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アポカリプス・ランページ⑩〜いっしょに

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#アポカリプス・ランページ⑩


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●アポカリプス・ランページ
「オブリビオン・ストーム、ヤバイ人、ゾンビに機械の獣もいるっていうのに邪神までいるなんてやぁね。ちょっとは遠慮してほしいとこだわ」
 少しくらいこっち側を気にかけてくれたっていいと思うのよ。
 藤代・夏夜(Silver ray・f14088)は言い、その邪神なんだけどと添えながら抱えていたダンボールを下ろす。
「邪神ポーシュボスの支配下にされちゃってるNASAの跡地、そこの地下に保管されている『宇宙の幼生』っていう穏やかじゃない宝石なんだけど……困った事に、まだまだあるみたいなのよね」
 ただでさえ世紀末真っ盛りなアポカリプス・ヘルだというのに、NASA跡地をこのままにすると、オブリビオンを『超宇宙の恐怖』によってポーシュボス化させ超強化――などという事態が訪れてしまう。
「それは見逃せないでしょ? でも何の備えもなしに頑張って狂気に耐えて、なんて言わないわ。という事でこれが頼りになるアイテムよ!」
 ベリッ!
 念動力で一気に剥がされるガムテープ。封をしていた物が消え、隙間の出来た蓋下から飛び出した複数のシルエット。それは、多種多様なぬいぐるみだった。

●いっしょに
「ちょっと前に私の知り合いが依頼したものと同じ案件ね。あっちが狂気に染めようってんなら、それに耐えうるお助けアイテムと……ぬいぐるみと一緒に挑めばいいのよ!」
 そう言った夏夜の周りを、動物・食べ物・キャラクターといったぬいぐるみが衛星の如くクルクル回っている。
 夏夜はというと、キリッとした顔つきの二頭身ぬいぐるみを手にしていた。マイクを持っているそれは推しキャラのぬいぐるみらしく、カッコ良くて可愛いでしょとニコニコしている。
「この子は私の大切なアイドルだから貸せないけど、周りに飛んでる子の中に借りたい子があったら言ってちょうだい。なかったらNASA跡地にある仮眠室を覗くといいわ。こんな感じのぬいぐるみがわんさと残ってるから、きっと心に来る子と出逢える筈よ♪」
 好きなものと同じ形だった、何となくいいなと思った。
 おはようからおやすみまでを共にした遊び相手だった。
 苦しいこと、悲しいことから守ってくれた友人やヒーロー。
 生活に彩りを添えてくれた宝物。
 ぬいぐるみへ抱くものは、ぬいぐるみとの関係含め人によってバラバラだろう。けれどそこには、日々を過ごしてきた自分との繋がりが存在している。
「だからこそのぬいぐるみね。重火器みたいな重さもないし、持ち運びやすいでしょ? ああでも、ビッグサイズは人によって大変かしら。でも抱き枕タイプもいいわよねぇ」
 ぬいぐるみを見る。手触りや温もりを感じ取る。
 思い出の中のように、一緒に過ごす。
 そういった行動が、魂に芽吹こうとしていた狂気を押しのけ、正気を繋ぎ止めてくれる。――狂気が芽吹こうとする以前に、それ以上の情熱や衝動(狂気)で蹴り飛ばすことだって。
「『宇宙の幼生』全部を破壊出来れば、今後の戦いが有利になる筈だわ。だからみんな、お願いね!」


東間
 アポカリプスヘル戦争シナリオのお届けに来ました、東間(あずま)です。
 ぬいぐるみと一緒に頑張るシナリオ、第二弾です。
 今回は、前回の同戦場シナリオ(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=37175)で採用出来なかった方を優先採用&前回より受付期間長めでの運営となります。

●受付期間
 タグ・個人ページトップ・ツイッター(https://twitter.com/azu_ma_tw)にてお知らせ。送信前に一度確認をお願い致します。

●プレイングボーナス:『宇宙の幼生』を見たことによる狂気に耐える
 隙あらば正気を減らして狂気に染めようとする『宇宙の幼生』を破壊すべく、選んだぬいぐるみを駆使し、狂気に耐えつつ『宇宙の幼生』を破壊しましょう。
 どんなぬいぐるみで、どんな風に耐えつつ破壊するのかお書き下さい。
 自前のぬいぐるみもOK。
 使うぬいぐるみの数・どう駆使するかもご自由に!
 以下は使用例です。どうしようかな、と迷われましたらフリー素材にどうぞ。

 ※ぬいぐるみ選択場面の描写はありません。

 ①思い出に浸って遊ぶ&破壊。
 ②ぬいぐるみを即席の友達や恋人や奥さん旦那さんにしてごっこ遊び&破壊。
 ③ぬいぐるみカワイイカワイイ&破壊。

 ガチで遊んでor楽しんでやべー奴になりつつやべー宝石に対抗する(狂気には狂気をぶつけんだよ精神)も有りです。

●グループ参加:二人まで
 プレイング冒頭に【グループ名】、そして【送信日の統一】をお願いします。
 送信タイミングは別々で大丈夫です(【】は不要)
 日付を跨ぎそうな場合は翌8:31以降だと失効日が延びますので、出来ればそのタイミングでお願い致します。

 以上です。皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 冒険 『宇宙の幼生』

POW   :    強靭な気合いで狂気に耐える。

SPD   :    なるべく宝石を見ないようにしつつ破壊を試みる。

WIZ   :    魔術や薬を使い、狂気を抑える。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

乱獅子・梓
【不死蝶】
俺たちのようなナリのいい歳した大人がぬいぐるみと遊ぶのって
なんかその光景自体がある意味狂気な気がするんだが…

綾は早速ぬいぐるみを堪能しているが
俺はどうも気が乗らないな…しかし狂気にやられるのも困る
ハッッ、いいこと思いついた

仔竜の焔と零にぬいぐるみを渡してどんな行動を取るか観察
不思議そうにくんくんしてみたり
血気盛んにパンチや頭突きを喰らわせてたり
寄り添ってすやすや寝だしたり
…くぅ!可愛い!!
可愛い子たちが可愛いものと戯れていたら
そんなのスーパーハイパーウルトラ可愛いに決まっている
すかさずスマホ取り出しカメラ連射
もちろん動画もだ

その間にUCで召喚したドラゴンたちに宝石を攻撃してもらう


灰神楽・綾
【不死蝶】
こらこら梓、それは偏見ってやつだよ
可愛いぬいぐるみと戯れるのに見た目も年齢も性別も関係ないさ

そんな俺が選んだのは、自分の身長の半分以上はありそうな
巨大なふわふわもこもこテディベア
この大きさ、この絶品の触り心地
これはまともに購入したら絶対めちゃくちゃ高いやつ
こんなお高いぬいぐるみまであるとはさすがNASA

そのテディベアを両手で抱きしめてごろんと寝転ぶ
あーこれはよく眠れそう
職員たちが眠れない夜のお共にしてきただけあるね

梓は何だか別の意味で狂っているね…
ドラゴンたちの可愛さに狂う面白おかしい姿を
テディベア抱き枕でゴロゴロしながら微笑ましく眺めつつ
念動力でナイフを操り宝石を攻撃



 目にした者をもれなく狂わす宝石、宇宙の幼生。
 成る程、それは危険だ。何とかすべきだろう。
 ――しかし。
「俺たちのようなナリのいい歳した大人がぬいぐるみと遊ぶのって、なんかその光景自体がある意味狂気な気がするんだが……」
「こらこら梓、それは偏見ってやつだよ。可愛いぬいぐるみと戯れるのに、見た目も年齢も性別も関係ないさ」
 乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)が口にしてしまったそれへ、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は大丈夫だってほら見てみなよと、両目と口を三日月のようにして笑う。そして――ごろり、ごろり。
「ね?」
「……」
 目の前にいるのは大きなぬいぐるみを抱えた、183.8cm24歳成人男性。周りには妖しい宝石――違う違う眼の前に集中するんだ、狂気なんて要らない。
 梓はサングラスの奥で目つきを鋭くさせ、じいっ、と今の綾を見る。
 ふわふわもこもことしたボディ。円な瞳。くにゅ、と可愛らしいラインを描く笑顔。長身の綾が抱えても減った気がしないビッグサイズ感を誇るそれは、巨大テディベアだ。
 撫でる掌。ぎゅっと少しだけ力を入れた指先。擦り寄せた頬。触れた場所全てに伝わる触り心地は絶品だと綾は笑い、この大きさもいいねとテディベアを抱き枕にして――ハッ。
(「これはまともに購入したら絶対めちゃくちゃ高いやつ」)
 世界が崩壊した今でもこの素晴らしさ。これは安い人件費と大量生産で価格を抑えたものではないだろう。もしや大手ぬいぐるみブランドの作? だとしたら米ドルで一体おいくらなのだろう。
 タグを探してテディベアの全身を撫で撫でする。ぺろっと感じたそこには――残念、読めない。だが、こんなぬいぐるみまである今はなきNASAに、綾は畏敬の念を抱かずにいられなかった。
 ところで。
 それはそれとして。
「あー、これはよく眠れそう」
「そうなのか?」
 この状況で? を含んだ梓の問いに、綾は笑って頷いた。
「職員たちが眠れない夜のお共にしてきただけあるね。やってみればわかるよ」
「いや、遠慮しておく」
 堪能している様を見ても、どうも気が乗らない。だが視界の殆どを“巨大テディベアを抱っこしてゴロゴロする長身成人男性”で占めても、宝石たちは不気味な輝きを垂れ流していて――。
「ハッッ、いいこと思いついた」
「え、何?」
 きょとんとした綾をよそに、梓はロングコートの下に抱えていた仔竜たちを外へと出す。翼をぱたぱた鳴らし、尾をゆらり。何々? と不思議そうだった仔竜たちは、梓がじっと見つめる中、綾が抱えるテディベアに目をぱちくりさせた。
『キュ? キュー?』
『……ガウ』
 テディベアのくたっとした足をぺたぺた触って、近寄ってくんくんして。パーツゆえに瞬きをしない目には、二匹揃ってギョッと飛び上がった。だがすぐにパンチと頭突きのコンビネーションを食らわせて――と、それを、まだまだ子供の竜二匹がやっているのである。梓はうっと胸を押さえた。
「……くぅ! 可愛い!!」
 カシャシャシャシャシャシャシャッ!
「ハッッ、スーパーハイパーウルトラ可愛いんだから動画に残して後で見られるようにした方がいいんじゃないか……!? いや、何を迷っている、これは残すべき光景だ!!」
(「何だか別の意味で狂っているね……」)
 胸を押さえたと思えば高速で取り出していたスマートフォン。
 即始まった連射撮影。
 続いて写真モードから動画モードに切り替え、流石だ可愛いぞと撮影に勤しむ梓の脳内は、テディベアのお腹をぴょんぴょんと登り始めた仔竜たちで更に占められていく。不気味な輝きが宝石内で蕩けるように揺らいでも、“あの仔達の背景がなんかキラキラしているな”と、丁度いい背景ぐらいにしか思えない。
 そんな梓を、綾はテディベアを抱き枕にしたままニコニコと眺めていた。寝転がっても、体を起こしてクッションにしても、全く辛くならない。このテディベアが持つポテンシャルの高さを改めて実感する綾の笑みはどこか穏やかで――しかし、その意識は流れるようにナイフを捉えていた。
 並ぶ宝石を一瞬で縫うように刃が翔る。きらりとした軌跡通りに深淵色の宝石郡に筋が走り――それに続くは竜の群れ。より鋭さを増した爪が、牙が、切り裂かれた宝石を石ころにように砕いていって。
「可愛い、可愛いぞ二匹とも!」
(「うーん。もう少しのんびりしようかな」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーファス・グレンヴィル
ぬいぐるみ、って、マジか

愉しそうに黒竜が笑ってる
うるせえ、似合わねえのなんて
自分が一番よく分かってるよ

小脇に抱えたウサギのぬいぐるみ
選んだのは、オレじゃない
ひらひらと舞う幽世蝶が
止まったのが、コレだった
妹の選んだ物なんて断れねえだろ
クソ、と、何度目かの溜め息が零れる

宝石の狂気に対抗する為
ポンポンとぬいぐるみを撫でて
愛でてるつもりでいたけれど

──ッだあ、もう!
付き合ってられねえ!

ウサギの耳を片手で縛るよう持って
そのまま宝石へと殴り掛かる
後ろで黒竜が文句言ってるけど
誰かと一緒なら兎も角
ひとりじゃ、こっ恥ずかしいんだよ!

──でも、
どこか寂しげに蝶が舞うから
このウサギ、貰い主でも見つけてやるかな



「マジか」
 見た者を狂わす恐ろしき宝石への対処のマストアイテムが、破邪の力が籠められた指輪や札、武器の類ではなく玩具――ぬいぐるみだなど、いくつもの戦場を越えたルーファス・グレンヴィル(常夜・f06629)でも想像は出来ず。故に、まずこぼれ落ちた言葉が先のあれである。
 ひょこっ。視界に顔を入れてきた黒竜のナイトが、ルーファスと目が合った途端に炎のような赤眼をにぃーっと細めた。スリムでシャープな尾がくるりと動く。
「うるせえ、似合わねえのなんて自分が一番よく分かってるよ」
 愉しそうに笑いやがってと睨んでもナイトの笑みは引っ込まない。時折ぱちぱちと瞬きを挟みながら、ルーファスの顔と、下――小脇に抱えたままの兎のぬいぐるみを見比べる赤眼は愉しげにキラキラしていた。
 長い耳。まあるいボタンの眼。眼とは違い、立体的かつぽわんと丸い尻尾。
 どこからどう見ても“かわゆいウサちゃん”な、ぬいぐるみ。そこへひらりひらりと舞い寄ってきたのは、目の醒めるような黒と赤、そして白星を宿した幽世蝶だった。兎の周りを行き来するように舞い、そして――選んだ時のように兎に止まったのを見たルーファスは僅かな間の後に息を吐く。
「妹の選んだ物なんて断れねえだろ」
 ナイトの眼がゆるりと、少しだけ普段のものに戻る。しかし眼差しはまだ笑っているようで、自分と兎と蝶を見ては揺れる竜尾が視界にちらついた。
 クソ。
 何度目かの溜息をこぼして兎の脇下を鷲掴み、もう片方の手を伸ばす。そっと離れた蝶がひらひら飛ぶ下でポンポンと数回。触れたその手は叩いてるように見えるかもしれないが、当人は撫で、愛でているつもりでいた。
 こうすればいい。
 こう、すれば――、
「ッだあ、もう! 付き合ってられねえ!」
 地下室をびりびり震わせながら兎耳を片手でむんずと縛るように持つ。そのまま宝石へと殴りかかれば、かわゆいウサちゃんがあーれーと翻るよう。翼広げたナイトが文句を言うも、
「ッせえな! 誰かと一緒なら兎も角、ひとりじゃ、こっ恥ずかしいんだよ!」

 バギャンッ!!

 さっさと終わらせるべく叩き込んだそれは他多数の宝石にも向いたけれど、砕いて回る視界の中で蝶がどこか寂しげに舞う蝶が見えたから。
(「貰い主でも見つけてやるか」)
 そうすれば、置いていかれることはない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菊・菊
はあっ?きっしょ…

抱きしめて、顔を埋めてないとまじで無理
何が無理とかもうどうでもいーわけ
無理なもんは無理

視界に入るのもムリ

もう離せん
これ持って帰る

白い狼をぎゅうと抱きしめて、首を振った

ふわふわで、目がくりくりしてる
おひさまの匂い
どこまでもあいつに似てて、かぁいい

あいつなら……こゆとき、ぜってえ助けてくれる…し…

…。
は?
自分で考えて、頭を抱える

いつも俺ばっか後ろに隠して
守るとか言って、怪我ばっかしてんの、ムカつく

俺だって
あいつに傷付いてほしくねーのに
ぎゅうと抱きしめる
悪態が漏れんのも仕方ねえじゃん
あー、
んで、こんな時に思い出しちまうわけ

もっかい抱きしめて

石に八つ当たり

俺だって
守る
もっと強くなる



 どろどろ、きらり。ぬーらぬら。
「はあっ? きっしょ……」
 一瞬ちらっと見たそれの色、形、煌めき――孕むもの。それらが目を通して脳髄にまで届きそうな感覚をシャットダウンするように、菊・菊(Code:pot mum・f29554)は持っていたぬいぐるみを抱き締め顔を埋めた。
「まじで無理。何が無理とかもうどうでもいーわけ、無理なもんは無理。視界に入るのもムリ。金積まれても見ねーわ。まじできっしょ」
 誰だよんなもん作ったのと悪態をつきながら、自分の顔面を受け止めているぬいぐるみを、更にぎゅうと抱き締め首を振る。
「もう離せん。これ持って帰る。これ俺の」
 仮眠室で見付けたのは白狼のぬいぐるみだった。触ればふわふわで、顔を埋めればふわふわぬくぬく。見付けた時に合った目はくりくりとしていた。それから、おひさまの匂いが鼻をくすぐる。
 ああ。どこまでもあいつに似てて、かぁいい。ほ、と吐いた息が肌とぬいぐるみの隙間を流れてほのかな熱を灯すと、温もりが増したよう。
(「あいつなら……こゆとき、ぜってえ助けてくれる……し……」)
 ぴた。
「……。は?」
 菊は自分で考えたそれに頭を抱えた。目線は意地でも宝石郡に向けない。埃っぽい床だけを映す。あの宝石は全て視界から断固排除の姿勢だ。
(「助けてくれる? ああ、そーだよ、その通りだよ」)
 いつも自分ばかり後ろに隠して、守るだとか言うあいつは怪我ばかりして。
「ムカつく。俺だって、あいつに傷付いてほしくねーのに」
 “ぬいぐるみをぎゅうと抱きしめてる癖にその悪態は何だ?”って? 漏れんのも仕方ねえじゃんと菊は口を尖らせる。それでいて、こんな時に思い出してしまうのだ。いつだってそんな風に自分を守って戦う『あいつ』のことを。
「あー」
 くそ。
 その一言を湧き上がるものと一緒に吐き出して、ぷつり。指先から滲んだ赤が啜られて、菊しかいないそこに嘲笑が流れ出す。女が、笑って――ぱりんッ。ひとりでに吹っ飛んだ一つが割れ、濁流に呑まれるような勢いで他の宝石が落ちて砕けて散っていく。
 唐突に始まったそれは蹂躙であり、
「八つ当たりだよ、くそ石」
 いつも後ろに隠されて。守られて。怪我する所ばかり見ているけれど。
「俺だって、」

 守る。

 もっと、強くなる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【ノラ】
(よーし俺はこのネコチャンを選ぶぜ!
とか冗談で相方に手を伸ばした結果
――何故か両手に狂気のハニワ抱枕状態で)

いやある意味コレのが発狂するわ!?
ソレこそトチ狂ってるじゃんひとりのほうがいっそマシじゃん!?

嗚呼…もうっ…この気が狂いそうなトンチキ…じゃなくて不穏な宝石に抗う術はコレしか…っ!
(懐からスッ…と、ふわもこぴよこ&ゆるかわ亀――に似たぬいぐるみを取り出した!)
はぁ…やっぱコレコレ、癒される~
(そしてでれた!)

ちょこニャンもそーしてりゃ癒しの塊…コホン
てか寛いでる場合じゃないぞ大物!
って早!?
誰がンなコトするかー!
(癒しぱわーで狂気も呪詛も抑えUC
抱枕…と風切を宝石へぶん投げ!)


鈴丸・ちょこ
【ノラ】
(どさくさに紛れた不躾な手にハニワ抱枕×2を掴ませ――
自らは堂々と獅子ぬいをぷらーんとくわえ、いざ!)
さて伊織、今はてめぇと俺だけだ
何も照れる事はねぇ
日頃の悲しみを埋めるべく――心行く迄その抱枕といちゃいちゃ癒し癒され恋人遊びに耽るが良い

む、何だ
まさかてめぇ、本物達に留守を任せてぬいぐるみに浮気か?
まぁ良かろう
俺達もやるぞ、ぷりん(唐突にUC獅子も招き)

ふ…懐かしいな、ぷりんよ
てめぇが小せぇ頃は(※今も)よくこうして添寝したり面倒見たりしたもんだ
(ぬいにもふもふもたれ
昔話序でに仲良く宝石転がし戯れ
――ていたがすぐ飽き覇気ぱんち☆)

おう、もうやったぞ
てめぇもとっとと片して抱枕と添寝しろよ



『よーし俺はこのネコチャンを選ぶぜ!』


 ――そんな、ウキウキわくわくボイスの数分後のことである。


「さて伊織、今はてめぇと俺だけだ」
 鈴丸・ちょこ(不惑・f24585)の尻尾が揺れる。優美な動きは視線を奪うようで、事実、呉羽・伊織(翳・f03578)の目はスチールラックに並ぶ宝石郡ではなく艶々黒尻尾に向いていた。
 ん? と目をぱちくりさせた伊織へ、ちょこは何も照れる事はねぇと囁く。獅子ぬいをぷらーんと咥えていても紡ぐ言葉はしっかりと届いていた。なぜかと言えば猫は神秘の生き物だからである。
「日頃の悲しみを埋めるべく――心行く迄その抱枕といちゃいちゃ癒し癒され恋人遊びに耽るが良い」


 その抱き枕 is ハニワ×2


「いやある意味コレのが発狂するわ!? ソレこそトチ狂ってるじゃんひとりのほうがいっそマシじゃん!? つかコレ何!? こんなん仮眠室にあった!?」
 両手に狂気のハニワ状態を把握した伊織の声が地下室に響くが、ちょこはゆらゆらさせていた尻尾を下ろして不思議そうに首を傾げた。
「あったろうが。でなけりゃてめぇが持ってる筈ねぇだろ」
「いやコレいつの間にか手に――ハッ、まさかあの一瞬で!?」
 このネコチャンを選ぶぜなんて言って渋くていかした黒いネコチャンを抱き上げ、いざ宇宙の幼生破壊作戦へ! と冗談で相方に手を伸ばして触れたものは、ふんわりやわらかなボディだったが――まさか、まさか!!
 愕然とする伊織へ、ちょこは「ふっ」とダンディズム溢れる微笑を返す。どさくさに紛れ伸ばされた手に素早く気付き、鮮やかな手腕で身代わりを掴ませたのは、はて、何分前だったか。
「嗚呼……もうっ……」
 伊織の肩がガクーッと落ちた。左右の腕それぞれに収められていたハニワズが左腕に集められていく。
「この気が狂いそうなトンチキ……じゃなくて不穏な宝石に抗う術はコレしか……っ!」
 懐へスッと差し込む手。
 何だと警戒するちょこ。
 そして――!
「はぁ……やっぱコレコレ、癒される~」
 取り出されたるはふわもこなひよこと、ゆるかわな亀――伊織が日々可愛がりそして一方からは容赦ない塩対応を返されている二匹に似たぬぐるみだった。ぎゅっと抱き締めてスリスリすれば――ああ、最高!
 そんな伊織の顔は愛と幸せに溢れた素晴らしきでれでれモードなわけで。
「まさかてめぇ、本物達に留守を任せてぬいぐるみに浮気か?」
「え、何?」
「まぁ良かろう。俺達もやるぞ、ぷりん」
 可愛らしい名を口にすれば、咥えている獅子ぬいよりも遥かに大きく勇猛な獅子が現れる。ここだぷりん、とちょこが前足で床をぺしりとすれば、獅子もといぷりんがそっと寝そべった。
 ふさふさとした鬣は豪奢の一言。しかしそうでなかった頃を思い出すと、今との違い――ギャップというそれで、ついついぷりんへ向ける眼差しが幼子を見守るようなそれになる。
 不思議そうに見つめてくるぷりんの向かい、ちょこはもたれた獅子ぬいのもふもふを背中で楽しみながら、前足でぷりんを撫でてやる。目を細めた獅子の喉から、ぐるる、ぐるる、と嬉しそうな音が響き始めた。
「ふ……懐かしいな、ぷりんよ。てめぇが小せぇ頃は、よくこうして添寝したり面倒見たりしたもんだ」
 てめぇが喜びそうな玩具も用意してな。あの頃のようにこいつなんてどうだと煌めく物体を転がせば、ぷりんのそれはそれは立派な前足がぐわっと伸びて――、
「ちょこニャンもそーしてりゃ癒しの塊……」
「何か言ったか」
「コホン。イイエ何デモ。てか寛いでる場合じゃないぞ大物!」
「おう、もうやったぞ」
「早!?」
 そういえば。ちょことぷりんが寝転がって戯れていた物体――あれが妙に気になってはいたのだ。まさかその煌めく物体が宇宙の幼生で、溢れる魅力で人類を陥落させてきた猫科パワーにより無残な姿になるとは。買ったばかりの玩具が即日破壊された飼い主の気分だ。
(「おかしい、さっきまで癒しの塊としかいえない光景が広がっていた筈……!」)
 ちょこニャン、恐るべし。気付かれぬようごくりと唾を飲んだ伊織に対し、ちょこは獅子ぬいを獅子と挟む形でごろごろ、ころり。
「てめぇもとっとと片して抱枕と添寝しろよ」
「誰がんなコトするかー! ぴよこーっ!! 亀ーっ!!」
 たっぷり得た癒しぱわーへぬいぐるみに重ね見た彼らへの愛も籠めれば、狂気も呪詛も何のその。風切と共にぶん投げたハニワズが地下室をぎゅんぎゅん翔る。それはブーメランのようであり――そして、宇宙の幼生を容赦なく薙ぎ倒しながら砕いて廻った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
はい。現場より、戦場傭兵クロトです。
物心ついた時から戦場育ちなので、実はぬいぐるみの良さとか全然分かっていません。
いつぞ、水族館でぬいぐるみをこれでもか!とぎゅうぎゅうしてる姿を見た事はありますが、
まぁ手触り良いんだろうとか、フカフカなんだろうとか思ったくらいで。
サメだけに。

…じゃあ、抱えてるのは何かって?
ジンベイザメですが何か!?

僕もいい歳ですしぬいぐるみに頼って何とかしようとか柄でないにも程があることくらい重々承知してますがこれが案外抱き枕としては優秀というかそれ以外にもなかなか用途があって便利だったりしてって自前ですが問題でも?(※ノンブレス

えぇい、お前など代わりになるかー!(幼生へUC



 本日もアポカリプス・ヘルは世紀末です。
 しかし現場はどうでしょうか?
 ではここで現場の猟兵さんと繋ぎましょう。もしもーし?

「はい。現場より、戦場傭兵クロトです。今、噂の地下室に来ています。ずっと閉め切られていたようで空気は淀んでおり、直視する事を止められるであろうスチールラックがいくつも並んでいますね」
 ですが足場、視界共に問題なし。スチールラックが戦う時邪魔になる? いえいえそんな。あれも、用意してきた得物と組み合わせ上手く使えばちゃんと“使える”――なんてクロト・ラトキエ(TTX・f00472)が“ここで立ち回る時”を当たり前のように考えてしまうのは、物心ついた時から戦場に身を置いてきたからだ。
「育ちも戦場ですし? 実はぬいぐるみの良さとか全然分かっていません」
 偽るのではなく真実を告げたクロトの眼差しは、地下室へ来る前から両腕で抱えていたものへと注がれる。
 良さは、全然分からない。分からないが、いつぞや訪れた水族館でサメのぬいぐるみをこれでもか!とぎゅうぎゅうしている姿を見た事があり、相手の様子から手触り良いのだろうこと、フカフカ――サメだけに――なのだということは分かっている。
 では、今抱えている物は何か?
「ジンベイザメですか何か!?」

 くわっっっ!!

 地下室いっぱいに、とても良い滑舌による大声が響いた。今のでとろとろと近寄っていた狂気が一斉に押し流され遠ざかったのでは、というほどに見事な大声だった。
「僕もいい歳ですしぬいぐるみに頼って何とかしようとか柄でないにも程があることくらい重々承知してますがこれが案外抱き枕としては優秀というかそれ以外にもなかなか用途があって便利だったりしてって自前ですが問題でも?」
 円な目、ぱかっと薄く開いた口、爽やかな青色を彩る星屑のような白い水玉模様、そしてそして183.7cmが抱えても大満足のサイズに抱き心地とこれはジンベイザメだからこそぬいぐるみだからこそ発揮される魅力でありつまりつまり――!
「えぇい、お前など代わりになるかー!」

 硬いし狂わせるから売れないし碌なもんじゃない!
 ノンブレスの後に一瞬だけきらりと見えた糸の軌跡が、宇宙の幼生と呼ばれた物体を切り刻めばガラカラガシャアン、と繊細な音が響いて――宝石の骸が、床を埋め尽くす。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月19日


挿絵イラスト