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アポカリプス・ランページ⑤〜病魔に死を、狂気に生を

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ #アポカリプス・ランページ⑤

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●世界の汚染を消し去る者
 その機械人形は、世界から病を根絶する為に創造された。この荒んだ世界で、作り手は純粋な心を持っていたのだろう。様々な願いを込めて創り上げたのだろう。
 人形は確かに動いた。ありとあらゆる病を世界から排除しようと、治療しようと働いた。しかし人形には欠けているものがあった。
 そう、『命』というものを認知していなかったのだ。
 だから彼は、病を治す為に生物を生きたまま、あるいは眠らせたまま――バラバラにした。
 身体を切断し、中身を取り出し、病の根源を焼いた。生物は死ぬ。しかし病は治る。彼にとっては何の問題もない治療方法だった。

 彼は殺戮人形ではない。病を消し去る、世界の救世主である。

●ソルトレークシティ~プロトタイプ・デミウルゴス
「『フラスコチャイルド製造施設』が発見されたとの報告がありました。今から説明します」
 グリモアを持つアザミ・アカシア(f05817)が猟兵達に語り掛ける。
「ソルトレークシティ。そこは宗教都市としても有名な街でしたが、その地下では大規模な製造施設が運用されていた事が分かりました。アンタ達には、これからそこへ行ってオブリビオンと戦って貰います」
 その施設には『最強のストームブレイド』を生み出すべく培養されていた『デミウルゴス式偽神細胞』を移植したオブリビオンがいるという。勿論、野放しにする事などできない。
「その『デミウルゴス式偽神細胞』という細胞ですが、移植された者はかなり強力な力を手に入れるようです。一体だけとはいえ戦いはかなり厳しいものとなるでしょう。……ですが、強力なりにデメリットも起きているようです」
 アザミは機械の腕に持たせた電子パッドへ視線を向ける。
「アンタ達が交戦するのは機械人形なのですが、どうやら拒絶反応が発生しているようです。ユーベルコードを使う度、徐々に自壊していくのだとか」
 細胞の力に身体が追い付かないのだろう。ユーベルコードを使用した後の大きな隙を見て攻撃に転じる事ができれば、有利に戦う事ができるかもしれない。
「ただ、ユーベルコードはかなり強力です。単純に防ぐ、避けるだけでは済まないでしょう。攻撃を行う前に負傷しては意味がありません。防ぐにしても、一工夫考えてから行動を実行する事。いいですね」
 そう伝え終えると、機械の腕がアザミの目の前から離れていく。
「では、説明は以上です。十分に警戒して立ち向かって下さい。……後は頼みました」
 一礼の代わりに目を閉じ、グリモアを輝かせた。


ののん
 お世話になります、ののんです。

 ●状況
 アポカリプスヘル『アポカリプス・ランページ』の戦争シナリオとなります。
 1章で完結します。

 ●戦場について
 『デミウルゴス式偽神細胞』を移植したオブリビオンとの戦闘です。
 細胞の激烈な拒絶反応により、ユーベルコードを使用するたびに肉体が自壊するようですので、これを有効活用していくと戦いやすいでしょう。

 プレイングボーナスは以下の通りです。

 ====================
 プレイングボーナス……超強力な攻撃を耐え凌ぎ、敵の自壊を誘う。
 ====================

 ●プレイングについて
 受付は公開後~『#プレイング受付中』のタグがある間まで。

 キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
 お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
 同時に投稿して頂けると大変助かります。

 申し訳ありませんがユーベルコードは基本的に【選択したもののみ】描写致します。

 以上、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『業病のジュピター』

POW   :    病勢のニーズヘッグ
【両手の砲身から放たれる医療用レーザー】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    病臥のラタトスク
【自動追尾麻酔ミサイル】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
WIZ   :    病理のフレースヴェルグ
自身の身体部位ひとつを【対象の病魔根絶に適した形】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠トール・ペルクナスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

グラナト・ラガルティハ
命を長らえる為の治療のはずが
病魔の治療を優先するあまり命を無視するとは…
製作者にしてみればさぞ無念だろうよ。
だが…作られた以上その通りに動くのが機械だからな…止めてやるしかあるまい。

UC【柘榴焔】
【全力魔法】と【属性攻撃】炎で威力をし敵に連続的に打ち込む。
間合いに入り込まれた場合は【戦闘知識】で対応して蠍の剣による【咄嗟の一撃】で対応。

自壊するまで根気強く戦う。

アドリブ歓迎



 一つ欠けてしまうだけで想定外の行動を起こす。無垢とは時に愛らしく、時に残酷だ。
 神であるグラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)は命を作り出す難しさを熟知している。だからこそ、このような事例を見る度に心を痛める。神とて感情を持ったからには慣れないものもある。
「さぞ無念だろうよ」
 病を消し去る為に命を奪ってきた機械人形が今、未知なる邪神のウイルスに蝕まれ暴走している。もはや自身の目的すら忘れてしまったのかもしれない。製作者も、本人も、どう思っている事か。
「だが……作られた以上その通りに動くのが機械だからな……止めてやるしかあるまい」
 グラナトは己の拳に炎を纏う。それが自分から機械人形にしてやれる、唯一の事だから。

 機械人形は苦しそうだ。どれが病なのかも認識できず、目の前にあるものを消し去ろうとする。自身の痛みを治療しようという考えには至らない。それは病ではないからだ。
 外部から熱を感知した機械人形は己の片腕を変形させた。冷凍光線を噴射する事で凍らせようと試みるようだ。
 グラナトは腕を大きく振るう。眩しい輝きを放つ炎の弾が機械人形へと真っ直ぐに飛んでいく。迎え撃つように冷凍光線が発射された。蒸発の音と水蒸気が一瞬にして辺り一面に広がる。
 それでも彼は何度も炎を撃ち込み続ける。冷凍光線が徐々に接近してくる気配を感じた。水蒸気が視界を覆い隠したその瞬間、握っていた蠍の剣を構え、冷凍光線を受け止めた。
 弾き飛ばすかのように剣を振るい、体を回転させながら回避をしてみせた。最後まで炎を撃ち込む事によって冷凍光線の威力を弱める事ができたようだ。しかし、それでも剣はぴしりと凍り付いていた。
「これで満足か」
 剣を一振りし、氷を溶かす。こちらからの攻撃は届いていないはずなのに、機械人形は片膝をついていた。酷く苦しそうに、変形させた片腕を振るわせている。痛々しい姿に、グラナトは瞳を閉じて首を横に振る。
「俺からはもう、何も語る事はない」
 燃ゆる剣が地を鳴らす。彼は駆け抜け、病人を薙ぐ。

成功 🔵​🔵​🔴​

藤・美雨
病を治そうとした者が間違った手段を覚えちゃって
しかも自分が決して治らない病に冒される、か
皮肉な光景だけど見ていて楽しいものでもない
終わらせようか

敵が攻撃するまでは回避に専念
危険な状況だからこそ基礎を大切に
不意打ちを食らわないようしっかり自分の身体を意識して戦うよ

それに……私は死んでいる
死んでいるからこそ此処にいる
お前を倒すために此処にいる
気合いを力に変えて立ち回るよ
でもギリギリまで飛翔能力は使わない

相手が攻撃の構えを見せたら地上をダッシュし引き付ける
そしてレーザーを撃たれた瞬間……翔んで回避だ!
屋内とはいえ上に逃げるとは思わなかっただろう?
そのまま接近し、弱った相手に怪力の拳を叩き込むよ!



 間違いではないが間違っている。それを教え込む時、どのように伝えてやればいいのだろう。機械人形の鈍くも強烈な一撃を避けながら藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は考えていた。
(「病を治そうとした者が間違った手段を覚えちゃって、しかも自分が決して治らない病に冒される、か」)
 強い力は手に入れたが自身の身体が耐えられず、動く度にギシギシと苦しむ音を響かせる。それが病から来ているものだと認知すれば、きっと自分自身を破壊しようとするだろう。しかしそれをしないという事は、病だと認知していないからか、はたまた『死にたくないから』見ぬふりをしているのか。
 本当にそれで良かったのか? 疑問は尽きないが、オブリビオンとなり自壊を始めてしまっている以上、それらの答えが分かる日は来ない。救う事すらできない。ただただ、皮肉な運命を辿ったものだなと、哀れに思う気持ちが募るだけだった。

 機械人形が大きく腕を振り上げ、それを美雨がバックステップで避ける。距離が大きく開いた所で、機械人形は両腕に力を込める。次第に銃口が輝き出す。
「そうだね、終わらせようか」
 美雨が吹っ切れたかのように言い放つ。やはり壊れゆく姿を見続けるのは、楽しいものではないと。しかし、今にも発射しそうな銃口を眺めつつ彼女はまだ微動だに動かない。
「私、もう死んでるんだよね」
 確かに彼女はそう言った。自分は既に人ではなく、死から蘇ったデッドマンであると。
「死んでいるからこそ此処にいる。お前を倒すために此処にいる」
 死を経験し、再度生きるチャンスを貰えたからこそ、誰よりも生き抜くという意志が強いのだろう。オブリビオンではなく猟兵として生き返ったのであれば尚更。心まで死んでしまっては、あの機械人形と同じだ。
「お前じゃ、私を殺しきれないよ」
 美雨が機械人形の方へ突進するように駆ける。同時に機械人形の腕から、爆発音と共に強大なレーザーが発射された。視界が真っ白になる。すぅ、とレーザーが消え去った後、地面は大きく抉られていた。美雨の姿は残されていない。
 機械人形は煙を出しながらガタガタと震える両腕をだらりと下げる。この攻撃が行えるのも、あと数回だけだろう。

「やり切ったと思ってるのかい? 治せないよ、お前には!」
 突然響いたその声には聞き覚えがあった。頭上から聞こえた。レーザーを跳躍して飛び越えた美雨だった。
「私を治せるのは、一人だけだよ」
 『生きる』という唯一無二の意志から生んだオーラは誰にも消させやしない。彼女の硬い拳骨が機械人形の脳天へ叩き付けられ、その体は割れた地面へとめり込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エンティ・シェア
あらゆる病を治したかった、か
そうだな、そう願う気持ちは、分からなくもねーわ
そうやって治すために壊して、そんで最後には自分も壊れてく
なんとも、哀れなもん…なのかもな

相手が勝手に壊れてくなら、こっちからは何もしない
攻撃が来ても、抵抗しない
獣奏器だけは、手にしておくけども
抵抗しないまま、かえしうたを
上手く音波にして叩き返せりゃ、少しは、早く決着つくかもな
まぁ、受け流すのがメインなんで、カウンターにはこだわらない
麻酔って毒かな。うっかり食らった時は毒耐性に期待したいとこ
寝るのは構わんが、かえしうたが途切れるのは困るからな

そうやって何度でも聞いてやるよ
あんたの…あんたを作った奴の、切実な願いを



 荒んだ世界であれば、あらゆる病を治したいと願うのは必然なのかもしれない。しかし機械人形は製作者の思い通りには動かなかった。結果、殺戮者となり最終的には自らが病を患った。
「なんとも、哀れなもん……なのかもな」
 機械人形が行った行為は決して許されるものではない。しかし悲劇である事には間違いない。エンティ・シェア(欠片・f00526)の言葉が全てを表していた。
「痛いのか? 苦しいのか?」
 どう問い掛けても相手は答えない。ただただ、身体の節々からギシギシと音を鳴らすだけ。
「勝手に壊れていくんだろ? だったら」
 エンティはその場にどっしりと座り込む。
「こっちからは何もしない」
 構える事もせず、機械人形と対面しつつエンティは『何もしない』事を選んだ。獣奏器だけを手に、深呼吸を一つ。話し相手にでもなってやろうと、そう伝えるようにリラックスした様子を見せ付ける。
 勿論、機械人形にそんな事が伝わるはずもなく、腕の銃口をエンティに向けた。座り込んだ対象を体調不良とでも認識したのだろうか。乱射したのは複数もの麻酔ミサイル。それがエンティを囲み、着弾と共に爆発を起こす。
 偽神細胞によって、その麻酔も必要以上の効果を発揮しているのだろう。爆発から漂う煙からは、治療用の麻酔とは思えない異臭を感じる。眠ってしまえば、恐らく永遠に目を覚ます事はできなくなるだろう。

 ちりん、と煙の中から小さな音が響いた。直後、音波という名の衝撃波が機械人形へ襲い掛かった。痛々しいグリッチノイズが機械人形の体内を駆け巡り、あらゆる機能をショートさせていく。
「どうだ、それがあんたの声だ」
 エンティが機械人形へ語り掛ける。吹き飛んで横たわっているが、彼には傷が一つも付いていない。
「そう、苦しい時は思い切り叫ぶのが一番だ。俺でいいなら、何度でも聞いてやるよ」
 あんたを作った奴の切実な願いを。あんたが行ってきた罪を。あんたの――今の思いを。
 機械人形は両膝を折り、記憶メモリに刻まれた酷い残響を再生し続けては全身を痙攣させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:ロキ
元医師としては色々と思うところがあるのですが。そのように造られたものであるならば、説得は無意味でしょうね。
麻酔薬に対抗する中和剤を毒属性に設定した魔銃で生成し、予め自分に打ちこんでおきます。
「貴方は病気なのですよ。患者の前に、あなた自身を直すべきです」
激昂はしなくとも、多少の挑発にはなるでしょう。
ミサイルが来たらUC発動。同時に肉体の操作を一時的に放棄します。身体を操る人格がいなければ、身体は完全な脱力状態となります。
相手に麻酔が効くかは分かりませんが、ミサイルとしての破壊力は返せるでしょう。万一麻酔が無効化しきれない場合でも、接種済みの中和剤が役に立つはずです。



 相手がオブリビオンである以上、聞きたい事はあってももはや話す術などない。機械人形に真の思いを伝える事など叶わない。
 残念でならないが、今は猟兵としての仕事を遂行するべきだ。水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は機械人形の前へと歩く。
「貴方は病気なのですよ。患者の前に、貴方自身を治すべきです」
 偽神細胞を完全に治す事はできない。手段があるとすれば、この機械人形が犯してきた事のように、体を破壊する事だけだ。元医師としては遺憾な行為であるが、それもまた相手の宿命なのだろう。
 機械人形が怜悧へ半壊した両腕を向け、麻酔のミサイルを放つ。どのような量であれ偽神細胞の効果によって致死量である事に変わりはない。昏睡の次に待っているのは死だ。
 目の前まで接近してきたミサイルを見届けるなり、怜悧は突然がくりと体を崩し、気を失ったかのように倒れた。ぴくりとも動かない彼の元へ、ミサイルが集中砲火を浴びせる。
 誰かが見れば、恐怖のあまり失神してしまったように見えるだろう。勿論、彼に至ってはそのような事など起こさないはずだ。
 爆発と煙に飲まれた怜悧の姿。しかし、その体には異変が起こっていた。人であったはずの体が液体金属と化していたのだ。
「なるほど、ならばこう……ですね」
 その呟きの直後、液体金属から同じ姿を模したミサイルが射出された。ミサイルは機械人形へ目掛けて着弾し、爆発を起こす。怜悧は徐々に人の姿へと戻りながら相手の様子を窺う。
「機械に麻酔が効くのかは分かりませんが……破壊力としては十分でしょう」
 予め打っておいた中和剤が体内で麻酔と争っているのを、痺れる腕からひしひしと感じる。
「反省、なんて言葉は貴方の中にはないでしょうが。貴方のような者が増えない事をただ祈るばかりです」
 医術がこれほどの痛みを感じるものではあってはならない。死期が急激に迫り来る機械人形に、それは理解できたのだろうか。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧崎・紫苑
手段と目的を履き違えた人形か
医者として、貴様の暴挙を止めねばならんようだな

接敵と同時に、自分の身体に『薬品ケース』から取り出した筋弛緩剤を注射
UCを発動させた状態で敢えて敵の攻撃を受け、麻酔薬に対する抗体を生成
これで、敵の麻酔ミサイルは効果を発揮できないはずだ

弛緩剤を中和する薬を注射して反撃開始
とはいえ、こちらの状態を悟られては拙いので、『武装医療鞄』の機銃で弾幕を張るなどしてミサイルを迎撃し、苦戦している素振りを見せよう
「どうした? その程度では、俺は眠らんぞ?

ミサイルの迎撃はあくまで時間稼ぎ
UCを連射させて自戒を促すのが目的だ
「病というなら、貴様自身が病人だろう?
「そろそろ、引退の時だぞ



 製作者がどのような願いを込めて作ったものだとしても、手段を誤っていればそれは罪人である。医術とは到底呼べない業を扱いつつも尚医師だと豪語するのであれば、本物の医師として許す事はできない。
「貴様の暴挙を止めねばならんようだな」
 機械化した腕に自然と力が入る。同じ偽神細胞を持つ同士、もし一つ道を踏み間違えていれば自分もあのようになっていたかもしれない。しかし自分はオブリビオンではなく猟兵となった。
 ――だからこそ俺が診てやる。
 霧崎・紫苑(機械仕掛けの闇医者・f32327)は機械人形を睨み付けながら、空間に足音だけを響かせた。

 機械人形は既にボロボロだ。しかし目の前にいる病魔を絶つまで止まる訳にはいかない。彼は片腕を紫苑に向け、麻酔のミサイルを発射しようとした。この発射の衝撃によって、この腕は完全に破壊してしまうだろう。しかし、目的を遂行できるのならそれでもいいと認識した。
 ミサイルが発射されたと同時に紫苑は自身の体に筋弛緩剤を打ち込んだ。がくりと体勢を崩すと同時にミサイルが着弾し爆発する。吹き飛ぶ紫苑の体。しかし、その体には傷一つ付いておらず、昏睡した様子すらなかった。
「『超抗体生成』……貴様の麻酔の分析は完了した」
 すぐに中和剤を打ち込む紫苑。筋弛緩剤はユーベルコード発動の合図でもあったらしい。機械人形の麻酔の抗体を手に入れた紫苑は、地に膝を着きながら武装医療鞄を開き、機関銃を発射させた。
 片腕がボロリと崩れ落ちた機械人形は、残った片腕を持ち上げ、再び麻酔ミサイルを撃ち出す。動きを見せない相手を弱っていると認識したのだろうか。最後の力を振り絞り何度も連射を続けた。
 ミサイルを撃ち落とす紫苑の機関銃によって、辺り一面に煙や麻酔の異臭が蔓延した。麻酔に耐性を得たとはいえ、その臭いは酷いものだ。真っ白な視界に戦場も閉ざされた。
 しかし紫苑には認識する事ができた。相殺する爆発音の中で、見えない視界の奥で、何かが崩壊していく様子を。
「もう分かっただろう。誰が病人であるかを」
 紫苑は武装医療鞄を閉じ、攻撃を止めた。向こうから麻酔ミサイルも飛んで来ない。煙が薄れていくと、機械人形は倒れていたのだ。
 両腕は破片と化し、上半身と下半身は分かれていた。痙攣を起こす機械人形の上半身。動こうとしても、もう動力源は既にない。
「そろそろ、引退の時だぞ」
 そう言葉を投げ掛けると、機械人形の仮面の奥から光が消えた。壊れた体もぴくりとも動かなくなり、彼は生涯を終えた。

 苦しむ声は消え去り、戦場には静寂だけが残った。
 偽神細胞が与えるものは超越した力ではなく、痛みと苦しみだけである事を猟兵達は知る。
 ――デミウルゴスはすぐそこだ。必ず偽神を止めなければ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月16日


挿絵イラスト