アポカリプス・ランページ⑥〜火炎と戦車
●ランディングバトル
ロッキー山脈に居を構える鋼鉄要塞デスファイアは、言うまでもなく『ヴォーテックス一族』の一人、火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の本拠地である。
その威容はあらゆるところに鋲が埋め込まれ、刺々しい雰囲気を醸し出していた。
「無敵! 最強! それがこのオレ、デスファイア!」
火炎大王『デスファイア』は己の身体を誇示するように炎を噴出させ、鋼鉄要塞デスファイアより飛び出す。
彼の身体は下半身が戦車車両へと改造され、その異形なる姿は見るものを圧倒するものであった。
キャタピラは如何なる悪路をも踏み砕き、走破するであろう。
高熱の火炎が噴出し、ニトロの爆発力で凄まじい速度を発揮する。
彼の言葉はあながち間違いではないと思うほどの異形なる姿であった。
「この世界を支配するのは、宗教でも軍隊でも奴隷でもねえ! 暴力、無法、底なしの欲望! それこそが終わっちまったこの世界のガソリンなのさ!」
彼は言う。
この荒廃した世界アポカリプスヘルにおいて、もっとも正しきものを欲望である。
文明が荒廃したことにより法は意味をなさなくなった。
弱者を護るという正義は地に失墜した。
己を律するという理性は、建前以下のものになった。
故に彼は己の欲望のままに立ち振る舞うのだ。
炎で人を焼き、己の下半身を改造した車両で踏み潰す。
虐殺と暴力。それこそが彼の生き甲斐であり、己の胸を熱くする炎そのものであった。
「……ま、そんな世界にした原因の大半は、多分このオレだがな! そしてこのオレは、無敵にして最強!」
あらゆる無法を肯定し、あらゆる暴力をいとわず、全てを欲する底なしの欲望を持つ火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』は確かに最強であったことだろう。
ここがアポカリプスヘルであるからこそ言える言葉である。
「だから、猟兵が来ようが、『フィールド・オブ・ナイン』が来ようが、なんならオヤジが来ようが同じことだ! オレに勝てるヤツなどいる訳ねぇ! 全員轢き殺してやるぜ……このオレ、デスファイアがな!!!!」
彼の雄叫びはロッキー山脈に響き渡る。
中には車両にまたがった者達がいるだろう。それを目ざとく見つけた『デスファイア・ヴォーテックス』は不敵な笑みを浮かべる。
火炎が絶えず噴出し、爆音挙げて大地を疾走する戦車を駆り、猛烈な速度で猟兵たちに迫るのだ。
「おっ! なるほどな! このオレに『ライディングバトル』を挑むか! ならば、俺も男だ! てめえらに引導をくれてやる。行くぜ、『ライディングバトル』の始まりだ――!!!!」
●アポカリプス・ランページ
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。ロッキー山脈に本拠地を構える火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の鋼鉄要塞への道が開かれました」
ナイアルテは、アポカリプス・ヘルにおける大きな戦いの舞台となったアメリカ全土の地図を広げ指し示す。
そこは山岳地帯であり、ロッキー山脈と呼ばれる広大な自然が広がる場所である。
その一角に火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の本拠地である鋼鉄要塞が在るのだ。
その鋼鉄要塞を今回攻略する必要はない。
「なぜならば、『デスファイア・ヴォーテックス』は下半身を戦車に改造した異形なるオブリビオン。皆さんが車両……バイクや戦車、あらゆる乗り物に乗っていると、要塞から飛び出し、『ライディングバトル』を挑んできます」
それは良いとしても、敵の本拠地である。他の配下オブリビオンたちが襲ってくるのではないかという懸念がある。
しかし、その必要はないのだという。
「『デスファイア・ヴォーテックス』はたしかに欲望に忠実、暴力と無法を愛する者ですが、彼は『ライディングバトル』においてのみ、男してのプライドを持っています。皆さんが少数であるがために部下も少数の精鋭しか率いてきません」
ナイアルテは怪訝な顔をしていた。
下半身を戦車に改造する意味がよくわかっていないのだろう。想像してみると、なんだか可愛らしいな、と思うほどでもあったが、実際にはそんな可愛いものではない。
「『ライディングバトル』は乗り物に乗りながら相手を死ぬまで殴る闘技。危険極まりないことは承知の上です。彼をこの勝負によって引きずり出し、此処で撃破しましょう」
猟兵たちがしなければならないことは二つ。
乗り物を駆り、『ライディングバトル』を仕掛け、『デスファイア・ヴォーテックス』を引きずり出す。
そして、少数精鋭の部下を率いた『デスファイア・ヴォーテックス』を打倒すること。
この二つを為すことによって、猟兵たちは『ヴォーテックス一族』の一角を崩すことができるだろう。
彼等を打倒しない理由はない。
ナイアルテは拳を握りしめ、猟兵たちに差し出す。
アポカリプス・ランページが始まって以来、破竹の勢いで進撃を続ける猟兵達の意志を、戦いを知るからこそ、彼女は猟兵たちを送り出す。
微笑みは、きっと彼等が勝利することを信じているからだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『アポカリプス・ランページ』の戦争シナリオとなります。
ロッキー山脈に座す『ヴォーテックス一族』の一人、火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の鋼鉄要塞デスファイアへと向かい、乗り物に乗って死ぬまで相手を殴る闘技『ライディングバトル』を挑み、これを打倒するシナリオになります。
山岳地帯ですが、『デスファイア・ヴォーテックス』は下半身を戦車に改造しており、ものすごい速度で縦横無尽に駆け巡り、皆さんを『ライディングバトル』でもって打ち倒そうと迫っています。
皆さんも車両に乗り、これを打倒しましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……乗り物に乗って戦う。
それでは、『フィールド・オブ・ナイン』の齎すカタストロフを阻止する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『デスファイア・ヴォーテックス・ライド』
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POW : デスファイア・ニトロクラッシュ
【ニトロの爆発力】によりレベル×100km/hで飛翔し、【自身の火力】×【速度】に比例した激突ダメージを与える。
SPD : デスファイア・スピードラン
【下半身の戦車】を操縦中、自身と[下半身の戦車]は地形からの激突ダメージを受けず、攻撃時に敵のあらゆる防護を無視する。
WIZ : デスファイア・ノンブレーキ
自身が【速度を落とさず走り続けて】いる間、レベルm半径内の対象全てに【高熱の火炎】によるダメージか【心が燃えること】による治癒を与え続ける。
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎
ヒャッハー!
この世界を終わらせた、デスカ?
HAHAHA、ナイスジョーク!
ワタシたちがアナタを終わらせて、この世界を復活させマース!
レッツ、ライディングバトル!
ワタシたちは『列車砲搭載・装甲蒸気機関車』に乗りマース!
操縦、砲撃、石炭の補充、ミニ・バルタンにサポートをお願いしマース!
『バルルー!』
レースは一人のものではなく、チームのもの!
ワンフォーオール、オールフォーワン、であります!
敵と距離が離れたら列車砲ファイアー!
ワタシは飛んでくるデスファイアの迎撃のために、車両の上でスタンバイ!
突っ込んでくるデスファイアを、パイルバンカーのカウンターで墜落させマース!
アディオス!
ロッキー山脈に火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の笑い声が木霊する。
彼の瞳に映るのは猟兵達の姿であったが、その趣はいささかこれまでと異なるものであった。
彼等皆、一様に乗り物に騎乗している。
それはそう、いわば『デスファイア・ヴォーテックス』に対する挑戦状のようなものであった。
「なるほどな、挑発していやがる! このオレを前にして『ライディングバトル』を挑むとはいい度胸じゃねぇか! 野郎ども! エンジンを回せ! 奴らの頭数にこっちも合わせてやろうじゃねぇか!」
その声は鋼鉄要塞デスファイアに響き渡り、エンジン音と共に山脈から飛び出すレイダーと『デスファイア・ヴォーテックス』。
『デスファイア・ヴォーテックス』は生身単身であるが、その下半身は戦車に改造されている。
どこかで見たかのような姿であるが、油断はできまい。
なにせ彼は悪名高き『ヴォーテックス一族』にして、このアポカリプスヘルの世界を無法と暴力によって破壊せしめたと豪語するものである。
「ヒャッハー! この世界を終わらせた、デスカ?」
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)はまるでレイダーのような雄叫びを上げながら、キャタピラ式装甲列車と共に戦場を駆け抜ける。
装甲列車なのに線路はいらないのか?
そう、必要ないのだ。この装甲列車はキャタピラを履いている。つまり、どこでも行ける。何処まででも行ける。
轍は己の前にできるものではない。己の後にできるものであればこそ、バルタンは笑い声を挙げて突き進むのだ。
「HAHAHA、ナイスジョーク! ワタシたちがアナタを終わらせて、この世界を復活させマース! レッツ、ライディングバトル!」
「いい度胸だ! まずはてめえから血祭りにあげてやる! 行くぜ!」
ニトロの爆発が下半身の戦車にて起こり、凄まじい速度で戦場を駆け抜ける『デスファイア・ヴォーテックス』。その速度は冗談のような姿からは想像も付かぬほどに機敏であり、バルタンは目をむく。
だが、彼女の駆る装甲列車は彼女一人で操縦するものではない。
秘密のバルタンズ(シークレット・サービス)たちと共に彼女は装甲列車を駆り、操縦、砲撃、石炭の補充などを召喚された『ミニ・バルタン』たちにサポートしてもらうのだ。
「カモン、バルタンズ!」
『バルバルバル♪ バルルー!』
盛大な掛け声と共に出発進行である。
そう、レースは一人のものではなく、チームのもの。ワンフォーオール、オールフォーワン。
しかし、これはレースではないのだが、それは大丈夫であろうか?
凄まじ速度で相対距離が詰まる。しかし、装甲列車は一気に加速し『デスファイア・ヴォーテックス』を突き放していく。
「この俺のニトロターボを振り切るだと! 冗談じゃねぇ!!」
唸るニトロ。
その爆発力は言うまでもない。凄まじい加速で迫る『デスファイア・ヴォーテックス』を前にバルタンは車両の上に仁王立ちしている。
何か勇壮なバックグラウンドミュージックが聞こえてきそうな気がしないでもない。
「突っ込んでくることはお見通しなのデース! その愚直さ、その蛮勇! 嫌いではないのデスガ、これは『ライディングバトル』ですカラネ!」
バルタンが装甲列車の車両、その上から飛び立つ。
そうはさせぬと放たれる火炎放射器の炎をかいくぐり、バルタンはパイルバンカーの一撃を叩き込む。
地上にありて、その空中戦を制したのはバルタンであった。
杭打ちの一撃が『デスファイア・ヴォーテックス』の体を穿つ。放たれた杭が根本から折れる。
「グォ、ア!? この、最強のオレに一撃食らわすだと!?」
「アナタが最強なんて良いジョークデース! アディオス!」
放たれた一撃とともにぐるりと旋回してきていた装甲列車の車両の上にバルタンは降り立ち、指をびっと立てる。
『バルバルバルー!』
ミニ・バルタンたちがお駄賃をせびるようにバルタンのメイド服の裾を引く。
わかりましたわかりました後でね! とバルタンとの微笑ましいやり取りを背に『デスファイア・ヴォーテックス』は己の敗北に苛立つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
馬鹿だ…馬鹿がいる…!
いくらライディングバトルにマジだからって下半身改造する?
普段の生活大変そう…
まあ、それで真っ向勝負出来るならいいや
そっちの舞台にこっちも乗ろうじゃない!
●
EX:I.S.T[BK0001]に騎乗
さあ、こっちもバイク持ってきたんだからひとっ走り勝負と行こうじゃない
更に左手にBlue Birdを抜刀
右手は運転に集中して【Link=Ex:I.S.T】を起動
バイクで小回りを利かせながら『悪路走破』でどんな道でもぶっちぎる!
距離を取って『斬撃波』を放ち攻撃
更に加速して距離を取りUターン
デスファイアに向かって全速力で突っ込みながら、ぶつかる直前で横にそれてすれ違いざまに斬る!
「ちくしょう! なんだってんだ! 猟兵ってのは、どいつもこいつも! オレの見事な下半身を理解しやがらねぇ! 見ろ! この力強いキャタピラを! 立ち上る炎を! ニトロと炎で倍速だぜ!?」
火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』はうめいていた。
猟兵の放ったパイルバンカーの一撃が杭を己の体に打ち込んだことは、まあいい。別に『ライディングバトル』なのだから、そういうことだってある。
けれど、己の姿。
その機能美。
パワフルな走りを見せ、魅了してやまぬ姿を理解しない猟兵に彼は苛立つのだ。
「この姿こそが最強たる証だろうがよ! なあ、お前ら!」
その言葉に少数精鋭と率いられたレイダーたちがうなずく。ヒャッハー! と雄叫びを挙げながら、彼に追従するレイダーたちもまた似たようなセンスの持ち主ばかりであった。
下半身こそ戦車ではなかったが、トゲトゲの鋲やらなんやら、イカした入れ墨などがその証拠である。
彼等のセンスもまた『デスファイア・ヴォーテックス』と同じであった。理解に苦しむ。その火炎が吹き出る装置の意味は一体……?
そんな彼等を模造神器を運用補助するためのバイクにまたがり、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は驚愕していた。
「馬鹿だ……馬鹿がいる……!」
いくら『ライディングバトル』にマジだからって下半身改造する? と彼女は『デスファイア・ヴォーテックス』の暴挙とも言える姿に首を傾げていた。
だって普段の生活とかどうなっているのだろう。
いや、よくわからない。
むしろ、これはあれだろうか。ホビーで世界征服を企む悪の組織的な、そういうあれの様式美であろうか?
「なら、その見た目じゃ前座も前座の噛ませ犬じゃん」
まあそれで真っ向勝負ができるのならば、それでいいと玲は特殊バイクと共に戦場を走り抜ける。
「小綺麗な二輪でご機嫌ってか! そんなんじゃ、『ライディングバトル』は勝てねぇぜ、嬢ちゃんよ!」
『デスファイア・ヴォーテックス』が下半身を改造した戦車と共に凄まじい勢いで玲へと突進してくる。
その力は言うまでもなく危険極まりないものであったし、油断していれば即座に致命傷になる威力であることを玲は見抜いていた。
だが、彼女の駆る特殊バイクは模造神器を補助するためのバイクである。
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
なんのためにこのバイクをわざわざ持ってきたというのだ。そう、ひとっ走り付き合ってもらうためである。
「BK0001、戦闘支援モードに移行。リンク開始。Link=Ex:I.S.T(リンク・エクスアイエスティー)――そんじゃ、行くよ!」
その言葉とともに玲が模造神器を抜刀する。
瞬間、蒼い残光が戦場を疾走る。
それはまるで、蒼い口紅を戦場に引いたように凄まじい速度で持って駆け抜け、『デスファイア・ヴォーテックス』を引き離すのだ。
「このオレを引き離すだと!? 猟兵のマシンは化け物かよ! だがよぉ! こっちの装甲の分厚さを知らねぇと見える! 攻撃を仕掛けたときが、お前のハードラックとダンスっちまった時よ!」
よくわからん言い回しをする『デスファイア・ヴォーテックス』に玲と特殊バイクが迫る。
下卑た笑いを浮かべながら、正面から対峙する『デスファイア・ヴォーテックス』を前に玲と特殊バイクはぶつかる直前で直角に曲がる。
それはドライビングテクニックがどうとかという問題ですらない、超絶技巧。いや、慣性の法則をぶっちぎるかのような直角コーナリング。
放たれる模造神器の斬撃が『デスファイア・ヴォーテックス』の体を切り裂き、血潮が噴出する。
「――な、なんだァ!? どうなってやがる! 直角に曲がった!?」
「へいへいへい、バッタービビってるー!」
あれ、野球だったかなと思う玲のやじと共に蒼い残光が再び疾走る。それは、『デスファイア・ヴォーテックス』をして躱すことができず、また捉えることのできぬ速度であった。
模造神器のパワーを持って急加速とブレーキング。
その繰り返しによって嵐のような斬撃を『デスファイア・ヴォーテックス』に打ち込んでいくのだ。
それはまさに『デスファイア・ヴォーテックス』が言うところの暴力。
そう、暴力は全てを解決するし、玲の持つ模造神器は理不尽を持って、『デスファイア・ヴォーテックス』を翻弄し、意趣返しのように愛すべきお馬鹿さんを模造神器の残光の前に下すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…なるほど…車で勝負ならば受けて立つと…
…それなら改造装甲車【エンバール】に乗って挑戦をしよう…
…そちらのキャタピラや車は改造に改造を重ねて性能にいるのだろうけど…こちらもの装甲車もちょっとしたものだよ…
デスファイアの攻撃はあらゆる防護を貫通するからなー…運転であいつの攻撃だけは避けて…
【戦術構築:奸計領域】を発動…地形を利用して落石や崖の倒壊の罠で部下への攻撃…と同時にデスファイアへの目くらまし…
…術式組紐【アリアドネ】を地面に仕掛けてキャタピラに巻き込ませて停止させる罠としよう…無効化出来るのは激突ダメージだけ…この手の攻撃は通じるからね…
…そちらは停止してこちらは動ける…勝負あり…だ…
火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』は苦戦を強いられていた。
彼が飛び出した戦場はロッキー山脈の麓。己のフィールドと言って差し支えぬ場所であったが、対峙する猟兵たちは尽くが『デスファイア・ヴォーテックス』を上回る速度で持って『ライディングバトル』を征し続けていた。
少数精鋭を引き連れて『デスファイア・ヴォーテックス』は猟兵たちを打倒せんとしていたが、生半可なレイダーたちでは、引き離されるばかりであったのだ。
かくいう『デスファイア・ヴォーテックス』もまた猟兵の速度に翻弄され続けていたのだ。
「このオレが『ライディングバトル』で負ける……!? 馬鹿な、そんなことがあっていいはずがない! オレは無敵にして最強のはずだ! なのに、何故俺が遅れをとる!? この下半身のキャタピラが唸りを上げているというのに!!」
彼の下半身は戦車そのものであった。
己の肉体を改造し、戦車と融合した人そのものとなった彼の威容は言うまでもない。悪路すらも容易く踏破するキャタピラ。ニトロによって加速する速度。重厚な攻撃を寄せ付けぬ装甲。
どれをとっても己が負ける要素などなかったのだ。
「……そちらのキャタピラや車は改造を重ねて性能を底上げしているのだろうけど……こちらの装甲車もちょっとしたものだよ……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の声が響く。彼女は改造装甲車『エンバール』を駆り、『デスファイア・ヴォーテックス』に『ライディングバトル』を挑む。
挑まれたからには、どれだけ意気消沈していようが受けて立つのが『デスファイア・ヴォーテックス』という男である。
「装甲でオレの固くてデカイ下半身に勝てるつもりか! てめえのご自慢の車両なぞ、オレが踏み潰してくれるわ!」
吠えたける『デスファイア・ヴォーテックス』を前にメンカルは、なるほどと頷く。
やはり『ライディングバトル』であならば、受けて立つのだ。
それがどれだけ負傷し、不利な状況におかれているのだとしても、彼は受けざるを得ない。そこまで『ライディングバトル』に入れ込んでいるのならば当然でもあった。
「ヒャッハー! 踏み潰してやる! おめえら、やつを逃がすなよ!」
率いる少数精鋭のレイダーたちが一瞬でメンカルの駆る改造装甲車『エンバール』を取り囲む。
けれど、メンカルはそれこそを利用できると看破していた。
輝くのは、戦術構築:奸計領域(ウェルカム・キルゾーン)である。
この山岳地において、地形を利用することは容易である。レイダーたちが己を追い込んでいると錯覚するのも無理なからぬことであった。
メンカルのユーベルコードに輝く瞳は、既に計略を練り上げ、戦術として構築されていた。
敢えて山岳地に突入し、地形を利用し落石や『エンバール』の自重でもって崖を倒壊させながら、また一人、また一人と随伴するレイダーたちを脱落させていくのだ。
「追い込め! 何をしていやがる! 敵はたった一人だぞ! 右だ、右から追い込め――クソ! どんなタイミングで落石があるってんだ!」
『デスファイア・ヴォーテックス』が呻くたびに部下たちが排除されていく。それこそがメンカルの用いた罠である。
以下に下半身を戦車に改造していようとも、随伴する部下が居なければ、丸裸も同然である。
こちらが気にしなければならんおは、『デスファイア・ヴォーテックス』の突進だけである。
だが、それは同時にメンカルにとってのウィークポイントである。
あの激突のダメージだけは無効化される。ならばこそ、『デスファイア・ヴォーテックス』は『エンバール』に体当たりを仕掛けようと迫るのだ。
「そう来るよね、やっぱり。なら、この手の攻撃は簡単に通じる……」
「何を言って、オオオオオ――!?」
瞬間、『デスファイア・ヴォーテックス』がつんのめるようにして前に倒れ込む。
一体何がと思った瞬間、彼の下半身のキャタピラに術式組紐『アリアドネ』が地面に仕掛けられており、キャタピラに絡まるようにして動きを封じたのだ。
それはメンカルの張り巡らせた罠のちからを更に効率的に『デスファイア・ヴォーテックス』に絡ませ、その身動きを完全に封じるのだ。
「そちらは停止して、こちらは動ける……勝負あり……だ……」
動けぬ『デスファイア・ヴォーテックス』にこちらの攻撃を防ぐ手立てなどない。
動き続けていることが、彼の無敵性を実現するものであったのならば、今こそが決定的なチャンスであった。
「お、おい、まさか、てめぇ……待て! おい! 本気か!?」
「……だって、これが一番手っ取り早い効果的な攻撃……」
目の前に迫るのは改造装甲車『エンバール』のフロントであった。
敵が止まっているのならば、後は質量で持って轢き潰すまでである。十分な速度を持って突っ込む『エンバール』の突進は、『デスファイア・ヴォーテックス』を吹き飛ばし、その体はまるでピンボールのように山岳地に跳ねては、凄まじい轟音を立て爆煙を上げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ツキカ・アシュヴィン
まさに典型的なレイダーっちゅうノリやな!
せやけど、今更そないな奴に負けるワケにはいかへんで!
Voyager02を【運転】してライディングバトルに参戦。
なるたけ奴に先行する形で走り、アサルトライフルの【制圧射撃】や手榴弾の【爆撃】で前進を牽制しつつ攻撃してくで。
多分、簡単に前に出れんとなったらユーベルコードで突っ込んでくるやろから、バイクを滑らせるなりして何とか回避。
敵の側面を取った時には戦車の無限軌道を狙ってライフルで銃撃、当たったら『嘴星、獲物を啄む』発動、結晶を形成して稼働を阻害できんか試みてみよかと。
何にせよ、こないでかい敵や。一撃で如何こうはでけへんやろ。
なるたけ弱らせられれば良しや。
吹き飛ばされた体を引き起こし、火炎大王『デスファイア・ヴォーテックスが呻く。
その下半身は戦車の体に改造されており、彼の意志に応じて縦横無尽なる戦術機動を描いて戦場を駆け抜ける。
キャタピラはあらゆる障害を踏み潰し、どんな悪路であっても踏破することができるだろう。しかし、今彼の下半身たる戦車は猟兵達による攻撃に寄って、その速度を落としていた。
「クソったれ! こんなことでこのオレが立ち止まるなどとあってはならねー! 燃えろオレのハート! 震えるぞエンジン! ニトロでぶっ飛びやがれ!」
点火されるエンジンは唸りを上げて、凄まじい速度で疾走る……否、飛ぶ。
その姿はジェットエンジンを積んだ航空機のごとく、罠にはめられた『デスファイア・ヴォーテックス』の体を飛ばすのだ。
飛翔する戦車。
それは言葉にすれば、意味のわからないものであったし、ツキカ・アシュヴィン(星追いの渡り鳥・f24375)はあれが『ヴォーテックス一族』の一人であることを知る。
正直言って典型的なレイダーであるというのはわかるのだが、そのノリがなんとも理解し難い。
正直、ボスの顔をしてきて出て来ていい感じのオブリビオンではない。
「まず最初に下半身戦車ってなんやそれ……」
しかも、それがニトロの爆発力で飛ぶのだ。もう訳がわからない。
「せやけど、今更そないな奴に負けるワケにはいかへんで!」
ツキカはオフロードバイクにまたがり、ロッキー山脈の戦場に飛び出す。どんな悪路であろうとも、どんな坂道であろうとも彼女の駆るオフロードバイクは馬力に優れている。
例え、相手がニトロを爆発させたかの如く飛ぶ下半身戦車ヤローでも関係ないのだ。
「速度が落ちてるってのが助かるわ!」
これまで『デスファイア・ヴォーテックス』は猟兵の攻撃で、その体や戦車にダメージを負っている。そのために速度が思った以上に出ていないことがツキカにとっての幸いであった。
「こなくそ! 舐めるなよ、猟兵!」
噴射する爆炎がツキカを煙に撒くようにして噴射されるが、彼女が駆るオフロードバイクは即座に対応して躱し、最周りする。
手投げの手榴弾が着地した『デスファイア・ヴォーテックス』の前に転がり、凄まじい爆風を撒き散らす。
さらにアサルトライフルの弾丸が、彼の進路を妨害するよううに放たれるが、ニトロの噴射によって速度を増した『デスファイア・ヴォーテックス』の体当たりがツキカに迫る。
「潰れっちまえよ! オラッ!!」
迫る肉弾戦車の如き『デスファイア・ヴォーテックス』の巨躯がツキカに迫る。
だが、それをツキカは一瞬でバイクを滑らせ、直線的な動きを躱すのだ。
「そない単調な動きでウチを捉えようなんて無理な話や! 側面! いただき!」
滑らしたオフロードバイクのままにアサルトライフルから弾丸を放ち、その一撃を見舞う。
瞬間、ツキカの瞳がユーベルコードに輝く。
それは、嘴星、獲物を啄む(アルビレオ・クラック)が如く。放たれた銃弾が結晶を生成し、『デスファイア・ヴォーテックス』の戦車の体に結晶が肥大化し、食い込んでいくのだ。
それは決して抜けぬ楔と成って戦車の装甲をひしゃげさせていく。
「この! 俺の自慢の戦車に傷をつけてくれたな! 許さねぇ!」
「それはこっちのセリフや! そんなデカイ図体しといて、なんやねん、空飛ぶて! ええかげんにしいや!」
ああいえばこういう。
ツキカは此処で『デスファイア・ヴォーテックス』を打倒しようとは思わなかった。弱らせようとしていたのだ。
打ち込んだ結晶もその一つ。
楔を打ち込むことによって装甲は弱っていくだろう。そうなれば、後に続く猟兵達の攻撃が、その傷を広げてくれる。
今はそういう戦いでいいのだ。
一撃でどうこうはできない。わかっている。だからこそ、ツキカは己にできる戦いをし、その勝利への道筋を確かに作り上げていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シズホ・トヒソズマ
アドリブ歓迎
また乗り物勝負ですか
あの一族グラサン以外皆なんか乗るんですが…ま、今回もぶちのめすだけですし
UC発動
バイクロボに◆騎乗
兎ロボと猿ロボも共に乗り準備
じゃ、スタート!
人形操りで鍛えた◆早業、見せてあげます
全地形適応◆地形耐性のバイクロボを◆操縦◆運転
早業のテクで回避したり
◆フェイントをかけたりして翻弄
苛ついて大技を使うのを待ちます
大技で突進してきたら
準備させていた猿ロボをUC対処メカに変形
ニトロ爆発反応を抑える特殊薬品放射◆メカニック!
これをぶっかけて速度を激減
火力も濡らして減衰
威力が下がったところを兎ロボの◆オーラ防御で受け止めて反射
体勢が崩れた所をバイクロボで突撃し思い切り殴ります
戦車、人間椅子。
そのどれもが『ヴォーテックス一族』であるオブリビオンたちが駆る乗り物の名であった。
今回は火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』が駆る……というより、下半身そのものを戦車に改造した姿を見て、シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は首をひねっていた。
「あの一族、グラサン以外みんななんか乗るんですが……ま、今回もぶちのめすだけですし」
彼女にとってやることは変わらない。
それは幸いなことであったし、同時にまた乗り物勝負であることに対して、飽き始めている様子でもあった。
「クソ……! 俺の立派な下半身が! 戦車に傷が付いちまった……! なんて野郎どもだ! なんて酷いことをしやがる! 許せねぇ! 許せねぇよなぁ!」
噴射するニトロと共に『デスファイア・ヴォーテックス』の身体が浮かび上がる。それはニトロによって爆発的に推力を増した戦車が彼の身体を空へと舞い上がらせるのだ。
これまで猟兵達の攻撃で戦車部分は相当に痛めつけられているはずだが、それでもまだ稼働するところを見るに、余程頑丈なのだろう。
シズホは、ユーベルコードの輝きを瞳に灯し、幻影装身・疑似極:欲望を解き放つ三怪人(アームドフェイクフォーミュラミラージュ・デザイア)により、あらゆる地形を高速で走り、竜巻を起こすほどの凄まじい推力を持つ自動バイクへと乗り込む。 ついでに兎ロボと猿ロボも共に乗り、準備万端である。
「じゃ、スタート! 『ライディングバトル』、行ってみましょうか! 人形操りで鍛えた早業、見せてあげます」
彼女のかる自動バイクが凄まじい勢いでロッキー山脈の荒れた大地を走り抜ける。
その運転テクニックは凄まじいものであった。フェイントを駆け、『デスファイア・ヴォーテックス』の突進を誘発させたかと思えば、華麗に躱して見せたりもするのだ。
「避けるんじゃあねぇ! ミンチにしてやっからよ! お前たちが悪いんだぜ、オレの戦車に傷をつけやがるからよぉ!!!」
怒号と共に『デスファイア・ヴォーテックス』の身体がニトロの爆発力を伴って、シズホたちに飛ぶ。
まさに巨大な弾丸。砲弾めいた勢いを見やり、シズホは計画通りと笑うのだ。
「苛ついて大技で決めに来ましたね! それを待っていたのです!」
猿型ロボが『デスファイア・ヴォーテックス』のユーベルコードを解析し、その砲弾めいた突進を受け止める。
そこにニトロ爆発反応を抑える特殊薬品を放出し、噴射口からニトロの反応を消しさせるのだ。
「なんだ、これは!? 速度が! でねぇ!?」
「ニトロの爆発反応を抑える薬剤ですが、理解はされないでしょうね、そのおつむでは! では、生きなさい兎ロボ!」
シズホの言葉に兎ロボが猿ロボによって受け止められた『デスファイア・ヴォーテックス』の身体を絶対防御バリアの反射する力によって弾き飛ばす。
「う、ぉおおお!?」
それはアポカリプスヘルにおいては、あまりにも荒唐無稽なる光景であったことだろう。
猿と兎のロボが火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』を弾き飛ばし、大地に叩きつける。
在ってはならない光景であったことだろう。しかし、それが現実である。
更に言うと、全速力で自動バイクにまたがるシズホがとても良い笑顔で突撃して言っている。
加速によって得られた勢いは、彼女が握りしめた、ぐーの拳を猛烈なる一撃と変えて『デスファイア・ヴォーテックス』のふらふらと立ち上がった後頭部に打ち据えられる。
ものすごい音がして、『デスファイア・ヴォーテックス』の視界に星が明滅する。
「これが、過去を越え、現在の力にし、未来を切り開く! そのための拳です!」
思いっきり後頭部にドカンと一発どぎつい一撃をくれてやったシズホは笑い声と共に『デスファイア・ヴォーテックス』を大地に沈めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
なんだかすごいのでてきたね。下半身が戦車とか……。
ま、ひゃっはー系でよかった。
俺の主砲を……とかいいだしたら、問答無用で消しちゃうところだったよ。
それはいいとして、乗り物に乗ってっていうことなら、
わたしは【リオ・セレステ】でいかせてもらうよ。
相手の炎を【mist sprayer】とメイド服の【火炎耐性】で軽減しつつ、
こっちからは【D.U.S.S】と【M.P.M.S】で攻撃していくね。
最初は様子を見ながら防御メインにして、相手の攻撃を躱すことをメインに戦っていくよ。
相手のクセが解ってきたら、そこからが本番!
【タラリアウィング】を発動させて、スピードで相手を翻弄しちゃうよ!
ところでオヤジってだれ?
「なんだかすごいのでてきたね。下半身が戦車とか……」
思わずそんな言葉が漏れ出てしまったのは、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)であった。
正直な感想である。
というか、それ以上のことは言えない気がする。
なぜなら、いわばその姿は今日び見かけないデザインであったからだ。
アニメとか、マンガとかそういうのサブカル的なものでも見かけないデザイン。どちらかと言うと、レトロな臭いがプンプンしている。
しかも、よくわからない箇所に炎が吹き出る装置まであるのだ。
もはや理緒にとっては理解の範疇を軽く超えている。
しかし、火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』は猟兵達の攻撃の前にたたらを踏むようにゆらゆらと上半身を揺らしている。
後頭部に受けた一撃が頭蓋にヒビを入れるどころか、ぶっくりとたんこぶを作っているのは何かの冗談かと思うほどであった。
「ちくしょうが! オレの後頭部をよくも! 戦車だけでなくオレにも手を出すとは! 『ライディングバトル』とは言え、許せねぇ! てめえら全員ひき肉にして明日はハンバーグにしてやらぁ!」
その言葉はいささかIQが足りていない。
ま、ヒャッハー系でよかったと、理緒は思ったし、彼女が駆るガンシップ『リオ・セレステ』と共に『ライディングバトル』に挑むことができるのは僥倖であった。
「こうなれば、俺のニトロが主砲からぶっぱして……――ッ!?」
そこまでいいかけた『デスファイア・ヴォーテックス』の眼前をガンシップに乗ったメイドさんから放たれたミサイルランチャーが火線引くミサイルと音響兵器が爆発でもって、メチャクチャにしていく。
容赦がなかった。
いや、理緒の前では下ネタは厳禁である。
メイド服を着てにこやかであるが、あれは殺る目である。それ以上の下ネタは絶対に許さないウーマンと化した理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
ブーストポッドが展開され、ブーストモードに変形したガンシップが凄まじい速度で空を舞う。
「相手のクセを理解してからって思ったけど、もう本番でいくよ! 問答無用で消しちゃうんだから!」
このメイドさんマジである。
そくざにタラリアウィングを展開した『リオ・セレステ』が見事な加速でもって最高速度に至る。
それはこれまで猟兵たちに受けた消耗を癒やすことのできない『デスファイア・ヴォーテックス』にとって追うことのできぬ速度であった。
「オレより速いだと! この最強! 無敵! 火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』を! オレはオヤジにも負けない存在だぞ! それを!」
『デスファイア・ヴォーテックス』が喚くようにしてニトロの加速でもって理緒に追いすがる。けれど、猟兵達の妨害が未だ尾を引いているのだろう。加速がイマイチである。
黒煙を挙げながら『デスファイア・ヴォーテックス』の下半身が速度を維持できなくなり、大地に失墜する。
そこに襲いかかるのは空中を変幻自在なる機動でもって駆ける理尾のガンシップであった。
ミサイルや機銃が走り、『デスファイア・ヴォーテックス』に襲いかかる。
「ところで、オヤジってだれ?」
理緒にとっては、当然の疑問であったことだろう。知らない人の知らないお父さん。誰?
言うまでもなくフルスロットル・ヴォーテックスのことであろう。
けれど、それは挑発に聞こえたのだろう。『デスファイア・ヴォーテックス』の顔が真赤に染まり、炎が迸る。
けれど、それさえも理緒は翻弄し続け、空を舞う。
スピードで勝る理緒が冷静さを欠いた『デスファイア・ヴォーテックス』の火炎に捉えられることなどない。彼女は、『リオ・セレステ』と共に大空を駆ける。
それは踊るようでもあり、同時に下ネタを言ってしまった『デスファイア・ヴォーテックス』へとお仕置きを下すように、凄まじき火力で持って叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
百海・胡麦
名に覚えが……ああ、先の軍人さんの
身体まで弄っちまうとは奇特だねえ、嫌いじゃないよ
露払いから――「虎尾」「温」行くよ
片の掌に種火を灯して――『紅灯華』の龍と並走を
「虎尾」での全速力の騎乗突撃、踏みつけから
龍を放ち操作桿や車輪を焼き切ってやりたい
しぶとけりゃ隙に背の鉄塊剣「温」を抜く動作のまま重心移動
勢いを活かし叩き切ろうか
重くて炎にゃ強い子だよ
大王さん、アタシと炎比べをしようじゃないか
そうだよ炎遣い、乗り物好き、気が合いそうだろ?
あれ、ツレない……は!! 治癒など!
繋いだ身体じゃ腹は動きづらそうだね
炎龍で焼いてやろう
下に目を取られるかね、首か腕も狙うてみるか
前に出て足止めついでに横薙ぎを試すよ
火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』は焦っていた。
未だ己は最強にして無敵であることに疑う余地はない。けれど、確実に今猟兵達の攻撃に寄って己が追い詰められているという現実がある。
改造した下半身。
それは戦車となっており、同時に堅牢なる装甲に覆われ一部の隙もないはずだった。けれど、今やその堅牢さはくさびを打ち込まれ、ひしゃげている。
「オレを此処まで追い詰めるとはやりやがるぜ! だがよ! この『デスファイア・ヴォーテックス』が負ける理由なんてねぇんだよ! なぜなら、オレが最強! 無敵! だからだ!!」
その言葉はどこにも信頼性がないものであったし、無根拠なる自信は何処からくるのかと思うほどであった。
「名に覚えが……ああ、先の軍人さんの」
そう呟いたのは、百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)であった。
彼女は先んじて戦った『ロンメル・ヴォーテックス』が駆る戦車のことを思い出していた。
強敵であったけれど、今目の前にいる『デスファイア・ヴォーテックス』は下半身を戦車そのものへと改造していた。
それはとても奇特なことであると思っていたけれど、彼女自身は、それを嫌いではないとさえ思っていたのだ。
だが、戦いとは常に非常である。
相手が死ぬまで殴り合う闘技『ライディングバトル』は未だ続いているのだ。
「なら、露払いから――『虎尾』『温』、行くよ」
彼女はモンスターバイクを借り、鉄塊の如き剣を手に戦場を駆け抜ける。常に彼女の掌には、身に宿る炎を種火として纏わせ紅灯華(ベニノアカリバナ)を咲かせ続ける。
己が念じた『デスファイア・ヴォーテックス』のみを追う炎龍と並走し、彼を追い詰めるのだ。
「大王さん、アタシと炎比べをしようじゃないか」
「このオレに炎で勝負を挑むだと! 上等! てめえの炎にオレの炎が負けるわけがねぇ! てめぇはここで焼け死ね!」
共に戦場を疾駆し、炎を纏いて敵を穿つ。
それはこんな場と立場でなければ気の合うものであったことだろう。
けれどオブリビオンと猟兵である以上、滅ぼし、滅ぼされる関係である。どうあがいても相互理解はなく、互いを滅ぼすことでしか成立しない関係は彼女にとってツレないものであったことだろう。
「オレは無敵だ! 最強なんだ! あのオヤジだってぶちのめしてやれるほどなんだ! それがオレの!」
その心が燃えるような意志は、炎と成ってこれまでに猟兵たちが与えてきた損傷を癒やすようであった。
けれど、それを目ざとく見つけるのが、胡麦である。
「は!! 治癒など!」
されるものかと炎龍が『デスファイア・ヴォーテックス』に絡みつく。白き炎龍の輝きは、『デスファイア・ヴォーテックス』を包み込み、躱すことも振り切ることもできない炎龍の齎す熱でもって身を焼かれるのだ。
「邪魔を! しやがってぇぇ――!!!」
怒号が響く中、白い炎龍がついに振り払われる。だが、それはすでにあまりにも長い時間を胡麦に与えることになっただろう。
モンスターバイクのエンジンが唸りを上げる。
それを『デスファイア・ヴォーテックス』は聞いたことだろう。これまで己を追っていたはずのモンスターバイクのエンジン音がいつのまにか己を追い越し、目を見張った瞬間、鉄塊の如き剣が目の前に迫っていたのだ。
「その首はもらう!」
放たれる一撃が『デスファイア・ヴォーテックス』の首目掛けて放たれる。
けれど、既のところで彼の腕が鉄塊を受け止め、ひしゃげていく。
「う、ぐおおおお――! 俺の腕、が! 俺の腕がぁぁあぁ!!!」
「ありゃ、惜しい。けれど、その腕はもらった。後は」
放たれる鉄塊剣の一撃が下半身の戦車に振るわれ、その体を横薙ぎに倒す。ひっくり返るようにして横転した様を見やり、胡麦はモンスターバイクと共に戦場を駆け抜ける。
露払いと言ったが、凄まじい戦果を得て胡麦は『虎尾』と『温』、そして炎龍と共に『デスファイア・ヴォーテックス』の咆哮を背に聞くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…生憎だけど、私はお前や他の者達みたいな機械仕掛けの馬や巨人を操る技能は無いの
…だから魔術的な騎馬を用意しようと思ったんだけど…ちょうど"騎馬"が来たみたいね
太陽光を「影精霊装」の闇に紛れるオーラで防御して「血の翼」を広げ飛翔しつつ、
大鎌に魔剣の魂を降霊して武器改造を施し鏡の魔剣化してUCを発動
…問おう。お前の父とやらは何者?可能な限り正確に答えて
…答えが返って来ないのは想定内よ
それでは改めて始めましょうか『ライディングバトル』を…!
鏡面に写した敵の偽物を召喚して下半身の戦車の上に乗りライディングバトルを行い、
【デスファイア・スピードラン】で切り込み魔力を溜めた魔剣で敵を乱れ撃ち追撃する
凄まじい音を立てて横転した火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の下半身の戦車をひしゃげた腕と共に起き上がらせ、怒号が響き渡る。
「よくも、よくもやってくれたな猟兵! このオレの戦車だけでなく、オレの腕までも! 許せねぇ! 許せねぇよ! だから、てめえらは皆殺しだ――!!!!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
みなぎる力は、下半身の戦車に注がれ、これまで以上の速度で持ってロッキー山脈の戦場を走り抜ける。
その姿は地上を疾走る砲弾そのものであった。
触れるだけであらゆるものを吹き飛ばし、破壊していく蹂躙戦車と化した『デスファイア・ヴォーテックス』の前に一人の少女が立ちふさがる。
「……生憎だけど、私はお前や他の者達みたいな機械じかけの馬や巨人を操る技能はないの」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、彼女自身の言葉通り乗騎を保たぬ単身生身の猟兵である。
手段を保たぬし、それを用意する暇もなかったのだろう。
魔術的な騎馬であるのならば、それは可能であっただろうし、己の趣味に合うものであったはずだ。
けれど、彼女は太陽光を遮る影精霊装の闇に紛れるオーラでもって防ぎながら空を舞う。
見下ろす先にあったのは、『デスファイア・ヴォーテックス』。
彼女の瞳がユーベルコードに輝き、代行憑依・鏡像の魔剣(ポゼッション・プレアグレイス)へと己の大鎌を変貌させる。
それは黒剣が更に変化を齎し、鏡の魔剣へと姿を変えるユーベルコードであった。
魔剣の刃に映った『デスファイア・ヴォーテックス』の偽物が召喚され、その上にリーヴァルディが騎乗する。
「……問おう。お前の父とやらは何者? 可能な限り正確に答えて」
彼女が騎乗した『偽物』の『デスファイア・ヴォーテックス』はたしかに偽物らしい性能であった。
凄まじい速度で疾走る『デスファイア・ヴォーテックス』には似ても似つかぬ。戦力差は圧倒的であったし、『デスファイア・ヴォーテックス』はだからこそ、彼女を侮り、あざ笑った。
「誰が答えるかよ! てめぇで考えな!」
その言葉をしてリーヴァルディの心を傷つけることはできなかった。なぜなら、彼女は笑っていたのだ。
それもまた想定内であると。
「それでは、改めて始めましょうか『ライディングバトル』を……!」
そう、彼女のユーベルコードはここからが真価を発揮するものである。問いかけに対して己が満足する答えを得るまで、魔剣の刃に映った者は、本物と同じ能力を有する。
これまで偽物でしかなかったリーヴァルディが手綱を握る『デスファイア・ヴォーテックス』は、今ここに『本物』と同等のちからを有する乗騎へと変わり果てたのだ。
「んなっ!? なんだと!? オレに追いつく!? このオレ自身が!?」
「ええ、そうよ。それもまた想定内。これが『ライディングバトル』というものでしょう?」
リーヴァルディが駆る『デスファイア・ヴォーテックス』の偽物が彼女の手綱によってたぐられ、本物さえも翻弄してみせるのだ。
切り込む魔剣の一撃が、『デスファイア・ヴォーテックス』の上半身を切り刻む。
それは速度の乗った防御の出来ぬ斬撃と成って、その身体を鮮血に染める。
「こんな、こんなことが! オレ自身に負ける!? 最強無敵のオレが、最強無敵のオレに!?」
言葉の意味を理解しているのか、していないのか。リーヴァルディにとって、それはもはやどうでもいいことであった。
これまで彼が為してきた悪行、それらの全てを血でもって贖わせるように、リーヴァルディは目の求まらぬ最高速度の斬撃で持って、切り捨てるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
マリー・シュバルツ
ライディングバトルねぇ…
つまり、オレのレスキューダイバーの出番ってわけだな?
オレは医者だ
患者がいるところになら、どこでも最速で駆けつける
そのためのダイバーだ
速さも強さも誰にも負けねぇ
試してみるか、汚物野郎?
ダイバーの救急車モードで高速走行
周りの配下のバイクは轢き飛ばしてガンガンぶっちぎるぜ
ヤツの火炎放射も、華麗なドライビングテクで右に左に避け続け、先行する
ダイバーのテールランプしか見せてやらねぇよ
スピードでぶっちぎった後は、ダイバーを砲戦モードに
俺に追いつけず後方を走るヤツ目掛けて
【全武装展開広域殺菌殲滅砲撃】で、汚物は殺菌!消毒!
展開した全火器、機関銃も大砲もランチャーも、全弾くれてやらぁ
「『ライディングバトル』ねぇ……つまり、オレのレスキューダイバーの出番ってわけだな?」
それはアポカリプスヘルのロッキー山脈に似合わぬ存在であった。
白と赤。
その車体にペイントされているであろう蛇と杖。
それこそが『レスキューダイバー』であり、救急車。しかし、その実態は多数の砲塔を持ち、戦車にも二足歩行形態にも変形する自立AI車両である。
マリー・シュバルツ(死神をチェーンソーでバラバラにする女・f24670)は『レスキューダイバー』を救急車モードで山岳地を走り抜ける。
どれだけ火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の配下が精鋭であったのだとしても、マリーには関係のないことであった。
「オレは医者だ。患者が居るところになら、どこでも最速で駆けつける。そのためのダイバーだ。速さも強さも誰にも負けねぇ」
彼女のドライビングテクニックは凄まじいものであった。
如何に『デスファイア・ヴォーテックス』の配下たちが優れた存在であったとしても、山岳地をでたらめな速度で持って迫る救急車に対応する術などなかったのだ。
当たり前のように轢き飛ばし、彼女は病の巣、その根源たる『デスファイア・ヴォーテックス』へと迫るのだ。
「てめぇ、オレの前で強さも速さも負けねぇと吹きやがったな!」
目の前にいる『デスファイア・ヴォーテックス』は確かに強靭なオブリビオンであったことだろう。
だが、マリーにとっては関係ない。
あれは世界にはびこる病そのものだ。取り除かなければならない。そうしなければならないという思いが彼女を突き動かす。それこそが魂の衝動とも呼ぶべきものであり、デッドマンである彼女の証明でもあったのだ。
「試してみるか、汚物野郎?」
マリーの言葉に噴出するは炎。
下半身の戦車が凄まじい轟音を立てて、加速する。
それを嘲笑うかのように『レスキューダイバー』が山岳地を走り抜けていく。揺れるテールランプまでもが、追いすがる『デスファイア・ヴォーテックス』を笑うようでもあった。
けれど、それはこれまで蓄積してきた猟兵達の攻撃があってこそだろう。
終ぞ、『デスファイア・ヴォーテックス』はマリーを捉えることはできなかったし、『レスキューダイバー』の救急車としての本来の顔を見ることはなかった。
「遅いんだよ! ダイバー、砲戦モード! まとめて消毒してやりな!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
『レスキューダイバー』がドリフトの如く車輪を滑らせながら、その車体を砲撃モードへと変形する。
砲塔が伸び、その砲口が『デスファイア・ヴォーテックス』を捉える。
「全武装展開広域殺菌殲滅砲撃(デストロイ・ヘビーアームズ)――汚物は殺菌! 消毒!」
展開された武装は、広域に渡る殺菌、もとい殲滅を可能とするには十分すぎる量であった。
もしかするとやりすぎであるとさえ言えるものであったことだろう。
けれど、マリーはためらわない。躊躇という言葉が紡がれるよりも早く、処置を素早く済ませることこそを優先するのだ。
「全弾くれてやらぁ」
機関銃も大砲もランチャーも。
あらゆる火器が火を噴き、『デスファイア・ヴォーテックス』へと迫る。驚愕に見開かれた『デスファイア・ヴォーテックス』の顔をマリーは見なかった。
興味など何もなかったし、殺菌する存在をいちいち覚えてなどいられない。
汚物よりも今を生きる者達の健康が大事なのだ。
だからこそ、彼女は振り返らない。
凄まじい爆炎上がる中で、きっと汚物は消毒されているはず。彼女は未だ世界を蝕む病を取り除けていない。
「人も世界も全て癒すのがオレの存在意義……まだまだ道のりは遠いが」
それでも征くと決めたのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
え、戦車に乗っているのではなく、下半身を改造していたんです……?
……不便そうですね。
まぁ、ともかく。
「氷晶ゴーレム」を鳥の形に作成、それに跨り空中へと飛び立ちます。
シンプルにいきましょうか。
先に当てた方の勝ちです。
地上の敵から放たれる戦車の砲弾や火炎放射器の炎を『見切り』回避し、「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸の『属性攻撃』で敵を狙いつつ地面を凍らせていきます。
凍り付いた地面、あるいは氷が炎で解けてぬかるみになったところに敵が嵌り、隙が出来たところで急降下。
地面スレスレを飛ぶ低空飛行で敵の攻撃を避けながら高速飛行で接近、すれちがいざまに「銃剣アルマス」による刺突で『串刺し』にします。
ミサイルやグレネードの爆炎が上がる中からゆらりと巨体を顕したのは火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』であった。
その姿は満身創痍。
されど、未だ彼の瞳に在るのは己を最強無敵と信じて疑わぬ狂気であった。
「オレのビッグでスペシャルな戦車をここまで痛めつけるとはな! だが、以前オレは生きている! つまり、オレが最強にして無敵であることには変わりないってことだ!『ライディングバトル』はこれからだぜ!!!!」
意気揚々と、それこそ底抜けのポジティヴさは、『ヴォーテックス一族』の特性なのだろうか。
その身に刻まれた猟兵達の攻撃は確かに『デスファイア・ヴォーテックス』を追い詰めるに値するものであったはずだ。
けれど未だ彼は倒れていない。
「え、戦車に乗っているのではなく、下半身を改造していたんです……?」
倒れる事を知らぬ戦車ボトムを持つ『デスファイア・ヴォーテックス』の姿に意外な声を挙げたのはセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)であった。
彼女は『氷晶ゴーレム』を鳥の形へと生成し、それにまたがって空を飛ぶ。
シンプルであるが、それこそが彼女の猟兵としての特性を最も活かす形である。
「そうだ! イカすだろう! オレの下半身は! だが、おめえらはオレのスペシャルな下半身を傷つけた! これは許せねぇ! だからぶん殴って、ひき肉にしてやるって決めたんだよ!」
『デスファイア・ヴォーテックス』は確かに男気のある者であったのだろう。
けれど、彼の振るう暴力は無法に基づくもであり、その底なしの欲望こそが原動力であったに違いない。
凄まじい速度で戦場と成ったロッキー山脈を駆け抜ける姿は、セルマをしてげんなりなせるものであった。
その物言いも呆れ果てるものである。
いつだって特権を有する者は、そういう物言いをする。
自分の保つ力が特別であると錯覚し、己以外の者に己の考えを強要する。どの世界でもその繰り返しだ。
「……不便そうですね」
セルマは思わず呟いていた。
下半身が戦車。日常生活に支障をきたすことなど当然ありえる話だ。セルマはどれだけ強くなるとも、そういう姿になろうとは思わなかったことだろう。
「何ぃー!? この素晴らしさがわからねーとは! くたばれ!」
放たれる火炎放射器が空を飛ぶ『氷晶ゴーレム』を叩き落さん大気を揺らめかせるほどの熱量で持って迫る。
それを華麗に飛び、セルマはマスケット銃『フィンブルヴェト』から放つ氷の弾丸でもって『デスファイア・ヴォーテックス』の足元を氷漬けにしていく。
しかし、凍りついた大地など下半身を戦車に改造した『デスファイア・ヴォーテックス』にとっては些細なことである。
踏み抜き、踏破する。それこそがキャタピラの真髄である。
「この程度で足止めのつもりか猟兵! この程度の氷なんぞなぁ! オレの炎で――!?」
瞬間、『デスファイア・ヴォーテックス』の身体が傾く。
それはセルマが氷漬けにした大地と『デスファイア・ヴォーテックス』が放つ火炎放射器の炎とによってぬかるんだ地面にキャタピラが取られた瞬間だった。
しかし、キャタピラはぬかるみであっても力を発揮するだろう。ほんの一瞬でしかない。
けれど、セルマにとってはそれで十分なのだ。
氷晶ゴーレムがイッkに急降下し、凄まじい速度でもって『デスファイア・ヴォーテックス』に迫る。
地面スレスレを飛ぶ氷晶ゴーレムが翼を羽撃かせた瞬間、セルマの瞳がユーベルコードに輝く。
彼女はこれを狙っていたのだ。
「零距離、もらいます」
放たれるはバヨネット・チャージ。銃剣『アルマス』がすれ違いざまに『デスファイア・ヴォーテックス』の眼窩へと突き立てられる。
その一撃は致命的な一撃になったことだろう。
どれだけ『デスファイア・ヴォーテックス』が戦車を借り、己の身を守るのだとしても、セルマの一撃はあらゆる防護を貫通するユーベルコードの一撃である。
絶叫が迸り、喪われた片目を抑え苦痛に呻く『デスファイア・ヴォーテックス』を尻目にセルマは言うのだ。
「私の勝ちです――」
大成功
🔵🔵🔵
ジェイミィ・ブラッディバック
乗り物ですか。
ふむ、では陸上行動も可能なこのヘルメス級強襲揚陸空母で……レギュレーション違反ですか?
しょうがない、ではORCAで我慢しますよ。
問題ないですよね。
さて、それでは勝負と行きましょうか。
先行させた後AEGIRを撃ち込んで追従します。
私に向けて突っ込んでくると、まぁAEGIRがくっついてますから、慣性の法則に従って私とORCAは空中で弧を描いてデスファイアの背後に行きますね。
当然、突進は当たりません。
AEGIRのワイヤーをぐるぐる巻きにして動きを封じたところで、指定UC。
まず突進で轢いた後、急制動した後もう一度突進して轢きます。
その際にAEGIRを撃ち込んでエンジンをいただきます。
火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の絶叫が戦場と成ったロッキー山脈に木霊する。
片腕はひしゃげ、片目は銃剣の一撃に寄って穿たれた。
下半身を改造した戦車はあちこちの装甲が穿たれひしゃげている。けれど、未だその劇場を示すように至るところから炎が噴出し、疾走することはやめない。
なぜなら、『ライディングバトル』とは、相手が死ぬまで殴る闘技である。相手が生きている以上続行されるのだ。
「痛ぇ! 痛ぇよ! ちくしょう! よくも、よくもオレを此処まで追い込んだな! ゆるさねぇ! てめえら赦してはおけねぇ! オレの炎で、オレの戦車で! 全員、一族郎党まとめてすりつぶしてやる!」
怨嗟の咆哮を上げれど、『デスファイア・ヴォーテックス』が後退することはない。
走り続けることこそが『ライディングバトル』の醍醐味にして本懐であるのならば、彼はその男気でもって猟兵を打倒しようとするだろう。
「その意気や良し、とでもいいましょうか」
しかし、『デスファイア・ヴォーテックス』は唖然として見上げた。
ロッキー山脈に浮かぶのはジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)の駆るヘルメス級強襲揚陸航空母艦一番艦『ヘルメス』であった。
15機ものキャバリアを搭載可能なる巨大な母艦は、確かに乗り物というカテゴライズになるのだろうが、いくらなんでもサイズ差が酷い。
「……レギュレーション違反ですか? しょうがないですね」
流石に圧倒的なサイズ差では『ライディングバトル』は行われないとジェイミィは理解したのだろう。
特殊力場で機体を支えるサーフボード兼シールドを手にとって飛び出す。
「これで問題ないですよね。それでは勝負といきましょうか」
手にしたハープーンガンを『デスファイア・ヴォーテックス』に撃ち放ち、カレに追従する形でジェイミィはまるでウェイクボードよろしく引いてもらう。
それは此処が海であったのならば、一つのレジャーの光景のようにも映ったことだろう。
だが、それは正しくない。
どれだけ『デスファイア・ヴォーテックス』が旋回し、ジェイミィに火炎放射器の炎を浴びせようとしても、慣性の法則で弧を描くようにしてジェイミィの姿は必ず後方へと姿を消す。
当然そうなれば突進することもできず、ただただ徒に時間が過ぎていくだけである。
「正々堂々こっちにこんかい! オレの炎で焼き殺してやるからよ!」
ほえる『デスファイア・ヴォーテックス』を前にジェイミィはサーフボードと化したシールドに乗り、放たれたワイヤーでもって『デスファイア・ヴォーテックス』を簀巻きにするのだ。
「あれー!?」
『デスファイア・ヴォーテックス』は気が付かぬ内に己の身体ががんじがらめになっていることに気がつく。
躍起になりすぎたとも言える。
ぐるぐる簀巻きにした状態でジェイミィの瞳がユーベルコードに輝く。
「Neuclear Fusion Extra Booster start up.」
身動きの取れぬ『デスファイア・ヴォーテックス』をサーフボードで周回しながら放たれる己に搭載された全ての火器を解き放つ。
それはいわば火力の一点集中。
放たれる火器の全てが余さず『デスファイア・ヴォーテックス』に直撃し、その身を爆炎の中に沈ませる。
「う、おおおお――!!!?」
「さらに、エンジンをいただきます」
さらに急制動を掛けたシールドと共に突進し、爆炎にむせる『デスファイア・ヴォーテックス』の頭部を強かに打ち据え、下半身の戦車部分にハープーンガンの一撃を見舞い、ジェイミィは己の勝利を確信するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
【心境】
「つまり燃えたらもうなにも残んねーんだろ。ガソリンなだけに。」
【行動】
乗り物ねぇ…いや、寧々。オレはお前の乗り物じゃないぞ(頭の上に乗った寧々にあきれつつ。)
しゃーない。
戦うぞ。シロー(いつの間にか現れたジャイアントキャバリアのシローに『人化』した寧々が乗り込み『操縦』し名捨は肩に『騎乗』する。)
オレは…メカ音痴なんだよ(orz)
シローの徒手空拳の『グラップル』でぶん殴って攻撃だな
しかし、ニトロの爆発で飛翔って…いや、あれタダのコントじゃね?
あ、シローの『限界突破』した『レーザー射撃』終炎開始。
爆発が好きなんだろ。そのまま死ぬまでレーザーに焼かれテロや。
しかし、『功夫』が足りねーな。
「オレの下半身が! オレの戦車が燃える! おお! なんてこった! オレのスペシャルな戦車が!!!」
猟兵達の攻撃を受けて爆炎に包まれる火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の咆哮がロッキー山脈に響き渡る。
されど、爆炎の中にありながら、『デスファイア・ヴォーテックス』は何処か誇らしげであった。
なぜかと問われれば、炎こそが己の存在意義。
世界を炎に巻き込み、あらゆるものを燃やす。それこそが己の欲望の根源。ガソリンそのものであったのだ。
「だが、オレはまだ倒れちゃいねぇぞ、猟兵! オレのニトロが! 爆発するぅ!!!!」
あまりにも荒唐無稽なるテンション。
正直に言って引く。ここまでぷっつんしていると、正直何を言ってもツッコミにもならぬことを黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は理解していたが、敢えて言うまでもない。というか。
「つまり燃えたらもうなにも残んねーんだろ。ガソリンなだけに」
「そのとおりだぜ! 燃え尽きて何にもなくなるのがいいんだ! 綺麗サッパリににな! だから燃やそうぜ! 文明も世界も何もかもよぉ!」
ニトロの爆発でもって凄まじい速度と共に『デスファイア・ヴォーテックス』が砲弾のように戦場を縦断する。
それを名捨は見やるが、ひょいと持ち上げられる。
「……ん、おい? なにしてる?」
名捨を持ち上げたのはジャイアントキャバリア『シロー』であった。
今まで己を乗り物のように頭の上に乗っていた喋る蛙『寧々』。彼女がいつの間にか人に化け、ジャイアントキャバリア『シロー』のコクピットに収まっていたのだ。
確かに乗っている。
いや、名捨も肩の乗っているから、まあ、確かに乗り物に乗っていると言ってもいいのだろう。
けれど、ここって普通ヒロイン的なポジションの人が乗る場所じゃないかなと名捨は思った。
けれど、あまりにもノリノリな『寧々』を前に彼はしゃーないと肩を落とすしかなかったのだ。
「戦うぞ、シロー」
なにせ彼はメカ音痴である。上手に『シロー』を操縦できる気がしなかった。
ジャイアントキャバリア『シロー』は拳を構え、『寧々』の操縦によって弾丸のように迫る『デスファイア・ヴォーテックス』を打ち据える。
拳と『デスファイア・ヴォーテックス』が激突し、火花をちらし、炎が周囲に渦巻く。
「しかし、ニトロの爆発で飛翔って……いや、あれタダのコントじゃね?」
名捨は戦いの行方を肩に乗りながら眺める。
今回自分やること少ないなって思いつつ、『デスファイア・ヴォーテックス』と『シロー』の激突を見やるのだ。
「まあ、いちいちコントに付き合ってやるのもこれが最期だ……爆発が好きなんだろ。そのまま死ぬまでレーザーに焼かれてろや」
輝くユーベルコードは名捨の終炎(シュウエン)。
『シロー』の全身からプロトンビームが解き放たれ、どれだけ『デスファイア・ヴォーテックス』が凄まじい速度で飛翔していたとしても、ビームの一撃から逃れることはできない。
「オオオオッ!! オレが燃やすのが好きなんだよ! オレが燃やされるのは好きじゃねぇ――!!!!」
その雄叫びと共に穿たれたビームと共に『デスファイア・ヴォーテックス』が大地に沈み、爆煙を上げる。
「旦那様、息子の大活躍じゃ。褒めてやれ旦那様」
「いや、シローは息子じゃ……」
そんな爆煙を背に名捨と『寧々』のコント的なあれが始まる。お約束というやつである。
しかしまあ、あれである。
この程度でやられるのならば、『ヴォーテックス一族』と言えど『功夫』がたりねーな、と名捨は思い、『シロー』の肩で『寧々』の小言を右から左に流すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
うわぁ
何この絵に描いたような世紀末感
いやぁ、アポカリプスヘルだねぇ
と、感慨にふけってても仕方ないので戦いを挑もうか
鉑帝竜に乗って戦うよ
一応キャバリアのようなものだから
乗り物って事で大丈夫だよね
まかせるのですよー
レールガンで射撃しつつ接近
爪や尻尾で攻撃しよう
弾丸や炎は神気と装甲で耐えようか
飛行できるから悪路は問題にならないし
着地しても戦えるよ
とはいえ結構な速度で走り続けるね
鉑帝竜の口内に取り付けた電撃索を発射し
動きを制限しようか
簡単に引き摺れるような重量じゃないよ
絡めとって電撃で麻痺させたら引き寄せよう
そのまま足で掴んで上空に舞い上がり
ワイヤーを切って落下させるよ
紐なしバンジーを存分に楽しんでね
「うわぁ、何この絵に描いたような世紀末感。いやぁ、アポカリプスヘルだねぇ……」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の姿に感嘆とも驚嘆ともとれぬ言葉を発していた。
アポカリプスヘルらしさとは一体何か。
いわば荒廃した世界らしさとでも言えばいいだろうか。
端的に言えば、モヒカンとトゲトゲ。あと鋲。そんでもって火炎放射器。
雑であるが、そういうものである。
火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』はその全てを網羅したアポカリプスヘルを煮詰めた存在であったことだろう。
とは言え、晶も猟兵である。
感慨にふけっている暇はない。『ライディングバトル』が乗り物を必要とするのならば、キャバリアでも良いだろうというざっくりとしたルールを拡大解釈して晶は試製竜騎「鉑帝竜」と共に戦場に降り立つ。
「乗り物ってことだし、大丈夫だよね。むしろ、男気ある『デスファイア・ヴォーテックス』とも在ろうものが、この程度のルールの拡大を認めないわけないよね?」
「車輪がついてれば大体乗り物よ! あと、それは怪獣っぽくねーかな!? だが、乗り物だって言い張るんなら、それもまた乗り物だろうよ! てなわけで死ねぇ!」
『デスファイア・ヴォーテックス』はあまりにも雑であった。
これまで猟兵たちに与えられた攻撃の数々ですでに満身創痍。
片腕をひしゃげさせられ、片目を失い、下半身の戦車の車体すらも今やボロボロである。
爆煙を挙げながら、凄まじい速度で走り続けている様は確かに『ヴォーテックス一族』であるということを感じさせるだろう。
「ならよーし。行くよ!」
「任せるのですよー」
鉑帝竜が戦場を闊歩し、レールガンの砲撃で持って『デスファイア・ヴォーテックス』に打ち込む。
しかし、『デスファイア・ヴォーテックス』もまた己を癒やす炎でもって回復に努めながら、迫る鉑帝竜の爪や尻尾を躱すのだ。
存外、突撃馬鹿かと思えば、クレバーな立ち回りもできるのだなと晶は相手を見くびること無く、鉑帝竜を空へと飛び立たせる。
炎や銃弾は神気でもって受け止められるが、突進はこちらの防護を突き抜けてくるだろう。ならば、距離をとって動きを封じるのが最上であった。
「頑丈な上に、結構な速度で走り回るね。なら!」
鉑帝竜の口腔より放たれるのは、試製電撃索発射銃(エレクトリック・パラライザー)の電磁索であった。
投網のように放たれる電磁索が『デスファイア・ヴォーテックス』に降りかかり、その動きを止める。
「うぉ! なんだこりゃ! 体にからま、あああああ――!?
瞬時に流れる電撃が『デスファイア・ヴォーテックス』の全身を感電させる。さらに鉑帝竜が電磁索ごと『デスファイア・ヴォーテックス』を持ち上げ、空へと羽ばたく。
一瞬で空へ飛び上がった鉑帝竜が電磁索のワイヤーを切る。
となれば、どうなるかなど言うまでもない。
「紐なしバンジーを存分に楽しんでね」
にこりと笑う晶は、さぞや『デスファイア・ヴォーテックス』から見れば悪魔のごとき微笑みに見えたことだろう。
これが人間のやることかよと叫ぶ『デスファイア・ヴォーテックス』の声を晶は聞こえないふりをして、落下していく彼を見送る。
やってることは芸人枠だよなぁと、なんとなく思いつつ絶叫響くロッキー山脈にまた一つ落下の轟音が響き渡るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
ひゃっほぉーっ!レースの始まりだーっ!!
―――自称『世界(ブルーアルカディア)で一番速い船』[ミレニアムドラゴン号]と!
いやエンパイアファルコン号だっけ?
まあいいや!
『あのねえお坊ちゃん?ちょっと世界観が違いすぎやしませんかねえ?』
え~?
『俺は優雅な…優雅な飛空艇だぞ!こんな血と炎と錆と油の匂いしかしねえ世界に連れてきやがってこのガキィ!!』
あっはっはっ!だって乗り物が必要だっていうから~
●UC『神知』使用
【船上戦、飛空艇操作、操縦、体勢を崩す】辺りを強化!
攻撃を【第六感】で避けてレースゲーのトラップみたいにクソデカ[球体]くんをごろごろっと転がして…ドーーンッ!!
凄まじい轟音がロッキー山脈に響き渡る。
それは火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』の身体が紐なしバンジーによって大地に叩き落された音であった。
普通の人間であれば、ひしゃげて潰れるところであるが、『デスファイア・ヴォーテックス』は並の人間ではない。
間一髪ユーベルコードによって激突する地面からのダメージを相殺し、絡まる電磁索を振りほどきながら、大地を疾走するのだ。
「マジでクレイジーだぜ! このオレが敵にクレイジーさを感じるなんて、恥だぜまったくよ! だが、これで厄介なヤローは振り切った――」
だが、そう簡単に話が終わらぬのが猟兵との戦いである。
「ひゃっほぉーっ! レースの始まりだーっ!!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はおかしなテンションでは敗けてはいないとばかりに叫び、自称『世界で一番速い船』こと『ミレニアムドラゴン号』と……あれ、エンパイアファrじゃなかったっけと思いながらも、まあいいや! といつものテンションで飛空艇の船首に立っていた。
『あのねえ坊っちゃん? ちょっと世界観が違いすぎやしませんかね?』
『ミレニアムドラゴン号』は飛空艇である。
別の世界からこの、硝煙遊ぶ荒廃した世界に連れて来られたのだ。戸惑うのも無理なからぬことであった。
ついでに言うと、あまりにも強引すぎるし、空飛び飛空艇は地を征く戦車と同格に並べられてもちょっと……と渋いおじさんの声で『ミレニアムドラゴン号』がロニをたしなめる。
「え~?」
『俺は優雅な……優雅な飛空艇だぞ! こんな血と炎と錆と油の臭いしかしねえ世界に連れて着やがってこのガキィ!!』
いや、もう最初からブチ切れている。
これはロニの態度が悪い。悪すぎる。でも気にしないのがロニである。
「あっはっはっ! だって乗り物が必要だっていうから~」
だから、いいのだというように、神知(ゴッドノウズ)によって放たれる火炎放射器の炎を飛空艇の操船でもって躱す。
あちちと飛空艇が叫ぶが効かぬふりをする。
「ちょこまかとデカイ図体しやがって! 少しもトゲトゲしてねぇじゃねぇか! 男ならもっと鋲とかシルバーとか棘をつけやがれってんだ! 近づく者全てを傷つける尖ったのが男ってモンだろうが!!!」
『デスファイア・ヴォーテックス』の主張も、それはそれでなんとなく受け入れがたいものがある。
ミレニアム・ドラゴン号』はどっちもどっちだなと思いながらも言葉にしない。
ロニも『デスファイア・ヴォーテックス』もきっと聞き届けないだろうし、きっと自分の言葉が最上のものであろう。
故に己ができることは一つ。
そう、なるだけ被害を抑えるということ。
己の優美なる船体が煤で汚れようものなら、たまったものではないからだ。炎を躱し、ロニは相変わらず笑い声をこだまさせている。
「レースゲーにはクソデカトラップが必須だよね。なら、ほら、ごろごろっと転がして……」
ロニは『ライディングバトル』を楽しみながら『デスファイア・ヴォーテックス』を引き離し、どこぞのレースゲームよろしく亀の甲羅ならぬ球体を投げ放ち後続の『デスファイア・ヴォーテックス』への妨害とするのだ。
「はい、ド――ンッ!!」
ロニは背後で巨大な球体と『デスファイア・ヴォーテックス』が激突する音を聞きながら、軽快にアポカリプスヘルの空を堪能する。
空気は不味いし、臭いも酷い。
何処までも広がる大自然とか、そんなのまやかしだと思うほどに酷い光景であったが、それでもロニは楽しげにレースゲームを楽しむようなきやすさでもって、この戦いを制するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
己が唯一絶対の強者と傲慢に謳うその意気やよし
騎士として、其方の流儀でお相手いたしましょう
ロシナンテⅡに●騎乗し疾走
マルチセンサーでの●情報収集で山岳地帯の地形を把握しつつ横並びに
重火器を大盾で防ぎつつ騎馬の馬力と自身の●怪力活かし互いに並行してのぶつけ合いで競り合い
開けた地形に出れば散開
このように対峙した状態での騎馬を用いた騎士の決闘…これをジョストと呼びます
これまでの非道の清算として骸の海に還るまでの僅かの間、覚えて頂ければ
いざ、参ります!
電脳空間より出したUCで迎撃
正面火力をバリアで防ぎ、●瞬間思考力で限界突破した推力移動方向を制御
激突の刹那、すれ違う様に軌道変更
胸を刺し貫き駆け抜け
すでに火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』は満身創痍であった。
その体は、腕はひしゃげ、片目は喪われていた。
下半身の戦車はあらゆる場所に損害を受け、それでもなおニトロを爆発させて飛翔する砲弾めいた突撃を繰り返す姿は異様とも取れるものであった。
「オレが無敵にして最強! これは揺るがねぇ現実! 猟兵が何だって言うんだ! オレはまだ生きてるぞ! 倒しきれてねぇ! オレが倒れぬ限り、オレに敗北なぞありゃしねぇんだよ!!!!」
その怒号の如き咆哮は『ライディングバトル』という闘技に入れ込む一人の男としてのプライドがあればこそであろう。
すでに少数精鋭であった配下たちは喪われている。
残るは火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』だけなのだ。
「己が唯一絶対の強者と傲慢に謳うその意気やよし。騎士として、其方の流儀でお相手しましょう」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は機械白馬『ロシナンテⅡ』と共にロッキー山脈たる戦場を疾走する。
すでにマルチセンサーで周囲の山岳地帯の地形データは網羅されている。
砲弾のように飛翔する『デスファイア・ヴォーテックス』と並走し、そのアイセンサーの煌めきで持って、己もまた『ライディングバトル』の闘技者であると知らしめるのだ。
「ブリキ野郎が! このオレに並走するなんてなぁ! 百万年速ぇんだよ!!」
放たれる銃火器をトリテレイアは大盾で防ぎ、火炎放射の炎を受け止めながら、互いの膂力を競うように激突する。
弾かれてはまた激突することを繰り返す二人は、凄まじいデッドヒートを繰り返す好敵手のようにも思えたことだろう。
だが、互いにより良い地形を利用しようとすれば、そのまま開けた地形へと二人は飛び出す。
互いに距離を取る。
二人の視線がにらみ合いに発展した瞬間、トリテレイアは口を開く。
「このように対峙した状態での騎馬を用いた騎士の決闘……これをジョストと呼びます。これまでの非道の精算として、骸の海に還るまでの僅かの間、覚えていただければ」
「覚える必要ないね! オレが負ける要素など! 何一つねぇんだよ!!!」
互いの意地が激突する。
トリテレイアは猛烈なる突進力を見せる『デスファイア・ヴォーテックス』を前に剣も盾も投げ捨てた。
何をと、勝負を投げたのかと思われたことだろう。
だが、トリテレイアの瞳にあるのはあくまで騎士道精神である。
これをジョストと呼んだ彼が電脳空間より呼び出したのは、艦船強襲用超大型突撃機械槍(ロケットブースターランス・ウォーマシンカスタム)であった。
彼我の距離を一瞬で詰める巨大な機械槍。
それは凄まじい突進力で持って溢れる炎を穂先から展開される傘状のバリアでもって防ぎ、『ロシナンテⅡ』の突進力を重ねて、あらゆるものを貫く一つの槍と己を為すユーベルコード。
其の輝きを『デスファイア・ヴォーテックス』は見ただろう。
激突する戦車とバリアが火花をちらす。刹那の瞬間、すれ違うように機動を修正したトリテレイアの穂先のバリアが消えていく。されど、その機械槍の穂先が『デスファイア・ヴォーテックス』の胸を刺し貫き、えぐるようにして駆け抜ける。
「オオオオッ――!?」
これは確かに『ライディングバトル』であったのかもしれない。
けれど、トリテレイアにとってはジョストである。騎士道の発露とも言える戦いにおいて、彼が負けることはない。
貫かれた一撃は、これまでの非道の報いではない。
この一撃で『デスファイア・ヴォーテックス』が為してきた悪逆の限りを精算できるわけではない。
戻ることのない生命を思ってトリテレイアは、己の騎士道をこの一撃に籠めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ラブリー・ラビットクロー
オマエ達はまだ気づいてないんだ
じわじわ広がるヒトの反逆の光を
朝日はすぐそこまで昇ってるぞ
【自動操縦を開始します】
後悔したってもー遅いからな!
【目的地をモレーン湖に設定しました】
運転は任せたぞマザー
らぶは爆弾をバットにくっ付けて準備
マザーに頼ってばっかじゃダメ
ギリギリまで引き付けて
星の彼方までぶっ飛ばしてやる
【敵機上空より来ます】
飛ぶなんてズルい!
【回避間に合いません。すぐに退避を】
負けるもんか
その戦車受け止めてやる!
【退避を!】
翼を生やして瞬時に怪力で敵を受け止めるなん
体が壊れたって知らない!
そんなので諦めたら皆に笑われちゃうから
だから
【モレーン湖に出ます】
今だ
バットで戦車ごとぶっ飛ばすのん!
ぶらりとぶら下がるようにしてひしゃげた腕が繋がっている。
火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』は穿たれた胸から溢れる血潮を省みること無く咆哮する。
これこそが戦いである。
血と油と硝煙。
そして、破壊と無法。暴力だけがあらゆる欲望を叶えるための装置でしかないと高らかに笑うのだ。
「いいね、いいね! これがオレの求めた闘争ってやつだ! 気に入らねぇやつはぶっ飛ばす! ただそれだけでいいんだよ! 弱い奴は強い奴に従う! それができねーってんなら死ね!!!!」
明日を望むアポカリプスヘルの人々の希望すらも嘲る『デスファイア・ヴォーテックス』の下半身の戦車からニトロの爆発が引き起こされ、飛翔する。
それは暴力としての彼の力の現れであったことだろう。
そんな『デスファイア・ヴォーテックス』を前にラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)は小型戦車『ラビットギア』と共に立ちふさがる。
「オマエ達はまだ気づいていないんだ。じわじわ広がるヒトの反逆の光を。朝日はすぐそこまで昇ってるぞ」
彼女の言葉はニトロの爆風で聞こえなかったことだろう。
けれど、関係など無い。
【自動操縦を開始します】
オフライン非通信端末【ビッグマザー】が彼女の乗る『ラビットギア』の操縦を受け持つ。
それは【ビッグマザー】のバッテリー残量を代償にした、サポートアプリ【ふぁんとみぃ】(ファントムステップ)の機動を意味する。
「後悔したってもー遅いからな!」
「後悔!? オレがそんなもんするわきゃねーだろうが!!!!」
溢れるニトロの爆発とともに『デスファイア・ヴォーテックス』が砲弾のように飛ぶ。
その凄まじい勢いを前にラブリーはラビットギアの上に立つ。
手には爆弾くっついたバット。
あの日のことを思い出す。
それは、白球を仲間と追った日々。
あの眩しい日々を思い出す。今や彼女は猟兵である。ならば、ボール以外も打てるはずだ。
明日を望む人々のためには、宿る力だってあることを彼女は証明したいのだ。
【目的地をモレーン湖に設定しました】
【マザー】の声が響き渡る。
ラビットギアの操縦を【マザー】に任せっきりにはしていられない。頼ってばかりではいられない。
誰かのために何かをするってことは、誰かに頼りっきりじゃないってことだ。ヒトとヒトの手を結ぶためには、間に立つものがいる。
そんなヒトが誰かを頼ってどうする。ラブリーの瞳に輝くのはユーベルコード。
彼女はもうひとりで立っている。ギリギリまで『デスファイア・ヴォーテックス』の突進を引きつける。
目指すは場外ホームラン。星の彼方までぶっ飛ばしてやるという気概が彼女には在った。
飛ぶなんてズルイとも思ったけれど、【マザー】の言葉にハッとする。
【回避間に合いません。すぐに退避を】
今自分が護るものは二つある。
アポカリプスヘルに生きる人々の生活。
そして、もう一つは【マザー】だ。もう守られてばかりじゃいられない。自分が護るのだ。回避が間に合わないのならば、迎撃するのみ。
「負けるもんか!」
叫ぶ声が握りしめるバットをきしませる。思い出せ、思い出せ。あの日のことを。手に伝わる感触を。
【退避を!】
【マザー】の言葉に逆らい彼女はフルスイングする。
腰の入った良いスイングだった。メジャーリーガーも目じゃない。激突するバットと『デスファイア・ヴォーテックス』が爆弾の爆風で持ってひしゃげる。
自分の腕が自分のものではないような感触がする。
もう彼女の背後は『モレーン湖』だ。
あれが炎を手繰る存在ならば、水こそ天敵。
必ず打ち込んでやるという意志がラブリーの力を増大させる。ここで諦めたら皆に笑われてしまう。
そんなのは嫌だ。笑顔は好きだけれど、それでも、駄目だったね、なんて言われたくない。
だから、振り切るのだ。
バットが轟音を立て、『デスファイア・ヴォーテックス』の身体を吹き飛ばす。戦車ごとぶっ飛ばす一撃は、彼の身体を壮麗なる『モレーン湖』に叩き込む。
絶景の中に爆風が吹き荒れる。
けれど、ラブリーの頬を伝う汗と共に見た。
己が一人で為したことを。己が守ったものを。
「やったよ、【マザー】――」
大成功
🔵🔵🔵
柊・はとり
そうか
あんたが世界を荒廃させたのか
よく自白してくれた
法が、正義が、理性が
世界から失われたというのはこの俺を
世界最後の探偵を殺してから言ってみろ
偽神兵器にバラックスクラップを装着
氷属性攻撃で通路を凍らせながら
AI制御で自動走行するスケボーに改造
デスファイアと配下のスリップを誘い
自在な走行を妨害
奴の加速力が仇となるよう仕向ける
UC【零の殺人】
デスファイア・ヴォーテックス
あんたを世界荒廃の真犯人に指名する
あんたに男としてのプライドがあるなら
俺には探偵としてのプライドがある
弱者を護り
己を律し
欲望を退け
必ずこの世界を復興させる
その為にもあんたは退場させる
己の身を告発の弾丸とし
デスファイアに激突
お前も凍れ
「クソッタレがよぉ……! このオレを! よくも! ここまで!」
満身創痍たる火炎大王『デスファイア・ヴォーテックス』が撃ち込まれた湖から這い上がる。
爆煙を上げる下半身の戦車はもはやボロボロである。自走すら不可能ではないかという有様であるが、未だ霧散し消えゆかぬということは、『デスファイア・ヴォーテックス』が健在であるがゆえ。
そして、その瞳にあるのは己を絶対無敵と信じる根拠のない自信。
彼は言った。
無法が、悪徳が、暴力が、獣性が、それらこそが世界を回す燃料になるのだと。人の営みとは元来そのようなものであると。
ガソリンのように燃え盛る炎でなければ、人の世界は回って行かぬのだと。
だからこそ、アポカリプスヘルは最高にイカした世界であると彼は笑ったのだ。
その嘲笑の裏に数多の人々の嘆きが、悲劇があったことを決して覚えては居ないだろう。
だからこそ、此処に最後の探偵が立つ。
「そうか、あんたが世界を荒廃させたのか。よく自白してくれた」
柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)の瞳は不機嫌そのものであった。
謎を紐解くまでもなく犯人が自白したのだ。
探偵の役目なんて最早何処にもない。
犯人に悔恨を促す? 自省でもって世界を元通りにさせるとでも言うのか。答えは否である。断じて、そうではない。
「法が、正義が、理性が、世界から喪われたというのは」
其の瞳がユーベルコードに輝く。
大言壮語も甚だしい。
世界一つが『デスファイア・ヴォーテックス』一人によって荒廃するわけがない。
手にした偽神兵器がスケードボードに改造される。
その瞳にあるのは真犯人を追い求める探偵としての瞳。AI制御によって自動走行するスケードボードを駆り、はとりは『モーレン湖』に叩き落され這い上がろうとする『デスファイア・ヴォーテックス』へと疾走る。
それは『デスファイア・ヴォーテックス』が湖より這い上がるより速い。
「この俺を、世界最後の探偵を殺してから言ってみろ」
「探偵がなんだってんだよォ――!!!! 鬱陶しいぜ、猟兵!!!!」
下半身の戦車でニトロが爆発する。
それは『デスファイア・ヴォーテックス』に凄まじい加速を齎し、彼を砲弾のようにせしめるユーベルコードであった。
その瞳には未だ何の自覚もない。
己が齎した荒廃に対する罪の意識もなにもあったものではない。
ならば、はとりは告げるのだ。
「『デスファイア・ヴォーテックス』、あんたを世界荒廃の真犯人に指名する」
指差す。
ああ、と吐息が漏れるように溢れ出すのは、己の記憶。
零の殺人『探偵コロシアム』(ホワイダニット)たる事件。思い出せ。思い出せ。
すでに己は死を超えた。
ならばこそ、此処に犯人足り得るものは何一つ無く。
そして、己が告げた真犯人を追い詰める物証は世界そのものである。
告げる。探偵は告げる。追い詰めるのではなく、告げ、詳らかにするのだ。
「あんたに男としてのプライドがあるなら俺には探偵としてのプライドがある」
「そのとおりだぜ! オレは最強にして無敵! 大方の悪いことは全部オレのせいだろうよ! だからなんだってんだよ! 弱者は死んで当然だろうが、オレの思うがままに振る舞うことが許されるのはオレが最強で無敵だからだ! 欲望のままに振る舞うことこそが、この世界の理だろうがよ! そのためには世界が荒廃しようが、燃えようが!」
関係など在るものかと『デスファイア・ヴォーテックス』が咆哮する。
これもまたオブリビオン。
忘れ去られし者であるがゆえに歪む存在。
嘗ての在り方などに興味など無い。
「弱者を護り、己を律し、欲望を退け。必ずこの世界を復興させる。その為にもあんたは退場させる」
スケートボードと化した氷の大剣が、告発の弾丸そのものとなって『デスファイア・ヴォーテックス』へと放たれる。
湖上で激突するはとりと『デスファイア・ヴォーテックス』
勝敗を決するのがなんであったのかは言うまでもない。
探偵が詳らかにしたのだ。
真犯人を。ならば、後に残るはエンディングのみ。どんでん返しなど、この戦いには必要ない。
激突の衝撃で空を舞うはとりが大地に降り立ち、その手に風切り音を立てて『コキュートス』が収まる。
その背後には墓標の如き、氷漬けに成った『デスファイア・ヴォーテックス』の姿がった。
湖全てを凍結せしめたユーベルコードの輝きが消え失せ、はとりの背後で氷漬けになった『デスファイア・ヴォーテックス』が砕け霧散していく。
破片が太陽光を受けて反射して、はとりに降り注ぐ。
未だ文明荒廃の夜明けはない。
されど、日は昇る。
人々が求めた朝日。もはや破壊の篝火など不要であるというように、探偵は明日を指差すのであった――。
大成功
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