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アポカリプス・ランページ⑮〜恐れよ、その姿

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ #アポカリプス・ランページ⑮ #恐れるな、恐れよ、恐れて良い

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#アポカリプス・ランページ⑮
#恐れるな、恐れよ、恐れて良い


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●恐れよ、その想い
 誰が呼んだか、『死の草原』とあまり光栄とは言えない呼称のついたそこは、大都市として栄えた面影もなかった。常に深く、濃く、あらゆる命を飲み込む黒い炎に覆われるだけで。
 いかな炎使いにも消せぬ黒色は、真闇にあっても燃えているのがはっきりと見え、どれほどの水を喚んだとしても色褪せない。まるですべてを拒絶するかのように燃え続ける。
 けれど、かれらは手招くのだ。
 言葉さえ死した誘いに乗って足を踏み入れれば、黒が来訪者へ纏わり付く。
 願ってもない獲物だと言わんばかりに。
 仲間になろうと言わんばかりに。
 もしくは単なる好奇心で。
 黒炎から現れる幻影が、来訪者へ『強すぎる恐怖』をもたらす。
 単なる「こわい」ではなく、「おそろしい」を好む炎たちが、戯れてくる。
 そこに、来訪者の恐れるナニカを映し出して。

 それを乗り越えなければ、戦場の攻略は果たせない。
 ホーラ・フギト(ミレナリィドールの精霊術士・f02096)はそう告げた。
 出現するのは、猟兵の知る『恐るべき敵の幻影』だ。幻影といっても、ここでは実体を伴って現れる。つまり呼吸も気配も感じるし、触れることだってできてしまう。
 恐るべき幻影だ。当然、猟兵としては強い恐怖心を持って挑むこととなるだろう。
 しかし強い恐怖心があるままでは、攻撃は全てすり抜けてしまう。
「恐怖を乗り越えての一撃なら、実体ごと幻影を倒せちゃうわ!」
 つまり、恐るべき相手への恐怖を乗り越えて一撃を入れ、消し飛ばすのが目的だ。
「どういう風にアドバイスするのがいいのか、わからないから簡単に言うわね」
 恐怖からは縁遠いホーラが、くるくると目線を動かしたのち、微笑む。
「今の自分をとにかく信じるのも、良いと思うの」
 あのときとは違う、という気持ちは乗り越えるための力となるはずで。
「いっそ、幻影は幻影でしかないもん、って言い聞かせるとか」
 自分を騙せれば瞬く間に恐怖も過ぎ去るだろうが、乗り越える意味では難しい。
「あとは、やっぱり……受け入れてから冷静に対処するのも、いいかもね」
 どこまでも深い恐怖心から逃げるのではなく、受け入れた上でどうするかを考える。
 あくまで方針の例でしかない。本人の気質やユーベルコードなどにもよるため、あとは現地での当人の考えと頑張りに任せることとなる。
「それじゃ、いってらっしゃい! 自分を見失わないようにねっ」
 ホーラはいつものように、笑顔で仲間たちを見送った。


棟方ろか
 お世話になっております。棟方ろかです。
 一章(冒険)のみのシナリオでございます。
 シナリオの性質上、ソロまたはご指定ある方同士のリプレイをお届けします。

●プレイングボーナスについて
 あなたの「恐るべき敵」を描写し、恐怖心を乗り越えると有利になりやすいです。

 棟方が猟兵の皆様の「恐るべき敵」とそれへの対処を描きたいと、それはもうたいへん強く願っておりますので、シナリオの性質から離れたプレイングは、今回の採用を見合わせていただく可能性が高くなります。予めご了承願います。
 それと、あまり採用数は多くならない予定です。
 皆様の恐怖をお待ちしております!
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第1章 冒険 『恐るべき幻影』

POW   :    今の自分の力を信じ、かつての恐怖を乗り越える。

SPD   :    幻影はあくまで幻影と自分に言い聞かせる。

WIZ   :    自らの恐怖を一度受け入れてから、冷静に対処する。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マリア・ルート
恐ろしい敵…敵というか微妙だけど、私がクーデターした時の民の怨念かしら。
姫なのに、国をぶっ潰したんだから、そりゃもう恨まれるでしょ。事実この戦争でそれとも向き合ったしね。

黒い炎の向こうに見えるのは人の影、それらが私に声をかけてくる。
なんでこんなことしたのって。
狂ってしまったのかって。

…私はあんた達を救いたかった。
父様ーーあの暴君はもうあんたらすら殺す気満々だったでしょうから。
だから私は変えたかった。だからクーデターした。あんたらを思っての事だったのよ。

なのに途中で神隠しにあった。伝える機会すらなく、誤解されたまま。

…でもだからって止まるわけにはいかない。
涙と悔しさと共に【指定UC】を放つわ…



 マリア・ルート(紅の姫・f15057)は黒を視る。
 死の草原に延焼した黒ではない。
 マリアの胸裡へ差し込む黒い光が、それを視せていた。
 いつ草原へ足を踏み入れ、炎に包まれたのかももはや覚えていないほど、マリアを支配する色。炎が浮かび上がらせるのは恐ろしい敵。敵、という表現にマリアは顎を撫でつつも、その恐怖へと向き合う。
 ――わかってる。
 自分に何を思い知らせてくるのか、マリアは理解している。
「そりゃもう恨まれるでしょ」
 短く息を吐いて漸く、自分が震えていると気づいた。思い起こすのは在りし日の光景だ。民を、かれらの日々を巻き込んでのクーデターは文字通り国をぶっ潰した。
 どうして、と恨みがましい声がする。
 何故あんなことを、と歎く声が耳から離れない。
 そう、黒炎が映し出したのは、マリアの国の民衆だ。
 マリアが恐れ、マリアが怖がるもの。
 姫様は狂ってしまわれたのか。
 ――ちがう。
 我らの国を壊して何をなさるおつもりか。
 ――壊したかったのは、それじゃない。
 罵ってくるのではなく、何故どうしてと問い詰めてくる感覚。その方がきついと、マリアは慄く。いっそ馬鹿だとか何とか叫んでくれた方が、こんなにも怖がることなく進めただろうに。どちらにしたって、マリアに弁解の機会は訪れないし、かれらの声へ何かを返してすらやれない。
「……私は、あんた達を救いたかった」
 だから炎へ語りかける。
「父様……あの暴君はもう、あんたらすら殺す気満々だったでしょうから」
 マリアを四囲する黒き民へ、そう話していく。
「だから私は変えたかった。だからクーデターした。あんたらを思っての事だったのよ。なのに……」
 青褪めながらも、冷えきった片腕をあげることは忘れない。拳を、意思を突き上げて進むことをマリアは忘れなかった。
 だから今も、立ち止まらない。立ち止まるわけにはいかない。霞む視界が民の姿をぼやけさせる。輪郭を歪ませていく。
 だから民を模った怨念を掻き消すように、彼女はユーベルコードを放つ。
 死した草原で見た『夢』の避ける音は、国が崩れていく音に、よく似ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
僕が怖いものといえば…『触手』、かな
以前は理由もわからなかった
漠然と、よくわからないまま、ただただそれが怖くて

でも
カクリヨ戦争の最中
真の姿になって、少しだけ…思い出した
触手は僕のかつてのご主人様が従えていたもの
僕はあの方の影が、怖かったんだと

僕を捕らえようとするそれを必死にかわしながら
思考を、そして視線を巡らせる
恐怖なんて忘れなければ
そのために
僕は、どうすれば

一瞬掴まれた腕を振り払った瞬間
見えたのは左手薬指の指輪

…忘れる必要なんて、ある?
違う
怖いままでも構わない
それでも逃げる必要なんてない
だって僕はもう、一人じゃないから
彼が信じてくれる僕を、僕も信じる

【指定UC】の【破魔】でかき消します



 蠢く影の正体がもしも『それ』だったなら、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は無事でいられないだろう。けれど『もしも』と考えてしまったが最後、彼を取り囲む影は触手と化して伸びてくる。
 怖い、と腹の底から冷える感覚。
 以前の澪には、何故怖いのかがわからなかった。理由も解明せぬまま、こわい、来ないでほしい、触れたくないという感情が先走っていた。漠然と「怖い」ことは、本人の想像以上に身体が恐れるもの。そして澪自身も、その思考に引きずられるように恐怖を増幅させていた。
 ――でも。
 両腕を抱き込んで、澪は乱れた呼吸を整えていく。
 ゆっくりと、深く吸い込めばちりつく火の粉のにおいがした。
 カクリヨにおける戦争で、澪には思い出したことがある。
 ――僕は、あの方の影が……怖かったんだ。
 心が震え、指先まで冷えて固まってくる。凍てつく感覚が支配していくにつれ、澪をくるむのは、かつての主が従えていた触手だ。後ずさろうとしても逃げ場などなく、躱しても躱しても、それは澪をあきらめない。
 ――どうしよう……!
 逃げ道を探して視線を巡らせる。けど、この黒い世界に期待できるものは無かった。
 ――僕は、どうすれば……っ。
 考えろと自らへ発破をかけるも、何ひとつ浮かばない。
 怖い。捕まりたくない。そんな感情が先走ってしまうから、うまく思考を繋ぎ合わせることすらできなかった。
「ひっ……!」
 一瞬、腕を掴まれる。感触にぞっと寒気が走り、振り払った拍子に勢いあまって尻餅をついてしまう。咄嗟に顔の前へ腕を構え、そして気付いた。
 左手の薬指で、きらりと光る指輪に。
 あ、と吐息混じりの声を漏らし、かぶりを振る。
 ――忘れる必要なんて、ある? ……違う。
 怖いままでも、構わない。逃げる必要なんて、ない。
「だって僕は……」
 指輪に触れれば、あたたかさが蘇る。心に輝きが燈っていく。
「もう、一人じゃないから。彼が信じてくれる僕を、僕も信じる」
 宣言は黒炎へ向かってこだまし、清らかな光が幻影を炎ごと消し去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
幻影…依頼『救世猟兵譚~吸血鬼と狩人~』で打倒した自身の宿敵【名も無き神・召還態】
胸の女性が自身の姿に見える幻影


…っ。なるほど、恐怖を掻き立てる幻影、ね

…今、目にしているのは私が辿るかもしれない未来の姿
左眼の聖痕に精神を汚染され、死後も神の器として利用される…

…神の狂信者だった母様が私に刻み、私に望んだ生贄としての在るべき姿だもの

…だけどね。そんな未来が訪れる事は決して無い。私は私だけの力で今、ここにいる訳じゃないもの

…あの時とは違う。たとえ彼がこの場にいなくても、
この胸の熱を忘れぬ限り怒りや恐怖の感情に呑まれたりなんかしないわ

…消えなさい神の幻影。私は必ずや、お前の呪縛から解き放たれてみせる



 声にならぬ悲鳴を噛み締めて、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は辺りを見回した。死のにおいが充ちていただけの場所で、前触れもなく気配が濃くなる。敵意など無かったはずの世界へ、浮かび上がったのは。
「……なるほど……恐怖を掻き立てる幻影、ね」
 リーヴァルディの宿敵だった。
 はっ、と切るように息を吐きながら俯かずに敵を見据える。名も無き神はリーヴァルディの姿を胸に映し出す。偶像めいた胸のそれが、瞬きしただけでリーヴァルディを模した。いや、模したというよりそのもので。
 だからこそリーヴァルディは靴裏を擦りながら後ろへ下がる。
 知っている。理解できている。今リーヴァルディが目にしているのは、いつか辿るかもしれない未来の――『私』だ。
「く……っ」
 左眼が熱い。気が狂いそうなぐらい、眼の奥から頭へ、頭から思考が焼かれていき、今度は喉元まで下りてきた熱に呼吸をせき止められる。このまま汚染されていけば、死した我が身は神の器と成り果てる。それが想像できるから、リーヴァルディは胸を抑えた。
 聖痕がもたらすのは、贄として焼べられる未来だけ。
 母が望んだ、生贄としての在るべき姿がリーヴァルディの恐怖を煽る。ああなってしまうのかと、考えてしまう。ああならなければいけないのかと、想像してしまう。黒炎が見せる幻影は、こうして彼女へ恐怖を植え付けていく。
「……だけどね」
 腹の底まで吸い込んだ息を吐きだし、リーヴァルディはキッと幻影を睨む。
「そんな未来が訪れる事は、決して無い」
 炎は未だ揺らめいたままだけれど。リーヴァルディの声に揺らぎはない。
「私は私だけの力で今、ここにいる訳じゃないもの。……あの時とは違う」
 想起するのは、込み上げる熱を教えてくれた彼の姿。
 この死の草原に、彼はいなくても――リーヴァルディの血となり肉となり、熱は生き続けているから。
「呑まれたりなんかしないわ。……消えなさい、神の幻影」
 ――私は必ずや、お前の呪縛から解き放たれてみせる。
 焔を司る一端が征野を焦がし、黒焔の幻影を溶かしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
説明はちゃんと聞いた、だからソレがどういったモノかもようく分かってる
幻でないなら恐れる敵などいないと言い切れた、のに

ごきげんよう
対峙するのは「あの人」
嘗て覆っていた靄もなく
オレとそっくりな姿、染めぬ銀髪、飾らぬ身なり
そして優しい声で告げる、自分を殺せと
それがオレにとって一番の恐怖だと知っているから

似たような幻とは何度も戦った
同じ様に殺意を向けられたなら乗り越えるのも容易かったのに

肌裂き「柘榴」へ血を与え【紅牙】発動
傷より痛む心を認めて牙を構える
そうだ、それでも約束した
この命の意味を知るまでは、生きると
乗り越える事がソレに繋がるなら
どんな痛みにだって耐えて

何度でもあなたを喰らう、この命尽きるまで



 空は決してやさしくない色で、コノハ・ライゼ(空々・f03130)を見下ろしていた。
 改めて自分は確かめるまでもない。説明は聞いた。そして理解もした。だから。
 ――ソレがどういったモノかも、ようく分かってる。
 長い睫毛が意図せず揺れたのは、コノハを慰撫するためか、単に風を浴びたからか。
 心だけでなく身体が気の所為か、弾む。それで浮き立ちはしないが、笑みも喪くさない。
「ごきげんよう」
 呼びかけ得る声音にだって、コノハの常は在るままだ。いつもの調子で歩を運び、いつもの調子で対峙した『あの人』には、嘗て覆っていた靄もなく。だからこそコノハの眦にも力が篭もる。嗚呼、幻でないなら恐れる敵などいないと言い切れた――のに。
 明瞭な姿を晒す『あの人』は、コノハにそっくりな姿をしていた。それでいて銀の髪はありのまま、飾らぬ身なりだが元の出来栄えもあって、質素と呼ぶには程遠い見目。それが口を開くや、こう告げる。
 自分を殺せ、と。ひどくやさしい声で。
 コノハが飲み込んだのは唾か呼気か。それすら判断がつかないぐらい、微熱のようなものがコノハを襲う。発した熱が恐怖に因るものなら、間違いないだろうとコノハも思えてしまう。
 ――それがオレにとって一番の恐怖だと、知っているから。
 幻と向き合い、戦うのは何も今回が初めてではない。猟兵として様々な事件に関わる以上、その手の話はごまんとある。だが今回ばかりは、コノハの指先がひやりと死に沈んでばかりいた。移ろうのが眼差しだけであれば良かったのに、肌膚へ突き立てた切っ先さえも惑って見えて。
 だからコノハは、柘榴へ思い切り血を与えた。
 どんなに肌を裂いたとて、やまぬ心の痛みを上回りはしないけれど。
 ――そうだ、それでも約束した。
 紅牙が穿つのは、己から出ずる死への色。約束を果たすために、その色を紅で消す。この命の意味を知るまでは、生きると決めたから。
 赤き血潮が、生の色が幻影を断つのなら。薄氷の眼差しはすべてを見届けるように、黒炎を鎮火させて。そしてコノハは告げる。
「何度でも、あなたを喰らう」
 この命、尽きるまで。
 それは呪いとも言える決意だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久遠寺・遥翔
よりによって黒い焔から現れる幻影か。リアルじゃねぇか。
黒い焔の化身。原初の焔。骸魂から黒剣となり、俺と融合したオブリビオン、イグニス。
俺が一番恐れるのはこの力が暴走して俺の手に負えなくなることだった。

だがそれは過去の事。ひとたびの暴走、そして眠りを経て、お前は俺が一番頼りにする相棒になった。
このキャバリアもその力を引き出すための器。今の俺達の力であの頃のお前を乗り越えて見せる。
行こうぜ相棒、こんな荒野は乗り越えてこの世界を救うんだ。

キャバリアに[騎乗]、UCを起動し真の姿、イグニシオン・ソーリスを強引に引き出してオブリビオン・イグニスの幻影を討ち祓う!



「よりによって、黒い焔から現れるなんてな……」
 遍く空を駆る色彩は、晴れ渡っているというのに、久遠寺・遥翔(焔黒転身フレアライザー/『黒鋼』の騎士・f01190)をくるむ炎の色はどこまでも深く、静かな闇を湛えていた。風吹けば音を立てる草原ではない。ここに在るのは、幻影を生み出す悪意の火。そして、この色に恐れる感情だけ。
「嫌になるぐらいリアルじゃねぇか」
 遥翔が吐き捨てたものさえ飲み込んで、黒炎は彼の彩を浄化しようと試みる。
 そこに現れた焔こそ、遥翔が恐れるモノの一端で。
 ――イグニス。
 ほぼ吐息だけで遥翔が名を紡ぐ。呼んだのは黒い焔の化身、言うなれば原初の焔。
 イグニスという響きはどこか柔らかくも堅く、かの名は黒を模った。黒は剣となって遥翔の手を染めあげ、触れた先から敵に、そして遥翔へと染み渡っていく。
 大喰らいだと遥翔は肩を竦め、イグニスを念う。
 もしも手にした焔が誰かを、景色を、思い出を燃やし尽くしてしまったら。それは、人ならざる力だからこそ遥翔が常に抱えていた『恐れ』だった。
 ――俺の手に負えなくなるときが、来るんじゃないかって。
 今は扱える。制御も叶っている。だがいつ暴走するのかは遥翔にも判らない。
 考えが深まるにつれ、イグニスの幻影が彼の心身を貪った。ほら、こうして侵食され、いつまた暴れ狂うか――。
「……っ」
 遥翔は瞼を落とし、腹の底が満たされるまで息を吸う。呼吸をするたび咥内から胸まで焼け付くような感覚が走るも、彼は『過去』を飲み込んだ。ひとたびの暴走も、それによる眠りも経たからこそ、今のイグニスは一番の相棒になった。
 ――今の俺達の力で、あの頃のお前を乗り越えてみせる。
 イグニシオンの光沢はいかな炎にも圧されず、飛び乗った遥翔もフレアライズで死を焼き、イグニシオン・ソーリスへと転身した。
「行こうぜ相棒」
 笑いかければ焔が応じたから、遥翔は誓いを手に、オブリビオン・イグニスの幻影を己が焔で討ち祓った。
 恐怖も荒野も乗り越えて、世界を救う。
 そのために駆ける彼らこそ、悪へと鉄槌を下す正義のフレアライザーだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レザリア・アドニス
恐怖心を煽る黒の炎…ね
黒だけに、そう怖くてもない…かな?

と思ったら大違いだったかもしれない
『恐るべき』ものは、たぶん自分も気づかなかった
それは、常に傍にいる『あいつら』だった
恐ろしい記憶を喚起され、『あいつら』がどんな存在なのか、はっきり感じさせられて
すっかり忘れたか、無理やり忘れたか
それは、かつて自分を飲み込もうとして、この身を奪おうとした存在
なんで、そんなに大事なことを忘れたか?

少し動揺したら
魂の繋がりで『あいつら』の感情が伝えてくる
…うん、わかってるよ
信じる、一緒に生きると決めたら、
もう疑ってはしない、ならない
今はもう『恐るべき敵』ではなくて、大切な者
むしろ、『あなた』しかないの



 夜は友であり、黒も友。歩む道に降るのが闇ばかりだとしても、足を止めることはしなかったレザリア・アドニス(死者の花・f00096)にとって、延焼した死の炎はなんだか落ち着く気がしていた。恐怖心を煽るだなんて。夜の底より昏いものを知っている身には、それほど黒く感じない。
 恐れやしないと踏み込んだ矢先、レザリアは気付く。
「……大違いだったみたい」
 言葉で模ってみたら思いの外、声が響いた。反響した声が再びレザリアの元へ戻って来る頃には、正しく彼女が恐れるもののカタチを成していた。恐るべきもの、なんて。このまま気付かず居られたかもしれないのに。忘却の彼方へ飛ばせていたかもしれないのに。
 死の草原を灼滅する黒炎は、レザリアを逃さなかった。
 喉に痞えた感覚があって、ふと見やれば『あいつら』はそこにいる。
 ずっと傍にいた、離れるはずもない姿が、黒炎によって浮かび上がっていく。
 まざまざと見せつけられ、レザリアの瞳が激しく揺れた。
 なにせ喚起された記憶が彼女自身を蝕むのだ。おそろしい、と感じてしまう情が自らを震わせ、体温を隅から隅まで奪っていこうとする。『あいつら』がどんな存在か、こうして突きつけられるとは思わなかったから。
 ふるえる。けがれる。そまる。うばわれる。
 かつてレザリアを飲み込もうとしたモノ。
 この身を侵食しようとしたモノが、またしても。
 どうしてそれを忘れていたのか。理由など、もはや分からないけれど。
 刺激して、思い出させてくれた死の草原を、そこに浮かぶ存在を睨みつけてレザリアは大きく息を吐いた。
「……うん、わかってるよ」
 動揺が彼女を狂わせかけたとしても。
 魂の繋がりで『あいつら』の感情が伝ったとしても。
「信じる、一緒に生きると決めた」
 もう疑ったりしていないと語りかけた先は、己の中。
 そして目の前の幻影にも続ける。
「今はもう『恐るべき敵』ではなくて、大切な者。むしろ……」
 死霊が騎士と蛇竜になり、レザリアへ絡み付こうとした黒炎を焦がしていく。
 揺れる。あたたかくなる。染まる。でも、奪われない。
 だからレザリアはそうっと目許を和らげて、囁いた。
「今の私には、『あなた』しかないの」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペペル・トーン
暗いところに、海へ引き込むお話の中のセイレーン
どれも私のこわいものだけど
きっと一番は…お話の通りになった私
色鮮やかな緑の夢に染まらない真っ白な私

好意は歌が紡いだ幻想で
温かなものはいつか冷たく沈んでゆく
近づきたいものにさようならを告げて
遠くへ離れるしかない貴方
私はとても寂しがり屋だから
つい手を伸ばしてしまうけれど
誰とも別れたくはないの

あのね、夢浮かばぬ白い貴方
お話の通りにはならないと
言ってくれたお友達がいるのよ
だから私も、信じているの

魚の形を取るのは
貴方に近づくようで
あまり見られたくはないものね
怖くて少しずつ白が溶けていっても
お話の通りにはならないから
大丈夫と言い聞かせて

甘い夢の中で眠りましょう



 ねえ、セイレーン。
 あなたは夢に、どんな味をつけるの?

 透ける片腕は黒炎を映さず煌めくままで、翳すように伸ばしても、それは変わらない。
 ペペル・トーン(融解クリームソーダ・f26758)は大海がしょっぱいと知っている。海に生まれるロマンの味も、海を渡る爽やかでしゅわしゅわっとした弾ける泡の輝きも、昏い海の底に眠る色も、全部ぜんぶ知っている。
 だからこそ黒炎が描いたのは、味も光も色もないペペル自身。
 なにひとつ持てなかった『私』が、まるでお話の中での出来事のように、まっさらなままで居る。瞬く間に引き込まれた海で、色鮮やかな緑の夢を知らぬまま、ペペルの前に漂っていた。
 知らないのは、しあわせ?
 でも知らなかったら、きっと歌だってわからない。
 たとえ好意が歌による幻想だったとしても、あたたかいものに触れぬままペペルはひんやり笑うだけになってしまう。近づきたいぬくもりがあるからこそ、「さようなら」という挨拶の寂しさがわかるのに。離れていく姿へ手を伸ばす、その気持ちがわかるというのに。
 ペペルは美しくも儚い白のセイレーンを、じいっと見つめた。
「あのね、夢浮かばぬ白い貴方」
 呼びかければ、閉ざされていた瞼がゆっくり持ち上がる。
 撫でてあげようとペペルが指の腹で触れてみたら、ふっくりした頬がへこんだ。
 でも、ペペルの淡くてやさしい緑色のひとつも映さない白は、やはり寂しげで。
「お話の通りにはならないって、そう言ってくれたお友達がいるのよ」
 離した手を、今度は祈るように折り畳む。
「……だから私も、信じているの」
 唄うように紡いで、何にも染まらぬ自分へ爪を立てた。やさしいやさしい毒が廻る、とっても綺麗な爪を。
「ふふ、あまり見られたくはないものね」
 ほのかに綻んだ笑みが、ペペルからもしものペペルへ贈られる。
 咲き誇る波の花を思わせる白が、少しずつ溶け出だした。
 ゆらいで、溶けて、最後にはペペルの緑か毒の色を取り込んで、恐るべき白は消えていく。
「大丈夫。お話の通りになんて、ならないから」

 ねえ、セイレーン。
 あなたの夢は甘いから、そこでゆっくり眠りましょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァシリッサ・フロレスク
ッたく
冗談はこの趣味の悪い炎だけで十分だ

なァ
姉貴

異父姉にして、祖父である吸血鬼の領主の近衛兵長を異父兄と共に務め、『血鎖のエルジェーベト』と恐れられた血族最強のダンピール

アタシが
最後に斃した
家族

3mは有ろうかという斧槍を振るい
仇名の所以である、魔力で自在に生成し繰出される血塗られた鉄鎖で数多の敵対者を葬ってきた


穢れた血だと疎まれた幼いアタシにも
唯一、優しかった姉

血の如き紅い長髪を靡かせ、アタシを苛む

『ヴァーシャ、貴女は生まれるべきでは無かった

『最早私には護る者も亡いが

『せめてこの手で終に

HA,我儘なこッた
血は争えないねェ

生憎、まだソッチにゃ逝く予定は無いンでね

ま、葬《おく》るくらいは

UC発動



 無造作に髪を掻いて、ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)は前を見据えた。
「ッたく。冗談はこの趣味の悪い炎だけで十分だ」
 ここは死の原、恐れを招く黒炎たちの根付く場所。
 ヴァシリッサがひとりごちるのも無理はない。何故なら炎が彼女の前へ築いたのは。
「……なァ、姉貴」
 ヴァシリッサが最後に斃した、家族の姿で。
 そこかしこで耳にした勇姿や威厳は、幻影だろうと変わらない。巨大な斧槍を自在に振るい、領主の近衛兵長として、血塗られた鉄鎖で数多の敵対者を葬ってきた、異父姉。たとえ死したってヴァシリッサにとっては姉だ。賛美や称賛を浴び続ける姉は、確かに敵から見れば恐ろしい存在だけれど。
 ――アタシには唯一、優しかったんだ。
 穢れた血だと疎まれたヴァシリッサにも、彼女はあたたかかった。
 そんな姉が、鮮血で洗ったような髪をなびかせてヴァシリッサを苛む。
「ヴァーシャ、貴女は生まれるべきでは無かった」
 己の出生を拒む声は、姉のもの。
「最早私には護る者も亡いが……」
 わずかに外した目線の動きだって、姉がよくしてみせた癖。
「せめてこの手で終に」
 吐息を交えた声音。意を決した面差し。どれもこれもが、間違いなく姉だった。
 はっ、とヴァシリッサは鼻で笑う。
「我儘なこッた。……血は争えないねェ」
 そう告げたところで姉の眉根の寄り方は変わらないが、言う。
 誰よりも強く、血族最強とも謳われた姉を前に、ヴァシリッサは一歩も引かない。
「生憎、まだソッチにゃ逝く予定は無いンでね」
 ならば執行は自らの手で――彼女の浄化の炎が、四囲する黒炎をもざわつかせた。恐怖で侵す黒炎がいかなる熱と深い闇を抱こうとも、浄めるために解き放たれたヴァシリッサの心身を喰らうことは叶わない。ヴァシリッサを飲み込めやしないのだ。恐れという感情も、姉でさえ。
 連ねて彼女は、その炎で幻影を貫く。心臓も命も幻影は持たないのに、身を突き破った感触がヴァシリッサの炎にこびりついた。いつまでも離れなかったが、けれどヴァシリッサは狼狽しない。ただ、霞んでゆく幻影を見届けるばかりだ。
 それでも、葬(おく)るくらいはしてやれるからと。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月13日


挿絵イラスト