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アポカリプス・ランページ⑧〜質量と因果

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●時間質量論
 カナダとの国境にほど近い巨大拠点には、アポカリプス・ランページの最中であっても人々が比較的平和に共同生活を行っている。
 それはこの後輩の世界にあって奇跡とも呼ぶべき場所であったことだろう。
 国境を超えた向こう側には、豊かな自然が広がっている。
 それが何故なのかは未だわからないが、けれど、この巨大拠点には秘密がある。

『フィールド・オブ・ナイン』の一柱『マザー・コンピュータ』の組み込まれた世界最高の歌姫『マザー』の出身地がこの地であったことは偶然であろうか。
 彼女の初期の研究論文『時間質量論』が残されている。
 その論文が如何なる意味を齎すのかは未だ理解されていない。『プレジデント』が語った言葉もあるだろう。
 不可解な真実だけがモザイクのように猟兵達の前に広がっている。

 けれど、この論文の全てを持ち出す事ができたのならば、猟兵達は一歩また世界の真実に近づくことができるかもしれない――。

●アポカリプス・ランページ
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回ストレイト・ロードが繋がったのは『セントメアリー・ベース』……この荒廃した世界にあって比較的平和に人々が暮らす拠点(ベース)です」
 この拠点は巨大であり、同時に『時間質量論』と呼ばれる研究論文のデータが残されているようなのだ。
 その実体は未だ明らかになっていない。
 何故ならば、その研究論文のデータはあまりにも膨大なのだ。

「そうなのです。この論文が如何なる意味を持つのかは、未だ私達には判別ができません。けれど、この論文を紐解くことができたのならば、何かわかることもあるかもしれません」
 それならばデータを吸い上げてしまえばいいのかもしれない。
 けれど、ナイアルテは頭を振る。

「データが膨大である上に、それらを記録したコンピュータや記録媒体が山のように存在しているのです。これを安全な場所まで運び出すこともまた一苦労……そこで」
 なるほど、と猟兵たちが頷く。
 あまりにも膨大なコンピュータ機器や記録媒体の山を自分たちが運び出せばいいというわけである。
 それによって『フィールド・オブ・ナイン』の『マザー・コンピュータ』に与えられる支援も断ち切ることができるというのならば、一石二鳥である。

「どうかよろしくお願いいたします。ちょっとやそっとでは、運びきれぬ量故、何か皆さんのお知恵をお貸し頂けたらと思います」
 ナイアルテは、力仕事なら自分も得意なのですけれど、と姿に見合わぬことをいいつつ、猟兵たちを送り出すのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『アポカリプス・ランページ』の戦争シナリオとなります。

 今回のシナリオに戦闘はありません。
『セントメアリー・ベース』と呼ばれる比較的平和な巨大拠点に残された『時間質量論』の研究データが残されたコンピュータや記録媒体を大量に運び出すシナリオになります。
 大量に機器があるだけでなく、その重さもまた一般の人間では運び出せぬほどの重さを持っています。
 猟兵の皆さんの知恵と力で、この記録媒体を運び出し『時間質量論』の研究データを確保するシナリオになります。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……大量の記録媒体を運び出す。

 それでは、『フィールド・オブ・ナイン』の齎すカタストロフを阻止する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『時間質量論を運び出せ』

POW   :    腕力に任せて一気に運ぶ

SPD   :    乗り物や道具を利用する

WIZ   :    より重要そうなデータを優先して運ぶ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャルロット・シフファート
時間質量論…

まるで骸の海の真実を言い当てていたかのようね

まぁいいわ
私はUCでデータ、紙媒体運送特化型の機械類を作り出して時間質量論の情報を持ち運んでいくわ
私本人は重要そうだと思った書類の一部を手にしながら紅茶を嗜みながら考察していくわ

…マザーは、クライストが撃破され南方が順調に進める準備が整っていたとはいえ、アメリカの奥地に座していた

そして他の序列の高いフィールド・オブ・ナインも大陸東部にて座していたわ

なにか関係があるのかしら…?
そもそもあの序列は何を基準として決定づけられているの?

そんなことを思いながら紅茶を飲み、考察を勧めていくわ



『マザー・コンピュータ』に組み込まれた世界最高の歌姫『マザー』。
 彼女が初期に研究した『時間質量論』のデータは膨大である。この巨大拠点『セントメアリー・ベース』に残されているデータは、膨大な記録媒体が残されている。
 そのどれが優先度が高いかは未だわからず、その論文の全容もまた同様である。

「時間質量論……まるで骸の生みの真実を言い当てていたかのようね」
 そう呟いて目の前の膨大な記録媒体を見上げるのは、シャルロット・シフファート(異界展開式現実改変猟兵『アリス・オリジン』・f23708)であった。
 彼女は、偽典星造・漸進せよ人の承たる鋳の証(スワンプマン・オブ・ヴィシュヴァカルマン)をもって汎用性と拡張性に長けた星霊炉運用技術でもって模造された紙媒体運送特化型の機械類を作り出し、その膨大な量の記録媒体を運んでいく。

 運び出すのは機械に任せておけばいい。
 アポカリプス・ランページもいよいよ佳境に移り変わろうとしている中、この巨大拠点が比較的平和を甘受していることにシャルロットは息を吐き出す。
 この巨大拠点の人々は少しばかり生活に余裕があるようだった。
 とは言え、他の拠点に比べればという話であり、荒廃した世界にあってはあらゆる物資が足りないこともまた事実であろう。
「……『マザー』は、クライストが撃破され南方が順調に進める準備が整っていたとは言え、アメリカのお口に座していた」

 紅茶を楽しなむ余裕があるのはシャルロットにとっては僥倖であったことだろう。
 運搬作業を機械化したことによって思考の余裕が生まれる。
 このアポカリプス・ランページによって齎された情報は様々である。『フィールド・オブ・ナイン』と呼ばれる『オブリビオン・フォーミュラ』たち。
 その九柱のうち、六柱が復活を遂げている。
 彼らもまた、大陸東部に座していた。

 そこに彼女は何かしらの関係があるのではないかと考えているようだった。
 席次で振り分けられた『フィールド・オブ・ナイン』たち。
 それが序列と呼んでいいものなのか、それとも単なるナンバリングであるのかもわからない。
「そもそもあの序列は何を基準として決定づけられているの?」
 紅茶の香りは彼女の心身をリラックスさせてくれる。
 けれど、思考をまとめても未だ欠けている部分があるだろう。未だ相まみえることのない『フィールド・オブ・ナイン』。

 そして、復活を阻まれた『オブリビオン・フォーミュラ』たち。
 この関係性を紐解くには、『時間質量論』が関係しているのか、その正誤さえも未だ見つけることはできない。
 ゆえに、彼女は紅茶のカップをおき、立ち上がる。
 未だデータの搬出は終わっていない。それだけこの『時間質量論』の研究データや論文が膨大であり、同時に世界の根幹に迫るものであったのかもしれないという可能性があるということだろう。

「考察を進める時間があっただけよかった、と思うべきかしら」
 シャルロットは紅茶の残り香を残し、『セントメアリー・ベース』、そのデータ搬出の進捗に目を通すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ歓迎

HAHAHA! こういう掃除はメイドの本領発揮デスネー!
行きマスヨ、バルタンズ!『バルル♪ バルル♪』

114体のミニ・バルタンを総動員!
拠点の入り口には車両を横付けしマショー。
すなわち、装甲蒸気機関車やクッキングカーであります!
割れ物は大事に梱包してから、搬入して固定であります!
多少の重さならばミニ・バルタンでも大丈夫デスガ、超重量物はワタシが運びマース!
大丈夫、ワタシはキャバリアレベルの武装くらいなら扱えるパワーがありますゆえ!
データの解析は頭の良い猟兵たちに任せて、ワタシはデータの確保に勤しみマース!

しかし、この人数を動員しても底が見えないとは、膨大な量でありますな……



「HAHAHA! こういう掃除はメイドの本領発揮デスネー!」
 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の高らかな笑い声が『セントメアリー・ベース』に響き渡る。
 この巨大拠点たる『セントメアリー・ベース』は比較的平和に人々が暮らしていた。それはこの地にオブリビオンの影響が少なかったことをしめしているであろうし、北方に広がるカナダとの国境付近であったことも影響しているのかもしれない。
 アポカリプス・ランページの舞台となったアメリカは言うまでもなく荒廃した世界である。

 しかし、見える範囲のカナダは自然が豊かであったようにも見えるのだ。
 如何なる理由からか、この巨大拠点が無事であったことは、猟兵たちにとっては不幸中の幸いであった。
 この地に眠る大量のデータは『時間質量論』と呼ばれる研究データが大量に残されている。
 記録媒体は様々であり、それら全てを運び出すのは相当な労力が要される。しかし、バルタンこそ、このような状況にうってつけの猟兵であったと言えるだろう。
「行きマスヨ、秘密のバルタンズ(シークレット・サービス)!」
『バルル♪ バルル♪』
 一斉に飛び出したミニ・バルタンズが『セントメアリー・ベース』の中を駆け出す。

 その数、実に114体!
 さらにバルタンは拠点の入り口に車両を横付けする。即ち、この拠点に残されていた装甲蒸気機関車やクッキングカーである。
 すでにアメリカ大陸の半分近くがストレイト・ロードで繋がっている。
 このストレイト・ロードを使って大量のデータを搬出していけば、無事に『時間質量論』のデータを持ち出せるというものである。
「割れ物は大事に梱包してからデスヨ! 搬入してから固定することを忘れてはいけないであります!」
 バルタンの号令が飛び、『ミニ・バルタンズ』たちがびしっと敬礼して、駆け出していく。

 多少の重さならば『ミニ・バルタンズ』たちで十分であったが、このベースにあるデータ保存の媒体はとにかく重いのである。
 超重量のものはサイボーグであるバルタンが執り行う。
 しかし、如何にサイボーグとは言え、大丈夫なのだろうか。いや、彼女はキャバリアレベルの武装ならば扱えるパワーがあるのだ。
「さて、データの解析は頭の良い猟兵たちに任せて、ワタシはデータの確保に勤しみマース!」
 バルタンはサイボーグメイドたる本領を発揮し、次々とデータを搬出していく。
 かれこれ、相当な作業をこなしてきたはずなのだが、未だ底が見えぬ『時間質量論』の研究データ。

 山というよりは、これは最早、谷のような様相さえバルタンは感じてしまう。
 それほどまでに『時間質量論』という論文は奥深いものであるのだろう。
「しかし、この人数を動員しても底が見えないとは……」
 膨大な量とは聞いていたが、これほどのものとは思えなかった。
 それでもやらなければならない。

『フィールド・オブ・ナイン』の一柱、『プレジデント』が語る言葉にもまた『時間質量論』という言葉があったことを思い出す。
 それが如何なる意味合いを持っていたのか、バルタンにはわからない。
 けれど、己が働くことによって導くことのできる解があるのならば、バルタンは迷わず働くだろう。

 なにせ、彼女はバトルサイボーグメイドなのだ。
 そう、戦闘も奉仕もなんでもござれ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
ふむ…正直、僕もどちらかといえば非力な方だしなぁ…
でも多分協力すれば運び出し自体は難しくはないと思うし
こう…引っ越しとかの要領でいければ…コツがあるって話も聞くし

ちょっと考えた結果
【指定UC】で僕の親衛隊?とかいうのを名乗る人達呼んでみます
なんかまた増え…ま、まぁいいや
とりあえず各自手分けして持てそうなもの運び出しお願いします!
声かけあって、無理はせずでね?
腰痛めないように気を付けてね!?

僕も風魔法を使って物を浮かす事で少しでも重さを緩和しつつ
持てる範囲のものを頑張って持って行きます
いかにも重そうなのしかなかったら
重要そうなものを最優先に

こんな大きいもの、最初どうやって持ち込んだんだろう…



『時間質量論』と呼ばれる研究データが残された『セントメアリー・ベース』は、未だ多くの記録媒体が残されていた。
 それは最早山というよりも底の見えぬ谷のような有様であった。
 これだけの論文を書き上げるのにどれだけのデータと論証が必要であったかは定かではない。
 けれど、これだけのデータが残っているのならば、猟兵達は『時間質量論』に対して十分な検証が行うことができる。

 ただし、これらを全て運び出せたのならばの話である。
 どれが重要なデータであるか判別がつかない。となれば、あらゆる記録媒体を持ち出さねばならないのだが、それらはどれもが重量級のものばかりである。
 ゆえに、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は困り果ててていた。
「ふむ……正直、僕もどちらかといえば非力な方だしなぁ……でも、皆と協力すれば運び出し自体は難しくないとは思うし……」
 とは言え、やはりこの重さはどうしようもない。
 引っ越しとかの要領で行ければいいのだろうかと思う。こういう重たいものを運ぶ時にはコツがあるものだ。

 けれど、地力が足らぬのであればどうしようもないものである。
「……えっと、どうしようかな。でも……」
 少し迷った挙げ句、澪は澪ちゃん親衛隊(レイチャンシンエイタイ)を呼び出す。
 いや、正確には認知していない親衛隊である。親衛隊と言われても正直彼には理解出来ないところが多かったのであるが。

「なんかまた増え……ま、まぁいいや」
 回を重ねる毎に何故か増えているような気がしないでもない。それはそれで尋常ならざる親衛隊たちである。
「澪ちゃーん!!!!!」
 野太いやら黄色いやら、もうなんかよくわからない集団が続々と集まってくる。澪はいいのかなと思いつつ、彼らに強力を仰ぐのだ。

「と、とりあえず、各自手分けして持てそうなもの運び出しお願いします! 声かけあって、無理はせずでね? 腰痛めないように気をつけてね!?」
 そんな優しい言葉をかけられたら、もっと好きになっちゃう!
 親衛隊たちの気炎を上げる声が響き渡り、『セントメアリー・ベース』の中に存在する様々な記録媒体が運び出されていく。
 機器やら紙媒体やら、メモリーやら、もうそれはもうものすごい勢いである。

 正直これだけ重いものを保たせるのは澪も躊躇いがあったのが、杞憂であった。
 彼自身も風の魔法を使って物を浮かすことで重さを緩和しつつ、持てる範囲のものを持っていこうとする、親衛隊たちが止めるのだ。
「澪ちゃんの綺麗な手が汚れてしまう! ここは私達に!!」
「そうとも! 風の魔法で軽くしてくれたんだ! それで俺たちはじゅうぶんだ!!」
 ものすごい気迫だ。

 重要そうなものを……とやっている暇もない。
 けれど、澪は親衛隊たちの行動に寄って少しずつ余裕を取り戻していく。彼らが運んでくれる記録媒体の全てが、今後のオブリビオンや世界のことを知る上で重要なものになることは言うまでもない。
 けれど、と彼は思うのだ。
「こんな大きいもの、最初どうやって持ち込んだんだろう……」
 過去に在ったであろう『マザー』の研究。
 それが如何なる工程を踏んで、ここまで膨大なものになったのか。それだけ『時間質量論』は膨大な研究の果てに成り立つものであったことを実感するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
記録媒体、紙だと重いですよね……。
電子媒体だとしてももしかしたら読み込みがこちらのものでないといけないかもしれないんですよね。これは大変だわ。

一人ではどうしても限界がありますから使えそうな台車、もしくは台車になりそうなものを探し、UCで呼び出した白銀に引っ張って貰いましょうか。
白銀、お願いね。それと犬ぞりのようなまねごとさせてごめんなさい。
台車を持ち込めるならいいのですが、ストームの対象になると困りますしできれば現地調達で。

道が悪いなら私が何とかします。大きな瓦礫があれば鳴神や青月で砕き通れるようにします。
何度か貫き通すようにすれば砕く事もできましょう。



「記録媒体、紙のものだと重いですよね……」
 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は『セントメアリー・ベース』に残された『時間質量論』の膨大な研究データ、その記録媒体の一つである書類の多さに辟易していた。
 山のように積み上げられた紙媒体は、一枚一枚であれば吹けば飛ぶようなものである。
 けれど、それらが何千、何万と重なればどうなるかなど言うまでもない。
 しかも、どの書類が重要なものであるのかもわからぬ今、これらの一枚でも取りこぼしてしまうことによって後に与える影響がどれほどのものになるかわからない。

「電子媒体だとしても、もしかしたらこちらの世界のものでないといけないかもしれないんですよね。これは――」
 改めて、大変な作業だと彼女は息を吐き出す。
 どうがんばっても自分ひとりでは無理であるし、ほかの猟兵たちが駆けつけてくれていることを考えても作業効率を考えれば、人の姿、手だけではどうしても足りない。
 ならば、と彼女は使えそうな台車を『セントメアリー・ベース』から探し出す。此処は比較的人類が平和に暮らしている拠点だ。
 台車そのものがなくても、人々が暮らす上で台車に代用できそうなものはあるだろう。

 彼らに台車というよりは、犬ぞりのような大きな荷台を借り受けて藍は、銀狼招来(ギンロウショウライ)にて、翼を持つ銀狼である『白銀』に引っ張ってもらうことにしたのだ。
「『白銀』、お願いね。それと犬ぞりのような真似事をさせてごめんなさい」
 もっと良い台車が持ち込めるのならばよかったのだが、猟兵が異世界からアポカリプスヘルに物資を持ち込めば、オブリビオン・ストームを引き寄せる要因になるかもしれない。
 この比較的平和な拠点を前にそれは流石に危なっかしいと言うしかない。
 だからこそ、彼女は最善の策として現地調達したのだ。

 それを慮るように『白銀』が気にするなというように一吠えしてから、犬ぞりの要領で大量の紙媒体のデータや資料を運び出していくのだ。
「とは言え、道が悪いですね。ストレイト・ロードまでは荒野……少し待っていてくださいね『白銀』」
 藍は己の神器を使って瓦礫を砕き、道を拓いていく。
 これだけの大量の資料やデータを運ぶのは一苦労である。ほかの猟兵たちが工夫しても尚、未だ手つかずの領域がまだまだある。

「これだけの研究を一人でしたのか、それとも共同研究でもしたのでしょうか……さあ、『白銀』、こっちですよ」
 藍は少しの間考えたが、答えはでない。
 これら全ての資料を持ち出して、精査して、はじめてわかることもあるだろう。
 世界最高の歌姫とも呼ばれた『マザー』が残した研究。
 その果に彼女が『オブリビオン・フォーミュラ』、『フィールド・オブ・ナイン』と成り果てたのならば、なんらかの理由があるはずだからだ。
 ストレイト・ロードへ至る道を彼女は整理し、『白銀』を呼ぶ。犬ぞりのように資料を運び出してはまた拠点の戻る。

 その往復はとてもつらいものであったかもしれない。
 けれど、このアポカリプス・ランページという戦争の最中にあっては、幾ばくかのリフレッシュとなったことだろう。
 藍は『白銀』の毛並みを撫でていたわりながら、未だ終わらぬ戦いの行く末に思いを馳せるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
『マザーコンピュータ』攻略の足がかりになる上に、
『時間質量論』なんていうまだ未解明の理論を解析できるかもしれないなんて、これはちょっと楽しみな感じだね。

コンピュータ機器や記録媒体が山のように、ってことだけど……。
これはさすがにわたしのストレージだけじゃ入りきらない容量だね。

それなら【デジタルシェルター】で、デバイスごと吸い込めるだけ吸い込んじゃおう。
あとで取り出すのがちょっと大変かもだけど、そこはVR空間内で解析してもいいしね。

それにしてもデバイスが統一されてないないねー……。
レガシーからオーパーツっぽいのまで雑多すぎる!
『マザーコンピュータ』って、いったいどんな姿してるんだろう……?



 カナダとの国境にほど近い『セントメアリー・ベース』は比較的平和な巨大拠点であった。
 このアポカリプス・ランページが引き起こされたアポカリプスヘルにおいては奇跡的と言ってもいいほどである。
 そこに残されたのは猟兵たちにとっても興味を惹かれ、おそらく重要なデータの宝庫でもあったことだろう。

――『時間質量論』。

 その言葉を猟兵達は既に耳にしている。
『プレジデント』と呼ばれる『フィールド・オブ・ナイン』が告げた言葉。
 それだけでは己たち猟兵の存在を証明できないという。
 それが如何なる意味を持つのか、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は未だ真実にたどり着かずとも、少しばかりワクワクしてしまう。
 なぜなら、この『セントメアリー・ベース』を制することによって『マザー・コンピュータ』攻略の足がかりになる上に、未だ未知なる理論を解析することができるかもしれないのだ。
 電脳魔術師である彼女にとって、それはまさに垂涎の的。宝の山と呼ぶに相応しい場所であったのだ。

「それにしても、本当にコンピュータ機器や記録媒体が山のようにあるんだね……流石にこれじゃ……」
 理緒は記録媒体の山を見上げる。
 しかも地上部だけではなく地下にも広がっているようである。これまで多くの猟兵たちが駆けつけ、これらを運び出すことに腐心しているのに、未だ全てを運び出すことが叶わないでいた。
「これは流石にわたしのストレージだけじゃ入り切らない容量だね」
 ならば、と彼女の瞳がユーベルコードが輝く。

 手にした小さなメモリースティック。
 それはデジタルシェルターと呼ばれるユーベルコードであり、その中はユーベルコード製のVR空間に繋がっている。
 どれだけ重量級の機器であっても、理緒のユーベルコードであれば、吸い込めるだけ吸い込めるのだ。
 次々と運ぶのも一苦労であった機器たちがメモリースティックの中に吸い込まれていく。
 驚愕なる光景であったが、一つ問題がある。
「あとで取り出すのが大変なんだよね……けど、そこはVR空間内で解析してもいいよね」

 それにしても、と理緒は吸い込む機器を見て思うのだ。
「デバイスが統一されていないねー……『マザー』ってもしかして、飽き性? 新しいもの好きなのかな? レガシーからオーパーツっぽいものまで雑多すぎる!」
 未だ見ぬ『マザー・コンピュータ』の姿を思い、彼女は唸る。
 流石に此処まで雑多なものばかりであっては、理緒も電脳魔術師の観点から『マザー』の人となりを把握するのは難しいようであった。

 使うデバイスには性格が現れる。
 一人でこれらの研究をしていたのならば、なおさらのことだ。
 答えはまだ出ない。
 けれど、理緒は一歩ずつ確実に踏み出していく大切さを知っている。何事も一足飛びにはできないのだ。
「それは相まみえるときのお楽しみにしておこう」
 小さなメモリースティックを弄びながら、理緒は次なるデバイスを求めて、記録媒体の山へと挑むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
ここはヒトの笑顔がある
なんだか温かいなん
らぶもずっとここに…
ううん
そーじゃねーのん
セカイはまだ悲しみで溢れてるんだ
だからマザー
頑張るんだぞ
【計算中です】

敵もマザーってゆーんだって
マザーとおんなじ名前
【全てのデータをストレージ内に転送した場合に容量が不足しています。全データは転送できません】
おいきーてんのか
マザーとマザーは関係あるのん?
【話せば長くなりますが】
じゃいーや
データは重要そーなのだけもってけないのんな?
【全ての内容の分析を行うには凡そ9ヶ月もの時間が必要です】
うーん困ったぞ
そんなに待てねーのん
【ラブリーの好きな食べ物は?】
アイス!
【データ番号1CEの資料を転送します】
やっちゃえー!



 巨大拠点を前にして、ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)が思ったことは唯一つだった。
『セントメアリー・ベース』は、この荒廃した世界にあって、おそらく今まで見てきた拠点の中で最も平和な拠点であったことだろう。
 数多の拠点を渡り歩き、人々の表情を見てきたラブリーにとって、彼らの表情は彼女の心を暖かくするものであった。
「ここはヒトの笑顔がある。なんだか温かいなん」
 涙が出そうになる。
 それくらいに彼らは優しかったのだ。助け合うことが、この荒廃した世界で生き抜く術であると知っているのだ。

「らぶもずっとここに……うんん、そーじゃねーのん」
 彼女は頭を振る。
 そう、まだ世界は悲しみで溢れている。
 どうしようもない暴力と破壊の存在が世界にはあるのだ。それらを止めるまで彼女は立ち止まることを許されていない。
「だからマザー、頑張るんだぞ」
 そんな彼女の非通信端末【ビッグマザー】が目の前の膨大なデータの総量を計算している。

 ラブリーは特にすることがない。
 けれど、ふたりでひとつ(ストラテジーミーティング)である彼女たちにとって、会話こそが力の本質である。
【計算中です】
「敵もマザーってゆーんだって。マザーとおんなじ名前」
【全てのデータをストレージ内に転送した場合に容量が不足しています。全データは転送できません】
 ラブリーの言葉を遮るようにして、この膨大な量の『時間質量論』のデータを全て納めることが出来ぬ旨を伝える【マザー】の音声にラブリーは憤慨する。
「おいきーてんのか。マザーとマザーは関係あるのん?」

 ずっと気になっていたのだ。
 非通信端末とは言え、同じ【マザー】の名前を冠する存在が『オブリビオン・フォーミュラ』として存在している。
 無関係とは思えないのだ。
【話せば長くなりますが】
 少し考えるまでもなかった。ラブリーは『じゃいーや』と一蹴して、ごろんと横になる。もう考えても仕方ない。答えはでなさそうだし、聞いたところで自分とマザーの間柄が変わるわけでもない。

 ならば、自分ができることってなんだろうか。
「データは重要そーなのだけもってけないのんな?」
【全ての内容の分析を行うには凡そ九ヶ月もの時間が必要です】
 その言葉にまた頭を抱えてしまう。
 とてもこまった。とても困っている。このアポカリプス・ランページは時間との戦いだ。
 そんなに待っていることはできない。

 どうしようと迷っている時間さえも惜しい。
【ラブリーの好きな食べ物は?】
 それは天啓の如き閃きであったのかもしれない。【マザー】の言葉にラブリーは即答した。
「アイス!」
【データ番号1CEの資料を転送します】
 まさかの運試し。
 しかし、その決定こそが、彼女たちという猟兵の強みであろう。一人で迷って立ち止まってしまうことも、彼女たちならば、ふたりでひとつだからこそ、悩みながらも互いに補填し合って道を歩んでいく。

 だからこそ、ラブリーができることは決めることだ。
「やっちゃえー!」
 彼女の高らかな声が響き渡り、データ番号『1CE』が転送されていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルドラ・ヴォルテクス
●アドリブ連携OK

『ルドラ、ここは私におまかせください、データ蒐集は私の機能のひとつです』

……字が違うような気がする。

『なんのことやら』

まぁ、こういうのはアタルヴァ・ヴェーダの領分だ。
俺は待つだけか?

『すごい情報ですよ、見て下さい、ルドラ、時間質量論、アーカイブ化を応用すれば実質不老不死になれますよ!』

そりゃすごい。(棒読み)

『マザーは人類の有史以前からの夢である、不老不死の実現を目指していたのですよ!』

不老不死が夢だと?
違うな、それは逃避だ。
死を恐れるがあまりに見た、恐怖の影だ。

(しばらくの沈黙の後、データの転送をソーシャルネットワークのバンクに整理して、粗方仕事は片付ける)



『時間質量論』の膨大なデータは『セントメアリー・ベース』に手つかずで残っていた。
 このカナダ国境付近ゆえに比較的平和な拠点として維持されていたのは、猟兵たちにとって不幸中の幸いであったことは言うまでもない。
 これまでレイダーたちの略奪に晒される機会が少なかったのは立地のせいであるのかもしれないし、また『セントメアリー・ベース』に生きる人々の努力の賜物であったのかもしれない。

 そんな山のように、そして時に谷のように深い膨大なデータを前にルドラ・ヴォルテクス(終末を破壊する剣“嵐闘雷武“・f25181)は足を止めていた。
 彼の纏うマシンスーツが告げるのだ。
『ルドラ、ここは私におまかせください。データ蒐集は私の機能の一つです』
 マシンスーツのアタルヴァ・ヴェーダが告げる言葉にルドラは嘆息一つよこして言うのだ。
「……文字が一つ違う気がする」
『なんのことやら』
 とぼける言葉は、アタルヴァ・ヴェーダの優秀さを裏付けるものであったことだろう。

 収集と蒐集。
 言葉の響きは同じでも字面が違う。けれど、この際それはどうでもいい。ルドラにとって、この作業が己よりもマシンスーツの性能に任せた方が最良の結果を呼び込むことを理解していた。
 しかし、と彼は思うのだ。
「俺は待つだけか?」
 まさにそのとおりである。今此処にあって彼ができることは多くはない。身体を動かしてもいいが、紙媒体を運ぶくらいしかできないであろう。
 それ以上に、マシンスーツであるアタルヴァ・ヴェーダが興奮したように言葉を紡ぐ方が気になった。

『すごい情報ですよ、見てください、ルドラ。『時間質量論』、アーカイブ化を応用すれば、実質不老不死にもなれますよ!』
「そりゃすごい」
 どう聞いてもルドラはそう思っていなかったし、棒読みであった。
 特に興味がそそられない。
 そんな――。
『マザーは人類の有史以前からの夢である、不老不死の実現を目指していたのですよ!』

 そんな灰色の永遠など。
 己は知っているのだ。知っているからこそ、刹那の虹が見せる輝きの美しさをこそ永遠に勝るものであると言える。
 だから否定するのだ。
「不老不死が夢だと? 違うな、それは逃避だ。死を恐れるあまりに見た、恐怖の影だ」
 そんなものに価値などない。
 個々に見解の相違はあれど、それでもルドラはそれを否定する。
 不老不死。
 確かに人は求めるだろう。それを求めてやまぬだろう。人は死を遠ざけたがる。誰もが恐れるものである。

 けれど、全ては空である。
 これ以上の言葉は必要ないとルドラは黙してデータの転送をソーシャルネットワークのバンクに整理して、己の仕事は終わりだと言うように歩き出す。

 まだ戦場は残っている。
 己の魂が、生命が、輝き続ける限り。刹那は連続していくのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
時間質量論の論文……歌姫でありながら研究者でもあった、ということでしょうか。

オブリビオンとなってからそういった概念に気付くものはそれなりにいそうですが、生前からオブリビオンや骸の海に繋がる研究をしていたというのは……キマイラフューチャーのドン・フリーダムを思い出しますね。異才、鬼才というものなのでしょう。

……そういえばどちらも裸ですね、いえ関係ないとは思いますが。

マザー・コンピュータについて考えながら彼女が執筆した論文の記録媒体を運び出します。
持ち上げるのも難しい重い機材は他の方に任せましょう。
私は【携帯火薬庫】に持ち運べるサイズの記録媒体を入れていきます。



『時間質量論』を記した『マザー』は世界最高の歌姫であったという。
『マザー・コンピュータ』に組み込まれた存在であり、猟兵たちが追う『フィールド・オブ・ナイン』の一柱でもある。
 そんな存在が研究していたという『セントメアリー・ベース』に残された膨大なデータと記録媒体は猟兵たちの手をしても余るものであった。
 まず、資料が膨大すぎる。
 あらゆるデータが混在しており、整理もされていない。
 しかも記録媒体であるものが単純に重すぎるのだ。『セントメアリー・ベース』の人々も手伝おうとしてくれているが、この重量では、とてもではないがストレイト・ロードまで運ぶことはできないであろう。

 セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は研究データの山を見上げ呟く。
「『時間質量論』の論文……歌姫でありながら研究者でもあった、ということでしょうか」
 多彩なる存在であったのだろう。
 歌声と研究。それらを両立できるだけの才能があったのだとすれば、この眼の前に広がる膨大な量の研究データは彼女が凄まじい天才性を発露させた結果なのだ。

「オブリビオンになってからそういった概念に気づく者はそれなりにいそうですが、生前からオブリビオンや骸の海に繋がる研究をしていたというのは……」
 セルマが思い出すのはキマイラフューチャーの『ドン・フリーダム』を思い出す。あの異才、鬼才と呼ぶに相応しい才能の片鱗を彼女は見たのだ。
 しかし、その言葉だけで済ますには、あまりにも共通点が在りすぎる。

 彼女が予兆でみた『マザー・コンピュータ』の姿と『ドン・フリーダム』の姿。
「……どちらも裸ですね、いえ関係ないと思いますが」
 鬼才、天才というのは裸族であることが条件であるのだろうかと思わずにはいられない。けれど、セルマはかぶりを振る。
 そんなまさか突飛なことが重要なことであるはずがない。
「おっと……」
 考えていることが突飛であったせいか、彼女は『マザー』が執筆した論文の記録媒体を運び出そうとして、つんのめる。
 思った以上におもいのだ。猟兵の腕力であっても重いと思える。ほかの機材はさらに重量があるようで、運び出しは難航を極めている。

 さらに悪いことには、この物量だ。一筋縄ではいかない。
「……仕方ありませんね。本来の使い方とは違いますが……」
 セルマの瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女が取り出したのは、小さなウェストポーチであった。それは、携帯火薬庫(ポケット・アーセナル)である。
 その中はユーベルコード製の武器、弾薬庫に繋がっている。
 そこから彼女は武装を取り出しているのだが、今回は事態が事態である。四の五の言っている暇はない。

 こうしている間にもアポカリプスヘルの各地では戦いが続いているのだ。後に控える『フィールド・オブ・ナイン』たちとの戦いも切迫している。
「こちらの重い機材は頼みます。私はこちらの記録媒体を持ち出しますので」
 セルマはウェストポーチに吸い込むことのできる記録媒体を次々と収めていく。
 時間との戦いが『アポカリプス・ランページ』であるというのなら、この地から『時間質量論』のデータを全て運び出すことは、『マザー・コンピュータ』との戦いの足がかりになることだろう。

 一歩ずつ確実に。
 それを為してきたからこそ、猟兵は己たちより強大な敵を討ち果たしてきた。
 地道な作業の果てにそれがあるというのなら、セルマは迷わない。己の瞳はいつだって、討つべき敵を違えないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…内容がどうこう以前にあの機械…ぱそこん?を使うことができない以上、
この辺りの物を手当たり次第に運び出すぐらいしか役に立ちそうにないわね

…さて。それでは人海戦術に必要な人手を喚びましょうか

UCを発動して多数の黒騎士と霊馬を召喚し武器改造
一割の騎士達を荷台付きの馬車に変形させて亡霊馬に引かせ、
集団戦術を駆使して拠点内の機器を大量に運び出す

…よく私の召喚に応じてくれたわね、騎士達よ
早速で悪いけど貴方達の力を貸して欲しい

…ああ、武器は不要よ。今回の任務は荷物運びだから

…荷物運びよ。分かったら貴方達の一割は馬車になって
残りは荷物を纏めて馬車に載せていって

大きな機材は馬に曳かせるわ。…分かったら早くして



 文明の荒廃した世界であるアポカリプスヘルにおいて電子機器が未だに保存されていること自体が奇跡的なことであったのかもしれない。
『セントメアリー・ベース』は巨大拠点でありながら、国境付近に存在することに寄ってレイダーオブリビオンたちの脅威から、ほかの拠点より比較的平和な日常を送っていたことだろう。
 とは言え、文明の残滓から食いつないで居ることは違いない。
 そこに残された『時間質量論』の研究データは膨大なものであった。一般人たちには重たすぎて運べぬ機器や、記録媒体が多く残されており、猟兵たちの手を使っても尚、未だ全てが運び出せる気配すらないのだ。

「……内容がどうこう以前にあの機会……ぱそこん? を使うことが出来ないのよ」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は出身世界と相まって、電子機器の扱いに不慣れな猟兵であった。
 ほかの猟兵のようにデータを抽出したり、置き換えたりなどと言ったことができない。彼女ができることといえば、この『セントメアリー・ベース』に残された記録媒体を手当たりしだいに運び出すことくらいであった。

 しかし、単純に重たい記録媒体を運ぶのはやはり人手がいるものである。
 彼女の力があれば、さらに『時間質量論』のデータをストレイト・ロードまで運び出すことも容易であったことだろう。
「……それには人海戦術が有効。ならば、その人海戦術に必要な人手を喚びましょうか」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 限定解放・血の騎士団(リミテッド・ブラッドナイツ)、それは黒炎の炎で武装した怨念の蒼炎で形成された黒騎士の幽霊たちであった。
 彼らは己たちの敵が目の前にあるのだと言わんばかりに炎を揺らめかせる。だが、リーヴァルディの言葉は意外なものであった。
「……よく私の召喚に応じてくれたわね、騎士たちよ。早速で悪いけど、貴方達の力を貸して欲しい……ああ、武器は不要よ」

 その言葉に騎士たちは動揺したようであった。
 戦うための存在である己たちの手に在る武装を必要としないとはどういうことなのだろうかと。
 彼らの動揺を遮るようにしてリーヴァルディは告げる。
「今回の任務は荷物運びだから……荷物運びよ」
 二度言った。
 けれど、騎士たちの動揺は収まるどころか、膨れ上がっていくばかりである。

 そんな彼らを前にリーヴァルディは畳み掛けるのだ。
「わかったら貴方達の一割は馬車に成って。残りは荷物をまとめて馬車に載せていって」
 さらに騎士たちを馬車に変形させ、蒼炎霊馬たちに引かせるのだ。物理的な手段であったが、これで重量級の機器をストレイト・ロードまで運ぶ算段はつきそうであった。
 とは言え、あまりにも強引である。騎士たちにしては、ちょっと横暴なやり方なのではないかと思わないでもなかったが、主を前にしてそう意見するものたちはいなかった。

 それはリーヴァルディも自覚しているのだろう。
 頭痛がするような思いで彼女は漸く絞り出したのだ。
「……分かったら早くして」
 慣れぬことはするものではない。
 けれど、リーヴァルディと騎士たちの働きによって重量級の機器が次々と運ばれていく。
 これで『時間質量論』を紐解く切っ掛けが生まれることだろう。
 それに『マザー・コンピュータ』を攻略するための足がかりとして、この『セントメアリー・ベース』を猟兵たちの手に収めておくことは重要だ。

 それを思えばこそ、リーヴァルディは難しい顔をしながら騎士たちの指揮を執るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
……ふぅ(鼻血をぐいっと拭う
TOPに立っていたナイアルテさんが可愛すぎて
バーチャルキャラクター的に人型が保てなくなるところでした(お祝いのつもり

さって
前口上も無しに
ちょっと真面目なクノイチをお見せしましょう!

さくっと【かげぶんしんの術】
ふっ、この手の依頼で
私の順応力に勝てる者などいません
というわけで圧倒的人数とクノイチ的素早さでいっぱい運び出しますよー!

運搬中は迅速に丁寧に

マザーの論文、時間質量論ですか
プレジデント…スーパー戦車ですらも
特別な時間について言及しています
フィールド・オブ・ナインの活動の根底に
この論文は必ず関与してるはず
残るナインを見つけるためにもしっかり回収しないといけませんね!



「……ふぅ」
 何故か鼻血が出ていた。
 いや、なんの話だというのはごもっともである。
 しかし、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は思わずにはいられなかったし、危うくバーチャルキャラクター的に人型が保てなくなるところであったと、己の鼻血をティッシュでチン! として己のやるべきことを思い出す。とてもありがたい。

 そう、ここはアポカリプスヘル。
 さらにアメリカ大陸のカナダとの国境にほど近い『セントメアリー・ベース』である。
 この巨大拠点はオブリビオンたちの脅威が比較的少なく、ほかの拠点から比べると平和というには十分な生活を送っていた。
 この地がオブリビオンとの戦いに如何に繋がるのかと問われれば、『フィールド・オブ・ナイン』の一柱である『マザー・コンピュータ』攻略の足がかりとなるのである。
「さって、前口上もなしに、ちょっと真面目なクノイチをお見せしましょう!」
 前口上はなかったが、出だしからして大丈夫だろうかと若干の不安もありつつ、サージェは鼻血の染み付いたティッシュを、すぽんと引き抜いて『セントメアリー・ベース』に残された『時間質量論』の研究データの前に立つのだ。

 そう、この膨大な量の記録媒体を此処より運び出さなければならない。
 それは容易なことではなく、猟兵の手をもってしても、膨大すぎて手に余るのだ。しかし、これらを運び出さなければ、『時間質量論』の詳細はわからない。
「さくっとかげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)! ふっ、この手のことで私の順応力に勝てる者などいません。というわけで!」
 一斉に増えたサージェの分身たちが膨大な記録媒体に立ち向かう。

 圧倒的な人数。
 物量には物量でもって相対する。それがサージェの、クノイチのポリシーというやつである。
 しかし、運搬中は迅速にして丁寧。
「マザーの論文、『時間質量論』ですか」
 サージェは運び出す記録媒体を手に、一瞥する。そこに描かれている内容は、『時間質量論』の全てを記したものではない。
 一部分にしか過ぎない。
 これらの情報の解析はこれからであろうが、彼女は『プレジデント』や『スーパー戦車』といった同じ『フィールド・オブ・ナイン』もが言及していたことを思い出す。

 彼らの活動の根底に、この論文のデータが必ず関与していると思ったのは、クノイチ的な勘であったことだろう。
「残るナインを見つけるためにも、しっかり回収しないといけませんね!」
 一人見たら三十人はいるのがクノイチである。
 一斉に『セントメアリー・ベース』に飛び散ったサージェの分身たちは次々と記録媒体を運び出ししていく。
 まさに疾風迅雷の如き働きぶり。
 ストレイト・ロードに次々と『時間質量論』の記録媒体が積み上げられ、続々と運ばれていく。

 サージェはそれらを見送りながら、まだまだ残っているデータを搬出していく。
 今の彼女は元気いっぱいなのである。
 漲る活力は、一体何処から溢れ出るものであろうか。それは情熱と呼ぶものであったのかもしれない。
「さあ、ばんばんいきますよ! しゃどーふぉーむっ! しゅばばばっ!」
 ハイテンションのままサージェは分身たちを増やして飛ぶ。
 この膨大な物量に敗けぬだけの情熱が今、彼女の胸の中で燃えている。目指すは、全ての記録媒体の確保。
 彼女は、クノイチたる所以を見せつけるように猛烈な勢いで『セントメアリー・ベース』を縦横無尽に駆け抜けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
運搬作業は得意じゃないが
数ある手がかりの中から
重要な証拠を見つけるのは探偵の十八番だ
【作者への挑戦状】
…この量はまさにその名の如くだな
世界最高の歌姫とやらに挑戦するか

まずはコンピュータにアクセス
とりあえず色々電源を入れ中を調べていく
ロックが掛かっているのがかなり怪しいな
キーボードの文字の摩耗具合から推理し鍵開け

集中力を高め
直感と瞬間思考力を働かせて資料内容を速読
ぱっと見で重要でなさそうなのは無視し
重要度か高そうなデータだけ
空の記録媒体へコピーし運搬班へ渡す
時間を掛けて読みこめば
俺のUCの精度も高まっていく
これで余計なものを運ばなくて済む

しかし時間質量論ね…
生者でも永遠でもない俺は
何なんだろうな



『時間質量論』――それは言わば、山のようなデータであり、海よりも深い記録媒体を意味するものであったことだろう。
 どこまでも、どこまでも、めまいがするような数。
 この中から真実を見つけることができるのだろうか。そんな風に思わざるを得ない。どれほどの時間と頭脳があれば、これだけの研究を重ねることができるのだろうか。
 驚くべきは、この『時間質量論』は研究者であり、世界最高の歌姫であった『マザー』の初期の論文であるということだ。
「……この量はまさにその名の如くだな」
 柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は探偵である。

 これだけの膨大なデータの中から重要な証拠を見つけるのは十八番。
 ならばこそ、彼は作者への挑戦状(アンフェア)を叩きつけるのだ。世界最高の歌姫。『マザー』、その深謀遠慮たる頭脳へと彼は挑戦する。
 生きているとも言えない。
 けれど、それでも己は今此処に探偵として立つ。
「――……」
 はとりにとって己の瞳に映る情報が全てであった。
 コンピュータにアクセスし、様々な機器に電源を入れていく。ロックがかかっているものが怪しいと思うし、キーボードの文字の摩耗からも感じ取れる判断材料が在る。

 これだけの記録媒体の全てを精査するにはあまりにも時間がない。
 特にアポカリプス・ランページは時間との戦いだ。猟兵たちにとって時間は味方ではない。
 皮肉なことに忘れ去られし者たち、過去の化身たるオブリビオンにこそ時間は味方するのだ。
「集中しろ。どこかにあるはずだ。証拠が。決定的な何かが」
 集中力を高めていく。直感と瞬間思考が重なっていく。資料内容を速読し、己の直感にかけるのだ。
 この膨大な山とも谷とも言い難い記録媒体の中から重要度が高そうなものを見分けるのだ。
 空の記録媒体を取り出す。

 正しいか正しくないか。
 その二択を強いられる。脳が限界を超えていくのを感じただろう。閃きなどという言葉では言い表し難い熱量を持った何かが己の頭脳を駆け巡っていくのを感じる。

 時間を掛ければ掛けるほどに己のユーベルコードは輝いていく。
 その脳内の電流が火花をちらしていく。明滅する視界。
 チカチカすると思ったのは、己の見た幻影だ。余計なものを運び出す必要はない。重要だと思われるものを即座に判断し、記録媒体に読み込んでいく。
 ほかの猟兵達だって今という時を戦っているのだ。
 探偵である己のできることは何か。
「決まっている――」
 推理することだ。『マザー』の意図を読み取る。不完全でもいい。ストレイト・ロードを通して、己の力が『マザー』に遠く及ばないのだとしても。
 星に手を伸ばすようなものだったのだとしても。

 それでも。
「積み上げたのなら、手が届く」
 己の力と他者の力。紡いでいくことで高みに手が届く。それを何度も見てきただろう。だからこそ、はとりは己の閃きを持ってエンターキーを叩くのだ。
 汗が溢れる。
 この感触は生者でもなければ永遠でもない己であっても久しく感じることのないものであったことだろう。
『時間質量論』――この論文ですら、証明できぬのが猟兵、己である。

「俺は何なんだろうな」
 答えは、すでに今の己の姿にこそ在る――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真月・真白
時間質量論、マザーが求めていたものとは一体…

棄てられる過去を記し永遠にすることが存在意義の僕としては、この膨大な資料は決して見過ごしてはいけないもののように感じてしまいます。

とはいえ、僕は正直力に自身は無いので…資料を調べて他の方が運ぶお手伝いが出来ればと思います。
まずは研究の概要、彼女が何を考え、何を見つけようとしたのかのヒントを探しましょう
次に探すべきなのは研究の結論。その次は実験などのデータですね
詳しく読みたいですが、今はとにかく時間が無い。後ろ髪は引かれますが簡単にチェックして優先度の分類をしていきますね



 世界最高の歌姫であり同時に研究者でもあった『マザー』。
 彼女は『マザー・コンピュータ』に組み込まれている存在である。すでに忘れ去られし、過去の化身たるオブリビオンとなり、『フィールド・オブ・ナイン』――『オブリビオン・フォーミュラ』として蘇った彼女が何を為し、何を求めていたのかを真月・真白(真っ白な頁・f10636)は考えていた。

 目の前には膨大な記録媒体の山。
 見下ろせば谷のように深いデータの海。
 これだけのものを築き上げて尚、『時間質量論』とは何を得ようとしたのか。
「棄てられる過去を記し永遠にすることが存在意義の僕としては、この膨大な資料は決して見過ごしてはいけないもの」
 真白は確信していた。
 それは己が白紙の歴史書のヤドリガミであるからであったのかもしれない。けれど、それ以上に今は現在を切り拓くための力として戦う己は、人々が紡ぐ『物語』という名の『人生』を愛している。

 ならば、『マザー』の求め、『マザー・コンピュータ』がもたらそうとしている永遠は己の愛するものを奪う行いであったことだろう。
「人は未来を拓くことができる。刹那の輝きかもしれないけれど。それでも」
 永遠に続く眠りにも似た時間は道を拓くことはない。
 だからこそ、真白は己ができることをしようと膨大な記録媒体の山に挑むのだ。

 紙媒体のデータを調べ、研究の概要を調べる。
『マザー』が何を考え、何を見つけようとしたのかのヒントを探そうとするのだ。永遠ばかりを求め、その影にある意味を理解していなかったわけがない。
 オブリビオンになってまで、手に入れようとした永遠。
 それが彼女の求めるものであったのならば、真白の存在こそ『時間質量論』で証明できない存在であったことだろう。

 人間の『物語』を、『人生』を記す。永遠にしようとしながら、未来を拓くことを望む。
 矛盾に満ちている。
 けれど、それでもその矛盾を抱えて生きるのが人間であるというのならば、真白はそれをこそ愛するだろう。
 研究の結論を探す。
 知りたいと願う。けれど、時間が足りない。情報の精査が間に合わない。運び出すことを優先しないといけなくなる。

「簡単なチェックだけは済ませてあります。優先度の分類しているものから運び出してください」
 真白はチェックを入れた記録媒体を次々と運び出す猟兵たちに願う。
 自分ができることをしよう。
 それが彼にとって、今この場でできる最大の仕事だ。
 叶うのならば、この膨大なデータの全てをアーカイブしたいと思う。けれど、今は『アポカリプス・ランページ』の最中である。
 時間は自分たちの味方ではない。

 時間を掛ければ掛けるほどにオブリビオン・フォーミュラの描く計画はより凶悪なものになっていく。
 これを阻止するためには、時間こそ惜しまなければならない。
 後ろ髪引かれる思いであれど、真白は次々とデータの優先度を分類していく。例え、これが小さな一歩であったのだとしても。
 それでも、だれかの未来を切り拓くきっかけとなったのならば、それこそ己の『物語』という『人生』を彩る色となるだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤・美雨
『時間質量論』とやらを研究しろーって言われたらお手上げだけど
肉体労働をしろっていうなら任せて!
あとの難しいことは分かる人に丸投げだ
出来ることをやっていくよ

ヴォルテックエンジンを滾らせて元気いっぱい
【怪力】を発揮して重いものをどんどん運んでいこう
おっきな機材でも躊躇なく持ち上げていくよ
こんなに重いんだから内容も充実してたらいいな、なんて思いつつ

拠点の様子が穏やかなのも嬉しいな
敵の息がかかっている場所とはいえ、人々が無駄に苦しむ必要はないだろうから
……こうやって戦っていけば、この世界にもこういう場所が増えるんだろうね
私達が強くなることも大事だし
人々が平和に暮らせるようになるのも大切
頑張っていこう!



『セントメアリー・ベース』はカナダとの国境のほど近い巨大拠点である。
 そこは他の拠点と比べればという意味で平和であった。如何なる理由があるのかはわからない。アメリカ大陸の中心部から遠いからという理由もあるのかもしれない。
 けれど、この拠点の人々の表情が荒廃した世界にあって、穏やかであることを藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は素直に喜んでいた。
 嬉しいという感情がある。
 それはどうしたって得ることのできない得難い感情であったことだろう。

 他者の平穏を見て微笑む感情が、己の中にあるヴォルテックエンジンを廻す。魂の衝動とも言うべき感情。
 それが彼女の原動力となって、足を進めさせ、その細い女性の体とは思えぬほどの膂力を発揮させるのだ。
「『時間質量論』とやらを研究しろーって言われたらお手上げだったんだけど! 肉体労働をしろっていうのなら任せておいて!」
 難しいことは分かる人に対応してもらえばいいのだ。

 自分ができることは何か。
 そう、有り余る膂力でもって重量級の記録媒体を持ち上げる。
 何か電子機器のようであったが、凄まじい重量である。これを『セントメアリー・ベース』から運び出し、ストレイト・ロードまで安全に運ばねばならない。
 これが最も重い電子機器というわけではない。
 これ以上に重いものもあるし、一つや二つではきかないほど大量に存在しているのだ。
「こんなに重いんだから内容も充実していたらいいな」
 そう思わないとやってらんないよー、と美雨は戯けながら、凄まじい重量を運び出していく。
 汗一つかかない。
 それは己の身体がデッドマンであるからだ。

 それを誇るわけではないけれど。
 それでも、彼女は微笑むのだ。拠点の人々が目をまんまるにして巨大な機器を運ぶ美雨を見ている。
 くすりと笑ってしまう。敵の息がかかっている場所とは言え、人々が無駄に苦しむ必要はない。
 自分の姿を見て苦しみと恐怖以外の感情を抱いてくれるのならば、それにこしたことはないのだ。
 これもまた戦いの一つだと美雨は思った。

「……こうやって戦っていけば、この世界にもこういう場所が増えるんだろうね」
 それは未だ遠き未来であるのかもしれない。
 けれど、一歩を美雨は踏み出した。
 たった一人の一歩であったのかもしれない。けれど、それは大いなる一歩だ。何事も一つを積み上げないで成し遂げられることなどなにもない。
 手を伸ばしても届くことはない。

 けれど、なんでもいい。
 一つを積み上げ、重ねていくことで届く星があるのならば、美雨はためらわないだろう。
 彼女が願うのは人々が平和に暮らせることだ。
 自分が強くなることよりも。
 だから、彼女は奮起するのだ。
「よし、頑張っていこう!」
 漲る魂の衝動は恨みや辛みだけではない。
 彼女の胸にあるヴォルテックエンジンを廻すのは、人々の笑顔が見たい、人々の明るい未来を齎したいという願い。
 
 それこそが彼女の魂の衝動。
 電流に変えられた力ならば、どんな重たいものだって軽々と持ち上げることができる。
 美雨の笑顔はきっと伝播していくことだろう。
『セントメアリー・ベース』はいつしか、美雨の曲芸の如き怪力による搬出を見る人々の笑顔で溢れていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
時間質量論
内容がとても気になるから
確実に回収しないとね

邪神の聖域を使用
この場で中身を判断するのは難しいだろうから
手当り次第吸い込んで出来るだけ多く持ち帰ろう
冷蔵庫代り以外で使うのは久しぶりだね

まったく、冷蔵庫でも物置でもなく聖域ですの

劣化が進行しないのは凄いと思うよ
丁度良いからこれ回収するの手伝ってよ

良い根性してますの

急いで回収しないといけないからね
立ってる者は邪神でも使えってね

まあ、分霊の方はなんだかんだ
人間寄りの思考してるし
文句言いつつも手伝ってくれるとは思うよ

仕方ありませんの
でも可愛い服を見たくて見たくて仕方なくなってきましたの

…うん、まあ、戦争の方が重要だよね

さあ、てきぱき回収しますの



『フィールド・オブ・ナイン』の一柱『マザー・コンピュータ』が初期に研究していたという『時間質量論』。
 その膨大なデータの詰まった記録媒体が収められているという『セントメアリー・ベース』は多くの猟兵たちが集うことによって、次々と記録媒体の搬出が始まっていた。
 長時間の搬出作業は、途絶えることなく続いている。
 けれど、それでも尚全てを搬出できていないことからも、『時間質量論』の研究データが膨大であることが伺えるだろう。

「『時間質量論』……内容がとても気になるから確実に回収しないとって思ってきたけど……」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、興味があって『セントメアリー・ベース』にやってきていたが、これほど多くの記録媒体が未だ運び出されていない事実に愕然としたことだろう。
 多くの猟兵たちが集まっても尚、これである。
 山のように積み上げられた記録媒体は紙や電子機器や、書籍やら、それはもう目を覆いたくなるような惨状であった。

 しかも単純に重いのである。
 膨大なデータを電子変換した機器ですら、凄まじい重量がある。
 これではどれだけ時間が在っても足りないと晶は邪神の聖域(トランキル・サンクチュアリ)を展開する。
 空間の穴が生み出され、そこに記録媒体を吸い込ませていくのだ。
「冷蔵庫代わり以外で使うのは久しぶりだね」
 言うにことかいて冷蔵庫呼ばわりに邪神がプンスコした様子で抗議している。
「まったく、冷蔵庫でも物置でもなく聖域ですの」

 しかし、この停滞した神域にあっては、データの劣化がおこなライノは凄いことだと晶は思う。
 紙であればすぐさま劣化するであろうし、電子媒体であればさらに早く劣化する。
 それを踏まえれば、この聖域で保管することによって何倍にも保存期間が伸びる。それを思えば、このくらいのことはやってもらってもいいだろう。
「ちょうど良いから、これ回収するお手伝ってよ」
「良い根性してますの」
 邪神にとって晶は、本当に、本当に良い根性しているとしか言いようがない。

 これまで邪神の権能の恐ろしさは身を持って味わってきているはずなのに、逆にそれを利用しようとしてくるし、まるで悪びれてすらいない。
「急いで回収しないといけないからね。立ってる者は邪神でも使えってね」
 とはいえ、邪神の分霊はなんだかんだで人間よりの思考をしてくれるし、文句言いつつ手伝ってくれるのをにくからず思っているのだ。
 本人にそれを言えば、錯覚だと言うだろうけれど。

「仕方ありませんの。でもかわいい服を見たくて見たくて仕方なくなってきましたの」
 その言葉に晶は苦笑いするしかなかった。
 結局そこに落ち着くのかと。浴衣じゃ満足できなかったのかなと思わないでもなかったが、それはそれである。
「……うん、まあ、戦争の方が重要だよね」
 それは自分が人身御供になればいいという意味であろうか。
 どちらにせよ、晶は『アポカリプス・ランページ』が集結した後、邪神の分霊の趣味を存分に身を持って受け止めねばならぬだろう。
 なにせ、邪神の分霊が張り切っている。

「さあ、てきぱき回収しますの」
 ああ、これは後が怖い。そんな風に思いながら晶は速い所仕事終わらせて、分霊をどうにか誤魔化せないかと頭を悩ますのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
ルクスと

「時間質量論だと!?
そんな危険なものを放置することはできん」

ん?
時間質量論を知っているのかだと?
いや、知らんが。

「時間が質量であるとしたら、不老不死で永遠を生きる我、どんどん体重が重くなってしまうではないか!
そんな乙女の敵な理論、きちんと解明して無効化する魔術を編み出しておかねば!」

本や書類の形で残されている資料を中心に【リザレクト・オブリビオン】で喚び出したアンデッドに運ばせるとしよう。

よし、これで我のプロポーションも保たれるな。

「む、そこにいるのは我が飯……もとい弟子ではないか!
こんな世界で迷子になるでない!
さあ早く我に飯を作るのだ!」

え、そんなに食うと太る?
ええい、うるさいっ!


ルクス・アルブス
このあたりだと思うんですよね……。

師匠『時間質量論』とか、厨二っぽいワード大好きだし、
なによりほんのり師匠の香りが……(くんくんと鼻を鳴らして)

あ、あれって、師匠の使い魔っぽいですね。
なにか運んでいるみたいですけど、あれが資料なのでしょうか?

師匠やっと見つけました!
えっと、それはいいとして、ふんぞり返ってなにが保たれるんです?

むぅ、久しぶりなんですから名前呼んでくださいよぅ。
ああっ、わかりました、わかりましたから構えないでください!

【師匠の専属料理人】でごはんを作ったら、
師匠が美味しそうに食べてくれて、すごく嬉しいけど……。

師匠、なにも保たれなさそうですね。

ついつい軽口がでてしまうのでした。



 はぐれてしまった師匠を探して三千里。
 というわけではないが、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)ははぐれてしまったフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)の足跡を追って、アポカリプスヘルを歩き回っていた。
 足が棒になるとはこの事であるが、フィアの足跡を探すのは簡単であった。
 大体ブッパ癖がなおっていないのだ。
 大規模な戦闘の痕をたどれば、必ずフィアにたどり着くと確信を持っていた。
「それにこのあたりだと思うんですよね……師匠、『時間質量論』とか、厨ニっぽいワード大好きだし、なによりほんのり師匠の香りが……」

 くんくんと鼻を鳴らすルクス。
 警察犬か何かかな? そのうち野菜の声が聞こえてきたりする特殊能力に目覚めたりしないだろうか。いや、勇者なんだからそういうスキルって必要なのかなーって思わないでもないが、まあ、勇者パーティの筆頭である。
 それくらい出来て当然なのかも知れない。
 そんな彼女が見つけたのは、何やら使い魔がえっほえっほと膨大な記録媒体を運び出している姿であった。
「あ、あれって、師匠の使い魔っぽいですね……何か運んでいるみたいですけど、あれが資料なのでしょうか?」
 ついに尻尾を掴んだ。
 否、感動の再会である。ルクスは『セントメアリー・ベース』へと駆け出す。もうすぐ行きます。師匠の専属料理人(エヅケ・マスター)が! いや、勇者じゃないの?

 そして時間は少しだけ前。

「『時間質量論』だと! そんな危険なものを放置することはできん」
 知っているのかフィア!
 ぬぅ、あれは。という展開にはならなんだ。
 なぜなら、『時間質量論』をフィアが知っているわけではない。多分、聞いても知らんがなと返ってくるだけであろう。
 彼女にとって、重要なのはそこではないのだ。
 確かに危険なものであるのかもしれないけれど。やはり腐っても猟兵であるのだろう。
 それによって婿なる人々が犠牲になる未来を防ぎたいと思ったのだろう。やはり勇者パーティの一員である。さすがである。さすふぃあ。

「時間が質量であるとしたら、不老不死で永遠を生きる我、どんどん体重が重くなってしまうではないか! そんな乙女の敵な理論、きちんと解明して無効化する魔術を編み出しておかねば!」
 違った。
 思いっきり自分のためであった。果たして、その理屈があっているのかなーていう疑問はあれど、フィアの目はいつだってマジである。
 彼女のユーベルコードによって呼び出されたアンデッドたちが『セントメアリー・ベース』から次々と記録媒体を運び出していく。

「よし、これで我のプロポーションも保たれるな」
 ヨシ! じゃない。
 しかし、そんな彼女を見て声を上げる者がいた。懐かしい声であったかもしれない。感動の再会シーンである。
「師匠やっと見つけました! えっと、それはいいとして、ふんぞり返って何が保たれるんです?」
 ぺったんなのに、とは言外の言葉である。
「む、そこにいるのは我が飯……もとい弟子ではないか! こんな世界で迷子になるではない!」
 えぇ……。
 感動の再会なのかなーこれ。そんな風に思わないでもなかったが、フィアとルクスの間には余人の知り得ぬ絆があるのだろう。 

 まるでそれだけで十分であろうというほどにあっさりしたものであった。
「むぅ、久しぶりなんですから名前呼んでくださいよぅ」
 ルクスは仕方ないなぁと言うように現地調達した食材でフィアの胃袋を満たすための調理を開始する。
 美味しそうな匂いが周囲に漂う。あの、記録媒体の搬出を……とは誰も言えない。言える空気じゃないし、フィアのギラついた顔がやばかった。
 もうなんか、野生の犬みたいな顔をしてがっついていた。
 しかもルクスはルクスでそんな師匠のがっつくすがたをみて、やっぱり嬉しいなぁと慈母のような顔をしていた。

 傍から見たらやべーやつらである。しかし、当人たちは朗らかそのもの。
 ならば、とやかく言うまい。
「師匠、なにも保たれてなさそうですね」
「ええい、うるさいっ!」
 いつものやり取り。
 やっと取り戻せた日常。それにルクスはついつい軽口が出てしまうのだけれど、それでもフィアの美味しそうにがっつく姿をみて、心底心配していたことを思い出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マオ・ブロークン
中身を、読み解くのは、たぶん、あたしには、無理。だけど……
研究の、前に。純粋な、力仕事が、必要なら。まかせて。

この、身体と、腕だけでは。限りはある、けれど。
ゴーストの、念の力。心を、穏やかに、鎮めて……使えば。
何トンの、重さ、だって……持ち上げて、みせる。
ぐらぐらと、揺らして……、っと。
うっかり、くせで。勢い、つけて、落とさない、ように。
気をつけて、いかないと……

戦い、続けてきた、なかで。霊体の、あたしも。
ずいぶんと、ちから、強くなった、気がする。な。
……いつか。身体では、抑えきれなく、なってしまう、日が。
訪れるのが、すこしだけ。こわい、けれど。
今は、役立てるなら。……ちからを、活かそう。



『時間質量論』の中身を紐解くのは、この膨大な記録媒体の中身を精査し、結論まで導かねばならないのならば、マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)は、己にはそれが無理であると判断して涙を溢れさせた。
 そんな様子に『セントメアリー・ベース』の人々はオロオロしていたけれど、マオは気にしないで、と涙ながら微笑む。
 情緒は未だ安定しないけれど、それでもこの『セントメアリー・ベース』に住まう人々が、他の拠点と比べて比較的、という意味で平和に暮らしていることのほうが嬉しかっただろう。

 彼女にできることは純粋な力仕事だけである。
「研究の、前に。純粋な、力仕事が、必要なら。まかせて」
 むん、と彼女が腕まくりしてみせる。
 確かに彼女のデッドマンとしての身体、その膂力であれば『時間質量論』の膨大な記録媒体を運び出すのは苦にはならなかっただろう。
 けれど、この山のようになった記録媒体の数だけは如何ともし難い。
 なぜなら、彼女の身体と腕だけでは限りがあるからだ。

 二本の腕。二本の足。
 これだけでは少女の身体をしている彼女がいくら怪力を発揮したとしても、全てを運び出すのは難しいことだろう。
 だからこそ、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
 ポルターガイストの敵意(ポルターガイストノテキイ)ではなく、誰かのために何かをしたいという善意が彼女のヴォルテックエンジンを廻す。
 ゴーストの念の力でもって、巨大な電子機器を持ち上げる。
 力加減を誤ってしまえば、機器を壊してしまうかもしれない。だからこそ、彼女は心を穏やかに、鎮めるのだ。

「……思い出せ」
 そう、『セントメアリー・ベース』の人たちは優しかった。
 身体のせいで涙が溢れて止まらない自分に大丈夫かと声をかけてくれた。あの人達のために戦おうと思えたのだ。
 その気持ちがあれば、戦いに際して迸る己の敵意ではなく、彼らのためにという善意でもって念動力を使うことだってできるだろう。
「ぐ……ぐらぐら揺れる、けど……気をつけて、いかないと」
 うっかり落としてしまっては台無しだ。
 念動力を使う時はいつだって勢いをつけている。だからこそ、今は気をつけなければならない。

 これまで戦い続けてきた中で、霊体の己も随分と力をつけてきたように思える。
「……いつか。身体では、抑えきれなく、なってしまう、日が」
 涙溢れる。
 それが恐ろしいのだ。抑えることのできない怨念が溢れ出した時、それが傷つけるのが敵だけではない気がしたからだ。
 それはとても恐ろしいことだ。
 だから、彼女は思う。
 怖い、と思うのと同じくらい、己のヴォルテックエンジンを廻すものがある。

 だれかのために役立てる力。

 それが今彼女が手繰る力である。
「……ちからを、活かそう」
 殺すためではなく。今は、誰かを助けるために。だれかの明日を救うために。
 己に訪れなかった明日。
 それはもう取り戻すことのできない明日だ。
 その悲しみを知っているからこそ、マオは、この悲しみを誰かに味あわせてはならぬと、その瞳をユーベルコードに輝かせる。

 いつの日かが訪れるのだとしても、それでも彼女はきっとその恐れを踏破するだろうから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
『時間質量論』ねぇ…
時間が「質量を持った物質」だと踏まえると的を得ていると言えるのか?
これに関しちゃ門外漢だから何とも言えないけどさ

[SPD]
とにかく持ち出せるだけの記録媒体を持ち出してしまおうか
特別重そうなのはEsに制御を任せたCSで運ぶとして
それ以外の物をFZの不可視の格納庫に詰め込めるだけ詰め込むぜ
勿論FZの容量も有限だからあるもの全てとはいかないけれど
人一人じゃとても持ち運べない数を持ち運べて
手足もフリーで使えるのがこいつの一番の利点だぜ

さて…結構詰め込んだ筈だけどまだまだ残ってんな
こりゃ荷物を置いたらまた戻らないとだ
呼び出したバイクに跨ったらアクセル全開で拠点を後にするぞ

アドリブ歓迎



「『時間質量論』ねぇ……」
 ふむ、と星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は、『セントメアリー・ベース』に収められた『時間質量論』の研究データである記録媒体の山を見上げる。
「時間が『質量を持った物質』だと踏まえると的を得ていると言えるのか?」
 猟兵だからこそ知ることのできる事実。
 時間は質量を持ち、過去に排出されることに寄って進んでいく。
 排出された時間は過去の集積地たる『骸の海』へと落ち、そこからにじみ出るのが過去の化身たるオブリビオンである。

 とはいえ、己は門外漢である。これ以上のことは何も言えない。
 けれど、この『時間質量論』の膨大な記録媒体がこれからの戦いを有利に運ばせるというのであれば、一刻も早くこれらを持ち出さなければならない。
 幸いにストレイト・ロードによって陸路の安全は確保されている。
 これまで多くのオブリビオンを打倒してきたからこそ、猟兵達は記録媒体の搬出を安全に行うことができるのだ。
「とにかく持ち出せるだけの記録媒体を持ち出してしまおう」
 祐一はサポートAIである『Es』に制御を任せたキャバリアに記録媒体を次々と搬出させる。

 とは言え、これだけでは重量のあるものを外に運び出すことしかできない。
「まあ、そうだよな。俺だけ楽をするわけにはいかんものな」
 彼はフィールドジッパーでもって記録媒体を空間圧縮機能でもって格納していく。
 とは言え、格納する容量もまた限られている。
 有限なるスペースを活用し、全てとはいかないが、大量の記録媒体を祐一は持ち出していく。
「……よく考えたらこれ、入れるだけじゃなくて、また出さないと行けないんだよな……」
 同じ手間をもう一度しないといけない。
 さらにもっと言えば、まだ何度も往復しなければならない。

「手も足もフリーで使えるのがこいつの一番の利点なんだけど……」
 時間との勝負が『アポカリプス・ランページ』である。これだけの膨大な記録媒体が全て運び出すことができるのか。
 しかし、やらねば『マザー・コンピュータ』との戦いは有利に進められない。
「こりゃまた長く掛かりそうだ」
 呼び出したテスタロッサ・カスタムにまたがり祐一はストレイト・ロードを行き来する。

 戦いのさなかであるが、この舗装されたストレイト・ロードの走り心地は見事なものであったことだろう。
 ちょっとしたドライブ気分である。
「まだあんのかよ……」
 これで何往復目だろうか?
 流石にちょっとしんどくなってきたが、サポートAIである『Es』が無慈悲なる言葉を告げる。
『推定では、あと数十回は往復しなければなりません』

 うへ、と祐一は疲れた顔をしたが、そうも言っていられない。
 この『セントメアリー・ベース』に住まう人々の暮らしを見た。
 他と比べると非確定平和であると言える巨大拠点。けれど、それは他と比べればという意味でしかない。
 未だ平和とは言い難い状況にあっても、彼らは猟兵たちの行動の助けになろうとさえしてくれたのだ。
 ならば、それに答えねばならないと祐一は己の頬を叩いて気合を入れるのだ。
「よっし、まだまだやってやるか!」
 アクセル全開に祐一はストレイト・ロードをひた走る。

 まだまた戦いは終わらない。けれど、自分が全速力で走れば、その戦いは早く終わる。そうなれば、荒廃した文明に生きる人々だって、少しは明日に希望が持てるだろう。
 祐一は、赤い車体を走らせ、次々と記録媒体を搬出するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…わお…ただの宝の山だなこれ…
…仕事じゃ無ければ1週間は籠りたいね……興味をそそられる文献も多いけど我慢我慢…
…運べそうにないあの壁一面のコンピュータに関してはデータを吸い出すとするか…
…問題は…記録保管用だけに通信機能その物が物理的に取り外されている…
…データを取り出す時は専用の器具を持ってきて取り付ける形か…
…ハッキング対策…『判ってる』作り…だな…
…ならば【我が身転ずる電子の精】を発動…腕を光の粒子化して直接干渉出来るように…
…巨大コンピュータからデータ転送用に持ってきた記録媒体へ…
…データを壊さないようにそっと腕で掴んで移すとしよう…
…流石にこれまでは想定してないみたいだね…



『時間質量論』は膨大な研究データが記録媒体によって形作った山のような威容でもって『セントメアリー・ベース』に収められていた。
 これだけの記録媒体が、これまでレイダーオブリビオンたちによって破壊されていなかったことは猟兵たちにとって不幸中の幸いであったことだろう。
 この『セントメアリー・ベース』はカナダとの国境付近ということもあってか、オブリビオンの被害が他の拠点と比べれば、比較的少なく、平和であるとさえ言えるものであった。
 ゆえに、こうして猟兵達は『フィールド・オブ・ナイン』の一柱である『マザー・コンピュータ』攻略の足がかりを手に入れることができたのだが、それもこの膨大な記録媒体の全てを運び出せればの話である。

「……わお……ただの宝の山だなこれ……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はその瞳に隠しきれぬ知的好奇心を輝かせ、目の前の山を見上げていた。
 しかし、悲しいかな。
 今回彼女がしなければならないことは、このデータを全て運び出さねばならない。
「……仕事じゃなければ一週間は籠もりたいね……興味をそそられる文献も多い……」
 けれど、我慢しなければならない。
 アポカリプス・ランページは時間との戦いである。
 時間こそオブリビオンの味方であり、オブリビオン・フォーミュラの世界滅亡の計画の準備を整えさせるだけの要因にしかならない。

「……とは言え、運び出せそうにないあの壁一面のコンピュータに関してはデータを吸い出すとするか……」
 問題は、その記録保管用だけに通信機能そのものが物理的に取り外されているという点である。
 なるほど、とメンカルは頷く。
 これはハッキング対策であろう。

 常時通信機能を使えるということは時間の短縮にもなるし、齟齬がでにくいという利点がある。
 けれど、繋がっているということはハッキングの可能性が少なくともあるということである。
 ならば、それを防ぐにはどうしたらいいか。
 簡単である物理的に切断してしまえばいい。データを吸い上げる時だけに端末を取り付け、外部からの侵入を遮断する……言わば『判っている』作りであるとメンカルは理解したのだ。

「ならば――我が体よ、変われ、集え。我は掌握、我は電霊。魔女が望むは電網手繰る陽陰。我が身転ずる電子の精(コンバート・テクノマンサー)」
 彼女の詠唱が続き、その瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女の腕がデータや信号に直接干渉できる粒子の集合体へと変貌する。
「これで、データにふれることができる。こっちの媒体に移し替える……」
 しかし、これまた想定されていたかのように壁面のコンピュータからデータを抜き出すのは、網目のように複雑な回路を通さねばならない。
 如何に粒子に干渉できるようになったとしても、ここからはメンカルの技量次第である。

 データを壊してしまっては元も子もない。
 ゆえにそっと腕で掴むようにしながら、データの集合体を粒子が移していく。流石に此処までは想定されていたようであるが、相手が猟兵――それもユーベルコードを使ってデータに直接干渉する力を持っているとまでは思っていなかったのだろう。
「……流石にこれまでは想定していなかったみたいだね」
 けれど、それでもここまで自分を手こずらせるのは、『マザー』が世界最高の歌姫にして研究者であったという事実は揺らがぬものであると言えるだろう。

『マザー・コンピュータ』に組み込まれているという『マザー』。
 その深謀遠慮たる頭脳が、これから自分たちの敵に回っているという事実にメンカルは恐れよりも、胸の高鳴りを覚えるかもしれなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
大型コンピューターを担当
種族と出身世界の関係上、電子機器の取り扱いには慣れております

サーバールームに入り妖精ロボを操縦
電子機器の接続解除を速やかに、安全に行い運び出し準備
データサルベージの際、一部の所在の迷子や再接続も覚束ない事態は避けたいもの
同時進行で運搬物への番号割り振りと元の所在を記した目録を作成

取り外し準備が終わった物から怪力で運搬

『時間質量論』…骸の海に浮かぶと言われる私達の世界
その真実に迫れるのは矢張り剣ではなくペン…言葉と知恵なのか

優秀な頭脳を持つ貴女の見解が聞き…
いえ、お眠りください

これは今を生きる者の務め
騎士として、真実への道を剣で切り拓いていきますとも
(背の電脳剣に)



自律式妖精型ロボ 格納・コントロールユニット(スティールフェアリーズ・ネスト)が『セントメアリー・ベース』の『時間質量論』の膨大なデータが収められた大型コンピュータに飛ぶ。
 己がウォーマシンであるということと、スペースシップワールドという発展した科学力を持った世界から訪れたということを加味してもトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は己こそがサーバールームを担当しなければならないと判断していた。

「御伽噺の騎士に導き手の妖精はつきものです……これは偽物なのですが。これほどまでの膨大なデータをもってして証明される『時間質量論』とは一体どれほどのものなのでしょうね……」
 即座に妖精ロボたちを操作し、トリテレイアは電子機器の接続を解除していく。安全に運び出しができるようにと準備を始める。
 運び出した後、データサルベージを行う際、一部の所在の迷子や再接続もおぼつかない事態は避けたい。
 同時進行で運搬物への番号を割り振り、元の所在を記した目録を作成していく。

 思考の並列処理ができるウォーマシンならではの気配りであったことだろう。
「さて、繊細なる作業は此処までといたしましょう。あとは……」
 取り外しが終わった機器をトリテレイアはウォーマシンたる膂力でもって運び出していく。
 重たさを感じることはない。
 けれど、自分の関節や駆動系に感じる負荷は許容範囲内である。

「『時間質量論』……骸の海に浮かぶと言われる私達の世界。その真実に迫れるのは、やはり剣ではなくペン……言葉と知恵なのか」
 トリテレイアは考える。
 己はウォーマシンである。ならばこそ、剣を取る以上、真実には迫ることはできないのかもしれない。
 けれど、それは一側面だけの考えだ。
 どれだけ真実に迫ることができたとしても、迫る悪意を振り払うことができるのは剣だ。

 己が真実に至ることができなかったとしても、真実に迫る者を護ることはできる。
 電脳禁忌剣に語りかけようとしてトリテレイアはやめた。
 ここで彼女の眠りを妨げることはしてはならないと思ったのだ。今を生きる者が未来を切り拓くのならばこそ、過去となった者の眠りは、そのままにしなければならない。
 お眠りください、と短く告げ、トリテレイアは意志を新たにする。
「これは今を生きる者の務め。騎士として、真実への道を剣で切り拓いてみせますとも」
 背に追った電脳禁忌剣は黙して語らず。

 けれど、それでいいとトリテレイアは思ったのだ。
 己の道は自身が拓く。定められた運用用途があるのだとしても、トリテレイアは矛盾を抱えて騎士として『生きる』と決めたのだ。
 それは何者にも代えがたい大切なもの。

 他の誰もが決めることの出来ない、自分のみが決めることのできる生き方。
 誰も否定できず、己の炉心が燃え続ける限り、その光は絶やされることはない。トリテレイアは『アポカリプス・ランページ』の行く末を、己の手で切り拓くため、遠き『フィールド・オブ・ナイン』への道を見据えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第四『不動なる者』まとめ&盾役武士
一人称:わし 質実剛健古風

ふむ、運び出すか…この量ゆえ、まあ考えねばならんが…。
ひとまず、ここから量を持っていくことを考えれば【四悪霊・『届』】なのよな。
部屋を倉庫のように間取り広く取ればよいじゃろ。
というわけで、片っ端から内部へ入れていくか。
…いつの間にか陰海月も手伝っておるし。

しかし、どうして残っていたのやら。それも不思議でならぬわ。


陰海月、細かそうなものを運んでは入れて運んでは入れてする。



『セントメアリー・ベース』にける『時間質量論』のデータが収められた膨大な記録媒体は多くの猟兵達によって次々と搬出されていっていた。
 その数は膨大すぎて全てを把握するのは難しいものであったかもしれない。
 けれど、確実に搬出され、拠点は時期に記録媒体の全てを吐き出すだろう。
 そのときこそが『フィールド・オブ・ナイン』の一柱である『マザー・コンピュータ』に迫る足がかりとなるだろう。

 何も積み上げずに得られるものはない。
 星に手を届かせたいと思うのであれば、一つ一つ積み上げていくしかないのだ。そうすることによって人は銀河さえも征く船を手に入れることさえ可能としたのだ。
 それを知るからこそ、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の四柱の一柱たる『不動なる者』は記録媒体の山を見上げて呟く。

「ふむ、運び出すか……」
 単純な話である。
 記録媒体が膨大であるのならば、こちらも数でもって相対する。
 もしくは、データを吸い上げるなど手間の圧縮を測る。
 あらゆる知恵と手段でもって、この地に集まった猟兵達は『時間質量論』の真相に迫るべく、己たちの力を振るう。

 それは猟兵たちが最も得意とする戦い方であったことだろう。
 一人では不可能でも二人、三人と繋ぐことに寄って強大な敵を打ち倒す。それに似ていると『不動なる者』は思った。
「この量故、こちらも考えねばならんが……ひとまず」
 これだけの量を持っていくことを考えれば、己のユーベルコードこそ相応しいであろうと、その瞳を輝かせる。
 小さなねじれ双四角錐の透明結晶を召喚し、それに記録媒体を触れさせる。
 それは触れたものを可変式日本家屋に送り届けるユーベルコードである。

 可変式。
 それは言葉だけ聞けば、なるほどと思うだろう。けれど、実際に目にすれば、それは壮大なからくりじかけの家屋であり、『不動なる者』の意志でもって倉庫のように四角く間取りされ、広く取った内部に次々と記録媒体が片っ端から詰め込まれていく。
「ぷきゅ!」
 いつのまに『陰海月』が家屋の中で取り込まれた記録媒体を整理整頓し手伝ってくれている。

 元気がよいのは良いことであるが程々になと『不動なる者』は言いながら、記録媒体を吸い込ませていく。
「しかし、どうして残っていたのやら。それも不思議でならぬわ」
 彼の疑問も尤もであったことだろう。
 紙媒体や電子機器の記録媒体は、人の手が入らねばすぐに劣化していく。それがこうも残っていたことが不思議でならないのだ。
 けれど、現実として『セントメアリー・ベース』には膨大な『時間質量論』のデータが残っている。

 それを僥倖と捉え、不幸中の幸いとして足がかりにする。
『マザー・コンピュータ』の誤算は、きっとこのデータが残っていたという一つに尽きる。
 だからこそ、この地を猟兵の手に取り戻すことによって彼女の弱体化が図れるというのであれば『不動なる者』は、そもまたよかろうと作業を続ける。
 終わりの見えない作業。
 時間に追われる焦燥感。
 これこそが『アポカリプス・ランページ』における猟兵たちの最大の敵、時間。その時間を紐解く論文こそが、敵の喉元に食らいつく一助となったのは皮肉でしかなかった。

 けれど、それでも『不動なる者』も、他の三柱も、そして猟兵たちも諦めることはない。
 この地に齎される世界破滅の計画などどれも赦してはならぬと、己達の出来うる力を持って世界を救わんと奔走するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月14日


挿絵イラスト