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アポカリプス・ランページ⑫〜無邪気な好奇心

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●焼けつく荒野でつかまえて
 ダラス・フォートワース国際空港跡。
 見上げるような、巨大な一両の戦車がそこにはあった。
 それは当然ただの戦車などではなく、かつて世界を滅ぼした『フィールド・オブ・ナイン』の内の一体『スーパー戦車』。自律思考型巨大戦車は精密な超長距離砲の連射を可能とし、最終戦争の如き様相に世界を一変させた凶悪な兵器。
 例えそのプログラムがコンピュータウイルスに侵食されていたとしても、戦力としては並のオブリビオンとは一線を画す程に強力だ。
 しかし、そのスーパー戦車は何故かその戦車砲ではなく機体に搭載されていた複葉機型の捕縛兵器を周囲に展開している。
 そしてたまたま通りかかったと思われるレイダーを複葉機から縄のように太い金属ワイヤーを放って拘束、そのまま凶悪な日差しの荒野の大地に標本のように縛り付けていた。
 太陽熱、そして機械から放たれる熱をたっぷり吸収したワイヤーは、捕らえられた被害者の体を電熱線のように焼きながら膨張し締め付け、やがて切断してしまう。もっとも、それまでに生きているかどうかすら怪しいけれども。
 そんな光景をスーパー戦車は低い機械音――どこか好奇心を抱いているようなそんな雰囲気の音を響かせながら、まるで自由研究で子供が観察するように見下ろしていた。

 グリモアベース。
「アポカリプス・ランページ、フィールド・オブ・ナインの一体である『スーパー戦車』についての予知が見えた。できるならみなの力を貸してくれんか」
 老狼の猟師、ロー・シルバーマン(狛犬は一人月に吼え・f26164)はそう猟兵達に要請する。
「廃墟と化したダラス近辺を制圧している巨大なスーパー戦車は猟兵達がデス・バレー要塞を制圧した事により奪取した侵食プログラム弾の効果で弱体化している。しかしその戦力は相変わらず強力じゃが……どうにも一番の武器であるスーパー戦車砲を使わず機体に搭載された捕縛兵器を周囲に展開しているようじゃ」
 本来のスーパー戦車砲は精密な長距離狙撃のみならず連射も可能という恐ろしいものだが、それを何故使わないのかは分からないと首を傾げながらローは言う。
「その捕縛兵器は巨大なスーパー戦車の各所から放たれる小型の複葉機型ドローンで、射程距離に入った者に即座に放たれる。そしてそれは統率を取って人の腕ほどもある縄のようなワイヤーを放って敵を拘束し、そして地面に縫い留めようとする。ワイヤー自体の強度もあるが、荒野で炎天下、更にドローンが熱源になっているから早めに脱出できなければ締めつけられながら焼かれてしまう事になるじゃろう」
 ちなみにスーパー戦車自身は猟兵を捕獲してもすぐには追撃してこないようだとローは言う。
「どうにもどうやって逃れようとするのか好奇心を抱いているような……捕縛されないのが一番じゃろうが、もしかするとわざと捕らえられてそこから見事に脱出してみせればスーパー戦車の隙を突くことができるかもしれぬ」
 そしてローは左腕の鈴のグリモアを鳴らし、アポカリプスヘルへの転送を開始する。
 鈴の音が遠くなり、猟兵達は眩しく遮蔽物のほぼない荒野へと降り立つ。
 そして彼らの眼前には、かつて世界を滅ぼした中の一機である巨大戦車が不気味に機械音を唸らせ聳えていた。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 わんわん!

 このシナリオはアポカリプスヘルのダラス・フォートワース国際空港跡で『スーパー戦車・エクスペリメントモード』と戦うシナリオとなります。
 禁断のコンピュータウイルスを込めた侵食プログラム弾を猟兵達が放ったことにより弱体化していますが戦力は脅威のままです。
 しかし得意とする長距離砲撃は行わず、何故か猟兵達を搭載されている極太の金属ワイヤーを放つ小型複葉機型の捕縛兵器により猟兵を生きたまま捕えようとしてくるようです。
 下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……あえて捕まり、驚くほどピンチになった後、敵が驚嘆するような方法で脱出し、反撃する。
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 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『スーパー戦車・エクスペリメントモード』

POW   :    ピースフル・キャプチャー
【邪悪な好奇心】を籠めた【捕縛兵器】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【行動自由度】のみを攻撃する。
SPD   :    ホーミング・キャプチャー
【誘導式捕縛兵器】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    キャプチャー・フラッド
【捕縛兵器の発動】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【キャプチャーマシン】で囲まれた内部に【大量捕縛兵器】を落とし、極大ダメージを与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カグラ・ルーラー
「どっちがヤキ入れられる立場か解らせてやるさ」
この事件に対してこう感じ、猟兵として参加だ。

ほう、太ってェワイヤーだが痛くも何ともねェな。本気で焼き殺す過程が見てェらしい。血ィ出てりゃヤキ入れてやれたけどな。

だが本気で焼き殺されるなんざ死んでも御免だ。
「ピースフル・キャプチャー」に対し、「ノラネコーション」。

肉体の全部を猫に変異させ、隙間をするりと抜け出てやるさ。

抜け出たらそのままスーパー戦車に駆け上って、
間抜けに口開けた砲塔を猫パンチでボコるぜ。



 酷暑の荒野に聳え立つ巨大な戦車を見上げ、カグラ・ルーラー(バスバリス・f21754)は不敵に笑っていた。
 グリモア猟兵から聞いた話に拠れば今のこのオブリビオンは敵を捕らえて拘束、逃れようとする様を観察してくる、とのことだ。
 ――向こうからすればそれは単なる好奇心かもしれないが、他者には拷問や処刑と何も変わりはしない。
「どっちがヤキ入れられる立場か解らせてやるさ」
 そしてカグラは笑みを深めつつ戦車へと駆け出す。
 燃えるような赤髪を眼前に認めた戦車の各所から捕縛用兵器である複葉機型ドローンの群れが放たれる。
 数は膨大、しかも一糸乱れぬ統率をもってカグラに襲い掛かる。これを回避しきる事は不可能だろう。
 飛来する複葉機の放った縄のようなワイヤーがカグラの腕に巻き付く。引っ張って軽く強度を確認してみるがびくともしない。
 だが今は熱くもなく、それ以上締め付ける訳でもないのか痛みもない。
(「本気で焼き殺す過程が見てェらしいな」)
 もしかするとそれ以上に惨い意図があるのかもしれないが、今のこのワイヤーに捕縛以上の意図はないようだ。
 両手足と胴体にワイヤーを巻き付けられた彼女はそのまま複葉機の群れに吊り下げられる形でスーパー戦車の近くにまで運搬され、地面に縛り付けられてしまう。
 もしも。ここまでで傷を受け出血していたなら、この状態からのオウガ召喚でのヤキ入れもとい反撃も考えられたがそれは使えない。
 だがこのまま焼き殺されたり日干しにされるのは当然御免だ。
「猫を恐れ敬え……!」
 そう呟くと同時、ユーベルコードを起動したカグラの全身が小柄な猫のそれに変異する。
 元の人間の身体よりも柔軟で小柄な猫の身体、巻き付いたワイヤーとカグラの身体の間に隙間が生じる。
 その僅かな隙間を猫の柔軟性でするりと抜けて、そして拘束から離脱する。
 鮮やかにすり抜けた目の前の猟兵に奇妙な駆動音――どことなく楽し気に感じる音を立てるスーパー戦車。
 捕縛兵器の追撃はない、その間にカグラはスーパー戦車の巨大な鋼鉄の身体をたんたんと駆け上り主砲へと辿り着く。
 そしてその砲口にオウガブラッドの少女は連続で猫パンチで叩き込み、スーパー戦車への最初の一撃を与える事に成功した。

成功 🔵​🔵​🔴​

宮落・ライア
捕縛は呪縛と判断!

で、とりあえず捕まって脱出して驚かせてやれってことだけど―…。
ちゃんと捕まるまではダッシュしながら見切って鬼ごっこしようか捕縛兵器と。
わざと捕まるのはなんとなーく趣味じゃないんだよねー。
それにそっちの方が面白だろう?
で、掴まっちゃったら『止まる事無かれ』で能力上昇!
力技で片腕を無理やり自由にして怪力限界突破も含めてワイヤーを引き千切る!
後は、先の鬼ごっこで学習させた速さを能力強化で越えてるだろうから狙いズレるかなー。
戦車に一気に近づいて大剣でぶん殴る。



 そしてスーパー戦車が捕縛兵器を放つ中、キマイラの宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は捕縛兵器から逃れつつ荒野を駆けていた。
 このスーパー戦車を突破する糸口として提示されたのは完全に捕縛された状態から脱出して驚かせて隙を作り出すという手段。
 けれど、わざと捕まるのはなんとなくライアの趣味ではない。
 だから荒野を飛び駆けまわり、複葉機の群れから放たれる太いワイヤーを見切りながらスーパー戦車を目指していく。
 どこまで逃げられるのか、それにワクワクしているかのように低い駆動音と共にスーパー戦車の機体から更に捕縛兵器が放たれていく。
 そして転送された位置とスーパー戦車の丁度真ん中辺り、ぐるりとどこを見てもドローンの群れ、逃げ場を完全に封鎖されたライア目掛け無数のワイヤーが放たれ彼女の四肢を拘束。
 そして複葉機がライアをオブリビオンの下へと運ぼうとする。
「……動け」
 空中を運搬される中、足掻くライアが全身に力を籠めワイヤーから強引に逃れようとするが、恐ろしく頑丈なワイヤーはびくともせずより強力に彼女の動きを封じていくばかり。
 邪悪な好奇心により放たれたこの兵器による捕縛は、心理的にもライアの動きを封じようとする――すなわち呪縛。
「動け! 動けっ!!」
 多くの血と想いに託され救われたが故に、止まる事なんか許されない。
 ユーベルコードを起動し足掻き続けるライアの全身から血が流れ出したが、それを代償に彼女の力が跳ね上がる。
 左腕に絡まったワイヤーを血で滑らせ逃れさせ、右腕に絡まるワイヤーに手をかけその剛力で引きちぎる。
 全身から出血、そして体に猛毒の痛みが走り寿命が削られる感覚は無視。動けない筈を動かす無理を通す代償なのだから。
 この覚醒した彼女を縛る事など出来はしない。残るワイヤーも引き千切り落下したライアは一気にスーパー戦車へと距離を詰める。
 その速度は先程までの鬼ごっことは桁違い、後方に放たれるワイヤーを置き去りにしつつライアが跳躍し、スーパー戦車の装甲に大剣を叩きつけ破損させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK


んー、驚くような方法で脱出ねえ。
まあ、何とかやってみようか。

さて、まず下準備としてワイヤーからしばらく走って逃げ回って、
何回か転んだりして全身に擦り傷を付けておくよ。

その後ワイヤーに捕まって地面に縫い留められたら、
擦り傷から滲んだ血で【化変妖血】を発動。
体に巻き付いてるワイヤーを巨大な蛇に変異させて、
巻き付いてるのを緩めさせて脱出するよ。

脱出したら変異した蛇をスーパー戦車に巻き付かせて動きを止めて、
自分も巨大な怪物に変異して体当たりで攻撃しようか。

捕まえた実験動物が逃げ出して攻撃されるなんて、
アンタまるでモンスター映画の研究者だねえ。



 そしてキマイラの少女が鬼ごっこを繰り広げているのとほぼ同時刻。
「んー、驚くような方法で脱出ねえ……」
 同じくキマイラのペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)も飛来する捕縛兵器から逃れつつ、戦車の巨体を見上げていた。
 急に放たれたワイヤーを前方に飛び込みどうにか回避、何度目かの擦り傷から血が流れやや痛むような気がする。
 動きには支障はないけれども捕縛兵器は非常に多く切り込む隙が見えない。
 そしてペトニアロトゥシカが大きく跳ねてワイヤーから逃れ着地したタイミング、上空から一斉に複葉機の群が急降下を仕掛けてくる。
 ここに誘い込まれたのか、と冷静に考えながら彼女は拘束されてしまった。
 そしてそのまま彼女は捕縛兵器の群にスーパー戦車の前へと運ばれ拘束されてしまう。
 仰向けに地面に縛られた彼女、相当深くにワイヤーの固定具が撃ち込まれているようで、キマイラの怪力を以てしてもびくともしないという絶体絶命の状況。
 しかしここから逃れる事ができればこの窮地は好機に変化するだろう。
(「まあ、何とかやってみようか」)
 そして彼女はスーパー戦車が観察する中、ユーベルコードを起動する。
「力が欲しいならあげるよ」
 擦り傷から流れる血の量が増し、絡まったワイヤーを伝い濡らせば、ワイヤーが巨大な蛇の群へと姿を変える。
 怪物の血を浴びたものは新たな怪物に成る――元はワイヤーだった蛇はしゅーしゅーと空気を漏らしつつばらばらに散らばり、そして日の光を嫌い大きな影、つまりスーパー戦車へと向かっていく。
 そんな巨大蛇の群に、まるでびっくりしたように過剰な数の捕縛兵器の群が放たれ拘束していく。
 そしてスーパー戦車が完全にそちらに気を取られている中、ペトニアロトゥシカ自身も巨大な怪物へと自身の肉体を改造していて、その巨体でスーパー戦車に突撃する。
 捕縛兵器の群も間に合わない大きさと速度、その一撃はスーパー戦車の巨大な機体の装甲をへこませ内部に強烈な衝撃を通した。
「アンタまるでモンスター映画の研究者だねえ」
 捕まえた実験動物が逃げ出し攻撃される、そんな映画のようなシチュエーションに例えて怪物が笑う。
 けれど戦車の駆動音はどこか高く楽し気。戦いではなく遊んでいるような、そんな風に何故かペトニアロトゥシカには思われた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パトリシア・パープル
脱出芸を見せればいいのね
だったら、とっておきの技があるわよ

最初は動かず敢えて捕縛され、次の瞬間にUC発動
身体を小さくすることでワイヤーなどの捕縛兵器から逃れ、そのまま全力ダッシュでスーパー戦車の装甲の隙間などから内部に入り込む

後は、内部のメカを好き放題に破壊しながら全身
身体は小さくなっても、パワーは元のままだから、攻撃の威力は落ちないわよ

最後は動力炉の近くに『時限式スカンクガス爆弾』を置いて撤退
時間差で爆発すれば、ガスが動力部の熱で熱せられて引火爆発を起こすはず
「どれだけ外が固くても、中から壊されたらヤバいっしょ


ルーノ・リゾストムトルンナ
わざと捕まってから驚くような方法での脱出か…。
ベンヌ「なら、捕縛兵器を破壊せずに脱出する方法が良いでしょう。」

まず、ドローンからしばらく逃げ回る。
捕縛されたら、『サイキックブラスト』でワイヤー伝いに高圧電流を送ってドローンを停止させて、【オーラ防御】で脱出する。
その後はスーパー戦車本体をピヨランチャーで攻撃するんだ!

ベンヌ「それにしても、子供のような敵ですね。」
そうだね。



 突如出現した巨大な怪物が戦車の巨体を揺らし、そして捕縛兵器の群れが拘束せんと襲い掛かる様子を転送された地点から眺める二人の猟兵。
 一人はスカンクのキマイラ、パトリシア・パープル(スカンクガール・f03038)、もう一人はルーノ・リゾストムトルンナ(軟体系ハーフ少年とメガリスキャバリアたち・f34159)という名の鳥のような印象のキャバリアに乗った少年だ。
「わざと捕まってから驚くような方法での脱出か……」
『なら、捕縛兵器を破壊せずに脱出する方法が良いでしょう』
 キャバリア内、悩む様子の深海人の少年に意志持つスーパーロボットであるルクスベンヌがそんな助言をする。
「脱出芸を見せればいいのね。だったら、とっておきの技があるわよ」
 あの捕縛兵器の群れを突破する手段はあるらしく、パトリシアは自信満々に言う。
 そうこう話している内に複葉機の群れが二人へ向かってくる。
 ルーノがキャバリアを駆り捕縛兵器の群れから逃れようとする中、パトリシアは不動で待ち構える。
 複葉機型ドローンの群れは疑いもせず彼女にワイヤーを放ちその腕を絡めとれば、彼女の周囲を囲むように飛び出してきたキャプチャーマシンが大量の捕縛兵器を放ちパトリシアの胴と手足、そして首へと縄のような太さの鋼線で締め付ける。
 だが次の瞬間、パトリシアはユーベルコードを起動。同時彼女に絡みついたワイヤーの形はそのままに彼女の身体が消失する。
 標的を見失った複葉機の群れは彼女を探すように周囲を飛び回るが、その間にパトリシアはスーパー戦車へと一直線に駆け出していた。
 その身長は2センチ足らず、ユーベルコードにより縮めた彼女の身体は力はそのままで、その小さな歩幅からは想像もできない速度で距離を詰めていく。
 遠くから見るには消失マジックとしか思えないその芸当に、スーパー戦車の操るドローンの捕縛兵器も操縦が乱れてしまう。

 一方、ルーノとベンヌは捕縛兵器の群れから必死に逃げ回っていた。
 キャバリアの巨体がある以上姿を隠す事は叶わない。鳥型の機動力を活かし急加速制動方向転換を組み合わせながら逃れようとする。
 しかしそれも長くは持たず、とうとう捕縛兵器の一体のワイヤーにベンヌの羽が絡めとられると、出現したキャプチャーマシンが降らせる捕縛兵器のワイヤーの群れにキャバリアはその自由を縛られてしまう。
 どうにか動かそうとしてみるが翼と足は念入りに拘束されている。引きちぎり逃れる事は不可能だろう。
 だが、腕の関節から先の自由が利けばルーノにとっては問題ない。
 ユーベルコードを起動すれば、ベンヌの両掌から高圧電流が放たれる。
 その狙いはワイヤー、金属製のワイヤーは通電する為ベンヌ側も電撃を受けてしまうが、それ以上にドローンの方に強烈な電撃を叩き付ける。
 その電撃にコントロールを失った複葉機型ドローンは墜落、拘束されてもその固定自体がされていなければその効果は半減してしまう。
 オーラでワイヤーを強引に内から押し広げ、僅かに開いた隙間からベンヌが急加速で逃れる。多少、感電したままのドローンを引きずる形にはなっているが問題ないだろう。
『e38199e38194e38184e381adefbc81e38080e38199e38194e38184e381adefbc81』
 何を言っているのかはわからないが、スーパー戦車から機械音声が響いてくる。
 割と力技の突破にびっくりしたのか、何となく興味深そうな印象の音声だ。
 それに構わずベンヌから黒いヒヨコ型の浮遊自走砲を射出、それらに一斉にスーパー戦車へと砲撃を行わせる。
 砲弾が装甲を削り、けれどまだ余裕はあるようで捕縛兵器を追加でその機体の各所から放ってくるスーパー戦車。
 しかし、スーパー戦車の興味がキャバリアに気を取られている間、パトリシアは装甲の隙間から戦車の内部へ飛び込むことに成功していた。
「どれだけ外が固くても、中から壊されたらヤバいっしょ」
 大きさこそ縮んでいるが力は変わらない、つまり同じパワーをより狭い範囲に集中できるという事でもあり。
「さあ、ガンガン壊してくわよ!」
 そして戦車の中のメカを手当たり次第に破壊しつつ、動力炉を目指す。
 これだけのサイズを動かすに相応しい大きさの動力炉に辿り着いた彼女は、時限式スカンクガス爆弾をその周囲にバラ撒いて戦車の外へと離脱。
 彼女の脱出とほぼ同時、例えようもない悪臭が爆風と共に戦車の装甲内を満たし、更に一際大きな爆発が起こる。
 動力炉の熱による可燃性ガスの引火――想定されてない内側からの急激な圧力の変化は巨大で頑強なスーパー戦車でも耐えきれない。
 機体が内側から弾け、その装甲や中身の破片が荒野に飛び散り土に突き刺さっていく。
「やったわね!」
 派手な破壊工作を終え、大きな装甲の上に飛び乗りパトリシアがはしゃいで。
『それにしても、子供のような敵でしたね』
「そうだね」
 ふう、と安堵の息を漏らしながらルーノはベンヌに巻き付いた捕縛兵器の残骸を取り外しにかかる。
 荒野の地に散らばる捕縛兵器とスーパー戦車の中身にどことなく展開図めいた、或いは昆虫の標本のようにも思えて。

 世界を核の炎の海に沈めかねなかったフィールド・オブ・ナインの一体は、ここに見事打ち破られたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年09月20日


挿絵イラスト