アポカリプス・ランページ⑰〜剛腕 Go one
●拳で語る〜ワシントンモニュメント前
アポカリプスヘルの世界、ワシントン.D.C。荒廃した世界に不釣り合いなまでに、そこは、そこだけは整然と復興されていた。
天を衝くように伸びる白い塔──ワシントンモニュメントを、ひとりの男が悠然と見上げている。どこか満足気な笑みを浮かべた彼は、ぷかり、と葉巻を吹かした。
「──さて。あとは迎えるだけだな」
男は悠然と立っている。
そしてにこりと爽やかな笑みを浮かべ、『予兆の映像に視線を向けて』話しかけた。
「此方を見ているであろう猟兵諸君。ご挨拶が遅れたな。私は「プレジデント」という者だ」
「私の目的や手法は以前ネットワークの混線した時に話したし、掻い摘んだ説明はそこな少年に任せるとして。……私は、戦いの中で諸君を目覚めさせてみたいと考えている。超克(オーバーロード)に至る道を、見てみたいのでね。では待っているよ」
「どちらがが倒れるまで、拳で語ろうじゃあないか」
そう締めくくるプレジデントは、機械化した片腕を軽々と挙げ、ゆるりと手を振った。
●グリモアベースにて
「……こっちを見てた、んですかね」
呆然と予知映像を見ていた伊能・龍己(鳳雛・f21577)は猟兵達に向き直る。予兆の混線を間近で見たことで慌てているものの、ひとつ深呼吸をすると落ち着いたらしく、説明を始めた。
「……ええと、俺が案内するのは、フィールド・オブ・ナインの一体、プレジデントさんのところです」
映像には、プレジデント以外は無人の街が映し出されている。荒廃した世界なんて無かったかのような整然とした街。無人の箱庭のような街だ。びりびりと空気が震えているような気がする。
「ここには、プレジデントさんの精神波……戦いたいって気持ちを煽るネットワークがあって。それを使えば先輩方は「真の姿」に変身して戦う事ができます。あと……その精神波、ボクシングで戦うって時にもっと強化ができるみたいっす」
拳で語る、ということでしょうか。そう呟いて、龍己は映像に目線を移す。
「プレジデントさんの武器も、でっかい拳です。殴り倒されないよう、注意っすね。それと、オーバーロードって……」
『ふむ、超克(オーバーロード)について、私から言えることは……そうだな。無い、と言っておこうか。本来諸君こそが知っている筈。諸君らの真の姿に問うがいいさ』
再び映像から、プレジデントの声が響く。聞いている猟兵側を見ずにゆるりと説明を返した男は、その後静かに佇んだ。これ以上何も言うことは無い、ということだろう。
「あ、ありがとうございま……ええと。今の、聞こえてたんすかね」
ぽかん、とした様子で龍己は呟くが、真偽の程はプレジデントしか知らなさそうだ。はっと龍己は我に返ると、説明と並行して転移の準備を始める。
「プレジデントさんの目的は、全人類のオブリビオン化……って言ってました。ほかの世界のも全部、って。……勿論、他のも倒さないとですけど、そんな計画を止める為にも、倒すのをお願いします」
龍己は怯えを隠すように、きつく握りこぶしを作る。そうして深々と頭を下げたと同時、水鏡のグリモアが転移の扉へ姿を変えた。
佃煮
お久しぶりです。佃煮です。
此度はアポカリプス・ランページのシナリオ、プレジデントとの対決にご案内します。
●本シナリオについて
このシナリオは「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結する、特殊なシナリオとなります。
プレイングボーナスがあります。ご確認ください。
※執筆ブランクが大きいので、受付も返却もゆっくりです(当佃煮比)。
●プレイングボーナス
真の姿を晒して戦う(🔴は不要)。
プレジデントの精神波の影響で、危機じゃなくても真の姿に変われます。
拳で語る(ボクシングで戦う)。
こっちもあれば更に強化されます。書き手あんまり詳しくないので、拳での近接戦闘ならボクシング判定です。プレジデント側も拳で語ります。
●真の姿について
どういう姿で、どんな思いで変わるか。どう戦うか。
イラストがある方もない方も記入があると嬉しいです。めっちゃ参考にするので。
第1章 ボス戦
『プレジデント・ザ・ショウダウン』
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POW : アイ・アム・プレジデント
自身の【大統領魂】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : プレジデント・ナックル
【竜巻をも引き起こす鋼鉄の両拳】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : アポカリプス・ヘブン
【対象を天高く吹き飛ばすアッパーカット】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
空桐・清導
POWで挑む
アンタの全人類のオブリビオン化演説で
日常を愛する人達の平穏は壊させない!
このブレイザインが止めてみせる!
[勇気]によって清導はその姿を変えていく
より重厚に、精錬された鎧
胸部や手の甲には透明な水晶体が形成され、輝きを放つ
背には光で出来た後輪
それは最新でありながら、神話を思わせた
…初めて見る姿だ
これもアンタの影響かね
ぎゅっと、拳に[力を溜める]
行くぞ、プレジデントォオ!!
[気合]と共にUC発動
黄金のオーラを纏い、ラッシュを打ち込む
アンタが、大統領魂なら…
足を踏ん張り、顔を振り上げる
こっちはヒーロー魂だぁああ!!!!
その宣誓と同時に[限界突破]
腰を入れ、右ストレートを放つ
…KOだ、大統領
●魂の強さ
悠然と待ち構える男の前に立てば、びりびりとした覇気を感じ取る。己が身の内、真の姿に干渉してくるようなそれは、極度の緊張感すらも与えてくるようだった。
ぎり、と奥歯を噛み締めて、空桐・清導は男をきっ、とにらみつけた。ヒーロー"ブレイザイン"として。放っておけばすべての世界を脅かしかねない者は見過ごせない。
「アンタの企み……全人類のオブリビオン化演説で、日常を愛する人達の平穏は壊させない! このブレイザインが止めてみせる!」
その啖呵と同時、清導の纏う鎧が音を立てて変形した。真紅の英雄然とした姿は彼の強い意志を汲み取ったかのように、重厚かつ鋭い装甲が増えていく。
澄んだ色の水晶体が手甲と胸部に光り輝き、ぐるり、と。眩しい光輪が背に浮かんだ。これが清導の真の姿、鎧が真価を出せる形態なのだろう。
初めて見るそれを実感するように拳をゆるく握れば、眼前に立つ男の痺れるような覇気にも負けない力が満ちているのを清導に感じさせた。
「止める、か。有言実行してこそヒーローというものだ。最も私とて、そう簡単に止まってやる気もないのだがね。」
清導を出迎える男、プレシデントは悠然とした笑みを崩さず、重たげな機械音を立てて拳を構えた。そのまま片足を引き、体勢を斜めに構える。静観といった様子で、清導を見据えているようだ。
「先手は譲ろう、少年、覚悟を見せに来るがいい」
「言われなくても! 行くぞ、プレシデントォオ!」
清導が……ヒーロー・ブレイザインが拳を握り、地を蹴って走り出すのが開戦の合図となった。
鎧からは黄金のオーラが軌跡を残し、手の水晶体がそれを導いているように光っている。そのまま大きく踏み込めば、自然と拳に力が乗った。そのまま清導のラッシュがプレシデントを捉えた、と思ったが。
がぎん、と金属音を立てて阻まれた。ブロッキング、なのだろう。直撃を避けるために肘や腕などを使って行われるであろうそれが、巨大な拳とその風圧だけで足りている。清導の拳で機械腕が多少歪むも、それで留まっていた。
「成程、ヒーロー然としたいい覚悟。ならばこちらも攻勢に出させてもらおうか!」
プレシデントは巨大な拳自体を盾に数発をいなし、片足で地を蹴ると同時、もう片方の拳を振り抜いた。それはまっすぐに清導の鳩尾を捉えていたが、寸前のところで防ぐことができた。
勢いの乗った重い拳をどうにか受け止めるが、腕が痺れるような衝撃に清導は鎧の中で眉を顰めた。押し負けてたまるかと力を込めた足が、地を抉る感覚。
「ぐう、重、っ」
「これが大統領魂の拳、というやつだよ」
す、と身を引かれると、プレシデントの方から間合いを取られた。余裕げな笑みが遠ざかる。清導は膝をつきかけるも、自分を叱咤するように足を踏ん張った。
ヒーローが、ここで倒れる訳にはいかない。
雄叫びをあげると、そのまま再び大きく踏み込んだ。城壁のごとき機械腕のブロックを、先程の拳の痕を取っ掛かりに躱して、更に前へ。追撃にもう片方の剛腕が襲い来る直前、清導は右ストレートの構えを取った。
「アンタが、大統領魂なら……こっちは!」
「……!」
「ヒーロー魂だぁああ!」
その気迫と共に、清導の拳が風切り音と共にプレシデントを捉えた。目を見開くプレシデントの表情は、どこか賛辞混じりの驚嘆を浮かべていた。
「有言実行してやったぞ、大統領」
「ははっ……流石は猟兵(ヒーロー)だ」
成功
🔵🔵🔴
夜刀神・鏡介
拳で語れと行ってくるプレジデント……頭の良さとはまた別の問題なんだろうけど、政治家の割には体育会系がすぎるというか
何にせよ全人類オブリビオン化なんてさせる訳にはいかない。倒させてもらうぞ
精神を統一して、真の姿に変身。暴走しそうな力を無理に抑えつつ戦う形態
神気を身に纏い、身体能力を限界を超えて引き上げつつ、徒手空拳で構える
敵の攻撃は冷静に、落ち着いて最小限の動きで回避か、難しければなんとか受け止める
此方が渾身の攻撃を決める際は、異形化した左腕にて、無の型【赤手】
闘気を込めた拳で大統領を思いっきり殴る
尤も拳で語るとはいうが、殴り合って何が伝わる訳でもないが……気合いを込めて、最後まで殴り合ってやる
ふと、グリモアの転移前に見た映像を思い起こす。ネットワークの混線を逆に利用して猟兵を招き、爽やかな笑みで待つ男は。確かに、拳で語ろうと言っていた。
嘗て政治家……大統領だったという“それ"が言うにしてはどこか異質にも聞こえたが、異世界とはいえアメリカの気風と、男、プレシデントの機械腕と筋肉の恵体がそれを納得させるようにも思う。
でも流石に。
「……頭の良さとはまた別の問題なんだろうけど、政治家の割には体育会系がすぎるというか」
そう、夜刀神・鏡介はぼそりと独り言ちた。それにややオーバーリアクション気味に機械腕を振り上げて、プレシデントがゆるりと応じる。
「国民なき大統領である今、折角だから此方をやってみたい……というのもあるのだよ。政治家なぞそんなものだ。国民の為が主、そのために動く後ろ側で、自分がしたいことをやるだけ」
色々なものを無くす前に、言葉での交渉はやり尽くした。そう言外に呟いたようなプレシデントの笑みにつられるように、精神波がいっそう濃さを増す。
びりびりとした空気に煽られ過ぎまいと拳を握りしめ、鏡介は静かに、怒気を込めて呟いた。
「……何にせよ全人類オブリビオン化なんてさせる訳にはいかない。倒させてもらうぞ」
真の姿に変わって一番先に理解したのは、清廉な、そして強烈な神気が身を覆う感覚。奔流ともいえるその気に意識が呑まれそうになるが、倒すべき敵を見据える事でなんとかとどまった。握りしめた左拳は、大きく異形へと変貌を遂げている。ちらちらと零れる火の粉が、まるで神気の片鱗にも似ていた。
鏡介は精神統一の為にながく、ながく息を吐くと。剣術の体捌きを応用した構えで、拳を握る。その様をどこか楽し気に見ていたプレシデントも、機械腕でボクシングの構えを取った。
先手をとらんと鏡介がいち早く距離を詰めたのは、自身が無理矢理に抑え込んでいる、隙あらば暴走せんとする力を解きたいという理由もあった。その意志を乗せた拳を振り抜こうとしたところで、轟、と音がする程の風圧に後退する。
軽快なボクシングのステップではなく、体幹崩さずしっかりと地に足をつけて身を退いた、直後。さっきまで鏡介が居たところを、プレシデントの拳による風圧が大きく抉った。ばちりと火花を散らす機械腕が、目に映る。
その光、引かれる拳を追うように、再び鏡介は距離を詰める。もう片方の拳は身をかがめて躱し、さらに前へ。自身の拳を握り直せば、そこには神気の火の粉と、確かに闘気が宿っていた。
「……はぁっ!」
身を捻り勢いをつけて放つ、渾身の正拳は確かにプレシデントを捉えた。ぐらりと傾ぐ巨体はどこか賞賛のように笑むと、また、拳を構える。鏡介も間合いを取り、自身の拳を握り直した。
拳で語るとはいうが、殴り合って何が伝わる訳でもない気もする。だが、力で決めるというのはアポカリプス・ヘルに全体的に漂うような空気でもあり、ひどく簡潔な決め方だった。
「……気合いを込めて、最後まで殴り合ってやる」
「ははは!そう来なくてはな!」
大成功
🔵🔵🔵
宮落・ライア
真の姿:青白い獣
暴走系真の姿:精神異常により極度の思い込みを発症。『狂信者の心』がUCで怪物の心へ。
相手が拳闘を望んでいるからその舞台で戦闘。
獣ではあるが、ある程度人の体勢を残した姿に変容。
あとは、激痛耐性と継戦で耐久。
怪力限界突破鎧砕きグラップルで殴り合う。
殴り合うたび、時間が経てば経つほど体が変化していき人から離れてゆく。
初期は言葉を介するけれど、後になれば人語すら消え失せる。
あはははははは!望んだんだろう?呼んだんだろう?求めたんだろうこれを!
だったら十全に付き合ってあげるからつきあってよ!
私は! 解放を! 望んでるんだから!
●異形の英雄
ざわりと心が逆撫でされる感覚。真の姿へ誘われるというよりは、身の内に秘める力をこじ開けられるような。解放。望んでいたモノに続く道筋の、解放。そうなのかもしれない。そうだったっけ?
宮落・ライアは静かにその精神波を掴みとると、真の姿へと変貌を遂げる。変わったのは、狗や狐にも似た青白い獣のすがた。角は東洋龍のそれで、尾はどこか九尾を思わせる。
「ああでも、拳闘がお望みなんだよね。じゃあこのくらいで……」
そんな獣……獣人、という辺りでライアは変貌を止めた。その姿に機械腕で重たげな拍手を送り、そのまま拳を構えたプレシデントは、どこか楽し気に話す。猟兵達の真なる姿を暫し見て来た者としての言葉だった。
「成程。怪物であり、人であり。猟兵諸君それぞれが別種の存在というのを改めて感じさせるね」
「そう。じゃあここからも怪物らしく、殴り合いに行くから」
此方を人として、人だけとして見ていない。プレシデントの言葉はどこか、そんな響きを持っていた。例外、別種の存在。ライアがそれにどこか肩の荷が降りた心地がするのは、真の姿として箍を外したが故だろうか?
バケモノ。怪物。人でなし。重なるように耳朶を打つ幻聴を、普段なら聞きたくないその声を。軽く笑い飛ばしたくなる。人であること、そんな些末事に拘っている場合じゃない。
鋭い爪であろうとも、まだ拳は握れていた。
そのままライアは、大きく踏み込んで拳を突きだす。軽々と振り回される機械腕でブロッキングされようとも、電光風圧伴った拳が降り注ごうとも。獣の爪で地面を抉り、彼女は諦めず攻め手を伺う。
「諦めない覚悟、というよりは。まるで執拗に狙う獣のようだね」
「……ぐ、あはは、でも呼んだんだろう、これを!」
これを。怪物としての己を。獣のような方向をあげるライアは徐々に、人としての形を失っていく。四つ足で飛びかかり、機械腕に阻まれればその腕自体を蹴って体勢を整える。
ああ、なるほど。と。獣に変わりゆく心の中で、ライアは納得していた。この解放は、望んでいた、いや、期待されていた道ではない。英雄の道に続くものではないと。それより、もっと陰惨で、獣じみた──
「……アアア!!」
「ぐ、ふはは!正しく怪物だね!」
もう言葉を介することもなく、ライアは再び咆哮を上げた。肯定の意味でもあった。獣は、怪物は。執念深いものだ。さてそんな怪物に相対するような英雄はどうだったのか。どうだったろう。現在のライアには思い返すことはないのだが、今の彼女は正しく怪物としての自己があった。そんな、幾重にも連なる攻勢を経て。ばきり、と音を立てて機械腕の鉄板が飛ぶ。その痕を足がかりに大きく跳んで、ライアは……怪物は再び、爪を構える。
プレシデントに大きくついた爪傷は、ライアの──怪物の拳が、爪が。解放を望む感情が。人のカタチをしたオブリビオン(かいぶつ)に競り勝った証左だった。
成功
🔵🔵🔴
フィロメーラ・アステール
「戦いこそ、あたしの本分といえなくもない!」
オブリビオンに対抗すべく産みだされたもの。
今こそ、その真の姿を!
って必然性はないけど、ボクシングって言うと打撃に強そうなこっちの方がお得では?
(にょーん、果てしなくドラマなき変身)
これは『星霊体』が純然な魔力に近づいた状態!
パっと見は金色スライム!
普段は妖精の姿じゃないと自我を長く維持できないが、戦う心が強まった今ならこれで戦える、気がする!
さあ本質に立ち戻った事で色々【オモイダス】事ができるぞ!
体を変形させ両手を構築!
戦闘知識の封印が解かれて妙にイイ動き!
謎の気合ガードとか炎の焼却パンチとか格ゲー・漫画っぽさを出しつつも意外と健全に殴り合って戦う。
「戦いこそ、あたしの本分といえなくもない!」
戦意を促す精神波の影響か、びりびりと震える空気のせいか。フィロメーラ・アステールは、早くも十二分に気合が入っていた。ぐっ、と小さな拳を握りしめ、彼女自身にとっては壁どころか天高く伸びる柱のような男を見据える。男の背後では白いワシントンモニュメントが、逆光で影を落としていた。
自我を得た自然霊であるフィロメーラは、オブリビオンに対抗すべくしてこの世に生を受けたようなもの。それこそ普段はその記憶すらないのだが、精神波の影響か、今こそ真価を見せねば! という気合はある。
とろとろ、とろりん、うにょん、と姿を変えつつも。フィロメーラはふと、呟く。
(って、そんな必然性はないんだけど。それよりも。ボクシングって言うと打撃に強そうなこっちの方がお得では?)
うん。それはそうかも。
フィロメーラが変貌を終えた姿は、小さな羽根を持つ金色のスライムだった。それが淡い燐光を零して浮かぶと、ぱちり、と青い目が現れる。純粋な魔力に近づいた、星霊体のすがただ。
(……おおっ?なんかいけそうな気がする!)
少しだけ待ってみても、自我が消えていかない。普段の妖精の姿でなくても、本質に近くても。いつもの意識を良い感じに維持できているのは、きっと戦う意志が満ちているからだろう。これならいける。そう思えた。よし、と気合を入れると自分の本分を果たすべく、色々と思考を手繰り寄せる。普段はしまい込んでいた、宙の記憶を一気に引きだせば、最適なかたち……両手を作り上げる。
ぐっ、と握った金色の拳を更にグローブのような形状にして、格闘ゲームのキャラクターのようにその拳に炎を灯す。
フィロメーラが真の姿に変わったと同時、プレシデントもまた、巨大な機械拳を構え直す。そのまま緩やかに言を零した。
「ほう、エイリアンというか、スライムというか──なるほど、確かにその姿は合理的だろうね」
直後、機械腕が轟音を立てて変形を始めた。巨大化し、空気を巻き込んで回転を始めたその拳を、プレシデントが振りかぶる。
半端に避けては巻き込まれ、ブロッキングもタイミングを合わせなければ崩されかねないその拳を、フィロメーラは金色の粒子を出しながら腕で受け止めた。ぐぬぬぬ、と暫く拮抗が続いたかと思いきや、竜巻の風に乗って彼女は跳び込む。
「よっ、と!」
「……!! コミックかゲームキャラクターのようだな、君は!」
プレシデントのその言も印象としては間違っていないのかもしれない。多段ヒットを受け流し、一瞬の隙で滑り込む。宙の記憶から引きだした戦闘における体捌きなどの色々が、フィロメーラの機敏な動きを支えていた。
「そんなに似てるかな? ……ようし、今度はこっちの番!」
拳に炎を灯し、気合を入れてラッシュを放つ。プレシデントの壁のような機械腕がそれを遮ろうとするが、とろん、と避けることで滑り込めた。そのまま伸びる拳を振りかぶり、フィロメーラは渾身の一撃を打ち込むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
クレア・フォースフェンサー
真の姿とな
確かにこの姿はわしにとっては仮初のものに過ぎぬが、おぬしが言っているのはそういうことではないのであろうな
この身体に真の姿なるものがあるのか、すまぬがわしは知らぬ
ゆえにこの姿のまま戦うことを容赦せよ
そして、拳闘というのもわしには難しい話じゃな
いや、おぬしがその巨大な両の手を拳と呼ぶのならば、わしもこの剣こそわしの拳と呼んで問題なかろう
おぬしの大統領魂にわしの武芸が届くのか、いざ参る
光剣で敵の攻撃を捌きつつ接近
敵がこちらの武芸を見切ったと思ったならば、UCの力を込めて斬り裂こう
全人類のオブリビオン化じゃったか
おぬしがかつて大統領であったとき、おぬしはそれを受け入れたであろうかの
「真の姿、とな。確かにこの姿はわしにとっては仮初のものに過ぎぬが、おぬしが言っているのはそういうことではないのであろうな」
「ああ、そうだよ。それぞれが別種の、特異なる存在。真の姿というのはその根っこの部分なのではないかと考えていてね」
「ふむ……」
プレシデントの言に、クレア・フォースフェンサーは考え込む。
猟兵という存在は、色々な意味で例外が多い。その在り方に興味を持つ、プレシデントのようなオブリビオンもいるくらいに。猟兵の真の姿はただの人なのかもしれないし、怪物なのかもしれない。本質がどのようなものかという自覚がある者も、無い者もいる。
クレアは後者だった。ナノマシンで構成された己が身の、真の姿。どんなものか気にならない、という訳ではないのだが。現状は知らないというのが答えだった。
「この身体に真の姿なるものがあるのか、すまぬがわしは知らぬ。ゆえに、この姿のまま戦うことを容赦せよ」
「一向にかまわないよ。君自身が知らないものを見せて貰うような真似は、それこそ無茶だ」
「ありがたい。それと、もう一つすまぬが」
なんだい? と。聞こえる声だけは依然としてにこやかだ。プレシデントが大きく歪んだ機械腕で拳を作ると同時、クレアは光剣の柄を握る。
「拳闘というのもわしには難しい話じゃな。……いや、おぬしがその巨大な両の手を拳と呼ぶのならば、わしもこの剣こそわしの拳と呼んで問題なかろう?」
そう問われ、プレシデントは自身の機械腕に視線をやる。少しだけ考えて、その言にも頷いた。多種多様な猟兵がいる以上、そう否定もしないのだろう。
「……成程、なるほど。そうとも言えるだろうね! それでは、拳と剣のぶつかり合いといこうか」
「おぬしの大統領魂にわしの武芸が届くのか──いざ、参る」
様子見のように身を退いたプレシデントに食い下がるように、光剣を握りしめたクレアが斬撃を放つ。鋼鉄の拳は刃を止めるが、追撃のそれをクレアは紙一重のところで跳び、躱す。
砲弾にも似た速度の右ストレートが未だ空中にいるクレアを捉えようとするが、クレアは剣で勢いを殺してさらに跳ね、間合いを取った。
「真の姿無くとも、ここまでの動きが」
「わしは対オブリビオン用、じゃからな」
驚嘆混じりに、プレシデントが呟く声。それを聞き流しながら、クレアは再度攻勢に移る。
拳を捌くのも要領を掴み、最接近ができた、と思った直後。
「だが、流石に覚えた。次は、」
轟音を立てて、壁の如き機械腕で阻まれる。すぐさまの追撃もあるのだろう、竜巻にも似た空気の流れを見れば、構えた拳がクレアの視界に映った。
「いや。次は無い。もう、わしの勝ちよ」
光剣の刀身が、拳を通り越して大きく袈裟切りに振るわれた。遮蔽を飛び越し、核のみを切り裂く斬撃。プレシデントはそれをまともに食らい……静かに、膝をついた。
「全人類のオブリビオン化じゃったか。……おぬしがかつて大統領であったとき、おぬしはそれを受け入れたであろうかの」
ぽつり、クレアはそう聞いて見る。どうだったろう、と考える、ひとりの大統領だった男は。答えを言うことのないまま、骸の海へかえっていった。
成功
🔵🔵🔴