アポカリプス・ランページ⑩〜狂気を祓うお菓子たち
●戦いの合間にちょっと一息
「皆さん、お菓子作りです!」
ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)の宣言はやけに力が入っていた。
「皆さんの頑張りのお陰で、また新たな道が拓けました。場所はヒューストン宇宙センター跡となります。そこは現在、フィールド・オブ・ナインにも数えられる邪神『ポーシュボス』の支配下にあり、オブリビオンを変異強化させるための施設となってしまっているようです」
変異強化には「超宇宙の恐怖」なるものが必要のようで、宇宙センターは研究施設には打ってつけ。今もまさに奴隷研究員達が邪悪な研究を行っている。
「これ以上研究を進めさせるわけにはいきません。というわけで皆さんには研究施設へ向かってもらって、研究員さん達を止めて頂きたいんです。ただ、研究員さん達は精神支配を受けており、不眠不休で研究に没頭するという狂気に囚われてしまっています。その狂気を何らかの方法で取り除かなければいけませんので――冒頭の話に戻るわけですね。つまり、私は研究員さん達の狂気を取り除く方法として、お菓子作りを提案します!」
気は早いが、戦争に疲れた猟兵達に日常の一コマを。ロザリアはそんな意味も少しだけ込めた。
「気持ちを込めたお菓子を作って研究員さん達に食べさせれば、きっと正気に戻ってくれるはずです! 何と言っても不眠不休ですから、体はエネルギーを欲しているはず……そんな時は甘い物が一番ですよね! 別に甘くなくても、ちょっとビターな大人の味とかでもいいかもしれません! とにかく作ってみましょう! 大切なのは研究員さん達を救いたいという気持ちです! ここは皆さんの頑張りに期待したいと思いますので、よろしくお願いします!」
沙雪海都
沙雪海都(さゆきかいと)です。
こういう食べ物系は夜に書いちゃいかんのですよ……お腹空いてきました。
●フラグメント詳細
第1章:日常『楽しいお菓子つくり』
元は宇宙センターなんだから食堂とかなんやかんやあってそこでお菓子の一つや二つ作れるでしょ……みたいなノリです。
一から作らなくてもよいです。例えばスポンジを用意してデコレーションするとかでも。
完成したら研究員達に食べさせて狂気を取り除きましょう。
第1章 日常
『楽しいお菓子つくり』
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POW : 生地をこねたり伸ばしたり、オーブンの火加減を調節するなど下拵えや準備を担当する
SPD : 正確に材料を計ったり、綺麗に角がたつくらいにホイップするなど、技術面で活躍する
WIZ : 可愛い飾りつけや、トッピングで、お菓子を美味しそうにデコレーションする
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
七那原・望
お菓子、良いですね。甘い物を食べると幸せな気持ちになりますもんね。
というわけでわたしの好きなエクレアとアップルパイを作るのです。
もちろんどちらも一から作りましょう。といってもどちらもオーソドックスなものなのですけど、シンプルでもいいのです。気持ちが籠もっていれば!その分一つ一つの工程は丁寧に。手間を掛けて作りましょう。
りんごの方は望み集いし花園で収穫したもぎたての物を使いましょう。
召し上がれなのです。エクレアはクリームもチョコも甘めにしたのですよ。
ちょっと甘ったるくなってきたなって人にはアップルパイをどうぞ。りんごの酸味でスッキリなのですよ。
無糖の紅茶も用意したので、一緒にどうぞなのですー。
●幸せを願うからこそ
「ふ、ふひひ……こ、この、超宇宙の恐怖……実現すれば、きっとポーシュボス様、に……ふひひ……」
壁一面に奇怪な数式や文字列を並べ、狂気の研究者達は宇宙に存在する恐怖の解を導き出そうとしている。そこにはもう、人間らしい理性は残されていない――。
研究者達が研究室に籠りきりのため、研究所の施設は使い放題。グリモア猟兵に送り出された七那原・望(封印されし果実・f04836)はちょっと広めの休憩室のような場所にやってきていた。
宇宙センターは随分と優遇されていたようで、そこにはシンクやIHクッキングヒーター、電子レンジにオーブンなど、お菓子作りにも活用できそうな設備が一通り揃えられている。
お菓子作りはまず清浄な環境から――少し埃をかぶっていたそれらを磨き上げて、
「それでは、エクレアとアップルパイ作りを始めるのですー」
望は一声気合を入れて、早速作業に取り掛かった。
ふんふふ~ん、なんて鼻歌交じりに。エクレアとアップルパイはどちらも望の好きなお菓子だ。好きなお菓子を作るのだから、楽しいに決まっている。
「お菓子はいいものです……甘い物を食べると幸せな気持ちになりますもんね」
ブレンドした小麦粉にバターを加えてへらでさくさくかき混ぜながら、望はいつぞやのティータイムを思い出す。心が満たされた瞬間と言えば三本の指くらいには入りそうな至福の時間。それを是非、この研究施設で死ぬほど働かされている研究員達にも感じてほしい、と願いを籠めて、さくさくさくさく、パイ生地の元を練っている。
パイ作りには市販のパイシートから作るという方法もあったが、望はシンプルながらも一からの手作りにこだわった。丁寧に丹精込めて。手間のかかる作業だが、労を惜しまず望は生地に気持ちを詰め込んだ。
パイ生地を寝かせる間に望は「望み集いし花園(ガーデン・オブ・カルポス)」に入り、りんごの収穫作業を進めた。生地が手作りならりんごはもぎたて。最も瑞々しく甘い状態にこだわる姿勢も、想う気持ちがあってこそだ。
りんごは半月の中央をくり抜いた風に薄く切り出し、砂糖で煮立てて艶を出す。それが終わる頃にはパイ生地が目覚め、次に待つのは力仕事。のばして畳んでのばして畳んで――パイ特有のサクサク感を出すための大事な作業。望は途中から一言も言葉を発さず作業に没頭していた。
パイ生地を再度寝かせて、続けて望はエクレア作りに取り掛かる。こちらはスピードが命。牛乳、バター、その他諸々を鍋に入れ、沸騰したら小麦粉を投入。そこから混ぜこね繰り返して、オーブンに入るまで一直線だ。
細長の生地はきつね色に焼き上がっていくが、望は眺める暇もなく円形に整えたパイ生地にりんごを並べていた。かと思えばエクレア用のクリームやチョコも準備しなければならない。やるべきことは山ほどあって、それらと向き合っているうちに気が付けばあれやこれやの全てが終わってしまっていた。
「――できましたー! 早速研究員さんのところへ持っていきましょー」
どんよりとした空気の中をアップルパイの爽やかな香りが抜けていく。がりがりと音が鳴るほどに机上でペンを走らせていた研究員達の手が、まるでゼンマイが切れたようにぴたりと止まる。
「ぅおおお……なんだ、これは……!」
研究員達は頭を抱えると、見えない何かと戦い始めた。ペンを持つ手がぷるぷると震え、やがてころんと落下する。望は研究員達の様子に少し手応えを感じながら銀のカートをころころと押して作ったお菓子を運んでいった。
「エクレアとアップルパイのご用意ができたのですよー。エクレアはクリームもチョコも甘めにしたのです。甘いのがお好きな人はこちらからどうぞー。ちょっぴり苦手という人や、お口の中が甘ったるくなってきたなって人にはアップルパイをどうぞ。りんごの酸味でスッキリなのですよ。無糖の紅茶も用意したので、一緒にどうぞなのですー」
望は給仕もてきぱきこなす。ほわっと包み込まれるような温かい雰囲気に引き寄せられて、研究員達はふらふらとカートの近くに歩いてきた。瞳の焦点はまだぼやけていたが、生きたいという意志が寝ぼけながらも目を覚ましたようで、ゆっくりとエクレア、そしてアップルパイに手を付けていく。
噛めばサクッと音がする。舌に走った刺激は一気に脳天まで突き抜けて、雷に打たれたような衝撃に研究員達の瞳はカッと見開いた。
「なんっ……たるっ……!!」
かの偉人が初めて水を認識したような、世界が一瞬にして開けていく感覚に、研究員達の手が、口が止まらない。四方八方から伸びる手は次から次へとお菓子をつまんでいって、口の中で甘味と酸味に舌を躍らせながら胃の中に落とし込んでいく。少し乾いた口は紅茶で潤して、研究員達は食におけるこの上ない調和を味わった。
自分は今、生きている――生への実感が狂気の檻を破り、その身を自由の中へと解き放っていった。
「あぁ……救われた気分だ……。君が、私達を……ありがとう、ありがとう……!」
「いえいえなのですー。お口に合ったようで、わたしも幸せなのですよー」
感極まる研究員達に望はにぱっと、太陽のような微笑みを向けていた。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
僕が得意なお菓子といえば…薔薇のアップルパイだったりするんだけど
この世界にあれもこれも材料は持ち込めないだろうから…
パイシートを使って一口サイズのアップルパイを量産する方向にしようかな
それなら実質薔薇部分の材料だけで済むし
櫛形に薄くスライスしたりんごを砂糖やバターと一緒に温めて
冷ましてる間に持ち込んだパイシートを細長くカット
時間がかかりすぎると申し訳ないから
温めと冷却共に手が空き次第炎魔法、氷魔法を用いて時短します
冷ましたりんごをパイシート上に並べて
端から巻いていけば薔薇型の完成
複数作ってまとめて焼きます
甘めが好みの人向けに
溶かした★飴を艶出しに塗ったものも用意
さ、召し上がれー
感想聞かせてね
●薔薇の花園
アポカリプスヘルとは野蛮に見えて繊細な世界。多量の異世界物資を送り出すとオブリビオン・ストームを呼び寄せてしまい、どうにも手がつけられなくなる。
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は考え抜いて、パイシートを利用しての一口サイズアップルパイを量産する方向に決めた。りんごの皮の赤みを利用して薔薇の花を咲かせるだけなら万が一があっても最小限。一口サイズなら手も伸ばしやすかろう。澪は早速作業に取り掛かる。
肝となるりんごは櫛形に薄くスライスし、砂糖やバターと一緒に熱していく。くつくつ、ことこと、吹き出す泡の中でりんご達は愉快に踊っていた。果実の部分が艶のある黄色に色づけば丁度いい頃合い。火から下げて冷ます間にパイシートを細長くカットしていく。
研究員達は狂気に冒されながらも、助けを求めて闇の淵から手を伸ばしているのかもしれない。そこへ少しでも早く手を伸ばし、引き上げるために――澪は魔法を駆使していった。
パイシートのカットが終わったところで、冷めていく真っ最中のりんご達にそっと氷を添える。少しでも早く――だが焦りは禁物。味を損ねないよう注意しながら熱を取っていく。
すっかり冷めたりんご達はいよいよパイシートの上に並べられていく。今から自分達が薔薇の花びらになるなど夢にも思っていないことだろう。澪の指はまさに魔法の指だ。少しずつ重ねながら並べたりんご達を端からくるくると巻き取っていけば――そこには薔薇の花束が出来上がっていた。
焼きの作業も炎を操ったほうが早い、と澪は作った薔薇を耐熱トレーの上に並べて、炎の魔法による絶妙な炎加減で焼いていく。リアルタイムで昇ってくる香りを楽しめるのは作り手の特権だ。澪は一足お先に仄かなりんごを味わった。
研究者達にも好みの違いはあるはずと思い、澪はカラフルな飴を同時に溶かす。艶出しも兼ねてとろけた飴を花びらにそっと塗れば、甘い匂いが輝いた。
「……これくらいで丁度いいかな?」
薔薇の具合を観察しながら熱する炎をふわっと消して、さぁ、一口サイズのアップルパイの完成だ。澪は大皿の上にアップルパイを盛り付けていくと、足早に部屋を飛び出した。
がらがらがら、と車輪の音が研究室に近づいてくる。不眠不休で研究に打ち込む研究者達も、バンとドアを開け放たれては無視もできなかった。
「んんん~!?」
「はいはーい、僕の特製一口アップルパイの到着だよー。さ、召し上がれー」
快活な声に研究者達は一様に眉を顰めるが――鮮やかな薔薇と甘い香りが研究者達の好奇心をくすぐっていた。
あれは何だ。食べ物らしいが、何がどうしてあの色になる。好奇心に負けて狂気からほんの一瞬視線を逸らした隙に、空腹という生命維持装置が喧しく鳴り響き出した。
それは本能である。対極にある理性は征けと言っていた。ならば征くしかあるまい。研究者達は、ずん、ずんと溜めを作るような歩みで澪の元まで寄ってくると、何も言わずにアップルパイに手を伸ばす。
ほんのりと温かい。それは人の心に触れた時の温かさに似ていた。研究者達は食べるための口を用意すると、その中へ滑り込ませるようにアップルパイを押し入れていった。
舌の熱が飴を溶かして、歯の圧がパイ生地を香ばしく潰す。刹那、しゅわと目が覚めるような酸味の海が流れ込んできて研究者達は思わず身を跳ねていた。
「ふっ……ぉぉおおっ……!?」
目覚めよ、と神が言っている気がした。まさに天啓。背筋が伸びて、研究者達は天井を仰ぐと、そのまま膝をがくりと落とす。
一筋零れた塩気の強い涙が物語るのは、狂気より解放された、人としての在るべき姿。研究者達は澪のアップルパイでかけがえのない命に気付き、生きることを選んだのだ。
「どう? 感想は」
「……楽園は、ここに在ったのだ……! 我々をここに導いてくれた君に、最大限の感謝を……!」
祈りを捧げる彼らには、もう邪悪な意志もきっと及ぶまい。一つの「世界」がアップルパイによって救われた瞬間だった。
大成功
🔵🔵🔵
刑部・理寿乃
ここで行われている研究の影響か自身の技能の所為かユーベルコードの暴走?それとも……
如何なる理由を述べようとも断然たる結果の前には言い訳程度にしかならない
作り直す時間もないし、これを出すしかない
自分はクッキーを作ろうとしただけなのに……何故?
【結局何作ったの?】
狂気には狂気をぶつけんだよ!(今回のテーマ)
ちょっと焦げたクッキー
ただ蠢いたり、足と手が生えたり、隙あらば口に入り込もうとします
機械音声でボソボソとeat meと言っています
【味や効能】
ほろ苦い味が広がると共に今までの人生のほろ苦い経験が蘇り、ノスタルジーな気分になります
一時的に感情が昂りますが体や心に一切の害はありません!
●誕生したモノとは?
ででぇぇぇぇん!!
完成した瞬間を文字で言い表すならこんな感じだ。刑部・理寿乃(暴竜の血脈・f05426)は両手でわきわきと空を握るような仕草を見せながら困惑していた。
もしや、ここで行われている邪悪な研究の影響を半ば電磁波的に浴びてしまっていたのではないか。それとも自分の無意識が良からぬ技能を発動させてしまったのではないか。はたまたユーベルコードの暴走か、それとも――。
仮定とは虚しいものだ。何故なら、それは逆立ちしたって真実には勝てない。あらゆる可能性を排除していけば残ったそれは、どんなに信じ難きことであっても真実と――小耳に挟んだこともあったような気がしたが、そもそも理寿乃の目の前には都合のいい可能性など端から転がっておらず、あるのは愕然と膝をつきたくなる真実のみ。
少しばかり香ばしすぎて、少しばかり炭的なビターを含んだそれは、どうやら世間一般でクッキーと呼ばれる類らしい。類、というのがミソであり、それはクッキーがおよそ含まぬような真実に満たされている。
まず、蠢く。何を言っているんだお前は、と喚く者が居れば、現実を見ろと頬の一つでも引っぱたいてやりたくなる。蠢くのだから仕方がない。理寿乃が「フリーズ!」と叫んでも、クッキー成分を一応は含むそれは蠢いてしまうのだろう。
そして、足と手が生えている。生えているのだから仕方がない。たとえ理寿乃が目を覆って「これは夢よ」と100回唱えても、ベッドの上にテレポーテーションはしないのだ。
足と手が生えて蠢くのだから、当然口にも入ってくる。何故かって? クッキーだからに決まっていた。クッキーとは食べられるためにあるもの――当人も”eat me”と至極平坦に呟いているではないか。
先人の言葉に素晴らしいものがある。毒を以て毒を制す――ならば狂気に満ち溢れた研究者達へ何を齎すべきかは、勘のいい者ならわかるだろう。
端的に言えば、作り直す時間がないので理寿乃は、クッキーであり、クッキーでなし、という大喜利めいた存在を研究室へ持ち込むしかなかった。
研究者とは恐ろしい。どんなに奇怪で奇妙で奇天烈であっても、探求心が自制に勝れば手を伸ばしてしまう。クッキーは念願かなって人の口へとダイブすることになった。
ざりっ、とほろ苦い音がした。それは在りし日の自分を思い起こさせる味だった。往々にして内向的な者達が、ひょんなことから異性に気を向けてみれば、それは最初から一人相撲であったように――。
「おぅぉ……ぉぉおおおああぁっ!!」
切なさが乱れ撃ってきて、研究者達は感情の奔流に呑み込まれていた。のろーっと胃まで落ちていく物体の作用なのか、叫ばずにはいられなかった。
発散行為が吐き出させたのは哀愁のみならず、狂気までもが心太の如くにゅるりと押し出され、後にはずむっと胃に溜まる重さが少しばかり空腹を癒す。
研究者達はしばし窓の外を見つめ、そして窓に映る己を見た。
不細工だな、と――不眠不休を貫いた顔は、言われて口元に笑みを零した。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
助手:陰海月
さてー、料理分野って私になるんですよねー。
アメリカなら、ケーキがよいでしょうか。
せっかくです、ケーキの上にクッキー飾りましょう。
クッキー生地作って、型抜きは陰海月に任せて。
クッキー焼いている間に、ケーキの方へ。すでにスポンジだけありますが。
それを横半分にきって、まずは下にクリーム、次に果物。で、上半分かぶせてクリーム塗って。
上には焼いて冷ましたクッキー置きましょう。
なお、隣にある豆は塩味効いてます。
作りすぎたクッキーは…一部、陰海月のおやつに。
※
陰海月、ぱかぱかとクラゲクッキーくりぬいていく。何故か器用。
●手先を買われて立ち上がる
得手を最大限に生かした人選が出来る――それが馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)という存在の強みだった。
「さてー、料理分野って私になるんですよねー」
そう言う義透こと『疾き者』は手際よく材料と道具を作業台に並べていく。横ではミズクラゲの陰海月が興味津々で眺めており、クッキー用の型を触手に、ゆらゆら動いていた。
「クッキーの型抜きは陰海月に任せますので、生地ができるまで少しだけ待っていてくださいねー。さて……クッキーはケーキの上に飾っておきましょうかー。ここはアメリカですからー」
スケールの大きさに定評のあるアメリカだ。ボリュームを重視し、義透はホールケーキを作ることに決めた。
ケーキのスポンジは準備してある。あとはそこへ塗るクリーム作りやフルーツのカット、そしてクッキーを焼く準備が残っていた。
クッキー作りは思いの外、手間暇のかかる作業。バターと砂糖をごねごね混ぜた後、卵に小麦粉を加えて今度は切るようにさくっと混ぜ合わせる。そうして出来た生地は一度寝かせる作業に入るため、一旦クッキー作りはここでお終い。
クッキー生地を寝かせている間に義透はクリーム作りとフルーツのカットを進めていく。陰海月は型抜きの作業が待ち遠しいのか、クッキー生地を寝かせた冷蔵庫の前でゆらゆらダンスを踊っていた。
「……そろそろでしょうかー。お待ちかねの作業を始めますよー」
粗方作業を終えたところで義透はずっしりとしたクッキー生地を冷蔵庫から取り出すと、麺棒で生地を伸ばしていく。そしてついに陰海月の出番だ。型を端から順番にぽこぽこ押し当て、器用にクラゲ型のクッキーを切り抜いていく。
傍らで義透はケーキのスポンジを真ん中から水平に切って、クリームを土台に塗るとフルーツを並べる。滑らかに塗られたクリームの上に並ぶフルーツは鮮やかだが、それらはケーキという宝石箱の中にそっと収められていった。上半分のスポンジを被せた後は全体的にクリームを塗り、これで準備は完了。
陰海月は型抜き作業が面白くて、生地を端から端まで余すことなく使っていた。残った切れ端をこね合わせてもうひと頑張り。ケーキの上に並べるには少々量が多そうに見えたが、残りは陰海月のおやつにでも、と綺麗なクラゲ型に抜かれた生地を焼いていく。
結構な量の作業をこなした。義透はクッキーを焼く傍らで塩味の利いた豆を一つまみ。疲れた体に塩分が染みた。
陰海月は焼け上がるのを今や遅しと待ちながらゆらゆらダンスを続けていた。それを和やかに見ている義透。時間がゆっくり流れているように見えて、いつの間にかクッキーは焼き上がっていた。
出来立ても美味しそうだが、ケーキに乗せる分は少し早めに冷ましてクリームの上に並べていった。これでようやくホールケーキの完成だ。義透はそれを大皿に乗せると、研究室へと運んでいった。
研究員達は皆、机の上に突っ伏していた。いくら狂気に操られているとは言え、体がダメになってしまってはもう動かしようがない。しかし手だけは走り書きのように紙の上を滑っており、決して抗えない洗脳のようなものを伺わせる。
「ケーキをお持ちしましたよー。おひとついかがでしょうー?」
甘い香りのするエネルギー源。切り分けられていくケーキを見た研究員達は、揃ってゾンビのようにふらふらと近づいてくる。定番の細長い扇型に切り分けられたケーキは小皿に乗っていたが、今の研究員達には小皿は疎か、フォーク一本さえも腕に重くのしかかってくる。
クリームをほんのひと掬い、それが限界だった。手をかたかたと震わせながらも口の中に運んでいく。
「……おぉ」
甘い。当たり前と言えば当たり前なのだが、その当たり前に感動できるほど研究員達の心は荒みきっていた。そこへクリームという命の元が入ってきて、狂気の中に埋もれてしまった生きることへの執着が今、ひょっこり顔を出し始めた。
クリームをもうひと掬い。次はスポンジとフルーツを重ねてぱくり。口へ運ばれるケーキの大きさは徐々に増し、ついには一つを平らげてしまった。
研究員達は満足そうな表情を見せながらパイプ椅子にどかっと座り込む。憑き物の落ちた顔、というのは今の彼らのような表情を指すのだろう。満足感に浸り、余韻に身を任せる彼らの表情からはもう、狂気は欠片もなくなっていた。
大成功
🔵🔵🔵
那雪・光
リサちゃん(f32587)と一緒
※アドリブ歓迎
リサちゃんにお菓子作りをしようと誘われたの!
リサちゃんに作り方を教わって、作ってみるね!
作るお菓子はカップケーキ! 良く友達が作ってきて、食べさせてもらってたから、あたしも作ってみたいと思ってたの!
かわいいエプロンを身に付けて、クッキングするね! リサちゃんの分も用意してみたよ~! お揃いなの、えへへ!
分量もしっかり計ったし、薄力粉と強力粉を間違えもしなかったし、オーブンの時間もばっちり!
はい、あーん! リサちゃん、味見してみて!
リサちゃんのも少し頂戴! おいしいおいしい!
これなら、研究員さんたち、喜んでくれるよね!
早速、食べてもらいにいこ~!
リサ・マーガレット
那雪・光さん(f16157)とペア!アドリブ歓迎!
「カップケーキを一緒に作っちゃいます!」
これを食べさせれば、狂気なんてすっ飛ばせる!ってやつを作って見せる!
まずは、ボウルにバターと砂糖を入れて、混ぜます。
卵も混ぜて!バニラオイル!そして愛!小麦粉にベーキングパウダー!そして明るさを忘れずに!混ぜ混ぜして!型に入れて、オーブンで20分で完成♪
えーっと。光さんの方はできたかな?
まずは、試食から♪
美味しいね♪
できたら、これを、みんなに食べさせるのみ!
明るさと愛満点のカップケーキ召し上がれ!
●愛と明るさで狂気を祓え
「お菓子作りだってさ! 一緒に行ってみようよ!」
グリモアベースを巡っていたリサ・マーガレット(希望を満たし、絶望を与えし夜明け・f32587)はグリモア猟兵の元気な声を聞いた。今は戦争の時――グリモアベースは多くの猟兵でごった返し、戦地へ赴くための準備を整えている。
自分も何かの役に立ちたい、という気持ちもあったのかもしれない。そんな時に、およそ戦争らしからぬワードが飛び出してきたのだが、よくよく聞けばやはり戦争が絡んでいた。
リサは共にその場に居た那雪・光(慈愛の聖乙女・f16157)の二の腕をぽふぽふと叩き声を掛ける。
「お菓子作り! 行きたい行きたい! ……あ、でも、何を作ればいいのかな……?」
「カップケーキなんかどう? 僕が作り方、教えてあげるからさ!」
「わぁ! カップケーキ! 友達が作って食べさせてもらったの、とってもおいしかったの! あたしにも作れるかな!? おいしいカップケーキ!」
「きっと作れるよ! よーし、善は急げ、だね!」
まだグリモア猟兵が声を上げている内に――リサと光はどたばたと準備して、ヒューストン行きのグリモアという列車に飛び乗るのだった。
ポーシュボスの支配下に置かれているとは思えぬほどに、研究施設内の調理部屋はきちんとしていた。グリモア猟兵によればリサと光の前にも何人か送り出しているという話だったので、彼らが整理整頓をしていったのかもしれない。
「お菓子作りをするなら、エプロンが大事だよね! じゃーん! リサちゃん見て見て! エプロン、お揃いにしてみたよ~!」
「可愛い~! ありがと~!!」
「えへへ~、リサちゃんにもきっと似合うって思ったの!」
ぴらっと広げられたフリル付きのエプロンはお菓子作りにチャレンジする女の子の頼もしい味方。二人は早速身に付けると、材料や道具を一通り作業スペースに並べて、
「みんなの狂気がすっ飛ぶような、とびきりおいしいカップケーキを作っちゃおう!」
「わーい! レッツクッキング~♪」
リサが気合の籠った右手を突き上げれば、光も倣ってそれに応じる。二人の弾ける笑顔で部屋はキラキラに包まれていた。
「さて、光さん! まずはバターと砂糖です! それをボウルに入れて……こんな感じで、混ぜます!」
「はーい!」
リサが手本となり、先行してカップケーキ作りに取り掛かる。しゃかしゃかしゃかしゃか、と泡立て器を使って手際良く混ぜていくリサの手つきを食い入るように見つめつつ、光もまた自分が作るカップケーキの材料と格闘する。
手順も大事だが、そのためには正確な計量が必要になる。どの材料も多すぎてもいけないし、少なすぎてもいけない。ぷるぷると震える針とにらめっこしながら、バターを細かく、砂糖はさらさら、秤の上に乗せていった。
「……これでリサちゃんと同じ! あとはまぜまぜ、だね!」
しゃかしゃかしゃか、同じ道具は使っているが、慣れの分だけ音が違った。それでも光は懸命にリサへ追いつこうと、しゃかしゃかしゃか、しゃかしゃかしゃか。
「よく混ざったら、溶いた卵を入れて……香りづけのバニラオイルに、とびっきりの『愛』を入れましょう!」
「溶いた卵……バニラオイル……それに隠し味! とびきりの愛! うーんとおいしくなってね! カップケーキちゃん!」
リサと光の豊かな愛情が、それぞれのカップケーキへと詰まっていく。丁寧に、丁寧に。愛情をかけた分だけカップケーキは育っていくのだ。
「それから……薄力粉にベーキングパウダー! 薄力粉には強力粉っていう似たようなものもあるけど、それだとカップケーキがふわふわにならないから注意だよー」
「薄力粉……これだね! 甘くてふわふわカップケーキ、楽しみ~」
どちらも同じ真っ白な粉だが、用途はそれぞれ違っている。最高のふわふわを求めて、光はしっかりと薄力粉を手にしていた。
「あとは『明るさ』を忘れずに! 今度はへらでまーぜまぜ!」
「へらでまぜるんだね! まーぜまーぜ……ふふっ、素敵な素敵なカップケーキちゃ~ん♪」
狂気を祓う明るさは、それはもうふんだんに注ぎ込まれていた。そうして混ぜて完成したカップケーキのタネは、その名の通りに一口サイズのカップの中に流し込まれていく。
「あとは予熱したオーブンで20分焼けば完成♪」
「20分、バッチリだよ!」
均等に並べられたカップをオーブンに投入して、光はタイマーをスタートさせた。20分とは短く見えて、待ち遠しさが募る分だけ長くなる。まだかな、まだかな、とオーブンの前でそわそわしている光の傍へ、リサは寄ってオーブンの中を確かめた。
カップケーキの表面が少し持ち上がってきた。いい感じに焼けていそう、と安堵してリサは自分のオーブンへ戻る。先に焼き始めた分だけ、リサのカップケーキは丁度いい頃合いになっていた。
オーブンを止めて中から天板を取り出すと、愛と明るさに満ちた甘い香りがほわんと立ち昇る。火傷をしないように慎重に作業スペースへと運んでいく後ろでは、光のタイマーがぴぴぴと鳴った。
「できたよー!」
「やったね! じゃあ、みんなのところへ持っていく……前に、まずは試食から♪」
「食べて食べてー♪」
出来が悪くちゃ祓えるものも祓えない。故に試食は必要経費。あつあつのカップケーキをふーふーと少し冷まして、
「はい、あーん!」
「あーん……ぁむっ……ん! んん!! すっごくおいしい!」
「ほんと!? やったぁ!! ……あ、リサちゃんのも少し頂戴!!」
「いいよ! お返しに……あーんっ」
「あ~んっ♪ ――んふふ~♪ リサちゃんのも、と~っても、おいし~い!!」
はなまるをたくさんつけたくなるくらいに、素敵なカップケーキが出来上がった。お互いが太鼓判なのだから、これが狂気に効かないことがあろうか。
「これなら研究員さんたち、喜んでくれるよね! 早速、食べてもらいにいこ~!」
「明るさと愛満点のカップケーキを召し上がれ!」
リサと光が部屋に飛び込んだだけで狂気が一瞬たじろいだ。研究者達の視線が集中する中を二人は自信満々に駆けていく。
研究机にどんと乗った大皿には円形に並べられたカップケーキ。どちらもふわふわ、バニラの香りが漂って研究者達の食欲をそそる。
良からぬ研究の果てに忘れてしまった感覚だ。冷水を浴びたようにびくりと身を竦めながらも、研究者達は手のひらに乗るそれを取っていた。
カップをぺりぺりと折り曲げて剥がし、ゆっくりと口を近づけていく。すっと鼻に抜けていく匂いに釣られて、ぱくり、と一口でいってしまった。
「……むふっ、おおおおっ!!」
口の中は喜びに満ち溢れていた。素材以上に二人の込めた気持ちが躍動し、憑き物をしゅぅっと取り去っていく。どれ、こちらは――と研究者達は各々もう一方のカップケーキに手をつけて、また唸る。
どちらがおいしかったか、なんて考えるだけ野暮な話。
「どちらも、生き返るほどにおいしかった……」
一人が代弁し、他の研究者達は静かに頷く。彼らの頭の中にはもう、超宇宙の恐怖なんてこれっぽっちも残っていない。
目を閉じてカップケーキの余韻に浸る研究者達の幸せそうな表情に、リサと光は顔を合わせて笑い合った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
和田町・いずみ
お菓子を作るのは良いですね。普段あんまりお菓子を作ることはないですが、たまにお菓子を作るのも良いですし、甘いものを食べるのも良いですね!
得意の電脳魔術を駆使して計算してかわいく甘いお菓子を作ります。また、紅茶などの飲み物を用意します。
ですので、こちらもどうぞですよー!
※アドリブや連携は大歓迎
●かわいい×甘い=???
人は頭を働かせている時に、思いの外エネルギーを消費しているのだとか。頭脳労働とはよく言ったもので、それを不眠不休で行っているのだから研究者達は人の皮を貼り付けた骸骨になりかねない。
「研究者達にお菓子を作ってあげるとは……なかなかの妙案ですね。甘いものは脳が自然と欲するもの……食べて良くないわけがありませんから」
和田町・いずみ(人間の電脳魔術士・f07456)は腕組み、うんうんと頷いて作業スペースの前に立っていた。まだほんのりと残り香漂うその場所で、いずみの眼鏡がきゅぴりと光る。
「普段はあんまりお菓子を作ることはないですが……たまにはこうして手を動かすのもいいでしょう。脳への刺激にもなりますし……おっと、時間を浪費してはいけませんね。早速作業に取り掛かりましょう」
いずみが言う作業とは、他の者とは一味違った。操るのは自身が得意とする電脳魔術。電脳ゴーグルを装着すると、部屋全体に電脳世界を広げて膨大な数の数式と記号を並べていった。
お菓子作りのあらゆる要素が演算結果に表現され、それは魔力を以って現実へと落とし込まれる。最初の最初は宙に浮いた卵がパカパカ割れて、卵白だけがにゅるりとボウルの中へ滑り落ちた。
「ふむふむ……卵白を速さvで混ぜる時、粉砂糖とアーモンドプードルをこの比率で混合したものを投入するタイミングは――」
言葉の意味はすでにいずみの手の中にあった。ボウルの中の卵白は始めどろりと透明なものだったが、一定速度で混ぜるに従い白くメレンゲになっていく。目指すは弾力性の閾値の先。ツノが立つのか立たないのか。電脳魔術は二択すら正確に振り分ける。
「――ここですね。そしてこの先は解が一気に複雑になります。腕の見せ所、といったところでしょうか」
操るへらは微小の変化も許されない。粉を投入した先でメレンゲ生地から空気を抜いていく作業はこの先の全てを決めてしまう。出来不出来の根幹へ向けて、いずみは集中力を高めていく。
大量のパラメータが目まぐるしく動き始めた。滑らかな生地の中では見た目以上に巨大な変化が起こっている。持ち上げたへらの先から落下する生地が一瞬宙に分離して、ダラダラとボウルの中で融合を果たす。
だがまだ足りない。あと少し。全ての文字に数値が確定しなければ次の工程には移れない。魔力のリソースは惜しむことなく、いずみはひたすらへらを操る。
そうしてついに辿り着く極致。至れば描くは美の究極形たる真円だ。生地を一定の厚み、直径、間隔で並べ、オーブンで絶妙に焼き上げる。待つ間の手持ち無沙汰解消に、いずみは生クリームを泡立て、紅茶を淹れた。それが最良の組み合わせ、と数式も弾き出している。
全てが整った頃に焼き上がった真円の生地に生クリームを挟んでみれば――そう、手のひらサイズの甘いマカロンの完成だ。
「今や可愛いお菓子の代表格と言っていいでしょう。さて、出来立てをお持ちして、狂気を祓わなければいけませんから――」
飾りつけはシンプルに。いずみはマカロンと紅茶が乗るカートをからから押していった。
「不眠不休の皆様に、私からあまーい差し入れですよー」
いずみがマカロンと紅茶を運び入れた室内には紙束がこれでもかと言うくらい撒き散らされていた。挑戦と挫折を繰り返した末路が痛々しく表れている。
突っ伏した研究者達が、研究机に顔を擦りつけながら首を回して、いずみの元へ視線を向けた。目玉が転がり落ちてくるのではないかと思うくらいに暗い淵が作られ、唇はなんだか浅黒い。不健康の権化みたいな者達だった。
「ぅあ……あま……?」
甘いとはどういう概念だったか、それすら忘れてしまっている。だが体は本能的に生者の道を選んだのか、腕が研究机を這って伸びてきていた。
いずみは伸びたその手に一つずつマカロンを乗せ、傍らに紅茶を淹れたカップを置いた。一口齧れば彼らの『時』も動き出すはず、と信じて。
クリームを挟んだマカロンは壮大な宇宙の始まり、ビッグバンを想起させる。宇宙とは彼らが狂気の中で求めていた恐怖の根源。マカロンは自然と口に運ばれていった。
「……!? あ……ま、い……!!」
さくっと割れたマカロンに、クリームがとどめの一撃。甘さに舌を撃ち抜かれた研究者達はそのまま勢いよくマカロンを口に押し込んだ。
彼らにとっては特濃の甘さ。そして口の中に踊るマカロンにはやはり水気が欲しくなる――見れば紅茶があるではないか。湯気に構わず口の中へと流し込んで、喉に生命の熱さを感じていた。
「ふ……うぅ……あぁ? なんだこの走り書きは……まぁいい。君……済まないが、茶をもう1杯、くれないだろうか」
「どうぞどうぞ、まだまだありますからねー!」
いずみが声高にアピールしていくと、研究者達は意味の分からぬ恐怖の数式をゴミ箱に捨てて、じっくりと生きた喜びを堪能する。
狂気は、いずみも含めた猟兵達の手により祓われた。
邪神に抗ういくつもの希望を、猟兵達は確かに掴んだのだった。
大成功
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