アポカリプス・ランページ⑰〜その拳に信念を
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「集まってくれて助かるぜ。今回はフィールド・オブ・ナインの一体……プレジデントと戦ってきて欲しい」
そう言葉を紡ぎだし、茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)は猟兵達へと顔を向ける。その顔色には、緊張の色が滲んでいた。
「プレジデントは街並みだけが再建されたワシントンD.C.のワシントン・モニュメントの前で俺達を待っている。こちらも乗り込んで戦ってきて欲しいんだが……相手がわざわざ場を設けて待ち受けてるんだ。一筋縄じゃいかないぜ」
相手は猟兵のことを認識している上に、戦場も相手の本拠地のひとつ。当然のように仕込みはあるだろう。
「プレジデントは自身のソーシャル・ネットワークを使い、強力な精神波を展開しているらしい。その精神波は闘争心を掻き立てる効果があって……結果として、その場ですぐに真の姿に変身出来るみたいだ。真の姿は強力だからな、変身出来るなら最初からしちまった方がいいだろう。プレジデント自身も真の姿について意味深なことを言ってたが……それは一旦置いておいて大丈夫だと思うぜ」
この効果には特にデメリットなどは存在していない。
素直に利用させてもらうのがいいだろうが……強化されるのは相手も同じことだ。
「精神波にはもうひとつ効果があってな。なんでも『ボクシング』を用いて戦う相手はより強化されるらしい。それで、プレジデントは普通にボクシングも強い上に、両腕が機械化した武装になってる。真の姿になってようやく五分の戦いが出来るだろうな」
ここまでのお膳立ては全てプレジデントが万全に戦うためのものである。
相手の土俵に乗る以上、相応の覚悟が必要だ。
一通りの説明を終え、ひびきは改めて猟兵達へと顔を向ける。
その眼差しにあるのは緊張の色だけでなく、信頼の色も宿っていた。
「今回も過酷な戦いにはなると思う。全力で戦って……帰ってきてくれよ。それじゃあ気をつけて、行ってらっしゃい」
言葉が締めくくられると同時に、転移ゲートが開く音がした。
ささかまかまだ
こんにちは、ささかまかまだです。
ぶつかり合うのは信念。
※このシナリオは「やや難」です。
頑張っていきましょう。
●プレイングボーナス
真の姿を晒し、ボクシングで戦う(🔴は不要)。
真の姿はイラストがある方はそれを元に描写します。
イラストが無い方やイラストとは違う真の姿を使用したい場合、或いは補足が必要な場合はプレイングに内容を記載して下さい。
また、ボクシングは格闘技としての正統派なものだけでなく「これが自分のボクシングだ!」と思うものでも大丈夫です。
プレジデントも割とルール無用な感じに殴ってきます。そもそも機械腕が反則です。
難易度は高いですが楽しくいきましょう!
●『プレジデント・ザ・ショウダウン』
「昔大統領だった事がある」という肩書だけが自慢の、しがないナイスガイらしいです。
フィールド・オブ・ナインの一員ですので油断せずに戦いましょう。
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オープニングが出た時点でプレイングを受付開始します。断章の追加はありません。
シナリオの進行状況などに関しては戦争の詳細ページ、マスターページ等も適宜確認していただければと思います。
また、プレイングの集まり次第で不採用が出てしまうかもしれません。ご了承下さい。
それでは今回もよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『プレジデント・ザ・ショウダウン』
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POW : アイ・アム・プレジデント
自身の【大統領魂】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : プレジデント・ナックル
【竜巻をも引き起こす鋼鉄の両拳】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : アポカリプス・ヘブン
【対象を天高く吹き飛ばすアッパーカット】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
グラナト・ラガルティハ
真の姿(真の姿イラスト参照)
プレジデント…かつての大統領か。
大統領と言うのは民衆を守る存在だと思って居たがこの男は守る為の術を何処かで踏み間違えてしまったようだな。この世界を荒廃させ民衆をオブリビオンとする…俺とは相容れぬ。
よって討ち滅ぼすとしよう。
UC【我が血潮もまた炎】
攻撃を喰らわぬというのは流石に出来んだろうからな…それも考慮してこの技を使う。
【属性攻撃】炎を拳に纏わせ一撃の力を上げタイミングを合わせて攻撃を受けた時に出た血。もしくは自信で傷付け生み出した血を発火する。
殴り合いもまた戦いだ出来ぬわけではないが…なるほどなかなか滾るものがあるな。
アドリブ歓迎
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再建された都市に人の姿はなく、ただモニュメントの前に一人の男が立つのみだ。
そんな光景を前にして、グラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)は力強く姿勢を正す。
「プレジデント……かつての大統領か」
猟兵を待ち構える大統領の姿は確かに堂々としている。嘗ての彼は民衆を守る存在として、きちんと役割を果たしていたのかもしれない。
けれど今の彼はオブリビオン。守る為の術を何処かで踏み間違え、愛すべき世界を荒廃させ――そして民衆を過去に変えてしまおうとしている。
グラナトは人間に良い印象こそ抱いていないが、彼らが守るべきものだということは重々理解していた。
だからこそ――。
「………俺とは相容れぬ。よって討ち滅ぼすとしよう」
猛る炎の戦神としての姿を晒しつつ、グラナトは静かにプレジデントとの距離を詰める。
その様子に気付いたのか、向こうも笑顔でグラナトを迎えるつもりらしい。
「その気迫……神の類だろうか。我が大統領魂にかけて、神すらも倒してみせようか」
「それは此方の台詞だ。行くぞ、大統領」
次の瞬間、ワシントン・モニュメントが大きく震えた。
二人の男が拳と拳をぶつけ合い、信念をかけた戦いが始まったのだ。
プレジデントは確かにボクシングの名手のようだが、けれど一方的に殴りかかってはこなかった。
「受けさせてもらおうか、神の拳を!」
「分かりやすい挑発だな……だが、乗った」
グラナトの拳を胴で受けつつ、プレジデントはニヤリと笑う。どうやら拮抗した戦いを演じれば演じるほど、彼の力は高まっていくのだろう。
ならば暫くすれば――相手の攻勢が始まるはず。
そう直感したグラナトが防御の構えを取ったならば、振りかぶられるのは弾丸のような勢いのストレートだ。
どうにか構えた腕で拳を受け止めてみるけれど、その威力はあまりのも大きい。打撃の痕からはじわりと血が滲み、それが大統領の拳を赤く染めていた。
このまま相手の攻勢が続けば危険だ。けれどこのような展開になることも、グラナトはとっくに承知していたのだ。
「……我が身が炎を司るものなれば、我が血潮もまた炎也」
神気が二人の周囲を覆った瞬間、赤い光が爆ぜる。見ればグラナトの血が炎に変わり、大統領の拳を燃やしているではないか。
予想外の展開に、大統領の身体が一瞬止まる。今ならば――!
「殴り合いもまた戦いだ……なるほどなかなか滾るものがあるな」
グラナトは大きく踏み込み、炎と共に渾身の拳を叩き込む!
相手の土俵であろうと、戦いならば決して負けない。炎神の猛る一撃は、大統領魂を打ち破る一手となったのだ。
大成功
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プリ・ミョート
いやいやいや! その機械腕でボクシングっておかしいべ?
うぎゃー! 痛え! おらの布が! 体がモゲる! やめろばかちんがー!?
あとでちくちく縫う気持ちがわかるか? この万年一張羅のナイスガイめ! あんちくしょー!
しゃあねえべな。おらの真の姿を見せてやるから覚悟してくんろー! おりゃー!(びりびりバリ!)
恥ずかしい! あ、ちなみにここが口な。で、ここが顔だべ。
剥けるとものすごい勢いで理性が飛ぶからこっちもルール無用だべ。ロケットパンチとか、めちゃくちゃ腕増やして殴るとか、平気でするべよ。
あと噛む。喰う。ムシャムシャしてやるべ。へへへプレジデントのジ・踊り食いだべぁ! キヒヒはぁあヒャハハハッ!!
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焦げたスーツをきちんと正し、プレジデントは次の挑戦者を待ち侘びる。
そんな彼に近づきつつ、プリ・ミョート(怪物着取り・f31555)はぶんぶんと頭を振っていた。
「いやいやいや! その機械腕でボクシングっておかしいべ?」
「諸君だってボクシングの際はグローブをつけるだろう? それと同じだ」
爽やかスマイルを浮かべつつ、プレジデントは一瞬でプリへと肉薄する。そのまま放たれるのは――豪腕によるアッパーカットだ。
「うぎゃー! 痛え! おらの布が!」
プリの身体は大きく吹き飛ばされてしまったが、戦場から離れることだけは避けられた。
けれど衝撃で身体の至るところが悲鳴をあげて、お気に入りの知恵の布にも傷や汚れが刻まれてしまっている。
「体がモゲる! やめろばかちんがー!? あとでちくちく縫う気持ちがわかるか? この万年一張羅のナイスガイめ! あんちくしょー!」
全身で痛みを表現しつつありったけの怒りを叫ぶプリ。
そんな彼女の様子を、プレジデントはあいも変わらず爽やかスマイルで見つめている。
「いやはや、レディに乱暴は良くないがね。君は猟兵だ、どうせなら真の力を見せつけていかないか?」
「そこまで言うんだったら……しゃあねえべな。おらの真の姿を見せてやるから覚悟してくんろー!」
おりゃー! と叫び声をあげ、プリはボロボロの布を破り捨てる。
中から薄着の少女が顔を出して笑ったかと思えば、更に何かが破れ、蠢き、きしむ音が鳴り響いた。
その様子に思わずプレジデントも感嘆の声を上げている。何故ならば――そこに立っていたのは少女ではなく、少女の皮を被った異形だったのだから。
「恥ずかしい! あ、ちなみにここが口な。で、ここが顔だべ」
少女部分で身体のパーツを説明しつつ、プリは一気に大統領との距離を詰める。
その最中にプリの手足は何度も生え変わり、黒い液体が地面を汚した。
「説明感謝する。それでは……君の実力を見せてくれ!」
プレジデントも興奮気味に拳を振りかぶり、巨大な機械腕でアッパーカットをかましてくるが――その拳はガツンと噛み付いて受け止めて。
相手が身動き出来なくなった瞬間を見計らい、プリは問答無用で暴れ始めた。
「きひ、ヒャは、アハハハハッ! これがおらのボクシングだべ!」
抜け落ちる腕達をロケットパンチにしてみたり、何本もの腕でボコボコにしてみたり。
更には噛み付いた腕でガブガブしたら楽しいんじゃないだろうか。よく見ればプレジデントの表情にも恐怖と困惑が滲んでいるぞ。
「へへへ、プレジデントのジ・踊り食いだべぁ! キヒヒはぁあヒャハハハッ!!」
こうしてプリの気が済むまで、蹂躙の時は続いていく。
怪物を目覚めさせるというのは、こういうことなのだ。
大成功
🔵🔵🔵
白斑・物九郎
●WIZ
おたくが大統領ならこちとら王ですわ
殴り合いが望みだってんなら付き合ってやろうじゃニャーですか
・欠落した右腕よりフォースオーラ『モザイク状の空間』を超高圧で放射する真の姿を解禁
・【狩猟】本能全開の【野生の勘】で敵の機先を予期し抜きつつ、回避と右腕による防御とパリィ、オーラの噴霧による【目潰し】を駆使しながら拳闘に及ぶ
・アポカリプスヘブン発動時は、逆らわず受け入れて天へと吹っ飛ぶ――と見せ掛けて【創世濁流】発動
・己の棲家である「夜のキマイラフューチャー」を上空に再現し「転移拒否によるダメージ」のキャンセルを図る
・フューチャー文明のリニアレールや乗用ドローンを足場として活用しつつブン殴り返す
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猟兵達との戦いが続き、大統領の身体にもしっかりと傷が刻まれていく。
それでも彼の気迫が衰えないのは、かつてこの地を治めていた者だからだろうか。
きっと魂の芯まで彼は大統領なのだろう。だからこそ、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)はプレジデントを見逃せやしなかった。
「おうおう、おたくが大統領ならこちとら王ですわ。殴り合いが望みだってんなら付き合ってやろうじゃニャーですか」
「ほう? 君もどこかを治めているのだね。いいとも、どちらが優れた統治者か……争ってみようじゃないか」
大統領が勝負の申し入れを受け止めた瞬間、精神波がより強くワシントンD.C.を覆っていく。
それに呼応するように物九郎の右腕がドクンと蠢き――そこから溢れるのは不気味で、けれど目を離せないモザイクの奔流。
腕の形を取ったモザイクと自前の左腕を構え、物九郎はプレジデントと睨み合った。
「そっちから来なさいな、どうせ此処はてめぇのフィールドですし」
「分かっているじゃないか。それじゃあ……遠慮なく!」
物九郎の挑発を受け、プレジデントが一気に踏み込む。
相手はただでさえ図体がデカイ上に、とんでもなく厳つい機械腕を構えているのだ。少しでも判断をミスすれば、一気に此方がやられてしまう。
けれど正面切ってのステゴロだって、命の取り合いだって。物九郎からすれば何も恐れることはない。
「ニャるほど、こいつが大統領魂ってワケですかい」
振り下ろされる拳を紙一重で回避して、そのまま猫の身のこなしで突進。
右腕のモザイクで相手の視界を潰してから、そのまま胴へと殴り込むが――やはり鍛え抜かれているのだろう、まるで岩でも殴ったかのような感覚だ。
「もう終わりかね? それでは……さよならだ」
次の瞬間、放たれたのは容赦のないアッパーカット。まともに拳を喰らい、物九郎の身体は天高く飛び上がり――。
「……ワイルドハントの狩場、見せてやりまさァ」
けれど、これで終わりではない。物九郎が空へとモザイクを振りまけば、そこに現れたのは『夜のキマイラフューチャー』だ。
飛び交うドローン達を足場にし、賑やかに翔けるリニアへと着地すれば準備も万端。
リニアの突進力を活かし、物九郎は一気にプレジデントとの距離を詰める。
相手の動きはドローン達が阻んでくれているようだ。殴り込むなら今だ。
「これでリングは俺のもんってワケですな。そいじゃ改めて……吹き飛べ」
最接近の瞬間にぶちかますのは、お返しといわんばかりのアッパーカット。
物九郎の――嵐を統べる王の拳は、見事に大統領に打ち勝ったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
…よりにもよって、俺を呼ぶか
「悪魔」と戦うのは愚かな行いだ 分からないのか?
勝つ為なら何でもやる なんでも犠牲にできる
俺がそういう存在だと、知らないのか
ならば、知るがいい 選択を誤ったということを
ボクシングの技術は「今」インストールした
その拳、面白い技術だが…俺の前でテクノロジーは失策だな
【ハッキング】を開始…『Undefeated』でブースト
ボクシングをしたいんだろう 場外乱闘は感心しないな
では、始めよう
レバーブロー、ストマックブロー、水月
内臓へのダメージと急所はきついだろう
次に顎、目、喉…ここも人体の急所だ
あぁ、それと…股間も、だったな
ルールを無視したのは お前からだ
文句は受け付けない
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数多の傷を受けつつも、大統領は今だワシントンD.C.に立っている。
そんな彼が次なる猟兵の気配を感じ視線を向ければ――そこにあったのはゆらりと歩く男の姿だった。
「……よりにもよって、俺を呼ぶか」
そう呟くのはヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)。けれど真の姿を晒した彼は、いつもと大きく様子が変わっていた。
ヴィクティムはいつものニヒルな笑顔は浮かべずに、どこか物憂げな表情で大統領を見つめている。
「『悪魔』と戦うのは愚かな行いだ。分からないのか? 勝つ為なら何でもやる、なんでも犠牲にできる。俺がそういう存在だと、知らないのか」
「ふむ……最初に見た時は普通の青年だと思ったのだがね。やはり君も、特別な別種の存在という訳だろうか」
ぽつりぽつりと紡がれる言葉に対し、大統領が返すのは笑顔。
ああ、こいつは何も分かっていないんだ。誰に、何に戦いを挑んだのか。それがどういう結果を齎すか、なんて。
「ならば、知るがいい。選択を誤ったということを」
一歩一歩、大統領との距離を詰めていくヴィクティム。相手も此方を堂々と出迎えるらしく、動く気配はない。
その歩みに合わせるように電脳デバイスがデータを集積し、必要な知識を教えてくれる。
戦う準備は整った。その様子を確認したのか大統領も拳を振りかぶり――その拳は竜巻を巻き起こした。
けれどその竜巻は一瞬で消え去って、静かに風が吹く音だけが流れていく。
見れば大統領の拳からはアラーム音が響き、大きさも元に戻っている。
「……何をしたんだね?」
「その拳、面白い技術だが……俺の前でテクノロジーは失策だな」
大統領の拳は確かに凶悪だ。けれど機械である以上、内部から操作する手段はいくらでもある。
初めて見る機械をその場で解析し、ハッキングする。相当難しい技術だが、『Undefeated』で己をブーストしたヴィクティムには決して不可能な行為ではなかった。
代償は自らの命と人間性。相応に重いが、勝つためなら何でもやると言ったのだから。
そしてそれは――これからの行為も同じ。
ヴィクティムは大統領と一気に肉薄し、その拳を振りかぶる。
「ボクシングの技術は『今』インストールした。では、始めよう」
最初に殴りつけたのは内臓の位置。一切容赦のない人体の急所への攻撃に、大統領は思わず眼を見張る。
けれど何も言わせてなるものか。次に殴りつけるのは顎に喉、それから眼球。ちらりと見えた大統領の視線が『卑怯だ』と告げている気がしたが、それがどうした。
思い切り股ぐらを殴りつけ、流石の大統領すら怯んだのを確認し――最後にかますのは渾身のストレートだ。
「ルールを無視したのは お前からだ。文句は受け付けない」
倒れる巨体を見下ろしつつそう呟いて。これで相手も思い知ったことだろう――自分が、何と戦っていたのかを。
己が取った選択の愚かさを、ヴィクティムは教え込んでいったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
正面から殴り合おうってのは潔いと思うが、やろうとしてる事は到底看過できない
ま、精々殴り合うとしようか
最初に神刀を抜き、その力によって我が身に紫紺の神気を纏わせながら真の姿に変化
限界を超えた身体能力を我が身に宿す
その後は近くの地面に突き刺して保持。戦闘はあくまで殴り合いでいく
個人で見れば戦闘力が違いすぎるんだ。これくらいは許してもらうとしよう
後は加速した思考力と行動力を活かして、敵の攻撃を避けたり受け流しながら一撃離脱で戦う
機械腕への攻撃はあまり有効ではないだろうから、胴体や顔など生身部分に優先して攻撃
コツコツとダメージを積み重ね、相手の体勢を崩した所で一気に踏み込み、渾身の一撃を叩き込む
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相応のダメージを受けているにも関わらず、大統領はまだ戦うつもりだ。
その堂々とした立ち姿に戦場を用意し潔く殴り合おうという姿勢は潔いものと思いつつ、けれど夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は決して相手を逃すつもりはなかった。
彼の目的は『全人類のオブリビオン化』。そんなこと、絶対にさせてなるものか。
「正々堂々と挑まれた勝負なら挑ませてもらおう。ま、精々殴り合うとしようか」
「勿論だとも……だがいいのかね? 君は侍や武士のようなものではないのか?」
大統領も鏡介へと笑顔を返すが、彼の視線は鏡介の携える刀の方に注がれていた。
「ああ、そうだ。だから……」
大統領の視線に気付き、鏡介は神刀【無仭】を静かに抜く。同時に溢れた紫紺の神気が鏡介を包んでいけば、彼の姿は真の姿に変身しだした。
けれど刀は使わない。その刃を近くの地面に突き立てて、神気だけを纏い続けながら鏡介は大統領へと近づいていく。
「刀はこう使わせてもらう。個人で見れば戦闘力が違いすぎるんだ。これくらいは許してもらえるだろうか」
「構わないさ。その刀も君の一部のようなものなのだろう。直接戦いに持ち込まないのなら、断る理由もないさ」
大統領が眉一つ顰めず鏡介の行動を許すのは、きっと自信の顕れだろう。
やはり相手は強敵だ。鏡介は静かに覚悟を固め、戦いの場へと足を踏み入れた。
そこから先は苛烈な殴り合いの始まりだった。
大統領は己の技術だけでなく、巨大化した機械腕を容赦なく此方へ振るってくる。
それに対し鏡介が取れる行動は……。
(無仭のおかげで身体能力は上がっている、攻撃を避けることに関してはいつもと同じだ)
手元に刀がない状態の戦いは不慣れだが、だからこそ基本に忠実に戦うことを選択していた。
神刀の煌めきを受けながら相手をよく観察し、危険な攻撃は回避、受け流せる攻撃はどうにか受け流す。
ヒットアンドアウェイを繰り返していけば、いつかはチャンスも見えるはずだ。
(いつもより射程も短いんだ、気をつけて踏み込んで……!)
狙いを定めるのは胴や顔といった生身の部分。せっかくのダメージも機械部分に阻まれては勿体ないだろう。
最初は余裕を見せていた大統領だが、鏡介の実直な攻撃を受け続けていては――大きく揺らぐ時も来る。
鏡介はそのタイミングを、決して見逃しはしなかった。
「そちらの巫山戯た夢は終わりだ。今ここで打ち倒す!」
一気に相手の懐に入り込み、放つのは渾身の一撃だ!
鏡介の重い拳は大統領を吹き飛ばし――紫紺の神気が静かに周囲を包んでいく。
ハンデのある戦いだろうと、鏡介は決して逃げたり退いたりしなかった。その選択が、道を切り拓いたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ルドラ・ヴォルテクス
●アドリブ連携OKです
『オーバーロード発動、左腕インドラ、右腕スカンダ、闘神形態解放』
これが真の姿か……いいものだ。
【拳闘】
マハーカーラー発動。
名を失ったプレジデント、拳闘士として、最強の形態で相手してやろう。
魂の火を薙ぐのは、ナタラージャの如き舞踏。ステップを大きく踏み、旋回し、時にはジンガのように胴への一撃をそらす回避の足捌き。
泥沼のような長丁場、それが大統領の魂には萎えるものだろう?
アメリカの敗北は常にそうした泥沼の戦いだ。
相手の魂に火がつかないうちに、こちらの呼吸を限界突破で整え、右拳の暴風でガードをそぎ落とし、左拳の穿つヴァジュラの如き雷撃の一撃で沈めてみせる!
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ワシントンD.C.の広い広い、敵への道。
その上を進んでいく度に、ルドラ・ヴォルテクス(終末を破壊する剣“嵐闘雷武“・f25181)の身体は奇妙な感覚に包まれていた。
「なるほど……これが精神波とやらか」
ルドラの感覚と同期するように、スーツも何かのアラームを発している。
そこに映し出された文字は――。
『オーバーロード発動、左腕インドラ、右腕スカンダ、闘神形態解放』
ぶわり、竜巻のような暴風が巻き起こり、その中心に立つルドラの身体は変化していく。
左の腕には雷霆神の、右の腕には韋駄天の力が滾り、体内の偽神細胞も強く脈打つ感触があった。
けれど心は凪のように落ち着いて、まるで澄み切った空のようで。
「これが真の姿か……いいものだ」
戦神と化し、ルドラはゆっくりと息を吐く。そんな彼に気付いたのか、プレジデントは拍手を送ってきている。
「それが君の真の姿か。漲る闘志は素晴らしいが……実力は如何ほどのものかな?」
爽やかな笑みと共に此方を迎えるプレジデントに対し、ルドラが向けるのは鋭い視線だ。
ヒトに近い姿をしているが、此奴も間違いなく禍風の輩。ならば彼を滅ぼすのが、自分の役割なのだから。
「名を失ったプレジデント、拳闘士として、最強の形態で相手してやろう」
オブリビオンの破壊者、嵐でさえも喰らう破壊そのものと化したルドラが戦いの場へ踏み出せば――巻き上がるのは、何よりも強い風だった。
ボクシングというものならば分が有るのは大統領であっただろう。
けれど戦いという面から見れば――優れているのはルドラの方だ。
最初の回避は敢えて大きく。舞い踊るように振るわれるジャブを避けつつ、ルドラは大統領へと視線を向ける。
「くっ……その動きは華麗だが、まだまだ!」
負けじと大統領がストレートを振るうなら、今度は相手を惑わすようなステップを。様々な技巧、様々な動きを織り交ぜつつルドラはただひたすら相手を睨む。
「泥沼のような長丁場、それが大統領の魂には萎えるものだろう? アメリカの敗北は常にそうした泥沼の戦いだ」
淡々と告げられる言葉の通り、じわじわと互いの体力を削り合う戦いに大統領は眉を顰めている様子。
大統領魂が燃えたぎっていない彼ならば、恐るるに足る相手ではない。
「行くぞ、終焉を見せてやる」
一瞬で呼吸を整え、ルドラは今までにない速さで大統領の元へと飛び込んでいく。
最初に放つのは右拳が放つ暴風のような一撃だ。どうにかガードしようとする大統領だが、流石の威力に巨体も大きく揺らいでいる。
「我が名はルドラ、破壊する者――お前を滅ぼす者だッ!」
そして左拳からヴァジュラの如き一撃を放てば、それは雷のように大統領を打ちのめす!
真の姿と己の役割。その双方がルドラを突き動かし、敵を倒す力となったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
七瀬・麗治
やれやれ、まさか自称アメリカ大統領と戦うことになるとはな…
しかもボクシングで戦えだと?随分と潔いじゃないか。
いや、それも自信の表れか?
いいぜ、受けて立とうじゃないか…!(眼鏡を外す)
プレジデントの精神波を受け、真の姿があらわに。
身体の表面を青い結晶状のUDC寄生体が覆った、
魔人形態へと変身する!
さらに【筋肉こそ正義】で無敵の筋肉を
想像から創造。全身をパンプアップさせて試合開始だ!
機械腕にも負けねえ、硬質化した肉体こそがオレの武器だぜ。
《学習力》《見切り》でブローを捌きつつ、《グラップル》で反撃。
多少被弾しても《激痛耐性》で耐え凌ぎ、己の筋肉への
自信を保ち続けるぜ。
オレの自慢の拳、くらいやがれ!
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「やれやれ、まさか自称アメリカ大統領と戦うことになるとはな……しかもボクシングで戦えだと?」
再建されたワシントン・モニュメントを見上げつつ、七瀬・麗治(ロード・ベルセルク・f12192)はぽつりと呟く。
彼の様子をニコニコと窺う大統領は圧倒的な存在感を放ちつつ、挑戦を待ち侘びている様子。
「……随分と潔いじゃないか。いや、それも自信の表れか?」
「その両方だと思ってくれて構わない。私は諸君らの力が知りたいのさ」
大統領の眩いスマイルは爽やかで、けれど滾る闘争心は間違いのない本物だ。
ならば……受けて立つのが自分の仕事だろう。
「いいぜ、受けて立とうじゃないか……!」
麗治が眼鏡を外すと同時に、精神波が一際大きく周囲を包む。
それに呼応するように麗治の身体も変化していき――姿を現したのは、青い結晶状の寄生体に覆われた魔人だ。
「なるほど、それが君の真の姿か!」
「ああ、そうだ。でもこれで終わりじゃないぜ……フン!」
麗治がイメージするのは最強の自分。筋骨隆々で、目の前の大統領にも負けない自分。
その姿を現実のものとしてパンプアップすれば、戦いの準備は完了だ。
大統領も満足気に頷いて――二人がぶつかり合う瞬間、ゴングの音が聞こえた気がした。
そこから先は見た目通り、勇ましい男達の激しい戦いが繰り広げられた。
大統領の武器は巨体だけではなく、厳つい機械腕も含まれている。
一方麗治の武器は硬質化した肉体ひとつのみ。けれどそれでも、麗治は一歩も退く姿勢を見せなかった。
「どうしたその拳……強豪校のボールの方がよっぽど速かったぜ!」
振るわれるブローを華麗に避けて、返してやるのはニヤリとした笑み。
けれど大統領も挑発には乗らず、爽やかな笑みを崩す様子を見せていない。
「ならば……これはどうかな?」
「グッ……! なるほど、な……!」
次に放たれたのは的確なストレートだった。どうにか腹筋で受け止めることは出来たけれど、それでも鋭い痛みが身体を襲う。
しかし――ここで心が揺らいでは、無敵の筋肉だって衰えてしまう。大統領魂よりも強く、自分の信念を燃やし続けなければ!
「負け、るかよ……!」
撃ち込まれた拳をグッと掴み返し、相手の動きを止めて――そして拳に渾身の力を籠めて!
これまでの経験も、戦いも、そしてその想いも全て力に変えたのならば、大統領魂だって打ち破れるのだ。
「オレの自慢の拳、くらいやがれ!」
麗治の放った渾身の一撃は大統領を見事打ち据え、その身体を大きく吹き飛ばす!
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ここまでの戦いの疲労も相まって、彼はどうやら限界のようだ。けれど負けたにも関わらず――最後まで大統領は笑みを浮かべている。
「我が悲願を達成出来ないのは残念だ。だが……多くの良いものを見ることが出来たよ」
そう呟いて、大統領は骸の海へと還っていくのだった。
大成功
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