アポカリプス・ランページ⑤〜放置必須の無敵移動要塞!
●無敵要塞
希望になるはずだった。
無敵であれと、オブリビオン・ストームに耐えうる頑強な要塞であれと、人類を守る存在であれと願われたはずだった。
その希望は破壊された。
破壊された希望は、新たな絶望となって再誕した。
無敵要塞・ベルグリシ。
鋼鉄の巨獣は今、世界の滅亡をこいねがうオブリビオンとしてソルトレークシティを闊歩する。
●三十六計逃げるに如かず
「真っ向勝負はあきらめてほしい」
開口一番、大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)は身も蓋もないことを告げた。
「普通に戦っても絶対に勝てない……とは言わないけど、多分無理だ。つか、予測される消耗からして、効率があまりにも悪すぎる」
ではどうするか。
逃げ回り、防ぎ切る。この手に限る、という。
「問題のボスオブリビオンには、『デミウルゴス式偽神細胞』っつー特異なモンがインプラントされてる。最強のストームブレイドを生み出そうっていう計画に基づいて培養されてた代物らしいが、こいつは凄まじい拒絶反応を伴うらしくてな。やっこさんが攻撃的行動を取る都度、その体を内部からブチ壊しちまうんだ」
つまり、猟兵が囮となってオブリビオンにユーベルコードを使わせていれば、わざわざ攻撃を仕掛けなくとも勝手に自滅してくれるというわけである。
ただし、大きな問題がある――というのは、偽神細胞によって超大幅に強化されたオブリビオン、そのユーベルコードによる攻撃は、並大抵ではないということである。
ベルグリシの攻撃手段は、その巨体にハリネズミよろしく搭載された砲台による砲撃である。強化以前にもまあまあ厄介だったそれは、一発一発が数トン爆弾級の破壊力を持つに至っている。そんなものが無遠慮にボカスカ撃ち込まれるというのだから、回避するにせよ防御するにせよ簡単なことではない。
「防御力に関しては、元々『無敵要塞』を名乗るに相応しい堅牢ぶりだったところにさらに強化が入ってるから……正直、どんな攻撃をどうぶつけようが無駄だと思う。つか少なくとも、アホみたいな猛攻の隙間を突いてまで攻撃をするメリットはないわけだからな」
朱毘は肩をすくめた。いずれ敵が自滅するのがわかっているのだから、わざわざ危険を冒して見返りの望めない攻勢行動を取る意味はなかろう。
「死ななきゃ勝てる。難度は高いがやることは単純だ。よろしく頼む」
大神登良
オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良(おおかみとら)です。
これは「アポカリプス・ランページ」の戦況に影響を与える戦争シナリオで、1章で完結する特殊な形式になります。
また、このシナリオは支援「⑪デミウルゴス」の効果があります(詳細はアポカリプス・ランページの説明ページで確認してください)
戦場は廃墟化した都市の一角です。何がどれだけ破壊されようと人的被害の出ない区画ですので、存分に逃げ回ってください。
このシナリオには下記の特別な「プレイングボーナス」があります。
『プレイングボーナス……超強力な攻撃を耐え凌ぎ、敵の自壊を誘う』
オブリビオンは猟兵を敵視していますので、気付かれさえすれば特別な行動を取らなくても攻撃はしてくれます。オープニングにある通り通常のオブリビオンとは別格の攻撃力を持っていますので、防御、回避、回復など、工夫をこらして凌いでください。
それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第1章 ボス戦
『無敵要塞・ベルグリシ』
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POW : 砲煙弾雨のウォーキングフォート
自身の【装甲材と砲台が、内部に搭載された動力コア】が輝く間、【あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になり、砲台】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD : マジノウォー
全身を【囲む、砲台で攻撃しつつ、身体を防御モード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ : ジークフリートモード
【あらゆる攻撃に対しほぼ無敵の、殲滅モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
イラスト:100
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
泉・火華流
ホント…おっきいわね…
相手の攻撃範囲外から無敵要塞を見て…
…でも…まぁ、基本的に逃げてれば勝手に自滅してくれるんだしね…
言って無敵要塞へと向かう
行動
武装はミニガンとエアシューズとFBCのみ
相手は自身のUCの効果でその場からは動けないので、周囲の建築物などを利用して相手の射線を切りつつ、基本的に足は止めず【野生の勘・第六感・見切り】で回避重視の行動
ミニガンとFBCは相手の攻撃の迎撃…もしくは気を引くために使用
【ダッシュ・軽業・ジャンプ・逃げ足・地形の利用】
指定UCでShark様(武装は機銃のみ)…こちらも空を飛びつつ建築物などを利用できれば利用…機銃も基本的に気を引くか相手の迎撃のみに使用
マオ・ブロークン
……遠くから、でも、ひと目で、わかる。
凄まじい、大きさ、と。無数、の、砲塔の、質量……
あれを。どうにか、耐えて、凌がなきゃ、いけない。のね。
……きっと、大丈夫。死なない、ことは、得意、なの。
一番、敵の、消耗を、誘う……いちばん、危険な、方法。
とにかく、砲撃を、撃たせる、こと。
身一つ、前に、出ていけば、集中砲火が、くる。
廃都市。瓦礫を、意志の、力で、持ち上げて。
飛んでくる、砲弾の、雨と……出来る限り、ぶつけ合う。
相殺、できれば、いいけど。ギリギリ、逸らせれば、御の字。
遮蔽物が、壊れたら、それを、次の、弾にして。
被弾しても……身体の破片を、念動力で、動かして。こらえる。
ここで、倒れるものか。
トリテレイア・ゼロナイン
耐え凌ぐ忍耐が必要となる戦いは騎士として望む所
種族としても適任でしょう
(疲れ知らずの●継戦能力)
脚部スラスターの●推力移動で大地を滑走
時折、ワイヤーアンカーを建物に射出しての●ロープワークで三次元的な移動を挟む事で狙いを絞らせず砲撃地点を散らし(地形の利用)マルチセンサーでの●情報収集と●瞬間思考力でこちらを狙う砲台とその射線を把握
逃げ場を無くす弾と直撃狙いの弾…その際を●見切りUCの電脳魔法陣を表面に展開した剣と盾で武器受け盾受けし無効化
そのまま攻撃を反射し狙うは無敵要塞ではなく四脚踏みしめる大地
●地形破壊で砲撃時の安定性奪い命中率を更に奪い
さあ、日が暮れてもお付き合いいたしましょう
●山崩し
元はコンビニか何かだったと思われる建物の屋上に、二人の猟兵の姿があった。その四つの眼の先では、小山のごとき大きさの鋼鉄が、どこへ向かうともなくゆるゆると歩んでいる。
「……遠くから、でも、ひと目で、わかる」
「ホント、おっきいわね……」
マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)と泉・火華流(人間のガジェッティア・f11305)は、それぞれ吐息をもらした。
ベルグリシが世に生まれた経緯からすれば、むべなることではある。ストーム・ランページに耐久し得る装甲を施そうと思えば、それが分厚く巨大な物になるのは避けようがない。そして、そんな大きさも重さもとんでもない構造物を動かそうと思えば、動力を司る構造物もまた巨大化するのも当たり前である。
付け加えるなら、巨躯の元となっているのは装甲ばかりではない。一本一本が巨大な砲塔が剣山めいて林立する様もまた、ベルグリシの威容をより大きなものにしている。
「あれを……耐えて、凌がなきゃ、いけない……のね」
マオは奥歯をかみしめた。あの砲塔の林による砲撃がどれほど凄まじいものかなど、容易に想像ができる――ともいえるし、想像もつかないともいえる。
「厳しい戦いになるのは、間違いない……でも、逃げてれば、自滅してくれるなら……」
エアシューズに手を添えつつ、火華流は言った。
「……そう、ね。うん……死なないことは、得意」
激戦が確定しているとはいえ、対策も勝ち筋もはっきりしている。猟兵有利には違いない。
ごご、ぅん――と、砲塔の口が二人の方へ向くのが見える。どうやら、捕捉されたらしい。
マオと火華流は互いにうなずき合い、一跳して元コンビニから降りる。さらに危なげのない着地から、ビルの陰へと駆ける。
かつて大陸屈指の経済都市であった名残で、背が高く幅の広いビルの類はいくらでもある。ゆえに、いくら砲塔に狙われたとて射線を遮るものには困らない。
――しかし、ボッ、と発射音が聞こえたその瞬間、二人ともの頭が何かを理解するより先に直感が働いた。そこに留まっていては危険だと。
駆けていた足を一層鋭く蹴り出し、速度を倍加させて身を翻らせる。刹那、音とも認識できないほどの爆音に後押しされたビルが瓦礫の怒濤と化して殺到する。
その怒濤の範囲たるや、猟兵を俊足をもってしても逃れることができないほどの広さがあった。
「っ……壊れ、ろ!」
瓦礫に潰される寸前、一際大きな一つをマオの念力がつかみ取った。そのまま【ポルターガイストの敵意】によって振り回された巨塊は、周囲にある他の瓦礫を巻き込み、破砕し、薙ぎ払う。
そうして瓦礫による圧殺は免れたものの、爆風圧までは殺せない。マオと火華流はつんんのめるようにして倒れ――足の止まったところに、ベルグリシの砲塔が向けられた。
ウォーマシンゆえに人よりずっと大きな体を持つトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)とはいえ、流石に眼前の巨大要塞と比較すれば豆粒に等しい。ユーベルコードユーザーの場合、必ずしも戦闘力と体の大きさとは比例しないものではあるものの、砲弾の一発でもまともに喰らえば己といえど無事では済まないだろうことは、トリテレイアにも容易に予測できていた。
――ただ。
スラスター全開による高速移動で砲撃をやり過ごしつつ、ベルグリシを観察する。いかにもその場にあったありったけの物をつなぎ合わせてこしらえました、といった風情の巨大要塞は、お世辞にも整頓された設計をしていない。林立する砲塔の口径や長さ、威力、性能の癖などもまちまちだった。トリテレイアのざっくりとした感覚でいえば、大口径の砲弾はかすっただけでも瀕死は免れず、中口径は直撃すれば危険、小口径なら一、二発は耐えられるだろう。
「忍耐が必要となる戦いは、種族としても適任、騎士としても本望――日が暮れようがどうなどうが、お付き合いいたしますとも」
中。中。大。
直撃を避けてなお、爆風の圧だけで体がひしゃげそうになる。それを盾で防いで凌ぎつつ、トリテレイアは体勢を保持する。挙動が少しでも停滞すれば的になってしまうのは明らかである。
(――小!)
待っていたものの到来に、トリテレイアは足を止める。【銀河帝国未配備A式反射防衛機構(アレクシアディフェンスシステム・リフレクション)】の電脳魔法陣が盾上に輝きを放ち、凶悪な威力を誇る砲弾――それでも、ベルグリシが放つ物の中にあって防衛機構の閾値を超えないもの――を、真正面から受け止める。
大気を焦がしてトリテレイアの眼前に迫っていた砲弾を電脳魔術が絡め取り、呑み込む。
「そっくりそのまま……!」
凶猛なエネルギーが魔法陣を通じて循環し、爆発的な推進力として顕現する。凝縮された噴炎は目に痛いほどの輝きを放ち、彗星のごとき弾頭と化したトリテレイアはベルグリシが次の砲撃を行うより早く目標であるベルグリシの胴体――ではなく、それが依って立つ大地へと炸裂した。
刹那に解放された膨大な熱量は巨爆を生み、地面には巨大なクレーターが穿たれる。クレーターに足を取られたベルグリシは体勢を大きく崩した。
マオらに巨砲の口を向けていたベルグリシが、不意に前のめりに転倒する。直後の砲撃は二人に向かうことなく、むしろベルグリシ真下の地面に炸裂してベルグリシ自身を炙るような大爆発を起こした。
が、それでもベルグリシは明確にダメージを負ったような様子はなく、一回り小さな砲塔を旋回させて再び二人に狙いを定めてきたのが見えた。
「スクランブル!」
火華流が叫ぶや、闇色にねじ曲がった空間から鮫のペイントが施された戦闘機型ガジェットが飛び出した。特攻めいた直線軌道の飛行を行いつつ機銃を連射する――が、砲塔もまた分厚い装甲に守られており、有効打は与えられない。それでもわずらわしいと思ったのか、狙いの先は二人からガジェットへと移ろった。
次の瞬間。
ぼがん! と間の抜けた不協和音めいた音が響き、砲塔がベルグリシ内部からの爆発に吹き飛ばされる。
マオと火華流は一瞬唖然としたが、すぐに何が起きたのかを悟った。
「砲撃を、撃たせる、ことは……本当に、有効、だった」
「……みたい、ね」
キッ、と決意に満ちた眼差しになったマオは、遮蔽物を考慮せず駆け出した。
撃つなら撃て。いくらでも撃て。その分、お前の寿命が縮むのだから。
そう、雄弁に語る行為であった。
「――!」
無茶な、とは、火華流は言わない。先のことを思えば、ビルや何かに隠れたところで、思ったほどの効果は望めそうになかったからだ。代わりに、援護とばかりに浮遊型ビームキャノンをマオに随伴させた。
(ここで倒れは、しない……死なないのは、得意、だから)
胸中でつぶやきつつ、マオは駆ける。
命を削り合う戦いは、まだまだ続きそうだった。
大成功
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御園・桜花
「元は人を守るための兵器だった。そして…本来なら無敵の兵器として名を馳せ、人々の希望の星となる筈だった。…お可哀想に」
UC「精霊覚醒・風」使用
回避率上げ物陰があれば積極的に遮蔽として利用しつつ敵の周囲を緩急つけて飛行
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
高速・多重詠唱で銃弾に電撃や氷結の属性攻撃乗せて制圧射撃し敵の自壊までの時間を稼ぐ
「世界が変わってしまっても、貴方が変わってしまっても。何かの役に立ちたいと。守るために無敵でありたいと。そう願い続けるのなら。骸の海に還っても、願いを忘れず戻っていらっしゃい。何時か、貴方の願いが満たされて、人と共存できる道もあると思いますから…お休みなさい」
鎮魂歌で送る
ラブリー・ラビットクロー
これがヒトの希望だった?
どーしてこんな事になっちゃったんだ
なんでヒトを守る機械がこんな事になっちゃうんだ
ねえマザー
マザーはアイツみたいにならないよね?
【ずっと一緒ですよ】
うん
ずっと一緒だぞ…
こっちに向いてくるぞマザー!
【地上は危険です。『天使の六翼』を起動。空中戦を推奨します】
戦うんだ?アイツと!?
【いいえ逃げましょう。全力で】
砲台が唸り声をあげて凄く怖い
【9時方向より砲撃。回避して下さい】
でもまるで苦しんでるみたいだ
ううん
きっと苦しい
守るべきヒト達を見失って苦しいんだ
【対象に接近し過ぎています】
こんなの放っておけない!
危険でも
アイツは苦しんでるんだぞ!
砲門めがけて爆弾を
少しでも
早く休める様に
ルドラ・ヴォルテクス
●アドリブ連携OKです
『巨大要塞型オブリビオン確認、砲撃に警戒を』
了解した、敵のデータも回してくれ。
【メーガナーダ】
リミッター解除、限界突破、メーガナーダ発動!
高速移動で、奴の砲撃を回避する、後は動けないのであれば、回り込んで狙いを定めさせない。
アレは、だれかのユメだったのかもしれない。
それを踏み躙ったのだ、今ならわかる。仲間の憤りを、怒りを。
電磁パルスで妨害と回避を続け、自壊を開始したら反撃する。
メーガナーダの雷撃と爆雷で砲身は全て破壊する。
謝罪はしない。
ただ……おまえのユメが歪ませられることはもう二度とない。
これで終わりだ。
●かつて『希望』だったもの
アポカリプスヘルという世界において人間にとっての一番の脅威が何かといって、まず真っ先に挙がるのはオブリビオンストームだろう。かつて文明を破壊し、今なお再興の萌芽を摘み続けている、絶望の象徴と呼んで差し支えない存在である。
ベルグリシは、それに耐え得る要塞として設計、建造された。いや、形状を鑑みれば、実態としては『設計』といえるほど綿密な何かがあったわけではなく、素材になりそうな鋼鉄の諸々を集められるだけ集めて盛りつけたといった方が正しいのかもしれない。
単なる戦車の類ではなくわざわざ要塞としての体裁を持っているのは、恐らくだが、その内部により多くの人々を収容するためだろう。場合によっては、それ自体一個の都市として機能させ、人々が安定した営みを育めるよう期待もされていたのではなかろうか。
だが、結果としてベルグリシはオブリビオンストームに敗北した。
そして、人を守るべく生み出されたはずのそれは、人を滅ぼすべくオブリビオンとして甦ってきた。
「元は、人々の希望の星だったのでしょうに……」
変わり果てたベルグリシ――『生前』の姿を知らないので、外見的な意味でどの程度変わったのかは知れないのだが――を眺めやりつつ、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は沈痛げな面持ちになった。
「ヒトの希望だったものが、どーしてこうなっちゃったんだ?」
顔の半分がガスマスクで覆われ、表情がややわかりにくいラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)だが、その声色と目元を見れば、彼女がどれほど深く悲しんでいるのか容易に察することができる。
その問いに答えがあるとすれば、『それがオブリビオンというものだから』だろう。
基本的にオブリビオンはその世界を滅ぼすために存在するものであり、骸の海から復活した時点でそれ相応の性質を獲得する。消費された過去を元にしていながら、過去の再現そのものでは決してなく、歪に、邪悪に、その様は変容しているのが常なのだ。
だから、割り切らなければならない。
だからといって、割り切れない。
どちらも正しいだろう。
「捕捉されたぞ」
叱咤するような口調で、ルドラ・ヴォルテクス(終末を破壊する剣“嵐闘雷武“・f25181)が言う。
それと前後して、針山さながらにベルグリシの体から伸びたいくつもの砲の口が、猟兵たちに照準を合わせたのが見える。
【『天使の六翼』を起動します】
ラブリーの手にした端末から電子音の声がするや、ラブリーの背中から彼女を包み守るような六枚の翼が広がる。さらに。
「我は桜花精。力よ、呼び覚まされよ」
桜花の周囲に香り高き旋風が吹き、無数の桜の花弁が渦巻く。
そして半拍。
ラブリーの翼がはためき、桜花が己の起こした風にさらわれるかのように空へと浮く――のと同時、ベルグリシの巨砲の群れが一斉に火を噴いた。
砲撃の第一波は三者があったあたりを万雷のごとき轟音と衝撃とで叩き尽くし、炸裂した狂熱は巨大な炎球となって地面と空気とを焦熱地獄へと変えた。
三方バラバラに散った猟兵たちは、しかし、その地獄の外に脱することができている。
それぞれを追うべく、ベルグリシの砲台が旋回する。不規則にデタラメに取り付けられたそれらがいっぺんに動く様は、不格好であり、非効率的であり、ゆえにまあ『すっとろい』ものだった。
「リミッター解除、限界突破、メーガナーダ発動!」
その隙を縫うようにして、ルドラは【咆哮する雷雲(メーガナーダ)】の咆吼を放つ。青白く目映く輝くスパークが幾重にも重なり、空間を斬り刻みながら突き進み、ベルグリシの脚部へと伸びて轟爆を生み出した。
鋼鉄の巨塊であろうと一瞬にして砂利屑に変えてしまうに足りる、抜群の破壊力を有した轟雷……だったが、しかし、ベルグリシの脚にはかすり傷さえない。
「まあ、そうだろうと思った」
「守るために無敵でありたいと、そう願っていたのでしょうか」
桜花がつぶやく。
なるほどベルグリシの無敵ぶりは、かくあれかしと願われた姿により近付いているといえよう。今の彼ならば、人々に願いの通り、オブリビオンストームのど真ん中だろうが悠然と闊歩することができるに違いない。だがしかし、夢のないことをいえば、それは単にオブリビオン化による超常存在化、強化の結果に過ぎない。
皮肉なものではある。命あるうちに願われていながら手に入らなかった超絶の盾を、敗死して役割をねじ曲げられた後になって初めて手に入れたというのは。
ベルグリシから悲鳴にも似た甲高い唸り声が上がり、再び放たれた砲火が八方へと散りばめられる。
「苦しんでる」
ラブリーがつぶやく。
【接近しすぎています】
端末の【マザー】が警告を発する。その通りで、回避重視の飛行機動を取っていたはずの彼女は、いつしか凶猛な砲撃の隙をくぐり抜けるようにベルグリシへと近付いていた。
「放っておけないなん!」
ラブリーは叫んだ。
同時に、一際大きな砲が彼女に向けられる――が、その直後に内側から亀裂を刻み、爆炎を上げて自壊した。
いつの間にか、ベルグリシには限界が近付いていた。
「今だ! 終わらせる……お前のユメがこれ以上歪む前に!」
ルドラが叫び、再び轟雷を放つ。精密に巨砲に刻まれた亀裂をなぞるように叩き込まれたそれは、無敵であったはずのベルグリシの装甲をかわしてその内部へと至り、確実な手応えとともに内への爆発を生み出した。
それでもなお動くのをやめないベルグリシは、自身に接近するラブリーへと砲口を向ける。すでにラブリーは目鼻の先、それでは己の体をも削るであろうという角度になっているが、それでも構わないといった風情。
それらの砲塔目がけ、桜花の放った氷の魔弾の弾幕が殺到した。さしたダメージこそなくとも、氷結によって動きの鈍った砲らはラブリーを捕捉することかなわない。
「早く……休んで!」
スプレー缶のような爆弾がありったけ、広がりきった亀裂へと投げ込まれた。
刹那、幾重もの爆音が、幾発もの爆発が、ベルグリシの胴の中を駆け巡り、蹂躙し、破壊し尽くした。
それが、希望を歪められた無敵要塞の最期の咆吼となった。
大成功
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