アポカリプス・ランページ⑧〜歌姫のお膝元〜(作者
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●歌姫のお膝元
 山岳地帯と森林地帯に囲まれた、水源近くに、巨大な拠点が見える。フィールドオブナインが常駐するには平凡過ぎ、ヴォーテックス一族が支配するには、随分と平和だった。見逃されている理由は分からず、ただ、脚を踏み入れ、市場を見て回れば、其処彼処で窺える、マザーの二文字。彼女が謳った楽曲は至る所で流され、今も残る資源から作り出された簡易ホール内で、ホログラム映像のコンサートが人々を魅了している。
 あの歌姫以上の逸材は現れないだろうと、奪還者すら、昂揚剤入りのドリンクを片手に嘯く。信仰、と言っても良かった。
 テクノロジーを擁する学者達は、彼女が唱えた初期研究、時間質量論について、未だに懐疑的で有りながら、有り余るデータが収まったストレージから、容易に無視は出来ないと、未だに解析を続けているのが、現状だった。

●グリモアベース
「アポカリプス・ヘルでの戦争は順調みてえじゃな。有難う」
 礼と共に誠実に頭を下げ、茶を淹れて、甘味と資料を配ると、一応と前置きしてから、世界と戦争について、説明を始める。
「先ずはアポカリプス・ヘルと、今回の戦争の概要について説明するよ。分かっとる人等は、今配ったのとか、その辺に用意した食べ物とか適当に摘まみながら、本題まで聞き飛ばしてな」
 用意した飲食物を指差して鎮は資料を捲りながら説明を続けていく。
「オブリビオン・ストームによって人類の大半が死滅した近未来の地球じゃな。文明は破壊されて荒野が広がっとる。まともな人間は拠点って呼ばれる場所を作って生活しとる状況じゃな」
 この世界で僅かに生き残った人類は逞しく、禁忌としていたオーバーテクノロジーを解き放ち、この状況でも生存圏の確保の為、動いている。
「オブリビオン・ストームは触れた人間をレイダー、つまり、この世界のオブリビオンに変える。後、これの所為で交通インフラ、通信インフラは完全に分断されとるな。作ったのはフィールド・オブ・ナインってオブリビオンフォーミュラみてえじゃ、六体ほどが蘇生されて、今回の戦争を起こしたみてえじゃな」
 今回の戦争の目的は、このフィールド・オブ・ナインの討滅だ。完了すれば、ある程度、オブリビオン・ストームの被害は食い止める事が出来るだろう。
「六体もフォーミュラ居るって事じゃけー、雲行きは怪しいけどな……ああ、今は関係無えけど皆の立場は、優れた奪還者(ブリンガー)って事になる」
 奪還者(ブリンガー)はレイダーに奪われた資材や食糧を持ち帰る人類側の戦力であり、腕が立てば何処でも歓迎され、生存本能から、恋愛対象として強く求められる側面が有る。
「と、概要はこんな所かな。本題に入るよ。今回行って貰う所は、カナダ国境付近の巨大拠点じゃな」
 周囲は山岳地帯に囲まれ、付近には水源、森林地帯が有り、この拠点が巨大化した理由の一因だろう。だが、最大の理由は、其処がフィールドオブナインのマザーコンピュータに組み込まれた歌姫、マザーの存在が大きいと考えられる。
「時間には質量が有る。猟兵に伝わっとるこの常識は、此所が発端なんかな。その真偽は兎も角、かつてのマザーの研究棟が見つかったけー、其処から、時間質量論に関するデータが収まった機材を運び出して欲しい。やり方は皆に任せる。地味じゃけど、情報は欲しいしな。宜しくお願いするよ」
 場所は判明している。猟兵達は研究棟に有るデータ・ストレージの確保を急ぐだけで良い。
「ただ、戦争で根詰めとる所じゃろうし、大きい拠点じゃけー、羽休めして行っても、誰も文句は言わんじゃろうな。そう言う拠点じゃけー、音楽については充実しとるしな。マザーの歌は、よう再演されとるし、データの流通も頻繁らしい」
 鎮は深く頭を下げた後、そう言って、猟兵達を送る準備をし始めた。



●挨拶
 紫と申します。
 引き続き戦争【アポカリプス・ランページ】から、
 情報接収の依頼となります。羽休めも兼ねてみましたので、
 宜しくお願い致します。

●シナリオについて
・目的、及びプレイング・ボーナス
 大漁の記録媒体を運び出す。

・ギミック
【選択肢:羽休め】
 巨大な拠点です。娯楽施設にも事欠きません。
 酒場や簡易の音楽ホール、公開データの動画鑑賞、音楽鑑賞など、戦争の疲れを癒やすには丁度良いでしょう。作戦の合間に、少しだけ休息するのも、猟兵の選択肢です。
 特に世界最高の歌姫「マザー」の出身地という事も有り、音楽関係は他の拠点よりも充実している様です。

●その他
・psw気にせず、好きに動いてみて下さい

●最後に
 なるべく一所懸命にシナリオ運営したいと思っております。
 宜しくお願い致します。
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第1章 日常 『時間質量論を運び出せ』

POW腕力に任せて一気に運ぶ
SPD乗り物や道具を利用する
WIZより重要そうなデータを優先して運ぶ
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


栗花落・澪
音楽…歌姫
音楽好きとしては、やっぱりちょっと気になっちゃうかな
データ確保はなるべく急ぐけど
公開データがあるなら折角だし見て行きたいかも
自分の勉強にもなるかもしれないし
何回か聞いたら小声で一緒に口ずさんでみたりして

話を聞けそうな人がいたら時間の許す限り聞いてみたいな
例えば
歌姫様の事を知らない人に1つだけ推し要素を説明するなら?
その答えは、その人にとってマザーが唯一無二だと思う場所
彼女の何がそんなに人を惹きつけるのか、興味があるから

記録媒体は僕自身が非力なので
【指定UC】で皆にも運搬手伝ってもらいます
数えるのはもう諦めた
重い物は風魔法を纏わせる事で僅かに浮遊させ重さを緩和
僕でも持てるの、あるかな…


藤・美雨


ここは敵の息がかかった場所だけど、雰囲気は自体は悪くない
人々が苦しんでる風には見えないし
音楽を楽しむ余裕すらある
……それはそれとして機材は頂いていかないとだけど

【怪力】でせっせせっせと機材を運んでいくよ
重いものでも全然平気!どんどん運ぶね
運搬中に聞こえてくるのは色んな音楽
アポカリプスヘルでこんな風に楽しめるなんてね
ノリの良い曲をBGMにどんどんごーごー!

休憩時にはさっき聞いてた曲はどれか探してみようかな?
公開データを検索して……
へぇ、マザーってこんな人なのか
確かにどれもいい歌だ
人々が心の拠り所にするのもなんとなく分かるな

さっきの曲がどれだか分かれば、それを口ずさみつつ再び作業へ戻るよ


御園・桜花
「それじゃあみんなで荷物運びしましょう」

UC「ノームの召喚」使用
集まって貰ったノーム達に持ち運びできる大きさの記録媒体を何でも1つ持ち出して貰う
「数打ちすれば重大なデータだって1つや2つは紛れ込んでいる可能性はあると思うのです、きっと、多分」
目を逸らす

自分は一応吟味もしつつ第六感で選んで持参したリュックにぽいぽい放り込んでいく
なお、半分は音楽媒体に関するデータを選択する

「もともと、比類なき歌姫であったわけですから。時間質量論に、音楽も関係している気がするのです。音楽も数学も絵画も、昔は神に至り神を称えるための学問であったと聞きます。音楽とその音の広がり方は、時間質量論に通じる気がするのです」


真月・真白


時間質量論ですか…マザーは、何を求めていたんでしょうか
膨大な資料の中からいくつか簡単に持ち歩けそうなものを見繕い喫茶店の様な場所で読んでいます

僕は歴史書、即ち世界の仕組み上棄てさらなければいけない『過去』を記し、永遠とするために生まれた存在です
だからなのでしょうか、時間を研究していたマザーの、彼女の『過去』も調べ、知って、記さなければいけないような気がするんです
難しく、読んだだけではそう簡単に理解にも及ばない資料を追うことに疲労した頃に、店内に流れるのは彼女の歌…そう、これもまた彼女がこの世界に記した『歴史(いのち)』ですね…
目を閉じ彼女の歌から、彼女の想いに思考を馳せていきます


七那原・望
マジックオーケストラで影の猟兵達に機材運びを一任しましょう。
数はいますし彼らだけでお仕事はこなせるはずです。
ねこさん達は流石にわたしは休むからあなた達は働いてなんて言えないですし、彼らにはその辺りで遊んでいてもらうのです。

音楽ホールで歌を歌うのもいいですけれど、せっかくこんなに曲があるならたまにはのんびり音楽鑑賞もいいですね。

こんなに遮音性の高いヘッドフォン、外で着けるのは初めてなのです。
いつもは周りの状況が殆どわからなくなるから出来ないけれど今日は特別。
この世界最高の歌姫の歌、堪能させてもらうのです。
わたしの胸に響くかはわからないですけどね。

いい歌があったら音楽ホールで歌ってみましょうか。


村崎・ゆかり
『時間質量論』ねぇ。確かに、重苦しい時間とかあるわよね。そういうもの?
じゃ、あたしもお手伝いしましょうか。
「式神使い」で折紙を四足獣型の式の大群にし、その背に資料を載せて誰かのトラック(に類するもの)まで運ばせる。
監督は式神十二天将召喚儀で「降霊」した十二天将にやってもらうわ。

作業の方はこれでよし。アヤメ、羅睺、この拠点を見て回りましょ。

どこにいてもマザーの歌声が聞こえるわね、ここ。マザーになる前は最高の歌姫でやり手の研究者か。まさに二足の草鞋。
マザー・コンピュータの境遇から解放してあげたくても、既にオブリビオンになってるんじゃ望み薄か。

屋台で食べ物買って、三人でホテルへ。一杯愛し合いましょ。


茜崎・トヲル
【モノクロフレンズ】○
マザーさんが組み込まれたマザー・コンピューター。……だじゃれかな?
まーそれはおいといてー(置いとく動き)

引っ越しの時間だぜ、あーさん!資料の!たくさんあるってゆーし、がんばろー!
おれが肉体改造(UC)で物いっぱい乗るタイプの生き物(ネ○バスみてーなね)になるから、
スーさんはおれにつめこんでね!そんで上か運転席に乗ってね!もふだよ!
あとオーライオーライもしてね!思った以上に後ろが見えづらかった!

ある程度運んだらお休みしましょう!
音楽だって、あーさん!おれも声をね、ひそめます。ひそひそ
わー……!さすが歌姫さん、とっても胸を打たれるよ
……どーしてフォーミュラになっちゃったのかな


スキアファール・イリャルギ
【モノクロフレンズ】○
同じことを考えていました……
あ、はい(置いておくポーズ)

えぇ、これは気合いを入れて頑張りましょう、トーさん
私はUCで大量の影手を呼び出して運ばせます
わぁトーさんでっかいもふもふ……
後で少しもふらせ……はっ、いやいや
どんどこ詰め込んでいきますから重かったら言ってくださいね
あ、じゃあ運転席で……もふ……
うむ、大きいですもんね……オーライオーライもお任せを
はいオッケーでーす

ヨシ、では音楽観賞タイムですね
音楽を聴きつつひそひそお話です
えぇ、さすが世界最高の歌姫
素敵な歌声と曲です……(歌を口ずさみつつ)

時間質量論を研究する内に、何か思うことがあったのでしょうかね
……素敵な歌声なのに


シーザー・ゴールドマン
【資材確保】
『マグ・メルの城塞』により巨大要塞を拠点上空に顕現。
500を超える魔神霊が降下。
ステラの呼び出した悪魔たちと協力して機材を要塞に運び込みます。
終了後は要塞はウルブス・ノウムに帰還。
確保されたデータ、資料はウスブスの糧となった後、猟兵界隈には公開されるでしょう。
【羽休め】
ステラと共に娯楽施設巡り。(寛いでいます)

世界最高の歌姫という評価をされるだけの価値はあるね。
まあ、今のこの世界はそれを楽しむ余裕はないようだが。

◎/ステラと


ステラ・リデル
【資料確保】
『悪魔召喚Ⅱ』にて機材確保に適した悪魔を107体召喚。
巨大拠点上空に浮かぶシーザーの機動要塞に迅速に運び込み続けます。
「お任せしますね」
【羽休め】
機材確保の道筋を立てたらシーザーと共に娯楽施設を巡ります。
酒場でお酒を頂いたり、動画、音楽の鑑賞を。
「世界最高の歌姫ですか。勿体ないことですね」
◎/シーザーと


桜雨・カイ
時間質量論に関するデータ…機械に関してはあまり詳しくないので、データの中身を調べるより物理的な物を運び出す作業をやりましょう
古い記録媒体なら嵩張るでしょうから【呼景】の中にある家の中へ媒体を運んでからここから持ち出しましょう。わかりやすいように年代や項目別にグループ分けしてから、部屋ごとに運んだ方が分かりやすいかな。

急いで作業しないと……でもやっぱり、どんな歌なのか興味があります。
聞きながらの作業なら大丈夫かな。音楽を聴きながら静かに作業していきます。

……考えてみれば不思議な事ですよね。今ここに居ない人達の歌声や演奏が聴けるなんて。
少しの間音楽にひたり……おっとそろそろ作業にもどらないと


●澪ちゃん親衛隊
「音楽好きとしては、やっぱりちょっと気になっちゃうかな。データ確保はなるべく急ぐけど……公開データがあるなら、折角だし、見て行きたいかも」
 はにかんだ様な笑みを見せた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の姿に、何処からか付いて来た570名にも及ぶ、非公式ファンクラブ会員、澪ちゃん親衛隊の面々が、総じて心を貫かれ、膝を付く。
(……また人数増えた?)
 当の本人は、一人も名前を覚えていない所か、その数がどれ程であるのか、数える事すら諦め、ちらと視線を遣るだけだ。意味の無い、ふとしたその様な一挙一動すら、心酔している者達にとっては、胸を打つ仕種に他ならない。
「と、取り敢えず、今日は、記憶媒体の運搬だけど、お手伝いお願いしても良い、かな?」
 まだ幼さの残る顔立ちの、琥珀色の髪をした、女性と見紛う細身の少年。その大きく丸い瞳が、戸惑いがちに向けられ、差し伸べられた手に、ファンクラブ会員の面々は一層、奮起した。

●御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)
「おいでおいで、土小人。私の手助けをしておくれ。代わりに石をあげましょう。ざらざら渡す石ビーズ、その分手助けをしておくれ」
 精霊呪具を片手に、赤味を帯びた桜色がふわふわと柔らかく踊る。大きな緑色の瞳は穏やかさな微笑みに彩られ、言葉に呼応して、砂金色の光が、実体を結び、114の、小さく陽気な地精を呼び起こす。
「それじゃあ、みんなで荷物運びをしましょう」
 手を上げて明るい声で挨拶をする地精達に軽く手を上げて声を掛け、思い通りの結果に頷いて、周囲を見渡してみる。

●マジック・オーケストラ
「さぁ、開演なのですよ!」
 薄紫の混じる、透き通る様な銀の長い髪は、金の双眸を隠す目隠しと同じ、黒のリボンで両サイドを結んでも、白のフリルをあしらったワンピースの裾に届く。
 添えられた真紅のアネモネと、小さな身体をすっぽりと収める、大きい真白の翼は、七那原・望(封印されし果実・f04836)がオラトリオで有る証拠だ。
 声と共に手慣れた様子で振るわれる、鈴付きの白いタクト。その動作に呼ばれるように何処からか無数の白猫達が群がり、指揮棒に釣られ、気儘に鳴き声の合唱が周囲に響き渡る。続いて、地面からずるりと、彼女の見知った猟兵達の姿を模した影が現れ、彼女の指示を待つ。

●十二天将
「時間質量論ねぇ。確かに、重苦しい時間とかあるわよね。そういうもの?」
「ご主人様、アヤメ先輩に酷い浮気でもバレたの?」
「ええ、今更と言えば今更だけど、現実に魔法を忍術として昇華した一族の情報収集能力を甘く見ていたわ……って、そうじゃないわよ!」
 黒と銀の入り交じったぼさぼさ頭を、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は白一色の霊符をハリセンに変え、跳躍。一つに纏めた黒の三つ編みが宙空で踊らせながら、思い切り上段から叩く。小気味の良い音が周囲に響いた。
「まあまあ、済んだ事ですから、ね?」
「あたしが良くないのよ。全くもう……」
 全てを台無しにした張本人、露出度の高い忍装束を纏った女性が、どうどう、と穏やかな微笑みを浮かべたまま、宥める姿に、ゆかりは溜息を吐いた。怒りの矛先が向く事すら、アヤメと名付けた式神の思う壺である。故に、彼女はそうして、沈黙する他無かった。
「面白い理論だよね。永久機関も夢じゃ無いし!」
「じゃ、あたしもお手伝いしましょうか」
 言葉と共に一度の柏手。そのまま九字印を結ぶ。霊力の籠められた千の折紙が、独りでに馬の姿に折られ、描いた五芒星を潜る。霊力によって吹き込まれた生命は、艶やかな毛並みを持った獣の姿を象り、大地を数度、蹄で蹴った後、一頭がゆかりの前で頭を下げて、座り込んだ。手を伸ばして顎を撫でてやると、上機嫌に鼻を鳴らす。
「良い子ね」
 笑顔を浮かべ、一息。意識を集中し、生じた霊力の余波を収拾し、白一色の52の符に注ぐ。紫色の燐光を纏い、折紙の時と同様に、ゆかりの周囲を取り巻く様に浮遊する。
「騰虵、朱雀、六合、勾陳、青龍、貴人、天后、太陰、玄武、太裳、白虎、天空、六壬式盤の導きによりお招き申す! 天の十二方位を支配する十二天将よ、我が言霊に応え、顕現せよ! 急急如律令!」
 北に、蛇の尾を持つ大きな亀、両脇に羽衣を纏った長身の女神が頭を垂れる。
 東に、穏やかな青年、両隣には青い鱗の龍と金色の蛇が従う。
 西に、にんまりと口角を釣り上げる老婆、全身に襤褸布を纏った砂色の髪を伸ばした身痩躯が佇み、上機嫌に欠伸をする白い大虎の姿が有る。
 南に、朱色の炎翼を纏う鳳。翼を持つ炎の蛇、二柱を支える様に控える、文官姿の糸目の青年。
 術式の負荷に12枚の霊符が焼き切れ、彼等は疲弊しきったゆかりへと慇懃に問い掛ける。
「娘。此度は何用が有って、我等を召喚したか?」
「小さき声に耳を傾けて頂き、感謝致します。この度は、皆様に運びの指揮をお願いしたく、呼び掛けを行った次第です。どうか、この細やかな願いを聞き届けては、頂けないでしょうか……平に、お願い申し上げます」
 霊力の欠乏にふらつく身体を堪え、確りと両膝を付き、四方へと丁寧に頭を下げた。
「ほうほう……荷運びとな。面白い事を宣う娘だねえ」
「まあまあ、太陰。貴女ともあろう御方が、あの建物に有る物が気にならないと言う事もありますまい?」
「六合、分かっているとも。然しね、あんまり人を甘やかすもんじゃあないさ。何時でも呼べて、何でもやるなんて言ったら、気軽に縋ってしまうだろう? 一人くらいは、曲者が居なくちゃあねえ? 意地の悪い婆はこれ以上無いほど適任さ。娘、一度、顔を上げなさい」
「はい」
「良いかい。偶像でも、関わりを生み出せば、存在する確率が生ずる。私達は方位を司る12神として、崇められ、像を作られた。星詠み人が呼んで、有る得るかもしない存在は、世界への存在確率を上昇させた。あやふやだろうと、私達はそう在るとされた以上、御役目があるのさ。分かるね?」
「存じ上げている、つもりです……」
「なぁに、そんなに怖がらなくても良いさ。婆のカビが生えたような説法だからね。ただ、気にして、心に留めて置いてくれれば、嬉しいけどね」
「太陰は相変わらずですね。それでは、小さき娘の願いを叶えましょう。十二天の名に恥じぬ仕事をせねばなりますまい」
「おっと、墓穴を掘ったみたいだね。娘、疲れたろう。こっちの事は任せて、遊んでおいで」
「寛大なお心遣いに、感謝致します」
 それを最後に、ゆかりの意識は途切れ、その身体をアヤメが受け止めた。
「急に呼びつけてごめんね! それじゃあ後は宜しくねー!」
 元気良く十二天に手を振って、羅睺はアヤメと共に駆け出した。

●赤と青の主従
「十二天将に、ノームの軍勢に、影での模倣猟兵、果ては個人猟兵の非公式ファンクラブの面々か。いや、実に面白い光景だね」
「そこへ今から、魔神と悪魔の軍勢が混じる訳ですね」
 白の外套を羽織った黒の軍服に、蒼い長髪が風に撫でられ、微かに揺れ動く。無表情ではあるものの、ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)の蒼い双眸は、この光景に、呆れに似た様な感情を宿していた。
「勿論だとも。加えて、協力体制を敷く為に、話し合いが必要だろう」
 切れ長の黄金、赤のスーツを纏う長身の偉丈夫、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は指を立てる。
「来たれ、偉大なる超越者の僕。契約に基づき、使命を果たせ」
 施された契約の証が蒼い燐光と共に浮かび上がり、オクタグラムを基礎とした多重法陣が地へ描かれていく。
「マグ・メル」
 指の上に展開される紅色の小さな立体の六芒星。それを、天井に向けて放る様に上空へ向ける。圧縮されたオドが拡大されるかの様に、法陣が天井を覆う。展開された空間を割開き、巨大な機動要塞が、空を翳らせた。560体の悪魔は、各部に備え付けられた立体映像装置に注意を払う。
 地上からは、法陣の蒼光に導かれる様に編成された、力自慢の悪魔、総勢107体が隊列を作り、踵を合わせ、二人に向かって敬礼する。
「暫くは待機だが、任務は伝達した通りだ。それでは諸君、励みたまえ」
「私とシーザーで、他の皆様との協力体制を確率します。その後、指揮系統を編成、宛がわれた任務に各自、励んで頂く事になります。とは言え、基本は単純作業。肩の力を抜いて行きましょう。お願いします」
 
●デッドマンと桜雨
「ここは敵の息がかかった場所だけど、雰囲気は自体は悪くない。人々が苦しんでる風には見えないし、音楽を楽しむ余裕すらある……それはそれとして、機材は頂いていかないとだけど」
 シニヨンで両サイドを括った長い黒髪が弾む。灰色の瞳に好奇を宿し、藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は元気良く、腕を振り回した。
「私も、データの中身には触れず、持ち出しに尽力しましょう。家を此方に設置しておきます」
 桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)が、召喚され、気儘に転がってきた白猫を撫でると、後ろ手で纏めた艶やかな黒髪が、穏やかに揺れる。
「お、有難いね。あの大きいのは少し近寄り難いしね。せっせと運んでいくよ! 自分で言うのもアレだけど、私は適当だからさ、後を頼みたいね!」
「分かりましたわかりやすいように年代や項目別にグループ分けしてから、部屋ごとに運びますね」
 憑依式の猫じゃらしやら鼠型の玩具やらに、扇に居る精霊達がじゃれつく白猫達と遊び始めると何匹も寄って来るが、楽しそうなので、今は其の儘にして、落ち着いた藍色の光を持つ、蝶の形の石を浮かび上がらせて、聖痕の光を宿した手で触れる。
「触れてみて下さい」
「本物の蝶みたいだね、っと」
 腸の中に見える朧気な屋敷の風景を灰色の瞳は捉え、躊躇う事無く、触れる。見えるのは、さらさらと花弁を揺らす、桜の庭に覆われた、広大な屋敷。風に攫われた一片が、気紛れに掌に現れて、美雨は気分良く、首肯した。
「土産に一片、持って帰るよ。良い所だね!」
「わかりやすいように、年代や項目別にグループ分けしてから、部屋ごとに運んで行こうかと」
「おっけーおっけー! 頼んだよー!」

●もふもふのモノクロフレンズ
「マザーさんが組み込まれたマザー・コンピューター……だじゃれかな?」
 額に黒の二本角、白髪白瞳に尖った耳に、紅白のハッキリとした山伏装束、茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)が、気儘に口を開く。
「同じことを考えていました……」
 連れ立っていた対照的な黒髪、血色パーカーを羽織った血色の悪い猫背気味の痩身、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は、トヲルの言葉に頷いた。
「まーそれはおいといてー」
 流れる様に、何かを持った様な動作から、イリャルギの方にそれを持って行く。
「あ、はい」
 イリャルギはそれを受け取る様な動作の後、何も無い場所へ、空気を置いた。
「引っ越しの時間だぜ、あーさん! 資料の! たくさんあるってゆーし、がんばろー!」
「えぇ、これは気合いを入れて頑張りましょう、トーさん」
 研究棟を見上げ、周囲を走り回る白猫や、現れる悪魔やら魔神やら影の猟兵やら、何か良く分からない神様やら、ことある毎に頽れる非公式ファンクラブ会員やらに緩い対抗心を燃やしながら、トヲルは深く息を吸い、キマイラの身体を作り替える。骨格と筋繊維の変容、二足に適した物から、四足に適した構造を作り上げる。原型は犬猫のそれ、積載限界と簡便さの両立の為に、次に胴を思い切り伸ばし、膨張させ、内臓を下部へ移動させて、適した形に変えた後、分散させる。後部には両開きになる扉を設け、体毛は其の儘にした。空気が入る方が気持ちが良いと、胴の両横に空洞を作る。
「わぁトーさん、でっかいもふもふ……後で少しもふらせ……いやいや……」
 変化の間、白猫を抱き上げて可愛がっていたら、トヲルが白毛のファンシーなバスに化けたのに気付き、思わず口走った言葉に、イリャルギは我に返り、二度首を振る。
「スーさんはおれにつめこんでね! そんで上か運転席に乗ってね! もふだよ!」
「あ、じゃあ運転席で……もふ……ではなくて、はい。どんどこ詰め込んでいきますから、重かったら言ってくださいね。荷下ろしの場所は、あの蝶の石の場所で良いでしょう」
「おっけー! あ、あとオーライオーライもしてね! 思った以上に後ろが見えづらかったから!」
「うむ、大きいですもんね……オーライオーライもお任せを」
 猫顔のトヲルの頭を撫でてから毛並みの良い運転席に乗って研究棟の隣に停車させた。

●混成部隊
 十二天将は呼ばれた者の望みに近付くだろうとシーザーの協力体制について快諾した。望の召喚した魔力の高い白猫は、十二天将白虎が指揮下に置き、実質の増員となる。望の呼び出した影の猟兵達は意思を持たないが、元々望自身が一任する予定だったのも有り、すんなりとシーザーとステラの指揮系統に組み込まれた。
 澪の親衛隊は本人の一言で指揮下に入る。ただ、相性の良い魔神と悪魔によって監督する事を、二人が約束した為、無駄な軋轢は生まれず、互いの親交は直ぐに育まれた様だ。選出されたのはステラ・リデルの非公式ファンクラブ会員の悪魔であった事は、知っていたとしても、それを指摘する事は無かった。
 桜花の呼び出したノーム達は、最初、悪魔に怯えたが気さくに接する彼等に警戒は早くに解かれ、彼等と共同作業を進める事になった。変わりに桜花自身は別道しても良いと言う条件を譲歩案とした。
 ただ、ノームは小さく、運搬できる物も限定的な為、カイが築いた一時拠点にて、年代、項目分けを手伝う形となる。
  中継役はトヲルとイリャルギ、荷下ろしを美雨が手伝い、運搬が終わり、手の空いた物から、仕分けと荷下ろしに追加される事になる。それとは別に、シーザーの軍勢は直接、自身の機動要塞へと機材を運ぶ部隊も編成され、事前に了承を得た。かくして、猟兵達の展開した情報接収作戦は、滞り無く展開されていく。
 接収の方法は単純だ。バケツリレーを基盤とした物量作戦。シーザー、ステラの飛行能力を有した部隊は、特にセキュリティの用意されていない窓からの侵入、魔力を用いて機材を浮遊させての宙空運搬の二種となる。
 小回りの効く白虎率いる白猫部隊は、高い魔力をイカし、機材を浮かせ、式神の馬に乗せての繰り返し。ただし、飽きるのが早いので白虎は士気を保つ為に多大な労力を割き、目に見える程、疲労を蓄積していた様だ。

●マザーの歌(澪)
「僕でも持てるの、あるかなって思ったけど、皆の御陰だね。後でお返しとか……」
 必要だろうかと、人差し指を唇に当て、巨大要塞で翳った空を見上げてから、この世界の端末を弄る。生きているローカル・ネットワークの中で踊る、マザーへの、賛美の記事、そして、付随された音楽ファイル。規格の合う、手持ちのイヤホンを繋いで、流してみる。メドレーの様で、一曲目はサイケデリックな曲調、次は反骨心に溢れながらも、女性のらしい声音を響かせるロック、かと思えば澄んだ湖を思わせる様な、透明感の有るセミ・バラード。嵐のように吹き付ける、勢いの有るオペラ調、途切れ途切れのフィルムを見せられる様な感覚を覚える声音に、ぽつりと言葉が零れた。
「すごい……勉強にはなるかもしれないとは思ったけど」
 どの様な曲も、乱れ無く完璧に歌い上げる技術、作詞作曲のセンス。彼女にとって、音楽は箱庭を作り上げる様な物に他ならなかったのだろう。気に入った物の原曲を何曲か落とし、数度のリピート。完成度が高いのに、なぜか、寂しさが込み上げて来る。それを埋める様に、澪細い喉から自然と、歌声が溢れた。
 同じ曲は、何処にも存在しない。情報の海に切り出されるのは無感情なデータだけだ。気軽に楽しめる物では有るが、それ以上の利点は存在しない。例えば、溢れる感情による些細な歌詞違い、観客を盛り上げる為のパフォーマンス、些細な昂揚による演奏の違い。心の動きによって紡がれた、些細な模倣。一人のオラトリオの小さな歌声は、この場に於いて、彼だけが作り出す事の出来る、奇跡と言って良かった。
(つまらなかった、のかな……)
 寂しいと感じたのは、欠けていたからだと楽曲を口遊みながら、澪は考えた。

●休憩時間(美雨)
 予めダウンロードした楽曲をランダム再生にし、イヤホンから聞こえて来るノリの良い楽曲をバックに、美雨は優美な風景に、ひっきりなしに送られて来る機器をイリャルギと共に下ろして行く。下ろした荷物をノーム達が、桜の下で一生懸命に運び、仕分けをして、屋敷に運び込んでいくのは、微笑ましい光景だった。隊列をかき乱す様に割り入り、勢いの儘、思いの儘駆けて行く白猫の軍勢はご愛敬。統括の白虎が念話でそっと置くのだと何度も注意している様で、はっとしては浮かせていた機器をそっと置いて、気分の儘に、へたれ込む。協力している方位神の方々が、休憩を設けてくれたタイミングで、屋敷から外に出て、マザーの楽曲を探す。傍らで澪が、その細い喉を震わせていた。良い歌声だと、イヤホンを外して聞き入りながら、端末を弄る。公開データを検索。マザーの顔写真は山程掲載されており、楽曲もまた然りだ。
「へぇ、マザーってこんな人なのか」
 イントロから気分に合った3曲を端末にダウンロードして、順番に聞き流す。セミ・バラードの落ち着いた曲調から、弾む様なピアノを背景に、陽気に歌い上げるジャズ。最後に、深く深く、海底に沈んで行く様な、物静かに、力強く歌い上げるバイオリンソロの悲しい歌に聞き入った。
「確かに、どれも良い歌だ」
 陽気なジャズを口遊みながら、蝶の石に触れて、屋敷に戻る。

●桜庭園に響き渡る
 ノームとの共同作業となり、賑やかになった屋敷内で、急ぐ必要は無くなったものの、カイは作業を黙々と続けていく。美雨が口遊んだ歌に興味を引かれ、聞いてみる。
「マザーの奴さ。聞きながら作業しても、誰も文句言わないと思うよ。ノームの皆も確りしてるしさ! 端末ちょっと貸してくれたら何曲か入れとくよ?」
 肩を押された気がして、カイは素直に端末を渡し、適当に放り込まれた楽曲を流す。多彩な色彩を持つ、色々な表情を持った歌声が、屋敷中に響き渡る。
「……考えてみれば不思議な事ですよね。今ここに居ない人達の歌声や演奏が聴けるなんて」
 少しの間聞き入っっていると、精霊達に急かされて、慌てて首を数度振る。
「そろそろ作業に戻らないと……」
  ただ、白猫達の気持ちを代弁した白虎とノーム双方に頼まれ、楽曲は屋敷の中で流したままの作業となった。白虎が十二天に有るまじき、疲れた顔をしていたのは気の所為では無いだろう。

●音楽と時間質量の相関性
「数打ちすれば重大なデータだって、1つや2つは紛れ込んでいる可能性はあると思うのです、きっと、多分……などと言いながら、目を逸らす事態にならなくって、正直ホッとしましたね!」
 独立して研究棟に入り込んだ桜花は、置かれているデータ・ストレージを吟味し、自身の勘を信じて持ち込んだリュックにぽいぽいと片端から放り込んで行く。貼られたラベルから音楽媒体に関わる物ばかりなのが、分かり易い。彼女がそのデータを抜き取っていく動機は単純だった。
「もともと、比類なき歌姫であったわけですから。時間質量論に、音楽も関係している気がするのです。音楽も、数学も、絵画も、昔は、神に至り、神を称えるための学問であったと聞きます。音楽と、その音の広がり方は、時間質量論に通じる気がするのです」
 伝播、単純な現象だ。時間に質量が有るとすれば、一粒、時間が落ちる度に波紋が広がる様を、音楽から見出した可能性も、有り得るのだ。嘗ての哲学者が、流出論を唱えたのと、何の違いも有りはしない。

●記す為に
「時間質量論ですか……マザーは、何を求めていたんでしょうか」
 あらゆる者達によって的確に運び出されていく研究棟を、小さな影が横切っていく。横髪を垂らした銀の瞳。襟元と留め具に銀の装飾が施された青の外套。少年の姿をしたヤドリガミ、真月・真白(真っ白な頁・f10636)は、未完成の歴史書(アイデンティティ)を小脇に抱え、膨大な資料を掻き分けて、中から簡便に持ち歩ける物を見繕う。それに文句を言う者は居ない。外からは、他の猟兵が口遊む歌が聞こえ、暫しの間、耳を傾けた。これも、遺棄される小さな過去(歴史)の一つに、違いない。

●青空密閉型ヘッドフォン(望)
「ねこさん達には、流石に働いて、なんて、わたしからは言えなかったですけど、指揮してくれる方が居て安心したのですー」
 白虎の指揮提案は予想外だったものの、彼の統率力は高く、また協力体制が敷かれた事によって、猟兵達は、積極的でなくても良い環境となっている。特に望に出来る事は少なく、遊んでいても不満を言う者は居ない。
「音楽ホールで歌を歌うのもいいですけれど、せっかくこんなに曲があるのですから、たまには、のんびり音楽鑑賞もいいですね」
 遮音性の高い有名メーカーのヘッドフォンを装着する。通常は出来ない、青空の下で、無音に近い環境を構築して、目隠しの下の金瞳が、感慨に耽る。
「わたしの胸に響くかはわからないですけど、堪能させてもらうのです」
 綺麗に音の分離が体感出来る電子制御、空間を感じさせる左右の音の響き、拡がり。確りと響く低音、伸びやかな高音、高級機ならではの、ハードウェア制御のみで実現される疑似立体音響、其処に飛び込んでくる、多種多様な世界観。音楽と、幅の広い音域、完璧と言えそうな音感。世界最高の名は、確かに、上質な時間を望に提供した。
「好みの曲はありましたし、後で音楽ホールで歌ってみましょう」
 引き込まれる要素は多数有ったが、胸に響いたかと言えば、そうでは無かった。技量もセンスも冴えているが、何処かで、肝心な物が抜け落ちていた。

●モノクロフレンズのちょっと寂しい羽休め
「オーライ、オーライ。はい、オッケーでーす」
 蝶の石の付近と、屋敷の中に湧き出た535本の影手が、イリャルギの言葉に従い、動物バスとなったトヲルを丁寧に案内し、荷下ろしを手伝っていく。
「この辺りで区切り、でしょうかね」
 監督役となっていた十二天将の一人が、後は此方で処理すると申し出てくれたので、お言葉に甘えて、イリャルギとトヲルは現場を引継、羽を伸ばす事にした。
「音楽だって、あーさん!」
「ヨシ。先程から流れていましたけど、改めて、きちんとした音楽観賞タイムですね」
 しゅるりと変化を解いたトヲルと共に、市街地に繰り出して、マザーのホログラフィ映像によるリペア・ライブが行われる施設を見付け、売店で幾つか軽食と飲み物を買って、暗い室内で、開演を待つ。
 豪快に頬張るトヲルの隣で、イリャルギはもそもそと食べ進めて行く。食べ終わると丁度、ブザーが鳴り響き、なけなしの照明が消え、施設内のホログラフィ投影装置が、マザーの在りし日の姿を、声と共に浮かび上がらせる。
 痛みを忘れた男の悲哀、狂気に少しずつ犯され、沈んで行く男の悲哀。続けて、悲しい旋律が館内に響き渡ったと思えば、次に響くのは穏やかな、救済のバラード。その次は日常を謳歌する人々の優しい旋律。ぐるぐるとめまぐるしく移り変わるシーンに、来場者は当然の様に引き込まれていった。
「わー……! さすが歌姫さん、とっても胸を打たれるよ」
「えぇ、さすが世界最高の歌姫、ですね」
 ライブの途中で歓声を上げたトヲルに、イリャルギが人差し指を口元に当て、静かに、のジェスチャー、トヲルは思わず両手で口を塞ぎ、次にぷは、と息継ぎをして、二人で声を潜めて、感想を言い合った。
「素敵な歌声と曲です……」
「……どーしてフォーミュラになっちゃったのかな」
 めまぐるしく移り変わるシーンを切り取って、印象に残るフレーズを口ずさむと、隣から、珍しく寂しい呟きが聞こえて来て、耳を傾けて、少し考えて見る。
「時間質量論を研究する内に、何か思うことがあったのでしょうかね……素敵な歌声なのに」
 それきり、少しもの悲しさを抱えた儘、言葉を重ねるのを止めて、マザーが彩った、様々な楽曲を二人で聞き入った。

●マザーの魅力について(澪)
 澪はマザーの歌を口遊みながら、目処の付いた研究棟から離れ、何となくフラフラと市街地を巡る。市場は活発で、それなりに身なりの良い人達が、時には酒を飲み交わし、時には質の良い食事を、見知った顔と楽しそうに頬張っている。
 そんな中で、大型の拳銃を刺したホルスター、無骨な風除けゴーグルに実用性を重視した水筒、少し酒が入っているのか、上機嫌の赤ら顔で、ややフラつきながら、歩いてきた男性に、声を掛けた。
「すいません。少しだけ、お伺いしたい事が有って……あの……貴方はマザーの事はお好きですか?」
「うん? まあ、この拠点で嫌いな奴は居ねぇだろうが……俺も好きだぜ」
「彼女の魅力を、知らない人に一つだけ教えるとしたら、何だと、思いますか?」
「そうだな、万華鏡みてえな所だなァ。曲一つ一つが世界を作ってるみてえでよ。すげぇ浸れるんだよなァ……落ちる時は海の底、浮上する時は地に足が付いて、跳ねる時には緑が芽吹く、ってな具合にな。この辺はまだ、少し脚を伸ばせば緑も水も見えるから、良いけどよ。基本荒野だからなァ。ホロスコープの先に、色んな色彩が見えるって言うのは、魅力的だと思わねぇか?」
「確かに、そうですね。有難う御座います」
 赤ら顔の儘、歯を見せて笑った男に頭を下げて、他の住民に時間の許す限り、同じ事を聞いてみる。才能を愛した人も居た。彼女の完璧さを愛した人も居た。全ての楽曲が好む事は出来ないが、代えの効かない作品が有ると熱弁した人も居た。マザーが人を惹き付ける理由は、様々だったが、一番腑に落ちたのは、最初の、赤ら顔をした男の言葉だった。

●簡易ホールに響き渡る
 小さな女の子が、簡易ホールの演者として立った時、会場に居た観客は、少し呆気に取られた。年少であろうと、才が有れば関係の無いことだと分かって居ても、真紅のアネモネと大きな翼が印象的な彼女を信頼するのは難しかった。
 簡易ホールに備え付けられている再生機器からら、クラシックを基礎とした穏やかなマザーの曲を、楽しそうに選んで、大きく口を開き、少女が喉を震わせる。
 子供の遊戯等と笑い飛ばす事は出来なかった。音程を保ちながら、少女とは思えない伸びやかな歌声、確かな技術に裏打ちされた歌唱力は、観客を満足させるには十分だった。一曲が終わると、会場から微笑ましい拍手が、歌手で有る望に送られた。

●寛ぎの時間
「良いタイミングで足を運んだみたいだね」
「彼もそうですが、オラトリオの皆さんは、音楽には縁が深いのでしょうか?」
 望の歌唱に、シーザーとステラは軽い拍手を送りながら簡易ホールを立ち去り、当ても無く、拠点内を歩く。
「悪魔としては負けていられないね。今度、作曲家の夢中で、演奏を披露してみようか」
「昔、同じ様な事をやっていたと言われても、驚きませんよ」
 体裁の整えられたムービーシアターを潜り、悪魔に愛された女の話を見る。結末は、悪魔が自ら身を引き、彼女の幸福を祈り、記憶を消すと言う物だった。残された彼女は、悪魔のことを想い、欠けた記憶が埋まらないまま、有り触れた日々を過ごす。
「ふむ、良い出来だ」
「はい、良く出来た物語でした。どうして此方を?」
「事実と虚構の差を比べると、面白そうだと思ってね」
「事実は小説より奇なりとは、良く言ったものです……」
 電子ゲーム筐体が置かれた空間で戦術シミュレーションに興じていると、強豪を押し退け、最終的にシーザーからステラの教導的な内容になり、ユーザー達を沸かせ、ボードゲームが置かれた施設では、シーザーが賭けを持ち出して来る者達を端から打ち負かし、追い詰められた所でステラとの勝負を挑み、借金を払い切れない程、膨れ上がらせ、悪魔の契約書による生涯を犠牲にした可哀想な小悪党が発生した。彼の生涯は閉ざされたと言って良い。店側も迷惑していたらしく、行為自体は歓迎されていた。

●解読する歴史書
「食事はそう期待も出来ないからね。良い時間だ。酒場に向かって見ようか」
「お酒は、その土地で味わうのが良いのでしょうか」
「地酒には期待出来ないがね。概ね、そう言う事だ」
 木造建築の品の良い酒場に足を踏み入れると、静かにグラスを拭く、バーテンダーの姿が有った。給仕の姿は無く、テーブルの数は多くない。カウンターに連れ立って座り、シーザーは一番高い物を、ステラは甘めの果実酒を頼む。
「つまみは要らないのかい?」
「適当に頼むよ。先払いで良いかな?」
 即金にし易い宝石類を、数個無造作に並べると、バーテンダーは一つ首肯して、受け取った。此所では貴重と思われる食糧を遠慮無く、振る舞う。
「珍しいね」
「それはこっちの台詞だ。まあ、この辺なら、偶に妙に羽振りの良い奴は居る。それだけだ。出来るだけ見合った物を出す。奥で本読んでる奴と同じで、ゆっくりしていくと良い」
 年代物と思われるウィスキーを取り出して、氷を砕く。水割りで出された品の良いグラスに口を付ける。ステラには飲み易いワインが、丸いグラスに注がれる。
「頂きます。所で、奥の少年というのは」
「あいつだよ。何処でも良かったんだろうが、酒は出せないしな。何か御馳走するのかい?」
「そうしよう。同じつまみと、ナッツ類を彼に」
「あいよ」
 皿が置かれる小さな音に、灰色の瞳が一度、資料から離れ、運ばれて来た食事を見遣る。それから、マスターが親指で示した方に目を向け、一人、首肯した。
「マザーの資料だね」
 声を掛けられるとは思って居なかったのか、外した視線を戻す。もう一度、首肯。
「僕は歴史書、即ち世界の仕組み上、棄てさらなければいけない『過去』を記し、永遠とするために生まれた存在です。だからなのでしょうか、時間を研究していたマザーの、彼女の『過去』も調べ、知って、記さなければいけないような気がするんです」
 とは言うものの、真白の解読作業は芳しくない。持ち帰った資料の山は三割も崩れておらず、休憩時と考えて、素直に奢られた撮みを囓っていた。
「努力は無駄では無いよ。励むと良い」
「有難う御座います」
 膨大な資料と再び向き合い 真白は文字の羅列を意味ある言葉として捉えようと懸命に目を凝らし、頭を働かせ、記述の解読に努めた。遅遅として進まない作業に、色濃く疲労の色が滲み始めた頃、奇妙な客三人の作る空気に耐えきれなくなったバーテンダーが、店内に音楽を放流する。
「世界最高の歌姫ですか。勿体ないことですね」
「評価をされるだけの価値はあるみたいだね。此所の様に、それを楽しむ余裕は、ないようだが」
 寄り添う様な歌声、バーテンダーの好んだ曲なのだろう。ノスタルジックな雰囲気を纏う、穏やかな楽曲。旋律の少ない、ハッキリとした音は、時間の流れを忘れさせる様で、真白は目を閉じ、彼女の思いに思考を馳せる。
「これもまた、彼女がこの世界に記した『歴史(いのち)』ですね……」
 未だ、彼女の考えが解けなくとも、彼女の想いを受け止める事が出来なくとも、その一端は、確かに歴史書に記されて行く。

●夕刻の話
 柔らかな感触と優しく頬を叩かれる感触に、思わず目を覚ます。まだ気怠さの残る身体は、腕を上げようとしても、足を上げようとしても、言う事を効かず、ぼんやりした視界が焦点を結んで、漸く像を結んだ。見慣れた忍装束に支えられた頭と、黒と銀の入り交じったボサボサ頭が手の甲で頬を叩く光景。意識と認識が合致して、がばっと上体を起こす。
「作業は? どうなってる?」
「順調だよ。って言うかもう終わってるんじゃない? ご主人様、皆を呼んだ所で倒れちゃったもんね!」
「そう、なら良いわ。此所は?」
「宿を取りました。ゆかり様、どうなさいますか?」
「折角の羽休めでしょ? 見て回らないと損じゃない?」
「分かりました。それでは、失礼致しますね」
 照れを隠すように唇を尖らせた主を横抱きにして、アヤメは外に出る。この辺りは、彼方此方でマザーのホログラフィ映像が流れ、何処へ行ってもマザーの歌が付いて回る。不思議と耳障りでは無いのが、彼女の実力なのかもしれない。
「マザーになる前は最高の歌姫で、やり手の研究者か。二足の草鞋よね」
 匂いに釣られて、手近な軽食の屋台に入り、暖かい食べ物を幾つか頼む。天幕の張られた簡易の客席で三人で、シンプルなホットサンドを囓る。
「天才だねー」
「アンタが言える事じゃ無いでしょ」
「ふっふー、ご主人様、もっと褒めて崇めても良いんだよー」
「叩けないから余計に腹が立つわ……!」
「僕もこの世界の法則を全部知ってる訳じゃ無いけどさ、多分ね、解放は出来ないよ」
「やっぱり望み薄か。何が有ったのかしらね。調子戻らないわね……ホテルに戻りましょうか」
「なら、僕はどうしよっかなー。お邪魔かな?」
 夕刻が過ぎ去り、収集が終わった頃に、ゆかりは十二天将に供物を捧げ、手を合わせて黙祷し、丁寧に感謝の意を示した。

●終幕
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165は全てが終わった後、手伝ってくれた親衛隊の面々に歌を披露した。マザーの作品は、彼に何らかの刺激を与えたかも知れない。
 藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)はマザーの物に限らず、気に入った楽曲を多数発掘し、上機嫌に目を細めた。掌に落ちた桜の一片は、栞にするのも良いかと考えた。
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は手に入れた音楽媒体に関するデータを片端から分析し、聞き入っていた。何か、ヒントを掴めたかも知れない。
 真月・真白(真っ白な頁・f10636)はほぼ貸切となったバーで、手に入れた資料と一晩戦い続けた。朧気でありながらも、歴史書はマザーの輪郭を、その見に記しただろう。
 七那原・望(封印されし果実・f04836)は、歌の披露を終えた後、もう暫し、青空の下でヘッドフォンによる音楽鑑賞を楽しんだ。
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は何時ものように従者と夜を過ごす。
 茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)とスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)の二人は何となくマザーの歌を口遊みながら、夕暮れを連れ立って歩く。
 シーザーとステラは要塞と共にウルブス・ノウムに帰還後、収集したデータの解析に取り掛かる。資料は残らずウルブスの糧となり、解明された情報は猟兵達に余すこと無く公開される手筈だが、それには、もう暫く時間が掛かるだろう。
 桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は一連の仕事を終えた後、汗を拭う。夕暮れに染まる桜を見上げ、この拠点を少しだけ見て歩く。皆が不自由なく暮らしているのに、何となく安心して、自然と笑みが零れた。
 そうして、猟兵達は依頼を終え、束の間の休息の後、戦場に戻っていく。もう一息とは言え、日常に戻るのは、少しだけ、遠いだろう。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年09月17日
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵