アポカリプス・ランページ⑩〜出撃!あったかご飯テロ!
「集まってくれて感謝する。皆の中にはアポカリプスヘルでの戦いに連日身を投じている者もいるだろう――お疲れ様、そしてありがとう」
仙堂・十来は集まった猟兵達に一礼すると、広げたアポカリプスヘルの地図の一点を指差した。
「そして『ヒューストン宇宙センター跡』……ここに、不眠不休の戦いを繰り広げている人々がいる。それも邪神ポーシュボスに精神を支配され、狂気に囚われて邪神のための研究を続けさせられている『被害者』が」
ヒューストン宇宙センター。
かつて文明崩壊以前、アメリカ航空宇宙局によって有人宇宙飛行の研究と管制が行われていた宇宙センターの跡地。
無論、文明崩壊によってその研究成果は放棄され、アポカリプスヘルでは人類の宇宙への夢は潰えた。
だが、それに目をつけたのが邪神ポーシュボスであった。宇宙に関する研究は、とんでもない理論の飛躍と回り道、それに至るための狂気を必要とするが、邪神とも繋がりを持つ分野である。
ゆえに未だ残る研究員を洗脳した邪神ポーシュボスは、オブリビオンを『超宇宙の恐怖』によって変異させ、超強化するための研究を行わせているのだ。
「というわけで、皆に頼みたいのは彼らの解放――相手は一般人だ。戦闘によらない方法で頼みたい」
十来は足元に積んであったダンボールの一つを開いてみせた。
人参。
じゃがいも。
ピーマン。
たまねぎ。
――とにかくいろんな野菜がぎっちり詰め込まれている!
「もちろん野菜だけじゃない、肉も魚も調味料も調理道具もある。もしいいアイディアがあれば、皆からの持ち込みも歓迎だ」
にや、と十来は悪戯っぽく笑って片目を閉じる。
「『飯テロ』という言葉があるだろう。狂気は理性、だが食欲は本能だ」
なんかすごい理論、もしくは屁理屈が解き放たれたような……!
「しかも不眠不休での研究のさなか、差し入れられるあったか手料理。これに抗える研究員がいるだろうか」
ある意味こっちの方が邪悪なような……!
「題して『あったかご飯テロリズム』作戦だ。研究員達を蝕む狂気を払い、さらに食事によって体力と正常な判断力の回復を目指してほしい」
よろしく頼む、と笑顔のまま、けれど幾分その表情を引き締めて猟兵達を見渡すと、十来は深く一礼したのであった。
炉端侠庵
お久しぶりです。炉端侠庵です。
『アポカリプス・ランページ』、参戦に来ました!
こちらはヒューストン宇宙センター跡にて、狂気に蝕まれ不眠不休で邪神のための研究に勤しむ研究員達を救い出す依頼です。
プレイングボーナス条件は『研究員の狂気を取り除くこと』。
今回はその手段としてご飯の準備を用意しました!
レッツ飯テロ。本能はきっと狂気に打ち勝つ!!
研究に熱中している研究員すらも誘い出せるような工夫があれば、さらに効果的だと思います!
もちろん担いでお皿の前に連れてきてもOKです。研究員達に戦闘力や武装の用意はありません。
というわけで、よろしくお願いいたします!
第1章 日常
『猟兵お料理教室』
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POW : 下ごしらえなどを頑張るぞ
SPD : 調理や味付けを行って料理を完成させる
WIZ : レシピなどを集落の主婦に広めよう
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
栗花落・澪
【料理】なら大得意だよ!
不眠不休なら体力も落ちてる可能性あるから
食べやすいようにコンソメスープ作ります
足りない材料だけ僕の方で持ち込み
咀嚼しやすいよう野菜は気持ち小さめに
お肉も柔らかな鶏肉を選ぶ
空き部屋のテーブル等をまるでパーティー部屋のように並び替えて
スープを並べてから部屋中に【破魔】と花園を満たす【指定UC】
研究員さんが立ち入った瞬間狂気を【浄化】できるように
よし、でーきた
あとは…連れて来るだけだね
研究員さんの視界に顔を割り込ませたり
使っているものをひょいっと没収したりしてこちらに気を向けさせ
にっこり笑顔でお誘いします(【誘惑】)
あのね、皆に食べてほしいものがあるんだ
一緒に来てくれる?
大宝寺・朱毘
長時間ろくな食事も摂取せず作業を続けているなら、胃腸も相応に弱っているはず。多種多量の野菜が用意されているというのは僥倖、胃腸への刺激の少ない野菜のスープあたりを作ることにする。
「胃に優しいっつったら、何だ? 大根は鉄板として……あとは豆腐、人参あたりか?」
食材を普段より細かめに切り、鍋に投入。ぐつぐつと沸騰し始めたところで味噌を投入、溶かし込む。ゆっくりじっくり煮込み、食材が柔らかくなるように。
さらに、すり胡麻をどさっと入れて栄養価と香ばしさをアップ。
「料理についちゃプロってわけじゃねーから、絶品ってわけにゃいかんけど……」
飲んでほっこりしているところ、なし崩しに休ませてしまおう。
荒廃したアポカリプスヘルに、劣化や破壊の痕は漂わせつつも文明崩壊以前の姿を僅かに残すヒューストン宇宙センター。
けれどそこで行われている研究は、人類と科学の可能性を突き詰めた宇宙への冒険に向かうものではない。
ただ、外宇宙からの恐怖によって、オブリビオンを強化するためだけのものに成り果てた研究を、けれど研究員達はひたすらに、ただひたすらに繰り返している。
邪神ポーシュボスの狂気に導かれて――。
――その狂気に支配されているはずの宇宙センター跡に、ふんわりと柔らかな料理の香りが漂い始めていた。
「不眠不休なら体力も落ちてる可能性があるからね!」
栗花落・澪がとんとんとんと軽やかな音と共に包丁を下ろすたび、小さめサイズに切られた野菜がまな板の片側に小さな山を作っていく。料理なら大得意、と言った彼の言葉通り、一切の淀みない手付きだ。
卓上用ガスコンロにはもう鍋がかけられていて、火が通るのに時間のかかる根菜や出汁の出る鶏肉に玉ねぎは投入ずみだ。ことことと野菜の煮えるいい香りがふわりと広がる。
「長時間ろくな食事も摂取せず作業を続けているなら、胃腸も相応に弱っているはず。胃に優しいっつったら、何だ?」
パーティ会場のように並べたテーブルの、澪が使っているのとは少し離れた一つで同じように鍋を卓上コンロに乗せているのは大宝寺・朱毘だ。
「大根は鉄板として……あとは豆腐、人参あたりか?」
やはり細かめに刻んだ野菜を鍋に入れ、味噌を投入してやはりゆっくりじっくりと煮込む。澪が調理に使っているテーブルからはコンソメの香りがし始める間に、朱毘はせっせと胡麻をすりおろしていた。味噌味のしっかり沁みたところにどさっとたっぷりのすり胡麻を入れてかき混ぜれば、香ばしい匂いがふわりと漂う。香りだけでなく栄養もたっぷりだ。
「料理についちゃプロってわけじゃねーから、絶品ってわけにゃいかんけど……」
いやでも実際こういうのである。
朱毘の味噌煮込みの野菜スープ、そして澪のコンソメスープ。くたくたになるまで煮込んだ具材に味噌とコンソメがそれぞれ沁みて、身体の芯まであったまる。
うっかり晩飯を食べ忘れた挙げ句に徹夜した朝とかってまさにこういうのがほしいのだ。
さて、料理が出来たなら仕上げは――会場の飾り付け。
「貴方の闇に、希望の輝きを……シエル・ド・レスポワール!」
ユーベルコード『心に灯す希望の輝き』、それはこの世のものとも思えぬような美しい天上世界の花園を作り出し、破魔の光を降り注がせて部屋全体を浄化の空間にするもの。輝きと共に変わる光景に、おお、と朱毘が感心したように眼鏡の奥の目を瞬かせた。
「よし、でーきた。あとは……連れて来るだけだね」
「じゃあそっちは任せる。コンソメスープも取り分けておいていいか?」
「あっありがとう、お願いします!」
きらっきら笑顔の澪に研究員の誘導は任せて、朱毘はその間に椀にせっせとスープをよそっていく。研究員達が誘導されてきたら、考える暇も与えず渡す準備は万端。
でもってその間に、澪は目を血走らせた研究員達が詰め込まれている研究室に、臆することなく足を踏み入れていた。
「あっそれは!!」
ひょいっと資料らしき紙を取り上げて注意を引いたかと思えば、パソコンと研究員の間に笑顔を割り込ませ――土気色になりかけた顔の研究員達の視線を一気に集めると、胸の前で手を組み合わせて澪は彼らに満面の笑顔で呼びかけた。
「あのね、皆に食べてほしいものがあるんだ。一緒に来てくれる?」
小さく首を傾げれば結んだ琥珀色の髪が揺れ、同じ色の瞳が小さく揺れる。その愛らしいお願いに、邪神の狂気であろうと抗えるものだろうか――否、だ。
「はーい」
「それじゃちょっと行くか……」
「そういやずっと栄養バー食ってた」
「俺は栄養ドリンクだわ……」
ぞろぞろと澪の後ろについて歩く、半ばゾンビのような状態の研究員達。なにせ「大得意」な料理の10倍くらい得意なのが『誘惑』な澪である。そしてとりあえず一時的にでも引っ剥がして、空き部屋に連れ込めば――。
「!? お、俺達は何を……」
「あれ、一体何をしていたんだ? なんの研究を……」
ユーベルコードの効果で狂気が浄化されたところに漂ってくるのは美味しそうな手料理の香り。
「はい、コンソメと味噌とあるから好きな方取ってねー」
落ちた体力でも食べやすいようにとスプーンを添えて、次々に朱毘が2種類のスープを配っていく。
「お、おおお料理だ!」
「ま、まともな飯だ! スープだ!」
「手作り!? 手作りか!?」
「すげえ……実家出て以来のまともな料理だ!」
「いやお前はちゃんと自炊しろよ……う、うめえ!」
「あー、沁みる……コンソメが身体に沁みる……」
「こっちのミソスープもいいぞ……日本食は身体にいいって言うもんな……」
「すいませんお代わりいいですか?」
「もちろんどうぞ、食べたらゆっくり休んでくれ」
「はーい」
「コンソメと味噌とどっちがいいかな?」「りょ、両方とか駄目……?」
「大丈夫、OKだよ!」
「わぁああ!!」
配膳したり、食べ終わったまま寝落ちした研究員から澪が椀とスプーンを受け取って朱毘が部屋の隅に寝かせていったりと忙しく動いているうちに――いつしか部屋の中には、穏やかな寝息がいくつも響き始めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
青葉・颯夏
セフィリカさん(f00633)と
そうですね……こっちに来てもらうならにおいで釣ってみません?
まずは串に刺したお肉をバーベキューソースをつけながら焼いて
他にはカレーもいいかしら
あとは甘いもの、キャラメルポップコーンと焼きマシュマロもつけますね
いい感じににおいがし始めたらセフィリカさん、うちわであおいでもらえますか?
……ええと、研究員さんたちにちょっとでもわかってもらえればいいな、って
できあがったらひととおりセフィリカさんに渡して食べてもらいます
美味しいにおいと満面の笑顔で食べる美女
誘われないわけないですよ
こっちに来てくれた人には順番に、希望のものを渡しましょう
セフィリカ・ランブレイ
颯夏(f00027)と!
飯テロで気付けかあ
私、料理できない訳じゃないけどレシピ通りには作れる位
旅のテク活用して狩ったのを〆るとかはどうしても雑になるし
颯夏、いい感じの献立とかない?
お、バーベキューにカレー
焼きマシュマロまでついてくると!
あ、手伝う手伝う、細かい所はともかく下準備位はね
でも見て楽しい匂いでも楽しい
いいチョイスじゃん、流石颯夏!
お嫁に来てもらいたいくらいだよ
美味しいご飯ができたなら、相手の前で誘いをかけて私も美味しく食べる!
勿論匂いやバーベキューの気配も積極的にお届け
研究に没頭して疲れた頭でこの誘惑に勝てるかな?
私は無理だね!
『実感こもってるわ』と、シェル姉…相棒の魔剣はぼやいた
さて、研究に夢中になった研究員は主に2つのパターンに分かれる。
1つは先程のように、食事をまともに取らないタイプ。
そしてもう1つは、カップ麺やレトルト食品などでひたすら腹だけ膨らませてエネルギー補給するタイプである。
「飯テロで気付けかあ……颯夏、いい感じの献立とかない?」
狩ったのを〆るとかはどうしても雑になるし、と呟いたセフィリカ・ランブレイ。多分それは料理とサバイバルがイコールになるやつだ。
「そうですね……こっちに来てもらうなら匂いで釣ってみません?」
眼鏡を上げて青葉・颯夏はそう応える。ちなみにこちらは場所は思いっきり研究室前の廊下だ。結構広いので通行の邪魔にはならない。
「まずは串に刺したお肉をバーベキューソースで焼いて、他にはカレーもいいかしら」
「お、なるほどバーベキューにカレー!」
「あとは甘いもの、キャラメルポップコーンと焼きマシュマロもつけましょう」
「おお! 見て楽しい匂いでも楽しい、いいチョイスじゃん、流石は颯夏!」
早速ダンボールから食材を取り出して調理にかかるセフィリカと颯夏。主にバッと切るとかガッと炒めるとか、ざくっと火を入れるとかその辺りがセフィリカの担当で、薄切りにするとか火加減を見ながら煮込むとか、あとバーベキューソースをタイミングを見て塗るとかが颯夏の担当だ。ソースをつけた肉は片っ端からセフィリカがひっくり返していくという完璧な分担がここにあった。
「いやーやっぱり颯夏はチョイスもいいし手際もいいなぁ、お嫁に来てもらいたいくらいだよ」
「え、えっと……」
国内事情により半ば出奔状態だけどエルフの国の正当なる姫君にそう言われて、一応王子様のジョブを持つ颯夏はちょっとだけ困ったように首を傾げた。
お姫様に嫁入りする王子様、ちなみにどちらも二十歳のレディ。いいと思います。
「あ、セフィリカさん、うちわであおいでもらえますか?」
「ん、うちわ?」
「ええと、研究員さんたちにちょっとでもわかってもらえればいいな、って」
「あ、なるほど! じゃあちょっとドアも開けて……っと」
そうっと開いたドアの隙間に料理の香りを流すように、ぱたぱたとセフィリカが鍋の上や串焼きの肉の上を扇いでいく。その隣で颯夏が、炙ったマシュマロの様子を見ながらポップコーンに熱々のキャラメルソースを絡めていく。
カレー、バーベキュー、キャラメルポップコーン、マシュマロ――美味しい香りが研究室の中へとゆっくりと流れていく。
いかに好きでも、どれほど美味しくても、同じインスタント食品やカップ麺の組み合わせは飽きるもの。今こそ狂気に侵されて味も何も気にしていないだろうけれど、本来食べることが好きな者であれば耐えられるわけがない。
しかも。
「美味しい匂いと満面の笑顔で食べる美女、誘われないわけないですよ」
ふらふらとドアから出てきた研究員達に、作戦成功と颯夏が頷いた。
「いやー研究に没頭して疲れた頭でこの誘惑に勝てるかな?」
隣では美女――セフィリカがものっすごく美味しそうにカレーとバーベキュー串を交互に頬張っている。
「私には無理だね!」
凄まじい説得力だった。なにせまさに美味しそうに食べている真っ最中なのである。
実感こもってるわ、とぼやいたのは、セフィリカがシェル姉と呼ぶ相棒、意志持つ魔剣シェルファであった。
「はい、好きなものお取りしますからこっちに並んでくださいね」
その間に手際よくカレーやポップコーンを盛り付けていた颯夏が、あったかい手料理とセフィリカの食べっぷりに釘付けだった研究員達に呼びかける。
「で、では俺はカレーを……」
「あの、カレーとバーベキュー両方でもいいですか」
「はい、もちろんですよ」
「あっじゃあ俺も串焼きも追加で!」
「ぽ、ポップコーンとマシュマロお願いします! 甘いもの……!」
「わかる! 熱々の甘いものって美味しいよねぇ」
「ええ本当に!!」
「あ、あの、全部盛りで……」
「私も!!」
「僕もお願いします!」
「俺もで!!」
「と、私も手伝うよ颯夏!」
「あ、ありがとうございますお願いします……!」
次々に入る注文に、食べ終わったセフィリカも颯夏と分担して盛り付けに加わる。カレーにバーベキュー串を乗せ、ポップコーンのカップに焼きマシュマロを乗せてせっせと配っていく。
やがて、お代わりも含めた研究員達の列がすっかり捌けた時には。
研究室は渦巻いていた狂気ごと空になり、解放された研究員達が久々の休息に穏やかな寝息を立てるのだった――。
大成功
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