでみるぜ。

呑んでばっかりも良くないだろうし、
食べ物の出店もいくらか回るか。
小皿料理もあるって話だったな。
それも堪能することにしよう。

祭りが盛り上がってればオブリビオンも弱体化するらしいし、
敵が出てくるまでは楽しむことにするぜ!



●比べるからこそよく視える
「エンパイアで酒の祭なんてやってたんだな……」
 渡された素朴ながらも質のいいお猪口を手の中で遊ばせながら、丑三・勘太郎(妖憑依を継ぐもの・f10108)は関心したように辺りを見回した。
 彼はサムライエンパイアを出身とはしていても、その諸国全てについて知っている訳では無いし、そもそも修行の途中で別世界へと渡った身だ。どこか懐かしい、それでいて自分が知らない風景に自然と相好を崩してしまうのを自覚する。
 話によればこの後、オブリビオンが襲ってくるとのことだが、まだ時間に猶予はあるとのこと。
「ま、それまでは目一杯楽しまないとな!」
 勿論気を抜きすぎることは出来ないがと言いながら、それでも足取りは軽く、勘太郎は出店巡りへと繰り出すのだった。
 
 
 酒の祭、という程なのだから、嗜む者であればここは酒を呑むのが礼儀というもの。
 それでいて、祭りの場では様々な種類の酒が集まるのであれば、馴染みの酒だけを呑むというのも勿体無い。自分が知らないだけで好みに合う酒がまだまだ存在するかも知れないし、滅多にお目にかかれない酒も出されている可能性もある。
 そもそも見る限り、蔵元一つでも数種類の酒を持ってきている様子。何の違いがあるか気にならない訳がなかった。
 ならやるべきことは一つ。
「飲み比べだな」

 そんな訳で、勘太郎は綺麗に並んだ三つのお猪口と相対することになっていた。
 どうやら通行証代りの酒器は見せるだけで問題無いようで、望むなら別の酒器に注ぐこともできるらしい。というか、飲み比べをするなら並べて持って行けと、店側で用意された酒器に有無を言わさず注がれて押し付けられた。
「えーっとたしか左から順に……」
 渡された際の説明を傍につけられた紙片の文字を読みながら勘太郎は思い出す。
 たしか、そうだ。確かこれは同じ銘柄の酒でも種類が全く異なると言っていた。左から二つまでは米と水、それと米麹から作ったもので、残りの一つはそこに植物から精製した酒精を加えているらしい。
 試しにと左端から順番に一口ずつ飲んでみれば、成程と得心する。フルーティーですっきりとした味わいから始まり、さっぱりとしてキレがあるもの、右端に関しては口に含んだ瞬間日本酒独特の風味が薫るものとその差は明確だった。
「確かに、全然違えな……」
 渡された時には気付かなかったが、こうしてじっくりと見て見れば、種類に微かに黄色味がかかっている。白い陶器でわざわざ並べてきたのもこの違いを見せる為もあったようだ。
 味の違いを確かめるように代わる代わる味わい、かつ自分の好みを確認しているうちにあっというまに器の中は空となってしまう。
 
 酒器を返すついでと店主に礼と感想を言うと、店主である恰幅の良い男性はにこにこと笑顔で白く濁る酒が詰まった瓶を持ってくる。
「そいつはなによりだ! ちなみに、こういう酒は呑んだことはあるかい?」
「こいつは?」
「これは濾過の時に荒い布目を使ってなぁ……ま、呑んでみてからのお楽しみってやつだ!」
 まぁ試してくれやと笑顔で勧められれば断る道理はない。なみなみと注がれた酒をありがたく受け取り、一口つけてみて勘太郎は思わず目を見開いた。
 舌に走る微かに泡が弾けるような刺激と同時にキリリとした切れ味のある旨味が広がっていく。敢えて澱を残したにごり酒、そこに微炭酸が入った一品だった。
 余韻に誘われるままにもう一口と行きかけたところで、勘太郎は先程から酒しか口にしていないことを思い出してなんとか踏みとどまった。
 
 酒ばかり呑んでばかりというはさすがに良くない。折角あちらこちらに食べ物の出店も並んでいるのだから、いくらか回ってからこれは楽しむことにしよう。
 
 店主に改めて礼を言って、勘太郎は出店を回り酒に合いそうな料理を物色する。
 選んだのは肉と茸や山菜と一緒に胡麻で炒めたものと、豆腐を味噌で漬け込んだ品。どちらもこってりとした味のものではあるが、辛口の酒にこれがまたよく合うこと。
 たまらず、感嘆ともつかない溜息が口のなかから零れ落ちていく。
「祭りが盛り上がってればオブリビオンも弱体化するらしいし、敵が出て来るまでは楽しむことにするぜ!」
 人々の活気と、上手い酒に美味い肴。これだけあれば楽しむには十分だ。
 心地の良いほろ酔い気分を楽しみながら、勘太郎はゆるりと杯を傾けていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
日本酒の新酒の時期は12月から1月の冬だと記憶しておりましたが、材料も同じだと限りませんし、世界が変わればまた変わるのですね。
確かに秋の実りと共に頂くとより美味しいのかもしれません。……お酒は飲んだ事がないのでおそらくですが。

年齢としては飲んでも構わないのですが、何分不慣れなお酒の事。この後の事も考えて控えておき甘酒で。
UDCなどで売っている赤もしくは青の天使のパッケージの甘酒は甘さが強めなので牛乳で割って飲むことが多いのですが、こちらのお祭りで出されるものはどうなのでしょう?そこは楽しみです。
いろいろ比べたい所ですが私は食が細めだし、甘い物を食べるとすぐお腹いっぱいになってしまうんですよね。



●優しい甘さと憩いの時間
「日本酒の新酒の時期は、12月から1月の冬だと記憶しておりましたが……」
 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は賑わう町中を歩きながら、出店に並んでいる酒の数々を眺め、そっと首を傾げる。
 藍の記憶の中では、それらとよく似た酒瓶はもっと寒い時期に並ぶものかと思っていたのだが、それはサクラミラージュでの話である。見た目と呼称は同じであっても、全く同じものであると断定はできない。世界が変わればまた変わる、というものなのだろうか。
「どうした嬢ちゃん、こんなに酒が並んでる光景が珍しいのかい?」
 藍の不思議そうな顔に気付いたのか、近くで店を出していた中年の男が気さくに話しかけてきた。
「いえ、この時期でもこんなに日本酒が並ぶものなのだな、と……」
「この時期なら冬に造った酒を熟成させて、秋口に出したもんや、早いもんならしぼりたての生酒の時期だからなァ。これからどんどん回ってくる頃だろうよ」
 どうやら酒の種類によって、出回る季節も異なるものらしい。成程と得心していると、それに、と男は近くの料理を出している店を指差しながらカラリと笑う。
「何より、この焼き魚やら茸やらこの時期が旬のもんも多いからな! 一緒に食べるのはまた格別ってもんよ!」
「ああ、それは確かに。秋の実りと共に頂くとより美味しいかもしれません。……私はお酒を飲んだ事がないのでおそらく、ですが」
「ありゃ、そりゃあ残念。だが、美味いってことは保障するぜ。例えば――」
 飲めないという藍にさして気にした様子もなく、男は店越しに回っておいた方が良い料理処の案内を始め、藍は慌ててメモを取り出したのだった。
 
 
「さて……」
 配られたお猪口とは別の、大きめの素焼きの器に満たされた乳白色の液体を大切に抱えながら、藍は備え付けられていた長椅子へと腰を降ろした。
 案内を買って出てくれた男性は、その気があるのなら初心者向けの酒を出そうかと勧めてくれたが、それは丁重に断った。
 別に飲んでも構わない年齢ではあるのだが、先程も行った通り藍は飲酒の経験がない。不慣れな酒でこの後の戦いに支障を起こすことは避けたかった為、控えることにした。
 その代わりにと教えて貰ったお勧めの甘酒を貰うことにしたのだ。
「まずは早速、頂いてみましょうか」
 一息を入れた藍は早速改めて器の中の品を見る。今まで見たことがあるものは、別世界での赤や青の天使が書かれた紙や缶のパッケージの物が多かった。こうして陶器のカップに入れて飲むというは、なんだかそれだけで新鮮な気分である。
「あちら甘酒は、甘さが強めなので牛乳で割って飲むことが多いのですが……こちらのお祭りで出されるものはどうなのでしょう?」
 わくわくとした気持ちを抑えながら、藍はそっと器に口を付ける。
 途端、微かに香る酒粕の香りと共に口の中に広がる落ち着いた甘さ。
「……!」
 思わず目を見開き、器を凝視する。
 蔵元こだわりの逸品だからだろうか、それとも製造方法からして異なる為だろうか。広がる甘さは決してくどくなく、それどころかよく冷えたそれはさっぱりとした印象を受ける。それでいて甘酒特有の風味がしっかりと出ており後を引いてしまいそうだ。
 そのまま一気に飲み干してしまうのは気が引けて、藍は一緒に貰って来た煎餅を口に運んだ。
 こちらも甘いものと一緒ならと店の人に勧められたものだった。程よい塩気と歯応えが美味しいし、丁度良く甘酒の甘さを打ち消してくれる気がする。これなら甘すぎて飲み切れない、ということも無さそうだった。
「でも……」
 半分ほど減った甘酒と煎餅を見て、藍は小さく溜息をつく。
 折角こんな美味しいものに出会えたのだから、他にもいろいろと試してみたい。きっとまだ、自分が知らない美味しいもの達が待っていることだろう。藍自身とてまだまだ色々食べ比べてみたい気持ちはある。
 しかし、残念かな。胃袋はそれを許してくれない。
「もともと食が細めだし、甘いものを食べるとすぐお腹いっぱいになってしまうんですよね……」
 こんな時ばかりは自分の体質を少しだけ恨みながら、藍はせめてもと残りの甘酒をゆっくりと楽しむことにしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトリア・アイニッヒ
【セリカ(f00633)】と。
遅まきですが、彼女の成人のお祝いも兼ねまして。

何とも賑やかな場。ですが、不快ではありません。
皆が日々に感謝し、楽しんでいる…これが、話に聞く『ハレの霊力』ですか。
私たちの思い出も、その一端となれば良いですね。

さて、肝心のお酒を。
こちらは清酒…ふむ。辛口の中にすっきりとしつつも確かな甘みが。
こちらは果実酒? …甘酸っぱさと風味が楽しいですね。
セリカの様子を気にしつつ、楽しみましょう。
…あぁ、ダメですよセリカ。お酒を飲む時はお水も一緒に摂らないと悪酔いしてしまいますよ?

※アドリブ歓迎
※大人しい顔して、相当の酒豪勢です
※色々あって、お互いに愛称を呼び合う仲になりました


セフィリカ・ランブレイ
リリア(f00408)と行動

お酒自体は夜会で飲んだ時潰れないよう慣らしてあるよ
お姫様の嗜みだね
年齢的にも大手を振って呑める訳だし、お祭り楽しもっか!
でも私、お酒よりおつまみに眼がいくな

シェル姉呑む?
「私は飲み食いしたくないって言ってるでしょ」

と、相棒の魔剣はこの手の行事には冷たい
食物を摂取すると魔力への分解が面倒だとか

「でも、いい酒なら別」

いい酒ね
リリア、何かお勧めある?詳しそうな気配!

ふむふむ、甘味を感じるように味わう、風味を楽しむ
もっと教えて、お酒の楽しみ方!

…リリア飲むペース早くない?

私これ以上は動きが鈍りそうな気が…
リリアさん? 顔色が変わってないよ?

『清楚な顔してザルね、あの子』



●淑女な酒の嗜み方……?
「何とも賑やかな場。ですが、不快ではありませんね」
 時を過ぎるごとに活気付いていく通りの光景を眺めながら、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)は目を細める。
 酒の力もあってか周囲の喧騒は少し賑やかすぎるきらいはあったが、耳に届く彼らの声はどれも楽しげなものばかりだ。
 皆が日々に感謝し、心の底から祭りを尊び楽しんでいる。彼らから溢れる陽の気がこの土地全体に染み渡り、さらに祭りを活気付けていく……これが話に聞いた『ハレの霊力』というものなのかもしれない。
「私たちの思い出も、その一端となればいいですね、セリカ」
 町全体に広がる熱を感じながら共に来た親友の愛称を呼べば、物珍しそうに周囲を観察していたセフィリカ・ランブレイ(蒼剣と姫・f00633)が満面の笑みで頷く。
「勿論! その為に来たんだもんね!」
「ええ。……それと遅まきながら、あなたの成人のお祝いも兼ねて。やっと、一緒にお酒を飲むこともできますからね」
 嬉しそうに微笑むヴィクトリアの顔を見みて、セフィリカも自然と頬が緩むのを感じながら頷いた。
 セフィリカにとって、お酒自体は別に初めての体験という訳では無い。王族である彼女にとって、酒が絡む夜会は必ず付き纏ってくる。公的に成人したとなれば断り続けることも出来ない為、飲んでも潰れない程度には慣らしてはあるのだ。
 しかしこれは所謂お姫様の嗜み、というもの。実際に酒を楽しむという意味合いでいうなら、セフィリカはまだまだ初心者と言っても良いだろう。
 だからこそ、今日のこのイベントに胸を弾ませていたのだ。
「年齢的にも大手を振って呑める訳だしね。お祭り楽しもっか、リリア!」
「はい、セリカ」
 最近になってようやく口に馴染み始めた互いの愛称を呼び合い、二人は出店へと踏み出していく。
 
 
 
「さて、肝心のお酒はどれから……セリカ?」
 あちこちに立ち並ぶ出店と、そこに置かれた酒瓶を眺め思案していると、ヴィクトリアはセリアの視線があらぬ方向へ向いていることに気付いた。
「えっ!? あ、大丈夫大丈夫! ちょっと気になっただけ」
 慌てたように振り返るセフィリカの様子に、ヴィクトリアはふむとそちらへ視線を遣る。何か彼女の眼鏡に叶うものでもあったのだろうか。
 彼女のが見ていた方角には、あまり酒類の出店は出ていない。どちらかと言えばそちらは料理が並ぶ店が多く、魚や肉の焼けた良い香りがこちら迄漂ってきており……。
「……お腹が空いているのなら、先に何か食べておきますか?」
「いやー……美味しそうだなって」
 空腹のままの飲酒は危険だろうと提案すれば、やや顔を赤くしたセフィリカは苦笑を返した。どうやらいつもの癖で、お酒よりもつまみの方に目がいってしまったらしい。
『またまだお子様ねぇ』
 するとそこに、くすくすと揶揄うような声が割って入ってくる。落ち着いていながらも艶のある女性の声の正体は、セフィリカの腰の長剣から。彼女と契約を結んだ意志ある魔剣、シェルファのものだった。
「あ、シェル姉も呑む?」
 興味があるのかとセフィリカが(半ば強制的に)人間形態として呼び出せば、青い髪に宝玉のような赤い瞳をもつ長身の女性がその場に現れる。しかし、折角の提案にも関わらず、彼女は不機嫌そうにつんと顔を背けるだけだった。
『私は飲み食いしたくないって言ってるでしょ』
 現れた魔剣の姿にヴィクトリアが丁寧な会釈を返す横で、セフィリカは先程とは違う類の苦笑を浮かべる。
 相棒である魔剣は、この手の行事にはいつも冷たい。というより、食物を自分から食べるいうことに対して消極的であった。
 なんでも、幾ら人の姿を取っていたとしても、魔剣である彼女は根本的に人間とは全く違う構造をしている。食物を摂取すると一度魔力へ置き換えてから吸収する必要があるようで、その分解が手間で面倒なのだとか。
 折角一緒に呑めると思ったのに残念だとセフィリカは肩を落とす。
 と、そんな様子を見かねたシェルファが片目をこちらに向けて――。
『……でも、いい酒なら別』
 そう、ぽつりと付け足した。
「いい酒、ね」
 相手の言葉を繰り返してセフィリカはにんまりと笑う。そんな彼女の視線の先には、シェルファの言葉を受けて悩まし気に首を傾げる少し年上の親友の姿。
 彼女とてこの祭に来たことは始めてだろうが、それでも視線の運び方や入り口での話しぶりから、ある程度の知識はある様子。いや間違いなく、お酒に関しては自分より上だ。
「リリア、何かお勧めある? 詳しそうな気配!」
「え? はい、多少なら嗜みますし案内できるかと思いますが……」
 そんなわけで、新たな目的も一つ追加して二人の本格的な唎き酒は始まったのである。


「こちらは清酒……ふむ。辛口の中にすっきりとしつつも確かな甘みが」
 お猪口に注がれたそれをゆっくりと飲み干し、ヴィクトリアは口の中に広がる味わい言葉に纏める。
「こういうのって喉にくるってイメージがあったんだけど、これは結構呑みやすいんだね」
「そうですね、こちらは比較的呑みやすい部類だと思います」
 驚きの表情で少しずつ自分の分を飲み干すセフィリカ。その様子からまだまだ彼女にも余裕はありそうだと判断し、呑む際に意識していくポイントを伝えていく。
「ふむふむ、甘味を感じるように味わう、風味を楽しむ……もっと教えて、お酒の楽しみ方!」
 どうやら彼女自身も興味津々のようだ。好奇心の強い彼女のことだ、きっとすぐに酒の味を楽しくわかる様になるだろう。
「では、これと近いモノから飲み比べてみましょうか」


「こちらは純米ですね。先程よりも呑んだ瞬間に香る風味がええ……とても美味しいです。フルーティ、と言えるのでしょうか」
「なんか白ワインみたいな風味かな。結構親しみがあるかも」

「おや、こちらは原酒ですか。フレッシュさを残しながら先程よりも濃醇な味わいが印象的です」
「うわ、さっきよりもぐっと力強い感じがする! でもあとから旨味がぶわってくるね!」

「ほうこちらは……果実酒? なるほど、日本酒で漬けたものなんですね。甘酸っぱさと風味が楽しいです」
「……リリア、飲むペース早くない?」


 傍でついてきていた筈のセフィリカから神妙な声色で言われて、ヴィクトリアは驚いて酒器から顔を上げる。
「わ、私これ以上は動きが鈍りそうな気が……」
 見れば、彼女の顔はほんのり赤くなっており、その視線も若干怪しげである。どうやら加減を忘れて飲み過ぎてしまったらしい。
「……あぁ、ダメですよセリカ。お酒を呑むときはお水も一緒に摂らないと悪酔いしてしまいますよ?」
 店のものに汲んでもらった水を渡せば、何故か彼女はこれまた複雑な顔になってしまう。

「あ、はい……」
 セフィリカの方はと言えば、貰った水を飲みながらそっとヴィクトリアの様子を伺っていた。
 注がれるのはお猪口一杯分とはいえ、種類を重ねればそれなりの量を飲むことになる。セフィリアはヴィクトリアの後を追う形で飲んでいた筈だから、彼女も自分と同量を飲んでいた筈だ。いや、最後の方は自分が一つ飲んでいる間に別のものにも手を出していたから、若干彼女の方が多いのかもしれない。
 それなのに彼女の様子と言えば……。
「……リリアさん? 顔色が変わってないよ?」
『清楚な顔してザルね、あの子』
 ぼそりと背後で呟いたシェルファに、セフィリカは無言で頷き手元の水を飲み干すのだった。

 祭りの中に、淑女の顔をしたうわばみが、一匹。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
f18523◆ケイラを誘う
何度か遊びに誘って貰ったしお礼とエンパイア案内を兼ねて(浴衣着て浮かれ気味

酒はまだ飲めねーが食べ物も沢山出てるし行こ
(相棒のユキエは頭の上でご機嫌に祭り囃子や呼び声を真似てる)
甘酒くれた
郷のはくどいけどこれスッキリして飲みやすいねェ
甘藷と栗をほっくり焼いたやつも甘い…ほれユキエ『良いわね』
オレのオススメはねーこれ
酒蒸し饅頭
蒸したてが堪らんな♪
ん…(酒の香りに足を止め淡い濁り酒に見入り)
甘めなん?この酒オヤジ殿や師匠が好きそ
土産にしよ
あ、徳利2つで

え?(ジト目
ここに師匠来たら酔ってスケベになるし大変だぞ…
ケイラが相手してくれるなら
『トーゴとユキエは見守るから』

アドリブ可


ケイラ・ローク
【f14519】トーゴと
アドリブ連携OK

あらっデート?えー案内~?
でも興味津々
楽しみ♥(朝顔柄の浴衣で)
ってキミ…地元世界だからかヘラヘラ浮かれてない?ユキエちゃんにもうつってるわよ💧

自分もるんるんと鼻歌(UC
スッキリの甘酒?あたしもそれ欲しい
これが甘酒なのね、初体験♪
栗とさつまいものは美味しそう!
あたし柿を焼いたのを食べたわ、甘かった♥
キミにもあげるね
酒蒸しまんじゅう?ほんと、ほんのりお酒の香り(ぱくぱく)
へぇ~
あのお師匠さま?あたしとじゃなくお師匠と来れば良かったじゃない?久方ぶり水入らずの逢瀬とか~♥きゃっ
…やーねそんな目で
冗談ヨ!
キミとスケベお師匠のお相手は大変そうだから遠慮しますぅ



●秋の味覚と甘い酒
 老若男女問わず賑わう祭りの中に、浴衣姿の少年少女が二人。
「ふふ、トーゴにデート誘ってもらっちゃった♪」
 朝顔柄の浴衣を纏い、はしゃいだ声を上げるのはケイラ・ローク(トパーズとアメジスト・f18523)だ。キマイラフューチャーを出身とする彼女にとって、サムライエンパイアの文化はまだまだ馴染みが薄い。出店に並ぶ酒瓶や料理、そして人々の注目を集める芸人達に興味津々であった。
「違うって、今回はタダの案内」
 そんな彼女に対して釘を指すように言うのは、彼女を此処まで連れてきた鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)である。
「えーっ、案内だけ~?」
「今まで何度か遊びに誘って貰ったし、今回はそのお礼」
「ってもキミ……地元世界だからかヘラヘラ浮かれてない? ユキエちゃんにもうつってるわよ?」
 そうは言いながらも、トーゴの出で立ちもケイラと合わせたように縦縞の浴衣である。案内、と銘打ちながら彼自身も満喫する気であるのは明白だろう。その証拠にほら、トーゴの頭の上で白鸚鵡のユキエもご機嫌に祭囃子を真似て唄っているし。
「そうかー? エンパイア祭りの日なんざだいたいこんなもんだって」
『~~♪』
「酒はまだ飲めねーが食べ物も沢山出てるし、行こ」
 からりと笑って流すトーゴに小さく溜息をつくも、すぐにケイラはまあいいかと彼等の調子に合わせて鼻歌交じりに歩き出す。
 だって、今日はこの世界にとってはハレの日で、自分にとっても新鮮な異国のお祭りの日。
 とても楽しみなひと時だもの。多少なら浮かれていたって仕方がない。
 
 
 
 今回の場の主役となっているのは酒であるが、トーゴもケイラもまだ未成年である。当然、特別な日であろうと二人は酒を飲むことはできない。
 その代わりにこれでも飲んで楽しんでおくれ、と甘酒を渡してきたのは、食べ物を買った出店と並んだ酒屋の中年の女性だった。
「甘酒? って、これはお酒じゃないの?」
「酒の原料から作ってんだけど、これは酒精が入ってないから大丈夫なやつさ。子供とかでも飲めるよ」
 素焼きの器に満たされた液体を興味深げにのぞき込むケイラに、女性は笑いながら説明をしてくれる。その横で、トーゴは礼をいうと早速貰ったそれを一口飲んでみた。
「ん、郷のはくどいけどこれはスッキリして飲みやすいねェ。食べもんにも合いそう」
「そりゃ良かった! 冷やしても旨いように調整してるんだよ」
「スッキリの甘酒? あたしもそれ欲しい!」
 二人のやりとりを聞いてますます好奇心を刺激されたのだろう。尻尾の先端を揺らしながら、ケイラが手を上げて注文をする。
 受け取った自分の分の器を両手でそっと包み、トーゴの真似をするようにそっと一口啜る。
「これが甘酒なのね、初体験♪」
 直後、ぱっと明るくなった顔をみるにどうやらお気に召したようだ。
「じゃ、これに合うようにもうちょっと買い足して、どっかで食べようぜ」
 店の主に元気よく礼を言い、二人は再び料理が多く並ぶ出店の通りに繰り出していく。
 
 
 
 果物に茸に、山でとれた山菜や木の実、その他酒粕から作られる菓子など諸々。
 あれから数十分後、どっさりと買い込んできた食べ物を前に置いて、用意されていた敷物の上に二人は向かい合って座っていた。
「あ、その栗とさつまいものは美味しそう!」
 ケイラが示したのは今まさにトーゴが食べている栗と甘藷。炭火でほっくりと焼いたそれは、普通火を通して食べるものよりもずっと甘さが詰まっている。確か炭火から出る熱やら光やらが甘みを強くしてくれるとか聞いたことがある気がするけれど、美味しい食事の前では些細な問題だ。
 あたしもとせがむケイラに少し分けてやり、ついでに今はトーゴの肩に停まっているユキエにも皮を向いて差し出してやる。
「ほれユキエ」
『良いわね、これ』
 大人しく啄む様子を眺めていると、今度はケイラの方から葉で包んだ果実を広げ差し出してきた。
「じゃああたしからも。柿を焼いたやつ、甘かったから、キミにもあげるね」
 折角だからとケイラが勧めてきたそれも二人と一匹で仲良く分けて食べきって、最後にとトーゴは用意してきた酒蒸し饅頭を広げる。
 包みを広げると同時にふわりと薫る酒の匂い。惜しげもなく真ん中を割ると、出てくるのは舌触りの良いこしあんだった。
「ん~、蒸したてが堪らんな♪」
「ほんと、ほんのりお酒の香り」
 それまで食べて来たこと量など関係ない様に、二人はあっという間に饅頭を平らげていく。
 
 気が済むまで料理の品々と満喫して、気に入った甘酒ももう一度と貰ってきて。
 さっぱりとした冷たい甘酒が喉を潤していく余韻を楽しんだ後、そう言えばとケイラはトーゴの横に置かれた風呂敷包みを指差し尋ねる。
「このお祭り、ホントにあたしとで良かったの?」
 風呂敷の中身の正体が二人分の徳利であることを、傍で見ていたケイラは知っていた。
 食べ物を買う最中、酒の香り惹かれたトーゴが立ち寄り、淡い濁り酒を買い求めていたのだ。
『甘めなん? この酒オヤジ殿や師匠が好きそ』
 そう呟いて注文したことを、ケイラの猫の耳はしっかりと捉えて覚えている。
「師匠ってあのお師匠さまでしょ? あたしとじゃなくお師匠と来れば良かったじゃない? 久方ぶりの水入らずの逢瀬とか~、きゃっ♪」
「え…………?」
 何を想像したのか(大方の予想は立つけれど)一人で盛り上がっているケイラに、トーゴは意識して据わった目で睨む。
 確かにこの土産は二人に対してのものだ。付き合いが長い分酒の好みもわかるから、喜びそうだと思って包んでもらったのも事実である。
 が、それと一緒に来たかったかと言うば、それは全く別の問題。いや、正直にぶっちゃけてしまえば、とてもではないが一緒に来たくは無かった。
 だってあれやこれやそれやこんなや、問題になることが目に見えてるんだもん。
「ここに師匠が来たら酔ってスケベになるし大変だぞ……ケイラが相手にしてくれるならいいケド」
『トーゴとユキエは見守るからいいケド』
 身も蓋もない答えと、ついでにじとりとした視線を返されて、ケイラはからからと楽し気に笑った。
「……やーねそんな目で。冗談ヨ! キミとスケベお師匠のお相手は大変そうだから遠慮しますぅ」
 トーゴの師匠の噂は他でもない彼自身から色々と聞いているけれど、とてもではないがケイラ一人で手に負える相手ではないことは分かっている。
 それに、結局呼ばれたのはその人ではなくケイラだ。
 たらればで話を膨らまして妄想するのはそれはそれは愉しいけれど。二人でこうして飲み食いしてはしゃぐのも、やっぱり楽しいのだから。
「だからこのままで充分、だわ♪」
 そう言って、ケイラはもう一度祭りを見て回りたいとトーゴの手を引くのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アース・ゼノビア
【庭】◯
浴衣は褄に芒の白絣
酒選びをウルスラに任せたので
煮込み料理と串焼き、葡萄の果実水を見繕って席へ

やれやれ…お気遣い痛み入る
お酒の妖精さんの100ぶんの1でも強ければと思うよ
ごく一口ずつ飲み較べ
確かにどれも美味しいような…?
ん、この甘くて梨のようなお酒は
飲みやすいし好きだな。これをお土産にしよう

この切子硝子も揃いで欲しいな…と提灯の光に透して微笑み
オズからヤマメを受け取りつつ提案に頷く

ルゥお薦めの蜂蜜檸檬で酒気を薄めつつ
蜂蜜か…懐かしいな
俺の故郷は果実や香草を入れた果実酒が人気で
酒を使わない子供用のもあってね
よく蜂蜜入れて飲んでたんだ

帰ったら試しに作ってみるよ
皆にも気に入ってもらえるといいな


ウルスラ・クライスト
【庭】◯
紫紺に光蝶が舞う浴衣姿。肩に流した三つ編みに簪
色とりどりの切子硝子のお猪口を
山ほど並べた盆を手に
にこにこご機嫌で席へ戻ってくる

お酒選びはお酒の妖精ウルスラさんにお任せあれ、よ~
アースはあんまり呑めないけど、味は嫌いじゃないでしょう?
一口楽しんだら預かるわよ
好きなの見つけたら瓶で買っていらっしゃいな

私はこの盆の上にあるもの、どれも好きだし
皆が何を美味しいと思うのか興味深いわ
オズはいける口よねえ。辛いのが好きなのかしら?
お薦めの甘い日本酒、私は好きよ
秋の実りを感じる暖かい味ね

あら、この果実水…蜂蜜檸檬?ミードってこういう味よね
ルゥちゃんも意外と強かったりして
ふふ、一緒に呑める日が楽しみね


ルゥー・ブランシュ
【庭】○
白地に紅色の鉄線金魚柄の浴衣姿にて登場!

皆の持ち寄った物を見て
買ったタコ焼きや乾燥フルーツそっちの気で
ぴょんぴょん!

わぁ✨
ウル、お酒の妖精さんにも果実水の妖精さんにもなれるよ!
るぅーね、この桃の果実水さんほんとうに好き♪
これにはちみつレモンさんもいれると
もっと美味しくなるんだって
お酒はまだ飲めないけど
るぅーも素敵なおちょこさんで一緒に乾杯するの!

そしてね、その『いつか』の為に
どうしたらお酒に強くなれるかウルに訊いて
美味しい料理と甘酒さんを持ってきた二人には
はい、これあげる!
るぅー特製の桃の果実水だよ✨

お祭りって楽しいね🌸
これがみのりのあき!
お土産はどのお店にしようかな~
今から楽しみ!


オズウェルド・ソルクラヴィス
【庭】○
片褄に小さな暴れ熨斗文模様がある藍の雨絣浴衣姿で
喧騒からふらりと戻り
手には、酒瓶と経木に包まれたほくほくの焼きヤマメ達
聞こえた単語に
妖精って柄か…?と無言で抗議の目を向けつつ

…出会ったおっさんがな、これが一番呑みやすいと云っていた

甘味と濃くのある『ぎんじょうしゅ』で
呑めねぇヤツには『あまざけ』だとよ…
世の中色んな酒があるのな

…ッ

ただ、梨と辛口の後の果実水で咽そうになり
(お前のは、甘すぎだ…

ふと切子硝子を見つめるアースを見つけ
同じく別柄の切子を出して見せる
此処ら酒も珍しいが
盃もまた凝ってるよな

帰りに他のも見てくか?

どうやら、食い物と酒の心配はいらねぇみたいだしな…
(ルゥーとウルスラを見て



●秋の庭の団欒
「うん、ここが丁度いいかな」
 座って飲食ができるようにと運営側が用意した敷地内で、浴衣姿のアース・ゼノビア(蒼翼の楯・f14634)は四人分の場所を確保しながら腰を下ろした。
 地面に茣蓙を敷いただけといった簡素なものではあったが、周囲との距離は程よく離れており、これなら料理や酒を並べても問題なく楽しめそうである。丁度よく見つかったものだと幸運に感謝しながら、持ってきた料理を並べていく。
 アースが選んできたものは郷土の風情たっぷりの煮込み料理に、塩とタレそれぞれの味付けがされた鳥肉の串焼き、そして自分用にと持ってきた果実水である。酒や甘味に関しては他の仲間に任せてきたので、自分は料理を多めに見繕ってきたつもりだ。
 そしてそろそろ、他の仲間達も合流してくる自分なのだが……。
「ああいたいた。いい場所を見つけたわね」
「わぁ〜、どれも美味しそうだね〜!」
 そんなアースの胸中を読み取ったかの如く赤い髪の女性と毛先に淡い桜を乗せた白髪の少女がやってくる。
 店から借りてきたのだろう、色とりどりの切子硝子のお猪口を盆に乗せ、これまた様々な酒を満たしてウルスラ・クライスト(バタフライエフェクト・f03499)。縁日でも見かけるようなたこ焼きや、干した果物を両手いっぱいに抱えて小走りにかけてきたのはルゥー・ブランシュ(白寵櫻・f26800)であった。
 二人の服装もアースと同じく、今日の為にと用意した浴衣姿である。ウルスラは大人びた雰囲気に合わせたかのような、紫紺に光蝶がまった艶やかな姿。緩やかに波打つ長い髪は、三つ編みにして肩に流し、簪を差して飾った姿。ルゥーは年頃の少女らしい白地に紅色の鉄線金魚柄で、はしゃいだ彼女がぴょんぴょんと跳ねるたびに色鮮やかな兵児帯がまるでヒレの如く揺らめいていた。
 ちなみに、アースの方はというと褄に芒の白絣と落ち着いていながらも秋の風情をあしらった意匠のものだ。
「揃ったか」
 喧騒からふらりと涼しい顔で戻ってきたのは、オズウェルド・ソルクラヴィス(明宵の槍・f26755)だ。片褄に小さな暴れ熨斗文模様が入った藍の雨絣の浴衣を颯爽と着こなしおり、その手には小さな酒瓶が二つと経木に包まれた焼いたばかりと思われるヤマメが乗っている。どうやら全員の分は他のものに任せて、自分が気になったものを持ってくることにしたらしい。
「うん、オズで最後だよ」
 なにはともあれ、これで祭りにきた全員が集まった形となる。
 誰かが音頭をとる訳でもなく、自分の用意を済ませ、お互いの様子を伺う。全員の準備ができたことを確認し、それぞれで両手を合わせて。
「それじゃ……」
 いただきます。
 四人の団欒の時は始まるのだった。



「お酒選びはお酒の妖精ウルスラさんにお任せあれ、よ〜」
 飲める物には程よいものを。飲めない者には優しい果実水を。テキパキとそれぞれに適したものを渡して言ったのはウルスラだった。
「わぁ、ウル、お酒の妖精さんにも果実水の妖精さんにもなれるよ!」
 彼女の手際の良さに感心したルゥーが両手を叩いて褒めるとウルスラは嬉しそうに微笑み返す。その横で、「妖精って柄か……?」というオズウェルドが送る無言の抗議の視線は綺麗に無視することも忘れない。
「はい、アースはあんまり呑めないけど、味は嫌いじゃないでしょう? 一口楽しんだら預かるわよ」
 コトリと小さめのお猪口を置いた先はアースへ。  
 あまり頻繁に嗜むことはしないが、彼もそれなりに酒の味を好んでいることをウルスラはきちんと把握している。折角たくさんの酒が集まる場所なのだから、酔う前にしっかり楽しんで、ついでに気に入ったものを見つけて欲しい、そんな配慮からの言葉だった。
「やれやれ……お気遣い痛み入る。お酒の妖精さんの100ぶんの1でも強ければと思うよ」
「無理して飲んでも良いことはないわよ。私はここにあるものは全部美味しいって思えるし、好きなの見つけたら瓶で買ってらっしゃいな」
 私はこの盆の上にあるもの、どれも好きだからと返せば、苦笑して言いたアースも漸く差し出したお猪口に口をつけ始める。
「確かにどれも美味しいような……?」
 ウルスラの提案通り、一口だけ飲んで味を確かめてはウルスラへと渡していく。ウルスラはそれを受け取り自分も呑みながら、アースやルゥー、オズウェルドが飲み食いするものを眺めていた。
 ウルスラ自身は先程の言葉通り、ここにある酒も食べ物も全部好きだ。けれど、その他の人にとって同じかどうかはまだわからない。皆が何を美味しいと思いうのかとても興味深かった。
「ん、この甘くて梨のようなお酒は飲みやすいし好きだな。これをお土産にしよう」
 やがて、自分好みの酒を見つけたのかアースが嬉しそうな声をあげる。確かあれは、店の人も果実のようなすっきりした風味が売りだと言っていたものだ。アースに合いそうだと思って持ってきたが、どうやら正解だったらしい。
 土産にするならと残った酒を貰い、今度は黙々と杯を傾けていたオズウェルドの方へと向く。
「オズはいける口よねぇ。辛いのが好きなのかしら?」
 確かめるように問い掛けてみると、返ってきたのは無言の首肯。それならばと切子硝子の内、辛口が注がれたものを渡してやれば、オズウェルドも返すように自身が持ってきた酒瓶をウルスラの杯へと注ぐ。
「持ってきたものも辛口?」
「いや。これは……出会ったおっさんがな、これが一番呑みやすいと云っていた」
 確か、そう。求めた際に、店の主はこんな言葉で説明していた。
「甘味と濃くのある『ぎんじょうしゅ』で、呑めねぇヤツには『あまざけ』だとよ……世の中色んな酒があるのな」
 今しがた口にした酒を感心したようにオズウェルドは見下ろす。
 ウルスラが注いでくれた酒は、同じ『にほんしゅ』と呼ばれる酒だとは思えぬほど、味も香りも異なっていた。試しにもう一つとアースが気に入ったという酒も分けてもらうが、これもまた風味が変わっている。
「お勧めの甘い日本酒、私は好きよ。秋の実りを感じる暖かい味ね」
 そう微笑む彼女が、何故あんなに沢山の種類のお猪口を持ってくるのも、アースに一口だけしか飲ませなかったのも頷ける気がした。これなら大人数で一つ一つ飲んで回っていたら時間などあっという間に過ぎてしまうし、酒の弱い者なら違いや好みを探しているうちに忽ち寄ってしまうだろう。
「るぅも! とっておきがあるよー!」
 大人組であれやこれやと酒を呑み合っているのを羨ましく思ったのか、両手をぶんぶんと振ってルゥーが会話へと混ざってくる。
「ルゥちゃんのお薦めは何だったかしら?」
「桃の果実水さん! るぅーね、この果実水さんほんとうに好き♪ これにはちみつレモンさんもいれるともっと美味しくなるんだって」
 ウルスラの問いかけに別口で用意してもらった蜂蜜檸檬の器を差し出し、満面の笑顔でルゥーは答える。
 三人とは違い、17歳である彼女はまだお酒を飲むことはできない。けれどいつか、もう少し大人になって、堂々と飲める歳になったら、その時は果実水ではない自分のお薦めを皆へ渡して、自分もまた彼らのお薦めを味わってみたかった。
「それで、るぅーも素敵なおちょこさんで一緒に乾杯するの! だから、その『いつか』の為にどうしたらお酒に強くなれるかウルに訊きたいなって」
「ふふ、一緒に呑める日が楽しみね」
 ぐっと意気込んだ様子のルゥーを微笑ましげに見ながら、ウルスラとは分けてもらった蜂蜜檸檬を一口舐めてみる。
 蜂蜜の優しい甘味によく合う、ほんのりとした酸味。どこか懐かしさすら感じるその味にウルスラは覚えを感じ、微かに首を傾げる。
「あら、この果実水……蜂蜜檸檬? 確かミードってこういう味よね」
 蜂蜜と水を原料とした古来から作られたという酒。確かに記憶の中にある味と、この蜂蜜檸檬はよく似ている。
「これが好きっていうなら、ルゥちゃんも意外と強かったりして」
「本当!? じゃあ、これ飲んでたらるぅーもお酒に強くなれるかな?」
「ええ、きっと大丈夫。日本酒っぽいのに挑戦してみたいなら、オズが持ってきてくれた甘酒も試してみたら?」
「そうする!」
 ウルスラのお墨付きを貰えたルゥーは満面の笑みでオズウェルドから甘酒を注いでもらう。そして自分からは、甘酒と、美味しい料理のお返しだと蜂蜜檸檬を加えた果実水をオズウェルドとアースの二人に作ってやった。
「はい、これあげる! るぅー特製の桃の果実水だよ!」
「……ああ」
「うん、ありがとう。蜂蜜か、懐かしいな……」
 ルゥーから貰った果実水で酒気を飛ばしながら、アースはその味の懐かしさに目を細める。
「俺の故郷は、果実や香草を入れた果実酒が人気だったんだけど、酒を使わないように子供用のもあってね。よく蜂蜜を入れて飲んでたんだ」
 果実と香草、それに砂糖をたっぷりと使ったシロップ漬けは大体にして水か炭酸で割って出されることが多い。そこに蜂蜜をひと滴らし加えれば、甘さの中に深みが増して、よく好んで飲んだものだ。
「子供用の果実酒さん? とっても美味しそう!」
「帰ったら試しに作ってみるよ。皆にも気に入ってもらえるといいな」
 好奇心いっぱいの様子を見せるルゥーにそう約束して、アースは残りの果実水を飲み干した。

 ちなみに一方その頃。分けてもらった果実水を一気に飲み干したオズウェルドはというと。
「……ッ」
 思わず咽せそうになっていた。 
 確かに果肉は瑞々しく、桃独特の甘さに蜂蜜を加えたこの風味は女子供には人気だろう。オズウェルドも別に決して嫌いではない。
 嫌いではないのだが、いかんせんこの世には食べ合わせというものが存在する。辛口や果実を思わせる爽やかな風味、ついでに甘口の酒。
(お前のは、甘すぎだ……)
 そこに、甘さマシマシの果実水は劇的に合わなかったのである。
 


 忘れない内に土産の酒を買ってこよう、と席を立ったアースは、ふとウルスラが持ってきた器に目を止めた。
「どうした?」
 そんな彼の様子に気付き、オズウェルドが声をかける。聞けば、切子硝子が綺麗で見ていたという。
 店から借りたというそれは、赤や青、緑など様々な色がありながら、どれも透明度が高く色合いも美しい。切子、と呼ばれる由縁の削ったような跡から作り出される紋様も独特で物珍しい。
「俺のはまた別柄になっているな……。此処らは酒も珍しいが、盃もまた凝っているな」
「柄にも色々な種類があるみたいだね。お酒と一緒に揃いで欲しいな……」
 切子硝子を灯に透かして見ながらアースが微笑む。きっと月光の下なら、これはもっと美しく雰囲気が出るだろう。
「帰りに他のも見てくか?」
 残していたヤマメをそんな彼へと渡しながらオズウェルドが提案すれば、是非そうしたいと頷きが返ってきた。
 それならば一緒に向かった方がいいだろうと自分も立ち上がる。
「いいのかい?」
「俺も見ておきたいし、次いでに――」
 言いながら、そっとルゥーとウルスラへの方を見やりオズウェルドは肩をすくめる。
「……どうやら、食い物と酒の心配はいらねぇみたいだしな」

 そこにはいつの間に持ってきたのか、山と積まれた酒と食べ物が二人の間に積まれていたのだった。

「お祭りって楽しいね! これがみのりのあき! お土産はどのお店にしようかな〜、今から楽しみ!」

 祭りはまだまだ終わる兆しを見せない。
 四人の酒も料理も話の種も、尽きる様子はまだまだなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライアン・キャンベル
◎丸越(f31127)と

何徹目でも祭りは大歓迎だ
一緒に任務へ来た彼が
厚意を無碍にしない様を見て
らしいな、なんて心で思う

オレも何か食べるかな
小皿に盛られた料理を肴に
酔う事もなく日本酒を煽っていく

お、これも美味
おっちゃんたち、料理上手っすね
いや、オレは全然っすよ
オレよりコイツの料理の方が
美味い、と褒めようとした矢先に
珍しく酔ってる丸越の色気ある姿見て
思わず息も、生唾も、飲み込んで

お前、その表情は危ないから
暴漢に襲われそうだなんて考え
更に酒を勧める店主達を拒んで
おっちゃんたち、悪いな、また後で!
爽やかに笑えば丸越の手を掴み
あとは二人でゆっくり、な
常より近い距離、見えた瞳に
──だから、それが反則だって


丸越・梓
ライアン(f30575)と
アドリブ、マスタリング歓迎

最後に仮眠を摂ったのはいつだったか
今日も別の仕事を終えてから猟兵として任務へ

この任務の後も仕事が残っている故に甘酒を選択
然し
親父さん達の厚意を無碍にするのも本意ではなく
酒を一杯いただくことに
それがとても美味しく
素直に感想を口にすれば次々注がれ
貰った厚意故全て飲み干す
隣に信頼できる彼がいたという事もあり
気でも緩んだのか
元来酒に強い体質ながら少しばかり酔って
酒に熟れた瞳を柔く蕩かせ
濡れた吐息漏らして
無防備の自覚なく微笑って

店主と間を阻む彼を不思議に思うも
繋ぐ手から伝わる体温に
頭はふわふわと酔いが回る様で
そうだな、と
常より近い距離で
慈愛浮かぶ瞳細め



●めぐる盃、翳す紅葉

 そういえば、最後に仮眠を摂ったのはいつだったそうか。

 見事な秋晴となった青空を眩しそうに見上げながら、丸越・梓(零の魔王・f31127)はぼんやりと考える。
 確か昨日の夜は刑事としての職務に追われ、明け方にかけてその分の書類仕事を片付けていた。今日任務として此処に来たのも残していた雑務と打ち合わせを終わらせてきた足で、だ。思い返せばその前のひも似たような事件が重なっていた筈で……それより以前については考えるのをやめることにした。
 これも全て、梓が自分で選んだことだ。自らに課された使命を遂行する為に、そして一人でも多くの命を救うために一時も立ち止まることは許されないと誓ったのだから。
 ただ……。
「いやー、何徹目でも祭りは大歓迎だ」
 ただ、もう少し肩の力なりを抜くことができれば、同僚である彼――ライアン・キャンベル(hell fire・f30575)のように快活に笑えるのだろうか、と少なからず思わないでもなかった。
 共に仕事をしていたのだから疲労の具合はそれほど変わらないはずなのだが、それでも彼の纏う雰囲気は常の如く明るく爽やかである。これなら、現地の者たちと交流し信頼を得ることも簡単だろう。それは純粋に彼の強みと言えるだろう。
「丸越もこういう活気、結構好きだったりするのか?」
「嫌いではないが……しかし、今回は遊びではなく、任務だ」
「相変わらずだなぁ」
 故にオブリビオンが来る前であっても気を抜くことは許されないと続ける梓に、ライアンは肩を竦めながらも反論することなくついて来てくれるのだった。



「おう兄ちゃん達、今来たところかい? 今日はとっておきを用意してあるぜ!」
 人通りで賑やかな通りに差し掛かってすぐに、二人は待っていたというようにいくつもの酒瓶を並べた出店に立っていた男に声をかけられる。屋号と思しき前掛けつけている様子からして、蔵元で働く者の一人だろう。
 しかし、梓はこの後猟兵としての仕事を控える身だ。並ぶ日本酒の多さに内心で驚きながらも、ここは甘酒を選択することにする。
 はいよと差し出されたのは、手のひらで包めるほどの素焼きの器に入れられた甘酒。
 ――と、添えられるように出された透明な液体で満たされた小さめのお猪口。
「……これは?」
「色々持ってきたからよ、折角だから次いでに味見してみねぇかい? うちの自信作なんだ」
 そう自信満々な笑顔で言われてしまえば、とても酒を控えているとは言えなくなってしまう。
 彼らを守ることこそが梓の使命ではあるが、その為に貰った厚意を無碍にすることは梓の本意ではない。そもそも、元来酒は強い性質なのだ。禁じようとしているのはあくまでケジメであって、この程度なら戦いには支障はないだろう。
 ならば、少しだけ。
「……では一杯だけ」
 少しの逡巡の後に受け取り、梓はそれにぐいと一息に飲み干した。
 途端口の中に広がるキレのある風味と、スッキリとした酒の旨味に僅かに目を見開く。
「旨いな。辛口……だろうか。口あたりが良いのに、後から追う様に酒の風味が香ってくるようだ」
 率直に感じたことを口にすれば、店の男はそうだろうと笑顔を見せる。
「いい飲みっぷりだし、結構イケるクチじゃねぇか! これはうちの看板商品でな。近いもんだと去年作ったもんで別の品があってよ……」
 同じ銘柄の季節の酒やにごり酒、古くからの製法を用いて造ったもの、梓の飲みっぷりが気に入ったのか、彼は用意していた様々な種類の酒を次々を薦めてくる。
 勢いのままにお猪口に注がれてしまえば、梓は貰った厚意故に断ることもせずこれまた次々と飲み干し感想を述べていった。
 チラリとライアンを見れば、彼は近くの料理の店を覗いているようだ。それなら待たせていることもないだろう。
 ――そうして気がつけば、梓は結構な量の酒を呑むことになってしまったのだった。


(全く、らしいねぇ……)
 一方、店の親父に勧められ次々と酒を飲み干していく様を後ろで見ながら、ライアンは苦笑を零していた。
 大方、折角貰った好意なのだから無碍にはできないとか、そう言うことを考えているのだろう。仕事前だから酒は控えると言ったり、それでいて厚意を断れないからと酒を飲み干したり、本当に律儀なやつだと思う。
 この分では彼が解放されるまで時間がかかるだろうと踏んで、その間にライアンは何か料理をつまむことにした。
 見回せば、あたりに見えるで店には旬の魚の刺身や茸の網焼き、野菜の揚げ浸しなんかも揃えられている。
 その中でも気になった茄子の揚げ浸しを一口食べ、ついでに先ほど分けて貰っていた酒を酔うこともなく煽っていく。揚げたての天ぷらによく染み込んだ出汁がまたよく酒の風味に合う。
「お、これ美味。おっちゃんたち、料理上手っすね。シンプルなのにこれとかめっちゃ手が込んでるし」
 持ち前の愛嬌と社交性を活かして店の人達へと話しかければ、返ってくるのは笑顔ばかり。
「よく見てるね。お前さんも料理をするのかい?」
「いや、オレは全然っすよ。オレよりコイツ……じゃなかった、あそこにいる相棒の料理の方がーー」
 ずっと美味い、と少し離れた出店の親父に捕まっている梓を指差しかけて、ライアンは思わず目を瞠る。

「ああ、これは確かに旨い。親父さんの自信作と言うのも頷ける」
 徹夜続きの弊害か、それとも信頼できる者が近くにいる為か、本来酒に強い体質の筈の梓は珍しく少し酔っていた。
 微かに赤く染まった顔で、常に身に纏う張り詰めたような緊張は解けていて。酒に熟れた瞳を柔らかく蕩かせ、ほうと吐く息は自然と色香を帯びる。
 その表情は無防備の自覚なく微笑みすら浮かべていて――。

 思わず息も、生唾も飲み込んで、ライアンは彼の元へと駆け寄った。


「ストーップ! ほら丸越、この後仕事があるんだろ!」
 大慌てで駆けつけてきたライアンは梓と店の親父との間に押し入る。
「おや、この後仕事だったのかい。結構呑ませちまったし、ちょっと悪いことしちまったかなねぇ」
「いや大丈夫っすよ。水でも飲ませて休ませればすぐ醒めるんで! おっちゃんたちも、悪いな、また後で!」
 心配そうにこちらをみる親父やら料理屋の店主やらを振り切って、ライアンは強引に梓の手を引き歩かせる。相手がよく知った者であるからか、少し不思議そうな顔はしているものの梓も大人しく着いてきてくれた。
「お前、その表情は危ないから……」
 歩きながら、ライアンは思わず自らの口を手で覆う。先程の、そしておそらく今も後ろを振り向けばすぐに見えるであろう彼の表情は、正直目に毒が過ぎる。
 これではオブリビオンより先に暴漢に襲われてしまいそうだ、なんて考えてしまったことはそっと胸の奥に秘め、ライアンは努めて冷静を保ちながら梓へ振り返る。
「あとは二人で、ゆっくり、な?」
 少しだけ高い位置にある彼の目を見上げれば、酒気に融けた黒曜は不思議そうな色を宿す。
「ん……?」
 ほろ酔いの中にある梓にとっては、先程までも、今の光景も、記憶ははっきりしているもののまるで夢の中の心地だった。
 突然手を引かれた時はよく分からなかったが、自分はそんな変な顔そしていたのだろうか。いつもと全く分からないつもりだったのに。
 それでも、繋ぐ手から伝わる体温が心地よくて、頭はふわふわと酔いが回るのが続いていくようで。細かいことは後で考えよう、と彼に顔を寄せて頷く。
「……そうだな」
 いつもより近い距離。緑の瞳が大きく開かれて、ああ、きれいな色だなど感じながら目を細めて。

「――だからそれが反則だって」

 ぼそりとそう呟かれた言葉の意味は、おぼつかない思考では推し量ることはできなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(口部装甲を展開し奥の穴…“後付け飲食機能”に酒杯傾け)

“酔う”機能が無いのは幸か不幸か…

(場末のバーカウンター。グラス見つめ過去を振り返り自責のスパイラル…良くない呑み方をしていたり、普段の鬱憤晴らしと大暴れする己をシュミレートし)

…止めましょう
酔えぬなりに祭りの盛り上がりに貢献せねば

放った機械妖精で会場を監視
落とし物や体調崩す参加者の介抱に運搬
トラブル解決引き受け

いえいえ、騎士として当然の事をしたまでです
旦那様

礼の代わりに一つご相談が
近々酒を呑める歳となる同性の知己がおりまして

記念の贈り物はどんな酒が良いか
いや、失敗せぬよう普段使いも出来る道具が良いかと悩んでおりまして…(相談が参加目的)



●ハレの記念の贈り物
 うららかな秋の日差しの下。杯の中で陽光を反射し揺らめく酒を見下ろす甲冑の騎士が一人。
「それでは一献……」
 呟きながら、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は持っていた杯の中身を一息に傾ける。
 一見兜に見える頭部の内の、口部装甲を展開。その奥に取り付けられた穴――後付けの『飲食機能』へと酒を流し込んだ。
 機械生命体である己が他種族と飲食を共にする必要から設けたこの機能は、摂取したもの成分や食感を正しく分析し、味として認識することができる。
 先程摂った酒は、確かに大変美味である。まさにこの地に住まう人々が丹精を込めて作った米と清らかに澄んだ水があって初めて成し得る一品だろう。
 しかし、これはあくまで“疑似”的なもの。愉しむことは出来れども、機械の身体は酔うことは決してないのである。
(“酔う”機能が無いのは幸か不幸か……)
 考えながら、ふと湧いた好奇心。自分が酔うとしたら、一体どのようになるのだろうか。
 試しに一つ、聞き知った“その手の物語”を参考にシュミレートしてみることにする。

 ――場末のバーカウンター。グラスを見つめ、騎士は己の過去を振り返る。
 一度後ろを振り向けば、待つのは止まることのない自責のスパイラル。追ってくる未練を振り払うようにさらに深酒を重ね、ついには普段の鬱憤晴らしと荒くれもの相手に大暴れをしてしまうことになり――。

 ……うん、止めよう。
 
「酔えぬなら酔えぬなりに、祭りの盛り上がりに貢献せねばなりませんね」
 潔く諦めて、トリテレイアは自分なりの方法で祭りを助けるべく行動を開始するのであった。



 肩のハードポイントに格納していた妖精騎士を起動。設定を監視モードへと切り替えて、トリテレイアはそれらをそっと会場内に放つ。
 酒に酔うことで祭りを活気づけることを断念した彼は、会場内の警備と補助へと回ることにしていた。
「おや、あれは……?」
 迷子の子供を親まで返した帰り道、トリテレイアは椅子の上に置かれたままの風呂敷包みを発見する。辺りを見回し確認してみるも、持ち主はいない様子。どうやら誰かがここに置き忘れたらしい。
 今頃きっと探しまわっていることだろう。トリテレイアは会場内の妖精達に呼びかけ、探し物をしている人物がいないかサーチをかける。
 程なく、該当すると思しき人物の報告を受け、慎重に包みを運んでいくのだった。
 
「旦那様、お探しのものはこちらの荷物でしょうか」
 あちこちの店に尋ね、しきりに周囲を見回していた老人を見つけると、トリテレイアはそっと声をかける。胡乱気な表情でこちらを向いた老人は、彼の手の中にある荷物を見つけると驚いたように目を見開いた。
「東の外れの休憩所に置き忘れていたのをたまたま見つけまして。旦那様のもので間違いありませんでしたでしょうか」
「あそこだったかい! 申し訳ねぇ、大切な商品でな、酔いが回ったのかうっかり置いてきちまったようだ。」
「いえいえ、騎士として当然の事をしたまでですよ」
 よほど重要なものだったのだろう。老人は荷物を受け取ると、すぐに中を検めほっと胸を撫でおろしたようだった。
「助かったよ。できりゃあ何かお礼がしたいんだが……」
「――では、礼の代わりに一つご相談が」
 繰り返し感謝の言葉を口にする老人に、それではとトリテレイアは一つ贈り物の見繕いを手伝って欲しいと依頼する。
「近々酒を呑める都市となる同性の知己がおりまして。記念の贈り物はどんな酒が良いか……いや、失敗せぬように普段使いも出来る道具や良いかと悩んでおりまして……」
 正直に白状してしまえば、酔えないなりにこの祭りに参加したのは詳しいものに贈り物の助言を貰う為でもあったのだ。
 この祭りに参加しているくらいだ、老人も酒にはある程度詳しいのだろう。きっと、自分よりも良い選択を示してくれる筈。
「そういうことなら、丁度いいもんがあるよ! この後もう一つ先の町に卸す予定のもんだったが……」
 そういって老人が荷物から取り出したのは、硝子の盃だった。

 丸みを帯びた形状は、一般的にはぐい吞みと呼ばれるもの。職人の技術により極限までガラスを薄くしたそれは軽く、しかし頑丈さも併せ持っている。日本酒だけに限らず、他の酒を呑むにも相性はいいから贈り物には最適だとは老人の言だった。
 添える物として選んだのは近くの店で求めた贈答用の小さな酒の瓶。初心者でも飲みやすい口当たりのさっぱりとした物を選んでもらう。
 
「ええ、きっと、良い記念になりましょう」
 老人と別れた後。桐の箱に納められた杯と酒瓶を見下ろし、トリテレイアは満足げに微笑むのだった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒瀬・ナナ
ノエルさん(f20094)と一緒に
折角のお祭りだもの
お気に入りの浴衣に、誕生日にノエルさんに貰った薔薇の香水を付けて、ちょっとだけおめかしを

きゃーっ!お酒におつまみも楽しめるだなんて最高!
もしやこれはわたしの為のお祭りなのでは?
活気と酒気と、慣れ親しんだサムライエンパイアの空気を楽しみながら練り歩き
ノエルさんは何か気になるものはあるかしら?
ふむふむ、果実酒だと秋の林檎や柿のお酒が美味しいと思うのよ

素敵なお酒とおつまみを見つけたら、
ちょっと遅くなっちゃったけれども、ノエルさんのお誕生日に、乾杯♪
ふふ、この一年もノエルさんに良いことがたくさん訪れますように
むぅ、酔い潰れる程は呑まないわよ……多分


ノエル・マレット
ナナさん(f02709)と一緒に。

ふうわり薔薇の香りに気がつく
口には出さないけど使ってくれてるのが内心ちょっと嬉しい

わ、すごい活気ですね
サムライエンパイアのお祭りは初めてでちょっぴりわくわく
気になるものですか……たくさん種類があって目移りしちゃいますけど
それじゃあ果実酒で飲みやすいものとかありますか?
あんまり酔わない体質みたいなんですけどお酒はまだまだ初心者なので

かんぱーい。お祝いありがとうございます
これからもよろしくお願いしますね
ふふ、おつまみも美味しいものばっかりですね
あっ、もし酔い潰れちゃっても大丈夫ですよ、ちゃんと送っていきますから
冗談めかしてくすくす笑う



●祝いを込めて
「きゃーっ! お酒におつまみも楽しめるなんて最高!」
 慣れ親しんだサムライエンパイアの土地から沸き起こる、活気と酒気。自身の燃料と言っても過言ではないような空気を存分に吸いこみ、黒瀬・ナナ(春陽鬼・f02709)ははしゃいだ声を上げた。
 大食いの大酒呑みを自称する彼女が、こんな楽しそうな催しで大人しくしていられる筈がない。服装も折角だからとお気に入りの赤い撫子が咲いた浴衣を着て、ちょっとした“おめかし”もばっちり仕込んである。
 お祭りを楽しむ意気込みはもうバッチリであった。
「わ、すごい活気ですね……」
 そんな彼女に連れられる形で来た同じく浴衣を着たノエル・マレット(誰かの騎士・f20094)はその雰囲気に思わず圧倒されてしまう。ノエルにとって今日はサムライエンパイアでの初めてのお祭りである。賑やかな祭囃子に、自分の居た世界とは全く異なる服装で行き交う人々、漂う料理と酒の匂い。五感が知らせてくる全てのものが真新しく、こうして歩いて居るだけでわくわくと胸が踊ってしまう。
「右を見ても左をみても酒とつまみが並ぶ絶景……もしやこれはわたしの為のお祭りなのでは?」
「ナナさんの為ではないと思いますが……そうですね、ナナさんのような人達の為、ではあるのかもしれません」
 うっとりとした声色で呟き、今にでも胸だけではなく全身で踊り出しそうになっているナナに微笑みながら返すと、彼女はそうよね、と力強くいってあちこちへと視線を廻らせる。
「ノエルさんは何か気になるものはあるかしら?」
「気になるものですか……たくさん種類があって目移りしちゃいますけど……」
 尋ねられて、ノエルはナナに倣うように周囲の出店を見回す。並ぶ酒の大半は日本酒と呼ばれる種類のものであるが、中にはアルコールの含まれていない甘酒や、果実酒と書かれたラベルもちらほら見かける。
「それじゃあ、果実酒で飲みやすいものとかありますか?」
「果実酒でいいの?」
「はい、あんまり酔わない体質みたいなんですけど、お酒はまだまだ初心者なので」
 意外そうに首を傾げるナナに、ノエルは小さく頷いて答える。
 どうしても日本酒と聞くと酒の風味が強かったり、酔いやすいという印象がある。
 ナナがいつも美味しそうに飲んでいるの見ると、気にならないと謂えば嘘にはなるが、この場は彼女と楽しむ大切な場だ。不慣れなもので迷惑をかけてしまうよりは、慣れたものの方が良いと思ったのだ。
 そんな彼女の選択を特に気にした風もなく、ナナは顎に手をあて、ついでにもう一度周囲の酒の種類も確認して、自身の経験からここにありそうな果実酒を思い浮かべる。
「ふむふむ、じゃあ……果実酒だと秋の林檎や柿のお酒が美味しいと思うのよ」
「わぁ、それは秋らしくて美味しそうですね」
「多分……あっちにある気がするわ!」
 長年培った経験なのだろうか。びし、と少し先の出店の並びを指差したナナは、それじゃあ探しに行きましょうか、とノエルへと手を差し出す。
 その手をとって、ノエルもいざ祭りの散策へ向かおうとした、その時。
 
 ナナの首元からふうわりと馨る、覚えのある優しい薔薇の香に、思わずノエルは目を瞠った。
(あ……)
 それが自身がナナへと贈った香水であると直ぐに思い当たり、思わず頬を緩ませる。
 恥ずかしいので口には出さないけれど、こうして特別な日に使ってくれていると思うと、ちょっと嬉しい。
「どうしたの?」
「いえ。案内、宜しくお願いしますね」
 ふわり、ふわり。
 薔薇の香に包まれながら、二人は祭りの中を練り歩いていく。
 この時ばかりは立ち止まることはさせないままに、二人は心安らぐ楽し気な時を過ごすのだった。



 目の前には二人で探したノエルの為の果実酒と、ナナが店主と意気投合して貰った取って置きの日本酒の数々。おつまみには新鮮な魚を使った寿司に、カリっと焼いたぶ厚い油揚げ。秋の旬の果物をカットしたデザートまで用意は万全。
 一通り店を廻って選んだ品々を敷物の上に並べ座った二人は、それではと互いの盃をこつんを合わせた。
「ちょっと遅くなちゃったけども、ノエルさんのお誕生日に、乾杯♪」
「かんぱーい。お祝いありがとうございます」
 秋の生まれの彼女の為に、折角設けた宴の場だ。ステキな彼女には是非、素敵な食事とお酒と、思い出を残して貰いたい。そう思って誘ったナナは、嬉しそうな彼女の顔を見て満面の笑顔を浮かべる。
「これからもよろしくお願いしますね」
「ふふ、この一年もノエルさんに良い事がたくさん訪れますように」
 祝福の言葉を贈り、景気づけるように持っていたお猪口の中身を一気に煽る。
 キレの良い辛口の酒の美味さが一気に広がり、はぁ、と気の抜けた溜息が零れた。
「美味しいですか?」
「そりゃあ勿論! 五臓六腑に染み渡るわ~……」
 我ながら少しばかりおっさんくさいかな、と思うが、この表現ばかりは真実である。
 そんなナナの様子にノエルはくすくすと笑いながら林檎の果実酒を一口呑み、ナナを真似るようにほうと息をつく。
 くどくない甘さに、程よいリンゴの酸味がすっきりと爽やかさを演出している。口の中に残るシャクシャクとした食感は、すり潰した果肉だろうか。
「これならいくらでも飲めてしまいそうですね」
「お酒ばっかりじゃ悪酔いしちゃうわよ、おつまみも食べましょ!」
 ナナに誘われるままに、今度はこんがりときつね色に焼けた油揚げに葱を乗せ、醤油で味付けしたものを口に運んでみる。そしてその味と食感に思わず口元を抑えた。
「わぁ、これ、表面はよく焼けてるのに中はふわふわ……!」
「あ、それ、わたしも一口っ」
「はい、多めに持ってきてますのでどうぞ」
「ノエルさんはこのお魚って食べたことある? この時期だと脂が乗っていてとっても美味しいわよ!」
「これはまだありませんね……イワシ、でしたっけ。折角なので挑戦してみようと思います」
「あ、慣れるまではワサビに気を付けてね?」
 その後もあれやこれやと持ってきたつまみを二人で食べて舌鼓を打ち、酒の味を愉しみながら会話に花を咲かせていく。
「ふふ、おつまみも美味しいものばっかりですね」
「お酒も雰囲気も、とっても素敵だしね」
 美味しいお酒におつまみ、そして一緒に楽しく呑める友人。これらが揃って過ごす時が楽しくない訳がない。
 ナナとノエルは時間が経つのも忘れ、暫し酒と食事に夢中になるのだった。
 
 
 持ってきたつまみの全てが二人の胃袋の中に納まり、果実も残すところ数切と成った頃。
 のんびりと残りの果実酒を呑んでいたノエルは、新たな酒を持って戻ってきたナナに苦笑を浮かべる。
「まだ呑めるんですか?」
「まだまだー。気になるお酒もまだ沢山あるしね!」
 笑顔で言う彼女であるが、そのテンションはいつもより高いように感じる。どうやらほろ酔いではあるらしい。そんな彼女の様子を微笑ましく見ながら、ノエルはふと思いついた考えを口にした。
「……あっ、もし酔いつぶれちゃっても大丈夫ですよ。ちゃんと送っていきますから」
 早速酒を煽るナナに冗談めかして笑えば、彼女は少しだけばつが悪そうに酒気で桜色染まった頬をますます赤くしてそっぽを向く。
「むぅ、酔い潰れる程は呑まないわよ……多分」
 そこで絶対、とは言わない辺りがなんとも彼女らしいなぁ、なんて笑いながら。ノエルは徳利を手に取ると空いたナナの徳利へと新たな酒を注いでやるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百海・胡麦
ヴァシリッサ殿(f09894)と
神饌のお下がりと美酒を

旬の魚に
清めた米でついたモチまであるってね
利き酒でもして食べ歩こうじゃないか
先に人気の銘を聞いて呑んだ後、道で愉しむよ

己も心待ちに
違いない、楽しもう

これは…すっと優しい口当たり
北国の酒だね
何というたか…『雪雫』?
ふふ、当たり
あー…濁り酒は難しい、強い香りと痺れるこの
似たのがあった、どれか…

ん、芸人さん? 其方もお強いね
炎も扱うのかい、アタシもだよ
掌の小さな炎を手品の如く芸人の行灯に点し
ひと勝負どうだね、肴をかけて

下町の祭のよう米俵を担ぐ力自慢か
飲み比べを
己だって鉄塊剣を片手で振るう
簡単にゃ負けないよ
嗚呼さすが麗しくお強い…惚れ直してしまうね


ヴァシリッサ・フロレスク

ムギ姐(f31137)と

美味い酒と肴と
オマケに隣にゃ別嬪サンと来た

こりゃ役得だねェ

にしても流石神無月
元い醸成月ッてか

そりゃこンだけ選り取り見取りじゃ
ヤオヨロズの神サマも呑ンでばッかで仕事ンなん無いだろうサ

ま、こちとらオシゴト、戦の前だ
御相伴に与りついでに
天恵に肖ろうじゃないか

Hm?
利き酒か
面白そうじゃない?

あァ、このキレと香り
コレを外しちゃモグリだろ?

フフッ
姐サンも大分イケる口だね?

興が乗ってきた頃に目に留まるのは
炎と力自慢な大道芸人

お、姐サン
ヤル気だね?
イイじゃない
丁度アテも切れたトコだ

怪力なら
アタシも負けてらンないねェ


――よしとくれよ?
姐サンにそンな言われちゃ
酔いが回って敵わないよ
フフッ



●酒と肴と祭りの余興
「嗚呼、こりゃあ良い祭りだね」
 目が、耳が、肌が。見ているだけで心が揺さぶられてきそうな活気のある祭りの様子に百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)はゆるりと笑みを浮かべた。
 土地全体も、祭られている神も心地の良い“気”に満ちている。神饌のお下がりと美酒を求めてやってきた胡麦であったが、存外、それ以外のものでも楽しめそうだと期待する。
「ムギ姐の言う通りだ、楽しそうな祭りじゃないかイ」
 その隣で、ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)も目を細め、祭りの雰囲気に浸っていた。
 ちらりと見ただけでもわかる良質な酒と上等な料理の数々。そして何より、今回は一人では無く見目麗しい胡麦も一緒なのだ。猟兵冥利に尽きる、というものである。
「美味い酒と肴と、オマケに隣にゃ別嬪サンと来た。こりゃ役得だねェ」
「そりゃこっちの台詞だね」
 相手の誉め言葉に微笑んで返してみせながら、胡麦はほうらと優雅に片手を上げ、出店のいくつかを指し示して見せる。
「旬の魚に山菜……清めた米でついたモチまであるってね。早速、利き酒でもして食べ歩こうじゃないか」
 遠目から迷いなく料理の品々を評じてみせた彼女の言葉に、ヴァシリッサは感心したように目を見開く。さすが、様々なモノを長きに渡り“視てきた”存在といった所だろうか。
 腹が減ってはなんとやらではあるし、神様のおこぼれとやらにありつくのも悪くない。そこに彼女の見立てであれば、味はもうお墨付きのようなものだ。
「ま、こちとらオシゴト、戦の前だ。ご相伴に与りついでに、天恵に肖ろうじゃないかい」
「違いない、楽しもうか」
 先ずはと胡麦が指差した餅を二つ買い求め、二人は祭りを練り歩き始めるのだった。



「――にしても流石神無月、元い醸成月ッってか。そりゃこンだけ選り取り見取りじゃヤオヨロズの神サマも呑んでばッかで仕事ンなん無いだろうサ」
 先程注いで貰ったばかりの酒をぐいと一息に飲み干しながら、ヴァシリッサは機嫌よくそんなことを言う。
 胡麦が気に入った料理を揃えて、さぁ次は酒だと探してみると、その数は驚く程に膨大だった。人気の銘のものを幾つか聞き、其れを中心に回ってみはみたものの、酒米の種類やら醸成の方法やら磨きの度合いやら、同じ銘柄でもその種類は驚く程に枝分かれし、味も千差万別だった。これではいくら呑んでも足りなくなってしまうだろう。

「神様もそれだけ酒好きってことだろうさ。おや、あれは……?」

 そんな彼女の言葉に同意しながら自身も杯を傾け歩いていると、ふと胡麦はとある人だかりに目を留める。
 そこではどうやら、余興として簡単な謎掛けを行っているようだった。
 謎掛け、といっても勿論酒に因んだものだ。祭りの中でも代表する銘酒をいくつか集め、どれがどの酒だから分からない状態のまま全く同じ見た目の酒器に入れて並べ、味わってもらう。その香りと味だけで銘柄を当ててみるという催しだった。
「Hm? 利き酒か。面白そうじゃない?
「そうだね。ちょいと試してみようか」
 見れば、並べられた銘の中には先程まで二人が呑んでいたものも多く混ざっている様子。
 ここらで少し、『おさらい』をするとしようではないか。
 
「これは……すっと優しい口当たり。北国の酒だね」
 目を閉じ、渡された口に含んだ酒をゆっくりと味わってみながら胡麦は記憶を反芻する。まるで春の雪解けを思わせる様な淡麗な甘口。その味わいと名前が確か印象深かった筈だ。
「何というたか……『雪雫』?」
 思い当たる銘柄を口にして裏側にされていた名前の札をひっくり返せば、そこには彼女が示した通りの名前。
「あァ、このキレと香り。これを外しちゃモグリだろ?」
 対するヴァシリッサとて負けてはいない。濃醇な辛口で美味いと評判酒の銘柄を見事当てて見せる。
「あー……濁り酒は難しい。強い香りと痺れるこの味……似たのがあったが、どちらだったか……」
 見た目と、香りと、味と。お猪口一杯の酒から伝わってくる様々な情報をもとに、暫し二人は店側が出す謎解きに没頭するのだった。
 
 
 
「さぁ、当代きっての妖術遣い。そのカミ降ろしにて授かる剛力と炎の舞をご覧あれ!」
 ああでもない、いやこうだったと、結局出題全ての酒を吟味し当てきった頃を見計らったように、妙齢の女性の呼びかけの声がヴァシリッサの耳に入る。
 視線を向ければ銘酒当ての場所から少し離れた位置。狩衣を着たの妖狐の女が掌に赤い炎を灯し、行き交う人々を集めていた。どうやら、祭りに呼ばれた大道芸人が催しを始めるようだ。
「ん、芸人さん? ……炎も扱うのかい」
 自分と同じく彼女の声に興味を持ったのだろう。盃を開けた胡麦も其方を見遣り、ふらりと芸人の元へと向かう。
 妖狐が灯す炎が生み出す幻想的な光の渦に暫し目を細め、そしてついと片手を掲げ、生み出すは自らの魔力を込めたもう一つの灯。火の玉は瞬き一つで火の粉へと変じ、女が持つ行灯に一際強い輝きを見せて宿った。
「其方もお強いね。だが……アタシも少しばかり腕に自信があるんだ」
 予想外に湧いた新たな炎と言葉にに、観客と女が驚きの視線を向ける。それらを飄々と受け流し、胡麦は片目を瞑って小首を傾げてみせた。

「ひと勝負どうだい、アタシらと。そこの店の肴をかけて」

 言いながら誘うようにヴァシリッサへと視線が向けられれば、ヴァシリッサも口の端を吊り上げ胡麦の元へと向かう。
「お、姐さんヤル気だね? イイじゃない、丁度アテも切れたトコだ」
 丁度興も乗ってきたところだ、一つ、飛び入りで芸の披露をするとしよう。

 芸の前半は意気揚々と受けて立った妖狐と胡麦との炎で生み出された夢幻の如き光の舞。
 後半は二人と女とで剛力の術を使った彼女との力比べと相成った。
 
「そうですね……そこの俵を持てるだけ担ぐというのはどうでしょう」
「下町の祭でそンなのがあった気もするねェ。面白い、ソレでいいサ」
 こちらとて負けるつもりはないという顔で挑んでくる芸人に頷き、ヴァシリッサは傍らに積んである俵へと手を伸ばす。
 怪力でなら負けてはいられない。先ずは小手調べというように三つ、四つと持って見せれば、隣の胡麦もひょいと同量の俵を持って見せた。
「己だって、鉄塊剣を片手で振るうんだ。簡単にゃ負けないよ」
 不敵な笑みを浮かべる彼女に喉の奥を震わせて笑い、さらに追加で手を伸ばす。
「嗚呼さすが麗しくお強い……惚れ直してしまうね」
「――よしとくれよ? 姐サンにそンな言われちゃ酔いが回って敵わないよ」
 フフッと笑い、ヴァシリッサは勢いよく俵を担ぎ上げてみせた。

 正直に言えば、別に誰が勝ちとかどちらが強いとか、そういうものはこの場では関係ない。
 余興とはただ、自分達が愉しめて、周りの人々も楽しめれば充分なのだ。
 
 張り合う様にさらに俵を積んでいく胡麦。負けじと張り合い、目を回し降参だと両手を上げる妖狐の芸人。
 胡麦に並んだヴァシリッサはあと一つだと欲張って掴んだ俵を勢いよく放り投げ、担いだそれの頂上へと積み上げて。
 
 湧き上がる観客達の声。

 結果、余興は大成功に終わり、喝采を浴びた芸人から二人は礼として、存分につまみを馳走して貰ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロム・エルフェルト
ん、鏡さんへのお土産は任せて(下手人はきちんと斬ってくる、ね)
……こほん
酒精に惹かれる気持ちは分かるけど
祝事を壊す下手人であれば言語道断
お祭りもちゃんと参加してくる、よ
これはお仕事、お仕事だから。(真面目な顔)(でも尻尾はブンブン)

びぃる、も最近は時折口をつけるようになったけど
矢張りお酒と言えば日本酒
おじさん、華やぐような香りの清酒は無い?
白身のお刺身に合うようなの。
度数は高めでも構わない。よ。

……お薦めが、こんなに沢山
選りすぐりの3種を少しずつ頂こうかな
甜瓜や林檎、白桃
口に広がる果物の薫に、思わず微笑んでしまう
さて、お土産はどうしよう
……?
一斗樽?
流石に多すぎ……否、そうでもないのかな……



●適量はそれぞれに
「ん、鏡さんへのお土産は任せて(下手人はきちんと斬ってくる、ね)」

 おっとうっかり本音と建前が。

 どっかの誰かさんと同じ様な現象を起こしてしまったクロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は、こほんと咳ばらいを一つして仕切り直す。
「……酒精に惹かれる気持ちは分かるけど、祝事を壊す下手人であれば言語道断」
 祭りとは神に捧げる為のものであると同時に、人々の為に在るもの。
 日常の穢れを払い、疲れを癒し、明日への活力と繋げるために、そして人々の繋がりをより強くするためにヒトは祭りを行うのだ。
 それをつつがなく終わらせる為に、何よりそれらを楽しむ人々を守り切る為にも、必ずやオブリビオンを討ち取らなくてはならないと、クロムは改めて気を引き締める。 
 ――故に、被害を最小限に留めるためには先の先を付くことが最善。敵が必ず祭りに乱入してくるのであれば、その中に紛れ込み、迎え撃つのが常套というものだろう。
 だから、そう、だからこれは……彼女が祭りに参加することは歴としたお勤めである。
「これはお仕事、お仕事だから」
 至極真面目な顔で意気込むクロムであったが、その後ろで、豊かな毛並みの狐の尾はブンブンとはち切れんばかりに振られていた。

 まぁつまるところ、所謂バレバレというやつであった。 
 
 
 慣れ親しんだ土地の空気と、歩いて居るだけでもわかる酒の気配にクロムは無表情ながらも狐の尾を揺らし、ほっこりとした気持ちで祭りを見て回っていた。
 既にその手には甘鯛の刺身が盛られた小皿が乗っている。祭りに入るや早々発見し、気が付いたら買い求めていた一品であったのだが、肝心の酒をどうするかを決めあぐねていたのだ。
「びぃる、も最近は時折口をつけるようになったけど……」
 矢張り、彼女にとって酒と言えば日本酒である。ましてや肴が旬の刺身であるのなら猶更。こればかりはどうしても譲れないな、などと思いながら、クロムは己の直感のままに目に留まった出店へと足を向ける。
 こういう時は、酒呑みの五臓六腑……否、勘に頼る方が良いものが当たるものなのだ。
「おじさん、華やぐような香りの清酒はない? 白身のお刺身に合うようなの」
 手が空いた隙を狙って店の親父に声を掛ければ、少し驚いた様な顔をしたあと、彼はにやりとした笑みを浮かべた。
「通な聞き方をするね、嬢ちゃん。可愛い顔して実は結構イけるクチかい?」
「嗜む程度には、かな。度数は高めでも構わない、よ」
 自身の経験ではそう言って弱かった人はいなかったけれど、なんて内心で思いながら返せば、親父も同様のことを思ったのだろう。それならと並ぶ酒瓶の内、銘柄が違うものを次から次へと見せてくれた。
「……お薦めが、こんなに沢山」
 味見をして良いか尋ねると、勿論だと親父は笑って答えてくれた。全ては申し訳ないから断わり、説明から三種類まで絞って、クロムはお猪口に酒を注いで貰った。
 一つずつ、両手でしっかりと受け止め、そっと口に含み吟味する。
 甜瓜や林檎……それに、これは白桃。
 順番に口の中に広がる果物の薫に、思わず微笑みが零れてしまう。
「どうだい、旨いかい?」
「……ん。どれも本当に、素晴らしいお酒」
 とりあえず祭りの間に飲む分を改めて注文した後、クロムはふむと唸る。
 さて、この内のどれを土産として買い求めようか。それともいっそのこと三種類全部買い求めて、改めて利き酒を楽しむのも良いかもしれない。
 これに合う肴も探して一緒に包んで貰えば、酒の美味さも倍増するに違いないだろう。
「……あ、そういえば」
 そこでクロムは、もっと根本的な問題を失念していたことに気付いた。
 そもそもの話、どのくらいの量にすればいいのだろう。
 一般的なら小瓶や四合程が良いのかもしれない。しかし、相手が酒呑みであるのならその程度の量、それこそ瞬き一つで終わってしまうだろう。
 考えられるのは最適な答えは一升。いや若しくは――。
「……一斗樽?」
 流石に多すぎか――否、考えれば考える程に案外そうでもない気がして。
 店の親父に礼を言いながら、クロムは暫し悩み続けることになったのだった。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『鴉天狗』

POW   :    錫杖術
単純で重い【錫杖】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    大風起こし
【団扇から大風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    天狗火
レベル×1個の【天狗火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は式神・白雪童子です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●足元はよろよろと
 陽が高くに昇り、そしてゆっくりと西へと傾いていっても、祭りの気配は冷めることがない。
 いやむしろ、人が集まり杯が進んでいくにつれて、祭りの熱気はさらに上がっていく様である。

 しかし、その時。

『カッカッカ、馨しい香かな』

 突如として巻き起こる突風に悲鳴があがる。
 
 黄昏の光が落とす人影の背には一対の漆黒の翼。
 小柄な体躯に、山伏の如き風体。鴉の相貌の額には二本の角。
 
 それは予知にかかった件のオブリビオン――鴉天狗だった。
 
 妖は逃げ惑う人々や並んだ出店を蹴散らしながらは町の真ん中へと舞い降りると、手近にあった酒瓶をぐいと掴み、一息に中身を飲み干していく。
 
『……人間風情が小癪にもなかなかのものを造りよる。なればこの場の酒、儂が全て呑んでやろうぞ』

 酒気を帯びた呼気を吐き出しながら機嫌良く鴉天狗は笑う。そして空の酒瓶を投げ捨てると、直ぐに新たな酒を求めて屋台を荒らし始めた。

 しかし、よくよく見れば其れの足元はふらふらと覚束なく、その動きも単調でただ勢いに任せて騒ぎたてる様なものばかり。
 そう、まるで酒に酔っているかのようであった。
 敵は仮にもオブリビオンが。過去の骸から訪れた鬼が何の変哲もない酒だけで、さらにこんな少量で酩酊するとは考えにくい。これこそが、人々の祭の賑わいが産んで見せたハレの霊力の作用だろう。
 
 ――今ならば、鴉天狗を討つ事も容易なはずだ。

 祭りを台無しにした不届き者を退治する為、猟兵達は戦闘の準備を始めるのだった。
クロム・エルフェルト
自制をしているつもりでも、口に広がる香気に知らず杯が進む
……甘鯛のお刺身、無くなっちゃった
据わった目で見回せば、黒い翼が羽搏くのを見かける
――ん、あれに見えるは、烏骨鶏。鳥刺しは狐に善し。

鶏じゃない。なんだ、お尋ね者か。
尻尾だらりと下げ、残念そうに烏天狗を見やり、大袈裟にため息一つ
酔っ払いの因縁に見せかけ、挑発して隙を誘いたい

錫杖術を紙一重にすり抜……あ。
壊された一斗樽、地に広がる銘酒
……友。私は今、『大事な物を奪われた』。
怒りが肉体を凌駕、回った酔いも▲焼却
戦場に残留してる酒精(エフェクト)を利用して
刀の焔の勢いを増し、▲早業の抜刀術で一閃する

此れは私と、お土産を台無しにされた友の怒り――!



●それは血よりも重い罪
 全く、酒というものは兎にも角にもおそろしい。
 日が傾く頃になっても、クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は、上機嫌に狐の尾を揺らしながら酒と肴を楽しんでいた。
 この後に戦いが待っていることは充分に承知している。故に自制をかけているつもりではあるが、口に広がる香気に知らず杯が進んでしまうのだ。
 ふうわりと馨る酒の香と味。その中に脂の乗った甘鯛を運び入れれば、濃厚な旨味が合わさりうっとりと目を細める。好い頃合いに残った旨味を流すようにさらに酒を招き入れて、しかし一度味わった悦楽に曳かれる様に箸は再び刺身へと伸びてしまう――。
 そこで、クロムは小皿の中が空になっていることに漸く気付いた。
「……甘鯛のお刺身、無くなっちゃった」
 さて、如何するか。もう一度同じ肴を取りに行くのも良し、別の肴に舌鼓を打つのも良し――。
 
 そこまで考えた時、クロムの狐の片耳がピクリと立った。
 
 同時に起こる轟音。

 素早く視線を走らせれば、視界の端に映る羽搏く黒い翼。音と風の具合からして、場所は少し西側の大通り、といったところか。
 スッ、と彼女の藍の目が先程とは別の意味で細められ、クロムは傍に置いていた樽を担ぎすぐさま音のあった方向へと駆け出していく。 
 
「――ん、あれに見えるは、烏骨鶏。鳥刺しは狐に善し」 

 ……一説によると、駆けていく彼女の瞳は完全に据わっていたという。



「鶏じゃない。なんだ、お尋ね者か」
 敵のもとへと辿り着きその姿を認めて、クロムは盛大に溜息を吐いた。
 折角新たな肴が向こうから来てくれたと思ったのに、と半ば本気で肩を落とす。先程まで上機嫌に振っていた尻尾も今やだらりと地面へと下がってしまった。
 そんな、何処までが戯れか分からぬ彼女の言葉に鴉天狗の片眉が跳ね上がる。
『……言うてくれるな、小娘。我をくたかけ呼ばわりとは』
「鶏の方がまだマシだったかな。キミと違ってあれは酒の味を悪くしない」
 今度は先程よりも分かりやすく鴉の面が顰められた。
 天狗は時に山を統べる妖とされるほどに気位が高い。どうやら上手く彼の気分を害することは出来たらしい。
『……痴れ者が。その言葉、酔うたからと飲み込むことは出来ぬぞ』
「如何せん酒の席だからね。酒精に誘われ、ついつい本音も零れ落ちるもの」
 たっぷりと皮肉を込めた、しかしながら全て本音でもあるクロムの言葉が言い終わるや否や――。
 
 一陣の、風が吹いた。

「おっと」
 瞬時に眼前へと迫った鴉天狗の動きに合わせて、クロムは一歩その場を退く。
 酔っ払いの因縁と見せかけての挑発はどうやら功を成した様である。
 ただでさえハレの霊気により、鴉天狗は酩酊した状態だ。逆上したその動きはただ速いだけの単調極まるもの、避けることは難しいことではない。
 上段から力任せに振り下ろされた錫杖の軌道を見切り、紙一重ですり抜けてそのまま抜刀――しかけたその時。
 
 ぐしゃ。
 ……ぐしゃ?

 クロムの後ろ。本来であれば錫杖が空を切った筈の場所から木がひしゃげる様な異音がした。

「…………あ」

 そしてクロムは思い出した。
 常ならば身軽である身体。しかし今日に限って、彼女は大きな樽を背に負っていたことを。
 そう、それは友の土産にと買い求めた銘酒。普段と同じ感覚で回避を試みたが故に、それに鴉天狗の攻撃が触れてしまったのだ。
 震えそうになる身体を制して恐る恐る己の背へと視線を走らせる。
 そこには無惨にも大きく砕かれた樽の残骸。そしてその背後には、残りの木片と……地に広がる銘酒――!
 
 暫し無音が世界を支配した。気がした。
 
「……友、私は今、『大切な物を奪われた』」

 転瞬、クロムの身体から闘気と狐火が立ち昇る。
 
 今、己の身体を支配しているのは紛れもない怒り。
 不甲斐ない己への、そして酒を失う原因を作った鴉天狗へと怒気が肉体を凌駕し、感情を呼応するように上がる熱が回っていた酔いをも燃やしていく。
 
 突如として豹変した彼女の様子に鴉天狗は呆気に取られてた様子。
 それをわざわざ説明してやる慈悲など、今の彼女には微塵もない。
 鯉口を切る。炎は地に残留した酒精に煽られ、さらに逆巻く。
 
 ――抜刀。
 
 熱風が、吹き出す焔の勢いが剣閃の疾さを高め、達するは神速の域。

「此れは私と、お土産を台無しにされた友の怒り――!」

 クロムの悲痛な覚悟と共に放たれた剣戟は確かに、鴉天狗の身体に刻まれたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
ハレの霊力で弱まってるというより酒にも人にも酔ってるみたいですね。
ですができるだけ被害が出ないようにしなくては。

鳴神を投擲し……念動力で操作する必要はあるかしら?すでに千鳥足のようだし……。
とにかく。命中させて竜王を召喚、雷撃で攻撃します。酔ってるうちにこんがりと参りましょうか。
相手の攻撃はなるべく出店や家屋の被害が出ない、開けた場所まで誘導しましょう。
所謂酔っ払い相手ですから注意して観察し、足運び声がけである程度誘導できるかと。
……ええ酔っ払いの方々ってそういうものですし。地雷さえ踏まなければ素直な方々です。
オブリビオンもまた似た様なものでしょう、天狗の姿をしてるならなおさら。


丑三・勘太郎
千鳥足のへべれけ天狗が、せっかくの祭りを荒らしやがって。
祭りをめちゃくちゃにする奴には容赦しねぇ、酔い醒ましのキツイ一発、ぶちかましてやるぜ!

鴉天狗を見つけたら、まずは『C.C.proto』を起動し、自身の血液を代償に自分の魔力を《限界突破》。
さらに【器物纏】を使用し、寿命を代償に『踏鞴鎚』を『雷獣』の能力を宿した『憑依形態』に変化させる。

自分と武器の強化が出来たら、鴉天狗を殴れる位置まで一気に近づく。
錫杖で殴られようが関係ねぇ、《捨て身の一撃》を敵に向かって振り下ろす!

「ぶっ潰れな! 丑三流奥義!! 『鳴神振るい』!!!」



●神鳴る力
「ハレの霊力で弱まってるというより、酒にも人にも酔ってるみたいですね」
 周囲に羽根を撒き散らし暴れる鴉天狗の姿を見ながら、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)はやや呆れを滲ませながら息を吐いた。
 祭りの活気がオブリビオンを弱体化する鍵で有るとは聞いていたが、まさかこのような形で発現するとは。
 酒と共に生きる人々が集まり、酒を主役と据えていた祭りから生み出されたものだ。人外魔性ですら狂わす酒精の気として昇華したのだろうか。そういう意味では、この土地らしい効力と言えるだろう。
 ――しかし。
「……できるだけ被害が出ないようにしなくては」
 酔っぱらいとは得てして気が大きくなりやすいもの。
 手傷を負わされた怒りと勢いに任せて振るわれる鴉天狗の力は、設置された屋台やら地形やらを容赦なく壊して回っていた。このままでは敵を倒す事は出来ても、その被害は甚大となり祭りの継続は困難となってしまうだろう。
 そこで藍は、一つ手立てを講じることにした。
「こちらですよ」
 黒い三鈷剣【鳴神】を構え、鴉天狗へ向けて投擲。動きを牽制すると共にこちらの注意を惹く。
 相手の動きは既に千鳥足だ、念動力で軌道を修正するまでもなく、刃は敵の頬を掠めていく。
『貴様も儂を愚弄するか!』
 怒号共に鴉天狗の殺意の籠った視線が突き刺さる。身がすくみそうになるのを堪え、藍はくるりと背を向けて走り出した。
 念動力で鳴神を手元に戻しながら、敵がこちらを追うのを誘うように、絶妙な距離をとりつつ逃げていく。
 目指す先は少しでも出店や家屋が少ない場所である、町の中央に据えられた広間。今日の芸人が集まって披露していたあそこなら、暴れても破損の被害は少ないだろう。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」
 藍の後を追う鴉天狗に聞こえるように声を掛けてみせれば、分かりやすく高まる怒気。もう、彼の視界には藍以外のものなど見えてはいないだろう。こうしてあと少しという距離を保っていれば、他のものを壊し始めたり、又は空を飛んで一気に距離を詰めるなどの手段もとらないだろう。
(――ええ、酔っ払いの方々ってそういうものですし)
 酔えば気は大きくなるし、動きも単調になるもの。コツさえつかめば扱いはそれなりに簡単であある。
 大胆が過ぎて気性が荒くなるものも時折いるが、地雷さえ踏まなければ素直な方々なのだ。
「オブリビオンもまた似た様なものでしょう、天狗の姿をしているのならなおさら」
 少しだけ苦笑を零して、藍は背後から近づく気配に合わせて足を速めるのだった。



 藍の陽動によって、人と建物が少ない場所へと誘導される鴉天狗。
 その先、民間人の避難を済ませた広場にて、身の丈ほどもある大槌を構えながら、丑三・勘太郎(妖憑依を継ぐもの・f10108)は敵が来るのを待ち構えていた。
「千鳥足のへべれけ天狗が、せっかくの祭を荒らしやがって」
 いくら酒の席であったとしても今日はめでたい祭りの日だ。それをめちゃくちゃにする奴にかける情けなど存在しない。
 勘太郎は自身の血液を代償とし、体内に埋め込まれた魔術装置を起動することで己の魔力を高めていく。さらに身体に満ちた魔力を以って手の中の大槌に魑魅魍魎――雷獣の妖気を纏わせ、『憑依形態』とした。
 準備が出来るのを見計らったように、広場に突っ込んでくる鴉天狗。
 駆けてきた藍と、勘太郎の目が互いの動きを確認するように視線を交わす。
 そして、彼女とすれ違うように槌を振り上げ、鴉天狗へと一気に距離を詰めた。
「酔い醒ましのキツイ一発、ぶちかましてやるぜ!」
 獣が咆哮するような轟音が響く。槌に宿った雷獣の雷が、槌の推進力をさらに押し上げていく。
 裂帛の気合と共に振り下ろされる一撃。それは、鴉天狗の肩口を捉え、接触と同時に雷を辺りに迸らせた。
『鳴神の術か……小癪な妖術を遣いおって……!』
 しかし鴉天狗は、槌の衝撃に僅かに眉を顰めるだけだった。
「チッ……!」
 お返しとばかりに薙ぎ払われた錫杖を避ける為、勘太郎はやむなく一度退き相手との距離を取る。
 手応えから分かる。先程の一撃、その動きは寸前で鴉天狗に見切られていた。
 完全に回避することは不可能と見た敵は、僅かに身体を捻り、その打点をずらし受け流していたのだ。四方に散らした雷撃も、漆黒の翼や衣服を僅かに焦がすに留まるのみ。
 酔っていても――否、ハレの霊気により弱体化していても、やはり相手は骸の海より来たりし異形。どうやら一筋縄ではいかないようである。

 暫し睨み合う勘太郎と鴉天狗。双方武器を構え、相手の出方を伺い合う。

 そんな硬直しかけた場を打ち破ったのは、天狗の死角から飛び込んできた三鈷剣だった。

「それでは、これは如何でしょう?」
 
 乱れた息を整えた藍が、不意を打って再び投擲した物だった。
 さしもの鴉天狗もこれを完全に躱すことは出来ず、神器ははその足へと突き刺さる。
 致命傷には程遠いが、そこまで望まない。“当たれ”ば、次へと繋がるのだ。
「竜王、招来!」
 相手に抜き捨てられてしまう前に、素早く言霊を走らせる。
 次の瞬間、神器に向けて降り注ぐ竜の雷撃。鴉天狗が呻き声を上げ、その動きを一瞬止める。

「今のうちに。……酔っているうちにこんがりと参りましょうか」
「悪ぃな!」

 その隙を、勘太郎は見逃さなかった。
 再び一息で距離を詰め、雷を宿した大槌を力強く振り上げる。先程よりも魔力も妖力も、強く、――代償として己の寿命を削ることなど厭わず、強く込めながら。
 その背後で、藍も勘太郎の一撃に合わせ、今一度竜王へと雷を希う。

 落雷の衝撃から復帰した鴉天狗の錫杖の一撃が飛んでくる。しかし、この機を逃すつもりは無い。躊躇いなく強引に躰で受けた。
 地形すら容易に変えてしまう衝撃に身体が軋む、しかしお陰で敵の隙は大きくなる。
 攻撃の直後で有れば、もう逃げることも打点をずらすことも出来るまい。身体が訴える激痛に構わず槌を振り下ろす。

 妖力の雷と、竜の力による稲妻。根源を異とする力であれど、その本質は極めて近いものである。
 ――ならば、二つが合わされば。その威力は相乗し、跳ね上がる――!

「――招来ッ!」
「ぶっ潰れな! 丑三流奥義、鳴神振るい――!」

 二人の声が木霊し、直後に再びの轟音。
 そして、広場を白銀の閃光が染め上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
f18523ケイラと

御山の鴉天狗といやぁ
なんか霊力の高い妖怪だって聞いたことあるけど…
え、キマイラでも河童でもねーよ
鴉天狗、てゆーわりかし偉い妖怪で
…まー今はヨッパライらしい
オブリビオンじゃ無けりゃ愛嬌なのにねェ
アイツが暴れたからな?
客が避難したのは都合がいい
UC蜂を羽音高く近づけ不快さを与えて警戒させ、自身も追い
人の少ない方へ誘導
そこで一気に七針に襲わせオレも追随し接近【忍び足】
手にしたクナイで敵UCを【カウンター/野生の勘/武器受け】で受け流し錫杖を握ると引き寄せ地面に叩きつけ↓
クナイで【串刺し/暗殺】

…勢いで暴れたけど
ほんとは賑わいと酒に惹かれて山から遊びに来たなら…
ごめんなー

アドリブ可


ケイラ・ローク
トーゴ【f14519】と参加
アドリブ連携OK

あらっ
あれって侍エンパイアのキマイラの…えーとかっぱ!?
なぁにカラステング?
へ~変わった服だけど酔っぱらい用のコスプレじゃ無いのね

あら、トーゴ
いつも何処からか苦無出してきて…
キミ、大人しい癖に血の気が多くない?…忍びってそうなの?
あたしも戦うね
お祭りだし~人もいるから怖くないUCにするわっ
招猫行進曲♪
唱歌とパフォーマンスで明るく歌いながらタップダンスで招き猫召喚♥
さあ猫ちゃん、テングの放火を消しちゃおう!
投げ銭で火を撃ち消すよ!
消し終わったらテングに向かってgo♥体当りっ!
あたしもフラワービームで二回攻撃&乱れ撃ち!
お祭りの邪魔はダメよぅ、テングさん



●猫に小銭と天狗面に蜂
『おのれ……ッ!』
 その身から白煙を上げ片膝をつく鴉天狗。忌々し気に顔をしかめる妖怪に、やけに陽気な声がかけらた。
「あら、あれってあれよね?」
 声の主は物珍しそうな様子で鴉天狗を見るケイラ・ローク(トパーズとアメジスト・f18523)である。
「サムライエンパイアのキマイラの……えーと、かっぱ!?」
 残念ながらその呼称はちょっと、いやかなり違かった。
 しかし、彼女にとってはサムライエンパイアで目に映るもの全てが新鮮。当然、サムライエンパイア由来のオブリビオンの種類を知らないのも無理はない。
「え、キマイラでも河童でもねーよ」
 明らかに聞き覚えのある名前を挙げただけと思われる彼女の回答に、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は律儀に訂正を入れる。
「鴉天狗、てゆーわりかし偉い妖怪で……まー今はヨッパライらしい。御山の鴉天狗といやぁ、なんか霊力の高い妖怪だって聞いたことあるけど……」
「カラステング? へ~、変わった服だけど酔っぱらい用のコスプレじゃ無いのね」
 コスプレなんかであってたまるか、と内心でツッコミを入れつつ、トーゴは注意深く敵の様子を伺う。
 雷の攻撃を受け、その漆黒の瞳は怒気を湛えているようだが、酔い自体は未だ醒めないらしく、相変わらず足元は覚束ない。さすがハレの霊力が齎す酒気といったところだろうか。
 そんな状態で猟兵と戦えるのだから、かの妖怪の実力も相当なものだ。まともにやり合えばそれなりに苦戦したかもしれない。
「オブリビオンじゃ無けりゃ酔うのも愛嬌なのにねェ」
 これが純粋に気のいいヨッパライのマレビトであったらどんなに良かったか。いっそ酒好きが集まる祭りの人々だからそのまま打ち解け、混ざってしまいそうだ。
 そんなことを思いながら、トーゴは素早くあたりを見回し状況を確認する。
 幸い、さんざん鴉天狗が暴れてくれたお陰で客人は皆避難が済んでいる。これなら多少派手な技を使っても、巻き添えにすることはないだろう。
 懐から出したクナイを手に、低く身構えた。



「あら、トーゴ。いつも何処からか苦無出してきて……」
 一足先に戦闘態勢に入ったトーゴの様子に気付き、ケイラが驚きの声を上げる。
「キミ、大人しい癖に血の気が多くない? ……忍びってそうなの?」
「そんなもんそんなもん」
 軽い口調で聞いてきた疑問をさらりと流しながら、トーゴは小鳥ほどの大きさもある七匹の蜂【七針】を召喚し、鴉天狗へとけしかける。
 ブンと不快な羽音を響かせ、蜂が次々と鴉天狗へと纏わりつく。錫杖を振るい振り払うが、蜂は器用にそれらを器用に避けて注意を惹き続けた。その隙に、トーゴも蜂に紛れて接近、クナイを手に接近し斬りつける。 
『五月蠅い蜂と小鬼が。そうしておれるのも今の内よ!』
 やがて、そんなトーゴと蜂達に苛立ったのか天狗の周囲に無数の火の玉が浮かび上がった。それらは瞬時に広がり、周囲の出店やら装飾やらを燃やし始めた。
 どうやら敢えて被害を拡大させることで、戦闘への集中力を削ぐつもりらしい。

「あたしも戦うね」

 そんな敵の行動を見て、すかさず動き始めたのはケイラだ。
 今日は二人でサムライエンパイアの祭りへと来たのだ。エスコートはともかく、戦闘まで彼一人に任せる訳にはいかない。
 お祭りだし、避難したとはいえ人もいるだろうから。折角ならば怖くないユーベルコードを使おう。
 そう思い、陽気な旋律を歌い上げながら軽快に足を踏み鳴らし、拍子を取る。
「招き猫ちゃんここに来て♪ あたしと一緒にがんばろう♪」
 ケイラの即席のタップダンスに招かれ現れたのは、カラフルで可愛い招き猫達。
 赤、青、ピンク、黄色。本来の色など何のその、自由奔放な色彩の猫たちが彼女の歌声に合わせて踊り出す。
「さぁ猫ちゃん、テングの放火を消しちゃおう!」
 ノリに乗ったところでかかる、ケイラの一声。なぁんと招き猫たちは鳴き声を上げると、持っていた小銭を投げつけることで鴉天狗の放った天狗火を打ち消してしまう。
「こっちは任せて♪ 急がないと手柄貰っちゃうわよ!」
 自身も光線銃【フラワービーム】を構えて招き猫のサポートをしながら、ケイラはとっておきのウィンクをトーゴの背中へと送った。
 
「――って訳で、妨害は失敗だね?」
 
 戦いの最中でも明るさを失わない彼女の声を聞きながら、トーゴは鴉天狗に向かって不敵な笑みを作る。
 対する鴉天狗は目論見が外れ、さらに顔を醜く歪めるのみ。
 そこに機を見出し、トーゴの七針が一斉に動いた。
 それぞれが持つ最大の武器である針を構え、全方位から刺突を狙う。鴉天狗も驚いた様子なく錫杖を振るった。
 瞬時に粉微塵となる四匹の蜂。しかしトーゴもその隙を突き、敵へと肉薄。
『疾ィッ――!』
 残る三匹の蜂よりも危険と判断したのか、錫杖が翻り石突がこちらへと向く。強烈な気が込められたそれを、直感的に察知したトーゴは片手に持ったクナイで強引に受け止めた。
 激しい激突音。黒塗りのクナイに罅が入り、音を立てて砕け散る。
「トーゴ、そのまま動かないでッ!」
 背後からケイラが叫び、引き金を引く音。この位置からなら、鴉天狗からはトーゴに隠れて彼女の姿は見えない。
 直後、トーゴの身体の隙間を縫うように光線が走り、鴉天狗を射抜いた。
 漆黒の羽根が舞い散り、鴉天狗が僅かにたたらを踏む。
 その間に迷わず、トーゴは眼前の錫杖を掴むと己の側へと引き寄せ、地面へと叩きつけた。
 錫杖の柄を踏みつけることで相手の動きの出鼻を挫き、同時に其処を足場にして跳躍。もはや金属片に近い形状になったクナイの欠片を構え直し、鴉天狗へと全体重を乗せて突き刺す。
 苦悶の声を上げる鴉天狗。そこにおまけとばかりに放火を片付けたケイラの招き猫達が一斉に突撃を食らわせて。
 
「……勢いで暴れたけど、ほんとは賑わいと酒に惹かれて山から遊びに来てたなら、ごめんなー」
「でもっ! お祭りの邪魔はダメよぅ、テングさん」

 吹き飛ばされていく敵に向かい、トーゴは少しだけ申し訳なさそうに言い、ケイラは元気よく人差し指を立て相手へと向けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
この国やUDCアースには酔い潰した怪物や悪鬼を討つ伝承がありましたか…(世界知識)
祝祭荒らした自業自得とはいえ、弱った所をこの数の猟兵に叩かれるのはいっそ哀れです

ですが、それとこれとは話は別
討たせて頂きます

飛来しての錫杖を怪力で振るう剣盾で受け止め
脚部スラスターの推力移動で“跳んで”反撃

やはり飛ばれると厄介ですね、ならば……!

視界塞ぐ●目潰し目的で大盾を●投擲
その陰で電脳禁忌剣の電脳空間に●物を隠していたUC鉄球取り出し
盾の陰から射出

盾躱した敵を追尾するよう●操縦し直撃させ拘束
(落下盾はワイヤーアンカーで回収)

せめてもの情けです
墓前に供える酒杯は何が宜しいですか!?(本気

そのまま大地に叩き付け



●白騎士捕物帖
 この光景。はて、どこかで聞いた覚えがあるような。
 暴れる鴉天狗の所業を観察しつつ、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械
騎士・f04141)の電子脳内メモリはとある伝承の記録を思い起こしていた。
「そういえば、この国やUDCアースには、酔いつぶした怪物や悪鬼を討つ伝承がありましか……」
 そう、それは彼の趣味である御伽の蒐集の際に触れたいくつかの記録。決まって若い娘を喰らう怪物やら悪鬼やらを唆し、酒をたらふく呑ませて酔い潰し、動けなくなった隙に斬り殺してしまうという知略を練った英雄の話だ。
 騎士たる自分では用いる機会はそうないとは感じつつも、成程これは効果的な策略だと当時は膝を打ったものだ。
 
 そして今、あの話に負けず劣らずの鴉天狗の有様に、この戦力差。いっそこの世界では泥酔した妖怪は須らく討伐されるという習わしでも存在しているのだろうかと疑ってしまう。
「祝祭を荒らした自業自得とはいえ、弱った所をこの数の猟兵に叩かれるのはいっそ哀
れですね」
 しかし、哀れだからと好き勝手に暴れていいかといえば、それは全く別の話。
 このままにしておけば、この妖怪は間違いなく祭りを壊し、訪れた人々に対し暴虐の限りを尽くすだろう。それこそ、かの英雄譚にあった化け物のように。
 そしてそれは、騎士として許すことがあってはなならぬことなのである。
「しかし、それとこれとは話が別。討たせて頂きます」
 故に、トリテレイアは油断なく大剣と盾を構え鴉天狗と対峙するのだった。


 天狗の両翼が激しくはためき、暴風が吹き荒れる。
 風の勢いを利用してこちらに突っ込んできたと思われた鴉天狗の姿が、トリテレイアの眼前で突如掻き消えた。
『カカッ、遅いわッ!』
「――ッ、上ですか!」
 嘲笑う声が頭上から降り、トリテレイアは咄嗟に盾を翳し錫杖の一撃を受け止める。予想以上に重い攻撃が腕を通して伝わり、踏みしめた大地に僅ながら後を残した。
 すぐさま脚部スラスターの推進力を用いて跳躍し反撃に転じようとするも、その頃には敵の姿は再び遥か上空へと逃げおおせている。
「やはり飛ばれると厄介ですね……」
 このままではらちが明かない。そう判断したトリテレイアは一度思案し――。
「ならば……!」
 空中の鴉天狗へ向け、握っていた大楯を迷いなく投擲した。
『何ッ!?』
 それは、言わば己の防御の要を自ら捨てるようなもの。さしもの敵もこの行動には驚いた様で、一瞬、相手の注意がこちらから逸れる。
 それこそが、彼の狙いであった。
 盾を用いた陽動の影で、大剣に込められた電脳魔術を行使。剣内部――電脳空間に隠蔽していた鉄球とワイヤーを引きずり出すと同時に投げた盾の陰となる角度から射出する。
 鴉天狗側からすれば、不意に投げてきた盾を避けたと思ったら後続から鉄球が追尾してきたように見えただろう。二重となって襲う投擲武器。さらに言えば、後者に至っては制動から回転、軌道に至るまでトリテレイアが緻密に操作を加えている。それを、相手が逃られる術はなかった。
『グァッ……!?』
 鋼鉄の棘が無数についた鉄球が鴉天狗を打ちのめし、同時に展開された鉤爪はその身体へと食い込むことで両者を繋ぐ。
 鴉天狗は忌々し気に鉄球を睨むも、強引に振り払う様子は見せない。鉤爪から流れる電流がその行動を縛めているのだ。
「覚悟して頂きましょう」
 トリテレイアの両腕が鉄球へと繋がれたワイヤーを握りしめる。
 投げた盾は既に別のワイヤーアンカーを用いて回収は済んでいる。あとは目の前の、“捕らえた獲物”を片付けるのみ。

 ――腕部、及び脚部の出力を限定解除。

 ヒトのそれをとうに超えた膂力にて、ワイヤーを引き寄せ、孤を描くように振り回す。
 抵抗のできない鴉天狗はその力に抗うことも出来ず、吸い寄せられるように地面へと叩きつけられた。
 
「……せめてもの情けです。墓前に供える酒杯は何が宜しいですか!?」
 
 酒に執着するが故に襲うのならば、せめてその欲求くらいは満たしてやろう、などと。
 半ば本気で考えながら、地面へめり込む鴉天狗へと言い放つのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

丸越・梓
ライアン(f30575)と

マスタリング歓迎

_

背を叩かれフと瞳細め
問題ないさと
理性の凛々しく煌く瞳でライアンに視線向け

常と同じく足は確りと地につき
振る舞いも一寸の乱れ無く
ライアンを庇いながら
愛刀携え前線へ
仕置きの言葉に瞳瞬き
彼なりの冗談だろうと思い込んで
大丈夫だと微笑い

然し気分は幾らか高揚し身体も軽く
鴉天狗の様子も微笑ましく
旨い酒は独り占めするより
皆で呑んだほうが益々旨くなるぞと口にしながら
込める願いは安息
断ち切るは根源のみ

怪我はない
不意にライアンを一瞥し
酔いのない顔で不敵に瞳細め
──ありがとうな、と

(俺に対しても
こんなにも心を砕いてくれる彼の優しさに
唯感謝の念を)


ライアン・キャンベル
◎丸越(f31127)と

ほーら、行くぞ
彼の大きな背をバンと叩く
軽い酔い位なら吹っ飛ばしそうな程
──ま、たとえ酔ってても
仕事はキッチリするだろうけどな

くるくると回しながら
軽やかに拳銃を取り出して
前線に立つ丸越を眺める

本当なんで今日に限って
あんなに酔ったのか不思議だ
アレだけ徹夜続きだと仕方ないか

彼のフォローをするように
敵の足元目掛け射撃を繰り返し
向こうからの攻撃は躱しそうだけど
ちゃんとオレもついてるから
無謀なことしたら後で仕置きな
なんて軽口交えて喉奥を震わせた

──本当、怪我なんてするなよ

小さく溢れた本音を
誤魔化すように隣に立ち
敵に照準合わせ引き金を引く
届いた礼に思わず噴き出し
おー、どういたしまして



●真を隠すは戯れに
「とうとう奴さんのお出ましか」
 騒ぎを聞きつけ敵の元へと駆け付けたライアン・キャンベル(hell fire・f30575)は、
忙しないとぼやきながら、今まで引いていた相棒の手を放す。
 名残惜しくないと言えば嘘にはなるが、二人が此処へ赴いた本来の理由が来てしまったからには仕方がない。
「ほーら、行くぞ」
 未だほろ酔い気味だった、自身が引き連れてきた相棒――丸越・梓(零の魔王・f31127)の気合を入れ直すように、その大きな背中を叩く。
 軽く残る酔い位で有れば吹き飛ばすくらいのつもりでそれなりの力は込めたが、受けた相手は意外にも、姿勢を崩す事なくそれを受け止めた。
「ああ。問題ない」 
 抑揚のない返答も普段通りのもの。少しだけ目を瞠って其方を見れば、つい先程までは酒気に蕩けていた黒曜の瞳は、凛々しい理性の光を帯びたものへと戻ってこちらを見返している。
 どうやら敵の姿を認識したことで、頭の中が切り替わったらしい。そこにはもう、先程までの酔った梓の影はどこにも残ってはいなかった。
(――ま、たとえ酔ってても仕事はキッチリするだろうな)
 だって、これはそういう男なのだ。
 そんな見慣れた彼の背中に笑みを浮かべながら、ライアンもまた愛用の拳銃を手に取りくるりと回すのだった。
 
 
 討つべき敵が来た。
 そう認識した瞬間、つい先程まではふわふわとした心地よさに包まれていた梓の思考も感覚が醒めていった。
 大地を踏みしめる足の感覚もはっきりと感じるし、刀を抜く動作も違和感はない。彼の動きは、今や普段通りのものへと戻っていた。
 いや、普段と全く同じかと言えば違うかもしれない。気分は幾らか浮ついている気がするし、身体も普段以上に軽く感じる。これが酒の名残というものなのかもしれない。
 そのせいだろうか。人を襲う筈の鴉天狗の様子も、不思議と微笑ましいものに見えてしまう。
 建物を壊すことも、人を襲うことも、確かに許されざることだ。しかし、それに起因する彼の目的は酒を呑みたいという一点のみである。
 まるで、酒を好きなだけ呑ませろと駄々をこねているだけの酔っ払いの様ではないか。
「何笑ってんだ、梓」
「いや……只の独り言だ」
 やはりまだ酔っている部分はあるのだろうか、どうやら思っていたことが知らぬうちに顔に出ていたらしい。胡乱気な声で聞いてきたライアンの声を背で受け、庇うように一歩前へ出る。
「じゃあいいけど。無謀なことしたら後で仕置きな」
 すると、からかうような笑いと共に降ってくる相棒の軽口。
 仕置き、の言葉に少しだけ目を瞬かせるが、それもきっと彼なりの冗談。戯れのようなものなのだろう。
「……大丈夫だ」
 それにこちらも笑って答えながら、梓は鴉天狗との距離を詰めにかかる。
 
 
 
 立ち位置は刀を構える梓が前衛。銃を扱うライアンが彼が切り込む援護を担う。
 既にいくつもの攻撃を受けた鴉天狗ではあるが、その動きは決して油断できるものではない。
 錫杖の攻撃の重さは未だ健在であるし、彼が持つ団扇が一仰ぎでもすれば、忽ち大風が吹き荒れこちらの攻撃の手を奪う。これが一定の距離を保ち風による攻撃を続けられたらさぞかし厄介であっただろうが、酔っているが故に攻撃が大味なのが幸いである。
『――ッ!』
 鴉天狗が唸りを上げながら錫杖を構え、梓へと接近しかける。対する梓も彼方を構え応戦しかけるも、それよりも速くライアンの拳銃が敵に向けられる。
 連続した発砲音。彼が銃弾が鴉天狗の足元を捉え、踏み込みの出鼻を挫き、その隙に梓が斬りつける。
 この程度の攻撃で有ればライアンの支援など本当は必要はないかもしれない。しかし、万が一の事を考えると動かずにはいられなかった。
 それに、大丈夫だと分かってはいても今日の彼はいささか酔っていたのだ。全く影響がないとも言い切れない。
(本当、なんで今日に限ってあんなに酔ったんだか)
 少しだけ首を擡げる疑問。普段はどれだけ呑んでも変わることの無い彼が見せた姿がチラリと脳裏に浮かび掛け、慌てて振り払う。
 ここに来る前に大分徹夜が続いていたのだ。きっと仕方がないことだろうと己を納得させる。
 そう、人には仕方が無いことも、無理もないことも存在する。
 無表情に、何でもこなす、魔王と呼ばれてしまう彼にだって。
「――本当、怪我なんてするなよ」
 だから――こうして己がちゃんとついているのだ。

 鴉天狗が取り出しかけた団扇が、重い銃声と共に弾き飛ばされた。 
 前衛の己が対応するよりも先に動いてくれたライアンに内心で感謝を述べながら、梓は強く踏み込み、空いた鴉天狗の懐へと潜り込む。
 此処の酒を旨いと認めながらも、それを独り占めしようとしてしまった少しだけ困った酒仙。彼に制裁を入れるべく、願いを込め、刀を肉体の奥――オブリビオンの根源へと滑り込ませる。
「美味い酒は皆で呑んだ方が益々旨くなるぞ」
 そんな、嗜めるような言葉とは裏腹に込めた願いは彼の妖怪の安息。いつか、骸の海からの存在としてではなく、存分に酒が呑めるようにと願いの一太刀を入れ、素早くその場を離れる。
 
 直後、彼と入れ違うように無数の銃弾が鴉天狗へと飛び込み、今度こそ鴉天狗の膝をつかせるのだった。
 
「ま、こんなもんだろ」
 煙の上がった銃口を降ろし、鴉天狗を見下ろしてライアンが言う。
 後方に居た筈の彼は気付けば梓の隣に並ぶように立っていた。そんな彼を見て目を細め、梓はふと思った言の葉をそのまま唇に乗せる。
「――ありがとうな」
 こんな、面白みがないだろう自分に対してこんなにも心を砕いてくれて。
 ふとした時に感じられる彼の優しさが本当にありがたいと、心から感じたから。
 至って真面目な感情から言ったにもかかわらず、返ってきたのは小さく噴き出したような笑い声。
「おー、どういたしまして」
 そう軽い返事で返しながらも、ライアンは言葉だけは強く、はっきりとこう続けた。

 そんなの、当たり前のことだろう、と――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズウェルド・ソルクラヴィス
【庭】○

…ただの迷惑な酔っ払いじゃねぇか

現れた天狗を一瞥し
ウルスラの一計へ向かいながら
右手に槍を

迫る大風には槍を突き上げ
返しに
カウンターと共に全力魔法の風を纏わせた衝撃波で
その覚束なさを更に煽ってみるか

…ハレの霊力ってのは、ちゃんと効果があるんだな

連れ達に撃退される天狗を見ながら
出番はなさそうだと『焔竜の緋氣』を引っ込める
代わりに
後ろへすっ転びそうなルゥーを支えながら
チビ共を召喚
水の全力魔法で火消し
物を拾いをさせ
取り敢えず蹴散らされた出店を元に戻すか

いいか
つまみ食いはするなよ

それだけ釘を刺し
難儀だな…とアースと共に補修に努める

切子か?
…そいつでいい

選ぶ土産は
なんだかんだで
三人と同じ柄の浅紫切子


ルゥー・ブランシュ
【庭】○
大変!
これじゃ、せっかくのお祭りもお土産も全部ダメになっちゃう…!

このふとどきものめ!
あたしたち、猟兵がせいばいしてくれる!

これはね、この世界でみた素敵な物語の決めセリフ
旅する正義の将軍さんが悪党をばったばったと倒すの✨
ウルのれぷりかに釣られて天狗さんが来たら

その力を貸して―

魔法の本にお願いして(技能:魔法溜めを代償に)得意な光の矢で
アースに続いて団扇ごと撃ち抜いてやるの!

あのね、お祭りって皆で楽しむから
お腹だけじゃなくて、心も幸せいっぱいになるんだよ
わかった?
(オズに支えられつつビシッと指差し

これにて一件落着!

元に戻った屋台にはしゃいで
お土産は…
るぅーは、あの蜂蜜色の切子さんにする!


ウルスラ・クライスト
【庭】◯
そろそろお迎えの準備をしましょうか

ちょっと騒いでも屋台には被害が出ない距離に
今日美味しくいただいた酒宴の卓を
レプリカクラフトで再現するわ
味もそのままに…手脚が重くなる毒罠よ

誘惑、挑発、誘き寄せ
酒気を風魔法で誘導したら
ふらふらの鴉天狗にぐいぐいとお誘いを
ねぇ貴方?なかなかお酒強そうね
このお酒の妖精ウルスラさんと
ひとつご一緒してくれないかしら?
私のお薦めで何がお好きかぜひ聞いてみたいわ~

折角のハレの日だもの
貴方もお仲間ならいいのにね
お行儀悪いから成敗しなくちゃいけないそうよ
ルゥちゃんの元気な啖呵に笑いつつ
光の攻撃魔法で眩み目を狙うわ

私は緋色の切子をいただくわね
お酒も山盛り、今日のお土産に


アース・ゼノビア
【庭】◯
上機嫌のウルスラが一計案じるらしい
レプリカクラフトの宴卓周囲には
予め「忘却の結界」の魔石を忍ばせておこう

ルゥ将軍もご機嫌だなぁ
佳き祝祭で終わるよう、物語よろしく
屋台に被害が広がる前にお帰り願わなくてはね
従者は騎士みたいなものか
じゃあ…俺とオズはその役で?

不慣れな酒も呑んでしまったし、支援に回ろうかな
大風を凌ぐ風の結界術を仲間に街に、都度に紡ぎ
天狗火が散らぬよう、高速詠唱の水魔法で対処を
木造りの街に付け火は御法度だよ

さて、そろそろお開きにしよう
アンロックを構え、忘却の結界を起動
また美味い酒を楽しめる姿に、戻れるといいな

帰り道には浅葱色の切子をお土産に
街の賑わいに目を細め
めでたし、めでたし



●結びの言葉を繋ぐため
「大変! 風と炎であちこちの屋台が壊れてるよ……!」
 戦いの場へと近づくにつれルゥー・ブランシュ(白寵櫻・f26800)は、周囲の惨状に悲鳴に近い声をあげる。
 突風にひしゃげ、倒れた屋台に土埃に塗れてしまった料理。放たれた矢先から鎮火されているために火の手こそ上がってはいないものの、あちこちに燃えた後や煤が付着している様子が痛ましい。
 込み上げる悔しさにルゥーは顔を歪ませる。つい先程までどこを見てもも活気に満ちていて、町行く人々は誰もが楽しそうに笑っていた筈なのに。
 それもこれも、全ては祭りを襲った敵のせいだ。
 あの、被害の大きい広場の真ん中にいる妖怪のーー!
「……いやあれ、ただの迷惑な酔っ払いじゃねぇか」
 きっと前を睨み今にも飛び出していきそうなルゥーを抑えながら、敵の一連の行動を見ていたオズウェルド・ソルクラヴィス(明宵の槍・f26755)は酷く冷静にそう突っ込みを入れた。
 なるほど、ハレの霊力というものはどうやらちゃんと効果はあるらしい。
 本当は彼にも鴉天狗という名称があることは知っているし、驚異的な力を持つこともこれまでの戦いを見て知っている。しかし、残念ながら酔っ払いは大妖怪だろうがどんなに強かろうがが酔っ払いなのは変わらないのである。
「でもでも、これじゃ、せっかくのお祭りもお土産も全部ダメになっちゃう……!」
 それでも放っておくわけにはいかないと抗議するルゥーにオズウェルドは無言で頷く。
 確かに、酔っ払いはどこまでも酔っ払いではあるが、だからと言って暴れて良い道理はどこにもない。
 しかしそもそもの話、オズウェルドが彼女を止めたのは攻撃をしてはいけないという意味ではなかった。
 彼女の出番は、“まだ早い”と止めたのだ。
「うん、だから俺たちでなんとかしないいけないね」
 そこに混ざってきた声はアース・ゼノビア(蒼翼の楯・f14634)のもの。彼の掌には蒼い魔石を砕いた破片が数個、乗せられている。
 それを二人に見せ、アースは反対の人差し指を口元に当てる。
「ここは『上機嫌のお酒の妖精さん』が一計案じるらしいから、俺たちはそれに続こうか」
 そして鴉天狗に程近い、『偶然にも壊れることを逃れていた卓』へと視線を向けるのだった。


 土地から湧き出る不可思議な霊力と幾度も追った手傷。
『たかが葦原の民風情が……ッ!』
 その二つにより随分重く感じられる体を起こしながら、鴉天狗は忌々しげに悪態を吐いていた。
 どこからか芳しい酒の気配を感じ、来てみれば右も左も酒ばかり、しかも妖怪の身でも唸るくらいの上物ばかりが揃えられていた。
 ここは何処の楽園か、こんな良い場所をヒトらが独占しているのは勿体無い。ちぃとばかし脅して奪ってやろうと彼の地に舞い降りてみればこのざまである。
 特に、このハレの霊力とやらが大変良くない。まるで深酒をした時のように足元が定まらず、思考も浮き立ったような高揚感があるかと思えば咄嗟の判断が遅れるほどに鈍くなっていた。
 このままでは消耗するばかりで、貴奴等の思うつぼだろう。
 何かここで体力と力の回復を図らねばなるまい、そう思い周囲を見渡す。
 その時、ふうわりと甘い酒の香りが鴉天狗の鼻腔をくすぐった。
「ねぇ貴方? なかなかお酒、強そうね」
 掛けられた声に驚き、戦いの被害から免れた酒宴の名残。そしてその側には、淡い桃色の髪の女性がこちらを誘うように立っている。
「このお酒の妖精ウルスラさんと、ひとつご一緒してくれないかしら」
 彼女が示す卓の上にはなみなみと酒が注がれた酒気に酒瓶。秋の幸を盛った馳走。どうやら『偶然にも被害を免れた卓』が存在したらしい。
 これは占めた、と鴉天狗はその香と光景に惹かれるように卓へと足を運ぶ。
 肉も魚も良い。食らえばその分力となり傷も癒える。 
 それにそうだ、悪い酒に酔って体が動かぬのなら、良い酒で拭えばいいのだ。酒は薬とも謂う、これ程のものならばさぞかし体も良く回ろう。
 鴉天狗が早速と肴を食い散らかす。杯を手に取ればさぁさぁと注がれた酒を機嫌よく煽った、その時ーー。

「ーー勿論、私特製の偽物で、ついで罠なのだけれどね?」

 ウルスラ・クライスト(バタフライエフェクト・f03499)の無情な通告が、彼の耳へと届く。

 ぐらりと、鴉天狗の漆黒の体が先ほどよりも大きく揺れて、自身の重みに耐えきれないというように膝をつく。
「折角のハレの日だもの、貴方もお仲間ならいいのにね。お行儀が
悪いから成敗しなくちゃいけないそうよ」
 ウルスラの言葉に敵は錫杖を支えに起きあがろうともがくも、今度は錫杖ごと取り落としてしまう。
 それを確認し、ウルスラはウルスラは残る三人に片目を瞑って合図を送った。

 作戦自体は至ってシンプルなものだ。
 今日四人が美味しく食べた酒宴の卓の品々を、レプリカクラフトで寸分違わぬ偽物を作り出す。見た目も香も味もそのままに……手足が重くなる毒を仕込んだ『仕掛け罠』として。
 あとは風魔法を用いて敵にこれらの存在を気づかせれば、あとは敵は自ら罠に嵌ってしまうという算段だった。
 安直だと言われればそうかもしれないが、なんと言っても相手は酔っ払いで、そもそも酒に惹かれてここに来てしまうほどの酒好きだ。
 目の前に旨そうな酒があったら深く考えずに飲んでみる。酔った酒好きの思考回路なんてそんなものである。
「さ、そろそろお迎えの準備をしましょうか」
 地に倒れ伏す鴉天狗から離れ、ウルスラはこちらに向かってくる三人と合流する。
 ここから先は彼らの番。特に、彼の所業にご立腹のお姫様が先陣切ってくれるだろう。


「このふとどきものめ! あたしたち、猟兵がせいばいしてくれる!」
 そんなウルスラの予想通り、彼女の合図とともに解放されたルゥーが真っ先に鴉天狗の元へと駆けつけ見栄をきる。
 にっくき敵へと向けた言葉はこの人ためのとっておき。つい最近、この世界で見た素敵な物語の決めセリフである。
 旅する正義の将軍が、道中で出くわした悪党をばったばったと倒すのがとても格好良かったのだ。
「ルゥ将軍もご機嫌だなぁ」
 そんな彼女の後を追う形で追いつき笑うのはアース。不慣れな酒を呑んだ彼は、今回は他の者達の支援へと回っていた。
 彼女が将軍を買って出るのであれば、自分たちはどんな立ち位置だろうか。
 将軍と言えば付き人ーー従者がいるのが相場というもの。お付きの者が揃えばさぞかし迫力がつくだろう。
「従者なら、騎士みたいなものか。じゃあ……俺とオズはその役で?」
 共に来たオズウェルドへと問い掛けてみれば、彼は勝手にしろと一言返すばかりで槍を手に、警戒しつつ前へと進み出た。
 いくらウルスラの毒が回っていると言っても、相手はオブリビオンだ、それだけで動きを完全に無力化するのは難しい。
 近づいて来たオズウェルドに気付き、鴉天狗がゆらりと立ちあがり手に持った団扇を振り上げる。
 たったそれだけの行動で四方へと撒き散らされる突風と天狗火。それらを冷静に見極め、槍を持って切り捨て、呼び出した精竜達の力で炎を打ち消した。
「どこを狙ってるんだ?」
 お返しにと風の魔力を纏わせた槍を突き入れれば、面白い様に相手の動揺が見えた。
「うん、オズもなかなか決まってるね」
 風と炎の被害から周囲を守るべく風の結界を張ったアースが、背後から満足そうに微笑んだ。
「木造りの町に付け火はご法度だよ」
 彼の精竜達でも打ち消しきれない炎に対しては、すでに水の魔法を放ち対処をとっている。
 何しろこの戦いが終わったら、その後には屋台の修繕が待っているのだ。少しでも被害が少なければ、その分修繕も祭りの早くなる。
 そこでふと、アースは思い出す。
 そういえば、宴の中で話していた切子細工もまだ買い損ねていたのだっけ。
「切子のグラスも、ちゃんと買って帰らないとね」
「あら、じゃあ私は緋色にしようかしら」
「ルゥは蜂蜜色の切子さんにする! オズは?」
「俺は別に拘りはない。残っているものから適当に選ぶさ」
「じゃあ、オズは浅紫さんが似合うと思うなー」
「……そいつでいい」
 口々に意見を言い合う三人にもう一度微笑みを浮かべ、アースはゆっくりと蒼い魔石を芯とした宝剣【アンロック】を掲げる。
 この通り、自分たちにはまだまだやることがたくさん残っている。
 ーーだから、この物語を『めでたしめでたし』へと進むための導きも、そろそろ頃合いだろう。

「ウルスラ、少し時間を稼いでもらえるかい?」
「勿論」

 アースの言葉に従い、ウルスラの光の魔法が鴉天狗の視界を焼き、同時にオズウェルドの槍が走り、その足を地面へと縫い付ける。
 そうして彼の足が完全に止まったことを確認して、アースは先ほど周囲に仕込んでいた蒼い魔石の欠片の力を解放した。
「ーー封印解除」
 言霊と共に呼び出すは、浄化の雨。
 全ての悪意と穢れを祓い、濯ぎ、あるべき形へと帰れるように。魔力の雨は優しく鴉天狗へと降り注ぎ、その力を奪っていく。
「……どうか、また美味しい酒を楽しめる姿に、戻れるといいな」
 そして、この物語もどうかーー。
「佳き祝祭で終わるよう、物語をよろしく、将軍さん?」

「もっちろん!」

 視線と言葉を受けたルゥーが、元気よく返事をし、魔導書を掲げた。

「お願い、その力を貸してー」 
 やさしい魔力で満ちた魔導書を手に、目を閉じて意識を集中させる。
「あのね、お祭りって皆で楽しむからお腹だけじゃなくて、心も幸せいっぱいになるんだよ」
 思い出すのは町中に溢れていた光景。活気のある声と楽しげな笑顔。
 彼らは皆、自分一人が楽しもうなんて考えていなかった。皆がそれぞれ、相手が楽しんでもらおうと思って動いて、同じ時間を共有して。その結果、こんなに楽しい祭りが生み出されたのだ。
 だから、独り占めなんてしたらそんな幸せが全部なくなってしまうから。
 魔導書より集まった力を眼前へと集めて、それを得意な光の属性へ。
 精一杯の魔力を込めて、矢の形へと変え、打ち出す。
「はんせいしなさい!」
 ルゥーの魔法により生み出された光の矢が、鴉天狗の持つ団扇ごと鴉天狗の体を貫く。
「わかった?」
 反動でよろけた体をオズに支えて貰いながら、ルゥーはビシッと突き出した指を鴉天狗へと突きつけるのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
リリア(f00408)と行動

器物破損に無銭飲食、泥酔での暴行と相手の罪状が積み上がってく
これ以上好き勝手にはさせないよ
でも、マトモに戦う事考えたら酔っ払ってて良かった
酔って強くなる奴なんていないもの

それでも、相手の力は厄介かな
風に鬼火とわざわざ近づくのは骨だね
よし、リリア!私の後ろに!
私が守るから攻撃の方はよろしく!


【理崩】
相手の力を見極め、脆い箇所を理解し正確に破壊する
磨いた技と最上の魔剣の両方があって成立する技だ

それに相手が酔ってる分精度が落ちて、脆い箇所の当たり判定も増えてる
私とリリアに向かう攻撃は、全て叩っ斬る!

さ、今だよリリア!

リリア、魔術の構築の巧さは見てきたけど、得物を使っての戦い方も堂に入ってる
お手本みたいな踏み込みと攻撃だ

でも今日のリリア、いつにもまして強くない?
まさか……ちょっと酔ってるから、とか…?
普段は優しさが抑えてくれている半歩の容赦を酔いが、踏み越えさせている……!

『あの子、怒らせない方が賢いかもね』
あ、シェル姉からもお墨付

ソウダネ!と、心の底から同意


ヴィクトリア・アイニッヒ
セリカ(f00633)と

華やかで賑やかな場を、我が物顔で荒らすとは。何たる不届きな!
これは、断じて許してはおけません
主に変わりて、誅罰を下さねばなりませんね

……しかし、ハレの霊力の作用により酩酊しているとは言え。風に鬼火の組み合わせは、中々に厄介
ですが、セリカに考えがある様子。いつかとは逆にまずは彼女に任せ、一歩退いて戦況を見守りましょう

……成程。どんな厄介な力にも、必ず弱点となるべき点は存在する。そこを正確に突いている訳ですね
とは言え、言うは易く行うは難しという言葉の通り。実現するには、眼の良さと勘所の良さ、何より技量が必要不可欠
それら全てを兼ね備えているセリカ……ふふ。私の妹弟子は、何とも頼りになることです

攻撃をセリカが防げば、次は私の出番
主への祈りを捧げ、UC【神威の光剣】を発動。敵の四肢を貫き、動きを封じます
そして、その上で。不届き者を、斧槍で斬り捨ててみせましょう

しかし、ふむ。妙に身体が軽いような……?
まぁ悪いことではありませんし、一気に決めてしまいましょう

※アドリブ歓迎です



●君子は酔っても近づかない
「器物破損に無銭飲食と、あとは泥酔での暴行ってところかな」
 鴉天狗が通った後を確認し、その被害を指折り数えながらセフィリカ・ランブレイ(鉄エルフの蒼鋼姫・f00633)は積み上がった敵の罪状をすらすらと述べていく。パッと見ただけでもこの数だ、詳しく探せばまだまだあるだろう。
 しかし同時に、相手が酔っ払った状態で良かったとも思う自分も存在していた。
 酔って辺り散らすような戦い方をしてこの状態なのだ。相手がマトモな状態で、もっと知略を練って襲ってきていたのなら、いくらセフィリカ達猟兵が居たとしても、被害はこの程度では済まないだろう。
 酔って弱体化することはあれど、強くなる敵なんていない。今はハレの霊力が問題なく作用してくれたこの状況に感謝をするべきだろう。 
「華やかで賑やかな場を、我が物顔で荒らすとは。何たる不届きな!」
 その隣では、共に被害状況を見ていたヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)が憤慨したように声を荒げていた。
「これは、断じて許してはおけません。主に変わりて、懲罰を下さねばなりませんね」
 騎士としての一面を持つ冷静な彼女が此処まで怒りを露わにすることは珍しい。それほど、身勝手な敵の行動が彼女の琴線に触れたのだろうか。
 しかし残念ながら、そんな彼女を宥める程、セフィリカの心も穏やかではなかった。
 祭りは楽しかったし、酒も料理も美味しかった。それをこんな形で滅茶苦茶にされて怒らないものはいないだろう。
「リリアに同意。これ以上好き勝手にはさせないよ」
 町にとって大切なの場を汚した妖怪に鉄槌を下すべく、二人は戦いへと望むのだった。



「……しかし、酩酊しているとは言え。風に鬼火の組み合わせは中々に」
 斧槍を構え、敵の動きを注意深く伺いながら、ヴィクトリアは攻撃の機を図るようにそう呟いた。
「うん、厄介かな。風に鬼火にとわざわざ近づくのは骨だね」
 彼女の意見に同意するようにセフィリカがその言葉を継ぐ。
 敵は近接である錫杖の他に、風と火を巧みに操る。風に巻かれた火は想定以上の速さで回り征く手を阻むし、不可視の突風での不意打ちも充分気を付けるべきだろう。
 酔っているとはいえ相手も手練れ。手負いである分を差し引いても、闇雲に突っ込めば返り討ちとなるのはこちらの方だ。
 しかし、それはあくまで一人で向かえば、である。
「よし、リリア! 私の後ろに!」
 何かを思いついたらしいセフィリカが大剣を抜き、ヴィクトリアを庇うように一歩前へ進み出る。
「セリ――……ッ」
 彼女の背を見たヴィクトリアは一度口を開きかけるも、すぐに思い直してその言葉を止めた。そして一歩退き、セフィリカの動きの邪魔とならぬように備える。
 彼女とて同じ師につき鍛え、共に戦場を越えてきた強者だ。無策でこのような事を言うはずがない。
「私が守るから、攻撃の方はよろしく!」
 ならば、今ヴィクトリアがすべきことは守りを彼女に任せ、攻撃に全集中を注ぐこと。
「頼りにしていますよ」
 いつかとは逆となった立ち位置から信頼の言葉を託せば、肩越しに返ってくるのはいつも通りの笑み。
 
 そして次の瞬間、セフィリカの剣が飛来してきた炎を斬り裂いた。

『むっ……!?』

 真っ向から斬り裂かれ霧散した炎に、鴉天狗が驚愕の表情を浮かべる。
 対するセフィリカは不敵な笑みを浮かべ、再び剣を正面へ。
 
「どうしたの? 打ち止めにはまだ早いよね?」

 煽るように言ってやれば、今度は左右から同時に向かってくる新たな天狗火。
 その軌道を冷静に見切り、魔剣を突き入れた。
 それだけで、先程の光景を繰り返すように天狗が放った炎は瞬き一つで掻き消えてしまった。それを見た鴉天狗が怒った様に何やらいうが、それも想定内だ。
(やっぱり、酔っている分精度が落ちて、“当たり”判定も増えている)
 相手の集中が乱れれば乱れる程、術の精度も完成度もきっとさらに落ちていく。そうすれば、セフィリカの技も効きやすい。
 大丈夫。これならば幾ら数が増えようと、捌くことは難しくない。
「私とリリアに向かう攻撃は、全て叩っ斬る!」
 さらに増えた炎の群れを睨みつけながら、セフィリカは深く息を吸い、魔剣を振り下ろした。


 ――【理崩】。
 あらゆる物体、力には崩壊へと至る“脆い箇所”というものが存在する。それは、どんなに厄介な力であろうと免れない弱点である。
 次々と鴉天狗の術を無力化させていく彼女の後ろで、その動きを見届けていたヴィクトリアは己の顔に自然と笑みが浮かぶのを感じていた。
 この技は相手の力を見極め、その異能を識ることでその点を理解し、魔剣で斬ることにより崩壊を呼び、相殺する。磨き抜かれた技とシェルファという最上の魔剣があって始めて成立する業である。
「……と、言うは易く行うは難しという言葉どおり。いくら原理を理解していても、実
現するには眼の良さと勘所の良さ、何より技量が必要不可欠ですね」
 そして、その全てを兼ね備えているセフィリカ。
「……ふふ。私の妹弟子は、なんとも頼りになることです」
 共に戦う者として、これ程頼もしいと思えることがあろうか。

「さ、今だよリリア!」

 襲ってきた最後の炎を蹴散らし、セフィリカの声が上がる。
 見れば鴉天狗は既に肩で息をしている様子。どうやら天狗火はここで打ち止めであるらしい。
 
 ならば次は、ヴィクトリアの出番だ。
 斧槍を構え、セフィリカを追い越し鴉天狗との距離を一気に詰める。
「神威の光剣よ――!」
 同時に太陽神へと祈りを捧げ、威光を具現化した光剣を虚空から呼び出す。間髪入れずに前方へそれを射出。鴉天狗の四肢を縫い留め、動きを封じた。
 そして、その上で。
 藻掻く鴉天狗目掛けて斧槍を振り上げる。 
 
 不思議なことに、今日はなんだか妙に身体が軽い。
 まるで羽根にでもなったかのように武器も軽々と扱え、セフィリカも敵の動きもよく視える。
 ……けれどまぁ、調子が良い事は悪い事ではないだろう。
 故に迷うことなく踏み込み、一気に決める――!
 
「ハレの霊力を生み出す人々の祭。それを穢す不届き者にはご退場願いましょう!」
 
 気合と共に振り下ろされた斧槍が、鴉天狗の身体を深々と斬り裂いた。
 
 
 迷いなく鴉天狗を切り捨てたヴィクトリアの一閃。
 それは、傍目から見たセフィリカにも目を奪われるような一撃だった。
「やっぱりすごいな、リリアは」
 使う機会の多かった多かった魔術の構築の巧さは見てきたけれど、得物を使っての戦い方も負けないくらい堂に入っている。まるで、お手本のような踏み込みと攻撃だった。
 やはり、自分の姉弟子はとても強いのである。
 …………あるのだけれど。
「……でも今日のリリア、いつにもまして強くない?」
『……強いわね』
 思わずぽろりと零した違和感にすかさず魔剣のシェルファが同意した。
 なんというか、こう踏み込みとか、思い切りの良さとか。なんかいつもより彼女の動きが力強い気がする。
 思い当たる節があるとすれば――。
「まさか……ちょっと酔ってるから、とか……?」
 セフィリカは考える。
 例えば、普段はその優しい性格が抑えていた半歩の容赦を、酔いが踏み越えさせていたり。
 それにより普段よりも反応速度も攻撃速さも、その力すらも跳ね上がっている……とか。
『…………』
「…………」

 暫しの沈黙。
 無言は肯定の一つであると、この時セフィリカは実感した。

『あの子、怒らせない方が賢いかもね』
 あ、お墨付きになっちゃった。
 どうやら酔って強くなる人はごくごくまれに存在するらしい。
「……ソウダネ!」
 触らぬ神になんとやら、ヴィクトリアの逆鱗に触れることは今後間違ってもないことにしよう。
 シェルファの言葉に心の底から同意しながらこっそりと肝に銘じることにしたセフィリカなのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴァシリッサ・フロレスク

ムギ姐(f31137)と

ッたく、良いトコだッてのに
この天狗サマはアソビ方も知らないみたいだねェ?
ンな品の無い荒事じゃァ興覚めだよ

なァ、ムギ姐?

フフッ
あァ、奴サンに確り“カミアソビ”の手本を魅せて遣ッておくれよ?

軻遇突智・弐心を抜刀、柄の拳銃で牽制
相手の出方を情報収集がてら、ムギ姐の大立ち回りを心行く迄堪能する

HAHA!イイねェ♪よっぽどご機嫌だ
こりゃ提灯に釣り鐘さ、まるで相手になンないねェ
そンなとろ火じゃ足元も照らせないよ?

軽口で挑発
逆上させて相手のUCの炎を眸に焼き付ける

宴も酣だけど
イイ加減酔いも醒めてきちまッたね
そろそろ〆るかい

ムギ姐の合図を皮切りに一気呵成に二刀流で切り込み
炎で攻められばUC発動
相手のUCは履修済みだ

芸が無いねぇ、見飽きたよ
此方の焔で上書き掻き消し、錫杖も見切り、怪力と武器受けで往なす
そのまま一閃

さ、ムギ姐
霊送火だ

あァ
魅てるコッチが洗われるねェ

眴せにつられて駄目押しだ
ムギ姐の焔で舞う"劔三番叟"

流る様に両の刃で斬り祓う

赤と白のハレの宵
ケガレの黒はお引き取り願おうか


百海・胡麦

リサ殿(f09894)と

ムギ姐か、そいじゃアタシはリサ殿? なんて
斯様な晩に無粋だねえ
独り占めたあ情けない——酒は人と交して楽しむもんだよ?
この美味さじゃぁ分かるがね

朱傘「機算」を手回し
その通り

御任せあれ、リサ殿——今宵全ては、貴女を照らし彩るために
まず手の内を晒させる
傘を丸く開き放つは
「息名」炎を元に、自在に転じる魔力の塊
満月のよう輝く盃を象り浮かべ
くるりくるり

さ、天狗や…酔うているなら酔わせてやろう

溢れるは酒ではなく…白く透る熱き炎
喉の奥までごぶり、ごぶりと味わって?
神酒の香り焼き付けるがいい

さ、鴉が鳴いた
貴女の番っ!
お声を合図に、傘で仮面を叩き胸を蹴りつけ空に舞い
白盃の月を貴女の背に迎えよう


閃きに、向けられる麗しき声
全て貴女の望むまま
されば鴉の黒を深くしよう
種火まとわせ『紅灯華』の白龍を

美しかろう、麗しかろう? ハレの魔力に煽られて
愛しこの子も飢えておる
焼けろ焼けろ、骨の髄まで!

瞳で冴える牙を招き
そのまま貴女を皓々照らそう
——嗚呼、あゝ、紅き美し百合車 貴女に酔うにゃ酒など要らぬ



●汝れに捧ぐ神楽舞
 負うたる傷は重く、神変鬼毒たる酒は深く。
 足元はよろよろと、定まらぬまま怒りのままに妖は荒ぶる。
 不名誉たる赤を纏うまま、驕る心を捨てぬまま。
 滑稽たる舞を、神にも嘲笑われたまままに。

「ッたく、良いトコだッってのに。この天狗サマはアソビ方も知らないみたいだねェ?」
 そんな鴉天狗の様子を見遣りながら、ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)は嘲るような笑みを浮かべる。
 酔うて暴れて。壊して狂って。そんな品のない荒事では、興醒めもいいところ。
「なァ、ムギ姐?」
 同意を求めるように傍らで同じく妖を見下ろす百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)に声をかければ、その通りだところころと返る鈴の音の様な笑い声。
「本当、斯様な晩に無粋だねえ。この美味さじゃぁ分かるがね、独り占めたあ情けない――酒は人と交わして楽しむもんだよ?」
「違いない」
 けらけらと威勢よく笑うヴァシリッサ。
 その声を聞きながら、それにしても、と胡麦はずっと気になっていた言葉を思案する。
「……ムギ姐、か」
 なんとまぁ耳障りの良い呼び声。
 彼女なりの敬意と親愛を込めた、己の呼び名。ならば自分も、相応の言葉で彼女を呼ばなければ失礼に辺りするだろうか。
「――そいじゃアタシはリサ殿、なんて」
 良いかい? と視線で問えば、当たり前だろうと言葉以上に物言う灰色の視線が返ってくる。
 込み上がる想いに胡麦はふと笑みを浮かべた。
 本当に、なんて心地の良いこと。
 こんなにも愉しい日なのだから。無粋な踊りで興醒めのまま終わらせるのは口惜しい。
 
「フフッ、奴サンに確り“カミアソビ”の手本を魅せて遣ッておくれよ?」
「御任せあれ」
 
 誘われるままに赤い和傘【機算】をくるりと手回し、胡麦はゆるりと鴉天狗の前へと踊り出る。

「リサ殿――今宵全ては、貴女を照らし彩るために」

 言葉と共に傘が開き、変幻自在の魔力の礫が放たれる。
 己が身に宿る炎を元に練り直し、姿を変える「息名」。その姿は満月の様に輝く盃を象り浮かんで灯の代わりとなり彼女を照らす。

「そこな貴方。一指しお相手願おうかい」
『芸人風情が、先程から言わしておけばいい気になりおって!』
 喰ってかかるように鴉天狗が叫び、こちらもと天狗火を放ってくるが、これを胡麦はするりと躱してみせる。
 炎を見切って、拍子を踏む勢いで身体を捻ってすり抜けて。死角からねらうそれを開いた傘で受け止めて、笑みすら浮かべて見せて。
 間近で爆ぜる炎の熱が肌を焼いても、錫杖が掠り皮膚が裂けてもなんでもないと魅せれるように。
「まだまだ、そんなもんじゃないだろう?」
 ――そうして煽って、手の内を全て晒させる。
「HAHA! いいねェ♪ よっぽどご機嫌だ」
 すぐ傍まで迫った錫杖に、吼える銃声と弾かれる音。胡麦の背後から、ヴァシリッサの弾が出過ぎた妖の動きを牽制に走ったのだ。
「こりゃ提灯に釣鐘さ、まるで相手になンないねェ。そんなとろ火じゃ足元も照らせないよ?」
 異形たる武器、軻遇突智・弐心の柄の拳銃を敵へ向け、彼女もまた“宴”の盛り上げ役に一足買ってくれる。
『この小娘共……一気に燃やし尽くしてやろうぞッ!』
 見事怒り心頭となった鴉天狗が錫杖を振り、翼を開く。
 満ちる妖力と熱風。先程の倍もあろうかという焔が燃え上がり、二人に向けて一斉に放たれた。

 ――それでもまだ、この席に彼は不相応だ。

「さ、天狗や……酔うているなら酔わせてやろう」

 空で揺れる盃がゆっくりと傾いていく。

 溢れ出るは酒ではなく、白く透る熱き炎。
 胡麦の身の内で燻り続けているそれとよく似た火の穂の奔流が、生き物のようにうねり、飛び散る天狗火を呑み込んだ。
「どうか喉の奥までごぶり、ごぶりと味わって? 神酒の香り、焼き付けるがいい」

 くるり、くるり。

 火を呑み込み、さらに大きく膨らむ白炎。熱に煽られ渦巻く突風。
 その中で胡麦は舞い続ける。まるで、誰かに捧げるかように。

「――さ、鴉が哭いた」

 やがてぱちん、と朱の傘が閉じられて。
 次の瞬間、胡麦の身体が閃いた。
 一息にて距離を詰め、不意をついて閉じた傘にて鴉天狗の面を殴打。流れるように胸を蹴りつけ、空へと踊りあがる。
「貴女の番っ!」
 声と共に再び灯す白炎。
 まるく、まぁるく掲げ持ち、貴女の背に迎えよう。
「任されたッ!」
 ――嗚呼、赤い、紅い花が綻びる。


 胡麦の声を皮切りに、二刀の異形の武器を構えたヴァシリッサは鴉天狗へと肉薄する。
 みれば相手は未だ態勢を崩したまま。その漆黒の身体に容赦なく刃を走らせ、不敵に笑った。
「宴も酣だけど、イイ加減酔いも醒めてきちまッたね」
 得物を交互に振り切ったところで鴉天狗が立て直す。振るわれる錫杖を引き戻した刃の柄で受け止めいなして、空いた腹を蹴りつける。あっさりと再びぐらつく妖怪の身体。
 しかしその直後、眼前に火の球が生まれる。
『舐めるな餓鬼がッ――!』
 天狗の雄叫びと共に広がる妖しの炎。
 しかしそれをヴァシリッサは、

「芸が無いねぇ、見飽きたよ」

 鼻で笑い、己が掌から噴き出る炎で打ち消してみせた。
 胡麦の舞と共に、“その火種”は散々見せて貰ったのだ。今更不意を打ってみせたつもりでも、その機を見切り先の一手に出ることは造作も無い。
 しかと得物を握り直し、驚愕する敵の、直後にできた隙に薙ぎ払う。
 腕に伝わる確かな手ごたえ。舞い散る漆黒の羽根。
 
 終わりの時間は、もうすぐそこだ。
 
「さ、ムギ姐。霊送火だ」
「確と、此処に」
 
 開く紅い華。閃く剣閃。
 そして向けられる麗しき声に胡麦は応える。
 全ては貴女の望むまま。
「されば、鴉の黒を深くしてやろう」
 炎を零す盃を融かし、種火を成して掌に。呼びかけに呼応し、渦巻く炎が龍を成す。
 時には癒しを、時には劫火を贈る炎龍は、今この時は荒ぶるカミの如く、妖へと襲い掛かる。
「美しかろう、麗しかろう? ハレの魔力に煽られて、愛しこの子も飢えておる」
 焼けろ、焼けろ。
 その業諸共、醜悪な面ごと。灰も残さず、骨の髄まで――!
 
 炎に巻かれて鴉天狗が藻掻く。その身を焼かれて哀れな妖怪が叫びを上げる。
 
「――嗚呼、あゝ、紅き美し百合車。貴女に酔うにゃ酒など要らぬ」
 ほうと溜息をつきながら胡麦は謳う。
 ただ有るがままに、その在り方を魅せ付けて。
 その紅き影を追うだけでこんなにも。世界は色付いてみえるのだから。
 だからもっと、この目に魅せておくれと、彼女は声なき言葉で冴える牙を呼ぶのだ。

「あァ、魅てるコッチが洗われるねェ」
 惹き寄せられたヴァシリッサは一度、大きく息を吸った。
 焦げ付く匂いとは裏腹に、とても澄んだ清い気が全身に満ち満ちる。
 もう、鴉天狗に抵抗の力は残っていないだろうけれど。こう誘われてしまうからには駄目押しだ。
「赤と白のハレの宵。ケガレの黒はお引き取り願おうか」
 刃を構え、彼女の炎に照らされて舞うは"劔三番叟"。
 ひらりと得物を空へと投げて、手玉の様に遊ばせ身を躍らせる。
 手の中には銃と剣が合わさったような異形の武器が二つみ。舞と呼ぶには鈴も扇も足らないが、そこはどうか、とびきり美しい白炎で埋め合わせを願おうか。 
「さぁ、これがアタシ達の餞サ」
 くるりくるりと円を描き落ちる刀を手に取り、強く、大地を踏み鳴らす。
 
 流れる動作で両の腕を交差させるように刃を走らせて、そして遂に――鴉天狗の身体は大地に倒れ伏したのだった。



●千秋楽は民を撫で
 夜の帳に覆われた町の中、ぽつりぽつりと灯が灯り始める。同時にはっきりと聞こえは始める囃子の笛と太鼓の音。
 それは、祭りが再開されたという合図であった。
 鴉天狗の襲来により一度は止まってしまった宴。しかし猟兵達の活躍により被害は最小限に留まり、その後の復旧も迅速に行われた。
 手に手を取り合い壊れた屋台を片付けて、即席の代わりも用意して。時間は遅くなってしまったけれど、そうしてなんとか再び行われるまで漕ぎ付けたのだ。
 猟兵達もそれならと、今度は気兼ねなく祭りを楽しむことにする。
 気を取り直して呑み直す者、戦いの後の腹ごしらえをする者、相談しながら土産を求める者。各々が思うままに周り、町の中へと溶け込んでいく。
 被害の爪痕は確かに残っている。けれどそれを上回る活気が、町の中には溢れていた。
 
 宴は続く。人々の歓びが其処に存在する限り。
 
 酒を愉しむ笑い声はその晩、夜遅くまで町中で響き渡るのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月04日


挿絵イラスト