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芽吹き

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●芽吹き
 りん、と。風鈴の音が鳴る。
 その音に気付いた人々はなんだろうと顔をあげる。
 りん、りん、りん。その音が途絶えた時――人々は気付いたのだ。
「おっかあ!」
「あああ、おまえ、この前、しん、だ……」
 死んだ者たちが――町の入口からやってくる。
 しかしそれらはいくら声かけても、物言わずただ薄っすらと微笑んでいる。
 何かおかしい。そうわかってはいても死した者に再び会えた喜びが人々に芽吹いて。
 けれど死した者たちはりん、と一つ音が鳴ったとともにかつて共に過ごした者達、見知った者達へと凶刃を向ける。
 どうして、なぜとあがる悲鳴を聞きながら――なるほどなるほど、と。
 背後に妖狐背負うものは人々と死者とのやりとりと、その顛末を興味深そうに見つめるのだった。

●予知
 少し、くすんだ毛並みの妖狐、終夜・嵐吾(灰青・f05366)は手をかしてくれんかとグリモアベースに滞在していた者達に声をかける。
 サムライエンパイアのとある街で事件が起こるのだと。
「ある街を、死者が訪れるんじゃ……それはもちろん、本当によみがえっているわけではない」
 彼岸の兜風鈴というオブリビオンが招いた亡霊と嵐吾は言う。
 そしてこの彼岸の兜風鈴を操っているものが別にいるのだと。
「幸い、今から向かえば彼岸の兜風鈴らが街へ招いた死者たちを向かわせるより前に防げる」
 この街を襲う彼岸の兜風鈴らは、対した者達の一番合いたい死者をこの場に招く。
 だが死者は何も言葉を発さない。表情も乏しく、ただそこにあるだけなのだ。
「本物ではない。しかし……会いたいものの姿を見られる、という点では惑わせてくるやもしれん」
 そういった者が心におる者は、と嵐吾は言って。いやと首を振る。きっとそれぞれ、分かっているじゃろうからと。
「彼岸の兜風鈴らを倒せばそれを使っていたものも現れよう」
 それを倒し、街に被害がないように頼むと嵐吾は言う。
 そして、それからと言葉続ける。
 その街の近くではふきのとうがとれる。それは今の時期、旬なのだと。
 もし、戦い心に何か思う事あれば――美味いものでも食べて。心癒してくると良いと手の内のグリモアを輝かせ嵐吾は皆をその場所へと誘うのだった。


志羽
 お目通しありがとうございます、志羽です。

●シナリオについて
 第一章:集団戦(彼岸の兜風鈴)
 第二章:ボス戦(勘解由小路・桔梗)
 第三章:和のおもてなしを受けましょう(オブリビオンをすべて撃破した場合)
 以上の流れとなっております。

●第一章について
 戦闘よりは、心情を詰めて頂くのをおすすめします。嘗ていた失った方への気持ち等です。
 多数いただいてキャパシティを超える場合、心情をしっかり詰められている方を優先させていただきます。
 戦闘は『敵を倒す』というような一言があればそれで十分です。
 性質上、個別のお返しとなります。

●第三章について
 天麩羅を御馳走していただけます。旬のふきのとうなどなど。
 第三章のみの参加ももちろん大丈夫です。
 判定には特にこだわらず、楽しめれば良いかなと思っております。
 グループ参加などの場合は、ご一緒する方がわかるように【グループ名】や【ID】を記入していただけると助かります。
 こちらはできるだけ多くの方をと思っていますのでマスターページの【簡易連絡】にてプレイング受付期間をご案内します。
 お手数ですが参加を考えられている場合、そちらの確認をお願いいたします。

 第三章のみお声掛けがあれば嵐吾もご一緒させていただきますが、基本的にはでてきません。

 以上です。
 ご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『彼岸の兜風鈴』

POW   :    風鈴の音が響き渡る
予め【風鈴の音を響かせ続ける 】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    風鈴の音が共鳴する
【共鳴振動となる甲高い風鈴の音 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    風鈴の音が死者を呼ぶ
【黄泉の国 】の霊を召喚する。これは【悲鳴】や【武器】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●りんりん、りん、と
 少し離れた場所に街が見える。
 そこへ向かう一本道をふよふよと彼岸の兜風鈴達は往く。
 そして風鈴の音が響けば彼岸より此岸へと招かれる――かつてこちら側にいた者達がゆらりとその姿を現す。
 対する猟兵達の、心に思うものの姿で。
ニケ・セアリチオ
――りん

鈴音の元、顕れた姿に目を見張る

風吹けば飛んでしまう様な、小柄な体躯
しわくちゃだけれど温かな熱を持った手
いつも私を見守ってくださった優しい瞳


「おばあさま!おばあさまなのですか?」

私の最後の『持ち主』さま
家族と言ってくださった、大好きなヒト
また貴女に、会えるなんて!

――でも、でもね
私は貴女に旅出を見送られて
そして、看送ったのでしたね

貴女が好きだと言ってくれた『私自身』で、今度は貴女を送り届けます

例え幻想だとしても
貴女にもう一度逢えた
それだけで、私はまた踏み出せるのです

――だから
この震えは……かなしみでは、決してないの
貴女に逢えて悲しいだなんて、思いたくはないから

「――大好きよ、おばあさま」



●大好きよ、と
 りん、りん――りん。
 彼岸の兜風鈴の鈴音の先。
 ゆらゆらとゆれて、やがてその人の姿となる。
 その姿にニケ・セアリチオ(幸せのハト・f02710)は金色の目を見張った。
 ああ、そこにいるのは吹けば飛んでしまう様な、小柄な体躯。
 その手はしわくちゃだけれど温かな熱を持って。
 そしてその瞳はいつも、ニケを見守っていた優しいもの。
「おばあさま! おばあさまなのですか?」
 思わず、呼んで。思わず、問うて。
 勝利の女神と唱われた金貨であった頃――ニケの最後の『持ち主』さま。
 家族と言って優しい眼差しを向け、そしてその温かな手で触れてくれた、大好きなヒト――また貴女に、会えるなんて!
 そう、思うのだけれど。
 だけれども、ニケはちゃんと、覚えている。
 一歩、踏み出そうとしたその足は止まった。
「私は貴女に旅出を見送られて」
 そして、看送ったのでしたねとニケの声は小さく落ちた。
 だから目の前にあるのは、幻想。
 もう一度、出会えるとは思っていなかった。
 幻想だとしても、もう一度逢えた。
 それだけで――私はまた踏み出せるのですと、ヤドリガミの少女は綺麗な笑みを浮かべ先程とは違う心持で近づいていく。
「貴女が好きだと言ってくれた『私自身』で、今度は貴女を送り届けます」
 ふわりと乾いた風がニケの頬を優しく撫でる。
 その感覚に足を止め、ニケは自身の指先が小さく震えているのに気付く。
 この震えは……かなしみでは、決してない。
 柔らかに、微笑んでいる。けれど、生きてはいない大切な、大切な人。
「貴女に逢えて悲しいだなんて、思いたくはないから」
 きらりと、輝く金貨の己を生み出して、ニケは柔らかに笑ってみせた。
 その表情は、己の心へと響く。
 心が表情へと響くのと同じように。
「――大好きよ、おばあさま」
 少しだけ切ない響きだった。
 ニケが放った金貨は大切な人を貫いて、かき消して。
 そして、その先の兜風鈴を撃った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
おとうさん?

死者:黒髪茶目の年嵩の男性
笑うと目尻に皺ができる
今日の調子はどうかなと微笑んで
髪と服を整えてくれる

わたし、おとうさんがだいすき

お屋敷の中
床で倒れてるおとうさんがもう起きないことに気づかないまま
おねぼうさんだねって
ずっと隣に座って起きるのを待ってた

ごめんなさいって伝えたかった
わたしがもっと早く探しに行けば
人間について詳しければ
おとうさんはまだ笑っていたかもしれない
まだ若いのにって言われてた
まだ、生きていられたんだよね

わたし、今はもうわかるよ
人間は息をしなくなったらもう起きない
だからね、あなたはおとうさんじゃないって
もうわかっちゃうんだ

ばいばい
ぎゅっと目を閉じた後開いて
斧を振り下ろすよ



●ばいばい
 りん、と鳴る。ふわりと、その姿が輪郭を持って生み出される。
 薄く浮かべた笑み。目尻にできる皺。
 黒髪に茶色の瞳の年嵩の男性の姿にオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は、キトンブルーの瞳を瞬かせた。
「おとうさん?」
 その声色の響きは一層、おさなく。おとうさん、と再度喜色が滲む声でオズは呼ぶ。
 けれど――反応はない。
 今日の調子はどうかなと微笑んで、オズの髪と服を整えてくれたその手は動かない。
「わたし、おとうさんがだいすき」
 ぽとり。
 零れた言葉にはオズの想いが滲んでいる。
 嘗ていたお屋敷の中――床で倒れているおとうさん。
 おねぼうさんだね、とオズはずっと隣に座って起きるのを待っていた。
 もう起きないことに気付かないままに。
 わたしがもっと早く探しに行けば、人間について詳しければ――そうで、あったならば。
「おとうさんはまだ笑っていたかもしれないね」
 まだ若いのにって言われてた。
 それは――まだ、生きていられたということ。
 助けられたかもしれない、でもそうできなかった。そうならなかった。
「ごめんなさいって伝えたかった」
 オズは、ふと瞳伏せ。そして、正面から見つめる。
「わたし、今はもうわかるよ。人間は息をしなくなったらもう起きない」
 だからね、とオズは柔らかな声で紡ぐ。
「あなたはおとうさんじゃないって。もうわかっちゃうんだ」
 ぎゅっと目を閉じる。その瞼の裏に巡る記憶と想い。
 オズはその手に武器を握る。
 それは身の丈ほどある斧を基にしたガジェットだ。ふしゅりと、小さく蒸気が噴きあがる。
 ぎゅっと、握りこむ。
 そして目を開いて、オズは目の前の、おとうさんへと告げる。
「ばいばい」
 本物ではない。もう、ここにはいないそのひとの影を振り下ろされた斧の刃が打ち砕く。
 りん、と鈴の音が鳴って――その影は消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紅庭・一茶
「やまね、さん、――山眠さん。」
自身が真似た嘗ての所有者の少女を見れば、
声は少し震えてしまって

仮初でも君に対面出来るのは、…少し嬉しいです
君が病気で死んでしまった時に、
僕は手放されてしまいましたけれど
本当は、君と一緒に埋めて欲しかったのですよ

…ふふ。いいえ、違いますね
もっと強く願ったのは、君と御茶会をする事です
こうやって、向き合って
寂しがりやの君の話し相手になりたかった
君にとっての、素敵な男の子になりたかった

…でも、同じ形なだけで自身を誤魔化せるというのなら
紅庭は鏡を覗くだけで良かった筈ですから
ですから、――倒しますっ!

…ごめんなさい。いつかきっと。
君のお墓に紅茶を淹れに行きますから、ね



●いつかきっと
 その姿は自分とそっくりだ。
「やまね、さん、――山眠さん」
 いや、正しくは自分が――紅庭・一茶(いばらゆめ・f01456)が真似たのだが。
 自分が真似た、嘗ての所有者の少女を瞳に映して一茶の声は少し震えていた。
 震えて、しまった。こんな声を出すつもりはなかったのに。
 一茶はきゅっと唇一度引き結んで柔らかに笑む。
「仮初でも君に対面出来るのは、……少し嬉しいです」
 目の前の少女は、その言葉に応えはしない。
 けれど、内に秘めた思いを紡ぎ出す事くらいは、今くらい、少しくらい許される。
「君が病気で死んでしまった時に、僕は手放されてしまいましたけれど」
 本当は、君と一緒に埋めて欲しかったのですよと紡いで。
 ふふ、と一茶は小さく笑い零した。これは、本心ではないと小さく首を振って。
「いいえ、違いますね」
 本当は。
「もっと強く願ったのは、君と御茶会をする事です」
 こうやって、向き合って。
 今なら叶うだろうか――いや、叶わないのだとわかっている。
「寂しがりやの君の話し相手になりたかった。君にとっての、素敵な男の子になりたかった」
 けれど、そうはなれなかった。
 人の姿を得たティーポットの一茶はでも、と。
「同じ形なだけで自身を誤魔化せるというのなら紅庭は鏡を覗くだけで良かった筈ですから」
 瓜二つ。真似たのだから、姿は同じだ。
 鏡の中の一茶は、彼女ではなかった。それは一茶自身が一番よくわかっている事。
「ですから、――倒しますっ!」
 目の前の相手は少女ではない。一茶はオレンジ色の瞳を少しだけ、寂し気な色に染める。
「……ごめんなさい。いつかきっと。君のお墓に紅茶を淹れに行きますから、ね」
 まがい物、幻であっても君に会えたことは嬉しくて。
 そして心に抱いた約束を告げて。
 一茶がその姿をかき消せば鈴音と共に、兜風鈴はその姿を消した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペチカ・ロティカ
―そう。
もう「会えない」から誰も、「会いたい」とおもうのね。

理解した心の一端
とすれば、ペチカが「会えない」人は、ただひとり
おもうのは元の所有者の”彼”のこと

暗いのは嫌だからと、いつもペチカを傍においていた。
くらい瞳に、ペチカのあかりが映っていた。
へたっぴなうたを口ずさんで、不器用そうに笑っていた。
―ペチカにいのちを、ともしたひと。

聞こえるのは鈴の音だけで。
口ずさんだ旋律も、くらいくらいとなく声も聞こえないの。
だからペチカは迷わない
ランタンの炎を煌々と燃やして、幻は溶かして
―さよなら、するのよ。



●ともしたひと
 そわりと少し冷たい風が乳白色の髪を撫でていく。
 そして――りん、りんと澄んだ音が響いていた。
 その音にペチカ・ロティカ(幻燈記・f01228)はそう、と一度目を伏せた。
 もう『会えない』から誰も、『会いたい』とおもうのね、と。
 理解する。心の端に引っかかっていたものが解けていくように。
 ともすれば、ペチカが『会えない』人は、ただひとりと。
それもまた、理解した。
 ペチカの心に浮かぶのはただひとり。
 おもうのは、元所有者の『彼』のことだ。共に過ごした時間はちゃんと覚えている。
 今でも失う事なく。
 暗いのは嫌だからと、いつもそばに。
 くらい瞳に、ペチカのあかりが映っていた。嘗てはそうであったけれど、今目の前にいるペチカの彼はそうではない。
 へたっぴなうたを口ずさんで、不器用そうに笑っていた彼は――今は、何も言わず、笑わず。
 ペチカの前にただ、その姿を現しているだけだ。
「――ペチカにいのちを、ともしたひと」
 りん、りん、りん――その音は、かすかに零したペチカの声と重なる。
 聞こえるのはその音だけだ。
 口ずさんだ旋律も、くらいくらいとなく声も聞こえない。
 ただ鈴音だけが響くから――ペチカは迷わない。
 違う。『彼』では、ないのだ。それは確認する必要もなく、ペチカの中にすとんと落ちている。
 けれどいつまでも、この姿を前にすることはできずペチカは自分自身を、そっと掲げた。
 それはアンティークのランタン。炎が揺らめいて、煌々と輝いている。
 そこより燃え上がる地獄の炎は『彼』へと夜明け色にゆらめいて向かう。
「――さよなら、するのよ」
 炎が、『彼』を包み込む。
 その中で鈴音が小さくなり。炎の影でその表情がふと笑ったように見える。
 ペチカ、ランタンの娘はその一瞬に懐かしい思い出を重ねて――瞳を伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

門廻・降市
ヒトの心なぞ分らん
分りたくも無い

でも魂を得、ヒトの容を得た僕に一個だけ
しがみついとる妄執がある
悔恨、いう奴やろな

何度時を巻き戻せたら、思たって
あんたには分からしませんやろ
なぁ、お師匠さん
抜けとって手ぇの掛る若造陰陽師やったけど
死ぬなんて思わへんかったんよ

一体何処で何があったのか
僕を連れてってくれたら
あんた一人助けるのは訳なかったのにね
例え他の誰かが仰山、死ぬ事になっても

そやな、いっぺん殴ったらな
気ぃ済まへん
「紛い物とて貴様なら、儂も容赦をせずに済む
去ね、再び三途の川から地獄の端まで廻り直せ」

攻撃はブラッド・ガイスト
【ワタの倶利伽羅】を起動
此の身に宿した炎の黒龍よ
喰らえ、痕も遺さず、消してしまえ



●地獄の端まで
 ヒトの心なぞ分らん。分りたくも無いと門廻・降市(縹渺・f08720)は能面の様な無表情の下で思う。
 でも、魂を得、ヒトの容を得た。ヤドリガミと、なったのだ。
 それでも一個だけ、降市にしがみついたものが――妄執がある。
 それに名があるとすれば。名をつけるとすれば。
「悔恨、いう奴やろな」
 ふ、と息吐いて。りんりんりんと鳴る音に耳を傾ける。
 降市の前に現れるその姿にするりと零れた。
「何度時を巻き戻せたら、思たって。あんたには分からしませんやろ――なぁ、お師匠さん」
 抜けとって手ぇの掛る若造陰陽師やったけど、と僅かに緑色の三白眼が細められる。
「死ぬなんて思わへんかったんよ」
 一体何処で何があったのか。そこに、降市はいなかった。
「僕を連れてってくれたらあんた一人助けるのは訳なかったのにね」
 例え他の誰かが仰山、死ぬ事になっても、あんたは。
 あんたは、助けられたと魂とヒトの容を得て心に蹲るもの。
 けれど目の前にいる者は、本当にその想いをぶつける相手ではないこともまた、知っている。
 そやな、いっぺん殴ったらな気ぃ済まへんと誰にともなく紡いで降市は改めて目の前のものを見据える。
 姿は同じでも、やはり違うもの。
「紛い物とて貴様なら、儂も容赦をせずに済む。去ね、再び三途の川から地獄の端まで廻り直せ」
 身の内に潜む驪竜の印へと、降市は代償を注ぐ。
 血脈深くに揺蕩いながら、融けた岩の如く苛烈に喰らいつくものはその姿を見せ。
「此の身に宿した炎の黒龍よ」
 喰らえ、痕も遺さず、消してしまえ。
 紡いで、攻撃向けて。
 けれどその一撃で簡単に解けるほどの妄執ではなく。
 鈴音と共に姿消える。
 嗚呼、と。不意に、吐息のように落ちた声に降市は想う。
 やはりあれは――紛い物。
 そこにある気持ちは言葉にできない、まだ降市にはわからぬものだったのかも、しれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーナ・ユーディコット
死者に会える
私が望むとすればそれは
故郷で私に読み書きを教えてくれた優しい笑顔のお兄さんかな
名前はライト
まだ笑顔になれた頃の、人だった頃の私の笑顔を褒めてくれた人
憧れた人

結局故郷は滅んで
私は全部失くして、猟兵になって
死のうとも思った
それでも……ライトさんを思い出すと生きようって思えた

私、頑張ってるかな
剣も振ったことないのに、戦場に出て
鶏からも命を奪ったこともないのに、必死で敵の命を奪って

また褒めてくれるかな
読み書きを出来るようになった時みたいに

まあ返事はないよね

覚悟を決めよう

私は今この刃で貴方を斬り
改めて村娘から猟兵になる
敵を討つ為に命を燃やす

さようなら
好きだったよ
どうか、記憶の彼方で見守ってて



●記憶の彼方で
 死者に会える。
 私が望むとすればそれは、と。
 ルーナ・ユーディコット(Basilico・f01373)は鈴音と共に目の前に現れた者の姿に、僅かに口の端が緩んだような――気がした。
 けれどそれは気のせい。
 故郷で、ルーナに読み書きを教えてくれた優しい笑顔の、お兄さん。
 名はライト。まだ笑顔になれた頃の、人だった頃のルーナの笑顔を褒めてくれた人。
 そして、憧れた人。
 ルーナの故郷は、滅んで。そしてルーナも全部失くし、猟兵になった。
 死のうとも思った。そう思ったことが、ある。
 それでも、そうしなかったのはとルーナは彼へと金色の瞳を向ける。
「それでも……ライトさんを思い出すと生きようって思えた」
 私、頑張ってるかなとルーナは問う。
「剣も振ったことないのに、戦場に出て。鶏からも命を奪ったこともないのに、必死で敵の命を奪って」
 今はもう、昔と同じ手じゃないと。その掌をルーナは見詰める。そしてぎゅっと、握った。
「また褒めてくれるかな」
 読み書きを出来るようになった時みたいに――そう言ってみるが、わかっているのだ。
 まあ返事はないよねと自嘲するように落して、覚悟を決めようとひとつ、呼吸する。
「私は今この刃で貴方を斬り、改めて村娘から猟兵になる」
 敵を討つ為に命を燃やす――その決意。
 ゆらりと、青い炎のような魔力をルーナは纏う。
「さようなら、好きだったよ」
 そう言ったルーナの表情は無表情でありつつも、少しいつもと違っている。
 どうか、記憶の彼方で見守っててと願いを込めて。
 命をかけてルーナは攻撃放つ。
 りん、と鈴音がひとつなって、目の前よりその姿は掻き消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ
嗚呼…秀興様…ふふ、首がちゃんとありますのね?

私が求める最愛の故人は夫の秀興様
他国へ嫁ぐ、見ず知らずの私を気まぐれに攫い、居城の座敷牢へ幽閉した不届き者
あなたが怖くて、最初はあなたを好きなふりをしました
でも私はいつの間にか本当にあなたを愛するようになってしまった
牢の中といえど愛に満たされた生活でしたわ
けれどこの身に潜む羅刹の血は戦を求め、一処に逗まることを許さず
そうして最後はあなたの――

そう…私、またあなたの御首をいただけますのね
私を満たした最初で最後の御首――それがあなた
ええ、ええ…どうか動かないで
その首を私に――

嗚呼、でも駄目…
偽物では満たされない
当時の高揚に勝るものなんて…きっと、もう



●最初で最後の――
 羅刹の娘――千桜・エリシャ(春宵・f02565)はうっそりと、しあわせそうに微笑んだ。
 嗚呼、と愛しさを滲ませた声を零すと共に。
「嗚呼……秀興様……ふふ、首がちゃんとありますのね?」
 エリシャが求めた最愛の者――秀興様、と。エリシャは名を呼ぶ。
 出会いは、彼の方の気まぐれにより。
 嫁ぐ道程の、見ず知らずのエリシャを気まぐれに攫って。
 居城の座敷牢へ幽閉した――不届き者。
 不届きもので、怖かった。
 恐かったから、最初は――あなたを好きなふりをしましたねと、エリシャは紡ぐ。
「でも私はいつの間にか本当にあなたを愛するようになってしまった」
 牢の中といえど愛に満たされた生活でしたわと桜色の眸は柔らかに笑む。
 けれど、それは続かなかった。
 エリシャの身に潜む羅刹の血は戦を求め、一処に逗まることを許さない。
「そうして最後はあなたの――」
 そっと、その透き通るように白い指が伸ばされる。
 けれどぴたりと、目の前に相手に触れる前に止まった。
 そこに触れるのは、この指では――いけない。
「そう……私、またあなたの御首をいただけますのね」
 私を満たした最初で最後の御首――それがあなた。
「秀興様……ええ、ええ……どうか動かないで」
 その首を私に――かわりに私は手向けの花を。
 放たれた斬撃が、その首に紅い花を咲かせて。
 りんと、鈴鳴る音も斬り裂いてその姿が消えていく。
 その体も、首も残らずに。
「嗚呼、でも駄目……」
 けれど一瞬だけだった。
 想いが花開くも、心が躍るも。
 偽物では――エリシャの心は満たされない。
 一瞬の高揚は花開いてすぐに萎れてしまったのだ。
「……きっと、もう」
 あの高揚に勝るものなんて……と零れそうになる言葉。
 けれどそれを風に乗ったひとひらの、紅色の花びらが塞いで紡がせなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーオ・ヘクスマキナ
(敵は召喚型UC兼寄生しているUDCの「赤頭巾さん」が倒します。寄生主の葛藤? 彼女は「優しい」ので躊躇しませんね)
(亡霊は10歳程のリーオのと同じデザインのペストマスク型ガスマスクを被った金髪の少女)

……ダメだ、撃てない。
引き金が引けないッ!

もしかしたら「俺」の無くした記憶の手掛かりになるかも、って期待してたのは確かだよ。
偽物だから手掛かりを得たら撃てば良いって、そう安易に考えてたさ。
けど駄目だ。「オレ」は……オレには、"もう一度"彼女を撃つことなんて出来ない……ッ! でも、俺が……オレが撃たなくちゃいけない筈なのにッ!!
何の記憶も思い出せないのに、なんでこんな事は分かっちゃうんだよォッ?!



●何の記憶も思い出せない
 リーオ・ヘクスマキナ(魅入られた約束履行者・f04190)は躊躇っていた。
 りん、りんと鈴の音。
 それと共に現れたのは10歳程の金髪の少女だ。
 けれどその顔はわからない。リーオの持つものと同じデザインのペストマスク型ガスマスクを被っているからだ。
 本当に同じものだろうかとリーオは自分の物と確認する。
 似ている、同じデザインだ。
 だが、それを持つ少女の姿に覚えはない。
 しかしこれは兜風鈴の見せるものだと知っている。
 撃たなければ――そう思って、銃を構えるのだけれど。
「……ダメだ、撃てない。引き金が引けないッ!」
 指が、それを引くことを拒否する。
 もしかしたら。
 もしかしたら『俺』の無くした記憶の手がかりになるかも、と。
 期待はしていたのだ。
 偽物だから手掛かりを得たら撃てば良いと、そう安易に考えていた。
 けれど指は動かない。それはリーオにとってどうしてなのかわからない事。
 それもまた――記憶の手掛かりなのかもしれない。
「動かないッ……駄目だ。『オレ』は……オレには、"もう一度"彼女を撃つことなんて出来ない……ッ!」
 絞り出すような声だった。リーオはでも、と彼女へと苦し気に視線を向ける。
「でも、俺が……オレが撃たなくちゃいけない筈なのにッ!!」
 何の記憶も思い出せない。
 それなのに、わかることがある。
「なんでこんな事は分かっちゃうんだよォッ?!」
 どうして、なんでと思うリーオ。その傍らに赤い頭巾をかぶった者が現れる。
 そして『お優しい』彼女はリーオの葛藤に躊躇はしない。
 炎を纏った散弾銃を少女へと向け放つ。
 弾丸放つ音に鈴音は掻き消えて、リーオのなんでという声だけが響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

烏丸・千景
[WIZ]
成る程ねぇ、会いたいもの、か
まぁ、俺には関係の無い話かねぇ
仕事は仕事。老後の蓄えの為に頑張りましょ

風鈴の音に目を向ければ、予想外の『彼』の姿に息を飲む

呼びかけた名前が喉の奥、張り付いて出てこない
今より昔に見た相棒の姿 死んではない
けれど、彼の失った記憶のそれ

失った理由を知っているから、俺が何か声をかけられたもんじゃないっていうのに
笑って、呆れたように千景と呼ぶから

ー冗談じゃない

揺らぎかけた己に、踏み出しかけた足にきつく拳を握る。

俺の知るあいつはね、そんな風に笑いやしないんだよ
それでいい もう十分なんだよ

咥えた煙草に火をつける。奴を倒す

さぁわんこたち
甘やかな夢は終わりだ。食い尽くせ



●甘やかな夢は
「成る程ねぇ、会いたいもの、か」
 まぁ、俺には関係の無い話かねぇと興味無さそうにゆるく笑いながら烏丸・千景(人間の聖者・f11414)は紡ぐ。
 仕事は仕事。
 老後の蓄えの為に頑張りましょ、と気持ちは軽い。
 自分の前に現れるものなんて、いないのだと知っているからだ。
 りんりん、と鳴る音に目を向ければそこには。絶対にここに、いるはずのない者。
 千景にとって予想外の『彼』の姿が――手が届く距離にある。
 その姿を青の瞳に映した瞬間、千景は息を飲む。
「――」
 呼びかけたそれは、音にはならずただ喉の奥に張り付いて出てこない。
 今より昔に見た相棒の姿だ。死んではない相棒の。
 けれど、失った記憶のそれと同じだ。それを失った理由を、千景は知っている。
 だから、千景から何か声をかけられたものではないのだ。
 それなのに――笑って、呆れたように千景と。己の名を呼ぶ姿が蘇る。
 ここにいるはずなどないというのに。
 その心に広がる波紋は決して穏やかなものではなかった。泡立つような、異質さ。
 千景の瞳は一瞬、剣呑な色を滲ませる。
「――冗談じゃない」
 惑わされそうになる、揺らぎかけた。
 一歩、踏み出しかけた足を一瞥し、きつく拳を握ってかわす。
「俺の知るあいつはね、そんな風に笑いやしないんだよ。それでいい」
 もう十分なんだよと、千景は煙草を咥えそこに火をつける。
 ひとつ、吸い込んで、煙を吐いて。
 見据えた先にもう心揺らされることはなかった。
 もう、いつも通りの千景がそこにある。
「さぁわんこたち」
 仕事だよと千景は呼びかける。
 すると黒狗の形をした炎が揺らめいて、その足元に身を寄せて主の言葉を待っている。
「甘やかな夢は終わりだ。食い尽くせ」
 ひどく、冷えた声色で千景は命じる。
 飛びかかる黒狗たちはそのままその身を燃え上がらせて千景の前から鈴音と共にその姿を消し去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨糸・咲
すぐそこにいるその姿
白髪交じりの灰の髪
背が高く細身の初老の男性
静かな森の奥、愛する人の隣で眠っているはずの貴方は

…主、さま……?

早くに喪った奥様を想い
彼女が愛用していた私に毎日花を飾って話しかけた貴方
優しい碧い瞳はいつもどこか泣いているようで
でも、あの頃の私は差し伸べる手も持っていなかった

貴方の支えになりたいと
ほんの少しでも心から笑って欲しいと
願い続けて、私はこの姿を得たのですよ
奥様がまだお元気だった若い日の姿を

待たずに逝ってしまった貴方
彼方でお二人幸せにしていらっしゃるのではないのですか?

波立つ心に呑まれまいと
毅然と戦います

せめて一言…
サキ、と
あのひとの名で呼んで
微笑んで下されば良かったのに



●せめて一言
 りんりんりんと風鈴の音がやけによく響く。
 その音と共に、すぐそこにいるその姿。
 白髪交じりの灰の髪。その背は高く細身の初老の男性。
 見間違えることなどない姿に、息を飲まずにいられない。
「……主、さま……?」
 雨糸・咲(希旻・f01982)は戸惑いの声を零す。だってここに、いるはずがないのだ。
 今は、静かな森の奥、愛する人の隣で眠っているはずの、咲の主さま。
 その眠りは毎日のものではなく、永遠の。土の下での覚める事のない眠りなのだ。
 早くに喪った奥様を想い、彼女が愛用していた私に、咲に毎日花を飾って話しかけていたひと、と咲は柔らかに、懐かしむように見つめる。
 彼の優しい碧い瞳はいつもどこか泣いているようで――でもその時、咲は何もできなかったのだ。
「あの頃の私は差し伸べる手も持っていなかった……」
 けれど今は、この手がある。
 それを伸ばしてみるものの、咲は決して触れはしなかった。
 そうしてはいけないと思ったのだ。触れては、いけないと。
「貴方の支えになりたいと、ほんの少しでも心から笑って欲しいと――願い続けて、私はこの姿を得たのですよ」
 奥様がまだお元気だった若い日の姿を、と。咲はぽとりと零した。
 咲がこの姿を得るのを待たずに逝ってしまった貴方。
「彼方でお二人幸せにしていらっしゃるのではないのですか?」
 その姿だけと言えども、ここにいてはいけませんよと。
 波立つ心に呑まれまいと、きぜんと――その胡桃色の瞳を向ける。
 ああ、でも。
 けれど。
「せめて一言……サキ、と」
 あのひとの名で呼んで、微笑んで下されば良かったのにと零れる。
 さわりと風が頬を撫で、先の目の前からその姿を攫っていく。
 この気持ちをなんと呼べば良いのか、それは咲にもわからないものだ。
 けれど、大切な気持ちであることだけは確か。
 ただただ鈴音は遠く、そして消えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

太刀花・百華
死者が甦るなど、命を何だと思っているのか
とはいえ死に別れた者に逢えるなら、私も思うところは少なからずある

故郷も一族も、全てを滅ぼされて失った身としては
常世で逢いたい者は数知れない
中でも一番強く願うのは、剣の師でもあった我が父だ
力も心も強くて勇ましく、常に私の憧れだった父上が
ああも容易く命を奪われてしまうなど、今でも信じられないほどであり
あの日以降、私は父の背中を追い求めてこの剣だけで生き抜いてきた

私の剣がどこまで貴方に近付けたのかは、分からない
それでも剣を通じて共にあることを、改めて教えてくれているのだと
ならばその魂が迷わぬよう、こちらも誓わせてもらう
我が剣で、人の心を惑わす悪鬼を断ち斬る、と



●断ち斬る、と
 これはなんという事なのだろうか。
「死者が甦るなど、命を何だと思っているのか」
 とはいえ、死に別れた者に逢えるなら太刀花・百華(花と廻りて・f13337)もまた、思うところは少なからずある。
 故郷も、一族も――全てを滅ぼされて失った百華。
 けれど、それを忘れたわけではない。ちゃんと記憶の中に息づいている。
 そして、常世でも逢いたい者は数知れない。
 その中でも特に一番強く、逢いたいと願う相手は剣の師でもあった、百華の父。
 力も心も、強く勇ましく。
 常に百華の憧れであったあの父が――ああも容易く。
「命を奪われてしまうなど、今でも信じられないほどなのだ」
 覚えている。そのことは百華の中でまだ簡単に呑み込めないような、そういったものでもある。
 だからこそあの日以降、その背中を追い求めてこの剣だけで生き抜いてきたのだよと、百華は記憶の中の父を変わらぬ姿の者と対する。
 ふと、風が踊り百華の艶めく烏の濡れ羽色の髪を撫でていって。
 凛と真っすぐ向けた鮮やかな赤い瞳は、迷いなど感じさせないものだった。
「私の剣がどこまで貴方に近付けたのかは、分からない」
 それでも剣を通じて共にあることを、改めて教えてくれているのだと百華は感じている。
 ならばできることは、一つだ。
「その魂が迷わぬよう、こちらも誓わせてもらう」
 我が剣で、人の心を惑わす悪鬼を断ち斬る――この誓いを見ていて欲しいと、心の内で思う。
 誓いの心は戦意となり昂る。百華の元から立ち上がる黒炎が螺旋を描いて喰い尽くす。
 父の姿をしたものは鈴音と共に燃え盛り百華の前から姿を消したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレズローゼ・クォレクロニカ
*アドリブ、絡み歓迎

鈴の音

今日も絵を描く
お家に帰ったら大好きなパパとママにボクの旅した世界を見せる為に

パパはきっと
よく描けたねって笑ってくれて
ママはぎゅうっとボクを抱きしめて
よく描けましたね、上手ですよフレズローゼってボクを褒めてくれるんだ
お姉ちゃん達だってパパとママに会いたがってて
それから皆で笑って
ごはんを食べる

だから

お家に

帰って

パパとママに逢って

撫でてもらうから

あそこに、パパとママの姿が見えるなんて
嘘なんだ!

幻なんだ!

違う違う!
死者なんかじゃない
パパとママは
死者なんかじゃない
生きてる、から!
どこかで
ボクを待ってるから!

しんでなんかない

涙と一緒に黒の絵の具をぶちまけ
全て塗り潰して
消してしまう



●塗り潰して
 鈴の音が、りんりんりんと響く。
 その音と共にフレズローゼ・クォレクロニカ(夜明けの国のクォレジーナ・f01174)の苺月の瞳は瞬くばかりだ。
 今日も絵を描く。
 お家に帰ったら大好きなパパとママにボクの旅した世界を見せる為に――絵を、描く。
 フレズローゼはその時の事を思い描いた。
 パパはきっと。
「よく描けたねって笑ってくれて」
 ママはぎゅうっとボクを抱きしめて。
「よく描けましたね、上手ですよフレズローゼって、ボクを褒めてくれるんだ」
 お姉ちゃん達だってパパとママに会いたがってて、それから皆で笑って、ごはんを食べる。
 そんな他愛のない幸せを、笑顔で待っていてくれている。
 だから、これは、ありえない。
 ありえないことなのだ、フレズローゼにとって。
「お家に、帰って、パパとママに逢って」
 撫でてもらうからとフレズローゼの桃薔薇の唇は震えながら小さく紡ぐ。
 そして瞳は目の前の二人を捉える。
「あそこに、パパとママの姿が見えるなんて嘘なんだ! 幻なんだ!」
 違う違う! とフレズローゼは首を振る。蜂蜜を抱いた苺ミルクの髪から兎耳がちらりと見えるほどに。
「死者なんかじゃない、パパとママは死者なんかじゃない」
 ここに現れるのはなにかのまちがい!
 生きてる、から! どこかで、ボクを待ってるから!
 そう、悲鳴のように叫んで――しんでなんかないと静かに、紡ぐ。
 ぽとりぽとりと涙がゆっくりと零れて、零れ続けて。
 いくら拭っても、止まらない。落ちるばかりだ。
 フレズローゼはその手に絵筆を握る。ローズブーケを模した月色の絵筆を。
 いつもは好奇心をのせて七彩を受けるそれは、今日はその色を持たない。
 真っ黒。黒の絵の具をのせて、振り払えば目の前が塗り潰されるように染まっていく。
 消して、消して。
 フレズローゼは目の前のものを受け入れず、消し去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

守宿・灯里
私の目の前に、持主であった戦巫女の貴女がいます――。

とても強く、美しく。そして誰よりも優しかった貴女。
人々の笑顔のためにと、多くの世界を巡り、戦い、癒し、人々と笑いあった貴女。
私は命持たない檜扇であったけれど、貴女に強く憧れました。
共に戦いたい、笑いあいたい、触れ合いたいと強く思いました。

そんな貴女が今、目の前にいます――。

とても強く、美しく。そして誰よりも優しかった貴女。
私は持主であった貴女に檜扇を向けます。

貴女のお姿をもう一度拝見することができ、
本当に、本当に嬉しく――。
檜扇を破魔宿す無数の桜の花々に変え
貴女と彼岸の兜風鈴を討ちます。

貴女の想いは私と共に――。
どうか見守っていて下さい――。



●共に、どうか
 守宿・灯里(花扇の守巫女・f00469)の本体は花舞う檜扇だ。
 誰からも何からも守ると、強い想いがヤドリ、カミとなった。
 その、想いを抱いていた灯里の持主であった戦巫女が――いる。
 とても強く、美しく。そして誰よりも優しかった。
 人々の笑顔のためにと、多くの世界を巡り、戦い、癒し、人々と笑いあった。
 命持たない檜扇であったけれど、灯里は強く憧れ、そして重い抱く事となったのだ。
 共に戦いたい、笑いあいたい、触れ合いたいと、強く。強く、思うようになった。
(「そんな貴女が今、目の前に――」)
 けれど、貴女ではない。
 それは姿を映しただけのものなのだと、りんりんと鳴る鈴音が告げる。
「とても強く、美しく。そして誰よりも優しかった貴女」
 そんな貴女に、私は今――檜扇をむけますと灯里は紡ぐ。
 その表情は薄く、微笑みを浮かべていた。
「貴女のお姿をもう一度拝見することができ、本当に、本当に嬉しく――」
 告げる言葉には喜色が滲む。
 けれど、本当にここに居るわけではないこともまた灯里はわかっている。
 たとえ束の間の幻でも――灯里にとっては幸せなもの。
「貴女に、花神楽が一差、奉納致します――」
 檜扇を開いて、そしてその手から破魔宿す無数の桜の花々に変えて、優しく包み込む。
「貴女の想いは私と共に――」
 けれど、彼女のように強く、美しくあるために。
 灯里は微笑んで、兜風鈴と共に討つ。
 どうか見守っていて下さい――少しの悲しさを孕んで。

大成功 🔵​🔵​🔵​

烏護・ハル
……もういないけど会いたい人。
数年前まで一緒だった弟弟子。
すっごく仲良しだった。
オブリビオンとの戦いに巻き込まれて、もう泣いたり笑ったり出来なくなっちゃった子。

……大丈夫。敵対しても迷わないもん。
だって、もう死んじゃったんだから。
それに、あの子はそんな風に、危ないモノ振り回して笑う子じゃなかったから。
……そんな偽物に惑わされて堪るもんか。

遺された人間は、色んな想いを抱えて、それでも前を向こうとしてるんだよ。
……それを踏みにじろうとする奴がどうなるか、あなたが灰になるまで教えてあげる。

【破魔】と炎の【属性攻撃】を乗せた『フォックスファイア』を敵にぶつける。火球を全て集束させて一気に焼いちゃうよ。



●灰になるまで
 もういないけど会いたい人。
 その姿に烏護・ハル(妖狐の陰陽師・f03121)は複雑な表情を浮かべる。
 嬉しい、と言いたいけれど言ってはいけない。
 それをわかっているからこその表情だ。
 数年前まで一緒だった弟弟子。
 すっごく仲良しだった、とハルは彼との事を思い出す。
 そして最後の記憶はオブリビオンとの戦い。
 それに巻き込まれて、もう泣いたり笑ったり出来なくなっちゃった子。
 触れられる距離にあの子がいることにハルは惑いそうになるがひとつ、息を吸う。
 落ち着いて、前を見据える。
「……大丈夫。敵対しても迷わないもん。だって、もう死んじゃったんだから」
 それに、とハルは紡ぐ。
「あの子はそんな風に、危ないモノ振り回して笑う子じゃなかったから」
 だから、違う。あの子ではない。
 そう己に言い聞かせて――心を立たせていく。くらりと惑いそうになる心を抑えて。
「……そんな偽物に惑わされて堪るもんか」
 遺された人間は、色んな想いを抱えて、それでも前を向こうとしてるんだよとハルは紡ぐ。
 りんりんりんと、その言葉を聞き入れぬような鈴音が響いていた。
「……それを踏みにじろうとする奴がどうなるか、あなたが灰になるまで教えてあげる」
 これは偽物だからとハルは己に言い聞かせ、狐火を周囲に生み出していく。
 ひとつ、ふたつ。破魔の力を乗せた炎の攻撃。いくつも生み出した狐火は全て、ただ一点へと集束していく。
 一気に燃え上がる炎は兜風鈴も飲み込んで、その姿を燃やし尽くした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
ああ、……そう。そうよね。
この世界で逢うなら、あなただわ。

刀。
大きな手。
上背がある。
成長した今だって見上げる高さの。
見間違えようのない、欠けた角に刀傷。

変わらないのね、師匠。
……それもそうか。あなたはもう、死んだままだわ。

あたしはまだ、あなたの境地には至れていない。
仇だって、まだ討ててはいないけれど。
あなたがあたしを生かした理由は、すこしだけ判るようになったの。

友情。愛情。家族。そんな名前が付かなくたって。
ヒトとの関わりは毒のようなもの。
一度知ってしまったら、手放すことが難しいのよ。

刀の布を解いて、【剣刃一閃】

ありがとう。
さようなら。
――追いつくまで、待っていてね。

一目でも、逢えてよかった。



●一目でも
 ああ、と花剣・耀子(Tempest・f12822)は眼鏡の奥底から冷えた青い瞳を、向ける。
 その先にいるものの姿に目を見開くこともなく、淡々とこの事実を受けいれていた。
「……そう。そうよね」
 この世界で逢うなら、あなただわと。
 耀子はすぅと瞳細め、その姿をひとつずつ記憶の中の姿と重ねていく。
 刀。それを持つ大きな手。
 しっかりと地に足を付け、上背があって耀子が成長した今でも、見上げる高さがある。
 そして見間違えようのない、欠けた角に刀傷。
 変わらないのね、と感傷を含んだ声が落ちる。
「師匠……」
 けれど、それもそうかと耀子は思い直す。
「あなたはもう、死んだままだわ」
 年を取ることも、そしてこれ以上成長することも、ないのだ。
 耀子とは違って。耀子はまだ、成長の途中だ。
「あたしはまだ、あなたの境地には至れていない」
 仇だって、まだ討ててはいないけれど。
「あなたがあたしを生かした理由は、すこしだけ判るようになったの」
 言いながら、ぎゅうと。耀子は傍らに或るものを握った。
 布に包まれた――残骸剣《フツノミタマ》を。
「友情。愛情。家族。そんな名前が付かなくたって」
 しゅるり、と。刀の布を解いていく。
「ヒトとの関わりは毒のようなもの。一度知ってしまったら、手放すことが難しいのよ」
 はらりと布が地に落ちて、耀子はその日本刀を横凪に、一閃する。
 ありがとう。
 さようなら。
「――追いつくまで、待っていてね」
 一目でも、逢えてよかった、と零して。
 耀子の振りぬいた刃は兜風鈴ごと、その姿を散らせていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

氷條・雪那
オブリビオン共は、一族の仇
故に、全て討ち滅ぼすのが私の望みであり、私の使命

亡き兄の口調や振る舞いを真似て
戦いへ意識を切り替えようとした瞬間
目の前に現れた姿に目を奪われて

「……あに、うえ」

本物ではないと、話には聞いていた
それでも、もう二度と見る事は無いと思っていた姿に
様々な感情が渦巻いて、微かに震える事も隠せなくて

偽者でも、もう一度会えた喜びと、そして

「……我が名は氷條・雪那。貴様は、此処で斬り捨てる」

兄の姿を穢した、その存在に対する怒りと殺意を込めて
【剣刃一閃】で斬りつける

涙など、皆が死んだあの日に流し尽くしている
兄上も、父上も母上も何処にも居ない
無力だった、子供の私も



●涙など
 オブリビオン共は、一族の仇。
 故に全て討ち滅ぼすのが私の望みであり、私の使命と氷條・雪那(凍刃・f04292)は青い瞳を眇めた。
 今は亡き兄の、その口調や振舞を真似て。
 戦いへと意識を切り替えようとした瞬間――りん、と鈴音が聞こえた。
 そしてゆらりと、目の前に現れた者に雪那の視線は奪われる。
「……あに、うえ」
 本物ではないと、話には聞いていた。
 それでも、もう二度と見る事は無いと思っていた姿――それは雪那の心の内を乱して。
 様々な感情を渦巻かせ、微かに震える事も隠せなくなる。
 偽物でも、良い。もう一度会えた喜びが心の内から沸き起こる。
 けれど、その感情は良いものばかりではなかった。
 懐かしさ、喜び、嬉しさ。そういったもののあとから苛烈な感情が姿を見せる。
「……我が名は氷條・雪那。貴様は、此処で斬り捨てる」
 その声は酷く冷たいものだった。
 雪那は怒りと殺意をむき出しにする。
 目の前にいるものが兄の姿を穢したという事に対して雪那が向ける気持ちは赤く燃えるような激しさを持っていた。
 冷気を纏った美しい刀を振りぬけば、斬り放った場所より凍てついて。
 そして、その姿は兜風鈴ごと砕け散った。
「涙など、皆が死んだあの日に流し尽くしている」
 兄上も、父上も母上も何処にも居ない。
 無力だった、子供の私も、と雪那は零すのだった。

 りんりんりん、りん、と。
 ずっと響いていた鈴音がやがて途切れた。
 猟兵達によって彼岸の兜風鈴はすべて倒され、この場には静寂が満ちる。
 それぞれに、見た姿は様々で心乱されるものもいれば、そうではないものもいて。
 死んだ者とふたたび出会う。その行為が人の心にあたえるものは――あるものの、興味を引く。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『勘解由小路・桔梗』

POW   :    無念の報復
【陰陽道の術で召喚した武器の群れ 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    信康招聘
自身が戦闘で瀕死になると【一体の強力な妖狐 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    知識の蒐集
質問と共に【指先から蝋燭の火程度の大きさの炎 】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠デナーリス・ハルメアスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●人と、死んだ者の対面は
「なるほどなるほど。そんな風に、顔色を変えて、声をかけて、荒げて。泣いて、笑って、怒って?」
 死人に会えばそういう顔をするのですねと彼岸の兜風鈴達を使役していたオブリビオン、勘解由小路・桔梗は笑った。
 とても興味深く、面白かったと。
 では、次は。
「次は、死に直面するとはどういうことか」
 私と彼に教えてくださいなと、桔梗は笑う。
 何でも知りたい。知識の探求はこれからなのだと、いうように。
烏護・ハル
……大切な人がいなくなったら誰だって会いたい。
でも、叶わないからこそ前を向こうとしてるのに。
……楽しそうだね。想いを玩具にしてさ。

死に直面するとどうなるの、って?
覚えてないよ。だって、『何も考えられなくなった』からね。

……それこそ『人それぞれ』じゃない?
だから、あなたが自分自身で思い知れば良い。
燃やしてあげる。あなたが、あなたの望みに一歩でも近付けるように。
その時あなたがどんな顔をしようと知らないけど。

武器の群れはフォックスファイアを散開させて迎撃。それから、【破魔】で召喚に干渉、阻害できれば御の字。

あとは【属性攻撃】を乗せたフォックスファイア。炎と風を最大限練り込んで、集束させて撃ち込むよ。



「……楽しそうだね。想いを玩具にしてさ」
 ハルの頬を撫でる風は、冷たい。
 そしてハルが桔梗へと向けたのも、冷えた言葉だった。
 大切な人がいなくなったら誰だって会いたい。
 でも、叶わないからこそ前を向こうとしてるのに。
 それはハル自身の、思いでもある。簡単に、探られたいものではない。
 そこへ投げかけられた興味本位の言葉はハルの心を逆撫でしていた。
「死に直面するとどうなるの、って?」
 そんな事、とハルは思う。
 問われて、ハルが持ち得る応えは一つだった。
「覚えがあるのかな?」
 その、何か抱えているものがある様子に桔梗は興味を抱いて、そして再度尋ねるのだ。
 けれどゆるく、ハルは首を横に振る。
「覚えてないよ。だって、『何も考えられなくなった』からね」
 それが、貴女の答えかと桔梗は問う。
 その答えよりももっと、何かあるのではないかと一層深い想いを引き出すために。
「……それこそ『人それぞれ』じゃない?」
だから、あなたが自分自身で思い知れば良いとハルは自身の周囲に狐火を巡らせる。
 それをみて桔梗は指を一本立て、その上に炎を躍らせる。
「本当にそう、思ってるのかな?」
 問い掛けられながら放たれた炎をハルは己の狐火で燃やし尽くす。
 そして、そのまま炎は散開し桔梗へと向かう。
「燃やしてあげる。あなたが、あなたの望みに一歩でも近付けるように」
 自分で、答えを見つけなさいよと炎と風を最大限練り込んで。
「その時あなたがどんな顔をしようと知らないけど」
 ハルの言葉と共に炎は収束し、桔梗を貫く様に焼いていく。
 その熱により桔梗の顔は歪む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブや絡み等歓迎

櫻宵……櫻宵
うん、うん(抱き締められれば落ち着きを取り戻し
ボクは信じる
パパもママも……待ってるもん
だから大丈夫

キミは愛をしらないんだね
いなくなってしまった大好きな人に会えたなら
きっと心乱れるもの
愛しさの想いを踏み躙ったキミを許さない

空中戦と見切りで攻撃を躱しながら、炎を描いて全力魔法で攻撃してくよ
マヒ攻撃ものせて行動を縛
ボクを庇って櫻宵が無茶しないように守るんだ!
dump dump Humpty Dumptyを落としたならば、櫻宵
あの子の首をもってきて

キミは死の前に
愛を知るべきだった
もう遅い
この想いもキミの知識への貪欲さも
全て塗り替えてあげる!


誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)と
アドリブ歓迎

フレズ!こんなに涙を……フレズ泣かないで
大丈夫、あなたのパパもママも生きてるわ
あなたが信じなくてどうするの!
――大丈夫、あたしがついているわ
泣きじゃくるフレズを抱きしめて落ち着かせ桔梗に向き直る

許さないわ
あたしの可愛い子をこんな風に泣かせ楽しむあなたを
知りたいなら教えてあげる
その身で死を味わいなさい

抜き放つ刀に破魔を宿らせて
衝撃波とともになぎ払い、切り裂いてあげる
何度でも抉って、薙いで貫いて
怪力やグラップルも取り入れていきましょ
フレズはあたしが守るからね
第六感、見切りで攻撃を躱して
ダッシュで一気に距離を縮めて『絶華』を

死の瞬間はどう?楽しめたかしら



 フレズ! と名を呼んで。
 誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)を抱きしめる。
「こんなに涙を……フレズ泣かないで」
 大丈夫、あなたのパパもママも生きてるわ、と櫻宵は優しくて、そして強い声色で紡ぐ。
「あなたが信じなくてどうするの!」
「櫻宵……櫻宵」
「――大丈夫、あたしがついているわ」
 うん、うんとフレズローゼの鳴き声は徐々に小さく、そして落ち着いていく。
 ぎゅっと抱いて、そして背中をぽんぽんと軽く叩かれる感覚は安心できるものがあった。
「ボクは信じる。パパもママも……待ってるもん――だから大丈夫」
 ようやく、フレズローゼは落ち着いて。
 櫻宵はほっとし、そしてキッと鋭い視線を桔梗へと向ける。
「許さないわ。あたしの可愛い子をこんな風に泣かせ楽しむあなたを」
 知りたいなら教えてあげる、その身で死を味わいなさいと桔梗へと向け、刀を抜き放つ。
 そしてぽつり、と。
 桔梗に向けてフレズローゼは零す。
「キミは愛をしらないんだね」
 いなくなってしまった大好きな人に会えたなら、きっと心乱れるもの。
 だから、ボクは。
「愛しさの想いを踏み躙ったキミを許さない」
 何を、と桔梗が放った炎をフレズローズはぴょんと飛んで、かわして。
 炎でくるならと、己もまた炎を描く。
「ボクを庇って櫻宵が無茶しないように守るんだ!」
 櫻宵はその言葉に小さく、笑みを零したがすぐに引き締めて。刃に破魔の力を宿し櫻宵は走り込み距離を詰める。
「さぁ、桜のように潔く……散りなさい!」
 危険――と、桔梗は判じたのだろう。
 幾つも武器を重ねて、櫻宵との間に。
 けれどそれごと、衝撃波と共になぎ払う。
 何度も、何度でも。
 槍の束がある、それを抉って、刀の壁は薙いで貫いて。
 フレズローゼの瞳に桔梗の姿が映る。
 押し潰される様を心に描がけば、たまご男が桔梗の上へ落ち、砕ける。
 その瞬間に櫻宵は踏み込んで。
「櫻宵、あの子の首をもってきて」
「フレズはあたしが守るのよ」
 その、新たにつくられた武器の壁ごと、不可視の剣戟は桔梗を切り払う。
「死の瞬間はどう? 楽しめたかしら」
 そんなものは、まだきませんと桔梗は一歩、二歩と後ろへ下がる。
 痛みはある、だがまだ戦えるといったところ、なのだろう。
「キミは死の前に、愛を知るべきだった」
 でももう遅い。
「この想いもキミの知識への貪欲さも、全て塗り替えてあげる!」
 その言葉に、それじゃあ次は愛にしようかと桔梗は笑って見せる。
 向けられた言葉の内からも新たな言葉を拾って、重ねて。
 己の身の内に蓄えていくように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨糸・咲
人の心を手前勝手に振り回して、そうして笑っている
なんて品の無い行為でしょうね

感情を真っ直ぐ叩き付けたりはしないけれど
不愉快なのを隠すつもりもありません

知識を得たいなら、
人に聴いたり観察するだけでは不十分だと思いますよ?
何より有効なのは、貴方自身で経験することです
死の牙が喉元へかかる心地
ご自分の身でしっかりと味わえば良いでしょう

第六感で敵の攻撃を読み
フェイントを交えて隙を作って確実に狙っていきます

両腕から伸びる蔓で飛び交う武器を叩き落とし
次の一手へ繋げるべく、
その身を絡め取って差し上げます

質問は、どうぞご随意に
私はもとより嘘など吐きませんから

※アドリブ歓迎です


守宿・灯里
―――。
――。
…なんだか、起きたまま夢を見ているようで――。
今の事、過去の事を想い出して呆けてしまいます。
でも、こんなことでは貴女に心配をかけてしまいますね。
たった今、見守っていて欲しいと願ったばかり。
ん。気持ちを切り替えて…いざ、参ります――!

先程と同じく、檜扇を破魔の力宿す無数の桜の花々に変えて攻撃します。
相手の召喚した武器の群れは、同じように無数の花々で対抗するように。
それにより、味方への攻撃が軽減されることを願いつつ。

死に直面するとはどういうことか――。
それは死を捉える個々人によって形を変えるもの。
ゆえに。貴方自身で感じることがよろしいかと存じます。



 ふわふわとした心地。
 なんだか、起きたまま夢を見ているようだった。
 灯里は少しの間、呆けていたのだ。
 今の事、過去の事を思い出して。
 ひとつ、深呼吸して灯里は攻撃を受けている桔梗を見て。
「でも、こんなことでは貴女に心配をかけてしまいますね」
 たった今、見守っていて欲しいと願ったばかりと灯里は思いながら一歩踏み出す。
「ん。気持ちを切り替えて……いざ、参ります――!」
 その声に、桔梗もまた反応する。指先に再び炎をる無為で扱うのだ。
 花神楽が一差――灯里が振るう檜扇は破魔の力宿す無数の桜の花々に変じる。
「死に直面するとはどういうことか――でしたね」
 穏やかに、灯里は紡ぐ。
「貴女はそれに答えを持っているのかな?」
「それは死を捉える個々人によって形を変えるもの」
 それは、と桔梗は言う。
 人それぞれということ。さっき聞いた答えと面白くなさそうに。
 灯里はええ、と笑む。
「ゆえに。貴方自身で感じることがよろしいかと存じます」
 人それぞれ、というのなら。貴方にとってはどうなのか。それを感じたらよろしいのですと花弁が幾重にも桔梗へと突き刺さる。
 その花弁から、桔梗がのがれるとそこには、不愉快そうな表情を見せる咲がいる。
 人の心を手前勝手に振り回して、そうして笑っている。
 なんて、品の無い行為――そう思う感情を真っすぐ叩きつけたりはしない。
 けれどそれを隠すつもりも、またないのだ。
「知識を得たいなら、人に聴いたり観察するだけでは不十分だと思いますよ?」
 何より有効なのは、貴方自身で経験することですと咲は手を伸ばす。
「死の牙が喉元へかかる心地――ご自分の身でしっかりと味わえば良いでしょう

 その両腕から、葡萄の蔓が放たれる。しゅるりと、それは桔梗の喉へと絡みついた。
 緩く巻き付いた、けれど慌てて桔梗はそれを指先の炎で焼き払う。
 そのまま、向かってくる炎を咲はかわす。ふたたび伸ばされた蔦にふたたび捕まらぬよう桔梗も攻撃を。
 けれど、それで蔦のすべてが失われるわけではなかった。
 次の一手につなげるために絡めとる。
「質問は、どうぞご随意に」
 私はもとより嘘など吐きませんから、と紡ぐ咲。
 桔梗は舌打ちし、どうしてそんな、こんな質問でむきになるのかと。
 不思議だと口にする。
「何故なのか、それもわからないのですね」
 だからこそそうなのでしょうけれど、と咲は桔梗も在り様を決して快く思う事はなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

門廻・降市
やっぱり偽物相手やと殴り甲斐が無いわ
憂さが残ってしもた
黄泉返りなんて、後始末が面倒なだけやね

おもろなくて悪いけど
もう思う事は何ものうてね
戻ると行くは話が違う
容在るものは何時か滅びるのが定めやさかい
僕も、君もな

味方と連携取れれば
互いの隙を補える様に行動

攻撃は霊符を使用
破魔と生命力吸収の力を籠めて
敵の行動を阻害、弱体化を狙って放つ
敵自身に注意が向かない内にじわりじわりとな

戦力が増えてしもたら
消耗している本体を集中攻撃

相手の行動をよく見定め
大技が来そうやったら先手打って七星七縛符
妖狐召喚を潰せそうなら積極的に狙う

「知らん?好奇心は猫も殺すて」
猫やなくて狐やったっけ
まぁ、どっちでもええわ


ニケ・セアリチオ
息を吐いて
瞼を閉じて

揺らぎそうな己を鼓舞するように
きゅっと金貨を握りしめて

ええ、ええ
あの方は、私の笑顔を好きだと言ってくださっていたわ
ふうわり、笑みを浮かべるよう努めます


次に瞳を開かせたなら
ひたむきに彼女と向き合いましょう


死を知りたいと唱う方
貴女の好奇の心を咎めることは私には出来ないわ
だって、だって――私もね
その思う事は、あったのですから

すべて、すべてに
真をもって答えましょう

――けれど、ええ
先の邂逅に、嘆きが無かったのかと問われれば
私の言の葉は、詰まってしまうかもしれません

それでも
前を向いて
瞳を見据えて

貴女には花を贈ります
炎を、武器を、遮るように
この場の嘆きを全て
貴女の視線から、覆い隠すように


花剣・耀子
……おまえ、趣味が悪いわね。
興味深かった。面白かった。――そう。

良いわ。
その感情は、お前のものだもの。くれてやる。
でも、何事にも代償は必要なのよ。
お前は、代わりに命を置いてゆきなさい。

抜いたままの刀で【剣刃一閃】
行く手を阻む何もかもを、斬り果たしてあげる。
落としきれなかった武器は、致命傷にならなければ良いわ。
首を落とされるまでは止まってあげない。

死に直面するということは、まだ死んでいないということなのよ。
死なない瞬間を連ねたものが現在だもの。
生きている限りはいつだって、死は隣にあるのだから。今更だわ。

ねえ。身を以て知るのが、一番早いのよ。
百聞は一見にしかずというものね。
次は自分を観察なさいな。


オズ・ケストナー
面白い…

だいすきなひとの姿に斧をふるのは
怪我をした時よりもずっと痛かった
笑われたらなんだかもっと痛くなったような気がする

おとうさんがいなくなったのはきっとわたしのせいだもの
責められてもしかたないって思う
でも他の人のことも笑うのはやめて
悲しんでるのに、つらいのに
それを笑うのは、やめて

シュネー、お願いっ
フェイントを交えながら
ガジェットショータイム

死に直面するとはどういうことか
真っ白になったおとうさんを
つめたく固くなって
そして人の姿からかわっていくおとうさんのことを思い出して

今、自分の温度も消えてしまうような気持ちになるけど
止まるわけにはいかない
武器を振り下ろし
きみに教えることなんてないよ

倒さなきゃ


烏丸・千景
【WIZ】
興味深かった、か
面白がってくれたみたいで結構結構

じゃぁお代をもらおうかね
騒ぎの元凶さん

死に直面するとどうなるか、ねぇ
まぁ、人それぞれだけどねぇ

嘘偽りを告げる必要もない

「教えてあげるよ。
手放さなきゃいけないもんを思い出すのさ」

さて君にとっては、なんだろうね
思い知ってみるってのもいーんじゃない?

最果ての寄る辺にて炎に対抗
相手は一体
けど面倒なのは事実 傷を抉り消耗を狙うとしようか

周りの援護となるべくわんこ達に働いてもらうとしますか
さぁて、おいき
あの惑わしのお礼代わりだ。喰らってこい


アレンジ歓迎



「……おまえ、趣味が悪いわね。興味深かった。面白かった――そう」
 皆の攻撃から逃れて耀子の前に現れる。
 その瞬間、心の内に何か生まれる。
 けれど――良いわ、と耀子は紡いだ。
「その感情は、お前のものだもの。くれてやる。でも、何事にも代償は必要なのよ」
「代償? それは、なんだと言うのかな」
 にぃと口端あげて桔梗は問う。
 それに耀子は御前の持っているものだと告げる。
「お前は、代わりに命を置いてゆきなさい」
 先程抜き放ったままの、その刀で。
 耀子は己の前面に現れた武器を切り伏せる。
 行く手を阻む何もかもを、斬り果たして――落としきれなかった刀の攻撃は致命傷にならなければどうとでもなる。
「あたしは、首を落とされるまでは止まってあげない」
 狙うならそこと耀子は自分の首をその指で撫でる。
「死に直面するということは、まだ死んでいないということなのよ」
 死なない瞬間を連ねたものが現在。
 生きている限りはいつだって、死は隣にあるのだから。
 そう思うからこそ、耀子にとっては。
「今更だわ」
 今更の――話。
「ねえ。身を以て知るのが、一番早いのよ」
 耀子は手伝ってあげるわと、告げる。
「百聞は一見にしかずというものね。次は自分を観察なさいな」
 ひゅっと、残骸剣《フツノミタマ》を振りぬけば、桔梗の上に一閃が走る。
 よく斬れる――その一撃に桔梗は息飲んで、その傷口を抑える。
「興味深かった、か。面白がってくれたみたいで結構結構」
 その桔梗へとなごやかに千景は発する。
「そのお嬢さんの言う通り、お代をもらおうかね、騒ぎの元凶さ」
 死に直面するとどうなるか、ねぇと千景は紫煙をくゆらせて。
 まぁ、人それぞれだけどねぇと何の気も無いように零す。
 けれどその心内は、その笑みからは得られないのだ。
 上手に隠して、包み込んで。
 千景は出さない。
 ああ、嘘偽りを告げる必要もないと千景は紡ぐ。
 死に直面して、どうなるのかと。
「教えてあげるよ。手放さなきゃいけないもんを思い出すのさ」
 さて君にとっては、なんだろうねと男はただ、楽し気に笑う。
 思い知ってみるってのもいーんじゃない? と他人事だというように。
「さぁて、おいき。あの惑わしのお礼代わりだ。」
 喰らってこいと、目配せひとつ。
 そばに控えていた炎が、黒狗たちが飛びかかる。
 桔梗は己の炎を向けるが、黒狗たちはそれを食い散らかして、その傷を燃え盛らせる。
 痛い、熱いと桔梗はのたまう。
 お代だからそれは当然だろうと、男は呆れたように紡ぐ。
 それは当然、帰結すべき代償だと。
 息を吐いて、瞼を閉じて。
 桔梗の姿を目にする前に、揺らぎそうな己を鼓舞するように、きゅっと金貨を握りしめて。
 ニケは己を、しっかりと感じる。
「ええ、ええ。あの方は、私の笑顔を好きだと言ってくださっていたわ」
 だから、決して――ひどい顔はしたくはない。
 ふうわり、笑みを浮かべるようにニケは努力する。
 その金の瞳開いたなら、桔梗とひたむきに、向かい合う為に。
 ニケの視界の中で炎に追われて、桔梗は苦そうな表情をしている。
「死を知りたいと唱う方」
 そう、静かにニケは紡ぐ。
「貴女の好奇の心を咎めることは私には出来ないわ。だって、だって――私もね」
 その思う事は、あったのですから、と。ニケは小さく笑み零した。
 そして思うのだ。
 その問いのすべて。すべてに、真をもって答えましょうと。
「答えをもっているの? あなたは、なんでも」
「――けれど、ええ」
 先の邂逅に、嘆きが無かったのかと問われれば――その時はきっと。
 言の葉は、詰まってしまうかもしれないと、ニケはすでに得ている。
 そこにある想いはニケだけの、持ち得るもの。
 それでも、前を向いて。
 瞳を見据えて、この桔梗と対することがニケにとって示す事のできる、今精いっぱいの誠実。
「貴女には花を贈ります」
 咲いて、とニケはその手にある杖へと願う。
 その炎を、武器を、遮るように。
 この場の嘆きを全て貴女の視線から、覆い隠すようにとペリステリア・エラタの花びらを躍らせる。
 それはまるで白鳩が舞うように。
 花弁に視界を埋め尽くされ、桔梗は慌てる。
 このままではどちらに動けばいいのか、それすら分からなくなってしまうと。
 慌てて、その柔らかな、白き舞を突き抜ける。
 降市は目の前に転がるように現れた桔梗へと、憂さが残ってしもたと零した。
「やっぱり偽物相手やと殴り甲斐が無いわ。黄泉返りなんて、後始末が面倒なだけやね」
 それは、現れたものも、己の心の後始末も。
「貴方は、慟哭する事はないのだね」
 そういうのもいるのか、と桔梗は言う。
「おもろなくて悪いけど、もう思う事は何ものうてね」
 降市は戻ると行くは話が違う
「容在るものは何時か滅びるのが定めやさかい――僕も、君もな」
 君は今、と降市は紡ぐ。
 ゆるりと掲げた霊符には破魔と生命力吸収の力を籠めてある。
 その行動を阻害し弱体化を狙って降市はそれを放った。
 桔梗にしてみれば、そんな霊符とさして気にせず受けて、燃やせばいいと炎を扱おうとした。
 しかし――張り付いた霊符は燃えない。炎が扱えないのだ。
 それが、その霊符の力。動きを縛ってしまったのだ。
 驚くような顔をする桔梗に降市は瞳細める。
「知らん? 好奇心は猫も殺すて――嗚呼」
 猫やなくて狐やったっけと降市は小さく首傾げて見せる。けれどそれも。
「まぁ、どっちでもええわ」
 降市にとって特に心惹くことでもない。
 僕以外にも君に言いたいことある人おるみたいやし、聞いたげてと降市は示す。
 その先にはキトンブルーの瞳を桔梗へと向けるオズがいる。
 面白い――と。
 桔梗が言っていた。それはオズにとって到底受け入れられる言葉ではなかった。
「だいすきなひとの姿に斧をふるのは、怪我をした時よりもずっと痛かった」
 ゆっくりと語る。オズはきゅっと表情を歪めた。
「笑われたらなんだかもっと痛くなったような気がする」
 オズの心の内にある想い。
 おとうさんがいなくなったのはきっとわたしのせいだもの、と。
 責められても、それは――しかたないって思う。
「でも他の人のことも笑うのはやめて。悲しんでるのに、つらいのに」
 それを笑うのは、やめてといつもしあわせそうに笑うその表情は、今はない。
「シュネー、お願いっ」
 雪のような白い髪と桜色の瞳の、永い時を共に過ごしてきた、オズにとって姉であり友達の彼女へと、力を貸してとオズは思う。
「面白い、と言ったことに怒っているんだね」
 けれどそれは、私にとって本当に面白かったんだよと桔梗は言う。
 それは桔梗の在り方なのだ。
 死に直面するとは――オズにとっては。
 真っ白になったおとうさんを、つめたく固くなって、そして人の姿からかわっていくおとうさん。
 オズにとってはそれが、死に直面するという事。
 それを思い出す事は、今、自分の温度も消えてしまうような気持ちになっていく。
 けれど、止まるわけにはいかないとオズ走っている。
「きみに教えることなんてないよ」
 これはオズだけの、記憶で、思いなのだ。
 桔梗が目の前に呼び出したのは信康――強力な妖狐だ。
 けれどそれごと、オズはガジェットを召喚して。シュネーと共に消し去り、桔梗へと一撃を加えた。
 桔梗の、最後の最後のその手を打ち破ってその手は届く。
 想い込められた一撃は桔梗に深く入り、その姿を朧に消し去る。
「そんな、いたい、わたしは、まだ」
 知り得ていないのにか細く紡ぐ。
 ああ、でも。
 確かにこれは身を以ってでしかわからないとどこか嬉しそうな声を落とした。
 誰かが紡ぐ――知れて、良かったなと。
 知識を得たい、知りたいという思いをもったもの。
 その探求はそれぞれの過去に、今に様々なものを芽吹かせて、そして。
 終わりを迎えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『和のおもてなしを受けましょう』

POW   :    お菓子!ごはん!とにかく美味しいものを食べる。

SPD   :    文化や作法に触れることを楽しんだり、実際に体験してみたりする。

WIZ   :    仲間との歓談を楽しんだり、地元の人たちの話を聞く。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●旬のふきのとう
 猟兵達が町へ入ると――丁度、昼時だろうか。
 ふわりと、揚げ物の香りがする。ごま油の香ばしい香りだ。
 見れば『てんぷら』と看板があり、『ふきのとうあり〼』と、張り紙がある。
 そっと店内を覗き込めば盛況な様子。
 ささっと食べる事が出来る『天丼』はえびが二本、野菜三種と魚が二種。
 一番お安い『てんぷら定食』はえびが二本、野菜二種と魚。それから最後に小海老のかき揚げ。
 ちょっと良い『上てんぷら定食』はえびが二本、野菜三種と魚二種類。小海老のかき揚げと、穴子。
 それよりもっとリッチな『特上てんぷら定食』は『上てんぷら定食』のものに加え、野菜と魚をもう一品ずつ。そしてデザートにわらびもちがついているようだ。
 そして、ご飯としじみの味噌汁がついておりおかわりは自由。お願いすれば、天丼にもしてくれるという。
 どの定食も、野菜には旬の『ふきのとう』が添えられている。天丼はたれがたっぷり。そのままの場合は、塩でいくのが苦味も際立ちお薦めだ。
 けれどまぁ、そこはそれぞれのお好みだろう。大根おろしたっぷりのてんつゆでも、塩でも。
 他にも、単品でちいさめのさつまいもをまるっとそのまま、てんぷらにしていたり。半生で味わえる貝柱などもあると言う。
 今、旬の食材を使ったてんぷらを――お昼から、ちょっと贅沢に。
 お好みで、召し上がれ。
烏護・ハル
……はぁ。
うん、終わった。
この村は守りきれたんだよね。
じゃあ、これで解決だ。……うん。

よしっ、何か食べていこっと。
ふきのとうが食べれるみたいだし!

天ぷら屋さんかぁ。
ふきのとうの天ぷら……絶対食べなきゃ!

どれにしよっかなー、えーと、……ん?
デザートにわらび餅かー。
特上……。
(お財布覗き込み)
……頑張ったもん、自分にご褒美!
……うん、しばらく節約しなきゃ。

でもでも、やっぱり美味しい……!
……ふきのとう、塩で食べると美味しいって聞いたことある。
試してみよっと……。

……、私にはまだ早かったかも。


ご馳走さまでした、っと。
……うん。村を守れて良かった。
皆の生活、命、そして美味しいご飯。
全部守りきれたしね。



●まだ少し、早くて
 はぁ、とハルは一つ、息を吐く。
「うん、終わった」
 守りきれたんだよね、と視線向ける先は賑わいを見せている。
 通りを行き来する人々。顔見知り同士が楽しげに話をしたりと、変わらぬ日常なのだろう。
「じゃあ、これで解決だ。……うん」
 ほっとする。そして気持ち切り替えるようによしっ、とハルは顔を上げた。
「何か食べていこっと。ふきのとうが食べれるみたいだし!」
 そう言って、目にするてんぷらの看板。
 ちょっと中を覗いて見れば、皆旬のものを楽しんでいる様子。
「ふきのとうの天ぷら……絶対たべなきゃ!」
 店に入って席に案内される。
 皆良い表情で食べている姿に、ハルもそわそわと御品書きを。
「どれにしよっかなー、えーと、……ん?」
 わらび餅。
 その言葉に視線は釘付で、ハルはふふりと笑み零す。
「デザートにわらび餅かー。特上……」
 だが、それは特上天ぷら定食のみ。
 お値段はちょっと、可愛くない。
 一度、自身の財布を覗き込んでみれば――出せないことは、ない。
「……頑張ったもん、自分にご褒美!」
 特上! と頼んで、でもしばらくして。
「……うん、しばらく節約しなきゃ」
 そう、心に誓った後にやってくる特上の天ぷら定食。
 えびが二本、重なって。その傍にはふきのとう、舞茸、菜の花とタラの目だ。
 そして魚はハマグリ、イカと白魚のかき揚げだ。魚は、今日の仕入れ次第で少し変化もある様子。
 小海老のかき揚げと穴子は、別の皿で少し遅れて、やってくる。
 どれから食べようかな、と迷いつつまず味の想像しやすいえびから。
 大根おろしたっぷりのてんつゆか、塩か迷いつつ、まずてんつゆで。
 ぱくりとハルは口に。
「でもでも、やっぱり美味しい……!」
 節約しなきゃ、という想いはあるが今に公開はなく。
 次に目に入ったのはふきのとうだ。
「……ふきのとう、塩で食べると美味しいって聞いたことある。試してみよっと……」
 塩をちょっとつけて、ぱくり。
 塩気に美味しい、と思ったその後にふきのとうの苦味がじんわりと広がる。
 これはこれで美味しい――のだろう。
「……、私にはまだ早かったかも」
 うう、と小さな呻き零し次に食べる白魚のかき揚げはさくっとしていて。
 これは美味しいとハルの表情には笑みが再び。
 残りの者も美味しく、食べて。
 最後のわらび餅も一口でぺろりと。その食感だけ、天ぷらとは違っていて口直しには丁度良い。
「ご馳走さまでした、っと」
 毎度ー、と店から声がかかる。
 そのにこにことした店主の笑顔に美味しかったと言って、ハルは外へ。
「……うん。村を守れて良かった」
 店の中には客がいて。彼等も自分と同じように、美味しそうに食べている。
 皆の生活、命、そして美味しいご飯。
 ハルはこれで良かったんだと、改めて思うのだ。
 全部守りきれたしね、と小さな笑み浮かべて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨糸・咲
塩を少し振ったふきのとうの天麩羅を咀嚼し、飲み込んで
静かに箸を置く
卓に並ぶ器はまだ、料理を乗せたまま

浮かない顔は食事の所為ではなくて
久し振りに見た、大切な人の面影

何もできずに見送って
自分は何の為に今ここにいるのかと
どうしても悔やんでしまう
それなのに…

再び箸を取り
蓮根の天麩羅をさくり、と一口

やっぱり…美味しいのですよね

卓上の『てんぷら定食』を見つめる
懐が寂しいわけでもないけれど
贅沢をするのは何となく気が咎めてこれにした

段々と滲む視界
ぐす、と鼻をすすって

帰ったら、森へ報告に行きましょう
初めて食べた天麩羅
こんなに美味しいんですもの
彼方で奥様と食べに行って下さいね、って



●心より、とは違って
 塩を少し、振って。衣の下から淡いふきのとうの色が見える。
 芽吹いたばかり。その、ふきのとうの天ぷらを咀嚼し、飲み込んで。
 咲は静かに、箸を置く。
 えびと、れんこん。魚は白魚のかきあげといか。白米とみそ汁は湯気をあげ、温かい。
目の前の器に、まだまだ温かいままの料理をのせたままにして咲はじぃ、とそれを見つめていた。
 箸を一度置いたのは決して、天麩羅がまずかった、口に合わなかったから、ではない。
 浮かない表情は食事のせいではなく――先程、久しぶりに見たその姿のせいだ。
 大切な人の面影がずっと、己の中から消えない。
 思い出してしまった、思い出してしまう。
 何もできずに見送って、自分は何の為に、今ここにいるのかと――どうしても、悔やんでしまう。
「それなのに……」
 心は、決して穏やかで、幸せに満ちているとは言えない。
 ひっそりと影を落としたような居心地の悪さもあるというのに。
 咲は再び、箸を手に取る。
 少し厚めに切られた、蓮根。薄い衣はその穴もしっかりと残して、包み込んでいる。
 それを摘まみ、そのまま口へ運んでさくりと、一口。
「やっぱり……美味しいのですよね」
 火はちゃんと通っている。しゃくりと、良い音をたてて蓮根の天麩羅は口の中から消えていく。
 目の前にあるのは『てんぷら定食』だ。
 決して懐が寂しいわけでもなかった。
 他のものでもよかったのだけれども、なんとなく。贅沢をするのは、何となく気が咎めてこれを選んだのだ。
 じわり、と。
 視界が滲んでいく。ゆるりと頬を零れ落ちる滴が一筋。
 それを白い指先でぬぐって、ぐすと鼻をすする。
 その、咲の様子に気付いて店のものがどうしたのだろう、と心配にしている。
 その視線に気づいて、咲は大丈夫と小さく笑む。
 すると、その店員が厨房から何かうけとってやってくる。瞬いていると、おまけだよとまいたけの天麩羅。
 そんな、と言う前にいいからと店員は笑顔でそれを置いて離れていってしまう。
 咲はそれを返すタイミング失って、きゅっと箸を持つ手に力を籠めた。
 きっとここで、要らないと言うのは失礼なのだろうと思って。
「帰ったら、森へ報告に行きましょう」
 小さく小さく、囁くように。自分に言い聞かせるように咲は零した。
 初めて食べた天麩羅――こんなに美味しいんですもの、と旬というまいたけを摘まむ。
 このキノコ、森で見かけたことあったかしらと思いながら。
 彼方で奥様と食べに行って下さいね、って――伝えに行こう。
 一体どんなものだったのか、ちゃんと報告できるように。
 これも美味しい、と思うのだけれど。それは美味しさによって、心より満ち溢れる気持ち――幸せとは、少し違って。
 どこか、寂しさのようなものもあったけれど。けれど美味しいと、感じることは、確かだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

太刀花・百華
町に立ち寄れば、揚げ物の香ばしい匂いが鼻を擽り
空腹気味の胃袋までも刺激され、香りに誘われるが侭に店内へ

繁盛している店の雰囲気に、期待は更に膨らんで
ここは折角だからと一番豪華な『特上てんぷら定食』を

料理が出てきたら、鮮やかなきつね色に揚がった天麩羅に、目を輝かせながら箸を伸ばす
まずはふきのとうから、最初は塩のみで、素材の味と衣のサクサク感を味わって
半分食べたら次はてんつゆで、それぞれ食べ比べて味の違いを楽しもう

味わい深い苦味は厳しい冬を耐え抜いた、生命力の強さの表れかもしれない
大地に芽吹いた生命を戴いて、春の訪れを感じることができるのは
この上ない幸せなのだと思いを馳せて、最後はわらびもちにご満悦



●春の訪れを感じて
 賑わいはおそらく昨日と変わることがないものなのだろう。
 町に立ち寄れば、人々の活気が伝わってくる。いい町だな、と思った矢先――鼻先撫でて擽り誘ってくる揚げ物の香ばしい匂い。
 どこからだろうかと自然とその場所へと向かってしまう。
 その香りは百華の、空腹気味の胃袋までも刺激して。抗う事できず誘われるが侭に店内へと入っていた。
 入った店は人の賑わいがどこか心地好い。繁盛している様子に、百華の期待は更に膨らむ。
 どうぞ、と通されたのはカウンター。揚げている場所が見える席だ。
 ちらりと視線を向ければ鍋の中に満ちた油はとてもきれいな黄金色をしていた。
「どれに……折角だから、やはり」
 お品書きを見て百華が選んだのは『特上てんぷら定食』だ。
 注文して暫くすると、目の前に、塩と天つゆが用意される。
 それから白米とみそ汁とがきて、すぐに揚げる良い音が百華の耳に届いた。
 まず最初に揚がってきたのは――えびだった。
 次にふきのとうとタラの芽。
 その揚がった鮮やかなきつね色に百華の瞳は輝く。
 さっそく、と箸を伸ばしてまず旬と言うふきのとうから。
 塩をちょんとつけて、一口。
 さく、と良い音。それと共に美味しい苦み。衣も軽くて、とても食べやすい。
 ふふ、と笑みを零して残りは天つゆに。
「うん、こちらも美味しい」
 天つゆにつければしっとりとして。
 塩も天つゆもどちらも美味しい。
 どちらも美味しく、どちらの方が美味しいとは決められないのだ。
「味わい深い苦味は厳しい冬を耐え抜いた、生命力の強さの表れかもしれないな」
 雪ノ下から、顔をだして。
 大地に芽吹いた生命を戴いて、春の訪れを感じることができるのはこの上ない幸せなのだなと、百華は次の天ぷらに手を伸ばす。
 一つ食べれば、次にまた天ぷらが揚がってくる。
 魚も旬のもの。今だからこそ食べれるものでもあるのだから。
 次はどれにしようかと、しばしの間箸を止めるのもまた楽しい。
 次は、この白魚のかきあげにしようと、それを半分に割る。
 塩でさらりと、さくっと食べるのも良いけれど天つゆにつけるのも、どちらも美味しい。
 かき揚げも穴子も。全部ぺろりと食べて。
 そして最後にわらびもち。それも楽しんで百華は席を立つ。
 美味しい幸せは、その心を満たすもの。

大成功 🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸フレズローゼ(f01174)と
アドリブ歓迎

フレズ!天ぷらを食べるわよ
あたしは奮発して特上天ぷら
フレズはどうする?
元気に選ぶフレズの姿に少し安堵
優しく頭を撫でオススメを教える
サクサクの熱々
今の時期のふきのとうは絶品よ
あたしはお塩で食べるわね
フレズのはタレがたっぷり、食べやすそうでよかったわ

いただきますと声を合わせ
味わう
ふきのとうの苦味も堪らないわ!「待望」の花言葉通り春が待ち遠しくなるわね!
一緒にいただきますをして
美味しいものを食べてご馳走様も言える
当たり前に見えて
とても尊い事

いつか
一つの真実がこの子を傷つけることがあっても
この笑顔を喪わないように
しっかり守らなきゃ

あら?あたしのわらび餅は?


フレズローゼ・クォレクロニカ
🍓櫻宵(f02768)と一緒
アドリブや絡み等歓迎

天ぷら!
サクサク熱々の食べる!
櫻宵は特上なの?さすがいつでもガッツリいくレディだね
ボクはねーとしばし悩み
天丼にする!
甘辛なタレがたまらないんだぁ

美味しく味わってご機嫌

知りたいと思う事は沢山ある
知ることはいい事だって思ってた
けれどボクは
知らなくてもいい事だってあるってわかった

今は、まだ
真実は雪の中に隠れていて
ボクがちゃんと、受け入れられるようになるまで

一足早い春、ふきのとうの苦味に耳を震わせながらも食べきる

苦いけど、美味しいね!櫻宵!

大丈夫、ボクにはキミがいてくれるから
その笑顔をみればどんな苦味も甘くなるんだ

櫻宵のわらび餅をちゃっかり食べてご満悦



●いつかの、その時もきっと
「フレズ! 天ぷらを食べるわよ」
 と、フレズローゼの、その手をとって。手を繋いで櫻宵は店への一歩を踏み出した。
「天ぷら! サクサク熱々の食べる!」
 その手を引いてもらえるのは嬉しくて。フレズローゼの足取りも自然と軽い。
 店に入って向かい合って座り、ひとつのお品書きを開いていっしょに覗き込む。
「あたしは奮発して特上天ぷら。フレズはどうする?」
「櫻宵は特上なの? さすがいつでもガッツリいくレディだね」
 ボクはねーとフレズローゼはしばし悩む。
「天丼にする! 甘辛なタレがたまらないんだぁ」
 ふふ、と笑って優しくその頭を撫でる。それをくすぐったそうに、フレズローゼは受け入れていた。
 しばらくすると二人の前に料理が。
 いただきます、と二人で声を重ねる。
 そしてオススメはね、と櫻宵は教える。
「サクサクの熱々、今の時期のふきのとうは絶品よ」
「そうなの? ボクのにも……あった!」
「あたしはお塩で食べるわね」
 天丼ならタレがたっぷり。食べやすそうねと櫻宵は笑む。
 櫻宵は口にふきのとう運べばさくり、と心地好い音。
「ふきのとうの苦味も堪らないわ! 『待望』の花言葉通り春が待ち遠しくなるわね!」
 美味しそうに食べている。
 その、ふきのとうを見つめてフレズローゼは思うのだ。
 知りたいと思う事は沢山ある。
 知ることはいい事だって思ってた。
 けれどボクは――知らなくてもいい事だってあるってわかった。
 今は、まだ、その時ではないのだろう。
(「真実は雪の中に隠れていて、ボクがちゃんと、受け入れられるようになるまで」)
 そう思いながらぱくりとふきのとうを食べる。
 一足早い春。ふきのとうの苦みに耳を振るわせて、けれどフレズローゼは食べきった。
 ちょっとだけ、大人になった気分だ。
「苦いけど、美味しいね! 櫻宵!」
「ええ! そのタラの芽も美味しいわよ」
 櫻宵は次々と平らげていきつつも、フレズローゼの様子をしっかりと見つめていた。
 先程の少し、思案している様子も。
 美味しいものを食べてご馳走様も言える。
 当たり前に見えて、とても尊い事。
 向けられる眼差しに、フレズローゼもまた大丈夫、と思う。
(「大丈夫、ボクにはキミがいてくれるから。その笑顔をみればどんな苦味も甘くなるんだ」)
 だから、大丈夫と次に食べたえびはタレがよく染みていた。
 いつか、と。櫻宵は思う。
 いつか――一つの真実がこの子を傷つけることがあっても。
 この笑顔を喪わないように、しっかり守らなきゃと。
 柔らかな眼差しを向けていると、フレズローゼは悪戯したような表情を向けて来る。
 その笑みに瞬いて、櫻宵は気付く。
「あら? あたしのわらび餅は?」
「えへ!」
 もう、と気づいた櫻宵は笑って。ちょんとフレズローゼの頬をつついた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーナ・リェナ
颯夏(f00027)と同行

ねえねえ颯夏
てんぷらって美味しい?
食べさせてくれるってところがあるって聞いたから行ってみたいんだ

うー……よく違いがわからないなぁ
全種類食べられるのってない?
とくじょう、でてんどん、だね
じゃあそれ!

大きな器にいっぱい入ったてんぷら
ごはんもお味噌汁も美味しいなぁ
わらびもちって不思議な食感
これだけ美味しいものを作れるのってすごいね
わたしも今度作ってみたいしお持ち帰りもできたらいいのになぁ


青葉・颯夏
ルーナ(f01357)と 同行

てんぷら?
ちゃんとしたところなら美味しいわよ
そういう話、あなたは外したことはないし悪くなさそう

……言うと思った
それなら特上で天丼にしたらどうかしら
たれで食べやすいんじゃないかしら
あたしはてんぷら定食を塩でお願いするわ

運ばれてきたてんぷらをじっくり味わいながら食べる
目の前の友人は相変わらずの大食い
慣れてきたけど、あの小さい身体のどこに入っていくのかしら
でも幸せそのものの笑顔でいてくれるのは嬉しい



●てんぷらって美味しい
「ねえねえ颯夏、てんぷらって美味しい?」
 くるりと空を舞って。ルーナ・リェナ(アルコイーリス・f01357)は青葉・颯夏(悪魔の申し子・f00027)に問う。
「てんぷら? ちゃんとしたところなら美味しいわよ」
 食べさせてくれるってところがあるって聞いたから行ってみたいんだ、と言うルーナに颯夏はそうね、と頷く。
「そういう話、あなたは外したことはないし悪くなさそう」
 行きましょう、と二人で店へ。
 そこは昼時、多くの人が訪れている繁忙店。
 これは味に心配は無さそうと颯夏は思う。
 席について、ルーナはお品書きを見て唸る。
「うー……よく違いがわからないなぁ。全種類食べられるのってない?」
「……言うと思った」
 それなら、と颯夏は提案する。
「特上で天丼にしたらどうかしら」
 たれで食べやすいんじゃないかしら、と
「とくじょう、でてんどん、だね。じゃあそれ!」
「あたしはてんぷら定食を塩でお願いするわ」
 注文して楽しみとルーナはわくわくとしている。
 それが見てわかるので颯夏も楽しみと。
 そして天ぷらが運ばれてくるとルーナは瞳輝かせる。
 大きな器にいっぱい入った天ぷら。
 ごはんもお味噌汁も美味しいなぁとルーナはご機嫌だ。
 旬の野菜の天ぷらも、魚の天ぷらも美味しくてつぎつぎと平らげていく。
 颯夏はその様子を見つつ、じっくりと天ぷらを味わっていた。
 相変わらずの大食い、と思いながら。
(「慣れてきたけど、あの小さい身体のどこに入っていくのかしら」)
 不思議、と思わず零れそうになる。でも、食べているその表情は幸せそのものの笑顔だ。
 その表情に釣られて颯夏の口の端も僅かに緩む。
 そしてデザートの、わらび餅にルーナは手を伸ばす。
「不思議な食感」
 つるん、ぷるん。としているがその表現ともちょっと違うような。
 不思議な食感にルーナは瞬く。
「これだけ美味しいものを作れるのってすごいね」
 どうやって作るのか、なんとなくわかるがきっとコツが必要そうとルーナは思う。
 関心するその声に颯夏も頷いて。
「わたしも今度作ってみたいしお持ち帰りもできたらいいのになぁ」
「聞いてみる? できると思うけど」
 と、颯夏が指さした先では持ち帰りをしている客がいる。
 ルーナはすぐに、頼んで! と言って。颯夏ははいはいと頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

門廻・降市
食欲のそそられる匂いやねぇ
…働いたら腹も減る、と思うし
偶には贅沢もええかな

賑やかなのは性に合わんから
隅の方で、一人でいただきます

わらびもちに心惹かれるけど
食は細い方やさかい
そない豪勢なの頼んで残しても勿体無い
てんぷら定食の、天婦羅だけ貰えます?
駄目やったら天丼でええですよ
あと…もしお酒があれば、燗付けて下さい

鮮やかな黄緑を目に楽しんで
口の中にじわと広がる、蕗の薹の苦味を味わい
…おいしい
これ食べると、いよいよ春も近いな思うよ
まだ景色は枯野と雪ばかりやけど
少しずつ緑に変わる様が見えるようや

季節が移り変わっても同じ花は咲かないように
これも今日この時だけの得難い思い出として残ったらええね
ご馳走さま



●偶には
 からりとした、ごま油の香り。その香りに降市はそそられる匂いやねぇと零し、自分の腹を一撫で。
「……働いたら腹も減る、と思うし。偶には贅沢もええかな」
 そう思って足運んだ店は賑やかだ。
 賑やかなのは性に合わんと、隅の方へと降市は座る。
 お品書きを見て、わらびもち。それに心惹かれるが。
「食は細い方やさかい……」
 そない豪勢なの頼んで残しても勿体無い、と思いとどまる。
「てんぷら定食の、天婦羅だけ貰えます?」
 駄目やったら天丼でええですよ、と紡ぐがもちろん大丈夫ですよと店員は言う。
「あと……もしお酒があれば、燗付けて下さい」
 それにも、ええと一言。
 しばし待てば先に、燗が。そして天ぷらがやってくる。
 えびが二本、ふきのとうと、タラの芽。魚は白魚のかき揚げだ。それから、小海老のかきあげも。
 まず最初に摘まみ上げたのはやはり、蕗の薹。
 鮮やかな黄緑が衣の下にあるのがわかる。
 それを目に楽しんで、口の中へ。
 じわと広がる、その苦みはえぐいわけではない。
「……おいしい」
 これ食べると、いよいよ春も近いな思うよと残る一口を降市は眺める。
 季節は冬だ。
 まだ景色は枯野と雪ばかりやけど、少しずつ緑に変わる様が見えるようやと。
 季節の巡り、移り変わりを感じる。
 けれど、季節が移り変わっても同じ花は咲かない。
(「これも今日この時だけの得難い思い出として残ったらええね」)
 旬のものを食べて、糧として。
 ご馳走さま、と降市は箸を置いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
リュカ(f02586)と

てんぷらてんぷらっ

リュカが奮発するなら
せっかくだしわたしも上てんぷら定食っ

いっぱいのてんぷらにほくほく
うん、食べきれるっ(いつもより多いけど気合いを入れて)

さくっ
はふはふ

これはなにがかくれてるんだろう
なすだ
おいしいねえ

リュカはふきのとう食べたことある?
塩ぱらぱら、はぐ
苦い、と思ってきゅっと目を閉じ
これが春の味…

笑ったっ
だって苦かったんだもの(拗ねた風に

でも、楽しいと言われたら頬が緩む
たのしいは、しあわせと似てるから

(リュカが時々おいしいって言ってくれるのは
おいしいをわかろうとしてくれる感じがするからうれしい
いっしょにいろんなもの食べられたらいいなあ)

わらびもち、食べるっ


リュカ・エンキアンサス
オズお兄さん(f01136)と

てんぷら。知ってる。うん、知識はある
俺は特上てんぷら定食にしよう
食べられるときにいっぱい食べるのは基本だし
お兄さん大丈夫?食べきれる?


ん。不思議な音。不思議な歯ごたえだ
ああ。なるほど。隠れてる……これか
いろいろあってすごいな。なんだか感心する

……蕗の薹は、多分ないはず。苦味?……って、
あはははは。変な顔してる、お兄さん
そうか。春の味は苦いんだ。覚えた
美味しいか。ん。そうだな
俺はなんだか、お兄さんの顔見てるのが楽しい。すっごい変わるんだもの
(極度の味音痴で正直違いがよくわからないけど、一緒にこうして喋って、食べてってするのはすごく楽しい
ほら、わらびもち半分食べる?



●美味しい、楽しい
「てんぷらてんぷらっ」
 ここだよ、とオズはリュカ・エンキアンサス(人間の探索者・f02586)を聞いてきた店の前へ。
「てんぷら。知ってる。うん、知識はある」
 けれど、また食べたことは無いもの。
 初めての、食べ物だ。
「俺は特上てんぷら定食にしよう」
 食べられるときにいっぱい食べるのは基本だし、とお品書きをぱたんとリュカは閉じる。
「リュカが奮発するなら、せっかくだしわたしも上てんぷら定食っ」
「お兄さん大丈夫? 食べきれる?」
 品数が多いのはわかる。特上の品数よりは少ないが、それでも上天ぷら定食もそこそこあった。
 リュカの声に大丈夫! 楽しみだねとオズはにこにこ笑顔だ。
 油の、良い匂い。そして揚げている音もどこか楽し気だ。
 皿の上に綺麗に盛りつけられた天ぷら。
 オズの前の皿。そこでえびは重なって。それから野菜はふきのとうはわかる。後は何だろうか。
 魚は白魚のかき揚げと、おそらくイカ。その内容に加えてリュカの方が少し、品数が多い。
 それから小海老のかき揚げと、穴子は少し後から持ってきてくれると言う。
 いっぱいのてんぷらにほくほくとオズは笑み零す。
 再度、ちょっと心配とリュカが視線を向けると、オズはきりっと表情引き締めて。
「うん、食べきれるっ」
 いつもより多いけど、だいじょうぶと気合を入れる。
 口に運べば、さくっと。はふはふと、熱々のおいしさ。
「ん。不思議な音。不思議な歯ごたえだ」
 不思議、としか言いようがない。
 それでも美味しい、と感じれば自然と箸は進む。
「これはなにがかくれてるんだろう」
 ひとつ、野菜を摘まみ上げてオズは口へ。
 食べた瞬間しっとりとした食感でもある。
「なすだ。おいしいねえ」
「ああ。なるほど。隠れてる……これか」
 同じくなすを見つけて、リュカもぱくりと。
「いろいろあってすごいな。なんだか感心する」
 奥が深い。
「リュカはふきのとう食べたことある?
 塩をぱらぱら、とオズはふって。小さなそれを大きく口開けてひと口。
「……蕗の薹は、多分ないはず。苦味? ……って、」
 リュカも同じように、塩をつけて口へ。咀嚼すればじんわり、青い苦みが広がる。
 それを感じてオズはきゅっと目を閉じ、ごくりと飲み込んだ。
 苦みはまだちょっと、口の中にある。
「これが春の味……」
 その、表情にぷっとふきだして。
「あはははは。変な顔してる、お兄さん」
 思わずと言ったようにリュカは声上げた。
「笑ったっ」
「そうか。春の味は苦いんだ。覚えた」
「だって苦かったんだもの」
 笑いを止めたリュカへと、拗ねた風にオズは言う。
「美味しいか。ん。そうだな。俺はなんだか、お兄さんの顔見てるのが楽しい。すっごい変わるんだもの」
 ぱちりと、瞬く。
 楽しいと。その言葉に、オズの頬は自然と緩んだ。
 たのしいは、しあわせと似てるから。
 その気持ちがオズの表情に現れていたのだ。
 リュカが、時々おいしいと言ってくれる。
 それは――おいしいをわかろうとしてくれている感じがして。
 うれしい、とオズは思うのだ。
 いっしょにいろんなもの食べられたらいいなあ、と思いながらじぃっと見つめているとリュカはその視線に気づいて。
「お兄さん、ついてるよ」
「えっ」
「なんて」
 正直、リュカはその味の違いをよくわかってはいなかったのだ。
 けれど――一緒にこうして喋って、食べてってするのはすごく楽しい。
 だからちょっと、揶揄ってしまったのはそんな気持ちが零れたからだったのかもしれない。
「ほら、わらびもち半分食べる?」
「わらびもち、食べるっ」
 これはきっと甘い。一口をわけあって、楽しい時間の締めくくり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

烏丸・千景
[POW]
いいねぇ。
こういう時は旨いものを食べるに限る

久しぶりの天ぷらに思わず目を細める
ごま油の香りが食欲を唆る

折角だし、特上天ぷら定食にしようか

野菜も四種というから、たらの芽とかあるかねぇ
ハスも好みじゃぁあるけれど、何が出ても楽しみだ

ふきのとうは塩で
この苦味が好きなんだ

苦いと眉を寄せていた相棒を思い出すのは、この地で見た幻にか
一度目を伏せて、息を吸う
旨いものを食べてる時にため息なんてのは柄じゃ無い

デザートの前にあと一つ、何か欲しいねぇ
うーん…

そうだ。
良ければ嵐吾くんにおすすめを聞いてみようか
久しく天ぷらを味わってなくてね。天丼にして貰おうかと思ったけど
何がおすすめかね

アレンジ・アドリブ歓迎


ニケ・セアリチオ
良かった、良かったわ
皆さん、大事が無い様で

ほっと一息ついたなら
ふわりと漂ってくる香りに
思わずお腹も鳴ってしまうというものです

ほんのり頬を赤らめつつも
賑やかなお店の様子に好奇心を擽られ

この世界にはまだ馴染みがないけれど
だからこそに、楽しんで行きたいわ!

そういえば、ご案内頂いた時に
『ふきのとう』が旬だと、嵐吾さんが言われていましたね
……『ふきのとう』って、何かしら?

お手すきであればどなたか、もしくは地元の方々に
『ふきのとう』や『てんぷら』について
詳しくご教授頂けたら嬉しいわ
もちろん、最後には実践です!

甘いものに惹かれて『特上てんぷら定食』を
苦味はちょっぴり苦手だけれど
その刺激も乙、と言うのかしら?


氷條・雪那
昼時とは、丁度良い時に着いたようですね
体も動かして空腹でしたし
折角なので頂いていきましょう

終夜殿(f05366)には情報の礼を述べた後
よろしければ食事をご一緒しないか訊いてみます
食事はいつも静かにするものですが……
たまには、賑やかなのも良いでしょう

わらびもちの文字を見た瞬間
即決で特上てんぷら定食を注文

どちらかといえば健啖家な方なので
ご飯と味噌汁は当然お代わりを
てんぷらは半分程度食べた後、天丼にして食べます

あまり饒舌ではありませんが、会話には相応に参加を
無論、甘味を目の前にして顔が緩まないよう気を引き締めて
……ええ、甘味は嫌いではないだけです

※アドリブ・他の方との絡み歓迎


ラティファ・サイード
ふふ、わたくし覚えましたのよ
終夜様のご案内で頂くお食事は
とても美味しゅうございますの
ですからまたご相席願えれば幸いですわ

どれも美味しそうですけれど
食べきれなければ勿体のうございますものね
上てんぷら定食をお願いしたく存じますわ
わたくしの故郷では揚げ物はあまり一般的でなくて
つい興味深げに眺めてしまいます

覚えたての箸を伸ばし
抹茶塩を振ったふきのとうを口へ
柔らかな苦みが綻び
胡麻油の香り高さが広がる
吐息がふくらんでしまいます
はふ、と熱を逃がすように噛んで
こんなに深く春の鮮やかさを感じられるなんて
贅沢の一言に尽きますわ

美味しいものを知ることは幸せですわ
ねえ終夜様
またわたくしに幸せを教えてくださいましね



●賑やかに
 いいねぇ、と千景は瞳細めた。
 こういう時は旨いものを食べるに限る、と。
 久しぶりの天ぷら。ごま油の香りはそれだけで、良質な物と分かり食欲をそそる。
 折角だしと千景が選んだのは特上天ぷら定食だ。
「たらの芽とかあるかねぇ、ハスも好みじゃぁあるけれど」
 注文の最中、そう思わず零すと店員は笑って。それは入るようお願いしておこうかと笑う。
「何が出ても楽しみだけど、それは嬉しいね」
 お任せするよと笑って待つ。
 そして千景の前に並ぶ天ぷら。どれも美味しそう、と思うが最初はとふきのとうを摘まむ。
 ちょんと塩を付け、思い馳せるのはあの苦み。
「好きなんだよね」
 ふ、と笑い零す。
 楽しみのまま、口に運んで広がる苦み。
 苦い。と、眉を寄せていた相棒を思い出すのは、この地で見た幻のせいだろうか。
 千景は一度目を伏せて、息を吸う。
 旨いものを食べてる時にため息なんてのは柄じゃ無い、と。
 美味しい物なのだから、楽しまねばと。
 タラの芽もハスも。ナスも。白魚のかき揚げ、いかとハマグリも旨い。
 あとはまだ、キスと小海老のかき揚げと穴子が来ると言う。
 そしてデザート、というがもう少し食べたい所。
 少し思案していると、そこに賑やかな声が聞こえた。
 見れば嵐吾と、それからラティファ・サイード(まほろば・f12037)と雪那の姿が見えた。
 昼時、丁度良い時につき身体を動かして空腹を感じていた雪那。折角なので、と向かった先にて嵐吾を見つけ。
 情報の礼と共に、これから昼食ということで一緒にということになったのだ。
 食事はいつも静かにするのだが――たまには、賑やかなのも良い。
 どうやら連れ立っての昼食の様子。ひらり、と千景が手を振れば嵐吾も返す。
 込み合い始めた時間、知り合いなら相席をと、そちらに通された。
「やあ、先にいただいているよ」
「そのようじゃなぁ」
「ただちょっと迷っててね。久しく天ぷらを味わってなくてね、天丼にして貰おうかと思ったけど」
 何がおすすめかね、と問う。するとラティファが良くお分かりねと嫋やかに笑む。
「ふふ、わたくし覚えましたのよ。終夜様のご案内で頂くお食事は、とても美味しゅうございますの」
 ですから、おすすめもきっとと微笑みを。
 そう言われて、嵐吾は笑ってそうじゃなぁと紡ぎつつふと入口に視線がむく。
 そこではニケが少し、頬染めて立っていた。
 皆さん、大事が無い様でとほっと一息ついて、ふわりと漂った香りに誘われて入った店。
(「良かった、良かったわ」)
 店の中の皆は楽しそうに過ごしている。それはここにとっていつもの日常なのだろう。
 きゅう、と小さくお腹が鳴ってほんのり頬を赤らめたところで、嬢ちゃん、と声ひとつ。
 見れば嵐吾が手招きしている。
 この世界にはまだ馴染みがなくて。だからこそ楽しんでいきたいと思っていたニケはその手招きに応じる。同じ席に座る皆へぺこりと頭を下げて。
 そして、そういえばとニケは紡ぐ。
「『ふきのとう』が旬だと、嵐吾さんが言われていましたね……『ふきのとう』って、何かしら?」
「ふきのとうは初めてかい?」
 それなら是非食べてみるべきと千景は言う。その言葉に嵐吾も頷いて。
「この時期に芽吹く山菜じゃな。そうそう、千景君。さっきの話な! 大葉はどうじゃろ? さくっとしておるし。それに貝柱と小海老のかき揚げ辺りで」
「大葉か……何枚でもいけそうだね」
 それにしようと千景は店員へ言付けを。
「大葉? 『ふきのとう』も『てんぷら』も初めてなので……詳しくご教授頂けたら嬉しいのですが」
「あら、初めてなら一緒ですわ」
 ラティファは楽しみにしてますのよと紡げばニケも私もですと小さく笑み零す。
「天ぷらについて……と言っても、衣をつけて油で揚げた料理、としか言えんからの」
 やはり食べてみる方がわかりやすかろうと嵐吾はすでに知っている千景と雪那へと声向ける。
「ええ、食べてみるのが一番でしょう」
「そうだねぇ……酒の肴にもなる、とは教えておこうかな」
「まぁ、でもお昼からはお預けですわね」
 そんな話をしながら、選ぶと良いよとお品書きを開いて。
「どれも美味しそうですけれど、食べきれなければ勿体のうございますものね」
 上てんぷら定食を、とラティファは注文する。
 甘いものに惹かれて、ニケは特上てんぷら定食を選ぶ。
 雪那も、わらびもちの文字を見た瞬間に即決だ。
 特上てんぷら定食しかない。
 皆の会話に耳を傾けつつ雪那も注文を。
 そして、しばらくして天つゆや塩が運ばれ。そしてご飯とお味噌汁。
 千景のもとには一足早く、天丼がやってくる。
 そして、それぞれの前にも天ぷらが。
 えびが重なり、ふきのとうとハスと。それからタラの芽。
 他のものはすこし時間をずらして、持ってきてくれると言う。
 興味深げに眺めるラティファに、そんなに珍しいのかと嵐吾は問う。
「わたくしの故郷では揚げ物はあまり一般的でなくて」
「なるほど。では初めてを楽しんでおくれ」
 ええ、と頷き。そしてニケに一緒に初めてを堪能いたしましょうと微笑みを。
「はい。実践ですね!」
 覚えたての箸を伸ばす。
 抹茶塩を振ったふきのとうを口へ。
 さくり、と良い音にラティファの表情は綻ぶ。
 柔らかな苦みが綻び、ごま油の香り高さが広がっていく。
 そしてこの揚げたての熱さ。
 はふ、とふくらんでしまう吐息を、熱を逃がすように食む。
 ごくり、と飲み込めばどうだろうかという問いかけの視線。
「こんなに深く春の鮮やかさを感じられるなんて贅沢の一言に尽きますわ」
 美味しそうに堪能しているラティファの様子にニケも、苦みはちょっぴり苦手だけれど、と箸を伸ばす。
「その刺激も乙、と言うのかしら?」
 小さな芽吹きの象徴を口に。
 初めての味との出会いに瞬いて。美味しいと表情は綻ぶ。
 その表情にさっき気にしていた大葉も食べてみるかい? と千景はニケへとお裾分けを。
「美味しいものを知ることは幸せですわ」
 まだまだ、もっと世界にはしらぬ美味しいものがあるはず。ラティファはふふ、と笑み零す。
「ねえ終夜様、またわたくしに幸せを教えてくださいましね」
「ああ、もちろんええよ。次は何を楽しもうかの」
「おや、それは俺もお呼ばれしたいね」
「次は食べた後に考えよ」
 冷めてしまう前に、と嵐吾は言ってふと雪那の皿を見る。
 その前にはおかわりしたばかりのご飯とみそ汁。
 が、天ぷらの進みはゆっくりだ。
 どちらかといえば健啖家な方である雪那。半分ほど食べて、残りは天丼に。けれどもう少し味が欲しい。そこでたれをお願いする。
「なるほど、その手もあったか……」
 感心する嵐吾に、どうぞとたれをお裾分け。
 天ぷらを食べ終わって。最後に、甘味。
 わらびもちを目の前に一瞬だけ、雪那の表情は緩みかけたがすぐに気を引き締める。
 甘味は嫌いではない。嫌いではないから、それも仕方ない事。
 それぞれ美味しいもので、心は満たされて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒海堂・残夏
【土蜘蛛】
絶品天ぷらと呼ばれちゃ三千里ですよう、なんちゃって
お仕事お疲れさまですぅ

ざんげちゃんはあんまりお腹おおきくないんですけどぉ〜
ウゥン、わらび餅の誘惑が……
いいや、特上で
余ったらイドっちの胃袋に期待しますねえ

海老天が好きです、海老天
サクサクの衣にプリッとした身の感触
はわあ、これがきっと和の真髄……!
でも海老は天ぷら界の王者ですからねぇ
せっかくならよーこっちにも味わってほしいので
そのナスもらってもいいですかぁ?
こっちもしみしみ美味しい……

ああ、イドっちにも好きなのあげますよお
イヒヒ。仲良くなるなら同じ釜の何とやらですとも

かき揚げもおやつ枠とは
食べ盛りと呼ぶには随分と豪快だ
若さ、ですかねえ…


花剣・耀子
【土蜘蛛】
美味しい天ぷらを食べて景気付けするわ。
来てくれてありがとう。――ちょっとだけ、誰かと食べたい気分だったのよ。
人恋しくなったら呼ぶから、何時もは居なくて良いわ。

特上、……でも天丼もいいわね。うぅん。
両方いきましょう。

ふきのとうを、お塩で一口。
揚げたての天ぷらはつよい。美味しい……。
ふたりとも、好きな具はあるの。
お礼にあげるわ。

残夏ちゃんはおいしそうに食べるわね。
ふふ。では、お言葉に甘えて海老天は頂きましょう。
残夏ちゃんのお皿に茄子を乗っけて、
イドくんには穴子をはんぶんこしてあげる。

かき揚げ天丼……!

これは――そう、今はわらび餅のターンだからおやつ枠よ。別腹。
あたしにもかき揚げください。


隠・イド
【土蜘蛛】
耀子様、おいたわしい…
私であればいつだって耀子様の隣におりますゆえ
これからは呼ばれずとも傍にお仕え致しましょう

私も特上と致しましょう
気になる具材などありましたら追加注文もよろしいかと

残夏様は少食であらせられましたか
多い分は回して頂けたら私の方で処理しましょう
私の胃袋は底なしですので

私は穴子などお勧めしましょうか
やはり天ぷらには白身の魚が合いますな
天つゆと大根おろしに絡めて、熱々の天ぷらと冷たいおろしの……こう、とても美味しいですね

しかしそうですね、耀子様を見ていると私も天丼が欲しくなってきました
気取らずに掻きこめるというのも丼の魅力
かき揚げの天丼など、またオツなものだと思うのですが



●仕事のご褒美
 美味しい天ぷらを食べて景気付けを。
 そう思って、耀子は声をかけたのだ。
「来てくれてありがとう。――ちょっとだけ、誰かと食べたい気分だったのよ」
「絶品天ぷらと呼ばれちゃ三千里ですよう、なんちゃって。お仕事お疲れさまですぅ」
 明るく、からりと黒海堂・残夏(Atropos・f14673)は笑って。
「耀子様、おいたわしい……私であればいつだって耀子様の隣におりますゆえ」
 これからは呼ばれずとも傍にお仕え致しましょう、と言う隠・イド(Hermit・f14583)に。
「人恋しくなったら呼ぶから、何時もは居なくて良いわ」
 と、耀子はそっけなく。
 そんな三人で店に入れば丁度席も空いている。
「特上、……でも天丼もいいわね。うぅん。両方いきましょう」
 と、最初に決めたのは耀子だ。
「私も特上と致しましょう。気になる具材などありましたら追加注文もよろしいかと」
「ざんげちゃんはあんまりお腹おおきくないんですけどぉ~ウゥン、わらび餅の誘惑が……いいや、特上で」
「残夏様は少食であらせられましたか。多い分は回して頂けたら私の方で処理しましょう」
 私の胃袋は底なしですので、とイドは言う。その言葉にほほう、と残夏は笑って。
「余ったらイドっちの胃袋に期待しますねえ」
 どうぞご期待くださいと、イドは笑む。
 注文してしばらく、それぞれ天ぷらが運ばれてくる。
 ふきのとうを、塩で一口。
 耀子は口の中に広がる程良い苦み。春の訪れを堪能する。
「揚げたての天ぷらはつよい。美味しい……」
 耀子は次は何にしようかしら、と思うがその前に。
「ふたりとも、好きな具はあるの。お礼にあげるわ」
「海老天が好きです、海老天」
 サクサクの衣にプリッとした身の感触――一口食べれば、幸せ、と残夏の表情は一層緩む。
「はわあ、これがきっと和の真髄……!」
 自分のをぱくりと食べて残夏はふふふと笑む。
「でも海老は天ぷら界の王者ですからねぇ」
 そういって、自身の皿から残夏はひとつとり。
「せっかくならよーこっちにも味わってほしいのでそのナスもらってもいいですかぁ? こっちもしみしみ美味しい……」
「残夏ちゃんはおいしそうに食べるわね。ふふ。では、お言葉に甘えて海老天は頂きましょう」
 その代わりナス、と耀子は残夏の皿に乗せる。
「私は穴子などお勧めしましょうか。やはり天ぷらには白身の魚が合いますな」
 天つゆと大根おろしに絡めて、と自分の穴子をその通りにし口へ。
 身はふわふわだ。けれど衣はサクッとしており、天つゆの染みたところと大根おろしの具合もまた良し。
「熱々の天ぷらと冷たいおろしの……こう、とても美味しいですね」
「イドくんには穴子をはんぶんこしてあげる」
「ああ、イドっちにも好きなのあげますよお」
 そう言ってイヒヒと残夏は笑う。
「仲良くなるなら同じ釜の何とやらですとも」
 そう言って、イドの皿には耀子からの穴子、半分と。残夏からの穴子が。
 さっくりほっくり、揚げたては美味しくていくらでも食べられるというもの。
 それを食べつつ、しかしとイドは思う。
 耀子の天丼が、美味しそう。
「耀子様を見ていると私も天丼が欲しくなってきました」
 気取らずに掻きこめるというのも丼の魅力、とイドは語る。
「かき揚げの天丼など、またオツなものだと思うのですが」
「かき揚げ天丼……!」
 それは、と耀子は目を光らせ店員を呼び。
「これは――そう、今はわらび餅のターンだからおやつ枠よ。別腹」
 そして、いう事は一つだ。
「あたしにもかき揚げください」
「かき揚げもおやつ枠とは……」
 食べ盛りと呼ぶには随分と豪快。若さ、ですかねえ……と残夏は感心する。
 まだまだ、天ぷらを楽しむ時間は終わらない。
 春への芽吹き。その恵から始まって――美味しいものを一緒に食べて。
 一層深まる中が、此処にはある。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月25日


挿絵イラスト