4

アポカリプス・ランページ⑫〜掴まってみな、飛ぶぞ

作者：西灰三

●
　スーパー戦車はその名の通りスーパーな戦車である。だがその思考というより精神年齢は子犬に近い。というか子犬。そして大体にして子供ってのは容赦がない、子供が純粋とかそんなのは都合のいいまやかしである。
「ちょっと待て、よせ、俺はレイダーだぞ！　うわあああ！？」
　今も割と罪がありそうなレイダーが掴まってカプセルの中に入れられて、スーパー戦車自前の大砲で撃ち出された。それは地平線の果ての荒野に激突すると、中のレイダーは骸の海に帰った。スーパー戦車は次の実験台を探しつつ、キュルキュルと直進するのであった。

●
「アポカリプスヘルのオブリビオン・フォーミュラ、フィールド・オブ・ナインの一体のスーパー戦車のいるポイントへの道が開けたわ」
　水元・芙実（スーパーケミカリスト・ヨーコ・f18176）は猟兵達に向けてまずはそう説明する。
「アポカリプス・ランページはフルスロットル・ヴォルテックスを倒せば終わるんだけど。まだ余裕のある内に外のフィールド・オブ・ナインも倒しておきたいしね」
　そして現在手の届く所にいるのがスーパー戦車ということである。
「それでこのスーパー戦車なんだけど……性格が子供なの。そしてオブリビオンだから生きてるものに容赦はしなくて……実験台といって猟兵とかを捕まえてカプセルに閉じ込めて遥か彼方に撃ち出しちゃうの。どれだけ飛距離が変わるかなって……紙飛行機飛ばす感じね、材料は猟兵だけど」
　とても迷惑である。
「でね、捕獲から逃げるのも難しいし、地面に着弾するとダメージも大きいし何より戦闘領域から100kmくらい離れた所に飛ばされちゃうから帰ってくるのも難しいのよ。よほど重ければ別だけど。どうすればいいかと言うと空中でカプセルを破壊して頑張って飛び出せば、途中でなんとか帰って来られるの。カプセル自体は硬いけど壊せない程じゃないから威力が高い攻撃ならなんとかなるはずよ」
　ただし慣性の法則は残っているので、飛び出した時も相応のダメージを確保する必要があるだろう。
「帰って来られればスーパー戦車はちょっと喜ぶみたいだから、その隙に一発大きいのをかましちゃって？　あ、そうそうカプセルは透明だから高所恐怖症の人にはオススメしないわ。それじゃよろしくね」

第1章 ボス戦 『スーパー戦車・エクスペリメントモード』

POW   :    ピースフル・キャプチャー 【邪悪な好奇心】を籠めた【捕縛兵器】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【行動自由度】のみを攻撃する。 SPD   :    ホーミング・キャプチャー 【誘導式捕縛兵器】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。 WIZ   :    キャプチャー・フラッド 【捕縛兵器の発動】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【キャプチャーマシン】で囲まれた内部に【大量捕縛兵器】を落とし、極大ダメージを与える。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●
「無邪気に残酷なのは、まさに子どもよな……」
　馬県・義透（死天山彷徨う四悪霊・f28057）は遠くにあってもまだ大きく見える鉄の塊を見てそう呟く。体の大きな子供が相手とかろくなことにならない。おいたを懲らしめるために火力の高いこの人格が出てきたものの、簡単にはいかなさそうである。
「さて、わざと捕まって……おお！？」
　スーパー戦車から透明な何かが射出されたかと思うと、義透の体がその中に閉じ込められ、持っていた槍を地面に取り落してしまう。カプセルの中に閉じ込められた彼がスーパー戦車のアームで拾われると、砲の中へと放り込まれる。
「……少し楽しみじゃ……の！？」
　音速を超える勢いで撃ち出される義透。透明なカプセルからは凄まじく風景が過ぎ去っていく様子が見える。
「面白がってる場合じゃないの。はあ！」
　霊障を腕に込めてカプセルを内側から破壊して穴を空ける、そして手の中に影を作り出し、そこから霹靂を呼び出してその尾にしがみつく。
「耐えてくれよ！」
　未だ残る勢いに引っ張られながらもなんとか耐える霹靂。勢いに耐えきった所で軽業の如くその背に乗ると、一気にその翼をはためかせる。
「さあ次はこっちの番よ！　とくとわしの一撃見るがいい！」
　高速で霹靂を飛ばし、落とした黒燭炎を拾い上げてそのままその一撃をすれ違いざまにスーパー戦車へと叩きつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●
　轟音を放ちながら荒野を進む鋼の怪物、その前にはとても小柄な少女、というか幼女が一人。コトト・スターチス（バーチャルネット辻ヒーラー・f04869）である。もっともバーチャルキャラクターなんで実年齢とかはなはだ怪しくはあるのだけれど。
「ふぇぇ、ぼくはフィギュアじゃありませんっ」
　で、あっさりと捕まった。シナリオがシナリオならとてもここには書けないような事になりかねないのだが、割とガチ目のシナリオなのでそうはならず容赦なく撃ち出された。子供だからね、仕方ないね。
「きゅぅ……はっ！？　このままではダメですっ！　へんしんっ！」
　彼女が変身したのはとってもあざとい猫耳付き天使の姿、手にしたメイスで内側からカプセルを殴る姿は可愛らしいが、威力はヤバメ。殴りヒーラーだったらしい。
「えーいっ！」
　小さく空いた穴から飛び出して、そのままスーパー戦車の頭上にまで上がってから急降下。
「お仕置きですにゃー！」
　すごいファンシーなメイスの一撃がスーパー戦車に突き刺さると、なんか大きな星がグルグルと回っていていた。どうやらピヨり効果もあるらしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●
「要はワザと捕まってびっくりするような方法で抜け出せ、と」
　森宮・陽太（人間のアリスナイト・f23693）はスーパー戦車の前で口元に手を当てて考えている。ぶっちゃけ隙だらけなのだが今回の作戦においてはあんまり関係はない。というかそれ自体が彼の考えた作戦の内ではある。
「捕まえられるもんなら捕まえてみやがれ！」
　そんな事を言われなくてもスーパー戦車くんは好奇心の塊なので問答無用で捕まえられて撃ち出されるのだけれど。しかしもちろん想定内。
「戦の種を蒔きしハルファスよ、我が身体に宿り、その無限の武装を以てこの場を制圧せよ！！」
　翠玉色の女性、つまり人ではない悪魔の姿になり二本の槍を抱えてカプセルを内側から貫き破壊する。もちろん一突きでは通らないが幾度も繰り返せば破れる。
「つっ！　だけどな！」
　腕にかかる衝撃を我慢して、はるか彼方に存在するスーパー戦車に突撃する。驚きながらの反撃大砲を掻い潜って二つの穂先を突き刺した陽太は離れながら呟いた。
「どうだ、驚いただろ？」

大成功 🔵​🔵​🔵​

●
「待って、これ飛ばされるの確定なの？」
　自分の前でどんどん飛ばされていく猟兵達を見送っていた荒谷・つかさ（逸鬼闘閃・f02032）がルールを再確認する。
「……面倒ね、空中の移動手段は限られるんだけど」
　とりあえず大人しく捕まって飛ばされておくつかさ。まあここで頑張って回避しても得られるものはないし。
「……さて」
　とりあえず飛んでいくカプセルの中で破壊すべきポイントを裏拳で軽く叩いて確かめたあと、拳を引いて思い切り叩きつけるとパリンと割れる。オブリビオン・フォーミュラを殴れる怪力なら、このカプセルだって簡単に破壊できるのである。……スーパー戦車もオブリビオン・フォーミュラではある。そして落ち着いた様子で拳の装甲を確認する。
「セットアップ完了」
　彼女がスーパー戦車に向けて拳を向けるとそれがドリルとなり、さらにジェットを吹き彼女の体を連れてオブリビオン・フォーミュラの元へ飛ぶ。
「ぶち抜けッ！」
　金属同士がぶつかり合う音が鳴り響き、つかさの体がスーパー戦車の背後に着地する。つかさは揺れるスーパー戦車の巨体を振り返る。
「何となくだけどドリルとかも好きそうね」
　その真偽はわからないものの、とにかく相手はドリルの衝撃を受けているのは確かなようであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●
「戦車はわんこなんだって、まつりん」
「え、わんこなの！？」
「e3828fe38293e3828fe38293efbc81」
　木元・祭莉（マイペースぶらざー・f16554）と木元・杏（焼肉処・杏・f16565）の兄妹の見上げる先でスーパー戦車がよくわからない音を出している。
「……でっかいわんこ」
「よく見ると、散歩用のリード付けてる！」
　大きな番犬みたいものだろうか。正直これの飼い主であると思われるマザーコンピューターはそこまで考えてないと思う。
「とゆーわけでダーッシュ！」
「待ってよアンちゃん！」
　彼らにはスーパー戦車が本当に犬のように見えるらしい。
「さあ！　一緒に！　あーそびまぁぁーーああああ！！？？」
　杏、空へ。
「あっ、アンちゃん先に行っちゃった、追い付かなきゃ♪」
　祭莉はすぐ近くで自分が装填されるのを楽しそうに見ながら、砲口から見える空に目を輝かせている。
「これが人間大砲！　母ちゃんに聞いたことある、昔流行ってたんだって！」
「e381b8e383bce38081e3819de383bce381aae38293e381a0e383bc」
「じゃあ、木元祭莉、いっきまーす！」
　祭莉も空へ。一方その頃先に空の旅へと出発した杏はというと。
「！！！高ぁーーーーーー☆〇×△■×※！！！」
　高所恐怖症の人はやめとけと言ったでしょ！　ともかく彼女はこの状況から脱しようと手足をぶんぶん振り回す。するとカプセルが耐えきれずに破れてしまう。カプセルがやわいのではない、彼女の力が強いのだ。そして、落ちる。
「あー！？」
「あ、アンちゃんだー」
「たあっ！！！！」
　今、何が起きたのかを説明しよう！　落下中の杏の下に偶然祭莉の入ったカプセルが来たのでそれを思い切り蹴りつけて速度を落としたのだ！　なおカプセルは岩に衝突した。
「………ふう」
　尊い犠牲の上に杏は生き残った。彼女としてはただ遊んであげようと思ったのにひどい目に合わせたスーパー戦車を許すわけにはいかない。
「突撃！」
　うさぎの人形を引き連れてスーパー戦車の元へと驀進する杏。そして
「ふう、死ぬかと思った」
　あ、祭莉生きてた。
「アンちゃんもうあんなところまで……急がないと！」
　白い炎に彼の体が包まれると、あっという間に彼女を追い越してスーパー戦車に先に拳で勢い良くタッチする祭莉。
「おいら１着ー♪」
「……なんかずるい」
　戯れてますけど戦闘中ですからね？

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●
「ああ、ガチャッと回してポンと出る的な」
　校閲済みのセリフを吐きながら月夜・玲（頂の探究者・f01605）はなぜか深く頷いている。
「カプセルだけじゃ無く、ビー玉だったりキャップだったり飛ばしたくなるよね……。分かるよ……」
　本当に宇宙船世界の住人なのだろうか、と少々疑問を残しつつあっさりと捕まる。シンパシー故だろうか、だとするならば心は少年なのかも知れない。そして思い切りカプセルとともにその体が宙を飛ぶ。
「偽書・焔神起動。断章・機神召喚の章の閲覧を許可。術式起動」
　彼女が巨大な機械の腕を召喚して自身を捕まえさせようとする、しかしヤバめの速度を捕まえるのは並大抵の事ではない、いうなれば素手で銃弾を受け止めるような所業である。
「相対速度……よしっと」
　まあ彼女超人なんですけどね。多分猟兵だと割とそれくらいの事できそうなのは多そうである。機械の腕が地面に着地すると同時に、彼女の入っているカプセルをバネの要領でスーパー戦車の方へと投げ返した。
「まさかカプセルがそのまま帰って来るとは思わないでしょ？」
　カプセルとスーパー戦車の衝突、そして慣性の法則によって飛び出した玲の双剣が深く敵を切り開くと、そのまま反対側にまで貫通する。
「ま、こんなところかな。こんな性格の戦車作るとか、ちょっと興味あるかな。一応神様らしいしね」
　そう言って彼女は剣を収めると次の戦場へと旅立つのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年09月15日