4
パーティホール、鳥かご、あるいは魔窟

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0




●吸血鬼からの饗宴
「お待たせしました」
 十二歳ほどの少女の目の前にミルクティーのカップが置かれた。陶器とテーブルから生じた音は鮮明に、両隣に座る両親の耳に入る。給仕したメイドは彼女に目を向けず、足早に立ち去った。
 少女は体を硬くしたまま微動だにしない。全身は健美な衣装で飾られており、包装で飾られたプレゼントボックスのようだった。その小さな背を、冷ややかな手が覆った。
「さぁ、頂いて。お菓子も遠慮せずに食べていいのよ」
 声へ向くと、母親が見せるような穏和な顔が彼女を見返していた。包み込むようなブロンドの髪は、ミルクティーの優しい色に瓜二つだ。一方で本物の母親は身悶え、震えるばかりだった。
「きっと話もたくさんしたいでしょうし……なんせ、これで今生の別れなんですもの!」
 豊満な胸に片手を添え、天井を見上げる。口から覗いた鋭い牙がシャンデリアの光を受けて輝いた。
「幸せな最愛の家族との日常は続くと思っていたのに! それは突然、残酷な運命によって引き裂かれるの! ああ、なんて悲劇なんでしょう!」
 突如始まった芝居に、他の招待客たちも一斉にヴァンパイアに注目する。丸いテーブルには必ず可愛らしい十代の娘が居て、誰もが不安や怨嗟の目を向けていた。
 がたん、と音が鳴る。耐えかねた一人の父親が、拳に怒りを込めて立ち上がったのだ。
 だが、一瞬のうちに彼の首元にステッキが突きつけられた。曲がった柄を握るのは、シックな正装を着た二足歩行の猫だ。もう片方の手でカップを持って紅茶をすすっていたが、杖の先は少しもぶれていない。男は静止し、しぶしぶ席に座る他なかった。
 敢えて気付かないふりをして無視すると、ヴァンパイアは傍らに居る少女をもう一度見た。先ほどの言葉で現状を再認識したのか、彼女は目の端から涙を流していた。滴は頬を伝って落ち、卓に敷かれたクロスに灰色の点が生じた。
 その時間、心から溢れる光悦がヴァンパイアの身体に現れていた。
 彼女はしゃがんで少女と目の高さを揃え、片手で少女の柔らかな頬をつつく。そして、半ば強引に彼女自身へと振り向かせた。
「絶望の分まで私が愛してあげるわ。永遠にね」

●グリモアベース
「ざっくり言うと、救出アンドぶっ飛ばし作戦です」
 木鳩・基(完成途上・f01075)は集合した猟兵たちへ大雑把に切り出すと、追って概要を話し始めた。
「場所はダークセイヴアー、ヴァンパイアの館ですね。館の主がかなりの数の一般人を招待して、お茶会を開きます。皆さんはそこに侵入して、派手に散らかしてやってください」
 続いて、彼女は手帳をパラパラと捲り、あるページを開いて見せる。
 そこには背に翼を持った女性と諸々の情報が書かれていた。
「館の主は『少女愛好家リリアーナ・ヒル』……二つ名の通り、美少女のハーレムを築いているヴァンパイアです。この世界のヴァンパイアの地位を利用して、女の子を集めてるみたいですね」
 茶会を開く理由について、両親との理不尽な別れに悲しむ少女らの顔を見たいからだろう、と基は断定する。俯きながらそれを話したことから察するに、予知で見た光景は趣味の良いものではなかったようだ。
「まずは館に侵入して、囚われている女の子たちをできるだけ解放してあげてください。給仕に回されている子たちはたぶん無理でしょうけど、相当な数を助けられるはずです」
 幸い、リリアーナ本人はメイン会場であるホールから移動しない。忍び込み、調査をするのは簡単だろう。
 リリアーナの魔術により、管理下にある少女たちは催眠状態に陥り、逃げ出せなくなっている。だが、当人と距離があれば呼びかけなどで即座に解除できるらしい。
 ただ、と基はそこに言葉を挟んだ。
「リリアーナの館は結構広いそうなんですよ。だから、ある程度位置や手段を限定しないと、探し切るのは厳しいかもしれません」
 加え、一定時間が経ったらホールへ移動し戦闘に備えてほしいとも付け足した。猟兵の存在がリリアーナに知られたとき、分散していては各個撃破されるだけだからだ。ならば、区切りを設けた方がリスクは少ない。
 同時に、彼女はまた手帳を捲る。
 猟兵たちに突きつけたページには、シルクハットとフォーマルスーツで着飾った、可愛らしい猫の画があった。なんとなく、ケット・シーの一種のようにも見える。
「女の子以外にも配下がいて……わざとファンシーにしてるわけじゃないですよ。見た目は可愛いですけど、予知で大の大人が抵抗できなかったのを考えると結構手練れかと」
 集団で仕えるヴァンパイアの使い魔。基はそう説明した。
「そこを乗り切ったら、あとはリリアーナだけ……と言いたいところですが、女の子の使役術を技の領域まで発展させてる相手なんです。つまり、迂闊に戦うとその子たちを傷つけてしまうかもしれないんです」
 少女たちから死傷者が出ようと、リリアーナを討伐できれば関係はない。攻撃を仕掛けてくるため、敵と見なしても構わない。
 けれど、技の主力が少女たちということは――。
「逆に考えれば、女の子を多く解放できればその分戦力を削れます」
 自信あり気に言い切ると、基は手帳をしまい、熱いまなざしで猟兵たちを凝視した。
「わざと泣かせるような愛があってたまるか、って思うんです。私も全力でサポートするので、頑張っていきましょう!」


堀戸珈琲
 どうも、掘戸珈琲です。
 こんな名前ですが紅茶派ですので、お茶会には憧れがあります。

●最終目的
 『少女愛好家『リリアーナ・ヒル』』の討伐。

●第一章について
 リリアーナの館から、できるだけ多く少女たちを救出してください。
 このパートの結果に応じて、第三章のボスの能力が変化します。
 限度は決めていないので、プレイングボーナスの大発生→【大成功】の頻発→ボスの大幅弱体化、となる可能性もあります。
 なお、オープニング執筆時点でこちらは少女の位置を確定させていません。プレイングに応じて肉付けします。具体的でも構いません。
(明確に状況に沿っていないと判断した場合のみ却下します)

 それでは、みなさまのプレイングをお待ちしています。
49




第1章 冒険 『ティータイム・ウィズ・ヴァンパイア』

POW   :    哨戒や見張りの不意を打ち昏倒させる、持ち物を奪う

SPD   :    館内を隠れながら巡り、怪しい場所や臭い、物音などを探る

WIZ   :    素性を偽り、哨戒や見張りから情報を引き出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーヴァルディ・カーライル
…ん。相手の立場に立って考えてみる
少女たちが催眠状態に陥っているなら厳重な警備は不要
宴の間、誰も来ない場所に置いておけば良いのだから…。

…茶会の会場から物理的に離れた場所
貴重品を置く場所となると……自室とか浴場とか?

…事前に小石や装備類に【常夜の鍵】を付与しておき、
可能ならば館に潜入する猟兵達にも小石を渡し使い方を説明しておく

さらに防具を改造して自身の存在感を消す呪詛を付与
小石のように目立たなくなった状態で警備の視線を見切り、隠れ潜みながら探索

…少女を見つけたら助けに来た事を告げ
【常夜の鍵】で屋敷の外の魔法陣まで転移してもらう

…それにしても、少女愛好家とは。
また妙な吸血鬼が現れたものね…


シエラ・アルバスティ
POWルート

「少女の絶望を救う為に、いざ救出!」

昔からやる事変わらないなぁと思いつつ
【クレイジー・アトモスフィア】と【ダッシュ】で駆け窓ガラスを破り館に侵入
私も似た様な事に昔なりかけたし、少女たちに感情移入とかやっぱりしてるのかな
ま、私は生まれた頃から生贄にしようとしてた親なんてどうでも良かったけど

侵入したら【目立たない】様に【迷彩】を使い館内を駆けまわる

「さぁ、あなたはどうしたい? 私があなたの望みを代行してあげる」

親に涙するとか良く分かんないけどね
理由はいつもと変わらない暇潰し
昔と違って今は食べ物とかに困ってないしね
邪魔者がいたらスピードと奇襲を生かして風を纏った【絶命槍】で始末しよう



●狩人と盗賊
 快い音とともに、窓ガラスと木製の枠が屋敷の白い廊下に飛散する。
「少女の絶望を救う為に、いざ救出!」
 昔からやること変わらないなぁ、と自分に呆れるように考えながら、シエラ・アルバスティ(自由に生きる疾風の白き人狼・f10505)は跳び蹴りの体勢を解いて着地を決める。纏った風の衣――『クレイジー・アトモスフィア』を解除すると、衣から生えた六枚の翼はさらさらと空気の中に溶けていった。
「……敵は来てないみたいね」
 床に散らばった破片を器用に避け、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)も館に侵入する。左右へと目線を投げるが、廊下の奥に気配はない。銀のウェーブヘアを揺らす風音が、破れた窓からはっきりと聞こえた。
 その静けさを崩すように、シエラがばっと拳を掲げる。
「よーし、このまま行っちゃおう!」
「……待って。少女たちの居場所について、考えがあるんだけど……」
 今にも走り出しそうな彼女をリーヴァルディは引き留め、何気なく顎に手を添えた。
「彼女たちは催眠状態にある、ってグリモア猟兵が言ってたよね。なら、逃げ出す心配がないから、警備もそれなりに甘いと思うの。……茶会の間、誰も来ない場所に居させれば良いんだし」
「じゃあ、牢屋みたいなところには居ないってことだね」
「吸血鬼にとって、少女はコレクション……つまり」
「宝石とかお金とかと一緒なわけだ。なるほど、了解!」
 にぃっと八重歯を見せて笑い、シエラは敬礼のポーズを取った。ぴこんと狼の耳が跳ねるように動いた。
「じゃ、今度こそ――」
「あ、まだ待って。これ……」
 リーヴァルディは懐から手のひらサイズの石を取り出し、シエラに握らせる。石には赤い線で魔法陣が描かれている。リーヴァルディが簡単に説明すると、シエラは何度か頷いてから、またしても敬礼をした。
「それじゃ、行ってくるね! お互い頑張ろー!」
 迷彩代わりの認識阻害魔術を衣服に施してから、シエラは駆け出していく。彼女の後姿を眺め、角を曲がって見えなくなったところでリーヴァルディも逆方向へ向いた。
「それにしても、少女愛好家か。また随分と妙な吸血鬼が現れたものね……」
 ため息を吐きつつ、自身が纏う外套に呪式を施す。呪詛の一つであり、自らの存在感を消す作用を持っている。それを改めて羽織り、物音を立てずに廊下を進んでいった。


 推測が当たったのか、リーヴァルディの進路に敵――正装の猫は少なかった。隠密行動と呪詛の併用により、避けて進むことは容易だった。
 リリアーナの自室は、それでも警備が固い箇所を辿っていけば特定できた。部屋の前で廊下のインテリアの陰に隠れ、待機。見張りに隙が生じたのを的確に見抜くと、彼女は禍々しい宝珠を構えた。
「……壊れなさい」
 弾丸として、オーブは放たれた。猫は攻撃に反応すらできず、弾丸は小さな体に食い込んだ。込められた呪詛が敵を覆いつくし、命中箇所から肉体を崩壊させていった。
 完全に消滅したのを確認し、リーヴァルディは両開きのドアを開く。
 空間は真紅の色で染められていた。カーペットの上に、天蓋付きのベッドを始めとするロココ調の家具が並ぶ。それらはことごとく、布地は赤く、木材は焦げた茶色をしていた。
 リーヴァルディは一通り見渡してからベッドに近づき、赤黒いカーテンを開く。
 髪や目の色、身長すらもばらばらな少女たち複数人が、目を開けたまま寝かされていた。彼女らの目は虚ろで、何を見るでもなく天蓋へと向けられていた。
「……起きて。あなたたちを救けにきた」
 最も手前にいた少女を優しく揺らすと、彼女はがばりと起き上がった。手を何度か開けたり閉じたりしてから状況を理解し、リーヴァルディと同様に隣で眠る娘を起こし始めた。
 その様子を認めてから、リーヴァルディは外套の袖口を確認する。何人かが催眠から解けたところで、袖に描いた印を見せた。その模様はシエラに渡した小石のものと同一だった。
「準備が済んだら、この魔法陣に触ってね。転移先の別の魔法陣から屋敷の外に出れるはず……できれば、急いで」
 声をかけながら、ベッドに寝かせていた理由を考える。リリアーナにとっては、眠るときすらも欠かせない存在なのだろうか。


 貴重品の隠し場所。盗賊として生計を立てていた時期のあるシエラからすると、それを探り当てるのは造作もないことだった。駆け回っているうちに、なんとなく建物の構造は掴めてくる。
「そこをー……右!」
 急な方向転換の直後、視界には二足歩行の猫が映る。まだこちらに気づいていないようだ。密かに口角を上げると、勢いを殺すことなく敵に突っ込んだ。
 はっとして猫がシエラへと向いたときには、強まった突風で目を開くことすら叶わなかった。
「ごめん、邪魔だよ!」
 加速の乗った精霊槍『シルフィード』が床を突き、猫を弾き飛ばす。絶大な衝撃で天井へ吹き飛ばすと、激しく叩きつけられた猫のオブリビオンはそのまま消滅した。
 ふっと息を吐いてから、シエラは槍を握った手を見た。ささやかながらも痛みを感じる。普段より力が入っていたような気がした。
「……感情移入とか、やっぱりしてるのかな」
 ふつふつと、過去の記憶が湧いてくる。子どもの頃に領主に引き渡されそうになった、あの記憶。けれど、一緒に別の嫌なものも思い浮かんだ。自分たちだけ難を逃れようとした両親の顔と、彼らの血だった。
 軽く頭を振って、シエラは仰々しい柱の間を通った。
 湿った空気が顔に貼りつく。四角く窪んだ床には排水口が見られた。現在は湯が張られていないが、ここは間違いなく浴場だ。
 勘が外れていなかったことに胸をなで下ろし、ざっと視線を送る。すると、脇に小さな姿が見えた。
 ぽんと肩に手を置くと、彼女は正気を取り戻した。
「さぁ、あなたはどうしたい? 私があなたの望みを代行してあげる」
 特に他意のない言葉だったが、それが彼女の琴線に触れたのか、わっと少女は泣き出した。
「だ、大丈夫?」
「わ、わたし……パパとママがっ……お茶会でっ……」
 泣きじゃくる彼女に、その先は求められなかった。
「どうか、あいつ……あいつを……殺してくださいっ……」
 正直、親に涙するとかはわからない。結局、ただの暇潰しだ。でも、暇潰しで彼女の気が少しでも晴れるなら、ちょうどいいかもしれない。
「わかった」
 頭をなでてから、シエラはリーヴァルディの小石の魔法陣に彼女の指先を触れさせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミルフィ・リンドブラッド
【朧月】
…無理やり従わせられている女の子達の中にはフィーと同じ年くらいの子もいるはず、です。お友達になれるかもしれない女の子を悲しませて悲劇を振りまくオブリビオンなんて放ってはおけねぇです。

女の子救出のために地下室に向かう、です。
「何故って、大体捕まってるヤツは地下室にいるからだぞ、です」

【禁忌・血流覚醒】で身体能力を上げて敵の気配を感じたら先導している、みぃに伝えてサポートしてやるです。
どうしても避けられない戦いは、みぃに術をかけてもらって透明化した状態で気絶させるです。
「ふっ、見たです?月乃、みぃ。フィーの鮮やかな意識の刈り取り方を」
「ところで月乃、その【鶏源卿】フィーも入っていいです?」


麗明・月乃
【朧月】

世の中の愛好家に謝ると良いと思うのじゃ。

みぃを先行させて後ろから付いていく。
道中でフィーが昏倒させた奴に鶏『属性攻撃』の【チキン・アゲイン】を使用。
「さあ、女の子達がいる所を教えるのじゃー!」

わからなければ『野生の勘』で探すかの。
とりあえず地下じゃな。
馬鹿は高い所が好きというし、男子と違い天才である女子は地下に行くものなのかもしれぬ。

少女達を見つけたら『全力魔法』で【鶏源卿】を使うのじゃ。
「助けにきたのじゃよー。助かる方法は簡単!なんとこの鶏の羽毛に吸い込まれるだけなのじゃ!」
…公園で遊ぶだけで逃げるわけじゃないから大丈夫じゃな。多分。
「私一人で歩くとか怖いから却下じゃ却下!歩け!」


神月・瑞姫
【朧月】

吸血鬼さん家に忍び込んで女の子を助ける
【救助活動】なの
1人は心細いけど
月乃お師匠さまとフィーおねーちゃんが
一緒だから【勇気】100倍なの

みぃは【無明新月の法】でサポートなの
【忍び足】と透明化で見張りさんに見つからないよう2人を先導
見張りさんを倒さないと進めなさそうな所は
フィーおねーちゃんを透け透けにして不意打ちで見張りさんを
ごつーん
ぴよぴよしてもらうの

目的地は地下室
フィーおねーちゃんが言うには女の子は地下に
閉じ込められるものらしいの
…みぃもそうだった気がするの
見つけた女の子はお師匠さまに鶏源郷へ案内してもらうの
羽に人を吸い込むすごい術なの
これでたくさん助けられるの
みぃも入ってみたいの



●吸血鬼屋敷探検隊
「まったく、変な奴もおったもんじゃのう。世の中の愛好家に謝るといいと思うのじゃ」
 不満を見える形で顔に浮かべ、麗明・月乃(夜明けを告げる金狐・f10306)はまた一歩、足を踏み出す。彼女に対し、ミルフィ・リンドブラッド(ちみっこい力持ち・f07740)が隣でこくりと頷いた。
「……女の子たちの中には、フィーと同じ年くらいの子もいるはずです。お友達になれるかもしれない子を悲しませる奴を放ってはおけねぇです」
 荒い口調に比べ、表情は無そのものだ。ただ代わりに、赤い瞳がめらめらと燃えるように輝いた。
「ところで、月乃お師匠さま、フィーおねーちゃん。女の子たちとはどこに行けば会えるの?」
 彼女たちの少し前から声がした。その発生源は一見何もないように見えたが、決して幻聴ではない。声は、『無明新月の法』を発動して透明化している神月・瑞姫(神月の狐巫女・f06739)のものだ。
 前方への警戒心から、狐の耳がぴくぴく動く。怖くないわけではないが、それでも後ろに控える彼女らがいるのはとても心強かった。
 そんな瑞姫から小声気味の問いが発せられて数秒。ミルフィと月乃はうーんと腕組みをして、それから瑞姫へと顔を向けた。
「地下です」
「うむ、地下じゃな」
「どうして地下ってわかったの?」
 当然浮かび上がるであろう疑問に、ミルフィはクールな表情で返す。
「どうしてって、捕まってる奴はだいたい地下室にいるからだぞ、です」
「な、なるほど……?」
 言い換えるなら、お約束。しかしそれでも納得できていない瑞姫に、月乃が捕捉を加える。
「ほれ、バカは高いところが好きというじゃろ? そんで、幼い男というのはほとんどバカじゃ。比べ、女の子というのはお淑やか。天の逆は地、つまり女の子は地下におるというのも一理ある」
「……その理屈、ホントに一理あるのです?」
「百理を賭けてもよいぞ!」
 若干騒がしくなる二人をよそに、瑞姫は以前の自分を回想する。
「そういえば……みぃもそうだった気がするの」
 廃墟と化した村落の屋敷の、さらにその奥底。薄暗く、外とは断絶された空間。あの中に居続けるのは、楽しいことではない。そう考えると、心の中でより一層、助けたいという思いが強まった気がした。
「みぃ!」
 ミルフィに呼ばれ、瑞姫は我に返る。振り返ってみると、やはり彼女の表情に大きな変化は見られない。ただどことなく、殺気めいたものを発しているように思えた。
「この先……居やがるです」
 そう言われて、瑞姫は一応壁に身体をくっつけ、曲がり角の先を伺った。
 一本道の通路に、礼儀正しそうな服装をした猫がきりっと立っている。とりわけ真面目な個体なのか、見張りとして隙らしいものは見当たらない。
「たしかに、敵の猫さんが居るの……」
「先はここ以外ないしのう……今更引き返しても、何があるかわからんぞ」
 行き詰まりの雰囲気を感じ取ったのか、ミルフィが曲がり角に近づくように前へ躍り出た。
「ここはフィーの出番ですね。みぃ、頼むです」
「わかったの」
 頷くと同時に、瑞姫は『無明新月の法』を発動。すると、ミルフィの姿は末端から透け始め、あっという間にそこから実体が消えてしまった。
「相変わらず、大した術じゃ」
 月乃の反応から準備が完了したことを察すると、ミルフィは角を折れて直進する。視界に入るだろう距離に進入しても、猫は彼女の存在に気づかない。無表情を保ったまま、彼女の背後を取った。
「眠りやがれです」
 直後、猫の首筋にガントレットらしき物体で覆われた腕が振り下ろされる。鈍い音が響き、猫は前のめりに倒れた。
 瑞姫の術を自ら解き、ミルフィの姿が現れる。やはり顔つきに変化は見られなかったが、姿勢は当身を決めたポーズで固まっていた。
「ふっ、見たです? 月乃、みぃ。フィーの鮮やかな意識の刈り取り方を」
「……やっぱりフィーおねーちゃんはすごいの!」
「うむ、いい腕じゃ。だが、私も負けてはおらんぞ!」
 パチパチと小さな拍手の音が鳴る一方、月乃は角を曲がり、堂々とミルフィの前に仁王立ちした。そして、床に転がっている紳士服を着た猫を一瞥する。
「案内ならこの館の者にさせれば良かったのじゃ。私たちは客じゃからのう」
 ふふんと策が有るふうに話してから、彼女は猫に向き合うようにして立った。
「最期の一鳴き聞かせてもらおうか! 『チキン・アゲイン』!」
 そう叫ぶと、猫を包み込むようにして、真っ白な羽毛が現れた。やがて羽毛はぎゅっと猫を覆って宙へと浮かび、ぐるぐると回転を始める。玉みたく見える羽毛の塊は、突然ぴたりと急停止して落下。ぱかっと割れると、中からはちょうど猫と同じサイズの鶏が飛び出した。
「さあ、女の子達がいる所を教えるのじゃー!」
 コケーッ! と威勢のいい鳴き声の後、鶏はすたすたと廊下を歩き始めた。
「ほれ、後に続くぞ!」
「みぃ、引き続き先導は任せるです」
「了解なの! ……でも、みぃの前はにわとりさんが歩くから、前を歩かなくても――」
「あのにわとりは先導の先導じゃ。関係なく、前の順番はキープしておくべきじゃしのう」
 こうして一行は鶏を先頭にして、足を止めずに屋敷を進んでいった――。

「なぁ、本当にここかー!? こんなところにおるとは思わんのじゃが……」
「でも、確かに階段は降りたです。じきに着くはずです」
「敵さんたちはいないみたいなの。……不思議なの」
 敵に遭遇せず、彼女らは無事に地下へと辿り着いていた。階段を降り、いくつかの倉庫らしい部屋を過ぎた。だが、鶏は未だに冷たそうな石の道を歩いていた。地下の廊下を照らすのは、月乃と瑞姫の狐火だけだ。
 三人の先頭を歩く瑞姫は、疲れが溜まる一方だと判断して透明化を解き、鶏を追うのに集中していた。すると、鶏がふと足を止めた。顔を上げると、小部屋のような空間に辿り着いたことを知った。
 仄暗い闇の中に、箱が積み重なるように置かれていた。三人は互いに顔を見合わせてから、狐火ごと箱へと近づいた。
 箱は一面だけが柵のようになっていて、隙間から内部を覗くことができた。中に閉じ込められていたのは、窮屈そうに座る少女たちだった。
「お仕置き部屋、ですかね」
「それにしても、ちょっと思ってた感じと違うのう……」
「すぐに助けてあげないと……! 月乃お師匠さま!」
「うむ、任せるのじゃ!」
 月乃は手のひらに力を込める。ふわりと風が渦巻き、どこからともなく柔らかそうな鶏の羽毛が彼女の手に舞い起こった。時間が経つにつれ、ふわふわな羽毛は手から溢れ出る。
「おーい、私たちは助けにきたのじゃよー。助かる方法は簡単! なんとこの鶏の羽毛に吸い込まれるだけなのじゃ!」
 ふうっと羽毛を吹き、檻へと飛ばす。一人の少女が檻から手を伸ばし、それに触れた。一瞬のうちに彼女は羽に吸い込まれ、檻の中から消失した。
「安心せい。行先はにわとりとひよこでいっぱいの公園じゃ。存分に癒されるがよいぞ!」
 その言葉の効果か、少女たちは次々と羽に触れ、瞬く間にいなくなった。がらんどうの檻だけが残され、地下室はより空虚になった。
「ところで月乃。その鶏源卿、フィーも入っていいです?」
「……みぃも入ってみたいの」
 案内役の鶏を抱き、ミルフィは尋ねる。そこに瑞姫も加わり、鶏をなでながら聞いた。
 月乃は部屋の入口を見た。狐火があるとはいえ、この地下は暗く、冷たく、なにより寂しい。
「私一人で歩くとか怖いから却下じゃ却下! 歩け!」
 二人の残念そうな声が上がった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

雛菊・璃奈
【SPD】

少女愛好家…相変わらず、他人をモノみたいに扱うオブリビオンが多いね…。
絶対に助け出して見せる…。

とりあえず、隠れながら館内の情報を収集…。
催眠でメイドにされてる子とかもいるみたいだし、一応、メイド服調達して偽装しながら隠密行動…。
まずは館の大まかな構造を把握したいかな…。
愛好家というくらいだし、催眠で管理したりしてる以上、変に牢屋みたいなところに監禁したりもしてないはず…。逃げる意思も持てないわけだし…。
軟禁してる管理区画みたいなのが無いか情報を収集し、囚われてる子達の解放に急ぐよ…。
一応、声かけ等で解除するけど、場合によっては呪詛で催眠を解除する等も試みる…。

※アドリブ歓迎


アウレリア・ウィスタリア
少女が給仕をしているのですよね
ならボクは変装して忍び込みましょう
最初は給仕の少女について歩きその仕事の様子を確認します
不自然でない程度にパフォーマンスを把握したら
少女を正気に戻していきましょう
彼女らが抜けた穴はボクと【合わせ鏡の境界】で呼び出した
もう一人のボクで埋めて、周囲に少女らの脱走を悟られないように気を付けます
こんな感じで救出した少女らから他の少女の居場所を確認しつつ
給仕の仕事もこなしつつ救出作戦を進めていきましょう

同様に潜入した猟兵がいれば互いに協力していきます
あ、変装に際してさすがに仮面は外しておきますね

情報をくれそうな見張り等を第六感で感じれば
そちらから情報も得ますね

アドリブ歓迎



●無口な二人とメイドの少女
 ホールの中では、数人の少女が給仕係として立ち回っていた。お茶のお代わりを注いだり、軽食を補充したり、ときにはリリアーナの玩具として侍らされたり……。それは単にリリアーナを支えるだけでなく、これからの自らの運命を収集した少女たちへ見せつける役割も果たしているように思えた。
「相変わらず、他人をモノみたいに扱うオブリビオンが多いね……。絶対に、助け出してみせる……」
 一台のキッチンワゴンの後ろに立ち、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)はメイン会場であるホール内の様子を伺っていた。この世界のメイドとして違和感のないゴシックスタイルの衣装を身に着け、傍目からではコレクションの一つのように見える。
 アウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)も彼女と同様、黒の面積が多いメイド服を着て観察に徹していた。日頃している黒猫の仮面を外し、素顔を露わにしている。
 彼女の観察対象もまた、給仕係だ。ここに自らの分身を少女と成り代わらせる予定だった――が、予定変更。ホール内はリリアーナと接触する機会が予想以上に多い。少女を溺愛する館の主であるなら見知らぬ新入りに違和を覚えるだろうし、なによりオブリビオンの能力として猟兵であることを看破されかねない。
 ただし、成り代われそうな人員がいないわけではない。
「来ましたね」
 ふらりと一人の少女がキッチンワゴンに近寄り、トレイにある空いたポットや小皿をそこへ乗せた。彼女はそのままワゴンのハンドルを掴み、押して運んでいく。
 厨房とホールとをつなぐ運搬係。ホール担当が兼ねる場合もあるが、観察の限り、この屋敷では別々の受け持ちになっているようだ。
 二人は視線を合わせてから頷き、ゆっくりと進むワゴンの後を追った。
 ホールから離れたところで、璃奈が歩速を早め、メイド少女の肩を掴んで後ろに引いた。
 ぐらっと体が揺れ、彼女はバランスを崩して大きく尻もちを着いた。尻をさするのと同時に、顔を触って落ち着きのない動きを取る。痛みと意識が取り戻せたことを一度に驚いているようだ。
「大丈夫……?」
「は、はい……あの、ありがとうございます。あなたたちは……?」
「ボクたちは猟兵です。あなたたちを解放しに来たんです」
 それを聞くとまた狼狽えた様子を見せ、静かに頭を下げた。けれど、ひょこっと顔を上げて彼女は聞き返した。
「でも、私、いま仕事中みたいですし、抜けたらバレるんじゃ……」
「それは問題ありませんよ」
 そう言うと、アウレリアは璃奈とメイドの少女から距離を取った。
「無限に続く境界線。合わせ鏡のその先、光さえ辿り着けない場所より、その姿を顕現せよ」
 詠唱の後、二枚の鏡が現れる。一枚には一方の鏡が投影され、また一枚にも鏡が映し出されている。二枚の鏡は向き合っており、不吉な合わせ鏡の位置関係を形成していた。
 両の鏡は無限に続く。その両者の奥で、不気味な黒い影が姿を見せた。それは現実に向かって歩き出し、数秒足らずで人間サイズの大きさに近づいていく。直後、パリンと鏡に亀裂が入って砕ける。二枚の鏡は消え、代わりに『合わせ鏡のアウレリア』が彼女と同じメイド服を着て立っていた。
「これを身代わりにします。アナタは行っても大丈夫ですよ」
「あ、ありがとうございます……!」
 『合わせ鏡のアウレリア』がワゴンを押していくのを横目に、メイドの少女はまた深々と頭を下げた。
 そこへ、璃奈が話題を切り出す。
「ねぇ、お礼を求めるわけじゃないんだけどさ……。できれば、あなたたちが寝起きしてる部屋が知りたいの……」
「私たちの部屋、ですか?」
 こくりと頷くと、彼女はぼんやりとした表情のまま、俯いて話した。
「たぶん、あなたたちって結構数がいるんでしょ? だとしたら、どこかに一括して管理してる『区画』みたいなものがあるんじゃないかなって……」
「区画、区画ですか……。薄いことしか思い出せないですね……」
 腕組みをしてしばらく考えたが、最後に彼女は観念したかのようにぎゅっと目をつむった。
「どこかを歩いたって感覚なら残ってます。それを案内するのでも、いいですか?」
「それはいいけど……」
「アナタが危険じゃないんですか?」
「いえ、こうして助けてもらったこと自体が奇跡ですから。それに、私だけ助かるのもずるいですし……」
 微笑を浮かべてから、メイドの少女は勝手に白い廊下を歩き始めた。どのみち、放ってはおけない。二人は無言で彼女を追跡した。

 ぶつぶつと呟きながら進んでいた彼女の足が、初めてぴたりと止まった。
「あ……見張り……あの猫がいます」
 それに反応して、アウレリアは軽く身を覗かせて曲がった先を見た。確かに、あの猫の使い魔が向こうに立っている。
「一匹ですね。どうします、璃奈さん」
 アウレリアが特に感情を表出させずに言う。璃奈の返答に時間はかからなかった。
「突っ切ってもいいんじゃないかな……」
「本当にいいんですか!?」
「たぶん、問題ないと思うよ……」
 引き留める彼女を無視して、璃奈とアウレリアは廊下へと躍り出た。
 そのとき、猫と彼女らは一直線上に並んだ。
 不審な人物を捉えた猫は、目を細めてそれを凝視する。メイド服を着ているから主人のコレクションだろうかなどと、少々考えを巡らせる。そのうちに正体を知ると、驚きを噛み殺しながら、即座に手持ちのステッキを構えた。
「あなたたち、猟へ――」
 言葉を言い切らないうちに、アウレリアの弾丸が身体を貫いた。ヤドリギの精霊が込められたそれは、魔を食い破る。その弾丸が連続して命中し、身動きは取れなくなっていた。
「気づくのが遅すぎましたね」
「ま、まだ――」
「もう、時間はないよ……」
 覆い被さるようにして、璃奈の妖刀が振り下ろされた。全身を通して一本の線を入れるような、真正面からの剣戟。呪力を解き放つまでもなく、単純な一撃ですべて終わった。間合いを一気に詰め、メイド服のスカートがその余風ではためいた。
 彼女らはオブリビオンが消滅したのを確認すると、くるっとメイド少女へ向いた。
「行きましょう」
「結構、急いでるから……」
「は、はい、わかりました……!」

 この後、『区画』内には到着し、その中で眠らされていた少女たちの救出には成功した。
 猟兵たちからはなんてことのない闘いも、メイドの彼女には輝かしいものに思えただろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジャハル・アルムリフ
…目の前で奪う心算か
実に不愉快な茶会だ

隠密行動は得手ではないが
暗がりや物陰を使い、哨戒へと近付く
あと少しになれば一気に駆けて距離を詰め
複数なら先ずは一人を蹴倒し昏倒
一人なら怪力を利用し
口を塞ぎ、組み伏せて動きを封じる

殺気を滲ませ問う
娘達は何処へ隠した?
答えぬなら、このまま砕いてくれるが

※哨戒が普通の人間ならば殺さず失神させるに留め
もし尋問中に別の者に見つかるか
もう一人と距離があり邪魔な場合
【星の仔】を使い頭上に石を落とすなど
死なぬ程度の対処を

脅しに有効なら
哨戒の持ち物や、石の一つでも砕き見せつけて

途中、怪しい通路や警備の厚い部分などあれば
第六感も頼り調べる
また近くの他猟兵との協力、連携も意識



●時計は殺意を伝える
 哨戒担当の猫の使い魔がステッキを片手に歩いていた。コツコツという硬い音が、白い廊下にこだまする。
 ふと、背後を振り返る。これまで歩いてきた床、先ほど通り過ぎたホールクロックなどが目に映った。胸騒ぎはするが異常はない。また前へ向き、次の一歩を踏み出した。
 その瞬間、首筋を痺れるような痛みが走る。同時に体は宙に浮かび、乱雑に壁へと叩きつけられた。首を万力を超える力で掴まれ、宙吊りにされた上で壁に押しつけられたのだと理解するには、少々時間を必要とした。
「親の目の前で子を奪う不愉快な茶会を開いておいて、よく悠々と歩けたものだな」
 ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)の低い声が染み入る。ぶるっと猫の全身の毛が逆立った。人相すら把握が許されない姿勢だったが、殺気に満ちていることは声が十二分に伝えていた。
「あ、あなた、まさか――」
「貴様に質問の権限はない」
 抵抗して手足を暴れさせる猫を強引に押さえ、力は維持。僅かに目を細め、彼は切り出した。
「娘たちを何処へ隠した?」
 ぴたりと抵抗を止めたが、猫は何も返さなかった。
 このまま黙秘されても面倒だ。両目を閉じたジャハルは空いている腕を猫の上着のポケットに忍ばせ、そこから銀色の懐中時計を引き抜いた。
 片の手のひらに載った時計を、ガラス細工を包み持つみたく順番に指を折って握る。力を入れたのは僅かな間だけだった。軋む音が静かに起こった。
 猫を掴む力を緩めてやると、猫の首は自ずと彼へ向いた。その状態で再度固定し、片手を視線上に来るよう掲げる。
 握った手を開く。割れた皿のように砕けた蓋と時計盤、それらの亀裂の隙間から零れた部品。猫はその同一線上に、ジャハルの冷淡な眸を見た。
「答えぬなら、このまま砕いてくれるが」
 やはり、声は冷め切っていた。
 そのとき、廊下の端――猫が歩いて来た方向で音がした。
「な、何をしているんだ!?」
 ジャハルはそちらを一瞥する。別個体と思わしき猫が、驚きを隠しもせずに立ち尽くしていた。
「曲者……しかも、猟兵か!」
 猫はくるりとステッキを回転させて体の前方に構え、ジャハルに向かって突撃。敵を認識したジャハルは、ガラクタになった時計を払ってから、攻撃態勢にある猫に腕を向けた。
「焦り過ぎだ」
 彼がそう呟いたのは、猫がホールクロックを通過しようとした瞬間だ。同刻、ホールクロックは猫に被さるように倒れかかった。まるで自律意思を持ったかのようだった。突然の出来事に対応できない猫は短い悲鳴とともに下敷きになり、ぴくりとも動かなくなった。
 ホールクロックに被さっていた埃に足跡が残る。その主は、透明な翅を持つ蜥蜴だ。またそれは、重厚な柱状の時計を倒した張本人でもあった。
 ジャハルは、唖然としている猫の耳元で囁いた。
「三度目は聞かない。……娘たちを何処へ隠した?」
 数秒だけ吃音が続いた後で、猫は大急ぎで口を動かした。
「み、右でございます! この廊下を右に折れると遊戯室で、確かそこにも少女が確保されていたはず――」
 そこまで言うと、猫は突然解放された。しかし、それも束の間、真横から猛烈な足蹴が炸裂する。一連の現象を理解しないまま、猫は倒れたホールクロックまで弾き飛ばされる。そして頭をそこでぶつけ、単発の鳴き声を吐いて気を失った。
「さて、急がねばな」
 昏倒した猫たちに目もくれず、ジャハルは少女救出のために歩を進めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『ジェントルにゃんこ』

POW   :    ステッキ護身術
【華麗なるステッキ捌き】による素早い一撃を放つ。また、【帽子を取る】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    買収小切手
【小切手】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ノブレス・オブリージュ
自身の【紳士的な立ち居振る舞い】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●饗宴の終わり
「……なんだか、騒がしいわね」
 パーティホールにて、リリアーナは視線をぐるりと巡らせた。会場は猫の音楽隊の演奏で満たされ、外の雑音が入る隙間はない。けれど、彼女は自らの屋敷の異変を感じ取っていた。
 そもそも、ヴァンパイアの館で不逞の輩が暴れようものなら、その者は無事では済まない。使い魔の手により排除される手筈だ。館の主が警戒などする意味がない――普段ならば。このときばかりは、感知した胸騒ぎが増幅していくのが非常に気掛かりだった。
 その不安の的中は、ドアの破壊という形でリリアーナに知らされることとなった。
 ホールにつながるドアが粉砕され、猟兵たちは颯爽とホール内へ侵入する。同じタイミングで、テラスへと出るガラス戸が開いた。
「みんな、助かるよ! 早く逃げよう!」
 戸を開いたのは、先に外へと脱出していた少女だった。猟兵の計らいにより助け出された給仕役らしく、メイド服を着用していた。他にも、救出された有志の者がテラスに集っているようだ。
 彼女の声を聞いて、卓に着いていた一人の少女が駆け出した。それがきっかけとなり、茶会に集められていた客人たちは次々と逃走を図った。
「止めなさい!」
 リリアーナの命により、ホールに居る猫たちは退避する人々を狙って飛び出した。しかし、それは猟兵たちにより阻まれる。その間にも、客人たちは魔窟からの脱出を果たしていく。
 大多数の客人が逃げ出したところで、猫たちの顔に焦りの色が浮かんだ。
「……集合!」
 猫の一匹が短く発し、猫たちはホールの中央に一群となる。
 先頭に立つ個体はハットを取り、礼儀正しくお辞儀をした。
「これはこれは、猟兵のみなさま……。リリアーナ様のお屋敷にようこそ御出でくださいました。大したもてなしもできず、すみません」
 定型句じみた言葉の後、微笑。いつの間にかホールの二階に転移したリリアーナの機嫌を伺いながら、猫は吟味するように猟兵を見た。
「見れば、リリアーナ様のお気に召しそうな御方もいらっしゃいますね……。どうでしょう、御寵愛を受けるおつもりはありませんか? またそうでない方も、我が館の働き手となるには十分な素質がおありだと思います」
 だが、猟兵たちは武器を構えるのを止めない。館に散らばった仲間が後方に集合完了したのを確認してから、猫はハットを被り直す。
「拒絶いたしますか。……同胞が消えた気配が先ほどからしておりましたが、やはりあなた方の仕業ですね」
 カツン、と杖を打つ音が床で鳴った。
「すぐに片付ければ、少女たちも取り戻せましょう。そのためにも……まずはあなた方に、ご退去を願います」
 黒の紳士服で飾った猫たちが優雅なるパーティホールに散開していく。
 その様子を、リリアーナは笑みを浮かべて眺めた。
リーヴァルディ・カーライル
…ん。招待客を巻き込む訳にはいけない。
多少、強引にでも奴らの注目を集めないと…。

…改造した防具の魔力を反転し自身の猟兵としての存在感を強化。
オブリビオンの注目を集める誘惑の魔力を付与して挑発。
敵の攻撃を引き寄せ一般人の脱出を支援する。

…この期に及んで自ら前に出て来ないなんて…。
お前達の主は、どうやら底無しの愚物のようね。

第六感を頼りに敵の攻撃を見切り回避優先で行動。
大鎌をなぎ払い武器で受け、ダメージを軽減する。

…避難が済めば【限定解放・血の波濤】で反撃。
吸血鬼化した怪力任せに大鎌を振るい生命力を吸収する呪詛の波動を放つ。
その後、魔力を溜めた呪いを爆発させて傷口を抉る2回攻撃で仕留める。


ジャハル・アルムリフ
さっきの獣か
大人しく丸くなっていれば良いものを

逃げ遅れたものがまだ近くに居れば
猫たちが近付くのを遮る位置へと

…仕える主なら間に合っているのでな

小さい体で
ちょろちょろと逃げ回られては鬱陶しい
先ずは一匹へと【怨鎖】を放ち
繋いだ鎖でその一体の動きを戒め
鎖自体と、更に振り回してやる事で他の個体も妨害
他猟兵が狙いを定めやすく、攻撃され難くなる様

攻撃を避けられない時は
防御を固め、耐えながらの反撃を
吹き飛ばして他の猫にぶつける事で足止めも行う

落とした帽子くらいは返しておく
紳士の嗜みとやらなのだろう


戦場眺める『観客』を見据える
良い報告を持って帰らねばならぬ故な



●防衛線を守れ
 敵と対峙した猟兵たちの背後では、依然として避難誘導が行われていた。
「みんな、落ち着いて! あの人たちが守ってくれるから!」
 かつてコレクションだった少女の一人が叫ぶ。既に大勢が屋敷の外へ脱出しているが、全員ではない。主体としてかき集められた中には子どもや年老いた老夫婦も多い。突然の事態に足が強張る者もいて、順調とは言い難かった。
 影の群れが彼女たちを追う。壁となった猟兵たちの脇をすり抜けた猫たちだ。こちらもほとんどの個体は猟兵への対処に当たっているが、一部が執拗に客人を狙っていた。
 そのとき、一人の少女の足がもつれ、床にすっ転んだ。親が駆け寄るより早く、帽子のない猫が空中でステッキを構えた。
「逃がしません……絶対に!」
 杖の先端を少女に向け、弾き出されたように急降下。少女は大きく目を見開いてから、ぎゅっと目を瞑った。
 しかし、数秒しても衝撃は来ない。おそるおそる薄目になると、目の前に一人の男が立っているのが見えた。彼はステッキを掴み、受け止めていた。
「さっきの獣か。大人しく丸くなっていれば良いものを」
「ちぃっ……またあなたですか!」
「悪いが、何度でも邪魔立てさせてもらうぞ」
 粗雑に吐き捨て、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は腕を振り、猫を払う。投げ出された猫は宙で姿勢を整え、着地してから頭を押さえた。時計にぶつけた痛みがぶり返したのだった。
 少女はしばらくジャハルに見惚れていたが、次第に自分が別の方を向いているのに気付く。視線の先では、自分と歳が少ししか違わなさそうな少女が慄然と直立している。彼女にも次々と猫が飛びかかっているが、冷めた表情で躱し続けていた。
 何の前触れもなく、彼女が横目でこちらを見た。凍るような感覚が少女を包んだ。
「……早く行きなさい」
 はっとなった少女は急いで立ち上がり、両親と一緒に出口に駆けていった。
 それを確認し、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はまた正面を見やる。大鎌を握り直すと、猫の群れへと口を開く。
「……これだけ居て、まともに当てられないの?」
 煽られ、猫たちは再度彼女へと構え直した。
 礼装と外套に刻まれた魔力を反転し、戦場における存在感は増している。そこへ誘惑の魔力も付与し、視線を一身に受ける。加え、挑発。これが思いの外、効いているらしい。
 これらで敵からの注意を稼ぎ、一般人が攻撃される可能性は大幅に減少した。あとは避難が完了するまで粘るだけだ。
「それにしても……この期に及んで自ら前に出て来ないなんて。お前達のたちは、どうやら底無しの愚物のようね……!」
「リリアーナ様を侮蔑するなああっ!」
 絶叫とともに一体の猫が飛び出す。刀みたくステッキを持ち、リーヴァルディとの距離を詰めようとする。
 主人を貶された怒りで何も見えていなかったのだろうか。赤黒いシャボン玉のような球が放たれていたのを、猫は察知できなかった。それはぱちんと猫の毛で弾け、瞬時に猫を炎が覆う。閃光が輝き、爆音がパーティホールに鳴り渡った。
「鎖せ」
 ジャハルが呟くと、気絶した猫と自身の間に輪が渦巻いて形成されていく。血管に似た輪はそれら同士で複数個連結し、一本の鎖となる。鎖もまた赤黒く、血液そのもので編まれたものだった。
 鎖の一端を掴んで腕に巻きながら、彼は尋ねた。
「援護しよう。その状態で持ち堪えられるのか?」
「……最初から、そのつもりでやっている」
 ジャハルが何かを返す暇もなく、リーヴァルディに猫の攻撃が飛来する。
 すかさずジャハルは鎖を大きく振り回した。突撃した何体かが薙ぎ倒され、放たれた小切手も床へと落ちる。空中で鎖が猫に絡みついたならば強く引き、数体をまとめて縛り上げてから地面に叩きつけた。
 鎖を掻い潜った個体がいないわけではない。先ほどまで十数体からの攻撃を捌いていたリーヴァルディには問題にならないだけだ。振り下ろされたステッキを大鎌で受け、上へと払う。平衡を崩した猫に蹴りを入れ、無理やり後方まで吹き飛ばす。
 けれど、決定打にはなっていない。猫は起き上がり、こちらへと向かってくる。この防衛線すらも越えようとする個体に注意しながら、二人は客人たちがいなくなるのを待った。

 少し経った頃だった。若い女の声が耳に届いた。歓喜と心配が混ざっていた。
「みんな抜け出せました! あとはお願いします!」
 ふと周囲を見渡すと、猟兵を除き人影は見当たらない。
「もう、気にしなくてもいいよね……」
 リーヴァルディはふうっと大きく息を吐き、それから言葉を口にした。
「……限定解放」
 色白い肌がより白へと近づいていく。一時的に吸血鬼へと変貌した彼女は、刃が地面と水平になるように大鎌を持った。
「薙ぎ払え、血の波濤……!」
 力任せに得物を振るう。風が切れる音が舞い起こった。
 同時に刃からは鈍い血の色をした曲線が生じる。それは途切れることなく半円状に広がり、彼女を取り囲んでいた猫たちに認識の隙もなく命中する。体に線を受けた猫は新しい傷がぱっくりと開き、どす黒い液体が流出していく。発生した線とは、生命力を吸収する呪詛の波動だった。
 攻撃は続く。やがて傷は拡張し、膨れ上がる。呪詛に刻まれた魔力が風船みたく弾ける瞬間、爆発を引き起こした。
 十分に疲弊していた猫たちは爆破に耐えられなかったのか、これで消滅してしまったようだ。変身の解けたリーヴァルディが見渡すが、もう姿は見えない。
 彼女が他の猟兵たちと合流しようと歩き出したとき、茶会テーブルの陰に隠れていた帽子のない猫が飛び出した。不意を突く形での攻撃は、結局妨げられることとなった。
「それはお前たちのやり方に反するんじゃないのか?」
 横入りするようにして、ジャハルは猫を掴んで床に叩きつける。
 そのままトドメを刺そうとしたところで、猫は何かを喋った。
「あ、あの! リリアーナ様にお仕えしませんか! 今からでも遅くないですよ! 絶対に勝てませんから!」
 命乞いだとしても別の文句があるだろう、と忠義心の強い使い魔を哀しく眺め、彼は懐を探った。
「……仕える主なら間に合っているのでな」
 言い終わると同時に、ぱさりと猫に物を落とす。先ほど会敵したときに拾った猫の帽子だ。猫は視界を奪われ、僅かに暴れた。
「紳士の嗜みとやらなのだろう? 返しておくぞ、死に際ぐらいはな」
 待ったも言わせないうちに、短剣の刃が猫を貫いた。猫は霧散し、空気の中へと消えた。
 事が済むと、ジャハルは二階の『観客』――リリアーナを見据える。彼女は未だ、どこか楽し気に微笑んでいる。それを気味悪く感じながら、彼はまた戦場へと目を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミルフィ・リンドブラッド
【朧月】
…猫可愛いです。ボコボコにしたあとこっそり一匹くらいもっていってもバレねぇはずです…(小声)「さぁ猫たち、選ばせてやるです。フィーのペットになるか性悪吸血鬼の元についてぶっ飛ばされるか…。フィーのペットになれば3食昼寝付きを約束してやるです」
まぁ誘いにはのらねぇでしょう

【身体強化・吸血鬼】を使って防御力を強化。
血液の結界を張り巡らせて、「天竜砕き」を盾に『怪力+武器受け+オーラ防御+かばう』で後衛の月乃やみぃへの攻撃を防いでやるです
余裕があれば相槌による「カウンター」を狙って猫を気絶させるです

「…猫の方が可愛いです。冗談は鶏だけにしろです月乃」
「相変わらずシエラの動きは速すぎるです…」


麗明・月乃
【朧月】

こやつらもリリアーナの趣味なのじゃろうか…。
で、あれば是非とも台無しにしたいものじゃの。

「紳士である事を利用してユベコを発動する…みぃの将来はたくましくなりそうじゃのう」
鶏『属性攻撃』の【チキン・アゲイン】を『全力魔法』で使い『範囲攻撃』で倒れた猫を鶏に変える。
「鶏パラダイスで我慢しろなのじゃ。夢には妥協も必要なのじゃよ」
「鶏も冗談ではないのじゃ!気まぐれな猫より一生懸命頑張る鶏の方が愛らしいじゃろう!」
シエラに適当言いつつ立ってる猫に鶏をまとわりつかせるのじゃ。
帽子の上に座らせたら脱げまいて…!

倒れた奴はどんどん鶏に変えていく。
くくく、リリアーナの顔が見ものじゃのう。


シエラ・アルバスティ
【朧月】

「きょ、拒絶!? ま、待って……! 考えさせて……!」

精霊槍『シルフィード』を敵の後ろに放り投げ

「なんちゃって~☆」

精霊槍の機能で私の元へと戻って来させるついでに敵を攻撃

「猫パラダイスと幼女は確かに私の夢! しかし! 今ここに幼女でありながら猫であるみぃちゃんが味方…この意味がわかるかな!?」(どや顔

そう、私の神はここに!
ってえぇ! 何つきのんは猫たちを鶏にしようとしてるの!? 私より酷い!
くっ…なんて試練、まぁあの術は時間で元に戻るし猫たちには一端気絶してもらお
【クレイジーアトモスフィア】から【ダッシュ】【迷彩】で翻弄し『雷糸』や打撃で気絶狙い

!? みぃちゃんが猫じゃ…無い? そんな


神月・瑞姫
【朧月】
呼称
シエラおねーちゃん
フィーおねーちゃん
お師匠さま

みぃ知ってるの
紳士さんは優しいから、れでぃふぁーすとって言って
先に動かせてくれるの
みぃのお願い、聞いて欲しいの
紳士さんの強いとこ見てみたいの
わーい、ありがとなの
えいっ【神月封縛符】
(【動物と話す】を使って猫の使い魔と会話
【世界知識】で知る紳士の行動を語り
ノブレス・オブリージュの使用を【誘惑】で促す
しかし、それは彼女の罠
【破魔】力を込めた大量の【手作りのお札】が
猫達の動きとUCを封印する

う?シエラおねーちゃん
みぃは猫じゃないの
狐なの

…と、みぃが縛って【時間稼ぎ】してる間に早く倒すの!
きゃー、お師匠さまの可愛いニワトリさんがいっぱいなの♪



●猫鶏合戦
 時間は戦闘開始直後に遡る。
「きょ、拒絶!? ま、待って……! 考えさせて……!」
 猟兵を退けんとする猫たちを前に声を上げたシエラ・アルバスティ(自由に生きる疾風の白き人狼・f10505)は次の瞬間、得物である精霊槍『シルフィード』を思い切り投擲した。『シルフィード』は猫たちの頭の上を放物線を描いて通り、勢いのままに壁に突き刺さった。
「これだけ数がいたら、適う気がしないんだよねー……」
「ほう。つまりは降伏ですかな?」
「まぁ……うん! ほら、武器も捨てたし!」
 どこかぎこちなく頷いた彼女は、同志を求めるかのように辺りを見渡した。
「みぃちゃんもそう思うよね?」
 神月・瑞姫(神月の狐巫女・f06739)は少し考えてからこくりと頷いた。薙刀を取り落とし、リーダーと思われる猫の前に進み出る。
 堂々としたやり取りに、仲間の猟兵の一人が引き留めようと足を踏み出した。だが、ミルフィ・リンドブラッド(ちいさな壁・f07740)と麗明・月乃(夜明けを告げる金狐・f10306)がそれをなだめた。
「何か考えがあるに決まってるです。黙って見てるといいです」
「まぁ確かにわからんでもないが、見ておるのじゃ。……簡単に寝返る弟子ではないわい」
 そのうちに、瑞姫は猫の眼前に立った。数秒だけ目を泳がせ、猫のリーダーへと尋ねる。
「みぃ知ってるの。紳士さんは、女の子には優しくするものなんだよね?」
 『紳士さん』と呼ばれた猫はいくらか嬉しそうだった。誇らしげな笑みを見せ、ネクタイや襟元を正す。
「はっ……当然です。無抵抗のレディを不躾に扱っては、紳士の名が汚れます。ようこそ、みぃ様」
 瑞姫に跪くと、猫は帽子を取って手を差し伸べた。
「わーい! ありがとなの!」
 だが、彼女はその手を取らず、代わりにぺたりと猫の額に短冊を貼った。
「ぺた……!?」
「バカ、早くその子から――!」
「紳士さんたち、とっても優しいなの」
 大急ぎで瑞姫を引き剥がそうとする猫たちを、大量の霊符の渦が包んだ。仄かに青白い光を放ち、霊符は取り囲む猫の体へと吸い付いていく。破魔の力を宿した、瑞姫お手製の品だ。電流に似た痺れる感覚が全身を伝い、命中した者を硬直させた。
「紳士であることを利用してユーベルコードを発動する……みぃの将来はたくましくなりそうじゃのう」
 後方で腕組みをして見ていた月乃が愉快そうに呟いた。
 一方で、比較的近距離で見守っていたシエラは大きく頷き、片手の人差し指で何かを呼び寄せるような仕草を取った。
「なるほど! これは交渉決裂だね!」
 すると、壁に刺さっていた『シルフィード』が回転してすっぽ抜け、くるりと先を転換した。そしてそのまま、動けなくなった猫の一群に向かって真っすぐに飛来したのだ。
「なんちゃって~~☆ お芝居でしたー!」
「な、何ぃーーっ!?」
 猫たちは猛烈な速度で飛ぶ精霊槍に驚いて刮目し、ボウリングのピンみたく簡単に弾き飛ばされていった。
 シエラは前方へ駆け出して戻ってきた『シルフィード』をキャッチ。同時に、念じるような格好を取る瑞姫の肩に手を置いた。
「猫パラダイスは私の夢……それは認める。でも、幼女も私の夢なんだよね。そしてここに、その両方を兼ね備えたみぃちゃんがいる……この意味がわかるかな!?」
 唐突に語り出した彼女に言葉を返す敵はいなかった。
 十分な間を置いてから、シエラは自慢気な表情をして宣言する。
「ダブルで最強な私の神がいる以上、あなたたちの味方にはならない!」
「……シエラおねーちゃん? えっとね、みぃは――」
「おのれ! 女性が相手といえど、容赦はいたしませんよ!」
 瑞姫の言葉を遮って、霊符を回避した猫がステッキを構えて彼女らに飛びかかった。
 だが、それは分厚いハンマーの面により遮られた。――ミルフィの得物『天竜砕き』だ。
「フィーの友達に手出しはさせねぇですよ」
 杖の攻撃を一度受け止め、力任せに上に払う。空中でバランスを崩して落下する猫へ、ハンマーをぐるりと振って被せるように叩きつける。強い衝撃を受けて床に激突し、猫はぐでっと伸びてしまった。
「シエラ、みぃを月乃の位置まで下がらせるです」
「はいはい、了解だよっ!」
 瑞姫を抱えて下がるシエラを目の端で捉え、再度彼女は猫の群れに向き直る。敵であれ、猫には変わりない。可愛い、という思考は隅に追いやっておく。
 瑞姫とシエラの初撃で気絶した個体は少ないようだ。だが、確かなダメージ、及び動きとユーベルコードの制限は半数以上に与えている。
 冷ややかな表情で、ミルフィは言い放つ。
「さぁ猫たち、選ばせてやるです。フィーのペットになるか、性悪吸血鬼の元についてぶっ飛ばされるか。……フィーのペットになれば、三食昼寝付きを約束してやるです」
「なっ……舐めたことを言うなぁっ!」
 ある一匹はステッキを手に突撃し、ある一匹は懐から小切手を取り出した。
「ま、知ってたです。それじゃ、戦いを始めるですよ」
 『天竜砕き』の頭を床に下ろす。瞬間的に、透明さのあるワインレッドの立体がミルフィを覆った。彼女の血液から構築された防御結界だ。吸血鬼に由来する身体強化が完了したのを認識し、彼女は巨大な鎚を肩に担いだ。
 引き返して来たシエラが彼女を見て、急ブレーキをかけた。
「準備完了って感じだね」
「攻撃は任せるですよ」
「うん、任された!」
 相槌を返すや否や、シエラの体を包むように風の衣が包んだ。六枚の大気の翼が生え揃うと、衣の加速を伴って駆け出していった。その速度は一線を画していた。
「相変わらず、シエラの動きは速すぎるです……」
 背中を見守るミルフィが感嘆と呟いた。
 猫の群れへと勢いを保って突っ込む。認識阻害の魔術迷彩の効果もあって、猫たちは何が起こったかを把握すらできずに薙ぎ倒される。
「誰も彼も、世界すらも――私に追いついてこない!!」
 片手には『シルフィード』を、もう一方の手には雷で攻撃する糸――『雷糸』を。踊るようにホールを駆け、目についた敵を打突や電撃で失神させていく。猫たちの攻撃は届かない――正確には、当たらない。それほどに速過ぎるのだ。
「さて、私も仕事をしようかの」
 配置に着く仲間たちを眺め、待機していた月乃が大きく腕を振った。彼女の言葉を受け、封縛符を発動する瑞姫が目を輝かせた。
「お師匠さま、もしかして『アレ』!?」
「うむ、そうじゃ。よーく見ておれよ!」
 その台詞は瑞姫に対してだけ放ったものではなかった。
 ばっと腕を開き、詠唱する。対象は、このパーティホールの広範囲だ。一言一言に全力を込める。
「志半ばで倒れし烈士の魂よ。未だ己が理想を求むるなら。闘争に心を馳せるなら。我が名に置いて身を変え形を変え、その願いを叶えん」
 柔らかな羽毛が起こり、気絶した猫たちへと飛ぶ。ふわりと猫を包み込むようにそれは積もり、白い光が隙間を通して漏れていた。
「さぁ、出でよ!」
 号令と同時に、羽毛が内部から飛散する。そこから飛び出したのは、小さな鶏だ。気絶した猫のいた場所から次々と発生し、とことこと歩き出す。
「きゃー! お師匠さまの可愛いニワトリさんがいっぱいなの!」
「これくらいは朝飯前じゃ。……行くぞ、突撃じゃー!」
 瑞姫の歓声を聞きつつ、月乃は敵群を指さした。鶏一羽で勝負にならなくとも、こちらもこちらで数は揃えている。有効打は与えられずとも、妨害ならいくらでも可能だ。
 一斉に、鶏は猫の一匹に突撃していった。
「う、うわっ!? なんだこいつら!?」
 帽子を外し、ステッキ術の精度を高めてシエラに対抗しようとする最中の猫だった。雪崩のように殺到した鶏は足元に纏わりつき、帽子の上に乗っかった。暴れまくる鶏を相手に猫は帽子も脱げず、その場に尻もちをつく。
「そこっ!」
 通りかかったシエラがすかさず『雷糸』で電撃を放つ。感電した猫が床に突っ伏すと、また新たに羽毛の束が舞い込み、猫を鶏へと変えた。
「この猫たちもリリアーナの趣味なら、これで台無しじゃ。あやつの顔が見ものじゃのう……!」
 くくく、と笑う月乃をよそに、『チキン・アゲイン』を目の前で見ていたシエラが悲鳴に似た驚嘆の声を上げた。
「えぇ!? ちょ、何!? つきのんは猫を鶏にしようとしてるの!? 酷い……夢の猫パラダイスが……」
「鶏パラダイスで我慢しろなのじゃ。夢には妥協も必要なのじゃよ」
 やり取りを見ていたミルフィも、いつもよりは不服そうな顔で月乃を振り返っていた。
「……猫の方が可愛いです。冗談は鶏だけにしろです、月乃。これだけいたらボコボコにした後で一匹もらっていってもバレねぇはずと思ってたのに、です」
「鶏も冗談ではないのじゃ! 見よ、この雄姿! 気まぐれな猫より一生懸命頑張る鶏の方が愛らしいじゃろう!」
「でも、私は猫のがいいんだもん! くっ、何たる試練……! まぁ、あの術は時間が経てば戻るし、そして何よりも……」
 ばっ、とシエラは瑞姫を見た。
「ダブルで最強な私の神、みぃちゃんがいるっ!」
「えっとね、シエラおねーちゃん……」
「ん、何かな?」
「……みぃは猫じゃないの、狐なの」
「な、なんだって……!? みぃちゃんが、猫じゃ……ない?」
 この後、衝撃を速度に変換したシエラが敵を薙ぎ倒していったのは別の話だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
吸血鬼の寵愛なんて受けるつもりもない…。そもそも…他人をモノみたいに扱っておいて…愛だなど、絶対に言わせない…!

【狐九屠雛】を【呪詛】を織り込み周囲に展開…。
敵の攻撃は【狐九屠雛】で迎撃か【見切り】で回避…特に小切手…。
標的の目の前だし、あまり手の内は晒したくない…。
全員さっさと殲滅させて貰うよ…。
接近戦では黒桜の呪力解放から【衝撃波、なぎ払い】で吹き飛ばし、そのまま狐九屠雛で凍結粉砕…。
遠距離の敵はそのまま複数の霊火を一体につき数個ずつ分散して追い込ませて、数体ずつ殲滅する…。

本当の紳士は暴力を振るわないし、そもそも数任せの戦いなんてしない…。紳士的どころか紳士失格だよ…。

※アドリブ等歓迎


アウレリア・ウィスタリア
手首を切り裂き血を流す
血を流すだけだとまるでヴァンパイアに捧げるようだけど
ボクの場合はそうじゃない
【血の傀儡兵団】を起動
数には数で対応しましょう

1対多数になるように
猫たちを囲んで叩くように包囲殲滅を試みます
切手でユーベルコードを封じようとも
血人形を盾にすれば弾けるだけ
他の攻撃でも数体が弾ける間に数で押し潰せば問題ありません

ボクはかのヴァンパイアに好まれる外見なのでしょうか?
まあ、ヴァンパイアに好まれていようが嫌われていようが
ボクの敵であることには変わりません
猫たちが阻もうともボクの兵団がそれを押し返しましょう

鞭剣を手に兵団で押し潰しきれない猫は
ボクの斬擊で切り裂きましょう

アドリブ歓迎



●凍てつく炎と血人形
 また一体、猫が倒れて霧散した。
 次々と仲間がやられていくのを見て、猫は目の前に立つ猟兵へと問いを口走った。
「一体何の目的があってリリアーナ様に歯向かうのですか!? こんなことをしても、あなたたちの利潤は何もないはずです!」
 正面の猟兵――雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は哀れみとも失望とも取れる無表情のまま、呪槍・黒桜の柄を握り直す。
「そんなもの、最初から求めてない……。少なくとも私は、あなたたちが許せないだけ……!」
 薙刀と同じ形状の刃が横薙ぎに振られる。刃は猫に直撃し、後ろへと大きく薙ぎ払った。
 刃の残影のように、黒い桜の花びらが舞う。一見華麗に見える花には必ず、何かしらの呪いが織り交ぜられている。
 薙ぎ払いの際、猫には花が付着した。それが今、地獄の霊火となって猫の体に現れる。みるみるうちに、絶対零度の炎が猫を覆いつくして燃え上がる。なんとか逃れようと動いてみても決して収まることはなく、体の端から氷結していく。かちかちに凍った不安定な猫の氷像は床に倒れ込み、その衝撃で粉々に砕け散った。
 アウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)も同様に、敵を殲滅して回る。
 当初は軍団のように一塊で動いていた猫たちだが、猟兵たちの多様な攻撃に陣形を崩され、各個撃破が容易な状態にあった。
「最早、隙だらけですね」
 戦場内の一体に狙いを定め、アウレリアは素早く接近する。鞭剣『ソード・グレイプニル』を握り締めてから、バツのマークを描くように胴を斬り刻む。ひたひたと、相手の血が曲がりくねった刀身から滴った。
 着実に猫の数が減っていく。これに猫のリーダーは危機感を覚えた。
「……再集合!」
 彼が叫ぶと、ホール内に散り散りになっていた猫たちが一斉に集結し、群れとなる。だが、その規模は随分と小さくなっていた。
「我々がここまで追いつめられるか……美しいだけでなく、強さも備えていらっしゃるとは」
「言葉だけ下手に出るの、やめてもらえないかな……」
「本当はそんなこと、微塵も思ってないんでしょう?」
 璃奈が一蹴し、アウレリアが猫の群れを眺めて呟いた。猫の返答の調子はそれでも変わらなかった。
「いえいえ、本心ですよ。ただ尚更、リリアーナ様の御寵愛を受けないのが勿体ないと思っただけです」
「勿体ない……どういう意味ですか?」
 アウレリアの疑問に笑い声が一先ず返る。璃奈は不快感を表す視線を猫へ送る。
「御寵愛を受けるというのは、名誉で幸福なことなのです。世界を渡る猟兵なら、事情はよく把握しているでしょう。外が暗く荒んでいるのに対し、このお屋敷はどうですか?」
 このパーティホールだけでも、その豪華絢爛ぶりは伺える。さらに猟兵たちが巡った屋敷の各所からも、この世界の一般人の住居より秀でているのがわかる。
「外に住むのは惨めなことです。それならば、リリアーナ様の愛をたっぷり受けて――」
「それ以上、言わなくていいよ……」
 遮った璃奈の表情は、やはり無そのものだ。だが、感情として顔に表出しないだけだ。怒りを秘めているのは、気迫として周囲に伝わっていた。
「本当にそんなふうなら、あんな一目散に逃げたり、洗脳で管理したりしないはず……。今言ったことと、完全に矛盾してる……」
 震えながら、彼女は臨戦態勢を取った。
「吸血鬼の寵愛なんて、誰だって受けたくないよ……。そもそも……他人をモノみたいに扱っておいて愛だなんて……絶対に言わせない……!」
 奴隷だった頃の記憶と囚われた少女たちが重なるからなのか、それは定かではなかった。しかし、偏った視点でほざく敵を憎く思ったのは確かだった。
 憤りを見せる璃奈を傍目に、アウレリアも反論する。
「ボクも、アナタの理屈は間違ってるなって思いますよ。この格差をつくってるのは、アナタたちヴァンパイアですよね? それが世界を苦しめてるなら、寵愛なんか受けてる場合じゃないですね」
 淡々とした演説の途中、彼女は自身の頬に手を当て、ホールの二階――リリアーナを一瞥した。
「ボクがかのヴァンパイアに好まれる外見なのかはよくわかりませんが……どっちでもいいです。好かれていようが嫌われていようが、ボクの敵であることは変わりませんから」
 不平不満を顔に表す猫を無視し、アウレリアは服の袖を捲ってから璃奈に声をかける。璃奈は目だけでそれに反応した。
「残りをさっさと片付けちゃいましょう」
 言うと同時に、アウレリアは剣で自身の片手首を切り裂いた。ヴァンパイアの館で血を流すなんてまるで生贄みたいだ、と心なく思った。もっとも、彼女の目的はそうではない。
 溢れ出る鮮血を前にして、彼女は詠唱する。腕から床に垂れた血液の雫は、詠唱によってオーブのように緩やかに落ちた。
「血を一滴、二滴……我が血は力、敵を切り裂く無数の兵団。進め、そして道を切り開け!」
 やがて血液はより不気味な存在として集約され、形成される。
 床にて失われるはずだった真っ赤な血はユーベルコードの影響でぶくぶくと膨れ、それぞれが一体の人型のように変化していく。まだ未完全だと思わせるグロテスクな段階で実体は完成し、床の上で型を取ったように刻々と出現する。
 少しの間も置かずに、百体以上の『血人形』がホールの一部を占めた。
「数には数で対応しましょう……といっても、向こうはもうあまりいないようですが」
 陣形を取る猫たちを囲むよう、アウレリアは血人形へ指示を出す。突然現れ対峙してきた異形に、猫たちも同様を隠し切れない。普通の人間と比べれば小さい『血人形』も、猫と比較すれば十分に大きかったのも災いしているだろうか。
 そのまま血人形の傀儡兵団は圧殺を試み、猫たちににじり寄った。
「うろたえるな! 何のために再集合したのだ! 陣形を取るためだろう!」
 群れの中心からそんな声が上がり抵抗手段が取られるも、効果は薄い。いかんせん数が多く、攻撃しても技が命中した一体が弾けるだけだからだ。それを埋めるように殺到されては意味などない。
「どうすれば……! そうだ! おい、上があるじゃないか!」
 血人形に囲まれた猫の一体が叫ぶ。それは名案だと周囲も同意し、タワーのように積み上がっての脱出に挑もうとした。
 だが、それは天辺にいる個体の全身が凍り付いたことにより、失敗を悟らされるのだった。
「逃げ道なんてないよ……。わかってたことでしょ……?」
 アウレリアに合わせ、璃奈が絶対零度の霊火を隙間なく送り込んでいた。
 霊火と血人形に完全包囲され、じわじわと殲滅されていく。それを考えたのか、猫の悲痛な叫びが赤い人型越しに響いた。
「我々がこんな卑劣な手段で敗北するとは! 礼儀も知らない猟兵どもめ――!」
「あなたたちって、いうほど紳士的なのかな……?」
 そこに口を挟んだのは、璃奈だった。
「本当の紳士は暴力を振るわないし、そもそも数任せの戦いなんてしない……。あなたたちは、紳士失格だよ……」
 結局、その言葉が死にゆく猫たちに届いたのかはわからない。
 血人形が消え去ったとき、跡には何も残されていなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『少女愛好家『リリアーナ・ヒル』』

POW   :    トドメを刺した子には私からの寵愛を授けるわ
【大勢の短剣を持つ主人に心酔する娘達の突撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【殺到する娘たちの追撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    私を守護する忠実で有能なペット達よ
全身を【大盾を持った少女達に指示し護る為の陣形 】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ   :    ギャラリーは多い方が良いでしょう?
戦闘力のない【身動きのできない、拘束されている少女達】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【少女達の悲観や絶望の感情】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はキア・レイスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●空っぽの鳥かご
 使い魔たちを倒し切った猟兵たちに、ささやかな拍手が送られた。最初、その音はホールの二階から聞こえてきたが、ある瞬間から猟兵たちの正面へと切り替わる。
「久々に興奮する戦いだったわ……。館に閉じこもってたら、戦いとはどうしても無縁になってしまうもの」
 猟兵たちの目先に転移したリリアーナは呑気に伸びをしてから、眼前の敵に向き直る。
「さて、私の手番のようね。その前に……ギャラリーは多い方が良いでしょう?」
 悠々と指を鳴らすと宙に魔法陣が現れ、派手な金属音と同時に箱型の檻が召喚される。その中へ目をやれば、拘束された少女たちと視線がかち合う――はずだった。
「なっ……!?」
 檻の中には人っ子一人居ない。それもそのはず、ここに閉じ込められていた少女たちは猟兵により脱出したからだ。
 悪い予感を感じ取り、リリアーナは召喚の魔法陣を複数作動させる。床に出現したその上に少女たちがいないわけではないが、それを見て彼女の表情は歪む。どう数えても、数が少ないのだ。さらには、寝室や浴室をともに過ごす『お気に入り』も失われている。
 せいぜい客人を逃がしただけと高を括っていたのだろう。実際は、彼女のユーベルコードの一部に支障をきたすレベル――使用不能や、発動成功率の大幅な下落――にまで、猟兵たちの活躍は及んでいた。
 悠々とした態度から一転、リリアーナは厳しい目つきで猟兵たちを睨んだ。
「よくも私の可愛い子たちを……! ただで済むと思わないことね!」
 彼女の後方に魔法陣が開く。現れたのは短剣や大盾――少女たちに似合わない、武装の数々だ。それに我先にと飛びつくように少女たちは殺到し、各々の武器を手に取った。それから彼女らは、操られていることの証左である虚ろな目で猟兵たちを見るのだった。
シエラ・アルバスティ
【朧月】

「従わせるのなら心から愛させないと。でもリリアーナってなんか人間ぽさあるよね、私と愛を受け取ってくれる?」

【クレイジーアトモスフィア】起動後、【ダッシュ】【迷彩】【残像】からの【絶命槍】での【暗殺】でリリアーナの急所を貫きに行くことを目標に

「私からの愛は死の一撃。どんな悪い奴でも苦しむ間も無く効率的に消す事にしてる」

少女たちの妨害を突風や雷糸等で打ち払い、隙を作り確実な一撃を決める

「刺す、死ぬ。この二工程の間に人はいちいち理由を作り出すよね、心も体も殺し切れてないあなたは人間くさいんだよ」

『ユピテルマント』の効果を発動し電撃をそのままリリアーナに浴びせる
相手は一応吸血鬼、火葬ならぬ雷葬


麗明・月乃
【朧月】
ちっ、私の活躍にキャーキャー言うギャラリーもいないのじゃ。
まあリリアーナのあの顔を見れただけで良しとしよう。
みぃが見ていれば十分じゃ!

自身の『封印を解く』【九破天狐の舞】を使い真の姿となるのじゃ。
「出力を調整で巻き込まないとかは難しいからの。女子達は頼んだのじゃ」
みぃの解呪の技術、フィーの堅牢さ、そしてシエラの突破力…この三人が揃っているのだから必ずチャンスは来るはずじゃ。
…口には出さぬがの!

『野生の勘』を持ってリリアーナだけを攻撃できるタイミングを計り、四『属性攻撃』を『全力魔法』で叩き込むのじゃ。
「洗脳で意思を失った者などいくら揃えても砂上の楼閣。私達に勝てる道理はないのう」


神月・瑞姫
【朧月】

空っぽの檻…あれは、みぃ達が助けた子のなの
役に立ってた…よかったの…

だいじょうぶ、お師匠さまのかっこいい所はみぃが見てるの!

残った女の子たちは…みぃに任せて
フィーおねーちゃん、ちょっとだけ時間ちょうだい
(ミルフィがみぃ達を庇い、攻撃に耐え
【時間稼ぎ】をしてくれる間に敵のUCを観察
自らのUCの成功率を高める

…術式の核は…あそこなの
いくよ神様…みぃに力を貸して!
(仮面を被り真の姿を現す、青白い九尾のオーラを纏い
体も12歳程に成長

【破魔月刃】
(邪なる術を打ち消す【破魔】の光刃が
少女に絡まる洗脳の糸を切断解除する

幼子を盾にするとは見下げ果てた悪女よの
が…これで主は丸腰じゃ
覚悟はよいか?


ミルフィ・リンドブラッド
【朧月】
リリアーナの能力はたくさんの女の子がいてこそのものです。リリアーヌの無力化をするまで数が減った女の子達の攻撃を耐えきって洗脳を解けばフィー達の勝利です。やってやるです。

【守護の決意】リリアーナを護るための陣形を取らせないように女の子達の集団の中央に突っ込んで攻撃を受け止め続けてやるです。短剣を持った女の子の攻撃を大盾をもった女の子を利用して攻撃を相殺したり、「天竜砕き」を構えて面で受け、柄で受け流したりするです。フィーは防御には自信があるです。それに、守る対象である女の子達には下手に攻撃はできねぇのです。大丈夫、フィーが気を引いている間にみぃ達が洗脳を解除してくれるはずです。



●朧月の乙女たち
「空っぽの檻……あれは、みぃ達が助けた子のなの。役に立ってた……よかったの……」
 神月・瑞姫(神月の狐巫女・f06739)は積み上がった空虚な箱を眺め、ぼそりと零す。その隣で麗明・月乃(夜明けを告げる金狐・f10306)が顎に手を添え、したり顔をしていた。
「ちっ、私の活躍にキャーキャー言うギャラリーはおらんのか。残念じゃのう。ま、あやつの悔しそうな顔を拝めただけ、良しとしようかのう」
 残念、という単語に反応してか、瑞姫が彼女へとばっと振り返る。
「だいじょうぶ、お師匠さまのかっこいいところはみぃが見てるの!」
「うむ、お主が見ていれば十分じゃ」
 頷いてから、月乃は胸に手を添える。ぽんっと光が彼女から現れ、取り囲むように包んだ。それが全身を包みこんでから、彼女の影は大きく膨らんでいく。一本の太い尾は分れ、九尾に。光が取り払われると、彼女は巨大な狐に変わっており、渦のように炎と氷を纏っていた。――自身の封印を解き、真の姿へと変化したのだ。
 歓声を漏らして見上げる瑞姫に、月乃は呼びかけた。
「出力を調整して女子らを巻き込まないように、とかは難しいからの。女子たちは頼んだのじゃ」
「うん、任せて!」
 元気よく首を縦に振り、瑞姫はミルフィ・リンドブラッド(ちいさな壁・f07740)へ声をかけた。
「フィーおねーちゃん、ちょっとだけ時間ちょうだい」
「了解です……シエラ!」
「オッケー、じゃあ行こっか!」
 シエラ・アルバスティ(自由に生きる疾風の白き人狼・f10505)とともに進んでいくミルフィの背を眺め、それから敵群へと彼女は視線を移す。虚ろな表情で武器を構える少女たちの背後で、強張った顔をしたリリアーナが佇んでいる。少女だから容赦してくれる、なんてこともなさそうだ。
 少女たちは洗脳で管理されている。その術を解く糸口さえ掴めれば――前線へ向かった二人を心配に思い、感情は顔にも現れた。
「心配は無用じゃ」
 そんな瑞姫に対し、九尾の狐と化した月乃が言ったのはたったそれだけだ。
 瑞姫の解呪の技術、ミルフィの堅牢さ、そしてシエラの突破力。この三人が揃っているのだから、必ずチャンスは来る。その確信が月乃の口角を無意識に上げさせた。
 師匠の言葉に勇気づけられた瑞姫も、術の解読に徹することに心を決めた。

 ある程度前進したところで、ミルフィは走るスピードを上げる。彼女は目も向けず、シエラへと発した。
「女の子の相手はフィーが引き受けるです。シエラはみぃが術を解くまでリリアーナの相手を頼むです」
「わかった!」
 シエラが横方向へ駆ける一方、正面に見据える少女たちの集団へ、ミルフィは速度を保ったまま脚を動かす。『天竜砕き』を肩に担ぎ、ふうっと息を吐いた。
「……やってやるです」
 仲間を守るという信念を心に宿し、彼女は跳躍する。大盾を持つ者も見られるその中へ飛び込むと、わざと誰もいない隙間の空間を狙って鎚を振り下ろした。衝撃がホールに反響する。
「バカねぇ、死にに来たの?」
 遠巻きに見ていたリリアーナはそう評すると、ミルフィを標的にするよう集団の大多数へ指示を出す。同時に、自身を護る役割を担った少女たちを自分と一緒に後退するよう命令する。
 だが、引き揚げようとする少女らを妨害するように、ミルフィは彼女らの前へ回り込んだ。
「別に、死ぬつもりはねぇですよ」
 呟きの直後、少女たちの短剣が殺到する。それを察知した彼女は攻撃を鎚の面で受け止め、逆に攻撃を押し返して一度に払い退ける。
 だが、彼女はぐるりと敵に包囲されている。今度は背後から、攻撃が彼女に迫る。反応したミルフィは傍らに立つ大盾持ちの少女の腕を掴み、ぐいと引っ張った。金属同士が擦れる耳障りな刃音がすぐそばで鳴った。
 力技だろうが、攻撃を耐え切って洗脳を解けばこちらの勝ちだ。防御に長けたミルフィは攻撃を凌ぎ切る自信があった。リリアーナの能力は少女がたくさん居てこそのもの。現状、その戦力を失った彼女が弱体化しているのは明白だ。
「随分とコケにしてくれるわね――!」
「ねぇ、そっちばっかり気にしてていいのかな?」
 突然呼びかけられた軽快な声に、リリアーナはその方へ目をやった。
 精霊槍が目まぐるしい速度で飛来し、彼女の片脚を貫く。苦痛に顔を歪めるうちに、槍は自ら持ち主へと帰っていく。
「やっぱりさ、従わせるのなら心から愛させないと。……そういえばさ、あなたってなんか人間ぽさあるよね。そうやって怒るところとか、俗っぽい感じがするよ」
 『シルフィード』を手に取り、シエラはリリアーナに語りかけた。遠距離からの不意打ちで移動力を削いだ彼女は、次の瞬間には『クレイジーアトモスフィア』を起動して風の衣を纏っていた。
「あいつを止めなさい!」
 リリアーナが彼女を指で示すと、僅かばかりの武装した少女たちが彼女の正面に立った。
 けれど、走り出したシエラを止めることはできない。短剣を振り下ろす前に突破され、彼女らは発生した突風により吹き飛ばされる。
 気づいたときには、シエラとリリアーナを阻むものはなくなっていた。
「そんなに愛が欲しいなら、私の愛も受け取ってくれないかな?」
 走りながらまた一歩、シエラは踏み出す。目は未来を視るように大きく開かれ、彼女の足元に大気の翼が散った。
「……私ごとね!」
 瞬間、彼女自身のトップスピードを超越した速度でシエラは射出される。それをリリアーナが捉える方法はあるはずもない。
 すべてが終わると、リリアーナの脇腹を槍が貫通していた。
「私からの愛は死の一撃。どんな悪い奴でも苦しむ間も無く効率的に消すことにしてるの」
 明るくも冷たい言葉に身を浸す最中、リリアーナはシエラの外套が発光しかけているのを知覚した。
「刺す、死ぬ。この二工程の間に人はいちいち理由を作り出すよね。だから、心も体も殺し切れてないあなたは人間くさいんだよ」
 バチッという雷鳴が彼女の背で起こる。シエラの体から槍を通じて、電撃はリリアーナへと伝達される。焦げるような感覚が全身を襲い、リリアーナは歯を軋ませた。

 一連の戦闘を観察するうちに、瑞姫は解呪の手掛かりを掴んだような気がした。
 少女たちの肩と頭から伸びる、操り糸に似た呪い。糸は薄くつながりながら、リリアーナの手の内側に結ばれていた。
「術式の核は……あそこなの。いくよ神様……みぃに力を貸して!」
 息を吸い込み、瑞姫は狐の面を被った。すると、青白いオーラが小さな体を包み込んだ。オーラが濃くなるにつれ、全体像も伸びていく。十二歳ほどの体にまで成長し、彼女もまた、真の姿を現した。
 まるで『別人が乗り移った』かのように雰囲気を一変させると、瑞姫は薙刀を握った。
 薙刀の先端を操られている少女へと向ける。刀身が青く光ったのを確認すると、瑞姫は滑らか且つ鮮やかに振って見せた。
「月の刃よ……魔を切り裂け!」
 先端からは光刃が生じ、ホール全体に向けて放たれた。瞬間、空間内は青白く染まる。横薙ぎの風のような光刃は破魔の力を秘め、ホールに蔓延る呪いの糸は次々と切断されていく。それに伴って、操られていた少女たちもぱったりと床に倒れ、動かなくなる。
「みぃ……やりましたね」
 少女たちの猛攻を凌いでいたミルフィは、瑞姫を振り返った。折り重なって少女たちが倒れる中で鎚の頭に腰を下ろし、今度は安堵の息を吐いた。
 次いで、シエラとリリアーナも異変を察知する。
 うろたえるリリアーナへ、瑞姫は静かに語りかけた。
「幼子を盾にするとは見下げ果てた悪女よの。が……これで主は丸腰じゃ」
 月乃を一瞥してから、彼女は首を傾けて尋ねた。
「覚悟はよいか?」
 しかし、その是非を答える時間は用意されていない。
「我は偉大なる守護者」
 大技を叩き込む好機を得た月乃の周囲に、オーブのような四色の玉が浮上する。それぞれの玉は内部で物質を形成し、炎、氷、風、岩を創り出した。次第に物質たちは玉の外側へと溢れ、各々で独立した形を取り始めた。炎は鋭い爪へ、氷は渦巻く息吹へ、風は三日月に似た刃へ、岩は尖った槍へ。
「怒りは猛き焔に。悲しみは白き凍気に。嘆きは轟く嵐に。痛みは震える大地に――」
 持つべき形を持った物質たちは、その体をより増強していく。回転を継続しながら、まるで地上の微かな魔力を掻き集めるように。宿す力の限りをそこに詰め込んでいた。
「我が全霊を持って愛し子の敵を滅ぼさん」
 それを言い切ると、四つの魔術は満を持して放たれた。形成にかけた時間は短いながらも、濃密な魔力が凝縮されていた。
 うねりを携え、それらはリリアーナに迫る。一つ一つの魔術すらも絶大な威力を誇るだろうに、四種が一堂に会するとしたら? 彼女自身もできれば逃げたいが、移動力はシエラにより失われている。当の彼女は既に退避し、リリアーナを冷ややかに見つめていた。
「……してやられたわね」
 別々の方向から飛来する四つの魔術が集合し、炸裂する。炎は身を焼き、氷は凍てつかせ、風は刈り散らし、岩は貫く。
「洗脳で意思を失った者などいくら揃えても砂上の楼閣。私たちに勝てる道理はないのう」
 大きく吹き飛ばされたリリアーナを眺め、真の姿を解除した月乃は静かに呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アウレリア・ウィスタリア
可愛い、そう思うのなら操って支配などしないことです
ボクは復讐者
表情に出すことさえ叶わない彼女たちの心
その想いのためアナタをボクの敵としましょう

【深淵から響く魂の歌】
さあ、歌いましょう
みんなを救うために

厄介なのは救出すべき彼女たちを盾とする言葉
彼女たちの心はアイツを守ることなんて望んでいない
だからボクは歌で伝えよう
ボクの魂に刻まれた「愛する」という言葉の本当の意味を

盾が崩れたのなら
少女らと敵の間に割り込み引き離すよう全力を尽くしましょう
鞭剣で牽制し血糸でフェイントをかけボク自身を囮にしても良い

どんな甘言であっても
アナタのような者は直ぐにそれを偽り破り捨てる
そのことをよく知っているから

アドリブ歓迎


雛菊・璃奈
他人をそんな檻に入れたり、洗脳したり…道具の様に扱って好き勝手言うね…。


洗脳されてる子達は力を抑えた黒桜の呪力解放【衝撃波、なぎ払い】で気絶させるか、【早業】峰打ちで意識を刈り取っていく…。
少女達を気絶させたり、【見切り、第六感】で回避しながら接近し、【呪詛、2回攻撃、早業】凶太刀で連続高速斬撃…。
その後、少女達を巻き込まない近接位置から【unlimited】を展開…。
【呪詛】で【unlimited】の妖刀や魔剣を極限まで強化…。
呪力を最大まで高めた一斉掃射で一気に仕留めるよ…。

呪いはわたしの力…貴女に弄ばれた人達の嘆きと報い…受けて貰う…!
貴女の命で贖うと良い…!

※アドリブ等歓迎


リーヴァルディ・カーライル
改造した防具に付与した誘惑の魔力を維持し存在感を強化。
挑発して少女達の攻撃を引き付け、
他の猟兵が動きやすいよう支援する。

…どうしたの、リリアーナ・ヒル?
以前対峙した別のお前は、もっと多くの少女達がいたのに…。

…今回のお前は、とうが立っていたのかしら?

第六感と【吸血鬼狩りの業】を駆使し敵の攻撃を見切り回避。
避けきれない攻撃は大鎌をなぎ払い武器で受ける。

…この程度の人数で、私を止められると思わないで。

吸血鬼への道筋が見えたら【限定解放・血の聖槍】を発動。
怪力を瞬発力に変えて敵に接近、
掌打と同時に生命力を吸収する血杭を打ち込み敵を貫いた後、
力を溜めた血杭を傷口を抉るように連続で打ち込む(2回攻撃)


ジャハル・アルムリフ
この後に及んで己の手は汚さぬつもりか
大した主人だな

向かってくる娘たちに向け
その『手にした短剣』のみを対象に【まつろわぬ黒】を放つ
手傷を負わせてしまったなら後で詫びよう

短剣を落としきれなければ
屋内ではまともに飛ぶには狭かろうが
空中戦の心得を活かし
竜翼を広げ壁などを蹴り滑空、娘達の頭上を越え
黒剣でリリアーナを狙う

*近くに他猟兵がいれば連携も行う
背を補佐する形をとり不意打ちの回避を
避けられない娘の攻撃は手加減して蹴り飛ばすなどで対処

もし負傷した娘達がいれば
後で生まれながらの光による治療も
不得手ではあるものの行おう


茶会は荒くれ者共の手で台無しにされ、美しき領主は潰えた
貴様好みの"悲劇"だろうよ



●魔窟の崩落
 よろよろと立ち上がりながら、リリアーナは猟兵たちを見据えた。ふらつきが見られることから、これまでの攻撃が余程効いているのが把握できた。
「可愛い子たちへ愛を注いでいただけの私に、よくもこんな非道なことを――!」
「他人を檻に入れたり、洗脳したり……道具のように扱っておいて、好き勝手言うね……」
 一貫して歪な愛を主張する彼女に雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は呆れ返る。虫の息の敵を仕留めんと、武器の柄を強く握った。
「可愛い、そう思うのなら操って支配などしないことですね」
 床に伏せる少女たちを見回し、アウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)も独りごちた。洗脳魔術の効果が失せればこの通り、無理な操作の負荷で動かなくなる。自らの意思で動いていないのは明らかだ。
 しかし、アウレリアの反論をリリアーナは嘲笑った。
「……嫌よ。この子たちはこうしているのが一番可愛いんだから」
 右腕を突き出し、閉じた手を開く。数秒経たずして、倒れた少女たちの瞳が露わになる。彼女らは再びそれぞれの得物を手に、猟兵たちを虚ろに眺めた。中には、健気な顔から流血している者もいる。もう一度洗脳をかけ直し、その過剰さがより強い負荷をもたらした証拠だった。
「この期に及んで己の手は汚さぬつもりか。大した主人だな」
 皮肉を吐き捨て、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)がリリアーナを睨む。愛玩する少女らに他者を攻撃させようとする精神性。控え目に見ても正常ではない。
 その脇で、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はリリアーナの行動に焦りを見出していた。洗脳魔術が一度破られているのに加え、自身も相当に負傷している。ここで揺すってやれば――。
「……どうしたの、リリアーナ・ヒル? 随分と怖い顔をして。老けて見えるわ」
 リーヴァルディは一歩前へ進み出る。猫との戦いから維持している術式により、存在感と誘惑の魔力が放たれていた。
 煽りに乗って注視するリリアーナをよそに、彼女は続ける。
「それにしても、少女たちの数が少ないわね。以前対峙した別のお前は、もっと多くの少女たちがいたのに……。もしかして――」
 無感情な顔のまま、彼女はそれを言い放つ。
「……今回のお前は、とうが立っているのかしら?」
 リリアーナのこめかみに青筋が走った。この状態で年増を表す言葉を投げかけられては冷静でいられるはずもない。
 激昂したリリアーナは殺気のこもった絶叫を発した。
「そいつを、そいつを殺しなさい! 今すぐに!」
 吃音を交えて命じると、少女たちの多くがリーヴァルディへ走り出す。
 リリアーナ本体から敢えて離れるように動いてから、リーヴァルディは自身に向けて振るわれる刃を的確に躱していく。
 吸血鬼に操作されている者の攻撃なら、伝えられた秘奥の業と直感が効く。それを差し引いても、相手は大して数のいない素人たちだ。いなすことは容易い。
「……この程度の人数で、私を止められると思わないで」
 言いながら、振り下ろされた短剣を大鎌で受け止け、横へ薙ぎ払った。
 リーヴァルディの挑発により、攻撃を担う少女のほとんどが一塊で彼女を狙う。
 それを好機と捉え、ジャハルは剣を構えて横方向からその一群へ接近する。ある程度の距離まで近づいたところで宙を剣で薙ぐ。刀身からは黒い刃が発生し、少女たちに向かって飛んでいく。一塊になっている少女の数と黒刃の数は一致していた。
 それは、他の者からは直接攻撃に映っただろう。少女たちは黒刃の到達に直前まで気づかない。やがて黒刃は命中し、短剣が大きく弾き飛ばされた。
「戦う意思もないのに攻撃を続けさせるのは、あまりにも不憫だろう?」
 ジャハルの狙いは、あくまでも短剣だ。少々の危険はあるが、無力化させるなら武器を奪ってしまうのが一番だ。
 呟きの後、ジャハルは再度剣を振るって黒刃を生じさせる。中空に舞う短剣へと向かい、一度目の攻撃でヒビの入ったそれらを確実に粉砕する。
 ちらりと少女たちに目をやる。素手での攻撃に切り替えつつあるようだが、そこに大きな攻撃力は存在しない。
 変わらずに注意を引き付けておく、とリーヴァルディは彼に無言で伝達する。それに頷きで返し、ジャハルは駆け出した。

 少女たちの大多数がリーヴァルディに釣られる一方、璃奈とアウレリアはリリアーナへの接近を試みていた。
 リリアーナを正面に見据えたとき、二人は急停止した。二人の接近を察知したリリアーナが防御陣を展開し、少女たちの大盾に護られているためだ。
「本当に、従順で良い子たち……こんな姿を見られるんだから、術は必要でしょう?」
「……嘘だ。結局、あなたの都合の良いように事実を捻じ曲げてるだけ……。その子たちは忠誠なんか心にも誓ってないよ……」
「ボクも同感ですね」
 発すると同時に、アウレリアはショルダーキーボード『玉咲姫花忍』の紐を肩に掛け、音は出さずにその鍵盤に触れた。
「彼女たちの心はアナタを守ることなんて望んでいない。そして今、それを表情に出すことすら叶いません。でも、ボクが引き出してみせます……ボクの歌で!」
 突如としてアウレリアはキーボードを奏で、歌い始めた。魂から湧き上がる歌声はパーティホールを満たし、音の渦に沈めていく。
 次第に、虚無を見る目で固められた彼女らの表情に異変が起こる。だんだんと生気を取り戻し、瞳は輝きを持ち始める。
「歌を止めさせなさい!」
 リリアーナは周囲に散らばる短剣持ちの少女に命令する。だが、攻撃は通らない。
「……ほら、焦ってる。絶対に邪魔はさせないよ……」
 璃奈が向かい来る少女たちへ呪槍・黒桜から低威力の呪力を放出し、遠距離から気絶させていく。ある一人は通り際に峰打ちして意識を刈り取った。
 アウレリアの魂に刻まれた「愛」の意味。それは歌により、歪んだ愛を受ける少女たちへと染み渡る。
 かしゃん、と盾と床が接触する金属音が鳴った後で、少女たちは幸福そうな顔つきで床に倒れた。
「何度やったところで、術を掛け直せば――」
 突き出された右腕は、妖刀・九尾乃凶太刀により切り裂かれた。
「これでもう、洗脳はできない……」
 リリアーナが痛みで右腕を押さえる中、璃奈は第二撃へ移る。璃奈が胴を斬り、リリアーナは悶えるように動いた。その後も高速斬撃は連続する。旋回するように璃奈は駆け回り、反撃の余地を与えなかった。
「うぐぅっ……どうして私の術が歌なんかで――」
「それほどに、アナタの言う愛が脆かっただけです」
 キーボードを鞭剣に持ち替えたアウレリアが答えた。
「どんな甘言であっても、アナタのような者はすぐにそれを偽り、破り捨てる……ボクはそのことをよく知ってますから」
 アウレリアはリリアーナに迫り、鞭剣を振りかざす――ように見せかけ、後方へと彼女を強く蹴り飛ばした。一気に大技を仕掛けるなら、少女たちとの距離は離れている方がいい。
 もう一撃を食らわせようかというところで、彼女は後方に殺気を感じ取った。
「それと、アナタを許せないのはボクだけじゃないですよ」
 アウレリアは体を斜め後ろへとずらす。
 白亜の竜翼を広げたジャハルが迫り来る。狭い空間での飛行は難しい。だが、逆にそれを活用することも可能だ。壁を蹴って推進力とし、脚での移動より素早くリリアーナへと接近したのだ。勢いを上乗せし、黒剣を振るう。上身を斬ってから、着地と同時にタックルを炸裂させた。
 猟兵たちの攻撃は止まらない。少女たちと距離が取れたことを確信した璃奈が再び接近し、凶太刀の刀身が妖しく輝いた。
「呪いはわたしの力……あなたに弄ばれた人たちの嘆きと報い……受けて貰う……!」
 周囲に凶太刀をトレースしたかのような影が展開する。影は増殖しながら、果ては実体を持って浮かび上がった。増殖の勢いは留まるところを知らない。一瞬のうちに百を超える現身が出現し、呪詛により塗り固められる。毒を以て毒を治める。魔に属する妖刀が、魔を討たんと構えていた。
「あなたの命で贖うと良い……!」
 最大限に魔の力を磨かれた刀が打ち出される。余す力を残さない一斉掃射が、リリアーナの肉体を貫いた。
「ま、まだよ……! まだ倒れるわけには――!」
「……限定解放」
 声へ向くと、拳を固めたリーヴァルディの姿が見えた。ヴァンパイア化で得た怪力は瞬発力に変換され、拳にはその速度が加算されていた。
 直後、掌打がリリアーナの腹部に突き刺さると同時に、赤黒い杭が彼女を串刺しにする。血液で構成された杭は、彼女の微かな生命力を吸い取ってから弾けた。
「……刺し貫け、血の聖槍……!」
 変身解除の余波からもう一本、血杭が形成される。それは勢いに負けて吹き飛ばされたリリアーナに追い打ちをかけ、腹に開いた穴をなぞるように突き刺さった。吸血鬼の力が圧縮された一撃に、彼女は耐えられなかった。
 絶叫とともにリリアーナは爆散する。紫の靄が空気中に漂うが、それも時間をかけて散り散りになっていった。

 ジャハルは足元に倒れた少女を見やる。術式の負荷により流血した彼女を不得手ながら『生まれながらの光』で癒しつつ、リリアーナが居た場所を眺めた。
「茶会は荒くれ者どもの手で台無しにされ、美しき領主は潰えた。貴様好みの『悲劇』だろうよ」
 しばらくして少女は目を覚まし、正気を取り戻す。
 猟兵たちの計らいにより、こうして魔窟は崩落したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月26日


挿絵イラスト