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襲来!獣兵団と【戦の鬼】!!

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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「事件を予知したよ……今度は、サムライエンパイアで問題発生だね」
 集まった猟兵達に向けて説明しながら、ホロデバイスから立体映像を投射しつつフロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)はそう切り出した。
 写っている映像の中に居るのはどうも『狸』らしく、海近くの河口や川縁の周囲で何やら大騒ぎしている様子。
 また、映る町の様子を見るにどうも【漁】で栄えている場所らしい。が、街には灰色と形容するほかない重苦しい空気が漂っている。
 もうお分かりだろう……オブリビオンが占領している所為で、街周辺の活気が消えてしまっているのだ。
 このままだと町は潰れるし、此処と商業で繋がっている方々に被害が出かねない――そこで猟兵の出番だ。
 つまり今回の依頼は至極シンプル。
 漁場を占領しているオブリビオン達を一掃し、街に活気を取り戻す手伝いをして欲しいという事である。
「予知通りに行ってしまうと、町が弱体化して乗っ取られるだけじゃなく、また何かしらの手足として使われる事になるから……奴らの拠点作りを阻止するんだ」
 幸い、まだ居付いてそんなに経っていないため、現状の被害そのものは大きくない。だからこそ今の内に叩いてしまえば最小限のまま終わらせられるだろう。
 簡素に説明を終え――フロッシュは〆の言葉を告げる。
「そうそう――事件の起こる場所は釣りの名所でもあるから、街への貢献もかねて釣りに興じてみるのも良いかもね?」


青空
 釣り依頼ですよ……じゃなかった、純戦依頼ですよ皆さん!
 今回は何の奇も衒っていない、OP情報そのままのシナリオです。
 第一章は集団戦――部下のオブリビオン達を蹴散らし、頭目を引きずり出す為の前準備をします。なんかパンダが混じってるけど気にしちゃいけません。
 第二章でボスをぶっ叩きましょう! 場所は水場なので、それを利用するのも面白いかもしれません。
 そして第三章ではのんびりと釣りを楽しむこともできます。特に指定が無い限り、成功・苦戦等の判定とダイスで釣果を決めますので、要望ある方は描き込んでくださいませ。

 ――さあ、オブリビオンの企みを阻止しましょう!
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第1章 集団戦 『狸兵団』

POW   :    狂乱野鉄砲
【仲間がやられた恐怖心】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【弓矢や火縄銃の集中砲火】で攻撃する。
SPD   :    狸兵団突撃
予め【突撃陣形を組む】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
WIZ   :    パンダ混じりの狸囃子
戦闘力のない【子狸応援団(何故かパンダがいる…)】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【戦場に響く賑やかな太鼓の音】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鬼灯・ほのか
「これはこれは、かあいらしい狸さんやねぇ。うち、狸好きなんよ、煮ても焼いても酒の肴にちょうどええ。提案なんやけどええ子やから、おとなしく切られて、煮られて、焼かれてくれはります?」

うちはとりあえず集団でできるだけ孤立してそうな狸から、順番にしめていこか。足を止めず剣刃一閃で通りすがりに切り捨てていきまひょ、狸の飛び道具は「残像」を囮に避けられたりできますやろか?陣形を固められたら動きは読みやすいさかい、外側から少しずつ切り崩していこか。狸囃子は…かわいそうやけど子狸か仕留めていこうかねぇ、ふふ、ああ可哀想かわいそう。



 海、河口、川縁と漁師でにぎわうこの河川も今やオブリビオンの手中に収まり、水より得られる恵が一切立たれてしまっている。
 その事を知ってか知らずか。賑わいは留まる所を知らない。
「ウュン!」
 特徴的な鳴き声を上げ、網を引っ張り、また槍で突きあげる。
 彼等、水場を独占したオブリビオン達……まるで狸を擬人化したような獣の兵団が、元居た漁師のお株を奪う仕事っぷりで次々魚を放り上げていく。
 小さかろうが気にしない。最早無差別だ。
「ウューン!」
「「ウューン!!」」
 刀を振り上げ、槍を振りかざし、御旗を振りたくり士気は上場。この熱気に水を差せるものは果たしているか……。

 ――と、大きな魚影に狸達の目線が集中した……その時だった。
「これはこれは、かあいらしい狸さんやねぇ」
 灰色の髪を揺らしながら、嬉しそうに金色の瞳を細める、一人の羅刹が現れたのは。
「ふふ……うち、狸好きなんよ?」
 サムライブレイドを携えニッコリ笑う彼女の名前は、鬼灯ほのか。猟兵として任務に赴いた彼女は、されど敵の愛らしさに癒されたのかまだ闘気を纏っていない。
「ウュン?」
「ウューン」
 敵同士である猟兵とオブリビオンは、やはり見ただけで判別できるらしく、狸達は臨戦態勢に入ろうとしていた。……同時に褒められたことや好きと言われた事が嬉しかったのか、少し緩んでもいる。
「そや。提案なんやけど」
 指を立ててにこやかに話す彼女に、狸達の動きも一旦聞こうかなと思ったかピッタリ止まる。
 そしてその提案が――表情の移り変わりと共に告げられた。
「……ええ子やから、おとなしく切られて、煮られて、焼かれてくれはります?」
 瞬間、冷気が辺りに充満したような、鋭い気配が立ち込める。
 余りの移り変わり様に、士気を高めていた筈の狸達も呆気に取られた。
 何故いきなり? そも狸が好きじゃなかったのか? 
「狸はな、煮ても焼いても……酒の肴にちょうどええ」
 と、その疑問に答える様にほのかは呟き――唐突に戦闘が勃発した。
 まずは先頭にいた槍持ち狸を一刀の下に、無言のまま切り捨てる。
「ウ、ウューン!!」
 そこで漸く我に返った狸達だが、滑らかな足取りで離れたほのかを追おうと数匹が突出。
 それでも連携を取れるだけの個体数ではあったが、たかが数匹では意味が無い。
「ほな……順番に仕留めていこか」
 突き出された槍を背面に構えたサムライブレイドで受け流し、懐に入ってきたもう一匹を蹴り上げ、次いで吹き飛ばす。
 集団にツッコみおたおたしている間に一匹をなで斬りに。慌てて盾を構えた二匹目は――ユーベルコード『剣刃一閃』で一薙ぎし、高らかな音から一瞬遅れ……狸は見事に真っ二つとなる。
「孤立した者から、切り捨てさせてもらうさかい」
 宣言通り力を活かした直線移動から、更に二匹をすっぱりと両断してみせた。
「ウュン!ウューン!!」
 だが黙ってやられる狸達ではない。近接武器持ちが前方で陣形を組み、その隙間から火縄銃を撃ち矢を射かけてきた。
 恐怖心が手伝ってか、恐ろしいまでの集中砲火が、ほのかへ襲い掛かる。
 ……されど当たらない。
「ほら、もっとよう狙わんと」
 すいすいと体を傾けて避け、また撃ち抜いてもそれは残像であり、着実に距離を詰めてくる。……焦燥広がる間に外側から陣形を切り崩し、一閃の元にまた脆くも数匹沈めてみせた。
 鼓舞する役割で召喚され、すぐに消えゆく子狸達も、全て血沼に沈めている。
「かわいそうやけど、これは立派な戦おす」
 仕留められる場所から確実に。強化役を担われているならば猶更、それは当然のことだ。だからこそほのかは僅かに謝し、次いで少し笑み。
「ふふ。ああ……可哀そう」
 刀を閃かせて笑顔の質を変えると同時、再度孤立した者へと刃を振るっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜神・静流
獣の割には組織的な動きをするようですね……油断せずに行きましょう。

見切り・第六感・視力・聞き耳で敵の射線や射撃の動作を見切って、残像・ダッシュ・ジャンプ・スライディングで攻撃を回避しつつ敵陣に斬り込みます。
上手く敵の群れの中に飛び込めたら早業・属性攻撃・薙ぎ払い・範囲攻撃の技能を使用して三ノ太刀・鳴神で範囲内の敵を纏めて攻撃。

攻撃後は素早く離脱しつつ、散らばった敵を各個撃破していこうと思います。



 初手を譲り蹴散らされたとはいえ、まだオブリビオン達の数は多い。
 盾を構えて槍を突きつけ、後方に控える遠距離部隊を守りながら……前方に躍り出た刀持ち狸の合間を縫って槍を突き出し、隙をなるべく減らしている。
 近・中・遠と確りそろっている上、不覚を撃ったにも関わらず素早くこの陣形を整えてみせていた。
 その連携に、猟兵有利が少しずつ平行線へと押し戻されかけている。
 
(なる程。獣、という割にはかなり……組織的な動きをするようですね)
 急接近してきた狸武者を柄で弾き飛ばし、そのまま流れる様に1太刀。
 飛んできた槍の穂先を切り落として見せた――夜神静流は内心静かに独り言ちる。
 元より気を抜いていた訳ではないが、見立て以上の組織力を見せる狸達に、より油断なく行こうと気を引き締めたらしい。
「ウュン!」
 そんな彼女の剣気を察した後方部隊の狸達が火縄銃を構え、また弓に矢をつがえて静流目掛け射出してきた。
 真っ直ぐに飛来する銃弾と弧を描いて迫る矢は、軌道も速さも違う。故に、簡単に避けられる様な攻撃ではないだろう。
「敵陣に切り込む好機を見定めなければ……!」
 前衛の狸達を一閃で押し戻し、降り掛かる射撃から少し離れつつ軽やかな身のこなしで回避し、更に愛刀【十六夜】を振るい叩き落していく。
 
 防御自体は十分可能な速さ。だが、此処から攻めるには……少し弾幕が厚めだ。
 つまり用いるべきは『防』ではなく『躱』の構えだと、静流は考えた。
(研ぎ澄ませ……感覚を……)
 ――己に宿る第六感と、鍛錬より紡がれる見切りの才。
 鋭敏に変えた五感、内二つ……視力に聴力。
 持ち得る察知の技能を発揮し、後方の陣形へと飛び込む隙を見出そうとする。
「ウューン!」
 中々近寄れない静流を仕留めきってしまおうと、戦闘にいた狸武者が刀振るう素振りで指令を出した。
 一度目と同じ対処を二度目でも行い、そして相手が続けて三度目を構えようとした。――その『切れ目』を、静流は逃さない。
「はっ!!」
 その弾丸の幕と、矢の雨の中へ自ら飛び込んでいく。
 緩急をつけた歩法で残像を生み出し弾丸を避けながら……猛烈な勢いでダッシュしたかと思えば、矢の密度の薄い場所へジャンプし叩き落す。
 着地と同時に【十六夜】柄を握った静流は、攻撃の構えを取ったままスライディングして狸達のすぐそばまで肉薄した。
「ウ、ウュン!?」
 槍持ちの狸が彼女へ対処しようと、陣形そのままバラバラに穂先が付き出された。
 だが時既に遅し。
「シッ……!」
 目にもとまらぬ早業で放たれた、右方から切り上げる形での薙ぎ払いが、広範囲へ攻撃を狸達に喰らわせたのだ。

 そしてそれは初手の『準備』の一撃に過ぎない。雷属性の攻撃力を高めるべく霊力が彼女の体を巡り、愛刀へ到達した……その瞬間だった。
「我が剣は雷――」
 稲光と雷鳴が迸ったかと思うと、刀身が眩くも激しく力をみなぎらせている。
「薙ぎ払え――」
 それは形ある雷の如く。狸達はただその迫力に気おされるばかり。
 そして一瞬の静寂が流れた――刹那。
「――『三ノ太刀・鳴神』ッ!!」
 眩光の放出から間髪おかず、鋭利なる斬撃と焦熱の雷撃が、オブリビオン達を薙ぎ払った。約半径23mに雷刃を轟かせるこの技相手では、咄嗟に避ける事すら敵わない。
 消し炭と化した狸達は次々消えてゆき、偶然逃れた者達も孤立状態。
「仕留める……!」
 立て直しの暇など与えない。他の陣形に合流するより速く、各個撃破していく。
 気が付けば――狸達の一部隊は壊滅状態。
 一旦息を整えつつも戦場を見渡し、静流は次の部隊へと素早く向かっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灯璃・ファルシュピーゲル
本物の野生生物なら上手く共存して
欲しいですが・・完全に害獣ですし仕様が無いですね

兵士として敵軍には油断なく攻撃開始
まずは「迷彩、目立たない、地形の利用、忍び足」で
他猟兵の襲撃に合わせ地形の起伏や茂みを利用し
敵軍側面に回り込み「情報収集、スナイパー、だまし討ち、戦闘知識」で
射手・弓手と指揮官or士気を鼓舞する狸を狙撃で優先排除。
1,2匹倒したら即座に移動しまた狙撃を繰り返し、狙撃を警戒して混乱するよう仕向け味方の攻撃を支援しながら戦闘

狸囃子が現れたら、コードで狼達を展開
襲い掛からせ支援妨害。突撃陣形を組み始めた場合も
「戦闘知識・第六感」で突撃しようとした瞬間に
狼に襲撃させ陣形をかき乱し妨害します


ルパート・ブラックスミス
それだけの統率……もはや害獣と呼ぶのは無礼か。
行くぞ、獣兵団。いざ、狸合戦だ。

UC【燃ゆる貴き血鉛】および青く燃える鉛が形成する翼展開。
【空中戦】だ。攻撃を仕掛ける時以外は敵の矢や弾が届かない高度を維持する。

燃える鉛を纏った短剣の【投擲】を主軸に攻め、要所で翼による熱風(【属性攻撃】)を叩きつける。
密集しているなら短剣に纏わせた炎を風で巻き上げ火炙り。
水辺が近いなら強風で煽り突き落とす。その火縄銃、水浸しにされては使えまい。
仲間が倒されれば恐慌して撃つようだな。その装備では次の攻撃まで間があるはずだ。
攻撃しては上昇、弾幕が薄くなったら再び攻撃。これを繰り返す。

【共闘・アドリブ、オールOK】



 切り込んできた猟兵達の夢想的活躍によって、一旦は散り散りになり、また少数一か所に固められた狸兵団は……徐々にだが数を減らしてゆく。
 各個撃破を重ねられて、陣形は崩れ始めてしまい――しかし狸達のその後の行動は速かった。
「ウュン!!」
「ウュ……!」
 時に犠牲を払い、尚も牽制しつつ動きながら、数の減った部隊へ不意打ちと共に合流したり……あるいは遠近の隊を一瞬入れ替えだまし討ちする等、巧みに連携を取って来る。
 これこそ猟兵に負けぬ、信頼と経験のなせる業だろう。
「それだけの統率、もはや害獣と呼ぶのは無礼か」
 鎧の隙間より青白い焔を揺らめかせながら、また液状の鉛滴る大剣を振るいながら……甲冑姿の黒騎士ルパート・ブラックスミスが独り言ちた。
 彼らは町を衰退させる害悪ではあれど、その気概と技術は目を見張るものがある。生来真面目な彼にとって、それを無視し、ただ切り捨てることなど出来ない。
「なればこそ敢えて告げよう……」
 此方からは伺えぬ瞳で狸達を見据えると、体の半分も刃渡りのある大剣を構えたルパートが、切っ先を突きつけ宣言した。
「行くぞ獣兵団。いざ、狸合戦だ」
「「ウューン!!」」
 ガチャリ、鎧より音を鳴らして接近するルパートへ合わせる様に、狸の兵団もまた前衛が突っ込み後衛が後に続く。
 そのままの勢いで、甲冑の騎士と獣の武士が激突し交錯する――!
「はっ……!」
 その寸前に、鎧装備とは思えない高度までジャンプしたルパードから、青く燃え盛る“鉛の翼”が現出した。
 ――ユーベルコード『燃ゆる貴き血鉛(ブレイズブルーブラッド)』。
 ブレイズキャリバーの延焼自在な焔の力が、液鉛へと一気に伝わってゆく。
 同時に空中に上がられた所為で、狸達は手も足も出なくなっていた。……ただ見上げるばかりの彼等へ、ルパートは高度を下げると青炎渦巻く短剣を投擲。
 『礼を尽くす』からこそ力強く燃える炎に炙られ、熱波に耐え切れず狸達は崩れ落ちる。
 加えて操作可能なその短剣は、彼の元へ戻るまでに後衛達を斬り裂いてゆく。
「ウュー!!」
 上空より睥睨せし燃え盛る鎧の騎士に恐怖を感じたか、まだまだ数残る狸の後衛一派が、号令に合わせて弾丸と矢を射出してきた。
「おっと」
 ルパートは再び高度を上げてそれを躱しながらに、翼から熱風を放つ事により軌道を明後日の方へ反らしてゆく。更に、威力衰えず狸達を打ち据える。
 まだ終わらない――次弾を込めている隙に、青炎噴出で大きく回り込むや否や。
「ハッ!!」
 短剣を素早く一振りし、巻き上げた蒼へ染まる渦焔の牢で閉じ込め、彼等を火炙りにして見せた。
 恐慌した様に二種の弾幕が張られるものの、掠りもしなければまず届かない。
「ウューン!!」
「「ウュ~ン!」」
「む……!」
 されど先の一度の工房で理解していたか、撃ちながらに狸達が別の策を練り込んできた。高度があるから速度が足りずに、当たらない……ならば『当たるようにすれば良い』と。
 召喚された【子狸応援団】が太鼓のを音を響かせ始め、それに呼応し狸達の動きが格段に良くなっていってしまう。――何故だかパンダも加わった賑やかな演奏会は、しかし猟兵達にはまるで歓迎できぬ催しだ。
「く……!」
 ユーベルコード製であるからか銃弾の速度も矢の正確性もアップ。対処が追い付かず、ルパードは高度こそ変えられど攻撃の体制にまでは移れない。
 そしてただ連射していた狸達の中に……此方を正確に狙って溜める、射手の姿を目にしてしまう。
 咄嗟に高度を上げるルパードへと、狙い定めた一矢が。

「ウュ……ッ!?」
  ――放たれなかった。
「ウュン?!」
「む、これは……」
 その前に銃声が聞こえ、狙撃しようとした狸が『狙撃された』のだ。
 続け様に音を超えて銃弾が飛来。狸囃子を二匹まとめて吹き飛ばしていく。
 そこか! とばかりに狸達の反撃の矢と弾が繁みへ飛び込むのだが……悲鳴はおろか命中した音すら聞こえてこない。
 ……などとやっている間に、投げ放たれたルパードの短剣が着弾し、辺りへ焔を広げていく。
「後衛か、有難い」
 呟く彼の言葉通り……斜め前方、茂み奥の木立の方に、狙撃手は居た。
「まだ、少し数が多いですね。なら狙うのはやはり後衛と支援から……」
 藍色の瞳を細めつつセミ・オートライフル【Hk477K-SOPMOD3"Schutzhund"】を構えた……元軍人の女性、灯璃・ファルシュピーゲルである。
 彼女は後方支援を担当するべく、先ず迷彩や忍び足を駆使した隠密行動で戦場に潜むと、兵団と猟兵の戦況を分析し――ルパートに加勢したのだ。
「ウューン!!」
 劣勢の状況と怒りから力を引き上げた狸兵団は二手に分かれ、遠近の両方で姿見えぬスナイパーを探し出そうと武器を振るい始める。
 灯璃はその光景を視界の端に映しながら、側面へ回り込んで射手の後衛狸を冷静に撃ち抜いてゆく。
「――次」
 戦場を広く見渡しているからこそ得た情報を元に、彼らが次起こすだろう行動を予測し……事前に動き出し別の繁みへ這うような低姿勢で移動。
 ルパートが熱風を叩き付けて狸達の注意を引いている間に、適応し始めた後衛を更なる射撃で遠間から穿つ。
 ただ淡々と銃撃する彼女だが、しかし内心は少し複雑な物を抱いていた。
(本物の野生動物であったのならば、上手く共存することも出来たのでしょうか)
 両親の影響もあり動物に強い興味がる彼女は、故に狸達の姿を見て無意識に『共にある』事を考えていたらしい。
 されど、人の生活を結果的にではなく、意図的に食い潰す完全な害獣であるならば……容赦などしていられない。なればこそ、彼女は何時も通り仕事をこなすのであろう。
「ハァッ!」
 そして灯璃の援護射撃の傍らで、混乱する狸達目掛けて上空から大剣で襲い掛かり薙ぎ払うルパード。意識を彼に向けても後衛達が側面から狙撃され続ける上、天からも焔が降り注ぐのだからたまらない。
「ウ、ューン!」
 諦めない狸達がまたもや狸囃子とパンダの楽団を召喚してきた。
 周囲へと弾丸や矢を飛ばし、威力も速度も上がったそれが次から次へと二人に襲い掛かってくるではないか。更に予測地点へ槍を投げたり、肩車や踏み台にして高所へ刀を振るったりと……その統率が新たな陣形を生み出してしまう。
「くっ――」
 ルパードがまたも近づけないのは言うまでも無く。
「……!」
 無差別な射撃で動きを止めた灯璃に気が付いた狸達が、狙って矢を射かけてきた。
 運の悪い事に此処にいた狸だけでなく、少数となった他部隊と合流してすらいる。
 戦力自体は猟兵が上でも、数と圧力では狸達が上。一体どうすれば……?

(上手く、運んでいるな……)
(……このまま追い込みましょう)
 ――彼らの顔には、しかして焦燥の色など一切ない。
 事前に作戦を躱した訳でも無く、だがやれる事が決まっており、尚且つこの地形だからこそ。
 奇しくも二人共に最初から、同じ「答え」に向かって行動していた。
 今以上に察知される可能性を敢えて無視し、まず灯璃が側面から射手狸を、狸囃子を一匹ずつ仕留める。
「ウュン!」
 無論、不完全な隠密状態でそれをすれば、今の如く狸達の突撃を許してしまう。
 槍を構えて隙間無い陣形を組み上げ、狸達は駆けだした……が。
「燃え上がれ!!」
 先まで確実に避けていた遠距離攻撃に対し、ルパードが落下に近しい速度で降り――刹那、液鉛を放ちそれを伝う蒼炎を一気に広げてみせた。
 続けて二度目の渦焔が上がるが、その威力足るや先以上に煌々と燃え盛り、爆ぜる程に激しい。地に撒いた鉛が追加燃料の役割をはたしているからだ。
「ウュン!?」
 これまでと違う動きを見せたからか、狸達の動きが鈍る。……同じ動きを繰り返していた事が功を奏していた。
 更に。
「Sammeln,Praesentiert das Gewehr……仕事の時間だ……!」
 その間隙をついて灯璃がユーベルコード【Schwarzwald Wolfsschanze(シュヴァルツヴァルト・ヴォルフスシャンツェ)】を解放。
 暗夜の刻、漆黒の森、それらを思わせる霧が発生したかと思えば、そこから【狼の様な影の群れ】が生れ落ち――狸囃子達へと殺到していく。
 察知したルパートも焔を消して高く飛び上がる。
 騎士が生み兵士が繋いだ一瞬の切れ目が、狸達の手元に優位の駒を運ばせない。
「そのまま“こうさせて”貰うぞ……!」
 影狼の群がかき乱し作りげた決定的なチャンス。見切ったルパートは降下から鉛の翼を剛力もかくやの迫力で振るい。
 荒れ狂う熱風で飛ばされた先は――水場の中。
「「ウューーンッ!」」
 やったな! と構えた狸達の火縄銃から三度猛烈な数の弾丸が飛び――出さない。
 否、ユーベルコード製故に出はするのだが……跳ばない。まるで飛び交わない。
 そう。水に落とされた所為で、火薬がしけってしまっているのだ。
「ウュ……!?」
 矢をつがえようとする狸達がうまく動けないのも当然。背が足らないし水が邪魔だし、何よりいきなり落とされた所為で冷静さを失っていた。
「もう一発!」
「―――そこ」
 だが空を飛ぶルパートと茂みにいる灯璃にとって、何の枷にもなりはしない。
 寧ろ立ち泳ぎで機動力を失い、陸に上がろうと集まる彼らは、絶好の的だった。
 一匹、また一匹と刃の、焔の、弾の、狼の餌食になっていく。
 数の優位を活かそう追い詰めるチャンスを見たはずの彼らは……哀れ誘われていることに気が付かず、蹂躙される状況に自ら飛び込んだのだ。

 数分と経たず……狸達は殲滅させられる。
 そのまま2人は己が向かうべき戦況を見極め、それぞれ、別の方へと走り行く。
 ――あれだけいた狸も、残り半数だ。
 猟兵達の無双は、まだ続く――

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

百目鬼・明日多
…あれ、パンダは戦わないんですか?
狸よりパンダの方が強いと思うんですけど…
ともあれ、こういう相手は陣形を崩すのが一番ですね。
『融合する刃貨』を用いて一対多を前提として戦います。
特に遠距離攻撃は数が多くても全て直線攻撃なら
弾道上にメダルズを飛ばせておけば弾けます。
そのままメダルズで弓の弦や火縄、槍の穂先を斬り飛ばし
陣形を崩す様に接近、距離さえ詰めてしまえば
『電脳化身の拳』の速度に勝てる攻撃は無いでしょう。
全員再起不能になるまで殴り飛ばさせて貰いますよ。

…で、そこのパンダは戦わないんですか?
というかパンダだけ和装じゃなくて洋装なんですけど
一体何者なんでしょうか…とりあえず太鼓は破っておきましょう…



 鋭き刃の蹂躙劇。
 焔と銃の交差追撃。
 各戦場で様々な戦模様が繰り広げられ、狸達の手の内もまた明るくなってくる中で、必然的に疑問を抱く者とて現れる。
 その緑髪鮮やかな猟兵は、鼓舞するために召喚された狸囃子達……性格にはその中に居る“とある存在”を、眼鏡の奥から一心に見つめていた。
「えっと……」
 少年猟兵・百目鬼明日多が呟くソレは、恐らく皆が思っていた『疑問』であろう事――。
「……何故、パンダなんでしょう……?」
 そう【パンダ】だ。
 狸とは本来似つかず、この場でも大いに違和感を混ぜ込んでいる、太鼓を打ち鳴らす白黒の熊――(パンダ)だ。
「ウューン」
「ウューン!」
「……」
 一匹だけ色も違えば服装も違い、持ち物も違うとトコトン目立ちまくっている。
 本当、どうしてパンダなのか、その答えは彼らにしか分かるまい。
(というか何で戦わないんでしょうか……狸より、パンダの方が絶対強い筈でしょう?)
 徹底的に裏方としてサポートしてくれる、種として狸より強いパンダ。
 支援自体は厄介だ、そして狸等にはとても有難いだろう。
 ……腕力はパンダの方があるというのに。今でも狸より強い音を奏でているのに。

「まあ良いです」
 ともあれ戦闘を優先すべきだと判断した明日多は、他所でも行われているように、まず陣形を崩しにかかる。
 連携は侮れず、遠距離攻撃こそ持ち得てはいるが……しかし旧時代の物だからか真っ直ぐにしか飛ばないという欠点もそのまま。
 速度だって、猟兵達が用いる物より“遅い”といっても過言ではない。
 問題は狸囃子達が齎してくる、楽団での鼓舞によるパワーアップだ。
 他の猟兵達が大暴れしているお陰か、まだ明日多の視界の先にいる狸達はそう多くない。気が付いても居ない。
 ――チャンスだ。
「今の内に……お願い、メダルズ……!」
 ユーベルコード『融合する刃貨(フュージョン・メダルズ)』を先んじて発動させた明日多は、自身の近場へと20体の【青年型アバター】を従え一気に走り寄る。
 遠距離部隊の最大射程ラインを何とか跨ぎ、その瞬間、前衛の狸達がハッと気が付いた。
 だが当然反応を待たず、明日多は指さし司令を下す。
「メダルズ!」
 その一声と連動して青年型アバター達の手元に【メダル型自立飛行ブレード】が召喚。
 “1”と刻印されたメダルブレードをあるアバターは思い切り投擲し、あるアバターは指で弾き猛烈な速度で射出、あるアバターは腕を薙いで勢いよく放った。
「ウュゥン!?」
「ウ、ウューン!」
 先制攻撃の第一射が後衛部隊のもつ弓の弦を切り、火縄銃の火種を削り落とす。
 自立飛行可能なそれは、メダル型だからこそ小さくも鋭く、返す刀で槍の穂先を纏めて斬り飛ばしてしまう。
「ウュー!!」
 まだ無事な後衛が銃弾を放つも、数が少ない事と――先の通り直線的な所為で、後方待機していた数体の青年型アバターの投げる【メダルズ】により叩き落されていく。
「うわっと……!?」
 明日多一人が集中的に狙われるからこそ、機動もまた見切り安い反面。
 やはり全部とはいかず回避せざるを得ない。

 しかし敵の動揺が消えぬ間に、彼が望んだ距離まで踏む込むことは出来ていた。
「よし!」
 遠距離武器がすぐに使ものにならなくなった事。
 牽制の槍が減った事。
 元々数の少なかった事もあり、狸達の陣形は既に意味を成さ無くなっている。……結果明日多はどうにか懐へ潜り込めた。
「ウュン……!!」
 されど立ちはだかるは、これ以上活かせるかとばかりに身を固め、闘気漲らせる武士狸。
 背後を突かれないよう青年型アバター達がメダルズを操り、近衛とガチンコ出来るまでは近寄れたが――遠距離型で小型武器の彼らでは、盾を破るのは難しい筈。
 『メダルズを合体させて強力にする』手立てもあるが、一対多である以上はすぐにその札を切る訳には行かない。
「ウュンッ!!」
 このままでは狸達の連携に袋叩きにされるだけ。
 だがこれで良いのだ。……近寄る事さえ出来れば、此方の物だから。
「今です――」
 ビシッとポーズを決めてみせた、その途端……新たな青年型アバターが現れた。
 だが先のアバター達とは放つ圧力がまるで違う。
「――行きますよ電脳化身(アバター)、一気呵成に!」
 慌てて防御しようとする狸達の動作をも追い越し、振り上げられたアバターの拳が空を貫く。
 そして降り注ぐは拳、拳、拳の雨。
 引いては打ち込み、反動で下がっては殴り、炸裂する連打は留まる所を知らない……!
「ルゥァララララララララ!!」
「「ウュン!?」」
 余りの速度とラッシュ量から一度放てば止められないが、この乱戦と並んだ陣形を前にそんな心配は無用。
 迸る叫びと唸る鉄拳が交互に空気を振るわせて、もはや彼らが劇画タッチに見えるような迫力を湛えながら、容赦なく殴打が浴びせかけられる。
「ルゥァララララララララララララララァ!!!」
「「「ウューン!!」」」
 留まる所を知らない拳、拳、拳の流星群に等々、狸等の陣形が完全崩壊した。
 ボコボコになるまで殴り続けられ、再起不能を量産していくその様は、まるで暴れ狂うバーバリンの如し。
 気が付けば支援の狸囃子達も巻き込んで……。
「ルゥラアァッ!!」
「―――!」
 ……最後に立ちはだかった狸を、青年型アバターの強烈なアッパーが捉え、放物線を描くほどの勢いでブッ飛ばす。
 周囲でメダルズを操っていたアバター達のお陰もあり、一転に集まり続けていたのだろう。
 明日多は無事――周辺にいた狸の兵団の壊滅に成功した。

「……結局」
 そこで明日多はどうしても浮かんでしまう疑問を、その気になっている事を、最早戦意の無い支援部隊の“とある存在”に投げかけた。
「そこの、パンダは戦わないんですか……?」 
 殴り飛ばされざっくり斬られた、一匹のパンダ相手に。
 手足をすべて曲げて倒れるというコメディアンのような恰好のまま、パンダは地面に突っ伏している。
 私怨こそしていたものの、やっぱり最後まで直に戦っては居なかった。
「……っていうか一匹だけ洋装って……一体何者なんでしょうか」
 尽きぬ謎。
 狸に混ざるパンダ。
 それを解明できぬまま――とりあえず明日多は太鼓を破ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月島・彩希
【三叉槍(トライデント)】で参加
槍使い同士でご一緒するのはワクワクしますね

『集団戦』
氷上の舞(UC)で足場を凍らせて敵の動きを封じる
その後はスケートの要領でスピードによる敵の撹乱を行って味方を支援
【ダッシュ】と雷迅槍(UC)を用いて高速戦闘
雷の魔力で強化した身体能力と【怪力】を用いた槍による突きと短槍を【投擲】して【槍投げ】で敵を【串刺し】にする
敵の攻撃は【野生の感】で感じ取り、【残像】を用いた【フェイント】を交ぜることで行動を読ませないようにしつつ回避
回避後はすぐさま【カウンター】として攻撃を繰り出す
戦闘中、仲間の槍捌きを【学習力】で【戦闘知識】として蓄積することで槍の扱い方を洗練させていく


タンケイ・オスマンサス
【三叉槍(トライデント)】で参加
「なんて可愛らしい…!はっ!い、いやいや…見た目に惑わされてはダメです。どんなに可愛くてもオブリビオンは倒さなきゃ!」

水上で神宮寺さんと月島さんに圧倒されて陸地へ追いやられた残党をダイアウルフ(ダイア)に騎乗して共に強化された状態で退治します。
ダイアの突進の衝撃を利用して長槍を振り回し、獣奏器である槍が振られる度に鈴の音の【衝撃波】が動物である敵の動きを多少鈍らせるはず。その隙を突き、間合いを【見切り】的確に急所を突きます。
私の槍が間に合わない敵にはダイアがその鋭い牙と爪を以て対処します。


神宮寺・絵里香
【三叉槍(トライデント)】で参加

≪心情≫傍迷惑な狸共はさっさと駆除するに限る水場で水使いに勝てると思うなよ三叉槍(トライデント)の力、存分に魅せてやろう

≪作戦≫
・水場でオレと彩希で敵を追い詰め、タンケイの方に追いやり挟撃

≪戦闘≫
・【高速詠唱】からUCを発動。
『水を自在に歩く力』と『水の三態』を操る力で自己強化。攻撃力を上げる
・彩希の作った氷のリンクを『水の三態』を操る力で足元だけ水にして UCの効果で水の上を自在に動き地形の不利を無くす
・足元がおぼつかない敵を【水属性】を纏った叢雲で【薙ぎ払い】一気に数を減らす
・敵の攻撃は【戦闘知識】で【見切り】、躱せないものは【武器受け】して受け流す



「ウュ……」
「ウューン……!」
「ウュン!」
 彼方で吹き飛ばされては転がり、此方で蹴散らされて、現出した過去の異物として塵に消えてゆく狸の兵団。
 数の差は確かにあったはずだ。
 しかし個々の力と連携力、なにより組み立てた策が数の暴力に勝っていた。
 結果、戦況を圧倒的に猟兵側優位で押している。
 ――このまま討たれては堪らない――
 アレだけ勇ましくも連携し、猟兵達と張り合って、劣勢で尚退かなかった狸達の間に……何故か『焦り』が見て取れた。
 それは隙を突かれたり、陣形が崩れた際の物とは、どこか違う。
 感覚でわかる異質な何か。
 そしてその感覚が偽りでない証拠に、狸兵団は次々用意した船に乗り込んでは対岸へ移ろうとしていた。
 それを勿論阻止しようとする猟兵達。
 詰め寄り狙おうとする――のだが、段々と押し込まれた狸達が一点に集まっていた事が災いしてしまい、しかも鉄砲隊が狙うべき場所が陸地の一方行だけになった所為もあって遠距離攻撃も見られやすくなっていた。
 結果、幾つかの隊を逃がしてしまう。
「ウューン!!」
 挑発……という程のものでもないが、猟兵達へ手を振るように指揮し、最低限の体裁を保つように弓矢火縄銃、投槍による妨害の手を緩めない。
 このままでは大将に連絡されてしまい、また狸達の兵団という多数の援護もついてしまう。

 不味いか――と思われた、その時。
「ウュン?」
 一匹の武者狸がそれに気が付いた。……視界の先に映る何者かの影。
 “川の上を滑走する”一人の猟兵に。
「逃がしません……此処で、仕留めます!」
 靡く灰色の髪には狼の耳が立ち、また藍色の瞳が強く光る。
 人狼の少女・月島彩希だ。
 その力強くも、決して荒々しくない走りは狼耳もあり……何処か、一匹の狼を思い浮かばせる。
 彼女が水の上をアメンボの如く、または忍者よろしく滑り、此方へ向かって来ているのだ。
 ……否。
 正しくは“水の上”ではない――“氷の上”を走っている。
 「猟兵だって、オブリビオンよろしく埒外が多いんですよ……水上だからと止まるばかりではないんです!」
 連続で半径19mを氷漬けにしつつ、滑走する彩希の手には、蒼く鋭き闘志を映し出す【灰狼の槍】が握られている。
 その穂先を向け思い切り踏み込み、瞬時に背後へ跳び抜けた。
 ――刹那、バュッ! という音を残して狸達に風穴が開く。……あの僅かな間に数匹を貫いたのだ。
「っと!」
 着地前に、再びアイスリンクを形作るユーベルコード『氷上の舞(アイスダンサー)』で足場を作りつつ、姿勢低いまま片足を広げ円を描いて制動。
 不安定な筈の即席スケートリンクでも、槍を確り構えてみせた。
「ウュン!!」
 滑走しだした彩希の動きに合わせて広がっていく氷の大地。その所為で船の動きが限定され、狸達は簡単に逃げられなくなっている。
 だが他の猟兵達も、今の季節は低温故に氷こそ解けないが、その低い摩擦もあってすぐには駆けつけられていない。
「「ウュ、ユ-ン!!」」
 ならば今の内に、足場を作る彼女を仕留めてしまおう。そう決断し遠距離武器を向けて来る……!

「悪いな……生憎、此方も一人じゃない」
 凛とし、力強く、女性の声が響いた。
 ……かと思った時には、既に一船の狸達が真っ二つに変わっている。
 白蛇の意匠ある薙刀――銘を【叢雲】という琉麗なる長柄武器を手にした、軽装和服の女性だ。
「―――――」
 不思議と水を、そして蛇を脳裏に思い起こさせる、“何かしら”一つ呟きながら。
 斬れそうなほどの気迫を湛え、川面から凍面へ変わった水上を踏みしめ佇む。
 その戦巫女・神宮寺絵里香は漆黒の髪を揺らしつつも、鋭き黒の瞳を向けてきた。
「……はた迷惑な狸共だ。さっさと、駆除させてもらうぞ」
 いうが早いか反転し、飛び交う弾丸を叩き落しては、そのまま跳躍。
 着地と同時に……どう言う訳か滑る事も無く“グリップの利いた足取りのまま”別の船へと突撃していくではないか。
「ウュ!」
「ウュン!!」
 もしや氷は自分達をだます罠なのではと、一部の狸達が勇んで氷上へ降り立った。
「ウューン!?」
 されど、見た目通りの摩擦から無様なまでにすってんころりん。
 ――なんてことをやっている間に、薙刀一閃。
 動揺の目に合っていた狸達諸共、ものの一発で断ち切られた。
「水場で、水使いに勝てると思うなよ? 獣共」
 ……絵里香の足元をよく見れば、彼女が立って居る其処のみ水に戻っている。
 ユーベルコード『水神権限(ミズノシハイシャ)』により、水を操り固体から液体へ戻し、更に水上を自在に歩く事を可能としているのだ。
 謎の呟きは、瞬間的に準備を済ませる為、高速で紡ぎ出した詠唱だったらしい。

「「ウューン!!」」
 船上に陣取り、また何とか足場に慣れた狸達が、此処に来て最後の反撃に出た。
 刀の武者が、槍持ちが、彩希と絵里香それぞれに殺到していく。
 ……だが水を味方につけた彼女達は、数をも覆す猛威を振るう。
「遅いですね」
 スケートの要領でどんどん加速していく彩希。不安定な足場で、今の彼女を捉える事は至難の業だった。
 ユーベルコード【雷迅槍】により雷の魔力を身に宿し、更なる加速で狸達の間をすり抜け――同時に、凍える空気と爆ぜる雷を這わせた【灰狼の槍】を持つ手がブレ、その途上にいた狸達が穿たれる。
「ウュン!」
 鳴き声と共に突かれた狸の槍はしかし空振り。カウンターで彩希が一突き。
 後衛から飛んでくる弾丸を……スピードスケートの選手よろしく前傾姿勢で、残像を見せつつジグザグに突っ走る。
 だがそっちへは向かわず、別方向から飛んできた弾丸を見えているかのように回避する。そして今撃って来た船の先端、狸達の真横へ現れ――。
「ハアッ!!」
 何時の間にか振りかぶっていた短槍を投擲。一発で狸を纏めて貫いて行った。
「――おっと」
 威力が落ちたその槍を、軌道上の傍にいた絵里香がキャッチ。
 隙アリ! と繰り出された刀を首をかしげて躱すと、蹴り一発でまごついている狸達の方へ吹っ飛ばす。
 一塊にしたところを逃さず、荒れ狂う怒涛の刃を添えた薙刀を豪速で払った。
 僅かな間隙の後……思い出したかのように、狸達が崩れ落ちていく。
「ウュン!!」
 だがまだ居る、数は多い。後ろから1匹の狸が槍を突き出し、2匹が逃げ場を無くすように槍を構え――。
「甘い」
 だが絵里香は振り向くことも無く、後部へと縦に構えた【叢雲】を向け、武器を振り上げつつ体を左へ捻り受け流す。そのまま肘鉄で一匹を吹き飛ばした。
 そして斜め左前後からくる槍に対しては、右へ移動する事で難なく回避――したのと同時に薙刀が身体ごと振り回され、狸二匹はそのまま切断される。
「フン!!」
 亡骸が消えるのを待たず。手にしていた短槍を投げつければ、螺旋の激流が途中にある船上の狸を斬り裂き進み――パッと消えた時には彩希が確りキャッチしていた。
 ……見ると、ただ暴れていただけでなく徐々に押し込んでいたようで、狸達は猟兵と陸に挟まれている。
 追い込みと、包囲の穴を抜けられない。
「ウュン!」
「ウュン!ウュン!!」
「ウューン!!」
 だが反面、陸にいる者は少ない。
 ここなら突破できる。そう考えて陣形を組み突撃。
 ……突撃は確かに最後っ屁として良い手段ではあった。

 ――それが甘かったと、狸達を責められようか。
「ダイア、行くよ!」
「……ヴォウッ!!」
 頭部の金木犀と背の翼が目を引く女性が、雪の如き白銀の毛並みを持つ大狼の背に跨り、回転させると同時に心良き音色なる長槍――【獣奏器】の一種であるそれを勢い任せて薙ぎ払う。
 鈴の音により発せられた、ある種の衝撃波が狸達の動きを止め、そのまま成す術なく豪快に斬り裂かれ、追加とばかりなダイアの突撃で吹き飛ばされていった。
 だが無事な狸達もまた当然居る。
「グルルゥ……!」
「もう一回お願い、ダイア!」
「ヴオッ……!」
 守護獣・ダイアウルフを駆る、彼女の名前はタンケイ・オスマンサス。
 透き通るような緑髪を持つオラトリオだ。
 騎乗しているからこその機動力を活かし、タンケイは陸上に上がって来たばかりで、逆に足場に慣れなくなっていた狸達へ接近。
「はっ!!」
 ヌンチャクの様に側面で二度、頭上で数度振り回した槍状の【獣奏器】から、またもや鳴り響く音の衝撃波が……狸達の動きを抑制する。
 そのまま三度、タンケイは槍を振るい次々狸達を貫き、また打ち下ろしてゆく。
「ウューン!!」
「ヴォオッ!!」
 また間に合わずとも隙は無く、タンケイの死角や攻撃後の合間を、ダイアがサポート。
 タンケイが貫くと同時に爪を右へ振るって狸を細切れにし、後ろへと薙ぎ払えば正面へ顎をむき食い潰す。
 左右から来た遠距離攻撃に対し、タンケイは跳び、ダイアは伏せ……。
「ヤッ……!」
「ガァッ!!」
 以心伝心でそれぞれ左右を向いて、刀持ちの狸数匹を吹き飛ばしては、切り刻んだ。
 着地と同時に跳躍し、前方に構えようとしていた部隊を吹き飛ばすのも忘れない。
 そしてその着地点には――彩希と、絵里香の姿があった。
「ナイスパスです!」
「本当に……なっ!」
 雷が轟き焦がしては飛ばし、水流が飛び裂いては落とす。
「ウューン!」
「ウュューン!!」
 最後まで抗ってやるとばかりに、倒されていなかった狸が、突如として背後から向かってきた。
 絵里香はくるり、薙刀を横回転させていなすと同時に構えなおすと、そのまま縦一閃して亡骸へと変える。
「こう、でしたね!」
 彩希は背後の狸に“縦に構えた槍”を突き出し、体を捻ると同時には値上げ肘鉄を食らわせた――先の絵里香の動きをトレースしたらしい。なんという学習力か。
 そのまま驚異的なスピードでステップし様に、弾丸を避け短槍を投げつけて、雷の放出により焼き焦がしていく。
「狙いは良いな……だが、遅い」
 その横で絵里香の懐に潜り込んだもう一匹の刀に対し、彼女は左手を伸ばして僅かに軌道を変えると連動して蹴り上げ、貫いて射撃準備中の狸に投げつけていた。
 ……そのを薙刀の穂先を後ろへ向けると、飛んできた槍を振り向きざまに上へ弾き、小さく振り降ろし斬り裂いてそのまま貫いてみせる。
「グルァ!」
「そちらもナイスパスです!」
 投げつけられた狸の方では。
 体勢崩れた狸等をタンケイとダイアが追撃し、ダイアのスピンで打ち上げた狸をタンケイが連続で討ちとってゆく。
 更に飛び跳ね追い込むダイアから、タンケイが飛び上っては衝撃波を放ち、ダイアが斬り裂いてジャンプした背に戻るアクロバットも見せていた。
「流石ですね……」
 純粋に驚きの声を漏らしつつある彩希は、それをも己の糧にし槍の扱いを洗練させていくのだろう。

 何時の間にやら既に、狸達はもう、残り少ない。
 だからこそか。
「「「ウューン!!!」」」
 目立たない位置にいた狸達が一斉に落ちていた槍を構え、突撃の陣形を組んで――力を溜め込み、放たれる時を待っている。
 タイミングは分かりやすいが、故に強力なのは自明の理。
「……ならば、此方も力を合わせましょう!」
「即席の合体技か……良いだろう!」
「はい!――ダイア、思いっ切り行って!」
 タンケイを中央に、左右へ彩希と、絵里香が陣取る……その様は、正に【三叉槍(トライデント)】。
 1つの大槍と化した狸達を穿通すべく、此方もまた構えている。
 一瞬の静寂―――刹那―――駆けだす……!!
「「「ウューーーン!!!」」」
「せぇえーッ!」
「ハァッ……!!」
「ヤァァァ!」
「……ヴォオッ!」
 雷狼が唸る。
 水蛇が叫ぶ。
 白翼が続き、銀郎が吼える。
 三色の槍と、一式の槍が、そのまま衝突し――
「「「ウューンン!?」」」
 ――見事、三叉槍が狸等を貫き蹴散らした。
「上手く行きましたね!」
 雷を解いた彩希が、胸元でガッツポーズ。
「……そうだな」
 絵里香は1つ息を吐き、消えゆく狸達を見やる。
「はいっ。――ありがとう、ダイア」
「ヴォゥ!」
 タンケイが大きくなずき、ダイアが同意。
 周りを見渡せば今ので最後らしく……もう狸達は何処にもいない。
 しぶとくも勇敢な獣兵団は、どうにか殲滅できたのだった。


 ……だがその余韻に浸る暇もなく、彼女等は巨大な『殺気』を感知した。
 ――何かが、来る。
「まさか、ボス級の……!」
「……ッ」
「漸く、“頭”のお出ましか」
 彩希が、タンケイが、絵里香が見やったその先から……来る。
 怒りを湛える、人型の影が。

 ――1体の、鬼が―――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『鬼銃葬者』

POW   :    鉄刀鉄火(てっとうてつび)
【呪いの炎を纏った刀による斬撃】が命中した対象を燃やす。放たれた【呪いの】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    銃王無刃(じゅうおうむじん)
自身が装備する【銃から放たれた呪いの銃弾を】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    渇殺自罪(かっさつじざい)
【刀と銃】から【悪鬼羅刹の闘気】を放ち、【恐怖】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は麻生・大地です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜神・静流
「悪しき鬼は、我が剣で討ち滅ぼします」
退魔の剣士として、一歩も退かぬ覚悟で挑みます。

●鉄刀鉄火に対して二ノ太刀・紅で真っ向勝負。早業・怪力・属性攻撃・破魔・カウンターの技能を使用。
相手の攻撃に対しては見切り・武器受け・オーラ防御・呪詛耐性・火炎耐性で対応します。

破邪と呪い、性質は真逆ですが同じ炎を纏う剣技。負ける訳にはいきませんね。
「夜神の剣は、呪いになど負けません。その穢れた炎ごと斬り払う!」
「我が剣は、魔を討つ炎!焼き払え――二ノ太刀・紅!」


ルパート・ブラックスミス
我が暴虐を阻むもの許すまじといったところか。いいだろう。
黒騎士ルパート・ブラックスミス……いざ、鬼退治。

『真の姿:青く燃える鉛が関節部から溢れ出る姿』およびUC【黒風鎧装】解放。
相手への【挑発】を兼ねて真正面から鍔競り合い。【怪力】比べだ。
他の猟兵に攻撃を向かせないように敵の銃弾と炎は黒風で吹き散らし、
斬撃と直接伝ってくる炎は【火炎耐性】のある己自身で引き受けよう。

大剣はあくまで敵の攻撃と注意を引き受ける【フェイント】と【武器受け】用。
こちらの本命は事前に【投擲】しておいた【誘導弾】として機能する短剣だ。
その上でこちらに隙を見せるようなら、【串刺し】にしてくれる。

【共闘・アドリブオールOK】



 狸達が消え去った、その戦跡を踏みしめて。
 ……一体の鬼が姿を現す。
 サムライエンパイアの着物ともまた違う、異質な着物に身を包み。猟兵達を睨みつけ。刀と銃を手に佇んでいる。

 ――その目に宿るのは【怒り】だ。
 狸兵団を蹴散らされたという配下達の弔いからか、それとも計画を邪魔し楯突いたという己の優位を削られたからか。
 いずれにせよ……戦闘は避けられない。
「オ゛オオォォオオ……!!」
 低く吠える鬼の手に握られた銃から轟音が響くと、銃弾が次々撃ち込まれ、地が爆ぜる程の威力を持って着弾する。
 砂煙が濛々と立ち上がり、それも一発撃り裂さかれ――其処に鬼の姿はない。 
 いったいどこに……?
 そう悩んだ猟兵達の中、一人の刀使いがあらぬ方へと剣を振るった。
 閃いた二尺五寸の業物【十六夜】を、其処に居た鬼ががっちり受け止め、弾いて振るった猟兵を――静流を数歩後ずさらせる。
「大将の登場、と言ったところですか……」
 かちゃりと柄を握り鍔を鳴らし、切っ先を向けて剣気鋭くつぶやいた。
「人々の暮らしを妨げ、また禍根の根を広げようとする過去よりの敵……その悪しき鬼は、我が剣で討ち滅ぼします!」
 言うと同時に駆けだす。刹那掻き消え、右方へ出現。
 応えるように構えた鬼は振り向き、銃をまず乱射するも……静流に軌道を見切られ、怪力齎す早業で銃弾を受け流され、懐へと潜り込まれていく。
 ならばと鬼が剣を振り上げた――それに呼応するかの如く、【呪い】としか表現できぬ禍々しき熱が纏わりついて噴出した。
 ただの火炎ではあるまい。まともに受けては骨の髄まで焼き尽くされかねない。
「我が剣は……“焔”……!」
 故に、静流が選んだのは敢えての、同質での『対抗』だった。
 呪いの逆を行く破邪の力をそのうちに宿せし聖なる炎が、【十六夜】の刀身へ螺旋を描いて纏わりつく。
「夜神の剣は、呪いになど――負けません。その穢れた炎ごと斬り払う!」
「ジィィィイアアァァァァ!!」
 強く言い放った静流の刃と、けたたましく叫んだ鬼の刃が正面からぶつかり合い、互いに同じタイミングで捻って斬り躱す。
 地が焼けこげるのも構わず、鬼の切り上げに対しカウンターで通り抜けるようにして一閃――伝えきれなかった熱が、赤い線となって向こうへと跳ぶ。
 が、やはり大将。
 確りと攻撃を入れてもそこまでダメージが通っているように思えない。動きこそ少し変わったが、鋭さは其のまま振り下ろされてくる。
「……っ!」
 体に纏ったオーラへ熱量と破魔の力を流し、寸で首狙いの一振りを何とか直撃を防ぐ静流。
 そのまま振り下ろされるもう一刀へは、斜めにして堅実に受け流す。 
 刀で武器受け出来る技量、そして呪詛や焔への体制が、この常時のままの防御を可能としていた。
「せえっ!!」
「!!」
 また、その外見からは想像も出来ぬ怪力が、僅かな暇のカウンターでも確りダメージを叩き出しているのは言うまでもない。――逆に言えば優位でも尚、鬼はまだまだ戦える程のタフネスを持っているという事でもあるが……。
(あと一押しが欲しいところですね)
 人たち。会心の一撃を入れるには、ピースが足りない。
 考えながら静流は――先から感じていた、とある一つの“圧力”の方へと目線を傾ける。
 そう、何も彼女一人だけで挑んでいるわけではない。
 まだ一人……準備をしている物が、後方に控えているのだ。

「……輩の弔いのみならず」
 蒼き焔と溶けた鉛をその身にまとう鎧の騎士。剣を構え、黒風を呼び其処に仁王立つルパートが。
 されど、その彼の纏う輝きも、力も、普段とは異なっている。
 いつもは炎を噴き出すのみだったその鉛が――関節部から吹き出、更に蒼々と激しく燃え盛っている。決してあり得ぬ配色ではない筈なのに、その不気味な炎は“あり得ない”と否応にも思わせて来た。
「我が暴虐を阻むもの、許すまじ……といったところか――いいだろう」
 これが――ルパートの【真の姿】。油断なく端からすべてを叩き込もうと、彼自身望んで解放したのだ。中に人がいないかのような、恐るべき姿を持って。
 ……そう。彼は人間でも、鎧に似たクリスタリアンやウォーマシンでもなく。
 元の主の魂を宿す、ヤドリガミだったのだ。
「シィィイィイ……!!」
 無論、迫力の網から逃げられるのは鬼も同じ。例外なく、怒りのみだったその瞳に確かな畏怖を滲ませている。
「黒騎士ルパート・ブラックスミス……いざ、鬼退治といこうか」
 そう口上をつぶやくと、ルパートは真正面から突撃していく。
 まるで挑発するかのように、対処しきれるだけの速さで向かっていく。 
 ――ふざけるな――そう言いたげに鬼の剣を這う怪炎が激しさを増すのに合わせて、ルパートも蒼炎の火力をまた引き上げた。
 ユーベルコード『黒風鎧装』の力もあって、正に万全の状態……。
「カアァッ!」
「ガァァ!!」
 ……そして正面からぶつかる、和と洋の剣。
 鍔迫り合いにより爆熱の衝撃波が周りへと飛び散り、地面の尽くを焼いていく。
 蒼と黒との衝突が、その焦がせし境界線を瞬く間に引いていった。
 格上なのは変わらず、二度、三度と剣をぶつけ合うたびに、周りの猟兵達へ鬼は銃弾を撃とうとする。
「甘い!」
 だがルパートも今は真の姿――常時より格段に強い。
 銃弾が黒風により吹き散らされ、また気を取られた隙に剣を叩き付けられる為、先以上の傷を鬼は刻まれて行っていた。
 炎への耐性など言うまでも無く、彼自身が留めるお陰もあって鬼は優位を勝ち取れない。
「シイ……!!」
 傷つくのも構わず、鬼は思い切りよく剣を振り下ろし、距離を取った。
 この距離ならば銃に専念できる……と。
 その判断が甘い事にも気が付かず。
「!!」
「かかったな?」
 飛来した第二の武器、短剣が鬼を抉ったのだ。大剣での鍔迫り合いは、この為の布石だったらしい。
 ルパートへと決定的な隙を見せないその技量は流石だが、如何せん彼の方が一歩上手だ。煌々と蒼く照らす炎の剣弾は鋭く激しく、鬼の周りを飛び回る。
「ジャアアアァァ!!」
 その一手を煩わしいと大きく炎の刀で薙ぎ払った。
 短剣が更に吹き飛んでいく。最早銃より守る物も無く……好機とばかりに、鬼の目がルパートの方を向いた……!

「我が剣は、魔を討つ炎……!」
「!!」
 それすらも大きな一撃を放つための、策の一部だと、果たして鬼は冷静でいても気が付けただろうか。
 ――直近まで肉薄した静流の刀が赤々と宙を翻る。
 今までの火炎を纏った【十六夜】の一撃も中々に強力ではあった。しかし、真の『二ノ太刀・紅(ニノタチ・クレナイ)』は自己強化の一撃にあらず。
「焼き払え!」
 自在なる破邪の炎が舞い散り、敵を焼き斬る抜刀術である……!
「ガアアァァァァ!!」
 直撃してからブッ叩き、刀の軌道を逸らすという荒業で、その刃が通り切る事は防いだが……確かな傷を刻んでいる。
 初撃から、猟兵達は流れをつかんだと言えるだろう。
「もう一撃重ねましょう!」
「ああ。このままより、引き寄せる……!」
 赤き焔を上げる静流が、蒼き焔を噴くルパートが、それぞれ並び駆けだしていく。

 ――戦いはまだ、始まったばかり――

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

灯璃・ファルシュピーゲル
初動でコードで黒霧を纏った狼達を召喚
「戦闘知識・情報収集・見切り・だまし討ち・迷彩・目立たない」で
白兵戦中の味方と敵の動きを読み、その動きに連携し戦いに
紛れ込むように肉薄させ死角から頭・脚部狙いで襲い掛からせます

同時に狼の纏った黒霧を纏わりつかせることで煙幕代わりにして
敵の視界を妨害し味方の攻撃をアシスト。
自身も「スナイパー・鎧砕き・鎧無視攻撃・見切り・2回攻撃」で
敵の腕と脚の装甲貫通狙撃による間接破壊を狙い。
敵の機動力と攻撃手段を弱らせるよう戦闘。

以降も動きつつ断続的に精密射撃で圧力を掛け制圧を目指します

何を計画していたのかは知りませんが・・・
部下に無謀な戦いをさせた時点で指揮官失格ですよ


鬼灯・ほのか
「あらら、藪じゃなく狸をつついたら鬼がではったねえ。まあ、せっかくお越し頂いたさかい、うちと一戦付き合ってな?」

うちは、第六感と残像を駆使して、敵さんの攻撃を避けつつ「鬼酒呷ノ事」をつこうて、持ってきたお酒を飲みながら身体強化をためしてみます。うまくいかはったら、敵さんの側面や背後を狙って切り込み、一撃離脱。そしてまた、回避を試しつつお酒をあおり、死角から攻撃。これを繰り返せば敵さんもそうとう焦らされるやろなぁ。
我ながらいけずなことしとると。思うけど堪忍してや?焦って隙ができたところを、首や心臓を狙って切りつけ致命傷を負わせたいところどすなぁ。(OK)



「アアァァアアァァ……!!」
 決して軽くはない傷を負い、されどまだまだ健在な鬼が牙を剥き、猟兵達へと咆哮する。
 ここにきて、オブリビオンと猟兵と言う敵対関係――自然と湧き得る敵意の発露以上の憤怒の情が噴き出てくる。
 圧力も徐々に増していき、飛び交う風には熱すら感じる。此処より鬼の攻勢はより苛烈となって来るだろう。
 現に、その刀にまとわりつく妖気は濃さを増し、近付いた猟兵達を片っ端から吹き飛ばさんと振り回す腕の速度も上がっている。
「オオオォォオオ!!」
 攻め手こそ欠かないがそれでも敵が苛烈なのに変わりはない。
 ……だが事此処において、安易に強く【敵意】を抱いたのは間違いだった。

「Sammeln!Praesentiert das Gewehr!・・・・仕事の時間だ、狼達≪Kamerad≫!」

 何故ならこの戦場には灯璃が居るのだから。
 彼女のユーベルコード『Schwarzwald Wolfsschanze(シュヴァルツヴァルト・ヴォルフスシャンツェ)』により出、光呑む影の狼群が敵意を感知し鬼へと瞬く間に跳びかかっていく。
「タイミングは既に見切りました……故に、先んじて仕掛けます」
 最初に立ち回った猟兵達の動きから鬼の初動のクセを見切り、味方の間を縫う形でだまし討ちを仕掛けたのだ。
「ジィイイィイイ!!」
 ……しかし、隙をついてもやはり大将。咄嗟の剣の鎌風が如き一振りや、他の猟兵達をも牽制する威力の銃弾で、近くにいた数体の――狼のような影達の接近を阻んでいく。
 白兵戦中の味方を援護する形で頭に飛びつけば、焔付きの喝破で散らされ。
 脚部を狙った爪立てれば、放たれる闘気で動きを止められ縫い付けられる。
 あまりに一方的だった。
(これは――)
 しかし。
(――良い流れですね)
 だがそれすらも想定済み。寧ろ彼女の“策”の一部。怒りにかられたこの鬼が、攻め立てられた方向へ向かない訳が無いと……確信があった。
 鬼が勘で察知し彼女へと闘気を差し向け、予兆を既に知り得ていた灯璃は若干ながら鈍る程度で納める。
 この鈍足も、好都合。

 なにせ……。
「あらら、藪じゃなく狸をつついたら鬼がではったねえ?」
「!!」
 鬼の背後に、もう既に刀を構えた一人の羅刹が――ほのかが居るのだから。
 左目を隠す灰髪と朱色の衣をなびかせ、サムライブレイドを振りかぶったままに。
 そして、もう片方の手に何故か【酒入りの徳利】を握って。
「バァァ……ア゛アアァァッ!!」
 振り向きざまに呪いの炎を纏った刀が振り下ろされてくるのに対しても、ほのかは動じず寧ろ酒を口に含んで見せる。
 第六感の警鐘と反射に支えられ、また染み付いた動作による残像生む歩法が惑わしている物の――故余りに危うい行為だ。
 だがその行いを繰り返す度に……彼女の動きの切れは、寧ろ鋭さを増していく。
「ぷはぁ……っ」
 そして等々、最初は避けるのみだったその炎閃に、剣閃を合わせて琉麗に捌く事すら可能としていた。
「それじゃあせっかくお越し頂いたさかい、うちと一戦付き合ってな?」
「ガァァァ……!!」
 上段からの一振りを、左を向きつつ刀を掲げて己の背後に流し、一歩距離を置いてからほのかのサムライブレイドが翻り――次の瞬間には、脇腹へ刀傷をつけていた。「――ィィッ!!」
 もともとそこまで技巧派ではないのか、基礎の型こそ踏襲していれど、其処まで洗練されてもいない。筋力の問題でタイミングが読みづらいが……しかしてそれのみ。
「ほいっ」
 離脱した、もうほのかのいない位置を炎刀は空しく通り過ぎ、刹那に踏み込まれもう一刀をお見舞いされる。反撃も華麗に残像を貫かせてみせ、酒すら煽る余裕を醸し出す。
「っと……!?」
 ――だが余裕を出し過ぎ、一手僅かに『噛み合い』から外れてしまう。
 少し軌道修正し、刀を突き出そうとほのかの手がブレ動く……。

「いえ、そのまま斬り続けてください……!」
「グアアァ……?!」
 それをまるで予期していたかのように、狼のような影達が再度、灯璃の命で鬼へと跳びかかっていく。
 振り払ってやろうとした鬼だが、今度は霧をメインとして纏わり付かせてきた狼達に驚きを隠せない――何せ、視界があっと言う間にふさがって行くのだから。
 更に。
「先の切り合いで見えました……そこ、ですね!」
 何とか対抗しようと鬼が動いたその瞬間を狙い、僅かに覗く無防護の部位――鎧の隙間へとピンポイント銃撃。
 足の関節を見事に撃ち抜いて、距離を取ろうとしたその歩みは激痛によりストップさせられた。これだけならばとギロリ、ほのかを闘気により慄きで停止させようとする。
 のだが、精密射撃が今度は無防備な腕を狙ってくる為、その怪我を負った足で無理に動かざるを得ない。
「忘れんといてや……うちをほっぽったら、あかんよ?」
「っ、ガアァァッ!!」 
 その隙に背中をほのかに切られ、立ち止まってしまう。
 背面への月を放つのだが、それも避けられ、酒を追加で呷る様を目撃するのみ。
 彼女自身我ながら“いけず”な行いをしている物だと思いつつ、だからこそその感情をも顔に浮かばせ。
「……堪忍、してや?」
 にやり笑う。
 ソレに、にわかに焦り思い切り振り返ろうものなら――。
「ガラ空きですよ」
 飛んできた銃弾を無理な体勢と拳ではじかざるを得ない。
 しかも今度は確り連携が機能し、死角から影の如き狼たちの牙が頭部へ、そして傷だらけの足へ向かって来るのだからたまらない。
「ギイイィイァアアァァ!!」
 とうとう耐え兼ね、狼達もほのかも無視して炎を噴出し、灯璃の方へと無理やり突貫してくる。
 捨て身に近いからこそその勢いはバカにならなかった。
 万事休す――には、しかしやはり遠く。
「何を企んでいたかは知りませんが」
 灯璃の構える【Hk477K-SOPMOD3"Schutzhund"】の銃口より、銃火の閃光が瞬く方がより早く。
「部下に無謀な戦いをさせた時点で……指揮官失格ですよ」
 駆けつけなかった事、配置確認を怠った事、それらをぴしゃりと指摘し――銃持つ左腕を撃ち抜いて見せる。
 まだだ!――と動く鬼の懐には、三度ほのかが潜り込んでおり。
「そぉら……!」
 ――首を薙ぎ、心の臓を狙い突く連撃が、鬼の体より鮮血を吹き上がらせた。
 それでもまだ立っているあたり恐らく……。
「どうやら間一髪で外されてしもうた様どすなぁ」
 そう呟くほのかの顔には、しかし残念そうな色こそあれど焦りは微塵も無い。
 確実に追い詰めているから。何よりも、技術の底が見えたから。
 そして灯璃の援護を受けながらに、ほのかは再び剣を閃かせて行く。

 ――着々と、終わりの時が近づいている。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月島・彩希
【三叉槍(トライデント)】で参加
中々の強敵のようですがお二人と一緒なら負ける気がしませんね

【戦鬼戦】
恐怖には【勇気】を持って打ち克つ!
呪いには【呪詛耐性】と槍に付与した【破魔】で対処
絵里香さんほどではありませんが【破魔】は私も出来るんですよ?

メインは【残像】による【フェイント】を交えた【ダッシュ】による敵の撹乱と槍攻撃
タンケイさんのUCで敵の動きが阻害されたら絵里香さんと一緒に【力溜め】からの【氷属性】を付与した槍による【槍投げ】をして氷結効果での【マヒ攻撃】狙い
最後はタイミングを合わせて雷迅槍(UC)を使用
加速による速さと【怪力】が込められた突きを繰り出し、槍に纏わせた【雷属性】で焼き尽くす


タンケイ・オスマンサス
【三叉槍(トライデント)】で参加
バックにはこんな邪悪な鬼が潜んでいたのですか…私一人じゃ苦戦していたかもしれない…けど今はお二人がいる!力を合わせて倒しましょう!

敵の闘気による恐怖も心強い仲間の存在によって暖和されるでしょう。
敵の姿に惑わされぬよう目を閉じ集中して【誘惑の芳香】を発動。
むせ返るような甘い香りです。濃密な香りは時に幻覚をも見せ、もろに嗅げばその甘い【誘惑】の香りに意識が朦朧としてしまいますよ?嗅覚への攻撃、防げますかね。
呪いの力が宿った敵の攻撃は【見切り】、万が一当たっても【呪詛耐性】で耐えます。神宮寺さんと月島さんの麻痺攻撃が決まったらUC【大樹の怒り】
皆で一斉にとどめです!


神宮寺・絵里香
【三叉槍(トライデント)】で参加
≪心情≫・呪いをばら撒く悪鬼か。その呪いの炎、オレの雨で鎮火する
・タンケイ、彩希、連携して奴を潰すぞ
≪戦闘≫
・【祈り】を込めた【高速詠唱】からの【破魔】の力を宿した
 『我等雨雲と共に舞い踊る巫女也』を発動
 【破魔】の力が籠った雨を降らせる
・叢雲に【水属性】と【破魔】を付与。聖水の一撃を込めた【薙ぎ払い】
 で呪いの炎を掻き消す。敵の攻撃は【見切り】、【武器受け】
 して対処
・タンケイのUCで敵の動きが鈍ったら彩希と一緒に【力溜め】をして
 【雷属性】を付与した雷槍を【槍投げ】をして【麻痺攻撃】
・最後はタイミングを合わせて【全力魔法】からのUC 
 3属性の槍で【串刺し】



 数多の猟兵と渡り合い、また傷を刻まれて、それでも鬼は暴れ続けている。
 回復しているかはたまた根性か、傷ついた体で尚、キレを衰えさせようとしない。
 その憤りによる攻勢は、もはや執念の域。
 ――過去、この地に何かあったのか。
 巡り合わせの悪さで及ばずに知って行った故なのか……ソレは、もう分からない。
 だが。いやだからこそ。
 己の「充」の為だけに、広がる未来を食い潰すべく、過去から這い出たその鬼を――オブリビオンを決して許してはならないだろう。 
「オオオ……ゴオオォォオオ!!」
 空を自在に飛び回る銃弾を操り、また大火巻き上げる呪詛の刀を振り回し、時に足を止めさせる闘気を用いて……負傷など知らぬとばかりに鬼は暴れ出した。
 一見して手が付けられぬ、全て破壊せんとする狂化の類。
 しかし裏を返せば、傷ついているからこその暴域発生。
 ――この好機を前にに、三つの槍がそれを逃さず、早駆けてゆく。
「タンケイ、彩希――先の通りだ、連携して奴を倒すぞ」
「はい! 力を合わせてかの鬼を撃ちとりましょう!」
「強敵のようですが……お二人と一緒です、負ける気はしませんね!」
 三叉槍を思わせる息ピッタリのタイミングで跳び出した――絵里香、タンケイ、彩希。
 鬼が中々の実力を持っているからこそ、先の集団戦同様、コンビネーションプレイを継続……連携を続けて行う事に決めたのだ。
 ――先陣を切ったのは、彩希。
「先ずは一撃!」
「ア゛アァァアァ!!」
 彼女の動きに合わせて銃弾が乱れ飛び、雨の如く次々着弾していく。対する彩希は、突撃すると見せかけ残像を映し、また踏み込みの度合いを変えてタイミングをずらし、敵が操作する弾丸を尽く躱してゆく。
「甘いですよ……!」
 肉薄しようとする彼女を近づけないのが鬼にとっては最良。が、その頻度を減らせているだけで、追い詰められているも同義だ。
 僅かな隙にすれ違いながらチクリ、刺されるのだからたまらない。
 ならば――!と鬼が数発いっぺんに叩き込もうとする……しかし、狙い定めたはずの先の姿がブレて消え……。
「遅い!」
 気が付いた時には、もう既に脇腹を突き切られた後。勘が働いたか僅かに剣で反らしてはいたが、大きな傷を刻まれていた。
「オオオオオオオォォォオオオ!!」
 小細工抜きとばかりに鬼が次に手を出したのは、呪詛の籠った魔暴の怪炎。己が意思で孤高と黒く燃え盛り、望まぬ限り消えぬ火炎が地をなめる。
 範囲の広さと攻撃性では流石に敵わないのか、彩希は大きく弧を描きまたは直角に曲がり、どうにか回避していく。
 しかしこのままでは追い詰められてしまうだろう。

「――急急如律令!」
 だがその結果を覆さんばかりな闘気の発露と祈祷の概念を持って、高速にて詠唱を終えた絵里香の一言が響いた。
 途端……何処からともなく【雨雲】が現れたかと思えば、何処か神聖な気を含んだ雨が降り出したではないか。
 それは――正しく恵みの雨。
「オ゛……オオォオ……!?」
 火と水という相性の差、そして呪詛に対する破邪の力を持って、焔の勢いを瞬く間に抑えていく。
 全てには及ばずまた鬼の執念がまだまだ炎を彩希へと嗾けさせていたが――火壁の程度まで抑えられた、それを彼女が悠々避けられない筈も無い。
 驚く鬼へ向け、絵里香が静かに口を開く
「――悪いな、かき消させてもらった」
 呪いをばら撒く悪鬼ならば、巫女として鎮火へ導くのみ。抱いていた意思通りの結果をもたらした絵里香は次いで、叢雲へと神聖なる水の力を付与して突撃する。
「ギイイィィイイ!!」
 自らの近くなればこそか、呪いの炎は尚も赤々と周囲を焼き、また黒々と燃えては光り輝く。
「ぬるいな」
「そこです!」
 振り下ろされる刀。
 それは絵里香の円を描く薙刀捌きにより尽く端にそれ……その背後から、彩希が再び斬り付ける。
「ジャアァァアァァァ!」
 より一層燃え盛る刀を“両手”で振りかぶった鬼は、軸を少しずらして2人諸共爆炎に巻き込もうとしてきた。
 ……されど。
「消えろ!!」
 白蛇を思わせる水閃が走ったかと思うと、数瞬、そのドス黒き熱量があっと言う間にかき消される。
 炎が蘇ったその時には既に、剣蜂に突き刺さった後。空しくただ燃えるのみだ。
 切り替え早く刀を振り上げても見切っていた絵里香には通じず、一瞬の防御から思い切り跳ね上げられるのみ。
「もう一撃です……!」
「――ッッッ!!」
 その隙を狙って再度飛び込んでくる彩希の【灰狼の槍】の穂先を……鬼は当たること厭わずに掠めてでも、挟み撃ちにならぬ範囲まで後退した。
 刹那――不気味なまでの静寂が挟まれたかと思うと、鬼より力が――“闘気”が一気に噴き出してくる。
「コオオオォォォォオ……!!」
「く……!?」
 鬼の濁った瞳に、そして突きつけた武器に宿るは怒りだけでなく、悪鬼羅刹の歪なる波動だ。
 プレッシャーだけで常人を殺す事すら可能とするそれは、猟兵の身体すら強張りで停止させてしまう。
 戦意は全く折れぬ絵里香だが、直近で受けてしまったせいもあったか……体の方は恐怖の所為で思うように動いてくれない。
「させ、ません!」
 割り込んだのは、彩希。
 ふり絞った勇気が一歩を強く踏み出させ、タックルをかますようにかっさらい、武器の軌道から見事退避させた。
 だが鬼は彼女等を逃がすつもりもなく。そのまま、もう一度更に強めた闘気を込めて雄叫ぶ……!

「………?」
 ――直前で、違和感に気が付いた。
 噎せ返るほどの甘い匂いが、まだ少量の雨が散るこの空間の中でも、はっきりと漂ってくるのだ。
 異質なるオブリビオンですら足を止める、余りに不可思議な、異常現象……。
「気が付きましたか?」
 それはこの戦闘から一歩引いて準備を整え、機会を待っていたタンケイによるもの。
 彼女の髪に咲く金木犀から、件の匂いを発生させている様子。
 極度に集中するためか目を閉じているタンケイは――やはり、隙だらけだ。
 当然鬼がそんな好機を逃す筈もない。
 手にした銃の引き金を殺意と共に引いた。
「―――!?」
 否、引こうとした。
 だがその指が一拍遅れて動き、更に狙いとは違う明後日の方に弾丸が飛ぶ。
 それもその筈、この金木犀の甘い香りがただのマドワシである筈がない。
 之もまたユーベルコード……【誘惑の芳香(チャーミングフレグランス)】と呼ばれる対象の動きを封じる技の一つだ。
「この甘い香りに、ただ身を任せて……」
 幻覚や四肢の力の元帥が合わさり、鬼は上手く行動できない。だがしかし腐っても大将。
「―――――!!」
「! そう来たのね……!」
 無音で発せられる濃密な気迫から、これ以上香りをかがないよう呼吸器を堰き止めていることが分かる。
 異形、そして異質、過去からの産物という【今ならぬ者】だから出来る力業の策である。
 打ち出される攻撃は見切れるものの、無茶に暴れるせいで逆にタンケイ側から攻撃を打ち込むのが難しい。
「けれど、防御は出来る……!」
 何もせず立っていては刻まれるだけだと、宣言通り一手割り込み、鬼の攻撃を少しばかり止めてみせた。

「――今です!」
「応……!」
「はい、行きますよ!」
 たったそれだけの僅かなチャンスは、三人の力を合わせることにより、大きな好機へと姿を変える。
 力を溜め込んでいた絵里香が、そして彩希が、同時に槍と薙刀を逆手に構え――片や蒼くも激しく爆ぜる雷撃を。片や白く透き通りまた凍えに遮る凍氷を。
 槍へと纏わせ……思い切り投擲する。
「ゴ、オ、オ……!」
 タンケイに集中していた鬼はその投擲をまともに喰らい、四肢は氷漬けにされ、その直後に流れ込んだ稲妻により遂に完全にマヒさせられる。
 互いを信じていた彼女達は、迷わず三方向へ散り、この瞬間に全力を打ち込むべくユーベルコードを発動させる。
「大いなる水を司り白蛇の神よ――」
 再び降り注ぎ、絵里香の元へと集る激流が。
「狼の牙から逃げられると思わないで……」
 内より出り、強大な力として具現する雷が。
「まだ、ありったけを……!」
 大地を支える、広大なりし土と大樹の力が。
 彼女等を中心に収束した。
 ――刹那。
「蛇水槍・八岐!!」
「雷迅槍!!」
「大樹の怒り(ルーツスピア)!!」
 トライアングルを描くように、三方から同時に三色の力が突撃。
 絵里香と彩希は槍を掴み、タンケイは槍を放ち、思いっ切り押し込んだ。
 雷電が暴れ焼き尽くさんとし、水流が串刺しにしようと食いつき、樹根が純粋な力で撃ち破らんと……その力を解放する。
「ガアアアァァアアァァ!!」
 動けぬ鬼はコレをまともに喰らい悲鳴にも似た大咆哮を上げた。
 このまま一気に押し込んで……と、そう思った瞬間。
 鬼はトコトンな間での執念深さを見せ、トライアングルに耐え其処から逃れると最後の抵抗に出る。
「ジイイイイイィィ……バアアァァァッ!!!」
 銃を撃つ、撃つ、撃つ――方向など知らぬ弾幕を撒いて、猟兵達をぶち抜かんとしてきた。
 破られた時点で見切り、予測できていたのか、絵里香達は無事範囲外に逃れてその鬼の最後の抵抗を見やる。


 ――終幕は間近――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百目鬼・明日多
これが狸達の長…という感じでも無いですね。
どういう関係かは知りませんが、容赦はしませんよ。

『銃王無刃』に対して、『電脳化身の拳』で
銃弾を全て掴み取る、もしくは叩き落すのを狙います。
先んじる為の速度とオーラ防御があれば可能なはず…!
銃弾を捌き切れれば一気に接近、拳の連打で攻撃します。
刀・銃・闘気に炎と強力な攻撃が多い相手ですが
至近距離での殴り合いで、僕のアバターが負けるなんて思いません。
そう信じて、0.01秒でも早く敵の攻撃より先に拳が届けば
それで全てが決まります。
一度決まった拳の連打は、敵が倒れるまで止む事は無いですよ。



 鬼が齎した最後の抵抗……刃を捨てた呪炎の銃撃。縦に横にと乱れ飛ぶ弾丸の嵐。
 『銃王無刃』と名付けられたその絶技を、命を削り、全てを賭けて猟兵達を一人でも多く蹴散らさんと撃ち放っている。
 比喩なく鉛と炎の雨、鉄量の具現が降り注ぐ。
 煙を上げても尚やまぬ弾丸の中を――明日多は小柄な体で突き進む。
 周りの猟兵達が銃弾を叩き落し、間を進む中で、彼はより一歩前に出る。
(鬼の大将……ですか。狸達と一体どういう関係だったのかは知りませんが……)
 この地に関係合ったのかもしれない。
 狸が人生に何かしらの影響を与えたか、若しくは過去の元になった【者】が狸に縁があったか。
 もう分からない。
 だからこそ。

「――一片も、容赦はしません」

 言葉通りの気迫を持って、臆せず弾幕の中へ明日多が突っ込んでいった。
 そして衝突するその瞬間、刹那に現れた【青年型アバター】が、彼の背後より弾丸を拳で蹴散らし始めていく。
 先んじて動き、優位を掴むための“速度”は十分。
 ならば後は気合のみ。本体より沸き上がり、そこから伝ったオーラを纏い、銃弾をいなすべく――また青年アバターがその手を伸ばす。
 明日多の命を実直に行う……“銃弾を残さず、掴み取ろう”と……!
「グルァアアァァァ!!」
「吠えるだけで止まるほど、怯え症でもありませんよ」
 そも怯んですらいない彼はただ、アバターと己を信じ進むのみ。
 頭部へ飛ぶ弾丸には――指を伸ばし突いて弾き、数発の弾丸を巻き込んで穴を作り。脚部へ飛んでは――体を捻りつつ躱し、アバターが弾丸を摘まんでは放る。
 一歩、一歩確実に駆けてゆく。
「おっと……!」
 己へと飛んできた弾丸に身を傾けて避けた明日多。
 それに合わせて青年型アバターの腕がブレては閃き、死角から飛び込んで来ようとした弾丸へ『投げ放った弾丸』がぶつかった。
 文字通り、バリバリと弾けるようにして弾幕が散ってゆく。

「ジイイイ……ギィア!!」
「!」
 より近づいてきた彼を危惧し、鬼がだんだんと弾丸を集中させていく。
 摘まんでは投げるこの肯定も……青年型アバターの速度をもってしても間に合わなくなってくる。
 だが。
 そもこのアバターの得意は――精密動作による技法のみに、あらず。
「ラッシュで、叩き落します!」
 豪速で飛ぶ拳の乱打である。
 後ろに回り込もうとするものを、明日多が誰より接近したことに気が付いた猟兵が援護でカバーし。
 その頼もしき追い風に支えられ、手が幾本にも見える程のラッシュを打ち込みながら【青年型アバター】が突き進む。
 明日多もまた、其処一点だけ空白の空いた弾幕の中を、着実に進んでゆく。
 ……敵は刀を振るい焔を飛ばし。また自在に跳ぶ弾を操り、銃を撃っては穿ち。
 そして縛する闘気で確実なる一撃のチャンスをも、引き寄せてくる。
 更にそれでいてこの“タフネス”。
 強力な技能を詰め込んだこの相手に対し、しかし明日多は信じていた。
――至近距離での殴り合いならば、自分のアバターは確実に勝てると―――
「ジャアアァァァァ!!」
 近寄る都度、弾丸の速さもまた鋭さごと増す。
 青年型アバターに尽くかすり、明日多も身を翻し続ける。
 とうとう肉薄した猟兵達へと……鬼はありったけの弾丸を押し寄せさせた。
 より早く、より多く。己の銃すら構え、明日多を塵にせんとして。
「ルゥラァァ!!」
「オオォォォ!!」
 弾か。拳か。
 鬼か。兵か。
 果たして…………0.01秒の闘いを制して貫く、鉛の弾。

「――ルゥァラッ!」
 それをも穿つ骨肉のハンマーが、凌駕した速度で鬼へと突き刺さった。
 一度決まればそれで終。
 最早止まることなどない。アバターのラッシュも。そして、明日多の闘気も。
「ルゥァララララララララララララララァ!!!」
 ラッシュ、ラッシュ、止まらないラッシュ。
 鬼の悲鳴すら呑み込んで、流星の如く拳がかっ飛ぶ。
「ルゥァララララララッ! ルゥァララララララララァァァ!!!」
 まだまだやまぬ拳の中で、鬼は――最後の抵抗を示していた。
 炎を上げて拳に合わせてくるという……驚異的な執念を持って。
 なればこそ、明日多は一度だけ顔を伏せ――
「――ルゥァラララララララララララララララァアアァァァァッ!!!」
 全身全霊を持って叩き込んだ超速の乱打と、力強いアッパーで仕留める。
 青年型アバターと合わせて見つめる先。
 天へ目掛け吹き飛んだ、大将各の鬼を見やり……。
「僕達の、勝利です」
 明日多のその一言を最後にして――鬼は、木っ端みじんに吹き飛んだ。


 多数を使役し、怒りに燃え、街を乗っ取らんとした鬼どもの企みは。
 こうして、余りにあっけなく……しかし見事なまでに潰える。
 占領していたオブリビオン達に、猟兵達が勝ったのだ。
 後はこの件を報告するのみ。
 ……さあ、街の住人が待っている。
 ――大手を振って帰ろう。守る事叶った、漁業の町へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ゆるり太公望』

POW   :    量より質。大物狙いの一本釣り!

SPD   :    質より量。とにかくいっぱい魚を釣る!

WIZ   :    釣った魚を料理したり、他の人の釣ってる姿をぼーっと眺めたり

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 のんびりとした時が流れ始めた。
 脅威が近場より無くなったこの漁街も、うわさを聞きつけ徐々に活気を取り戻していくことだろう。
 と……ゆっくり皆が眺め、また談笑などしていた、そんな中。
 この町の代表者らしき男性が、感謝の意を込めてなんでも頭を下げながらにこう提案してくれた。

「この町では釣り堀の真似事でも商いを広げているんです……どうです、釣りをやってみませんか?」

 金銭こそ取らないが無論商売ではある為、一定数以上の釣果は街に還元される。
 だが裏を返せばすなわち、新鮮な魚をその場で食べられ、また街に貢献も出来るという事だ。
 無論、釣りをせずに街を巡り名物を食べ歩くのも良し。
 ――猟兵達のつかの間の休息。
 さて彼は、彼女は、どうすごすのだろうか。
百目鬼・明日多
流石に今回の戦いは疲れましたし、ゆっくり釣りをさせて貰いましょう。
釣りってゲームの中でしか遊んだ事なかったんで、
実際にやってみたかったんですよね。
餌をつけるのとかはアバターに手伝わせますけど、
釣り糸を垂らしてからは自分の力だけで。
やっぱり初めてやる遊びは、自分の手で楽しまないとです。
ゲームの様に上手くはいかないと思いますけど、
それはそれで楽しまないと、ですね。

ところで、この辺りでは何が釣れるんでしょうか?
…実はゲームアバターはパワーもスピードも自信有りますけど
僕自身はそこまで力がある方じゃないというか普通の子供くらいなので
あんまり大きいのとか重いのだと力負けしちゃうかもなんですけど…!



 先までの騒然とした戦いの空気が、嘘のように霧散している川面の傍。
 河口にも近いそこで――明日多は大きく、しかして静かにため息をついていた。
 その理由など言うまでも無く。
「流石に、今回の戦いは疲れましたね……」
 先までの狸達と、鬼達との漁場争奪戦後に襲ってきた疲れの所為で……である。
 青年型アバター達こそ狙った個所へ刃を飛ばすテクニックや、また敵を散々に殴り飛ばせるパワーを持つが、それを操る明日多本人の身体能力は彼等よりも低い。
 そんな彼が鬼の付近へと肉薄するべく、銃弾の中を必死に駆け抜けていたのだ。
 ――むしろ疲れない方がおかしいだろう。
「体を休めるのもかねて、のんびり釣りをさせてもらいましょうか……お言葉に甘えて」
 早速釣り道具を一式借り、餌をもらった明日多は教えてもらった幾つかの釣りポイントの内1つを選び、其処へと徒歩で向かっていく。

 釣り場についてから数分後、
「おっとと、お願いします……」
 アバター達に手伝ってもらいながら、明日多は釣り糸の調子を整え、また釣り針に餌をつけたり錘を固定して――彼らを少し後ろに下がらせた。
 明日多自身、力がある方ではないのは彼が一番わかっている筈。ならば何故任せないのか……その理由もまた単純で。
「ゲームではない本物の釣り……やってみたかったし、だから自分の手で楽しまないとですね」
 “初めての釣りだからこそ”。
 そう彼は独り言ち、釣り糸を垂らす。釣り針が落ち沈んで行った水面に波紋が広がり、小さく見えた魚影が慌ただしく広がっていく。
 其処からしばらく待つのだが――警戒心が強く、すぐにはかからない。
「あ、取られてますね……」
 かと思えばアタリが分かり辛く、餌が無くなっているときすらある。
 実力も、運も、ゲームと同じくかかっている。
 だがやはり、ゲームのように上手くはいかない。
「悔しいですね……でも」
 こうやって気長に待つのもまた、良いものかもしれない。明日多はそう思いながら――少し違和感を感じた竿を引き上げてみる。
 すると。
「あ! やった、釣れました!!」
 細長いマスの様な、赤い一本戦の入った魚がかかっていた。一匹見事釣り上げ、明日多も自然と笑顔がこぼれる。
 此処で勢いがついたのか、二匹目、三匹目と同じ魚を釣り上げ、初心者という事に鑑みれば中々の釣果を叩き出し始める。
「なる程、これは確かに……ハマる人がいるのも分かります」
 つれない時の、どこかゆったりとした時間。
 かかった時の緊張感。
 そして釣り上げたときの、喜び。
 これ等にまた技術やスポットやら好みまで合わさってくるとなると――趣味になるのも頷けた。

 そして10匹を超え、少し釣り辛くなり始めた所で、明日多は思案する。
「取りあえず……数は揃えてますし、後一匹まで粘りますか」
 欲が出て来たのもあるが、中途半端に長引いたままでは終われないらしく、先よりもしっかり釣竿を握って明日多は水面を見つめ続けた。
 こういう時に限って、魚影すら見えないもどかしさを感じながら。
 だが、決めた事だからと……腰を上げる事はなく、釣竿を小刻みに動かす。
 ――そんな彼の願いが通じたのだろうか。
「っ……来た! 大きいですね、これは……!」
 今までで一番竿が撓り、ギシ、ギシと釣竿もきしむ。間違いなく大物がかかっている。
 待ってましたと、明日多が思い切り竿を振り上げ――ようとして、全く動かない。
「うぎぎぎ……!!」
 掛った獲物が大きい所為か、持ち上げるに至らせてくれないのだ。
 水圧もあり、腕力が乏しい事もあって、徐々に引っ張られ持っていかれる。
 そして等々。
「う、わぁ……!?」
 思い切り足が滑ってしまい、そのまま水面の方へ――と行く直前で、待機させていた青年型アバターが手を出しどうにか明日多の落下は阻止された。
 だが……釣竿は持っていかれ、幸運にも浮いては来たが獲物はおらず、既にもぬけの殻だ。
「――悔しい、ですね」
 素直にそう感想を漏らした明日多。
 その後、諦めきれず垂らしたのが功を奏したか今までで一番大きな魚は釣れたが……先の大物ではないと重さで理解し、心残り有りながらも釣り場を後にする。

 釣果を、自分達へのお土産分と町への還元分だ分けた後、「町を救ってくれた人達へせめてものお礼」と火を用意してくれていた男性が、なんとその場でマスの様な魚を焼いてくれた。
 世界模様故、こういう串焼きの店を営む者もいるらしく、男性はパリパリふっくらに魚を仕上げてみせる。
「よし……いただきます」
 丁度良い焼き加減の物をもらい、明日多はゆっくりと、一口齧ってみた。
 広がる香ばしい味と、淡白な白身ながらも存在感のある風味と、素材を引き出す塩の味がなんとも言えない。
 それに思わず感動し、勢いで数口頬張ってから、明日多は静かに決意する。
(もし機会があったなら、次こそ……あの大物を釣り上げてみせます!)
 こうして――初めての釣りは、少年に一つの目標を抱かせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜神・静流
釣りは川釣りを少しやった事がある程度で、あまり経験はありませんが……折角ですので挑戦してみましょう。
興味はありますし、街に貢献できるのであれば是非とも。

視力・第六感・投擲技能で魚が多くいる場所に当たりをつけて、釣り針を投げます。
後は気配を殺して、餌に食いつくのを待ちましょう。

結果はどうであれ、焦らない事が肝心でしょうか。
心を水面のように静かに保ちながら、機を待ちましょう。
……これは剣術に通じる部分もあるかもしれませんね。



 ――また別の場所でも、釣りに赴こうとしている者が居た。
「ん? 釣り初心者なんですかい、お客さん」
「いえ、川釣りを少しやった程度なのですが……」
「なら大丈夫でさぁ。そう難易度も高くないんでね、ここらは」
 じゃ無ければ商売あがったりだ。
 と面白そうに笑う管理人の男から竿を受け取りながら――静流は彼の笑顔へ返すように……そして釣りへの楽しみから微笑みつつ、看板に書かれた所謂『ポイント』を確認していく。
 釣り場を一纏めにした際の“平均的”な難易度自体は確かに高くなさそうだが、それでもやはり個所毎に少しずつ異なってはいる。
(折角の機会です、あまり簡単すぎても……とは言えそこまで踏み込んでは貢献も出来ませんし……)
 静流は少々考えてから、ならばどちらにも傾く中間難度の釣り場にしよう、と決め、さっそくその個所を記憶し意気揚々と赴いて行った。

「なる程……流れもそこそこ早い、ですが底が見えない程でもない――確かに“中間”ですね」
 早々経験がなくともピンと来る程に、分かり易い光景が目の前に広がっている。
 時折渦を巻いている場所もあるが、看板が確り立てかけてあり【ここから釣るな】と赤い太い文字で忠告書きがされている。
 やはり商業。また出向いてもらうために、そう危ない事はさせないのだ。
「となると、此方側ですかね……?」
 比較的流れが緩やかな所を見つけた静流は、教示して貰っていたのか手早く釣り針へ餌を、そしてその下に錘を付ける。
 そのまま己の視力頼りに更に深く水面下を見やり――魚群が固まっている場所を複数発見した。
「何処にしましょうか」
 悩む彼女だが、ならば自分の第六感を信じようと、研ぎ澄ませ一つの魚影に狙いを付けた。
 そのまま狙った場所目掛け、初めてとは思えない滑らかさで投擲した。
 みごと狙い通りの個所に餌は落ち……後は、かかるのを待つのみだ。
 焦ることなく静かに待ち。魚を逃がさないよう、気配を殺し。
 じっと釣り糸の震えと、竿の手応えが変わるのを見逃さないよう――集中する。
「――っと!」
 早速一匹かかった……そのオイカワに似た魚は、少し小さい。
 逃がす程ではないものの、意外と強かった力に反しこれだった為か、静流はちょっとだけキョトンとしてしまう。
「こ、根性があるのですかね? 此処の魚は……」
 しかしなればこそ、此方も負けられないなと気持ちをまた新たにし、餌を付けて先程みえた魚群の元へ放り込む。
 そのまま再び、じっと待つ――。

 ――あれからしばらくして。
「……勘が外れたのでしょうか?」
 少しだけ嗜んだ、というそのアドバンテージは意外にも効いていたか釣果は多いのだが、大物が釣れない。
 引く力は強いし、【釣っていて楽しい】をこれ以上ないぐらい体現しているのだが、此処まで粘ったのだから一匹ぐらい大物を釣りたい……と静流は思い始めていた。
「むぅ……って、あ……!」
 ままならない釣果の所為で焦りが出て来たのか、次に投げ込んだ場所は、一の予定とズレてしまっている。
 無意識化で影響を与えられていた事に気が付き――一度釣り針を引き上げると静かに深呼吸。
 心を水面の如く静かに、穏やかに保てるよう、焦燥を沈める。
(焦りはブレを生み、精細を欠く……剣術に似ているかもしれませんね)
 己が鍛えるその術理との共通点を図らずも見つけた彼女は、なればこそ敢えて『剣』へ挑むような心持で構える。
 一拍、間をおいて。
 今度は先までと同じく狙った場所へぴったり投げ込み、気を消して魚を待つ。
 ―――と、数分たった、その時だった。
「……! これは、重い……!!」
 明らかに先までとは全く違う、とても重い反応が返ってきたことに静流は驚き、少し嬉しくなりながらも油断せずに竿を引く。
 タフな魚達が多かった例にもれず、この大物もかなり手強い。
 彼女自身がそう持っていかれる事はないが、その前に竿が、釣り糸が、針がどうなるか分からないと思わせる程。
 果たして―――。
「……せぇいっ!!」
 ――勝ったのは静流。サケにも似た大物を見事に釣り上げてみせた。
「やった! やりましたっ!!」
 ぐっと抱えて逃がさないように、大切に籠へ入れる。
 ふと水面下を覗けば……其処に魚たちが再び集まっていくではないか。
 中々釣れ無いのに強い魚が多かった訳は、この大物が縄張りとしていたからなのだろう。
 ともあれ十分な成果を得たと、静流は此処で釣りをやめ、道具を手早く片付け釣り場を後にした。

「お刺身、ですか?」
「ああそうだ! 美味いぞ~?」
 中々の釣果を叩き出したからか、釣り場の管理人は驚きまた笑い、何やら何処かへ連絡を取ってからお土産分と、街への還元分に分けた。
 そして……何故だか案内され、突いた場所にいた禿頭の男性に「嬢ちゃんやるなあコイツを釣るとは!」と豪快な笑みで出迎えられた。
 ちょっと待っててくれ――そう言い残して店の奥へと消えたかと思えば、何やら刺身を盛りつけた皿を持って出て来て……先のセリフに至る。
「しかし良いのですか、あそこまでの大物を――」
「心配するな! どんどこ釣れる訳じゃあねえが、俺達はそれでも本職。数匹は上げれるからよ!」
 だから遠慮することは無いと、ワサビと醤油の小鉢を小さな台の上に置いた。
 勧められたのだし何より美味しそう……そう考え、静流は一枚箸で摘まむと、醤油をつけて口に運ぶ。
 瞬間、その顔がほころんだ。
「美味しい……! こんな、新鮮な……!!」
「だろ? 釣りたてってのはそれだけで、最高の調味料でもあるのさ」
 どんどん食べろよと胸を張る男性の言もあり、静流はすいすい食べ進めていく。
 アッという間に食べ終えると、夢中になってしまったのが少し恥ずかしかったか、僅か二種に染めながらも頭を下げる。
「ありがとうございました、此処まで美味しいお刺身を……」
「なに。町を救って、しかも久方ぶりの捌き応えを味わわせてくれたんだ、それだけでも充分さ!」
 豪快に言う彼へ静流は再度軽く会釈し、見送られながらその場を去る。
 ……下に残るあの風味を思い出しながら。
 また釣りをするのも良いかなと、考えつつ歩いてゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月島・彩希
【三叉槍(トライデント)】で参加
戦いも無事に終わって良かったです。後はゆっくりと楽しみましょう

【釣りに挑戦】
折角の【釣り】を楽しめる機会です。たくさんのお魚を釣ってみせます。
魚が餌に食らいつくタイミングを【野生の勘】で感じ取り、逃がさないように素早く釣り上げます
たくさんお魚があれば皆さんの料理を色々と楽しめますね
釣った魚は痛まないように【氷魔法】で保存しておくかな?
料理はそこまで得意ではありませんが、皆さんのお手伝いをしますね
お手伝いをしつつ、絵里香さんやタンケイさんの動きを【学習力】で学んでいくとします
料理が完成したら皆さんでいただきましょう。うん、とても美味しそうです。(尻尾ぱたぱた


神宮寺・絵里香
【三叉槍(トライデント)】で参加【WIZ】≪心情≫・いい天気だな。取りあえず、ゆっくりと釣り糸でも垂らしながら読み途中の本でも読むか。・偶にはこうやってゆっくり過ごすのもいい。商会は騒がしすぎるしな。・さて、昼食に困らないくらいは釣れるといいのだが。≪行動≫・私服の大正ロマン着物に着替えて日傘をさしつつ読書。横には仕掛けをした餌釣りの竿を置いておく・浮きの動きを時折見ながら、食いつく瞬間を【見切り】竿を引く。・餌は今の時期に釣れる魚を【世界知識】から下調べをして、それに 適した餌をつける・【戦闘知識】のサバイバル知識で火起こしやら、簡単なキャンプができるように準備・タンケイの料理に舌鼓をうつ


タンケイ・オスマンサス
【三叉槍(トライデント)】で参加
「新鮮なお魚!素敵ですね。ちょうどお腹も空いてきたことですし、皆で頂きましょうか。」
皆さんがお魚を釣っている間に神宮寺さんにも手伝ってもらいながらキャンプの準備をして【料理】します。炭火でじんわりと火を通したお魚はお塩をパラパラとかけるだけで絶品ですね。せっかく取れたてですからお刺身にもしましょうか、アルミホイルで包み焼きも美味しいですよ~
「ん~~美味しい!皆で食べれば一段と美味しいですね。」
お魚、沢山釣れたら持って帰りたいな…

お料理に熱中している間に相棒のダイアウルフは勝手に釣り場から身を乗り出し魚を捕まえて食べています。いつもと少し違うご飯の味に夢中かも。



「戦いも終わりましたし、是非ゆっくり楽しみましょうか」
「……そうだな」
「ちょうどお腹も空いてきた時間です。皆で頂きましょう!」
 下流で、上流で、様々な所へと釣り場だ伸びるこの川で。
 また三人の猟兵も、釣りが始めていた。
 三叉槍と名高くもなろう……それほどの連携を見せた、槍使い三人。
 彩希、絵里香、タンケイだ。
 彼女等は自分達で調理する気なのか、キャンプの準備をし始めている。
 ――そう。
 今彼女達がいるのは還元する方式の釣り場ではなく、いわゆる『キャンプ場』に近い釣り場なのである。
 尤も一晩止まる訳ではないので、食べきれない分を確り町へ渡そうとも思ってはいる為……先までと違うのは場所ぐらいだろう。
「それにしても絵里香さん、こういう催しお嫌いかと思ってました」
「……? 何でだ」
 ――ふと思ったらしいタンケイの疑問に、絵里香が眉を少し潜めて返す。
「いえ、何時も先に帰っちゃいますから……」
 猟兵達の向かう依頼によっては、住民達から宴への参加を勧められたり、また握手会が開かれる場所もある。
 しかし、だいたい絵里香は参加せず何時の間にやら帰宅している事が多いのだ。
 今回とて引き留める必要があるかもしれない――と説得を考えていたほど。
 結果は見ての通り、あっさり承諾してくれたのだが。
「……例え参加しても、自分一人だとやる事が無いってだけだ。誘われれば行くさ」
 そう返す彼女の服装もまた休憩モードという事なのか、戦闘時と違う私服だ。
 “大正ロマン”という言葉を思い起こさせる着物姿で、日傘をさし簡易椅子に座って本を準備してすらいる。
「なるほど……!」
「折角の機会ですから、連携組んだ三人で参加できて良かったですね」
 納得したタンケイの傍で、彩希がすでに竿の準備を終え、良さそうな釣りのポイントを目線を伸ばし……また少し背伸びして探っている。
 もうどちらも、準備万端の様子だ。
 タンケイも笑み返し、いそいそと料理の準備をすべく、器具を並べていく。
 そして――まるで開始の合図かの様に、彩希がぐっと拳を握った。
「やりますよ、たくさんお魚を釣ってみせます」

 ―――それから少し経ち。
 火を起こして食器を並べ、串を用意したタンケイ……そして少し後ろでうずくまって待機しているダイアウルフよりも、より川縁に近い向こう。
 立ったまま遠くへ釣り糸を垂らしている彩希と、ウキを付け日傘をさしたまま本を読んでいる絵里香の姿がある。
 気合十分な彩希は、沢山釣ると意気込んだ故より大量の影が見えた遠くを選び。
 何時も騒がしい日常のさなかにいるからこそ、偶にはゆっくりしたいと近場に仕掛けておいたのだ。
 ……待つこと数分。すると……。
「っいしょ!」
 先の竿にヒット。生まれながらに持つ野生の勘が、魚が掛った予兆を彼女へと伝え、その機を逃さず思い切りグイっと引く。
 ニジマスにも似た魚が喰い付いており、早速一匹目を釣り上げていた。
 これで調子が出たのか、続いて2、3匹と連続で釣り上げ――鮮度保持のために氷魔法をかけてから、まとめてタンケイの元へもっていく。
 戻ってからも快調だ。
「宣言通り、まだまだ釣って行けそうですね」
 長く大きいウグイの様な魚を釣りつつ、興奮した様子で確り竿を握る彩希。
 一方。
「……よし、これで充分だな」
「お手伝いありがとうございます」
 魚影もあまり見えず、掛かり難そうだと思ったのか、少し準備に手古摺っていたタンケイを絵里香がサポートしている。
 慣れたものなのか手早く済ませ、復習もかねて残りをタンケイに任せると、再び日傘の元へ歩いてゆく。
「ん? ……かかったか」
 グッドタイミングだった様で、ウキが微妙に上下している、その最中に戻ってこれていた。
 慌てて引き上げることはせず、じっとタイミングを見計らい――食い付くだろう一瞬の間隙を見切り、持ち上げた。
「一匹目……っと」
 コイにも似たその魚を見た絵里香の顔には、狙い通りとの一言が浮かんでいる。
 何故か――と言えば彼女、事前にここら一体の情報を詳しく調べ、また既存の知識と合わせて、釣りたい獲物に適した餌を選んでいたのだ。
 故に、狙った通りの物が釣れたという事らしい。
「さてもう一匹だ」
 言いながらに、ヒュン……と絵里香は竿を振るい、釣り針を放る。

 ――更に暫く経ち。
 彩希がまだまだ!と『氷上の舞』でさらに奥へ行って釣りを続行中。
 絵里香がやはり中々かかる物でもないとまた本を読み始める……その後ろで、タンケイが本格的な調理に入り始めていた。
「もうちょっとかな……?」
 ニジマスに似た魚に串を通し、網の上で炭火に当ててじっくり焼きながら。
 また別の所では、彩希の氷魔法で作った皿が置かれ。
 何やら出汁粉末や野菜、アルミホイルなども準備され、別の網へ乗せられている。
 ……何時の間に持ち込んだのか、飯盒まであった。
「流石、新鮮なお魚……キラキラしてます」
 氷の器に今さばいた魚の刺身を盛りつつ、釣ったばかりだからこその輝きに、タンケイは自然と感動していた。
 常時人里離れて暮らしでもしない限り、こうして自然の物を頂く機械など中々ない。だからこそ、新鮮ピチピチな食材は魅力的に映るのだ。
「ヴォウ……!」
「あ、ダイア……もう」
 料理している隙に、釣り場へ勝手に飛び込んで、魚を拝借しているダイア。しかしその顔はとても嬉しそうであり何時もとは違う食事の味に、舌鼓を打っているようだ。
 もう夢中な様子である。
 それに先の声を撤回し、少し嬉しそうな顔をしながら、タンケイは魚料理を覗き込む。
「それでは――そろそろ、ホイル焼きが出来る頃ですね」

 ……そうして釣りが終わるころには、美味しそうな魚料理が幾つも並べられている、とても食欲そそる光景が出来上がっていた。
 美しい氷皿に盛られた、透き通るような白いお刺身。
 香ばしい匂いの漂う、焦げ目の付いた焼き魚。
 湯気と出汁の香りが立ち上り、食欲をそそるホイル焼き。
 そしてつやつや輝くご飯。
 ――大自然の中で食べるのに、これ以上ない贅沢なラインナップである。
「「「いただきます」」」
「ヴォゥ!」
 彩希と絵里香が手を合わせ、タンケイもそれに倣い、またダイアが吠え、食事が始まる。
 ――先の刺身は言うまでも無く、氷で保たれたこの新鮮さのまま醤油で頂けば、程良い歯ごたえと風味が広がる。
 ――焼き魚は一口齧れば焦げ目の苦さと塩味が程よく調和し合い、しかし淡白なはずの白身も確り存在感を維持している。
 ――極めつけはホイル焼き。どうも適している魚だったのか、しみ込んだ野菜のうまみと出汁の風味、魚の確りした身が抜群の相性を見せていた。
「ん~~美味しい! 皆で食べれば一段と美味しいですね!」
「釣ったばかりが云々と言われるが、此処までとはな――少し感動した」
「とても美味しそう、と思ってましたが本当においしいです……!」
「ガツ、ガツガツ……!」
 三人一頭、白米合わせてどんどん食べ進めていく。手は止まらず、会話も進む。
 自分達で得た食材、何時もとは違う環境、そして何より主目的の達成。
 ――良きスパイスが揃ったのだから、これで美味しくなければ嘘だ。

 そうして暫く料理を食べつつ談笑し、舌鼓を打って笑いあった後。
 沢山釣れた魚を多めに町へ還元すると、お土産として数匹をもらい彼女等はこの地を後にするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
釣りには参加するが、特に技能はない。

町の様子や水面を眺めながら物思いにふける。

狸たちも魚獲りに興じていた。
オブリビオンが過去の存在であるならば、ここは遠い昔の彼らの狩場だったのか。
ならば共にいた鬼は、そんな狸たちを尊ぶが故に?
そう思うと、町の為に戦った今日の自分とあの鬼が重なって。
そんな感傷に浸りながら釣竿を振るう。

町は奴らを忘れるだろうが、自分ぐらいは覚えていようか。
そしてそれを理由に、自分がこうして今までしなかった釣りを始めて。
それは、未来を潰すのではなく、未来に遺る、過去の正しい姿なのだろうから。

「さて、ビギナーズラックぐらいあってほしいものだが」

【絡み・アドリブオールOK】


灯璃・ファルシュピーゲル
POW:大物狙いの一本釣り

まずは狸達の遺体が残ってれば埋葬し
手は合わせず黙祷を

折角のお誘いですし私も一つ自己流で・・・
釣り糸と弓矢の材料に出来そうな
木材(竹)・糸等の材料あれば町民に分けてもらい
軍時代の野戦経験(地形利用・戦闘知識・世界知識)
を活かして釣り糸の付いた矢と弓を用意

漁師の方に大型魚が出そうなポイントを聞き込みつつ
出来れば廃棄予定の小魚があれば貰いたいです

準備できたら任務開始
撒き餌で「おびき寄せ」目視で魚影を「見切り」
自作した弓で狙撃(釣り)します「スナイパー・だまし討ち」

大きいのが獲れたら町の方にプレゼントしつつ
交流しながら雑談交流しながら織田家の噂など聞かないか
情報収集してみます



 さて。
 釣りに参加した者は皆、魚釣りという初体験に驚き、また既知のそれを楽しみ、食しては笑顔を浮かばせ、町の皆に笑顔を齎していた――その頃。
 それとは少し違う趣を背負いながら、ルパートが釣りに興じていた。
 少しだけ難易度の高い場所を選んだが、流れ自体は急ではないらしく、また街も少し近くに見える。
「…………」
 何やら物思いにふけっているようだ。
 町の事で、何か思う事でもあったのだろうか。
 自然と“感傷に浸っている様”なと思い起こさせる、そんな雰囲気を醸し出しつつ、彼は釣りを続けている。
 だが――それは近寄ってくる気配と、次なる来訪者と共に一端霧散した。
「釣れますか?」
「ああ、少しは」
「なる程……意外と、良いポイントなのでしょうか」
「…………」
 気配の招待は灯璃。彼女も誘われたのだからと、釣りに来たらしい。
 が、その手に持っているのは竿ではなく……。
「なあ――それは、“弓”じゃあないか?」
 今しがたルパートが口にした通り。何故だか竿でも網でもない、陸地の獣を狩る為にある筈の【弓矢】が、灯璃の手に握られているのだ。
 だがしかし。
 ルパートはちゃんと釣竿を借りて持って来てるし、何より猟兵はどの世界に渡ろうとも違和感持たれず接して貰える。
 だから借りられなかった、という線は無い。
 ともすれば――一体……?
「はい。自己流でやってみようと思いまして、住民の皆さんから竹や糸を貰って弓を作り、矢にもこのように」
 よく見れば、軍時代の経験を活かした代物なのか、竹素材のソレはまだ真新しい。
 言いながら灯璃が持ち上げてみせた矢にも、ちゃんと釣り糸が付いていた。
 つまり、狙撃の技術を活かして仕留める、という事なのだろう。
 残身ではあるが、しかし腕に覚えがあるのならより確実な手段ともなり得る。
「なる程……そう来たか」
 手段を自分の得意な手に傾け、しかし確り釣りをする。
 彼女の手腕にルパートは素直に感心した。
 そして何やらメモを広げ、そして廃棄品らしい小魚の入った桶を置くと、紙に包んだ何かを取り出し始める。
「さて――ビギナーズラックぐらい、あって欲しいものだな……」
 数匹釣っているとはいえ、内二匹は小さすぎたため逃がしているルパート。
 まだ大物がかかる事を願いつつ、水面の方へと視線を戻した。

 ――十数分後――
 ルパートの持ってきた籠の中には、少し前よりも魚がより多く入れられている。
 それでも小粒揃い。
 釣果を数だけで判断すれば多い方なのだが、彼としてはもう少し大物を釣ってみたい……との欲も出てきている。
 とはいえどうも先までの感傷と、なにより本人がそこまで焦っていないのが影響したか、釣り始めと全く変わらないように見えた。
「――来たか」
 ざばっ、と釣り上げて見れば今度は中ぐらい。しかし先に釣ったイワナ似の魚がより成長したような姿をしていたため……同種の中で大物がかかったらしい。
 もう一度投げ込んでみれば、次も同じ物がかかり、入れてから数分と経たずにまた釣り上げ……着々と釣果が増えていく。
 ビギナーズラックはあったようだ。
「だが、大物がな」
 ヤドリガミ、というこの体自体がアドバンテージなのか、かかりは良いが如何せんサイズが固定気味だ。
 と、そこでもう少しサイズの大きい物を釣れたら――そう思わせる横の灯璃の姿を見やった。
「もう一度……ですね」
 彼女はまず撒き餌を上流に投げて、特定のポイントまで流れ着くのを待つところから、自己流の釣りを始めている。
 幾らか魚群の影が集まった所を見計らい。
「ほっ……」
 小魚を投げ込んで、同サイズのリリース対象を散らし、より大きい獲物数匹をその場にとどまらせる。
 更にもう少しだけ待機し……徐に、矢をつがえて弓を構える。
 そうして魚が方向転換をした、スピードに乗っていないその一瞬を見切り――。
「―――ッ」
 糸の付いた矢で狙撃。
 気配を殺した状態で放たれるだまし討ちの一射は、魚へと綺麗に命中。
 そのまま引き上げ……見事、大物を釣り上げていた。
 スナイパーとしての彼女の腕だからこそ可能な、文字通りの『大物狙い』である。
「流石だな」
「いえ、以前の経験役立った、その程度です」
「経験の賜物なら尚の事だ」
 謙遜し首を横に振る灯璃へと、ルパートはもう一度賛辞を投げかけた。
「俺の方はとんと釣れなくてな。こうして持ち上げて見ても」
 そう言って先についているだろう小粒の魚を見せる―――。
「あ」
 つもりが、確りとベニサケに似た大物が喰い付いていた。
「先以上の大物とは……やりましたね」
「――はは、そのようだ」
 邪念を消したからかそれとも逆フラグでも立てたのか。
 ともあれ釣り上げることが出来たからか、ルパートは引き上げるべく帰り支度を始める。
 灯璃も大物狙いで数多釣果を得た為、想定していたノルマは達したと、最後の一匹を釣り上げてそのまま桶と籠を抱えた。
 そうして二人とも、この釣り場を後にする。
 
 ――ルパートも灯璃もそう持ち帰る気が無かったのか。
 土産にと貰える分を渡される時も、どうしてもと譲られた魚以外は全て町に還元した。
 そのまま帰宅するべくテレポートを……する前に、灯璃が幾つか聞きたい事があったらしく、最初に渡された土産分の魚の一部をプレゼントした女性と何やら話をしている。
 すぐ帰る気も無かったか、ルパートもすぐ後ろに佇んでいる。
 三人で時折合図血を挟みながら会話を続け、灯璃は本題へ入った。
「織田家?」 
「はい、何かしら情報……噂が無いかと」
「そうねぇ」
 うーん、と女性は少し頭を捻り、近くを通った知り合いなどにも少し聞きながら――やがて戸惑いながらに答えを返す。
「ごめんなさいね。私――というか多分この町の人はそう噂を持ってないと思うわ」
 名前は聞いたことあるけれど、それでもそうそう流しちゃうのよね。……と、もう一度謝りながら言う女性に、灯璃は掌を前に出しながら首を横に振る。
「い、いえ。答えて頂いただけでもありがたい事ですから」
 空振りだったか。
 そう思って踵を返そうとした、その時。
 ……思い出したように女性が口を開く。
「織田家の話ではないけれど、ちょっと今回の件で思い出したことはあるわ」
「思い出した事、か?」
「……それは」
「ええ――祖母から聞いた話だけど」
 昔。ここら一体は当然ながら森で、其処へ人が住み着くべく、頑張って開拓したと伝わっている。
 開拓後には傍にある自然と暮らす動物達とも共存しながら、時に厳しく追い立てながら、暮らしていたとか。
 そしてもうかなり昔になるが、ここらを納めていた、一人の長が居たらしい。
 曰く【変わり者】。……というのも。
「何故そんな評価を受けていたんだ?」
「一つは異文化が好きだったって事。そう浸透していない場所と時期でのことだったから、より印象に残っていたって」
 異文化と聞き、ふっとルパートの、灯璃の頭の中に【二つの像】が浮かび上がる。
 偶然だろうと思いつつ、もう一つの理由についても聞いてみた。
 それは……。
「【狸が大好きだった】んですって。それに加えて昔からずっと此処を狩場にしていた、彼等へ畏敬の念を持った故に――と」
「そんな方が、いたんですね……」
「…………」
「もう昔の話ですけどねぇ。祖母だって伝え聞いたのみらしいですから」

 長々話してごめんなさいね――そう言いながら離れていく女性を見やりながら。
 ルパートも、灯璃も、浮かび上がり結ばれたその像が、偶然でないことを直感した。
「ルパートさん。あのオブリビオンは、恐らく……」
「……ああ……そうなんだろうな」
 もう間違えようもない。
 あの鬼の行動に鑑みれば、すなわち“そういう事”なのだろう。
「―――」
 灯璃が静かに目を閉じて……黙祷するように神戸をたれ、また何かに思いを馳せる中。
 ルパートは再び、釣り場で感じていた考えと、一つの感傷を思い出す。
 ――もしかしたらここは遠い昔狸の狩場だったのではないか――
 ――それを貴び、鬼は狸達に味方していたのではないか――
(……予想が、考えが当たっていようとはな)
 それ故、狸を守ろうと闘った鬼と、今日町を守るべく戦った自分が重なって。
 静かに遠くの、戦場となっていた方角の空を見やりながら、思う。

 町は彼等を忘れるだろう。しかし自分ぐらいは覚えていようと。今までしなかった釣りという……その思い出を器とし。
それは過去より至り未来を食らいて潰すのではなく。先にある光へ続く道ともなく、未来に遺る――そんな、過去の正しい姿なのだろうから。
「……帰りましょう」
「ああ」
 ――どうか魂に、彼等の思いに、安らぎあれ――
 戦場のありし方角へまっすぐ背を向けて。
 ルパートと灯璃は……この地を後にしたのだった。


 かくして終結した、獣と鬼の軍勢騒ぎ。
 しかしてそれが起こした思いは、守護と慈しみ。
 だが町の者の平和がおかされかかった以上。
 尊かろうとも、それは潰される定めだたのかもしれない。
 だからこそ。
 猟兵達は覚えておくべきだ。

 ――かつて過去に居ただろう、一人の長の存在を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月28日


挿絵イラスト